説明

表面機能層を有する樹脂成形体の製造方法及びその成形体

【課題】表面機能層を有する樹脂成形体の射出成形による製造を可能とする製造方法及びその成形体の提供。
【解決手段】射出成形法を用いて表面に機能層を有する樹脂成形体を製造する方法であって、厚みが0.1mm〜2mmであり、融点が220℃以上である表面に機能層を有するフィルム5を一方の金型1と他方の金型4との間に配置し、該金型を型締めして成形キャビティを形成した後、該キャビティ内に熱可塑性樹脂6を射出する工程および成形体よりフィルムを剥がす工程を含む射出成形により成形することにより、フィルムが成形体に融着することなく、皺が無い、表面に機能層を有する樹脂成形体を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に機能層を有する樹脂成形体に関する。詳しくは、本発明は、表面に機能層を有する樹脂成形体であって、寸法精度、および生産性に優れた樹脂成形体の製造方法並びにかかる樹脂成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
ガラス板を芳香族ポリカーボネート樹脂に代表される熱可塑性樹脂製の板に代替する試みは従来から幅広い分野で実施されている。その目的は、軽量化、安全性の向上、およびガラスでは不可能な態様での利用などを達成することにある。この中でガラスでは不可能な態様での利用の具体例としては、開口部や偏肉、ボス、リブ形状を有する成形体等が挙げられ、それらの成形体を後加工でなく直接に製造することが開示されている(特許文献1)。また、ガラス板が利用されていた分野では、樹脂板にも耐擦傷性が求められる場合が多く、ハードコートが必須である。ハードコートを樹脂板に施す方法としてはスプレーコート法、フローコート法、ディップコート法を使用する方法が開示されている(非特許文献1)。しかしながら開口部等の複雑な形状の成形体では垂れなどの外観不良が出るという問題がある。一方、射出成形中に箔転写することにより成形体の表面に機能層を施す方法も開示されている(特許文献2)。しかしながら、成形体が大型化、厚肉化、複雑形状化すると熱や樹脂流動の複雑化により転写フィルムが熱劣化して成形体に融着したり、樹脂の流動会合部を有する樹脂成形体ではフィルムが引き伸ばされて皺を生じるという問題がある。
【0003】
【特許文献1】特開平05−269805号公報
【特許文献2】特開昭59−202830号公報
【非特許文献1】塗装技術ハンドブック[日本塗装技術協会]
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、上記問題に鑑みてなされたものであり、ハードコートを有する樹脂成形体の射出成形による製造を可能とすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、鋭意検討を重ねた結果、キャリアフィルムの特性を最適化し、射出圧縮成形方法との組合せによりフィルムが成形体に融着することなく、皺が無い成形体を得る方法を見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明によれば、上記課題を解決する手段として、射出圧縮成形法にて、厚みが0.1mm〜2mmであり、融点が220℃以上である表面に機能層を有するフィルムを一方の金型と他方の金型との間に配置し、該金型を型締めして成形キャビティを形成した後、該キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する工程および成形体よりフィルムを剥がす工程を含む射出成形により成形することを特徴とする樹脂成形体の製造方法が提供される。なお、本発明でいうところの成形キャビティとは、可動側金型と固定側金型との型締めにより形成した成形用空間のことを指す。以下、本発明の詳細について説明する。
【0007】
<表面に機能層を有するフィルム>
本発明で使用される表面に機能層を有するフィルムとは、熱可塑性樹脂等からなるキャリアフィルムの表面に機能層を積層したフィルムであり、機能層の代表的なものとしては耐擦傷性を有するハードコート層、図柄等が形成された印刷層などがある。また、キャリアフィルムの材質としてはポリプロピレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂等が挙げられ、その中でもポリエステル系樹脂、特にポリエチレンナフタレート樹脂が好ましい。
【0008】
上記フィルムの厚みは0.1mm〜2mmであり、0.1mm〜0.4mmが好ましく、0.2mm〜0.4mmがより好ましい。フィルムの厚みが0.1mmより薄い場合、腰が足りず成形時に皺になり、2mmより厚い場合は形状追随性が損なわれる。
【0009】
上記フィルムの融点は220℃以上であり、250℃以上が好ましく、260℃以上がより好ましい。フィルムの融点が220℃より低い場合、射出成形時に溶融樹脂の熱によってフィルムが成形体に融着する。なお、フィルムの融点の上限は特に限定されないが、550℃以下が好ましい。
【0010】
<熱可塑性樹脂>
本発明の樹脂成形体を構成する熱可塑性樹脂は、各種の重合体または共重合体、およびこれらに各種の添加剤を配合した樹脂組成物を含む。
熱可塑性樹脂としては、ポリスチレン樹脂、ABS樹脂、AES樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、変性PPE樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルスルホン樹脂、ポリアリレート樹脂、およびポリエーテルイミド樹脂などが例示される。これらの中でもポリカーボネート樹脂が最も好ましい。
【0011】
かかるポリカーボネート樹脂は、通常使用されるビスフェノールA型ポリカーボネート以外にも、他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂であってもよい。ポリカーボネート樹脂はいかなる製造方法によって製造されたものでもよく、界面重縮合の場合は通常一価フェノール類の末端停止剤が使用される。ポリカーボネート樹脂はまた3官能フェノール類を重合させた分岐ポリカーボネート樹脂であってもよく、更に脂肪族ジカルボン酸や芳香族ジカルボン酸、または二価の脂肪族または脂環族アルコールを共重合させた共重合ポリカーボネートであってもよい。ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量は、好ましくは1.3×10〜4.0×10、より好ましくは1.5×10〜3.0×10、更に好ましくは2.0×10〜2.8×10である。芳香族ポリカーボネート樹脂の粘度平均分子量(M)は塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂0.7gを溶解した溶液から20℃で求めた比粘度(ηsp)を次式に挿入して求めたものである。
ηsp/c=[η]+0.45×[η]c(但し[η]は極限粘度)
[η]=1.23×10−40.83
c=0.7
【0012】
他の二価フェノールを用いて重合された、高耐熱性または低吸水率の各種のポリカーボネート樹脂の具体例としては、下記のものが好適に例示される。
(1)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール(以下“BPM”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ9,9−ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)フルオレン(以下“BCF”と略称)成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
(2)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、ビスフェノールA成分が10〜95モル%(より好適には50〜90モル%、さらに好適には60〜85モル%)であり、かつBCF成分が5〜90モル%(より好適には10〜50モル%、さらに好適には15〜40モル%)である共重合ポリカーボネート。
(3)該ポリカーボネートを構成する二価フェノール成分100モル%中、BPM成分が20〜80モル%(より好適には40〜75モル%、さらに好適には45〜65モル%)であり、かつ1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン成分が20〜80モル%(より好適には25〜60モル%、さらに好適には35〜55モル%)である共重合ポリカーボネート。
【0013】
これらの特殊なポリカーボネートは、単独で用いてもよく、2種以上を適宜混合して使用してもよい。また、これらを汎用されているビスフェノールA型のポリカーボネートと混合して使用することもできる。
【0014】
これらの特殊なポリカーボネートの製法及び特性については、例えば、特開平6−172508号公報、特開平8−27370号公報、特開2001−55435号公報及び特開2002−117580号公報等に詳しく記載されている。
【0015】
上記の熱可塑性樹脂は、透明性を損なわない範囲において、従来公知の各種の添加剤を含有することができる。かかる添加剤としては、例えば、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、離型剤、摺動剤、赤外線吸収剤、光拡散剤、蛍光増白剤、帯電防止剤、難燃剤、難燃助剤、可塑剤、強化充填材、衝撃改質剤、光触媒系防汚剤、およびフォトクロミック剤等が例示される。尚、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、着色剤、および離型剤などは、従来上記の熱可塑性樹脂における公知の適正量を配合できる。かかる量が樹脂の透明性を阻害することが稀であるからである。
【0016】
また樹脂材料は、通常必要な添加剤を原料樹脂と溶融混練したペレットの形状で、射出成形機に供給される。かかる供給時は水分含有量が十分に低減されることが必要である。ポリカーボネート樹脂の如き水分吸収性の高い熱可塑性樹脂は、十分に乾燥され射出成形機に供給されることが必要である。溶融混練は、従来公知の溶融混練機が利用でき、特にベント式二軸押出機が好適である。また押出中に生じた異物を除去するためのスクリーンを押出機ダイス部前のゾーンに設置することが好ましい。ペレット化に際して外部の埃などの影響を低減する必要がある場合には、押出機周囲の雰囲気を清浄化することが好ましい。更にペレットの製造場所から、射出成形機への製造場所への運搬には、従来光情報記録媒体の基板製造用ペレットに利用される、各種の防塵コンテナが利用できる。
【0017】
<樹脂成形体>
本発明の製造方法で製造される樹脂成形体の厚みは3mm〜30mmの範囲が好ましく、5〜30mmがより好ましく、8〜30mmが最も好ましい。厚みが3mmより薄い場合、射出成形時に樹脂の剪断によってフィルムが変形してしまう。また、厚みが30mmより厚い場合、射出成形時のフィルムへの熱負荷が大きくなりフィルムが融着する可能性が高くなる。
【0018】
上記樹脂成形体は樹脂の流動会合部を有する樹脂成形体であることが好ましく、開口部を有する樹脂成形体がより好ましい。開口部を有する樹脂成形体の場合、該開口の大きさが500mm以上が好ましく、3,000mm以上がより好ましく、30,000mm以上が最も好ましい。開口部の大きさが500mmより小さい場合はフィルムがシワになりにくく従来の技術でも成形可能である。なお、500mm以上の開口部とは、機能層を有する面の開口部の面積が500mm以上であることを指す。
【0019】
<樹脂成形体の製造方法>
本発明の製造方法は以下の工程を含む製造方法である。
【0020】
(表面に機能層を有するフィルムを一方の金型と他方の金型との間に配置し、該金型を型締めして成形キャビティを形成した後、該キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する工程)
本発明において溶融樹脂は、表面に機能層を有するフィルムを一方の金型と他方の金型との間に配置した後に予め圧縮ストローク分だけ余分に開いた金型キャビティ内に射出充填される。フィルムの配置方法としては金型の上方或いは下方に配置されたフィルムロールを他方に巻き取り送る方法や、枚葉にカットされたフィルムをロボットアームなどにより金型内に配置する方法などがある。また、この際に金型内で真空熱成形により予備賦形を行ってもよい。
【0021】
圧縮ストロークと樹脂板の厚みとの合計量は、目的とする樹脂板の厚みに対して、好ましくは1.01〜3倍の範囲、より好ましくは1.05〜2倍の範囲、更に好ましくは1.1〜1.8倍の範囲である。かかる圧縮ストロークの適正値は、成形体の厚みや使用される樹脂の溶融粘度により異なる。例えば樹脂板の厚みが10mm以上、好ましくは12mm以上の場合には、圧縮ストロークの絶対値は、好ましくは0.2〜3mmの範囲、より好ましくは0.3〜2mmの範囲である。成形体の厚みが少ない場合には、圧縮ストロークを大きくとることが好ましい。
【0022】
(射出成形により成形体を成形する工程)
金型同士が中間型締め状態に型締めされた金型キャビティ内へ溶融した熱可塑性樹脂を射出した後に最終型締めを行う。この最終型締めは閉鎖されたキャビティ中で行うことも、一部開放されたキャビティ中で行うこともできる。閉鎖されたキャビティとは、樹脂の流動する余地のない閉ざされた状態のキャビティをいう。かかるキャビティは、ホットランナのバルブの閉鎖、および完全なゲートシールにより達成される。更にシリンダー側から付加する樹脂圧力と圧縮圧力との平衡が維持された状態が含まれる。一方、一部開放されたキャビティとは、樹脂の流動する余地がある開放されたキャビティをいう。例えば、オープンノズルで樹脂が大きくフローバックされる場合や、捨てキャビが設けられて樹脂が圧縮によって流入する場合などがある。成形体の品質を安定化させるためより好ましいのは閉鎖されたキャビティにおいて圧縮を行う方法である。
【0023】
最終型締め工程において、可動側金型パーティング面と固定側金型のそれとは接触(以下、“型面タッチ”と称する場合がある)しないことが好ましい。型面タッチがある場合、所定の圧力が樹脂に十分に伝わることがなくなり、寸法精度に優れた低歪みの成形体は得難くなる。可動側金型のパーティング面と固定側金型のそれとの距離は、好ましくは0.05〜3mmの範囲、より好ましくは1〜2mmの範囲である。3mmを超える設定とした場合には成形体の形状によっては可動側金型の倒れが生じ製品にバラツキが生じやすくなる。また0.05mm未満の場合には十分な制御が困難となり、連続の成形において型面タッチが生ずる場合がある。この後、十分に冷却を行った後に成形体を取り出す。
【0024】
(成形品よりフィルムを剥がす工程)
次に取り出した成形体よりキャリアフィルムを剥がす。成形体よりキャリアフィルムを剥がす方法としては、枚葉のフィルムを用いる場合は手作業にて引き剥がす方法、ロールフィルムを用いる場合はロボットアームにて引き剥がす方法が挙げられる。なお、ロールフィルムを用いる場合ではフィルムを配置した金型の他方の金型に若干のアンダーカット部を設ることにより型開き時に引き剥がす方法も用いることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明の方法を用いて製造された樹脂成形体は大型で厚肉で開口部を有する形状でも良好な外観を有する。したがって、上述のとおり、これらの特性が求められる車両、船舶および航空機などの輸送機器の樹脂製窓(車輌屋根を含む)、並びに液晶ディスプレイ保護材に代表される画像を透視する用途、特にパチンコやピンボールに代表される遊技具における遊技盤に代表される幅広い工業分野において有用である。よってその奏する工業的効果は格別のものである。なお、車輌、船舶および航空機などの輸送機器の樹脂製窓の部材とは、サンルーフやクオータ窓等に代表される光透過性を有する部材のことを指す。また、パチンコやピンボールに代表される遊技具における遊技盤とは、前面盤や遊戯盤等に代表される光透過性を有する部材のことを指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
本発明者らが現在最良と考える本発明の形態は、前記の各要件の好ましい範囲を集約したものとなるが、例えば、その代表例を下記の実施例中に記載する。もちろん本発明はこれらの形態に限定されるものではない。
【実施例】
【0027】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、熱可塑性樹脂及び、表面に機能層を有するフィルムとしては以下のものを用いた。
(I)熱可塑性樹脂
A−1:ポリカーボネート樹脂[帝人化成(株)製パンライトL−1225Y(商品名)]
A−2:ABS樹脂[東レ(株)製920−555(商品名)]
A−3:PMMA樹脂[三菱レイヨン(株)製VH−001(商品名)]
(II)表面に機能層を有するフィルム
B−1:フィルム厚み0.25mmのポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムをキャリアフィルムとし、その表面に機能層としてハードコート層を積層したフィルム(融点269℃)[尾池工業(株)製]
B−2:キャリアフィルムの厚みを0.125mmとした以外はB−1と同様のフィルム
B−3:フィルム厚み0.25mmのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムをキャリアフィルムとし、その表面に機能層としてハードコート層を積層したフィルム(融点258℃)
B−4:フィルム厚み0.25mmのポリカーボネート(PC)フィルムをキャリアフィルムとし、その表面に機能層としてハードコート層を積層したフィルム(融点269℃)
B−5: フィルム厚み0.25mmのポリメチルメタクリレート(PMMA)フィルムをキャリアフィルムとし、その表面に機能層としてハードコート層を積層したフィルム(融点180℃)
B−6:キャリアフィルムの厚みを0.05mmとした以外はB−1と同様のフィルム
B−7:キャリアフィルムの厚みを3mmとした以外はB−1と同様のフィルム
【0028】
[実施例1]
以下の工程に従い、表面に機能層を有する樹脂成形体を作製した。
熱可塑性樹脂(A−1)のペレットを120℃にて5時間熱風乾燥機で乾燥した後、成形機としてシリンダ径110mmφ、型締め力15,700kNの名機製作所製M1600NS−DM射出成形機及び図1の金型を使用し、フィルム(B−1)を用いて射出圧縮成形を行った。
【0029】
該成形機は、特開2003−048241号公報の実施例に記載されたと同じ平行度矯正機構を有するものである。金型取り付け板の四隅に配置された平行度矯正機構の各機構の保持圧力を調整することにより、金型の平行度をtanθが0.00005以下となるよう調整した。
【0030】
成形はシリンダ温度290℃、ホットランナ設定温度290℃、金型温度は固定側、可動側ともに100℃、中間型締め位置から最終型締め位置までのストロークであるプレスストローク2mm、および圧縮加圧時間180秒で行った。
【0031】
なお、フィルムは、枚葉にしたフィルムを用い、可動側のパーティング面に両面テープを用いて貼り付けて配置した。
成形体の形状は図1に示すとおり、500mm以上の開口部を複数個有する、長さ300mm、幅300mm、および厚み10mmの成形体である。
【0032】
[実施例2]
上記実施例1において、成形体の肉厚を30mm、加圧時間を700秒、とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0033】
[実施例3]
上記実施例1において、使用するフィルムをフィルム(B−2)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0034】
[実施例4]
上記実施例1において、使用樹脂を熱可塑性樹脂(A−2)とし、シリンダ温度250℃、ホットランナ温度250℃、金型温度は固定側可動側ともに60℃とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0035】
[実施例5]
上記実施例1において、使用樹脂を熱可塑性樹脂(A−3)とし、シリンダ温度250℃、ホットランナ温度250℃、金型温度は固定側可動側ともに60℃とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0036】
[実施例6]
上記実施例1において、使用するフィルムをフィルム(B−3)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0037】
[実施例7]
上記実施例1において、使用するフィルムをフィルム(B−4)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0038】
[実施例8]
上記実施例1において、開口部の大きさが30,000mmである金型(図.2)を用いた以外は実施例1と同様にして成形を実施した。
【0039】
[実施例9]
上記実施例1において、流動会合部が偏肉部となるようにした金型(図.3)を用いた以外は実施例1と同様にして成形を実施した。
【0040】
[比較例1]
上記実施例1において、フィルムを使用しないこと以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0041】
[比較例2]
上記実施例1において、使用するフィルムをフィルム(B−5)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。なお、比較例2ではフィルムが成形体に融着したため剥がすことができず、鉛筆硬度は測定できなかった。
【0042】
[比較例3]
上記実施例1において、使用するフィルムをフィルム(B−6)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0043】
[比較例4]
上記実施例9において、使用するフィルムをフィルム(B−6)とした以外は実施例9と同様にして成形を実施した。
【0044】
[比較例5]
上記実施例1において、使用するフィルムをフィルム(B−7)とした以外は、実施例1と同様にして成形を実施した。
【0045】
(III)評価項目
(III−1)形状
フィルムがついた成形体の形状を観察し、下記の通り評価を実施した。
○:成形体の金型形状の転写が十分であった。
×:フィルムと金型との密着が不十分なため、成形体の金型形状の転写が不十分であった。
(III−2)ウエルドライン
成形体のウエルドラインの有無を観察し、下記の通り評価を実施した。
○:ウエルドラインが認められなかった。
×:ウエルドラインが認められた。
(III−3)鉛筆硬度
成形体の耐擦傷性の目安としてJIS K 5600−5−4に示される鉛筆硬度の評価を実施した。
(III−4)シワ
成形体シワの有無を観察し、下記の通り評価を実施した。
1:無数のシワが有る
2:シワが樹脂会合部に有る
3:シワは無いが若干凹状
4:シワ無し良好
(III−5)フィルムの成形体への融着
成形体をSEMにて観察し、キャリアフィルムの融着の有無について下記の通り評価を実施した。また、FT−IRを用いてフィルムの劣化状態を確認した。
1:フィルムが成形体に融着し剥がせない
2:フィルムが成形体に融着し剥がし難い
3:融着は無いが若干フィルムの劣化有り
4:融着無し良好
実施例1〜9および比較例1〜5の評価結果を表1に記載した。
【0046】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】実施例1〜7、比較例1〜3及び比較例5に用いた金型及び成形体の形状を示す。なお、図は成形金型の概要を模式的に示しており、ゲート、エジェクタピン等の詳細構造は図示を省略してある。
【図2】実施例8に用いた金型及び成形体の形状を示す。なお、図は成形金型の概要を模式的に示しており、ゲート、エジェクタピン等の詳細構造は図示を省略してある。
【図3】実施例9及び、比較例4に用いた金型及び成形体の形状を示す。なお、図は成形金型の概要を模式的に示しており、ゲート、エジェクタピン等の詳細構造は図示を省略してある。
【符号の説明】
【0048】
1 可動側金型(固定側金型と額縁構造となる)
2 額縁ブロック
3 開口部成形用押し当て式入れ子
4 固定側金型
5 フィルム
6 溶融樹脂
7 成形体本体
8 成形体開口部
9 成形体開口部
10 成形体偏肉部
11 偏肉部成形用入れ子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
厚みが0.1mm〜2mmでフィルムの融点が220℃以上である、表面に機能層を有するフィルムを一方の金型と他方の金型との間に配置し、該金型を型締めして成形キャビティを形成した後、該キャビティ内に熱可塑性樹脂を射出する工程および成形体よりフィルムを剥がす工程を含む射出成形により成形することを特徴とする表面に機能層を付与された樹脂成形体の製造方法。
【請求項2】
樹脂成形体の厚みが3mm〜30mmの範囲である請求項1に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項3】
樹脂成形体が樹脂の流動会合部を有する樹脂成形体である請求項1または2に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項4】
樹脂成形体が500mm以上の開口部を有する樹脂成形体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項5】
表面の機能層がハードコート層であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項6】
熱可塑性樹脂が芳香族ポリカーボネート樹脂である請求項1〜5のいずれか1項に記載の樹脂成形体の製造方法。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造法により製造された樹脂成形体。
【請求項8】
樹脂成形体が車輌、船舶および航空機などの輸送機器の樹脂製窓の部材である請求項7記載の樹脂成形体。
【請求項9】
該樹脂製窓が屋根の部材である請求項8記載の樹脂成形体。
【請求項10】
樹脂成形体がパチンコ遊戯台の部材である請求項7に記載の樹脂成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−226615(P2009−226615A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−71416(P2008−71416)
【出願日】平成20年3月19日(2008.3.19)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】