説明

表面平滑性が良好な高光沢化粧板

【課題】 表面平滑性に優れたジアリルフタレート系高光沢化粧板の提供。
【解決手段】 (1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウム5〜50重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物、当該樹脂組成物を含浸基材に含浸してなるプリプレグ、および当該プリプレグと化粧板基材とを一体成型してなるジアリルフタレート系化粧板。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はジアリルフタレート系化粧板の製造分野に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ジアリルフタレート系樹脂化粧板は、耐候性、自然な風合い、耐熱性、耐薬品性、寸法安定性を有する熱硬化性樹脂化粧板として知られている。これまでジアリルフタレート系樹脂化粧板は、ジアリルフタレートプレポリマー90〜93重量%、ジアリルフタレートモノマー7〜10重量%に硬化剤、離型剤、重合調整剤、充填剤、紫外線吸収剤を含む樹脂溶解液あるいは、ジアリルフタレートプレポリマー30〜90重量%、不飽和ポリエステル10〜70重量%に硬化剤、離型剤、重合調整剤、充填剤、紫外線吸収剤を含む樹脂溶解液に印刷化粧紙を浸漬あるいは塗布乾燥した含浸塗布化粧紙を基材と熱圧成型して化粧板を得ている。
【0003】
ところで、かかる化粧板に関してはパーティクルボードや中密度繊維板(MDF)等の化粧板基材の表層の凹凸が化粧板表面にそのまま現れるため、表面平滑性が十分ではなかった。
【特許文献1】特開昭49−99653号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、従来のジアリルフタレート系化粧板では未解決であった、化粧板基材表層の凹凸が化粧板表面にそのまま現れることによる表面平滑性が損なわれるという問題を解決しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウム5〜50重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物である。
【0006】
また、本発明は、(1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、(4A)水酸化アルミニウム5〜50重量部、および(4B)表面処理剤0.005〜1.5重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ジアリルフタレート系化粧板の従来特性である優れた耐水性、耐候性、耐薬品性等を損なうことなく、表面平滑性の良好な高光沢化粧板が得られる。
更に、本発明の樹脂組成物に対しては酸化チタンまたは酸化アルミニウムを比較的多量に添加することができ、酸化チタンを添加した場合には化粧板の隠蔽性が、また酸化アルミニウムを添加した場合には表面硬度がそれぞれ著しく改善される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の組成物は上述の通りであるが、(1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウム5〜50重量部、および、更に(5)多官能(メタ)アクリルエステル0.1〜10.0重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物が好ましい。
【0009】
また、(1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、(4A)水酸化アルミニウム5〜50重量部、および(4B)表面処理剤0.005〜1.5重量部、および、更に(5)多官能(メタ)アクリルエステル0.1〜10.0重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物が好ましい。
【0010】
はじめに、本発明の化粧板用樹脂組成物の各構成成分について説明する。
(1)ジアリルフタレートプレポリマーとは、ジアリルオルソフタレートプレポリマー、ジアリルイソフタレートプレポリマー、ジアリルテレフタレートプレポリマーの単独またはそれらの混合物である。また、下記ジアリルフタレートモノマー2種または3種の共重合体であってもよい。ジアリルフタレートプレポリマーの分子量は10000〜50000が適当である。
【0011】
一方、(2)ジアリルフタレートモノマーとは、ジアリルオルソフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレートの単独またはこれら2種または3種の混合物である。
【0012】
(3)不飽和ポリエステルとしては、通常の液体状もしくは固体状の不飽和ポリエステル樹脂を使用することができる。不飽和ポリエステルは多塩基性の不飽和酸と多価アルコールから脱水重縮合して得ることができる。この場合、不飽和酸の一部が飽和酸で置き替わっていてもよい。数平均分子量が3000〜50000の不飽和ポリエステルが好ましい。
例えば、酸成分としてマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、フタル酸、アジピン酸が挙げられる。一方、多価アルコール成分としてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、水素化ビスフェノールA等が挙げられる。
【0013】
また、(3)不飽和ポリエステルとして空気硬化型不飽和ポリエステル樹脂を用いてもよい。例えば、上記酸成分に他の酸成分としてテトラヒドロフタル酸、3,6−エンドメチレンテトラフタル酸、メチル−3,6−エンドメチレンテトラフタル酸等の脂肪族環状不飽和酸を、上記アルコール成分に他のアルコール成分としてアリルグリシジルエーテルをそれぞれさらに共存させた混合物から脱水重縮合して製造されたポリエステル樹脂が挙げられる。
【0014】
(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウムは、分散性を高める等の目的で水酸化アルミニウム表面に表面処理剤が固定化された平均粒子径が0.5〜10.0μm(+44μm、0.05〜1.0%)の工業製品を好ましく使用することができる。
【0015】
表面処理されるべき水酸化アルミニウムの形態は特に限定されず、円柱状、針状、球状等、種々のものを使用することができる。
【0016】
また、表面処理剤についても例えばシランカップリング剤やチタンカップリング剤等、特に限定はされないが、シランカップリング剤が好ましい。
シランカップリング剤としては、分子内に2個または3個のアルコキシ基を有する有機珪素化合物が好ましい。例えば、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリス(βメトキシエトキシ)シラン等のビニルシラン類、β−(3、4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン等のエポキシシラン類、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類、その他γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0017】
水酸化アルミニウムの表面処理の具体的方法の一例としては、水酸化アルミニウムを表面処理剤の原液または溶液中でスラリー状として表面処理を行う湿式法や、撹拌中の水酸化アルミニウムに表面処理剤の原液または溶液を振りかけて均一に分散、混合して表面処理を行う乾式法がある。この場合、水酸化アルミニウム100重量部に対し、表面処理剤を0.1〜3.0重量部の割合で共存するよう混合するのが好ましい。
【0018】
例えば具体的には、昭和電工(株)製のハイジライトH−32ST(平均粒子径 約3μm)やハイジライトH−42STV(平均粒子径 約1μm)、日本軽金属(株)製のB703ST(平均粒子径 約2μm)等が好ましく挙げられる。
【0019】
(4)表面処理された水酸化アルミニウムの添加量は、(1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、5から50重量部であるが、好ましくは10〜30重量部が望ましい。
【0020】
ところで、水酸化アルミニウムの表面処理は、上述のように独立した前処理として行う以外に、いわゆるインテグラルブレンド法、即ち、化粧板用樹脂組成物を混合する際、(4A)水酸化アルミニウムと、(4B)表面処理剤を同時に共存させる手段でも行い得るが、この場合、(4A)水酸化アルミニウム100重量部に対し、(4B)表面処理剤を0.1〜3.0重量部の割合で添加するのが好ましい。
【0021】
本発明においては、任意成分として、(5)多官能(メタ)アクリルエステルを更に添加することができる。
(5)多官能(メタ)アクリルエステルとしては、分子内にアクリロイル基又はメタクリロイル基(以下両者を総称して(メタ)アクリロイル基という)を3個以上有するペンタエリスリトールのポリアクリレート又はポリメタクリレート(以下両者を総称してポリ(メタ)アクリレートという)あるいは分子内に(メタ)アクリロイル基を4個以上有するジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。
【0022】
(5)多官能(メタ)アクリルエステルの添加量は、(1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、0.1〜10.0重量部であるが、好ましくは0.5〜5.0重量部の範囲がより望ましい。
【0023】
ところで、本発明の樹脂組成物に、さらに(6a)酸化チタンを添加することで化粧板表面の隠蔽性を向上させることができ、また、本発明の樹脂組成物に、さらに(6b)酸化アルミニウムを添加することで化粧板表面のスクラッチ特性を向上させることができる。これらを並存させて使用してもよい。
【0024】
例えば、含浸基材(例えば印刷紙)の坪量が低い場合(例えば坪量60g/m)、隠蔽性が悪く下地の色を拾いやすいため、化粧板にした後の表面の色が本来の印刷紙の色と比較して黒ずんで見えてしまう。このような場合に酸化チタンを添加すると、その顔料としての効果により化粧板にした後でも印刷紙本来の色が現れやすくなる。
【0025】
また、酸化アルミニウムはそれ自体硬度が非常に高い(モース硬度9)ため、適当量添加することにより飛躍的に化粧板表面の表面硬度が向上する。
【0026】
このような、樹脂組成物へ酸化チタンや酸化アルミニウムを添加すれば当該効果が発現することは当業者に公知である。しかし、従来のジアリルフタレート系樹脂組成物では酸化チタン等を多量に入れると分散不良(無機フィラー同士が凝集し、均一系にならない)を起こすため、添加量にみあう効果が得られない欠点があった。ところが、本発明の樹脂組成物においては酸化チタン等を比較的多量に入れてもそのような問題が生じない。
【0027】
使用することのできる酸化チタンに制限はない。結晶タイプはルチル型、アナターゼ型のどちらでもよいが、安価なルチル型の方が望ましい。粒径も特に限定されないが、0.01〜1.0μmが好ましい。表面処理も行ってよいが特に必要はない。
好ましい市販品としては石原産業(株)製、タイペークシリーズなどが例示される。
【0028】
使用することのできる酸化アルミニウムに制限はない。研磨材として一般的に用いられている白色結晶で特に限定されないが、粒径が1〜100μmのものが望ましい。
好ましい市販品としてはキイライト研磨材(株)製、ホワイトアランダム(WA)シリーズが例示される。
【0029】
これら酸化チタンまたは酸化アルミニウムの好ましい添加量は、(1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウム5〜50重量部の共存下、5〜100重量部であり、更に好ましくは(6a)酸化チタンについては5〜40重量部、(6b)酸化アルミニウムについては10〜60重量部がそれぞれ望ましい。
または、これら酸化チタンまたは酸化アルミニウムの好ましい添加量は、(1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、(4A)水酸化アルミニウム5〜50重量部、および(4B)表面処理剤0.005〜1.5重量部の共存下、5〜100重量部であり、更に好ましくは(6a)酸化チタンについては5〜40重量部、(6b)酸化アルミニウムについては10〜60重量部がそれぞれ望ましい。
この場合、更に(5)多官能(メタ)アクリルエステル0.1〜10.0重量部が共存してもよい。
【0030】
次に、本発明による化粧板用樹脂組成物を含浸基材に含浸させたプリプレグについて説明する。
ここで、含浸基材としては印刷紙(印刷パターン紙)、クラフト紙、不織布、織布等が好ましく例示される。
【0031】
本発明の化粧板用樹脂組成物を用いてプリプレグを製造するには、当該樹脂組成物が低粘度の液体である場合は当該含浸基材を当該樹脂組成物中へ浸せばよい。一方、当該樹脂組成物が高粘度液体や固体である場合は、適当な溶剤、例えばアセトン、トルエン、メチルエチルケトン等の有機溶剤に本発明樹脂組成物を溶解させ樹脂液とし、そこへ前記含浸基材を浸した後、乾燥して溶媒を飛ばせばよい。含浸樹脂付着量は80〜250g/mが好ましい。
なお、後処理として、プリプレグを必要に応じてプレキュアすることで樹脂の硬化を進め、プリプレグ表面のタックを抑えることができる。
【0032】
また、プリプレグの製造の際、含浸基材の表面には光沢度や硬度を重視する成分からなる樹脂組成物を、裏面には平滑性や隠蔽性を重視する成分からなる樹脂組成物を配置することで、表裏で成分の異なるプリプレグを作成することも可能である。具体的には、表面用樹脂に含浸基材全体を浸した後、裏面樹脂を敢えて掻きとり、さらに裏面用樹脂を裏面にコーティングする手法により通常のプリプレグに比べてもほとんど生産コストを上げずによりニーズにあったプリプレグを製造できる。
【0033】
ところで、本発明の樹脂組成物は一般に硬化速度が遅く、それ単独では短時間に十分な硬化度が得られないため、通常、硬化剤が使用される。硬化剤としては、組成物中に存在する不飽和二重結合を重合させ得る化合物であれば特に限定されないが、例えばベンゾイルパーオキサイド、ターシャリーブチルパーベンゾエイト、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物系硬化剤を好ましく挙げることができる。
【0034】
硬化剤の添加のタイミングは、本発明の樹脂組成物の十分なポットライフを維持するためには、プリプレグ製造直前に当該本発明の樹脂組成物に対して添加するのが好ましい。
添加量としては、(1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、1.0〜10.0重量部、例えば3.0〜5.0重量部であってよい。
【0035】
また、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、硬化剤以外にも必要に応じて多種の反応性モノマーや当該技術分野に通常用いられる添加剤、例えば、充填剤(微粉末シリカ等)、内部離型剤、難燃剤、重合調整剤、紫外線吸収剤、顔料等を添加することができる。
【0036】
次に、本発明に係るプリプレグと化粧板基材とを一体成型してなるジアリルフタレート系化粧板について説明する。
ここで、化粧板基材としては、合板、パーティクルボード、中密度繊維板(MDF)、無機質板及び樹脂が含浸され硬化されたクラフト紙等が好ましく例示される。
【0037】
プリプレグと化粧板基材とを一体成型する方法としては積層熱圧成型法、すなわち、プリプレグと、化粧板基材とを重ね合わせ、加熱加圧硬化するのが適当である。成型は例えばプレス成型機を用いて、時間1分〜15分、圧力10〜25kg/cm、温度120〜190℃で好ましく行うことができ、これにより樹脂組成物が硬化した化粧板が得られる。なお、ここでいう化粧板には多重に積層したいわゆる積層化粧板も含まれる。
【実施例】
【0038】
次に実施例、比較例によって本発明を詳細に説明する。ここで、実施例、比較例の「部」は重量部を示す。また、各実施例・比較例において具体的記載のない構成成分については実施例1記載の成分と同一品を使用した。
【0039】
なお、「平滑性」については、蛍光灯から1メートル離した位置に化粧板を置き、表面に映る蛍光灯の直線部分の変形の状態を目視により観察することにより評価した。評価は、表面に映る蛍光灯の直線部分がシャープな直線に見える場合に◎、少し波状に見えるが依然として良好な直線を維持している場合は○、波状が強い場合は△、そして、あばた強く境界線が不鮮明な場合は×とした。
また、「分散性」については、樹脂液が均一な場合は○、凝集等の分散不良がある場合は×とした。なお、ここでいう「分散性」とは、酸化チタンまたは酸化アルミニウム添加後の樹脂組成物の状態を評価対象とする。「隠蔽性」については、印刷紙と同等の色合いであれば◎、やや暗くなるが大きな差がなければ○、黒ずみが目立つ場合は△、黒ずみで印刷紙の柄がはっきりしない場合は×とした。「鉛筆硬度」についてはJIS K5400鉛筆引っかき値に準じて行った。
【0040】
[製造例1]
無水マレイン酸10モル、エチレングリコール3モル、プロピレングリコール6モル、水素化ビスフェノール1モルを反応容器に仕込み、ハイドロキノン0.5gの存在下、常圧下、窒素気流中にて反応温度180〜210℃の範囲を維持しつつ、目的物の数平均分子量が10000〜12000の範囲になるよう3時間程度反応させ、その結果、数平均分子量が約11000、かつ酸価が15mgKOH/gの不飽和ポリエステルを得た。
以下の実施例、比較例ではかようにして作製された当該不飽和ポリエステルを使用した。
【0041】
[実施例1]
ジアリルオルソフタレートプレポリマー(メチルエチルケトン50重量%溶液粘度(30℃)96.5cp、ヨウ素価56.7、ダイソー(株)製)80部、上記製造例1記載の不飽和ポリエステル20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1部、平均粒子径約3μmで、表面処理された水酸化アルミニウム30部(ハイジライトH−32ST、昭和電工(株)製)、ベンゾイルパーオキサイド4部、内部離型剤(ゼレックUN、デュポン社製)0.4部、ハイドロキノン(重合調整剤)0.03部、微粉末シリカ(カープレックス、塩野義製薬(株)製)4部をアセトンに溶解して樹脂液を調整し、80g/mの印刷パターン紙に含浸して180g/mの含浸紙を得た。
【0042】
3mmの無機質不燃板、ダイライト(大建工業(株)製)上に該含浸紙を載せ、130℃、12kg/cm、10分の熱圧成型で化粧板を得た。得られた化粧板はJIS
K6902、同K5400及びJASに規定されている耐水性、耐候性、耐薬品性等に合格し、JIS Z8741の鏡面光沢度測定方法に規定された入射角20度における光沢度(以下略して「光沢度」という)が92〜93と高い値を示し、なおかつ表面に映した蛍光灯の線もすっきりしており平滑性が良好であった。
【0043】
[実施例2]
ジアリルオルソフタレートプレポリマー50部、不飽和ポリエステル50部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1部、水酸化アルミニウム(H−32ST)30部、ベンゾイルパーオキサイド4部、内部離型剤0.4部、ハイドロキノン0.03部、微粉末シリカ4部をアセトンに溶解して樹脂液を調整した以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も90〜91と十分であり、平滑性も良好であった。
【0044】
[実施例3]
ジアリルオルソフタレートプレポリマー90部、ジアリルオルソフタレートモノマー10部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1部、水酸化アルミニウム(H−32ST)30部、ベンゾイルパーオキサイド4部、内部離型剤0.4部、ハイドロキノン0.03部、微粉末シリカ4部をアセトンに溶解して樹脂液を調整した以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も91〜92と高く、平滑性も良好であった。
【0045】
[実施例4]
実施例1において、ジアリルオルソフタレートプレポリマーの代わりにジアリルイソフタレートプレポリマーを用いた以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も93〜94と高く、平滑性も良好であった。
【0046】
[実施例5]
実施例1において、水酸化アルミニウム、H−32STの代わりに平均粒子径約1μmで、表面処理された水酸化アルミニウム30部(ハイジライトH−42STV、昭和電工(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も93〜94と高く、平滑性も良好であった。
【0047】
[実施例6]
実施例1において、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートを添加しなかった以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も90〜91と十分であり、平滑性も良好であった。
【0048】
[実施例7]
実施例1において、表面処理された水酸化アルミニウム、H−32STの添加量を30部から10部に減らした以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も94〜95と高く、平滑性も良好であった。
【0049】
[実施例8]
実施例1において、表面処理された水酸化アルミニウム、H−32STの添加量を30部から10部に減らし、かつ、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートの添加量を5部に増やした以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も95〜96と高く、平滑性も良好であった。
【0050】
[実施例9]
実施例1において、水酸化アルミニウム、H−32ST30部の代わりに平均粒子径約3μmで、表面処理されていない水酸化アルミニウム30部(ハイジライトH−32、昭和電工(株)製)とビニルトリエトキシシラン0.5重量部を混合したものを用いた以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も91〜92と高く、平滑性も良好であった。
【0051】
[実施例10]
ジアリルオルソフタレートプレポリマー(メチルエチルケトン50重量%溶液粘度(30℃)96.5cp、ヨウ素価56.7、ダイソー(株)製)80部、上記製造例1記載の不飽和ポリエステル20部、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート1部、平均粒子径約1μmで、表面処理された水酸化アルミニウム30部(ハイジライトH−42STV、昭和電工(株)製)、平均粒子径約0.26μmのルチル型酸化チタン10部(タイペークR−820、石原産業(株)製)、ベンゾイルパーオキサイド4部、内部離型剤(ゼレックUN、デュポン社製)0.4部、ハイドロキノン(重合調製剤)0.03部、微粉末シリカ(カープレックス、塩野義製薬(株)製)4部をアセトンに溶解して樹脂液を調整し、60g/mの印刷パターン紙に含浸して140g/mの含浸紙を得た。
【0052】
3mmの無機質不燃板、ダイライト(大建工業(株)製)上に該含浸紙を載せ、130℃、12kg/cm、10分の熱圧成型で化粧板を得た。得られた化粧板はJIS
K6902、同K5400及びJASに規定されている耐水性、耐候性、耐薬品性等に合格し、JIS Z8741の鏡面光沢度測定方法に規定された入射角20度における光沢度や平滑性も良好であるとともに、表面の隠蔽性も高いものであった。
【0053】
[実施例11]
酸化チタンの添加量を30部に変更した以外は実施例10と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も平滑性も良好であり、表面の隠蔽性も非常に高いものであった。
【0054】
[実施例12]
酸化チタンを平均粒子径約0.21μmのルチル型酸化チタン(タイペークR−670、石原産業(株)製)に代え、また、その添加量を30部に変更した以外は実施例10と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も平滑性も良好であり、表面の隠蔽性も非常に高いものであった。
【0055】
[実施例13]
酸化チタンを平均粒子径約35μmの酸化アルミニウム(キイライトWA #500、キイライト研磨材(株)製)に代え、また、その添加量を20部に変更した以外は実施例10と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も平滑性も良好であり、表面の鉛筆硬度も5Hと非常に高いものであった。
【0056】
[実施例14]
酸化アルミニウム(キイライトWA #500、キイライト研磨材(株)製)の添加量を50部に変更した以外は実施例13と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も平滑性も良好であり、表面の鉛筆硬度も7Hと非常に高いものであった。
【0057】
[実施例15]
酸化アルミニウム(キイライトWA #500)を平均粒子径約20μmの酸化アルミニウム(キイライトWA #800)に変更した以外は実施例13と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験にも合格し、光沢度も平滑性も良好であり、表面の鉛筆硬度も7Hと非常に高いものであった
【0058】
[比較例1]
実施例1において、水酸化アルミニウムを添加しなかった以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験に合格し、光沢度も94〜95と高い値を示したが、基材の凹凸がそのまま表層に現れており、表面に映した蛍光灯の線が激しく波状に見えるほど平滑性は著しく低いものであった。
【0059】
[比較例2]
実施例1において、水酸化アルミニウム、H−32STの代わりに平均粒子径約3μmで、表面処理されていない水酸化アルミニウム30部(ハイジライトH−32、昭和電工(株)製)を用いた以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験には合格したが、樹脂液中の分散性が悪いためか光沢度は85〜88、平滑度も著しく悪く、鮮映性の低いものであった。
【0060】
[比較例3]
実施例1において、水酸化アルミニウムの添加量を3部に減らした以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験に合格し、光沢度も94〜95と高い値を示したが、水酸化アルミニウムの添加効果がほとんど見られず、表面に映した蛍光灯の線が波状に見えるほど平滑性は低いものであった。
【0061】
[比較例4]
実施例1において、水酸化アルミニウムの添加量を60部に増やした以外は実施例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験に合格し、表面に映した蛍光灯の線もすっきりしており平滑性が良好であったが、光沢度が80〜85と著しく低下した。
【0062】
[比較例5]
比較例1において60g/mの印刷パターン紙を用いた以外は比較例1と同様にして化粧板を得た。得られた化粧板は耐水性、耐候性、耐薬品性等、各種試験に合格し、光沢度も高い値を示したが、表面の平滑性が悪いばかりか、表面の印刷柄が黒ずみ隠蔽性も悪いものとなった。表面の鉛筆硬度は2Hであった。
【0063】
[比較例6]
比較例5において、更に酸化チタン(タイペークR−820)を5部添加した以外は比較例5と同様にして化粧板を得た。その結果、樹脂液の分散性はそこそこであったが、隠蔽性が向上するには至らなかった。
【0064】
[比較例7]
比較例5において、更に酸化チタン(タイペークR−820)を30部添加した以外は比較例5と同様にして化粧板を得た。その結果、酸化チタンの凝集のため樹脂液の分散性が悪く、なおかつ隠蔽性が向上するには至らなかった。
【0065】
[比較例8]
比較例5において、更に酸化アルミニウム(キイライトWA #500)を5部添加した以外は比較例5と同様にして化粧板を得た。その結果、樹脂液の分散性はそこそこであったが、鉛筆硬度は2Hとほとんど向上することはなかった。
【0066】
[比較例9]
比較例5において、更に酸化アルミニウム(キイライトWA #500)を30部添加した以外は比較例5と同様にして化粧板を得た。その結果、酸化チタンの凝集のため樹脂液の分散性が悪く、なおかつ鉛筆硬度は3Hとほとんど向上することはなかった。
【0067】
[参考例1]
印刷紙の坪量を80g/mから60g/mに変更した以外は実施例5と同様にして得られた化粧板について、隠蔽性、および鉛筆硬度を測定したところ、十分ではなかった。
【0068】
上記実施例、比較例の組成物の配合および各測定結果を次に表1および表2にまとめる。なお、表2中、実施例9〜14、および参考例1においては、試験に供される化粧板はいずれも十分な光沢度(90前後)と優れた平滑性(◎)を示す事実を前提とする。
【表1】

【0069】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、ジアリルフタレート系高光沢化粧板の製造業界において有効に利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、(4)表面処理剤で表面処理された水酸化アルミニウム5〜50重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物。
【請求項2】
(1)ジアリルフタレートプレポリマー50〜90重量%、(2)ジアリルフタレートモノマー0〜20重量%、および(3)不飽和ポリエステル0〜50重量%の合計100重量部に対し、(4A)水酸化アルミニウム5〜50重量部、および(4B)表面処理剤0.005〜1.5重量部を添加してなる化粧板用樹脂組成物。
【請求項3】
更に、(5)多官能(メタ)アクリルエステル0.1〜10.0重量部を添加してなる請求項1または2記載の化粧板用樹脂組成物。
【請求項4】
更に、(6a)酸化チタンまたは(6b)酸化アルミニウム5〜100重量部を添加してなる請求項1〜3のいずれかに記載の化粧板用樹脂組成物。
【請求項5】
(4B)表面処理剤がシランカップリング剤であり、かつ、(4A)水酸化アルミニウムの平均粒子径が0.5〜10.0μm(+44μm、0.05〜1.0%)の範囲内である請求項1〜4のいずれかに記載の化粧板用樹脂組成物。
【請求項6】
シランカップリング剤が、アルコキシ基を有する、ビニルシラン、エポキシシランまたはアミノシランである請求項5記載の化粧板用樹脂組成物。
【請求項7】
(5)多官能(メタ)アクリルエステルが、分子内に(メタ)アクリロイル基を3個以上有するペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート、および分子内に(メタ)アクリロイル基を4個以上有するジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレートの群から選択される少なくとも一つのポリ(メタ)アクリレートである請求項3〜6のいずれかに記載の化粧板用樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の化粧板用樹脂組成物を含浸基材に含浸してなるプリプレグ。
【請求項9】
請求項8記載のプリプレグと、化粧板基材とを一体成型してなるジアリルフタレート系化粧板。
【請求項10】
請求項8記載のプリプレグと、化粧板基材とを重ね合わせ、加熱加圧硬化することを特徴とする、一体成型された表面平滑かつ高光沢なジアリルフタレート系化粧板の製造法。

【公開番号】特開2006−219656(P2006−219656A)
【公開日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−205098(P2005−205098)
【出願日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(000108993)ダイソー株式会社 (229)
【Fターム(参考)】