補強ファンブレード及び製造方法
【課題】ブレードの耐衝撃性を高める。
【解決手段】ファンブレードは、複数の繊維複合材料層及び繊維複合材料層の1つと接合部で接合する1以上の高延性繊維複合材料ストリップ20,22,24とを備える。ファンブレードを製造する方法は、複数の繊維複合材料層を接合し、1以上の高延性繊維複合材料ストリップを繊維複合材料層の1つと接合する工程を含む。高延性繊維複合材料ストリップの端部は繊維複合材料層の端部と接合部で当接する。
【解決手段】ファンブレードは、複数の繊維複合材料層及び繊維複合材料層の1つと接合部で接合する1以上の高延性繊維複合材料ストリップ20,22,24とを備える。ファンブレードを製造する方法は、複数の繊維複合材料層を接合し、1以上の高延性繊維複合材料ストリップを繊維複合材料層の1つと接合する工程を含む。高延性繊維複合材料ストリップの端部は繊維複合材料層の端部と接合部で当接する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はファンブレードに関し、特に高延性繊維複合材料で補強されたファンブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
ジェットエンジン用途に用いられるファンブレードは、鳥が吸い込まれた場合などの異物の衝突による損傷を受けやすい。グラファイト繊維補強複合材料製のブレードは、全体として比強度と比剛性が高いので魅力的である。しかし、グラファイト複合材料は、延性が低いため、異物衝突時に脆性破壊及び離層を特に起こしやすい。ブレードの前縁、後縁及び先端は特に損傷を受けやすいが、それはこれらの部位が通常厚さが薄いことと、周知の通り積層複合材料は自由縁が離層しやすいことによる。さらに、航空機の速度に比して回転速度が高いこと及びブレードの形状のため、吸い込まれた異物はブレードの前縁付近にぶつかる。複合材料の負圧面及び正圧面付近の材料は、こうした事象に通常伴う局所的な曲げ変形のため最も破壊しやすい。
【0003】
衝突による損傷を防御するために金属ガードを複合材料ブレードに接合することが知られている。しかし、こうした材料は密度が高いため、用途が限られる。さらに、局所的に又は広範に翼形部厚さを増すことによって、ブレードの耐衝撃性を高めることができる。しかし、ブレードを厚くすると、空力的にも重量の上でも不利益が生じる。
【特許文献1】米国特許第4343593号明細書
【特許文献2】米国特許第4471020号明細書
【特許文献3】米国特許第4810167号明細書
【特許文献4】米国特許第4971641号明細書
【特許文献5】米国特許第5013216号明細書
【特許文献6】米国特許第5018271号明細書
【特許文献7】米国特許第5049036号明細書
【特許文献8】米国特許第5299914号明細書
【特許文献9】米国特許第5340280号明細書
【特許文献10】米国特許第5385978号明細書
【特許文献11】米国特許第5490764号明細書
【特許文献12】米国特許第5580217号明細書
【特許文献13】米国特許第5628622号明細書
【特許文献14】米国特許第5634771号明細書
【特許文献15】米国特許第5655883号明細書
【特許文献16】米国特許第5672417号明細書
【特許文献17】米国特許第5720597号明細書
【特許文献18】米国特許第5785498号明細書
【特許文献19】米国特許第5843354号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2003/0129061号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様では、複数の繊維複合材料層と該繊維複合材料層の1つと接合部で接合する1以上の高延性繊維複合材料ストリップとを備えるファンブレードが提供される。
【0005】
本発明の別の態様では、ファンブレードの製造方法が提供される。ファンブレードの製造方法は、複数の繊維複合材料層を接合し、1以上の高延性繊維複合材料ストリップを繊維複合材料層の1つに接合する工程を含む。高延性繊維複合材料ストリップの端部は、繊維複合材料層の端部と接合部で当接する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ファンブレードの例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【図7】補強材の配置を示す本発明の実施形態のファンブレードの断面図である。
【図8】補強材の配置を示す本発明の実施形態のファンブレードの断面図である。
【図9】補強材の配置を示す本発明の実施形態のファンブレードの断面図である。
【図10】補強材の配置を示す本発明の実施形態のファンブレードの断面図である。
【図11】本発明の別の実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照するが、複数の図面において同じ構成要素には同じ番号を付してある。
【0008】
本発明の実施形態は補強された繊維複合材料ファンブレードに関する。このようなファンブレードは、ジェットエンジン、タービンなどを始めとする様々な用途に使用することができる。繊維複合材料は、任意の(金属又は非金属)繊維フィラメントを任意の(金属又は非金属)マトリックスバインダーに埋設した材料とすることができる。本発明の一実施形態では、ファンブレードの大部分は、個別の繊維複合材料単層のレイアップである。一実施形態では、繊維複合材料は、グラファイト繊維フィラメントをエポキシ(例えば、エポキシ樹脂)マトリックスバインダーに埋設して構成され、得られる複合材料層の弾性率は124110〜165480メガパスカル(MPa)、引張伸びは1.3〜1.5%である(両方とも繊維と平行に測定した)。マトリックス樹脂の他の選択肢としては、ビスマレイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(アリールスルホン)、ポリエーテルスルホン、シアネートエステル及びこれら組合せがあるが、これらに限定されない。一実施形態では、マトリックスバインダーはゴム粒子などの強化材料を含む。
【0009】
繊維複合材料ファンブレードを高延性繊維複合材料で補強する。一実施形態では、高延性繊維複合材料の弾性率は約13790〜96530MPa、好ましくは約41370〜62055MPaである。高延性繊維複合材料の引張伸びは約1.75%以上、好ましくは約3%以上でなければならない。高延性繊維複合材料として、例えばSガラス、アラミド、延伸鎖ポリエチレン及びポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)(BPO)がある。
【0010】
図1は本発明の一実施形態のファンブレード10の斜視図である。ファンブレード10は前縁12及び後縁14を有する。ファンブレードはさらに、前縁と後縁の間に延在する第一側面16及び第二側面18を有する。ガードやコーティングなどの追加の構成要素を第一側面16及び第二側面18に付与することができる(図11を参照して詳述する)。当技術分野で公知の通り、ファンブレード10の大部分は、前縁12と後縁14の間に延在する複数の繊維複合材料層(例えば、炭素繊維層)から製造される。繊維複合材料層は、翼弦方向に前縁12から後縁14まで、翼幅方向に根元11から先端13まで延在する。
【0011】
ファンブレード10を、損傷しやすい部位について高延性繊維複合材料ストリップで補強する。通常その部位はブレードの前縁、先端及び後縁であり、ブレードの正圧面及び負圧面に向かって広がっている。高延性繊維複合材料ストリップはファンブレード10が破壊する前に大きく変形するのを可能にし、また結果として負荷がより広い領域に分布することになり、局所的な損傷を起こりにくくする。
【0012】
図2はファンブレード10の前縁12の断面図である。多数の高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24を用いて前縁を補強する。ストリップは前縁12から後縁14に向かって延在し、側面16及び18の外側表面から内側へ延在する。繊維複合材料の断面26は前縁12に露出したままである。高延性繊維複合材料ストリップは、繊維が異なる配向で並んでいる。高延性繊維複合材料ストリップ20は、繊維がブレード10の翼幅方向に平行な方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ22は、繊維がブレード10の翼幅方向に対して45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ24は、繊維がブレード10の翼幅方向に対して−45°の方向に配向されている。
【0013】
図3は、高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24に相対する繊維複合材料層30を示す。前縁12から離れた高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24の端部をずらして配置する。すなわち、側面16及び18の表面から位置が離れるにつれて、高延性繊維複合材料ストリップのそれぞれの長さが短くなる。一実施形態では、隣接する高延性繊維複合材料ストリップ間の長さの違いdは、約0.1インチ以上である。あるいは、違いdはストリップ厚さの関数として表すことができ、一実施形態ではストリップ厚さの15倍以上である。これにより、高延性繊維複合材料ストリップがテーパー状になり、順応領域はファンブレードの正圧面及び負圧面の近くの方が中心部よりも長くなる。
【0014】
高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24は、繊維複合材料層30と接合部で当接する。接合部は突き合わせ接合又は部分的な重なりとすることができる。高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24は、レイアップ工程中にブレード10に組み込むことができ、レイアップ工程中に繊維複合材料層と高延性繊維複合材料を接着剤で結合するか同時硬化する。ファンブレード10は、内部から外側へ第一側面16及び第二側面18に向かって作製する。繊維複合材料層30は、接着剤又は同時硬化などの方法を用いて接合する。補強位置に達したら、接着剤又は同時硬化などの方法を用いて、高延性繊維複合材料のストリップを繊維複合材料層に接合する。
【0015】
図4は別の実施形態のファンブレード10の前縁12の断面図である。図4の実施形態では、高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24が、前縁12に巻き付いて前縁を覆う。高延性繊維複合材料ストリップ20の繊維はブレード10の翼幅方向に平行な方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ22の繊維はブレード10の翼幅方向に対して45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ24の繊維はブレード10の翼幅方向に対して−45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24は、図3に関連して説明したのと同様に、繊維複合材料層と接合部で当接する。
【0016】
図5は他の実施形態のファンブレード10の前縁12の断面図である。図5の実施形態では、高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24の端部を、隣接する高延性繊維複合材料ストリップの長さが異なるが、その長さは側面16及び18の表面から位置が離れるにつれて減少しないように、ずらして配置する。高延性繊維複合材料ストリップ20の繊維はブレード10の翼幅方向に平行な方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ22の繊維はブレード10の翼幅方向に対して45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ24の繊維はブレード10の翼幅方向に対して−45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24は、図3に関連して説明したのと同様に、繊維複合材料層と接合部で当接する。
【0017】
図6は他の実施形態のファンブレード10の前縁12の断面図である。図6の実施形態は図5の実施形態と類似するが、選択した繊維複合材料層だけを、高延性繊維複合材料ストリップ22に置き換える。したがって、図2〜図5の密接した高延性繊維複合材料ストリップではなく、繊維複合材料層が高延性繊維複合材料ストリップ22の間に介在する。高延性繊維複合材料ストリップ22の繊維はブレード10の翼幅方向に対して45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ22は、図3に関連して説明したのと同様に、繊維複合材料層と接合部で当接する。
【0018】
図7〜図10はファンブレード10の断面図であり、高延性繊維複合材料ストリップの種々の位置を示す。図7はファンブレード10の前縁12にある高延性繊維複合材料ストリップを示す。図8はファンブレード10の前縁12と後縁14にある高延性繊維複合材料ストリップを示す。図9はファンブレード10の後縁14にある高延性繊維複合材料ストリップを示す。図10はファンブレード10の全表面にわたる高延性繊維複合材料ストリップを示す。高延性繊維複合材料ストリップの厚さは、ファンブレードの表面にわたって変えることができる。
【0019】
図11は本発明の別の実施形態のファンブレードの前縁12の断面図である。図11に示すように、ブレード10は前縁に固定された金属ガードである補強材30を備える。補強材30は前縁、後縁及び先端の1箇所以上に配置することができ、金属以外の材料から製造してもよい。さらに、コーティング32が第一面16の上に示されているが、第一面16及び第二面18の片面又は両面に設けることができる。コーティング32は、エロージョン保護膜、塗料などとすることができる。
【0020】
一実施形態では、繊維複合材料層と高延性繊維複合材料ストリップに同じ樹脂系を使用する。高延性繊維複合材料ストリップと繊維複合材料層の間の接合部において高い破壊靱性を得るために、樹脂の微細構造を調整することができる。高減衰性材料を樹脂として又は繊維複合材料層の間の中間層として用いることができる。さらに、波形又は角形の層形状を用いて減衰を高めてもよい。
【0021】
繊維複合材料層と共に高延性繊維複合材料ストリップを組み合わせると、機械的一体性が増す。このハイブリッド材料系は、単一材料系に比べて、層間の破壊耐性が高い。高延性繊維複合材料ストリップは金属製前縁に比べて軽く、翼形部の厚さを減らし、良好な空力的性能及び異物損傷耐性をもたらす。
【0022】
本発明を好適な実施形態について説明したが、本発明の要旨から逸脱することなく、種々の改変が可能であり、また構成要素を均等物に置き換え得ることは当業者には明らかである。さらに、本発明の要旨から逸脱することなく、個別の状況や材料を本発明に適合させる多くの変更が可能である。したがって、本発明はこの発明を実施するうえで考えられる最良の形態として上述した好適な実施例に限定されず、本発明は特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0023】
10 ファンブレード
12 前縁
13 先端
14 後縁
16 第一側面
18 第二側面
20,22,24 高延性繊維複合材料ストリップ
26 繊維複合材料の断面
30 繊維複合材料層
【技術分野】
【0001】
本発明はファンブレードに関し、特に高延性繊維複合材料で補強されたファンブレードに関する。
【背景技術】
【0002】
ジェットエンジン用途に用いられるファンブレードは、鳥が吸い込まれた場合などの異物の衝突による損傷を受けやすい。グラファイト繊維補強複合材料製のブレードは、全体として比強度と比剛性が高いので魅力的である。しかし、グラファイト複合材料は、延性が低いため、異物衝突時に脆性破壊及び離層を特に起こしやすい。ブレードの前縁、後縁及び先端は特に損傷を受けやすいが、それはこれらの部位が通常厚さが薄いことと、周知の通り積層複合材料は自由縁が離層しやすいことによる。さらに、航空機の速度に比して回転速度が高いこと及びブレードの形状のため、吸い込まれた異物はブレードの前縁付近にぶつかる。複合材料の負圧面及び正圧面付近の材料は、こうした事象に通常伴う局所的な曲げ変形のため最も破壊しやすい。
【0003】
衝突による損傷を防御するために金属ガードを複合材料ブレードに接合することが知られている。しかし、こうした材料は密度が高いため、用途が限られる。さらに、局所的に又は広範に翼形部厚さを増すことによって、ブレードの耐衝撃性を高めることができる。しかし、ブレードを厚くすると、空力的にも重量の上でも不利益が生じる。
【特許文献1】米国特許第4343593号明細書
【特許文献2】米国特許第4471020号明細書
【特許文献3】米国特許第4810167号明細書
【特許文献4】米国特許第4971641号明細書
【特許文献5】米国特許第5013216号明細書
【特許文献6】米国特許第5018271号明細書
【特許文献7】米国特許第5049036号明細書
【特許文献8】米国特許第5299914号明細書
【特許文献9】米国特許第5340280号明細書
【特許文献10】米国特許第5385978号明細書
【特許文献11】米国特許第5490764号明細書
【特許文献12】米国特許第5580217号明細書
【特許文献13】米国特許第5628622号明細書
【特許文献14】米国特許第5634771号明細書
【特許文献15】米国特許第5655883号明細書
【特許文献16】米国特許第5672417号明細書
【特許文献17】米国特許第5720597号明細書
【特許文献18】米国特許第5785498号明細書
【特許文献19】米国特許第5843354号明細書
【特許文献20】米国特許出願公開第2003/0129061号
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの態様では、複数の繊維複合材料層と該繊維複合材料層の1つと接合部で接合する1以上の高延性繊維複合材料ストリップとを備えるファンブレードが提供される。
【0005】
本発明の別の態様では、ファンブレードの製造方法が提供される。ファンブレードの製造方法は、複数の繊維複合材料層を接合し、1以上の高延性繊維複合材料ストリップを繊維複合材料層の1つに接合する工程を含む。高延性繊維複合材料ストリップの端部は、繊維複合材料層の端部と接合部で当接する。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【図1】ファンブレードの例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【図3】本発明の一実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【図4】本発明の別の実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【図5】本発明の他の実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【図6】本発明の他の実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【図7】補強材の配置を示す本発明の実施形態のファンブレードの断面図である。
【図8】補強材の配置を示す本発明の実施形態のファンブレードの断面図である。
【図9】補強材の配置を示す本発明の実施形態のファンブレードの断面図である。
【図10】補強材の配置を示す本発明の実施形態のファンブレードの断面図である。
【図11】本発明の別の実施形態のファンブレードの前縁の断面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照するが、複数の図面において同じ構成要素には同じ番号を付してある。
【0008】
本発明の実施形態は補強された繊維複合材料ファンブレードに関する。このようなファンブレードは、ジェットエンジン、タービンなどを始めとする様々な用途に使用することができる。繊維複合材料は、任意の(金属又は非金属)繊維フィラメントを任意の(金属又は非金属)マトリックスバインダーに埋設した材料とすることができる。本発明の一実施形態では、ファンブレードの大部分は、個別の繊維複合材料単層のレイアップである。一実施形態では、繊維複合材料は、グラファイト繊維フィラメントをエポキシ(例えば、エポキシ樹脂)マトリックスバインダーに埋設して構成され、得られる複合材料層の弾性率は124110〜165480メガパスカル(MPa)、引張伸びは1.3〜1.5%である(両方とも繊維と平行に測定した)。マトリックス樹脂の他の選択肢としては、ビスマレイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリ(アリールスルホン)、ポリエーテルスルホン、シアネートエステル及びこれら組合せがあるが、これらに限定されない。一実施形態では、マトリックスバインダーはゴム粒子などの強化材料を含む。
【0009】
繊維複合材料ファンブレードを高延性繊維複合材料で補強する。一実施形態では、高延性繊維複合材料の弾性率は約13790〜96530MPa、好ましくは約41370〜62055MPaである。高延性繊維複合材料の引張伸びは約1.75%以上、好ましくは約3%以上でなければならない。高延性繊維複合材料として、例えばSガラス、アラミド、延伸鎖ポリエチレン及びポリ(p−フェニレンベンゾビスオキサゾール)(BPO)がある。
【0010】
図1は本発明の一実施形態のファンブレード10の斜視図である。ファンブレード10は前縁12及び後縁14を有する。ファンブレードはさらに、前縁と後縁の間に延在する第一側面16及び第二側面18を有する。ガードやコーティングなどの追加の構成要素を第一側面16及び第二側面18に付与することができる(図11を参照して詳述する)。当技術分野で公知の通り、ファンブレード10の大部分は、前縁12と後縁14の間に延在する複数の繊維複合材料層(例えば、炭素繊維層)から製造される。繊維複合材料層は、翼弦方向に前縁12から後縁14まで、翼幅方向に根元11から先端13まで延在する。
【0011】
ファンブレード10を、損傷しやすい部位について高延性繊維複合材料ストリップで補強する。通常その部位はブレードの前縁、先端及び後縁であり、ブレードの正圧面及び負圧面に向かって広がっている。高延性繊維複合材料ストリップはファンブレード10が破壊する前に大きく変形するのを可能にし、また結果として負荷がより広い領域に分布することになり、局所的な損傷を起こりにくくする。
【0012】
図2はファンブレード10の前縁12の断面図である。多数の高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24を用いて前縁を補強する。ストリップは前縁12から後縁14に向かって延在し、側面16及び18の外側表面から内側へ延在する。繊維複合材料の断面26は前縁12に露出したままである。高延性繊維複合材料ストリップは、繊維が異なる配向で並んでいる。高延性繊維複合材料ストリップ20は、繊維がブレード10の翼幅方向に平行な方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ22は、繊維がブレード10の翼幅方向に対して45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ24は、繊維がブレード10の翼幅方向に対して−45°の方向に配向されている。
【0013】
図3は、高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24に相対する繊維複合材料層30を示す。前縁12から離れた高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24の端部をずらして配置する。すなわち、側面16及び18の表面から位置が離れるにつれて、高延性繊維複合材料ストリップのそれぞれの長さが短くなる。一実施形態では、隣接する高延性繊維複合材料ストリップ間の長さの違いdは、約0.1インチ以上である。あるいは、違いdはストリップ厚さの関数として表すことができ、一実施形態ではストリップ厚さの15倍以上である。これにより、高延性繊維複合材料ストリップがテーパー状になり、順応領域はファンブレードの正圧面及び負圧面の近くの方が中心部よりも長くなる。
【0014】
高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24は、繊維複合材料層30と接合部で当接する。接合部は突き合わせ接合又は部分的な重なりとすることができる。高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24は、レイアップ工程中にブレード10に組み込むことができ、レイアップ工程中に繊維複合材料層と高延性繊維複合材料を接着剤で結合するか同時硬化する。ファンブレード10は、内部から外側へ第一側面16及び第二側面18に向かって作製する。繊維複合材料層30は、接着剤又は同時硬化などの方法を用いて接合する。補強位置に達したら、接着剤又は同時硬化などの方法を用いて、高延性繊維複合材料のストリップを繊維複合材料層に接合する。
【0015】
図4は別の実施形態のファンブレード10の前縁12の断面図である。図4の実施形態では、高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24が、前縁12に巻き付いて前縁を覆う。高延性繊維複合材料ストリップ20の繊維はブレード10の翼幅方向に平行な方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ22の繊維はブレード10の翼幅方向に対して45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ24の繊維はブレード10の翼幅方向に対して−45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24は、図3に関連して説明したのと同様に、繊維複合材料層と接合部で当接する。
【0016】
図5は他の実施形態のファンブレード10の前縁12の断面図である。図5の実施形態では、高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24の端部を、隣接する高延性繊維複合材料ストリップの長さが異なるが、その長さは側面16及び18の表面から位置が離れるにつれて減少しないように、ずらして配置する。高延性繊維複合材料ストリップ20の繊維はブレード10の翼幅方向に平行な方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ22の繊維はブレード10の翼幅方向に対して45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ24の繊維はブレード10の翼幅方向に対して−45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ20,22及び24は、図3に関連して説明したのと同様に、繊維複合材料層と接合部で当接する。
【0017】
図6は他の実施形態のファンブレード10の前縁12の断面図である。図6の実施形態は図5の実施形態と類似するが、選択した繊維複合材料層だけを、高延性繊維複合材料ストリップ22に置き換える。したがって、図2〜図5の密接した高延性繊維複合材料ストリップではなく、繊維複合材料層が高延性繊維複合材料ストリップ22の間に介在する。高延性繊維複合材料ストリップ22の繊維はブレード10の翼幅方向に対して45°の方向に配向されている。高延性繊維複合材料ストリップ22は、図3に関連して説明したのと同様に、繊維複合材料層と接合部で当接する。
【0018】
図7〜図10はファンブレード10の断面図であり、高延性繊維複合材料ストリップの種々の位置を示す。図7はファンブレード10の前縁12にある高延性繊維複合材料ストリップを示す。図8はファンブレード10の前縁12と後縁14にある高延性繊維複合材料ストリップを示す。図9はファンブレード10の後縁14にある高延性繊維複合材料ストリップを示す。図10はファンブレード10の全表面にわたる高延性繊維複合材料ストリップを示す。高延性繊維複合材料ストリップの厚さは、ファンブレードの表面にわたって変えることができる。
【0019】
図11は本発明の別の実施形態のファンブレードの前縁12の断面図である。図11に示すように、ブレード10は前縁に固定された金属ガードである補強材30を備える。補強材30は前縁、後縁及び先端の1箇所以上に配置することができ、金属以外の材料から製造してもよい。さらに、コーティング32が第一面16の上に示されているが、第一面16及び第二面18の片面又は両面に設けることができる。コーティング32は、エロージョン保護膜、塗料などとすることができる。
【0020】
一実施形態では、繊維複合材料層と高延性繊維複合材料ストリップに同じ樹脂系を使用する。高延性繊維複合材料ストリップと繊維複合材料層の間の接合部において高い破壊靱性を得るために、樹脂の微細構造を調整することができる。高減衰性材料を樹脂として又は繊維複合材料層の間の中間層として用いることができる。さらに、波形又は角形の層形状を用いて減衰を高めてもよい。
【0021】
繊維複合材料層と共に高延性繊維複合材料ストリップを組み合わせると、機械的一体性が増す。このハイブリッド材料系は、単一材料系に比べて、層間の破壊耐性が高い。高延性繊維複合材料ストリップは金属製前縁に比べて軽く、翼形部の厚さを減らし、良好な空力的性能及び異物損傷耐性をもたらす。
【0022】
本発明を好適な実施形態について説明したが、本発明の要旨から逸脱することなく、種々の改変が可能であり、また構成要素を均等物に置き換え得ることは当業者には明らかである。さらに、本発明の要旨から逸脱することなく、個別の状況や材料を本発明に適合させる多くの変更が可能である。したがって、本発明はこの発明を実施するうえで考えられる最良の形態として上述した好適な実施例に限定されず、本発明は特許請求の範囲に属するあらゆる実施形態を包含する。
【符号の説明】
【0023】
10 ファンブレード
12 前縁
13 先端
14 後縁
16 第一側面
18 第二側面
20,22,24 高延性繊維複合材料ストリップ
26 繊維複合材料の断面
30 繊維複合材料層
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の繊維複合材料層(30)と
上記繊維複合材料層の1つと接合部で接合する1以上の高延性繊維複合材料ストリップ(20,22,24)と
を備えるファンブレード。
【請求項2】
前記高延性繊維複合材料ストリップ(20,22,24)の弾性率が約13790〜96530MPaである、請求項1記載のファンブレード。
【請求項3】
前記高延性繊維複合材料ストリップ(20,22,24)の弾性率が約41370〜62055MPaである、請求項2記載のファンブレード。
【請求項4】
前記高延性繊維複合材料ストリップ(20,22,24)の引張伸びが約1.75%以上である、請求項1記載のファンブレード。
【請求項5】
前記高延性繊維複合材料ストリップ(20,22,24)の引張伸びが約3%以上である、請求項4記載のファンブレード。
【請求項6】
前記高延性繊維複合材料ストリップが、第一方向に繊維が配向した第一の高延性繊維複合材料ストリップ(22)と第一方向とは異なる第二方向に繊維が配向した第二の高延性繊維複合材料ストリップ(20)とを含む、複数の高延性繊維複合材料ストリップを備える、請求項1記載のファンブレード。
【請求項7】
前記第一方向がファンブレードの翼幅方向に対して45°である、請求項6記載のファンブレード。
【請求項8】
前記第二方向がファンブレードの翼幅方向に平行である、請求項7記載のファンブレード。
【請求項9】
前記高延性繊維複合材料ストリップは、第一方向及び第二方向とは異なる第三方向に繊維が配向した第三の高延性繊維複合材料ストリップ(24)を含む、請求項6記載のファンブレード。
【請求項10】
前記第一方向がファンブレードの翼幅方向に対して45°であり、
前記第二方向がファンブレードの翼幅方向に平行であり、
前記第三方向がファンブレードの翼幅方向に対して−45°である
請求項9記載のファンブレード。
【請求項1】
複数の繊維複合材料層(30)と
上記繊維複合材料層の1つと接合部で接合する1以上の高延性繊維複合材料ストリップ(20,22,24)と
を備えるファンブレード。
【請求項2】
前記高延性繊維複合材料ストリップ(20,22,24)の弾性率が約13790〜96530MPaである、請求項1記載のファンブレード。
【請求項3】
前記高延性繊維複合材料ストリップ(20,22,24)の弾性率が約41370〜62055MPaである、請求項2記載のファンブレード。
【請求項4】
前記高延性繊維複合材料ストリップ(20,22,24)の引張伸びが約1.75%以上である、請求項1記載のファンブレード。
【請求項5】
前記高延性繊維複合材料ストリップ(20,22,24)の引張伸びが約3%以上である、請求項4記載のファンブレード。
【請求項6】
前記高延性繊維複合材料ストリップが、第一方向に繊維が配向した第一の高延性繊維複合材料ストリップ(22)と第一方向とは異なる第二方向に繊維が配向した第二の高延性繊維複合材料ストリップ(20)とを含む、複数の高延性繊維複合材料ストリップを備える、請求項1記載のファンブレード。
【請求項7】
前記第一方向がファンブレードの翼幅方向に対して45°である、請求項6記載のファンブレード。
【請求項8】
前記第二方向がファンブレードの翼幅方向に平行である、請求項7記載のファンブレード。
【請求項9】
前記高延性繊維複合材料ストリップは、第一方向及び第二方向とは異なる第三方向に繊維が配向した第三の高延性繊維複合材料ストリップ(24)を含む、請求項6記載のファンブレード。
【請求項10】
前記第一方向がファンブレードの翼幅方向に対して45°であり、
前記第二方向がファンブレードの翼幅方向に平行であり、
前記第三方向がファンブレードの翼幅方向に対して−45°である
請求項9記載のファンブレード。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−36466(P2013−36466A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−198279(P2012−198279)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2004−256634(P2004−256634)の分割
【原出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−198279(P2012−198279)
【出願日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【分割の表示】特願2004−256634(P2004−256634)の分割
【原出願日】平成16年9月3日(2004.9.3)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]