説明

表示装置

【課題】表示装置において、簡易な構造で模様及び発光色を切り換える。
【解決手段】表示装置1は、発光によって模様を表示する面状発光素子2、3が複数組み合わせて用いられる。面状発光素子2、3は、模様を形成する発光領域5a、5b、8aを持つ発光層5、8を有する。面状発光素子2、3は、積み重ねて組み合わせられる。第2の面状発光素子3の発光方向側に積み重ねられた第1の面状発光素子2は、透明材料から成る。各面状発光素子2、3の発光領域5a、5b、8aは、電力供給系統がそれぞれ相違する。この構成により、発光領域5a、5b、8aをそれぞれ点灯制御することができ、かつ、第1の面状発光素子2を透過して光を照射することができるので、任意の発光領域5a、5b、8aの模様を表示することができる。これにより、簡易な構造で模様及び発光色を切り換えることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の面状発光素子を備える表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数色で発光する表示装置において、それぞれの色の発光を独立して制御することが可能であれば、表示装置の存在感を際立たせることができる。このような表示装置は、例えば、誘導灯などに用いられると、存在感が高くなって誘目性が向上する。また、通常時は非常口を案内するピクトグラムを表示し、非常時は非常口を案内するピクトグラムだけでなく、非難する方向を示す矢印などを切り換え表示できる表示装置が考えられる。この表示装置は、演出性が向上して避難者の誘導を円滑に行うことができる。しかし、従来の有機ELを用いた表示装置で色や模様を切り換え表示するには、例えば、特許文献1に示されるように、マトリクス上の電極とRGB発光層の複雑な構造、及びそれらを駆動制御する複雑な回路が必要となるので、製造コストが高くなる。
【0003】
また、特許文献2に示されるように、複数の素子を積層して配置し、これらを独立に駆動させることによって調色可能に形成された表示装置が知られている。この表示装置は、簡易な構造で発光色を切り換えることができるが、模様を切り換えることができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−107628号公報
【特許文献2】特開2002−260859号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、簡易な構造で模様及び発光色を切り換えることができる表示装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために請求項1の発明は、発光によって模様を表示する面状発光素子を備え、前記面状発光素子は、前記模様を形成する発光領域を持つ発光層と、前記発光層を挟持して該発光層に電力を供給する陽極電極及び陰極電極と、を有し、前記面状発光素子が複数組み合わせて用いられる表示装置であって、前記複数の面状発光素子は、積み重ねて組み合わせられ、前記面状発光素子の発光方向側に積み重ねられた面状発光素子は、透明材料から成り、前記各面状発光素子の発光領域は、電力供給系統がそれぞれ相違するものである。
【発明の効果】
【0007】
請求項1の発明によれば、積み重ねて組み合わせられた各面状発光素子の発光領域をそれぞれ点灯制御することができ、かつ、透明材料から成る面状発光素子を透過して光を照射することができるので、任意の発光領域の模様を表示することができる。これにより、簡易な構造で模様及び発光色を切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る表示装置の分解斜視図。
【図2】(a)〜(c)は、同表示装置の第1の面状発光素子の作成工程を示す図。
【図3】(a)〜(c)は、同表示装置の第2の面状発光素子の作成工程を示す図。
【図4】(a)、(b)は、同表示装置の発光パターンを示す図。
【図5】本発明の第2の実施形態に係る表示装置の分解斜視図。
【図6】(a)〜(c)は、同表示装置の第1の面状発光素子の作成工程を示す図。
【図7】(a)〜(c)は、同表示装置の第2の面状発光素子の作成工程を示す図。
【図8】(a)、(b)は、同表示装置の発光パターンを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る表示装置について、図1乃至図4を参照して説明する。図1に示されるように、表示装置1は、互いに積層された第1の面状発光素子2と、第2の面状発光素子3とを備える。第1の面状発光素子2は定電流源A、Bと電気的に接続され、第2の面状発光素子3は定電流源Cと電気的に接続される。この表示装置1は、定電流源A、B、Cから面状発光素子2、3に電力が供給されることで第1の面状発光素子2側から発光し、人型又は矢印型の模様を切り換え自在に表示する。
【0010】
第1の面状発光素子2は、第2の面状発光素子3の発光方向側に積み重ねられ、基材4と、基材4上に形成されている発光層5と、発光層5への給電に用いられる陽極取り出し部6a、6b、6c及び陰極取り出し部7とを有し、これら各材料が透明材料で構成されている。発光層5は、緑色で発光して人型の模様を形成する発光領域5a(濃い灰色)と、白色で発光して人型を取り囲む模様を形成する発光領域5b(薄い灰色)とを有する。
【0011】
第2の面状発光素子3は、基材4と、基材4上に形成されている発光層8及び絶縁層11と、発光層8への給電に用いられる陽極取り出し部6及び陰極取り出し部7とを有する。発光層8は、白色で発光して矢印型の模様を形成する発光領域8a(薄い灰色)を有する。
【0012】
図2(a)(b)(c)は、第1の面状発光素子2の製造工程を時系列で示したものである。第1の面状発光素子2の発光層5は、陽極電極9a、9bと面状の陰極電極10で挟持され、陽極取り出し部6a、6bは陽極電極9aと電気的に接続され、陽極取り出し部6cは陽極電極9bと電気的に接続され、陰極取り出し部7は陰極電極10と電気的に接続されている。発光領域5a、5b及び陰極電極10は、陽極電極9a、9b及び陰極取り出し部7との位置関係を理解しやすくするために、半透明で図示している。
【0013】
第1の面状発光素子2は、以下の手順で作成される。まず、図2(a)に示されるように、矩形板状の基材4上に、人型の模様の陽極電極9aと、この人型を取り囲む模様の陽極電極9bと、陽極取り出し部6a〜6cと、陰極取り出し部7とが形成される。陽極電極9aと陽極電極9bの隙間には、絶縁を確保するための、例えばポリイミドから成る絶縁層(図示せず)が形成される。
【0014】
次に、図2(b)に示されるように、陽極電極9a上に緑色で発光する発光領域5aが陽極電極9aと同じ模様で形成され、陽極電極9b上に白色で発光する発光領域5bが陽極電極9bと同じ模様で形成される。発光領域5aと発光領域5bの隙間にも、絶縁を確保するための、例えばポリイミドから成る絶縁層が形成される。なお、発光層5は、発光色の異なる発光領域を3つ以上有していてもよい。
【0015】
発光層5及び後述する発光層8は、透明な発光材料から成る。発光層5、8は、発光材料の成分比及び膜厚が膜面方向に関して均一となるように、インライン式蒸着方法を用いて形成される。なお、発光層5、8は、表示装置1で表示したいピクトグラムに応じて模様や発光色が適宜選択される。
【0016】
さらに、図2(c)に示されるように、発光層5と陰極取り出し部7を覆うように陰極電極10が形成される。陽極取り出し部6a、6bは発光領域5aの点灯制御を行うための定電流源Aと接続され、陽極取り出し部6cは発光領域5bの点灯制御を行うための定電流源Bと接続され、陰極取り出し部7は接地される。定電流源A、B、Cは、電力のオン・オフを切り替えるスイッチを有する。
【0017】
図3(a)(b)(c)は、第2の面状発光素子3の製造工程を時系列で示したものである。第2の面状発光素子3の発光層8は、陽極電極9と面状の陰極電極10で挟持され、陽極取り出し部6は陽極電極9と電気的に接続され、陰極取り出し部7は陰極電極10と電気的に接続されている。発光領域8a及び陰極電極10は、陽極電極9及び陰極取り出し部7との位置関係を理解しやすくするために、半透明で図示している。
【0018】
第2の面状発光素子3は、以下の手順で作成される。まず、図3(a)に示されるように、矩形板状の基材4上に、矢印型の模様の陽極電極9と、陽極取り出し部6と、陰極取り出し部7とが形成される。
【0019】
次に、図3(b)に示されるように、陽極電極9上に白色で発光する発光領域8aが、陽極電極9と同じ模様で形成される。発光領域8a及び陽極電極9の矢印型の模様を取り囲むようにして絶縁層11が形成される。
【0020】
さらに、図3(c)に示されるように、発光層8と陰極取り出し部7を覆うように陰極電極10が形成される。陽極取り出し部6は発光領域8aの点灯制御を行うための定電流源Cと接続され、陰極取り出し部7は接地される。
【0021】
基材4は、透明なガラス板、樹脂板又はフィルム、例えば、プラスチックシート、ガラスとプラスチックの複合体、光透過性セラミック板、樹脂硬化体、有機・無機ハイブリッド材料から成るシート・フィルム等で形成されている。なお、表示装置1は、基材4をそれぞれ有する面状発光素子2、3を備えるものに代えて、1つの基材4を面状発光素子2、3で共通に用いるものであってもよい。具体的には、この表示装置1は、1つの基材4の表面に第1の面状発光素子2の材料が積層され、裏面に第2の面状発光素子3の材料が積層されて成る。
【0022】
電極9、9a、9b、10、陽極取り出し部6、6a、6b、6c及び陰極取り出し部7は、光透過性の材料、例えば、ITO、IZO、AZO、GZO、ATO、SnO等の透明導電膜、Ag、Au、Al等の金属薄膜、導電性有機材料又はこれらを組み合わせたもので形成されている。なお、第2の面状発光素子3の基材4や陽極電極9は、第2の面状発光素子3が表示装置1の発光方向と逆側に配置されていることから、光を透過させる必要がないので不透明な材料であってもよい。
【0023】
上記のように構成された表示装置1の動作について説明する。図4(a)のパターン1に示されるように、定電流源A及び定電流源Bのスイッチをオンにし、定電流源Cはオフにすると、定電流源Aから電力が供給されて発光領域5aが緑色発光し、定電流源Bから電力が供給されて発光領域5bが白色発光して、発光色が2色の人型パターンが表示される。図の濃い灰色は緑色発光を示し、薄い灰色は白色発光を示す。
【0024】
図4(b)のパターン2に示されるように、定電流源A及び定電流源Bのスイッチをオフにし、定電流源Cのスイッチをオンにすると、定電流源Cから電力が供給されて発光領域8aが白色発光し、発光色が1色の矢印型パターンが表示される。図の薄い灰色は白色発光を示す。発光領域8aから照射される光は、第1の面状発光素子2を透過して表示装置1の外へと放出される。このように、表示装置1は、電力供給系統がそれぞれ相違する発光領域5a、5b、8aを点灯制御することによって、2つのパターンを表示することができる。
【0025】
上記のように構成された表示装置1は、積み重ねて組み合わせられた各面状発光素子2、3の発光領域5a、5b、8aをそれぞれ点灯制御することができ、かつ、透明材料から成る第1の面状発光素子2を透過して光を照射することができるので、任意の発光領域5a、5b、8aの模様を表示することができる。これにより、簡易な構造で模様及び発光色を切り換えることができる。
【0026】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る表示装置について、図5乃至図8を参照して説明する。第2の実施形態は、第1の面状発光素子2の発光層5と、第2の面状発光素子3の発光層8との両方を発光させて模様を表示することが第1の実施形態と異なる。
【0027】
図5に示されるように、第1の面状発光素子2は、発光層5及び絶縁層11と、発光層5への給電に用いられる陽極取り出し部6a、6b、6c及び陰極取り出し部7とを有する。発光層5は、緑色で発光して人型の模様を形成する発光領域5a(濃い灰色)を有する。第2の面状発光素子3は、発光層8と、発光層8への給電に用いられる陽極取り出し部6a、6b、6c及び陰極取り出し部7とを有する。発光層8は、白色で発光して矢印型の模様を形成する発光領域8a(薄い灰色)と、同じく白色で発光して矢印型を取り囲む模様を形成する発光領域8b(薄い灰色)とを有する。
【0028】
図6(a)(b)(c)は、第1の面状発光素子2の製造工程を時系列で示したものである。第1の面状発光素子2の発光層5は、面状の陽極電極9と面状の陰極電極10で挟持され、陽極取り出し部6a、6b、6cは陽極電極9と電気的に接続され、陰極取り出し部7は陰極電極10と電気的に接続されている。
【0029】
第1の面状発光素子2は、以下の手順で作成される。まず、図6(a)に示されるように、基材4上に、矩形の陽極電極9と、陽極取り出し部6a〜6cと、陰極取り出し部7とが形成される。
【0030】
次に、図6(b)に示されるように、陽極電極9上に、緑色で発光する発光領域5aと、発光領域5aの人型の模様を取り囲むようにして透明な絶縁層11が形成される。さらに、図6(c)に示されるように、発光層5と陰極取り出し部7を覆うように陰極電極10が形成される。陽極取り出し部6a、6b、6cは、発光領域5aの点灯制御を行うための定電流源Aと接続され、陰極取り出し部7は接地される。
【0031】
図7(a)(b)(c)は、第2の面状発光素子3の製造工程を時系列で示したものである。第2の面状発光素子3の発光層8は、陽極電極9a、9bと面状の陰極電極10で挟持され、陽極取り出し部6aは陽極電極9aと電気的に接続され、陽極取り出し部6b、6cは陽極電極9bと電気的に接続され、陰極取り出し部7が陰極電極10と電気的に接続されている。
【0032】
第2の面状発光素子3は、以下の手順で作成される。まず、図7(a)に示されるように、基材4上に、矢印型の模様の陽極電極9aと、この矢印型を取り囲む模様の陽極電極9bと、陽極取り出し部6a、6b、6cと、陰極取り出し部7とが形成される。
【0033】
次に、図7(b)に示されるように、陽極電極9a上に白色で発光する発光領域8aが陽極電極9aと同じ模様で形成され、陽極電極9b上に白色で発光する発光領域8bが陽極電極9bと同じ模様で形成される。さらに、図7(c)に示されるように、発光層8と陰極取り出し部7を覆うように陰極電極10が形成される。陽極取り出し部6aは、発光領域8aの点灯制御を行うための定電流源Bに接続され、陽極取り出し部6b、6cは、発光領域8bの点灯制御を行うための定電流源Cに接続され、陰極取り出し部7は接地される。
【0034】
上記のように構成された表示装置1の動作について説明する。図8(a)のパターン1に示されるように、定電流源A、B、Cのスイッチを全てオンにすると、定電流源A、B、Cから電力が供給されて発光領域5aが緑色発光し、発光領域8a、8bが白色発光する。具体的には、第1の面状発光素子2は人型の模様に発光し、第2の面状発光素子3は第1の面状発光素子2の裏側から、第1の面状発光素子3全体を照らすようにして矩形の模様で発光する。これにより、表示装置1は、発光色が2色の人型パターンを表示する。なお、2色の人型パターンを表示するとき、第1の面状発光素子2の緑色の発光色は、第2の面状発光素子3の白色の発光色との混合色となるので、この混合色が最適な緑色となるように色調整が行われる。
【0035】
図8(b)のパターン2に示されるように、定電流源A及び定電流源Cのスイッチをオフにし、定電流源Bのスイッチをオンにすると、定電流源Bから電力が供給されて発光領域8aが白色発光して、発光色が1色の矢印型パターンが表示される。
【0036】
上記のように構成された表示装置1においては、第1の面状発光素子2の陽極電極9が矩形であり、第2の面状発光素子3の陽極電極9a、9bが単純な矢印型の電極形状であるので、各定電流源A、B、Cから供給される電流が発光領域5a、8a、8b内を均一に流れる。これにより、各発光領域5a、8a、8bが均一に発光するので、表示装置1は、輝度ムラなく複雑な人型の模様を表示することができる。また、第1の面状発光素子2の陽極電極9が矩形であるので、複雑な模様の陽極電極9と複雑な同じ模様の発光層5をずらさずに積み重ねるという作業が必要ない。これにより、製造が容易となって製造コストを削減することができる。
【0037】
なお、本発明は、上記の実施形態の構成に限られず、発明の要旨を変更しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、2つの面状発光素子が組み合わせられているものを示したが、表示する模様や発光色の異なる面状発光素子が3つ以上設けられているものであっても構わない。
【符号の説明】
【0038】
1 表示装置
2 第1の面状発光素子(面状発光素子)
3 第2の面状発光素子(面状発光素子)
5、8 発光層
5a、5b、8a、8b 発光領域
9、9a、9b 陽極電極
10 陰極電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光によって模様を表示する面状発光素子を備え、
前記面状発光素子は、前記模様を形成する発光領域を持つ発光層と、前記発光層を挟持して該発光層に電力を供給する陽極電極及び陰極電極と、を有し、
前記面状発光素子が複数組み合わせて用いられる表示装置であって、
前記複数の面状発光素子は、積み重ねて組み合わせられ、
前記面状発光素子の発光方向側に積み重ねられた面状発光素子は、透明材料から成り、
前記各面状発光素子の発光領域は、電力供給系統がそれぞれ相違することを特徴とする表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−174985(P2011−174985A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37182(P2010−37182)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】