説明

表面検査方法及び表面検査装置

【課題】 表面検査において、検査対象物によって輝度が異なる場合でも簡単に異常を検出できるようにした、表面検査方法及び表面検査装置を提供する。
【解決手段】 予め決められた階調の各階調レベルに属する輝度を有する画素の数を算出する。階調の最大階調レベル及び最小階調レベルの一方から他方への順に、各階調レベルに対応する画素の数を累積し、予め決められた累積数が得られる累積階調レベルを特定する。検出された輝度の代表値に対応する代表階調レベルを特定する。累積階調レベルと代表階調レベルの差を特性値として算出する。全ての検査画像の特性値を比較して最小特性値を特定する。特性値と最小特性値の差に基づいて評価対象値を算出する。しきい値と少なくとも最大の評価対象値を比較して、最大の評価対象値がしきい値よりも大きいときに、異常の存在を判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面検査方法及び表面検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
検査対象物の表面をCCDカメラ等の撮像手段で撮像し、得られた画像データから表面に存在する欠陥を検出することが知られている。その際の画像データの処理方法として、2値化処理を適用した場合、撮像手段により得られた画像データを所定のしきい値で2値化することにより欠陥が抽出される。しきい値は、画像データの輝度ヒストグラムの形状から決定することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところが、検査対象物によって輝度が異なる場合、2値化レベルをその都度変更する必要があり、また、最適な2値化レベルを取得するのが困難であった。
【0004】
本発明は、表面検査において、検査対象物によって輝度が異なる場合でも簡単に異常を検出できるようにした、表面検査方法及び表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明に係る表面検査方法は、検査対象物の複数の検査領域をそれぞれ撮像して複数の検査画像を得ること、
それぞれの前記検査画像を構成する複数の画素の輝度を検出すること、
それぞれの前記検査画像ごとに、予め決められた階調の各階調レベルに属する輝度を有する前記画素の数を算出すること、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記階調の最大階調レベル及び最小階調レベルの一方から他方への順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積し、予め決められた累積数が得られる累積階調レベルを特定すること、
それぞれの前記検査画像ごとに、検出された前記輝度の代表値に対応する代表階調レベルを特定すること、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記累積階調レベルと前記代表階調レベルの差を特性値として算出すること、
全ての前記検査画像の前記特性値を比較して最小特性値を特定すること、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記特性値と前記最小特性値の差に基づいて評価対象値を算出すること、
しきい値と少なくとも最大の前記評価対象値を比較して、前記最大の評価対象値が前記しきい値よりも大きいときに、異常の存在を判定すること、
を含む。本発明によれば、検査対象物の検査画像ごとに評価対象値を算出し、このうち少なくとも最大の評価対象値をしきい値と比較して、その検査画像において輝度の大きく異なる領域の存否を検出し、異常の存在を判定する。ここで、評価対象値は、最小特性値(全検査画像の特性値のうち最小のもの)を使用して算出した値であって、全ての検査画像との関連において算出されるものである。したがって、輝度が異なる複数の検査対象物を連続的に検査しても、その都度、調整をしなくても簡単に異常の存在を判定することができる。
(2)この表面検査方法は、
前記代表階調レベルは、検出された前記輝度の平均値であってもよい。
(3)この表面検査方法は、
前記代表階調レベルは、検出された前記輝度の最頻値であってもよい。
(4)この表面検査方法は、
前記代表階調レベルは、前記予め決められた階調の中央値であってもよい。
(5)この表面検査方法は、
前記階調の最大階調レベルから最小階調レベルへの順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積してもよい。
(6)この表面検査方法は、
前記階調の最小階調レベルから最大階調レベルへの順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積してもよい。
(7)この表面検査方法は、
前記評価対象値を、前記特性値と前記最小特性値の差に係数を掛けて算出し、
前記係数は、それぞれの前記検査画像で検出された前記輝度の平均値を分母とし、前記予め決められた階調の中央値を分子とする分数に等しい値であってもよい。
(8)本発明に係る表面検査装置は、検査対象物の複数の検査領域を撮像するイメージセンサと、
撮像によって得られた複数の検査画像のそれぞれを構成する複数の画素の輝度データに基づいて、予め決められた階調の各階調レベルに属する輝度を有する前記画素の数を表わす輝度分布データを作成する輝度分布データ作成手段と、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記度数分布データに基づいて、前記階調の最大階調レベル及び最小階調レベルの一方から他方への順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積し、予め決められた累積数が得られる累積階調レベルを特定する累積階調レベル特定手段と、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記度数分布データで前記輝度の代表値に対応する代表階調レベルと前記累積階調レベルとの差を特性値として算出する特性値算出手段と、
全ての前記検査画像の前記特性値を比較して最小特性値を特定する最小特性値特定手段と、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記特性値と前記最小特性値の差に基づいて評価対象値を算出する評価対象値算出手段と、
を含み、
しきい値と少なくとも最大の前記評価対象値を比較して、前記最大の評価対象値が前記しきい値よりも大きいときに、異常の存在が判定される。本発明によれば、検査対象物の検査画像ごとに評価対象値を算出し、このうち少なくとも最大の評価対象値をしきい値と比較して、その検査画像において輝度の大きく異なる領域の存否を検出し、異常の存在を判定する。ここで、評価対象値は、最小特性値(全検査画像の特性値のうち最小のもの)を使用して算出した値であって、全ての検査画像との関連において算出されるものである。したがって、輝度が異なる複数の検査対象物を連続的に検査しても、その都度、調整をしなくても簡単に異常の存在を判定することができる。
(9)この表面検査装置は、
前記代表階調レベルは、検出された前記輝度の平均値であってもよい。
(10)この表面検査装置は、
前記代表階調レベルは、検出された前記輝度の最頻値であってもよい。
(11)この表面検査装置は、
前記代表階調レベルは、前記予め決められた階調の中央値であってもよい。
(12)この表面検査装置は、
前記階調の最大階調レベルから最小階調レベルへの順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積してもよい。
(13)この表面検査装置は、
前記階調の最小階調レベルから最大階調レベルへの順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積してもよい。
(14)この表面検査装置は、
前記評価対象値算出手段は、前記評価対象値を、前記特性値と前記最小特性値の差に係数を掛けて算出し、
前記係数は、それぞれの前記検査画像で検出された前記輝度の平均値を分母とし、前記予め決められた階調の中央値を分子とする分数に等しい値であってもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。図1及び図2は、本実施の形態に係る表面検査方法を説明するフローチャートである。図3は、本実施の形態に係る表面検査装置を説明する概略図である。図4は、本実施の形態に係る検査画像を説明する図である。
【0007】
本実施の形態に係る表面検査方法は、検査対象物によって輝度が異なる場合でも簡単に異常を検出する方法である。まず、検査対象物2(図3参照)の複数の検査領域をそれぞれ撮像して複数の検査画像を得る(ステップS100)。例えば、検査画像4,6,8,10(図4参照)を得る。検査画像10は、白っぽく見える特異領域12が存在する。
【0008】
次に、それぞれの検査画像4,6,8,10を構成する複数の画素の輝度を検出する(ステップS110)。各画素の輝度を、8ビットの値(0(黒)〜255(白)の256階調の値)で検出してもよい。
【0009】
次に、ステップS110で検出した輝度のデータを使用して、それぞれの検査画像4,6,8,10ごとに、予め決められた階調(例えば256階調)の各階調レベルに属する画素の数を算出する(ステップS120)。この算出を行うために、度数分布データを作成してもよい。例えば、検査画像4,6,8,10について、階調ヒストグラムを作成する。図5,6,7及び8は、それぞれ、図4の検査画像4,6,8,10の階調ヒストグラムを示している。階調ヒストグラムで、横軸は階調を表し、縦軸は各階調レベルに対応する画素の数を表わしている。
【0010】
次に、それぞれの検査画像4,6,8,10ごとに、階調の最大階調レベルImax及び最小階調レベルIminの一方から他方への順に、ステップS120で算出した各階調レベルに対応する画素の数を累積し、予め決められた累積数が得られる累積階調レベルを特定する(ステップS130)。
【0011】
予め決められた累積数は、検出する異常の大きさを表わす画素数であってもよい。最大階調レベルImaxから最小階調レベルIminへの順に、各階調レベルに対応する画素の数を累積し、図5〜図8に示すように、予め決められた累積数が得られる累積階調レベルI〜Iを特定する。あるいは、最小階調レベルIminから最大階調レベルImaxへの順に、各階調レベルに対応する画素の数を累積し、図5〜図8に示すように、予め決められた累積数が得られる累積階調レベルI〜Iを特定してもよい。
【0012】
例えば、図4に示すように、検査画像10に白っぽく見える特異領域12が存在する場合、その特異領域12のみが他の部分よりも輝度が大きい。したがって、特異領域12は、図8に示すように、度数分布データに基づいて作成した階調ヒストグラムでは、グラフの右側である階調レベルの大きい方に分布している。ここで、最大階調レベルImaxから最小階調レベルImin側へ順に、各階調レベルに対応する画素の数を累積し、予め決められた累積数が得られる階調レベルを探せば、累積階調レベルIを特定することができる。
【0013】
また、それぞれの検査画像4,6,8,10ごとに、図5〜図8に示すように、ステップS110で検出された輝度の代表値に対応する代表階調レベルI(例えば予め決められた階調の中央値)を特定する(ステップS140)。予め決められた階調の中央値(例えば256階調のとき、I=128)は、それぞれの検査画像4,6,8,10に共通する値である。代表階調レベルIは、それぞれの検査画像4,6,8,10ごとの基準になる値であってもよい。例えば、代表階調レベルIは、検出された輝度の平均値、あるいは、検出された輝度の最頻値である。
【0014】
次に、それぞれの検査画像4,6,8,10ごとに、ステップS130で特定した累積階調レベルI〜I(又はI〜I)とステップS140で特定した代表階調レベルIの差を特性値W〜W(又はW〜W)として算出する(ステップS150)。
【0015】
例えば、累積階調レベルI(t=1,2,…,8)と代表階調レベルIを用いて、以下のように特性値W(t=1,2,…,8)を算出する。
=|I−I
【0016】
特性値W〜Wは、それぞれの検査画像4,6,8,10ごとに、図5〜図8に示すように、階調ヒストグラム上の各累積階調レベルI〜Iと代表階調レベルIの間隔の大きさを表わしている。
【0017】
次に、ステップS150で算出した全ての検査画像4,6,8,10の特性値W〜W(又はW〜W)を比較して最小特性値W(又はW00)を特定する(ステップS160)。最小特性値Wは、それぞれの検査画像4,6,8,10の特性値W〜Wのうち、最小の値を表わしている。最小特性値W00は、それぞれの検査画像4,6,8,10の特性値W〜Wのうち、最小の値を表わしている。
【0018】
次に、それぞれの検査画像4,6,8,10ごとに、ステップS150で算出した特性値W〜W(又はW〜W)とステップS160で特定した最小特性値W(又はW00)の差に基づいて評価対象値H〜H(又はH〜H)を算出する(ステップS170)。評価対象値H〜H(又はH〜H)は、輝度の分布状態が、最小特性値W(又はW00)から、どの程度、最大階調レベルImax(又は最小階調レベルImin)に偏っているかを表す値である。
【0019】
例えば、特性値W(t=1,2,3,4)と最小特性値Wを用いて、以下のように評価対象値H(t=1,2,3,4)を算出する。
=W−W
【0020】
あるいは、特性値W(t=5,6,7,8)と最小特性値W00を用いて、以下のように評価対象値H(t=5,6,7,8)を算出する。
=W−W00
【0021】
一般に、画像を構成する画素の輝度は、輝度の平均値が高い(明るい)場合には広い範囲に分布し、輝度の平均値が低い(暗い)場合には狭い範囲にのみ分布する。したがって、上述した式で得られた評価対象値H〜H(又はH〜H)は、それぞれの検査画像4,6,8,10の輝度の平均値の差に起因する誤差を含む場合がある。そこで、この誤差をなくすために、特性値W〜Wと最小特性値Wの差に係数kを掛けて、評価対象値H′〜H′を算出してもよい。その際、係数kは、それぞれの検査画像4,6,8,10で検出された輝度の平均値a〜aを分母とし、予め決められた階調の中央値s(例えば256階調のとき、s=128)を分子とする分数に等しい値である。その場合、分子の値が一定であるため、分母の値(輝度の平均値a〜a)が大きいほど、係数kの値は小さくなる。すなわち、係数kは、検査画像4,6,8,10の明るさに反比例するように、特性値と最小特性値の差を調整するためのものである。
【0022】
こうして、特性値W(t=1,2,3,4)と最小特性値Wと係数k(k=s/a(t=1,2,3,4))を用いて、以下のように評価対象値H′(t=1,2,3,4)を算出する。
H′=(W−W)×k
【0023】
または、特性値W〜Wと最小特性値W00の差に上述した係数kを掛けて、評価対象値H′〜H′を算出してもよい。すなわち、特性値W(t=5,6,7,8)と最小特性値W00と係数kを用いて、以下のように評価対象値H′(t=5,6,7,8)を算出する。
H′=(W−W00)×k
【0024】
次に、ステップS170で算出した評価対象値の少なくとも最大の評価対象値としきい値を比較する。(ステップS180)。
【0025】
少なくとも最大の評価対象値がしきい値よりも大きい場合、「Yes」としてステップS190に進む。この状態は、検査画像4,6,8,10の少なくとも1つに異常の箇所が存在していることを示している。
【0026】
少なくとも最大の評価対象値がしきい値以下の場合、「No」としてステップS200に進む。この状態は、それぞれの検査画像4,6,8,10に異常の箇所が存在していないことを示している。
【0027】
しきい値は、イメージセンサ14に入射する光の絞りの開閉などの条件によって変化するため、一概に言えないが、この実施例では、予め異常の存在するサンプルを用いて検出対象にあったしきい値が設定されている。
【0028】
ステップS180で「Yes」と判断した場合、検査対象物2に異常の箇所が存在する(ステップS190)。「異常の存在」の判定は、画像モニタ38にその旨が表示されてもよい。ステップS180で「No」と判断した場合、検査対象物2に異常の箇所は存在しない(ステップS200)。「異常の存在なし」の判定は、画像モニタ38にその旨が表示されてもよい。
【0029】
本実施の形態によれば、検査対象物2の検査画像4,6,8,10ごとに評価対象値を算出し、このうち少なくとも最大の評価対象値をしきい値と比較して、その検査画像4,6,8,10において輝度の大きく異なる領域の存否を検出し、異常の存在を判定する。ここで、評価対象値は、最小特性値(全検査画像の特性値のうち最小のもの)を使用して算出した値であって、全ての検査画像との関連において算出されるものである。したがって、輝度が異なる複数の検査対象物を連続的に検査しても、その都度、調整をしなくても簡単に異常の存在を判定することができる。
【0030】
次に、本実施の形態に係る表面検査方法により検査対象物を検査する表面検査装置を説明する。
【0031】
本実施の形態に係る表面検査装置は、検査対象物によって輝度が異なる場合でも簡単に異常を検出する装置である。
【0032】
本実施の形態に係る表面検査装置は、図3に示すように、イメージセンサ(例えば、CCDカメラ)14と、演算処理装置16とを有する。
【0033】
イメージセンサ14は、検査対象物2の複数の検査領域をそれぞれ撮像する。イメージセンサ14は、ノイズ光の入力を最小限に抑えるように設置位置や角度が調整できるようになっていてもよい。イメージセンサ14から得られた検査画像データは、演算処理装置16へ送られる。例えば、図4に示すような、検査画像4,6,8,10が検査画像データとして演算処理装置16へ送られる。
【0034】
演算処理装置16は、図3に示すように、演算部(中央処理装置)18を備えている。演算処理装置16は、イメージセンサ14から得られた検査画像データを演算部18で以下に説明する各手段を用いて異常の存在を抽出又は、抽出及び判定する装置である。
【0035】
演算部18は、度数分布データ作成手段20として、撮像によって得られた複数の検査画像4,6,8,10のそれぞれを構成する複数の画素の輝度データに基づいて、度数分布データを作成する。度数分布データは、予め決められた階調(例えば256階調)の各階調レベルに属する輝度を有する画素の数を表わしている。詳しくは、表面検査方法の欄で説明した通りである。
【0036】
演算部18は、累積階調レベル特定手段22として、それぞれの検査画像4,6,8,10ごとに、度数分布データ作成手段20で作成した度数分布データに基づいて、階調の最大階調レベルImax及び最小階調レベルIminの一方から他方への順に、各階調レベルに対応する画素の数を累積する。そして、予め決められた累積数が得られる累積階調レベルを特定する。詳しくは、表面検査方法の欄で説明した通りである。
【0037】
なお、表面検査方法の欄で説明した例は、検査画像10に白っぽく見える特異領域12が存在する場合であるが、逆に、黒っぽく見える特異領域が存在する場合は、その特異領域のみが他の部分よりも輝度が小さい。したがって、特異領域は、図9に示すように、度数分布データに基づいて作成した階調ヒストグラムでは、グラフの左側である階調レベルの小さい方に分布している。ここで、最小階調レベルIminから最大階調レベルImax側へ順に、各階調レベルに対応する画素の数を累積し、予め決められた累積数が得られる階調レベルを探せば、累積階調レベルIを特定することができる。
【0038】
また、検査画像において白っぽく見える特異領域と黒っぽく見える特異領域とが共に含まれる場合は、図10に示すように、最大階調レベルImaxから最小階調レベルImin側にかけて輝度の頻度を累積する。また、最小階調レベルIminから最大階調レベルImax側にかけて輝度の頻度を累積する。それぞれの累積値が予め決められた累積数が得られる階調レベルを探せば、累積階調レベルI10,I11を特定することができる。
【0039】
予め決められた累積数は、検出したい異常の大きさを表わす画素数であってもよい。この累積数の決定方法としては、オペレータが検出したい異常の大きさが存在するサンプル品の検査画像を後述する画像モニタ38などで見て、そこに含まれる異常の大きさ(画素数)を概算する方法がある。例えば、図示しないが、まず、その画面上において異常を特定する。そして、特定した異常の大きさ(画素数)を計算する。画素数の計算はオペレータによる目算でもよく、或いは異常を線で囲んで特定し、その囲んだ領域の面積を自動計算させるようにしてもよい。
【0040】
演算部18は、特性値算出手段24として、輝度の代表値に対応する代表階調レベルIと累積階調レベル特定手段22で特定した累積階調レベルI〜I(又はI〜I)との差を特性値W〜W(又はW〜W)として算出する。このとき、それぞれの検査画像4,6,8,10ごとに、図5〜図8に示すように、度数分布データ作成手段20で作成した度数分布データを用いる。詳しくは、表面検査方法の欄で説明した通りである。例えば、図8に示すように、特性値Wが大きい場合、累積階調レベルIは、代表階調レベルIから離れ、グラフの右側に位置している。これは、図4に示す特異領域12の輝度分布がグラフの右側に位置している。
【0041】
演算部18は、最小特性値特定手段26として、特性値算出手段24で算出した全ての検査画像4,6,8,10の特性値W〜W(又はW〜W)を比較して最小特性値W(又はW00)を特定する。詳しくは、表面検査方法の欄で説明した通りである。
【0042】
演算部18は、評価対象値算出手段28として、それぞれの検査画像4,6,8,10ごとに、特性値算出手段24で算出した特性値W〜W(又はW〜W)と最小特性値特定手段26で特定した最小特性値W(又はW00)の差に基づいて評価対象値H〜H(又はH〜H)を算出する。詳しくは、表面検査方法の欄で説明した通りである。
【0043】
演算部18は、判定手段30として、評価対象値算出手段28で算出した評価対象値の少なくとも最大の評価対象値としきい値を比較してもよい。
【0044】
少なくとも最大の評価対象値がしきい値よりも大きいときに、異常の存在が判定される。異常の存在の判定は、画像モニタ38にその旨が表示されてもよい。少なくとも最大の評価対象値がしきい値以下のときに、異常の存在なしが判定される。異常の存在なしの判定は、画像モニタ38にその旨が表示されてもよい。
【0045】
演算処理装置16は、図3に示すように、さらに、記憶部32を備えていてもよい。演算処理装置16の記憶部32は、データ読み取り可能なRAM,ROM、磁気ディスクなどの記憶媒体(記録媒体)を有しており、この記憶媒体は、磁気的、光学的記録媒体、もしくは半導体メモリ等で構成されている。記憶部32は、予め決められた階調、予め決められた累積数、しきい値及び検査対象物2の複数の検査領域を撮像する際に使用する検査領域の位置及び撮像順などを示す位置情報などの基礎情報を記憶してもよい。
【0046】
本実施の形態に係る表面検査装置は、さらに、ライト34と、ステージ36と、画像モニタ38と、入力装置40とを有していてもよい。
【0047】
ライト34は、検査対象物2の表面を照射するための光源であり、表面を一様に照らすことができるような角度で検査対象物2に向けて配置されていてもよい。ライト34は、複数配置されていてもよい。また、照度は、任意に調整できるようになっていてもよい。ライト34は、イメージセンサ14に対するノイズ光の入力を最小限に抑えるように設置位置や角度が調整できるようになっていてもよい。ライト34は、例えば、リング照明、照明をイメージセンサ14のレンズの光軸と平行に当て垂直に返ってくる反射で像を作る同軸落射照明などで構成されている。
【0048】
ステージ36は、XY軸を含む座標系のXY軸平面に、検査対象物2を配置してもよい。ステージ36は、図示しないキャリアによって、検査対象物2の面に平行に移動してもよい。図示しないキャリアは、図示しない駆動制御部に接続されていてもよい。図示しない駆動制御部は、演算処理装置16からの指示により、図示しないキャリアを用いて、検査対象物2を配置するステージ36のXY座標方向の駆動を制御してもよい。
【0049】
画像モニタ38は、操作画面、データ入力画面、イメージセンサ14で得られた検査画像4,6,8,10などを表示してもよい。画像モニタ38は、例えば、CRT(Cathode-Ray Tube)、液晶ディスプレイなどで構成されている。
【0050】
入力装置40は、演算処理装置16に対して必要な情報などを外部から入力してもよい。入力装置40は、例えば、文字や数字を入力するためのキーボード、画像モニタの画面上に表示されたカーソルで種々の操作をするマウス、ネットワーク経由でホストコンピュータなどと接続することが可能である。
【0051】
以上説明したように、本実施の形態によれば、検査対象物2の検査画像4,6,8,10ごとに評価対象値を算出し、このうち少なくとも最大の評価対象値をしきい値と比較して、その検査画像4,6,8,10において輝度の大きく異なる領域の存否を検出し、異常の存在を判定する。ここで、評価対象値は、最小特性値(全検査画像の特性値のうち最小のもの)を使用して算出した値であって、全ての検査画像との関連において算出されるものである。したがって、輝度が異なる複数の検査対象物を連続的に検査しても、その都度、調整をしなくても簡単に異常の存在を判定することができる。
【0052】
本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、種々の変形が可能である。例えば、本発明は、実施の形態で説明した構成と実質的に同一の構成(例えば、機能、方法及び結果が同一の構成、あるいは目的及び結果が同一の構成)を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成の本質的でない部分を置き換えた構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成と同一の作用効果を奏する構成又は同一の目的を達成することができる構成を含む。また、本発明は、実施の形態で説明した構成に公知技術を付加した構成を含む。さらに、本発明は、実施の形態で説明した技術的事項のいずれかを限定的に除外した内容を含む。あるいは、本発明は、上述した実施の形態から公知技術を限定的に除外した内容を含む。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施の形態に係る表面検査方法を説明するフローチャートである。
【図2】本発明の実施の形態に係る表面検査方法を説明するフローチャートである。
【図3】本発明の実施の形態に係る表面検査装置を説明する概略図である。
【図4】本発明の実施の形態に係る検査対象物の検査画像を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る階調ヒストグラムを示すグラフである。
【図6】本発明の実施の形態に係る階調ヒストグラムを示すグラフである。
【図7】本発明の実施の形態に係る階調ヒストグラムを示すグラフである。
【図8】本発明の実施の形態に係る階調ヒストグラムを示すグラフである。
【図9】本発明の実施の形態に係る階調ヒストグラムを示すグラフである。
【図10】本発明の実施の形態に係る階調ヒストグラムを示すグラフである。
【符号の説明】
【0054】
2…検査対象物 4,6,8,10…検査画像 12…特異領域 14…イメージセンサ 16…演算処理装置 18…演算部(中央処理装置) 20…度数分布データ作成手段 22…累積階調レベル特定手段 24…特性値算出手段 26…最小特性値特定手段 28…評価対象値算出手段 30…判定手段 32…記憶部 34…ライト 36…ステージ 38…画像モニタ 40…入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の複数の検査領域をそれぞれ撮像して複数の検査画像を得ること、
それぞれの前記検査画像を構成する複数の画素の輝度を検出すること、
それぞれの前記検査画像ごとに、予め決められた階調の各階調レベルに属する輝度を有する前記画素の数を算出すること、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記階調の最大階調レベル及び最小階調レベルの一方から他方への順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積し、予め決められた累積数が得られる累積階調レベルを特定すること、
それぞれの前記検査画像ごとに、検出された前記輝度の代表値に対応する代表階調レベルを特定すること、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記累積階調レベルと前記代表階調レベルの差を特性値として算出すること、
全ての前記検査画像の前記特性値を比較して最小特性値を特定すること、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記特性値と前記最小特性値の差に基づいて評価対象値を算出すること、
しきい値と少なくとも最大の前記評価対象値を比較して、前記最大の評価対象値が前記しきい値よりも大きいときに、異常の存在を判定すること、
を含む表面検査方法。
【請求項2】
請求項1に記載された表面検査方法において、
前記代表階調レベルは、検出された前記輝度の平均値である表面検査方法。
【請求項3】
請求項1に記載された表面検査方法において、
前記代表階調レベルは、検出された前記輝度の最頻値である表面検査方法。
【請求項4】
請求項1に記載された表面検査方法において、
前記代表階調レベルは、前記予め決められた階調の中央値である表面検査方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載された表面検査方法において、
前記階調の最大階調レベルから最小階調レベルへの順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積する表面検査方法。
【請求項6】
請求項1から4のいずれか1項に記載された表面検査方法において、
前記階調の最小階調レベルから最大階調レベルへの順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積する表面検査方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載された表面検査方法において、
前記評価対象値を、前記特性値と前記最小特性値の差に係数を掛けて算出し、
前記係数は、それぞれの前記検査画像で検出された前記輝度の平均値を分母とし、前記予め決められた階調の中央値を分子とする分数に等しい値である表面検査方法。
【請求項8】
検査対象物の複数の検査領域を撮像するイメージセンサと、
撮像によって得られた複数の検査画像のそれぞれを構成する複数の画素の輝度データに基づいて、予め決められた階調の各階調レベルに属する輝度を有する前記画素の数を表わす度数分布データを作成する度数分布データ作成手段と、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記度数分布データに基づいて、前記階調の最大階調レベル及び最小階調レベルの一方から他方への順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積し、予め決められた累積数が得られる累積階調レベルを特定する累積階調レベル特定手段と、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記度数分布データで前記輝度の代表値に対応する代表階調レベルと前記累積階調レベルとの差を特性値として算出する特性値算出手段と、
全ての前記検査画像の前記特性値を比較して最小特性値を特定する最小特性値特定手段と、
それぞれの前記検査画像ごとに、前記特性値と前記最小特性値の差に基づいて評価対象値を算出する評価対象値算出手段と、
を含み、
しきい値と少なくとも最大の前記評価対象値を比較して、前記最大の評価対象値が前記しきい値よりも大きいときに、異常の存在が判定される表面検査装置。
【請求項9】
請求項8に記載された表面検査装置において、
前記代表階調レベルは、検出された前記輝度の平均値である表面検査装置。
【請求項10】
請求項8に記載された表面検査装置において、
前記代表階調レベルは、検出された前記輝度の最頻値である表面検査装置。
【請求項11】
請求項8に記載された表面検査装置において、
前記代表階調レベルは、前記予め決められた階調の中央値である表面検査装置。
【請求項12】
請求項8から11のいずれか1項に記載された表面検査装置において、
前記階調の最大階調レベルから最小階調レベルへの順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積する表面検査装置。
【請求項13】
請求項8から11のいずれか1項に記載された表面検査装置において、
前記階調の最小階調レベルから最大階調レベルへの順に、各階調レベルに対応する前記画素の数を累積する表面検査装置。
【請求項14】
請求項8から13のいずれか1項に記載された表面検査装置において、
前記評価対象値算出手段は、前記評価対象値を、前記特性値と前記最小特性値の差に係数を掛けて算出し、
前記係数は、それぞれの前記検査画像で検出された前記輝度の平均値を分母とし、前記予め決められた階調の中央値を分子とする分数に等しい値である表面検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−292500(P2006−292500A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−111961(P2005−111961)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】