説明

表面改質組成物および積層体

【課題】本発明は、基板上に封止膜等の有機膜を転写して形成する際の有機膜の破損を防止できる材料を提供する。
【解決手段】フッ素系樹脂フィルムの表面に界面活性剤を含む表面改質材料層を形成するために用いられる表面改質組成物であって、フッ素系溶剤と、該フッ素系溶剤に溶解するフッ素系界面活性剤とを含有する表面改質組成物、および、フッ素系樹脂フィルムと前記樹脂フィルム上に形成されたフッ素系界面活性剤を含む表面改質材料層とを有する積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面改質材料および積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、機械的な動作で機能を発揮するマイクロエレクトロメカニカルシステム(MEMS)が注目されている。MEMSは、スイッチやセンサー等に用いられる部品であり、既に自動車のセンサー部等で実用化されており、我々の生活に無くてはならない部品となってきている。
MEMSは、基本的に、機械的可動部、電極部、および、外部電源から電極に電圧を印加するための外部接続端子(パッド)部からなり、可動部を損傷から保護するために封止膜で覆われている。
MEMSを保護する方法として、樹脂フィルム上に形成された封止膜をMEMS上に転写する樹脂封止方法が知られている。
【0003】
図2は、従来の封止膜形成方法を示す図である。
図2(A)に示すように、従来の積層体20は、樹脂フィルム11と、樹脂フィルム11の上に形成された有機樹脂からなる封止膜13とから構成される。
従来の封止膜形成方法は、樹脂フィルム11の表面に形成された封止膜13と基板14の表面とを加熱下において圧着させ(図2(B))、その後、樹脂フィルム11を封止膜13から剥離し(図2(C))、基板14の上に封止膜13を形成する方法である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の封止膜形成方法は、図2(C)に示すように、樹脂フィルム11と封止膜13との密着性が強過ぎるため、樹脂フィルム11を封止膜13から剥離する時に封止膜13が部分的に基板14から剥がれて破損する問題がある。
また、キャリアフィルム上にレジストフィルムが形成された、いわゆるドライフィルムにおいても、レジストフィルムを基板に圧着した後キャリアフィルムを剥離するが、同様にキャリアフィルムを剥離する際にレジストフィルムも部分的に基板から剥がれて破損する問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、基板上に封止膜等の有機膜を転写して形成する際の有機膜の破損を防止できる材料を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、樹脂フィルムと有機膜との密着性を有機膜と基板との密着性よりも低くすることにより、基板上に有機膜を転写して形成する際の有機膜の破損を防止できると考え、樹脂フィルムとして、表面エネルギーが小さいフッ素系樹脂フィルムを用いることを検討した。
しかしながら、表面張力が小さいフッ素系樹脂フィルム上に封止膜等の有機膜を構成する極性高分子を溶解させた溶液を塗布した場合、ハジキと呼ばれる現象が発生し、極性高分子を均一にコーティングすることは困難である。
本発明者は、更に鋭意検討した結果、フッ素系溶剤と該フッ素系溶剤に溶解するフッ素系界面活性剤とを含有する表面改質組成物を用いて上記樹脂フィルムの表面を改質すると、樹脂フィルム上に有機膜を均一にコーティングでき、かつ、樹脂フィルムと有機膜とを容易に剥離できるようになることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
即ち、本発明は、下記(1)〜(15)を提供する。
(1)フッ素系樹脂フィルムの表面に界面活性剤を含む表面改質材料層を形成するために用いられる表面改質組成物であって、
フッ素系溶剤と、該フッ素系溶剤に溶解するフッ素系界面活性剤とを含有する表面改質組成物。
(2)前記フッ素系界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である上記(1)に記載の表面改質組成物。
(3)前記非イオン性界面活性剤が、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位を含む重合体からなる上記(2)に記載の表面改質組成物。
【化3】


(式中、R1、R2およびR4は、それぞれ、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であり、Xは下記式(3)で表される基または下記式(4)で表される基であり、R3は、アルキレン鎖中に1つ以上のエーテル結合を含んでもよい直鎖状のもしくは分岐した炭素数1〜100のアルキレン基または単結合である。)
【化4】


(式中、Rf1はアルキル鎖中に1つ以上のエーテル結合を含んでもよい直鎖状のまたは分岐した炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、R5は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、nおよびmは、それぞれ、2〜10の整数である。)
(4)前記重合体が、前記式(1)で表される構造単位を5〜95モル%、前記式(2)で表される構造単位を95〜5モル%含む上記(3)に記載の表面改質組成物。
(5)前記非イオン性界面活性剤が、下記式(5)で表される化合物からなる上記(2)に記載の表面改質組成物。
Rf2−CH2CH(OH)CH2O−Y1−CH2CH(OH)CH2−Rf2 (5)
(式中、Rf2はアルキル鎖中にエーテル結合を含んでもよい直鎖状のまたは分岐した炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、Y1は直鎖状のもしくは分岐した炭素数10〜100のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基である。)
(6)前記非イオン性界面活性剤が、下記式(6)で表される化合物からなる上記(2)に記載の表面改質組成物。
Rf3−(CH2p−O−CH2CH(OH)CH2−O−Y2−R6 (6)
(式中、Rf3はアルキル鎖中にエーテル結合を含んでもよい直鎖状のまたは分岐した炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、Y2は直鎖状のもしくは分岐した炭素数10〜100のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基であり、R6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、pは1〜5の整数である。)
(7)前記非イオン性界面活性剤が、下記式(7)で表される化合物である上記(2)に記載の表面改質組成物。
Rf4−CONH−(CH2q−Si(OR73 (7)
(式中、Rf4はアルキル鎖中にエーテル結合を含んでもよい直鎖状のまたは分岐した炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、R7は炭素数1〜4のアルキル基であり、qは2〜10の整数である。)
(8)前記フッ素系溶剤が、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の表面改質組成物。
(9)前記フッ素系溶剤が、ハイドロフルオロエーテルである上記(8)に記載の表面改質組成物。
(10)前記ハイドロフルオロエーテルが、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタンである上記(9)に記載の表面改質組成物。
(11)フッ素系樹脂フィルムと前記樹脂フィルム上に形成されたフッ素系界面活性剤を含む表面改質材料層とを有する積層体。
(12)前記表面改質材料層が、前記樹脂フィルムの上に上記(1)〜(10)のいずれかに記載の表面改質組成物を塗布した後、前記フッ素系溶剤を除去して得られる上記(11)に記載の積層体。
(13)更に、前記表面改質材料層の上に形成された有機膜を有する上記(11)または(12)に記載の積層体。
(14)前記有機膜が、ポリイミド樹脂からなる上記(13)に記載の積層体。
(15)上記(11)に記載の積層体を製造する、積層体の製造方法であって、
前記フッ素系樹脂フィルム表面に、上記(1)〜(10)のいずれかに記載の表面改質組成物を塗布した後、前記フッ素系溶剤を除去して前記表面改質材料層を形成させて上記(11)に記載の積層体を得る、積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の表面改質組成物を用いてフッ素系樹脂フィルムの表面を改質することにより、上記樹脂フィルムの上に封止膜等の有機膜を均一に形成させることができる。また、上記樹脂フィルムとその上に形成される有機膜とが剥離し易くなるため、基板上に有機膜を転写して形成する際の有機膜の破損を防止できる。
また、本発明の積層体は、基板上に有機膜を転写して形成する際の有機膜の破損を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明をより詳細に説明する。
本発明の表面改質組成物(以下、「本発明の組成物」ともいう。)は、フッ素系樹脂フィルムの表面に界面活性剤を含む表面改質材料層を形成するために用いられる表面改質組成物であって、フッ素系溶剤と、該フッ素系溶剤に溶解するフッ素系界面活性剤とを含有する。
【0010】
本発明の組成物に用いられるフッ素系界面活性剤は、フッ素系溶剤に溶解できるフッ素原子を含む化合物からなる界面活性剤を特に制限なく使用できる。上記フッ素系界面活性剤としては、フッ素系溶剤に対する溶解性に優れる点から非イオン性界面活性剤が好ましい。
【0011】
上記非イオン性界面活性剤としては、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位を含む重合体が好ましい態様の1つである。
【0012】
【化5】

【0013】
上記式中、R1、R2およびR4は、それぞれ、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基である。R1およびR2は、それぞれ、水素原子またはメチル基が好ましく、R4は、水素原子または直鎖状のもしくは分岐した炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
3は、アルキレン鎖中に1つ以上のエーテル結合を含んでもよい直鎖状のもしくは分岐した炭素数1〜100のアルキレン基または単結合であり、R4が水素原子のときは、アルキレン鎖中に1つ以上のエーテル結合を含んでもよい直鎖状のまたは分岐した炭素数2〜20のアルキレン基であることが好ましく、R4が直鎖状のまたは分岐した炭素数1〜10のアルキル基のときは、アルキレン鎖中に1つ以上のエーテル結合を含んでもよい直鎖状のまたは分岐した炭素数1〜50のアルキレン基または単結合であることが好ましい。
Xは、下記式(3)で表される基または下記式(4)で表される基である。
【0014】
【化6】

【0015】
上記式中、Rf1はアルキル鎖中に1つ以上のエーテル結合を含んでもよい直鎖状のまたは分岐した炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、フッ素樹脂フィルムへの適度な親和性という点で、アルキル鎖中に1つ以上のエーテル結合を含んでもよい炭素数2〜10のフルオロアルキル基であることが好ましい。
5は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基である。
nおよびmは、それぞれ、2〜10の整数であり、2〜4の整数であることが好ましい。
【0016】
上記重合体としては、例えば、交互共重合体、ランダム共重合体、ブロック共重合体が挙げられる。
【0017】
上記重合体は、本発明の目的を損なわない範囲で上記式(1)で表される構造単位および上記式(2)で表される構造単位以外の構造単位も含むこともできるが、上記式(1)で表される構造単位および上記式(2)で表される構造単位のみから構成されるのが好ましい。
【0018】
上記重合体は、有機膜をコーティングする際のぬれ性という点から、式(1)で表される構造単位を5〜95モル%、式(2)で表される構造単位を95〜5モル%含むのが好ましく、式(1)で表される構造単位を5〜50モル%、式(2)で表される構造単位を95〜50モル%含むのがより好ましい。
【0019】
上記式(1)で表される構造単位および上記式(2)で表される構造単位を含む重合体の重量平均分子量は、1,000〜100,000であるのが好ましく、3,000〜50,000であるのがより好ましく、4,000〜40,000であるのが更に好ましい。分子量がこの範囲であると、溶解性および塗膜の均一性に優れる。
なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ法(GPC)による標準ポリスチレン換算値で示される。
【0020】
また、上記非イオン性界面活性剤としては、下記式(5)で表される化合物が好ましい態様の1つである。
【0021】
Rf2−CH2CH(OH)CH2O−Y1−CH2CH(OH)CH2−Rf2 (5)
【0022】
上記式(5)中、Rf2は、上記式(3)〜(4)のRf1と同様であり、2つのRf2は同一であっても異なっていてもよい。
1は、直鎖状のもしくは分岐した炭素数10〜100のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基であり、直鎖状のもしくは分岐した炭素数10〜50のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基が好ましい。
【0023】
また、上記非イオン性界面活性剤としては、下記式(6)で表される化合物が好ましい態様の1つである。
【0024】
Rf3−(CH2p−O−CH2CH(OH)CH2−O−Y2−R6 (6)
【0025】
上記式(6)中、Rf3は上記式(3)〜(4)のRf1と同様である。
2は直鎖状のもしくは分岐した炭素数10〜100のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基であり、直鎖状のもしくは分岐した炭素数10〜50のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基が好ましい。
6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、メチル基またはエチル基であるのがが好ましい。
pは1〜5の整数であり、1〜3の整数であるのが好ましい。
【0026】
また、上記非イオン性界面活性剤としては、下記式(7)で表される化合物が好ましい態様の1つである。
【0027】
Rf4−CONH−(CH2q−Si(OR73 (7)
【0028】
上記式(7)中、Rf4は上記式(3)〜(4)のRf1と同様である。
7は炭素数1〜4のアルキル基であり、メチル基またはエチル基であるのが好ましい。
qは2〜10の整数であり、2〜5の整数であるのが好ましい。
【0029】
上述したフッ素系界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記フッ素系界面活性剤としては、上記式(1)で表される構造単位および上記式(2)で表される構造単位を含む重合体、上記式(5)で表される化合物、上記式(6)で表される化合物ならびに上記式(7)で表される化合物からなる群から選択される2種以上の混合物が好ましい態様の1つである。
【0030】
本発明の組成物中の上記フッ素系界面活性剤の含有量は、特に限定されないが、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜1質量%であるのがより好ましい。
【0031】
本発明の組成物に用いられるフッ素系溶剤は、常温で液体であり、上記フッ素系界面活性剤を溶解することができるフッ素原子を含む化合物であれば特に限定されないが、フッ素系樹脂フィルムの表面張力よりも小さい表面張力を有するものが好ましい。
上記フッ素系溶剤としては、具体的には、例えば、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボン、クロロフルオロカーボン等が挙げられる。これらの中でも、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボンが好ましい。特に、比較的温室効果が低く、環境に与える影響が少ない点からハイドロフルオロエーテル、ハイドロフルオロカーボン、ハイドロクロロフルオロカーボンがより好ましく、界面活性剤の溶解性という点でハイドロフルオロエーテル、ハイドロクロロフルオロカーボンが更に好ましい。
これらのフッ素系溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0032】
上記パーフルオロカーボンとしては、例えば、鎖状の、分岐状のまたは環状の炭素数5〜15の炭化水素の全ての水素原子をフッ素原子に置換した化合物(全フッ素化炭化水素)、鎖状の、分岐状のまたは環状の炭素数5〜15のアルキルアミンの全ての水素原子をフッ素原子に置換した化合物(全フッ素化アルキルアミン)、鎖状の、分岐状のまたは環状の炭素数5〜15のアルキルエーテルの全ての水素原子をフッ素原子に置換した化合物(全フッ素化アルキルエーテル)等が挙げられる。
具体的には、住友スリーエム社より販売されているフロリナート(登録商標)のFC−87,72,84,77,3255,3283,40,43,70等や、アウジモント社より販売されているガルデン(登録商標)のHT−55,70,90,110,135,170,200,230,270等や、F2ケミカル社より販売されているフルテック(登録商標)のPP−50,1,2,3,6,9,10,11等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記ハイドロフルオロカーボンとしては、具体的には、例えば、1,1,1,3,3−ペンタフルオロブタン、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5−デカフルオロペンタン、1,1,2,2,3,3,4−ヘプタフルオロシクロペンタン、1H−トリデカフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4−ノナフルオロヘキサン、1,1,1,2,2,3,3,4,4,5,5,6,6−トリデカフルオロオクタン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0034】
上記ハイドロフルオロエーテルとしては、具体的には、例えば、メチルパーフルオロブチルエーテル、エチルパーフルオロブチルエーテル、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−3−(メトキシ)ペンタン、1,1,1,2,3,4,4,5,5,5−デカフルオロ−2−(トリフルオロメチル)−3−(エトキシ)ペンタン、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)プロパン、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)エタン、1,1,2,3,3,3−ヘキサフルオロ−1−(2,2,3,3−テトラフルオロプロポキシ)プロパン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
上記ハイドロクロロフルオロカーボンとしては、具体的には、例えば、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパン、1,1−ジクロロ−2,2,2−トリフルオロエタン、1,1−ジクロロ−1−フルオロエタン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、フッ素系界面活性剤の溶解性とフッ素系樹脂フィルムのぬれ性という点から1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパン、1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンまたはこれらの混合物が好ましい。
【0035】
上記フッ素系界面活性剤と上記フッ素系溶剤との好ましい組み合わせとしては、フルオロアルキルアクリレート(CH2=CHCO224817)とポリオキシメチレン基またはポリオキシプロピレン基を側鎖に持つメタクリレート(CH2=CCH3CO2(C24O)sH/CH2=CCH3CO2(C35O)sH、sは1〜100の整数であり、好ましくは5〜50の整数である。)の共重合体と、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンからなる群から選択される少なくとも1種との組み合わせ、
上記式(6)で表される化合物と、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンからなる群から選択される少なくとも1種との組み合わせ、
上記式(7)で表される化合物と、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン、1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンおよび1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンからなる群から選択される少なくとも1種との組み合わせ等が挙げられる。
【0036】
本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上記フッ素系界面活性剤および上記フッ素系溶剤以外の他の化合物を含有することができる。
他の化合物としては、例えば、上記以外の含フッ素化合物、ハロゲン(フッ素を除く)化炭化水素、炭化水素が挙げられる。
【0037】
上記以外の含フッ素化合物としては、含フッ素ケトン類、含フッ素エステル類、含フッ素不飽和化合物、含フッ素芳香族化合物等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
ハロゲン化炭化水素としては、トリクロロエチレン、パークロロエチレン、クロロホルム、ジクロロメタン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
炭化水素としては、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類、酢酸エチル等のエステル類、ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明の組成物中の上記含フッ素化合物、上記ハロゲン化炭化水素、上記炭化水素の合計の含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、更に好ましくは5質量%以下である。
【0038】
本発明の組成物は、主として安定性を高める目的で、更に、下記の化合物を含有することができる。その含有量は、本発明の組成物中の0.001〜5質量%であることが好ましい。上記化合物としては、ニトロメタン、ニトロエタン、ニトロプロパン、ニトロベンゼン等のニトロ化合物類;ジエチルアミン、トリエチルアミン、イソプロピルアミン、n−ブチルアミン等のアミン類;フェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、チモール、p−t−ブチルフェノール、t−ブチルカテコール、カテコール、イソオイゲノール、o−メトキシフェノール、ビスフェノールA、サリチル酸イソアミル、サリチル酸ベンジル、サリチル酸メチル、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等のフェノール類;2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、1−[(N,N−ビス−2−エチルヘキシル)アミノメチル]ベンゾトリアゾール等のトリアゾール類が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0039】
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されず、例えば、上記フッ素系界面活性剤および上記フッ素系溶剤ならびに必要に応じて添加される上記化合物をかくはんして得ることができる。
【0040】
上述した本発明の組成物は上記フッ素系溶剤に上記フッ素系界面活性剤が溶解しているため、また、本発明の組成物は表面張力が小さいため、フッ素系樹脂フィルムに均一に塗布できる。そして、本発明の組成物を塗布した表面には、フッ素系界面活性剤が上記樹脂フィルム面側にフッ素、有機膜が形成される側に極性基となるように配向しているため、上記樹脂フィルムの上に有機膜を均一に形成させることができ、また、上記樹脂フィルムとその上に形成される有機膜とが剥離し易くなるため、基板上に有機膜を転写して形成する際の有機膜の破損を防止できる。
【0041】
本発明の組成物は、上述したような特性を有するので、後述する本発明の積層体の表面改質材料層を形成するために用いることができる。上記表面改質材料層は、フッ素系樹脂フィルム上に本発明の組成物を塗布し、乾燥して得ることができる。
【0042】
上記樹脂フィルムは、フッ素系樹脂を含むものであれば、大きさ、厚さ等は特に限定されず、適宜設定することができる。
上記樹脂フィルムは、フッ素系樹脂以外の樹脂を含んでいてもよいが、フッ素系樹脂のみからなるフィルムであるのが好ましい態様の1つである。
【0043】
上記フッ素系樹脂は、フッ素原子を含むオレフィンの重合体であれば特に限定されないが、具体的には、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)との共重合体(PFA)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体(FEP)、テトラフルオロエチレンとエチレンとの共重合体(ETFE)、ポリフッ化ビニル樹脂(PVF)、ポリ(クロロトリフルオロエチレン)樹脂(PCTFE)等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
これらの中でも、本発明の組成物の塗布し易さおよび有機膜の剥離し易さに優れる点からETFEが好ましい。
【0044】
上記樹脂フィルムは、フッ素系樹脂を含む樹脂からなる単層構造の他、二層以上の積層構造としてもよい。積層構造とする場合は、表面改質材料層が形成される表面の層がフッ素系樹脂を含む層であり、表面改質材料層が形成される表面の層がフッ素系樹脂のみからなる層であるのが好ましい。
表面改質材料層が形成される表面の層がフッ素系樹脂を含む層であると、表面改質材料層を容易に剥離でき、結果としてその上に形成される有機膜が剥離し易くなるため、基板上に有機膜を転写して形成する際の有機膜の破損を防止できる。
【0045】
以下、本発明の積層体について説明する。
本発明の積層体は、フッ素系樹脂フィルムと上記樹脂フィルム上に形成されたフッ素系界面活性剤を含む表面改質材料層とを有する積層体である。
本発明の積層体に用いられる樹脂フィルムおよびフッ素系界面活性剤は上述した本発明の組成物で説明したものと同様である。
【0046】
本発明の積層体の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記樹脂フィルムの上に本発明の組成物を塗布した後、上記フッ素系溶剤を除去して表面改質材料層を形成させて本発明の積層体を得る方法が、簡便に均一な層を得ることができる点から好ましい。
上記表面改質材料層は、本発明の組成物を単独で、または本発明の組成物を2種以上組み合わせて用いて形成することができる。
また、本発明の積層体を製造する際に、上記フッ素系樹脂フィルム上に、本発明の表面改質組成物以外のコーティング剤を塗布することによって機能付与を行うことも可能である。例えば、予め有機膜を付けたくない部分に撥水撥油機能を持ったコーティングを施しておくことにより、部分的に有機膜を形成させないことが可能である。
また、予め作成したフッ素系界面活性剤を含む表面改質材料層を上記樹脂フィルムの上に貼り合せて本発明の積層体を得ることもできる。
【0047】
上記表面改質材料層は、上記フッ素系樹脂フィルムの表面の少なくとも一部に、好ましくは全体に形成される。上記表面改質材料層は均一な層状であるのが好ましいが、必ずしも層状でなくてもよい。例えば、上記フッ素系樹脂フィルムの表面の上に表面改質材料が島状に点在するものも上記表面改質材料層に含まれる。
【0048】
上述した本発明の積層体は、上記表面改質材料層の上に有機膜が形成され、この有機膜を基板の表面に転写するために用いられる。
そのため、本発明の積層体は、更に、上記表面改質材料層の上に形成された有機膜を有するものが好ましい態様の1つである。
【0049】
上記有機膜としては、基板の上に転写される封止膜やレジストフィルム等が挙げられる。上記有機膜の材料、厚さ、形状等は、特に限定されず、用途によって適宜選択することができる。
上記有機膜の材料としては、具体的には、例えば、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン等のポリオレフィン樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂等が挙げられる。MEMSの可動部を損傷から保護するための封止膜として使用する場合は、上記有機膜はポリイミド樹脂からなるのが好ましい。
市販の有機膜材料としては、セミコファイン(東レ社製)、リストン(デュポン社製)、サンフォート(旭化成エレクトロニクス社製)、TMMR−S2000(東京応化工業社製)等が挙げられる。
【0050】
上記基板は、特に限定されないが、例えば、MEMS、大規模集積回路(LSI)等が好適に挙げられる。
【0051】
以下、本発明の積層体の使用方法について説明する。ただし、本発明の積層体の使用方法はこれに限定されない。
図1は、本発明の積層体を用いた封止膜形成方法を示す図である。
図1(A)に示すように、本発明の積層体10は、フッ素系樹脂フィルム1と、樹脂フィルム1の上に形成された表面改質材料層2と、表面改質材料層2の上に形成された封止膜3とから構成される。本発明の積層体を用いた封止膜形成方法は、封止膜3を、基板4の表面に接着させる接着工程(図1(B))と、上記接着工程の後に樹脂フィルム1を剥離するフィルム剥離工程(図1(C))とを備える。
【0052】
上記接着工程は、加熱下において封止膜3と基板4の表面とを圧着させて実施される他、封止膜3が粘着性を有する場合は、室温下で封止膜3と基板4の表面とを密着させて実施することもできる。
【0053】
上記フィルム剥離工程は、前記接着工程において封止膜3と基板4とが接着された後、樹脂フィルム1を剥離する工程である。剥離する方法は、特に限定されず、例えば、手で剥離することができる。
【0054】
従来の封止膜形成方法は、樹脂フィルム1と封止膜3との密着性が強過ぎるため、図2(C)に示すように、樹脂フィルム1を封止膜3から剥離する時に封止膜3が部分的に基板4から剥がれて破損する問題があった。
一方、本発明の積層体は、表面改質材料層2を介して樹脂フィルム1と封止膜3とが結合されており、樹脂フィルム1と封止膜3との密着性が封止膜3と基板4との密着性よりも小さくなっているため、樹脂フィルム1を封止膜3から容易に剥離することができ、樹脂フィルム剥離時の封止膜の破損を防止できる。そのため、高性能なMEMSやLSIを作製することができる。
【実施例】
【0055】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
フルオロアクリレート(CH2=CHCO2CH2CH2817)とポリオキシエチレン基を側鎖にもつメタクリレート(CH2=CCH3CO2(CH2CH2O)4H)とをモル比で2:8になる組成でガラスアンプル中に仕込み、酢酸エチルを溶剤として、AIBNを開始剤に用いて重合を行いフッ素系界面活性剤を得た。GPCで解析したフッ素系界面活性剤の重量平均分子量(標準ポリスチレン換算)は7000であった。
得られたフッ素系界面活性剤を固形分濃度として95質量%程度になるまで溶剤を除去した後、固形分濃度が0.1質量%になるように、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン(アサヒクリンAE−3000、旭硝子社製)を添加して混合し、目視で均一に溶解していることが確認できるまでかくはんを行った後、0.1μmのポアサイズのPTFE製のメンブランフィルターで濾過することにより表面改質組成物を調製した。
【0056】
(実施例2)
フッ素アルコール(HOCH2CH2817)とエピクロロヒドリンを反応させて含フッ素グリシジルエーテルを合成し、これに末端変性ポリエチレングリコール(ユニオックスM−2000、日本油脂社製)を反応することにより下記式で表されるフッ素系界面活性剤を合成した。
【0057】
817−(CH22−O−CH2CH(OH)CH2−O−(CH2CH2O)45−CH3
【0058】
得られたフッ素系界面活性剤に、固形分濃度0.5質量%になるように1,1−ジクロロ−2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロパンと1,3−ジクロロ−1,1,2,2,3−ペンタフルオロプロパンとの混合溶剤(アサヒクリンAK-225、旭硝子社製)を添加して混合し、目視で均一に溶解していることが確認できるまでかくはんを行い、0.1μmのポアサイズのPTFE製のメンブランフィルターで濾過することにより表面改質組成物を調製した。
【0059】
(実施例3)
フッ素カルボン酸エステル(C17COOCH3)と3−アミノプロピルトリエトキシシラン(アミノシランKBE−903、信越化学工業社製)を反応させることにより下記式で表されるフッ素系界面活性剤を合成した。
【0060】
817−CONH(CH23−Si−(OCH2CH33
【0061】
得られたフッ素系界面活性剤に、固形分濃度0.1質量%になるように1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン(アサヒクリンAE−3000、旭硝子社製)を添加して混合し、目視で均一に溶解していることが確認できるまでかくはんを行い、0.1μmのポアサイズのPTFE製のメンブランフィルターで濾過することにより表面改質組成物を調製した。
【0062】
(実施例4)
フッ素エポキシド((CH2CHO)CH2817)とポリエチレングリコール(PEG#1000、日本油脂社製)を反応することにより下記式で表されるフッ素系界面活性剤を合成した。
【0063】
817CH2CH(OH)CH2O−(CHCHO)22−CH2CH(OH)CH2817
【0064】
得られたフッ素系界面活性剤に、固形分濃度0.5質量%になるように1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタン(アサヒクリンAE−3000、旭硝子社製)を添加して混合し、目視で均一に溶解していることが確認できるまでかくはんを行い、0.1μmのポアサイズのPTFE製のメンブランフィルターで濾過することにより表面改質組成物を調製した。
【0065】
<ポリイミド溶液の塗布性評価>
実施例1〜4で得られた各表面改質組成物をETFEフィルム(フルオンETFE、旭硝子社製)上に300rpm、20秒の条件でスピンコートし室温で24時間乾燥して表面改質材料層を形成させた。
その後、表面改質材料層の上にポリイミド溶液(セミコファイン、東レ社製)を1500rpm、30秒の条件でスピンコートしポリイミド膜を形成させた(膜厚7μm)。
ポリイミド溶液を塗布したときのハジキの有無を目視で観察して、ポリイミド溶液の塗布性を評価した。一部でもハジキのあるものを「×」、全くハジキが無く均一にコートできるものを「○」とした。
結果を下記第1表に示す。
【0066】
<表面改質材料層の親水性評価>
ポリイミド溶液をコートする前の表面改質材料層の水との接触角を接触角計(共和界面科学社製)を用いて測定し、上記各表面改質材料層の親水性の程度を評価した。
結果を下記第1表に示す。なお、接触角が小さいほど、ETFEフィルムに対するポリイミド溶液の塗布性が優れると言える。
【0067】
<基板への転写性評価>
前記のようにETFEフィルム上に表面改質材料層を介してポリイミド溶液をコートし乾燥させることでポリイミドコート膜(膜厚7μm)を形成して得られた積層体と、シリコン基板(信越化学工業社製)とを圧着させた後、ETFEフィルムを剥離して、ポリイミドコート膜の基板への転写性を評価した。
ETFEフィルムと一緒にポリイミドコート膜が剥がれることなく、ポリイミドコート膜をシリコン基板上にきれいに転写できたものを「○」とした。
結果を下記第1表に示す。
【0068】
また、ETFEフィルム上に前記と同様にして表面改質材料層を形成し、次いで、ポリイミドフィルム(カプトン、東レ・デュポン社製)を100℃、20Paの条件で熱圧着して形成した積層体と、シリコン基板(信越化学工業社製)とを圧着させた後、ETFEフィルムを剥離して、ポリイミドフィルムの基板への転写性を評価した。
ETFEフィルムと一緒にポリイミドフィルムが剥がれることなく、ポリイミドフィルムをシリコン基板上にきれいに転写できたものを「○」とした。
結果を下記第1表に示す。
【0069】
(比較例1)
比較例として、表面改質組成物を用いた改質を行わないETFEフィルムについて、実施例1〜4と同様の方法により、ポリイミド溶液の塗布性および表面改質材料層の親水性の程度を評価した。
結果を下記第1表に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
実施例1〜4の各表面改質組成物は、ETFEフィルムに対する塗布性に優れていた。
また、上記第1表に示す結果から明らかなように、表面改質組成物を用いて改質を行わなかったETFEフィルム(比較例1)は、水との接触角が大きく、ポリイミド溶液の塗布性が悪かった。
一方、実施例1〜4の表面改質組成物を用いた積層体は、ポリイミド溶液の塗布性に優れ、均一な有機膜を有しており、また、フィルム剥離時に有機膜が剥がれることなく、有機膜をシリコン基板上にきれいに転写できた。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】図1は、本発明の積層体を用いた封止膜形成方法を示す図である。
【図2】図2は、従来の封止膜形成方法を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
1、11 樹脂フィルム
2 表面改質材料層
3、13 封止膜
4、14 基板
10 本発明の積層体
20 従来の積層体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フッ素系樹脂フィルムの表面に界面活性剤を含む表面改質材料層を形成するために用いられる表面改質組成物であって、
フッ素系溶剤と、該フッ素系溶剤に溶解するフッ素系界面活性剤とを含有する表面改質組成物。
【請求項2】
前記フッ素系界面活性剤が、非イオン性界面活性剤である請求項1に記載の表面改質組成物。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤が、下記式(1)で表される構造単位および下記式(2)で表される構造単位を含む重合体からなる請求項2に記載の表面改質組成物。
【化1】


(式中、R1、R2およびR4は、それぞれ、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基であり、Xは下記式(3)で表される基または下記式(4)で表される基であり、R3は、アルキレン鎖中に1つ以上のエーテル結合を含んでもよい直鎖状のもしくは分岐した炭素数1〜100のアルキレン基または単結合である。)
【化2】


(式中、Rf1はアルキル鎖中に1つ以上のエーテル結合を含んでもよい直鎖状のまたは分岐した炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、R5は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、nおよびmは、それぞれ、2〜10の整数である。)
【請求項4】
前記重合体が、前記式(1)で表される構造単位を5〜95モル%、前記式(2)で表される構造単位を95〜5モル%含む請求項3に記載の表面改質組成物。
【請求項5】
前記非イオン性界面活性剤が、下記式(5)で表される化合物からなる請求項2に記載の表面改質組成物。
Rf2−CH2CH(OH)CH2O−Y1−CH2CH(OH)CH2−Rf2 (5)
(式中、Rf2はアルキル鎖中にエーテル結合を含んでもよい直鎖状のまたは分岐した炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、Y1は直鎖状のもしくは分岐した炭素数10〜100のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基である。)
【請求項6】
前記非イオン性界面活性剤が、下記式(6)で表される化合物からなる請求項2に記載の表面改質組成物。
Rf3−(CH2p−O−CH2CH(OH)CH2−O−Y2−R6 (6)
(式中、Rf3はアルキル鎖中にエーテル結合を含んでもよい直鎖状のまたは分岐した炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、Y2は直鎖状のもしくは分岐した炭素数10〜100のオキシアルキレン基またはポリオキシアルキレン基であり、R6は水素原子または炭素数1〜4のアルキル基であり、pは1〜5の整数である。)
【請求項7】
前記非イオン性界面活性剤が、下記式(7)で表される化合物である請求項2に記載の表面改質組成物。
Rf4−CONH−(CH2q−Si(OR73 (7)
(式中、Rf4はアルキル鎖中にエーテル結合を含んでもよい直鎖状のまたは分岐した炭素数1〜20のフルオロアルキル基であり、R7は炭素数1〜4のアルキル基であり、qは2〜10の整数である。)
【請求項8】
前記フッ素系溶剤が、パーフルオロカーボン、ハイドロフルオロカーボンおよびハイドロフルオロエーテルからなる群から選択される少なくとも1種である請求項1〜7のいずれかに記載の表面改質組成物。
【請求項9】
前記フッ素系溶剤が、ハイドロフルオロエーテルである請求項8に記載の表面改質組成物。
【請求項10】
前記ハイドロフルオロエーテルが、1,1,2,2−テトラフルオロ−1−(2,2,2−トリフルオロエトキシ)エタンである請求項9に記載の表面改質組成物。
【請求項11】
フッ素系樹脂フィルムと前記樹脂フィルム上に形成されたフッ素系界面活性剤を含む表面改質材料層とを有する積層体。
【請求項12】
前記表面改質材料層が、前記樹脂フィルムの上に請求項1〜10のいずれかに記載の表面改質組成物を塗布した後、前記フッ素系溶剤を除去して得られる請求項11に記載の積層体。
【請求項13】
更に、前記表面改質材料層の上に形成された有機膜を有する請求項11または12に記載の積層体。
【請求項14】
前記有機膜が、ポリイミド樹脂からなる請求項13に記載の積層体。
【請求項15】
請求項11に記載の積層体を製造する、積層体の製造方法であって、
前記フッ素系樹脂フィルム表面に、請求項1〜10のいずれかに記載の表面改質組成物を塗布した後、前記フッ素系溶剤を除去して前記表面改質材料層を形成させて請求項11に記載の積層体を得る、積層体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−24748(P2008−24748A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195644(P2006−195644)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(000102739)エヌ・ティ・ティ・アドバンステクノロジ株式会社 (265)
【出願人】(000000044)旭硝子株式会社 (2,665)
【Fターム(参考)】