説明

表面検査装置及び表面検査方法

【課題】
光学式異物検査装置とX線分光集光素子及び複数種の特性X線を使用する微小部蛍光X線分析装置との複合異物検査装置における各装置間の座標位置合わせを最適化する。
【解決手段】
X線分光集光素子を使用したX線光学系における最適測定高さへの位置合わせを行う高さ移動機構11、及び複数種特性X線を使用した同数個のX線分析測定座標への位置移動を行うための水平移動機構3,4を備える。特に水平移動機構が回転ステージより構成される際はX線分析装置に別途一軸水平移動機構12を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、磁気ディスク,半導体ウエーハ,液晶基板等のような被検査物の表面及び表面近傍における欠陥・異物存在を検査する表面検査装置,観察装置に係わり、特に欠陥・異物等の同定が容易な表面検査装置,観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気ディスク,半導体ウエーハ等の表面に存在する欠陥,異物を検出する技術は記録密度,集積度の向上にあわせてますます精緻なものが要求されている。例えば特許文献1記載の技術は被検査物に光を照射し、欠陥,異物により光が散乱されることを利用して、欠陥,異物の大きさ等を測定するものである。このような技術を用いて欠陥,異物と推定されるものを抽出した場合でも、抽出されたものが本当に欠陥,異物なのかを確認する必要がある。このような目的のために光学顕微鏡やX線分析装置を組み合わせることが行われている。特許文献2記載の技術はX線分析装置を組み合わせた例である。
【0003】
【特許文献1】特開2001−264264号公報
【特許文献2】特開2004−170092号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
光学異物検査装置若しくは光学観察顕微鏡と微小部蛍光X線分析装置を組み合わせて、光学異物検査・観察後の特定異物の元素組成を同定する装置においては、光学異物検査装置若しくは光学観察顕微鏡で欠陥、あるいは異物候補として抽出されたものと同一試料座標をX線分析装置で分析する必要がある。
【0005】
光学異物検査と光学顕微鏡、あるいはX線分析装置を被検査物を移動させずに実行することは装置構成上難しいため、被検査物を各観察装置間を移動させる搬送機構を備えるとともに、各分析装置での被検査物の測定座標を記憶しておき、試料上の測定対象座標を全ての測定機において、一致させる機構が必要である。
【0006】
また、X線分光・集光素子を用いた微小部蛍光X線分析装置を組み合わせて最適な分析能力を発揮した分析を行うためには、高さ方向(Z軸方向)で試料高さを最適位置に調整する機構が必要であることが分かった。
【0007】
さらには、前記X線光学系に加えて、分析能力向上のために、複数種のX線を発生するX線発生源を用いて同数個のX線分析光学系を構成する場合においては、水平方向の測定最適座標に関して、該X線光学系で調整して複数のX線光学系の測定最適座標を一致させることが困難であることが分かった。
【0008】
前記光学検査装置においては、測定対象が円形であることが多いため、水平方向自由度として、回転ステージ及び一軸の直動機構より構成されることがあるが、X線分析座標をX線光学系側で調整できない状況下では、該搬送機構においては、X線分析装置への測定位置合わせの際に、試料面において位置合わせができない領域が発生してしまい、試料全面への分析を行うことができない。
【0009】
本発明は、異物検査装置と抽出された異物を特定するための分析装置を組み合わせた表面検査装置において、各分析装置での測定座標にずれがなく、かつ最適分析能力下でのX線分析が可能な表面検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の表面検査装置は、被検査物表面の異物を検出する異物検査装置と、該異物検査装置で検出された異物を分析する異物分析装置と、該異物検査装置と該異物分析装置の間で被検査物を搬送する搬送機構より構成される。
【0011】
前記異物検査装置は、光学式検査装置若しくは光学観察顕微鏡より構成されても良い。
【0012】
光学式検査装置とは、光源からの光を被検査物に照射し、被検査物から反射された光を解析することにより被検査物上の異物の有無を検出する装置であり、例えば、異物が存在することにより反射光に光の干渉が生じることを利用するものである。異物の検出原理には種々のものがあるが、本発明ではどのような原理のものであっても適用可能である。
【0013】
前記異物分析装置は蛍光X線分析装置であり、特に微小異物の分析を可能とするためにX線集光・分光素子によるX線光学系を備え、かつ複数の特性X線を照射可能なX線発生装置より構成されていることが好適である。例えば、X線分光・集光素子としては、二重湾曲分光結晶等が挙げられる。複数の特性X線を照射可能なX線発生装置としては、例えば複数のX線管球を並べたものや、複数ターゲットを単独のX線管球内に配置したものを使用する場合がある。
【0014】
前記搬送機構は、異物検査装置と異物分析装置の間を被検査物を搬送する機構を備えたものであり、前記X線分析装置で使用される複数種のX線に対して、予め記憶された前記複数種のX線に応じた前記被検査物の検査位置に前記被検査物の位置を移動させる機構を備える。この際、前記搬送機構は前記複数装置間の試料搬送の役割以外に、試料面上の特定観察位置へ試料を移動するための機構も兼ねており、光学検査装置,光学観察装置の方式により、異なる搬送自由度を持つ。
【0015】
前記X線分析装置における分析能力を最大限に発揮するためには、水平方向の搬送機構に加えて、X線光学系の最適測定高さへの被測定対象の移動が必要であることがわかり、該表面検査装置においては、水平方向に加えて、垂直方向の移動自由度も持つ構成となる。
【0016】
光学式検査装置においては、水平方向の搬送機構として、回転ステージ及び一軸の直動機構より構成される場合がある。この際には試料全面をX線分析装置で測定することを可能とするために、X線分析装置に一軸の直動機構を追加し、試料全面をX線分析可能とする構成をとる。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、X線光学系の調整より、分析対象座標を調整することが困難である二重湾曲結晶を用いた微小部蛍光X線蛍光分析装置と別種の検査装置・観察装置との複合測定における最適な移動機構を提供することを可能とし、測定物質の随時分析を可能とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明においては、検査・観察装置及びX線分析装置の種類によって、4種類の形態に分類される。以下、各々の装置組み合わせに最適化されたオフセット方式に関して添付図面に従って説明する。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の一形態を示したものである。検査装置として光学検査装置1を選択し、分析装置として複数励起源を有するX線管球及び複数のX線分光・集光素子から構成された微小部蛍光X線分析装置2を選択したものである。この際に、複数励起源の各励起源を使用する場合において、X線分光・集光素子の配置により個別に測定最適位置,高さが存在する。
【0020】
一般に、光学検査装置は測定対象の形状が円形であることより、試料上測定座標の選択移動方式として試料の水平方向直動機構3,水平方向回転機構4が備わっている。この際に、円形試料の全ての面について検査を実施するために、光学検査装置測定点5は水平方向直動機構3を適当に移動することで、試料台6の回転機構4の回転中心と重なるような配置が必要となる。
【0021】
この際に使用する搬送機構としては、例えば制御用モータ及びリードスクリュー,ナットより構成される直動ステージや回転位置決めステージを必要な搬送自由度に応じて複数個組み合わせたものを使用する場合がある。
【0022】
X線分析装置2においては、使用X線を変更する際の最適測定点として、光学検査装置測定点5よりオフセット値ΔX7,ΔY8,ΔZ9だけ変位したX線分析装置測定点10が存在する。そのため、従来の複合検査装置に備わるオフセット値ΔX補正用移動機構である3に加えて、オフセット値ΔZ補正用移動機構,ΔY補正用移動機構として、試料台高さ移動機構11,X線分析装置移動機構12を付加した構成となっている。
【0023】
図2は試料高さが最適高さ位置より変位した際の分析効率の変化を数値計算した例である。例えば、現在のX線分光・集光素子の製造精度、及びX線分析装置の機械精度を総合すると、最適高さ位置は装置毎に±0.3mm 程度のばらつきを持ち、オフセット値ΔZ補正用移動機構を備えない場合は、分析効率としては最高能力の80%程度しか発揮できない場合がある。この例においては、オフセット値ΔZ補正用移動機構を用いて、随時最適高さ位置より±0.05mm の範囲内で分析を行うことで、分析効率としては最高能力の
97%以上で分析することが可能となる。
【実施例2】
【0024】
又、X線分析装置の別形態として、図3に示すような複数の単励起X線管球及びX線分光・集光素子より構成された微小部蛍光X線分析装置13を選択する場合がある。この場合においても、各X線管球を使用してのX線光学系毎に測定最適座標,高さが存在し、X線分析装置と光学検査装置の座標オフセット補正機能として、移動機構3,11,12を付加した構成となる。
【実施例3】
【0025】
図4は本発明の別形態を示したものである。観察装置として光学観察顕微鏡14を選択し、X線分析装置として複数励起源を有するX線管球及び同数個のX線分光集光素子から構成された微小部蛍光X線分析装置2を選択したものである。通常光学観察顕微鏡測定時の際に必要となる、試料台上の観察位置決定のための水平方向直動機構3,15に加えて、X線分析時の垂直方向移動機構11を付加した構成をとる。
【実施例4】
【0026】
又、この形態におけるX線分析装置の別形態として、複数の単励起X線管球及び同数個のX線分光集光素子より構成された微小部蛍光X線分析装置を選択する場合がある。この場合においても、X線分析装置と光学検査装置の座標オフセット補正機能として、オフセット補正用移動機構3,15,11を付加した構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の一形態による回転機構及び一軸の水平移動機構を含めた光学検査装置とX線分析装置との複合装置における移動機構等の概略構成を示す図である。
【図2】本発明を構成する微小部蛍光X線分析装置において、試料高さとその際の分析効率の変化を数値計算した例である。
【図3】本発明の実施の一形態によるX線分析装置が特に複数の単励起X線管球より構成される際の機構概略構成を示す図である。
【図4】本発明の実施の一形態による一軸の水平方向平行移動機構を含めた光学観察装置とX線分析装置との複合装置における移動機構等の概略構成を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1…光学検査装置、2…複数励起源を有するX線管球より構成される微小部蛍光X線分析装置、3,15…水平方向直動機構、4…水平方向回転機構、5…光学検査装置測定点、6…試料台、7…水平方向オフセット値:ΔX、8…水平方向オフセット値:ΔY、9…垂直方向オフセット値:ΔZ、10…X線分析装置測定点、11…垂直方向移動機構、12…X線分析装置移動機構、13…複数の単励起X線管球より構成される微小部蛍光X線分析装置、14…光学観察顕微鏡。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査物表面の異物を検出する異物検査装置と、
該異物検査装置で検出された異物を分析する異物分析装置と、
該異物検査装置と該異物分析装置の間で被検査物を搬送する搬送機構と、
を備えた表面検査装置であって、
前記異物分析装置は複数種のX線を照射可能な蛍光X線分析装置であり、
かつ前記搬送機構は、前記X線分析装置で使用されるX線の種類に応じて、予め記憶された前記複数種のX線分析最適座標に応じた前記被検査物の検査位置に前記被検査物の位置を移動させる機構を備えたことを特徴とする表面検査装置。
【請求項2】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記異物検査装置が光学式の異物検査装置、若しくは光学式の観察顕微鏡より構成され、
測定試料水平・垂直方向移動機構として、回転機構若しくは直動機構、及び両者の複合移動機構を持ち、
かつ前記異物分析装置がX線分光・集光素子及び複数の特性X線を放射する機能を有するX線発生源より成る微小部蛍光X線分析装置より構成されることを特徴とする表面検査装置。
【請求項3】
請求項1または2記載の表面検査装置において、
前記搬送機構は、前記被検査物の高さ方向への移動機構を備え、かつ前記異物検査装置が光学式の異物検査装置、若しくは光学式の観察顕微鏡より構成され、前記予め記憶された前記複数種のX線分析最適座標は高さ方向の座標位置を含むことを特徴とする表面検査装置。
【請求項4】
請求項1記載の表面検査装置において、
前記異物検査装置と前記異物分析装置における各々の測定最適座標を入力して、前記異物検査装置における測定対象物を前記異物分析装置で最適測定を可能とするための自動座標計算・移動機能を持つことを特徴とする表面検査装置。
【請求項5】
請求項1記載の表面検査装置において、
搬送機構として、制御用モータ及び数種の直動機構若しくは回転機構とを組み合わせて構成されることを特徴とする表面検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2006−189281(P2006−189281A)
【公開日】平成18年7月20日(2006.7.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−322(P2005−322)
【出願日】平成17年1月5日(2005.1.5)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】