説明

表面実装用接着剤塗布装置

【課題】表面実装用接着剤塗布装置において、塗布時におけるプリント基板のダメージを軽減しつつ生産性を向上し、安定した塗布を可能とする。
【解決手段】基板(8)上の所定の位置に接着剤(10)を塗布するノズル(50)を有し、該ノズル(50)の先端側が、前記基板(8)上に接着剤(10)を吐出させるニードル部(32)と、該ニードル部(32)の先端と前記基板(8)との間隙を設けるためのストッパ部(34)とを含んで形成され、前記ノズル(50)の昇降動作による前記基板(8)に対する接離により、前記基板(8)上に接着剤(10)の塗布を行う表面実装用接着剤塗布装置において、前記ニードル部(32)と前記ストッパ部(34)との相対的位置関係が維持されたまま、前記ノズル(50)の下降動作により、前記ストッパ部(34)が前記基板(8)に接する衝撃を吸収する緩衝手段(56)が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に接着剤を塗布する表面実装用接着剤塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の接着剤塗布装置は、例えば図1に示される如く、プリント基板8上に接着剤10を吐出するためのノズル30と、接着剤10とが充填されたシリンジ20を備えている。
【0003】
前記ノズル30は、プリント基板8上に接着剤を吐出させるニードル部32と、ニードル部32の先端の吐出口の高さを決定するためのストッパ部34と、ボディ部36と、フランジ部38とを備えている。
【0004】
図1に示される如く、ノズル30のストッパ部34の先端部は、ニードル部32の先端に対して先端方向(図1中の下側)に突出して形成されている。
【0005】
ノズル30のボディ部36は、シリンジ20に連結され、ノズル30は、図2に示される如く、昇降動作によりプリント基板8に接離可能な塗布ヘッド40に、ノズル30のフランジ部38で連結固定されている。
【0006】
塗布ヘッド40は、図2に示す如く、プリント基板8に対してX方向及びY方向に相対移動可能な、X移動手段42X及びY移動手段42Yを備えた位置決め機構に搭載されている。
【0007】
塗布ヘッド40がプリント基板8に対してX方向及びY方向に位置決めされた後、プリント基板8に接着剤10を塗布する際に、塗布ヘッド40がプリント基板8に接近する下降動作により、ノズル30のストッパ部34の先端が、図1に示される如く、プリント基板8に接触する。
【0008】
ここで、図1では、ストッパ部34とプリント基板8とが接触している状態を示している。本来、この状態は、接着剤10をプリント基板8に塗布する瞬間のみの状態であり、ほとんどの状態では、ストッパ部34は、プリント基板8から離れた状態になっている。即ち、プリント基板8に接着剤10を塗布する直前に、塗布ヘッド40が昇降動作を行い、図1に示すようなストッパ部34とプリント基板8とが接触している状態になる。
【0009】
この接触した状態で、ニードル部32の先端から接着剤10が吐出される。
【0010】
ストッパ部34は、接着剤10の吐出の際、ニードル部32の先端とプリント基板8との間で一定のクリアランス(間隙)Cが形成されるように設けられている。具体的には、塗布ヘッド40の下降時には、ストッパ部34の先端がプリント基板8に当たるようにして、プリント基板8の反りなどによりニードル部32の先端とプリント基板8とのクリアランスCが大きくならないように、ニードル部32の先端より突出している。
【0011】
このように、ニードル部32の先端とプリント基板8との間で一定のクリアランスを有するため、プリント基板8に塗布された接着剤10の塗布径が一定に保たれ、安定した塗布ができるようになっている。
【0012】
又、特許文献1には、ノズルの本体にストッパ部材をスプリングの付勢力を介して上下動可能に設けることで、プリント基板が上反り状態であっても、プリント基板からノズルの先端部が離れる時間が短くならないようにして、接着剤の糸引き現象を防止することが記載されている。
【0013】
【特許文献1】特開平3−161074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
しかしながら、従来の技術では、プリント基板8に接着剤10を高速に塗布できるように塗布ヘッド40を高速で下降させると、ストッパ部34がプリント基板8に接触することで生じる衝撃のため、プリント基板8に打痕をつけることや、セラミック製などのプリント基板8の場合は割れてしまうことがあった。
【0015】
このため、ストッパ部34の先端がプリント基板8に接触する前に塗布ヘッド40の下降速度を遅くしなければならず、生産性の低下を招いていた。
【0016】
又、特許文献1では、ニードル部の先端とストッパ部の先端の間隙が変わり、プリント基板の反り具合や塗布ヘッドの速度によってニードル部とプリント基板とのクリアランスが変ってくるため、クリアランスが小さいと、同じ塗布量でも大きな塗布径になり、クリアランスが大きいと小さな塗布径になってしまい、安定した塗布が難しかった。
【0017】
本発明は、前記従来の問題点を解決するべくなされたもので、表面実装用接着剤塗布装置において、塗布時におけるプリント基板の打痕や割れといったダメージを軽減しつつ生産性を向上し、安定した塗布を可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明は、基板上の所定の位置に接着剤を塗布するノズルを有し、該ノズルの先端側が、前記基板上に接着剤を吐出させるニードル部と、該ニードル部の先端と前記基板との間隙を設けるためのストッパ部とを含んで形成され、前記ノズルの昇降動作による前記基板に対する接離により、前記基板上に接着剤の塗布を行う表面実装用接着剤塗布装置において、前記ニードル部と前記ストッパ部との相対的位置関係が維持されたまま、前記ノズルの下降動作により、前記ストッパ部が前記基板に接する衝撃を吸収する緩衝手段を設けることにより前記課題を解決したものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ニードル部とストッパ部との相対的位置関係が維持されたまま、ノズルの下降動作により、ストッパ部が基板に接する衝撃を吸収する緩衝手段が設けられていることで、ストッパ部が基板に接触することで生じる衝撃が吸収されるため、基板の打痕や割れといったダメージが軽減でき、塗布ヘッドの昇降速度をアップすることができ、生産効率を高めることができる。
【0020】
又、ニードル部とストッパ部はノズルの先端側で固定され、相対位置関係が維持されているため、ストッパ部が基板に接触した際、ニードル部の先端と基板との間で一定のクリアランスが形成され、基板に塗布された接着剤の塗布径が一定に保たれ、安定した塗布を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態を詳細に説明する。
【0022】
図3に示される如く、本実施形態は、ノズル50のボディ部52、54とフランジ部58が従来のものと異なっている。なお、ノズル50が装着される塗布ヘッドは、図2に示されている塗布ヘッド40と同じである。
【0023】
詳細には、ノズル50は、基端(図3中の上方側)にシリンジ20が連結され、先端(図3中の下方側)にニードル部32及びストッパ部34を有するボディA部52と、フランジ部58を介して塗布ヘッド40に連結固定されるボディB部54と、緩衝手段であるスプリング56と、ボディB部54に固定されたフランジ部58とから構成されている。
【0024】
ボディA部52とボディB部54及びフランジ部58とはスプリング56を介して連結され、塗布ヘッド40の昇降方向に弾性的にスライドできるようになっている。
【0025】
具体的には、ボディA部52は、ほぼ円筒形状であり、同じくほぼ円筒形状であるボディB部54の中に、図3に示される如く、ボディA部52の先端側の一部がスライドできるように収められている。
【0026】
ボディA部52の先端側の側面にリング状の突起物52Aが設けられ、ボディB部54の先端が内側に突起部54Aを形成し、ボディA部52がボディB部54よりはずれないようになっている。
【0027】
ボディB部54の上面側に、この上面側の内径より小さい穴を持つリング状のフランジ部58が固定されている。
【0028】
スプリング56は、図3に示される如く、ボディA部52とボディB部54の間に収められ、スプリング56の可動方向の下面が、ボディA部52の先端側の側面の突起部54Aに接し、上面がフランジ部58に接している。
【0029】
ノズル50のニードル部32とストッパ部34との昇降方向における相対的位置関係は、図1で示された従来のものと同様に、固定されている。即ち、ストッパ部34の先端がニードル部32の先端より突出し、ノズル50のボディA部52の先端側に固定されている。
【0030】
次に、ノズル50の動作について説明する。
【0031】
フランジ部58で連結固定されている塗布ヘッド40がプリント基板8に対して接近するように下降することでノズル50も下降する。
【0032】
ストッパ部34がニードル部32より先端側に突出しているため、ストッパ部34がプリント基板8に接触する。この時、ノズル50の下降動作が高速であると、ストッパ部34がプリント基板8に接触した際、ボディB部54は、スプリング56の力に抗してボディA部52に対して下方にスライドして行く。
【0033】
ストッパ部34がプリント基板8に接触しているとき、ニードル部32の先端とプリント基板8との間にクリアランスCが形成される。この固定された一定のCでもって、ニードル部32の先端から接着剤10が吐出され、プリント基板8上に接着剤10が一定の塗布径で塗布される。
【0034】
塗布後、塗布ヘッド40は上昇し、ノズル50も上昇し、プリント基板8から離れ、次の塗布する箇所に移動する。
【0035】
次に効果について説明する。
【0036】
上述のように、ボディA部52とボディB部54がスプリング56を介して、昇降方向にスライドが可能となっている。そのため、塗布ヘッド40が下降し、ストッパ部34がプリント基板8に接触したとき、ストッパ部34と、塗布ヘッド40に連結固定されたフランジ部58とは、緩衝手段であるスプリング56を介して昇降方向にスライドでき、ストッパ部34がプリント基板8に接触することで生じる衝撃が吸収されるためプリント基板8の打痕や割れといったダメージが軽減できる。
【0037】
このようにプリント基板8に対するダメージが軽減できるため、ストッパ部34の先端がプリント基板8に接触する前に塗布ヘッド40の下降速度を遅くする必要がなくなり、塗布ヘッド40の昇降速度をアップすることができ、生産性を高めることができる。
【0038】
又、ニードル部32とストッパ部34はボディA部52に固定され、相対位置関係が維持されているため、ストッパ部34がプリント基板8に接触した際、ニードル部32の先端とプリント基板8との間で一定のクリアランスCが形成され、プリント基板8に塗布された接着剤10の塗布径が一定に保たれ、安定した塗布が行える。
【0039】
又、プリント基板8に与える衝撃が減少するのと同様にストッパ部34への衝撃も減少するため、ストッパ部34の磨耗が減少し、ノズルの耐久性も向上する。
【0040】
なお、フランジ部58とボディB部54との固定は、ねじ止めや接着、圧入などがあり、ねじ止めなど繰り返し脱着可能な連結手段にしてもよい。この場合スプリング56の交換が容易にでき、プリント基板8の材質に合わせて、スプリング56のばね定数といった弾性定数を変えることができる。
【0041】
又、緩衝手段としてのスプリング56の代わりにウレタンゴムや空気バネのように弾性を有するものや、液体を使用し、液体の流出を防ぐ密閉された2つの部屋を設け、2つの部屋の隔壁に液体の通る1つ又は複数個の穴を設けたショックアブソーバでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】従来の接着剤塗布装置の要部構成を示す断面図
【図2】前記接着剤塗布装置の全体構成を示す斜視図
【図3】本発明の実施形態の接着剤塗布装置の要部構成を示す断面図
【符号の説明】
【0043】
8…プリント基板
10…接着剤
32…ニードル部
34…ストッパ部
50…ノズル
56…スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上の所定の位置に接着剤を塗布するノズルを有し、該ノズルの先端側が、前記基板上に接着剤を吐出させるニードル部と、該ニードル部の先端と前記基板との間隙を設けるためのストッパ部とを含んで形成され、前記ノズルの昇降動作による前記基板に対する接離により、前記基板上に接着剤の塗布を行う表面実装用接着剤塗布装置において、
前記ニードル部と前記ストッパ部との相対的位置関係が維持されたまま、前記ノズルの下降動作により、前記ストッパ部が前記基板に接する衝撃を吸収する緩衝手段が設けられていることを特徴とする表面実装用接着剤塗布装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2007−299859(P2007−299859A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−125353(P2006−125353)
【出願日】平成18年4月28日(2006.4.28)
【出願人】(000003399)JUKI株式会社 (1,557)
【Fターム(参考)】