説明

装置動作シミュレーション方法およびプログラム

【課題】実際の装置の動作に即した電流消費をシミュレーションすることを実現する。
【解決手段】装置の各構成要素をハードウェア記述言語によってモデリングした各デバイスモデル(電源制御IC105、CPU106、メモリ107、LCD108および無線部109)から各自の動作状況に応じて変化する電流消費情報CCD1〜CCD5を出力させ、これら電流消費情報CCD1〜CCD5を電流監視回路101に入力することで装置全体の電流消費を把握し、実際の装置の動きにあわせた電流消費シミュレーションを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子装置の電流消費や温度変化を仮想モデルを用いてシミュレーションする装置動作シミュレーション方法およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より装置動作をシミュレーションする技術が知られている。例えば特許文献1には、時間情報を含む動作レベルモデルのシミュレーションとして、機能ブロックの稼働率を算出し、算出された機能ブロックの稼働率と、クロック周波数にそれぞれ対応する電力計算式とに基づいて設計対象の半導体装置の消費電力を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−299464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記特許文献1に開示の技術は、単に消費電力の予測に要する時間短縮を目的としており、実際の装置の動作に即した電流消費や温度変化をシミュレーションすることが出来ないという問題がある。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、実際の装置の動作に即した電流消費や温度変化をシミュレーションすることができる装置動作シミュレーション方法およびプログラムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の装置動作シミュレーション方法は、装置の各構成要素をハードウェア記述言語によってモデリングした各デバイスモデルからそれぞれ動作状況に応じて変化する電流消費情報を出力させる第1の過程と、前記第1の過程により各デバイスモデルからそれぞれ出力される電流消費情報に基づいて装置全体の電流消費を把握する第2の過程とを具備することを特徴とする。
【0007】
また、本発明のプログラムは、コンピュータに、装置の各構成要素をハードウェア記述言語によってモデリングした各デバイスモデルからそれぞれ動作状況に応じて変化する電流消費情報を出力させる第1のステップと、前記第1のステップにより各デバイスモデルからそれぞれ出力される電流消費情報に基づいて装置全体の電流消費を把握する第2のステップとを実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では、実際の装置の動作に即した電流消費や温度変化をシミュレーションすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1実施形態による仮想モデルの構成を示すブロック図である。
【図2】LCD108が動作状況に応じた電流消費情報を出力する動作を示すフローチャートである。
【図3】第2実施形態による仮想モデルの構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態による仮想モデル10の構成を示すブロック図である。この図に示す仮想モデル10は、携帯端末装置の要部である構成要素101〜109を、それぞれハードウェア記述言語(例えばSystemC)によってモデリングしたものである。
【0011】
図1において、電流監視回路101は、バッテリ103に対する電流の入出力を監視し、当該バッテリ103の残容量を把握し、その情報をCPU106に送出する。充電制御回路102は、ACアダプタ104が接続されている時に充電電流情報CHRを発生して電流監視回路101に供給する。電源制御IC105は、CPU106の制御の下に、充電制御回路102から入力される電源を各デバイスモデル(CPU106、メモリ107、LCD(表示部)108および無線部109)に分配する。また、電源制御IC105は動作状況に応じて変化する電流消費情報CCD1を発生して電流監視回路101に出力する。
【0012】
CPU106は、各デバイスモデル(電源制御IC105、メモリ107、LCD108および無線部109)を制御すると共に、動作状況に応じて変化する電流消費情報CCD2を発生して電流監視回路101に出力する。メモリ107は、動作状況に応じて変化する電流消費情報CCD3を発生して電流監視回路101に出力する。LCD108は、動作状況に応じて変化する電流消費情報CCD4を発生して電流監視回路101に出力する。無線部109は、動作状況に応じて変化する電流消費情報CCD5を発生して電流監視回路101に出力する。
【0013】
このように、仮想モデル10では、実際に各デバイスモデル(電源制御IC105、CPU106、メモリ107、LCD108および無線部109)の消費電流をモニタすることが不可能なため、これら各デバイスモデルがそれぞれ自己の動作状況に応じて変化する電流消費情報CCD1〜CCD5を出力し、それら出力される電流消費情報CCD1〜CCD5を電流監視回路101に供給することで装置全体の電流消費情報を把握することを可能としている。
【0014】
この際、必ずしも全デバイスの電流消費情報を出力させる必要は無く、消費が大きいデバイスの電流消費情報のみを出力させることでシミュレーションは可能である。電流監視回路101に供給される電流消費情報CCD1〜CCD5および充電電流情報CHRを演算することでバッテリ103の残容量を変化させ、電流消費シミュレーションが可能になる。
【0015】
次に、図2を参照して電流消費シミュレーション方法の一例について説明する。図2は、LCD108が動作状況に応じて変化する電流消費情報CCD4を出力する動作を示すフローチャートである。先ずステップS100では、電源オフ状態である為に電流消費情報CCD4を「0」とする。そして、ステップS101では、電源オンされかた否かを判断し、電源オフ状態であれば、判断結果が「NO」になり、上記ステップS100に処理を戻す。
【0016】
そして、電源がオンされると、上記ステップS101の判断結果が「YES」になり、ステップS102に進み、スタンバイ状態であるか否かを判断する。スタンバイ状態であると、判断結果は「YES」になり、ステップS103に進み、LCD108がスタンバイ状態下で消費するスタンバイ電流を電流消費情報CCD4として出力する。
【0017】
一方、スタンバイ状態でなければ、上記ステップS102の判断結果は「NO」になり、ステップS104に進み、LCD108が表示動作で消費する動作時電流を電流消費情報CCD4として出力する。そして、ステップS105に進むと、電源オフ状態であるか否かを判断する。電源オン状態ならば、判断結果は「NO」になり、上述のステップS102に処理を戻すが、電源オフされると、上記ステップS105の判断結果は「YES」になり、ステップS106に進み、電流消費情報CCD4を「0」にして本処理を終える。
【0018】
なお、上述した電流消費シミュレーション方法は、説明の簡略化を図る為、LCD108の動作状態を「スタンバイ状態」と「表示動作状態」の2つの状態としたが、これに限らず複数の状態を設け、各状態への遷移に応じて電流消費情報CCD4を変化させることで実際の動作と同様に変化する電流消費情報CCD4を電流監視回路101に供給させることが可能となる。
【0019】
このように、第1実施形態によれば、各デバイスモデル(電源制御IC105、CPU106、メモリ107、LCD108および無線部109)から各自の動作状況に応じて変化する電流消費情報CCD1〜CCD5を出力させ、これら電流消費情報CCD1〜CCD5を電流監視回路101に入力することで装置全体の電流消費を把握し、実際の装置の動きにあわせた電流消費シミュレーションを可能にしている。
【0020】
[第2実施形態]
次に、図3を参照して第2実施形態について説明する。図3は、第2実施形態による仮想モデル30の構成を示すブロック図である。この図に示す仮想モデル30は、携帯端末装置において主要な発熱要素となる各デバイスモデル(充電制御回路302、電源制御IC304、CPU305、カメラ306、DTV307および無線部308)を、それぞれハードウェア記述言語(例えばSystemC)によってモデリングしたものである。
【0021】
図3において、温度監視モジュール301は、各デバイスモデル(充電制御回路302、電源制御IC304、CPU305、カメラ306、DTV307および無線部308)から各々出力される温度監視情報TMD1〜TMD6に基づき装置全体の温度を把握し、把握した装置温度を示す装置温度情報DTDを発生する。充電制御回路302は、ACアダプタ303が接続されている時の動作状況に応じた温度監視情報TMD1を発生して温度監視モジュール301に供給する。
【0022】
電源制御IC304は、動作状況に応じて変化する温度監視情報TMD2を発生して温度監視モジュール301に供給する。また、電源制御IC304は、温度監視モジュール301から供給される装置温度情報DTDに応じて、各デバイスモデル(CPU305、カメラ306、DTV307および無線部109)に分配する電源を制御する。
【0023】
CPU305は、各デバイスモデル(電源制御IC304、カメラ306、DTV307および無線部109)を制御すると共に、動作状況に応じて変化する温度監視情報TMD3を発生して温度監視モジュール301に供給する。カメラ306は、動作状況に応じて変化する温度監視情報TMD4を発生して温度監視モジュール301に供給する。ワンセグチューナを含むDTV307は、動作状況に応じて変化する温度監視情報TMD5を発生して温度監視モジュール301に供給する。無線部308は、動作状況に応じて変化する温度監視情報TMD6を発生して温度監視モジュール301に供給する。
【0024】
このように、仮想モデル30では、実際に各デバイスモデル(充電制御回路302、電源制御IC304、CPU305、カメラ306、DTV307および無線部308)の温度をモニタすることが不可能なため、これら各デバイスモデルがそれぞれ自己の動作状況に応じて変化する温度監視情報TMD1〜TMD6を出力し、それら出力される温度監視情報TMD1〜TMD6を温度監視モジュール301に供給することで装置全体の温度変化を把握する。
【0025】
そして、温度監視モジュール301は把握した装置温度を示す装置温度情報DTDを発生して電源制御IC304に供給すると、電源制御IC304では装置温度情報DTDに応じて、各デバイスモデル(CPU305、カメラ306、DTV307および無線部109)に分配する電源を制御するので、温度変化シミュレーションが可能になる。
【0026】
[付記]
次に、本発明の特徴を付記する。なお、上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のように記載され得るが、その記載に限定されるものではない。
【0027】
(付記1)
装置の各構成要素をハードウェア記述言語によってモデリングした各デバイスモデルからそれぞれ動作状況に応じて変化する電流消費情報を出力させる第1の過程と、
前記第1の過程により各デバイスモデルからそれぞれ出力される電流消費情報に基づいて装置全体の電流消費を把握する第2の過程と
を具備することを特徴とする装置動作シミュレーション方法。
【0028】
(付記2)
コンピュータに、
装置の各構成要素をハードウェア記述言語によってモデリングした各デバイスモデルからそれぞれ動作状況に応じて変化する電流消費情報を出力させる第1のステップと、
前記第1のステップにより各デバイスモデルからそれぞれ出力される電流消費情報に基づいて装置全体の電流消費を把握する第2のステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。
【0029】
(付記3)
装置の各構成要素をハードウェア記述言語によってモデリングした各デバイスモデルからそれぞれ動作状況に応じて変化する温度監視情報を出力させる第1の過程と、
前記第1の過程により各デバイスモデルからそれぞれ出力される温度監視情報に基づいて装置全体の温度変化を把握する第2の過程と
を具備することを特徴とする装置動作シミュレーション方法。
【0030】
(付記4)
コンピュータに、
装置の各構成要素をハードウェア記述言語によってモデリングした各デバイスモデルからそれぞれ動作状況に応じて変化する温度監視情報を出力させる第1のステップと、
前記第1のステップにより各デバイスモデルからそれぞれ出力される温度監視情報に基づいて装置全体の温度変化を把握する第2のステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。
【符号の説明】
【0031】
10 仮想モデル
101 電流監視回路
102 充電制御回路
103 バッテリ
104 ACアダプタ
105 電源制御IC
106 CPU
107 メモリ
108 LCD
109 無線部
30 仮想モデル
301 温度監視モジュール
302 充電制御回路
303 ACアダプタ
304 電源制御IC
305 CPU
306 カメラ
307 DTV
308 無線部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
装置の各構成要素をハードウェア記述言語によってモデリングした各デバイスモデルからそれぞれ動作状況に応じて変化する電流消費情報を出力させる第1の過程と、
前記第1の過程により各デバイスモデルからそれぞれ出力される電流消費情報に基づいて装置全体の電流消費を把握する第2の過程と
を具備することを特徴とする装置動作シミュレーション方法。
【請求項2】
コンピュータに、
装置の各構成要素をハードウェア記述言語によってモデリングした各デバイスモデルからそれぞれ動作状況に応じて変化する電流消費情報を出力させる第1のステップと、
前記第1のステップにより各デバイスモデルからそれぞれ出力される電流消費情報に基づいて装置全体の電流消費を把握する第2のステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。
【請求項3】
装置の各構成要素をハードウェア記述言語によってモデリングした各デバイスモデルからそれぞれ動作状況に応じて変化する温度監視情報を出力させる第1の過程と、
前記第1の過程により各デバイスモデルからそれぞれ出力される温度監視情報に基づいて装置全体の温度変化を把握する第2の過程と
を具備することを特徴とする装置動作シミュレーション方法。
【請求項4】
コンピュータに、
装置の各構成要素をハードウェア記述言語によってモデリングした各デバイスモデルからそれぞれ動作状況に応じて変化する温度監視情報を出力させる第1のステップと、
前記第1のステップにより各デバイスモデルからそれぞれ出力される温度監視情報に基づいて装置全体の温度変化を把握する第2のステップと
を実行させることを特徴とするプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−61712(P2013−61712A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198262(P2011−198262)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(310006855)NECカシオモバイルコミュニケーションズ株式会社 (1,081)
【Fターム(参考)】