説明

被覆鋼管の製造方法

【課題】鋼管の外面と被覆材の内面との間に形成される空間に残留する残留空気が減少され,防食能力の優れた被覆鋼管を提供する。
【解決手段】鋼管2の外面の少なくとも一部を全周に亘って複数の被覆材3〜7で被覆する際に,各被覆材3〜7のうちの1枚を鋼管2の外面に周方向に巻付ける度に,巻付けられた被覆材3〜7の外面に複数のベルト60を周方向に巻付けて結束し,巻付けられた被覆材3〜7を鋼管2の外面に緊締固定し,被覆材3〜7を鋼管2の外面に密着させてから溶接による1次仮付けを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,海洋鋼構造物の腐食を防止するように,海洋鋼構造物の鋼管の外面を全周に亘って耐海水性金属等の被覆材で被覆した被覆鋼管の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
鋼製の海洋構造物(例えば,桟橋,ジャケット等)において,干満に曝される干満部は,腐食環境が特に厳しい。このような干満部における防食技術として,近年,耐海水性に優れた金属(例えば,チタン,ステンレス等)の薄板を構造材の干満部全域に貼付け溶接して耐食性を高める耐食性金属の被覆技術が適用されてきている。
【0003】
このような被覆技術として,特許文献1には,鋼管(素管)の外面に周方向に1枚又は複数枚の被覆材としての薄板状金属を巻付け,溶接により仮付けした後,この被覆材の周縁部全てに密閉溶接を行い,被覆材と鋼管とを接合した構成の被覆鋼管が開示されている。
【0004】
上記特許文献1に記載の被覆鋼管では,被覆材を鋼管に巻付けて仮付けする際に,被覆材の板厚が例えば0.4mm程度と薄い場合には,鋼管にそのまま巻付けて仮付けを行い,被覆材の板厚が例えば2.0mm程度と厚い場合には,予め被覆材をプレス加工又は曲げ加工等により鋼管の外面に適合する形状に成形してから鋼管に巻付けて仮付けを行っている。
【0005】
【特許文献1】特開2004−131843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら,上記特許文献1に記載の被覆鋼管では,被覆材を鋼管の外面に仮付けする際に,被覆材が鋼管の外面に十分密着していない状態で仮付けされてしまう恐れがある。被覆材が鋼管の外面に十分密着していない状態で仮付け及び仮付け後の密閉溶接が行われると,できあがった被覆鋼管は,鋼管の外面と被覆材の内面との間に容積の大きな空間が形成されてしまう可能性が高い。このような空間があると,被覆した鋼管を移動や運搬する時などに被覆材に折目やしわが入りやすく,また,構築後は流木等の直接の激突により被覆材には傷や裂目が入りやすくなり,被覆材が損傷する可能性が大きく,防食機能を維持することができなくなる恐れがある。
【0007】
また,被覆材が鋼管の外面に十分密着していない状態で仮付け及び仮付け後の密閉溶接が行われると,できあがった被覆鋼管の被覆された外面に凹凸形状が生じ,美観が損なわれてしまう。
【0008】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり,従来よりも防食能力の優れた被覆鋼管の製造方法を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために,本発明によれば,鋼管の外面の少なくとも一部を全周に亘って複数の被覆材で被覆した被覆鋼管を製造する方法であって,前記複数の被覆材のうちの1枚を,前記鋼管の外面の所定位置に配置する配置工程と,前記所定位置に配置された被覆材の外面に,複数の帯状の締付け部材を周方向に巻付けて各々結束し,前記所定位置に配置された被覆材を前記鋼管の外面に固定する結束工程と,前記鋼管の外面に固定された被覆材を前記鋼管の外面に溶接する第1の溶接工程と,前記所定位置に配置された被覆材の外面に巻付けられた前記複数の帯状の締付け部材の結束を解除する結束解除工程と,前記鋼管の外面が前記複数の被覆材で全周に亘って被覆されるまで,前記配置工程,前記結束工程,前記第1の溶接工程及び前記結束解除工程を繰返し,その後,前記鋼管の外面を全周に亘って被覆した前記複数の被覆材をさらに溶接する第2の溶接工程と,を有することを特徴とする,被覆鋼管の製造方法が提供される。
【0010】
上記被覆鋼管の製造方法は,前記さらに溶接された前記複数の被覆材を,前記鋼管の外面に密閉して溶接する密閉工程を有していてもよい。
【0011】
上記被覆鋼管の製造方法は,前記配置工程において,前記被覆材を,前記鋼管の外面に吸着固定させた磁石に当接させて位置決めを行うことにより,前記鋼管の外面の所定位置に配置するようにしてもよい。
【0012】
上記被覆鋼管の製造方法において,前記結束工程は,前記所定位置に配置された被覆材の外面に磁石を置き,当該磁石の磁力で前記被覆材を前記鋼管の外面に仮固定する仮固定工程を有するようにしてもよい。
【0013】
上記被覆鋼管の製造方法は,前記結束工程において,前記所定位置に配置された被覆材の管軸方向の全長に亘って互いに所定間隔をあけて配置された前記複数の帯状の締付け部材を,管軸方向の中心側から両端部側にかけて順次結束し,固定するようにしてもよい。
【0014】
上記被覆鋼管の製造方法は,前記結束工程において,前記複数の帯状の締付け部材を各々結束する際の締付けによって,前記所定位置に配置された被覆材を周方向に移動させ,周方向の位置を微調整するようにしてもよい。
【0015】
上記被覆鋼管の製造方法は,前記第1の溶接工程において,前記鋼管の管軸方向に沿って溶接する際には,局所的な複数の溶接箇所で不連続な溶接が行われ,前記複数の溶接箇所は,前記鋼管の管軸方向に沿った溶接が行われる範囲では管軸方向に均一に分布するように,その位置及び溶接する順序が決定されるようにしてもよい。
【0016】
上記被覆鋼管の製造方法は,前記第1の溶接工程において,前記鋼管の周方向に沿って溶接する際には,局所的な複数の溶接箇所で不連続な溶接が行われ,前記複数の溶接箇所は,前記鋼管の周方向に沿った溶接が行われる範囲では周方向に均一に分布するように,その位置及び溶接する順序が決定されるようにしてもよい。
【0017】
上記被覆鋼管の製造方法は,前記鋼管を管軸を中心に回転させ,前記鋼管の外面の位置又は前記所定位置に配置された被覆材の位置を調整するようにしてもよい。
【0018】
上記被覆鋼管の製造方法は,前記結束解除工程において,前記結束が解除された前記複数の帯状の締付け部材の両端部を,各々所定位置に保持するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば,鋼管の外面に複数の被覆材を仮付けする際に,これら複数の被覆材を鋼管の外面に密着させた状態で溶接し,仮付けするようにしたので,製造される被覆鋼管の,鋼管の外面と被覆材の内面との間に形成される空間の容積を減少させることができ,この空間に残留する残留空気の量を減少させることができ,防食能力が向上した被覆鋼管を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下,図面を参照しながら,本発明の好適な実施形態について説明をする。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0021】
図1は,後述する本発明の実施の形態に係る製造方法によって製造される被覆鋼管1の斜視図である。図1に示すように,本実施の形態では,被覆鋼管1は,円管状に構成された鋼管2の外周面上に5枚の方形の薄板状の被覆材3〜7を周方向に沿って並べ,それらの被覆材3〜7を鋼管2の外周面に密閉溶接させた構成を有する。また,本実施の形態では,被覆材3〜7として,例えばステンレス鋼板が用いられている。図2は,被覆鋼管1の側面図である。図3は,図2のA−A矢視断面図である。
【0022】
被覆材3は,図2及び図3に示すように,周方向の一方の端部3Uが,被覆材4の周方向の端部4Dの上に重なるように配置され,周方向の他方の端部3Dが,被覆材7の周方向の端部7Uの下に重なるように配置されている。同様にして,各被覆材4〜7の周方向の一方の各端部4D〜7Dは,他の被覆材3〜6の各端部3U〜6Uの下に各々重なるように配置され,各被覆材4〜7の周方向の他方の各端部4U〜7Uは,他の被覆材5〜7,3の各端部5D〜7D,3Dの上に各々重なるように配置されている。
【0023】
図4は,図3において,被覆材3の端部3Uと被覆材4の端部4Dとが重なる部分を拡大した図である。図2に示すように,この重なり部分では,被覆鋼管1の管軸方向(即ち,鋼管2の管軸方向)に沿って,鋼管2,被覆材3,4がインダイレクトシーム溶接され,共にステンレス鋼である被覆材3の端部3Uと被覆材4の端部4Dとが溶融接合する溶融接合部10と,ステンレス鋼である被覆材4の端部4Dと普通鋼である鋼管2とが固相接合する固相接合部11とが密閉形成されている。
【0024】
上記では,図4を用いて被覆材3の端部3Uと被覆材4の端部4Dとが重なる部分について説明したが,被覆材3〜7の各端部3U〜7U,3D〜7Dとが互いに上下に重なる他の部分でも,同様にして,鋼管2の管軸方向に沿ってインダイレクトシーム溶接され,被覆材3〜7同士の溶融接合部10及び被覆材3〜7と鋼管2との固有接合部11が密閉形成されている。
【0025】
図5は,被覆材3及び被覆材4の,鋼管2の管軸方向の一端について示した斜視図である。被覆材3及び被覆材4は,図2に示すように,管軸方向の両端が,鋼管2の周方向に沿ってTIG溶接され,鋼管2に密閉接合されたTIG溶接部12,13が密閉形成されている。TIG溶接は,被覆材5〜7の管軸方向の両端についても同様に行われる。なお,被覆材5〜7のTIG溶接は,連続的に行われるので,TIG溶接部12,13は,鋼管2を周方向に一周する環状構成を有する。
【0026】
鋼管2の管軸方向に沿ったインダイレクトシーム溶接による溶融接合部10及び固相接合部11と,鋼管2の周方向に沿ったTIG溶接部12,13とにより,各被覆材3〜7の内面と鋼管2の外面との間には,図2に示すように,密閉された閉空間Bが各々形成されている。本実施の形態では,被覆材3〜7の各外面には,図2に示すように,各閉空間Bと連通する2つの試験用ポート20,21が各々設けられており,被覆材3〜7の各外面を試験面として,試験面の裏側の各閉空間Bの気密性及び水密性を,例えばJISZ2329に規定される発泡漏れ試験方法に準拠した漏れ試験等によって,検査することが可能に構成されている。
【0027】
以上のように構成された被覆鋼管1を製造するための本発明の実施の形態にかかる製造方法を,図6〜図18を用いて説明する。図6は,被覆鋼管1の製造方法の手順を説明するフロー図である。図7〜図18は,被覆鋼管1を製造する際の各工程を説明する図である。
【0028】
図7は,まだ被覆されていない鋼管2がターニングロール30の上に回転可能に載置された状態を示す構成図である。図7は,鋼管2を管軸方向から視た状態を示している。ターニングロール30は,2つの支持体31,32を,それらの長手方向が鋼管2の管軸方向に直交するように,平行に配置した構成を有する。なお,図7では,支持体32が支持体31に重なり,支持体31の影に隠れている。平行な2つの支持体31,32は,鋼管2の管軸方向に互いに所定間隔をあけて,鋼管2の外周面の被覆する部分を避けるように配置されている。支持体31は,直方体形状の基台31aの上に,水平な回転軸を中心に回転可能な2つの支持ロール31b,31cを備えた構成を有する。2つの支持ロール31b,31cは,互いに回転軸を平行にして,基台31aの長手方向に離間して配置されている。支持体32も支持体31と同様に,直方体形状の基台32a及び2つの支持ロール32b,32cで構成されている。
【0029】
図7に示すように,支持体31の支持ロール31b,31cが協働して,鋼管2を管軸方向の第1の位置で回転可能に支持し,支持体32の支持ロール32b,32cが協働して,構造材2を管軸方向の第2の位置で回転可能に支持することにより,ターニングロール30は,4点で鋼管2を回転可能に支持することができる。本実施の形態では,2つの支持体31,32のうちの支持体31だけに,支持ロール31b,31cを回転させることが可能な図示しない駆動装置が設けられており,ターニングロール30は,この駆動装置によって支持ロール31b,31cを介して鋼管2を管軸を中心に回転させることが可能である。なお,この駆動装置を,支持体32だけに設けてもよいし,支持体31,32の両方に設けてもよい。
【0030】
図7に示すように,ターニングロール30に載置された鋼管2の近くには,鋼管2の外周面に対向する位置に,被覆材巻付け架台40が並設されている。被覆材巻付け架台40は,複数の被覆材3〜7を水平に重ねて収納可能なパレット41と,このパレット41を,鋼管2の直径程度の高さの位置に水平に支持する支柱42とで構成されている。
【0031】
本発明の実施の形態に係る被覆鋼管1の製造方法は,図7に示す状態で開始される(SP0)。まず,ターニングロール30によって,鋼管2を管軸を中心に回転させ,1枚目の被覆材3を配置する鋼管2の外面の所定位置P,Q間の部分が上側に配置されるように位置を調整する。図8は,被覆材巻付け架台40のパレット41から1枚目の被覆材3が取出された状態を示す図である。図8に示すように,パレット41から1枚目の方形の薄板状の被覆材3を取出し,この被覆材3を,鋼管2の周方向に沿って,鋼管2の頂部付近の外面の所定位置P,Q間の部分の辺りに巻付ける。
【0032】
図9及び図10は,図8において,1枚目の被覆材3が巻付けられた鋼管2の頂部付近を拡大した図である。図9に示すように,鋼管2の外面には,例えば1つの直方体形状の永久磁石50を,その一端辺を鋼管2の周方向における所定位置Pに整合させて配置し,予め吸着固定させておく。所定位置Pは,図1〜図3に示す被覆鋼管1において,被覆材3の端部3Dが最終的に配置される最適な位置である。後述する所定位置Q〜Yも同様に,被覆材3〜7の各端部3D〜7D,3U〜7Uが最終的に配置される最適な位置である。本実施の形態では,所定位置P〜Yを目視し,被覆材3〜7を位置合わせできるように,鋼管2の外面の被覆する部分の各所定位置P〜Yには,鋼管2の管軸方向に沿った罫書き線を予め罫書いておき,永久磁石50を所定位置Pに配置する際には,永久磁石50の一端辺がこの所定位置Pの罫書き線に整合するように配置する。
【0033】
鋼管2の頂部付近の外面に巻付けた1枚目の被覆材3を,鋼管2の周方向に沿って磁石50の方(図9に示す矢印51の方向)に移動させ,その端部3Dを,一端辺が所定位置Pに整合配置された永久磁石50の整合面に当接させ,被覆材3の端部3Dを永久磁石50のこの整合面に整合させる。このように位置決めすることにより,被覆材3が鋼管2の周方向における所定位置Pに正確に配置される(SP1)。なお,被覆材3の管軸方向の位置も予め罫書かれた罫書き線等に整合させる等して,鋼管2の外面を被覆する所定の位置に配置する。
【0034】
図10は,1枚目の被覆材3が所定位置Pに配置された状態を示した図である。図10に示すように,所定位置Pに配置された被覆材3の外面に,例えば直方体形状の永久磁石52,53を配置し,被覆材3の上から鋼管2に吸着固定させる。これら永久磁石52,53の吸着力によって,所定位置Pに配置された被覆材3は,鋼管2と,永久磁石52,53とで挟持され,鋼管2の外面にしっかりと仮固定される(SP2)。
【0035】
図11は,1枚目の被覆材3が,複数のベルト60によって,鋼管2の外面に緊締固定された状態を鋼管2の管軸方向から示した図である。図12は,図11において,被覆材3が緊締固定された鋼管2の頂部付近を拡大した図である。図13は,図11に示す鋼管2の上面図である。図11に示すように,ターニングロール30に載置された鋼管2の近くには,被覆材巻付け架台40と反対側の鋼管2の外周面に対向する位置に,被覆材締付け架台70が並設されている。被覆材締付け架台70は,作業者が上に載って作業すること等が可能な厚板状の作業台71と,この作業台71を,鋼管2の直径程度の高さの位置に水平に支持する支柱72とで構成されている。
【0036】
図11〜図13に示すように,所定位置Pに仮固定された被覆材3の外面に,帯状の締付け部材としてのベルト60を,鋼管2の周方向に複数巻付ける。図12に示すように,ベルト60の一端には,ベルト60の他端と結束可能な結束装置61が設けられているので,この結束装置61を用いて鋼管2の周方向に巻付けたベルト60を結束する。本実施の形態では,結束装置61は,ラチェット機構を備えており,結束装置61のハンドル62を矢印63の方向に動かす際に,他端側のベルト60を矢印64の周方向に後戻りできないように引込み,ベルト60が鋼管2の周方向に沿って形成する環を縮径させるように構成されている。これを利用し,ハンドル62を往復運動により矢印63の方向に繰返し動かし,鋼管2の周方向に巻付けられたベルト60を縮径させて,所定位置Pに配置された被覆材3を鋼管2の外面に締付けて緊締固定する(SP3)。
【0037】
なお,結束装置61のハンドル62を往復運動により矢印63の方向に繰返し動かし,他端側のベルト60を矢印64の周方向に引込む際に,ベルト60の内面と被覆材3の外面との摩擦力を利用して,ベルト60と共に被覆材3を矢印64の周方向に徐々に移動させ,例えば被覆材3の端部3Uを所定位置Qに整合させるように,被覆材3の周方向の微調整を行ってもよい。
【0038】
本実施の形態では,被覆材3を鋼管2の外面に緊締固定する複数のベルト60は,図13に示すように,被覆材3の管軸方向の全長に亘って互いに所定間隔Lをあけて配置する。また,これらの複数のベルト60によって,被覆材3を鋼管2の外面に緊締固定する際には,被覆材3の管軸方向の中心側に配置されているベルト60がより先に緊締固定され,被覆材3の管軸方向の両端側に配置されているベルト60ほど後に緊締固定されるように,被覆材3の管軸方向中心側から両端部側にかけて順次,結束を行う。
【0039】
図14は,複数のベルト60によって緊締固定された被覆材3を,鋼管2の外面にスポット溶接によって一次仮付けした状態を示す鋼管2の上面図である。図14に示すように,複数のベルト60によって鋼管2の外面に緊締固定された被覆材3の所定位置Pに配置された端部3Dを,例えばスポット溶接等により鋼管2の管軸方向に沿って不連続に,局所的な複数の溶接箇所80Aで溶接し,鋼管2の外面と被覆材3の内面とを接合する。同様に,被覆材3の管軸方向の両端部も,例えばスポット溶接等により鋼管2の周方向に沿って各々不連続に,局所的な複数の溶接箇所80Aで溶接し,鋼管2の外面と被覆材3の内面とを接合する。第1の溶接としてのこれらのスポット溶接によって,被覆材3が,鋼管2の外面に一次仮付けされる(SP4)。
【0040】
なお,上述のように被覆材3を鋼管2の外面に一次仮付けする際に,被覆材3の両端部の周方向に沿ったスポット溶接は,所定位置P,R間の範囲で行い,所定位置Q,R間の部分の溶接は行わないようにする。また,被覆材3の所定位置Q側に配置された端部3Uの溶接も行わない。これは,被覆材3の仮付けが終わった後に,2枚目の被覆材4の端部4Dを被覆材3の端部3Uの下に所定位置Rまで挿入し,被覆材3及び被覆材4の重なり部分を形成できるようにするためである。
【0041】
本実施の形態では,上述のように被覆材3を鋼管2の外面に一次仮付けする際に,以下の順序で局所的な複数の溶接箇所80Aのスポット溶接を行う。被覆材3の端部3Dを,管軸方向に沿って鋼管2の外面に溶接する際には,図14において丸付き数字で示されている順序で溶接を行う。即ち,最初に被覆材3の端部3Dの被覆材3の管軸方向の中心位置をスポット溶接し,次に,被覆材3の端部3Dの被覆材3の管軸方向の両端を各々スポット溶接する。次に,最初にスポット溶接された管軸方向の中心の溶接箇所と,2番目に溶接された管軸方向の両端の溶接箇所との中心位置を各々スポット溶接する。後は,同様にして,溶接箇所同士の中心位置を次の溶接箇所として選択し,スポット溶接を行っていく。なお,管軸方向に沿った溶接を行う範囲で,溶接箇所が管軸方向に均一に分布する位置及び順序になるその他の手順で溶接が行われてもよい。
【0042】
被覆材3の管軸方向の両端部を,周方向に沿って鋼管2の外面に溶接する際にも,上述した被覆材3の周方向の端部3Dの場合と同様に行う。また,周方向に沿った溶接を行う範囲で,溶接箇所が周方向に均一に分布する位置及び順になるその他の手順で溶接が行われてもよい。
【0043】
1枚目の被覆材3の一次仮付けが終了後,鋼管2の外面の被覆する部分は,まだ周方向に全周に亘る一次仮付けが完了しておらず,被覆が完全でないので,次の被覆材4を鋼管2の外面に一次仮付けする作業を開始する(SP5のNo)。図15は,2枚目の被覆材4を鋼管2の外面に配置した状態を示す構成図である。図15に示すように,ターニングロール30によって,鋼管2を管軸を中心に回転させ,2枚目の被覆材4を配置する鋼管2の外面の所定位置R,S間の部分が上側に配置されるように位置を調整する(SP6)。
【0044】
鋼管2の外面の位置を調整した後,2枚目の被覆材4を鋼管2の外面の所定位置R,S間の部分に配置するために,被覆材4の外面に巻付けていた複数のベルト60の結束を解除する(SP7)。複数のベルト60の結束を解除した後,複数のベルト60の結束装置61を備えた各一端を,被覆材締付け架台70の作業台71上に配置し,作業台71上の所定位置に設けられた図示しない保持具によって保持する。一方,複数のベルト60の各他端を,被覆材巻付け架台42のパレット41のすぐ下側に垂設されたリング73に懸吊されたS字型の保持具74の下側の湾曲部によって保持する。
【0045】
次いで,2枚目の被覆材4を,鋼管2の周方向に沿って,鋼管2の頂部付近の外面の所定位置R,S間の部分の辺りに巻付ける。この際に,被覆材4の端部44Dを,鋼管2に一次仮付けされた1枚目の被覆材3の端部3Uの内面と,鋼管2の外面との間に挿入する。被覆材4の周方向の両端部4D,4Uを所定位置R,Sの罫書き線に整合させることにより,被覆材4は,鋼管2の外面の所定位置R,Sに正確に配置される(SP1)。1枚目の被覆材3と同様に管軸方向の位置も所定位置に配置する。また,1枚目の被覆材3の場合と同様にして,永久磁石52,53又は別個の永久磁石を被覆材4の上から鋼管2に吸着固定させ,被覆材4を鋼管2の外面に仮固定する(SP2)。図15に示すように,結束の解除後に各両端部が各々所定位置に保持されていた複数のベルト60を,1枚目の被覆材3の場合と同様に,被覆材4の上に巻付けて結束し,所定位置R,Sに配置された被覆材4を鋼管2の外面に締付けて緊締固定する(SP3)。緊締固定の際に,1枚目の被覆材3と同様に,被覆材4の端部4Uを所定位置Sに整合させるように,被覆材4の周方向の微調整を行ってもよい。
【0046】
図16は,複数のベルト60によって緊締固定された被覆材4を鋼管2の外面に第1の溶接としてのスポット溶接し,一次仮付けした状態を示す鋼管2の上面図である。図16に示すように,複数のベルト60によって鋼管2の外面に緊締固定された被覆材4の所定位置Rに配置された端部4Dを,上に重なる1枚目の被覆材3の端部3Uと共に,例えばスポット溶接等により鋼管2の管軸方向に沿って不連続に,局所的な複数の溶接箇所80Bで溶接し,鋼管2の外面及び被覆材4の内面を接合すると共に被覆材4の外面及び被覆材3の内面を接合する。被覆材4の管軸方向の両端部も,例えばスポット溶接等により鋼管2の周方向に沿って各々不連続に,局所的な複数の溶接箇所80Bで溶接し,鋼管2の外面と被覆材4の内面とを接合する。これらのスポット溶接によって,被覆材4が,鋼管2の外面に一次仮付けされる(SP4)。
【0047】
2枚目の被覆材4の一次仮付けが終了後,鋼管2の外面の被覆する部分は,まだ周方向に全周に亘る一次仮付けが完了しておらず,被覆が完全でないので,次の被覆材5を鋼管2の外面に一次仮付けする作業を開始する(SP5のNo)。既述した2枚目の被覆材と同様の手順(SP6〜SP4)を繰返すことによって,3〜5枚目の各被覆材5〜7を,鋼管2の外面に一次仮付けする。
【0048】
図17は,5枚の被覆材3〜7が,鋼管2の外面に一次仮付けされた状態を示す構成図である。5枚の被覆材3〜7が全て鋼管2の外面に一次仮付けされると,図17に示すように,鋼管2の外面の被覆する部分は,周方向に全周に亘る一次仮付けが完了する(SP5のYes)。一次仮付けの完了後,被覆材3〜7の外面に巻付けていた複数のベルト60の結束を,既述したベルト60の結束解除の手順と同様の手順で解除する(SP8)。
【0049】
図18は,一次仮付けされた5枚の被覆材3〜7が,鋼管2の外面に本仮付けされた状態を示す構成図である。5枚の被覆材3〜7の一次仮付けの完了後,図18に示すように,各被覆材3〜7の一次仮付けによる各スポット溶接部分80A〜80Eの間の位置にて,第2の溶接としての増し打ちのスポット溶接を行い,多数のスポット溶接部分90を形成することによって,被覆材3〜7を鋼管2の外面に本仮付けする(SP9)。なお,この本仮付けの際のスポット溶接は,一次仮付けの際の第1の溶接としてのスポット溶接と同様の手順で行う。
【0050】
5枚の被覆材3〜7が本仮付けされた鋼管2において,被覆材3〜7の各端部3U〜7U,3D〜7Dが互いに上下に重なる部分を,鋼管2の管軸方向に沿ってインダイレクトシーム溶接し,図2に示すように,被覆材3〜7同士の溶融接合部10及び被覆材3〜7と鋼管2との固有接合部11を密閉形成する。次いで,インダイレクトシーム溶接された鋼管2の管軸方向の両端部を,各々,鋼管2の周方向に沿ってTIG溶接し,図2に示すように,周方向に一周する環状構成を形成するTIG溶接部12,13を密閉形成する。以上のようなインダイレクトシーム溶接及びTIG溶接によって,被覆材3〜7は,鋼管2の外面に密閉溶接される(SP10)。これにより,鋼管2の外面と各被覆材3〜7の内面との間に閉空間Bが形成される。
【0051】
図2に示すように,各被覆材3〜7の内面と鋼管2の外面との間に形成される各閉空間Bに連通する試験用ポート20,21を,各被覆材3〜7の外面に管軸方向の両端部付近に取付ける。これらの各試験用ポート20,21を通じて,各閉空間Bに試験用の気体を充填するか,或いは,各閉空間Bを真空に引く等して,被覆材3〜7の各外面を試験面として,試験面の裏側の各閉空間Bの気密性及び水密性を,例えばJISZ2329に規定される発泡漏れ試験方法に準拠した漏れ試験等によって,検査する。検査により,被覆材3〜7の各外面に貫通欠陥が検出された場合には,この貫通欠陥を補修し,各閉空間Bの気密性及び水密性を完全にする(SP11)。以上により,被覆材3〜7で被覆した被覆鋼管1の製造が完了する(SP12)。
【0052】
以上の実施の形態によれば,被覆鋼管1の製造に際して,被覆材3〜7のうちの1枚を鋼管の外面に周方向に巻付ける度に,巻付けられた被覆材の外面に複数のベルト60を周方向に巻付けて結束し,巻付けられた被覆材を鋼管2の外面に緊締固定してから第1の溶接による1次仮付けを行うようにしたので,製造される被覆鋼管1の各被覆材3〜7を鋼管2の外面に密着させ,鋼管2の外面と被覆材3〜7の内面との間に形成される各閉空間Bの容積を従来よりも減少させることができる。これにより,閉空間Bに残留する残留空気が減少し,被覆鋼管1の防食能力が向上する。また,各被覆材3〜7が鋼管2の外面に密着するので,被覆鋼管1の外面に生じる凹凸形状が減少し,美観が従来よりも向上する。
【0053】
さらに,複数のベルト60で緊締固定する際に,これら複数のベルト60を,被覆材の管軸方向の全長に亘って互いに所定間隔をあけて配置し,被覆材の管軸方向の中心側から両端部側にかけて順次結束して緊締固定するようにしたので,各被覆材3〜7を鋼管2の外面により密着させた状態で第1の溶接による1次仮付けを行うことができ,各閉空間Bの容積が減少し,防食能力がより向上した被覆鋼管1を製造することができる。また,第1の溶接による各被覆材3〜7の1次仮付けを鋼管2の管軸方向又は周方向に沿って行う際に,管軸方向又は周方向の溶接が行われる範囲において,溶接箇所が均一に分布するように,溶接箇所の位置及び溶接する順序を決定したことにより,各被覆材3〜7の外面に生じる凹凸形状が減少し,製造される被覆鋼管1の美観が向上する。
【0054】
さらに,各被覆材3〜7を鋼管2の外面に配置する際に,鋼管2の外面に吸着固定させた永久磁石50に当接させて位置決めするようにしたことによって,配置作業が正確且つ容易になる。また,配置された各被覆材3〜7を永久磁石52,53で鋼管2の外面に仮固定するようにしたことによって,複数のベルト60の結束作業が容易になる。また,複数のベルト60を締付ける際の締付けによって,所定位置に配置された各被覆材3〜6を周方向に移動させ,各被覆材3〜6周方向の位置を微調整するようにしたことによって,各被覆材3〜6を正確に配置できる。
【0055】
さらに,ターニングロール30を用いて鋼管2を管軸を中心に回転させ,鋼管2の外面の位置又は所定位置に配置された被覆材の位置を調整するようにしたことによって,被覆鋼管1を製造する作業が容易化される。さらに,締付けた帯状の締め付け部材60の結束を解除する際に,結束が解除された帯状の締付け部材の両端部を各々所定位置に保持するようにしたことによって,次の結束作業が容易になる。
【0056】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において,各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0057】
上述した実施形態においては,鋼管2が管状に構成されている場合について説明したが,鋼管2は管状以外の形状で構成されていてもよい。
【0058】
上述した実施形態においては,被覆材3〜7がステンレス鋼である場合について説明したが,被覆材3〜7はその他の金属で構成されていてもよい。
【0059】
上述した実施形態においては,被覆鋼管1が5枚の被覆材3〜7で構成されている場合について説明したが,被覆鋼管1は,任意の枚数の被覆材3〜7で構成されていてもよい。
【0060】
上述した実施形態においては,1次仮付けの第1の溶接及び本仮付けの第2の溶接がスポット溶接である場合について説明したが,第1の溶接及び第2の溶接は,いずれもスポット溶接以外の溶接であってもよい。また,第1の溶接及び第2の溶接は,2種類以上の溶接方法を複合的に適用してもよい。
【0061】
上述した実施形態においては,被覆材3〜7及び鋼管2は,管軸方向に沿ってインダイレクトシーム溶接により溶接されている場合について説明したが,その他の溶接方法により溶接されていてもよい。また,2種類以上の溶接方法を複合的に適用してもよい。
【0062】
上述した実施形態においては,被覆材3〜7及び鋼管2は,周方向に沿ってTIG溶接により溶接されている場合について説明したが,その他の溶接方法により溶接されていてもよい。
【0063】
上述した実施形態においては,被覆材3〜7に設けられる試験用ポート20,21が2つである場合について説明したが,被覆材3〜7に1つ又は3つ以上の試験用ポート20,21が設けられていてもよい。
【0064】
上述した実施形態においては,鋼管2を回転可能に支持する装置がターニングロール30である場合について説明したが,その他の回転機構が用いられていてもよい。
【0065】
上述した実施形態においては,鋼管2に巻付ける複数の被覆材3〜7がパレット41に収納されている場合について説明したが,複数の被覆材3〜7は,その他の容器に収納されていてもよい。
【0066】
上述した実施形態においては,1つの直方体形状の永久磁石50を鋼管2の外面の所定位置に吸着固定させて配置し,各被覆材3〜7の端部を当接させて位置決めする場合について説明したが,所定位置に配置する磁石の個数は2以上であってもよいし,磁石の形状は直方体以外の形状であってもよい。また,磁石は永久磁石以外の磁石であってもよい。
【0067】
上述した実施形態においては,鋼管2の外面に管軸方向に沿って所定位置P〜Yに罫書き線を予め罫書いた場合について説明したが,所定位置P〜Yは,その他の方法でマーキングされていてもよい。
【0068】
上述した実施形態においては,所定位置に配置された各被覆材3〜7を直方体形状の永久磁石52,53によって仮固定する場合について説明したが,仮固定する磁石の個数は1又は3以上であってもよいし,磁石の形状は直方体以外の形状であってもよい。また,磁石は永久磁石以外の磁石であってもよい。
【0069】
上述した実施形態においては,帯状の締付け部材が,結束装置61を一端に備えるベルト60である場合について説明したが,帯状の締付け部材はベルト以外であってもよい。
【0070】
上述した実施形態においては,ベルト60を結束する際には,ラチェット機構を備えた結束装置61を用いて結束を行ったが,ベルト60を結束する際には,その他の機構で結束されてもよい。
【0071】
上述した実施形態においては,結束が解除された複数のベルト60の一端を保持する際に,被覆材締付け架台70の作業台71上の図示しない保持具で保持し,他端を保持する際には,S字型の保持具74を用いて保持する場合について説明したが,複数のベルト60の各両端部を保持する際には,その他の保持機構を用いて保持してもよい。また,複数のベルト60の各両端部は,同一の方法で保持されてもよい。
【0072】
上述した実施形態においては,JISZ2329に規定される発泡漏れ試験方法に準拠した漏れ試験を行い,被覆鋼管1の被覆された外面を試験面として試験する場合について説明したが,漏れ試験は,JISZ2331に規定されるアンモニア漏れ試験方法又はJISZ2333に規定されるヘリウム漏れ試験方法に準拠して行われてもよいし,その他の方法で行われてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は,例えば鋼製海洋構造物における干満帯付近の被覆鋼管に適用できるが,その他の被覆鋼管に対しても有用である。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態に係る製造方法で製造される被覆鋼管の斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る製造方法で製造される被覆鋼管の側面図である。
【図3】図2のA−A矢視断面図である。
【図4】図3において,被覆材の端部同士が重なる部分を拡大した図である。
【図5】被覆材の,鋼管の管軸方向の一端について示した斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態に係る被覆鋼管の製造方法の手順を説明するフロー図である。
【図7】被覆されていない鋼管がターニングロール上に回転可能に載置された状態を示す構成図である。
【図8】被覆材巻付け架台のパレットから1枚目の被覆材が取出された状態を示す図である。
【図9】1枚目の被覆材が巻付けられた鋼管の頂部付近を拡大した図であり,1枚目の被覆材を永久磁石に当接させて位置決めを行っている状態を示している。
【図10】1枚目の被覆材が巻付けられた鋼管の頂部付近を拡大した図であり,1枚目の被覆材を永久磁石で所定位置に仮固定している状態を示している。
【図11】1枚目の被覆材が,複数のベルトによって,鋼管の外面に緊締固定された状態を鋼管の管軸方向から示した図である。
【図12】図11において,1枚目の被覆材が緊締固定された鋼管の頂部付近を拡大した図である。
【図13】図11に示す鋼管の上面図である。
【図14】複数のベルトによって緊締固定された被覆材を,鋼管の外面にスポット溶接によって一次仮付けした状態を示す鋼管の上面図である。
【図15】2枚目の被覆材を鋼管の外面に配置した状態を示す構成図である。
【図16】複数のベルトによって緊締固定された被覆材を鋼管の外面にスポット溶接によって一次仮付けした状態を示す鋼管の上面図である。
【図17】5枚の被覆材が,鋼管の外面に一次仮付けされた状態を示す構成図である。
【図18】一次仮付けされた5枚の被覆材が,鋼管の外面に本仮付けされた状態を示す構成図である。
【符号の説明】
【0075】
1 被覆鋼管
2 鋼管
3〜7 被覆材
3D〜7D,3U〜7U 被覆材の周方向の端部
10 インダイレクトシーム溶接による溶融接合部
11 インダイレクトシーム溶接による固有接合部
12,13 TIG溶接部
20,21 試験用ポート
30 ターニングロール
31,32 支持体
31b,31c,32b,32c 支持ロール
40 被覆材巻付け架台
41 パレット
42 被覆材巻付け架台の支柱
50,52,53 永久磁石
51 矢印
60 ベルト
61 結束装置
62 ハンドル
63,64 矢印
70 被覆材締付け架台
71 作業台
72 被覆材締付け架台の支柱
73 リング
74 S字型の保持具
80A〜80E 1次仮付けのスポット溶接箇所
90 本仮付けのスポット溶接箇所
A−A 断面線
B 閉空間
L ベルト同士の間隔
P〜Y 鋼管の外面の周方向における所定位置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼管の外面の少なくとも一部を全周に亘って複数の被覆材で被覆した被覆鋼管を製造する方法であって,
前記複数の被覆材のうちの1枚を,前記鋼管の外面の所定位置に配置する配置工程と,
前記所定位置に配置された被覆材の外面に,複数の帯状の締付け部材を周方向に巻付けて各々結束し,前記所定位置に配置された被覆材を前記鋼管の外面に固定する結束工程と,
前記鋼管の外面に固定された被覆材を前記鋼管の外面に溶接する第1の溶接工程と,
前記所定位置に配置された被覆材の外面に巻付けられた前記複数の帯状の締付け部材の結束を解除する結束解除工程と,
前記鋼管の外面が前記複数の被覆材で全周に亘って被覆されるまで,前記配置工程,前記結束工程,前記第1の溶接工程及び前記結束解除工程を繰返し,その後,前記鋼管の外面を全周に亘って被覆した前記複数の被覆材をさらに溶接する第2の溶接工程と,を有することを特徴とする,被覆鋼管の製造方法。
【請求項2】
前記さらに溶接された前記複数の被覆材を,前記鋼管の外面に密閉して溶接する密閉工程を有することを特徴とする,請求項1に記載の被覆鋼管の製造方法。
【請求項3】
前記配置工程において,
前記被覆材を,前記鋼管の外面に吸着固定させた磁石に当接させて位置決めを行うことにより,前記鋼管の外面の所定位置に配置することを特徴とする,請求項1又は2に記載の被覆鋼管の製造方法。
【請求項4】
前記結束工程は,
前記所定位置に配置された被覆材の外面に磁石を置き,当該磁石の磁力で前記被覆材を前記鋼管の外面に仮固定する仮固定工程を有することを特徴とする,請求項1〜3のいずれかに記載の被覆鋼管の製造方法。
【請求項5】
前記結束工程において,
前記所定位置に配置された被覆材の管軸方向の全長に亘って互いに所定間隔をあけて配置された前記複数の帯状の締付け部材を,管軸方向の中心側から両端部側にかけて順次結束し,固定することを特徴とする,請求項1〜4のいずれかに記載の被覆鋼管の製造方法。
【請求項6】
前記結束工程において,
前記複数の帯状の締付け部材を各々結束する際の締付けによって,前記所定位置に配置された被覆材を周方向に移動させ,周方向の位置を微調整することを特徴とする,請求項1〜5のいずれかに記載の被覆鋼管の製造方法。
【請求項7】
前記第1の溶接工程において,
前記鋼管の管軸方向に沿って溶接する際には,局所的な複数の溶接箇所で不連続な溶接が行われ,前記複数の溶接箇所は,前記鋼管の管軸方向に沿った溶接が行われる範囲では管軸方向に均一に分布するように,その位置及び溶接する順序が決定されることを特徴とする,請求項1〜6のいずれかに記載の被覆鋼管の製造方法。
【請求項8】
前記第1の溶接工程において,
前記鋼管の周方向に沿って溶接する際には,局所的な複数の溶接箇所で不連続な溶接が行われ,前記複数の溶接箇所は,前記鋼管の周方向に沿った溶接が行われる範囲では周方向に均一に分布するように,その位置及び溶接する順序が決定されることを特徴とする,請求項1〜7のいずれかに記載の被覆鋼管の製造方法。
【請求項9】
前記鋼管を管軸を中心に回転させ,前記鋼管の外面の位置又は前記所定位置に配置された被覆材の位置を調整して作業を行うことを特徴とする,請求項1〜8のいずれかに記載の被覆鋼管の製造方法。
【請求項10】
前記結束解除工程において,
前記結束が解除された前記複数の帯状の締付け部材の両端部を,各々所定位置に保持することを特徴とする,請求項1〜9のいずれかに記載の被覆鋼管の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate


【公開番号】特開2007−167933(P2007−167933A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−372334(P2005−372334)
【出願日】平成17年12月26日(2005.12.26)
【出願人】(306022513)新日鉄エンジニアリング株式会社 (897)
【Fターム(参考)】