説明

補助人工心臓ポンプ駆動装置及び補助人工心臓システム

【課題】ポンプ装置を二重化することなく、万が一、重大な故障が生じた場合であっても高い可用性を有する補助人工心臓ポンプ駆動装置及び補助人工心臓システムを提供する。
【解決手段】補助人工心臓ポンプを駆動する補助人工心臓ポンプ駆動装置は、前記補助人工心臓ポンプの駆動信号を出力して前記補助人工心臓ポンプを制御する各ポンプ制御部が二重化構成された第1及び第2のポンプ制御部を含み、前記各ポンプ制御部は、当該ポンプ制御部内において故障が検出されたときに、前記駆動信号を前記補助人工心臓ポンプに出力する経路を電気的に遮断する手段を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補助人工心臓ポンプ駆動装置、及びこれを用いた補助人工心臓システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の医療技術の進歩によって、これまで深刻であると考えられてきた心臓疾患も治療できるケースが増えている。その一方で、心臓疾患が重症になると、今のところ心臓移植しか治療法がないケースもあり、移植待機患者が、適合するドナーを待たなければならない状況にある。そのため、心臓移植を迅速に行うことができずに生命の維持に重大な支障をもたらすケースもあった。
【0003】
そこで、このような移植待機患者に補助人工心臓を埋め込んで血液の循環を補助することで、移植待機患者が、長期間に亘って適合するドナーを待機できるようになっている。そして、将来的には、ドナーの心臓ではなく人工心臓で重症の心臓疾患の患者を救命することが期待されている。
【0004】
このような補助人工心臓は、左心室や右心室の機能を補助する血液ポンプとしての補助人工心臓ポンプを備えている。補助人工心臓は、いわゆる生命維持装置であるため、補助人工心臓ポンプ及び該補助人工心臓ポンプを駆動する補助人工心臓ポンプ駆動装置には極めて高い信頼性と可用性とが求められている。
【0005】
補助人工心臓ポンプ駆動装置の信頼性及び可用性を高めるために適用できる技術については、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3及び非特許文献1に開示されている。特許文献1には、制御部を二重化し、過度の電流が流れないように切り換えるようにした交流電動機を駆動するインバータ装置が開示されている。特許文献2には、車両制御を行うマイクロプロセッサを二重化し、各マイクロプロセッサの演算結果を二重にチェックして正常な演算結果を出力する電気自動車制御装置が開示されている。特許文献3には、モータを駆動するメイン駆動回路及びバックアップ駆動回路とを備え、メイン駆動回路の故障を検出したときに、切り替え回路によりメイン駆動回路及びバックアップ駆動回路のいずれかの駆動信号をモータに出力するモータ駆動回路が開示されている。また、非特許文献1には、モータ内に2系統のモータ巻線を設けた冗長モータに関する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開平7−231697号公報
【特許文献2】特開平7−143604号公報
【特許文献3】特開2007−83887号公報
【非特許文献1】N.Ertugrul, W.soong, G.Dostal and D.Saxon、“Fault Tolerant Motor Drive System with Redundancy for Critical Application”、IEEE Power Electronics Specialists Conference、 2002、 p.1457-1462
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、一方を常時使用、他方を故障時のバックアップとして待機させて可用性を向上させようとしても、例えば特許文献1、特許文献2及び特許文献3に開示された技術では、モータに駆動電力を与える電力増幅回路が共通に使用されるため、電力増幅回路が故障した場合には、補助人工心臓ポンプの駆動が制御不能になり、補助人工心臓の信頼性を低下させ、可用性も高めることができないという問題がある。また、例えば非特許文献1に開示された技術では、モータ側を多重化する必要があるため、補助人工心臓ポンプが大型化して補助人工心臓ポンプに適用することは実質的に不可能である。
【0008】
このように、従来の技術のように単に回路を並列接続しただけでは、故障した系の回路の影響を受けてバックアップ側の系の回路が正常に機能しない可能性がある。
【0009】
本発明は、以上のような技術的課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、ポンプ装置を二重化することなく、万が一、重大な故障が生じた場合であっても高い可用性を有する補助人工心臓ポンプ駆動装置及び補助人工心臓システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために本発明は、補助人工心臓ポンプを駆動する補助人工心臓ポンプ駆動装置であって、前記補助人工心臓ポンプの駆動信号を出力して前記補助人工心臓ポンプを制御する各ポンプ制御部が二重化構成された第1及び第2のポンプ制御部を含み、前記各ポンプ制御部は、当該ポンプ制御部内において故障が検出されたときに、前記駆動信号を前記補助人工心臓ポンプに出力する経路を電気的に遮断する手段を有する補助人工心臓ポンプ駆動装置に関係する。
【0011】
本発明によれば、第1又は第2のポンプ制御部の故障が生じた場合でも、一方の故障の影響を他方に与えることがないため、正常な動作状態のまま、補助人工心臓ポンプの駆動を継続することができ、高い可用性を得ることができるようになる。例えば、一方のポンプ制御部(例えば第1のポンプ制御部)がオープンモードのみならずショートモードで故障した場合、他方のポンプ制御部(例えば第2のポンプ制御部)の出力線が接地レベルに固定されてしまい、この他方のポンプ制御部(例えば第2のポンプ制御部)が補助人工心臓ポンプの駆動制御を行えなくなる事態を回避できるようになる。
【0012】
また本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置では、前記各ポンプ制御部は、当該ポンプ制御部内において故障が検出されたときに、当該ポンプ制御部への電源供給を停止する手段を有することができる。
【0013】
本発明によれば、当該ポンプ制御内の故障が検出されたとき、当該ポンプ制御への電源供給を停止するようにしたので、第1又は第2のポンプ制御部の故障が生じた場合でも、一方の故障の影響を確実に他方に与えないようにして、補助人工心臓ポンプの駆動を継続させることで可用性をより一層向上させることができるようになる。
【0014】
また本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置では、前記電源供給を停止する手段は、前記補助人工心臓ポンプ駆動装置に電源を供給する電源ラインに接続される単一方向スイッチ回路であってもよい。
【0015】
本発明によれば、複雑な構成を採用することなく構成を簡素化できるため、信頼性を低下させずに可用性を高めることができる。
【0016】
また本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置では、前記単一方向スイッチ回路が、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにより構成されていてもよい。
【0017】
本発明によれば、単一方向スイッチ回路として、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにより実現された半導体スイッチを採用したので、半導体スイッチ自体に、万が一、故障が発生してもその大半がショートモードでの故障であるため、ポンプ制御部との二重故障にならない限り補助人工心臓ポンプの駆動に影響を与えずに済み、信頼性を大幅に向上させることができるようになる。
【0018】
また本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置では、前記各ポンプ制御部は、前記駆動信号の電力を増幅する電力増幅器と、前記電力増幅器の出力と前記補助人工心臓ポンプとの間に設けられた双方向スイッチ回路とを含み、前記第1のポンプ制御部が正常状態のとき、前記第1のポンプ制御部の双方向スイッチ回路が導通状態、前記第2のポンプ制御部の双方向スイッチ回路が遮断状態に設定され、前記第1のポンプ制御部が故障状態のとき、前記第1のポンプ制御部の双方向スイッチ回路が遮断状態、前記第2のポンプ制御部の双方向スイッチ回路が導通状態に設定されてもよい。
【0019】
本発明によれば、複雑な構成を採用することなく構成を簡素化できるため、信頼性を低下させずに可用性を高めることができる。
【0020】
また本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置では、前記電力増幅器は、インバータ回路であってもよい。
【0021】
本発明によれば、構成を簡素化できる上に、万が一故障が発生してもその大半がショートモードでの故障であるため、二重故障にならない限り、正常な動作状態のまま、補助人工心臓ポンプの駆動を継続することができ、高い可用性を得ることができるようになる。
【0022】
また本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置では、前記双方向スイッチ回路が、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにより構成されていてもよい。
【0023】
本発明によれば、双方向スイッチ回路として、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにより実現された半導体スイッチを採用したので、半導体スイッチ自体に、万が一、故障が発生してもその大半がショートモードでの故障であるため、二重故障にならない限り、補助人工心臓ポンプの駆動に影響を与えずに済み、信頼性を大幅に向上させることができるようになる。
【0024】
また本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置では、前記各ポンプ制御部は、当該ポンプ制御部内の故障を検出する検出回路を含み、前記検出回路により前記当該ポンプ制御部内の故障が検出されたとき、前記当該ポンプ制御部から前記駆動信号を前記補助人工心臓ポンプに出力する経路を電気的に遮断することができる。
【0025】
本発明によれば、ポンプ装置を二重化することなく、万が一、重大な故障が生じた場合であっても高い可用性を有する補助人工心臓ポンプ駆動装置を提供できるようになる。
【0026】
また本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置では、前記検出回路は、前記補助人工心臓ポンプ駆動装置に電源を供給する電源ラインの過電流、前記電源ラインの過電圧、及び前記当該ポンプ制御部の周辺温度の少なくとも1つの監視結果を用いて、当該ポンプ制御部内の故障を検出することができる。
【0027】
本発明によれば、想定される故障要因を監視して、万が一、故障が検出されたときに迅速に系の切り換えを行い、信頼性及び可用性の高い補助人工心臓ポンプ駆動装置を提供できるようになる。
【0028】
また本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置では、前記電源ラインの過電流に基づく故障の有無の検出期間をT1、前記電源ラインの過電圧に基づく故障の有無の検出期間をT2、前記周辺温度に基づく故障の有無の検出期間をT3とした場合に、T1<T2<T3であってもよい。
【0029】
本発明によれば、3種類の検出期間のうち過電流の検出期間が最も短くなるように故障判定を行うことで、回避が困難で、より重大な故障要因に対し、迅速に系を切り換えて、可用性を高めることができる。また、3種類の検出期間のうち周辺温度の検出期間が最も長くなるように故障判定を行うことで、故障が発生したときには重大な障害となるもののその変化の周期が長い周辺温度に対する対策については、優先順位を落として、他の故障要因に対して迅速に対応することで、可用性を高めることができるようになる。
【0030】
また本発明は、心臓の血液の流れを補助するための補助人工心臓システムであって、補助人工心臓ポンプと、前記補助人工心臓ポンプを駆動する上記のいずれか記載の補助人工心臓ポンプ駆動装置とを含む補助人工心臓システムに関係する。
【0031】
本発明によれば、ポンプ装置を二重化することなく、万が一、重大な故障が生じた場合であっても高い可用性を有する補助人工心臓システムを提供できるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて詳細に説明する。なお、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を不当に限定するものではない。また以下で説明される構成のすべてが本発明の必須構成要件であるとは限らない。
【0033】
図1に、本発明に係る実施形態における補助人工心臓システムの構成例を示す。
【0034】
本実施形態における補助人工心臓システム(広義にはポンプシステム、モータシステム)100は、補助人工心臓ポンプ(広義にはポンプ、モータ)10と、コントロールユニット20とを含み、補助人工心臓ポンプ10とコントロールユニット20とはケーブル30を介して接続される。
【0035】
補助人工心臓ポンプ10は、心臓の左心室の機能を補助する血液ポンプであり、体内に埋め込まれる。このような補助人工心臓ポンプ10としては、循環させる血液の流れに所定の周期を与える拍動流型の血液ポンプを採用してもよいし、循環させる血液の流れが連続する連続流型の血液ポンプを採用してもよい。
【0036】
コントロールユニット20は、電源PSと補助人工心臓ポンプ駆動装置(広義にはポンプ駆動装置、モータ駆動装置)CONTとを含み、体外に設けられる。電源PSは、AC電源、内蔵バッテリ及び非常用バッテリのいずれかからの電源電圧を、電源ラインVLを介して補助人工心臓ポンプ駆動装置CONTに供給する。補助人工心臓ポンプ駆動装置CONTは、電源PSからの電源電圧が与えられた状態で、補助人工心臓ポンプ10を駆動する駆動電流(広義には駆動信号)を生成する。ケーブル30は、コントロールユニット20からの補助人工心臓ポンプ10を駆動する駆動電流が伝送される信号線を有する。
【0037】
図2に、本実施形態における補助人工心臓ポンプ10の断面図の一例を示す。図2は、補助人工心臓ポンプ10の構成例を示すが、本実施形態が図2の構成の補助人工心臓ポンプに限定されるものではない。
【0038】
補助人工心臓ポンプ10は、円筒形のモータを有する駆動部11と、駆動部11に接続されるポンプ部12とを有している。ポンプ部12は、モータの回転軸を介して駆動されるインペラ13と、このインペラ13を覆うように駆動部11に接続されるポンプケーシング14とを有している。心臓の左心室内の血液が血管(人工血管)及び流入口15を経てポンプケーシング14内に流入すると、インペラ13により流動エネルギーを付与された後、ポンプケーシング14の側面に設けられた流出口16及び血管(人工血管)を経て大動脈に流出するように構成されている。
【0039】
また、補助人工心臓ポンプ10においては、駆動部11とポンプ部12との間にメカニカルシール部17が設けられている。このため、ポンプ部12と駆動部11とが摺動自在に、かつ、良好にシールされることになり、ポンプ部12から駆動部11に血液が洩れることが極力抑制される。その結果、血栓の生成が抑制されるようになり、ポンプ動作の停止やその動作状態の変化が抑制されるようになる。
【0040】
ポンプ部12は、軸流モータの場合よりも大きな血流量が期待できる遠心式のポンプであり、インペラ13を駆動するモータとしてACモータを用いることができる。
【0041】
補助人工心臓ポンプ10が図2の構成を有する場合、図1のコントロールユニット20は、更に、メカニカルシール部の血液の凝固や駆動部11及びモータ部12の発熱を抑えるクールシール液を循環させる手段を有する。この場合、ケーブル30を介してクールシール液の循環経路が形成される。
【0042】
このような補助人工心臓システム100は、補助人工心臓ポンプ10により、常時、血液を循環させる必要があるため、高い信頼性と可用性とが求められている。従って、補助人工心臓ポンプ10の信頼性及び可用性のみならず、コントロールユニット20を構成する補助人工心臓ポンプ駆動装置CONTにも信頼性及び可用性が求められる。そこで、本実施形態は、補助人工心臓ポンプ駆動装置CONTの故障等により重大な障害が生じた場合でも、補助人工心臓ポンプ10のポンプ動作を継続して高い可用性をもたらす補助人工心臓ポンプ駆動装置CONTを提供する。
【0043】
図3に、本実施形態におけるコントロールユニット20の補助人工心臓ポンプ駆動装置CONTの構成例のブロック図を示す。図3において、図1と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0044】
図3において、補助人工心臓ポンプ10が、3相の駆動電流により駆動される3相のACモータを有するものとする。補助人工心臓ポンプ駆動装置CONTは、補助人工心臓ポンプ10の3相(U相、V相、W相)の駆動電流(広義には駆動信号)を生成して補助人工心臓ポンプ10の駆動を制御する。より具体的には、補助人工心臓ポンプ駆動装置CONTは、二重化構成された第1及び第2のポンプ制御部200、300を含み、各ポンプ制御部が、補助人工心臓ポンプ10の3相の駆動電流を生成して補助人工心臓ポンプ10の駆動を制御する。そして、第1のポンプ制御部200が駆動電流を補助人工心臓ポンプ10に出力する出力信号線と、第2のポンプ制御部300が駆動電流を補助人工心臓ポンプ10に出力する出力信号線とが結線され、いずれか一方のポンプ制御部により生成された駆動電流が補助人工心臓ポンプ10に供給されるようになっている。
【0045】
補助人工心臓ポンプ駆動装置CONTは、ポンプ駆動処理回路400を含み、このような第1及び第2のポンプ制御部(広義には第1及び第2のモータ制御部)200、300を制御する。
【0046】
第1のポンプ制御部200は、正常状態において、補助人工心臓ポンプ10の3相の駆動電流を生成して補助人工心臓ポンプ10の駆動を制御するメインの系のポンプ制御部として機能する。これに対して、第2のポンプ制御部300は、第1のポンプ制御部200の故障が検出された故障状態において、補助人工心臓ポンプ10の3相の駆動電流を生成して補助人工心臓ポンプ10の駆動を制御するバックアップの系のポンプ制御部として機能する。
【0047】
第1のポンプ制御部200は、第1の処理回路(第1の検出回路)210、第1のゲートドライバ220、第1のインバータ回路(電力増幅器)230、第1のスイッチ回路240、第1の温度センサ250、第1の電源スイッチLDSW1を含む。
【0048】
第1の処理回路210、第1のゲートドライバ220、第1のインバータ回路230には、電源電圧として、電源ラインVLに供給される電圧が第1の電源スイッチLDSW1を介して供給されるようになっている。また、第1の処理回路210及び第1のスイッチ回路240には第1のポンプ駆動制御信号PCNT1が供給され、これらの回路は、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1により動作制御されるようになっている。
【0049】
第1の処理回路210は、第1のポンプ制御部200内の故障の有無を検出する。より具体的には、第1の処理回路210は、第1のポンプ制御部200に供給される電源ラインVLの電圧VM、電源ラインVLの電流IM、及び第1の温度センサ250のセンサ結果の少なくとも1つを監視した結果に基づいて、第1のポンプ制御部200内の故障の有無を検出する。例えば、第1の処理回路210は、電源ラインVLの電圧VMを監視した結果により、所定の期間、電圧VMが所与の閾値を超えていることが検出されたとき、電源ラインVLの電圧が過電圧であると判断し、第1の処理回路210の故障を検出する。また、例えば、第1の処理回路210は、電源ラインVLの電流IMを監視した結果により、所定の期間、電流IMが所与の閾値を超えていることが検出されたとき、電源ラインVLの電流が過電流であると判断し、第1の処理回路210の故障を検出する。更に、例えば、第1の処理回路210は、第1の温度センサ250のセンサ結果により、所定の期間、第1の温度センサ250により検出された温度が所与の閾値を超えていることが検出されたとき、第1の処理回路210の故障を検出する。
【0050】
このような第1の処理回路210の検出結果は、検出信号FAIL1としてポンプ駆動処理回路400に出力される。ポンプ駆動処理回路400は、第1のポンプ制御部200に対して第1のポンプ駆動制御信号PCNT1を出力して、第1のポンプ制御部200を動作させたり停止させたりして制御することができる。
【0051】
また、第1の処理回路210は、第1のゲートドライバ220に対して、パルス幅変調(Pulse Width Modulation:PWM)信号を生成し、第1のゲートドライバ220に出力することができるようになっている。より具体的には、第1の処理回路210は、補助人工心臓ポンプ10の駆動電流IU(U相の駆動電流)、IV(V相の駆動電流)の振幅及び位相を監視して、出力すべき3相の駆動電流の振幅及び位相をそのパルス幅により制御するPWM信号を生成する。
【0052】
第1のゲートドライバ220は、第1の処理回路210からのPWM信号を受けて、補助人工心臓ポンプ10の駆動電流を増幅するための第1のインバータ回路230のゲート信号を生成する。第1のインバータ回路230は、第1のゲートドライバ220からのゲート信号に基づいて増幅した3相の駆動電流を生成する。第1のインバータ回路230における電力増幅動作時の貫通電流を抑制するために、第1のゲートドライバ220は、PWM信号に基づいて、HレベルからLレベルに変化する立ち下がりタイミング、及びLレベルからHレベルに変化する立ち上がりタイミングが、同一タイミングとならないように、互いに変化タイミングが不一致のゲート信号を生成する。
【0053】
第1のスイッチ回路240は、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1に基づいて、第1のインバータ回路230によって増幅された3相の駆動電流が供給される信号線を、補助人工心臓ポンプ10のモータ巻き線に電気的に接続したり、電気的に遮断したりする。即ち、第1のポンプ制御部200は、3相の駆動電流を補助人工心臓ポンプ10に出力する経路を電気的に遮断する手段を有し、第1の処理回路210内に故障が検出されたときに第1のポンプ駆動制御信号PCNT1により該経路を電気的に遮断する。
【0054】
第1の温度センサ250は、第1のポンプ制御部200の周辺温度を検出する。より具体的には、第1の温度センサ250は、第1のインバータ回路230の周辺温度を検出する。第1の温度センサ250の検出結果は、第1の処理回路210に通知される。
【0055】
第1の電源スイッチLDSW1は、一端が電源ラインVLに電気的に接続され、他端が第1のポンプ制御部200を構成する第1の処理回路210、第1のゲートドライバ220及び第1のインバータ回路230に電気的に接続される。そして、第1のポンプ制御部200を構成する第1の処理回路210、第1のゲートドライバ220及び第1のインバータ回路230の電源電圧として、第1の電源スイッチLDSW1を介して電源ラインVLの電圧が供給される。第1の電源スイッチLDSW1は、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1によりオンオフ制御される。
【0056】
第2のポンプ制御部300は、第2の処理回路(第2の検出回路)310、第2のゲートドライバ320、第2のインバータ回路(電力増幅器)330、第2のスイッチ回路340、第2の温度センサ350、第2の電源スイッチLDSW2を含む。
【0057】
第2の処理回路310、第2のゲートドライバ320、第2のインバータ回路330には、電源電圧として、電源ラインVLに供給される電圧が第2の電源スイッチLDSW2を介して供給されるようになっている。また、第2の処理回路310及び第2のスイッチ回路340には第2のポンプ駆動制御信号PCNT2が供給され、これらの回路は、第2のポンプ駆動制御信号PCNT2により動作制御されるようになっている。
【0058】
第2の処理回路310は、第2のポンプ制御部300内の故障の有無を検出する。より具体的には、第2の処理回路310は、第2のポンプ制御部300に供給される電源ラインVLの電圧VM、電源ラインVLの電流IM、及び第2の温度センサ350のセンサ結果の少なくとも1つを監視した結果に基づいて、第2のポンプ制御部300内の故障の有無を検出する。例えば、第2の処理回路310は、電源ラインVLの電圧VMを監視した結果により、所定の期間、電圧VMが所与の閾値を超えていることが検出されたとき、電源ラインVLの電圧が過電圧であると判断し、第2の処理回路310の故障を検出する。また、例えば、第2の処理回路310は、電源ラインVLの電流IMを監視した結果により、所定の期間、電流IMが所与の閾値を超えていることが検出されたとき、電源ラインVLの電流が過電流であると判断し、第2の処理回路310の故障を検出する。更に、例えば、第2の処理回路310は、第2の温度センサ350のセンサ結果により、所定の期間、第2の温度センサ350により検出された温度が所与の閾値を超えていることが検出されたとき、第2の処理回路310の故障を検出する。
【0059】
このような第2の処理回路310の検出結果は、検出信号FAIL2としてポンプ駆動処理回路400に出力される。ポンプ駆動処理回路400は、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1を出力して、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1を反転させた第2のポンプ駆動制御信号PCNT2により、第2のポンプ制御部300を動作させたり停止させたりして制御することができる。
【0060】
また、第2の処理回路310は、第2のゲートドライバ320に対して、PWM信号を生成し、第2のゲートドライバ320に出力することができるようになっている。より具体的には、第2の処理回路310は、補助人工心臓ポンプ10の駆動電流IU(U相の駆動電流)、IV(V相の駆動電流)の振幅及び位相を監視して、出力すべき3相の駆動電流の振幅及び位相をそのパルス幅により制御するPWM信号を生成する。
【0061】
第2のゲートドライバ320は、第2の処理回路310からのPWM信号を受けて、補助人工心臓ポンプ10の駆動電流を増幅するための第2のインバータ回路330のゲート信号を生成する。第2のインバータ回路330は、第2のゲートドライバ320からのゲート信号に基づいて増幅した3相の駆動電流を生成する。第2のインバータ回路330における電力増幅動作時の貫通電流を抑制するために、第2のゲートドライバ320は、PWM信号に基づいて、HレベルからLレベルに変化する立ち下がりタイミング、及びLレベルからHレベルに変化する立ち上がりタイミングが、同一タイミングとならないように、互いに変化タイミングが不一致のゲート信号を生成する。
【0062】
第2のスイッチ回路340は、第2のポンプ駆動制御信号PCNT2に基づいて、第2のインバータ回路330によって増幅された3相の駆動電流が供給される信号線を、補助人工心臓ポンプ10のモータ巻き線に電気的に接続したり、電気的に遮断したりする。即ち、第2のポンプ制御部300は、3相の駆動電流を補助人工心臓ポンプ10に出力する経路を電気的に遮断する手段を有し、第2の処理回路310内に故障が検出されたときに第2のポンプ駆動制御信号PCNT2により該経路を電気的に遮断する。
【0063】
第2の温度センサ350は、第2のポンプ制御部300の周辺温度を検出する。より具体的には、第2の温度センサ350は、第2のインバータ回路330の周辺温度を検出する。第2の温度センサ350の検出結果は、第2の処理回路310に通知される。
【0064】
第2の電源スイッチLDSW2は、一端が電源ラインVLに電気的に接続され、他端が第2のポンプ制御部300を構成する第2の処理回路310、第2のゲートドライバ320及び第2のインバータ回路330に電気的に接続される。そして、第2のポンプ制御部300を構成する第2の処理回路310、第2のゲートドライバ320及び第2のインバータ回路330の電源電圧として、第2の電源スイッチLDSW2を介して電源ラインVLの電圧が供給される。第2の電源スイッチLDSW2は、第2のポンプ駆動制御信号PCNT2によりオンオフ制御される。
【0065】
第1のポンプ駆動制御信号PCNT1が伝送される信号線はプルアップされており、ポンプ駆動処理回路400がLレベルの第1のポンプ駆動制御信号PCNT1を出力しない限り、第1のポンプ制御部200にはHレベルの第1のポンプ駆動制御信号PCNT1が伝達される。従って、初期状態では、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1がHレベル、第2のポンプ駆動制御信号PCNT2がLレベルとなり、第1の電源スイッチLDSW1がオンとなって第1のポンプ制御部200の各部に電源が供給されて動作し、第2の電源スイッチLDSW2がオフとなって第2のポンプ制御部300の各部の動作が停止される。そして、検出信号FAIL1により、第1のポンプ制御部200の故障が検出されると、ポンプ駆動処理回路400が第1のポンプ駆動制御信号PCNT1をLレベルに設定する。これにより、第2のポンプ駆動制御信号PCNT2がHレベルとなり、第1の電源スイッチLDSW1がオフとなって第1のポンプ制御部200の各部の動作が停止され、第2の電源スイッチLDSW2がオンとなって第2のポンプ制御部300の各部に電源が供給されて動作するようになる。
【0066】
なお、検出信号FAIL1により、第1のポンプ制御部200の故障が検出されると、ポンプ駆動処理回路400は、アラーム状態を外部に通知し、コントロールユニット20(補助人工心臓ポンプ駆動装置CONT)の交換を促す処理を行う。第2のポンプ制御部300は、コントロールユニット20が交換されるまで正常な動作状態のまま、補助人工心臓ポンプの駆動を継続する。更に、万が一、検出信号FAIL2により、第2のポンプ制御部300の故障が検出された場合、ポンプ駆動処理回路400は、例えばポンプ駆動回転数を低下させるなどの処置により、可能な限り補助人工心臓ポンプの駆動を継続させるように動作するようになっている。
【0067】
このように、第1のポンプ制御部200は、第1のポンプ制御部200内において故障が検出されたときに、駆動信号を補助人工心臓ポンプ10に出力する経路を電気的に遮断する手段として、第1のスイッチ回路240を含むことができる。また、第2のポンプ制御部300は、第2のポンプ制御部300内において故障が検出されたときに、駆動信号を補助人工心臓ポンプ10に出力する経路を電気的に遮断する手段として、第2のスイッチ回路340を含むことができる。
【0068】
これにより、第1又は第2のポンプ制御部200、300の故障が生じた場合でも、一方の故障の影響を他方に与えることがないため、正常な動作状態のまま、補助人工心臓ポンプ10の駆動を継続することができるようになる。特に、第1又は第2のポンプ制御部200、300の故障モードに、その出力又は内部ノードがフローティング状態となるオープンモードと、電源ラインと接地ラインとが短絡するショートモードとがある。従って、本実施形態によれば、一方のポンプ制御部(例えば第1のポンプ制御部200)がショートモードで故障した場合、他方のポンプ制御部(例えば第2のポンプ制御部300)の出力線が接地レベルに固定されてしまい、この他方のポンプ制御部(例えば第2のポンプ制御部300)が補助人工心臓ポンプ10の駆動制御を行えなくなる事態を回避できるようになる。
【0069】
更に、第1のポンプ制御部200は、第1のポンプ制御部200内においてショートモード又はオープンモードの故障が検出されたときに、第1のポンプ制御部200への電源供給を停止する手段として、第1の電源スイッチLDSW1を含むことができる。また、第2のポンプ制御部300は、第2のポンプ制御部300内においてショートモード又はオープンモードの故障が検出されたときに、第2のポンプ制御部300への電源供給を停止する手段として、第2の電源スイッチLDSW2を含むことができる。
【0070】
これにより、第1又は第2のポンプ制御部200、300の故障が生じた場合でも、一方の故障の影響を確実に他方に与えないようにして、補助人工心臓ポンプ10の駆動を継続させることで可用性をより一層向上させることができるようになる。この場合も、一方のポンプ制御部(例えば第1のポンプ制御部200)がショートモードで故障したときに、他方のポンプ制御部(例えば第2のポンプ制御部300)の出力線が接地レベルに固定されてしまい、この他方のポンプ制御部(例えば第2のポンプ制御部300)が補助人工心臓ポンプ10の駆動制御を行えなくなる事態を確実に回避できるようになる。
【0071】
次に、このような可用性を高める制御を行う図3の補助人工心臓ポンプ駆動装置CONTの具体的な構成例について説明する。
【0072】
図4に、図3の補助人工心臓ポンプ駆動装置CONTの第1及び第2のインバータ回路230、330、第1及び第2のスイッチ回路240、340、第1及び第2の電源スイッチLDSW1、LDSW2の構成例の回路図を示す。図4において、図3と同一部分には同一符号を付し、適宜説明を省略する。
【0073】
第1の電源スイッチLDSW1は、単一方向スイッチ回路であり、金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor:MOSFET)により構成されている。より具体的には、ドレインが電源ラインVLに接続され、ソースが第1のインバータ回路230の電源ラインに接続されるMOSFETが、第1の電源スイッチLDSW1として機能する。更に、MOSFETのソースには、ダイオード素子のアノード端子、該MOSFETのドレインには、該ダイオード素子のカソード端子が接続される。
【0074】
また、本実施形態では、第1の電源スイッチLDSW1は、ゲートドライバGD1を有し、ゲートドライバGD1は、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1に基づいて、MOSFETにより構成されたスイッチのゲート信号を生成する。より具体的には、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1がHレベルのときMOSFETが導通状態となり、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1がLレベルのときMOSFETが遮断状態となるように、ゲートドライバGD1はMOSFETのゲート信号を生成する。
【0075】
第1のインバータ回路230は、3相の駆動電流の各相に対応して、インバータ回路が設けられている構成を有している。このインバータ回路は、n型(広義には第1導電型)のMOSFETが直列に接続された回路が、接地ラインと第1の電源スイッチLDSW1のMOSFETのソースとの間に挿入されたものである。より具体的には、U相に対応して、ゲートにゲート信号G11が供給されると共にドレインに第1の電源スイッチLDSW1のMOSFETのソースが接続されるMOSFET(Q1)と、MOSFET(Q1)のソースにドレインが接続されると共にゲートにゲート信号G12が供給されソースに接地ラインが接続されるMOSFET(Q2)とを有する。同様に、V相に対応して、ゲートにゲート信号G13が供給されると共にドレインに第1の電源スイッチLDSW1のMOSFETのソースが接続されるMOSFET(Q3)と、MOSFET(Q3)のソースにドレインが接続されると共にゲートにゲート信号G14が供給されソースに接地ラインが接続されるMOSFET(Q4)とを有する。更に、W相に対応して、ゲートにゲート信号G15が供給されると共にドレインに第1の電源スイッチLDSW1のMOSFETのソースが接続されるMOSFET(Q5)と、MOSFET(Q5)のソースにドレインが接続されると共にゲートにゲート信号G16が供給されソースに接地ラインが接続されるMOSFET(Q6)とを有する。第1のインバータ回路230を構成するMOSFET(Q1〜Q6)のそれぞれには、ソースとドレインとの間に、図4に示す方向のダイオード素子が接続される。
【0076】
MOSFET(Q1)のソース及びMOSFET(Q2)のドレインの接続ノードから、U相の駆動電流が取り出される。MOSFET(Q3)のソース及びMOSFET(Q4)のドレインの接続ノードから、V相の駆動電流が取り出される。MOSFET(Q5)のソース及びMOSFET(Q6)のドレインの接続ノードから、W相の駆動電流が取り出される。
【0077】
図5に、図4の第1のインバータ回路230のゲート信号の説明図を示す。図5は、第1のインバータ回路230のMOSFET(Q1、Q2)のゲート信号G11、G12の一例を表す。
【0078】
図5に示すように、第1のゲートドライバ220は、直列に接続されるMOSFETのゲート信号の変化タイミングが一致しないようにゲート信号を生成する。これにより、第1のインバータ回路230は、貫通電流を発生させることなく、ゲート信号G11、G12のパルス幅に応じてU相の駆動信号を増幅することができる。
【0079】
なお、図5は、ゲート信号G11、G12について説明したが、ゲート信号G13、G14により増幅されるV相の駆動電流や、ゲート信号G15、G16により増幅されるW相の駆動電流についても同様である。
【0080】
図4の第1のスイッチ回路240は、3相の駆動電流の各相に対応して設けられた双方向スイッチ回路である。双方向スイッチ回路は、MOSFETにより構成されている。また、第1のスイッチ回路240は、各相の双方向スイッチ回路に対応して設けられたゲートドライバを有し、該ゲートドライバは、双方向スイッチ回路を構成する各MOSFETのゲート信号を生成する。
【0081】
より具体的には、双方向スイッチ回路は、ソース同士が接続された2つのn型のMOSFETを有し、一方のMOSFETのドレインは、第1のインバータ回路230からの駆動電流の出力線に接続され、他方のMOSFETのドレインは、モータ巻き線に接続される。そして、2つのMOSFETのゲートに、ゲートドライバからの共通のゲート信号が供給される。各MOSFETのソースとドレインとの間には、図4に示す方向にダイオード素子が接続される。各双方向スイッチ回路に対応して設けられたゲートドライバは、所与の電源電圧VL1が供給された状態で、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1がHレベルのときに、双方向スイッチ回路を構成するMOSFETが導通するようにゲート信号を生成する。
【0082】
図6に、図4の第1のスイッチ回路240の双方向スイッチ回路の構成例の回路図を示す。図6は、U相の駆動信号に対応して設けられた双方向スイッチ回路の構成例を示すが、他の相の駆動信号に対応して設けられた双方向スイッチ回路も図6と同様の構成を有する。
図7に、図6の双方向スイッチ回路に対応して設けられたゲートドライバの動作説明図を示す。図7は、U相の駆動信号に対応して設けられたゲートドライバの動作説明図を示すが、他の相の駆動信号に対応して設けられたゲートドライバも図7と同様に動作する。
【0083】
第1のポンプ駆動制御信号PCNT1がHレベルのとき、第1のスイッチ回路240の各ゲートドライバは、図7に示すように、MOSFETのゲート電圧がソース電圧より高電位かつMOSFETがオンになるようにゲート信号を生成する。この結果、双方向スイッチ回路では、制御部側がモータ巻き線側より高電位のときは、MOSFETのドレイン、ソース、ダイオード素子D1の方向DIR1(図6参照)に電流が流れ、制御部側がモータ巻き線側より低電位のときは、MOSFETのドレイン、ソース、ダイオード素子D2の方向DIR2(図6参照)に電流が流れる。
【0084】
なお、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1がLレベルのとき、第1のスイッチ回路240の各ゲートドライバは、MOSFETのゲート電圧がソース電圧より低電位となるようにゲート信号を生成することで、双方向スイッチ回路を電気的に遮断することができる。
【0085】
第2の電源スイッチLDSW2は、第1の電源スイッチLDSW1と同様に、単一方向スイッチ回路であり、MOSFETにより構成されている。より具体的には、ドレインが電源ラインVLに接続され、ソースが第2のインバータ回路330の電源ラインに接続されるMOSFETが、第2の電源スイッチLDSW2として機能する。更に、MOSFETのソースには、ダイオード素子のアノード端子、該MOSFETのドレインには、該ダイオード素子のカソード端子が接続される。
【0086】
また、本実施形態では、第2の電源スイッチLDSW2は、ゲートドライバGD2を有し、ゲートドライバGD2は、第2のポンプ駆動制御信号PCNT2に基づいて、MOSFETにより構成されたスイッチのゲート信号を生成する。より具体的には、第2のポンプ駆動制御信号PCNT2がHレベルのときMOSFETが導通状態となり、第2のポンプ駆動制御信号PCNT2がLレベルのときMOSFETが遮断状態となるように、ゲートドライバGD2はMOSFETのゲート信号を生成する。
【0087】
第2のインバータ回路330は、3相の駆動電流の各相に対応して、インバータ回路が設けられている構成を有している。このインバータ回路は、n型のMOSFETが直列に接続された回路が、接地ラインと第2の電源スイッチLDSW2のMOSFETのソースとの間に挿入されたものである。より具体的には、U相に対応して、ゲートにゲート信号G21が供給されると共にドレインに第2の電源スイッチLDSW2のMOSFETのソースが接続されるMOSFET(Q11)と、MOSFET(Q11)のソースにドレインが接続されると共にゲートにゲート信号G22が供給されソースに接地ラインが接続されるMOSFET(Q12)とを有する。同様に、V相に対応して、ゲートにゲート信号G23が供給されると共にドレインに第2の電源スイッチLDSW2のMOSFETのソースが接続されるMOSFET(Q13)と、MOSFET(Q13)のソースにドレインが接続されると共にゲートにゲート信号G24が供給されソースに接地ラインが接続されるMOSFET(Q14)とを有する。更に、W相に対応して、ゲートにゲート信号G25が供給されると共にドレインに第2の電源スイッチLDSW2のMOSFETのソースが接続されるMOSFET(Q15)と、MOSFET(Q15)のソースにドレインが接続されると共にゲートにゲート信号G26が供給されソースに接地ラインが接続されるMOSFET(Q16)とを有する。第2のインバータ回路330を構成するMOSFET(Q11〜Q16)のそれぞれには、ソースとドレインとの間に、図4に示す方向のダイオード素子が接続される。
【0088】
MOSFET(Q11)のソース及びMOSFET(Q12)のドレインの接続ノードから、U相の駆動電流が取り出される。MOSFET(Q13)のソース及びMOSFET(Q14)のドレインの接続ノードから、V相の駆動電流が取り出される。MOSFET(Q15)のソース及びMOSFET(Q16)のドレインの接続ノードから、W相の駆動電流が取り出される。
【0089】
第2のインバータ回路330のゲート信号もまた、第1のインバータ回路230のゲート信号と同様であるため、説明を省略する。
【0090】
図4の第2のスイッチ回路340は、第1のスイッチ回路240と同様に、3相の駆動電流の各相に対応して設けられた双方向スイッチ回路である。双方向スイッチ回路は、MOSFETにより構成されている。また、第2のスイッチ回路340は、各相の双方向スイッチ回路に対応して設けられたゲートドライバを有し、該ゲートドライバは、双方向スイッチ回路を構成する各MOSFETのゲート信号を生成する。
【0091】
より具体的には、双方向スイッチ回路は、ソース同士が接続された2つのn型のMOSFETを有し、一方のMOSFETのドレインは、第2のインバータ回路330からの駆動電流の出力線に接続され、他方のMOSFETのドレインは、モータ巻き線に接続される。そして、2つのMOSFETのゲートに、ゲートドライバからの共通のゲート信号が供給される。各MOSFETのソースとドレインとの間には、図4に示す方向にダイオード素子が接続される。各双方向スイッチ回路に対応して設けられたゲートドライバは、所与の電源電圧VL1が供給された状態で、第2のポンプ駆動制御信号PCNT2がHレベルのときに、双方向スイッチ回路を構成するMOSFETが導通するようにゲート信号を生成する。
【0092】
第2のスイッチ回路340の双方向スイッチ回路の構成は、第1のスイッチ回路240の双方向スイッチ回路の構成と同様であるため、説明は省略する。
【0093】
従って、第2のポンプ駆動制御信号PCNT2がHレベルのとき、第2のスイッチ回路340の各ゲートドライバは、MOSFETのゲート電圧がソース電圧より高電位となるようにゲート信号を生成する。この結果、双方向スイッチ回路では、第1のスイッチ回路240の双方向スイッチ回路と同様に、図6に示すように、制御部側がモータ巻き線側より高電位のときは、MOSFETのドレイン、ソース、ダイオード素子D1の方向DIR1(図6参照)に電流が流れ、制御部側がモータ巻き線側より低電位のときは、MOSFETのドレイン、ソース、ダイオード素子D2の方向DIR2(図6参照)に電流が流れる。
【0094】
なお、第2のポンプ駆動制御信号PCNT2がLレベルのとき、第2のスイッチ回路340の各ゲートドライバは、MOSFETのゲート電圧がソース電圧より低電位となるようにゲート信号を生成することで、双方向スイッチ回路を電気的に遮断することができる。
【0095】
図8に、図4の第1及び第2のスイッチ回路240、340、第1及び第2の電源スイッチLDSW1、LDSW2の制御例の説明図を示す。
【0096】
図8に示す制御内容は、ポンプ駆動処理回路400が出力する第1のポンプ駆動制御信号PCNT1により実現される。
【0097】
即ち、検出信号FAIL1により第1の処理回路210によって第1のポンプ制御部200が正常状態であることが検出されたとき、ポンプ駆動処理回路400は、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1により、第1のポンプ制御部200の第1の電源スイッチLDSW1を導通状態にして電源ラインVLからの電源電圧を第1のポンプ制御部200に供給すると共に、第1のスイッチ回路240が、第1のインバータ回路230により増幅した駆動信号をそのまま補助人工心臓ポンプ10のモータ巻き線に出力するように制御する。このとき、ポンプ駆動処理回路400は、第2のポンプ制御部300の第2の電源スイッチLDSW2を遮断状態にして電源ラインVLからの電源電圧を第2のポンプ制御部300に供給しないようにすると共に、第2のスイッチ回路340は、駆動信号を出力する信号線と補助人工心臓ポンプ10のモータ巻き線とを電気的に遮断する。
【0098】
これに対して、検出信号FAIL1により第1の処理回路210によって第1のポンプ制御部200が故障状態であることが検出されたとき、ポンプ駆動処理回路400は、第1のポンプ駆動制御信号PCNT1をLレベルに設定することで第2のポンプ駆動制御信号PCNT2がHレベルに設定する。従って、第2のポンプ制御部300の第2の電源スイッチLDSW2を導通状態にして電源ラインVLからの電源電圧が第2のポンプ制御部300に供給されると共に、第2のスイッチ回路340は、第2のインバータ回路330により増幅した駆動信号をそのまま補助人工心臓ポンプ10のモータ巻き線に出力する。このとき、第1のポンプ制御部200の第1の電源スイッチLDSW1を遮断状態にして電源ラインVLからの電源電圧が第1のポンプ制御部200に供給されないようにすると共に、第1のスイッチ回路240は、駆動信号を出力する信号線と補助人工心臓ポンプ10のモータ巻き線とを電気的に遮断する。
【0099】
ところで、本実施形態のように、信号の電力増幅機能を有する第1及び第2のインバータ回路230、330は、過電圧や過電流により損傷を受けやすい。特に、インバータ回路で発生する故障のモードの多くはショートモードとなり、モータ巻き線や電源、接地ラインと短絡された状態となり、バックアップ側のポンプ制御部に接続されたとしても、故障状態が解消されない状態が維持されてしまう。しかしながら、上記のように、当該制御部(特にインバータ回路)で故障が発生したときに、それぞれの出力を遮断するスイッチ回路や、電源を供給する手段を遮断する電源スイッチを設けることで、故障した系のポンプ制御部をシステムと切り離すことができるので、バックアップ側の系のインバータ回路を用いて継続して補助人工心臓ポンプ10を駆動できるようになり、高い可用性を持たせることが可能となる。
【0100】
しかも、電源スイッチやスイッチ回路として、MOSFETにより実現された半導体スイッチを採用したので、半導体スイッチ自体に、万が一、故障が発生してもその大半がショートモードでの故障であるため、二重故障にならない限りモータ駆動に影響を与えずに済み、信頼性を大幅に向上させることができるようになる。
【0101】
上記のような第1及び第2のポンプ制御部200、300のそれぞれの故障を検出する第1及び第2の処理回路210、310は、以下に述べる故障の検出処理を行うことが望ましい。
【0102】
本実施形態における故障の検出処理を行う第1のポンプ制御部200の第1の処理回路210又は第2のポンプ制御部300の第2の処理回路310の機能は、ハードウェアにより実現されてもよいし、ソフトウェアにより実現されてもよい。以下では、第1又は第2の処理回路210、310の機能が、ソフトウェア処理により実現されるものとする。
【0103】
図9に、本実施形態における第1のポンプ制御部200の第1の処理回路210のハードウェア構成例のブロック図を示す。図9は、第1の処理回路210の構成例を表すが、第2のポンプ制御部300の第2の処理回路310も図9と同様の構成を有することができる。
【0104】
第1の処理回路210は、CPU500、I/F回路510、読み出し専用メモリ(Read Only Memory:ROM)520、ランダムアクセスメモリ(Random Access Memory:RAM)530、バス540を有し、バス540を介して、CPU500、I/F回路510、ROM520、RAM530は電気的に接続されている。
【0105】
例えばROM520又はRAM530には、第1の処理回路210の機能を実現するプログラムが記憶される。CPU500は、ROM520又はRAM530に記憶されたプログラムを読み出し、該プログラムに対応した処理を実行することで、第1の処理回路210の機能をソフトウェア処理で実現できる。即ち、ROM520又はRAM530に記憶されたプログラムを読み込んで該プログラムに対応した処理を行うCPU500により、以下の処理が実現される。なお、RAM530は、CPU500による処理の作業エリアとして用いられたり、I/F回路510やROM520のバッファエリアとして用いられたりする。I/F回路510は、ポンプ駆動処理回路400との間の入出力インタフェース処理を行う。
【0106】
図10に、図9の第1の処理回路210の処理例のフロー図を示す。例えば図9のROM520又はRAM530には、図10に示す処理を実現するためのプログラムが格納されており、CPU500がROM520又はRAM530に格納されたプログラムを読み出して該プログラムに対応した処理を実行することで、図10に示す処理をソフトウェア処理により実現できる。
【0107】
第1の処理回路210は、第1の電源スイッチLDSW1を介して第1のポンプ制御部200に供給される電源ラインVLの電流IMを監視しており、所与の過電流検出タイミングで、電流IMが電源ラインVLの過電流か否かを判別する(ステップS10)。
【0108】
ステップS10において、電源ラインVLが過電流ではないと判別されたとき(ステップS10:N)、第1の処理回路210は、第1の電源スイッチLDSW1を介して第1のポンプ制御部200に供給される電源ラインVLの電圧VMを監視しており、所与の過電圧検出タイミングで、電圧VMが電源ラインVLの過電圧か否かを判別する(ステップS12)。
【0109】
ステップS12において、電源ラインVLが過電圧ではないと判別されたとき(ステップS12:N)、第1の処理回路210は、所与の温度検出タイミングで、第1の温度センサ250のセンサ結果に基づいて、第1のインバータ回路230の周辺温度が所与の閾値温度TP以上か否かを判別する(ステップS14)。
【0110】
ステップS14において、第1のインバータ回路230の周辺温度が閾値温度TP以上ではないと判別されたとき(ステップS14:N)、第1の処理回路210は、ステップS10に戻って、再び故障要因となる各要素の監視を継続する。
【0111】
ステップS10において、過電流検出タイミングにおいて、電源ラインVLの過電流が検出されたとき(ステップS10:Y)、第1の処理回路210は、所与の検出期間T1の経過を待つためにステップS10に戻って再び電源ラインVLの過電流の有無を検出する(ステップS16:N)。そのため、過電流検出タイミングから検出期間T1までの間に、第1の処理回路210が、電源ラインVLの過電流を検出しなくなると、別の故障要因の検出を行うことになる。一方、過電流検出タイミングから検出期間T1経過した後も引き続き電源ラインVLの過電流が検出されると、第1の処理回路210は、故障が検出されたと判断して、検出信号FAIL1によりポンプ駆動処理回路400に対して故障の発生を通知し(ステップS18)、一連の処理を終了する(エンド)。
【0112】
これにより、ノイズ等に起因した電源ラインVLの過電流の誤検出や、継続動作に支障がない程度の電源ラインVLの過電流による故障検出を排除することができるようになり、高い可用性を維持できるようになる。
【0113】
ステップS12において、過電圧検出タイミングにおいて、電源ラインVLの過電圧が検出されたとき(ステップS12:Y)、第1の処理回路210は、所与の検出期間T2の経過を待つためにステップS10に戻って再び電源ラインVLの過電流の有無を検出する(ステップS20:N)。そのため、過電圧検出タイミングから検出期間T2までの間に、第1の処理回路210が、電源ラインVLの過電圧を検出しなくなると、別の故障要因の検出を行うことになる。一方、過電圧検出タイミングから検出期間T2経過した後も引き続き電源ラインVLの過電圧が検出されると、第1の処理回路210は、故障が検出されたと判断して、検出信号FAIL1によりポンプ駆動処理回路400に対して故障の発生を通知し(ステップS22)、一連の処理を終了する(エンド)。
【0114】
これにより、ノイズ等に起因した電源ラインVLの過電圧の誤検出や、継続動作に支障がない程度の電源ラインVLの過電圧による故障検出を排除することができるようになり、高い可用性を維持できるようになる。しかも、過電圧検出タイミングにおいて電源ラインVLの過電圧を検出した後、検出期間T2を経過するまでの間に、電源ラインVLの過電流を検出できるため、過電圧よりも重大な故障の要因となる過電流に対して迅速に系を切り換えることができるようになる。
【0115】
ステップS14において、温度検出タイミングにおいて、第1のインバータ回路230の周辺温度が閾値温度TP以上であることが検出されたとき(ステップS14:Y)、第1の処理回路210は、所与の検出期間T3の経過を待つために再び電源ラインVLの過電流の有無を検出する(ステップS24:N)。そのため、温度検出タイミングから検出期間T3までの間に、第1の処理回路210が、第1のインバータ回路230の周辺温度が閾値温度TP以上であることを検出しなくなると、別の故障要因の検出を行うことになる。一方、温度検出タイミングから検出期間T3経過した後も引き続き第1のインバータ回路230の周辺温度が閾値温度TP以上であることが検出されると、第1の処理回路210は、故障が検出されたと判断して、検出信号FAIL1によりポンプ駆動処理回路400に対して故障の発生を通知し(ステップS26)、一連の処理を終了する(エンド)。
【0116】
これにより、ノイズ等に起因した第1のインバータ回路230の周辺温度の誤検出や、継続動作に支障がない程度の温度変化による故障検出を排除することができるようになり、高い可用性を維持できるようになる。しかも、温度検出タイミングにおいて第1のインバータ回路230の周辺温度が閾値温度TP以上であることを検出した後、検出期間T3を経過するまでの間に、電源ラインVLの過電流や過電圧を検出できるため、温度よりも重大な故障の要因となる過電流や過電圧に対して、迅速に系を切り換えることができるようになる。
【0117】
図11に、図10の検出期間T1、T2、T3の説明図を示す。図11は、各検出期間の検出開始タイミングを揃えて、検出器間の違いを説明するために表した図である。
【0118】
図10において、過電流検出タイミングを検出開始タイミングとして、ステップS18において故障を検出する検出判定タイミングまでの期間は、上述のようにT1であり、電源ラインVLの過電流に基づく故障の有無の検出期間に相当する。同様に、過電圧検出タイミングを検出開始タイミングとして、ステップS22において故障を検出する検出判定タイミングまでの期間は、上述のようにT2であり、電源ラインVLの過電圧に基づく故障の有無の検出期間に相当する。更に、温度検出タイミングを検出開始タイミングとして、ステップS26において故障を検出する検出判定タイミングまでの期間は、上述のようにT3であり、第1のインバータ回路230(広義には第1のポンプ制御部200)の周辺温度に基づく故障の有無の検出期間に相当する。
【0119】
このとき、図11に示すように、0<T1<T2<T3であることが望ましい。即ち、3種類の検出期間のうち過電流の検出期間が最も短くなるように故障判定を行うことで、回避が困難で、より重大な故障要因に対し、迅速に系を切り換えて、可用性を高めることができる。また、3種類の検出期間のうち周辺温度の検出期間が最も長くなるように故障判定を行うことで、故障が発生したときには重大な障害となるもののその変化の周期が長い周辺温度に対する対策については、優先順位を落として、他の故障要因に対して迅速に対応することで、可用性を高めることができるようになる。
【0120】
図9〜図11では第1の処理回路210について説明したが、第2の処理回路310も第1の処理回路210と同様の構成で、同様の処理を行うことができる。
【0121】
〔変形例〕
本実施形態では、補助人工心臓システムにおける補助人工心臓ポンプを駆動する補助人工心臓ポンプ駆動装置として、高い信頼性及び可用性をもたらすものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、高い信頼性及び可用性が必要とされるモータ駆動装置(ポンプ駆動装置)に、上記の実施形態における第1及び第2のポンプ制御部200、300とポンプ駆動処理回路400とを内蔵してもよい。
【0122】
この場合、モータ(ポンプ)を駆動するモータ駆動装置(ポンプ駆動装置)は、モータの駆動信号を出力してモータを制御する各モータ制御部が二重化構成された第1及び第2のモータ制御部を含み、各モータ制御部は、当該モータ制御部内において故障が検出されたときに、上記の駆動信号をモータに出力する経路を電気的に遮断する手段を有するということができる。
【0123】
また、上記のモータ駆動装置において、各モータ制御部は、当該モータ制御部内において故障が検出されたときに、当該モータ制御部への電源供給を停止する手段を有することができる。
【0124】
また、上記のモータ駆動装置において、電源供給を停止する手段は、モータに電源を供給する電源ラインに接続される単一方向スイッチ回路であってもよい。
【0125】
また、上記のモータ駆動装置において、単一方向スイッチ回路が、MOSFETにより構成されていてもよい。
【0126】
また、上記のモータ駆動装置において、各モータ制御部は、上記の駆動信号の電力を増幅する電力増幅器と、この電力増幅器の出力とモータとの間に設けられた双方向スイッチ回路とを含み、第1のモータ制御部が正常状態のとき、第1のモータ制御部の双方向スイッチ回路が導通状態、第2のモータ制御部の双方向スイッチ回路が遮断状態に設定され、第1のモータ制御部が故障状態のとき、第1のモータ制御部の双方向スイッチ回路が遮断状態、第2のモータ制御部の双方向スイッチ回路が導通状態に設定されてもよい。
【0127】
また、上記のモータ駆動装置において、上記の電力増幅器は、インバータ回路であってもよい。
【0128】
また、上記のモータ駆動装置において、双方向スイッチ回路が、MOSFETにより構成されていてもよい。
【0129】
また、上記のモータ駆動装置において、各モータ制御部は、当該モータ制御部内の故障を検出する検出回路を含み、この検出回路により当該モータ制御部内の故障が検出されたとき、当該モータ制御部からモータの駆動信号をモータに出力する経路を電気的に遮断することができる。
【0130】
また、上記のモータ駆動装置において、上記の検出回路は、モータ駆動装置に電源を供給する電源ラインの過電流、この電源ラインの過電圧、及び当該モータ制御部の周辺温度の少なくとも1つの監視結果を用いて、当該ポンプ制御部内の故障を検出するができる。
【0131】
また、上記のモータ駆動装置において、上記の電源ラインの過電流に基づく故障の有無の検出期間をT1、上記の電源ラインの過電圧に基づく故障の有無の検出期間をT2、上記の周辺温度に基づく故障の有無の検出期間をT3とした場合に、T1<T2<T3であることが望ましい。
【0132】
更に、本発明に係るモータシステムは、モータと、このモータを駆動する上記のいずれか記載のモータ駆動装置を含んでもよい。
【0133】
以上、本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置及び補助人工心臓システム(モータ駆動装置及びモータシステム)を上記の実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0134】
(1)上記の実施形態又はその変形例では、図2に示す構成の補助人工心臓ポンプ(モータを内蔵したポンプ)を例に説明したが、本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置及び補助人工心臓システム(モータ駆動装置及びモータシステム)は補助人工心臓ポンプ(ポンプ)の構成に限定されるものではない。
【0135】
(2)上記の実施形態又はその変形例では、補助人工心臓ポンプ等のポンプが3相の駆動信号により駆動されるACモータであるものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置により駆動される補助人工心臓ポンプ(本発明に係るモータ駆動装置により駆動されるモータ)が、例えば3相以外の駆動信号により駆動されるモータを有するものや、DCモータを有するものであってもよい。
【0136】
(3)上記の実施形態又はその変形例では、3種類の故障要因に基づいて故障を検出するものとして説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。たとえは、上記の3種類の故障要因の少なくとも1つに基づいて故障を検出するようにしてもよい、上記の3種類の故障要因に他の故障要因を加えた4種類以上の故障要因に基づいて故障を検出するようにしてもよい。
【0137】
(4)上記の実施形態又はその変形例において、本発明を、補助人工心臓ポンプ駆動装置及び補助人工心臓システム(モータ駆動装置及びモータシステム)として説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、本発明に係る補助人工心臓ポンプ駆動装置(モータ駆動装置)の駆動方法や故障検出方法や、本発明を実現する該駆動方法や検出方法の処理手順が記述されたプログラムや、該プログラムが記録された記録媒体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0138】
【図1】本発明に係る実施形態における補助人工心臓システムの構成例を示す図。
【図2】本実施形態における補助人工心臓ポンプの断面図の一例を示す図。
【図3】本実施形態におけるコントロールユニットの補助人工心臓ポンプ駆動装置の構成例のブロック図。
【図4】図3の補助人工心臓ポンプ駆動装置の第1及び第2のインバータ回路、第1及び第2のスイッチ回路、第1及び第2の電源スイッチの構成例の回路図。
【図5】図4の第1のインバータ回路のゲート信号の説明図。
【図6】図4の第1のスイッチ回路の双方向スイッチ回路の構成例の回路図。
【図7】図6の双方向スイッチ回路に対応して設けられたゲートドライバの動作説明図。
【図8】図4の第1及び第2のスイッチ回路、第1及び第2の電源スイッチの制御例の説明図。
【図9】本実施形態における第1のポンプ制御部の第1の処理回路のハードウェア構成例のブロック図。
【図10】図9の第1の処理回路の処理例のフロー図。
【図11】図10の検出期間の説明図。
【符号の説明】
【0139】
10…補助人工心臓ポンプ、 11…駆動部、 12…ポンプ部、 13…インペラ、
14…ポンプケーシング、 15…流入口、 16…流出口、
17…メカニカルシール部、 20…コントロールユニット、 30…ケーブル、
100…補助人工心臓システム、 200…第1のポンプ制御部、
210…第1の処理回路、 220…第1のゲートドライバ、
230…第1のインバータ回路、 240…第1のスイッチ回路、
250…第1の温度センサ、 300…第2のポンプ制御部、
310…第2の処理回路、 320…第2のゲートドライバ、
330…第2のインバータ回路、 340…第2のスイッチ回路、
350…第2の温度センサ、 400…ポンプ駆動処理回路、 500…CPU、
510…I/F回路、 520…ROM、 530…RAM、 540…バス、
CONT…補助人工心臓ポンプ駆動装置、 FAIL1,FAIL2…検出信号、
GD1,GD2…ゲートドライバ、 IM,IM…電流、
LDSW1…第1の電源スイッチ、 LDSW2…第2の電源スイッチ、
PCNT1…第1のポンプ駆動制御信号、 PCNT2…第2のポンプ駆動制御信号、
PS…電源、 VM,VM…電圧

【特許請求の範囲】
【請求項1】
補助人工心臓ポンプを駆動する補助人工心臓ポンプ駆動装置であって、
前記補助人工心臓ポンプの駆動信号を出力して前記補助人工心臓ポンプを制御する各ポンプ制御部が二重化構成された第1及び第2のポンプ制御部を含み、
前記各ポンプ制御部は、
当該ポンプ制御部内において故障が検出されたときに、前記駆動信号を前記補助人工心臓ポンプに出力する経路を電気的に遮断する手段を有することを特徴とする補助人工心臓ポンプ駆動装置。
【請求項2】
請求項1において、
前記各ポンプ制御部は、
当該ポンプ制御部内において故障が検出されたときに、当該ポンプ制御部への電源供給を停止する手段を有することを特徴とする補助人工心臓ポンプ駆動装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記電源供給を停止する手段は、
前記補助人工心臓ポンプ駆動装置に電源を供給する電源ラインに接続される単一方向スイッチ回路であることを特徴とする補助人工心臓ポンプ駆動装置。
【請求項4】
請求項3において、
前記単一方向スイッチ回路が、
金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにより構成されていることを特徴とする補助人工心臓ポンプ駆動装置。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかにおいて、
前記各ポンプ制御部は、
前記駆動信号の電力を増幅する電力増幅器と、
前記電力増幅器の出力と前記補助人工心臓ポンプとの間に設けられた双方向スイッチ回路とを含み、
前記第1のポンプ制御部が正常状態のとき、前記第1のポンプ制御部の双方向スイッチ回路が導通状態、前記第2のポンプ制御部の双方向スイッチ回路が遮断状態に設定され、
前記第1のポンプ制御部が故障状態のとき、前記第1のポンプ制御部の双方向スイッチ回路が遮断状態、前記第2のポンプ制御部の双方向スイッチ回路が導通状態に設定されることを特徴とする補助人工心臓ポンプ駆動装置。
【請求項6】
請求項5において、
前記電力増幅器は、
インバータ回路であることを特徴とする補助人工心臓ポンプ駆動装置。
【請求項7】
請求項5又は6において、
前記双方向スイッチ回路が、
金属酸化膜半導体電界効果トランジスタにより構成されていることを特徴とする補助人工心臓ポンプ駆動装置。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかにおいて、
前記各ポンプ制御部は、
当該ポンプ制御部内の故障を検出する検出回路を含み、
前記検出回路により前記当該ポンプ制御部内の故障が検出されたとき、前記当該ポンプ制御部から前記駆動信号を前記補助人工心臓ポンプに出力する経路を電気的に遮断することを特徴とする補助人工心臓ポンプ駆動装置。
【請求項9】
請求項8において、
前記検出回路は、
前記補助人工心臓ポンプ駆動装置に電源を供給する電源ラインの過電流、前記電源ラインの過電圧、及び前記当該ポンプ制御部の周辺温度の少なくとも1つの監視結果を用いて、当該ポンプ制御部内の故障を検出することを特徴とする補助人工心臓ポンプ駆動装置。
【請求項10】
請求項9において、
前記電源ラインの過電流に基づく故障の有無の検出期間をT1、前記電源ラインの過電圧に基づく故障の有無の検出期間をT2、前記周辺温度に基づく故障の有無の検出期間をT3とした場合に、T1<T2<T3であることを特徴とする補助人工心臓ポンプ駆動装置。
【請求項11】
心臓の血液の流れを補助するための補助人工心臓システムであって、
補助人工心臓ポンプと、
前記補助人工心臓ポンプを駆動する請求項1乃至10のいずれか記載の補助人工心臓ポンプ駆動装置とを含むことを特徴とする補助人工心臓システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2009−226121(P2009−226121A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77953(P2008−77953)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(392000796)株式会社サンメディカル技術研究所 (9)
【Fターム(参考)】