説明

表示装置

【課題】2D表示時及び3D表示における表示品質を向上することが可能な表示装置を提供することである。
【解決手段】
画像表示を行う表示パネルと、前記表示パネルの表示面側に配置され、シリンドリカルレンズ状に屈折率を制御して視差障壁を形成し、2D表示と3D表示とを切り替える液晶レンズパネルとを備える表示装置であって、前記液晶レンズパネルは、前記表示パネル側に配置される第1透明基板と、液晶層を介して前記第1基板と対向配置される第2透明基板と、を備え、前記第2透明基板の表示面側に形成され、当該液晶レンズパネルを透過する透過光の偏光方向を制御する第1の偏光板を備える表示装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に係わり、特に、画像を表示する表示パネルの表示面側にレンズ機能を有する液晶表示パネルを配置した液晶レンズ方式の3次元表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
眼鏡等を使用することなく裸眼による2次元(2D)表示と3次元(3D)表示とが切り替え可能な表示装置は、例えば、画像表示を行う第1の液晶表示パネルと、該第1の液晶表示パネルの表示面側(観察者側)に配置され、3D表示時には観察者の左右眼に別々の光線を入射させる視差障壁を形成する第2の液晶表示パネルとを備える構成となっている。このような2D表示と3D表示を切り替え可能な液晶表示装置では、第2の液晶表示パネルの液晶分子の配向を制御することにより、第2の液晶表示パネル内の屈折率を変化させ、表示面の上下方向に延在し左右方向に並設されるレンズ(レンチキュラレンズ、シリンドリカルレンズアレイ)領域を形成し、左右眼に対応する画素の光を観察者の視点へと振り向ける構成となっている。
【0003】
このような構成からなる液晶レンズ方式の3次元表示装置は、例えば、特許文献1に記載の立体画像表示装置がある。この特許文献1に記載の表示装置では、液晶層を介して対向配置される一対の上部透明基板及び下部透明基板にそれぞれ櫛歯状の電極が形成される構成となっている。この構成により、上部透明基板の電極及び下部透明基板の電極に印加する電圧を制御し、2D表示と3D表示を切り替え制御可能とすると共に、3D表示時における視差数を制御可能な構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−224191号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、液晶レンズ方式の3次元表示装置では、液晶レンズの屈折率分布が不完全であった。このために、3D表示時において、所定の目のみに表示される視差画像が他方の目にも見えるいわゆるクロストークの発生が懸念されている。このクロストークが発生すると、本来、見えるべきでない他方の目の画像が重なって表示されるために、3D表示の品質が大きく低下してしまうので、クロストークの低減が切望されている。
【0006】
本発明はこれらの問題点に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、液晶レンズを用いた表示装置での3D表示時におけるクロストークを低減させることが可能な技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決すべく、本発明の表示装置は、画像表示を行う表示パネルと、前記表示パネルの表示面側に配置され、シリンドリカルレンズ状に屈折率を制御して視差障壁を形成し、2D表示と3D表示とを切り替える液晶レンズパネルとを備える表示装置であって、前記液晶レンズパネルは、前記表示パネル側に配置される第1透明基板と、液晶層を介して前記第1基板と対向配置される第2透明基板と、を備え、前記第2透明基板の表示面側に形成され、当該液晶レンズパネルを透過する透過光の偏光方向を制御する第1の偏光板を備える表示装置である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、液晶レンズを用いた表示装置での3D表示時におけるクロストークを低減させることができる。
【0009】
本発明のその他の効果については、明細書全体の記載から明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態1の表示装置である液晶表示装置の全体構成を説明するための断面図である。
【図2】本発明の実施形態1の液晶表示装置における画素構成を説明するための図である。
【図3】本発明の実施形態1の液晶表示装置における第1の液晶表示パネルの副画素の構成を説明するための上面図である。
【図4】本発明の実施形態1の液晶表示装置における第2の液晶表示パネルの詳細構成を説明するための平面図である。
【図5】図4に示すA−A’線での断面図である。
【図6】本発明の実施形態1の液晶表示装置における2D表示動作を説明するための断面図である。
【図7】本発明の実施形態1の液晶表示装置における3D表示動作を説明するための断面図である。
【図8】本発明の実施形態1の液晶表示装置における第2の液晶表示パネルでの液晶レンズ特性に係わる透過軸角度の関係を説明するための図である。
【図9】本発明の実施形態1の液晶表示装置における実施例1の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。
【図10】本発明の実施形態1の液晶表示装置における実施例2の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。
【図11】本発明の実施形態1の液晶表示装置における実施例3の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。
【図12】本発明の実施形態1の液晶表示装置における実施例4の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。
【図13】本発明の実施形態2の液晶表示装置における第1の液晶表示パネルの複画素の構成を説明するための上面図である。
【図14】本発明の実施形態2の液晶表示装置における実施例5の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。
【図15】本発明の実施形態2の液晶表示装置における実施例6の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。
【図16】本発明の実施形態2の液晶表示装置における実施例7の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。
【図17】本発明の実施形態3の表示装置である液晶表示装置の概略構成を説明するための断面図である。
【図18】本発明の表示装置を備える情報機器の概略構成を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明は省略する。また、図中に示すX,Y,Zは、それぞれX軸,Y軸,Z軸を示す。
【0012】
〈実施形態1〉
図1は本発明の実施形態1の表示装置である液晶表示装置の全体構成を説明するための断面図であり、以下、図1に基づいて、実施形態1の表示装置の全体構成を説明する。ただし、以下の説明では、画像表示を行う表示パネルとして非発光型の第1の液晶表示パネル(液晶パネル)LCD1を用いる場合について説明するが、画像表示を行う表示パネルは他の非発光型の表示パネル、または有機EL表示パネルやプラズマ表示パネル等の自発光型の表示パネル等を用いる構成であってもよい。また、各薄膜の形成は公知のフォトリソグラフィー技術により可能となるので、その形成方法の詳細な説明は省略する。
【0013】
実施形態1の液晶表示装置は、画像表示用の液晶表示パネルである第1の液晶表示パネルLCD1と、透過光の屈折率を制御してレンズ(レンチキュラレンズ、シリンドリカルレンズアレイ)として機能する第2の液晶表示パネル(液晶レンズパネル)LCD2とを備える構成となっている。この構成からなる実施形態1の液晶表示装置は、図1に示すように、バックライトユニット(バックライト装置)BLUから順番に、第1の液晶表示パネルLCD1、及び第2の液晶表示パネルLCD2がそれぞれ重ねて配置されている。すなわち、第1の液晶表示パネルLCD1の表示面側(観察者側)に第2の液晶表示パネルLCD2が配置されている。このとき、第1の液晶表示パネルLCD1と第2の液晶表示パネルLCD2との位置合わせがずれるのを防止するために、第1の液晶表示パネルLCD1と第2の液晶表示パネルLCD2とは接着部材となるハイブリッド樹脂ADHにより固定されている。
【0014】
なお、ハイブリッド樹脂ADHとしては、周知の樹脂部材等からなり、第1基板SUB11,SUB21及び第2基板SUB12,SUB22として使用する透明基板(例えば、ガラス基板)と略同等の屈折率を有する部材を用いる。また、第1の液晶表示パネルLCD1とバックライトユニットBLUは周知の構成となるので、拡散板等の光学シートは省略する。さらには、第2の液晶表示パネルLCD2の表示面側に、周知の保護フィルムや前面板等、さらには周知のタッチパネル等を設ける構成であってもよい。
【0015】
実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2は、例えば、液晶分子がホモジーニアス配向された液晶表示パネルで形成されており、ガラス基板等の周知の一対の透明基板(第1基板SUB21,第2基板SUB22)が対向配置されており、該第1基板(第1透明基板)SUB21と第2基板(第2透明基板)SUB22により液晶LC2を挟持する構成となっている。また、第2の液晶表示パネルPNL2の表示面側すなわち第2基板SUB22の表示面側には偏光板(レンズ用偏光板、第1の偏光板)POL2が配置されている。なお、偏光板POL2の偏光方向については、後に詳述する。
【0016】
第1基板SUB21にはくし歯電極(線状電極、短冊状電極)が形成され、第2基板SUB22には平板状の共通電極が形成されている。くし歯電極と共通電極とが同電位の場合は、液晶層LC2に電界が印加されない状態となり、第1の液晶表示パネルLCD1からの表示光(表示画像)をそのままで透過(通過)させる2D表示となる。また、くし歯電極と共通電極とに異なる電圧いわゆる交番電圧(交流電圧)が印加され、液晶層LC2に電界が印加される場合は、第1の液晶表示パネルLCD1からの表示光を観察者の左右眼に別々に入射させる両眼視差を与えるための視差障壁となるレンズ作用を行う3D表示(裸眼3D表示)となる。このように、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2は、液晶に電界を印加しない状態においては入射光(第1の液晶表示パネルLCD1の表示光)をそのまま透過させる液晶表示パネルとして動作する。ただし、第2の液晶表示パネルLCD2としては、ホモジーニアス配向となるTN方式の液晶表示パネルがあるが、ホモジーニアス配向となる他の方式の液晶表示パネルであってもよい。
【0017】
また、実施形態1の第1の液晶表示パネルLCD1は周知のIPS(In-Plane Switching)方式の液晶表示パネルであり、液晶層LC1を介して、ガラス基板等の周知の一対の透明基板(第1基板SUB11,第2基板SUB12)が対向配置される構成となっている。第1基板SUB11には周知の薄膜トランジスタや線状電極、共通電極等が形成され、第2基板SUB12にはカラーフィルタや周知のブラックマトリクス等が形成されている。このとき、例えば、第1基板SUB11は第2基板SUB12よりも大きな透明基板で形成され、周辺部に外部との接続のための接続端子等が形成されている。また、第1基板SUB11と第2基板SUB12と固定及び液晶の封止は、第2基板SUB12の周辺部に沿って環状に塗布された周知のシール材で固定され、液晶も封止されている。さらには、第1基板SUB11のバックライト装置側(液晶側の面と対向する面)には、偏光板(下側偏光板)POL3が配置され、第2基板SUB12の表示面側(液晶側の面と対向する面)には、偏光板(上側偏光板)POL1が配置され、偏光板POL1と偏光板POL3は偏光方向が90°をなす配置、いわゆるクロスニコルに配置されている。
【0018】
ただし、実施形態1の液晶表示装置では、第2の液晶表示パネルPNL2の表示面側に偏光板POL2が配置される構成となっているので、偏光板POL1と偏光板POL2によって所望のコントラストが得られるようにすればよく、偏光板POL1または偏光板POL2には偏光度の小さい偏光板を用いることができ,偏光板POL1と偏光板POL2の偏光度を異ならせることもできる。従って、実施形態1の液晶表示装置では偏光板POL1または偏光板POL2としてフィルム状の高偏光な通常の偏光板(偏光度の大きい偏光板)を用いる構成としているが、フィルム偏光板に限らず、例えば塗布型の偏光板を用いることもできる。このような薄膜型の偏光板を用いることにより,表示装置を薄くすることができる。偏光板POL1としてこのような塗布型偏光板等の薄膜状の偏光板を用いる場合には、レンズ用の液晶層LC2と表示用の液晶層LC1とを近づけて配置することができるという格別の効果がある。また,偏光板POL2はクロストークを有効に低減できる程度の偏光度があればよく,偏光板POL1よりも偏光度が小さく透過率の高い偏光板を用いることにより,偏光板POL2を透過する光量を多くできるという格別の効果がある。
【0019】
また、第1の液晶表示パネルLCD1は、IPS方式の液晶表示パネルに限定されることはなく、TN方式の液晶表示パネル、VA(Vertical Alignment)方式の液晶表示パネル等の他の方式の液晶表示パネルを用い、第2の液晶表示パネルPNL2への入射偏光方向が所望の方向の直線偏光となるようにすればよい。例えば、この他の方式の液晶表示パネルを第1の液晶表示パネルLCD1として用いる場合において、当該第1の液晶表示パネルLCD1からの表示光の偏光方向が後に詳述する方向の直線偏光と異なる場合には、偏光板POL2と液晶層LC2との間に位相差部材を設け、偏光方向が所望の方向の直線偏光となるようにすればよい。
【0020】
図2に示すように、実施形態1の第1の液晶表示パネルLCD1では、第1基板SUB11の液晶側の面であって表示領域内には、例えば、Y方向に延在しX方向に並設される走査信号線(ゲート線)GLと、X方向に延在しY方向に並設される映像信号線(ドレイン線)DLが形成されている。このドレイン線DLとゲート線GLとで囲まれる矩形状の領域は、第2基板SUB12に形成される赤色(R),緑色(G),青色(B)のカラーフィルタに対応しており、この図2中にRGBで示す3つの副画素SPLからなる画素領域(以下、画素と略記する)PXLが、表示領域内においてマトリックス状に配置される。このとき、実施形態1においては、Y方向に長く伸びるくし歯電極PXに沿ってシリンドリカルレンズ状の液晶レンズが形成されるので、RGBの各副画素SPLもY方向に並設される構成としている。ただし、RGBの各副画素SPLの並設方向はY方向に限定されることはなく、RGBの各副画素SPLがX方向に並設される構成等の他の配列であってもよい。
【0021】
各副画素SPLは、例えば、ゲート線GLからの走査信号によってオンされる図示しない薄膜トランジスタと、このオンされた薄膜トランジスタ及び該薄膜トランジスタのソース電極に接続され、ドレイン線DLからの階調信号(階調電圧)である映像信号が供給される線状電極とを備えている。また、IPS方式の液晶表示パネルの場合には、薄膜トランジスタが形成される側の第1基板SUB11に、階調信号の電位に対して基準となる電位を有する共通信号が供給される共通電極を備える。ただし、VA方式やTN方式の液晶表示パネルの場合には、第2基板SUB12の側に、カラーフィルタ等と共に共通電極が形成される。
【0022】
なお、実施形態1の液晶表示パネルLCD1では、液晶が封入された領域の内で、赤(R),緑(G),青(B)の各副画素からなるカラー表示用の画素PXLの形成される領域が表示領域となる。従って、液晶が封入されている領域内であっても、画素が形成されておらず表示に係わらない領域は表示領域とはならない。
【0023】
〈第1の液晶表示パネルの構成〉
図3は本発明の実施形態1の液晶表示装置における第1の液晶表示パネルの副画素の構成を説明するための上面図である。以下、図3に基づいて、実施形態1の液晶表示パネルPNL1における副画素の構造を説明する。ただし、説明を簡単にするために、図3には第1基板SUB11のみを示し、周知の配向膜は省略してその配向方向(ラビング方向)のみを示す。
【0024】
図3に示すように、実施形態1の液晶表示パネルPNL1では、Y方向に延在しX方向に並設されるゲート線GLと、X方向に延在しY方向に並設されるドレイン線DLとで囲まれる領域が副画素の領域となっている。このような構成とすることにより、実施形態1の液晶表示装置では、画素をマトリクス状に形成する構成となっている。また、実施形態1の液晶表示装置では、第1基板SUB11の液晶側の面(対向面)には、例えば、ITO(Indium-Tin-Oxide)等の透明導電材料からなる図示しない平面状の共通電極が形成されている。この第1基板SUB11の共通電極は、第1基板SUB11の辺部において映像信号の基準となる共通信号を供給するコモン線に重畳されて形成され、これによりコモン線と電気的に接続されて形成されている。なお、実施形態1では、ゲート線GL及びドレイン線DLは金属薄膜で形成されるが、透明導電膜で形成してもよい。
【0025】
また、X方向に伸張されるドレイン線DLの一部において、薄膜トランジスタTFT側に延在する延在部(接続部)JCを有し、この延在部JCは薄膜トランジスタTFTのドレイン電極に接続されている。薄膜トランジスタTFTのソース電極は画素領域側に若干延在された延在部を有して形成され、該延在部は線状電極PX1と接続されるパッド部PDに至るようにして構成されている。なお、薄膜トランジスタTFTは、ゲート線GLをゲート電極としたいわゆる逆スタガ構造のMIS(Metal Insulator Semiconductor)構造のトランジスタである。また、MIS構造のトランジスタは、そのバイアスの印加によってドレイン電極とソース電極が入れ替わるように駆動するが、本明細書中においては、便宜上、ドレイン線DLと接続される側をドレイン電極、線状電極PX1と接続される側をソース電極と称する。
【0026】
第1基板SUB11の画素領域には、共通電極が形成されており、その上層に容量素子の誘電体膜として機能する図示しない絶縁膜を介して線状電極PX1が形成されている。この絶縁膜には、パッド部PDに至るコンタクトホールCHが形成され、該コンタクトホールCHを介して線状電極PX1と薄膜トランジスタTFTのソース電極とが電気的に接続される。
【0027】
実施形態1の線状電極PX1は、例えばITO等からなる透明導電膜を副画素の領域内に面状に形成した後に、バックライト光の通過領域APに対応する部分にY方向と交差する複数のスリットSLTが形成され、この構成により通過領域AP内において共通電極と重畳する線状の電極を形成している。また、実施形態1では、1つの副画素の領域内において、全てのスリットSLTの形成角度(Y方向に対する傾斜角度)が同じ角度(例えば、0〜10°)となるように形成することにより、通過領域AP内における線状電極部分の傾斜角度を同一角度とする、いわゆるシングルドメイン構成としている。この構成により、実施形態1の第1の液晶表示パネルLCD1では、図中に矢印R1で示すラビング方向に対する線状電極部分の傾斜角度を同一の角度としている。なお、実施形態1の線状電極PX1はスリットSLTの端部が開口されない構成としたが、これに限定されることはなく、その一端又は両端が開口される構成であってもよい。
【0028】
〈第2の液晶表示パネルの構成〉
図4は本発明の実施形態1の表示装置における第2の液晶表示パネルの詳細構成を説明するための平面図、図5は図4に示すA−A’線での断面図である。
【0029】
図4に示すように、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2では、第1基板SUB21の液晶面側にY方向に延在しX方向に並設される複数のくし歯電極PXが形成されている。また、第1基板SUB21には、第2の液晶表示パネルLCD2の長辺側の一方の辺縁部に沿って配線部WRがX方向に延在して形成され、この配線部WRに各くし歯電極PXの一端が電気的に接続される構成となっている。くし歯電極PX及び配線部WRは、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)やZnO(酸化亜鉛)系の透明導電膜で形成される。ただし、くし歯電極PX及び配線部WRは透明導電膜に限定されることはなく、アルミニウム等の金属薄膜のように、透明性を有しない導電性薄膜であってもよい。
【0030】
このとき、第1の液晶表示パネルLCD1からの表示光すなわち第2の偏光板POL1を通過した光の偏光方向は図中の矢印F1で示す向きとなり、この表示光が第2の液晶表示パネルLCD2に入射することとなる。従って、第2の液晶表示パネルLCD2へ入射する光(表示光)の偏光方向(入射偏光方向)すなわち偏光板POL1の透過軸方向は、各くし歯電極PXとのなす角度が80〜90°(第2の液晶表示パネルLCD2の長辺(X方向)であるシリンドリカルレンズの並設方向に対して0〜10°の角度)となる。また、この入射偏光方向F1に対して、概ね平行となるように液晶層LC2の液晶分子を配向させることによって、第2の液晶表示パネルLCD2の透過に伴う表示光の減衰を低減できる。
【0031】
一方、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2では、3D表示時におけるくし歯電極PXと重畳する液晶領域でのディスクリネーションすなわち液晶分子の配向乱れに伴う屈折率分布の乱れが生じる。また、このディスクリネーションによって、屈折率楕円体の軸方向が乱れるために、この液晶領域に入射した直線偏光の光は楕円偏光の光に変換されてしまう。このディスクリネーションによる散乱及び楕円偏光となった偏光成分がクロストークの要因となる。このディスクリネーションで発生したクロストーク成分は、楕円偏光の光となって液晶層LC2から出射される。このために、本願発明では、偏光板POL2によってこれらクロストーク成分の一部を吸収することにより、右目用の表示光と左目用の表示光とのクロストークを低減させる構成となっている。従って、第2の液晶表示パネルLCD2では、後に詳述するように、入射偏光方向F1に対して、液晶層LC2の液晶分子の配向方向(初期配向方向)及び偏光板POL2の透過軸方向を適宜設定することにより、3D表示時におけるクロストークを低減させる構成としている。なお、実施形態1の第2の液晶表示パネルPNL2の液晶分子は、入射偏光方向に対して概ね平行に配向するようなラビング処理(配向処理)がなされる構成となっている。これにより、第2の液晶表示パネルLCD2におけるラビング角度は、くし歯電極PXに対して80〜90°の角度をなす構成となり、液晶層LC2の液晶分子の長軸方向は矢印F1で示す入射偏光方向に配向される。ただし、液晶分子の配向処理はラビングに限定されることはなく、例えば、配向膜ORIにラビング処理が不要な配向膜を用いることも可能である。なお、図中の矢印F1に示すように、液晶分子の長軸方向すなわち配向方向の屈折率(異常光線の屈折率)はnとなり、これと垂直方向の屈折率(常光線の屈折率)はnとなる。
【0032】
また、図5に示すように、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2では、第1の液晶表示パネルLCD1からの光(表示光)Kが裏面側から入射される第1基板SUB21の液晶面側にくし歯電極PXが形成されている。このくし歯電極PXの上面を覆うようにして絶縁膜PAS1が形成され、その上層に配向膜ORIが形成されている。
【0033】
また、液晶層LC2を介して第1基板SUB21に対向配置される第2基板SUB22の液晶面側には、平面状(平板状)の共通電極CTが形成されている。この共通電極CTの上層には、当該共通電極CTを覆うようにして絶縁膜PAS2が形成され、その上層に配向膜ORIが形成されている。一方、第2基板SUB22の液晶面側と対向する側の面である表示面側には、偏光板POL2が形成されている。
【0034】
さらには、液晶層LC2を介して対向配置される第1基板21と第2基板SUB22との間の領域には、第1基板SUB21と第2基板SUB22との間隔(ギャップ)を所定間隔(例えば、20〜100μm程度必要)に保持するためのスペーサ部材であるスペーサビーズSBが分散されている。このスペーサビーズSBは透光性を有する樹脂材料を用いて形成されており、特に、液晶層LC2の異常光線の屈折率nと同様の屈折率を有する樹脂材料で形成される。このような樹脂材料でスペーサビーズSBを形成することにより、観察者にスペーサビーズSBを認識されにくくできる。ただし、スペーサビーズSBからの散乱光もクロストークが生じる。この散乱光も偏光状態が変化することとなるが実施形態1では、偏光板POL2によってその一部が吸収されるために、散乱によって生じるクロストークを低減することができる。
【0035】
以上の構成により、実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2を用いた3D表示時では、隣接して配置される各くし歯電極PXの間の領域にY方向に延在するシリンドリカルレンズが形成され、X方向に並設されるレンチキュラル状のシリンドリカルレンズアレイが形成される。このとき、第2の液晶表示パネルLCD2のシリンドリカルレンズアレイが形成される領域は、第1の液晶表示パネルLCD1の表示領域に対応する領域である。その結果、実施形態1の液晶表示装置では、観察者の左右両眼がX方向に並んでいる場合に、異なる画素の光すなわち異なる視点の画像を観察者の左右両眼にそれぞれ振り分けることが可能となり、立体視が可能となる。
【0036】
〈2D表示動作と3D表示動作〉
次に、図6に本発明の実施形態1の液晶表示装置における2D表示動作を説明するための断面図、図7に本発明の実施形態1の液晶表示装置における3D表示動作を説明するための断面図を示し、以下、図6及び図7に基づいて、実施形態1の液晶表示装置における表示動作を説明する。ただし、図6及び図7は、図4に示すA−A’線に対応する液晶表示装置における断面図である。また、図6及び図7では、第1基板SUB21に形成される配向膜ORIのラビング角度b1と、第2基板SUB22に形成される配向膜ORIのラビング角度b2とを等しく形成してホモジーニアス配向させると共に、ラビング角度b1,b2を偏光板POL1の透過軸角度(第1透過軸角度)a1と等しく形成することによって、くし歯電極PXとの角度が直角に近くなる構成としている。さらには、図6及び図7においては、説明を簡単にするために、配向膜ORI及び絶縁膜PAS1,PAS2等は省略している。
【0037】
実施形態1の第2の液晶表示パネルLCD2は、図6及び図7に示すように、第1基板SUB21の液晶面側にくし歯電極PXが形成され、第2基板SUB22の液晶面側に共通電極CTが形成されている。また、X方向に隣接するくし歯電極PXとの間には2個の画素PXLが配置される構成となっており、一方の画素PXLが左目用の画素PXL(L)となり、他方の画素PXLが右目用の画素PXL(R)となる。隣接するくし歯電極PXの間隔すなわちX方向のくし歯電極ピッチQは,左目用の画素PXL(L)から右目用の画素PXL(R)までの間隔すなわちX方向の画素ピッチP、視距離,LC2とLC1との距離,視点数等によって決まり,実施形態1のように2視点の場合には、Q≒2Pを満たす画素ピッチPとくし歯電極ピッチQで、実施形態1の液晶表示装置が形成されている。
【0038】
図6に示すように、くし歯電極PXと共通電極CTとの間の電位差が0(ゼロ)ボルト、すなわちくし歯電極PXと共通電極CTとに同じ電圧が印加される2D表示時には、第2の液晶表示パネルLCD2における液晶分子LC2は初期配向状態のままとなる。このとき、液晶層LC2の液晶分子の配向方向(長軸方向(矢印F2で示す異常光線の屈折率nの方向))は、矢印F1で示す入射偏光方向すなわち偏光板POL1の第1透過軸角度a1と平行となる。この場合、入射光に対して液晶層LC2は作用しないので、液晶層LC2に入射した光はそのまま透過し、偏光板POL2を介して出射する。その結果、第1の液晶表示パネルLCD1の全ての画素PXLからの表示光(図中に矢印で示す)が観察者の左右の目に共に到達し、2D表示の画像が認識されることとなる。なお、液晶層LC2にTN液晶を用いて液晶分子がツイストしている場合も同様であり、液晶層LC2に入射した光は液晶層LC2の全面で同様の作用を受けるために2D表示となる。
【0039】
一方、図7に示すように、くし歯電極PXと共通電極CTとの間に交流電圧(交番電圧)Vが印加され、液晶層LC2を介して対向配置される各くし歯電極PXと共通電極CTの間に電界が生じる場合、この電界強度に応じて液晶分子の配列方向が制御され、液晶層LC2に配向分布が生じる。この配向分布では、くし歯電極PXと共通電極CTとが重畳する領域の液晶分子は立ち上がり、くし歯電極PXの近傍の液晶層LC2の屈折率が小さくなるため、液晶層LC2がくし歯電極の間の領域を中心とする凸レンズとして作用する。その結果、第2の液晶表示パネルLCD2には、Y方向に延在しX方向に並設される複数のシリンドリカルレンズが形成される。
【0040】
ここで、2視点の場合、シリンドリカルレンズの並設方向すなわちX方向に右目用の画素PXL(R)と左目用の画素PXL(L)とが交互に配置されている。その結果、図7中に矢印で示すように、右目用の画素PXL(R)からの表示光は図7中の焦点位置REで示す観察者の右目のみに到達する。同様にして、左目用の画素PXL(L)からの表示光は観察者の左目のみに到達する。すなわち、右目用の画素PXL(R)からの表示光と、左目用の画素PXL(L)からの表示光とが分離して結像され、3D表示が得られることとなる。なお、液晶層LC2にTN液晶を用いて液晶分子がツイストしている場合も同様であり、光路長が長くなるくし歯電極PXの間を中心とする凸レンズとして作用するので、3D表示となる。また、前述の説明では2視点の場合について説明したが、3視点以上の多視点の場合であっても前述と同様に本願発明を適用可能である。
【0041】
ただし、本願発明では、位相差を持つ第2の液晶表示パネルPNL2の表示面側に偏光板POL2を設ける構成のため、液晶層LC2の位相差に起因する色づきが生じやすい。この色付きを小さくするためには、液晶層LC2のセルギャップdを大きくして大きな位相差を持つようにすることが望ましい。
【0042】
例えば、表示に用いる主要波長域の短波長側の波長をλ1、長波長側の波長をλ2として、液晶材料のΔn(屈折率異方性)の波長λ依存性を考慮すると、下記の式(1)となる。
【数1】

【0043】
ただし、Mは1以上の整数であり、さらには2以上が望ましい。
【0044】
ここで、Δnの波長分散が小さい場合には、λ<λ<λの波長λを用いて、式(2)とすればよい。
【数2】

【0045】
例えば、式(2)において、短波長側の波長λ1,長波長側の波長λ2として、λ1=450nm,λ2=600nmとし、λとしては、視感度の高い550nmとすればよい。また、Δn=0.2の場合には式(2)を用いて、M=1とするためには、セルギャップdを9μm以上とすることが望ましい。さらには、M=2とするためには、セルギャップdを18μm以上とすることが望ましい。
【0046】
図8は本発明の実施形態1の液晶表示装置における第2の液晶表示パネルでの液晶レンズ特性に係わる透過軸角度の関係を説明するための図であり、以下、図8に基づいて、実施形態1の第2の液晶表示パネルPNL2におけるレンズ特性について詳細に説明する。ただし、以下の説明において、矢印PL1は偏光板POL1の透過軸、矢印PL2は第1基板SUB21のラビング軸(第1ラビング軸)、矢印PL3は第2基板SUB22のラビング軸(第2ラビング軸)、矢印PL4は偏光板POL2の透過軸をそれぞれ示す。
【0047】
図8に示すように、第1の液晶表示パネルLCD1から出射された光(表示光)は、第1の液晶表示パネルLCD1の表示面側に貼り付けされる偏光板POL1で直線偏光された光となって、第2の液晶表示パネルPNL2を構成する第1基板SUB21を介して液晶層LC2に入射する。このとき、実施形態1の第1の液晶表示パネルLCD1では、偏光板POL1の透過軸PL1の角度(第1透過軸角度a1)がX方向に対して、0°<a1≦10°の範囲(好適には、3°≦a1≦8°の範囲)となるように形成されている。従って、第1基板SUB21に入射する表示光は、X方向に対して第1透過軸角度a1が0°<a1≦10°の範囲の直線偏光された光となる。
【0048】
また、第1基板SUB21の配向膜ORIには、第1ラビング軸PL2の角度(第1ラビング角度b1)がX方向に対して、0°≦b1≦10°の範囲(好適には、3°≦b1≦8°の範囲)となるように形成されている。従って、第1基板SUB21に入射した表示光は、第1ラビング角度b1の液晶分子の方向に沿って液晶層LC2に入射することとなる。液晶層LC2に入射した表示光は、前述する2D表示または3D表示に対応する液晶分子の配列方向に従った変調や偏光等がなされる。ただし、発明者らの実験によれば、第1ラビング角度b1を0°とした場合、くし歯電極PXの付近にドメインが発生しやすいことが分かった。このドメインの発生を抑制するためには、第1ラビング角度b1は0°よりも大きく形成することが望ましい。
【0049】
液晶層LC2で変調された表示光は、第2基板SUB22の配向膜ORIに形成されるラビング方向に配向される液晶分子の向きに沿って液晶層LC2から第2基板SUB22に入射される。このとき、第2基板SUB22の配向膜ORIにも所定のラビング角度(第2ラビング角度)b2のラビング処理がなされる構成となっているので、第2ラビング角度b2の向きに沿って配向される液晶分子に沿った第2ラビング軸PL3の偏光方向の表示光が液晶層LC2から第2基板SUB22に出射される。このとき、液晶層LC2から出射される表示光すなわち第2基板SUB22に液晶層LC2から入射される表示光は、スペーサ部材であるスペーサビーズSBを表示光が透過することに伴う偏光や3D表示時におけるディスクリネーションに伴う偏光等が加わった表示光となる。
【0050】
液晶層LC2の側から第2基板SUB22に入射した表示光は当該第2基板SUB22の表示面から出射され、この表示面側に貼り付けされる偏光板POL2に入射することとなる。このとき、偏光板POL2の透過軸PL4の角度(第2透過軸角度a2)もX方向に対して、0°<a2≦10°の範囲(好適には、3°≦a2≦8°の範囲)となるように形成されている。従って、偏光板POL2から表示面側に出射される表示光すなわち第2の液晶表示パネルPNL2から出射される表示光は、第2透過軸角度a2に一致する直線偏光の表示光となる。その結果、実施形態1の液晶表示装置では、3D表示時においも観察者の左右の目に対応した画素からの視差画像がそれぞれの対向する目に入射することとなるので、クロストークの発生を抑制することができ、3D表示の画像品質が大きく向上することができる。
【0051】
また、第1基板SUB21のラビング軸PL2、第2基板SUB22のラビング軸PL3、及び偏光板POL2の透過軸PL4に合わせずれが生じた場合であっても、これら合わせずれによって生じるクロストークは偏光板POL2で吸収されるために、クロストークはほとんど増加しない。その結果、第1基板SUB21のラビング軸PL2、第2基板SUB22のラビング軸PL3、及び偏光板POL2の透過軸PL4の軸ずれのマージンを大きくできるという格別の効果を得ることができる。
【0052】
また、実施形態1の液晶表示装置では、表示面側に偏光板POL2が配置される構成となっているので、表示面側に光(外光)が照射された場合であっても、偏光板POL2の透過軸PL4の方向すなわち第2透過軸角度a2に一致しない光は偏光板POL2によって吸収されることとなる。さらに、偏光板に付加されたUVカット特性により,液晶を劣化させることとなるUV光が液晶層LC2に到達することを防止できため,UVカットフィルム等を別途追加することなく、液晶層LC2の劣化を大幅に低減させ、液晶表示装置の信頼性を大幅に向上できるという格別の効果を得ることができる。
【0053】
また、図8に示す第2の液晶表示パネルでの液晶レンズ特性に係わる透過軸角度の関係においては、第2ラビング角度b2=第2透過軸角度a2とすることにより、偏光板POL2を透過する光量を最大にすることができるので、輝度を高くすることができる。また、
第1透過軸角度a1=第2透過軸角度a2とした場合には、クロストークを低減することができる。また、第1ラビング角度b1=第2ラビング角度b2とした場合には、液晶層LC2内で表示光の偏光方向が回転しないため、偏光板POL2を透過する光量を大きくすることができる。一方、第1ラビング角度b1≠第2ラビング角度b2とした場合には、液晶層LC2内で表示光の偏光方向を回転できるので、液晶レンズとなる第2の液晶表示パネルPNL2から出射される表示光の偏光方向を任意の方向に設定することができる。
【0054】
また、第1透過軸角度a1≠0°の場合、第1透過軸角度a1≧第1ラビング角度b1≧0°を満たすことが望ましく、さらには、第1透過軸角度a1=第1ラビング角度b1とすることがさらに望ましい。また、第2の液晶表示パネルPNL2でのドメインの発生を抑制するためには、第1ラビング角度b1≠0°とすることが望ましく、第1ラビング角度b1は1°以上10°以下、さらには3°〜8°とするのが好適である。さらには、第1ラビング角度b1=第2ラビング角度b2=第2透過軸角度a2の場合には、偏光板POL2の透過軸PL4が偏光板POL3の透過軸とクロスニコルをなすように配置することにより、偏光板POL1を用いなくても2D表示及び3D表示を行うことができる。
【0055】
以上説明したように、実施形態1の液晶表示装置では、画像表示を行う第1の液晶表示パネルLCD1と、この第1の液晶表示パネルLCD1の表示面側に、シリンドリカルレンズ状に屈折率を制御して視差障壁を形成し、2D表示と3D表示とを切り替える第2の液晶表示パネルPNL2を配置すると共に、第2の液晶表示パネルLCD2を形成する第2基板SUB22の表示面側に、第2の液晶表示パネルPNL2を透過する表示光の偏光方向を制御する偏光板POL2を配置する構成としているので、3D表示時においも観察者の左右の目に対応した画素からの視差画像がそれぞれの対向する目に入射することとなるので、クロストークの発生を抑制することができ、3D表示の画像品質が大きく向上することができる。
【0056】
また、後述するように、偏光板POL1からの直線偏光がPOL2偏光板2を透過する際に、光の損失が小さくなるように偏光板POL2の透過軸を配置することにより、偏光板POL2を配置することによる輝度低下を小さくできる。これにより、第2の液晶表示パネルPNL2をオンして3D表示を行った場合においても、第2の液晶表示パネルPNL2による偏光方向の変化を小さくできるので、2D表示時と透過率はほとんど変化しない構成となり、2D表示時と3D表示時との輝度変化を小さくできる。特に、液晶バリアを用いたパララックスバリア方式では、3D時にバリア部で遮光し光を吸収するために、3D表示の輝度は2D表示時の半分以下に低下してしまうことが知られている。
【0057】
以下、実施例1〜4に代表的な第1透過軸角度a1、第2透過軸角度a2、第1ラビング角度b1、及び第2ラビング角度b2の液晶レンズ特性に係わる透過軸角度を有する液晶表示装置を示す。
【実施例1】
【0058】
図9は本発明の実施形態1の液晶表示装置における実施例1の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。ただし、実施例1の液晶表示装置は、第1透過軸角度a1、第2透過軸角度a2、第1ラビング角度b1、及び第2ラビング角度b2が全て等しい角度に形成される、すなわち、a1=a2=b1=b2の場合である。
【0059】
偏光板POL1を透過した表示光すなわち第1の液晶表示パネルLCD1から出射される表示光は直線偏光である。このとき、実施例1の構成では、第1ラビング角度b1と第1透過軸角度a1とが等しく形成されているので、直線偏光の表示光は液晶層LC2に入射する際に楕円偏光の表示光とならず、直線偏光の状態で液晶層LC2を進行することとなる。その結果、第1の液晶表示パネルLCD1から出射された後に、液晶層LC2に入射される表示光の光量を最大とすることができる。
【0060】
また、実施例1の構成では、第1ラビング角度b1と第2ラビング角度b2とが等しく形成されているので、液晶層LC2に入射した表示光は偏光方向を変化させることなく当該液晶層LC2を進行することとなる。さらには、第2ラビング角度b2と第2透過軸角度a2とが等しく形成されているので、液晶層LC2を直線偏光の状態で進行した表示光は偏光板POL2を介して、そのまま直線偏光の表示光として出射されることとなり、偏光板POL2を透過する表示光を最大とすることができる。一方、液晶層LC2を進行する際に、スペーサビーズSBや3D表示時のディスクリネーション(画素電極PXと重畳する領域の液晶分布の乱れに)等により偏光方向が変化した表示光や楕円偏光に変換された表示光は、第2透過軸角度a2と平行な表示光成分(表示光の偏光成分)のみが偏光板POL2を通過して出射されることとなる。すなわち、偏光方向が変化した光や楕円偏光に変換された表示光の内で、第2透過軸角度a2と平行でない偏光成分は偏光板POL2に吸収されることとなる。
【0061】
このように、実施例1の液晶表示装置では、第2の液晶表示パネルPNL2に直線偏光で入射した表示光の直線偏光を保持して通過させることができるので、第2の液晶表示パネルPNL2を通過する表示光の光量を最大にすることができると共に、第2の液晶表示パネルPNL2から照射される表示光に含まれるクロストークを大幅に低減できる。その結果、2D表示から3D表示に切り替えた際の明るさの減少を抑えつつ、3D表示品質を向上させることができる。従って、シングルドメイン構成の液晶表示装置においては、実施例1の第1透過軸角度a1、第2透過軸角度a2、第1ラビング角度b1、及び第2ラビング角度b2が全て等しい角度に形成される場合が最も好適である。
【0062】
なお、第1透過軸角度a1、第2透過軸角度a2、第1ラビング角度b1、及び第2ラビング角度b2は、透過率及びクロストークに与える影響が小さければ等しいとみなしてよく、例えば±1°の範囲であれば等しいとみなすことができる。
【実施例2】
【0063】
図10は本発明の実施形態1の液晶表示装置における実施例2の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。ただし、実施例2の液晶表示装置は、第1透過軸角度a1>第1ラビング角度b1≧0°であり、かつ第2透過軸角度a2=第2ラビング角度b2に形成される。
【0064】
第1透過軸角度a1が第1ラビング角度b1よりも大きい角度すなわち第1透過軸角度a1と第1ラビング角度b1とが異なる角度で形成されているので、偏光板POL1を透過した直線偏光の表示光は液晶層LC2に入射する際に楕円偏光の表示光となる。このとき、第1ラビング角度b1をより小さく形成してラビング方向が画素電極PXの延在方向に対して垂直に近い構成とすることにより、液晶層LC2の屈折率異方性を有効に活用できるので、3D表示時における画素電極PX近傍の屈折率と、一対の画素電極PXとの中間領域の屈折率との差を大きく形成することができる。その結果、第2の液晶表示パネルPNL2による液晶レンズの性能を向上できる、すなわち焦点距離を短くすることができるので、第2の液晶表示パネルPNL2の厚さを薄くできるという格別の効果を得ることができる。従って、第1ラビング角度b1を小さく形成してラビング方向が画素電極PXの延在方向に対して垂直に近い構成とすることが好ましい。
【0065】
第1ラビング角度b1と第2ラビング角度b2とが異なるので、液晶層LC2の液晶分子は捩れた配向となっている。従って、液晶層LC2に入射した表示光は、第1ラビング角度b1と第2ラビング角度b2とに応じたツイスト角度(捩れ角度)に沿って旋光しながら当該液晶層LC2を進行した後に、液晶層LC2から出射される。
【0066】
この液晶層LC2から出射した楕円偏光の表示光は、第2基板SUB22の表示面側に貼り付けされる偏光板POL2を介して、第2透過軸角度a2と平行な偏光成分の表示光のみが出射されることとなる。すなわち、第2透過軸角度a2と平行でない偏光成分の表示光は、スペーサビーズSBや3D表示時のディスクリネーションにより偏光方向が変化した表示光と共に、偏光板POL2で吸収されることとなる。このとき、実施例2の構成では、第2ラビング角度b2と第2透過軸角度a2とが等しく形成されているので、実施例1と同様に、偏光板POL2を通過する表示光を最大とすることができる。
【0067】
さらには、第2ラビング角度b2に垂直な偏光成分は、3D表示時において、液晶層LC2の液晶分子から受けるレンズ作用が小さいためにクロストークとなる。このとき、実施例2の構成では、第2ラビング角度b2と第2透過軸角度a2とが等しく形成されているので、3D表示時において表示光のクロストークとなる偏光成分を偏光板POL2で吸収することができるという格別の効果を得ることができる。
【0068】
このように、実施例2の液晶表示装置においても、偏光板POL2により第2の液晶表示パネルPNL2から照射される表示光に含まれるクロストークを大幅に低減できるので、3D表示品質を向上させることができる。
【実施例3】
【0069】
図11は本発明の実施形態1の液晶表示装置における実施例3の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。ただし、実施例3の液晶表示装置は、第1透過軸角度a1>第1ラビング角度b1≧0°であり、かつ第1透過軸角度a1=第2透過軸角度a2に形成される。
【0070】
第1透過軸角度a1が第1ラビング角度b1よりも大きい角度すなわち第1透過軸角度a1と第1ラビング角度b1とが異なる角度で形成されているので、実施例2と同様に、偏光板POL1を透過した直線偏光の表示光は液晶層LC2に入射する際に楕円偏光の表示光となる。このとき、実施例2と同様に、第1ラビング角度b1をより小さく形成してラビング方向が画素電極PXの延在方向に対して垂直に近い構成とすることにより、第2の液晶表示パネルPNL2による液晶レンズの性能を向上できる、すなわち焦点距離を短くすることができるので、第2の液晶表示パネルPNL2の厚さを薄くできるという格別の効果を得ることができる。従って、実施例3においても、第1ラビング角度b1を小さく形成してラビング方向が画素電極PXの延在方向に対して垂直に近い構成とすることが好ましい。
【0071】
液晶層LC2に入射した表示光は第1ラビング角度b1と第2ラビング角度b2とに応じた楕円偏光がなされて、当該液晶層LC2を進行することとなる。この液晶層LC2から出射した楕円偏光の表示光は、第2基板SUB22の表示面側に貼り付けされる偏光板POL2を介して、第2透過軸角度a2と平行な偏光成分の表示光のみが出射されることとなる。また、第2透過軸角度a2と平行でない偏光成分の表示光は、スペーサビーズSBや3D表示時のディスクリネーションにより偏光方向が変化した表示光と共に、偏光板POL2で吸収されることとなる。このとき、実施例3の構成では、第1透過軸角度a1と第2透過軸角度a2とが同じ角度で形成されているので、第2の液晶表示パネルPNL2を通過することに伴う表示光のクロストークとなる偏光成分(クロストーク成分)を吸収する効果を大きくすることができ、クロストークを大きく低減できる。ただし、第2透過軸角度a2と第2ラビング角度b2とが異なる角度で形成されているので、液晶層LC2から出射された表示光の内で、偏光板POL2を透過する光量は減少することとなる。
【0072】
このように、実施例3の液晶表示装置においても、偏光板POL2により第2の液晶表示パネルPNL2から照射される表示光に含まれるクロストークを大幅に低減できるので、3D表示品質を向上させることができる。
【実施例4】
【0073】
図12は本発明の実施形態1の液晶表示装置における実施例4の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。ただし、実施例4の液晶表示装置は、第1透過軸角度a1=第1ラビング角度b1、第1ラビング角度b1≠第2ラビング角度b2、並びに第2ラビング角度b2=第2透過軸角度a2に形成される。
【0074】
偏光板POL1を透過した表示光すなわち第1の液晶表示パネルLCD1から出射される表示光は直線偏光である。このとき、実施例4の構成では、第1ラビング角度b1と第1透過軸角度a1とが等しく形成されているので、直線偏光の表示光は液晶層LC2に入射する際に楕円偏光の表示光とならず、直線偏光の状態で液晶層LC2を進行することとなる。その結果、第1の液晶表示パネルLCD1から出射された後に、液晶層LC2に入射される表示光の光量を最大とすることができる。
【0075】
実施例4においても、第1ラビング角度b1と第2ラビング角度b2とが異なるので、液晶層LC2の液晶分子は捩れた配向となっている。従って、液晶層LC2に入射した表示光は第1ラビング角度b1と第2ラビング角度b2とに応じたツイスト角度に沿って旋光し、直線偏光の偏光面が回転しながら当該液晶層LC2を進行して液晶層LC2から出射される。この液晶層LC2から出射した直線偏光の表示光は、第2基板SUB22の表示面側に貼り付けされる偏光板POL2を介して、表示光として出射される。このとき、第2ラビング角度b2と第2透過軸角度a2とが等しく形成されているので、直線偏光の偏光面が回転しながら液晶層LC2を直線偏光の状態で進行した表示光は偏光板POL2を介して、第2透過軸角度a2と同じ角度の直線偏光の表示光として出射されることとなり、偏光板POL2を透過する表示光を最大とすることができる。一方、液晶層LC2を進行する際に、スペーサビーズSBや3D表示時のディスクリネーション(画素電極PXと重畳する領域の液晶分布の乱れに)等により偏光方向が変化した表示光や楕円偏光に変換された表示光は、第2透過軸角度a2と平行な表示光成分のみが偏光板POL2を通過して出射されることとなり、第2透過軸角度a2と平行でない偏光成分は偏光板POL2に吸収されることとなる。
【0076】
従って、実施例4の液晶表示装置においても、偏光板POL2により第2の液晶表示パネルPNL2から照射される表示光に含まれるクロストークを大幅に低減できるので、3D表示品質を向上させることができる。
【0077】
また、実施例4の液晶表示装置においては、第2の液晶表示パネルPNL2の表示面側の第2ラビング角度b2及び第2ラビング角度b2と同じ角度の第2透過軸角度a2を適宜所定の角度とすることにより、当該第2の液晶表示パネルPNL2に入射される表示光の光量を減少させることなく、その直線偏光の方向を所定の角度とすることができる。例えば、一般的な偏光サングラスは透過軸方向が水平面に対して縦方向(図中のX方向に対して90°)となるように形成されているので、第2透過軸角度a2を70°〜90°とすることにより、偏光サングラスをかけていても明るい3D画像及び2D画像を見ることができるという格別の効果を得ることができる。
【0078】
さらには、第2ラビング角度b2=第2透過軸角度a2を30°〜60°程度、望ましくは45°で実施例4の液晶表示装置を形成することにより、偏光サングラスをかけていても表示を見ることができる。また、実施例4の構成の液晶表示装置を備えるディスプレイ装置を形成し、このディスプレイ装置の表示部を面内方向に回転可能な機構を設けた場合においても、表示部を90°回転させて縦置きとした場合であっても偏光サングラスをかけて表示画像を見ることができるという格別の効果を得られる。
【0079】
〈実施形態2〉
図13は本発明の実施形態2の液晶表示装置における第1の液晶表示パネルの複画素の構成を説明するための上面図である。以下、図13に基づいて、実施形態1の液晶表示パネルPNL1における副画素の構造を説明する。ただし、実施形態2の第1の液晶表示パネルLCD1は、線状電極PX1及びスリットSLT並びにラビング方向R2が異なるのみで、他の構成は実施形態1の第1の液晶表示パネルLCD1と同様の構成となる。従って、以下の説明では、線状電極PX1及びスリットSLT並びにラビング方向R2について詳細に説明する。
【0080】
図13に示すように、実施形態2の液晶表示装置の線状電極PX1は、実施形態1と同様に、バックライト光の通過領域APに対応する部分にX方向と交差する複数のスリットSLTが形成されている。この構成により、通過領域AP内において共通電極CTと重畳する線状(櫛歯状)の電極を形成している。特に、実施形態2の液晶表示装置では、1つの副画素の領域内において、薄膜トランジスタTFTに近い領域と遠い領域との2つの領域を設け、2つの領域でスリットSLTの形成角度(X方向に対する傾斜角度)が異なる角度となるように形成することにより、通過領域AP内における線状電極PX1の傾斜角度を異なる角度としている。このとき、薄膜トランジスタTFTに近い領域と遠い領域との2つの領域における液晶分子の配向方向(初期配向方向)を揃える構成とするために、矢印R2で示すラビング処理がなされている。このようなマルチドメイン構成とすることにより、スリットSLTが形成される領域における透過率を向上させると共に、視角依存性を緩和させている。なお、実施形態2の画素電極PXはスリットSLTの端部が開口されない構成としたが、実施形態1と同様に、その一端又は両端が開口される構成であってもよい。
【0081】
前述する構成からなる実施形態2の第1の液晶表示パネルPNL1の表示面側には、実施形態1と同様の第2の液晶表示パネルPNL2が配置される構成となっているので、実施形態1と同様の効果を得ることができる。また、実施形態2の第1の液晶表示パネルPNL1では、各副画素がマルチドメイン構成となっているので、視角依存性を向上できる。
【0082】
以下、実施例5〜7に代表的な第1透過軸角度a1、第2透過軸角度a2、第1ラビング角度b1、及び第2ラビング角度b2の液晶レンズ特性に係わる透過軸角度を有する液晶表示装置を示す。なお、以下の実施例5〜7においても、第1透過軸角度a1、第2透過軸角度a2、第1ラビング角度b1、及び第2ラビング角度b2は、透過率及びクロストークに与える影響が小さければ等しいとみなしてよく、例えば±1°の範囲であれば等しいとみなすことができる。
【実施例5】
【0083】
図14は本発明の実施形態2の液晶表示装置における実施例5の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。ただし、実施形態2の液晶表示装置はマルチドメイン構成となっているので、第1透過軸角度a1は0°である。また、実施例5の液晶表示装置では、第1透過軸角度a1≠第1ラビング角度b1、かつ第1ラビング角度b1=第2ラビング角度b2=第2透過軸角度a2に形成される。
【0084】
第1透過軸角度a1と第1ラビング角度b1とが異なる角度で形成されているので、偏光板POL1を透過した直線偏光の表示光は液晶層LC2に入射する際に楕円偏光の表示光となる。このとき、第1ラビング角度b1は0°とはならないので、第2の液晶表示パネルPNL2の画素電極PXの近傍で発生するドメインを防止できる。また、実施例5の構成では、第1ラビング角度b1と第2ラビング角度b2とが等しく形成されているので、液晶層LC2に入射した表示光は偏光方向を変化させることなく当該液晶層LC2を進行して、液晶層LC2から出射される。
【0085】
この液晶層LC2から出射した楕円偏光の表示光は、第2基板SUB22の表示面側に貼り付けされる偏光板POL2を介して、第2透過軸角度a2と平行な偏光成分の表示光のみが出射されることとなる。すなわち、第2透過軸角度a2と平行でない偏光成分の表示光は、スペーサビーズSBや3D表示時のディスクリネーションにより偏光方向が変化した表示光と共に、偏光板POL2で吸収されることとなる。このとき、実施例5の構成では、第2ラビング角度b2と第2透過軸角度a2とが等しく形成されているので、偏光板POL2を通過する表示光を最大とすることができる。
【0086】
さらには、第2ラビング角度b2に垂直な偏光成分は、3D表示時において、液晶層L2の液晶分子から受けるレンズ作用が小さいためにクロストークとなる。このとき、実施例2の構成では、第2ラビング角度b2と第2透過軸角度a2とが等しく形成されているので、3D表示時において表示光のクロストークとなる偏光成分を偏光板POL2で吸収することができるという格別の効果を得ることができる。
【0087】
このように、実施例5の液晶表示装置においても、偏光板POL2により第2の液晶表示パネルPNL2から照射される表示光に含まれるクロストークを大幅に低減できるので、3D表示品質を向上させることができる。
【実施例6】
【0088】
図15は本発明の実施形態2の液晶表示装置における実施例6の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。ただし、実施例6の液晶表示装置では、第1透過軸角度a1=第2透過軸角度a2=0°、第1透過軸角度a1≠第1ラビング角度b1、第1ラビング角度b1=第2ラビング角度b2、かつ第2ラビング角度b2=第2透過軸角度a2に形成される。
【0089】
偏光板POL1を透過した表示光すなわち第1の液晶表示パネルLCD1から出射される表示光は直線偏光である。このとき、実施例6の構成においても実施例5と同様に、第1ラビング角度b1と第1透過軸角度a1とが異なる角度で形成されているので、偏光板POL1を透過した直線偏光の表示光は液晶層LC2に入射する際に楕円偏光の表示光となる。このとき、第1ラビング角度b1は0°とはならないので、第2の液晶表示パネルPNL2の画素電極PXの近傍で発生するドメインを防止できる。また、実施例6の構成においても、第1ラビング角度b1と第2ラビング角度b2とが等しく形成されているので、液晶層LC2に入射した表示光は偏光方向を変化させることなく当該液晶層LC2を進行して、液晶層LC2から出射される。
【0090】
液晶層LC2から出射した楕円偏光の表示光は、第2基板SUB22の表示面側に貼り付けされる偏光板POL2を介して、第2透過軸角度a2と平行な偏光成分の表示光のみが出射されることとなる。また、第2透過軸角度a2と平行でない偏光成分の表示光は、スペーサビーズSBや3D表示時のディスクリネーションにより偏光方向が変化した表示光と共に、偏光板POL2で吸収されることとなる。このとき、実施例6の構成では、第1透過軸角度a1と第2透過軸角度a2とが同じ角度すなわち0°で形成されているので、第2の液晶表示パネルPNL2を通過することに伴う表示光のクロストークとなる偏光成分(クロストーク成分)を吸収する効果を大きくすることができ、クロストークを大きく低減できる。ただし、第2透過軸角度a2と第2ラビング角度b2とが異なる角度で形成されているので、液晶層LC2から出射された表示光の内で、偏光板POL2を透過する光量は減少することとなる。
【0091】
このように、実施例6の液晶表示装置においても、偏光板POL2により第2の液晶表示パネルPNL2から照射される表示光に含まれるクロストークを大幅に低減できるので、3D表示品質を向上させることができる。
【実施例7】
【0092】
図16は本発明の実施形態2の液晶表示装置における実施例7の各透過軸角度と各ラビング角度との関係を説明するための図である。ただし、実施例7の液晶表示装置では、第1透過軸角度a1、第2透過軸角度a2、第1ラビング角度b1、及び第2ラビング角度b2が全て0°で形成される、すなわち、a1=a2=b1=b2=0°の場合である。
【0093】
偏光板POL1を透過した表示光すなわち第1の液晶表示パネルLCD1から出射される表示光は直線偏光である。このとき、実施例7の構成では、第1ラビング角度b1と第1透過軸角度a1とが0°の等しい角度で形成されているので、直線偏光の表示光は液晶層LC2に入射する際に楕円偏光の表示光とならず、直線偏光の状態で液晶層LC2を進行することとなる。その結果、第1の液晶表示パネルLCD1から出射された後に、液晶層LC2に入射される表示光の光量を最大とすることができる。
【0094】
また、実施例7の構成では、第1ラビング角度b1と第2ラビング角度b2とも等しく0°で形成されているので、液晶層LC2に入射した表示光は偏光方向を変化させることなく当該液晶層LC2を進行することとなる。さらには、第2ラビング角度b2と第2透過軸角度a2とが0°で等しく形成されているので、液晶層LC2を直線偏光の状態で進行した表示光は偏光板POL2を介して、そのまま直線偏光の表示光として出射されることとなり、偏光板POL2を透過する表示光を最大とすることができる。
【0095】
一方、液晶層LC2を進行する際に、スペーサビーズSBや3D表示時のディスクリネーション(画素電極PXと重畳する領域の液晶分布の乱れに)等により偏光方向が変化した表示光や楕円偏光に変換された表示光は、第2透過軸角度a2と平行な表示光成分(表示光の偏光成分)のみが偏光板POL2を通過して出射されることとなる。すなわち、偏光方向が変化した光や楕円偏光に変換された表示光の内で、第2透過軸角度a2と平行でない偏光成分は偏光板POL2に吸収されることとなる。
【0096】
このように、実施例7の液晶表示装置では、第2の液晶表示パネルPNL2に直線偏光で入射した表示光の直線偏光を保持して通過させることができるので、第2の液晶表示パネルPNL2を通過する表示光の光量を最大にすることができると共に、第2の液晶表示パネルPNL2から照射される表示光に含まれるクロストークを大幅に低減できる。その結果、2D表示から3D表示に切り替えた際の明るさの減少を抑えつつ、3D表示品質を向上させることができる。従って、シングルドメイン構成の液晶表示装置においては、実施例1の第1透過軸角度a1、第2透過軸角度a2、第1ラビング角度b1、及び第2ラビング角度b2が全て等しい角度である0°で形成される場合が最も好適である。
【0097】
〈実施形態3〉
図17は本発明の実施形態3の表示装置である液晶表示装置の概略構成を説明するための断面図であり、第1の液晶表示パネルLCD1を構成する第2基板SUB12の表示面側にくし歯電極PX及び偏光板POL4が形成される構成を除く他の構成は、実施形態1の第1の液晶表示パネルLCD1と同様の構成である。
【0098】
図17に示すように、実施形態3の構成では、バックライトユニットBLUの側から順に、偏光POL3、第1基板SUB11、液晶層LC1、第2基板SUB12、液晶層LC2、第2基板SUB22、及び偏光板POL2が積層される構成となっている。この構成からなる実施形態3の液晶表示装置では、液晶層LC1を介して第1基板SUB11と第2基板SUB12とが対向配置され、第1の液晶表示パネルLCD1を形成している。さらには、第1の液晶表示パネルLCD1の表示面側に配置される第2基板SUB12の表示側すなわちカラーフィルタCFやブラックマトリクスBMが形成される第2基板SUB12の表示面側には、くし歯電極PX及び内蔵偏光板POL4が形成されている。この構成からなる第2基板SUB12は液晶層LC2を介して第2基板SUB22が配置され、第2の液晶表示パネルPNL2を形成する構成となっている。すなわち、実施形態3の液晶表示装置では、1枚の透明基板(第2基板SUB12)を用いることによって、第1の液晶表示パネルLCD1と第2の液晶表示パネルPNL2とを形成する構成となっている。
【0099】
このような構成からなる第2の液晶表示パネルPNL2の表示面側には、くし歯電極PX及び該くし歯電極PXを覆うように形成される内蔵偏光板POL4が形成され、該内蔵偏光板POL4の表面を覆うようにして、図示しない配向膜が形成されている。このような内蔵偏光板POL4は、例えば、塗布型偏光板あるいはワイヤーグリッド偏光子を用いることにより、第2基板SUB12の表面に形成可能である。なお、第2基板SUB22に形成される共通電極CTの表面にも、実施形態1と同様にして、図示しない配向膜が形成されている。
【0100】
このような内蔵偏光板POL4は液晶表示装置の外部に貼り付け可能なフィル状の偏光板の偏光度に比較して、その偏光度が小さいことが知られている。しかしながら、実施形態3の液晶表示装置では、第2の液晶表示パネルPNL2の表示面側に偏光板POL2が貼り付けされ、表示光は内蔵偏光板POL4を透過した後に、さらに偏光板POL2で所望の偏光がなされる構成となっている。従って、内蔵偏光板POL4を用いた場合であっても、表示光の偏光は偏光板POL2との組み合わせで処理されるので、表示光に対して高い偏光度を得ることが可能となる。その結果、実施形態3の構成においても、コントラストの高い表示を行うことが可能となる。このように、本願発明では、レンズ動作を行う第2の液晶表示パネルPNL2の表示面側に偏光板POL2が配置される構成となっているので、実施形態1の効果に加えて、偏光度の小さい内蔵偏光板POL4を用いることができるという格別の効果を得ることができる。
【0101】
さらには、実施形態3の液晶表示装置では、フィルム状の偏光板を用いない構成となっている、すなわち実施形態1の第1基板SUB21、偏光板POL1、及び接着層ADHが不要な構成となるので、レンズ動作を行う液晶層LC2と表示動作を行う液晶層LC1を近くに配置することができる。
【0102】
一方、観察者の左右の目の距離(眼間距離)をE、表示装置と観察者の距離(観察距離)をDとした場合、画素ピッチP(図2に示す)と観察距離Dにおいてレンチキュラレンズを通して見た右目と左目用の画素がちょうど眼間距離Eだけ離れるようにするためには、レンズ(液晶層LC2)と表示画素(液晶層LC1)の間隔T(図1に示す)を式(3)とする必要がある。
【数3】

【0103】
従って、表示画像の精細度が大きく画素ピッチPが小さな表示用ディスプレイにおいて画素ピッチPの大きな表示用ディスプレイを用いた場合と同じ観察距離で見るようにするためには、レンズと表示画素との間隔T、すなわち第2基板SUB12または第1基板SUB21を薄くする必要がある。しかしながら基板の薄型化には基板強度の点から限界がある。また,フィルム状偏光板は約100μmあるいはそれ以上厚さがあるため、液晶層LC1と液晶層LC2との距離Tを制約することとなる。
【0104】
これに対して、実施形態3の液晶表示装置では、実施形態1の第1基板SUB21を用いない構成であると共に、第2の液晶表示パネルPNL2に内蔵偏光板POL4を形成する構成としている。従って、液晶層LC1と液晶層LC2との距離Tを小さくすることができ、解像度が大きく画素ピッチPが小さな表示用ディスプレイにおいても3D表示が可能となるという格別の効果を得ることができる。
【0105】
さらには、液晶レンズの焦点位置が第1の液晶表示パネルLCD1の液晶層LC1と一致させる必要がある。ここで、液晶レンズのピッチすなわちくし歯電極PXのピッチをQ、ガラス基板の屈折率をn1とした場合、液晶レンズのセルギャップdは、下記の式(4)となる。
【数4】

【0106】
特に、m(ただし、mは2以上の自然数である)視点の場合には,Q≒mPであり、式(3)を用いると、下記の式(5)となる。
【数5】

【0107】
従って、画素ピッチPが小さくなるとセルギャップdを小さく、あるいは液晶のΔn(屈折率異方性)を小さくできることになる。このように、セルギャップを小さくすることは応答速度を小さくできるという効果を得ることができる。
【0108】
なお,実施形態1において偏光板POL1を塗布型偏光板あるいはワイヤーグリッド偏光子等の薄膜偏光板とする場合においても同様に,減少した偏光板の厚さに応じてセルギャップdを小さく、あるいは液晶のΔn(屈折率異方性)を小さくする効果を得ることができる。
【0109】
〈実施形態4〉
図18は本発明の表示装置を備える情報機器の概略構成を説明するための図であり、特に、本発明の表示装置を携帯情報端末に使用した場合を示している。
【0110】
図18に示すように、スマートフォンや携帯ゲームや等の携帯情報端末SPHに本願発明の表示装置DISを適用することにより、長手方向が左右位置となる横位置で3D表示を行った場合であっても、クロストークの発生を防止することができる。その結果、3D表示時の画質を向上させることが可能となる。
【0111】
以上、本発明者によってなされた発明を、前記発明の実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は、前記発明の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々変更可能である。
【符号の説明】
【0112】
LCD1……第1の液晶表示パネル、LCD2……第2の液晶表示パネル
SUB11,SUB21……第1基板、SUB12,SUB22……第2基板
BLU……バックライトユニット、LC1,LC2……液晶層、GL……ゲート線
ADH……ハイブリッド樹脂、POL1,POL2,POL3,POL4……偏光板
DL……ドレイン線、CH……コンタクトホール、PD……パッド部、JC……延在部
PXL……画素、SPL……副画素、PX……くし歯電極、PX1……線状電極
CT,CT1,CT2……共通電極、PS,PS1,PS2……ポストスペーサ
WR……配線部、ORI……配向膜、SB……スペーサビーズ、DIS……表示装置
SPH……携帯情報端末、SLT……スリット、TFT……薄膜トランジスタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像表示を行う表示パネルと、前記表示パネルの表示面側に配置され、シリンドリカルレンズ状に屈折率を制御して視差障壁を形成し、2D表示と3D表示とを切り替える液晶レンズパネルとを備える表示装置であって、
前記液晶レンズパネルは、前記表示パネル側に配置される第1透明基板と、
液晶層を介して前記第1基板と対向配置される第2透明基板と、を備え、
前記第2透明基板の表示面側に形成され、当該液晶レンズパネルを透過する透過光の偏光方向を制御する第1の偏光板を備えることを特徴とする表示装置。
【請求項2】
前記液晶レンズパネルは、少なくとも前記表示パネル側に第2の偏光板を備え、
前記第1の偏光板は前記第2の偏光板よりも偏光度が小さいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項3】
前記液晶レンズパネルは、少なくとも前記表示パネル側に第2の偏光板を備え、
前記第1の偏光板は前記第2の偏光板よりも偏光度が大きいことを特徴とする請求項1に記載の表示装置。
【請求項4】
前記第2の偏光板は、前記液晶レンズパネルと前記表示パネルとの間に配置される偏光板からなることを特徴とする請求項2乃至3に記載の表示装置。
【請求項5】
前記第2の偏光板は、前記液晶レンズパネルを形成する前記第1透明基板の前記液晶面側に形成される偏光層であることを特徴とする請求項3に記載の表示装置。
【請求項6】
前記液晶レンズパネルは、前記第1透明基板の前記液晶層側に形成され、当該第1透明基板近傍の液晶分子の初期配向方向を第1の配向方向に制御する第1の配向膜と、
前記第2透明基板の前記液晶層側に形成され、当該第2透明基板近傍の液晶分子の初期配向方向を第2の配向方向に制御する第2の配向膜と、を備え、
少なくとも、前記第2の配向方向と前記第2の偏光板の透過軸方向とが等しく形成されることを特徴とする請求項1乃至5の内の何れかに記載の表示装置。
【請求項7】
前記第1の偏光板の透過軸方向をa1、前記第2の偏光板の透過軸方向をa2、前記第1の配向方向をb1、前記第2の配向方向をb2とした場合に、
a1≠0°であり、a1=a2=b1=b1であることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項8】
前記第1の偏光板の透過軸方向をa1、前記第2の偏光板の透過軸方向をa2、前記第1の配向方向をb1、前記第2の配向方向をb2とした場合に、
a1=a2=b1=b1=0°であることを特徴とする請求項6に記載の表示装置。
【請求項9】
前記表示パネルは、液晶層を介して対向配置される一対の透明基板を有する液晶表示パネルと、該液晶表示パネルの裏面側に配置されるバックライトユニットとからなることを特徴とする請求項1乃至8の内の何れかに記載の表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−41052(P2013−41052A)
【公開日】平成25年2月28日(2013.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−177038(P2011−177038)
【出願日】平成23年8月12日(2011.8.12)
【出願人】(502356528)株式会社ジャパンディスプレイイースト (2,552)
【Fターム(参考)】