説明

補正ボール径算出方法および形状測定装置

【課題】解析精度を向上させることができる補正ボール径を算出できる補正ボール径算出方法および形状測定装置を提供すること。
【解決手段】本発明によれば、基準ゲージを回転させながら該基準ゲージを測定することにより補正ボール径を算出する。そのため、基準ゲージを回転させながら測定することにより生じる誤差を含んだ補正ボール径を算出することができる。また、基準ゲージの複数の高さ位置を測定することにより各高さ位置毎に補正ボール径を算出する。そのため、測定する高さ位置に応じて生じる誤差を含んだ補正ボール径を各高さ位置毎に算出することができる。従って、被測定物Wを回転させながら測定した際に、これらの誤差を含んだ補正ボール径を用いて被測定物Wの形状等を解析することで、被測定物Wの形状等を高精度に解析することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、補正ボール径算出方法および形状測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、被測定物の寸法や形状等を測定する形状測定装置として例えば三次元測定機が知られている。
【0003】
図10は、従来の三次元測定機1を示す図である。
三次元測定機1は、測定機本体2と、測定機本体2により取得した測定データを処理して被測定物Wの寸法や形状等を求めるPC3(パーソナルコンピュータ)とを備えている。
【0004】
測定機本体2は、定盤21と、定盤21上において前後方向(Y軸方向)に移動可能に設けられた門型フレーム22と、門型フレーム22の水平ビーム221に沿って左右方向(X軸方向)に移動可能に設けられたスライダ23と、スライダ23に上下方向(Z軸方向)に昇降自在に設けられた昇降軸24と、昇降軸24の下端に取り付けられたプローブ25とを備えている。門型フレーム22、スライダ23、および昇降軸24から、プローブ25を3軸方向に移動可能に支持する移動機構26が構成される。プローブ25は、先端に測定子27が設けられたスタイラス28を備えている。
【0005】
このような三次元測定機1による被測定物Wの測定方法としては、一般に、ポイント測定と倣い測定とが知られている。
ポイント測定では、三次元測定機1は、まず、プローブ25を3軸方向へ移動させながら、被測定物Wの測定部位に順次測定子27を当接させていき、各当接点におけるプローブ25の座標値を取得していく。ここで、測定子27と被測定物Wとの接触点は、図11に示すように、プローブ25の座標値から定まる測定子27の中心点Pから測定子27の半径r分だけずれた位置に存在する。従って、三次元測定機1は、プローブ25の座標値から測定子27と被測定物Wとの接触点を求めることができるので、取得した各座標値を用いて所定の演算を行うことで被測定物Wの寸法や形状等を求めることができる。
倣い測定では、三次元測定機1は、測定子27を被測定物Wに当接させた状態でプローブ25を被測定物Wの輪郭に沿って倣い移動させるとともに、所定のサンプリングピッチでプローブ25の座標値を取得していく。従って、これらの座標値を用いて所定の演算を行うことで被測定物Wの寸法や形状等を求めることができる。
【0006】
ところで、このような三次元測定機1を用いた測定においては、スタイラス28を測定対象に応じて付け替える必要があるが、三次元測定機1は、スタイラス28が取り付けられた際に自動でスタイラス28の長さおよびスタイラス28の先端に設けられた測定子27の直径値を認識することができない。スタイラス28の長さおよび測定子27の直径値は、プローブ25の座標値から測定子27の中心点Pを求めるのに必要な値であり、また、該中心点Pから測定子27と被測定物Wとの接触点を求める際に必要な値である。そのため、このような三次元測定機1を用いて被測定物を測定する際には、事前に、三次元測定機1にマスタボールの測定を行わせ、スタイラス28の長さや測定子27の直径値を三次元測定機1に認識させるキャリブレーションを行う必要がある。
【0007】
図12は、キャリブレーションを示す図である。
キャリブレーションでは、三次元測定機1にマスタボールMの直径校正値Dを入力してからマスタボールMを測定させることで、三次元測定機1にスタイラス28の長さや測定子27の直径値を求めさせ認識させる。この際、マスタボールMの測定により求められる計算上の測定子27の直径値は、マスタボールMの測定の際にスタイラスの撓み等の影響により生じる誤差により、通常、測定子27の直径校正値とは異なることとなる。以降、このような計算上の測定子27の直径値を補正ボール径と呼ぶことにする。
【0008】
ところで、マスタボールMの測定の際に生じる誤差の大きさは、マスタボールMの測定を静的なポイント測定または動的な倣い測定のいずれにより行うかによって異なることとなる。従って、キャリブレーションにより求められる補正ボール径は、マスタボールMの測定をポイント測定または倣い測定のいずれによって行なったかにより異なることとなる。そのため、三次元測定機1によりポイント測定を行う際には、キャリブレーションをポイント測定により行って得たポイント測定用の補正ボール径を用いる必要があり、三次元測定機1により倣い測定を行う際には、キャリブレーションを倣い測定により行って得た倣い測定用の補正ボール径を用いる必要がある。
【0009】
ポイント測定によるキャリブレーションにおいては、図12に示すように、マスタボールMの複数の測定部位に測定子27を当接させ、各測定部位に当接した際の測定子27の中心点近傍を通る円の直径値である測定直径値Dpを求める。
【0010】
図13は、ポイント測定の際に認識される測定子27の中心点P1を示す図である。
この測定の際、測定子27の中心点は、図13に示すように、スタイラス28の撓み等の影響により、本来の位置Pより誤差G分、例えば僅かに内側にずれた点P1の位置に認識されてしまう。そのため、測定直径値Dpはこの誤差Gを2つ分含んだ値となる。そこで、以下の(1)式に示すように、この測定直径値DpからマスタボールMの直径校正値Dを引くことにより、この誤差Gを2つ分含んだポイント測定用の補正ボール径dp(計算上の測定子27の直径値)を求めることができる。
dp=Dp−D・・・(1)
【0011】
図14は、倣い測定により行うキャリブレーションを示す図である。
一方、倣い測定によるキャリブレーションにおいては、マスタボールMの赤道一周、北半球のXZ面内半周、および北半球のYZ面内半周を所定のサンプリングピッチにて倣い測定して前述と同様に測定直径値Dsを求め、以下の(2)式に示すように、該測定直径値DsからマスタボールMの直径校正値Dを引くことにより、誤差Gを2つ分含んだ倣い測定用の補正ボール径dsを求めることができる。
ds=Ds−D・・・(2)
【0012】
そして、このようにして求めた各補正ボール径dp,dsを2で割ることにより、誤差Gを含んだ測定子27の半径r1(図13)を測定方法に応じて算出することができる。測定子27の中心点は、三次元測定機1には、測定方法に応じて生じる誤差Gを含んだ位置P1に認識されるので、三次元測定機1は、認識する測定子27の中心点P1から、測定方法(ポイント測定、倣い測定)に応じて算出した測定子27の半径r1分ずれた位置を求めることで、測定方法に応じて生じる誤差Gを抑えながら測定子27と被測定物Wとの接触点を求めることができ、被測定物の形状等を高精度に解析することができる。このように三次元測定機1は、測定時の誤差Gを含んだ補正ボール径dp,dsを予め算出しておき、この補正ボール径dp,dsを用いて被測定物の形状等を解析することにより、被測定物の形状等を高精度に解析することができる。
【0013】
ところで、このような三次元測定機において、近年、回転テーブルを用いて被測定物を回転させながら測定を行うものが提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1に記載の三次元測定機は、移動機構の3軸と回転テーブルの1軸との計4軸により被測定物を測定することができるので、複雑な形状の被測定物でも効率的に測定することができ、その形状等の解析時間を短縮することができる。
【0014】
【特許文献1】特開2001−264048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、このように回転テーブルを用いて被測定物を測定し、補正ボール径を用いてその形状等を解析した場合、解析結果に僅かにではあるが誤差が生じてしまうことが判明した。しかもこの誤差は、測定する被測定物の高さ位置に影響を受けることが判明した。これは、被測定物を回転させながら該被測定物を測定する際には、回転テーブルの面ぶれや被測定物の振れ回り、スタイラスの撓み等により、回転させながら被測定物を測定することによる誤差、および測定する高さ部位に応じた誤差が生じ、これらの測定誤差により解析結果に誤差が生じてしまうものと考えられる。
【0016】
すなわち、静止させた状態のマスタボールMを測定することにより算出される従来の補正ボール径には、回転させながら被測定物を測定することにより生じる誤差、および測定する高さ部位に応じて生じる誤差が含まれていないので、被測定物を回転させながら測定した際に従来の補正ボール径を用いて被測定物の形状等を解析すると、補正ボール径にこれらの誤差が含まれていない分、解析精度が低下してしまうものと考えられる。
【0017】
本発明の目的は、回転テーブルを用いて被測定物の形状等を測定し解析する際に、解析精度を向上させることができる補正ボール径を算出できる補正ボール径算出方法および形状測定装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の補正ボール径算出方法は、回転可能に設けられて被測定物が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルの回転角を検出する回転角センサと、測定子を有するプローブと、前記プローブの座標値を検出する座標値センサとを備え、前記被測定物に前記プローブを当接させた際に検出される各センサの検出値および前記測定子の計算上の直径値である補正ボール径等を用いて前記被測定物の形状等を解析する形状測定装置において、前記形状測定装置に用いられる前記補正ボール径を算出する補正ボール径算出方法であって、外周面および内周面のうち少なくとも一方の基準周面を有する基準ゲージを用意し、この基準ゲージに対して前記基準ゲージの底面から異なる複数の高さ位置で前記基準周面の直径値の値付けを行い、前記各高さ位置毎に値付け直径値を算出する値付け直径値算出工程と、前記基準ゲージを前記回転テーブル上に載置し、前記回転テーブルの駆動により前記基準ゲージを回転させた状態において、前記各高さ位置で前記基準周面上の複数の測定部位に前記測定子を当接させることにより、前記測定子が前記各測定部位に当接した際の前記測定子の中心点近傍を通る円の直径値である測定直径値を前記各高さ位置毎に算出する測定直径値算出工程と、前記各高さ位置毎に算出された前記値付け直径値および前記測定直径値から前記各高さ位置毎に前記補正ボール径を算出する補正ボール径算出工程とを備えることを特徴とする。
なお、値付け直径値算出工程は、所定の高精度な形状測定装置により行う。
【0019】
本発明によれば、基準ゲージを回転させながら該基準ゲージを測定することにより補正ボール径を算出するので、基準ゲージ(被測定物)を回転させながら測定することにより生じる誤差を含んだ補正ボール径を算出することができる。
また、基準ゲージの複数の高さ位置を測定することにより各高さ位置毎に補正ボール径を算出するので、測定する高さ位置に応じて生じる誤差を含んだ補正ボール径を各高さ位置毎に算出することができる。
従って、被測定物を回転させながら測定した際に、これらの誤差を含んだ補正ボール径を用いて被測定物の形状等を解析することで、被測定物の形状等を高精度に解析することができる。
【0020】
本発明の補正ボール径算出方法では、前記測定直径値算出工程では、前記基準周面をポイント測定および倣い測定することにより、ポイント測定による測定直径値および倣い測定による測定直径値を算出し、前記補正ボール径算出工程では、前記値付け直径値と、前記ポイント測定による測定直径値および前記倣い測定による測定直径値とから、ポイント測定による補正ボール径および倣い測定による補正ボール径を算出することが好ましい。
【0021】
回転テーブルを用いて被測定物を測定しその被測定物の形状等を解析する場合、被測定物をポイント測定するか倣い測定するかによっても誤差の生じ方が異なることとなる。
本発明によれば、基準ゲージを回転させた状態において基準ゲージをポイント測定することにより補正ボール径を算出するので、ポイント測定を行うことにより生じる誤差を含んだ補正ボール径を算出することができる。同様に、基準ゲージを倣い測定することにより補正ボール径を算出するので、倣い測定を行うことにより生じる誤差を含んだ補正ボール径を算出することができる。
そのため、被測定物への測定方法(ポイント測定、倣い測定)に応じた補正ボール径を用いて被測定物の形状等を解析することで、測定方法に応じて生じる解析誤差を抑えることができ、被測定物の形状等をより高精度に解析することができる。
【0022】
本発明の補正ボール径算出方法では、前記測定直径値算出工程では、前記基準ゲージの外周面および内周面を測定することにより、外周面の測定による測定直径値および内周面の測定による測定直径値を算出し、前記補正ボール径算出工程では、前記値付け直径値と、前記外周面の測定による測定直径値および前記内周面の測定による測定直径値とから、外周面の測定による補正ボール径および内周面の測定による補正ボール径を算出することが好ましい。
【0023】
回転テーブルを用いて被測定物を測定しその被測定物の形状等を解析する場合、被測定物の外周面(例えば軸)を測定するか内周面(例えば穴)を測定するかによっても誤差の生じ方が異なることとなる。
本発明によれば、基準ゲージを回転させた状態において基準ゲージの外周面を測定することにより補正ボール径を算出するので、外周面を測定することにより生じる誤差を含んだ補正ボール径を算出することができる。同様に、被測定物の内周面を測定することにより補正ボール径を算出するので、被測定物の内周面を測定することにより生じる誤差を含んだ補正ボール径を算出することができる。
そのため、測定対象(外周面、内周面)に応じた補正ボール径を用いて被測定物の形状等を解析することで、測定対象に応じて生じる解析誤差を抑えることができ、被測定物の形状等をより高精度に解析することができる。
【0024】
本発明の形状測定装置は、回転可能に設けられて被測定物が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルの回転角を検出する回転角センサと、測定子を有するプローブと、前記プローブを移動させる移動機構と、前記プローブの座標値を検出する座標値センサと、前記回転テーブルおよび前記移動機構を制御して前記測定子を前記被測定物に当接させる制御手段と、前記制御手段により前記測定子が前記被測定物に当接した際に前記各センサにより検出される検出値および前記測定子の計算上の直径値である補正ボール径等を用いて前記被測定物の形状等を解析する解析手段とを備えた形状測定装置であって、前記解析手段は、外周面および内周面のうち少なくとも一方の基準周面を有する基準ゲージに対して前記基準ゲージの底面からの異なる複数の高さ位置で、前記基準ゲージの前記基準周面の直径値の値付けを行うことにより前記各高さ位置毎に算出された値付け直径値を予め記憶している記憶部と、前記基準ゲージが前記回転テーブル上に載置されて回転された状態において、前記各高さ位置で前記基準ゲージの前記基準周面上の複数の測定部位に前記測定子が当接されることにより、前記各測定部位に当接した際の前記測定子の中心点近傍を通る円の直径値である測定直径値を前記各高さ位置毎に算出する測定直径値算出部と、前記各高さ位置毎に算出された前記値付け直径値および前記測定直径値から前記各高さ位置毎に前記補正ボール径を算出する補正ボール径算出部と、前記補正ボール径を用いて前記被測定物の形状等を解析する解析部とを備えることを特徴とする。
【0025】
なお、値付け直径値算出部および測定直径値算出部は、制御手段を介して回転テーブルおよび移動機構を駆動して基準ゲージを測定し、該測定の際に検出される検出値から各直径値を算出してもよいし、回転テーブルおよび移動機構が制御手段を介して作業者に手動操作されて基準ゲージが測定されることにより、該測定の際に検出される検出値から各直径値を算出してもよい。
同様に解析部は、自身が制御手段を介して回転テーブルおよび移動機構を駆動することにより被測定物を測定し、被測定物の形状等を解析してもよいし、回転テーブルおよび移動機構が制御手段を介して作業者に手動操作され被測定物が測定されることにより、被測定物の形状等を解析してもよい。
【0026】
本発明によれば、基準ゲージを回転させながら該基準ゲージを測定することにより補正ボール径を算出するので、基準ゲージを回転させながら測定することにより生じる誤差を含んだ補正ボール径を算出することができる。また、基準ゲージの複数の高さ位置を測定することにより各高さ位置毎に補正ボール径を算出するので、測定する高さ位置に応じて生じる誤差を含んだ補正ボール径を各高さ位置毎に算出することができる。
そして、被測定物を回転させながら測定した際に、これらの誤差を含む補正ボール径を用いて被測定物の形状等を解析するので、被測定物の形状等を高精度に解析することができる。
【0027】
本発明の形状測定装置では、前記解析部は、前記各高さ位置毎に算出された前記補正ボール径から前記被測定物の解析時に用いる解析用補正ボール径を算出する解析用補正ボール径算出部と、前記解析用補正ボール径を用いて前記被測定物の形状等を解析する被測定物解析部とを備え、前記解析用補正ボール径算出部は、前記各高さ位置毎に算出された前記補正ボール径から測定する高さ位置を変数とする近似関数を算出し、前記近似関数から前記制御手段が測定する前記被測定物の高さ位置に応じた解析用補正ボール径を算出することが好ましい。
【0028】
本発明によれば、各高さ位置毎に算出された補正ボール径から高さ位置の近似関数を算出し、該近似関数から測定する被測定物の高さ位置に応じた解析用補正ボール径を算出する。この解析用補正ボール径には、制御手段が測定する被測定物の高さ位置に応じて生じる誤差が含まれているので、前記解析用補正ボール径を用いて被測定物の形状等を解析することで、測定する高さ位置に応じて生じる解析誤差を抑えることができ、被測定物の形状等をより高精度に解析することができる。
【0029】
本発明の形状測定装置では、前記解析部は、前記各高さ位置毎に算出された前記補正ボール径から前記被測定物の解析時に用いる解析用補正ボール径を算出する解析用補正ボール径算出部と、前記解析用補正ボール径を用いて前記被測定物の形状等を解析する被測定物解析部とを備え、前記解析用補正ボール径算出部は、前記各高さ位置毎に算出された前記補正ボール径の平均値を前記解析用補正ボール径として算出することが好ましい。
【0030】
本発明によれば、各高さ位置毎に算出された補正ボール径の平均値を解析用補正ボール径として算出するので、測定する被測定物の高さ位置毎に所定の近似関数から解析用補正ボール径を算出する構成に比べ、形状測定装置が処理する計算量を低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
〔第1実施形態〕
〔1.三次元測定機の全体構成〕
以下、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。以下、背景技術において説明した従来の三次元測定機1と同一機能部位には同一符号を付し、その説明を省略若しくは簡略化する。
図1は、本実施形態に係る形状測定装置としての三次元測定機1を示す斜視図である。
三次元測定機1は、測定機本体2とPC3とを備えている。
【0032】
〔2.測定機本体の全体構成〕
測定機本体2は、載置される被測定物を回転可能な回転テーブル29と、回転テーブル29の回転角を検出する回転角センサ291(図2参照)と、先端部に測定子27が設けられたスタイラス28、スタイラス28の基端部を所定の3軸方向にスライド自在に支持する支持部251、スタイラス28の前記3軸方向の変位量を検出する変位量センサ252(図2参照)を有するプローブ25と、プローブ25を3軸方向に移動可能な移動機構26と、移動機構26に設けられ、プローブ25の座標値を検出するスケール等からなる座標値センサ261(図2参照)とを備えている。
【0033】
〔3.PCの全体構成〕
図2は、PC3の構成を示す図である。
PC3は、測定機本体2を制御して被測定物Wに測定子27を当接させることにより被測定物Wを測定する。そしてPC3は、測定子27と被測定物Wとが当接した際に各センサ252,261,291から検出される検出値と、予め求められている計算上の測定子27の直径値である補正ボール径等とを用いて所定の演算を行うことにより、被測定物Wの寸法や形状等を求める。
【0034】
このようなPC3は、制御手段31および解析手段4を有するPC本体300と、PC本体300に接続された操作手段32、入力手段33、および表示手段34とを備えている。
制御手段31は、解析手段4の制御の下、または操作手段32から入力される指令に従って回転テーブル29および移動機構26を制御し、被測定物Wに測定子27を当接させて被測定物Wを測定する。
【0035】
操作手段32は、回転テーブル29および移動機構26を制御手段31を介して手動操作するためのものである。
入力手段33は、PC本体300に測定条件等を入力するためのものである。
表示手段34は、PC本体300から出力される測定結果を表示するためのものである。
【0036】
〔4.解析手段の全体構成〕
解析手段4は、記憶部41と、測定直径値算出部42と、補正ボール径算出部43と、解析部44とを備えている。
【0037】
〔5.記憶部の構成〕
図3は、外径値が既知である円筒スコヤ5を示す図である。
記憶部41は、予め所定の高精度の三次元測定機により値付けされた円筒スコヤ5外周面の複数の高さ位置(高さ方向上端部、中央部、および下端部)の外径値付け直径値Doを記憶している。具体的に、本実施形態では、円筒スコヤ5として直径100mm、高さ300mmのものが使用され、記憶部41は、円筒スコヤ5の底面から20mm、150mm、および280mmの高さ位置の値付け直径値Do(j);j=1〜3を記憶している。なお、記憶部41は、円筒スコヤ5外周面の外径値付け直径値Doを3点だけでなく、各高さ位置に渡って満遍なく記憶していてもよく、後述する補正ボール径算出部43は、記憶部41から計算に必要な高さ位置の外径値付け直径値Doを読み出すように構成されていてもよい。
【0038】
図4は、内径値が既知であるリングゲージ6を示す図である。
また、記憶部41は、予め所定の高精度の三次元測定機により値付けされたリングゲージ6内周面の内径値付け直径値Diを記憶している。この内径値付け直径値Diは所定の値となるが、以降、都合上、内径値付け直径値DiをDi(j);j=1〜3と記載する。しかしながら、j=1〜3において内径値付け直径値Diの値は変わらないものとする。本実施形態では、前記円筒スコヤ5と、リングゲージ6および後述するスペーサ7(図7参照)とが基準ゲージとなり、円筒スコヤ5の外周面およびリングゲージ6の内周面が基準ゲージの基準周面となる。
記憶部41は、各部31,4により算出される各種の値を記憶する機能も有する。
【0039】
〔6.測定直径値算出部の構成〕
〔6−1.ポイント測定による外径測定直径値Drpoの算出〕
図5は、測定直径値算出部42による円筒スコヤ5の測定を示す図である。図6は、円筒スコヤ5の外径に係る各直径値Do,Drpo,Drsoを示す図である。
測定直径値算出部42は、制御手段31を介して回転テーブル29および移動機構26を制御し、円筒スコヤ5を回転させた状態で円筒スコヤ5外周面の前記各高さ位置(底面から20mm、150mm、および280mm)における同一円周上の複数の測定部位に測定子27を当接させて該測定部位をポイント測定する。
【0040】
なお、円筒スコヤ5は、回転テーブル29のチャック292により該回転テーブル29の中心軸上に固定されている。また、測定直径値算出部42は、例えば回転テーブル29を駆動して円筒スコヤ5を回転させた状態で測定子27を一方向(図5の左右方向)にのみ進退させることにより、円筒スコヤ5外周面の前記各高さ位置における同一円周上において、90°ずつ周方向にずれた4つの測定部位をポイント測定する。
そして、測定直径値算出部42は、各測定部位に当接した際の測定子27の中心点近傍を通る円の直径値である外径測定直径値Drpo(j);j=1〜3を各高さ位置毎に算出する。なお、各測定部位に当接した際の測定子27の中心点近傍を通る円とは、各測定子27の中心点からの距離の自乗和が最小になる最小自乗円等、各測定子27の中心点の分布状態に適合する回帰円のことを言う。以降も同様である。
【0041】
この各高さ位置毎に算出された外径測定直径値Drpo(j);j=1〜3には、円筒スコヤ5を回転させながら測定することにより生じる誤差、測定する円筒スコヤ5の高さ位置に応じて生じる誤差、ポイント測定することにより生じる誤差、および外周面を測定することによる誤差が含まれることとなる。
【0042】
〔6−2.倣い測定による外径測定直径値Drsoの算出〕
また、測定直径値算出部42は、制御手段31を介して回転テーブル29および移動機構26を制御し、円筒スコヤ5を回転させた状態で円筒スコヤ5外周面の各高さ位置を一周分、所定のサンプリングピッチで同期倣い測定することにより、前記各高さ位置毎に倣い測定による外径測定直径値Drso(j);j=1〜3を算出する。
外径測定直径値Drso(j);j=1〜3には、円筒スコヤ5を回転させながら測定することにより生じる誤差、測定する円筒スコヤ5の高さ位置に応じて生じる誤差、倣い測定することにより生じる誤差、および外周面を測定することによる誤差が含まれることとなる。
なお、倣い測定の際の測定条件、例えば移動機構26により移動させるプローブ25の倣い速度や、測定時におけるスタイラス28の押込量等の条件は、実際に被測定物Wを倣い測定する際の条件と同一の条件に設定されるものとする。
【0043】
〔6−3.ポイント測定による内径測定直径値Drpiの算出〕
図7は、測定直径値算出部42によるリングゲージ6の測定を示す図である。図8は、リングゲージ6の内径に係る各直径値Di,Drpi,Drsiを示す図である。
また、測定直径値算出部42は、制御手段31を介して回転テーブル29および移動機構26を同様に制御し、リングゲージ6を回転させた状態で各高さ位置(回転テーブル29から20mm、150mm、280mmの高さ位置)に設置されたリングゲージ6の内周面をポイント測定することにより、前記各高さ位置毎にポイント測定による内径測定直径値Drpi(j);j=1〜3を算出する。
【0044】
なお、リングゲージ6は、チャック292により固定されたスペーサ7により、各高さ位置(回転テーブル29から150mmおよび280mmの高さ位置)に設置されるものとする。リングゲージ6は、スペーサ7に接着剤により固定されるものとする。また、回転テーブル29から20mmの高さ位置でリングゲージ6を測定する場合には、スペーサ7は用いず、回転テーブル29上に直接設置されたリングゲージ6を測定するものとする。
内径測定直径値Drpi(j);j=1〜3には、リングゲージ6を回転させながら測定することにより生じる誤差、測定するリングゲージ6の高さ位置に応じて生じる誤差、ポイント測定することにより生じる誤差、および内周面を測定することによる誤差が含まれることとなる。
【0045】
〔6−4.倣い測定による内径測定直径値Drsiの算出〕
また、測定直径値算出部42は、制御手段31を介して回転テーブル29および移動機構26を制御し、リングゲージ6を回転させた状態で各高さ位置に設置されたリングゲージ6の内周面を同期倣い測定することにより、前記各高さ位置毎に倣い測定による内径測定直径値Drsi(j);j=1〜3を算出する。
内径測定直径値Drsi(j);j=1〜3には、リングゲージ6を回転させながら測定することにより生じる誤差、測定するリングゲージ6の高さ位置に応じて生じる誤差、倣い測定することにより生じる誤差、および内周面を測定することによる誤差が含まれることとなる。
【0046】
〔7.補正ボール径算出部の構成〕
補正ボール径算出部43は、以下の(3)式に示すように、記憶部41から各高さ位置毎の値付け直径値Doを読み出し、該各高さ位置毎の値付け直径値Doと、ポイント測定を行うことにより各高さ位置毎に算出された外径測定直径値Drpoとから、計算上の測定子27の直径値である補正ボール径drpoを各高さ位置毎に算出する。
drpo(j)=Drpo(j)−Do(j);j=1〜3・・・(3)
【0047】
この各高さ位置毎に算出された補正ボール径drpo(j)には、外径測定直径値Drpo(j)内に含まれる誤差、すなわち、円筒スコヤ5を回転させながら測定することにより生じる誤差、測定する円筒スコヤ5の高さ位置に応じて生じる誤差、ポイント測定することにより生じる誤差、および外周面を測定することによる誤差が含まれることとなる。
【0048】
補正ボール径算出部43は、同様にして、以下の(4)〜(6)式に示すように、各高さ位置毎に補正ボール径drpi,drso,drsiを算出する。これらの補正ボール径drpi,drso,drsiにも、各測定直径値Drpi,Drso,Drsiに応じた誤差が含まれることとなる。
drpi(j)=Di(j)−Drpi(j);j=1〜3・・・(4)
drso(j)=Drso(j)−Do(j);j=1〜3・・・(5)
drsi(j)=Di(j)−Drsi(j);j=1〜3・・・(6)
【0049】
〔8−1.解析部の全体構成〕
解析部44は、補正ボール径算出部43により算出された補正ボール径drpi,drso,drsiを用いて被測定物Wの形状等を解析する。この解析部44は、解析用補正ボール径算出部441と、被測定物解析部442とを備えている。
【0050】
〔8−2.解析用補正ボール径算出部の構成〕
解析用補正ボール径算出部441は、各高さ位置毎に算出された補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiから、被測定物Wの形状等の解析時に用いる解析用補正ボール径を、制御手段31の測定方法(ポイント測定、倣い測定)、測定対象(外周面、内周面)、および制御手段31が測定する被測定物Wの底面からの高さ位置に応じて算出する。
【0051】
具体的に、解析用補正ボール径算出部441は、各高さ位置毎の補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiから最小2乗法等を利用して高さ位置の関数である3次関数等の近似関数を算出し、記憶部41に記憶させる。そして、解析用補正ボール径算出部441は、制御手段31が被測定物Wを測定した際には、測定方法および測定対象に応じた近似関数を記憶部41から読み出し、該近似関数から、測定する被測定物Wの底面からの高さ位置に応じた解析用補正ボール径を算出する。
【0052】
解析用補正ボール径算出部441は、制御手段31が例えばポイント測定により被測定物Wの外周面の測定を行う際には、円筒スコヤ5外周面をポイント測定することにより算出された補正ボール径drpoに基づいて算出された近似関数を記憶部41から読み出し、該近似関数から、制御手段31が測定する被測定物Wの高さ位置に応じた解析用補正ボール径を算出する。
【0053】
この解析用補正ボール径算出部441により算出される解析用補正ボール径には、基準ゲージ(円筒スコヤ5、およびリングゲージ6とスペーサ7)を回転させながら測定することにより生じる誤差、測定する基準ゲージの高さ位置に応じて生じる誤差、測定方法(ポイント測定、倣い測定)に応じて生じる誤差、および測定対象(外周面、内周面)に応じて生じる誤差が含まれることとなる。
【0054】
〔8−3.被測定物解析部の構成〕
被測定物解析部442は、制御手段31が被測定物Wの測定を行う際に、各センサ252,261,291により検出される検出値、および解析用補正ボール径算出部441により算出される解析用補正ボール径を用いて被測定物Wの寸法や形状等を解析する。
【0055】
ここで、回転テーブル29を用いて被測定物Wを測定する場合、解析結果に僅かにではあるが誤差が生じてしまうこと、および、その誤差は測定する被測定物Wの高さ位置により影響を受けることを背景技術において述べたが、前記誤差は、測定方法(ポイント測定、倣い測定)、および測定対象(外周面、内周面)によっても影響を受ける。
【0056】
従って、図13を参照して説明すると、回転テーブル29を用いて被測定物Wを測定する場合、測定子27の中心点が、PC3に、測定条件に応じて生じる誤差G、すなわち、被測定物Wを回転させながら測定することにより生じる誤差、測定する被測定物Wの高さ位置に応じて生じる誤差、測定方法(ポイント測定、倣い測定)に応じて生じる誤差、および測定対象(外周面、内周面)に応じて生じる誤差を含んだ位置P1に認識される。
そこで、被測定物解析部442は、解析用補正ボール径算出部441により算出された解析用補正ボール径に基づいて前記各誤差Gを含む測定子27の半径r1を求め、認識する測定子27の中心点P1から、この測定子27の半径r1分ずれた位置を求める。これにより、被測定物解析部442は、測定条件に応じて生じる各誤差Gを抑えながら測定子27と被測定物Wとの接触点を求めることができ、被測定物Wの形状等を高精度に解析することができる。
【0057】
〔9.補正ボール径算出方法および被測定物の形状等の解析方法の説明〕
以下、補正ボール径算出方法および被測定物の形状等の解析方法について、図9のフローチャートを参照しながら簡略に説明する。
まず、作業者が、基準ゲージとして、円筒スコヤ5、およびリングゲージ6とスペーサ7とを用意し、所定の高精度の三次元測定機に円筒スコヤ5を設置する。そして、所定の高精度の三次元測定機が、作業者に操作される等により、円筒スコヤ5外周面の複数の高さ位置(高さ方向上端部、中央部、および下端部)の外径値付け直径値Do(j);j=1〜3を値付けする。この値は、作業者等により、被測定物Wの測定に用いる三次元測定機1の記憶部41に記憶される。この後、所定の高精度の三次元測定機に作業者により、スペーサ7を介して各高さ位置にリングゲージ6が設置されるとともに、所定の高精度の三次元測定機が、各高さ位置のリングゲージ6内周面の内径値付け直径値Di(j);j=1〜3を値付けする。この値も、作業者等により、被測定物Wの測定に用いる三次元測定機1の記憶部41に記憶される(値付け直径値算出工程S1)。
【0058】
値付け直径値算出工程S1の後、作業者は、三次元測定機1の回転テーブル29上に円筒スコヤ5を設置する。そして、三次元測定機1が作業者に操作される等により、測定直径値算出部42が、制御手段31を介して回転テーブル29および移動機構26を制御し、円筒スコヤ5を回転させた状態で円筒スコヤ5外周面の各高さ位置における同一円周上の複数の測定部位をポイント測定し、各測定部位に当接した際の測定子27の中心点近傍を通る円の直径値である外径測定直径値Drpo(j);j=1〜3を各高さ位置毎に算出する。また、測定直径値算出部42は、円筒スコヤ5外周面の各高さ位置を同期倣い測定することにより、各高さ位置毎に倣い測定による外径測定直径値Drso(j);j=1〜3を算出する。この後、作業者は、回転テーブル29上にスペーサ7を介して各高さ位置にリングゲージ6を設置し、測定直径値算出部42が、リングゲージ6を回転させた状態で各高さ位置に設置されたリングゲージ6の内周面をポイント測定することにより、各高さ位置毎にポイント測定による内径測定直径値Drpi(j);j=1〜3を算出する。また、測定直径値算出部42は、各高さ位置に設置されたリングゲージ6の内周面を倣い測定することにより、各高さ位置毎に倣い測定による内径測定直径値Drsi(j);j=1〜3を算出する(測定直径値算出工程S2)。
【0059】
測定直径値算出工程S2の後、補正ボール径算出部43は、以下の各式(3)〜(6)に示すように、各高さ位置毎に算出された値付け直径値Do,Diおよび測定直径値Drpo,Drpi,Drso,Drsiから補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiを算出する(補正ボール径算出工程S3)。
drpo(j)=Drpo(j)−Do(j);j=1〜3・・・(3)
drpi(j)=Di(j)−Drpi(j);j=1〜3・・・(4)
drso(j)=Drso(j)−Do(j);j=1〜3・・・(5)
drsi(j)=Di(j)−Drsi(j);j=1〜3・・・(6)
【0060】
以上の工程S1〜S3により、基準ゲージ(円筒スコヤ5、およびリングゲージ6とスペーサ7)を回転させながら測定することにより生じる誤差、測定する基準ゲージの高さ位置に応じて生じる誤差、測定方法(ポイント測定、倣い測定)に応じて生じる誤差、および測定対象(外周面、内周面)に応じて生じる誤差を含んだ補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiを算出することができる。
【0061】
補正ボール径算出工程S3の後、作業者により被測定物Wが回転テーブル29上に設置される。そして、解析部44の制御の下または作業者による操作手段32の操作に従って、制御手段31が回転テーブル29および移動機構26を制御し、被測定物Wに測定子27を当接させて被測定物Wを測定する(測定工程S4)。この測定工程S4の後、以下の各工程S5,S6が行われ、再び該測定工程S4が行われる。すなわち、制御手段31による被測定物Wの測定の間、以下の各工程S5,S6が行われることとなる。本実施形態では、これらの工程S4〜S6から解析工程が構成される。
【0062】
測定工程S4の後、解析用補正ボール径算出部441は、測定条件に応じて算出された補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiから解析用補正ボール径を制御手段31の測定条件、すなわち制御手段31が測定する被測定物Wの高さ位置、測定方法(ポイント測定、倣い測定)、および測定対象(外周面、内周面)に応じて算出する(解析用補正ボール径算出工程S5)。
【0063】
解析用補正ボール径算出工程S5の後、被測定物解析部442は、各センサ252,261,291により検出される検出値、および解析用補正ボール径算出部441により算出される解析用補正ボール径を用いて被測定物Wの寸法や形状等を解析する(被測定物解析工程S6)。
【0064】
〔10.本実施形態の効果〕
以上のような本実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)基準ゲージ(円筒スコヤ5、およびリングゲージ6とスペーサ7)を回転させながら該基準ゲージを測定することにより補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiを算出するので、基準ゲージ(被測定物W)を回転させながら測定することにより生じる誤差を含んだ補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiを算出することができる。また、基準ゲージの複数の高さ位置を測定することにより各高さ位置毎に補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiを算出するので、測定する高さ位置に応じて生じる誤差を含んだ補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiを各高さ位置毎に算出することができる。そして、被測定物Wを回転させながら測定した際に、これらの誤差を含んだ補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiを用いて被測定物Wの形状等を解析するので、被測定物Wの形状等を高精度に解析することができる。
【0065】
(2)基準ゲージを回転させた状態において基準ゲージをポイント測定することにより補正ボール径drpo,drpiを算出するので、ポイント測定を行うことにより生じる誤差を含んだ補正ボール径drpo,drpiを算出することができる。同様に、基準ゲージを倣い測定することにより補正ボール径drso,drsiを算出するので、倣い測定を行うことにより生じる誤差を含んだ補正ボール径drso,drsiを算出することができる。そして、被測定物Wへの測定方法(ポイント測定、倣い測定)に応じた補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiを用いて被測定物Wの形状等を解析するので、測定方法に応じて生じる解析誤差を抑えることができ、被測定物Wの形状等をより高精度に解析することができる。
【0066】
(3)基準ゲージを回転させた状態において基準ゲージの外周面を測定することにより補正ボール径drpo,drsoを算出するので、外周面を測定することにより生じる誤差を含んだ補正ボール径drpo,drsoを算出することができる。同様に、被測定物Wの内周面を測定することにより補正ボール径drpi,drsiを算出するので、被測定物Wの内周面を測定することにより生じる誤差を含んだ補正ボール径drpi,drsiを算出することができる。そして、測定対象(外周面、内周面)に応じた補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiを用いて被測定物Wの形状等を解析するので、測定対象に応じて生じる解析誤差を抑えることができ、被測定物Wの形状等をより高精度に解析することができる。
【0067】
(4)各高さ位置毎に算出された補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiから高さ位置の近似関数を算出し、該近似関数から測定する高さ位置に応じた解析用補正ボール径を算出する。この解析用補正ボール径には、測定する高さ位置に応じて生じる誤差が含まれるところ、本実施形態では、この解析用補正ボール径を用いて被測定物Wの形状等を解析するので、測定する高さ位置に応じて生じる解析誤差を抑えることができ、被測定物Wの形状等を一層高精度に解析することができる。
【0068】
〔第2実施形態〕
本実施形態では、解析用補正ボール径算出部が、補正ボール径算出部により各高さ位置毎に算出された補正ボール径の平均値を解析用補正ボール径として算出する点が特徴である。本実施形態の他の構成は前記第1実施形態と同様である。このような本実施形態でも、前記第1実施形態と同様の効果(1)〜(3)を奏することができるうえ、以下の効果を奏することができる。
(5)解析用補正ボール径算出部が、各高さ位置毎に算出された補正ボール径の平均値を解析用補正ボール径として算出するので、測定する高さ位置毎に所定の近似関数から解析用補正ボール径を算出する前記第1実施形態の構成に比べ、形状測定装置が行う計算量を低減させることができる。
【0069】
〔実施形態の変形〕
なお、本発明は前記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
前記各実施形態では、基準ゲージの外周面および内周面を測定し、測定対象(外周面、内周面)に応じた補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiを算出した。しかしながら、基準ゲージの外周面および内周面のいずれか一方のみを測定することにより補正ボール径を算出してもよい。
【0070】
前記各実施形態では、基準ゲージをポイント測定および倣い測定し、測定方法(ポイント測定、倣い測定)に応じた補正ボール径drpo,drpi,drso,drsiを算出した。しかしながら、基準ゲージを、ポイント測定および倣い測定のうちいずれか一方のみで測定することにより補正ボール径を算出してもよい。
【0071】
前記各実施形態では、測定直径値算出部42は、制御手段31を介して円筒スコヤ5およびリングゲージ6を測定し、これにより各測定直径値Drso,Drpi,Drso,Drsiを算出したが、測定直径値算出部42は、回転テーブル29および移動機構26が制御手段31を介して手動操作され、円筒スコヤ5およびリングゲージ6が測定されることにより各測定直径値Drso,Drpi,Drso,Drsiを算出してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、補正ボール径算出方法、および粗さ測定機、輪郭形状測定機、真円度測定機、三次元測定機等の形状測定装置に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【図1】本発明の第1実施形態に係る形状測定装置を示す斜視図。
【図2】PCの構成を示す図。
【図3】円筒スコヤを示す図。
【図4】リングゲージを示す図。
【図5】測定直径値算出部による円筒スコヤの測定を示す図。
【図6】円筒スコヤの外径に係る各直径値を示す図。
【図7】測定直径値算出部によるリングゲージの測定を示す図。
【図8】円筒スコヤの内径に係る各直径値を示す図。
【図9】補正ボール径算出方法および被測定物の形状等の解析方法を示すフローチャート。
【図10】従来の三次元測定機を示す図。
【図11】測定子と被測定物との接触点を説明するための図。
【図12】キャリブレーションを示す図。
【図13】ポイント測定の際に認識される測定子の中心点を示す図。
【図14】倣い測定により行うキャリブレーションを示す図。
【符号の説明】
【0074】
1 三次元測定機(形状測定装置)
4 解析手段
5 円筒スコヤ(基準ゲージ)
26 移動機構
27 測定子
29 回転テーブル
31 制御手段
41 記憶部
42 測定直径値算出部
43 補正ボール径算出部
44 解析部
261 座標値センサ
291 回転角センサ
441 解析用補正ボール径算出部
442 被測定物解析部
Do,Di 基準ゲージの値付け直径値
Drpo,Drpi,Drso,Drsi 測定直径値
drpo,drpi,drso,drsi 補正ボール径
S1 値付け直径値算出工程
S2 測定直径値算出工程
S3 補正ボール径算出工程
W 被測定物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転可能に設けられて被測定物が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルの回転角を検出する回転角センサと、測定子を有するプローブと、前記プローブの座標値を検出する座標値センサとを備え、前記被測定物に前記プローブを当接させた際に検出される各センサの検出値および前記測定子の計算上の直径値である補正ボール径等を用いて前記被測定物の形状等を解析する形状測定装置において、前記形状測定装置に用いられる前記補正ボール径を算出する補正ボール径算出方法であって、
外周面および内周面のうち少なくとも一方の基準周面を有する基準ゲージを用意し、この基準ゲージに対して前記基準ゲージの底面から異なる複数の高さ位置で前記基準周面の直径値の値付けを行い、前記各高さ位置毎に値付け直径値を算出する値付け直径値算出工程と、
前記基準ゲージを前記回転テーブル上に載置し、前記回転テーブルの駆動により前記基準ゲージを回転させた状態において、前記各高さ位置で前記基準周面上の複数の測定部位に前記測定子を当接させることにより、前記測定子が前記各測定部位に当接した際の前記測定子の中心点近傍を通る円の直径値である測定直径値を前記各高さ位置毎に算出する測定直径値算出工程と、
前記各高さ位置毎に算出された前記値付け直径値および前記測定直径値から前記各高さ位置毎に前記補正ボール径を算出する補正ボール径算出工程とを備える
ことを特徴とする補正ボール径算出方法。
【請求項2】
請求項1に記載の補正ボール径算出方法において、
前記測定直径値算出工程では、前記基準周面をポイント測定および倣い測定することにより、ポイント測定による測定直径値および倣い測定による測定直径値を算出し、
前記補正ボール径算出工程では、前記値付け直径値と、前記ポイント測定による測定直径値および前記倣い測定による測定直径値とから、ポイント測定による補正ボール径および倣い測定による補正ボール径を算出する
ことを特徴とする補正ボール径算出方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の補正ボール径算出方法において、
前記測定直径値算出工程では、前記基準ゲージの外周面および内周面を測定することにより、外周面の測定による測定直径値および内周面の測定による測定直径値を算出し、
前記補正ボール径算出工程では、前記値付け直径値と、前記外周面の測定による測定直径値および前記内周面の測定による測定直径値とから、外周面の測定による補正ボール径および内周面の測定による補正ボール径を算出する
ことを特徴とする補正ボール径算出方法。
【請求項4】
回転可能に設けられて被測定物が載置される回転テーブルと、前記回転テーブルの回転角を検出する回転角センサと、測定子を有するプローブと、前記プローブを移動させる移動機構と、前記プローブの座標値を検出する座標値センサと、前記回転テーブルおよび前記移動機構を制御して前記測定子を前記被測定物に当接させる制御手段と、前記制御手段により前記測定子が前記被測定物に当接した際に前記各センサにより検出される検出値および前記測定子の計算上の直径値である補正ボール径等を用いて前記被測定物の形状等を解析する解析手段とを備えた形状測定装置であって、
前記解析手段は、
外周面および内周面のうち少なくとも一方の基準周面を有する基準ゲージに対して前記基準ゲージの底面からの異なる複数の高さ位置で、前記基準ゲージの前記基準周面の直径値の値付けを行うことにより前記各高さ位置毎に算出された値付け直径値を予め記憶している記憶部と、
前記基準ゲージが前記回転テーブル上に載置されて回転された状態において、前記各高さ位置で前記基準ゲージの前記基準周面上の複数の測定部位に前記測定子が当接されることにより、前記各測定部位に当接した際の前記測定子の中心点近傍を通る円の直径値である測定直径値を前記各高さ位置毎に算出する測定直径値算出部と、
前記各高さ位置毎に算出された前記値付け直径値および前記測定直径値から前記各高さ位置毎に前記補正ボール径を算出する補正ボール径算出部と、
前記補正ボール径を用いて前記被測定物の形状等を解析する解析部とを備える
ことを特徴とする形状測定装置。
【請求項5】
請求項4に記載の形状測定装置において、
前記解析部は、
前記各高さ位置毎に算出された前記補正ボール径から前記被測定物の解析時に用いる解析用補正ボール径を算出する解析用補正ボール径算出部と、
前記解析用補正ボール径を用いて前記被測定物の形状等を解析する被測定物解析部とを備え、
前記解析用補正ボール径算出部は、前記各高さ位置毎に算出された前記補正ボール径から測定する高さ位置を変数とする近似関数を算出し、前記近似関数から前記制御手段が測定する前記被測定物の高さ位置に応じた解析用補正ボール径を算出する
ことを特徴とする形状測定装置。
【請求項6】
請求項4に記載の形状測定装置において、
前記解析部は、
前記各高さ位置毎に算出された前記補正ボール径から前記被測定物の解析時に用いる解析用補正ボール径を算出する解析用補正ボール径算出部と、
前記解析用補正ボール径を用いて前記被測定物の形状等を解析する被測定物解析部とを備え、
前記解析用補正ボール径算出部は、前記各高さ位置毎に算出された前記補正ボール径の平均値を前記解析用補正ボール径として算出する
ことを特徴とする形状測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−223865(P2010−223865A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−73572(P2009−73572)
【出願日】平成21年3月25日(2009.3.25)
【出願人】(000137694)株式会社ミツトヨ (979)
【Fターム(参考)】