説明

被検試料採取器具

【課題】 被検試料に含まれる測定に悪影響を与える不用な無形成分の除去が可能な被検
試料採取器具を提供する。
【解決手段】 被検試料、試薬、及び添加剤の各液体を収容し、測定項目の成分を測定す
るセンサ18を有するマイクロカセット1と、このマイクロカセット1内の各液体を制御
する液体制御部3を有する装置本体2とを備え、この液体制御部3によってマイクロカセ
ット1内に収容された被検試料に含まれる測定に不用な所定の無形成分を、添加剤を添加
することにより有形化した第1の被検試料を生成し、生成した第1の被検試料からこの第
1の被検試料に含まれる有形成分を分離して第2の被検試料を生成する。そして、生成し
た第2の被検試料及び試薬の混合液をセンサ18で測定し、測定したセンサ18からの信
号に基づいて分析データを生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体に含まれている成分を分析するための被検試料採取器具に係り、特に、
血液や尿等の生体試料に含まれる成分を分析するための被検試料採取器具に関する。
【背景技術】
【0002】
化学分析装置は、被検体から採取された血液や尿などの被検試料とこの被検試料に含ま
れる各測定項目に該当する試薬の混合液を、化学反応によって生ずる色調などの変化を光
の透過量を測定することにより、被検試料中の様々な成分の濃度や酵素活性を測定する。
また、被検試料に含まれる測定項目の成分に選択的に応答するイオンセンサや酵素センサ
等のセンサを用いて測定することにより、被検試料中の様々な成分の濃度を測定する。
【0003】
近年、省スペースで、簡便に血液検査、化学反応を行うことが可能なシート型マイクロ
リアクタを用いたモバイル型化学検査装置が知られている(例えば、特許文献1参照。)
。この装置では、被検試料である血液を注入したマイクロリアクタを装置本体に装着し、
装着したマイクロリアクタを回転させて遠心分離により血液を血球と血漿に分離する。次
いで、マイクロリアクタ内において分離した血漿を微小の流路を介して反応槽に移動し、
その反応槽で血漿と試薬の反応液を、装置本体に設けた発光素子及び受光素子を用いて光
学的に測定することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−340911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、蛋白質、脂質、糖質等を含有する血液などの被検試料は粘度が高いため
、マイクロリアクタのような微小流路における被検試料の送液や、送液した被検試料と試
薬との混合を困難なものにし、測定に悪影響を与える問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、被検試料に含まれる測定に悪
影響を与え好ましくない換言すれば不用(以下不用という。)な無形成分の除去が可能な
マイクロ化学分析装置、その測定方法、及び被検試料採取器具を提供することを目的とす
る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記問題を解決するために、請求項1に係る本発明の被検試料採取器具は、被検試料を
採取するためのニードルと、このニードルを介して前記被検試料を収容するシリンダと、
前記ニードルから前記シリンダ内に前記被検試料を吸引し、吸引した被検試料を吐出させ
るためのピストンと、前記シリンダ内に保持され、前記ピストンの吸引方向への移動によ
り、前記シリンダ内に吸引された被検試料に含まれる所定の無形成分を有形化する添加剤
と、前記シリンダ内に保持され、前記ピストンの吐出方向への移動により、前記添加剤に
より有形化された有形成分を除去する濾過膜と、を備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施例1に係るマイクロ化学分析装置の構成を示すブロック図。
【図2】本発明の実施例1に係るマイクロ化学分析装置の外観を示す図。
【図3】本発明の実施例1に係るマイクロカセットの構成の一例を示す図。
【図4】本発明の実施例1に係るマイクロカセットの上面及び断面を示す図。
【図5】本発明の実施例1に係るマイクロ化学分析装置の動作を示すフローチャート。
【図6】本発明の実施例1に係るマイクロカセットの他の例を示す図。
【図7】本発明の実施例1に係る装置本体の他の例を示す図。
【図8】本発明の実施例1に係るマイクロカセットの分離部及び装置本体の他の例を説明するための図。
【図9】本発明の実施例2に係るマイクロ化学分析装置の構成を示すブロック図。
【図10】本発明の実施例2に係るマイクロカセットの構成の一例を示す図。
【図11】本発明の実施例3に係るマイクロ化学分析装置の構成を示すブロック図。
【図12】本発明の実施例3に係るマイクロカセットの構成の一例を示す図。
【図13】本発明に使用する被検試料採取器具の構成を示す図。
【図14】本発明の実施例4に係るマイクロカセットの構成の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施例を、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0010】
以下、本発明に係るマイクロ化学分析装置の実施例1を、図1乃至図8を参照して説明
する。図1は、実施例1に係るマイクロ化学分析装置の構成を示したブロック図である。
また、図2は、図1のマイクロ化学分析装置の概観を示した図である。
【0011】
図1において、マイクロ化学分析装置100は、被検体から採取した被検試料、この被
検試料に含まれる測定に悪影響を与え好ましくない不用な成分を処理するための添加剤、
及びこの被検試料の測定項目に該当する試薬の各液体を収容するマイクロカセット1と、
このマイクロカセット1による測定で生成された信号を検出して分析データを生成する装
置本体2とを備えている。
【0012】
装置本体2は、携帯可能なサイズであり、マイクロカセット1を保持するインターフェ
ース部10と、マイクロカセット1内に収容された各液体を制御する液体制御部3と、マ
イクロカセット1からの信号を検出する検出部4と、検出部4で検出された検出信号から
分析データを生成するデータ処理部5とを備えている。
【0013】
また、データ処理部5で生成された分析データなどを保存する記憶部53と、データ処
理部5で生成された分析データを出力する出力部6と、装置本体2の液体制御部3、検出
部4、及びデータ処理部5等の各ユニットに電力を供給する電源部7と、各種コマンド信
号などを入力する操作部8と、上述した各ユニットを制御する制御部9とを備えている。
【0014】
インターフェース部10は、図2に示す開口部10aを有し、この開口部10aへの挿
入により、装置本体2に着脱自在に装着されるマイクロカセット1を保持する。
【0015】
液体制御部3は、インターフェース部10に保持されたマイクロカセット1内の各液体
を送液する送液ユニット31と、添加剤で処理された被検試料の分注を行う分注ユニット
32と、添加剤が添加された被検試料や分注された被検試料と試薬の混合液を撹拌する撹
拌ユニット33と、混合液を所定の温度に設定する温度制御ユニット34とを備えている

【0016】
送液ユニット31は、被検試料、添加剤、及び試薬の各液体を収容するマイクロカセッ
ト1の各収容部に対応する例えば上面を押圧してマイクロカセット1内の各液体を送液す
る。なお、圧電素子等のアクチュエータを設け、このアクチュエータをマイクロカセット
1の各液体を収容する各収容部に対応する上面を所定の周波数で振動させて変形し、この
変形により各収容部内を加圧及び減圧して各液体を送液するようにしてもよい。この送液
方法には、各収容部内に設けたポンプ室の入口側と出口側の各流路のインピーダンス差に
よって液体を送液するディフューザ方式や、マイクロカセット1内の各部に逆止弁を備え
た方式などがある。
【0017】
分注ユニット32は、例えば送液ユニット31と同様に、マイクロカセット1内の添加
剤で処理された被検試料を分注する。
【0018】
撹拌ユニット33は、マイクロカセット1内の添加剤が添加された被検試料や、分注ユ
ニット32により分注された被検試料と試薬の混合液を、例えばマイクロカセット1の上
面から振動させて混和する。
【0019】
温度制御ユニット34は、加熱器及び放熱器を備え、インターフェース部10に保持さ
れたマイクロカセット1の近傍に配置し、被検試料と試薬の混合液を所定温度に設定して
保持する。
【0020】
検出部4は、インターフェース部10に保持されたマイクロカセット1から出力される
信号を検出する信号検出部41と、信号検出部41からの検出信号を所定の信号レベルに
増幅する信号増幅部42とを備えている。そして、信号増幅部42で増幅された検出信号
をデータ処理部5に出力する。
【0021】
データ処理部5は、検出部4の信号増幅部42から出力された検出信号から被検データ
を生成する収集部51と、収集部51で生成された被検データから分析データを生成する
処理部52とを備えている。
【0022】
収集部51は、アナログ・デジタル変換回路(ADC)を備え、このADCを用いて信
号増幅部42から出力された検出信号であるアナログ信号をデジタル信号に変換し、変換
したデジタル信号を被検データとして処理部52に出力する。
【0023】
処理部52は、収集部51から出力された被検データに対して、記憶部53に保存され
ている測定項目のキャリブレーションテーブルを読み出した後、このキャリブレーション
テーブルを用いて被検試料に含まれる測定項目の成分濃度等である分析データを生成する
。そして、生成した分析データを記憶部53に保存すると共に出力部6に出力する。
【0024】
記憶部53は、記憶回路を備え、操作部8から入力された入力情報やデータ処理部5の
処理部52から出力された分析データを保存する。また、分析データの生成に用いられる
キャリブレーションテーブルなどを保存している。
【0025】
出力部6は、液晶パネルなどのモニタを有し、データ処理部5の処理部52から出力さ
れた分析データを表示する。なお、前述した表示以外にも、表示灯による点灯を利用した
視覚伝達手段、音声による聴覚を利用した聴覚伝達手段によっても伝達するようにしても
よい。更には、それら複数の手段を併用するようにしてもよい。
【0026】
電源部7は、例えば充電可能な蓄電池を備え、液体制御部3、検出部4、データ処理部
5、記憶部53、出力部6、操作部8、及び制御部9等の各ユニットへ電力を供給する。
【0027】
操作部8は、操作パネル上にボタンなどの入力デバイスを備え、装置本体2の電源ON
及びOFFの操作、被検体の情報の入力、マイクロカセット1に収容された被検試料の測
定操作、記憶部53に保存されている様々な分析データの出力操作などが行われる。
【0028】
制御部9は、操作部8からの入力情報に基づいて、液体制御部3、検出部4、データ処
理部5、記憶部53、出力部6、及び電源部7の各ユニットの制御、システム全体の制御
を統括して行う。
【0029】
次に、図1乃至図4を参照して、マイクロカセット1の詳細を説明する。図3は、マイ
クロカセット1の構成の一例を示した図である。また、図4(a)は、図3のマイクロカ
セット1の上面図であり、図4(b)は図4(a)に示したマイクロカセット1のX−X
線における断面図である。
【0030】
マイクロカセット1は、石英ガラス、シリコン、プラスチック、セラミックス等の上面
に微細加工により形成された被検試料、添加剤、及び試薬の各液体を収容する各収容部、
及び各収容部間を連通する矢印(図3)で示した微小な各流路により構成される分析部2
0を有する基板21(図4)と、この基板21の上面に接合されたシート22とを備えて
いる。
【0031】
即ち、分析部20は、マイクロカセット1内に注入された被検試料を収容する試料収容
部11と、被検試料に含まれる測定に悪影響を与える不用な無形成分と反応してその無形
成分を有形化させる添加剤を収容した添加剤収容部12と、被検試料に添加剤を添加して
処理を行ない、第1の被検試料を生成する試料処理部13と、試料処理部13で生成され
た第1の被検試料に含まれる有形成分を除去して第2の被検試料を生成する分離部14と
を備えている。
【0032】
また、分離部14で生成された第2の被検試料を分注するための分注部15と、被検試
料の測定項目に該当する試薬を収容した試薬収容部16と、分注部15から分注された第
2の被検試料と試薬収容部16の試薬との混合液をセンサ18を用いて測定する反応部1
7と、センサ18による測定で生成された信号を装置本体2に出力するためのコネクタ1
9とを備えている。
【0033】
試料収容部11は上方に開口部を有し、この開口部はシート22で覆われている。シー
ト22の被検試料を注入する注入部分は、マイクロカセット1の外部への漏洩を防ぎ且つ
密封性を確保する弾性体の材料が用いられる。また、試料収容部11は試料流路111を
介して試料処理部13に連通している。そして、試料収容部11に収容された例えば0.
1〜50μLの被検試料の予め設定された量が、装置本体2の液体制御部3における送液
ユニット31によって試料流路111を介して試料処理部13に送液される。
【0034】
なお、被検試料が例えば血液である場合、血球やフィブリン等の有形成分と共に、測定
に悪影響を与える例えば高粘度の要因となる蛋白質、脂質、糖質等の無形成分を含んでい
る。従って、試料流路111は、被検試料の円滑な送液が可能なように、他の流路に比べ
て流路長を短く且つ流路径を大きくしている。
【0035】
添加剤収容部12は、被検試料に含まれる測定に悪影響を与える不用な無形成分を、例
えば変性や凝集等をさせて有形成分にする様々な添加剤を選択可能に収容している。また
、添加剤流路121を介して試料処理部13に連通している。そして、添加剤収容部12
から予め設定された量の添加剤が、送液ユニット31によって被検試料の送液動作に同期
して試料処理部13に送液される。
【0036】
ここで、例えば被検試料及びこの被検試料と試薬の混合液の各流路における送液速度を
低下させて所定量を送液できない要因や、前記被検試料と試薬の混合液の均一化を妨げる
要因となる高粘度の特性を有する被検試料中の蛋白質を、例えばメタりん酸やエタノール
などの添加剤を用いて有形化させることができる。
【0037】
試料処理部13は、試料流路111及び添加流路121が合流して1つの流路を形成す
るY字流路を有し、試料流路111とは反対方向に形成された処理流路131を介して分
離部14に連通している。
【0038】
そして、試料処理部13のY字流路で被検試料の送液に同期して添加剤が添加される。
次いで、添加剤が添加された被検試料は、撹拌ユニット33によって添加剤と被検試料が
混和されて均一になる。この混和により、被検試料に含まれる無形成分の内の所定の成分
を有形化した第1の被検試料を生成する。生成した第1の被検試料は、処理流路131を
介して分離部14に送液される。
【0039】
なお、試料処理部13と分離部14の間に更に第2の試料処理部を設け、またこの第2
の試料処理部で第1の被検試料の処理を行うための第2の添加剤を収容する第2の添加剤
収容部を設ける。そして、第2の試料処理部で試料処理部13とは異なる無形成分を有形
化する処理を行った第1の被検試料を分離部14に送液するようにしてもよい。
【0040】
このように、被検体から採取された被検試料に含まれる測定に不用な無形成分を有形化
することができる。
【0041】
分離部14は、試料処理部13における処理により生成された有形成分や、試料収容部
11に収容されたときに被検試料に含まれる例えば血球やフィブリン等の有形成分を分離
するための濾過膜を備えている。また、処理流路131とは反対方向に形成された分離流
路141を介して分注部15に連通している。そして、その濾過膜を通過して第1の被検
試料の有形成分が除去された第2の被検試料を生成する。生成された第2の被検試料は、
分離流路141を介して分注部15に送液される。
【0042】
なお、試料収容部11又は試料収容部11と試料処理部13の間に第2の分離部を設け
、この第2の分離部で被検体から採取された被検試料に含まれる血球やフィブリン等の有
形成分を除去した後に、試料処理部13で第1の被検試料を生成するようにしてもよい。
【0043】
このように、第1の被検試料の測定に不用な有形成分を除去することができる。そして
、被検試料中の高濃度の蛋白質が除去された第2の被検試料である場合、粘度が低下した
第2の被検試料を円滑に短時間で分離流路141を通過させて分注部15に送液すること
ができる。
【0044】
分注部15は、分離部14から送液された第2の被検試料を一旦収容し、分注流路15
1を介して反応部17に連通している。そして、収容した第2の被検試料の予め設定され
た量が、分注ユニット32により分注流路151を介して反応部17に送液される。なお
、被検試料中の高濃度の蛋白質が除去された第2の被検試料である場合、粘度が低下する
ので第2の被検試料の予め設定した量を正確に反応部17に送液することができる。
【0045】
試薬収容部16は、測定項目に該当する試薬を収容し、試薬流路161を介して反応部
17に連通している。そして、試薬収容部16の予め設定された量の試薬が、第2の被検
試料の分注動作に同期する送液ユニット31によって反応部17に送液される。なお、測
定項目の試薬が例えば2種類ある場合、第2の試薬を収容する第2の試薬収容部及び反応
部17に連通する第2の試薬流路を設け、試薬収容部16から試薬が反応部17に送液さ
れた後に、更に第2の試薬部から第2の試薬を反応部17に送液するようにしてもよい。
【0046】
反応部17は、分注流路151及び試薬流路161が合流して1つの流路を形成するY
字流路を備えている。また、ナトリウムイオンなどの電解質に選択的に感応するイオン選
択性電極及びこの電極の基準となる参照電極により構成されるイオンセンサ、グルコース
などの測定成分に選択的に反応するグルコースオキシダーゼ(GOD)等を含む高分子膜
が固定化された酵素センサ等のセンサ18を有している。そして、反応部17のY字流路
で同期して第2の被検試料と試薬が合流して混合された後、その混合液が撹拌ユニット3
3によって混和され、均一化される。
【0047】
なお、被検試料中の蛋白質の除去により第2の被検試料の粘度を低下させると、前記Y
字流路で第2の被検試料と試薬の分散が容易になる。また、撹拌ユニット33による撹拌
動作で互いに分散した第2の被検試料及び試薬の分子拡散が迅速に行われ、均一な混合液
を得ることができる。
【0048】
反応部17で混和された混合液は、マイクロカセット1の近傍に位置する装置本体2に
おける液体制御部3の温度制御ユニット34で所定温度に保持された後、センサ18によ
って測定される。そして、センサ18は、測定項目の成分の濃度に応じた信号を生成し、
生成した信号はコネクタ19を介して装置本体2における検出部4の信号検出部41に出
力される。測定終了後の被検試料、添加剤、試薬、及び混合液は、マイクロカセット1内
に保持される。
【0049】
このように、測定に使用された各液体はマイクロカセット1内に保持されるので、各液
体による装置本体2及び操作者への汚染を防ぐことができる。
【0050】
以下、図1乃至図5を参照して、実施例1に係るマイクロ化学分析装置100の動作の
一例を説明する。
【0051】
図5は、マイクロ化学分析装置100の動作を示したフローチャートである。マイクロ
化学分析装置100の操作者が操作部8から電源ONの操作を行い、被検体の被検体情報
を入力する。そして、前記被検体の被検試料が収容されたマイクロカセット1を装置本体
2におけるインターフェース部10の開口部10aに挿入した後、操作部8から測定操作
を行うことにより、マイクロ化学分析装置100は、測定を開始する(ステップS1)。
【0052】
制御部9は、操作部8からの入力情報に基づいて、液体制御部3、検出部4、データ処
理部5、記憶部53、及び出力部6に測定を指示する。この指示に基づいて、液体制御部
3の送液ユニット31、分注ユニット32、撹拌ユニット33、及び温度制御ユニット3
4は、マイクロカセット1内の各液体を制御する。
【0053】
送液ユニット31は、マイクロカセット1内の試料収容部11及び添加剤収容部12に
収容された被検試料及び添加剤を、試料流路111及び添加流路121を介して夫々試料
処理部13に送液する。撹拌ユニット33は、試料処理部13に送液された被検試料及び
添加剤を混和し、第1の被検試料を生成させる(ステップS2)。
【0054】
そして、試料処理部13で生成された第1の被検試料を、処理流路131を介して分離
部14に送液する。分離部14では、試料処理部13から送液された第1の被検試料から
第2の被検試料を生成する(ステップS3)。
【0055】
更に、分離部14で生成された第2の被検試料を、分離流路141を介して分注部15
に送液する。
【0056】
分注ユニット32は分離部14からの第2の被検試料を、分注流路151を介して反応
部17に分注し、送液ユニット31は試薬収容部16の試薬を、試薬流路161を介して
反応部17に送液する。
【0057】
撹拌ユニット33は、分注部15及び試薬収容部16から反応部17に送液された第2
の被検試料と試薬の混合液を撹拌して混和する。温度制御ユニット34は、混合液を所定
の温度に設定し保持する。センサ18は、所定の温度に保持された混合液を測定して測定
項目の成分濃度に応じた信号を生成し、生成した信号をコネクタ19を介して装置本体2
の検出部4に出力する(ステップS4)。
【0058】
検出部4の信号検出部41は、マイクロカセット1のコネクタ19を介して出力された
信号を検出して信号増幅部42に出力する。信号増幅部42は、信号検出部41から出力
された検出信号を所定の信号レベルに増幅してデータ処理部5に出力する。
【0059】
データ処理部5の収集部51は、信号増幅部42から出力された検出信号から被検デー
タを生成して処理部52に出力する。処理部52は、収集部51から出力された被検デー
タに対して、記憶部53から測定項目のキャリブレーションテーブルを読み出す。読み出
したキャリブレーションテーブルを用いて被検試料に含まれる測定項目の成分濃度等の分
析データを生成し、生成した分析データを記憶部53に保存すると共に出力部6に出力す
る(ステップS5)。
【0060】
そして、出力部6に、分析データが出力された時点で、制御部9は、液体制御部3、検
出部4、データ処理部5、記憶部53、及び出力部6に測定動作の停止を指示し、マイク
ロ化学分析装置100は測定を終了する(ステップS6)。
【0061】
測定終了後、操作者は、測定を終了した各液体が収容されたマイクロカセット1を装置
本体2から取り出し、取り出したマイクロカセット1を廃棄する。
【0062】
以上述べた本発明の実施例1によれば、被検試料に含まれる測定に不用な所定の無形成
分を有形化した第1の被検試料を生成し、更に生成した第1の被検試料に含まれる有形成
分を除去した第2の被検試料を生成することにより、被検試料を精度よく測定することが
できる。
【0063】
また、測定に使用された各液体はマイクロカセット1内に保持することにより、装置本
体2及び操作者への汚染を防ぐことができる。これにより、装置本体2のメンテナンスを
簡単に行うことができる。
【0064】
なお、上述した実施例1に限定されるものではなく、図6に示すように例えば装置本体
2の検出部4に半導体レーザや発光ダイオード等を有する光源部43を設け、信号検出部
41を光源部43からの光を検出するフォトダイオード等の受光素子を有する光検出部4
4に置き換える。また、マイクロカセット1を、基板21aを貫通して形成した反応部1
7aの上面及び下面に光源部43からの光を透過する透明部材を接合したマイクロカセッ
トに置き換え、このマイクロカセット内に光学的測定用の試薬を収容する。そして、反応
部17aで前記試薬と反応する被検試料の測定項目成分の混合液に対して光源部43から
の光を照射し、混合液を透過した光を光検出部44で検出して測定するようにしてもよい
。これにより、センサ18で測定不可能な被検試料の測定項目の成分を測定することがで
きる。
【0065】
また、図7に示すように、装置本体に複数のインターフェース部を形成する開口部10
aを設け、各インターフェース部に対応するように図示しない液体制御部及び検出部を配
置することにより、複数の被検体から採取された被検試料を同時に測定することができる

【0066】
また、被検体から採取された被検試料に対して測定項目が異なる複数のマイクロカセッ
ト1を用いることにより、複数の測定項目の成分を同時に測定することができる。この場
合、図7に示すように表示部及び操作部を、装置本体から切り離して設けるようにしても
よい。
【0067】
更に、図示しないが、マイクロカセットの基板上に複数の測定項目又は複数の被検試料
の測定が可能なように複数の分析部を設け、また装置本体に複数の分析部に対応する液体
制御部を設けることにより、同時に複数の測定項目又は複数の被検試料の測定を行うこと
ができるようにすることもできる。
【0068】
更にまた、マイクロカセット1の分離部14における第2の被検試料の生成を遠心分離
法により実施するようにしてもよい。この場合、図8に示すように、マイクロカセット1
の試料処理部13方向への逆流を阻止する逆止弁及び試料処理部13からの第1の被検試
料を2つに分断可能なマイクロバルブを設けたマイクロカセット1aを、矢印R1方向に
回転可能な回転部を設けた開閉可能な2つのユニットからなる装置本体2aに装着する。
そして、マイクロカセット1aの試料処理部13から分離部に送液された第1の被検試料
に対し、試料処理部13の方向である矢印L1の方向に遠心力が働くようにマイクロカセ
ット1aを回転する。この回転によりマイクロカセット1aの分離部14内の第1の被検
試料は、遠心分離された試料処理部13側の有形成分と分注部15側の無形成分からなる
第2の被検試料に液相分離される。この第2の被検試料をマイクロバルブにより分断した
後に、分断した第2の被検試料を分注部15に送液する。
【実施例2】
【0069】
以下、本発明に係るマイクロ化学分析装置の実施例2を、図9及び図10を参照して説
明する。図9は、実施例2に係るマイクロ化学分析装置の構成を示したブロック図である
。また、図10は、図9のマイクロ化学分析装置に用いられるマイクロカセットの構成を
示した図である。
【0070】
図10に示した実施例2が図3における実施例1と異なる点は、マイクロカセット1の
分析部20に複数の反応部及びこの反応部に送液可能な試薬収容部を設け、複数の反応部
に第2の被検試料を分注可能な分注部に置き換えた点である。また、図9に示した実施例
2が図1における実施例1と異なる点は、図10のマイクロカセットにおける分注部、及
び複数の試薬収容部及び反応部の液体を制御する液体制御部に置き換えた点と、各反応部
から出力される各信号を検出する検出部及びこの検出部からの検出信号を処理するデータ
処理部に置き換えた点である。なお、実施例2に係る各ユニットの実施例1と同様である
ユニットは同じ符号を付与し説明を省略する。
【0071】
図9において、マイクロ化学分析装置100bは、被検試料、添加剤、及び複数の測定
項目に該当する試薬の各液体を収容するマイクロカセット1bと、マイクロカセット1b
における測定で生成された信号を検出して分析データを生成する装置本体2bとを備えて
いる。
【0072】
装置本体2bは、マイクロカセット1bを保持するインターフェース部10と、マイク
ロカセット1b内に収容された各液体を制御する液体制御部3bと、マイクロカセット1
bからの信号を検出する検出部4bと、検出部4bで検出された検出信号から分析データ
を生成するデータ処理部5bと、データ処理部5bで生成された分析データなどを保存す
る記憶部53と、データ処理部5bで生成された分析データを出力する出力部6と、電源
部7及び操作部8と、液体制御部3b、検出部4b、データ処理部5b、記憶部53、出
力部6、及び電源部7を制御する制御部9bとを備えている。
【0073】
液体制御部3bは、送液ユニット31b、マイクロカセット1b内の複数の反応部に第
2の被検試料を分注する分注ユニット32b、添加剤を添加した被検試料や、各反応部に
おける第2の被検試料と試薬の混合液を撹拌する撹拌ユニット33b、及び各反応部の混
合液を所定の温度に設定保持する温度制御ユニット34bを備えている。
【0074】
検出部4bは、マイクロカセット1bから出力される各反応部に対応する信号を検出す
る第1乃至第n検出部41b1乃至41bnと、各第1乃至第n検出部41b1乃至41
bnからの各検出信号を所定の信号レベルに増幅する第1乃至第n増幅部42b1乃至4
2bnとを備えている。そして、各第1乃至第n増幅部42b1乃至42bnで増幅され
た各検出信号をデータ処理部5bに出力する。
【0075】
データ処理部5bは、検出部4bの各第1乃至第n増幅部42b1乃至42bnから出
力された各検出信号から夫々被検データを生成する収集部51bと、収集部51bで生成
された各被検データから夫々分析データを生成する処理部52bとを備えている。
【0076】
図10は、マイクロカセット1bの構成の一例を示した図である。このマイクロカセッ
ト1bは、各液体を収容する収容部、及び各収容部を連通する各流路により構成される分
析部20bを備えている。
【0077】
分析部20bは、試料収容部11、添加剤収容部12、試料処理部13、及び分離部1
4と、各部間を連通する試料流路111、添加流路121、処理流路131、及び分離流
路141とを備えている。
【0078】
また、分離部14から送液された第2の被検試料を分注するために収容する分注部15
bと、第1乃至第nの試薬を収容した第1乃至第nの試薬収容部16b1乃至16bnと
、分注部15bから分注された各第2の被検試料及び各第1乃至第nの試薬の各混合液を
第1乃至第nのセンサ18b1乃至18bnを用いて測定する第1乃至第n反応部17b
1乃至17bnと、各第1乃至第nのセンサ18b1乃至18bnにおける測定により生
成された各信号を装置本体2bに出力するためのコネクタ19bとを備えている。
【0079】
分注部15bは、第1乃至第n分注流路151b1乃至151bnを介して各第1乃至
第n反応部17b1乃至17bnに連通している。そして、収容した第2の被検試料の予
め設定された各量が、分注ユニット32bにより各第1乃至第n分注流路151b1乃至
151bnを介して各第1乃至第n反応部17b1乃至17bnに送液される。
【0080】
第1乃至第nの試薬収容部16b1乃至16bnは、各第1乃至第nの試薬流路161
b1乃至161bnを介して第1乃至第n反応部17b1乃至17bnに連通している。
そして、第1乃至第nの試薬収容部16b1乃至16bnの予め設定された量の各第1乃
至第nの試薬が、第2の被検試料の分注動作に同期する送液ユニット31bによって各第
1乃至第n反応部17b1乃至17bnに送液される。
【0081】
第1乃至第n反応部17b1乃至17bnで混和された各混合液は、マイクロカセット
1bの近傍に位置する装置本体2bにおける液体制御部3bの温度制御ユニット34bで
所定温度に保持された後、各第1乃至第nのセンサ18b1乃至18bnによって測定さ
れる。そして、各第1乃至第nのセンサ18b1乃至18bnは、各測定項目の濃度に応
じた各信号を生成し、生成した各信号をコネクタ19bを介して装置本体2bにおける検
出部4bの各第1乃至第n検出部41b1乃至41bnに出力する。測定終了後の被検試
料、添加剤、各試薬、及び各混合液は、マイクロカセット1b内に保持される。
【0082】
以上述べた本発明の実施例2によれば、被検試料に含まれる測定に不用な所定の無形成
分を有形化した第1の被検試料を生成し、更に生成した第1の被検試料に含まれる有形成
分を除去した第2の被検試料を複数の反応部に分注することにより、被検試料の複数の測
定項目を同時に精度よく測定することができる。
【0083】
また、測定に使用された各液体はマイクロカセット1b内に保持することにより、装置
本体2b及び操作者への汚染を防ぐことができる。これにより、装置本体2bのメンテナ
ンスを簡単に行うことができる。
【実施例3】
【0084】
以下、本発明に係るマイクロ化学分析装置の実施例3を、図11及び図12を参照して
説明する。図11は、実施例3に係るマイクロ化学分析装置の構成を示したブロック図で
ある。また、図12は、図11のマイクロ化学分析装置に用いられるマイクロカセットの
構成を示した図である。
【0085】
図12に示した実施例3が図3における実施例1と異なる点は、マイクロカセット1の
分析部20に第2の分析部を追加配置した点である。また、図12に示した実施例3が図
1における実施例1と異なる点は、図12の液体制御部が第2の分析部の各液体をも制御
するようにした点と、図11のマイクロカセットから出力される複数の信号を検出する検
出部及びこの検出部からの検出信号を処理するデータ処理部にした点である。なお、実施
例3に係る各ユニットにおいて、実施例1と同様のユニットは同じ符号を付与しその説明
を省略する。
【0086】
図11において、マイクロ化学分析装置100cは、被検試料、添加剤、試薬、この被
検試料を希釈する希釈液、及び希釈液で希釈された被検試料の測定項目に該当する第2の
試薬の各液体を収容するマイクロカセット1cと、マイクロカセット1cにおける測定で
生成された各信号を検出して各分析データを生成する装置本体2cとを備えている。
【0087】
装置本体2cは、マイクロカセット1cを保持するインターフェース部10と、マイク
ロカセット1c内に収容された各液体を制御する液体制御部3cと、マイクロカセット1
cからの信号を検出する検出部4cと、検出部4cで検出された各検出信号から各分析デ
ータを生成するデータ処理部5cと、データ処理部5cで生成された分析データなどを保
存する記憶部53とを備えている。
【0088】
また、データ処理部5cで生成された各分析データを出力する出力部6と、装置本体2
cの各ユニットに電力を供給する電源部7と、各種コマンド信号などを入力する操作部8
と、液体制御部3c、検出部4c、データ処理部5c、記憶部53、出力部6、及び電源
部7を制御する制御部9cとを備えている。
【0089】
液体制御部3cは、マイクロカセット1c内の各液体を送液する送液ユニット31cと
、第2の被検試料及び希釈された被検試料の分注を行う分注ユニット32cと、第2の被
検試料と試薬の混合液及び希釈された被検試料と第2の試薬の混合液を撹拌する撹拌ユニ
ット33cと、第2の被検試料と試薬の混合液及び希釈された被検試料と第2の試薬の混
合液を所定の温度に設定保持する温度制御ユニット34cとを備えている。
【0090】
検出部4cは、マイクロカセット1cから出力される各信号を検出する信号検出部41
及び第2の検出部41cと、信号検出部41及び第2の検出部41cからの各検出信号を
所定の信号レベルに増幅する信号増幅部42及び第2の増幅部42cとを備えている。そ
して、信号増幅部42及び第2の検出部42cで増幅された各検出信号をデータ処理部5
cに出力する。
【0091】
データ処理部5cは、検出部4cの信号増幅部42及び第2の検出部42cから出力さ
れた各検出信号から夫々被検データを生成する収集部51cと、収集部51cで生成され
た各被検データから夫々分析データを生成する処理部52cとを備えている。
【0092】
図12に示したマイクロカセット1cは、各液体を収容する収容部、及び各収容部間を
連通する各流路により構成される分析部20cを備えている。
【0093】
分析部20cは、被検体から採取された被検試料を収容する試料収容部11c、添加剤
収容部12、試料処理部13、分離部14、及びセンサ18を有する反応部17と、各収
容部間を連通する試料流路111、添加流路121、処理流路131、分離流路141、
分注流路151、及び試薬流路161とを備えている。また、第1の被検試料に含まれる
有形成分を除去した第2の被検試料であると測定が不可能な測定項目である例えば血液に
含まれる血球数又は血液凝固時間等を測定する第2の分析部23を備えている。
【0094】
試料収容部11cは、試料流路111を介して試料処理部13に連通し、また第2の試
料流路111cを介して第2の分析部23に連通している。そして、試料収容部11cの
被検試料は、送液ユニット31cによって試料処理部13及び第2の分析部23に送液さ
れる。
【0095】
添加剤収容部12の添加剤は、送液ユニット31cによって試料処理部13に送液され
る。試料処理部13に送液され、添加剤が添加された被検試料は、撹拌ユニット33cに
よって混和される。第1の被検試料に含まれる有形成分を除去して分注部15に収容され
た第2の被検試料は分注ユニット32cよって反応部17に分注され、また試薬収容部1
6に収容された試薬は送液ユニット31cによって反応部17に送液される。第2の被検
試料及び試薬の混合液は、反応部17で撹拌ユニット33cによって混和される。
【0096】
一方、第2の分析部23は、被検試料を希釈する希釈液を収容する希釈液収容部12c
と、希釈液収容部12cの希釈液で試料収容部11cからの被検試料を希釈する希釈部1
3cと、希釈部13cからの希釈された被検試料を分注するために収容する第2の分注部
15cと、測定項目に該当する第2の試薬が収容された第2分析試薬収容部16cと、第
2の分注部15cから分注され希釈された被検試料と第2分析試薬収容部16cの混合液
を測定する計測ユニット18cを有する第2の反応部17cとを備えている。
【0097】
希釈液収容部12cは、希釈流路121cを介して希釈部13cに連通している。そし
て、希釈液収容部12cの予め設定された量の希釈液が、送液ユニット31cによって希
釈部13cへの被検試料の送液動作に同期して希釈部13cに送液される。
【0098】
希釈部13cは、第2の試料流路111c及び希釈流路121cが合流して1つの流路
を形成するY字流路を有し、希釈試料流路131cを介して第2の分注部15cに連通し
ている。そして、前記Y字流路で被検試料の送液に同期して希釈液が混合される。次いで
、この混合液は、撹拌ユニット33cによって混和される。この混和により、希釈された
被検試料は、第2の分注部15cに送液される。
【0099】
第2の分注部15cは、第2の分注流路151cを介して第2の反応部17cに連通し
ている。そして、収容した被検試料の予め設定された量が、分注ユニット32cにより第
2の反応部17cに送液される。
【0100】
第2分析試薬収容部16cは、第2分析試薬流路161cを介して第2の反応部17c
に連通している。そして、第2分析試薬収容部16cの予め設定された量の試薬が、被検
試料の分注動作に同期する送液ユニット31cによって第2の反応部17cに送液される

【0101】
第2の反応部17cは、第2の分注流路151c及び第2分析試薬流路161cが合流
して1つの流路を形成するY字流路を備えている。また、血液に含まれる血球数又は血液
凝固時間を計測する計測ユニット18cを有している。そして、第2の反応部17cのY
字流路で同期して被検試料と第2の試薬が合流して混合された後、その混合液が撹拌ユニ
ット33cによって混和され、均一になる。
【0102】
第2の反応部17cで混和された混合液は、計測ユニット18cによって測定される。
そして、計測ユニット18cは、測定項目である血球数又は血液凝固時間等に応じた信号
を生成し、生成した信号を、コネクタ19cを介して装置本体2cにおける検出部4c第
2の検出部41cに出力する。測定終了後の被検試料、添加剤、試薬、希釈液、第2の試
薬、及び混合液は、マイクロカセット1c内に保持される。
【0103】
以上述べた本発明の実施例3によれば、被検試料に含まれる測定に不用な所定の無形成
分を有形化した第1の被検試料を生成し、更に生成した第1の被検試料に含まれる有形成
分を除去した第2の被検試料を生成することにより、被検試料を精度よく測定することが
できる。また、第2の被検試料では測定が不可能な測定項目の成分を第2の分析部で測定
して分析データを生成することができる。
【0104】
また、測定に使用された各液体はマイクロカセット1c内に保持することにより、装置
本体2c及び操作者への汚染を防ぐことができる。これにより、装置本体2cのメンテナ
ンスを簡単に行うことができる。
【実施例4】
【0105】
以下、本発明の被検試料採取器具及びマイクロカセットの異なる実施例4について、図
13及び図14を参照して説明する。図13は、被検試料採取器具を一部概観で示した断
面図である。図14は、マイクロ化学分析装置に用いられるマイクロカセットの構成の一
例を示した図である。
【0106】
図13において、被検試料採取器具60は、被検試料を採取するためのニードル部61
と、このニードル部61を介して被検試料を収容する断面で示した円筒形のシリンダ62
と、ニードル部61からシリンダ62内に被検試料を吸引し、吸引した被検試料をニード
ル部61から吐出させるためのピストン63とにより構成される。
【0107】
このピストン63は、シリンダ62内を矢印L2及びL3方向にスライド可能に収納さ
れている。
【0108】
ニードル部61は、被検試料が例えば血液である場合、被検体の血管内への挿入が可能
なニードル611と、被検試料採取器具60の操作者へのニードル611刺し損傷を防止
するためのキャップ612と、このキャップ612を着脱自在に保持すると共にニードル
611を保持するニードルハブ613とにより構成される。そして、ニードルハブ613
は、一端部でニードル611を保持すると共に他端部でシリンダ62の一端部に係合して
保持される。
【0109】
シリンダ62は、内部の一端部近傍に、ニードル部61を介して流入及び流出する被検
試料が通過するY字流路621と、このY字流路621を通過した被検試料をシリンダ6
2内に流入可能に流出を阻止する流入弁622と、Y字流路621から流入弁622を介
してシリンダ62内に流入した被検試料から第1の被検試料を生成する添加剤623と、
添加剤623により生成された第1の被検試料から第2の被検試料を生成する濾過膜62
4と、この濾過膜624によって生成された第2の被検試料をシリンダ62内から流出可
能に流入を阻止する流出弁625とを有する。
【0110】
Y字流路621は、第1乃至第3流路により構成され、ニードル部61のニードルハブ
613と係合するシリンダ62の一端部に第1流路が形成されている。そして、ピストン
63をL2方向へスライドさせると、ニードル部61のニードル611から吸引された被
検試料は、第1流路を通過した後、第2流路を経由してシリンダ62内に流入する。次い
で、ピストン63をL3方向へスライドさせると、シリンダ62内の被検試料は、第2流
路を通過した後、第1流路を経由してニードル611から吐出される。
【0111】
流入弁622は、Y字流路621の第2流路の出口に配置され、ピストン63のL2方
向へのスライドにより開放し、L3方向へのスライドにより閉じるようになっている。
【0112】
添加剤623は、シリンダ62内に収容され、シリンダ62内に流入した被検試料に含
まれる無形成分の内のマイクロ分析装置における測定に悪影響を与える不用な無形成分を
有形化した第1の被検試料を生成する。
【0113】
濾過膜624は、Y字流路621の第3流路内に保持され、この第3流路に流出した第
1の被検試料に含まれる有形成分を分離して第2の被検試料を生成する。
【0114】
流出弁625は、Y字流路621の各流路が合流する第3流路の出口に配置され、ピス
トン63のL3方向へのスライドにより開放し、L2方向へのスライドにより閉じるよう
になっている。
【0115】
図14に示した実施例4が図3における実施例1と異なる点は、マイクロカセット1d
における分析部20dの試料収容部11を分注部15に直接流路141を介して連結した
点である。
【0116】
図14において、液体制御部3dは、図13の被検試料採取器具60からの吐出により
マイクロカセット1d内に収容された第2の被検試料を送液する送液ユニット31d、分
注ユニット32、第2の被検試料と試薬の混合液を混和する撹拌ユニット33d、及び温
度制御ユニット34を備えている。なお、実施例4に係る各ユニットの実施例1と同様で
あるユニットは同じ符号を付与し説明をその省略する。
【0117】
このように、図13に示した構成の被検試料採取器具60で被検試料を採取することに
より、第1及び第2の被検試料を生成するための試料流路、添加剤収容部、添加剤流路、
試料処理部、処理流路、及び分離部を必要としない分析部の構成を簡単化したマイクロカ
セット1dとすることができる。また、添加剤及び第1の被検試料の送液や、被検試料と
添加剤の混和等の液体の制御を必要としない装置本体2の液体制御部も簡単な構成にする
ことができる。
【0118】
以上述べた本発明の実施例4によれば、特別な構成をもつ被検試料採取器具60を用い
て被検試料を吸引して採取することにより、第1の被検試料を生成することができる。ま
た、被検試料採取器具60から吐出させてマイクロカセット1d内に注入することにより
、マイクロカセット1d内に第2の被検試料を収容することができる。これにより、被検
試料を精度よく測定することができ、簡単な構成の液体制御部3d及びマイクロカセット
1dとすることができる。
【符号の説明】
【0119】
1,1a,1b,1c,1d マイクロカセット
2,2a,2b,2c 装置本体
3,3b,3c,3d 液体制御部
4,4b,4c 検出部
5,5b,5c データ処理部
6 出力部
11,11c 試料収容部
12 添加剤収容部
13 試料処理部
14 分離部
15,15b 分注部
16 試薬収容部
17,17a 反応部
18 センサ
19,19b,19c コネクタ
20,20b,20c,20d 分析部
31,31c 送液ユニット
32,32b,32c 分注ユニット
33,33b,33c 撹拌ユニット
34,34b 温度制御ユニット
41 信号検出部
100,100b,100c マイクロ化学分析装置
111 試料流路
121 添加流路
131 処理流路
151 分注流路
161 試薬流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検試料を採取するためのニードルと、
このニードルを介して前記被検試料を収容するシリンダと、
前記ニードルから前記シリンダ内に前記被検試料を吸引し、吸引した被検試料を吐出さ
せるためのピストンと、
前記シリンダ内に保持され、前記ピストンの吸引方向への移動により、前記シリンダ内
に吸引された被検試料に含まれる所定の無形成分を有形化する添加剤と、
前記シリンダ内に保持され、前記ピストンの吐出方向への移動により、前記添加剤によ
り有形化された有形成分を除去する濾過膜と、
を備えたことを特徴とする被検試料採取器具。
【請求項2】
前記被検試料は血液であり、
前記所定の無形成分は、前記血液に含まれる蛋白質、糖質、及び脂質のうちの少なくと
も1つの成分であることを特徴とする請求項1記載の被検試料採取器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−11624(P2013−11624A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−220830(P2012−220830)
【出願日】平成24年10月2日(2012.10.2)
【分割の表示】特願2007−172251(P2007−172251)の分割
【原出願日】平成19年6月29日(2007.6.29)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】