説明

表面性識別装置、シート材識別装置及び画像形成装置

【課題】 プローブを接触させて摺擦することにより被測定物表面の表面性を識別する際のプローブの製造ばらつき抑制及び加工精度向上とプローブ先端部の剛性向上によるプローブ破損防止性を改善した表面性識別装置、シート材識別装置及び画像形成装置の提供。
【解決手段】 プローブ先端当接部でシート材7を走査し、シート材表面の凹凸及び摩擦係数に応じた振動及び衝撃による歪を誘起することにより圧電素子15bが電気信号を発生し、電気信号の強度差を基にシート材表面の表面性を識別する圧電接触型表面性検知センサであって、従来の短冊状板金先端部を2度折り曲げたS字型プローブ15aの代わりに、プローブ側面から見た際の先端構造部の形状がΔ型となるように、先端構造部の形状を予め母材板金の平面上で加工してから直角に折り曲げて構成するかまたは予め樹脂部材で加工してから平坦板金に接着して構成するΔ型プローブを用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面性識別装置、シート材識別装置及び画像形成装置に関するものである。特に、被測定物の表面摩擦抵抗の差とその要因となる表面粗さの差及び表面材質の差を識別する表面性識別装置、更にシート状被測定物の剛性の差とその要因となる厚さ、密度及び材質の差も検出可能なシート材識別装置の信頼性および性能向上に関するものである。そして、シート材識別装置を備えた加熱装置及び電子写真方式のプリンタ、複写機、インクジェットプリンタ、サーマルヘッドプリンタ、ドットインパクトプリンタ、ファクシミリやこれらの複合機器等の画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、各種画像形成装置は、一般的に普通紙、はがき、ボール紙、封書、OHP用のプラスチック製薄板等のシート状記録材(以下、単に記録材とする)上に画像を形成する装置である。その代表例としての電子写真方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ等の画像形成装置では、トナーを現像剤として用いて静電的な画像形成手段によって記録材上にトナー像を形成する。そして、その後、定着手段によって記録材を加熱及び加圧してトナー像を溶融固着させて画像形成するものである。
【0003】
また、他の画像形成装置であるインクジェット方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ等の装置は、インクを現像剤として用いている。そして、機械的または熱的反応を利用して微小なオリフィスを有するノズルを多数用いて構成された記録ヘッドからインクを高速で吐出させる画像形成手段によって記録材上に画像形成するものである。
【0004】
更に、他の画像形成装置である熱転写方式を用いたプリンタ、複写機、ファクシミリ等の装置は、インクリボンを現像剤として用い、サーマルヘッドを用いてインクリボンからインクを熱転写させる画像形成手段によって記録材上に画像形成するものである。
【0005】
ところで、これらの画像形成装置は近年改良が施され、高画質化と処理速度の高速化に対する工夫が種々の手段によって実現されるようになってきており、同時にコストダウン対策も工夫されて低価格化が進み、広く普及するようになっている。
【0006】
しかしながら、これらの画像形成装置に使用される記録材の種類は普通紙から封書用に特殊な表面処理を施された高級紙やOHP用の樹脂製シート等多種多様である。更に画像形成装置の普及に伴って世界中で使用されるようになってきたため、各地で使用されるどのような記録材に対しても良好な画像を形成することができるよう対応する必要が生じている。このため、特に画像形成条件に大きく影響する記録材表面の粗さは非常に重要な要素である。
【0007】
例えば、電子写真方式を採用する画像形成装置では、使用される記録材の表面が平滑な場合(以下、平滑紙と称する)と粗い場合(以下、ラフ紙と称する)では次のような違いがある。すなわち、定着部において加熱源から紙表面へ熱を伝える加熱効率が表面性の差による熱抵抗差に従って異なっており、平滑紙で適正な定着温度でラフ紙を定着しても定着不足を招いてしまう。このため、ラフ紙に対してはより高い温度で定着する必要がある。
【0008】
そこで、現状の画像形成装置では、ラフ紙を定着することができる温度を標準の定着温度として用い、平滑紙に対しては常に過剰な温度で定着させたままにしている。更により粗い紙に対しては更に高い定着温度が必要であるため、このような紙を用いる際にはユーザに定着温度の設定を変更させるための選択モードを設けていた。
【0009】
これらの具体的な例として電子写真方式を採用するプリンタの基本構成を図11に示す。図11は、従来例に係る電子写真方式の画像形成装置の要部構成断面図である。該プリンタにおいては、帯電ローラ1で感光ドラム2の表面を一様に所定の極性に帯電させた後、レーザー等の露光手段3によって感光ドラム2を露光した領域のみを除電して感光ドラム2上に潜像を形成する。そして、この潜像は現像器4のトナー5によって現像されてトナー像として顕像化される。つまり、まず、現像器4のトナー5を現像ブレード4aと現像スリーブ4bの間で感光ドラム2の帯電表面と同極性に摩擦帯電させる。そして、感光ドラム2と現像スリーブ4bが対向する現像ギャップ部においてDCとACバイアスを重畳印加し、電界の作用によってトナー5を浮遊振動させつつ感光ドラム2の潜像形成部に選択的に付着させる。その後、このトナー5を転写ローラ6(画像形成手段に相当)と感光ドラム2で形成される転写ニップ部まで感光ドラム2の回転によって搬送する。
【0010】
一方、画像が記録される紙等の記録材であるシート材7は、シート材カセット7aから給紙ローラ対7c(下ローラはパッドでも良い)によって垂直搬送ローラ対7dまで先端部が給紙される。この後、この垂直搬送ローラ対7dによって転写前搬送ローラ7eまで搬送されるか、または手差しトレイ7bから給紙ローラ対7cによって転写前搬送ローラ7eまで搬送されるかのいずれかの経路を通して搬送される。更にこの転写前搬送ローラ7e(シート材搬送手段に相当)によって転写上ガイド板9及び転写下ガイド板9’の間に沿って予め規定された進入角度で転写ニップ部まで搬送される。この転写前搬送ローラ7eから転写ニップ部までシート材7が搬送されるまでの間には、シート材7がこの領域に搬送されて来るまでに接触した種々の部材との摺擦によって該シート材7の表面が帯電している可能性がある。このため、静電的記録を行うに際して画像を乱す要因となるこのような不要な帯電を取り除くための除電ブラシ8が搬送中のシート材7の背面側に接するように設けられ、接地されている。
【0011】
転写部において感光ドラム2上のトナー5を静電的に引き付けてシート材7側に移動させるためにトナー5と逆極性の高電圧がシート材7背面の転写ローラ6に印加される。そして、シート材7の裏面にトナー5が静電的に引き付けられてトナー像がシート材7に転写されるとともに、シート材7の裏面はトナー5と逆極性に帯電され、転写されたトナー5を保持し続けるための転写電荷がシート材7の裏面に付与される。
【0012】
最後に、トナー像が転写されたシート材7は、加熱回転体13とニップ部を形成する加圧ローラ14で構成される定着器12(定着手段に相当)まで搬送される。そして、ニップ部で予め設定されている定着温度を保持するように加熱回転体13側に設けられたヒータによって温度制御されながら加熱及び加圧されてトナー像が定着される。
【0013】
尚、トナー像転写後の感光ドラム2の表面には極性の異なるトナー等の付着物が僅かに残る。このため、転写ニップ部を通過した後の感光ドラム2の表面はクリーニング容器10で感光ドラム2表面にカウンター当接されるクリーニングブレード10aによって付着物が掻き落とされて清掃された後、次の画像形成に備えて待機する。
【0014】
尚、以上の帯電ローラ1、感光ドラム2、現像器4、クリーニング容器10の各構成要素は交換周期が比較的短いため、これらを一体化したカートリッジ11の単位で交換可能にしたカートリッジ交換方式の画像形成装置が主として普及している。
【0015】
以上の工程の中で、画像の定着方式としては熱効率及び安全性が良好な接触加熱型の定着器が広く知られている。従来は、主に次に説明する熱ローラ定着器が用いられてきた。熱ローラ定着器は、金属製円筒芯金表面に離型性層を形成し、円筒内部にハロゲンヒータを内包する熱定着ローラと、金属芯金に耐熱性ゴムから成る弾性層を形成し、その表面に加圧側離型性層を形成して成る加圧ローラを加圧当接して構成される。しかし、近年、更に加熱効率の高い方式として、フィルム加熱型定着器が用いられるようになっている。フィルム加熱型定着器は、上記熱定着ローラの代わりに低熱容量の耐熱性樹脂フィルムを円筒状に加工してその表面に離型性層を形成した定着フィルムを用い、このフィルムの定着ニップ部の内側からセラミックヒータを当接させて加熱する構成である。
【0016】
この種のフィルム加熱型定着器は、近年の省エネルギー推進の観点から、従来のハロゲンヒータを内包する円筒状の金属を定着ローラとして用いる熱ローラ方式に比べて熱伝達効率が高い。このため、定着器の立ち上がりも速い方式として注目され、より高速の機種にも適用されるようになってきている。しかし、特にこの方式では昇温速度を重視するために定着部の加熱表面の熱容量を小さくする必要があり、結果として加熱面には弾性層を形成することが難しく、硬い加熱面が使用されている。このため、この種の定着方式は、記録材表面の凹凸差によって一層加熱効率に差が生じ易い構成となっている。
【0017】
このような定着器を用いたプリンタ等の各種画像形成装置においては、前述のような処理速度の高速化に伴い、紙の種類の違いによって定着性の差が顕著になるという問題が生じている。そして、ユーザが使用しようとする紙種に応じて予め適正な定着モードをユーザ自身がプリンタに入力する必要がある。
【0018】
しかしながら、このように使用する紙の種類によってその都度定着条件を切り替えるためにユーザにモード選択を強いることはユーザの作業負担の増加になる。また、ユーザが選択モードを間違えた場合にはそのプリント分の定着性が不足したり、逆に過剰に加熱して電力を無駄にするとともに高温オフセットによる画像不良が生じたり、定着器のトナー汚染を招くおそれがある等の可能性があった。
【0019】
また、近年のように1台のネットワークプリンタを複数のユーザが共有するような使用環境においては、1人のユーザが特殊な紙を用いてそれに応じたモード設定切り替えを行った後、その特殊紙を画像形成装置に残したままになることもあり得る。このため、そのことを知らない他のユーザが使用する際にモードが一致せず、適切な定着がなされないために前記問題が生じてしまう可能性も高くなっている。
【0020】
また、設定可能な定着モードの数に関しても、実際の紙の平滑度には厳密には種々のレベルが存在し、その各々に対して最適な条件を設けることは不可能である。このため、或る範囲の平滑度を有する紙をまとめて同一モードで定着することによって設定モードの数を制限しており、特定の紙に対しては必要以上の電力を用いて定着する場合があり、紙と設定の組み合わせによっては効率の良くない定着が行われる場合もある。
【0021】
一方、前記インクジェット方式を採用する画像形成装置においては、使用される記録材が平滑紙の場合とラフ紙の場合では必要なインクの量が異なる。すなわち、平滑紙で適正なインク量でラフ紙上に画像形成しても紙の厚さ方向にインクが浸透して濃度不足を招いてしまうため、ラフ紙に対してはより多くのインクを吐出する必要がある。このため、現状の画像形成装置では、これらの異なる表面性の紙に対してユーザが予めその紙種をプリンタに認識させる作業を行う必要があった。
【0022】
また、熱転写方式を採用する画像形成装置では、使用される記録材が平滑紙の場合とラフ紙の場合では必要な電力の量が異なっている。このため、平滑紙で適正な電力量でラフ紙上に熱転写しても熱抵抗が大きいためにインクの転写性が低下して濃度不足を招いてしまっていた。
【0023】
以上のように、現状の画像形成装置では何れも記録材の表面粗さによる画像の画質低下を防ぐために余分な温度やインク、電力を消費したり、画質の低下を招くことになるおそれがある。これらの問題を防ぐためには記録材の表面粗さに応じてこれらの条件を切り替えることが必要である。しかし、現状ではユーザに設定変更の手間を強いるような方法や一部の画像形成装置に用いられている複雑な構成や信号処理を必要とする光学式センサしか考えられておらず大幅なコストアップを招くしかなかった。
【0024】
このため、記録材表面の粗さを検知し、その検知結果に応じて画像形成条件を変更して画像形成する装置の提案がこれまでに幾つかなされている。例えば、それらの中で比較的安価且つ高速に記録材表面粗さを検知可能な検知原理を提案したものとして、特許文献1及び特許文献2に示すものが挙げられる。これらの提案では、記録材表面に接触する接触手段が記録材表面との摺擦によって生じる振動や摺擦音等の物理的現象を検知し、その検知量の差を表面粗さの差として検知する方法が開示されている。その具体的構成として接触手段に圧電素子を設けて振動を電気信号に変換して検知する構成が提案されている。
【0025】
しかしながら、上記提案には実際に記録材表面に接触させる部材(以下、プローブと称する)に必要な具体的構成条件は詳細に開示されていない。すなわち、単純な直線状のプローブが走査方向、すなわち記録材の搬送方向の上流側で一方の端部を固定され、下流側の先端を搬送方向に逆らわないように斜めに当接させる構成が示されているだけに留まっている。したがって、この内容だけで実際に精度の高い検知を実現することは困難であると考えられる。
【0026】
このため、本願発明者は圧電素子を用いた検知方式で、表面性識別性能を飛躍的に改善して実用可能とするために、センサプローブ形状及び取り付け構成を新たに検討した。その結果、プローブ先端部に先端当接部がシート材搬送平面上を搬送方向前後に振動可能となる機械的構造部を付与した。且つ、先端当接部を搬送方向に逆らって測定表面に食い込む角度に当接する構成、すなわち、記録材がプローブ先端部に進入する際のプローブ先端部と記録材とのなす角度が鋭角となる構成とした。尚、当接圧力はシート材の搬送圧力によっては逆方向に跳ね上がり可能な軽圧で良い。このような構成にすることにより非常に高い識別性能が得られることを見出した。このような構造を、記録材搬送を阻害することなく最も安価に実現する構成として、S字型表面性検知センサ15(表面性識別装置に相当)(図12参照)を発明した。S字型表面性検知センサ15は、短冊状金属板金を2回折り曲げたS字型の側面形状を有するプローブを回転軸に回転可能に固定する構成である。且つ、1つのS字型表面性検知センサ15でシート材カセット7aまたは手差しトレイ7bのどちらからシート材7を給紙しても検知できるように取り付ける。すなわち、このS字型表面性検知センサ15を、両者の記録材搬送経路合流部の記録材搬送方向下流側で記録材の表面側から検知が可能な位置として最適な転写上ガイド板9に取り付けて評価を行った。この結果、記録材搬送を阻害することなく非常に高い識別性能が得られることを確認し、その結果をまとめたものを提案している(例えば、特許文献3参照)。
【0027】
このS字型表面性検知センサ15は、より詳細には図12(A)に示すように、圧電素子15bを平坦部に形成されたS字型プローブ15aがその反走査側端部を固定ネジ15dでプローブホルダー15cに固定された固定端部を有している。そして、このプローブホルダー15cは搬送方向に垂直且つシート材搬送平面に平行な方向に軸方向を有するプローブ回転軸15eに回転可能に固定されている。また、プローブ先端部はこのプローブ回転軸15eを中心としてシート材搬送平面に対して0.0196〜0.334N程度の当接圧で加圧手段により加圧当接されている。なお、加圧手段は、S字型プローブ15a自体にバネ機構が備わり当接する構成であっても、あるいは、S字型プローブ15a自体にバネ機構が備わっていない場合においては、外部からS字型プローブ15aを加圧する構成であってもよい。更にこのプローブ回転軸15eは軸受け15fを介して上記転写上ガイド板9を兼ねるセンサ保持板15g上に固定されており、シート材搬送平面として搬送平面板15hがシート材7の搬送路上に設けられ、シート材識別装置を構成している。
【0028】
図12(B)はこれらの構成部材を上から見た場合の各部材の配置関係を示したものである。センサ保持板15gの中央部にはS字型表面性検知センサ15の先端部をシート材搬送平面に当接させるため角穴が開けられている。また、圧電素子15b表面とS字型プローブ15aの板金表面からは検知信号を取り出すための信号線15kがハンダ付けされて画像形成装置の電装部までセンサ保持板15g表面を長手方向に沿って引き回されている。
【0029】
図12(C)はこのS字型表面性検知センサ15を用いた電子写真方式のプリンタの定着器制御を行うためのブロック図である。画像形成装置の検知部であるS字型表面性検知センサ15(以降、検知部15とする)から出力された検知信号に基づき、使用される紙種に応じて定着器12へ最適な制御信号を出力する。このとき、制御部15’(制御手段に相当)の推測部15’aにおいて、使用される紙種に応じて定着器12へ最適な制御信号を出力する。推測部15’aは、予め所定の検知信号に対して最適な制御温度が関連づけられている温度テーブル15’b(判定テーブルに相当)のデータを参照することで、最適な制御信号を出力することができる。これにより、必要最小限の電力で十分な定着性を得ることが可能となる。
【0030】
図13はこのようなセンサで実際に複数の紙種を検知して識別性を評価した結果の資料である。S字型表面性検知センサとしてはプローブにSUS344板金を用い、前述の表面粗さのみを検知するタイプの構成を用いている。この資料中の評価に用いた紙は実際の市場で使用される頻度の高い紙種を12種類選び、各紙の名称の大文字の記号部が同じものは同じ表面性を示す。ここで、Rタイプの紙は微細な凹凸が表面に均一に形成されているラフ紙、Fタイプの紙は平滑紙を示し、Wタイプの紙は紙表面に波型の修飾が施されたラフ紙を示しており、各紙の数字部は紙の坪量を示している。
【0031】
図13のグラフではこれらの紙種を横軸として最初にOHT用紙(以下OHTと称する)を配置した後、基本的に坪量の小さな紙を左から右へと順にラフ紙と平滑紙を交互に並べた。また、各紙に対して非接触表面粗さ計による平均表面粗さ=Ra[μm]の測定結果(丸形プロット点、破線)をプロットした。そして、上記S字型表面性検知センサを既存の高速の画像形成装置と同等の紙搬送速度で通紙可能な冶具に搭載して各紙の全長の1/4程度の距離を走査して表面性を検知させた際の検知信号を積分処理した信号レベルをプロットしたものである。
【0032】
図13のグラフはこれらを比較したものであり、大小関係を見やすくするために各データのプロット点を折れ線グラフ表示させている。このグラフから明らかなように、このS字型表面性検知センサを用いた紙表面の検知結果は表面粗さ計の測定結果と非常に良い相関がある。従って、S字型表面性検知センサ15を用いることにより、搬送されてきたシート材7の表面性の検知を少なくとも定着工程前に完了して定着制御を切り替えることができるようになる。このため、ユーザは使用するシート材7の種類を気にすること無く、且つ、画像不良や不要な電力の消費を招くことなく、画像形成装置を使用することが可能となる。
【0033】
さらに上記構成のS字型表面性検知センサ15を用いて実際に電子写真方式のプリンタの定着温度制御を行うための基礎検討として、各紙種に対する必要且つ十分な最適定着温度が実際にどのように紙種に依存して変化するかを調べた。この結果、単純にシート材7の表面粗さのみで分類することが難しい場合があることが判明したため、画像形成装置のシート材搬送路に屈曲構造を設けることによってシート材の剛性や厚みを検知する方法を提案している(例えば、特許文献4参照)。
【0034】
図14(A)はその一例として原理説明用のセンサ検知部であるS字型表面性検知センサ15(以下、検知部15とする)を備えたシート材識別装置の側面模式図を示している。尚、ここでは上記センサの主な構成要素は全てセンサ固定ベース15i上に設けられた後、この固定ベースごと上記センサ保持板15gの取り付け穴にセットされており、このセンサ固定ベース15iの下部にはシート材をプローブ先端部に誘導してプローブ上部に侵入させないようにするためのシート材ガイドリブ15i’が形成されている(但し、このガイドリブを余り大きくすると厚いシート材の搬送を阻害するため、リブ最下面とシート材搬送平面板表面との間には1mm以上の隙間を設けている)。
【0035】
この図からわかるように本構成では、シート材搬送方向の検知部下流側に、センサ保持板15g及び搬送平面板15hの下流側を下方に折り曲げた屈曲センサ保持板15g’及び屈曲搬送平面板15h’(シート材変形手段に相当)を設ける。これらによって屈曲搬送路構造を形成することで薄紙7’と厚紙7”の先端部が検知部15を通過した場合の検知信号の差を検知することが可能となる。まず、薄紙7’の先端部が検知部15を通過した場合、図14(A)に示すように剛性の低い薄紙7’の検知部15における搬送状態に大きな変化は無い。しかし、剛性の高い厚紙7”は、屈曲センサ保持板15g’及び屈曲搬送平面板15h’とから構成される屈曲搬送路によって厚紙7”先端部を下方に折り曲げられる。そして、厚紙7”の剛性によって検知部15にループを形成してプローブ先端部を持ち上げる力(Fup)を発生する。この力はプローブ当接加圧力に逆らって作用するので相対的に当接圧が上昇して摩擦強度が増大し、結果として検知信号が高くなる。さらにこのようにプローブ先端が持ち上げられた際にプローブの第1折り曲げ部R1が衝突するようなカバー15jを設けると、この衝突時の衝突強度に応じて検知信号も高くなる。また、このときの反作用でプローブを下方に押し下げる力(Fdown)も生じるのでこの衝突の繰り返しによっても検知信号は増幅される。
【0036】
図14(B)はこのような構成を用いて、表面粗さがほぼ同じで厚さのみ異なる3種類のシート材7を通紙して検知した結果をグラフ化して示したものである。このグラフからわかるように、横軸の各シート材厚さに対して検知信号レベルはほぼ直線近似が可能なほど比例して発生することがわかる。
【0037】
尚、以上の説明においては、発明の本質を明確化させるためにセンサの基本構成のみを記載しているが、実際のセンサ構成では、通常のSUSなどの板金を曲げ加工しただけのプローブを回転可能に組み込んで上記センサ固定ベース下部のシート材ガイドリブで保護しただけの構成では、万一、紙の先端が浮いたまま侵入すると紙先端部がセンサの上方向に侵入してプローブに引っかかってしまい搬送不良を生じる問題が考えられたため、対策としてプローブの左右に紙押さえ用のコロを設けて、プローブの左右両側で紙をシート材搬送平面に押し付けるように構成しており、この紙押さえコロの紙押さえ力の強度を高くすればするほど紙の搬送安定性と表面粗さ検知精度の向上が期待できる一方、紙厚検知性能を付与したい場合には紙押さえを余り強くしすぎると、上記原理から薄紙と厚紙での剛性差に基づく屈曲量の差が生じにくくなって紙厚識別性能が低下してしまうので、紙の搬送不良を生じない程度の紙押さえ機能を残すために「プロ-ブの当接圧<紙押さえコロの当接圧」となるように当接圧強度の大小関係は維持しつつ、紙押さえ力を可能な限り弱く設定している。
【0038】
図15(A)、(B)、(C)は実際の実験に使用したセンサのプローブ、プローブホルダー及びこれらを組み合わせた部品を組み込んだ状態のセンサ全体の主な構成要素を各々示したセンサ全体斜視図であり、図13(A)では圧電素子15bを平坦部に形成されたS字型プローブ15aを示しており、圧電素子表面には信号線接続用のハンダ電極15b’、プローブ板金後端部にはプローブ固定ネジ取り付け穴15a’、プローブ先端部には耐久磨耗対策としてセラミックチップ16が各々形成されている。一方、図15(B)はこのプローブを固定保持して回転軸に取り付けるためのプローブホルダー15cを示し、取り付け座面中央部にプローブ固定用のネジ穴15c’、下側に回転軸に取り付けるための軸受け15c”が設けられており、両者を組み合わせて座金付き固定ネジ15dで固定し、図15(C)に示すように、プローブの左右に紙押さえコロ17を各アームを介して回転軸15eに回転可能に固定し、不図示のプローブ加圧バネよりも強い加圧強度のバネを用いてシート材をシート材搬送平面に押し付けるよう構成している。
【特許文献1】特開2000−354618号公報
【特許文献2】特開2000−356507号公報
【特許文献3】特開2002−380518号公報
【特許文献4】特開2005−170640号公報
【特許文献5】特開2004−357358号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0039】
しかしながら、上記構成のS字型表面性検知センサを実際に量産する場合、短冊状に切り出した板金の2箇所に鋭角の降り曲げを連続して施す加工方法では、
・各折り曲げ部の長さ及び折り曲げ角度などの誤差がそのまま累積されてプローブ先端位置や当接角度に影響するため、高精度で折り曲げ加工する必要がある
・加工後の検査にも高精度が要求され手間がかかる
などの量産面における懸念点があり、また、高精度に加工できたとしても、その後の運搬時や、取り付け作業時の取り扱いにおいて、
・2箇所の折り曲げ部に不要な外力が加わると鋭角であるため比較的角部がつぶれる方向に変形しやすい
というような懸念点があった。
【0040】
本発明は上記問題に鑑みてなされたもので、表面粗さの微妙な相違を機械的構造によって増幅して容易に識別可能とするセンサのプローブ構造及び加工方法を工夫することにより、より加工精度を出しやすく、検査も容易で、且つ、より変形しにくく取り扱い易い構造のプローブを用いた表面性識別装置を提供することを目的とする。また、表面性識別装置を備えるシート材(紙種)識別装置、シート材(紙種)識別装置を備える画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0041】
本発明の表面性識別装置、シート材識別装置及び画像形成装置は、前記課題を解決するため、以下の構成を備える。
【0042】
(1)圧電素子部と、先端当接部と、前記先端当接部が被測定物の走査方向前後に振動可能となる機械的構造部と、前記走査方向に垂直乃至垂直に近い且つ走査平面に平行乃至平行に近い回転軸に回転可能に固定される固定端部とを有するプローブと、前記回転軸を中心として前記走査方向と逆方向に前記プローブを加圧する加圧手段とを備える表面性識別装置であって、
前記プローブは、
前記固定端部近傍に前記圧電素子部を形成可能な平坦部と、
該平坦部と前記先端当接部の間に、板厚成分を除いて、前記平坦部の平面に直交する側面または断面を有する立体的構造部を有し、該立体的構造部は、前記固定端部を右側に配置した際の前記平坦部側面方向から見て、少なくとも前記平坦部の左端部との連結中央部と、前記先端当接部と、該先端当接部の右斜め上方部の3点を頂点として含む多角形となる構造部と
を有することを特徴とする表面性識別装置。
【0043】
(2)(1)に記載の表面性識別装置において、
前記立体的構造部は、
前記固定端部を右側に配置した際の前記平坦部側面方向から見て、前記平坦部の左端部との連結中央部と、前記先端当接部と、該先端当接部の右斜め上方部の3点を頂点とするΔ型形状となる構造部である
ことを特徴とする表面性識別装置。
【0044】
(3)(1)に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、前記被測定物が該プローブに進入する際の前記先端当接部と該被測定物とのなす角度が鋭角となるよう、且つ、前記加圧手段による加圧が該プローブにより跳ね上げ可能な強度で加圧当接するよう、該被測定物の表面を走査し、
前記圧電素子部は、前記被測定物表面の凹凸及び摩擦係数に応じた振動及び衝撃による歪を誘起することにより電気信号を発生し、該電気信号の強度差を基に該被測定物表面の表面性を識別することを特徴とする表面性識別装置。
【0045】
(4)(2)に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、
金属板金から前記平坦部と前記Δ型形状部とを連結部を介して一体で切り出し、
切り出された該加工金属板金の前記連結部を直角に折り曲げて、
加工された板金製プローブであることを特徴とする表面性識別装置。
【0046】
(5)(4)に記載の表面性識別装置において、
前記固定端部を右側に配置した際の前記平坦部側面方向から見た前記Δ型形状部の板金下端部の板金側面部に、接着手段を介して、ブロック状セラミックチップを、
該ブロック状セラミックチップの下面が前記Δ型形状部の下辺と平行、
且つ、前記Δ型形状部の下辺より下方
に位置するよう貼り付け、
該ブロック状セラミックチップの最下辺部を前記先端当接部とすることを特徴とする表面性識別装置。
【0047】
(6)(2)に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、
金属板金から、
前記平坦部と、
第1連結部を介して形成された前記Δ型形状部と、
前記Δ型形状部の底辺部と第2連結部を介して形成された平面部と
を一体で切り出し、
切り出された該加工金属板金の前記第1連結部及び前記第2連結部の各々を、
直角に折り曲げて加工された、
板金製プローブであり、
前記Δ型形状部の下端平面部の下辺部を前記先端当接部とすることを特徴とする表面性識別装置。
【0048】
(7)(6)に記載の表面性識別装置において、
前記固定端部を右側に配置した際の前記平坦部側面方向から見た前記Δ型形状部の板金下端部の板金側面部に、
接着手段を介して、
板状セラミックチップを、
前記Δ型形状部の下端平面部と平行、
且つ、当接時に該板状セラミックチップ下辺部が被測定物表面と接触する位置に
貼り付け、
該ブロック状セラミックチップの下辺部を前記先端当接部とすることを特徴とする表面性識別装置。
【0049】
(8)(4)乃至(7)に記載のいずれかの表面性識別装置において、
前記プローブは、
前記Δ型形状部と前記連結部、
または前記Δ型形状部と前記第1連結部と前記第2連結部と前記平面部
を、各々前記金属板金の前記平坦部両側に前記平坦部の長手方向中心線に対して線対称に2つずつ設けて一体で切り出し、
切り出された該加工金属板金の各連結部を直角に折り曲げて
加工された板金製プローブであることを特徴とする表面性識別装置。
【0050】
(9)(2)に記載の表面性識別装置において、前記Δ型構造部は樹脂製であることを特徴とする表面性識別装置。
【0051】
(10)(9)に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、
前記平坦部と前記Δ型形状部が一体成形された樹脂製プローブと、
先端当接部材と
の少なくとも2部品で構成され、接着手段を介して一体化された2体構成Δ型樹脂プローブであり、前記先端当接部材の下辺部を前記先端当接部とすることを特徴とする表面性識別装置。
【0052】
(11)(9)に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、
金属板金製前記平坦部と、
樹脂製前記Δ型形状部と、
先端当接部材と
の少なくとも3部品で構成され、接着手段を介して一体化された3体構成Δ型樹脂プローブであり、前記先端当接部材の下辺部を前記先端当接部とすることを特徴とする表面性識別装置。
【0053】
(12)(10)乃至(11)に記載のいずれかの表面性識別装置において、
前記先端当接部材は金属製であることを特徴とする表面性識別装置。
【0054】
(13)(10)乃至(11)に記載のいずれかの表面性識別装置において、
前記先端当接部材はセラミック製であることを特徴とする表面性識別装置。
【0055】
(14)(10)乃至(13)に記載のいずれかの表面性識別装置において、
前記Δ型形状部は透明樹脂製、
または、前記平坦部と前記Δ型形状部は透明樹脂製
であり、
前記平坦部と前記Δ型形状部と前記先端当接部材
または前記圧電素子と前記平坦部と前記Δ型形状部と前記先端当接部材
の各界面は、紫外線硬化性接着剤を用いて、紫外線照射することにより、一括で接着されることを特徴とする表面性識別装置。
【0056】
(15)(10)乃至(13)に記載のいずれかの表面性識別装置において、
前記先端当接部材、
または前記平坦部と前記先端当接部材は、
樹脂製前記Δ型形状部の成形時に、インサート成形によって一体成形されることを特徴とする表面性識別装置。
【0057】
(16)前記(1)乃至(15)に記載のいずれかの表面性識別装置と、
シート材を搬送するシート材搬送手段と
を備え、
前記被測定物は、前記シート材搬送手段により搬送されるシート材であり、
前記表面性識別装置は、前記プローブを前記回転軸に回転可能に固定したまま前記シート材を前記シート材搬送手段により搬送移動させて走査し、該シート材の表面性を識別することを特徴とするシート材識別装置。
【0058】
(17)前記(16)に記載のシート材識別装置において、
一定の圧力でシート材搬送平面に先端部を当接され、圧電素子部を有するプローブと、
前記シート材搬送手段により前記プローブの先端当接部との対向位置に搬送された前記シート材を前記シート材搬送平面から該プローブの先端当接部に向かって凸型に屈曲変形させるシート材変形手段と
を備え、
前記圧電素子部は、前記シート材変形手段によって凸型に屈曲変形した前記シート材表面から前記プローブの先端当接部が受ける圧力が各シート材の剛性差に応じて変化することに起因してシート材毎に異なる摩擦抵抗差を誘起し、該摩擦抵抗差に応じて変化する該プローブの先端当接部の振動及び衝撃強度差を歪強度差として電気信号に変換して検出し、該シート材の剛性差を識別することを特徴とするシート材識別装置。
【0059】
(18)前記(16)乃至(17)に記載のシート材識別装置と、
前記プローブの当接位置を通過した前記シート材上にトナー像を形成する画像形成手段と、
前記トナー像を加熱加圧して前記シート材表面に永久固着させる定着手段と、
シート材と該シート材の特性に応じて前記トナー像を前記定着手段により溶融固着するための定着温度とシート材搬送速度及び複数シート材搬送時のシート材搬送間隔の情報とを関連づけた判定テーブルと、
前記シート材識別装置の識別信号に基づき前記判定テーブルを参照し、該判定テーブルの情報に応じて前記定着手段を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【0060】
(19)前記(16)乃至(17)に記載のシート材識別装置と、
前記プローブの当接位置を通過した前記シート材上にインクを吐出して画像を形成するインク吐出式画像形成手段と、
前記シート材識別装置の識別信号に応じて前記インク吐出式画像形成手段のインク吐出量を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【0061】
(20)前記(16)乃至(17)に記載のシート材識別装置と、
前記プローブの当接位置を通過した前記シート材上にサーマルヘッドを用いてインクリボン上のインクを熱転写させる熱転写式画像形成手段と、
前記シート材識別装置の識別信号に応じて前記熱転写式画像形成手段の前記サーマルヘッドへの供給電力を制御する制御手段と
を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0062】
本出願に係る第1の発明によれば、表面粗さ検知用プローブの機械的増幅構造部の走査方向側面部から見た場合の形状を、従来の加工後の形状が比較的ばらつきやすい折り曲げ加工によって形成する代わりに、より加工精度を高めやすい切り出し加工によって形成するとともに、立体構造の付与に対しても従来の鋭角折り曲げ加工より加工誤差を生じにくい直角折り曲げを用いるので、量産時の各プローブを搭載した装置間の識別性能バラツキをより少なくできる。
【0063】
本出願に係る第2の発明によれば、さらに折り曲げ回数を削減できるため、折り曲げ加工による、形状精度の低下を抑制でき、量産時の各プローブを搭載した装置間の識別性能バラツキをより少なくできる。
【0064】
本出願に係る第3の発明によれば、従来プローブではプローブの各折り曲げ中心軸と走査方向が直交するため通紙ごとに折り曲げ部に負荷が加わりやすいうえ、各折り曲げ角度が鋭角であるため、ジャム処理時など万一プローブの平坦面と先端間を押しつぶすよな方向に何らかの外力が作用すると変形の恐れがあるという懸念点があったが、本発明のプローブでは折り曲げ中心軸と走査方向が平行なため折り曲げ部に通紙による負荷が加わりにくく、さらに直角に折り曲げられているためこのような方向に作用する外力による変形の問題を無視できる。
【0065】
本出願に係る第4の発明によれば、圧電素子を形成する平坦部の左右両脇に平坦部の中心線に対して線対称に板金による直角折り曲げ構造を形成できるため、プローブ全体の剛性を高めて全体的により変形しにくくし、部品搬送時や組み立て時に加わる外力による変形も防止しやすくなる。
【0066】
本出願に係る第5の発明によれば、表面粗さ検知用プローブの機械的増幅構造部をΔ型の側面形状を有するブロック状樹脂で形成するので、加工寸法精度及びΔ構造部の機械的強度を折り曲げ板金プローブよりさらに高くでき、量産時の各プローブを搭載した装置間の識別性能バラツキもより少なく、製造時や使用中に変形破損する問題も防止しやすくなる。
【0067】
本出願に係る第6の発明によれば、表面粗さ検知用プローブの機械的増幅構造部をΔ型の側面形状を有する透明なブロック状樹脂で形成し、この樹脂構造部の加工時に先端当接部材と圧電素子形成用板金部材を紫外線硬化型接着剤を用いて紫外線照射するので、各部材を同時に短時間で強固に接着することができ、製造時間短縮と工程簡略化が促進でき、より安価に製造可能となる。
【0068】
本出願に係る第7の発明によれば、表面粗さ検知用プローブの機械的増幅構造部をΔ型の側面形状を有するブロック状樹脂で形成するので、この樹脂構造部の加工時に先端当接部材と圧電素子形成用板金部材をインサート成形法により同時に形成することができ、製造工程を簡略化し、接着剤も不要となるのでより安価に製造可能となる。
【0069】
本出願に係る第8の発明によれば、シート材の剛性差の検知もよりばらつきが少なく安定して識別することができる。
【0070】
本出願に係る第9の発明によれば、よりばらつきが少なく安定してシート材に応じて定着条件を最適化できるトナー像定着式画像形成装置を実現できる。
【0071】
本出願に係る第10の発明によれば、よりばらつきが少なく安定してシート材に応じてインク吐出量を最適化できるインク吐出式画像形成装置を実現できる。
【0072】
本出願に係る第11の発明は、よりばらつきが少なく安定してシート材に応じて加熱電力を最適化できる熱転写式画像形成装置を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0073】
以下本発明を実施するための最良の形態を、実施例により詳しく説明する。
【実施例1】
【0074】
図1(A)〜(D)は各々本発明の実施例1に係るシート材識別装置のプローブ板金展開図、プローブ板金斜視図、圧電素子および先端セラミックチップ取り付け位置説明図、及びこれらを取り付けたプローブ全体斜視図である。尚、これらの各図において、図13に示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0075】
本実施例では、母材となる大判の板金から短冊状に切り出して先端側を2回折り曲げ処理していた従来のプローブ板金と異なり、図1(A)に示すように、短冊状板金部分の長辺方向の両端部において、一方の端部付近に従来と同様のネジ止め用穴15a’を開け、逆側端部の両脇にΔ形状部18a及び長方形形状部18bを有する先端構造形成用展開部の形状に沿って折り曲げ代18cを設けて板金を切り出し、同図の各点線部でこの板金を各々直角に折り曲げて図1(B)に示すような平坦部の先端部左右両脇から折り曲げた板金で側面Δ形状部と底面部を有するΔ型構造部を形成した左右折り曲げ底面付きΔ型プローブ板金18を形成している。
【0076】
図1(C)は左右折り曲げ底面付きΔ型プローブ板金の平坦部に圧電素子部15b、Δ構造底面部に円盤状セラミックチップ16を取り付ける位置関係を示しており、本実施例ではまず後者をロウ付けによって接着した後、前者をエポキシ系接着剤で薄層接着することで、圧電素子の下電極表面と板金表面との電気的導通を確保しながら接着している。このように両者を接着することで図1(d)の斜視図に示すような外観の左右折り曲げ底面付きΔ型センサプローブ18’が完成する。(尚、本構成では被測定物表面と摺擦される先端当接部の耐久性を考慮してセラミックチップを取り付けているが、長期間に渡る耐久性を保証する必要の無い場合には板金先端部をそのまま当接させても良い)
このようにして加工されたプローブは先端部にΔ型形状を斜めに傾けた形状の構造を有することを特徴としているが、図1(C)のように側面から見た際のこのΔ型形状部の最下端部の位置及び底面部の形成する角度は従来のS字型センサの板金先端位置及び先端側折り曲げ部の形成する角度と同じであり、プローブ先端当接部が走査される被測定物表面の粗さなどに起因する摩擦抵抗差に応じて走査方向に変位した際に生じるプローブ平坦部の歪強度ならびに回転可能に取り付けられた回転軸を中心としてプローブ全体が先端部の摩擦力の反作用により跳ね上げられた際の跳ね上げ方向上部衝突時と跳ね戻り方向下部衝突時に各々生じる歪強度は本実施例のΔ型プローブと従来のS字型プローブで大差ないようにシミュレーション解析を基に作成しているため、これらの歪強度(より厳密には歪加速度)に応じて発生起電力が変化する圧電素子部から得られた検知電気信号の強弱によって被測定物表面の摩擦抵抗即ち同種の材質間ではその表面粗さをほぼ同じように検知することができるようになる。
【0077】
このようにS字型プローブとΔ型プローブを用いた場合の両者の検知特性に基本的に差が無いことは、より詳細にはその検知原理から次のように説明できる。
【0078】
まず、S字型表面性検知センサの基本的な検知原理は図2(A)に示すように、L1、L2、L3の3つの平坦部とR1、R2表の2つの折り曲げ部で構成されるS字型プローブを用いて、圧電素子を形成する比較的長い平坦部L1を紙搬送平面に対して∠αだけ傾けて先端部を当接されるとプローブ先端部は基本的に∠αより大きく90°以下の∠Βの角度を有して搬送平面に接触する。このとき仮想的に先端部と第1折り曲げ部R1を結ぶ辺をLx、水平面とのなす角度を∠εとする。この先端部に紙面右方向から表面に数μmの微小な凹凸を有するシート材7が搬送されてくると、先端部はこの凹凸に応じて上下方向にVu及びVdの力が作用して微小変位振動するが、このときの変位量は微小すぎてプローブ全体に大きな変形を招くことはできない。一方、水平方向に対しては、プローブ先端部とシート材の表面粗さに比例して生じる摩擦力によってまずHfの力が紙面左方向に作用してプローブ全体を変形させながら変位し、変位量がプローブ全体の変形量の限界に達すると板金のバネ性によって逆方向にHbの力で引き戻されて水平方向の変位振動を生じることができる。このとき、図2(B)に示すようにまず、この水平方向のHfの力で先端部が左方向にLfだけ変位にすると、この板金の材質(ヤング率)と板厚の組み合わせ及びL1、L2、L3の各長さの組み合わせによって比較的短いL2、L3はほとんど変形することなく、最も長いL1部に変形を集中させることができる。このとき、仮想的な辺Lxはほぼ同じ長さのままLxと水平面とのなす角度がより大きな∠ε’に増加する方向に立ち上がるため第1折り曲げ部R1の位置が押し上げられて高くなり、固定端部との間でL1はLh分の反り変形を生じるので、ここに形成される圧電素子に歪を生じさせて起電し、シート材の表面粗さが数μmであっても摩擦力として十分な力が作用できれば、検知に十分な大きさの信号を発生することが可能となり、表面粗さの微小な差をより明確な摩擦強度差に変換することで大きな検知信号の強弱差として検知可能にするというものであった。
【0079】
さらに、上記構成ではプローブ全体の当接圧にもよるが、L1の片方の端部を固定されたままではプローブ先端部に常に板金のバネ性の限界付近まで強い力が作用するため、被測定物表面を引きずって傷つけやすくなり、シート材のような破れやすい材質の測定に対しては負担が大きく、さらにその後工程で画像を形成するようなデリケートな測定対象物に対しては好ましくない。このため、この固定端部を回転軸に置き換えてプローブ全体を回転可能とし、プローブ先端に板金のバネ性の限界付近までの強い力が作用する前に先端部を回転軌跡に沿って跳ね上げ可能とし、跳ね戻り時の紙表面との衝突衝撃(及び別途回転軌跡上方に衝突壁を設けた場合には跳ね上げ直後の上部衝突壁との衝突衝撃)を誘発してL1部に瞬間的に大きな歪(歪加速度)を発生させるようにすると、この跳ね上げ力もプローブ先端部とシート材表面との摩擦力の強度に応じて変化するため、その衝撃強度差を識別信号の強度差として取り込むことが可能となり、シート材表面を傷つけることなく十分な検知信号を得ることを可能となる。
【0080】
一方、Δ型プローブを用いた表面性検知センサの検知原理としては図3(A)に示すように、S字型表面性検知センサのS字型に折り曲げた先端構造の代わりに、L1部の先端にL1’の長さの連結部を設け(ここではL1部先端の一部をL1’として使用)、S字プローブで仮想的に設けた辺Lxはそのまま上記連結部先端側とS字プローブの先端当接部と同じ位置の先端当接部を結ぶ実際の立体構造部の稜線になっており、この立体構造部の底辺部はS字プローブのL3とほぼ同等の長さLy及び水平面との当接角度で設定され、その右端部と上記連結部の後端部とを直線で結ぶ長さLzの辺で構成された形状となっている。この状態で右方向から表面に凹凸を有するシート材7が搬送されてくると、基本的に上記S字プローブの挙動と同様に微小な上下方向の振動も生じるがやはり摩擦力の作用によってより大きな水平方向の振動を発生し、図3(B)に示すようにまず、この水平方向のHfの力で先端部が左方向にLfだけ変位すると、このプローブの構成上、Δ型構造部の各辺Lx、Ly、Lzはともに変形することが無視できるため、上記S字型プローブよりもより確実にL1部に作用力を集中させることが可能となり、辺Lxの長さは変化しないので、辺Lxと水平面とのなす角度がより大きな∠ε’に増加するにつれてL1の先端位置がS字型プローブ以上に確実に押し上げられて高くなり、固定端部との間でL1はより確実にLh分の反り変形を生じるようになるので、ここに形成される圧電素子にシート材の表面粗さ(摩擦抵抗)に応じて歪強度差(歪加速度差)を生じさせて強弱差の明確な電気信号を起電させるというものであり、上記S字型プローブと同様に被測定物表面の傷を防止するために、回転軸に取り付ける構成として用いても良い。
【0081】
このように本実施例に用いたΔ型表面性検知センサは基本的にS字型表面性検知センサと同様の検知原理ではあるが、S字型の折り曲げ方向に対する永久変形や各折り曲げ部での一時的変形による押し上げ力の吸収などを生じることがないため、S字型表面性検知センサ以上の性能と安定性が期待できるようになる。
【0082】
尚、このようなプローブ先端当接部の剛性差が検知特性への影響しないかどうかを確認するため、上記S字型とΔ型の2通りのプローブ先端部に同一の圧力を作用させて変形させた場合の各L1部に生じる応力分布をシミュレーション解析した結果、Δ型では新たに連結部の固定端寄り付け根部に設けた曲げ代部分にも強い応力が集中する傾向があることはわかったが、圧電素子形成部の領域においては両者ともにほぼ同等の強度の応力と分布傾向になることを確認している。(但し、本構成ではL1部とΔ構造部の連結部が必要であるが、基本的にこの連結部の剛性はより高く変形が少ないため、この領域が余り長くなるとL1部で歪を生じる領域が狭くなり圧電素子を形成できる面積も減少するので、同じサイズでプローブを作成する場合には全体的な信号レベルは低下する傾向になる。このため、本実施例ではこの連結部の長さを極力少なくし、1mmに留めている)
以上のように基本検知特性に問題は無いと予想される一方、本実施例のプローブの他の特徴として、下記の通り、加工精度や機械的安定性の面でも有利となる。
【0083】
◎加工性の面において、
板金切り出し加工精度で先端構造部の形状が加工でき、折り曲げ加工精度も単純な直角折り曲げのみで加工できるため、加工後の先端位置や角度の精度を向上しやすい
◎機械的強度の面において
従来S字型プローブは、
・2箇所の折り曲げ部の折り曲げ中心軸は回転可能にプローブを保持する回転軸の回転平面と交差するため、プローブの回転動作中(走査時の順方向とジャム処理時の逆方向の2方向がある)にこれらの折り曲げ部を変形させる外力が作用しやすい
・2箇所の折り曲げ部の折り曲げ角度が鋭角なためより鋭角になる方向に変形しやすい
など機械的強度に不安が残るが、
本実施例のプローブでは、
・各折り曲げ部の折り曲げ中心軸は回転可能にプローブを保持する回転軸の回転平面と平行なため、プローブの回転動作中に折り曲げ部を変形させる外力が作用しにくい
・2箇所の折り曲げ部の折り曲げ角度が直角なため、各面に対して垂直に作用する外力によって鋭角部を圧縮するような場合や鈍角部を広げるような場合に比べてより変形しにくい
以下に上記の左右折り曲げ底面付きΔ型センサプローブ18’を実際のユニットに取り付けて表面粗さの異なるシート材を搬送させながら検知させた際の構成の実験結果について記載する(但し、材質及び寸法や速度などの各数値はあくまで本実施例の一条件であり、本発明のセンサの性能は必ずしもこれらの条件に限定して得られるものではなく、被測定物や装置の形状及び大きさ、検知速度などさまざまな条件の組み合わせに応じて各々適した材質及び寸法や速度など許容可能範囲も含めて多数存在することは言うまでも無い)。
【0084】
まず、本実験において、左右折り曲げ底面付きΔ型センサ18’は図4(A)のセンサユニットに紙を通紙させた場合の紙搬送側面図に示すように設定されており、プローブの材質はSUS344製で厚さが0.15mm、上平坦部の幅が4mm、長さが15mmである。また、圧電素子15bは3mm×5mmの大きさで厚さ0.2mmのPZTを用いており、この上平坦部の左右折り曲げ部側端部から3mmだけ固定端側寄りの位置にエポキシ系接着剤により接着されている(圧電素子の長さは上記構成上、従来のS字型センサよりも1mm短くなっており、このため、若干の信号出力の低下が生じている)。
【0085】
また、セラミックチップ16は厚さ0.3mmのジルコニア製で、円盤状の形状をしており、サイズとしては円盤の直径=3.6mmのチップを使用し、プローブ板金先端の底面部にロウ付けされている。そして、必ずこのジルコニアチップの先端部が先に当接するようにジルコニアチップの先端部をプローブ板金先端部から距離dだけはみ出して固定されている。ここではd=0.5mmとしてジルコニアチップの先端部が搬送路面と不図示の加圧手段(ねじりコイルバネ)によって0.1Nの力で当接され、搬送されるシート材表面と接触する構成となっており、ジルコニアチップの円周最下点部でシート材7を摺擦することで搬送方向の前後方向及び回転軸15eを中心とした上下回転方向に振動と離着衝撃を繰り返して、圧電素子15bにひずみを誘起し、その強弱によって主にシート材表面の粗さを識別している。
【0086】
図4(B)はこのようにして構成されたプローブを有するセンサユニットに前記図13のグラフ作成時と同様に最初にOHT用紙(以下OHTと称する)を通紙した後、基本的に坪量の小さな紙を左から右へと順にラフ紙と平滑紙を交互に通紙した際の各紙種を横軸、その検知信号レベルを縦軸に取って作成したグラフであり、同時に各紙に対して非接触表面粗さ計による平均表面粗さ=Ra[μm]の測定結果(丸形プロット点、破線)もプロットしている。尚、上記検知結果はセンサの純粋な表面粗さ検知特性のみを評価するためにセンサを既存の高速の画像形成装置と同等の紙搬送速度で通紙可能、且つ、紙に対して屈曲変形を生じないような反走路を有する冶具に搭載して各紙の全長の1/4程度の距離を走査して表面性を検知させた際の検知信号を積分処理した信号レベルをプロットしたものである。
【0087】
このグラフから明らかなように、この左右折り曲げ底面付きΔ型センサプローブ18’を用いた紙表面の検知結果は、前記図13の従来方式のS字型表面性検知センサ以上に表面粗さ計の測定結果と非常に良い相関が得られていることがわかる(但し、本センサの圧電素子部の寸法は小型化しているため、出力信号レベルは全体に低くなっている)
【実施例2】
【0088】
図5(A)〜(C)は各々本発明の実施例2に係るシート材識別装置のプローブ板金展開図、プローブ板金斜視図、圧電素子および先端セラミックチップ取り付け後のプローブ全体斜視図である。尚、これらの各図において、図13に示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0089】
本実施例では、母材となる大判の板金から図5(A)に示すように、短冊状板金部分の長辺方向の両端部において、一方の端部付近に従来と同様のネジ止め用穴15a’を開け、逆側端部の片脇に片側用Δ形状部19a及び片側用長方形形状部19bを有する先端構造形成用展開部の形状に沿って片側折り曲げ代19cを設けて板金を切り出し、同図の各点線部でこの板金を各々直角に折り曲げて図5(B)に示すような平坦部の先端部左脇から折り曲げた板金で側面Δ形状部と底面部を有するΔ型構造部を形成した片側折り曲げ底面付きΔ型プローブ板金19を形成している。この板金に実施例1と同様の方法で圧電素子部と円盤状セラミックチップを取り付けて線さプローブを完成させると図5(C)の斜視図に示すようになる。
【0090】
本実施例の特徴としては、基本的に実施例1と同様、プローブ先端部にΔ型形状を斜めに傾けた形状の構造を有しているが、実施例1のプローブが板金平坦部の左右両側から折り曲げた板金でプローブ先端部を形成していたのに対し、片側だけで形成しているため、材料と加工工程が節約できるようになる。一方、実施例1の構成に比べるとプローブの側面側から強い外力が加わった場合の形状安定性の面で不利となるが、実際に装置に組み込んだ状態では紙の搬送方向に直交するような側面方向から外力が作用することはほとんどありえず、本プローブを用いても問題は無い。
【0091】
本実施例のプローブを用いたセンサにおいても、実施例1と同様、このΔ型形状部の最下端部の位置及び底面部の形成する角度は従来のS字型センサの板金先端位置及び先端側折り曲げ部の形成する角度と同じで、プローブ先端当接部が走査される被測定物表面の粗さなどに起因する摩擦抵抗差に応じて走査方向に変位した際に生じるプローブ平坦部の歪強度ならびに回転可能に取り付けられた回転軸を中心としてプローブ全体が先端部の摩擦力の反作用により跳ね上げられた際の跳ね上げ方向上部衝突時と跳ね戻り方向下部衝突時に各々生じる歪強度は従来のS字型プローブと大差ないようにシミュレーション解析を基に作成しているため、これらの歪強度(より厳密には歪加速度)に応じて発生起電力が変化する圧電素子部から得られた検知電気信号の強弱によって被測定物表面の摩擦抵抗即ち同種の材質間ではその表面粗さをほぼ同じように検知することができるようになる。
【実施例3】
【0092】
図6(A)〜(C)は各々本発明の実施例3に係るシート材識別装置のプローブ板金展開図、プローブ板金斜視図、圧電素子および先端セラミックチップ取り付け後のプローブ全体斜視図である。尚、これらの各図において、図13に示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0093】
本実施例では、母材となる大判の板金から図6(A)に示すように、短冊状板金部分の長辺方向の両端部において、一方の端部付近に従来と同様のネジ止め用穴15a’を開け、逆側端部の片脇に片側1回折り用Δ形状部20aを有する先端構造形成用展開部の形状に沿って実施例2と同じ片側折り曲げ代19cを設けて板金を切り出し、同図の各点線部でこの板金を各々直角に折り曲げて図6(B)に示すような平坦部の先端部左脇から折り曲げた板金で側面Δ形状部を有するΔ型構造部を形成した片側1回折り曲げΔ型プローブ板金20を形成している。この板金に実施例1と同様の方法で圧電素子部を取り付ける一方、上記円盤状セラミックチップに替えて図6(C)に示すような断面形状が正方形で1辺の長さが3mm、長さ6mmの正四角柱形状のブロック状セラミックチップ16’を用いており、その側面部をプローブ板金のΔ形状部20aの内側面にロウ付けによって、
・板金下辺部にブロック状セラミックチップの長手方向を平行に揃える
・セラミックチップの長方形下面部が板金下辺部より下側に0.5mmはみ出させる
・セラミックチップの正方形下面部が板金最下端部の角部より板金下辺部下方延長方向に0.5mmはみ出させる
という条件で取り付けている。
【0094】
本実施例の特徴としては、基本的に実施例2と同様、プローブ先端部にΔ型形状を斜めに傾けた形状の構造を有しているが、実施例2のプローブが2回直角に折り曲げた板金で構成したのに対して、本実施例では1回直角に折り曲げただけの板金で構成し、従来及び実施例1のようにプローブ先端部に平面を形成して板状セラミックチップを取り付ける代わりに、側面部に十分な接着強度が得られるだけの接着面積を有するブロック状セラミックチップを用いて上記板金の内側面部に接着しており、折り曲げ回数を従来及び実施例1の2回に対して1回に減らせるため、加工精度の向上と加工コストの抑制を促進できるようになる。但し、本実施例の構成ではブロック状セラミックチップの底面部がシート材表面と接触するため、このブロック状セラミックチップの底面の幅を細くし過ぎて針状に近づけてしまうと摺擦するシート材表面に傷や先端部の局所的凹み跡をつけてしまう問題が発生するため、本実施例のように3mm以上の幅を持たせることが好ましい。
【0095】
本実施例のプローブを用いたセンサにおいても、実施例1及び2と同様、このΔ型形状部の最下端部の位置及び底面部の形成する角度は従来のS字型センサの板金先端位置及び先端側折り曲げ部の形成する角度と同じで、プローブ先端当接部が走査される被測定物表面の粗さなどに起因する摩擦抵抗差に応じて走査方向に変位した際に生じるプローブ平坦部の歪強度ならびに回転可能に取り付けられた回転軸を中心としてプローブ全体が先端部の摩擦力の反作用により跳ね上げられた際の跳ね上げ方向上部衝突時と跳ね戻り方向下部衝突時に各々生じる歪強度は従来のS字型プローブと大差ないようにシミュレーション解析を基に作成しているため、これらの歪強度(より厳密には歪加速度)に応じて発生起電力が変化する圧電素子部から得られた検知電気信号の強弱によって被測定物表面の摩擦抵抗即ち同種の材質間ではその表面粗さをほぼ同じように検知することができるようになる。
【実施例4】
【0096】
図7(A)〜(E)は各々本発明の実施例4に係るシート材識別装置のプローブ先端樹脂部材斜視図、プローブ先端樹脂部材側面図、プローブ先端樹脂部材底面部へのセラミックチップ取り付け説明図、プローブ平坦部上面、プローブ平坦部への先端樹脂部取り付け説明図と完成プローブ斜視図である。尚、これらの各図において、図13に示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0097】
本実施例では、プローブ先端部に形成するΔ型構造部として図7(A)の斜視図に示すような樹脂製Δ型構造部21を用いており、その側面形状として図7(B)の側面図に示すようにΔ型形状を有するΔ型側面部21a、上部に板金取り付け用突起21c、セラミックチップ取り付け部付き底面部21dなどで構成され、この底面部21dを正面から見ると図7(C)に示すように、底面下側に上側より低い高さの円弧状段差部21eが予め設計された位置に形成されており、ここに円盤状セラミックチップ16を差し込むように突き当てて取り付け、接着剤で接着すると矢印右側のように下辺部からセラミックチップ先端部を距離dだけはみ出させて取り付けることができ、本実施例では円弧状段差部21eの段差を0.5mmとし、厚さ0.5mm、Φ3.6mmの円盤状セラミックチップを用いて実施例1と同様d=0.5mmで取り付け可能となるように円弧状段差部21eの形状を設計しているが、このはみ出し量は樹脂の加工精度で容易に得られるため、組み立て加工工程を簡略化できる。
【0098】
次に、この樹脂製Δ型構造部21を取り付けるためのプローブ平坦部は図7(D)の上面図に示すように、別体の板金で構成された樹脂製プローブ用平坦板金22を用いており、この上面図からわかるように、板金の片方の端部には従来と同様のネジ止め用穴15a’が設けられ、中央部に圧電素子15bと信号線接続用のハンダ電極15b’が形成され、その先の逆側端部には樹脂製Δ型構造部の突起を取り付けるための樹脂製Δ型構造部取り付け穴22aが設けられている。図7(E)に示すように、樹脂プローブ用平坦板金22の下方から樹脂製Δ型構造部の突起部21bを取り付け穴22aに差込み、接着剤により接着することで、矢印先の斜視図に示すような樹脂製Δ型プローブ23となる。
【0099】
本実施例の特徴としては、
・板金加工は板金の切り出しのみとなり折り曲げ加工が不要となる
・プローブ先端部に設けるΔ型構造部を樹脂の加工精度で実現できる
・Δ型構造部の変形が無視できる
・先端部に取り付けるセラミックチップ取り付け工程を高精度且つ容易化できる
などの点があり、平坦部とΔ型構造部の接着工程が増えるものの、全体としてはより高精度且つ安価に製造することが可能となる。
【0100】
尚、この接着方法に関してはセラミックチップを取り付ける樹脂には耐熱性の制約からロウ付けを施すことは困難であるため、接着剤を使用することになるが、効率化のために、
・圧電素子の接着に使用するエポキシ系接着剤を用いて、
・圧電素子と平坦板、平坦板とΔ型樹脂部、Δ型樹脂部とセラミックチップの各界面を同時に接着することが好ましい。
【0101】
本実施例ではさらに樹脂を用いることを利用して効率化するため、
・樹脂材料として透明なポリカーボネートを使用
・接着剤としてUV硬化型接着剤を使用
とすることで、平坦部と樹脂部及び樹脂部とセラミックチップ部の接着をUV光照射により同時に短時間で接着処理している(尚、平坦部もΔ型部とともにポリカーボネートで形成し圧電素子の接着も同時に行う可能であるが、この場合には圧電素子の裏面電極と配線の接続に工夫が必要となる)。
【0102】
尚、樹脂を用いることを利用する他の手段として、
・樹脂の加工型に平坦部の板金と先端部のセラミックチップを組み込む
・インサート成形により樹脂成形工程と同時に平坦部と先端部を一体化する
というインサート成形による加工工程の効率化も可能である。
【0103】
本実施例のプローブを用いたセンサにおいても、このΔ型形状部の最下端部の位置及び底面部の形成する角度は従来のS字型センサの板金先端位置及び先端側折り曲げ部の形成する角度と同じであり、プローブ先端当接部が走査される被測定物表面の粗さなどに起因する摩擦抵抗差に応じて走査方向に変位した際に生じるプローブ平坦部の歪強度ならびに回転可能に取り付けられた回転軸を中心としてプローブ全体が先端部の摩擦力の反作用により跳ね上げられた際の跳ね上げ方向上部衝突時と跳ね戻り方向下部衝突時に各々生じる歪強度は従来のS字型プローブと大差ないようにシミュレーション解析を基に作成しているため、これらの歪強度(より厳密には歪加速度)に応じて発生起電力が変化する圧電素子部から得られた検知電気信号の強弱によって被測定物表面の摩擦抵抗即ち同種の材質間ではその表面粗さをほぼ同じように検知することができるようになる。
【実施例5】
【0104】
図8(A)、(B)は各々本発明の実施例5に係るシート材識別装置のプローブ先端樹脂部材底面へのセラミックチップ取り付け説明図、プローブ平坦部への先端樹脂部取り付け説明図と完成プローブ斜視図である。尚、これらの各図において、図13に示したものと同一要素には同一符号を付している。
【0105】
本実施例では、プローブ先端部に形成するΔ型構造部として基本的に実施例4と同様の樹脂製Δ型構造部でその底面部にカット面付きセラミックチップを取り付ける構成とした先端カット面付き樹脂製Δ型構造部24を用いており、その底面部24dを正面から見ると図8(A)に示すように、底面下側に上側より低い高さで中央部に測定面に平行となる水平部とその左右に円弧状部を有する水平部付き円弧状段差部24eが予め設計された位置に形成されており、ここに上下に2つの平行な水平方向のカット面を有する平行カット面付きセラミックチップ16”を差し込むように突き当てて取り付けて接着すると矢印右側のように下辺部からセラミックチップ先端部を距離dだけはみ出させて取り付けることができ、本実施例では3mm幅の水平部付き円弧状段差部24eの段差を0.5mmとし、厚さ0.5mmでΦ3.6mmの円弧部と3mm幅の2つの平行なカット面付きセラミックチップを用いて実施例1と同様d=0.5mmで取り付け可能となるように水平部付き円弧状段差部24eの形状を設計している。
【0106】
次に、この先端カット面付き樹脂製Δ型構造部24を取り付けるためのプローブ平坦部は実施例1と同様の樹脂プローブ用平坦板金22を用いており、図8(B)に示すように、樹脂プローブ用平坦板金22の下方から突起部21bを取り付けて、矢印先の斜視図に示すような先端カット面付き樹脂製Δ型センサプローブ25となる。
【0107】
本実施例の特徴としては、プローブ先端に被測定平面と平行な辺を有する平坦当接部を形成してこの平坦当接部の幅を調整することでプローブとシート材表面の間に作用する摩擦力強度を選択可能とする場合の平坦当接部の取り付け方法を樹脂製部品を活用することで簡易化した点にあり、具体的には
・樹脂製Δ型構造部の底面部セラミックチップ取り付け用段差部の測定面に平行な水平部を設ける。
【0108】
・取り付ける側のセラミックチップとして円盤状チップを基に先端当接部に所望の幅のカット面を形成しこのカット面に平行なカット面を形成する(本実施例では2つのカット面の幅を同一にしているが必ずしも同じにする必要は無く、先端当接部と逆側のカット面の幅は樹脂座面に設けた水平部の幅に収まるように設定されていれば良い)。
【0109】
・セラミックチップを樹脂の段差部にはめ込み接着するだけで、プローブ先端の平坦当接部は被測定平面と平行となる。
【0110】
のようにして容易に実現できる。
【0111】
先端部に平坦部を設けることは上記のように接触する幅を調整可能にできるので生じる摩擦強度を所望の強度に合わせる際に有効となり、通常の繊維で構成される紙系のシート材では平坦部の幅を大きくするほど検知信号が低くなり、逆に密着性の高い表面を有する樹脂系シート材では摩擦強度が増して信号レベルも増大する傾向があるが、平坦当接部の平坦面を設けたために左右の角部も形成されるため、万一カット面付きセラミックチップが大きく傾いて取り付けられてしまうと、逆に鋭い先端形状で走査することになり、逆特性になり兼ねないため、本実施例のように構成することが有効である。
【0112】
本実施例のプローブを用いたセンサにおいても、このΔ型形状部の最下端部の位置及び底面部の形成する角度は従来のS字型センサの板金先端位置及び先端側折り曲げ部の形成する角度と同じであり、プローブ先端当接部が走査される被測定物表面の粗さなどに起因する摩擦抵抗差に応じて走査方向に変位した際に生じるプローブ平坦部の歪強度ならびに回転可能に取り付けられた回転軸を中心としてプローブ全体が先端部の摩擦力の反作用により跳ね上げられた際の跳ね上げ方向上部衝突時と跳ね戻り方向下部衝突時に各々生じる歪強度は従来のS字型プローブと大差ないようにシミュレーション解析を基に作成しているため、これらの歪強度(より厳密には歪加速度)に応じて発生起電力が変化する圧電素子部から得られた検知電気信号の強弱によって被測定物表面の摩擦抵抗即ち同種の材質間ではその表面粗さをほぼ同じように検知することができるようになる。
【0113】
ここで、上記実施例4と5において先端部に取り付ける当接部材としてセラミックチップ(本発明においてはいずれもジルコニア製)を使用したが、これはシート材が200mm/秒以上の高速で搬送され、且つその繰り返し回数が45万回以上の高い耐久性を要求される製品に対して使用したものであり、センサ先端部に高い耐磨耗性が求められないような製品寿命の比較的短い製品や製品寿命中に複数回交換する部品に取り付けられるような構成においては必ずしもセラミックチップを用いる必要は無く、求められる耐久性に応じてSUS板金など少なくとも樹脂よりも硬度の高い材質でより安価な材料を用いても良いことは言うまでも無い。
【実施例6】
【0114】
図9は本発明の実施例6に係るシート材識別装置を搭載したインクジェット型画像形成装置の断面図である。
【0115】
本実施例では、実施例3に示した片側1回折り曲げΔ型プローブ板金20をプローブに用いたS字型表面性検知センサ15を図9に示すようなインクジェットプリンタに応用することにより紙種検知機能付きインクジェットプリンタ26を構成している。
【0116】
本画像形成装置は、この断面構造において次のように構成されている。すなわち、給紙トレイ27、インクジェット用の給紙ローラ29(シート材搬送手段に相当)、紙ガイド28、ピンチローラ対30、記録ヘッド31(吐出式画像形成手段に相当)、プラテン32、排紙ローラ対33等で構成されている。
【0117】
この方式の画像形成装置は、記録ヘッド31までシート材7を搬送した後、シート材移動方向に対して直角なシート材幅方向に記録ヘッド31を往復運動させて主走査方向の画像を形成し、副走査方向についてはステップ送りで画像を形成する方式が主流である。本実施例もこの方式であるため、実施例1乃至実施例6で搭載した電子写真方式の画像形成装置に比べると比較的紙搬送速度が遅く、コスト的にもより安価な構成が求められる。このため、本実施例ではコストを安価に抑えるため、片側1回折り曲げΔ型プローブ板金20を用いて加工精度を向上しつつより安価な紙種検知機能付きインクジェットプリンタを実現している。
【0118】
尚、本画像形成装置では、一般的にはシート材の特性としてシート材表面によるインクのはじき性や浸透性などに関連するシート材の表面粗さや材質差に関する情報の方が厚さ情報より重要であり、厚さに関しては薄いシート材に対してインクを載せすぎた場合の画像の裏移りによる裏面のインク汚れやシート裏面に画像が透けて見えるなどの問題が懸念される程度で、一定以上の厚さを有するシート材においては搬送路に通紙可能な厚さ範囲内であれば、余り厚紙の識別を細かく行う必要は無く、センサとしては薄紙検知性が十分機能すればよい。しかしながら、本実施例ではこのように紙押さえ手段を廃止して安価に構成させたS字型表面性検知センサ15を用いているため、紙押さえ手段を設けた構成のセンサに比べてより紙厚差に対する検知性能が向上し、余分な厚さ情報まで検知しやすくなる。このため、本装置の構成では積極的にセンサ検知部周辺にシート材をその剛性に応じて屈曲変形させるような工夫を設けずに、薄紙の検知信号のみが低く検知されるように、センサ検知部直下の紙ガイド24の紙搬送面に紙ガイド斜面24’を設けた段差構造を付与している。これにより、剛性の低い薄紙のみこの斜面に沿って傾斜しながらプローブ先端部と摺擦されるのでプローブ先端と紙表面の当接圧力が低下して摩擦強度が減衰し、結果として検知信号を低くできる。一方、所定以上の厚さ(剛性)を有するシート材はこの斜面部に到達してもすぐに斜面に沿って変形することなく、斜面部との間に隙間を生じながら紙ガイドの平端部における高さを各シート材の剛性に応じて一定長さ分だけ維持するので、薄紙より厚いシートでは主にその表面粗さのみが検知されるようになる。
【0119】
このようにして検知された情報に基づき不図示の制御部(制御手段に相当)が、シート材7の表面粗さや材質及び厚さの差など複数の条件に応じたインク吐出量を最適化し制御することが可能となる。このように、本実施例はシート材7の特性に応じた最も良好な画質が得られるようにしたものであり、本実施例の構成により、先端カールを有する薄紙が搬送されても搬送不良を招くことなく、またジャム発生時に万一逆方向に引き戻すような力が作用してもプローブを破損することなく安定してシート材7の識別能力の長期に渡る信頼性向上などを促進できるようになる。
【0120】
尚、本実施例では安価に装置を実現することを優先して紙押さえ手段を有しない低コストのセンサ構成を用いたが、特にコストを優先する必要が無い場合には紙押さえ手段とセンサ検知部周辺にシート材屈曲構造または手段を設けてプローブの当接圧と紙押さえ圧力を調整する方法で実現しても良いことは言うまでも無い。
【実施例7】
【0121】
図10は本発明の実施例7に係るサーマルヘッド型画像形成装置の断面図である。
【0122】
本実施例では、S字型表面性検知センサ15を図8に示すようなサーマルヘッドプリンタに応用することにより紙種検知機能付きサーマルヘッドプリンタ34を構成している。
【0123】
本発明におけるサーマルヘッド型画像形成装置は、インクリボン37、一対のインクリボン搬送ローラ35、サーマルヘッド36(熱転写式画像形成手段に相当)、ヘッド対向板兼紙搬送ガイド38等で構成されている。通常、プリント信号を受け取ってから不図示の給紙ローラ及び紙搬送ローラ(シート材搬送手段に相当)によりシート材7はヘッド対向板兼紙搬送ガイド38と給紙側のインクリボン搬送ローラ35のニップ部まで搬送される。そして、シート材7はインクリボン37とヘッド対向板兼紙搬送ガイド38の間に挟持された後、インクリボン37に密着したままインクリボン37と共にサーマルヘッド36部まで搬送される。ここで、サーマルヘッド36部にプリント信号に応じて必要な電力が供給されてインクリボン37上のインク層37’を加熱溶融して熱的にシート材表面に転写する。これにより、そのシート材7上にインク画像37”を形成した後、搬送ローラ部の動作によって順次送り出されるように構成されている。
【0124】
この方式の画像形成装置も上記実施例で搭載した電子写真方式の画像形成装置に比べると比較的紙搬送速度が遅く、コスト的にもより安価な構成が求められる。このため、本実施例ではコストを安価に抑えるため、実施例3に示した片側1回折り曲げΔ型プローブ板金20をプローブに用いたS字型表面性検知センサ15を用いてより安価な紙種検知機能付きサーマルヘッドプリンタを実現している。
【0125】
本実施例では、ヘッド対向板兼紙搬送ガイド38部と給紙側のインクリボン搬送ローラ35のニップ部より手前のヘッド対向板兼紙搬送ガイド38部の対向位置に上記のように安価な構成のS字型表面性検知センサ15を配置する。そして、このS字型表面性検知センサ15のプローブ先端当接部のシート材搬送方向上流側近傍には、ヘッド対向板兼紙搬送ガイド38の上流側傾斜面と対向する紙搬送斜面上ガイド38’で構成される上流側シート材凸型変形搬送路38”がプローブの下方からプローブ先端部を突き上げるようなシート材搬送を可能とする位置及び角度で設けられている。この上流側シート材凸型変形搬送路38”(シート材変形手段に相当)は、シート材搬送平面の下方向(搬送平面に対してプローブから遠ざかる方向)にシート材搬送路を折り曲げた構成である。このように、シート材搬送路に屈曲構造を設けてセンサS字型表面性検知センサ15の検知信号でシート材7の表面性の情報に加えてシート材7の剛性の情報を検知可能とする構成において、特にシート材の屈曲変形方法としてプローブの斜め下方からシート材を搬送してセンサのプローブ先端部でシート材を屈曲させると、斜め上方向へのシート材搬送力とシート材の屈曲部における上方向への変形圧力が合成されるため、プローブ先端部はより強く上方向に持ち上げられやすくなり、紙厚(剛性)検知特性を強化することができる。さらに本構成ではセンサ自体も紙押さえ手段を廃した紙厚(剛性)検知性能の高い構成であるため、本構成によってシート材の紙厚差は特に検知されやすくなっている。サーマルヘッド型画像形成装置は使用されるシート材の表面粗さが熱抵抗となって表面が粗いシート材ほど温度が上がりにくく、インクの転写性が低下する作用が働く一方、その厚さ(熱容量)によっても同じ温度に加熱するために必要な電力が変化し、厚いシート材ほど供給電力を増大させる必要があるので、このようにシート材の厚さ検知性能を強化した構成を用いることが好ましく、検知された情報に基づき不図示の制御部(制御手段に相当)が、シート材表面の接触熱抵抗に加えてシート材7の熱容量に応じたサーマルヘッド36部への供給電力量を最適化して制御することが可能となる。そして、シート材7の特性に合わせて必要最小限の温度及び電力で最も良好な画質が得られるようになる。
【0126】
ここで、以上の各実施例においてプローブ先端部の構造部の形状は側面から見てΔ型になるものを用いてきたが、これは先端構造部の側面形状として必要最小限の基も単純な形状の代表として用いたものであり、少なくともこのΔ形状部と平坦部との連結部の中央部、3点を網羅する形状であれば先端部及び右上方部の使用条件に対して許容できる機械的強度及びサイズ範囲内においてより複雑な多角形、即ち、図16(A)の側面図及び斜視図に示すような側面形状がS字型になるように板金を切り抜かれたS字型切抜きプローブ39や、図16(A)の側面図及び斜視図に示すような側面形状がL字型になるように板金を切り抜かれたL字型切抜きプローブ40などの多角形に変形して用いても良く、これは樹脂製プローブにおいても同様であり、シート材の搬送やプローブ自体の可動範囲に対して弊害の無い限り、さまざまな多角形を用いてもよいことは言うまでも無い。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の実施例1に係るシート材識別装置を示す図で、(A)はプローブ展開図、(B)はプローブ斜視図、(C)はプローブ側面図、(D)はセンサ斜視図である。
【図2】従来例に係るS字型表面性検知センサの基本検知原理説明図図で、(A)はシート材進入直前のプローブ断面模式図、(B)はシート材先端部通過途中のプローブ断面模式図である。
【図3】本発明の実施例1に係るΔ型表面性検知センサの基本検知原理説明図で、(A)はシート材進入直前のプローブ断面模式図、(B)はシート材先端部通過途中のプローブ断面模式図である。
【図4】本発明の実施例1に係るシート材識別装置及び実験結果を示す図で、(A)はΔ型プローブ付きセンサユニット断面図、(B)はΔ型プローブ付きセンサの表面粗さ検知特性を説明するグラフである。
【図5】本発明の実施例2に係るシート材識別装置を示す図で、(A)はプローブ展開図、(B)はプローブ斜視図、(C)はセンサ斜視図である。
【図6】本発明の実施例3に係るシート材識別装置を示す図で、(A)はプローブ展開図、(B)はプローブ斜視図、(C)はセンサ斜視図である。
【図7】本発明の実施例4に係るシート材識別装置を示す図で、(A)は樹脂ブロック斜視図、(B)は樹脂ブロック側面図、(C)は樹脂ブロック底面チップ取り付け説明図、(D)は樹脂プローブ用平坦板金上面図、(E)は樹脂ブロック取り付け説明図及びセンサ斜視図である。
【図8】本発明の実施例5に係るシート材識別装置を示す図で、(A)は樹脂ブロック底面チップ取り付け説明図、(B)は樹脂ブロック取り付け説明図及びセンサ斜視図である。
【図9】本発明の実施例4に係る紙種検知装置付きインクジェットプリンタの概略構成断面図である。
【図10】本発明の実施例5に係る紙種検知装置付きサーマルヘッドプリンタの概略構成断面図である。
【図11】従来例に係る電子写真方式の画像形成装置の要部構成断面図である。
【図12】従来例に係るS字型表面性検知センサを示す図で、(A)はS字型表面性検知センサの紙搬送路周辺断面図、(B)はS字型表面性検知センサの取り付け状態上面図、(C)はS字型表面性検知センサによる定着器制御系ブロック図である。
【図13】従来例に係るシート材識別装置の表面粗さ検知特性を説明するグラフである。
【図14】(A)は従来例に係るシート材識別装置のシート厚検知原理説明図で、(B)は従来例に係るシート材識別装置のシート厚検知特性グラフである。
【図15】(A)は従来例に係るシート材識別装置のプローブ斜視図、(B)は従来例に係るシート材識別装置のプローブホルダー斜視図、(C)は従来例に係るシート材識別装置の全体斜視図である。
【図16】(A)本発明に係る他の形状例として板金をS字型に切り抜いたプローブの側面及び斜視図、(B)は本発明に係る他の形状例として板金をL字型に切り抜いたプローブの側面及び斜視図である。
【符号の説明】
【0128】
1 帯電ローラ
2 感光ドラム
3 露光手段
4 現像器
5 トナー
6 転写ローラ(画像形成手段に相当)
7 シート材(被測定物に相当)
7’ 薄紙
7” 厚紙
7e 転写前搬送ローラ(シート材搬送手段に相当)
8 除電ブラシ
10 クリーニング容器
12 定着器(定着手段に相当)
15 S字型表面性検知センサ(表面性識別装置に相当)
15a S字型プローブ
15a’ プローブ固定ネジ取り付け穴
15b 圧電素子
15b’ ハンダ電極
15c プローブホルダー
15d 座金付き固定ネジ
15g センサ保持板
15g’ 屈曲センサ保持板(シート材変形手段に相当)
15h 搬送平面板
15h’ 屈曲搬送平面板(シート材変形手段に相当)
15i センサ固定ベース
15i’ シート材ガイドリブ
15’ 制御部
15’a 推測部
15’b 温度テーブル
16 円盤状セラミックチップ
16’ ブロック状セラミックチップ
16” 平行カット面付きセラミックチップ
17 紙押さえコロ
18 左右折り曲げ底面付きΔ型プローブ板金
18a Δ形状部
18b 長方形形状部
18c 折り曲げ代
18’ 左右折り曲げ底面付きΔ型センサプローブ
19 片側折り曲げ底面付きΔ型プローブ板金
20 片側1回折り曲げΔ型プローブ板金
21 樹脂製Δ型構造部
22 樹脂製プローブ用平坦板金
22a 樹脂製Δ型構造部取り付け穴
23 樹脂製Δ型プローブ
24 先端カット面付き樹脂製Δ型構造部
25 先端カット面付き樹脂製Δ型センサプローブ
26 紙種検知機能付きインクジェットプリンタ
29 給紙ローラ(シート材搬送手段に相当)
31 記録ヘッド(吐出式画像形成手段に相当)
34 紙種検知機能付きサーマルヘッドプリンタ
36 サーマルヘッド(熱転写式画像形成手段に相当)
37 インクリボン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧電素子部と、先端当接部と、前記先端当接部が被測定物の走査方向前後に振動可能となる機械的構造部と、前記走査方向に垂直乃至垂直に近い且つ走査平面に平行乃至平行に近い回転軸に回転可能に固定される固定端部とを有するプローブと、前記回転軸を中心として前記走査方向と逆方向に前記プローブを加圧する加圧手段とを備える表面性識別装置であって、
前記プローブは、
前記固定端部近傍に前記圧電素子部を形成可能な平坦部と、
該平坦部と前記先端当接部の間に、板厚成分を除いて、前記平坦部の平面に直交する側面または断面を有する立体的構造部を有し、該立体的構造部は、前記固定端部を右側に配置した際の前記平坦部側面方向から見て、
少なくとも前記平坦部の左端部との連結中央部と、
前記先端当接部と、
該先端当接部の右斜め上方部と、
の3点を頂点として含む多角形となる構造部と
を有することを特徴とする表面性識別装置。
【請求項2】
請求項1に記載の表面性識別装置において、
前記立体的構造部は、
前記固定端部を右側に配置した際の前記平坦部側面方向から見て、前記平坦部の左端部との連結中央部と、前記先端当接部と、該先端当接部の右斜め上方部の3点を頂点とするΔ型形状となる構造部である
ことを特徴とする表面性識別装置。
【請求項3】
請求項1に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、前記被測定物が該プローブに進入する際の前記先端当接部と該被測定物とのなす角度が鋭角となるよう、且つ、前記加圧手段による加圧が該プローブにより跳ね上げ可能な強度で加圧当接するよう、該被測定物の表面を走査し、
前記圧電素子部は、前記被測定物表面の凹凸及び摩擦係数に応じた振動及び衝撃による歪を誘起することにより電気信号を発生し、該電気信号の強度差を基に該被測定物表面の表面性を識別することを特徴とする表面性識別装置。
【請求項4】
請求項2に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、
金属板金から前記平坦部と前記Δ型形状部とを連結部を介して一体で切り出し、
切り出された該加工金属板金の前記連結部を直角に折り曲げて
加工された板金製プローブであることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項5】
請求項4に記載の表面性識別装置において、
前記固定端部を右側に配置した際の前記平坦部側面方向から見た前記Δ型形状部の板金下端部の板金側面部に、
接着手段を介して、
ブロック状セラミックチップを、
該ブロック状セラミックチップの下面が前記Δ型形状部の下辺と平行、
且つ、前記Δ型形状部の下辺より下方
に位置するよう貼り付け、
該ブロック状セラミックチップの最下辺部を前記先端当接部とすることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項6】
請求項2に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、
金属板金から、
前記平坦部と、
第1連結部を介して形成された前記Δ型形状部と、
前記Δ型形状部の底辺部と第2連結部を介して形成された平面部と
を一体で切り出し、
切り出された該加工金属板金の前記第1連結部及び前記第2連結部の各々を、
直角に折り曲げて加工された、
板金製プローブであり、
前記Δ型形状部の下端平面部の下辺部を前記先端当接部とすることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項7】
請求項6に記載の表面性識別装置において、
前記固定端部を右側に配置した際の前記平坦部側面方向から見た前記Δ型形状部の板金下端部の板金側面部に、
接着手段を介して、
板状セラミックチップを、
前記Δ型形状部の下端平面部と平行、
且つ、当接時に該板状セラミックチップ下辺部が被測定物表面と接触する位置に
貼り付け、
該ブロック状セラミックチップの下辺部を前記先端当接部とすることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項8】
請求項4〜請求項7に記載のいずれかの表面性識別装置において、
前記プローブは、
前記Δ型形状部と前記連結部、
または前記Δ型形状部と前記第1連結部と前記第2連結部と前記平面部
を、各々前記金属板金の前記平坦部両側に前記平坦部の長手方向中心線に対して線対称に2つずつ設けて一体で切り出し、
切り出された該加工金属板金の各連結部を直角に折り曲げて
加工された板金製プローブであることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項9】
請求項2に記載の表面性識別装置において、前記Δ型構造部は樹脂製であることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項10】
請求項9に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、
前記平坦部と前記Δ型形状部が一体成形された樹脂製プローブと、
先端当接部材と
の少なくとも2部品で構成され、接着手段を介して一体化された2体構成Δ型樹脂プローブであり、前記先端当接部材の下辺部を前記先端当接部とすることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項11】
請求項9に記載の表面性識別装置において、
前記プローブは、
金属板金製前記平坦部と、
樹脂製前記Δ型形状部と、
先端当接部材と
の少なくとも3部品で構成され、接着手段を介して一体化された3体構成Δ型樹脂プローブであり、前記先端当接部材の下辺部を前記先端当接部とすることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項12】
請求項10〜請求項11に記載のいずれかの表面性識別装置において、
前記先端当接部材は金属製であることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項13】
請求項10〜請求項11に記載のいずれかの表面性識別装置において、
前記先端当接部材はセラミック製であることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項14】
請求項10〜請求項13に記載のいずれかの表面性識別装置において、
前記Δ型形状部は透明樹脂製、
または、前記平坦部と前記Δ型形状部は透明樹脂製
であり、
前記平坦部と前記Δ型形状部と前記先端当接部材
または前記圧電素子と前記平坦部と前記Δ型形状部と前記先端当接部材
の各界面は、紫外線硬化性接着剤を用いて、紫外線照射することにより、一括で接着されることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項15】
請求項10〜請求項13に記載のいずれかの表面性識別装置において、
前記先端当接部材、
または前記平坦部と前記先端当接部材は、
樹脂製前記Δ型形状部の成形時に、インサート成形によって一体成形されることを特徴とする表面性識別装置。
【請求項16】
請求項1〜請求項15に記載のいずれかの表面性識別装置と、シート材を搬送するシート材搬送手段とを備え、前記被測定物は、前記シート材搬送手段により搬送されるシート材であり、
前記表面性識別装置は、前記プローブを前記回転軸に回転可能に固定したまま前記シート材を前記シート材搬送手段により搬送移動させて走査し、該シート材の表面性を識別することを特徴とするシート材識別装置。
【請求項17】
請求項16に記載のシート材識別装置において、
一定の圧力でシート材搬送平面に先端部を当接され、圧電素子部を有するプローブと、
前記シート材搬送手段により前記プローブの先端当接部との対向位置に搬送された前記シート材を前記シート材搬送平面から該プローブの先端当接部に向かって凸型に屈曲変形させるシート材変形手段
とを備え、
前記圧電素子部は、前記シート材変形手段によって凸型に屈曲変形した前記シート材表面から前記プローブの先端当接部が受ける圧力が各シート材の剛性差に応じて変化することに起因してシート材毎に異なる摩擦抵抗差を誘起し、該摩擦抵抗差に応じて変化する該プローブの先端当接部の振動及び衝撃強度差を歪強度差として電気信号に変換して検出し、該シート材の剛性差を識別することを特徴とするシート材識別装置。
【請求項18】
請求項16〜請求項17に記載のシート材識別装置と、前記プローブの当接位置を通過した前記シート材上にトナー像を形成する画像形成手段と、前記トナー像を加熱加圧して前記シート材表面に永久固着させる定着手段と、
シート材と該シート材の特性に応じて前記トナー像を前記定着手段により溶融固着するための定着温度とシート材搬送速度及び複数シート材搬送時のシート材搬送間隔の情報とを関連づけた判定テーブルと、
前記シート材識別装置の識別信号に基づき前記判定テーブルを参照し、該判定テーブルの情報に応じて前記定着手段を制御する制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項19】
請求項16〜請求項17に記載のシート材識別装置と、
前記プローブの当接位置を通過した前記シート材上にインクを吐出して画像を形成するインク吐出式画像形成手段と、
前記シート材識別装置の識別信号に応じて前記インク吐出式画像形成手段のインク吐出量を制御する制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項20】
請求項16〜請求項17に記載のシート材識別装置と、
前記プローブの当接位置を通過した前記シート材上にサーマルヘッドを用いてインクリボン上のインクを熱転写させる熱転写式画像形成手段と、
前記シート材識別装置の識別信号に応じて前記熱転写式画像形成手段の前記サーマルヘッドへの供給電力を制御する制御手段とを備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−300174(P2009−300174A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−153168(P2008−153168)
【出願日】平成20年6月11日(2008.6.11)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】