説明

表面品位に優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法

【課題】鋼板表面の凹凸や鋼板表面の結晶粒径むら、鋼板表面元素むらなどに起因するめっき合金化むらを抑制し、外観品位に優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板を製造する。
【解決手段】質量%で、C;0.001%以上0.003%以下、Si;0.005%以上0.1%以下、Mn;0.01%以上0.4%以下、P;0.005%以上0.03%以下、S;0.005%以上0.02%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、熱間圧延するに際し、粗圧延開始前の一次デスケーリングにおけるデスケーリング吐出水圧力を980KPa以上3000KPa以下とし、かつデスケーリング開始時のスラブ表面温度Tが以下の式(A)を満たし、さらにデスケーリング用の水温を20℃以下で鋼板表面に噴射して、熱延一次デスケーリングをした後、粗圧延機、仕上げ圧延する。1000≦T≦3330×(S%)+1200・・・・(A)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主に自動車に使用される合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関するものである。より詳しくは、自動車の外板に使われる表面品位に優れる合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などに用いられる合金化溶融亜鉛めっき鋼板には美麗な表面品位が求められるが、需要家から求められる要求水準は年々上昇しており、これまで以上に表面品位に優れる鋼板を製造することが重要となっている。めっき外観不良としては、鋼板表面の凹凸や鋼板表面の結晶粒径むら、鋼板表面元素むらなどに起因するめっき合金化むらがあり、これらを引き起こす要因の一つに熱延時のデスケーリング不良が挙げられる。すなわち、熱延時の高圧水噴射によるデスケーリングの不均一により、局所的な圧力むら、温度むらが生じ、鋼板表面凹凸、鋼板表面元素むらが引き起こされる場合がある。熱延時のデスケーリングとしては、加熱炉で生成した一次スケールを除去する粗圧延前のデスケーリング、また、圧延中に生成する二次スケールを除去するデスケーリングがあるが、いずれも鋼板表面凹凸、鋼板表面元素むらに影響を与える。熱延時のデスケーリングを均一にする方法としては、下記が提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、熱延時の均一デスケを目的とし、1つのノズルからの水量に傾斜を持たせ、ラップさせることで均一水量を確保する方法であるが、現実的には傾斜水量を安定的に確保することが難しく、また、Siを多く含む鋼などのデスケーリングが困難な材料に対しては不十分である。
【0004】
また、特許文献2から5は、いずれも鋼板の形状安定化を目的とした仕上げ圧延時の均一冷却が狙いであり、スプレーノズルからの噴霧水のラップ部が均一となるようにするものであるが、仕上げ圧延時を対象としており、二次スケールに効果があるとしても、一次スケールは二次スケールと性質が異なるため、粗圧延前のデスケーリングに対しては効果が乏しい。
【0005】
一方、特許文献6は、噴霧水の温度を60℃以上として、スタンド間でのスケール生成を抑制させる方法であるが、そもそも対象とする鋼板の温度が1000℃以下であり、一次スケールを対象としていないため粗圧延前の一次スケール除去には効果が乏しい。
【特許文献1】特開2006−247714号公報
【特許文献2】特開2006−289417号公報
【特許文献3】特開2005−296976号公報
【特許文献4】特開平08−238518号公報
【特許文献5】特開平06−285534号公報
【特許文献6】特開2004−181479号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
以上のように、種々の方法が提案されているものの、殆どが圧延中の二次スケールを対象としているものであったり、またその実施が困難であったりすることによって、粗圧延前の一次スケールのデスケーリング不良による鋼板表面凹凸や元素むらに起因しためっき外観不良については十分な対策がない。そこで本発明は、従来提案されている方法よりも改善効果が大きく、また、一次スケール除去に特に効果のある方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明者らは、熱延のスケール成長およびそのデスケーリング工程に着目した検討を鋭意進めたところ、合金化溶融亜鉛めっき鋼板の表面品位は、熱間圧延工程における粗圧延前のスラブのデスケーリング吐出水圧力、粗圧延開始前でデスケーリング開始前のスラブ表面温度、鋼中のS量および、デスケーリング水温に大きく依存し、さらにはデスケーリングスプレーパターンも影響することを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、
(1)質量%で、
C;0.001%以上0.003%以下、
Si;0.005%以上0.1%以下、
Mn;0.01%以上0.4%以下、
P;0.005%以上0.03%以下、
S;0.005%以上0.02%以下、
を含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、熱間圧延するに際し、粗圧延開始前のスラブのデスケーリングにおけるデスケーリング吐出水圧力を980KPa以上3000KPa以下とし、かつデスケーリング開始時のスラブ表面温度T(℃)が以下の式(A)を満たし、さらにデスケーリング用の水温を20℃以下で鋼板表面に噴射して、熱延一次デスケーリングをした後、粗圧延機、仕上げ圧延して巻き取った後、酸洗、冷延、焼鈍、溶融亜鉛めっき、合金化処理することを特徴とする表面品位に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
1000≦T≦3330×(S%)+1200 ・・・・・・・(A)
T:粗圧延開始前でデスケーリング開始前のスラブ表面温度(℃)、S%:鋼に含まれるS含有量(質量%)
T=−0.6×t+T‘ ・・・・・・・・(B)
t;スラブが加熱炉を出てからデスケーリングノズル直下まで到達する経過時間(秒)
T‘;スラブの加熱温度(加熱炉温度)
【0009】
(2)さらにAl、Ti、Nb、B、Cu、Cr、Co、Ni、Mo、W、Mg、V、Ce、La、Nd、Pr、Smの1種または2種以上を合計で0.0003〜1.0%添加することを特徴とする(1)記載の表面品位に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0010】
(3)上記粗圧延開始前のスラブのデスケーリングを、以下の式(B)を満たす条件で実施することを特徴とする(1)または(2)記載の表面品位に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
0.9≦w/2・h・tan(θ/2)≦1.0 ・・・・・・・(B)
w;ノズル間距離
h;デスケーリングノズル先端から鋼板表面までの距離
θ;デスケーリング水の広がり角度
【発明の効果】
【0011】
本発明の製造方法を経た合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、外観品位に優れ、また、摺動性、密着性、生産性にも優れる。このため、自動車はもちろんのこと、家電製品、建材等に用いることができ、産業上の価値は極めて大きい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板の鋼成分の限定理由について説明する。
C;0.001%以上0.003%以下
Cは鋼の強化に必要な元素である。C量が0.001%未満では強度が不足し、0.003%を自動車外板に必要な加工性が損なわれる。このため、C量は0.001%以上0.003%以下とする。
【0013】
Si;0.005%以上0.1%以下
Siは鋼の強化、脱酸の効果を有する元素である。Siが0.005%未満ではその効果が不十分で、一方、過剰に添加すると脆化しやすくなるだけでなく、溶融亜鉛めっき時にめっきの濡れ性を阻害し、めっき密着性も劣化させる。このため、Siは0.005%以上0.1%以下とする。
【0014】
Mn;0.01%以上0.4%以下
Mnは鋼の強化、脱酸の効果を有する元素である。Mnが0.01%未満であればその効果が不十分で、一方、過剰に添加すると脆化、および、r値の低下を招く。このため、Mnは0.01%以上0.4%以下とする。
【0015】
P;0.005%以上0.03%以下
Pは鋼の強加に必要な元素である。Pが0.005%未満ではその効果が不十分で、一方、過剰に添加すると脆化し易くなるだけでなく、めっき合金化を遅延させ生産性を低下させる。このため、Pは0.005%以上0.03%以下とする。
【0016】
S;0.005%以上0.02%以下
Sは本発明において重要な元素である。後述のようにSは熱間圧延時のデスケーリング工程においてスケール剥離性を向上させる効果があるため0.005%以上添加することが好ましい。しかし、過剰に添加すると、加工性や熱間脆性を劣化させるため上限を0.020%とする。このためSは0.005%以上0.02%以下とする。さらにはめっき後の外観上0.005%〜0.010%の範囲であることがより好ましい。
【0017】
本発明の鋼においては、上記これらの成分以外にも、Al、Ti、Nb、B、Cu、Cr、Co、Ni、Mo、W、Mg、V、Ce、La、Nd、Pr、Smなどの1種または2種以上を、製鋼での脱酸、強度確保や耐食性向上などを目的として必要に応じて合計で0.0003〜1.0%添加できる。例えばAlは製鋼での脱酸のため0.001〜0.5%の範囲、Ti、NbはCやNの固定のためそれぞれ0.001〜0.1%、Bは2次加工割れ防止のため0.0003〜0.020%、Cu、Niは熱間圧延時における割れ発生防止のため0.01〜0.2%、Cr、Co、Mo、Mg、Vは強度向上のためそれぞれ0.001〜0.1%、Ce、La、Nd、Pr、Smは介在物を固定して伸びやr値材質を向上させるためそれぞれ0.001〜0.010%の範囲で添加できる。これら元素を1種または2種以上で合計0.0003〜1.0%まで添加し、強度と伸びやr値を適宜調整する。
【0018】
本発明の合金化溶融亜鉛めっき鋼板は、上記成分の低炭素鋼スラブを熱間圧延した後、酸洗し、さらに冷間圧延、焼鈍、溶融亜鉛めっき、加熱合金化処理を施して、製造する。熱間圧延における粗圧延開始前のスラブのデスケーリングでは、まず粗圧延前のスラブのデスケーリング圧力、粗圧延開始前でデスケーリング開始前のスラブ表面温度が重要なポイントである。
【0019】
図1にC:0.0025%、Si:0.04%、Mn:0.12%、P:0.009%、S:0.015%、残Feおよび不可避的不純物からなるスラブを溶製し、デスケーリング水温10℃、デスケーリングスプレーラップ5%においてデスケーリング吐出水圧力(ポンプ吐出圧力)とスラブ抽出温度を変更しめっき後の表面外観の良否を調査した。外観の良否については目視にて良否を判定した。尚、外観不良の判定方法は、目視にて以下の判定基準にて評価し、図1においては「優良」「良」を○、「不良」を×とした。
優良:合金化溶融亜鉛めっき後に目視観察にて合金化むらがなく、当該鋼板をプレス加工および塗装を実施しても目視観察にて合金化むら起因の外観不良がない
良 :合金化溶融亜鉛めっき後に目視観察にて若干合金化むらが観察されるが、当該鋼板をプレス加工および塗装を実施した後は目視観察にて合金化むら起因の外観不良がない
不良:合金化溶融亜鉛めっき後に目視観察にて合金化むらが観察され、当該鋼板をプレス加工および塗装を実施した後も目視観察にて合金化むら起因の外観不良が観察される
【0020】
その結果デスケーリング吐出水圧力980kPa以上でかつスラブ抽出温度が1000〜1250℃で間でめっき後の外観が良好であることが判明した。デスケーリング吐出水圧力が980kPa未満でめっき後の外観が不良である原因は、デスケーリング吐出水圧力が小さいためスケールの除去に十分なエネルギーが足りずスケールが残存し、その後の圧延により鋼板表面に凹凸が形成される他、粗圧延前のスケール残存部において圧延中の二次スケールの成長が抑制されることにより、スケール厚みにばらつきが生じ、結果として鋼板表面のSi、Pなどのめっき時のZn−Fe合金化速度に影響を与える元素にむらを生じるほか、鋼板表面にも凹凸が生じるからと推定される。
【0021】
デスケーリングの吐出水圧力の上限は特に規定しないが、3000kPaを超えてるともはやデスケーリング能力は飽和し、かえって鋼板表面の凹凸が激しくなる上、また、ポンプ他設備の負荷が増大し操業コストが増大する。そのため、デスケーリング吐出水圧力の上限は3000kPaとすることが望ましい。
【0022】
次に鋼中のS量について説明する。鋼中S量を横軸にとり、デスケーリング開始時の表面温度を縦軸にとり、デスケーリング吐出水圧力を振ってめっき後の外観を判定した結果を図2、図3に示す。尚、めっき後の外観判定は前述の「優良」レベルが図2中の○、図3中の□、前述の「良」レベルが図2中の△、図3中の◇、前述の「不良」レヘ゛ルが図2、図3中の×である。図2、図3から鋼中S量が0.005%以上でめっき後の外観は良好な結果を示し、特に0.005〜0.010%の間で優良な結果を示した。Sが0.005%未満ではデスケーリング吐出水圧力を高くしても外観は向上しない。鋼中S量が0.020%超でもめっき後の外観については良好な結果を示すが、熱間脆性により表面やエッジ部に亀裂が入り不良となる。以上からS量を0.005〜0.020%、好ましくは0.005〜0.010%とする。
【0023】
さらに鋼中S量と粗圧延開始前でデスケーリング開始前のスラブ表面温度の関係については、スラブ抽出温度が1000℃未満ではS量がいずれの量でも、またデスケーリング吐出水圧力がいずれの値でも良好なめっき後の外観が得られなかった。また鋼中S量ごとの粗圧延開始前でデスケーリング開始前のスラブ表面温度の上限はS量により上限が緩和されるようで、図2、図3から一次的に近似し、鋼中S量と粗圧延開始前でデスケーリング開始前のスラブ表面温度の関係を以下のようにまとめた。
1000≦T≦3330×(S%)+1200 ・・・・・・・(A)
ここでTはスラブ抽出温度(℃)、S%は鋼中のS含有量(質量%)である。尚粗圧延開始前でデスケーリング開始前のスラブ表面温度Tは、以下の式(B)で計算される値を用いる。
T=−0.6×t+T‘ ・・・・・・・・(B)
t;スラブが加熱炉を出てからデスケーリングノズル直下まで到達する経過時間(秒)
T‘;スラブの加熱温度(加熱炉温度)
ここでT‘は、日常的に管理されるスラブの加熱炉温度とか加熱炉抽出温度と呼ばれるもので、加熱炉内雰囲気温度と在炉時間等から計算される値または温度計等でスラブ表面を測温した値である。
【0024】
デスケーリング時の鋼板表面温度が式(A)の範囲内である場合に合金化溶融亜鉛めっき鋼板の品位が向上する理由は定かではないものの、地鉄とスケールの間に、地鉄とスケールの密着力を低下させるFeとSの化合物が十分に溶融状態で生成し、デスケーリング工程においてスケールが均一に剥離するためと考えられる。加熱温度が式(A)を満たさない場合は、FeとSの化合物の生成が不十分、あるいはFeとSの化合物が局所的に凝固状態となり、デスケーリングが均一とならないためと考えられる。一方、加熱温度が式(A)を超える場合は、地鉄結晶粒界に深く根を張ったスケールが厚く成長しているため、デスケーリングが困難となり好ましくない。
【0025】
さらに、発明者らはデスケーリング時に用いる水の温度の影響についても調査した結果、図4のようには20℃以下である必要がある。これはデスケーリング周囲の温度が恒温であるため、20℃を超える場合、鋼板表面に噴霧されたときに水は膜沸騰状態となり、冷却効果が不十分となる。20℃以下にすることによって、水は核沸騰状態とすることが可能となり、冷却効果は向上し、スケールの急冷、収縮による剥離効果を付与できる。噴霧する水については、そのpHや成分などを問わず、水溶液であれば問題ない。また、鉄粉などの金属粉を含んでいても問題ない。下限については、デスケーリング周囲が高温であるため、水配管に断熱材を配設しても水温が4℃未満に維持することが困難であること、水を0℃近傍の氷を含んだシャーベット状にして送り込むとデスケーリングノズルが一瞬詰まるなどの現象も起こり好ましくないことから下限を4℃とした。水温はノズルから噴出す直前のノズルから少なくとも5m以内の配管内における水温で熱電対をセットすることで確認できる。尚、めっき後の外観評価は図2、図3の場合と同様に「優良」レベルが図4中の○、「良」レベルが図4中の△、「不良」レベルが図4中の×である。
【0026】
さらにデスケーリングスプレーについては下式(B)を満たす条件で実施することが好ましい。
0.9≦w/2・h・tan(θ/2)≦1.0 ・・・・・・・(B)
w;ノズル間距離
h;デスケノズル先端から鋼板表面までの距離
θ;デスケ水の広がり角度
【0027】
図5にデスケーリングノズルの配置と鋼板との位置関係を示す。鋼板の進行方向は紙面に垂直方法である。また図6に(B)式中央部の値と実製造設備におけるめっき後の外観不良の発生率との関係を示す。尚、不良の発生率とは、合金化溶融亜鉛めっき後の外観が目視観察にて前述の「不良」レベルである比率である。すなわち、隣り合うデスケーリングスプレーのラップ状況を評価する値である(B)中央部を、ノズル間距離wに対して0%以上10%以下とすることで、デスケーリング水同士の衝突による水圧低下を防ぎ、デスケーリングの不均一を抑制することができる。また、デスケーリングスプレーがラップする部分の水量増加による局部冷却に起因する元素濃化の不均一も抑制することができる。ノズル間距離wに対する(B)中央部の値が10%を超えて小さい場合、デスケーリング水の水滴同士の衝突により、局所的にデスケーリング吐出水圧力が互いに干渉し合い、またラップ部の水量増加による局部冷却も顕著となり、スケール厚みに差異を生じ、スケールが残りやすくなり、前述のように鋼板表面元素にむらを生じやすくなるため、(B)式中央部の値の下限を0.9とした。ノズル間距離wに対し(B)中央部の値が大きくなる場合は、デスケーリング水がかからない部分が発生してデスケーリングが不均一となり鋼板表面元素にむらを生じやすくなるため(B)式中央部の値の上限を1.0とした。
【0028】
熱間圧延後は酸洗、冷延、焼鈍、めっき、合金化処理をするが、いずれも一般的な方法で実施すればなんら問題はない。酸洗条件は、従来から行われている方法で実施すればよく、例えば、50℃以上の塩酸中に鋼板を浸漬する。冷延はたとえば圧下率80%以上で圧下する。焼鈍は、冷延による延伸組織が十分に再結晶する条件であればよく、例えば750℃以上850℃以下の均熱温度で30秒以上150秒以内加熱する。焼鈍後は、溶融亜鉛めっき、加熱合金化処理を行う。亜鉛めっき浴の温度は440℃〜500℃、加熱合金化温度は480〜560℃とすることが望ましい。以上のような条件で製造することで、本発明の外観品位に優れた溶融亜鉛合金めっき鋼板を実現できる。
【実施例1】
【0029】
表1に示す、S量の異なる組成の鋼AからGを溶製し、連続鋳造してスラブとした。そのスラブを1300℃の加熱炉で1時間加熱後、表1のデスケーリング温度、デスケーリング吐出水圧力、デスケーリング水温の範囲でデスケーリングをした後、粗圧延、仕上げ圧延をして板厚4mmの熱延鋼板とした。なお、デスケーリング水のオーバーラップ部は5%となるようにした。その後、酸洗、冷間圧延、焼鈍、溶融亜鉛めっき、加熱合金化処理をし、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を作製した。酸洗は50℃の10%塩酸中に3分間浸漬し、冷間圧延は、圧下率90%で実施、焼鈍はいずれも800℃で120秒間加熱し、溶融亜鉛めっきは浴温460℃のZn−0.13%Alめっき浴に3秒間浸漬し、ワイピングで付着量が45g/mとなるように調整し、その後、500℃の温度で加熱合金化処理した。作製した合金化溶融亜鉛めっき鋼板の外観を前述と同様の目視評価にて、「優良」「良」「不良」で評価した。この結果、本件の要件を満足していれば、めっき後の外観は良好であることがわかる。
【0030】
【表1】

【実施例2】
【0031】
表1のGの鋼を1300℃の加熱炉で1時間加熱後、表2のデスケーリング温度、デスケーリング吐出水圧力、デスケーリング水温、デスケーリングノズルから鋼面までの距離h、デスケーリングノズルからの水の噴射角θデスケーリングノズル間の距離wでデスケーリングをした後、粗圧延、仕上げ圧延をして板厚4mmの熱延鋼板とした。
【0032】
【表2】

【0033】
その後、酸洗、冷間圧延、焼鈍、溶融亜鉛めっき、加熱合金化処理をし、合金化溶融亜鉛めっき鋼板を作製した。酸洗は50℃の10%塩酸中に3分間浸漬し、冷間圧延は、圧下率90%で実施、焼鈍はいずれも800℃で120秒間加熱し、溶融亜鉛めっきは浴温460℃のZn−0.13%Alめっき浴に3秒間浸漬し、ワイピングで付着量が45g/mとなるように調整し、その後、500℃の温度で加熱合金化処理した。作製した合金化溶融亜鉛めっき鋼板の外観を前述と同様の目視評価にて、「優良」「良」「不良」で評価した。この結果、本件の要件を満足していれば、めっき後の外観は良好であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】デスケーリング吐出水圧力とスラブ抽出温度がめっき後の表面外観の良否に及ぼす影響を示すグラフである。
【図2】デスケーリング吐出水圧力が980KPaの場合の、鋼中S量とデスケーリング開始時の表面温度が、めっき後の表面外観の良否に及ぼす影響を示すグラフである。
【図3】デスケーリング吐出水圧力が1470KPaの場合の、鋼中S量とデスケーリング開始時の表面温度が、めっき後の表面外観の良否に及ぼす影響を示すグラフである。
【図4】デスケーリング時に用いる水の温度がめっき後の表面外観の良否に及ぼす影響を示すグラフである。
【図5】デスケーリングノズルの配置と鋼板との位置関係を示す説明図である。
【図6】(B)式中央部の値と実製造設備におけるめっき後の外観不良の発生率との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
質量%で、
C;0.001%以上0.003%以下、
Si;0.005%以上0.1%以下、
Mn;0.01%以上0.4%以下、
P;0.005%以上0.03%以下、
S;0.005%以上0.02%以下、
を含み、
残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、熱間圧延するに際し、粗圧延開始前のスラブのデスケーリングにおけるデスケーリング吐出水圧力を980KPa以上3000KPa以下とし、かつデスケーリング開始時のスラブ表面温度T(℃)が以下の式(A)を満たし、さらにデスケーリング用の水温を20℃以下で鋼板表面に噴射して、熱延一次デスケーリングをした後、粗圧延機、仕上げ圧延して巻き取った後、酸洗、冷延、焼鈍、溶融亜鉛めっき、合金化処理することを特徴とする表面品位に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
1000≦T≦3330×(S%)+1200 ・・・・・・・(A)
T:粗圧延開始前でデスケーリング開始前のスラブ表面温度(℃)、S%:鋼に含まれるS含有量(質量%)
T=−0.6×t+T‘ ・・・・・・・・(B)
t;スラブが加熱炉を出てからデスケーリングノズル直下まで到達する経過時間(秒)
T‘;スラブの加熱温度(加熱炉温度)
【請求項2】
さらにAl、Ti、Nb、B、Cu、Cr、Co、Ni、Mo、W、Mg、V、Ce、La、Nd、Pr、Smの1種または2種以上を合計で0.0003〜1.0%添加することを特徴とする請求項1記載の表面品位に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【請求項3】
上記粗圧延開始前のスラブのデスケーリングを、以下の式(B)を満たす条件で実施することを特徴とする請求項1または2記載の表面品位に優れた合金化溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
0.9≦w/2・h・tan(θ/2)≦1.0 ・・・・・・・(C)
w;ノズル間距離
h;デスケーリング先端から鋼板表面までの距離
θ;デスケーリング水の広がり角度

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−241090(P2009−241090A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89343(P2008−89343)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】