説明

被覆電線及び同軸ケーブル

【課題】本発明は、電気特性、耐熱性、耐クラック性の各特性に優れた被覆材を被覆させた被覆電線を提供する。
【解決手段】本発明は、テトラフルオロエチレン〔TFE〕に由来するTFE単位とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕に由来するPAVE単位とを有し、上記PAVE単位が全単量体単位の5質量%を超え、20質量%以下であり、不安定末端基が炭素数1×106個あたり10個未満であり、融点が260℃以上であるTFE系共重合体を芯線に被覆してなることを特徴とする被覆電線である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆電線及び同軸ケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
テトラフルオロエチレン〔TFE〕系共重合体、なかでもTFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕共重合体〔PFA〕は、耐熱性、耐薬品性、電気特性等に優れているので、種々の製品の成形材料や被覆材として利用されている。
【0003】
PFAからなる成形材料のうち、機械特性と射出成形性に優れたものとして、PAVEの単量体単位が1.9〜5.0モル%であり、MFRが35〜60g/10分であり、重量平均分子量/数平均分子量=1〜1.7であるPFA(例えば、特許文献1)が提案されている。
【0004】
PFAからなる成形材料のうち、耐オゾン性に優れたものとして、MFRが0.1〜50g/10分であり、PAVEの単量体単位が3.5質量%以上であり、融点が295℃以上であり、不安定末端基が炭素数1×10個あたり50個以下であるPFA(例えば、特許文献2)が提案されている。
【0005】
PFAからなる被覆材として、例えば、被覆電線や同軸ケーブルにおける被覆材が挙げられる。
このような被覆材のうち、誘電正接が低いものとして、例えばPPVEの単量体単位が約5%以下であるTFE/PPVE共重合体(例えば、特許文献3)、PAVEに由来するPAVE単位が5質量%を超え、10質量%以下であり、不安定末端基が炭素数1×10個あたり10〜100個であるPFA(例えば、特許文献4)等が挙げられる。
【0006】
また、誘電正接が低い同軸ケーブルの絶縁層として、PAVE単位が1〜20重量%であり、372℃における溶融粘度が10〜10ポイズであり、特定のメタノール/水混合液に抽出し得るフッ素化物イオンが重量基準で1.5ppm以下であるPFAの発泡体が提案されている(例えば、特許文献5)。
【0007】
押出成形性が良い被覆材として、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕に由来するPEVE単位が少なくとも3重量%であり、溶融粘度が0.5×10〜25×10Pa・sであるTFE/PEVE共重合体(例えば、特許文献6)、PAVE単位が約1.9〜4.5モル%であり、メルトフローレート〔MFR〕が60g/10分を超えるPFA(例えば、特許文献7)等が提案されている。
【0008】
耐熱性が良い被覆材として、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕に由来するPPVE単位が約2.5〜15モル%であり、380℃における容量流量が0.1〜20mm/秒であり、MIT折り曲げ寿命が300万回以上であるPFA(例えば、特許文献8)が提案されている。
【0009】
ところで、電磁波の伝送部品について、近年の情報通信の高速大容量化に伴い、使用周波数帯の高周波化が進んでいる。一般に使用周波数が高くなると伝送損失(減衰量)が大きくなるため、高周波数帯で用いられる材料には、従来よりもさらに伝送損失の小さい絶縁材料が求められている。また、通信機器・設備、情報端末、医療機器の高機能化や多様化に伴い、ケーブルの細線化が進んでいるが、径が小さくなると、伝送損失が大きくなることが知られている。細線でかつ大電力容量を有し、狭いスペースでも取り扱い性の良い、耐クラック性に優れたケーブルが求められている。
【0010】
しかしながら、PFAからなる被覆材料は、電気特性や耐熱性を良好にするにはPAVEの単量体単位量が低いことが好ましいものの、耐クラック性を向上させる点ではPAVEの単量体単位量が高いことが好ましい。このことから、電気特性、耐熱性、耐クラック性の各特性に優れた被覆材を得ることは困難であった。
【0011】
【特許文献1】特開2002−53620号公報
【特許文献2】国際公開第2003/048214号パンフレット
【特許文献3】特開平3−184209号公報
【特許文献4】特開2005−298659号公報
【特許文献5】特開2005−78835号公報
【特許文献6】特表2002−509557号公報
【特許文献7】国際公開第2005/052015号パンフレット
【特許文献8】特開2006−66329号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、電気特性、耐熱性、耐クラック性の各特性に優れた被覆材を被覆させた被覆電線を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、テトラフルオロエチレン〔TFE〕に由来するTFE単位とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕に由来するPAVE単位とを有し、上記PAVE単位が全単量体単位の5質量%を超え、20質量%以下であり、不安定末端基が炭素数1×10個あたり10個未満であり、融点が260℃以上であるTFE系共重合体を芯線に被覆してなることを特徴とする被覆電線である。
【0014】
本発明は、上記被覆電線に更に外層を被覆させてなることを特徴とする同軸ケーブルである。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0015】
本発明の被覆電線は、PAVE単位の含有量を調整することにより耐熱性や誘電正接を維持しつつ耐クラック性を向上させ、更に、不安定末端基数を限定することにより耐熱性や電気特性を向上させたTFE系共重合体を被覆層とすることを特徴とするものである。
【0016】
すなわち、上記被覆電線は、上記TFE系共重合体について、
・PAVE単位が全単量体単位の5質量%を超えることにより、溶融加工性が良くなり、耐クラック性が向上すること、
・PAVE単位の含有量を全単量体単位の20質量%以下、融点を260℃以上とすることにより、耐熱性や電気特性が著しく低下しないこと、及び、
・不安定末端基数を炭素数1×10個あたり10個未満とすることにより、TFE系共重合体が安定な構造となり耐熱性や電気特性が向上することに加え、ボイドの原因の一つと考えられる、不安定末端基に由来するガスが芯線被覆時に殆ど生じないこと
を見いだし、これを被覆層とすることにより完成したものである。
【0017】
PAVE単位の含有量が全単量体単位の5質量%以上のPFAは、従来、耐熱性や電気特性が低いと考えられていたが(特許文献3参照)、本発明におけるTFE系共重合体は、PAVE単位が全単量体単位の5質量%を超えるにもかかわらず、誘電正接が低く、耐熱性に優れている。
【0018】
本発明において、上記TFE系共重合体は、TFE単位とPAVE単位とを有する共重合体である。
【0019】
本明細書において、上記TFE単位、PAVE単位等の「単量体単位」とは、共重合体の分子構造の一部分であって、用いた単量体に由来する構成部分を意味する。本明細書において、上記全単量体単位とは、共重合体の分子構造において、用いた全単量体に由来する部分を意味する。
【0020】
上述の各単量体単位の含有量は、核磁気共鳴装置AC300(Bruker−Biospin社製)を用い、測定温度を(ポリマーの融点+20)℃として19F−NMR測定を行い、各ピークの積分値から求めたものである。
【0021】
上記PAVE単位を構成するPAVEとしては、特に限定されず、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)〔PEVE〕、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)、パーフルオロ(ペンチルビニルエーテル)、パーフルオロ(ヘキシルビニルエーテル)、パーフルオロ(ヘプチルビニルエーテル)等が挙げられる。なかでも、TFEとの共重合性及び耐熱性の点で、PPVEが好ましく、TFEとの共重合性の点で、PMVEが好ましい。
【0022】
上記TFE系共重合体は、上記PAVE単位が全単量体単位の5質量%を超え、20質量%以下であるものである。5質量%以下であると、耐クラック性が低くなることがあり、20質量%を超えると耐熱性や電気特性が低下することがある。
【0023】
上記PAVE単位は、全単量体単位に対し、好ましい下限が5.5質量%、より好ましい下限が6質量%であり、好ましい上限が10質量%、より好ましくは8質量%未満である。
【0024】
上記TFE系共重合体は、一般に、TFE単位とPAVE単位との合計が全単量体単位の90質量%以上であればよく、本発明の特徴を損なわない範囲で、その他の共重合可能な単量体を共重合させたものであってよい。
【0025】
このような共重合可能な単量体として、例えば、ヘキサフルオロプロピレン〔HFP〕、クロロトリフルオロエチレン等が挙げられる。
【0026】
上記TFE系共重合体は、不安定末端基が炭素数1×10個あたり10個未満であるものである。不安定末端基が炭素数1×10個あたり10個以上である場合、耐熱性、電気特性が低くなることがある。
【0027】
本明細書において、「不安定末端基」とは、主鎖末端に存在する−COF、−COOH、−COOCH、−CONH及び−CHOHを意味する。
【0028】
上記不安定末端基は、化学的に不安定であることから、樹脂の耐熱性を低下させるだけでなく、得られた電線の減衰量が増大する原因となる。更に、上記不安定末端基は、熱分解すると生じ得るHF等のガスがボイドの原因になることがある。ゆえに、不安定末端基数が多いと、芯線被覆時に不安定末端基に由来するガスが生じ、このガスが原因で芯線との密着性が損なわれると考えられる。
【0029】
上記不安定末端基の個数は、炭素原子1×10個あたり5個未満であることが好ましく、2個以下であることがより好ましい。上記不安定末端基は、存在しなくてもよい。
【0030】
本明細書において、不安定末端基数は、試料を室温にて圧延することにより得られる厚さ約0.35mmのフィルムについて、フーリエ変換赤外分光分析装置〔FT−IR〕(商品名:FI−IR Spectrometer 1760X、PerkinElmer社製)を用いて赤外吸収スペクトルを行い、不安定末端基が存在しない樹脂から得られるフィルムのベーススペクトルとの差スペクトルに基づき求めた値である。
【0031】
上記TFE系共重合体は、耐クラック性を更に向上させる点で、メルトフローレート〔MFR〕が60g/10分以下であることが好ましく、35g/10分以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、一般に0.5g/10分以上であればよい。
【0032】
上記MFRは、TFE/PPVE共重合体の場合、温度372℃、荷重5kgfの条件で、DYNISCOメルトフローインデックステスター(安田精機製作所製)を用い、ASTM D−1238に準拠して測定した値である。
【0033】
ところで、高周波同軸ケーブルの被覆材としては上記TFE共重合体の誘電正接が小さい方がケーブルの伝送の減衰量が小さくなり好ましい。誘電正接を小さくするには前述した不安定末端基が少ない事に加え、TFE共重合体中のPAVEの含有量を20質量%以下とする事が好ましい。PAVEがPPVEの場合、より好ましい上限は8質量%であり、PMVEの場合、より好ましい上限は10質量%である。
【0034】
上記TFE系共重合体は、一般に融点が260℃以上である。上記融点は、好ましい下限が280℃であり、より好ましい下限が298℃であり、上述の範囲内であれば308℃以下であってもよい。上記TFE系共重合体は、PAVE単位の量を上述の範囲に限定することにより上記融点を示すものとすることができる。
【0035】
本明細書において、融点は、示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments社製)を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて熱測定を行い、得られた吸熱曲線のピークから融点を求めた値である。
【0036】
上記TFE系共重合体は、例えば、(1)TFE及びPAVEと、必要に応じその他の単量体とを重合する工程と、(2)得られた共重合体をフッ素化処理して、該共重合体の不安定末端基を炭素数1×10個あたり10個未満にする工程とを含む方法により得ることができる。
【0037】
上記工程(1)における重合は、乳化重合、懸濁重合等の公知の方法で行うことができるが、懸濁重合により行うことが好ましい。本重合は、得られる共重合体のPAVE単位量が上述の範囲内になるようPAVEを添加すれば、温度や圧力等のその他の重合条件については、反応スケール等に応じて従来公知の方法により適宜選択することができる。
【0038】
上記重合の際に、適当な条件下で末端−CF基を与える重合開始剤を使用してもよい。この場合、工程(2)を簡略又は省略することが可能となる。
【0039】
上記重合開始剤としては、例えば(CF(CF−O)のようなパーフルオロアルキルパーオキシド、(CF(CF−COO)(式中、nは1〜9の数を表す)、(C−O−CF(CF)−COO)のようなパーフルオロジアシルパーオキシド、((CFCF)(CFCF)C・のような安定なパーフルオロアルキルラジカル、C−C(CF)NFのようなジフルオロアミン、N、((CFCFN)のようなパーフルオロアゾ化合物、CFSOのようなパーフルオロスルホニルアジド、CCOClのようなパーフルオロ酸クロライド、CFOFのようなパーフルオロアルキルハイポフルオライド等が挙げられる。
【0040】
上記重合により得られた共重合体は、濃縮、凝析、乾燥等の公知の後処理方法を行ってもよい。なお、この共重合体は、上記工程(2)において不安定末端基を効率よく低減させる点で、粉末状、グラニュール状又はペレット状に調製することが好ましく、ペレット状に調製することがより好ましい。
【0041】
上記ペレット化は、溶融押出等の従来公知の方法で行うことができ、特に限定されないが280〜420℃の押出温度で行うことが好ましい。
【0042】
上記工程(2)におけるフッ素化処理の方法としては、特に限定されないが、上記工程(1)で得られた共重合体を、フッ素化処理条件下にてフッ素ラジカルを発生するフッ素ラジカル源にさらす方法を挙げることができる。
【0043】
上記フッ素ラジカル源としては、フッ素ガスや、CoF、AgF、UF、OF、N、CFOF、及び、フッ化ハロゲン、例えば、IF、ClF等が挙げられる。
【0044】
上記フッ素化処理の方法として、上記工程(1)で得られた共重合体にフッ素ガスを接触させる方法を用いる場合、上記接触は、反応制御の点で、フッ素ガス濃度10〜50質量%の希釈フッ素ガスを用いて行うことが好ましい。上記希釈フッ素ガスは、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガスでフッ素ガスを希釈することにより得ることができる。
【0045】
上記フッ素ガス処理は、一般に100〜250℃の温度で行うことができる。上記温度は、好ましい下限が120℃であり、好ましい上限が230℃である。上記フッ素ガス処理は、希釈フッ素ガスを連続的又は間欠的に反応器内に供給しながら行うことが好ましい。
【0046】
本発明の被覆電線は、上述のTFE系共重合体を芯線に被覆してなるものである。
上記芯線としては、電気伝導性を示すものであれば特に限定されず、銅、アルミニウム、鋼等が挙げられるが、なかでも銅が好ましい。
【0047】
上記芯線は、特に限定されないが、直径0.03〜1.00mmであることが好ましい。上記芯線の直径は、より好ましい下限が0.05mmである。
【0048】
上述のTFE系共重合体を被覆してなる層(以下、この層を「被覆層」と称する。)は、厚みが0.03〜4.78mmであることが好ましい。
【0049】
上記被覆層の厚みは、レーザーマイクロダイアミター(タキカワエンジニアリング社製)を用いて測定した被覆電線の外径から、予め測定しておいた芯線外径を差し引いた値を2で割り得られる値である。
【0050】
上述のTFE系共重合体は、溶融押出成形等、従来公知の方法で芯線に被覆することができる。上記被覆は、目的とする電線のサイズにより押出機のサイズが選択され、それに応じて引き落とし率〔DDR〕、引き落としバランス〔DRB〕等の被覆条件を適宜選択して行うことができる。
【0051】
上記被覆は、特に限定されないが、280〜420℃の樹脂温で行うことができる。上記樹脂温は、420℃を超えると樹脂の分解が起こりやすく、発泡の原因となる点で好ましくない。好ましい樹脂温は、樹脂の融点、MFRと目的とする電線のサイズによって適宜選択される。
【0052】
上記樹脂温とは、使用する押出機のシリンダー部の温度であり、スプリング式固定熱電対(東洋電熱社製)を差し込み、シリンダー内部の温度を測定して得られた値である。
【0053】
本発明の被覆電線において、上記被覆層は、発泡することなく得られたものであってもよいし、発泡させて得たものであってもよい。上記被覆層が発泡体である場合、更に伝送損失の小さい被覆電線とすることができる。上記TFE系共重合体は、発泡体とする場合であっても、直径0.1mm未満の細径の芯線に被覆することも可能である。
【0054】
上記被覆層は、発泡体である場合、例えばAWG35以上の芯線に被覆する場合、上述のTFE系共重合体は、MFRが35g/10分を超え、85g/10分以下であることが好ましく、60〜80g/10分であることがより好ましい。この場合、細径でありながら伝送損失の低い、耐熱性、耐クラック性に優れた電線とすることができる。
【0055】
上記発泡体は、発泡率が10〜80%であることが好ましい。上記発泡体は、気泡の平均直径が5〜100μmであることが好ましい。本明細書において、発泡率は、発泡前後の比重の変化率を意味し、その発泡体を構成する材料固有の比重と、発泡体の見かけの比重との変化率を、水中置換法により測定した値であり、気泡の平均直径は断面の顕微鏡写真から算出した値である。
【0056】
上記被覆層は、従来公知の方法で発泡させることができる。このような方法として、例えば、(1)成核剤を加えたTFE系共重合体のペレットを予め作成し、該ペレットに連続的にガスを導入しながら押出成形を行う方法、(2)TFE系共重合体を溶融させた状態で化学的発泡剤を混和させて押出成形を行うことにより、化学的発泡剤を分解させてガスを発生させ、気泡を得る方法が挙げられる。上記(1)の方法において、上記成核剤は、窒化ホウ素〔BN〕等の従来公知のものであればよい。上記ガスとしては、例えば、クロロジフルオロメタン、窒素、二酸化炭素、これらの混合物等が挙げられる。上記(2)の方法における化学的発泡剤としては、例えばアゾジカルボンアミド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが挙げられる。上記(1)の方法における成核剤の添加量やガスの挿入量、上記(2)の方法における化学発泡剤の添加量等、各方法における各種条件は、使用する樹脂や芯線の種類、所望の被覆層の厚みに応じて適宜調整することができる。
【0057】
本発明の被覆電線は、電気特性に優れているので、誘電正接が低く、高周波伝送を行っても減衰量が低い。ゆえに、高周波伝送用の回線、基地局等の通信システム用の同軸ケーブル、LANケーブル、フラットケーブル等のケーブル、携帯用電話機等の小型電子機器、プリント配線基板等の高周波伝送部品等、種々の用途に使用することができる。
【0058】
上述の本発明の被覆電線に更に外層を被覆させてなる同軸ケーブルもまた、本発明の一つである。本発明の同軸ケーブルは、上記被覆電線を備えたものであるので、誘電正接が低く、高周波伝送部品として好適に使用することができる。
【0059】
本発明の同軸ケーブルにおける外層は、特に限定されず、金属メッシュ等の外部導体からなる導体層であってもよいし、TFE/HFP系共重合体、TFE/PAVE系共重合体等のTFE単位を有する含フッ素共重合体、ポリ塩化ビニル〔PVC〕、ポリエチレン等の樹脂からなる樹脂層(シース層)であってもよい。
【0060】
上記同軸ケーブルは、上述した本発明の被覆電線周りに金属からなる外部導体層が形成され、その外部導体層の周りに上記樹脂層(シース層)を形成してなるケーブルであってもよい。
【0061】
上記外層は、溶融押出成形等、従来公知の方法で被覆させることができる。
【発明の効果】
【0062】
本発明の被覆電線は、上述の構成よりなるものであるので、電気特性が良いことから、誘電正接が低く、このため高周波の電磁波を伝送しても減衰量が低い。上記被覆電線は、更に耐熱性や耐クラック性にも優れている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0063】
本発明を実施例及び比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例により限定されるものではない。
【0064】
(1)共重合体組成比
核磁気共鳴装置AC300(Bruker−BioSpin社製)を用い、測定温度を(ポリマーの融点+20)℃として19F−NMR測定を行い、各ピークの積分値から求めた。
【0065】
(2)融点
示差走査熱量計RDC220(Seiko Instruments社製)を用い、ASTM D−4591に準拠して、昇温速度10℃/分にて熱測定を行い、得られた吸熱曲線のピークから融点を求めた。
【0066】
(3)MFR
DYNISCOメルトフローインデックステスター(安田精機製作所製)を用い、ASTM D−1238に準拠して測定を行った。
【0067】
測定条件は、原則として、温度372℃、荷重5kgfとし、内径2mm、長さ8mmのオリフィスに通して押し出し、10分間あたりに流出する樹脂の質量として求めた。但し、比較例として記載した融点が約240℃以下の共重合体の場合、265℃の温度下で押し出しを行った。
【0068】
(4)不安定末端基数
ペレットを油圧プレスにて圧延し、厚さ0.35mm程度のフィルムを作製し、FI−IR Spectrometer 1760X(Perkin−Elmer社製)を用いて分析を行った。
【0069】
標準サンプル(もはやスペクトルに実質的差異がみられなくなるまで充分にフッ素化したサンプル)との差スペクトルを取得し、各ピークの吸光度を読み取り、次式に従って炭素数1×10個あたりの不安定末端基の個数を算出した。
【0070】
炭素数1×10個あたりの不安定末端基の個数 =(I×K)/t
(I;吸光度、K;補正係数、t;フィルム厚さ(単位:mm))
【0071】
各不安定末端基の補正係数(K)は、以下の通りである。
−COF(1884cm−1)・・・405
−COOH(1813cm−1、1775cm−1)・・・455
−COOCH(1795cm−1)・・・355
−CONH(3438cm−1)・・・480
−CHOH(3648cm−1)・・・2325
【0072】
(5)誘電正接(tanδ)
(ポリマーの融点+約30℃)の温度で溶融押出を行い、直径2.3mm×長さ80mmの円柱状の測定サンプルを作製した。この測定サンプルについて、ネットワークアナライザー(関東電子応用開発社製)を用いて、空洞共振器摂動法にて、2.45GHzでの電気特性を測定した(試験温度25℃)。
【0073】
(6)MIT曲げ寿命
圧縮成形により、0.2mm厚のプレスシートを作製し、ASTM D−2176に準拠して、MIT測定を行った。No.307 MIT形屈曲試験機(安田精機製作所製)を用い、測定条件は、試験温度23℃、回転角度は左右各135度、屈曲速度175cpmとした。
【0074】
MIT曲げ寿命は、耐屈曲性の指標である。この値が高いほど、耐屈曲性に優れ、力学的なストレスに対する耐クラック性が高い。
【0075】
比較例1
撹拌機を備え、ガラスライニングしたオートクレーブ(容積174L)に純水26.6kgを仕込んだ。オートクレーブ内部を充分にNに置換した後、真空にし、パーフルオロシクロブタン〔C−318〕を30.4kg、メタノールを0.8kg、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕を1.6kg仕込んだ。次いで撹拌しながら、オートクレーブ内を35℃に保ち、テトラフルオロエチレン〔TFE〕を圧入し、内圧を0.58MPaGとした。重合開始剤としてジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート〔NPP〕の50%メタノール溶液0.028kgを添加して重合を開始した。重合の進行に伴い圧力が低下するので、目的のポリマー組成となる比率でTFEとPPVEを連続追加した。
【0076】
重合開始から33時間後、撹拌を停止すると同時に未反応モノマー及びC−318を排出して重合を停止した。オートクレーブ内の白色粉末を水洗し、150℃×12時間乾燥して、重合体生成物を得た。
【0077】
得られた重合体生成物を、スクリュー押出機(池貝社製)により押出温度395℃にて溶融押出して、TFE系共重合体のペレットを製造した。
【0078】
得られたペレットの共重合組成、融点、MFR(測定温度372℃)及び炭素原子1×10個あたりの不安定末端基数は、次のとおりであった。
【0079】
共重合組成;TFE/PPVE=93.4/6.6(質量%)
融点〔Tm〕;302℃
MFR;15.2g/10分
不安定末端基数;−CHOH99個、−COF31個、−COOH(非会合)2個、−COOCH55個、−COOH(会合)3個
【0080】
得られたペレットについて、30mmφ電線被覆成形機(田辺プラスチック機械社製)を用いて被覆成形を行った。装置のスクリューL/D比は24、スクリューCRは3である。成形条件は、シリンダー温度C1;300℃、C2;350℃、C3;370℃、アダプター温度;380℃、ヘッド温度;380℃、ダイ温度;380℃、スクリュー回転数;10rpm、引取速度6.8m/分とし、0.812mmφ(AWG20)の銀メッキされた銅線上に、特性インピーダンスが50±1Ωとなるように被覆厚み0.90mmtにて被覆した。この被覆電線を約0.2mmの厚みをもつ銅管にてジャケットし、セミリジッドケーブルとした。
【0081】
得られたセミリジッドケーブルの減衰量を、ネットワークアナライザーHP8510C(ヒューレットパッカード社)にて測定した。得られたセミリジッドケーブルの減衰量は、6GHzで1.7dB/m、10GHzで2.4dB/mであった。
【0082】
実施例1
比較例1で得られたペレットを、真空振動式反応装置 VVD−30(大川原製作所製)に入れ、200℃に昇温した。真空引き後、Nガスで20質量%に希釈したFガスを大気圧まで導入した。
【0083】
ガス導入時から3時間後、いったん真空引きし、再度Fガスを導入した。上記Fガス導入及び真空引きの操作を計6回行った。反応終了後、反応器内をNガスに置換して、180℃の温度下で12時間、更にペレットの脱気を行った。
【0084】
反応後のペレットの共重合組成、融点、MFR(測定温度372℃)及び、炭素原子1×10個あたりの不安定末端基数は、次のとおりであった。
【0085】
共重合組成;TFE/PPVE=93.4/6.6(質量%)
Tm;302℃
MFR;17.3g/10分
不安定末端基数;検出限界以下
【0086】
実施例1で得られたペレットについて、引取速度を7.1m/分とした以外は比較例1と同様の条件で電線被覆を行い、セミリジッドケーブルを作成した。得られたセミリジッドケーブルの減衰量を比較例1と同様に測定したところ、6GHzで1.2dB/m、10GHzで1.6dB/mであった。
【0087】
実施例4
ガス導入及び真空引きの操作を5回とした以外は、実施例1と同様に、TFE系共重合体を調製した。
【0088】
得られたペレットは、MFR(測定温度372℃)が17.3g/10分、炭素原子1×10個あたりの不安定末端基数は−COF基が5個であった。
【0089】
フッ素化反応したペレットについて、30mmφ電線被覆成形機を用いて被覆成形を行った。引取速度を7.1m/分とした以外は、比較例1と同様に電線被覆し、セミリジッドケーブルを得た。得られたセミリジッドケーブルの減衰量を、ネットワークアナライザーHP8510C(ヒューレットパッカード社)にて測定した。得られたセミリジッドケーブルの減衰量は、6GHzで1.2dB/m、10GHzで1.6dB/mであった。
【0090】
比較製造例1
ガス導入及び真空引きの操作を4回とした以外は、実施例1と同様に、TFE系共重合体を調製した。
【0091】
得られたペレットは、MFR(測定温度372℃)が17.1g/10分、炭素原子1×10個あたりの不安定末端基数は−COF基が20個であった。
【0092】
比較製造例2
比較製造例1で得られたペレットを真空振動式反応装置VVD−30(大川原製作所製)に入れ、更にNHガスを流通させ、70℃で5時間反応させた。IRによる末端基定量の結果、−CONH基が炭素原子1×10個あたり約20個となっていた。
【0093】
比較製造例3
撹拌機を備え、ガラスライニングしたオートクレーブ(容積174L)に純水26.6kgを仕込んだ。オートクレーブ内部を充分にNに置換した後、真空にし、C−318を30.4kg、メタノールを2.2kg、PPVEを1.3kg仕込んだ。次いで撹拌しながら、オートクレーブ内を35℃に保ち、TFEを圧入し、内圧を0.58MPaGとした。重合開始剤としてNPPの50%メタノール溶液0.044kgを添加して重合を開始した。重合の進行に伴い圧力が低下するので、目的のポリマー組成となる比率でTFEとPPVEを連続追加した。
【0094】
重合開始から8時間後、撹拌を停止すると同時に未反応モノマー及びC−318を排出して重合を停止した。オートクレーブ内の白色粉末を水洗し、150℃×12時間乾燥して、重合体生成物を得た。
【0095】
上記重合体生成物を、比較例1と同様の条件でペレット化した。
得られたペレットの共重合組成、融点、MFR(測定温度372℃)及び、炭素原子1×10個あたりの不安定末端基数は、次のとおりであった。
【0096】
共重合組成;TFE/PPVE=95.6/4.4(質量%)
Tm;304℃
MFR;13.7g/10分
不安定末端基数;−CHOH57個、−COF45個、−COOH(非会合)1個、−COOCH42個、−COOH(会合)1個
【0097】
得られたペレットについて、実施例1と同様にフッ素化反応を行った。
フッ素化反応後のペレットは、MFR(測定温度372℃)が17.6g/10分、不安定末端基数が検出限界以下であった。
【0098】
試験例1
実施例1及び4、比較例1、比較製造例1〜3で得られた各ペレットを使ってプレスシートを作製し、電気特性(誘電正接)測定、MIT測定を行った。結果を表1に記す。
【0099】
【表1】

【0100】
実施例2
撹拌機を備え、ガラスライニングしたオートクレーブ(容積174L)に純水49.0kgを仕込んだ。オートクレーブ内部を充分にN置換した後、真空にし、C−318を40.7kg、メタノールを4.1kg、PPVEを2.1kg仕込んだ。次いで撹拌しながら、オートクレーブ内を35℃に保ち、TFEを圧入し、内圧を0.64MPaGとした。重合開始剤としてNPPの50%メタノール溶液0.041kgを添加して重合を開始した。重合の進行に伴い圧力が低下するので、目的のポリマー組成となる比率でTFEとPPVEを連続追加した。
【0101】
重合開始から20時間後、撹拌を停止すると同時に未反応モノマー及びC−318を排出して重合を停止した。オートクレーブ内の白色粉末を水洗し、150℃×12時間乾燥して、重合体生成物を得た。
【0102】
上記重合体生成物を、比較例1と同様の条件でペレット化した。得られたペレットの共重合組成、融点、MFR(測定温度372℃)及び、炭素原子1×10個あたりの不安定末端基数は、次のとおりであった。
【0103】
共重合組成;TFE/PPVE=94.2/5.8(質量%)
Tm;302℃
MFR;27.6g/10分
不安定末端基数;−CHOH146個、−COF16個、−COOH(非会合)2個、−COOCH52個、−COOH(会合)4個
【0104】
得られたペレットについて、実施例1と同様にフッ素化反応を行った。フッ素化反応後のペレットは、MFR(測定温度372℃)が30.9g/10分、不安定末端基数が検出限界以下であった。
【0105】
フッ素化反応したペレットについて、30mmφ電線被覆成形機を用いて被覆成形を行った。スクリュー回転数を8.5rpm、引取速度を6.5m/分とした以外は、比較例1、実施例1と同様に電線被覆し、セミリジッドケーブルを得た。得られたセミリジッドケーブルの減衰量を、ネットワークアナライザーHP8510C(ヒューレットパッカード社)にて測定した。得られたセミリジッドケーブルの減衰量は、6GHzで1.2dB/m、10GHzで1.6dB/mであった。
【0106】
比較製造例4
撹拌機を備え、ガラスライニングしたオートクレーブ(容積174L)に純水26.6kgを仕込んだ。オートクレーブ内部を充分にN置換した後、真空にし、C−318を30.4kg、メタノールを3.0kg、PPVEを1.4kg仕込んだ。次いで撹拌しながら、オートクレーブ内を35℃に保ち、TFEを圧入し、内圧を0.57MPaGとした。重合開始剤としてNPPの50%メタノール溶液0.014kgを添加して重合を開始した。重合の進行に伴い圧力が低下するので、目的のポリマー組成となる比率でTFEとPPVEを連続追加した。
【0107】
重合開始から21時間後、撹拌を停止すると同時に未反応モノマー及びC−318を排出して重合を停止した。オートクレーブ内の白色粉末を水洗し、150℃×12時間乾燥して、重合体生成物を得た。
【0108】
上記重合体生成物を、比較例1と同様の条件でペレット化した。得られたペレットの共重合組成、融点、MFR(測定温度372℃)及び、炭素原子1×10個あたりの不安定末端基数は、次のとおりであった。
【0109】
共重合組成;TFE/PPVE=95.4/4.6(質量%)
Tm;302℃
MFR;28.0g/10分
不安定末端基数;−CHOH120個、−COF42個、−COOH(非会合)2個、−COOCH40個、−COOH(会合)2個
【0110】
得られたペレットについて、実施例1と同様にフッ素化反応を行った。フッ素化反応後のペレットは、MFR(測定温度372℃)が31.0g/10分、不安定末端基数が検出限界以下であった。
【0111】
試験例2
実施例2及び比較製造例4から得られたフッ素化反応後の各ペレットを用いて、試験例1と同様に、プレスシートを作製し、電気特性(誘電正接)測定、MIT測定を行った。結果を表2に記す。
【0112】
【表2】

【0113】
実施例3
撹拌機を備え、ガラスライニングしたオートクレーブ(容積174L)に純水46.1kgを仕込んだ。オートクレーブ内部を充分にN置換した後、真空にし、C−318を40.7kg、メタノールを6.1kg、PPVEを2.8kg仕込んだ。次いで撹拌しながら、オートクレーブ内を35℃に保ち、TFEを圧入し、内圧を0.64MPaGとした。重合開始剤としてNPPの50%メタノール溶液0.081kgを添加して重合を開始した。重合の進行に伴い圧力が低下するので、目的のポリマー組成となる比率でTFEとPPVEを連続追加した。
【0114】
重合開始から19時間後、撹拌を停止すると同時に未反応モノマー及びC−318を排出して重合を停止した。オートクレーブ内の白色粉末を水洗し、150℃×12時間乾燥して、重合体生成物を得た。
【0115】
上記重合体生成物を、押出温度370℃でペレット化した。得られたペレットの共重合組成、融点、MFR(測定温度372℃)及び、炭素原子1×10個あたりの不安定末端基数は、次のとおりであった。
【0116】
共重合組成;TFE/PPVE=93.0/7.0(質量%)
Tm;300℃
MFR;69.7g/10分
不安定末端基数;−CHOH170個、−COF21個、−COOH(非会合)3個、−COOCH64個、−COOH(会合)2個
【0117】
得られたペレットについて、実施例1と同様にフッ素化反応を行った。フッ素化反応後のペレットは、MFR(測定温度372℃)が72.8g/10分、不安定末端基数が検出限界以下であった。
【0118】
フッ素化後のペレット100質量部と、成核剤として窒化ホウ素〔BN〕2質量部とを二軸混練機(池貝社製)に投入し、370℃で混練押出して樹脂混合物を得た。
【0119】
この樹脂混合物を電線被覆成形機(聖製作所製)に投入し、発泡剤としてNを注入しつつ、発泡被覆成形を行った。0.080mmφ(AWG40)の銀メッキされた銅線上に、特性インピーダンスが50Ωとなるように、被覆厚み0.090mmtにて被覆し、この被覆電線を約0.2mmの厚みをもつ銅管にてジャケットし、セミリジッドケーブルを得た。
【0120】
実施例3のフッ素化反応後のペレットは、比較例1、実施例2に比べて成形性が良く、電線の細線化が可能であることがわかった。
【0121】
得られたセミリジッドケーブルの減衰量を、比較例1と同様に測定した。測定結果を表3に示す。なお、成核剤を入れず、発泡させないで電線被覆した場合、得られたセミリジッドケーブルの減衰量は、6GHzで11.6dB/m、10GHzで16.1dB/mであった。
【0122】
試験例3
実施例3から得られたフッ素化反応後のペレットを用いて、試験例1と同様に、プレスシートを作製し、電気特性(誘電正接)測定、MIT測定を行った。結果を表3に記す。
【0123】
【表3】

【0124】
実施例3のフッ素化反応後のペレットは、細径の電線の材料として適用可能であり、細径の電線に適用した場合であっても、電気特性に優れる。さらに、MFRが大きく成形性に優れるわりにMIT値が高く、MFRが同等である従来のTFE系共重合体と比べて耐クラック性も優れていることがわかった。
【0125】
比較製造例5
撹拌機を備え、ガラスライニングしたオートクレーブ(容積174L)に純水51.1kgを仕込んだ。オートクレーブ内部を充分にNに置換した後、真空にし、C−318を34.7kg、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕を10.4kg仕込んだ。次いで撹拌しながら、オートクレーブ内を35℃に保ち、TFEを圧入し、内圧を0.79MPaGとした。重合開始剤としてNPPの50%メタノール溶液0.38kgを添加して重合を開始した。重合の進行に伴い圧力が低下するので、目的のポリマー組成となる比率でTFEとPMVEを連続追加した。
【0126】
重合開始から30時間後、撹拌を停止すると同時に未反応モノマー及びC−318を排出して重合を停止した。オートクレーブ内の白色粉末を水洗し、150℃×12時間乾燥して、重合体生成物を得た。
【0127】
得られた重合体生成物を、スクリュー押出機(池貝社製)により押出温度265℃にて溶融押出して、TFE系共重合体のペレットを製造した。
【0128】
得られたペレットの共重合組成、融点及びMFR(測定温度265℃)は、次のとおりであった。
【0129】
共重合組成;TFE/PMVE=80.2/19.8(質量%)
融点〔Tm〕;226℃
MFR;15.0g/10分
【0130】
得られたペレットについて、反応温度190℃とした以外は、実施例1と同様にフッ素化反応を行った。フッ素化反応後のペレットは、MFR(測定温度265℃)が16.9g/10分、不安定末端基数が検出限界以下であった。
【0131】
比較製造例6
撹拌機を備え、ガラスライニングしたオートクレーブ(容積174L)に純水51.3kgを仕込んだ。オートクレーブ内部を充分にNに置換した後、真空にし、C−318を41.3kg、PMVEを5.3kg仕込んだ。次いで撹拌しながら、オートクレーブ内を35℃に保ち、TFEを圧入し、内圧を0.79MPaGとした。重合開始剤としてNPPの50%メタノール溶液0.47kgを添加して重合を開始した。重合の進行に伴い圧力が低下するので、目的のポリマー組成となる比率でTFEとPMVEを連続追加した。
【0132】
重合開始から12時間後、撹拌を停止すると同時に未反応モノマー及びC−318を排出して重合を停止した。オートクレーブ内の白色粉末を水洗し、150℃×12時間乾燥して、重合体生成物を得た。
【0133】
得られた重合体生成物を、スクリュー押出機(池貝社製)により押出温度320℃にて溶融押出して、TFE系共重合体のペレットを製造した。
【0134】
得られたペレットの共重合組成、融点及びMFR(測定温度372℃)は、次のとおりであった。
【0135】
共重合組成;TFE/PMVE=88.2/11.8(質量%)
融点〔Tm〕;253℃
MFR;30.5g/10分
【0136】
得られたペレットについて、反応温度190℃とした以外は、実施例1と同様にフッ素化反応を行った。フッ素化反応後のペレットは、MFR(測定温度372℃)が32.3g/10分、不安定末端基数が検出限界以下であった。
【0137】
実施例5
撹拌機を備え、ガラスライニングしたオートクレーブ(容積174L)に純水41.5kgを仕込んだ。オートクレーブ内部を充分にNに置換した後、真空にし、C−318を106.3kg、PMVEを4.8kg仕込んだ。次いで撹拌しながら、オートクレーブ内を35℃に保ち、TFEを圧入し、内圧を0.60MPaGとした。重合開始剤としてNPPの50%メタノール溶液0.63kgを添加して重合を開始した。重合の進行に伴い圧力が低下するので、目的のポリマー組成となる比率でTFEとPMVEを連続追加した。
【0138】
重合開始から8時間後、撹拌を停止すると同時に未反応モノマー及びC−318を排出して重合を停止した。オートクレーブ内の白色粉末を水洗し、150℃×12時間乾燥して、重合体生成物を得た。
【0139】
得られた重合体生成物を、スクリュー押出機(池貝社製)により押出温度350℃にて溶融押出して、TFE系共重合体のペレットを製造した。
【0140】
得られたペレットの共重合組成、融点及びMFR(測定温度372℃)は、次のとおりであった。
【0141】
共重合組成;TFE/PMVE=92.1/7.9(質量%)
融点〔Tm〕;278℃
MFR;19.8g/10分
【0142】
得られたペレットについて、反応温度190℃とした以外は、実施例1と同様にフッ素化反応を行った。フッ素化反応後のペレットは、MFR(測定温度372℃)が21.4g/10分、不安定末端基数が検出限界以下であった。
【0143】
フッ素化反応したペレットについて、30mmφ電線被覆成形機を用いて被覆成形を行った。引取速度を7.4m/分とした以外は、比較例1と同様に電線被覆し、セミリジッドケーブルを得た。得られたセミリジッドケーブルの減衰量を、ネットワークアナライザーHP8510C(ヒューレットパッカード社)にて測定した。得られたセミリジッドケーブルの減衰量は、6GHzで1.3dB/m、10GHzで1.8dB/mであった。
【0144】
試験例4
比較製造例5〜6、実施例5から得られたフッ素化反応後の各ペレットを用いて、試験例1と同様に、プレスシートを作製し、電気特性(誘電正接)測定、MIT測定を行った。結果を表4に記す。
【0145】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0146】
本発明の被覆電線は、高周波の電磁波を伝送しても減衰量が低いので、高周波伝送用の回線、基地局等の通信システム用の同軸ケーブル、LANケーブル、フラットケーブル等のケーブル用途、携帯用電話機等の小型電子機器、プリント配線基板等の高周波伝送部品用途等、種々の用途に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラフルオロエチレン〔TFE〕に由来するTFE単位とパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)〔PAVE〕に由来するPAVE単位とを有し、前記PAVE単位が全単量体単位の5質量%を超え、20質量%以下であり、不安定末端基が炭素数1×10個あたり10個未満であり、融点が260℃以上であるTFE系共重合体を芯線に被覆してなる
ことを特徴とする被覆電線。
【請求項2】
TFE系共重合体は、PAVE単位が全単量体単位の5質量%を超え、8質量%未満のものである請求項1記載の被覆電線。
【請求項3】
TFE系共重合体は、PAVE単位がパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)〔PPVE〕又はパーフルオロ(メチルビニルエーテル)〔PMVE〕に由来するものである請求項1又は2記載の被覆電線。
【請求項4】
TFE系共重合体は、不安定末端基が炭素数1×10個あたり5個未満のものである請求項1、2又は3記載の被覆電線。
【請求項5】
TFE系共重合体は、メルトフローレートが60g/10分以下のものである請求項1、2、3又は4記載の被覆電線。
【請求項6】
TFE系共重合体は、メルトフローレートが35g/10分以下のものである請求項1、2、3、4又は5記載の被覆電線。
【請求項7】
TFE系共重合体を被覆してなる層は発泡体である請求項1、2、3又は4記載の被覆電線。
【請求項8】
請求項1、2、3、4、5、6又は7記載の被覆電線に更に外層を被覆させてなる
ことを特徴とする同軸ケーブル。

【公開番号】特開2009−59690(P2009−59690A)
【公開日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−195377(P2008−195377)
【出願日】平成20年7月29日(2008.7.29)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】