説明

被災者探索システム

【課題】災害現場の瓦礫中や倒壊家屋内部、火災現場、雪山遭難現場等、人が入れない狭い場所や危険な場所に探索ユニットを安全かつ迅速に分散させ、瓦礫内の被災者等を迅速かつ広域に探索することにある。
【解決手段】耐環境性を持つ転動可能な外殻2と、前記外殻内に耐振性を持って密閉収容され、その外殻の周囲の状況を探索して出力する探索手段3と、前記外殻内に耐振性を持って密閉収容され、当該探索ユニットの現在位置を報知する自己位置報知手段6と、を具えてなる、転動分散型探索ユニットである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、災害現場の瓦礫中や倒壊家屋内部、火災現場、雪山遭難現場等、人が入れない狭い場所や危険な場所における被災者等の探索を迅速に行うために用いられる転動分散型探索ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
地震、台風、テロ等による災害現場で行われるレスキュー作業では、被災者が生命の危機に陥ると言われる72時間という制約のもとで、できるだけ速く瓦礫中の被災者を発見することが重要である。
【0003】
しかしながら現状では、救助者が瓦礫の狭い隙間に入れないため、瓦礫に埋まっている被災者が発する声や音など数少ない情報を手がかりに被災者を発見するしかなく、迅速な被災者探索は難しい。
【0004】
また、レスキュー現場は火災発生、ガス漏れ、建築物や作業場の崩壊といった二次災害の恐れがあり、救助者にとっても非常に危険である。以上の理由から、人間に代わる実用的な探索用機器が求められている。
【0005】
瓦礫中を迅速に探索するには、小型、軽量、少消費エネルギーで、安価で、不整地に左右されず、引火性のない、操作が簡単な機器が求められ、近年、多くのレスキューロボットが研究開発されているが、これらはアクチュエータを持つため大型で重量もあり、単価が高くなる。また、操作に技術が必要で、エネルギー消費が多いという問題もあり、迅速な探索には適さない。
【0006】
ところで、株式会社シリコンセンシングシステムズジャパンから、「MOTE」というセンサユニットが市販されており(非特許文献1参照)、このセンサユニットは自動中継機能を持ち、隣接する複数のユニットがそれぞれ電波環境を常時自動的に察知して自発的にアドホック・マルチホップ・ネットワークを構成するので、ある程度の敷地内に適当に分散させると自動的にセンサネットワークを構築できるという利点がある。
【非特許文献1】http://www.spp.co.jp/sssj/motemica.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、災害現場等では、探索したい空間は狭く複雑であり、また火災や有毒ガスが発生したり、建築物等が崩壊する可能性があったりする等、劣悪な環境となっているのに対し、上記「MOTE」はそうした環境に広く分散させるための工夫や、耐環境性が考慮されていないため、探索ユニットとして災害現場等に用いるとすると、人手で置いて分散させる必要があって二次災害の危険性があり、熱や水で動作不良になる可能性もあった。また、投げたりすると落下の衝撃で故障する恐れもあった。
【0008】
それゆえこの発明は、瓦礫内の被災者等の探索を迅速に行うために安全かつ迅速に広い範囲に分散させることのできる探索ユニットを提供することを目的としている。また、充分な耐環境性を持って確実に作動する探索ユニットを提供することをも目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明の転動分散型探索ユニットは、耐環境性を持つ転動可能な外殻と、前記外殻内に耐振性を持って収容され、その外殻の周囲の状況を探索して出力する探索手段と、前記外殻内に耐振性を持って収容され、当該探索ユニットの現在位置を報知する現在位置報知手段と、を具えてなるものである。
【発明の効果】
【0010】
かかる転動分散型探索ユニットを多数個、人手や機械等によって例えば瓦礫中に投入すると、この転動分散型探索ユニットの外殻は転動可能であるので、この転動分散型探索ユニットは瓦礫中を転動落下しながらユニット同士や瓦礫との衝突を繰り返し、瓦礫中に適宜に分散配置される。しかして、各転動分散型探索ユニットの外殻内に耐振性を持って密閉収容された探索手段は、分散中の振動や衝撃に耐えるとともに、耐環境性を持つ外殻によって熱や水から守られ、分散配置された場所で瓦礫内部の状況の探査を行ってその結果を出力する。また外殻内に耐振性を持って密閉収容された現在位置報知手段は、これも分散中の振動や衝撃に耐えるとともに外殻によって熱や水から守られ、分散配置された場所で当該探索ユニットの現在位置を報知する。
【0011】
従って、この発明の転動分散型探索ユニットによれば、災害現場の瓦礫中や倒壊家屋内部、火災現場、雪山遭難現場等、人が入れない狭い場所や危険な場所に探索ユニットを安全かつ迅速に分散させることができるので、瓦礫内の被災者等の探索を迅速に行うことができ、しかも充分な耐環境性を持って確実に作動するので、瓦礫内の被災者等の探索を確実に行うことができる。また、人が入れない狭い場所や危険な場所等に単独で投入して使用することもできる。
【0012】
なお、この発明の転動分散型探索ユニットにおいては、前記探索手段は、無線送信式のビデオカメラ(固体撮像素子を内蔵し、映像を電気信号に変換するカメラ)を含んでいても良く、このようにすれば、ビデオカメラが送信する外殻周囲の画像の信号を含む電波を災害現場から離れた安全場所で受信してその画像をモニタでき、画像に被災者等が映っていた場合にその画像を送ってきた探索ユニットの位置を現在位置報知手段で知ることで、容易且つ迅速に救出等を行うことができる。ここで、ビデオカメラが撮影する画像は、動画でも、一定時間(例えば数秒)毎に撮影した静止画でも良い。また、ビデオカメラは照明器具を伴っていても良く、ビデオカメラは赤外線カメラであっても良い。
【0013】
また、この発明の転動分散型探索ユニットにおいては、前記探索手段は、赤外線センサとガスセンサ(例えば二酸化炭素センサ)との少なくとも一方を含んでいても良く、赤外線センサやガスセンサによれば、近くに被災者等の人間が存在することを簡易に検出することができる。
【0014】
さらに、この発明の転動分散型探索ユニットにおいては、前記探索手段は、集音装置を含んでいても良く、集音装置によれば、近くに被災者等の人間が存在することおよびその他の周囲の状況を簡易に検出することができる。
【0015】
さらに、この発明の転動分散型探索ユニットにおいては、前記外郭は、回転体形状または多面体形状をなしていても良く、外殻が球状やラグビーボール状等の回転体形状や正24面体等の多面体形状をなしていれば、転動し易く、しかもその転動し易さを制御できるので、探索ユニットを確実に分散させることができる。なお、種々の外殻形状の探索ユニットを取り混ぜて投入すれば、転動状態が多様になるので、探索ユニットをより良く分散させることができる。
【0016】
さらに、この発明の転動分散型探索ユニットにおいては、前記外郭は、表面に複数の弾性突起を有していても良く、この弾性突起によれば、瓦礫等への落下時に探索ユニットが弾むので、探索ユニットの分散を助けることができ、また瓦礫等の中で適当に引っ掛かるので、探査ユニットが全部瓦礫の底まで落ちてしまうのを防止することができる。
【0017】
さらに、この発明の転動分散型探索ユニットにおいては、前記外郭は、弾性を有していても良く、外殻が軟質プラスチック等で形成されていて弾性を有していれば、瓦礫等への落下時に探索ユニットが弾むので、探索ユニットの分散を助けることができる。
【0018】
さらに、この発明の転動分散型探索ユニットにおいては、前記自己位置報知手段は、前記探索手段の出力信号と当該ユニットの識別信号を示す電波を発信する発信機を含んでいても良く、かかる発信機によれば、無線送信式のビデオカメラの撮影画像や、ガスセンサや赤外線センサの計測結果や、集音装置が集めた音響の信号を当該ユニットの識別信号とともに電波で発信するので、その電波を災害現場から離れた安全場所で受信してその画像等をモニタすることができ、画像等から被災者等の存在が確認できた場合にその電波を発信している探索ユニットを識別してその位置を調べることで、容易且つ迅速に救出等を行うことができる。
【0019】
一方、この発明の転動分散型探索ユニットにおいては、前記自己位置報知手段は、前記探索手段の出力信号を含む電波を発信する発信機と、当該探索ユニットの識別信号を受信すると前記発信機を作動させる受信機とを含んでいても良く、かかる受信機によれば、当該ユニットの識別信号を受信した場合のみ発信機を作動させて探索手段の出力信号を示す電波を発信させるので、その電波を発信している探索ユニットの位置をより容易に調べ得て、より容易且つ迅速に救出等を行うことができる。
【0020】
また、この発明の転動分散型探索ユニットにおいては、前記自己位置報知手段は、前記探索手段が被災者等の存在を示す所定の信号を出力した場合に光または音を放出して前記外殻の現在位置を報知する警報機を含んでいても良く、かかる警報機を用いれば、転動分散型探索ユニットを安価に構成することができる。
【0021】
そして、この発明の転動分散型探索ユニットにおいては、前記外郭内にさらに密閉収用され、部材の運動によって前記外殻の姿勢を変えるバイブレータ等の姿勢変更手段を具えていても良く、かかる姿勢変更手段によれば、簡易な構成で探索手段の探査方向や探索ユニットの位置を変更することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、この発明の実施の形態を実施例によって、図面に基づき詳細に説明する。ここに、図1は、この発明の転動分散型探索ユニットの第1実施例を示す断面図、図2は、この発明の転動分散型探索ユニットの第2実施例を示す断面図、図3は、それらの実施例の探索ユニットと組み合わせて用いる情報収集システムを例示する説明図である。なお、本願発明者はこの発明の転動分散型探索ユニットを「探査ボール」と呼んでいる。
【0023】
図1に示す第1実施例の探査ボール1は、転動可能な外径約10cmの球形の外殻2を具えており、この外殻2は、硬質プラスチック製のケーシングとその外表面を覆う透明な耐熱性弾性プラスチックの皮膜とから構成され、そのケーシングは、互いに分離可能にねじ結合した半球状の二つの半部から構成されている。この外殻2内には、探索手段としての一台の無線送信式ビデオカメラ(例えば株式会社アールエフ(ホームページwww.rfsystemlab.com)製のワイヤレスマイクロカラーカメラThe ME等)3と、一組の照明用のライト4および反射板5と、各探査ボールに固有の識別番号(ID番号)を割振られた無線受信機(例えば有限会社ナビシステム(ホームページwww.y-navi.co.jp/)製の超小型微弱電波信号リモコンユニット受信機NVR110等)6と、電池(例えば3.6Vリチウム電池)7と、外殻2をビデオカメラ3とライト4と反射板5とが横向きになった姿勢で安定させる錘8とが、図示しないクッション材を介挿されて耐振性を持って密閉収容されている。
【0024】
ここで、外殻2の、少なくともビデオカメラ3とライト4と反射板5とが向いている半部は透明になっている。また無線受信機6は、電池7で作動して、当該探査ボール1に割振られたID番号を含む無線電波(例えば315MHz)を受信するとその電波を受信している間ライト4に通電してそれを発光させるとともにビデオカメラ3に通電してそれを作動させ、ビデオカメラ3は、その作動中外殻2を通してライト4の照明下で外殻の周囲を動画で撮影してその画像を電波(例えば1.2GHzマイクロ波)で送信する。従って、この第1実施例では無線受信機6は自己位置報知手段に相当する。
【0025】
図2に示す第2実施例の探査ボール11は、転動可能な外径約10.5cmで厚さ約6.4cmの円盤型の外殻12を具えており、この外殻12は、硬質プラスチック製のケーシングとその外表面を覆う透明な耐熱性弾性プラスチックの皮膜とから構成され、そのケーシングは、互いに分離可能にねじ結合した深皿状の二つの半部から構成されている。この外殻12内には、探索手段としての一台の無線送信式ビデオカメラ(例えば上記株式会社アールエフ製のワイヤレスマイクロカラーカメラ等)3と、そのビデオカメラ3を間に挟んで並んだ二組の照明用のライト4および反射板5と、各探査ボールに固有の識別番号(ID)を割振られた無線受信機(例えば上記有限会社ナビシステム製の超小型微弱電波信号リモコンユニット受信機等)6と、電池(例えば上記リチウム電池)7と、外殻12をビデオカメラ3とライト4と反射板5とが斜め上向きになった姿勢で安定させる錘8とが、図示しないクッション材を介挿されて耐振性を持って密閉収容されている。
【0026】
ここで、外殻12は、全体が透明になっている。また第1実施例と同様、無線受信機6は、電池7で作動して、当該探査ボール11に割振られたID番号を含む無線電波を受信するとその電波を受信している間ライト4に通電してそれを発光させるとともにビデオカメラ3に通電してそれを作動させ、ビデオカメラ3は、その作動中外殻12を通してライト4の照明下で外殻の周囲を動画で撮影してその画像を電波で送信する。従って、この第2実施例でも無線受信機6は自己位置報知手段に相当する。
【0027】
図3に示す情報収集システム21は、通常のコンピュータ22と、上記各実施例における無線受信機6にID番号を含む無線電波を送信する無線送信機(例えば上記有限会社ナビシステム製の超小型微弱電波信号リモコンユニット送信機NVT110等)23と、上記各実施例における無線送信式ビデオカメラ3からの電波を受信する無線受信機(例えば上記株式会社アールエフ製の1.2GHzマイクロ波用モニタBS−10s等)24とを具えてなり、無線送信機23は、コンピュータ22内のデジタル出力ボード22aを介してコンピュータ22に接続され、また無線受信機24は、コンピュータ22内のキャプチャボード22bを介してコンピュータ22に接続されている。
【0028】
図4は、上記両実施例の探査ボール1,11を使用して、瓦礫Wの山内の被災者(遭難者)Vを探索する方法を示し、この方法では、図3に示す情報収集システム21を瓦礫Wの山の近傍の安全な場所に設置するとともに、救助者Rが上記実施例の探査ボール1および探査ボール11を混ぜて大量に瓦礫W中に投入する。これにより、探査ボール1や探査ボール11は弾むとともに転動し、瓦礫Wに対しておよび探査ボール同士で衝突を繰り返して広がりながら落ちていき、瓦礫Wの山内に分散配置される。個々の探査ボール1,11からの画像情報は、瓦礫Wの山外に無線で送信されて情報収集システム21でモニターされる。このように探査ボール1,11を大量にばら撒くことで探査ボール1,11が能動移動できない不利を補い、広い範囲の迅速な瓦礫内探索を行うことができ、これにより救助者Rは被災者Vを発見することができる。
【0029】
ところで、探査ボール1,11は大量に瓦礫Wの山内に投入されて瓦礫内に分散配置され、各探査ボール1,11は内蔵するビデオカメラにより瓦礫Wの山内の探査を行い、画像情報を外部に送信する。そして外部にいる救助者Rは、送られた画像情報をモニターして被災者Vを発見する。従って、情報収集システム21は、多数の探査ボール1,11を識別して各探査ボール1,11から画像情報を収集する必要がある。
【0030】
このため上記方法では、瓦礫Wの山に投入する前に、全ての探査ボール1,11の無線受信機6の周波数と情報収集システム21の無線送信機23の周波数を同一にし、各探査ボール1,11の無線受信機6には、それぞれの探査ボール1,11を識別するためのID番号を割振っておく。無線送信式ビデオカメラ3の画像送信に用いる周波数も、すべての探査ボール1,11で同一にする。
【0031】
図5は、情報収集システム21が多数の探査ボール1,11を識別する方法を示し、この方法では、先ず図5(a)に示すように、情報収集システム21のコンピュータ22が、対象とする探査ボールのID番号をすべての探査ボール#1〜#nに対して送信する。各探査ボールの無線受信機6はID番号を受信し、当該探査ボールに割振られたID番号と一致するかを調べる。図5(b)に示すように、受信したID番号と割振られたID番号とが一致している(例えばID1の)探査ボール#1では、無線受信機6が無線送信式ビデオカメラ3とライト4をオンにし、ビデオカメラ3は撮影した画像を外部に送信する。このように、同時にひとつの探査ボールしか画像を送信しないので、無線送信式ビデオカメラ3の周波数は共通でよい。 以上の方法で、すべての探査ボールのID番号を順に送信していけば、すべての探査ボール1,11からの画像情報を探査ボールを識別して情報収集システム21のコンピュータ22に集めることができる。なお、探査ボール1,11に探索手段としてカメラ以外のセンサが搭載されている場合でも、同様の方法で特定の探査ボールから情報を取得することができる。
【0032】
このようにしてすべての探査ボール1,11からの画像情報が情報収集システム21のコンピュータ22に集められるが、大量の探査ボールから送られた画像情報をひとつひとつ救助者Rが解析し、被災者Vを認識していたのでは、迅速な探索は難しい。そこで、この実施例では図6に示すように、すべての探査ボール(n個)からの画像情報を一旦コンピュータ22に収集し、各探査ボール#i(i=1〜n)について周囲に被災者Vが存在する可能性Piを算出し、その結果の被災者存在可能性Piをコンピュータ22のディスプレイに表示するところまでを自動化している。救助者Rは、被災者存在可能性Piの高い探査ボール#i(例えば探査ボール#1)を選び、情報収集システム21のコンピュータ22からその探査ボールに前記と同様にIDを送信してその探査ボールを再度オンにして画像データを取得し、救助者Rが観察する。こうすることで被災者Vのより迅速な探索が可能になる。
【0033】
上記被災者存在可能性Pの評価方法は、探査ボールに搭載する探索手段に依存する。上記各実施例の探査ボール1,11は無線送信式ビデオカメラ3を搭載しているので、ビデオカメラ3の画像から動いている部分を抽出し、動きの量が多いほど被災者が存在している可能性が高いと評価した。具体的には、一定時間(m+1フレーム分)だけビデオカメラ3の画像をコンピュータ22で記録する。その後、隣接フレーム間の差分を求め、異なる部分の面積si,k(k=1〜m)を計算する。そして、1フレーム当たりの平均の面積(Σsi,k)/mを計算し、この値を被災者存在可能性Piとする。
【0034】
試作した上記実施例の探査ボール1,11と情報収集システム21とを用いて、図6に示すように、探査ボールの識別と探査ボールからの画像情報の取得を行い被災者存在可能性Piを評価する実験を行った。
【0035】
この実験では、3つの探査ボール#1〜#3を適当な位置に配置し、探査ボール#1に、手を動かす被災者Vが撮影されるようにした。探査ボール#1〜#3と情報収集システム21との間に障害物(瓦礫W)はない。実験は暗闇で行った。画像サイズは320×240ピクセルで、被災者存在可能性Piは5秒分の画像から計算した。被災者存在可能性の計算結果Piは、探査ボール#1:995、探査ボール#2:26、探査ボール#3:9となり、探査ボール#1が最も被災者存在可能性Piが高かった。なお、探査ボール#1で観測される実画像と隣接フレームの差分画像とを見比べてみると、差分画像で被災者Vが発見できていることがわかる。
【0036】
このようにして、被災者Vを撮影した探査ボールが識別できたら、その識別した探査ボールを再度作動させて、例えば通常の方向探知器で瓦礫Wの山の周囲の複数の位置からその作動中の探査ボールの方向を探知することで、被災者Vを撮影した探査ボールひいては被災者Vの、瓦礫Wの山内の位置を知ることができる。
【0037】
以上、図示例に基づき説明したが、この発明は上述の例に限定されるものでなく、特許請求の記載の範囲内で適宜変更することができ、例えば、探索手段は、赤外線センサや、ガスセンサや、集音装置、あるいはそれらとビデオカメラとの組み合わせであっても良い。また、外郭は、多面体形状をなしていても良く、表面に複数の弾性突起を有していても良い。
【0038】
さらに、自己位置報知手段は、ビデオカメラや各種センサ等の探索手段の出力信号と当該探索ユニットの識別信号を含む電波を発信する発信機であっても良く、探索手段が所定の信号を出力した場合に光または音を放出して当該探索ユニットの現在位置を報知する警報機であっても良い。またこの発明の探索ユニットは、外郭内にさらに密閉収用され、部材の運動によって外殻の姿勢を変える小型バイブレータ等の姿勢変更手段を具えていても良い。
【0039】
そして、この発明の探索ユニットは、遭難者や被災者の探索以外の用途にも用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
かくしてこの発明の転動分散型探索ユニットによれば、災害現場の瓦礫中や倒壊家屋内部、火災現場、雪山遭難現場等、人が入れない狭い場所や危険な場所に探索ユニットを安全かつ迅速に分散させることができるので、瓦礫内の被災者等の探索を迅速に行うことができ、しかも充分な耐環境性を持って確実に作動するので、瓦礫内の被災者等の探索を確実に行うことができる。また、人が入れない狭い場所や危険な場所等に単独で投入して使用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】この発明の転動分散型探索ユニットの第1実施例を示す断面図である。
【図2】この発明の転動分散型探索ユニットの第2実施例を示す断面図である。
【図3】上記二種類の実施例の探索ユニットと組み合わせて用いる情報収集システムを例示する説明図である。
【図4】上記実施例の探査ボールと情報収集システムを使用して瓦礫の山内の被災者を探索する方法を示す説明図である。
【図5】多数の上記実施例の探査ボールを情報収集システムが識別し、画像を収集する方法を示す説明図である。
【図6】探査ボールの識別と探査ボールからの画像情報の取得を行い被災者存在可能性を評価する方法を示す説明図である。
【符号の説明】
【0042】
1 探査ボール
2 外殻
3 ビデオカメラ
4 ライト
5 反射板
6 無線受信機
7 電池
8 錘
11 探査ボール
12 外殻
21 情報収集システム
22 コンピュータ
22a デジタル出力ボード
22b キャプチャボード
23 無線送信機
24 無線受信機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐環境性を持つ転動可能な外殻と、
前記外殻内に耐振性を持って密閉収容され、その外殻の周囲の状況を探索して出力する探索手段と、
前記外殻内に耐振性を持って密閉収容され、当該探索ユニットの現在位置を報知する自己位置報知手段と、
を具えてなる、転動分散型探索ユニット。
【請求項2】
前記探索手段は、無線送信式のビデオカメラを含むことを特徴とする、請求項1記載の転動分散型探索ユニット。
【請求項3】
前記探索手段は、赤外線センサを含むことを特徴とする、請求項1または2記載の転動分散型探索ユニット。
【請求項4】
前記探索手段は、ガスセンサを含むことを特徴とする、請求項1から3までの何れか記載の転動分散型探索ユニット。
【請求項5】
前記探索手段は、集音装置を含むことを特徴とする、請求項1から4までの何れか記載の転動分散型探索ユニット。
【請求項6】
前記外郭は、回転体形状または多面体形状をなしていることを特徴とする、請求項1から5までの何れか記載の転動分散型探索ユニット。
【請求項7】
前記外郭は、表面に複数の弾性突起を有していることを特徴とする、請求項1から6までの何れか記載の転動分散型探索ユニット。
【請求項8】
前記外郭は、弾性を有していることを特徴とする、請求項1から7までの何れか記載の転動分散型探索ユニット。
【請求項9】
前記自己位置報知手段は、前記探索手段の出力信号と当該探索ユニットの識別信号を含む電波を発信する発信機を含むことを特徴とする、請求項1から8までの何れか記載の転動分散型探索ユニット。
【請求項10】
前記自己位置報知手段は、前記探索手段の出力信号を含む電波を発信する発信機と、当該探索ユニットの識別信号を受信すると前記発信機を作動させる受信機とを含むことを特徴とする、請求項1から8までの何れか記載の転動分散型探索ユニット。
【請求項11】
前記自己位置報知手段は、前記探索手段が所定の信号を出力した場合に光または音を放出して当該探索ユニットの現在位置を報知する警報機を含むことを特徴とする、請求項1から8までの何れか記載の転動分散型探索ユニット。
【請求項12】
前記外郭内にさらに密閉収用され、部材の運動によって前記外殻の姿勢を変える姿勢変更手段を具えることを特徴とする、請求項1から11までの何れか記載の転動分散型探索ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−167633(P2007−167633A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−319081(P2006−319081)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【分割の表示】特願2003−391093(P2003−391093)の分割
【原出願日】平成15年11月20日(2003.11.20)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2003年(平成15年)5月23日 社団法人日本機械学会発行の「ロボティクス・メカトロニクス講演会’03 講演論文集」に発表
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2003年9月20日 社団法人日本ロボット学会発行の「日本ロボット学会第21回学術講演会 講演概要集」に発表
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】