説明

装着型動作支援装置

【課題】腰部フレームと、腰部フレームの上部に接続されて装着者の肩に係留される背部フレームと、腰部フレームの下部に接続されて装着者の下肢に係留される下肢フレームとを備えた身体装着型動作支援装置であって、装着者の歩行時に装着者の骨盤の揺動に起因する背部フレームの揺れを抑制することを目的とする。
【解決手段】装着型動作支援装置10に、装着者の左右方向に長尺な基部31を有する腰部フレーム30と、腰部フレーム30の下部に接続される左右一対の下肢フレーム50,50と、腰部フレーム30の基部31の上部に接続される背部フレーム40と、背部フレーム40と腰部フレーム30の基部31とを接続する接続部70とを備える。接続部70は、前額面上の1自由度の回転機構であって、例えば、四節リンク機構で構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人体に装着されて、人体の筋力を補助又は代行する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高齢者や身体障害者の身体に装着されて、筋力を補助又は代行することにより歩行や移乗(車椅子とベッド間の移動等)などの動作を支援する装着型動作支援装置が実用化されつつある。この技術は、健常者の重作業を補助する装着型動作支援装置の開発にも応用されている。装着型動作支援装置を長時間駆動させるためには、長寿命のバッテリが必要となる。このようなバッテリは、一般に大型且つ重量物である。そこで、バッテリや装着具を含む装置の荷重を装着者に負担させない構造を備えた装着型動作支援装置が特許文献1,2に記載されている。
【0003】
特許文献1に示された装着式動作補助装置は、図14(a)に示すように、アクチュエータを具備する装着具101と、装着者の生体信号を検出する生体信号センサ102と、装着者の生体信号に基づいてアクチュエータを操作させる制御装置103とを備えている。装着具101は、装着者の胴体に巻き付けられるウエスト部104と、ウエスト部104に上方から差し込まれたバックパック105と、装着者の脚部に固定される脚部106とを備えている。バックパック105には、バッテリや制御装置103が収容されている。脚部106は、ウエスト部104の下部に固定された股関節アクチュエータ111、大腿装具112、膝関節アクチュエータ113、下腿装具114および足フレーム115を備え、この順番で接続されている。上記構成の装着具101は、装着者の足を乗せる足フレーム115を有するので、バックパックおよび装着具の荷重は全て足フレームで支えられて装着者に負荷されない。
【0004】
また、特許文献2では、下肢外骨格装置(lower extremity exoskeleton)が示されている。特許文献2のfig.9に記載された下肢外骨格装置は、図15に示すように、骨盤フレーム120と、骨盤フレーム120の上部に接続された背部フレーム121と、骨盤フレーム120の下部に接続された下肢フレーム123とを備えている。この下肢外骨格においても、下肢フレーム123に装着者の足を乗せる足フレーム124が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−95561号公報
【特許文献2】米国特許公開公報US2006/0260620
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
人間が歩行するときに、人間の骨盤は前額面上で水平から最大で5−8度揺動することが知られている。ここで、「前額面」とは人間の身体を前後に切る面をいい、「前額面上で揺動」とは前額面に垂直な軸を中心として前額面と平行に揺動することをいう。前額面は、冠状面または前頭面とも呼ばれる。特許文献1に記載された装着式動作補助装置では、図14(b)に示すように、装着者の骨盤の揺動に伴いウエスト部104が水平から揺動すると、ウエスト部104に取り付けられたバックパック105に揺動が伝播する。ウエスト部104では僅かな揺れであっても、ここから離れたバックパック105の上端部では揺れが拡大する。バックパック105が揺れると、バックパック105を装着者の身体(肩、胸又は脇)に係留させている部分が身体と擦れて装着者に不快感を与える。さらに、バックパック105は重量物であるので、装着者はバランスを保って歩行を安定化させるために余計な筋力活動を消費することとなる。
【0007】
また、図15に示すように、特許文献2に記載された下肢外骨格装置では、骨盤フレーム120が左右2部材に分割されるとともに1つの枢軸で連結されており、骨盤フレーム120は前額面上で回転2自由度を有している。背部フレーム121は、骨盤フレーム120を構成している2部材が枢結されている枢軸に枢支されている。このような構造においては、背部フレーム121に積載された荷が重くなると自重により背部フレーム121が下方へ沈み込もうとするので、背部フレーム121を装着者の身体に係留させている肩ベルトから、装着者の肩部へ負担がかかってしまう。
【0008】
そこで、本発明では、腰部フレームと、腰部フレームの上部に接続された背部フレームと、腰部フレームの下部に接続された下肢フレームとを備えた装着型動作支援装置であって、装着者の歩行時に装着者の骨盤の揺動に起因する背部フレームの揺れを抑制し、背部フレームを身体に係留させている係止具と身体との擦れを抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る装着型動作支援装置は、装着者の筋力を補助或いは代行する装着型動作支援装置であって、前記装着者の左右方向に長尺な基部を有し、前記装着者の腰周りに装着される腰部フレームと、前記腰部フレームの下部に接続されて、前記装着者の下肢に装着される左右一対の下肢フレームと、前記腰部フレームの上部に接続されて、前記装着者の肩に係留させるための係止具を有する背部フレームと、前記背部フレームと前記腰部フレームの基部とを接続する前額面上の1自由度の回転機構とを備えているものである。ここで「前額面上の1自由度の回転機構」とは、腰部フレームと背部フレームのうち一方の入力動作に対し他方に前額面上の1自由度の回転動作を出力させる機構をいう。
【0010】
前記装着型動作支援装置において、前記回転機構は、前記腰部フレームに設けられて前記基部と略平行な下リンクと、前記背部フレームに設けられた上リンクと、前記下リンクと前記上リンクのそれぞれに接合された左リンクおよび右リンクとから成り、前記腰部フレームの左右中央を対称軸として線対称な四節リンク機構とすることができる。
【0011】
上記装着型動作支援装置によれば、装置を身体に装着した装着者が歩行したときに、装着者の骨盤の揺動に伴って腰部フレームが水平から揺動するが、この腰部フレームの揺動は背部フレームへ伝播しない。このように背部フレームの横揺れが抑制されるので、背部フレームを装着者の身体へ係留させている部分と身体との擦れを防止することができる。
【0012】
前記装着型動作支援装置において、前記四節リンク機構は、四節を順に線で結んだ形状が上下逆台形であることがよい。なお、上記四節リンク機構において、四節は各リンクの接合部に相当する。また、ここで「上下逆台形」とは、上辺が下辺より長く、左辺と右辺の長さが等しい台形をいう。上記構成によれば、片立脚状態にあるときに、腰部フレームの傾きに伴って立脚側へ背部フレームの重心が移動し、装置の荷重は立脚側の下肢フレームに掛かることとなる。
【0013】
前記装着型動作支援装置において、前記下リンクおよび前記上リンクのうち少なくとも一方の前記右リンクおよび前記左リンクとの接合位置は前記左右方向に可変であることがよい。かかる構成により、四節リンク機構の上辺(上リンクの右リンクおよび左リンクの接合部間)と下辺(下リンクの右リンクおよび左リンクの接合部間)のうち少なくとも一方の長さが可変となる。そして、四節リンク機構の上辺および下辺のうち少なくとも一方の長さを変化させることで、四節リンク機構の大きさを装着者の体格に合わせたり、下リンクが揺動したときの下リンクに対する上リンクの左右中央の変位量の最大値を調整したりすることができる。
【0014】
前記装着型動作支援装置において、前記回転機構は、前記腰部フレームの前記基部の左右略中央および前記背部フレームの左右略中央のそれぞれに設けられた接合孔に挿通された前額面に垂直な軸で構成されていてもよい。係る構成により、腰部フレームと背部フレームとは前額面上で回転1自由度を有する対偶となる。
【0015】
前記装着型動作支援装置において、前記左右一対の下肢フレームおよび前記腰部フレームは、総じて4の前額面上の回転自由度と総じて4以上の矢状面上の回転自由度とを有することがよい。このような装着型動作支援装置において、例えば、前記左右一対の下肢フレームは、前記装着者の大腿部に装着される大腿アームと、前記装着者の下腿部に装着される下腿アームと、前記装着者の足部に装着される足下アームとを各々に有し、前記大腿アームと前記下腿アームは矢状面上で回動可能に接続され、前記腰部フレームと前記大腿アームおよび前記下腿アームと前記足下アームは矢状面上および前額面上で回動可能に接続されている。
【0016】
前記装着型動作支援装置において、前記下肢フレームは、前記足下アームに対する前記下腿アームの前額面上の回動範囲を規制する規制部材を有することがよい。かかる構成により、片立脚状態となったときに背部フレームの重心が立脚側又は遊脚側に移動しても、下腿アームが足下アームに対して外側へ倒れることを防止できる。
【0017】
前記装着型動作支援装置において、前記下肢フレームは、前記装着者の大腿部に装着される大腿アームと、前記装着者の下腿部に装着される下腿アームと、前記大腿アームを基準長さから並進方向に伸長可能とする第1の並進自由度機構とを有していることがよい。さらに、前記装着型動作支援装置において、前記第1の並進自由度機構は、回転1自由度を併有していてもよい。かかる構成により、装着者は装着型動作支援装置に補助されながら違和感なく脚を動かすことができる。
【0018】
前記装着型動作支援装置において、前記下肢フレームが、前記装着者の大腿部に装着される大腿アームと、前記装着者の下腿部に装着される下腿アームと、前記下腿アームを基準長さから並進方向に伸長可能とする第2の並進自由度機構とを有していることがよい。かかる構成により、装着者は装着型動作支援装置に補助されながら違和感なく脚を動かすことができる。
【0019】
前記装着型動作支援装置において、前記下肢フレームは、前記装着者の足が載置される足裏プレートを有していることがよい。かかる構成により、装着型動作支援装置の荷重は足裏プレートに支持されて装着者に負荷されない。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、装着者の歩行時などに腰部フレームが水平から揺動したときに、この腰部フレームの揺動は背部フレームへ伝播しない。このように背部フレームの横揺れが抑制されるので、背部フレームを装着者の身体へ係留させている部分と身体との擦れを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る装着型動作支援装置の概略正面図である。
【図2】装着型動作支援装置の左側下部を示す正面図である。
【図3】装着型動作支援装置の左側下部を示す側面図である。
【図4】(a)は股関節用アクチュエータの構成図であり、(b)は膝関節用アクチュエータの構成図である。
【図5】第1の並進自由度機構の拡大側面図である。
【図6】第2の並進自由度機構の拡大側面図である。
【図7】腰部フレームと背部フレームの接続部を示す正面図である。
【図8】左右対称な四節リンク機構のバリエーションを説明する図である。
【図9】片立脚状態の装着型動作支援装置の概略正面図である。
【図10】四節リンク機構の一例を示す図であって、(a)は両立脚状態であり、(b)は片立脚状態である。
【図11】四節リンク機構の変形例を示す図であって、(a)は両立脚状態であり、(b)は片立脚状態である。
【図12】腰部フレームと背部フレームの接続部の変形例を示す装着型動作支援装置の概略正面図であって、(a)は両立脚状態であり、(b)は片立脚状態である。
【図13】背部フレームの変形例を示す装着型動作支援装置の概略正面図である。。
【図14】従来の装着式動作補助装置の正面図であって、(a)は両立脚状態であり、(b)は片立脚状態である。
【図15】従来の下肢外骨格装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下では全ての図を通じて同一又は相当する要素には同一の参照符号を付して、その重複説明を省略する。
【0023】
本発明の実施の形態に係る装着型動作支援装置10は、高齢者、身体障害者および健常者を問わず人間の身体に装着されて、装着者の主に下肢部の筋力を補助又は代行することにより装着者の動作を支援するものである。図1に示すように、装着型動作支援装置10は、装着具11と、バックパック12に収容されたバッテリ13および制御器14とを備えている。装着具11は、装着者の腰(骨盤)周りに装着される腰部フレーム30と、装着者の背部に装着される背部フレーム40と、装着者の下肢部に装着される左右の下肢フレーム50,50とで概略構成されている。バックパック12は、装着具11の背部フレーム40に着脱可能に積載されている。続いて、図1〜3を参照しつつ、装着具11の構成について詳細に説明する。なお、以下では「左右方向」とは装着者の肩幅方向をいい、「前後方向」とは装着者の前後方向をいい、「矢状面」とは装着者の身体を左右対称に切る面とこれに平行な面をいい、「前額面」とは装着者の身体を前後に切る面であって矢状面に垂直な面をいう。
【0024】
(腰部フレーム30)
腰部フレーム30は、装着者の腰(骨盤)の後側および左右両側を覆うことができるように、平面視で略U字形をなしている。具体的には、腰部フレーム30は、左右方向に長尺であって装着者の腰(骨盤)の背側に位置する基部31と、基部31の左右両端から前方へ突出するサイド部32,32とを備えている。基部31とサイド部32,32は、一体的に形成されるか、或いは、別体に形成されてボルトおよびナットなどの締結具により締結されており、腰部フレーム30は一体として挙動する。なお、本実施の形態に係る腰部フレーム30は締結された複数の部材(基部31,サイド部32,32)で構成されており、その締結位置が調整可能である。そして、基部31とサイド部32との締結位置を適宜調整することによって腰部フレーム30の有効寸法を装着者の体格に適合させるように調節することができる。腰部フレーム30は、装着者の腰周りへ係留させるためのベルトやフックなどの係止具(図示略)を備えており、腰部フレーム30は装着者の腰に係留される。
【0025】
(下肢フレーム50)
左右の下肢フレーム50,50はほぼ同一の構成であって、腰部フレーム30の左右中央を対称軸として左右線対称に設けられている。よって、一方(左側)の下肢フレーム50の構造についてのみ詳細に説明する。下肢フレーム50は、大腿アーム51と、下腿アーム52および足下アーム53を備えている。大腿アーム51は装着者の大腿部に係留され、下腿アーム52は装着者の下腿部に係留され、足下アーム53は装着者の足首から下部に係留される。各アームは装着者の身体へ係留させるためのベルトやフックなどの係止具(図示略)を備えている。
【0026】
大腿アーム51は、股関節用アクチュエータ61および股関節用ジョイント62を介して腰部フレーム30のサイド部32の前端部に接続されている。腰部フレーム30のサイド部32の前端部は、装着者の大腿骨の上端側方に位置するように調節されている。股関節用アクチュエータ61は、腰部フレーム30のサイド部32の前端部から外方へ突出するように設けられている。図4(a)にも示すように、股関節用アクチュエータ61は、腰部フレーム30に固定されたギアケース611と、第1モータ612と、ギアケース611内に設けられた軸受に前額面と略平行に支承された第1伝動軸613と、第1伝動軸613に設けられた第1減速ギア615とを備えている。第1減速ギア615は、モータ612の出力ギア614と噛合している。第1伝動軸613は、股関節用ジョイント62の構成要素である第1継手621に固定されている。また、股関節用ジョイント62は、第1継手621と、大腿アーム51の上部と接続された第2継手622と、第1継手621と第2継手622とを前額面上で回動可能に連結する枢軸623とを備えている。なお、「前額面上で回動する」とは、前額面と垂直な軸を中心として、前額面との平行を維持した状態で回動することをいう。上記構成により、第1モータ612の出力は出力ギア614と第1減速ギア615とを介して第1伝動軸613へ伝動され、第1伝動軸613の回動により腰部フレーム30に対して第1継手621が矢状面上で回動する。なお、「矢状面上で回動する」とは、矢状面と垂直な軸を中心として、矢状面との平行を維持した状態で回動することをいう。
【0027】
大腿アーム51は、複数の軸状部材又は長尺平板状部材からなり、これらの部材は長軸方向に連結されている。大腿アーム51を構成している各部材の接合位置は可変であって、これらの接合位置を適宜選択することにより大腿アーム51の長さ(長軸方向の寸法)が装着者の大腿部の長さに適合するように調整されている。このように調整された大腿アーム51の長さを「大腿アームの基準長さ」ということとする。大腿アームの基準長さは、大腿アーム51の最小長さでもある。
【0028】
大腿アーム51は、大腿アーム51を基準長さから1−30mmだけ並進方向(長軸方向)へ伸長可能とする、第1の並進自由度機構55を備えている。図5は第1の並進自由度機構の概略図である。図5に示すように、大腿アーム51と股関節用ジョイント62の第2継手622との接続部において、大腿アーム51と第2継手622のうち一方に並進方向に延びる接続ピン55aが設けられ、他方に接続ピン55aが摺動可能に挿入される接続孔55bが設けられている。これらの接続ピン55aと接続孔55bとにより第1の並進自由度機構55が構成されている。接続ピン55aと大腿アーム51とは滑り対偶であって、接続ピン55aと接続孔55bとの間に滑りが生じることにより大腿アーム51が並進方向へ伸長する。さらに、接続ピン55aは接続孔55b内で半径方向(接続ピン55aの軸回り)に回動可能であって、これにより大腿アーム51に回旋自由度(軸回りの回転1自由度)が与えられている。本実施形態では、第2継手622の下端に接続ピン55aが下向きに突設され、大腿アーム51の上端部に並進方向に延びる接続孔55bが設けられている。接続ピン55aは、接続孔55bよりも長く、接続ピン55aの下端は接続孔55bから下方へ突き抜けている。接続ピン55aの下端には接続孔55bよりも大径の鍔部55cが設けられており、鍔部55cは接続ピン55aの接続孔55bからの抜け留めとして機能している。接続孔55bの開口縁と鍔部55cは並進方向に離間しており、接続ピン55aの接続孔55bの開口縁と鍔部55cの間に付勢部材55dとしての圧縮バネが外嵌されている。上記構成において、大腿アーム51の並進方向への伸長代L1は、第2継手622の下端と大腿アーム51の上端との間に現れる接続ピン55aの長さである。伸長代L1は、第2継手622の下端と大腿アーム51の上端が当接しているときに0であって、付勢部材55dは伸長代L1が0となるように接続ピン55aを付勢している。そして、大腿アーム51に引張荷重がかかったときに、付勢部材55dの付勢力に抗して接続ピン55aが接続孔55b内を移動することによって伸長代L1が増大する。なお、伸長代L1は1−30mmの範囲で許容されるように、第1の並進自由度機構55の構成要素の寸法が定められている。
【0029】
下腿アーム52は、膝関節用アクチュエータ63を介して大腿アーム51の下部に接続されている。図4(b)にも示すように、膝関節用アクチュエータ63は、下腿アーム52の上部に固定されたギアケース632と、ギアケース632内に設けられた軸受に前額面と略平行に支承された第2伝動軸631と、第2伝動軸631に設けられた第2減速ギア635と、第2モータ633と、第2モータ633の出力軸に設けられた出力ギア634とを備えている。出力ギア634と第2減速ギア635は噛合している。第2伝動軸631は、大腿アーム51の下端部に固定されている。上記構成により、第2モータ633の出力は出力ギア634と第2ギア635を介して第2伝動軸631へ伝動され、第2伝動軸631の回動により大腿アーム51に対して下腿アーム52が矢状面上で回動する。
【0030】
下腿アーム52は、ボルトおよびナット等の締結具で締結された複数の複数の軸状部材又は長尺平板状部材で構成されている。これらの部材の締結位置は可変であって、この締結位置を適宜選択することにより下腿アーム52の長さ(長軸方向の寸法)が装着者の下腿部の長さに適合するように調整されている。このように調整された下腿アーム52の長さを「下腿アームの基準長さ」ということとする。下腿アームの基準長さは、下腿アーム52の最小長さでもある。
【0031】
下腿アーム52は、下腿アーム52を基準長さから1−30mmだけ並進方向(長軸方向)へ伸長可能とする、第2の並進自由度機構57を備えている。図6は第2の並進自由度機構の概略図である。図6に示すように、下腿アーム52の下端と、後述する足関節用ジョイント64の第1継手641との接続部において、下腿アーム52と第1継手641のうち一方に並進方向に延びる角柱部57aが設けられ、他方に角柱部57aが摺動可能に挿入される角筒部57bが設けられている。これらの角柱部57aと角筒部57bとにより第2の並進自由度機構57が構成されている。角柱部57aと下腿アーム52とは滑り対偶であって、角柱部57aが角筒部57b内を並進方向に滑ることにより、下腿アーム52は並進方向に伸長する。本実施形態では、下腿アーム52の下端部に角筒部57bが設けられ、第1継手641の上端部に角柱部57aが設けられている。さらに、角筒部57bには、角柱部57aを角筒部57b内へ収容する方向へ付勢する付勢部材57cとしての引張バネが設けられている。上記構成において、下腿アーム52の並進方向への伸長代L2は、下腿アーム52の下端と第1継手641の上端との間に現れる角柱部57aの長さである。伸長代L2は、下腿アーム52の下端と第1継手641の上端が当接しているときに0であって、付勢部材57cは伸長代L2が0となるように角柱部57aを付勢している。そして、下腿アーム52に引張荷重がかかったときに、付勢部材57cの付勢力に抗して角柱部57aが角筒部57b内を移動することによって、伸長代L2が増大する。なお、伸長代L2は1−30mmの範囲で許容されるように、第2の並進自由度機構57の構成要素の寸法が定められている。
【0032】
下腿アーム52と足下アーム53とは、足関節用ジョイント64を介して接続されている。足関節用ジョイント64は、下腿アーム52の下端に接続された第1継手641と、第1継手641に対し前額面上で回動可能に枢結された第2継手642と、第2継手642に対し矢状面上で回動可能に枢結された第3継手643とを備えている。第3継手643の下部には、足下アーム53を構成する足裏プレート531が接続されている。足裏プレート531は、少なくとも装着者の踵を覆う一体的な形状を有している。
【0033】
上記構成の左右一対の下肢フレーム50と腰部フレーム30は、総じて4の前額面上の回転自由度と、総じて4以上(本実施例では6)の矢状面上の回転自由度とを有している。前額面上の回転自由度は、腰部フレーム30と大腿アーム51の接続部および下腿アーム52と足下アーム53の接続部にそれぞれ設けられている。また、矢状面上の回転自由度は、腰部フレーム30と大腿アーム51の接続部、大腿アーム51と下腿アーム52の接続部、および下腿アーム52と足下アーム53の接続部にそれぞれ設けられている。上記のように腰部フレーム30と左右一対の下肢フレーム50,50に動きの自由度を設定することによって、装着具11は装着者にとって違和感の少ない下肢の動きを提供することができる。
【0034】
(背部フレーム40)
背部フレーム40は、いわゆる背負子である。背部フレーム40は、装着者の肩や胸に係留させるための脇ベルト、肩紐およびフックなどの係止具44を備えている。背部フレーム40には、バックパック12が積載される。バックパック12に格納されたバッテリ13は、股関節用アクチュエータ61、膝関節用アクチュエータ63、および制御器14へ電気を供給する。また、バックパック12に格納された制御器14は、装着具11の各部に設けたセンサ(図示略)からの検出信号を受けて、装着具11が装着者の動作を補助又は代行するように股関節用アクチュエータ61および膝関節用アクチュエータ63を制御する。なお、上記センサは、部材の重心の変化量や部材に加わる負荷量などの物理量を検出するセンサであるが、これらに代えて又はこれらに加えて装着者の生体信号を検出する生体信号センサを用いても良い。生体信号センサを用いれば、装着者の意思に従った動力をアクチュエータ61,63に発生させることができる。
【0035】
背部フレーム40と腰部フレーム30とを接続している接続部70は、前額面上の1自由度の回転機構で構成されている。ここで「前額面上の1自由度の回転機構」とは、腰部フレーム30と背部フレーム121のうち一方の入力動作に対し他方に前額面上の1自由度の回転動作を出力させる機構をいう。図7は腰部フレームと背部フレームの接続部を示す正面図である。図7に示すように、背部フレーム40の下部には上リンク71が設けられている。上リンク71は略水平方向に延びる部材であって、上リンク71の左右中央C1は背部フレーム40の左右中央と一致している。上リンク71には、上リンク71の左右中央C1を対称軸として左右対称に複数の接合孔71aが設けられている。一方、腰部フレーム30の基部31に下リンク72が設けられている。本実施形態に係る腰部フレーム30では、基部31の一部が下リンク72として機能している。なお、腰部フレーム30の基部31に下リンク72としての機能を併有させてもよいし、下リンク72を基部31とは別途設けてもよい。下リンク72は基部31と略平行であって、下リンク72の左右中央C2は腰部フレーム30の左右中央と一致している。下リンク72には、下リンク72の左右中央C2を対称軸として左右対称に複数の接合孔72aが設けられている。そして、上リンク71の1つの接合孔71aと右リンク73の上部とが接合ピン75によって回動可能に接合され、下リンク72の1つの接合孔72aと右リンク73の下部とが接合ピン75によって回動可能に接合されている。同様に、上リンク71の1つの接合孔71aと左リンク74の上部とが接合ピン75によって回動可能に接合され、下リンク72の1つの接合孔72aと左リンク74の下部とが接合ピン75によって回動可能に接合されている。上リンク71への右リンク73と左リンク74の接合位置は、上リンク71の左右中央C1を対称軸として左右対称となっている。同様に、下リンク72への右リンク73と左リンク74の接合位置は、下リンク72の左右中央C2を対称軸として左右対称となっている。上記構成の上リンク71、下リンク72、右リンク73および左リンク74により、下リンク72の左右中央C2を対称軸として左右線対称の平面四節リンク機構が形成されている。
【0036】
図8は左右対称な四節リンク機構のバリエーションを説明する図である。上記左右対称な平面四節リンク機構は、4つの節(接合ピン75,75,75,75)を順に線で結んだ形状が、図8(a)に示すような上辺が下辺よりも長い上下逆の等脚台形(以下、「上下逆台形」ともいう)をなすもの、図8(b)に示すような上辺と下辺が同じ長さの等脚台形をなすもの、および図8(c)に示すような上辺が可変よりも短い等脚台形をなすものがある。上記3種類の左右対称な四節リンク機構のうち、いずれが採用されてもかまわないが、四節が上下逆台形をなす四節リンク機構が採用されることが望ましい。四節が上下逆台形をなす四節リンク機構では、左右のリンク73,74は上下逆「八」の字又は間の離れた「V」字形状をなしている。
【0037】
続いて、上記構成の装着型動作支援装置10を身体に装着した装着者が歩行したときの、装着具11の状態を説明する。図1は装着型動作支援装置10の両立脚状態を示しており、図9は装着型動作支援装置10の片立脚状体を示している。両立脚状態とは、装着者が直立し、両方の足裏プレート531が接地している状態をいい、片立脚状態とは、装着者の片足が地面から離れ、一方の足裏プレート531が接地し且つ他方の足裏プレートが浮いている状態をいう。図1に示すように、両立脚状態において、装着具11は腰部フレーム30の左右中央C2を対称軸として左右線対称な状態にある。したがって、腰部フレーム30に設けられた下リンク72(すなわち、基部31)および背部フレーム40に設けられた上リンク71は略水平である。両立脚状態において、装着具11および背部フレーム40に積載されたバックパック12の荷重は足裏プレート531,531で支持され、これらの荷重は装着者に負荷されない。
【0038】
そして、両立脚状態から、一方の下肢フレーム50において股関節用アクチュエータ61の作動により腰部フレーム30に対し大腿アーム51が矢状面上で前方へ回転し、膝関節用アクチュエータ63の作動により大腿アーム51に対し下腿アーム52が矢状面上で後方へ回転すると、図9に示すように、一方の下肢フレーム50の足裏プレート531が地面から離れて膝関節が前へ上がった状態(片立脚状態)となる。両立脚状態から片立脚状態へ移行する際に、一方の下肢フレーム50が立脚(接地している脚)から遊脚(接地していない脚)へ移行する。下肢フレーム50が立脚から遊脚へ移行するときに、第1の並進自由度機構55により大腿アーム51が基準長さから並進方向へ伸長することにより、装着者は違和感なく脚を動かすことができる。また、下肢フレーム50が遊脚から立脚へ移行するときや昇降するときなどに、第2の並進自由度機構57により下腿アーム52が装着者の下肢の動きに追従して基準長さから並進方向へ伸長することにより、装着者は違和感なく脚を動かすことができる。
【0039】
装着者の歩行時に、装着者の骨盤が前額面上で揺動することから、腰部フレーム30も前額面上で揺動する。片立脚状態において、装着者の骨盤は水平から傾き、その結果、腰部フレーム30に設けられた下リンク72(すなわち、基部31)は、立脚側が高く且つ遊脚側が低くなるように傾いている。下リンク72が傾くと、接続部70では、右リンク73および左リンク74の傾きが変化することによって上リンク71の略水平が維持される。このように、背部フレーム40と腰部フレーム30とが前額面上の1自由度の回転機構で接続されることによれば、装着者の歩行時に腰部フレーム30が前額面上で揺動しても、この揺動は背部フレーム40へ伝播しない。つまり、背部フレーム40の横揺れが抑制されて、背部フレーム40を装着者に係留している係止具44と装着者の身体との擦れを防止することができる。
【0040】
なお、接続部70を構成している四節リンク機構の四節を順に線で結んだ形状が上下逆台形であれば、片立脚状態において下リンク72が傾くと、上リンク71の左右中央C1は下リンク72の左右中央C2から立脚側へ移動する。上リンク71の左右中央C1の延長線上には背部フレーム40の重心が位置することから、上リンク71の左右中央C1が立脚側へ移動することは、背部フレーム40の重心が立脚側へ移動することと同義となる。このように、片立脚状態において背部フレーム40の重心が立脚側へ移動することによれば、背部フレーム40およびこれに積載されたバックパック12の重量は立脚側の下肢フレーム50で支持されるので、装着者に負荷されない。上記理由から、接続部70を構成している四節リンク機構は四節を順に線で結んだ形状が上下逆台形であることが望ましい。
【0041】
なお、上記のように片立脚状態において背部フレーム40の重心が立脚側へ移動すると、立脚側の下肢フレーム50は外側へやや撓んだ状態となる。そこで、このように下肢フレーム50が外側に撓んだ状態となっても下肢フレーム50が外側へ転倒しないようにするために、図2に示すように、足関節用ジョイント64には第2継手642に対する第1継手641の前額面上の外側への回動範囲を規制するストッパ646(規制部材)が設けられている。足関節用ジョイント64の第2継手642に対する第1継手641の前額面上の外側への回動範囲が規制されることにより、足裏プレート531に対して下腿アーム52が外側へ倒れることを防止できる。
【0042】
また、片立脚状態において、前述の通り上リンク71の左右中央C1は下リンク72の左右中央C2から水平方向に変位している。上リンク71の左右中央C1と下リンク72の左右中央C2との水平方向の変位量を「左右中央変位量ΔC」ということとする。左右中央変位量ΔCが適正範囲内であれば、上記の通り腰部フレーム30が水平から傾いても上リンク71の水平が維持されるとともに、装着具11およびバックパック12の荷重は装着者に負荷されない。ところが、左右中央変位量ΔCが過剰となれば、すなわち、背部フレーム40の重心の下リンク72の左右中央C2からの乖離量が過剰となれば、背部フレーム40の重心が過度に立脚側へ移動してバランスが崩れてしまい、装着者はバランスを保つために余計な筋力活動が必要となってしまう。そこで、腰部フレーム30と背部フレーム40との接続部70では、左右中央変位量ΔCが適正範囲内となるように調整されている。具体的には、歩行時の人間の骨盤は前額面上で水平から最大で5−8度揺動することが知られている。腰部フレーム30が水平から骨盤の最大の揺動角度(ここでは5度とする)傾いたときに、左右中央変位量ΔCの最大値が適正範囲上限値以下となるように接続部70が調整されている。参考までに、「ヒューマンウォーキング原著第3版」(著者;Jessica Rose,James G.Gamble ed. 出版社;医師役出版株式会社)によれば、一般的な成人男性の歩行において、前額面に描かれる質量中心の動きは少し歪んだ横向きの8の字状となり、前額面に描かれる骨盤の変位も少し歪んだ横向きの8の字状となる。この文献に示された一例では、骨盤が水平から約5度傾いたときの質量中心の左右方向の変位は約25mmである。この例に従えば、左右中央変位量ΔCの適正範囲は左右に0−25mmであって、この適正範囲を超えると腰部フレーム30に対する背部フレーム40の左右方向の変位が身体の動きから大きく乖離するので、装着者に負荷を与えてしまうこととなる。なお、骨盤の揺動角度に対する質量中心の左右方向の変位は、歩幅、歩行速度、歩行者の体格などによって異なるので、左右中央変位量ΔCの適正範囲も歩幅、歩行速度、歩行者の体格などによって異なる。
【0043】
左右中央変位量ΔCの最大値は、接続部70を構成している四節リンク機構の形状によって定まる。図10は四節リンク機構の一例を示す図であり、図11は四節リンク機構の変形例を示す図である。図10(a)と図11(a)に示された四節リンク機構は、いずれも同じ長さの右リンク73および左リンク74を有するが、上辺(上リンク71の接合ピン75,75間)と下辺(下リンク72の接合ピン75,75間)の長さが異なり、上辺および下辺ともに図10(a)に示された四節リンク機構のほうが長い。図10(b)と図11(b)では、図10(a)と図11(a)に示された四節リンク機構の各下リンク72を同じ角度(ここでは8度)だけ水平から傾けたときの状態が示されている。図10(b)と図11(b)を比較すると明らかなように、上辺および下辺の長さがより長い四節リンク機構(図10)の方が左右中央変位量ΔCが大きい。このように、四節リンク機構は上辺および下辺の長さに応じて左右中央変位量ΔCの最大値が異なる。本実施形態に係る接続部70では、上リンク71と下リンク72はそれぞれに複数の接合孔71a,72aを有するので、四節リンク機構の上辺(上リンク71の接合ピン75,75間)と下辺(下リンク72の接合ピン75,75間)の長さが可変である。そして、上リンク71の複数の接合孔71aと下リンク72の複数の接合孔72aのなかから最適な組み合わせを選択することにより、左右中央変位量ΔCを適正範囲上限値以下に収めることができる。なお、本実施形態に係る接続部70では、上リンク71および下リンク72のそれぞれに複数の接合孔71a,72aを設けているが、上リンク71および下リンク72のうち少なくとも一方において右リンク73および左リンク74の接合位置が左右方向に可変であればよい。かかる構成により、四節リンク機構の上辺(上リンク71の接合ピン75,75間)と下辺(下リンク72の接合ピン75,75間)のうち少なくとも一方の長さが可変となる。そして、四節リンク機構の上辺および下辺のうち少なくとも一方の長さを変化させることで、四節リンク機構の大きさを装着者の体格に合わせたり、下リンクが揺動したときの左右中央変位量ΔCの最大値を調整したりすることができる。
【0044】
以上、本発明の好適な一実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて、様々な設計変更を行うことが可能である。
【0045】
例えば、上記実施の形態において背部フレーム40と腰部フレーム30との接続部70は四節リンク機構で構成されているが、接続部70の構成は上記に限定されない。接続部70は、背部フレーム40と腰部フレーム30とを接続する前額面上の1自由度の回転機構であればよい。例えば、上記実施の形態に記載された接続部70に加え、補助的な部材を付加してもよい。また、例えば、四節リンク機構を用いずに接続部70を構成することもできる。図12は腰部フレームと背部フレームの接続部の変形例を示す装着型動作支援装置の概略正面図であって、(a)は両立脚状態であり、(b)は片立脚状態である。図12(a)に示す例では、腰部フレーム30の左右中央上部に接合孔34が穿設された突起部35が腰部フレーム30と一体的に設けられている。一方、背部フレーム40の左右中央下部には接合孔42が設けられている。そして、腰部フレーム30の接合孔34と、背部フレーム40の接合孔42と、これらの接合孔34,42に挿通され且つ前額面と垂直に延びる軸43とにより接続部70が構成されている。かかる構成により、腰部フレーム30と背部フレーム40とは前額面上の1自由度を有する回転対偶となっている。よって、図12(b)に示すように、装着者の歩行時に腰部フレーム30が前額面上で水平から揺動しても、腰部フレーム30に対し背部フレーム40が回動することで、腰部フレーム30の揺動は背部フレーム40へ伝播しない。つまり、背部フレーム40の振れが抑制されて、背部フレーム40を装着者に係留している係止具44と装着者の身体との擦れを防止することができる。
【0046】
また、例えば、上記実施の形態において装着型動作支援装置10は背部フレーム40を備え、当該背部フレーム40に荷(バックパック12)を積載するようになっているが、背部フレーム40を構成から省いてもよい。この場合は、図13に示すように、バックパック12の筐体そのものが背部フレーム40としての機能を備えるように構成される。具体的には、装着者の背部に係留させるための肩紐やフックなどの係止具44と、腰部フレーム30と接続するための上リンク71が、バックパック12の筐体に設けられる。
【0047】
また、例えば、上記実施の形態において、装着型動作支援装置10の下肢フレーム50は足裏プレート531を備え、この足裏プレート531で装着具11およびバックパック12の荷重を支持するように構成されているが、足裏プレート531を構成から省いても良い。この場合の下肢フレーム50、股関節用アクチュエータ61、股関節用ジョイント62、大腿アーム51、膝関節用アクチュエータ63および下腿アーム52で構成される。なお、このような装着型動作支援装置10では、装着具11およびバックパック12の荷重は装着者が負担することとなる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、使用者の下肢に装着されて、股関節や膝関節の屈伸を伴う歩行、走行、立つ、座る、および段の昇降などの使用者の下肢の動作を補助又は代行する装着型動作支援装置であって、装着者の肩又は脇に係留される背部フレーム(バックパック)を備えるものにおいて、背部フレームの振れを防止するために有用である。
【符号の説明】
【0049】
10 装着型動作支援装置
11 装着具
12 バックパック
13 バッテリ
14 制御器
30 腰部フレーム
31 基部
32 サイド部
40 背部フレーム
50 下肢フレーム
51 大腿アーム
52 下腿アーム
53 足下アーム
531 足裏プレート
61 股関節用アクチュエータ
62 股関節用ジョイント
63 膝関節用アクチュエータ
64 足関節用ジョイント
70 接続部
71 上リンク
72 下リンク
73 右リンク
74 左リンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の筋力を補助或いは代行する装着型動作支援装置であって、
前記装着者の左右方向に長尺な基部を有し、前記装着者の腰周りに装着される腰部フレームと、
前記腰部フレームの下部に接続されて、前記装着者の下肢に装着される左右一対の下肢フレームと、
前記腰部フレームの上部に接続されて、前記装着者の肩に係留させるための係止具を有する背部フレームと、
前記背部フレームと前記腰部フレームの基部とを接続する前額面上の1自由度の回転機構とを備えている、装着型動作支援装置。
【請求項2】
前記回転機構は、前記腰部フレームに設けられて前記基部と略平行な下リンクと、前記背部フレームに設けられた上リンクと、前記下リンクと前記上リンクのそれぞれに接合された左リンクおよび右リンクとから成り、前記腰部フレームの左右中央を対称軸として線対称な四節リンク機構である、請求項1に記載の装着型動作支援装置。
【請求項3】
前記四節リンク機構は、四節を順に線で結んだ形状が上下逆台形である、請求項2に記載の装着型動作支援装置。
【請求項4】
前記下リンクおよび前記上リンクのうち少なくとも一方の前記右リンクおよび前記左リンクとの接合位置は前記左右方向に可変である、請求項2又は請求項3に記載の装着型動作支援装置。
【請求項5】
前記回転機構は、前記腰部フレームの前記基部の左右略中央および前記背部フレームの左右略中央のそれぞれに設けられた接合孔に挿通された前額面に垂直な軸で構成されている、請求項1に記載の装着型動作支援装置。
【請求項6】
前記左右一対の下肢フレームおよび前記腰部フレームは、総じて4の前額面上の回転自由度と総じて4以上の矢状面上の回転自由度とを有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の装着型動作支援装置。
【請求項7】
前記左右一対の下肢フレームは、前記装着者の大腿部に装着される大腿アームと、前記装着者の下腿部に装着される下腿アームと、前記装着者の足部に装着される足下アームとを各々に有し、
前記大腿アームと前記下腿アームは矢状面上で回動可能に接続され、
前記腰部フレームと前記大腿アームおよび前記下腿アームと前記足下アームは矢状面上および前額面上で回動可能に接続されている、請求項6に記載の装着型動作支援装置。
【請求項8】
前記下肢フレームは、前記足下アームに対する前記下腿アームの前額面上の回動範囲を規制する規制部材を有する、請求項7に記載の装着型動作支援装置。
【請求項9】
前記下肢フレームは、前記装着者の大腿部に装着される大腿アームと、前記装着者の下腿部に装着される下腿アームと、前記大腿アームを基準長さから並進方向に伸長可能とする第1の並進自由度機構とを有している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の装着型動作支援装置。
【請求項10】
前記第1の並進自由度機構は、回旋自由度を併有している、請求項9に記載の装着型動作支援装置。
【請求項11】
前記下肢フレームが、前記装着者の大腿部に装着される大腿アームと、前記装着者の下腿部に装着される下腿アームと、前記下腿アームを基準長さから並進方向に伸長可能とする第2の並進自由度機構とを有している、請求項1〜10のいずれか一項に記載の装着型動作支援装置。
【請求項12】
前記下肢フレームは、前記装着者の足が載置される足裏プレートを有している、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装着型動作支援装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−110497(P2012−110497A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−261698(P2010−261698)
【出願日】平成22年11月24日(2010.11.24)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】