説明

表示装置

【課題】 低輝度状態でも安定した光出力を得ることができ、所望の表示色での表示が可能な表示装置を提供する。
【解決手段】 出力制御手段80は、走査手段20によるレーザー光R,G,Bの走査位置が表示範囲内のときに画像情報に基づいてレーザー光源10から画像形成用光を出射させ、走査位置が表示範囲外の所定位置のときにレーザー光源10から検出用光を出射させると共に、出力制御手段80は、走査手段20による走査位置が表示範囲外のとき、レーザー光源10の駆動電流を閾値電流値未満の第一の電流値、及び閾値電流値以上の第二,第三の電流値で変化させ、レーザー光検出部40で検出される光強度に基づいて電流−光出力特性を演算して得られた駆動電流でレーザー光源10を駆動する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に関するものであり、特に、レーザー光源から出た光を光走査によって画像として表示する表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、車両のウインドシールド或いはコンバイナと称される半透明板に表示像を投影し、虚像を表示する車両用ヘッドアップディスプレイ装置が種々提案されており、例えば特許文献1に開示されている。
【0003】
車両用ヘッドアップディスプレイ装置1は、車両のダッシュボード内に配置されており、この車両用のヘッドアップディスプレイ装置1が投射する表示光Lはウインドシールド2により車両運転者3に反射され、車両運転者3は虚像Vを風景と重畳させて視認させることができる(図1参照)。
【0004】
このような車両用ヘッドアップディスプレイ装置1において、半導体レーザーを光源としたものが提案されており、例えば特許文献2に開示されている。
【0005】
斯かる車両用ヘッドアップディスプレイ装置1は、半導体レーザー,走査系,スクリーンを備えており、半導体レーザーから発せられたレーザー光を走査系でスクリーン上に走査して表示像を生成するものである。
【0006】
しかしながら、光源が光を出射する際に発生する熱や外気温の変化等に起因して、光源の閾値電流値が変化する。このように光源の閾値電流値が変化した場合、光源の電流―光出力特性が変化することから、表示する画像の輝度が安定しないといった問題が生じる。
【0007】
そこで、特許文献3には、光源部の出力値を一定に保つ技術として、画像表示装置に、光検出部を設け、光源に供給する電流値を2点以上変化させて、光源の光出力を光検出部で検出し、この検出結果に基づいて光源の電流−光出力特性(例えば、光源の閾値電流値や量子効率)を演算することで、光源に供給するバイアス電流を設定し、光源の電流−光出力特性に対応したパルス電流を光源に供給する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−193400号公報
【特許文献2】特開平7−270711号公報
【特許文献3】特開2009−244797号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上述した特許文献3の画像表示装置では、閾値電流値未満のレーザー駆動電流を投入した際の光出力は無視し、レーザー駆動電流を閾値電流値以上の2点以上変化させて光出力を検出し、電流−光出力特性を演算している。
【0010】
一方、車両用ヘッドアップディスプレイ装置1では外光強度に合わせて表示輝度を大きく変化させ、調光比を大きくとる必要がある。最大輝度では数千〜数万cd/m以上、最小輝度では数cd/mが要求される。このような最小輝度を達成するためにはレーザー駆動電流を閾値電流値未満に調整し、レーザー発振していない光も利用する必要があるため、閾値電流値未満の電流−光出力特性に基づいてレーザー光源を所定の電流値で駆動する必要がある。
【0011】
したがって、特許文献3の方法を車両用ヘッドアップディスプレイ装置1に応用した場合、閾値電流値を正確に特定することは出来ず、閾値電流値未満の電流−光出力特性も不明であるため、特に低輝度状態で表示輝度が不安定になる、所望の表示色が得られないといった問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、レーザー光を発するレーザー光源と、前記レーザー光をスクリーンに走査する走査手段と、前記レーザー光源の出力を制御する出力制御手段と、前記レーザー光の光強度を検出するレーザー光検出部と、を備えた表示装置であって、前記出力制御手段は、前記走査手段による前記レーザー光の走査位置が表示範囲内のときに画像情報に基づいて前記レーザー光源から画像形成用光を出射させ、前記走査位置が表示範囲外の所定位置のときに前記レーザー光源から検出用光を出射させると共に、前記出力制御手段は、前記走査手段による走査位置が表示範囲外のとき、前記レーザー光源の駆動電流を閾値電流値未満の第一の電流値、及び閾値電流値以上の第二,第三の電流値で変化させ、前記レーザー光検出部で検出される光強度に基づいて電流−光出力特性を演算して得られた駆動電流で前記レーザー光源を駆動するものである。
【0013】
また、本発明は、前記電流−光出力特性は、ゼロ点と前記第一の電流値で検出した光出力値を結ぶ線形性を有した第一の直線と、前記第二の電流値と前記第三の電流値で検出した光出力値を結ぶ線形性を有した第二の直線を有し、前記第一の直線と前記第二の直線の交点を屈曲点とし、前記屈曲点を閾値電流値とするものである。
【0014】
また、本発明は、外光強度を検出する外光検出部を備えたものである。
【0015】
また、本発明は、前記出力制御手段は、前記外光検出部で検出される外光強度に基づいた所定の光出力値となるように、前記電流−光出力特性の演算結果から得られる駆動電流で前記レーザー光源を駆動するものである。
【発明の効果】
【0016】
低輝度状態でも安定した光出力を得ることができ、所望の表示色での表示が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施形態を示す虚像の説明図
【図2】上記実施形態を示す表示装置の断面図
【図3】上記実施形態の合成レーザー光の発生手段の概念図
【図4】上記実施形態の半導体レーザーの電流値−光出力値特性図
【図5】上記実施形態の半導体レーザーの電流値−光出力値の温度特性図
【図6】上記実施形態の電気的構成説明図
【図7】上記実施形態の赤色レーザー光の電流値−光出力特性の概念図
【図8】上記実施形態の緑色レーザー光の電流値−光出力特性の概念図
【図9】上記実施形態の青色レーザー光の電流値−光出力特性の概念図
【図10】上記実施形態のカラーセンサの位置の説明図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面に基づいて、本発明をヘッドアップディスプレイ装置1に適用した一実施形態について説明する。
【0019】
ヘッドアップディスプレイ装置1は、車両2のダッシュボード内に設けられ、生成した表示画像Dを表す表示光Lをウインドシールド3で反射させることにより、運転者4に車両情報を表す表示画像Dの虚像Vを視認させるものである。運転者4は、前方から視線を逸らさずに虚像Vを視認できる。
【0020】
図2に示すように、ヘッドアップディスプレイ装置1は、合成レーザー光発生器(レーザー光源)10と、MEMSスキャナー(走査手段)20と、透過スクリーン(スクリーン)30と、カラーセンサ(レーザー光検出部)40と、反射部50と、ライトセンサ(外光検出部)60と、ハウジング70とを備えている。
【0021】
合成レーザー光発生器10は、三原色のレーザー光R,G,Bを合波して1本の合成レーザー光Cを出射するものであり、レーザーダイオード11r,11g,11bと、集光光学系12r,12g,12bと、ダイクロイックミラー14,15と、を備える(図3参照)。
【0022】
集光光学系12r,12g,12bは、各レーザーダイオード11r,11g,11bから出射されたレーザー光R,G,Bを集光する。集光光学系12rは、レーザーダイオード11rが出射するレーザー光Rの光路の途中に配置され、レーザー光Rを収束光にする。集光光学系12gとレーザーダイオード11g、集光光学系12bとレーザーダイオード11bの対応関係についても同様である。
【0023】
ダイクロイックミラー14,15は、誘電体の多層膜等の薄膜が鏡面に形成された鏡で構成され、レーザーダイオード11r,11g,11bの各々が出射したレーザー光R,G,Bを反射又は透過させ、レーザー光R,G,Bを1本の合成レーザー光Cに合波する。
【0024】
ダイクロイックミラー14は、集光光学系12rと集光光学系12bからのレーザー光R,Bの進行方向側に位置し、各々のレーザー光R,Bの進行方向に対して所定の角度をもって配設される。これにより、レーザー光Bを透過し、レーザー光Rを反射する。即ち、ダイクロイックミラー14は、レーザー光Rとレーザー光Bとを合波する。
【0025】
ダイクロイックミラー15は、集光光学系12gとダイクロイックミラー14とに対して光の進行方向側に位置し、各々の光の進行方向に対して所定の角度をもって配設される。これにより、合波されたレーザー光R,Bを透過し、レーザー光Gを反射する。即ち、ダイクロイックミラー15は、レーザー光R,Bとレーザー光Gとを更に合波する。
【0026】
このように、レーザー光R,G,Bは1本の合成レーザー光Cに合波され、合成レーザー光発生器10から出射される。なお、レーザーダイオード11r,11g,11bの各々が調整して配設されることにより、合波されたレーザー光R,G,Bの各々の偏光方向は一致しており、ウインドシールド3の反射率の偏光依存性を考慮して決定される。なお、ダイクロイックミラー14,15は、LED光についても合波し、合波した光は合成レーザー光発生器10から出射される。
【0027】
MEMS(Micro Electro Mechanical System)スキャナー20は、合成レーザー光発生器10が出射した合成レーザー光Cを走査して、透過スクリーン30の上面に表示画像Dを生成する。
【0028】
透過スクリーン30は、拡散板,ホログラフィックディフューザ,マイクロレンズアレイ等から構成され、MEMSスキャナー20で走査された合成レーザー光Cを下面で受光して上面に表示画像Dを表示する。また、透過スクリーン30の下面には、カラーセンサ40が備えられている。
【0029】
反射部50は、透過スクリーン30の上面に表示された表示画像Dが、所望の位置に、所望の大きさで、虚像Vとして結ばれるように、透過スクリーン30とウインドシールド3の光路間に設けられる光学系である。反射部50は、平面ミラー51と拡大ミラー52とから構成されている。
【0030】
平面ミラー51は、平面状の全反射ミラー等であり、透過スクリーン30に表示された表示画像を表す表示光Lを受ける位置に配置され、表示光Lを拡大ミラー52に向かって反射させる。
【0031】
拡大ミラー52は、凹面鏡等であり、平面ミラー51で反射された表示光Lを凹面で反射させることで、反射光をウインドシールド3に向かって出射する。これにより、結像される虚像Vは、透過スクリーン30に表示された表示画像Dが拡大された大きさになる。
【0032】
ハウジング70は、硬質樹脂等から形成され、上方に所定の大きさの窓部71を備えた箱状になっている。ハウジング70は、合成レーザー光発生器10,MEMSスキャナー20,カラーセンサ40,透過スクリーン30,反射部50,ライトセンサ60等を所定の位置に収納する。ライトセンサ60は、窓部71の下面に設置されている。
【0033】
窓部71は、アクリル等の透光性樹脂から湾曲形状に形成されており、ハウジング70の開口部に溶着等により取り付けられる。窓部71は、拡大ミラー52で反射された光を透過させる。また、窓部71は、その下面側にライトセンサ60を備える。
【0034】
次に、図4及び図5に基づいて、合成レーザー光発生器10のレーザーダイオード11r,11g,11bについて詳述する。レーザーダイオード11rは赤色のレーザー光Rを発するものであり、レーザーダイオード11gは緑色のレーザー光Gを発するものであり、レーザーダイオード11bは青色のレーザー光Bを発するものである。レーザーダイオード11r,11g,11bは、閾値電流値ITH未満の駆動電流によって非レーザー光を出射し、閾値電流値ITH以上の駆動電流によってレーザー光R,G,Bを出射する(図4参照)。
【0035】
レーザーダイオード11r,11g,11bの電流−光出力特性は、閾値電流値ITH以上と未満の各領域において、特性が異なっているが、どちらも線形である。このような閾値電流値ITHを有する理由としては活性層の電子分布を反転分布させるためのエネルギーと、増幅される光量がロス分を上回る必要があるためである。
【0036】
閾値電流値ITH以上では誘導放出によるレーザー光R,G,Bが発振されるが、閾値電流値ITH未満では自然放出による非レーザー光が出射される。そのため、閾値電流値ITH未満の非レーザー光では波長の帯域幅がレーザー光R,G,Bに比べて数nm程度拡大する。しかしながら、閾値電流値ITHの近傍で発光色の主波長,色度は殆ど変化しないことから、所望の色を得るために閾値電流値ITH未満であっても、閾値電流値ITH以上におけるレーザー光R,G,Bの混色比を変化させる必要はない。
【0037】
また、図5に示すように、レーザーダイオード11r,11g,11bの電流−光出力特性は、温度上昇と共に閾値電流値ITHが高くなり、閾値電流値ITH以上では効率の低下による特性の劣化が見られるようになる。そのため、温度変化した場合でも、所望の輝度を色変化なく達成するためには、レーザーダイオード11r,11g,11bの電流値を適切に変化させ、光出力値は変化しないようにする必要がある。
【0038】
レーザーダイオード11r,11g,11bの各々は、これらから出射され、最終的にダイクロイックミラー15を透過又は反射したレーザー光R,G,Bの各々の偏光方向(電場振動方向)が一致するように配設されている。
【0039】
次に、図6に基づいて、ヘッドアップディスプレイ装置1の電気的構成について説明する。
【0040】
カラーセンサ40は、レーザー光R,G,Bの光強度を検出し、光強度のアナログデータをマイコン81に出力する。ライトセンサ60は、外光強度を検出し、光強度のアナログデータをマイコン81に出力する。
【0041】
マイコン81は、ヘッドアップディスプレイ装置1における種々の動作を制御する。また、マイコン81には、表示画像Dを表示するための画像データが映像信号100として、LVDS(Low Voltage Differential Signal)通信等によって供給される。マイコン81は、所定の位置に配置されたカラーセンサ40の位置データを予め記憶している。
【0042】
マイコン81は、映像信号100を受け取り、映像信号100が要求する強度にするための制御データを生成し、出力制御部82を介して、レーザーダイオード11r,11g,11bを駆動することで、合成レーザー光発生器10からMEMSスキャナー20へ合成レーザー光Cを出射する。
【0043】
前記制御データとは、カラーセンサ40から受信したレーザー光強度のデジタルデータに基づいて、レーザーダイオード11r,11g,11bの各々が出射するレーザー光R,G,Bの光強度を、映像信号100が要求する強度にするためのデータである。
【0044】
マイコン81は、MEMSドライバ90を介して、MEMSスキャナー20を駆動する。また、マイコン81は、予め記憶している位置データに基づいた所定のタイミング等に応じて、レーザーダイオード11r,11g,11bを駆動し、カラーセンサ40に入光させる。出力制御部82は、マイコン81から制御データを入力され、入力された制御データに基づいて、レーザーダイオード11r,11g,11bの各々の出力を制御する。制御部(出力制御手段)80は、マイコン81と出力制御部82とからなるものである。
【0045】
以上の構成からなるヘッドアップディスプレイ装置1の動作を簡潔に述べれば、(1)制御部80の制御の下、合成レーザー光発生器10は合成レーザー光Cを出射し、MEMSスキャナー20は受光した合成レーザー光Cを透過スクリーン30に向けて走査することで表示画像Dを生成する。(2)透過スクリーン30に表示された表示画像Dを表す表示光Lが反射部50で反射され、反射光はウインドシールド3に向けて出射される。(3)ヘッドアップディスプレイ装置1が出射した表示画像Dを表す表示光Lが、ウインドシールド3で反射されることで、ウインドシールド3の前方に表示画像Dの虚像Vが結ばれる。このように、ヘッドアップディスプレイ装置1は、運転者4に表示画像Dを虚像Vとして視認させることを可能とする。
【0046】
次に、図7乃至図10に基づいて、レーザー光強度を検出する方法、及び、表示画像Dを表示させる際の出力制御方法について説明する。
【0047】
図10は、スクリーン30をMEMSスキャナー20側から見た図である。スクリーン30の表示エリアEは、MEMSスキャナー20の走査可能範囲よりも小さくなる。MEMSスキャナー20は、共振で反射面を振らせることになるため、走査の往復の切り替わりポイント付近では反射面の動作速度が遅くなる、あるいは完全に停止するからである。また、ドットクロックに対してMEMSスキャナー20の反射面の動作速度が著しく変化してくると表示画像Dに歪みが生じたり、解像度の低下を生じたりするからである。
【0048】
レーザー光強度を検出する際には、表示エリアEは使用できないため、カラーセンサ40は表示エリアEの外に配置されている。つまり、MEMSスキャナー20が走査可能且つ表示エリアE外の非表示エリアにカラーセンサ40を配置することで、表示画像Dに影響を及ぼすことなく検出が可能になる。
【0049】
マイコン81は、MEMSスキャナー20の同期信号からレーザー光R,G,Bの走査位置を特定し、予め設置されているカラーセンサ40の位置情報をメモリしておくことで、カラーセンサ40の位置に走査位置が重なったタイミングで出力制御部82を介してレーザーダイオード11r,11g,11bを駆動する。
【0050】
マイコン81はフレーム毎の上述のタイミングでレーザーダイオード11r,11g,11bを駆動する際に、光出力と駆動するレーザーダイオード11r,11g,11bを変化させる。例えば、1フレーム目ではレーザーダイオード11rを電流値IF1、2フレーム目ではレーザーダイオード11rを電流値IF2、3フレーム目ではレーザーダイオード11rを電流値IF3で駆動する。このとき、カラーセンサ40は各電流値に相当する光出力値PO1、光出力値PO2、光出力値PO3を検出し、マイコン81へ出力する。
【0051】
電流値IF1,IF2,IF3は、使用するレーザーダイオード11rの平均的な電流−光出力特性から決定されるものであり、電流値IF1は閾値電流値ITH1未満、電流値IF2は閾値電流値ITH1以上、電流値IF3は電流値IF2以上のような関係である。ただし、電流値IF1,IF2,IF3はレーザーダイオード11rの個体差あるいは温度特性により、閾値電流値ITH1が変化した場合であっても、閾値電流値ITH1未満もしくは以上の関係を維持している必要がある。例えば、電流値IF2は閾値電流値ITH1以上の電流値であるが、レーザーダイオード11rが高温になり、閾値電流値ITH1が増加した場合であっても、閾値電流値ITH1以上になっている必要がある。上述の条件を満たすために、レーザーダイオード11rの温度に合わせて電流値IF1,IF2,IF3を変化させても良い。
【0052】
マイコン81はカラーセンサ40から入力された各レーザーダイオードの3つの光出力値光出力値PO1,PO2,PO3から電流−光出力特性を演算する。演算する電流−光出力特性は、第一の直線M1と第二の直線M2とからなり、閾値電流値ITH1が屈曲点となるグラフで表せる。第一の直線M1は、原点(0,0)と(電流値IF1,光出力値PO1)を結ぶ直線である。
【0053】
電流値をx、光出力値をyとすれば、第一の直線M1は、式1で表せる。
【数1】

【0054】
一方、第二の直線M2は、(電流値IF2,光出力値PO2)と(電流値IF3,光出力値PO3)を結ぶ直線であり、式2で表せる。
【数2】

【0055】
第一の直線M1と第二の直線M2の交点、即ち、閾値電流値ITH1を演算し、閾値電流値ITH1未満では第一の直線M1を、閾値電流値ITH1以上では第二の直線M2をレーザーダイオード11rの電流−光出力特性とする。
【0056】
レーザーダイオード11rと同様に、4〜6フレームではレーザーダイオード11gを電流値IF4,IF5,IF6、7〜9フレームではレーザーダイオード11bを電流値IF7,IF8,IF9で駆動し、カラーセンサ40は各電流値に相当する光出力値PO4,PO5,PO6,PO7,PO8,PO9を検出し、マイコン81へ出力する。レーザーダイオード11g,11bの電流−光出力特性は、閾値電流値ITH2,ITH3を境界とした第一の直線M3,M5及び第二の直線M4,M6からなる。
【0057】
マイコン81は、演算が終了した次フレームにおいて、出力制御部82を介して演算結果から得られる電流値でレーザーダイオード11r,11g,11bを駆動する。具体的には、ライトセンサ60で検出された外光強度がマイコン81に入力されると、マイコン81は入力された外光強度レベルに適した表示輝度レベルを設定し、その輝度レベルが得られるように、上述の電流−光出力特性から駆動電流値を決定する。出力制御部82はマイコン81が出力したそれぞれの駆動電流値でレーザーダイオード11r,11g,11bを駆動する。
【0058】
なお、演算した電流−光出力特性を維持する期間は任意であり、環境や用途に応じて変更可能である。定めた期間が終了した後は、再び各レーザーダイオードの光強度を検出し、演算を行なうサイクルを繰り返す。
【0059】
本実施形態に係るヘッドアップディスプレイ装置1は、一定期間ごとにレーザーダイオード11r,11g,11b夫々の電流−光出力特性を演算し、その演算結果に基づいてレーザーダイオード11r,11g,11bの駆動電流値を決定する。これにより、レーザーダイオード11r,11g,11bが温度変化した場合であっても、夫々の温度に応じた電流−光出力特性を参照しているため、輝度変化や色変化を生じにくい。また、閾値電流値ITH1,ITH2,ITH3を特定し、閾値電流値未満の電流−光出力特性も演算することで、低輝度状態でも安定してレーザーダイオード11r,11g,11bを駆動することが可能であり、調光比を大きく取ることができる。
【0060】
なお、本実施形態では1フレームで検出するレーザー光強度は1つであったが、1フレーム目でレーザーダイオード11r,11g,11bをそれぞれ電流値IF1,電流値IF4,電流値IF7で、2フレーム目を電流値IF2,電流値IF5,電流値8で、3フレーム目を電流値IF3,電流値IF6,電流値IF9で駆動し、フレーム毎に3つのレーザー光強度を検出するようにしても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 車両用ヘッドアップディスプレイ装置
2 車両
3 ウインドシールド
4 車両運転者
10 合成レーザー光発生器(レーザー光源)
11r レーザーダイオード
11g レーザーダイオード
11b レーザーダイオード
12r 集光光学系
12g 集光光学系
12b 集光光学系
14 ダイクロイクックミラー
15 ダイクロイクックミラー
20 MEMSスキャナー(走査手段)
30 透過スクリーン(スクリーン)
40 カラーセンサ(レーザー光検出部)
50 反射部
51 平面ミラー
52 拡大ミラー
60 ライトセンサ(外光検出部)
70 ハウジング
71 窓部
80 制御部(出力制御手段)
81 マイコン
90 MEMSドライバ
100 映像信号
V 虚像
D 表示画像
L 表示光
R レーザー光
G レーザー光
B レーザー光
C 合成レーザー光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザー光を発するレーザー光源と、前記レーザー光をスクリーンに走査する走査手段と、前記レーザー光源の出力を制御する出力制御手段と、前記レーザー光の光強度を検出するレーザー光検出部と、を備えた表示装置であって、
前記出力制御手段は、前記走査手段による前記レーザー光の走査位置が表示範囲内のときに画像情報に基づいて前記レーザー光源から画像形成用光を出射させ、前記走査位置が表示範囲外の所定位置のときに前記レーザー光源から検出用光を出射させると共に、
前記出力制御手段は、前記走査手段による走査位置が表示範囲外のとき、前記レーザー光源の駆動電流を閾値電流値未満の第一の電流値、及び閾値電流値以上の第二,第三の電流値で変化させ、前記レーザー光検出部で検出される光強度に基づいて電流−光出力特性を演算して得られた駆動電流で前記レーザー光源を駆動することを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記電流−光出力特性は、ゼロ点と前記第一の電流値で検出した光出力値を結ぶ線形性を有した第一の直線と、前記第二の電流値と前記第三の電流値で検出した光出力値を結ぶ線形性を有した第二の直線を有し、前記第一の直線と前記第二の直線の交点を屈曲点とし、前記屈曲点を閾値電流値とすることを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
外光強度を検出する外光検出部を備えたことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記出力制御手段は、前記外光検出部で検出される外光強度に基づいた所定の光出力値となるように、前記電流−光出力特性の演算結果から得られる駆動電流で前記レーザー光源を駆動することを特徴とする請求項3に記載の表示装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−108397(P2012−108397A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−258442(P2010−258442)
【出願日】平成22年11月19日(2010.11.19)
【出願人】(000231512)日本精機株式会社 (1,561)
【Fターム(参考)】