補足された及び補足されていない組織シーラント、その製造法及び使用法
【課題】補薬および非補薬したフィブリン膠などの組織シーラント(TSs)、ならびにそれらの製造および用途の提供と成長因子−および/または薬物−補足TSsならびにそれらの製造および用途の提供。
【解決手段】線維芽細胞成長因子−1、−2または4、および/または骨形生蛋白質を補足したフィブリン膠、およびHBGF−1を含むフィブリン膠で加圧潅流させたポリテトラフルオルエチレン製移植用血管片、固体5−フルオロウラシルまたはテトラサイクリンに遊離塩基を補足したフィブリン膠、テトラサイクリン遊離塩基やシプロフロキサシン塩酸塩のような物質で処理または補足してなるフィブリン膠の寿命を延ばしたTS。これらは骨の傷の治療、人工血管の内皮細胞形成、動物細胞の増殖および/または分化、および/または動物細胞の方向移動を促進させるために用いられる。
【解決手段】線維芽細胞成長因子−1、−2または4、および/または骨形生蛋白質を補足したフィブリン膠、およびHBGF−1を含むフィブリン膠で加圧潅流させたポリテトラフルオルエチレン製移植用血管片、固体5−フルオロウラシルまたはテトラサイクリンに遊離塩基を補足したフィブリン膠、テトラサイクリン遊離塩基やシプロフロキサシン塩酸塩のような物質で処理または補足してなるフィブリン膠の寿命を延ばしたTS。これらは骨の傷の治療、人工血管の内皮細胞形成、動物細胞の増殖および/または分化、および/または動物細胞の方向移動を促進させるために用いられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は補足されていない(unsupplemented)及び補足された(supplemented)、フィブリン接着剤(FG)ようなTS類(TS)、同様にそれらの製造法及び使用法に関する。ある1つの態様では、本発明は、全層の皮膚創傷の治癒を妨げないTS類に関する。別の態様では、本発明は成長因子(類)及び/又は薬物(類)で補足されたTS類に関し、同様にそれらの製造法及び使用法に関する。選択された特定の成長因子(類)又は薬物(類)はその使用の機能である。
【背景技術】
【0002】
関連出願のクロス・リファレンス
本出願は、1990年11月27日に出願された米国出願番号07/618,419号(現在、放棄)及び1991年11月27日にそれぞれ出願された同第07/798,919号の一部継続出願であり、これらを参考のためにここに引用する。
【0003】
本発明における米国政府の権利
米国赤十字社及び米国陸軍歯科研究所の間の共同研究及び開発の契約の下、米国政府は本発明の1つ又はそれ以上の態様において通常実施の、取り消し不能の、納付済みのライセンスを有する。
【0004】
A.創傷治癒及び成長因子
創傷治癒、即ち外傷の修復は、ほぼ手術直後に始まる。様々な細胞の機能の相次ぐ整合機能と緻密な減成調節及び再生段階を必要とする。細胞の増殖、分化及び移動は創傷治癒の基礎となる重要な生物学的過程であり、またこれは、線維増多、内皮形成、上皮形成などのフィブリン凝塊の形成、凝塊の吸収、組織の再設計も含む。創傷治癒は、特殊化した皮膚組織の形成だけでなく、多数の毛細管、多くの活発な線維芽細胞、及び多くのコラーゲン原線維を含む高度な血管化組織の形成に関わる。
【0005】
創傷治癒の過程は、損傷細胞の外に流出するトロンボプラスチンによって開始される。トロンボプラスチンは血漿因子VIIに接触して因子X活性化因子を形成し、その後に、因子Vとともにリン脂質及びカルシウムとの複合体となり、プロトロンビンをトロンビンに変換する。トロンビンは、フィブリノペプチドA及びBのフィブリノーゲンからの放出を触媒し、フィブリンモノマーを産生する。
【0006】
トロンビンはまた、トランスグルタミナーゼ、因子XIIIaを活性化し、これはフィブリンフィラメントに共有結合的に架橋するイソペプチド結合の形成を触媒する。次に因子XIIIによってアルファ−抗プラスミンがフィブリンフィラメント上に結合し、それによってフィラメントをプラスミンによる変性から保護する(例えば、ドーリトル(Doolittle)ら,アニューアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Ann.Rev.Biochem.)53巻:195〜229頁(1984年)を参照されたい)。
【0007】
組織が損傷した場合、一連の生物学的活性を示すポリペプチド成長因子は治療において決定的な役割を担っている創傷中へ放出される(例えば、ホルモナル・プロテイン・アンド・ペプチド(Hormonal Proteins and Peptides)(リー(Li),C.H.ed)7巻,アカデミック・プレス・インコーポレイテッド(Academic Press,Inc.),ニューヨーク,ニューヨーク 231〜277頁(1979年)及びブラント(Brunt)ら,バイオケミストリー(Biotechnology)6巻:25〜30頁(1988年)を参照されたい)。これらの活性には、損傷領域中の白血球及び線維芽細胞などの再成長する細胞が含まれ、細胞の増殖及び分化を誘導する。
【0008】
創傷治癒に関与し得る成長因子は、次のものを含むがこれに限定されない:血小板−誘導成長因子類(PDGF類);インシュリン−結合成長因子−1(IGF−1);インシュリン−結合成長因子−2(IGF−2);表皮成長因子(EGF);変換成長因子−α(TGF−α); 変換成長因子−β(TGF−β);血小板因子4(PE−4);及びヘパリン結合成長因子1及び2(それぞれHBGF−1及びHBGF−2)。
【0009】
PDGF類は循環血小板のアルファ顆粒中に蓄えられ、血液の凝固中、創傷部位で放出される(例えば、リンチ(Lynch)ら,ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J.Clin.Invest.)84巻:640〜646頁(1989年)を参照されたい)。PDGF類は次のものを含む:PDGF;血小板誘導脈管形成因子(PDAF);TGF−β;及びPF−4、これは好中球の化学誘引剤である(ナイトン(Knighton)ら,イン・グロウス・ファクターズ・アンド・アザー・アスペクツ・オブ・ウーンド・ヒーリング(in Growth Factors and Other Aspects of Wound Healing):バイオロジカル・アンド・クリニカル・インプリケーションズ(Biological and Clinical Implications),アラン・アール・リス・インコーポレイテッド(Alan R.Liss,Inc.),ニューヨーク,ニューヨーク,319〜329頁(1988年))。PDGFはミトゲン、化学誘引剤、及び線維芽細胞及び平滑筋を含む、間葉に由来する細胞におけるタンパク合成の剌激剤である(例えば、エイデルマン−グリル(Adelmann-Grill)ら,ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(Eur.J.Cell.Biol.)51巻:322〜326頁(1990年)を参照されたい)。
【0010】
IGF−1はPDGFと組み合わさって有糸分裂誘発及び培養間葉細胞に於けるタンパクの合成を推進する。PDGF又はIGF−1のいずれか一方の皮膚創傷への適用では治癒が増強されないが、両方の因子をともに適用すると結合組織及び上皮組織の成長を推進するようである(リンチ(Lynch)ら,プロシーディング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci)76巻:1279〜1283頁(1987年))。
【0011】
TGF−βはマクロファージ及び単球の化学誘引剤である。他の成長因子の存在又は非存在に依存した、TGF−βは多くの細胞型の成長を刺激又は阻害し得る。例えば、インビボで適用する場合、TGF−βは治癒している皮膚創傷の引張強さを増加する。TGF−βはまた、内皮細胞有糸分裂を阻害し、線維芽細胞によるコラーゲン及びグリコサミノグリカンの合成を剌激する。
EGF、TGF−α、HBGF類及びオステオゲニンなどのその他の成長因子はまた、創傷の治療において重要である。胃の分泌物及び唾液に存在するEGF、及び正常な及び転換された細胞によりつくられるTGF−αは、構造的に関連があり、同じ受容体を認識し得る。これらの受容体は上皮細胞の増殖を媒介する。
【0012】
両方の因子は、皮膚創傷の上皮の再形成を促進する。外因性のEGFはケラチノサイト及び皮膚の線維芽細胞の増殖を剌激することによって創傷の治療を推進する(ナニー(Nanney)ら,ジャーナル・オブ・インベスティゲイティング・オブ・ダーマトロジー(J.Invest.Dermatol.)83巻:385〜393頁(1984年)及びコフェイ(Coffey)ら,ネイチャー(Nature)328巻:817〜820頁(1987年))。EGFの局所的適用は、ヒトにおける部分的厚さの創傷の治療速度を促進する(シュルツ(Schulz)ら,サイエンス(Science)235巻:350〜352頁(1987年))。脱ミネラル化した骨から精製されるオステオゲニンは、骨の成長を推進するようである(ルイテン(Luyten)ら,ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)264巻:13377頁(1989年)を参照されたい)。さらに血小板抽出物は、局所的適用のための軟膏(salve又はointment)の形になっている血小板−誘導創傷治療処方が記載されている(例えば、ナイトン(Kinghton)ら,アニューアル・オブ・サージェリー(Ann.Surg.)204巻:322〜330頁(1986年)を参照されたい)。
【0013】
ヘパリン結合成長因子類(HBGF類)はまた、線維芽細胞成長因子類(FGF類)としても知られ、酸性HBGF(aHBGFもまたHBGF−1又はFGF−1として知られる)及び塩基性HBGF(bHBGFもまたHBGF−2として知られる)を含み、上皮細胞を含む中胚葉細胞及び神経外胚葉細胞に対する有効なミトゲンである(例えば、バーゲス(Burgess)ら,アニューアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Ann.Rev.Biochem.)58巻:575〜606頁(1989年))。さらにHBGF−1は内皮細胞及び大グリア細胞に対して走化性である。HBGF−1及びHBGF−2は両方ともヘパリンに結合し、タンパク質の分解からそれらを保護する。HBGF類によって示される一連の生物学的活性は、これらが創傷治癒において重要な役割を担っていることを示唆している。
【0014】
塩基性線維芽細胞成長因子(FGF−2)は脈管形成及び線維芽細胞の移動及び増殖の有効な刺激剤である(例えば、ゴスポダロウィッツ(Gospodarowicz)ら,モレキュラー・アンド・セルラー・エンドクリノロジー(Mol.Cell.Endocinol,.)46巻:187〜204頁(1986年)及びゴスポダロウィッツ(Gospodarowicz)ら,エンドクライン・レビューズ(Endo.Rev.)8巻:95〜114頁(1985年)を参照されたい)。酸性線維芽細胞成長因子(FGF−1)は内皮細胞の有効な脈管形成因子であると示されている(バーゲスら,前掲(1989年))。しかし、FGF成長因子が線維芽細胞に対して化学走性であるにしても確立はされていない。
【0015】
従って、成長因子は創傷治癒及び組織修復の特異的な促進に非常に有用である。しかし、これらの創傷治癒の促進への使用は矛盾した結果を与える(例えば、カーター(Carter)ら,イン・グロウス・ファクターズ・アンド・アザー・アスペクツ・オブ・ウーンド・ヒーリング:バイオロジカル・アンド・クリニカル・インプリケーションズ,アラン・アール・リス・インコーポレイテッド,ニューヨーク,ニューヨーク,303〜317頁(1988年)を参照されたい)。例えば、ブタにおいて標準化された皮膚創傷に別々に適用したPDGF、IGF−1、EGF、TGF−α、TGF−β及びFGF(HBGFとしても知られる)は、創傷において結合組織又は上皮の再生についてほとんど効果がなかった(リンチら,ジャーナル・クリニカル・インベステイゲーション 84巻:640〜646頁(1989年))。残る因子については、TGF−βは単独で最大きい応答を剌激する。しかしPDGF−bbホモダイマーとIGF−1又はTGF−αのようなファクターの組み合わせは、結合組織の再生及び外皮形成において劇的な増加をもたらす。(Id.)ツボイ(Tsuboi)らは、開いた創傷へのbFGFの日常的な適用は、治癒が減退したマウスにおいて創傷治癒を刺激するが、正常なマウスにおいては刺激しないことを報告している(ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メティスン(J.Exp.Med.)172巻:245〜251頁(1990年))。一方、恐らく成長因子を含んでいるであろうブタ又はウシの血小板溶解産物の粗調製物の、ヒトの皮膚の創傷への適用は創傷の閉鎖の速度を高め、治癒領域の細胞の数を増加し、血管の成長を増加させ、コラーゲンの沈着の全速度を増加させ、瘢痕組織の強度を強める(カーターら、前掲)。
【0016】
このような矛盾した結果の理由はわかってはいないが、通常の一連の生物学的活性を示し得る方法による創傷への成長因子の適用における困難さの結果であろう。例えば、数種の成長因子受容体は、最大の生物学的作用の産出を少なくとも12時間占有しなければならないと現在では考えられている(プレスタ(Presta)ら、Cell Regul.2巻:719〜726頁(1991年)及びルスナチ(Rusnati)ら、ジャーナル・オブ・セルラー・フィジオロジー(J.Cell.Physiol.)154巻:152〜161頁(1993年))。このような矛盾した結果のために、創傷治癒の刺激における成長因子の外因的な適用による役割は明らかではない。さらに、創傷と成長因子の間の接触を長引かせるための、成長因子を創傷へ適用することによる方法は現在知られていない。
【0017】
B.TS類
血漿タンパクを含むTS類及び外科手術用接着剤は、骨及び皮膚などにおける創傷の内部又は外部を密閉するために用いられ、血液の損失を減少し、止血を維持する。このようなTS類は、血液凝固因子及び他の血液タンパクをを含む。フィブリンシーラントとも呼ばれているFGは、血漿から調製される天然の凝塊に類似するゲルである。各FGの正確な成分は、出発物質として使用される特定の血漿画分の機能である。血漿成分の分画は、エタノール、ポリエチレングリコール、及び硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換及びゲル濾過クロマトグラフィーなどの標準的なタンパク精製法によって行う。典型的なFGは微量のアルブミン、フィブロネクチン、プラスミノーゲンを含有する。カナダ、欧州及び恐らくどの地域でも市販で入手可能なFGはまた、安定化剤としてアプロチニンも典型的に含有する。
【0018】
FG類は通常、次のものから製造される:(1)フィブロネクチン、因子XIII、及びフォンウィレブラント(von Willebrand)因子を含有するフィブリノーゲン濃縮物;(2)乾燥ヒト又はウシトロンビン;及び(3)カルシウムイオン。商業生産されたFG類は通常、ウシの成分を含有する。フィブリノーゲン濃縮物は寒冷沈降反応、次いで濾過によって血漿から製造し、トロンビンとカルシウムイオンのようなトロンビン活性化剤の混合物の、シーラント又は凝塊の形の組成物を得る。フィブリノーゲン及びトロンビン濃縮物は凍結乾燥して製造され、使用する前に塩化カルシウムの溶液と速やかに混合する。混合したら、組織表面上で凝固させ、架橋フィブリンを含む凝塊を形成する組織に成分を適用する。フィブリノーゲン濃縮物に存在する因子XIIIは架橋を触媒する。
【0019】
オーストラリア特許第75097/87号は1成分の接着剤を記載している。これはフィブリノーゲンの水溶液、因子XIII、アンチトロンビンIIIのようなトロンビン阻害剤、プロトロンビン因子、カルシウムイオン、及び必要であればプラスミン阻害剤を含む。ストロエトマン(Stroetmann),米国特許第4,427,650号及び同第4,427,651号は、創傷の閉鎖及び治癒を増強する、フィブリノーゲン、トロンビン及び/又はプロトロンビン、及びフィビリン溶解阻害剤、及びまた血小板抽出物のような他の成分も含有する粉末また噴霧可能な製剤の形の濃血漿誘導体の製造について記載している。ローズ(Rose)らの米国特許第4,627,879号及び同第4,928,603号は、フィブリノーゲン及び因子XIIIを含む寒冷沈降懸濁液の製造方法及びFG製造のための該懸濁液の使用を開示している。JP 1−99565は、創傷治癒のためのフィブリン接着剤の製造のためのキットを開示している。アルターバウム(Alterbaum)(米国特許第4,714,457号)及びモース(Morse)ら(米国特許第5,030,215号)は、自系のFG製造のための方法を開示している。さらに、改良FGデリバリーシステムは、次のいずれかに開示されているミラー(Miller)ら,米国特許第4,932,942号及びモースら,PCT出願WO91/09641号)。
【0020】
イムノ AG(IMMUNO AG)(ウィーン、オーストリア)及びベーリングヴェルケ(BEHRINGWERKE)(ドイツ)(ギフル(Gibble)ら,トランスフュージョン(Transfusion)30巻:741〜747頁(1990年))は、FG類を現在欧州及びほかの地域で市販している(例えは、イムノAGが所有する米国特許第4,377,572号及び同第4,298,598号を参照されたい)。TS類は米国では市販されていない。しかし、米国赤十字社及びバクスター/ハイランド(BAXTER/HYLAND)(ロサンジェルス,カリフォルニア)は最近FG(ARC/BH FG)を共同開発し、現在臨床試験中である。
【0021】
米国国外で臨床的に使用されているTS類はある種の臨床上の危険性が持ち上がり、米国では使用のための食物又は薬物による投与は認可されていない。例えば、欧州で許可されているTS類は、アプロチニン及びウシトロンビンなどの非−ヒト由来のタンパクを含んでいる。これらのタンパクは非−ヒト由来であるので、人々はこのタンパクに対してアレルギー反応を起こし得る。欧州では、FGの成分中に存在するウイルスの不活性化に加熱失活を使用している。しかし、この加熱失活法は、アレルギーになり得る変性タンパクを生じ得る。さらに、この失活法は、TS類中にウシタンパクを使用しているためにTS類中に存在し得る、ウシの海綿様脳症「狂牛病」を引き起こすプリオン(prion)が失活されないという心配がある。この病気は「スクレイピー(scrapies)」と呼ばれヒツジからウシへすでに交雑している考えらえているので、ヒトに感染し得るということは些細な問題ではない。
【0022】
ARC/BH FGはウシタンパクを含んでいないので、欧州で入手可能なTS類に勝るものである。例えば、ARC/BH TSはウシトロンビンの代わりにヒト・トロンビンを含み、アプロチニンを含まない。ARC/BH FGはウシタンパクを含まないので、欧州で入手可能なTS類よりもヒトに於けるアレルギーが少ない。さらに、ARC/BH FGは、溶媒デタージェント法(solvent detergent method)によりウイルスが不活性化され、この方法は生成する変性タンパクがより少なく、従って欧州で入手可能なものよりもアレルギーが少ない。
【0023】
従って、ARC/BH FGは、現在他の国で市販で入手可能なTS類に勝っている。
【0024】
FGは、主として臨床の局所的な適用のために処方され、出血を抑え、止血を維持し創傷の治癒を推進するために用いられる。FGの臨床的用途は最近、再検討されている(ギブルら,トランスフュージョン 30巻:741〜747頁(1990年);ラーナー(Lerner)ら,ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ(J.Surg.Res.)48巻:165〜181頁(1990年))。組織を密閉することによりFGは空気又は体液漏出を防止し、止血を誘発し、出血、血腫、感染などの創傷治癒を妨害し得る事象を減少又は防止することによって創傷治癒に間接的に寄与する。FGは止血を維持し、血液の損失を減少するけれども真の損失治癒特性を有することはまだ証明されていない。FGは、骨及び皮膚の損傷のような内部と外部の両方の損傷に適しており、止血の維持に有用であるので、その創傷治癒特性の増強に望ましいものである。
【0025】
フィブリノーゲン濃度が約39g/lであり、トロンビン濃度が200〜600U/mlであるFGは著しく増加した応力、エネルギー吸収及び弾性値を有する凝塊を生じる(バイアン(Byrne)ら,ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・サージェリー(Br.J.Surg.)78巻:841〜843頁(1991年))。フィブリン凝塊で満たされ(5mg/ml)、皮下に埋め込まれた貫通テトロンシリンダーは、空のシリンダーと比較したとき、コラーゲンの沈着増加の誘発を含む組織の肉芽形成を剌激する(ヘデリン(Hedelin)ら,ヨーロピアン・サージカル・リサーチ(Eur.Surg.Res.)15巻:312頁(1983年))。
【0026】
C.骨創傷とその修復
一連の骨(bone induction)誘導は、ウリスト(Urist)らによって最初に記載され、脱ミネラル化した皮質性骨マトリックスを使用するものである(クリニカル・オルソペディクス・アンド・リレイテッド・リサーチ(Clin.Orthop.Rel.Res.)71巻:271頁(1970年)及びプロシーディング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)70巻:3511頁(1973年))。同種異系のレシピエントに皮下的に埋め込まれた脱ミネラル化皮質性骨マトリックスは局所のミトゲンとして作用する因子を放出し間葉細胞の増殖を剌激する(ラス(Rath)ら,ネイチャー(ロンドン)278巻:855頁(1979年))。新たな骨形成が埋め込み後12日から18日の間に起こる。造血骨髄系統で充満した小骨の発達は21日までに起こる(レデイー(Reddi),A.,イン・エクストラセルラー・マトリックス・バイオケミストリー(in Extracellular Matrix Biochemistry)(ピーツ(Piez)ら,ed.)エルセビアー(Elsevier),ニューヨーク,ニューヨーク,375〜412頁(1984年))。
【0027】
脱ミネラル化骨マトリックス(DBM)は骨形成タンパク(BMP)として知られる骨誘発タンパク源であり、骨細胞の先祖の増殖を調節する成長因子である(例えば、ホイスカ(Hauschka)ら,ジャーナル・オブ・バイオケミストリー261巻:12665〜12674頁(1986年)及びカナリス(Canalis)ら,ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション 81巻:277〜281頁(1988年)を参照されたい)。8つのBMPが現在同定されており、BMP−1からBMP−8と略記されている。BMP−3及びBMP−7はまた、それぞれオステオゲニン(osteogenin)及び骨形成タンパク−1(OP−1)として知られている。
【0028】
残念ながら、DBM物質は粒子状骨髄自己移植と組み合わせない限り、臨床上の用途は殆ど無い。レシピエントの骨に外科的に注入し、治療効果をあげ得るDBMの量は制限されている。さらに、吸収は少なくとも49%であると報告されている(トリウミ(Toriumi)ら,アチーヴス・オブ・オトラリンゴロジー−ヘッド・アンド・ネック・サージェリー−(Arch.Otolaryngo.Head Neck Surg.)116巻:676〜680頁(1990年))。
【0029】
DBM粉末及びオステオゲニンは骨誘発潜在性が発現される前に、組織液により洗い流され得る。さらに、DBMパックされた骨腔への組織液の浸出又は創傷床への軟組織虚脱は、DBM及びオステオゲニンの骨誘発特性に有意に影響し得る2つの因子である。創傷床への軟組織虚脱は、創傷床内への骨適応幹細胞の適切な移行を同様に阻害し得る。
【0030】
粉末状のヒトDBMはアメリカの歯科医によって、口腔手術の間にできた顎骨腔をパックするために現在使用されている。しかし、粉末状のDBMは使用が困難である。
【0031】
精製BMP類は、FG(ハットリ(Hattori)ら,日本整形外科学会雑誌(Nippon.Seikeigeka.Gakkai.Zasshi.)64巻:824〜834頁(1990年);カワムラ(Kawamura)ら,クリニカル・オルソペディクス・アンド・リレイテッド・リサーチ235巻:302〜310頁(1988年);シュラグ(Schlag)ら,クリニカル・オルソペディクス・アンド・リレイテッド・リサーチ227巻:269〜285頁(1988住)及びシュワルツら,クリニカル・オルソペディクス・アンド・リレイテッド・リサーチ238巻:282〜287頁(1989年))、及び全血凝塊(ワン(Wang)ら,ジャーナル・オブ・セルラー・バイオケミストリー(J.Cell.Biochem.)15F:Q20 アブストラクト(1990年))を含む様々な方法によって投与されたとき、動物において骨誘発作用を有する。しかし、シュワルツら(前掲)は、異所性の骨誘発又はBMP依存性の骨再生におけるFGの明らかな正の作用も負の作用も実証してはいない。カワムラら(前掲)は、FG中の部分精製BMPを異所性の非骨部位中で試験した場合に、相乗効果を見いだした。
【0032】
TSはまた、創傷領域中へ移動し新しい組織を産生するために使用し得る細胞である「スカフォルド(scaffold)」としても供給し得る。しかし、市販で入手可能なFG及び他のTS類の調製品は非常に密度が濃いために、調製品中への及びそれを通る、細胞の移動が不可能になる。このことによってインビボ使用での調製品の効果が制限されることがある。
【0033】
骨癒着欠損と呼ばれている骨創傷のあるタイプでは、その上に新たな骨形成が自然には起こらない極微の隙間が存在する。臨床上、これらの状況のための治療は骨移植である。しかし、骨自己移植源は普通限られており、同種異系の骨の使用はウイルス汚染の高い危険性を伴う。この状況のために脱ミネラル化された、ウイルスを不活性化した骨粉末を誘引溶液として用いる。
【0034】
D.血管プロテーゼ
人工血管プロテーゼは、通常ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から製造され、ヒト及び他の動物の病的な血管の代わりに使用される。血管プロテーゼの開通性の程度を最大にし、凝塊形成を最小にするために、プロテーゼ上への非自己の内皮細胞の接種を含む様々な技術が用いられてきた。血管移植片と内皮細胞の両方に付着する様々な基質が、内皮細胞接種を増強する中間体基質として研究されてきた。これらの基質は凝固前の血液(ヘリング(Herring)ら,サージェリー(Surgery)84巻:498〜504頁(1978年))、FG(ローゼンマン(Rosenman)ら,ジャーナル・オブ・バスキュラー・サージェリー(J.Vasc.Surg.)2巻:778〜784頁(1985年);シュレンク(Schrenk)ら,ソーラシック・アンド・カーディオバスキュラー・サージェリー(Thorac.Card iovasc. Surg.) 35巻:6〜10頁(1986年);ケベカー(Keveker)ら,ソーラシック・アンド・カーディオバスキュラー・サージェオン(Thorac.Cardiovasc.Surgeon)34巻:49〜51頁(1986年)及びジラ(Zilla)ら,サージェリー 105巻:515〜522頁(1989年))、フィブロネクチン(例えば、ケスラー(Kesler)ら,ジャーナル・オブ・バスキュラー・サージェリー 3巻:58〜64頁(1986年);マセラク(Macarak)ら,ジャーナル・オン・セルラー・フィジオロジー(J.Cell.Physiol.)116巻:76〜86頁(1983年)及びラマナンジェノナ(Ramalanjenona)ら,ジャーナル・オブ・バスキュラー・サージェリー 3巻:264〜272頁(1986年)を参照されたい)、又はコラーゲン(ウィリアムス(Willams)ら,ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ 38巻:618〜629頁(1985年))を含む。しかし、これらの技術に関するひとつの一般的な問題は、接種に非自己の細胞を用いるため組織拒絶反応の可能性が生じるということである(例えば、シュレンクら,前掲)。さらに、融合性の内皮は通常、決してつくられるものではなく、作られるとしても数カ月を要する。この遅れの結果、血管プロテーゼは大きい閉塞(occlusion)速度を有する(例えば、ジラら,前掲)。
【0035】
E.脈管形成
脈管形成は新たな血管を誘導する。HBFG−1及びHBFG−2などの、ある成長因子は脈管形成性の成長因子である。しかし、コラーゲン海綿(トンプソン(Tompson)ら,サイエンス 241巻:1349〜1352頁(1988年));ビーズ(ヘイエク(Hayek)ら,バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)147巻:876〜880頁(1987年));海綿状構造に配列されたコラーゲンでコテーィングされた固形PTFEファイバー(トンプソンら,プロシーディング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)86巻:7928〜7932頁(1989年))を伴った投与;又は注入(プーマラ(Puumala)ら,ブレイン・リサーチ(Brain Res.)534巻:283〜286頁(1990年))は不規則で無秩序な血管の発生をもたらす。これらの成長因子は、インビボで一定の部位にて新しい血管の成長にうまく向かわせるように用いられていない。さらに、プラスチックガラスチェンバー中の皮下的に埋め込まれたフィブリンゲル(0.5〜10mg/ml)は、空のチェンバー又は食塩水培養液で満たしたチェンバーと比較すると、埋め込みから4日以内で脈管形成を誘導する(ドボラク(Dvorak)ら,ラボラトリー・インベスティゲーション(Lab.Invest.)57巻:673頁(1987年))。
【0036】
F.部位指向的、局所化ドラッグデリバリー
有効な、部位指向性のドラッグデリバリーシステムは医薬の幾つかの領域では非常に必要である。例えば、局所化ドラッグデリバリーは、歯周炎のような抗菌剤の全身的な投与が効かない局所的な感染の治療に必要である。全身的投与後の問題は、普通、標的部位に到達し得る抗菌剤の濃度の低さにある。局所的な濃度を上げるために全身的な用量を増加することは効果的ではあるだろうが、同時に毒性、微生物の耐性及び薬物不適合をもたらし得る。これらの問題を克服するために幾つかの別の方法が考案されているがどれも理想的ではない。例えば、非結晶の流動性マスとして、水性媒質に分散したコラーゲン及び/又はフィブリノーゲン及び安定な配置を可能にするタンパク様のマトリックス組成物もまた、薬物を局所的にデリバーすることが示されている(ルック(Luck)ら,米国再発行特許第33,375号;ルックら,米国特許第4,978,332号)。
【0037】
しかし、様々な抗生物質(AB)がFGから、比較的低い濃度で、数時間から数日の範囲の比較的短時間放出されると報告されている(クラム(Kram)ら,ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ50巻:175〜178頁(1991年))。大部分のAB類は自由に水に溶解し、調製するときはTS類中に加えられてきた。しかし、TET HCl及びFG中への自由に水に溶解する他のAB類の併合は、AB−添加FGを形成する間のフィブリンの重合を妨害する(シュラグ(Schlag)ら,バイオマテリアルズ(Biomaterials) 4巻:29〜32頁(1983年))。この妨害は、AB−FG混合物中に達成し得るTET HClの量と濃度を制限し、AB濃度依存性であるようだった。FGからのABの比較的短い放出時間はAB−添加TSの比較的短い寿命及び/又はAB−TS中のABの形及び/又は量を反映し得る。
【0038】
G.TS類からの薬物放出の制御
幾つかの臨床的応用のために、制御され、局所化された薬物放出は望ましいものである。前記で論じたように、幾つかの薬物、特にAB類はFGのようなTS類に取り込まれ、そこから放出されている。しかし、薬物を補足したFGの比較的短い寿命を少なくとも部分的に明らかに反映する薬物放出の持続期間は、ほとんどあるいは全く制御されていない。したがって、延長された、局所的な薬物放出を可能にするためのFG及び他のTS類を安定化する方法は、TSからの他の補足物の取り込みと延長された放出のための新しい技術と同様、望ましくそして必要なものである。
【発明の開示】
【0039】
発明の要旨
一態様において、本発明は、シーラントが全層の皮膚創傷の治癒を阻害しない、TSを含む、問題の組成物を提供する。
【0040】
別の態様において、本発明は、シーラントの全タンパク質濃度が30mg/ml未満である、TSを含む、問題の組成物を提供する。
【0041】
別の態様において、本発明は、全タンパク質濃度が30mg/ml未満であり、補足物質が成長因子および/または薬物である補足TSを含む、問題の組成物を提供する。
【0042】
別の態様において、本発明は、全タンパク質濃度が30mg/ml以上であり、補足物質が成長因子および/または薬物である補足TSを含む、問題の組成物を提供する。
【0043】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含む、動物細胞の指向性移動を促進させる、問題の組成物を提供する(該成長因子は動物細胞の指向性移動を促進させるのに有効である)。
【0044】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含む、創傷治癒を促進させる、問題の組成物を提供する(該濃度は創傷治癒を促進させるのに有効である)。
【0045】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含む、人工血管の内皮形成を促進させる、問題の組成物を提供する(該濃度は人工血管の内皮形成を促進させるのに有効である)。
【0046】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含む、動物細胞の増殖および/または分化を促進させる、問題の組成物を提供する(該濃度は動物細胞の増殖および/または分化を促進させるのに有効である)。
【0047】
別の態様において、本発明は、TSおよび少なくとも1つの薬物を含む、少なくとも1つの薬物の局所的輸送を促進させる、問題の組成物を提供する。
別の態様において、本発明は、TSおよび少なくとも1つの成長因子を含む、少なくとも1つの成長因子の局所的輸送を促進させる、問題の組成物を提供する。
【0048】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含有する組成物を創傷に適用することを含んでなる、創傷治癒を促進するための方法を提供する(該濃度は創傷治癒を促進させるのに有効である)。
【0049】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含有する組成物を人工血管に適用することを含んでなる、人工血管の内皮形成を促進させるための方法を提供する(該濃度は人工血管の内皮形成を促進させるのに有効である)。
【0050】
別の態様において、本発明は、有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含有するTSの十分近くに細胞を置くことを含んでなる、動物細胞の増殖および/または分化を促進させるための方法を提供する(該濃度は該細胞の増殖および/または分化を促進させるのに有効である)。
【0051】
さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つの薬物含有するTSを組織に適用することを含んでなる、少なくとも1つの薬物を組織へ局所的に輸送するための方法を提供する。
【0052】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの成長因子含有するTSを組織に適用することを含んでなる、少なくとも1つの成長因子を組織へ局所的に輸送するための方法を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含有するTSを細胞の十分近くに置くことを含んでなる、動物細胞の指向性移動を得るための方法を提供する(該濃度は該細胞の所望の指向性移動を得るのに有効である)。
【0054】
本発明の態様において、TSはFGであってよい。
【0055】
本発明の種々の態様において、局所的フィブリノーゲン・コンプレックス(TFC)、ヒト・トロンビンおよび塩化カルシウムを混合することからFGを調製することができる。TFC濃度を変化させることは、最終FGマトリックスの密度に最も有意な影響を及ぼす。トロンビン濃度を変化させることは、最終FGの全タンパク質濃度に有意な影響を及ぼさないが、TFCのフィブリノーゲン成分の、フィブリンへの重合に必要とされる時間に深い影響を及ぼす。この作用はよく知られているが、FGを単独でかまたは補足されて用いる場合に、FGの有効性を最大限にするために用いることは、一般に認識されていない。この作用のために、FG成分の混合およびFG凝固間の時間を変化させることができる。従って、FGを創傷の深い間隙中により自由に流動させ、FGが凝固する前にFGを創傷に完全に満たすことができる。別法として、特に圧力下で創傷が液体を漏出している場合(即ち、血液、リンパ液、細胞間液等)、FGが創傷部位を刺激させないぐらい十分迅速にFGを凝固させることができる。この性質はまた、長い通路(即ち、カテーテル、内視鏡等)を伴う輸送装置をFGによって詰まらせないために重要であり、FGまたは添加FGを外科手術によってのみ近付き易い身体の部位に適用するために重要である。この作用はまた、懸濁液中の不溶性添加物質を保有し、それがアプリケーターまたは組織部位で凝固するのを妨げるのに重要である。
【0056】
本明細書中で用いるTFCは、精製およびウイルス的に不活性化されているヒト血漿タンパク質の凍結乾燥混合物である。再構成したTFCは、以下を含有する:
全タンパク質:100〜130mg/ml
フィブリノーゲン (凝固可能タンパク質として)全タンパク質の80% (最小)
アルブミン(ヒト):5〜25mg/ml
プラスミノーゲン:5mg/ml
XIII因子:10〜40U/ml
ポリソルベート−80:0.3%(最大)
pH:7.1〜7.5
【0057】
また、再構成したTFCはトレース量のフィブロネクチンも含有する。
【0058】
本明細書中に用いるヒト・トロンビンは、精製およびウイルス的に不活性化されているヒト血漿タンパク質の凍結乾燥混合物である。再構成したヒト・トロンビンは以下を含有する: トロンビンポテンシィ:300±50 IU/ml アルブミン(ヒト):5mg/ml グリシン:0.3M±.05M pH:6.5〜7.1 塩化カルシウムを十分な濃度で加えて、トロンビンを活性化させる。カルシウムが十分量である限り、その濃度は重要でない。
【0059】
成長因子を含有する本発明の組成物において、該組成物は阻害化合物および/または強化化合物を含有してもよく、ここで該阻害化合物は成長因子のどんな生物学的活性をも阻害するシーラントの活性を阻害し、強化化合物は成長因子のどんな生物学的活性をも強化するか、媒介(mediate)するか、または増進する(該阻害化合物または該強化化合物の濃度は阻害、強化、媒介または増進を達成するのに有効である)。
【0060】
本発明の成長因子補足TSは、創傷、特に糖尿病患者の皮膚潰瘍のような容易に治癒しない創傷の治癒を促進するのに有用であり、FGF−1、FGF−2、FGF−4、PDGF、EGF、IGF、PDGF−bb、BMP−1、BMP−2、OP−1、TGF−B、CIF−A、CIF−B、OIF、アンジオゲニン、エンドセリン、肝細胞成長因子およびケラチノサイト成長因子を含むがそれらに限定されない成長因子を輸送するのに有用であり、創傷部位および成長因子間の延長された接触のための媒体を提供する。成長因子を補足したTSは、熱傷および他の皮膚創傷を治療するのに用いられ、TSおよび、成長因子に加えて、抗生物質および/または鎮痛薬等を含むことができる。成長因子を補足したTSは天然または人工移植片(例えば、皮膚創傷用皮膚)の移植を助けるのに用いられる。また、成長因子を補足したTSは美容的に用いられてもよく(例えば、毛髪移植において)、ここでTSはFGF、EGF、抗生物質およびミノキシジル、ならびに他の化合物を含有することができる。さらに、皺および傷跡を治療するのに、シリコンまたは他の化合物を使用する代わりに、本発明の組成物を美容的使用する。この態様において、例えば、TSはFGF−1、FGF−4、および/またはPDGF、および脂肪細胞を含有する。該成長因子を補足したTSは外科創傷、骨折、または胃潰瘍および他のこのような内部創傷に、それらの治癒を促進するために適用することができる。例えば移植片が天然組織からなる場合のように、人工または天然移植片のいずれかを動物体内に組み込むのを助けるのに、本発明のTSを用いることができる。ある症状、例えば歯周炎、即ち持続性感染、骨吸収、靭帯損失および歯根膜ポケットの早発の上皮再形成を伴う主な問題の幾つかと戦うのに、本発明のTSを用いることができる。
【0061】
別の態様において、本発明はFG、DBM、および/または精製BMPの混合物を提供する。この混合物は、身体の細胞成分をその内に移動させ、従って必要とされる所で骨誘導を生じさせるマトリックスを提供する。タンパク質(例えば、フィブリノーゲンおよびXIII因子)、酵素(例えば、トロンビンおよびプラスミン)、BMP、成長因子およびDBM、ならびにそれらの濃度の点から、該マトリックス組成物は適切に配合されて、側頭骨骨格構造の寿命および発生する必要のある骨誘導を最適化する。全てのFG成分は生分解され得るが、骨誘導の間、新しく形成された骨の位置および形を決定できる小形にできない骨格を、該混合物は提供する。従って、軟組織の、骨の再建手術において問題である骨の偽関節欠乏への虚脱は避けられるであろう。後述の、軟骨発達を促進する、CIF−AおよびCIF−Bのような成長因子を補足したTSの使用は、損失または損傷した軟骨および/または損傷した骨の再建において有用であるだろう。
【0062】
好ましい態様において、有効濃度のHBGF−1をFGに加えて、創傷治癒能力を有する成長因子を補足したTSを得る。別の好ましい態様において、有効量の血小板由来抽出物をFGに加える。他の好ましい態様において、有効濃度の少なくとも2つの成長因子の混合物をFGに加え、有効量の成長因子を補足したFGを創傷組織に適用する。
【0063】
成長因子に加えて、DBMおよびBMPが含まれるがそれらに制限されない、薬物、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびに他の化合物をTSに加えてもよい。これらは創傷治癒を促進し、感染、新形成、および/または他の疾患過程に抵抗し、またはTS中の成長因子の活性を媒介または増強し、および/またはTS中の成長因子の活性を阻害するTS成分を阻害する。これら薬物には以下に挙げるものが含まれるが、それらに制限されない:テトラサイクリンおよびシプロフロキサシンのような抗生物質;5−フルオロウラシル(5−FU)、タキソールおよび/またはタキソテールのような抗増殖/細胞毒性薬物;ガングシクロビル、ジドブジン、アマンチジン、ビダラビン、リバラビン、トリフルリジン、アシクロビル、ジデオキシウリジン、およびウイルス成分または遺伝子産物に対する抗体のような抗ウイルス物質;α−またはβ−またはγ−インターフェロン、α−またはβ−腫瘍壊死因子、およびインターロイキンのようなサイトカイン;コロニー刺激因子;エリトロポイエチン;ジフルカン、ケタコニゾールおよびナイスタチンのような抗菌類物質;ペンタミジンのような抗駆虫物質;抗α−1−トリプシン、抗α−1−キモトリプシンのような抗炎症薬;ステロイド;麻酔薬;鎮痛薬およびホルモン。TSに加えてもよい他の化合物には以下に挙げるものが含まれるが、それらに制限されない:ビタミンおよび他の栄養添加物質;ホルモン;糖タンパク質;フィブロネクチン;ペプチドおよびタンパク質;炭水化物(単純および/または複雑の両方);プロテオグリカン;抗アンジオゲニン;抗原;オリゴヌクレオチド(センスおよび/またはアンチセンスDNAおよび/またはRNA)BMP;DBM;抗体(例えば、感染物質、腫瘍、薬物またはホルモンに対する);ならびに遺伝子治療試薬。遺伝的に変化させた細胞および/または他の細胞もまた、本発明のTSに含ませることができる。本発明の実施に用いることのできる骨誘導化合物には、以下に挙げるものが含まれるが、それらに制限されない:オステオゲニン(BMP3);BMP−2;OP−1;BMP−2A、−2B、および−7;TGF−β、HBGF−1および−2;ならびにFGF−1および−4。さらに、TSを破壊しないいずれのものをも、本発明のTSに加えることができる。
【0064】
本明細書中で報告する研究によって、FG中に遊離塩基TETまたはシプロフロキサシンHClのような化合物を含有させ、またはそれらによりFGをしょりすると、補足されたFGに延長された寿命を与えることが図らずも示される。この現象を利用して、TSからの薬物放出期間を増加させることができる。別法として、この現象を利用して、FGを安定化させるのに用いる化合物とは異なる、別の薬物の放出を調節でき(該薬物もまたTET−FGに組み込まれている)、および/またはインビボまたはインビトロでFGをより長期間持続させることができる。
【0065】
一般に、水に溶解し難い形態の薬物(例えば、遊離塩基のTET)は、その水に自由に溶解する形態よりも、TSからの薬物の輸送を増加させる。故に、薬物をフィブリノーゲンまたは活性炭のような不溶性担体にTS中で結合させて、補足されたTSからの薬物の輸送を延長させることができる。
別の態様において、補足されたTSは小器官中に用いることができ、例えばFGF−1、FGF−2、FGF−4、およびOP−1のような成長因子を含有することができる。
【0066】
別の態様において、本発明は、水難溶性形態の抗生物質(例えば、遊離塩基型のTET)および他の薬物の局所的輸送を促進する、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの不完全水溶解形態の抗生物質を含む組成物を提供する。
【0067】
本発明は、以前に用いられたTS組成物および方法より幾つかの点で有利である。最初の有利な点は、本発明の成長因子および/または薬物を補足したTSが理想的生分解可能な担体の多くの特徴を有すること、即ち、ヒト・タンパク質のみ含有して製剤化することができ、従って免疫原性問題および異物反応を排除するまたは最小限にできる;該組成物の投与は融通が効く;ならびに該組成物は宿主自身の自然のフィブリン溶解系によって分解するので、宿主細胞からの除去が必要でないことである。
【0068】
第二の有利な点は、内部または外部創傷に、延長した期間、成長因子および/または薬物を有効に輸送する、良い方法を本発明は提供することである。幾つかの成長因子受容体は、最大の生物学的効果を生じるのに少なくとも12時間占有されなければならないと現在信じられている。以前は、これを実行する方法がなかった。本発明は、成長因子およびその受容体間の延長された接触を生じさせ、従って強力な生物学的効果を生じさせる。
【0069】
本発明の第三の有利な点は、動物細胞が本発明のTS中におよびTSを通って移動することができ、TS中で成長できることである。これは隣接した組織および人工器官に細胞を移植するのを助ける。欧州で利用可能なTSの組成物に基づいて、それらの製剤を用いては不可能であると予想される。その代わり、動物細胞は市販のTSを分解するか周囲を移動しなければならない。欧州から市販TSを米国へ輸入することは不法であるので(米国における該市販TSの使用は、米国FDAによって許可されていない)、出願人はこれを容易に実証できない。
【0070】
第四の有利な点は、最初の液体の性質のために、本発明のTSが、多くの以前から利用可能な輸送系よりも、より徹底的かつ完全に表面を覆うことができることである。成長因子を補足したFGは人工血管の内部、外部、および細孔を覆うであろうから、生物材料の被覆および人工血管の内皮形成における本発明の使用について、これは特に重要である。この結果、TS中におよびTSを通って移動する内皮細胞の能力に加えて、自己内皮細胞の移植が人工血管の全長に沿って起こり、それによって血栓形成および抗原性が減少するであろう。以前に用いられたTSの場合、人工血管の末端で移植を開始し、少しでもその内部に進行させ、従って血栓形成および抗原性をより長期間発現させた。また、人工血管に対して以前に用いられたTSは最初、身体に拒絶され得、人工器官を通過する血液の剪断力によって容易に洗い落とされ得る非自己細胞でシード(seed)された。
【0071】
第五の有利な点は、本発明の補足されたおよび補足されないTSを成型することができ、従って殆どどんな所望の形でも注文して作ることができる。例えば、FGのようなTSはBMPおよび/またはDBMを補足でき、最も適当に骨創傷を治療するのに必要とされる形に注文して作ることができる。DMB粉末はその形を維持できないであろうから、DMB粉末単独でこれを行うことはできない。
【0072】
第六の有利な点は、TET−FGのような本発明のABを補足したFGが、補足しないFGに比べてFGの寿命および安定性を予想外にも増していることである。認知できる量のABがFG中にもはや残っていない後にさえ、この増加した安定性は継続する。例えば、遊離塩基TETから生成したTET飽和溶液中にか、またはCIP HCl溶液中に新しく形成したFG塊を浸すことによって、実質的に全部のTETまたはCIPがFG塊に残っている後にさえ保存されかつ安定であるFG塊を生成する。この効果をどのようにして得られるかに関して、どんな理論によっても拘束されることを望まないが、TETまたはCIPのようなABがTFC中にあるプラスミノーゲンを阻害し、FGを破壊すると信じられている。プラスミノーゲンを一度阻害すると、その継続された阻害はFG中に残っている認知できる量のTETまたはCIPに依存しないと思われる。この安定化効果の結果、TSの増加した貯蔵可能期間、および恐らくインビボにおける増加した持続性が期待できるであろう。
【0073】
本発明の第七の有利な点は、TSの延長された寿命および安定性の直接的な結果である。この予想外であるTSの安定性の増加の結果、薬物および/または成長因子の局所的な長い期間の輸送を得るために、ABを補足したFGを用いることができる。TETまたはCIPのような安定化薬物が実質的にTSを去った後にさえ、この輸送は継続するであろう。従って、例えばTETまたはCIPによって安定化されているTS中に固体形態、好ましくは遊離塩基のような水に難溶性形態の薬物を包含させることによって、安定化したTSに薬物(または成長因子)を延長された期間局所的に輸送させることができる。遊離塩基TETのような薬物の幾つかの形態は、TSの安定化および延長された薬物輸送の両方を可能にする。他の薬物は両方でなくどちらか一方を可能にすることができる。出願人の知る限りでは、延長された局所的薬物輸送を得るのに、TSを安定化させる化合物を用いた者は他にいない。
【0074】
出願人の発明の第八の有利な点は、部分指向的血管形成がインビボで起こり得ることである。局所的非特異的血管形成が証明されているが[同上]、出願人の知る限りでは、部分指向的血管形成を示している者は他にいない。
【0075】
本明細書に使用する場合、傷は生存器官中の任意の組織の傷害を含む。組織は、胃裏層または骨のような内部組織もしくは皮膚のような外部組織であり得る。
【0076】
このような傷は、胃腸管潰瘍、折れた骨、腫瘍、および皮膚の切傷または擦傷を含み得る。このような傷は、脾臓のような軟組織または骨のような硬組織中であり得る。傷は、外傷性傷を含む任意の薬剤、感染または外科的介入によるものであり得る。
【0077】
好ましい実施態様の記載
定義
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術的および科学的語量は、本発明が属する技術分野の技術者により通常理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載の全ての特許および公開は、参照して本明細書に包含する。
【0078】
本明細書に使用する場合、TSは、傷に適用して、傷を封鎖し、それにより血液の流失を減少させ、止血を維持する物質または組成物である。本明細書に使用する場合、FGは、組換体または血漿タンパク質から調整され、傷に適用して血餅を作り、それにより傷を封鎖し、血液の流失を減少させ、止血を維持する組成物である。FG、前掲はTSの1つの形である。
【0079】
本明細書に使用する場合、補足TSは、実質的な修飾なしで、成長因子、医薬または他の化合物、またはそれらの混合物を送達させる担体媒体として働くことができ、その粘性または吸着特性により、補足TSが所望の作用、例えば傷治癒の促進を産生するのに充分な時間その部位に接触し続けることができる任意のTSを含む。
【0080】
本明細書に使用する場合、成長因子補足TSは、少なくとも1種の成長因子が、その決まった目的に有効な濃度で添加されている任意のTSである。成長因子は、例えば傷治癒または組織(再)生を加速、促進または改善できる。成長因子補足TSは、医薬、抗体、抗凝固剤および:1)TS中の成長因子の生理活性を強化し、刺激し、または媒介する;2)シーラント中の成長因子の生理活性を阻害しまたは破壊するであろう成長因子補足TSの成分の活性を減少させる;または3)TSからの補足剤の延長した送達を可能にする;4)他の所望の特性を有する他の化合物を含む付加成分をまた含み得る。
【0081】
本明細書に使用する場合、強化化合物は、TS中の成長因子の生理活性を媒介し、またはそうでなければ増加させる化合物である。ヘパリンは、HBGF−1の生理活性を強化する化合物の例である。
【0082】
本明細書に使用する場合、阻害化合物は、TS中の成長因子(複数もある)の生理活性を妨害し、または阻害するTSの成分の有害活性を阻害し、妨害し、またはそうでなければ破壊する化合物である。阻害化合物は、成長因子を破壊から守ることによりその効果を働かせ得る。阻害化合物は、しかしながら、例えば成長因子補足TSの傷治癒のような所望の目的の本質である任意の活性を阻害しない。阻害化合物の例はヘパリンである。
【0083】
本明細書に使用する場合、成長因子は、細胞増殖、細胞分化、組織再生、細胞親和力、傷回復および/または任意の発育または増殖過程を制御または媒介する任意の可溶性因子を含む。成長因子は、当業者に既知の、天然源からの抽出、化学合成による製造、組換DNA技術を使用した製造および、ウィルスで不活化した成長因子に富む血小板遊離を含む他の技術を含む好適な手段により製造し得る。成長因子の語は、任意の前駆体、変異体、誘導体または同様の生理活性を有する他の形、または、成長因子が由来するまたはそうでなければ遊離されるそのサブセットを含むことを意味する。
【0084】
本明細書に使用する場合、内皮細胞成長因子(ECGF)およびFGF−1のような別の名前で当分野の技術者に知られているHBGF−1は、HBGF−1αの前駆体であるHBGF−1βまたはFGFのような他の切断された形を含むHBGF−1の任意の生理活性形を意味する。本明細書に参照して包含する米国特許第4,868,113号、ジェーヤら、はHBGFの各々の形のアミノ酸配列を明らかにする。HBGF−1は、したがって、HBGF−1の前駆体、切断または他の変形、生理活性を示すその変異体、またはそのサブセットを含む任意の生理活性ペプチドを含む。
【0085】
他の成長因子は、また当業者に別の学名で既知である。したがって、本明細書で一つの名前で言及されている特定の成長因子は、当業者に知られている成長因子の他の名前をまた含み、またその生理活性誘導体、前駆体、切断変異体またはその他の変形を含む。
【0086】
本明細書に使用する場合、生理活性は、インビボおよび/またはインビトロで特定の成長因子が関与する1個または全ての活性を意味する。一般に、成長因子は、分裂誘発活性(細胞増殖を誘発または持続する能力)を含む数個の活性、ならびに分化および/または発育を誘発または持続する能力を含む非分裂誘発活性を示す。加えて、成長因子は増殖および発育過程が進行する特定の細胞を集めまたは引き付けることができる。例えば、好適な条件下で、HBGF−1は内皮細胞を集め、そこからの血管形成を指示することができる。この活性により、成長因子補足TSは、それにより特定部位への血流および栄養を促進する手段を提供する。
【0087】
本明細書に使用する場合、延長された寿命は、TSの有用な寿命が、少なくとも2倍伸びることが視覚的に観察できることを意味する。
【0088】
本明細書に使用する場合、脱鉱物骨マトリックス(DBM)は、骨が塩酸または他の酸により脱カルシウムされた後の器官マトリックスを意味する。
【0089】
本明細書に使用する場合、骨形態形成タンパク質(BMP)は、DBMの骨誘導抽出物の存在により本来同定されるタンパク質に関する群を意味する。少なくとも8種の関連メンバーが同定され、BMP−1〜BMP−8と呼ばれる。BMPはまた他の名前でも既知である。BMP−2はまたBMP−2Aとして既知である。BMP−4はまたBMP−2Bとして既知である。BMP−3はまたオステオゲニンとして既知である。BMP−6はまたVgr−1として既知である。BMP−7はまたOP−1として既知である。骨形態形成タンパク質は、BMP−1〜BMP−8を意味するが、これに限定されない。
【0090】
本明細書で使用する場合、増加は、補足または非補足TSに使用して、動物の体の成分の内部または外部表面外形を変化することを意味する。
【0091】
本明細書に使用する場合、損傷を受けた骨は、折れた、砕けた、一部が欠けたまたはそうでなければ健康でない正常骨を意味する。
【0092】
本明細書に使用する場合、不完全な骨は、その機能を実行するために不充分な形または容量の骨を意味する。
【0093】
本明細書に使用する場合、TSに補足するのに使用する骨またはDBMは、粉末、懸濁液、細長い形または塊またはその所望の機能を行うのに必要な他の形であることができる。
【0094】
本明細書に使用する場合、細胞小器官は、天然、人工または天然および人工要素の組み合わせからなり得、天然細胞小器官の機能の完全または一部を代替する。例は、インシュリン遺伝子を含有する発現ベクターを形質導入された細胞で囲まれている毛細管のネットワークからなる人工膵臓である。このような細胞小器官は、I型糖尿病の患者の血流中にインシュリンを遊離する機能をする。
【0095】
補足TSの製造
本明細書に記載の本発明の任意の態様を実施する場合の第1工程として、補足物およびTSを選択しなければならない。補足物およびTSは当業者に既知の方法で製造し得、その供給者から購入し得、または本発明の方法により製造し得る。好ましい態様において、成長因子、医薬またはDBM補足FGを製造する。
【0096】
本発明の態様のいずれの場合も、補足剤は混合してTSを形成する前に、フィブリノーゲン、トロンビン、カルシウムおよび/または水成分に添加し得る。別法として、補足剤は、混合してTSを形成する成分に添加できる。
【0097】
本発明の態様において、カルシウムおよび/またはトロンビンが、例えば傷中の体液から、内因性に添加され得る。
【0098】
TSの製造
これに限定はされないが、血管プロテーゼのような本発明のある実施態様ならびに骨および軟骨増加において、細胞がその中および/またはそれを通して移動するTSが使用するのに好ましい。
【0099】
商業的に入手可能なFGのような任意のTSが、本発明のある実施態様において使用し得る。例えば、当業者に既知のFG(すべて本明細書に引用して包含する米国特許第4,627,879号;第4,377,572号;および第4,298,598号参照)は、イムノ・アクチエンゲゼルシャフト(IMMUNO AG)(オーストリア、ウィーン)およびベーリングヴェルケ・アクチエンゲゼルシャフト(BEHRINGWERKE AG)(ドイツ)のようなその供給者または製造者から購入できる。局所医薬伝達のようなこれらの使用において、選択したTSの特定の組成は、その機能が所望である限り重要でない。商業的に入手可能なFGは、インビトロ細胞増殖および/または分化;医薬伝達;成長因子伝達等のこれらに限定されないが、これらを含む本発明の態様における使用のために、成長因子、抗生物質および/または他の医薬を添加できる。
【0100】
本明細書に例示した実験のために、FGは新鮮凍結血漿由来の氷点沈殿物から製造した。使用したFGの成分は;フィブリノーゲン濃縮物;トロンビン;およびカルシウムイオンを含んだ。
【0101】
本発明の好ましい態様において、製造FG中の全タンパク質濃度は約0.01から500mg/FGmlである。更に好ましい態様において、製造FG中の全タンパク質濃度は約1から120mg/FGmlである。最も好ましい態様において、製造FG中の全タンパク質濃度は約4から30mg/FGmlである。
【0102】
本発明の好ましい態様において、FGを製造するために使用するフィブリノーゲン濃度は、約0.009から450mg/溶液mlである。更に好ましい態様において、本予備溶液中のフィブリノーゲンの濃度は、約0.9から110mg/mlである。最も好ましい態様において、本予備溶液中のフィブリノーゲンの濃度は、約3から30mg/mlである。
【0103】
好ましい態様において、FGを製造するために使用するトロンビンの濃度は、0.01から350U/mlである。更に好ましい態様において、トロンビン濃度は1から175U/mlである。最も好ましい態様において、トロンビン濃度は2−4U/mlである。
【0104】
カルシウムイオン濃度が、トロンビンの活性化を可能にするのに充分であることが重要である。好ましい態様において、USP塩化カルシウム濃度は0−100mMである。更に好ましい態様において、USP塩化カルシウム濃度は1−40mMである。最も好ましい態様において、USP塩化カルシウム濃度は2−4mMである。本発明のある態様において、カルシウムは、例えば傷周辺態様のように組織または体液から供給され得る。
【0105】
TSの製造において、注射用滅菌水を使用すべきである。
【0106】
成長因子、医薬および他の化合物の濃度は所望の目的に依存して変化するが、濃度はその決まった目標の達成するために有効であるのに充分多くなければならない。本発明の好ましい態様において、成長因子濃度は約1ng/FGmlから1mg/FGmlである。更に好ましい態様において、成長因子濃度は約1μg/FGmlから100μg/FGmlである。最も好ましい態様において、成長因子濃度は約5μg/FGmlから20μg/FGmlである。本発明の好ましい態様において、TETまたはCIP濃度は、0.01から300mg/FGmlである。本発明の更に好ましい態様において、TETまたはCIP濃度は0.01−200mg/mlである。本発明の最も好ましい態様において、TETまたはCIPの濃度は1−150mg/mlである。添加すべき補足剤の量は、種々の濃度で試験し、意図される目的および適用部位に有効であるものを選択することにより当業者が経験上決定できる。
【0107】
成長因子の製造 成長因子、またはその混合物は、当業者に既知の任意の製造法により製造し得、または商業的に購入し得る。任意の成長因子は、例えば、内皮細胞、線維芽細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、肝細胞および角膜細胞のようなある細胞型の増殖を刺激するおよび/または引き付ける成長因子および/または同じ細胞型および平滑筋細胞の成育を阻害する成長因子を含むものから選択され得るが、これに限定されない。このような選択は成長因子補足TSが適用される特定の組織部位および/または所望の作用の型に依存し得る。例えば、EGF補足TSが、眼の傷へのへの適用および胃潰瘍の治療に好ましいが、一方オステオゲニン補足TSが骨折および骨破壊の治癒の促進に好ましいものであり得る。
【0108】
他の好ましい態様において、HBGF−1βを製造し、FGに添加した。HBGF−1βまたはHBGF−1αまたは任意の他のHBGF−1の活性形は、天然源から、HBGF−1またはその誘導体を発現する遺伝的に製造した細胞から、または当業者の既知の方法により精製できる。
【0109】
HBGF−1βは、組換DNA法(ジェーエら、米国特許第4,868,113号;ジェーエら、J.Biol.Chem.262:16612−16617(1987))を使用して製造した。簡単には、DNAコードHBGF−1βを原核発現ベクター、pUC9誘導体にクローン化し、細胞内的に大腸菌内で発現させた。発現ペプチドを、次いで細胞から、高圧−減圧サイクルで作用する細胞分裂器を使用して、圧力により細胞を遊離させた。分裂の後、細胞残骸を濾過して回収し、ヘパリンセファロース(登録商標)親和性クロマトグラフィー、続いてCM−セファロース(登録商標)クロマトグラフィーを含む標準タンパク質精製法を使用して、上清からHBGF−1βを精製した。
【0110】
上記のHBGF−1に加えて、FGに加え得る他の成長因子は、HBGF−2、IGF−1、EGF、TGF−β、TGF−α、任意の血小板由来成長因子または抽出物、BMPおよび任意の成長因子の混合物を含むが、これに限定されない。後えば、成長因子の豊富な源として働く血小板由来抽出物を、TSに、HBGF−1のような他の成長因子に加えて、またはこれに代えて添加し得る。
【0111】
好ましい態様において、当業者に既知の任意の方法で製造した血小板由来抽出物を、TSに加える。このような抽出物は、FGと使用するために、血漿由来血小板から製造し得る。
【0112】
PDWHFは、製造し、FGに加え得る(キングトンら、Ann. Surg. 204: 322-33O (1986))。簡単には、PDWHFを製造するために、血液を抗凝固溶液に入れ、血小板豊富血漿を冷却遠心により製造する。血小板を単離し、トロンビンで刺激し、それはα顆粒球内容物の内容物を遊離する。血小板を回収し、残りの抽出物の有効な濃度をTSに加える。
【0113】
成長因子補足TSの付加成分
それらが本質的に血漿フラクションであるため、成長因子と共に使用することを計画したTSは、種々の要素を含み、その中のいくつかは選択された成長因子の生理活性を妨げる。例えば、FGの本質的な成分であるトロンビンは、タンパク質分解酵素として働き得、特異的にHBGF−1βを開裂する。したがって、選択した成長因子を、成長因子の生理活性を阻害しまたは破壊するTSの他の成分の活性から守るプロテアーゼまたは他の阻害剤のような付加成分を含むことが必要であり得る。
特定の阻害化合物の選択は、TS内の成長因子の生理活性を評価する下記の方法により経験的に決定できる。生理活性の評価法は当業者に既知である。
【0114】
加えて、ある成長因子が生理活性を発現するために、所望の活性を促進または媒介する化合物を含むことが必要であり得る。例えば、ヘパリンはHBGF−1の生理活性をインビボで促進する(例えば、ブルゲスら、Annu. Rev. Biochem. 58: 575-606 (1989)参照)。
【0115】
本発明の補足TSは、医薬、他の化学物質およびタンパク質を含み得る。それらは:TET、シプロフロキサシン、アミノキシチリンまたはメトロニダゾールのような抗生物質、活性化タンパク質C、ヘパリン、プロストラサイクリン(PGI2)、プロスタグランジン、ロイコトリエン、抗トロンビンIII、ADPアーゼのような抗凝固剤およびプラスミノーゲンアクティベーター;デキサメタゾンのようなステロイド、プロスタサイクリン、プロスタグランジン、ロイコトリエンの阻害剤および/または炎症を阻害するためのキニン;カルシウムチャンネル阻害剤のような心臓血管薬;ブピバカインのような局所麻酔剤;および5−フルオロウラシル(5−FU)、タクソールおよび/またはタクソトレートのような抗増殖/抗癌剤を含み得るが、これらに限定されない。これらの添加化合物は、ポリクローナル、モノクローナルまたはキメラ抗体または機能的誘導体またはフラグメントをまた含み得る。それらは、例えばPDGFおよび/またはTGF−βのような平滑筋増殖、またはTSで処理する領域内または近くの他の望ましくない細胞型の増殖を阻害する抗生物質であり得る。これらの抗生物質は、抗癌、抗血小板または抗炎症活性が必要な場合、また有用であり得る。一般に、効果が部位直接的送達により改善された任意の抗生物質が、TS送達系と共に使用するのに優れている。
【0116】
成長因子補足TSの傷治癒特性の評価のためのアッセイ 特定の成長因子補足TSが、傷治癒を促進するか否かを確認するため、およびそれを行うのに最適な成長因子の濃度を選択するために、組成物を、当業者に既知の任意の方法で試験し得る(例えば、ツボイら、J.Exp.Med.172:245-251(1990);クサンダーら、J.Am.Acad.Dermatol.22:781-791(1990);およびグリーンハルら、Am.J.Path.136:1235(1990)参照)。インビボおよびインビトロアッセイの両方を含み、それによりTS組成物中の選択された成長因子の活性が評価できる任意の方法を使用し得る。例えば、HBGF−1βの活性は、2個の別々のインビトロアッセイを使用して評価する。第1に、成長因子補足FGで飽和したプラスチック表面で覆われた浅い液体層中に懸濁した内皮細胞の増殖を測定した。第2に、HBGF−1存在下の培養線維芽細胞の3H−チミジン取り込みを測定した。
【0117】
インビボアッセイとして、HBGF−1βを添加したFGで、マウスをモデル系として使用して、インビボ治癒促進能力を測定した。本方法において、同一のパンチバイオプシーをマウスの背面領域に作り、それを次いで試験群、処理対象群および未処理対照群に分けた。試験群マウスの傷は成長因子補足TSで処理した。処理対照群のマウスの傷は、非補足TSで処理した。未処理群の傷はTSで処理しなかった。傷治癒の進行が測定可能になった、一般に1週間から10日後、マウスを屠殺し、傷組織を顕微鏡試験し、各々の群の傷治癒の程度を組織学的に評価した。
【0118】
成長因子補足TSの細胞増殖誘発および細胞増加能力をまた当業者に既知のインビトロ法で評価した。例えば、成長因子の生理活性の測定について上記のおよび実施例に詳述のインビトロアッセイを、TS組成物内の成長因子の活性の試験に使用し得る。
【0119】
一般に、阻害および/または強化化合物の補足の必要性は経験的に決定できる。例えば、下記の実験において、HBGF−1補足FG中のHBGF−1βは、特異的に確率的方法で開裂され、FG調整物の成分、ほとんどトロンビンは、応答可能であったことを示唆する。HBGF−1に結合し、あるタンパク質分解活性から守ることが知られているヘパリンを、HBGF−1補足FGに加えた。相対的に低い濃度のヘパリンが、HBGF−1βをFG中のその活性を破壊する開裂から守った。したがって、HBGF−1を含むTS組成物は、ヘパリンまたはHBGF−1をFG中のトロンビンまたは他のタンパク質分解物質による開裂から守る他の物質を含み得る。
【0120】
同様に、TS成分による分解から成長因子を守る選択阻害剤の能力は、当業者に既知の任意の方法により評価し得る。例えば、ヘパリンの、FGの本質的な成分であるトロンビンによるHBGF−1の開裂阻害能力を試験する。このようにして、種々のヘパリン濃度の混同物およびHBGF−1補足FGを製造し、種々の時間インキュベーションした。混合物中のHBGF−1の生理活性およびHBGF−1の無傷さをSDSゲルのウエスタンブロットを使用して試験する。相対的に低い濃度、約1:1モル比のヘパリン:HBGF−1が、HBGF−1をFG中の分解から守るのに十分である。
【0121】
ある化合物が、TS中の成長因子の生理活性を強化、媒介または促進するのに使用できるか否かもまた経験的に決定できる。
【0122】
内部または外部傷への成長因子補足TSの局所的または内部的適用 臨床的使用の前に、成長因子およびTS、または成長因子補足TSを滅菌し、またはそうでなければウイルスのようにそれに混入している任意の病原菌を不活性にする処理をする。混入物を不活性にする方法は当業者に既知であり、溶媒−界面活性剤処理および熱処理を含むが、これに限定されない(例えば、タボールら、Thrombosis Res.22:233:238(1981)およびピッツキウィッチら、Transfusion28:198-199(1988))。
【0123】
補足TSは、直接、傷、他の組織または他の所望の位置に適用する。外傷で典型的には、傷の上部にスプレーすることを含む任意の手段で直接適用できる。手術中のように、内部にまた適用できる。骨のように、内部に適用する場合、血餅は段階的に経時的に溶解する。
【0124】
以下の実施例は説明の目的のみで包含されており、本発明の範囲を限定する意図はない。
【実施例】
【0125】
実施例1
FGへの補足のためのHBGF−1の製造
HBGF−1βコード化DNA含有プラスミドを含む組換大腸菌の培養800mlを製造した。誘発および24時間37℃で培養した後、細胞を遠心し、上清を捨てた。細胞ペレットを0.15M NaCl、pH7.3含有20mMリン酸緩衝液25mlに再懸濁した。懸濁細胞を細胞分裂器で分裂し、5000g、20分遠心して細胞残骸を残った溶液から分離した。
【0126】
ペレットを捨て、可溶性HBGF−1βおよび他の細菌性タンパク質を含む上清を2.6cm直径、10cm高のヘパリン−セファロース(登録商標)カラム(ファルマシア・ファイン・ケミカルズ、スエーデン、ウプサラ)に導入した。カラムを5カラム容量の20mMリン酸緩衝液、pH7.3中の0.15M NaClで洗浄し、20mMリン酸緩衝液中の0.15M NaClから2.0M NaCl勾配で溶出した。
【0127】
溶出液を280nmの吸光度で追跡した。UV吸収材料の3回のピークが溶出し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析した。ピーク番号3は、約17,400ダルトンの単一バンドとして電気泳動し、実質的に純粋なHBGF−1βを含んだ。
【0128】
HBGF−1βが混入細菌性タンパク質を含まないか更に確認するために、成長因子活性を含むピーク番号3を一晩20mMヒスチジン、0.15M NaCl、pH7.5に対して透析した。タンパク質2mgを1ml CM−セファロース(登録商標)(ファルマシア、スエーデン、ウプサラ)イオン交換カラムに掛けた。カラムを10ベッド容量(0.5ml/分)の20mMヒスチジン、0.15M NaCl、pH7.5で洗浄し、20mMヒスチジン、pH7.5中の0.15M NaClから1.0M NaCl勾配で溶出した。溶出液を280nmの吸光度で追跡しHBGF−1βがSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で同定された。
【0129】
本精製HBGF−1を、続く実施例においてFGに補足するのに使用した。
【0130】
実施例2
HBGF−1の安定性
FGの成分であるトロンビンによるHBGF−1βの分解(ロブ、Biochem.27:2572-2578(1988))を妨げ、または予防する成分をFGに加えることが必要であった。HBGF−1に吸収されるヘパリンを選択し、それがHBGF−1をトロンビンおよび他のFG中のタンパク質分解成分による分解から守ることができるか否かを試験した。増加させた濃度のヘパリン存在下でのHBGF−1の安定性を評価した。
【0131】
HBGF−1β(10μg/ml)、トロンビン(250U/ml)および増加した濃度のヘパリン(0、0.5、5、10、20および50U/ml)を含む溶液を37℃でインキュベーションした。アリコートを一定時間にインキュベーション溶液から回収し、凍結し、−70℃で更なる試験のために保存した。
【0132】
インキュベーションが終了した後、サンプルを融解し、15%SDSポリアクリルアミドゲル上で、ラミリ(Nature227:680(1970))の方法に従った還元条件下で分離した。ゲルをニトロセルロース上に電気ブロットし、HBGF−1に対応するバンドを、HBGF−1に対する親和性精製ポリクローナルウサギ抗血清を使用して同定した。ウエスタンブロットを図1に示し、それに17,400mwでHBGF−1バンドを見ることができる。結果は、5U/ml程低い濃度のヘパリン存在下で、HBGF−1がトロンビンによる分解から保護されていることを示唆する。加えて、実施例3に記載のようにその生理活性は変わらなかった。
【0133】
実施例3
ヘパリンおよびトロンビン存在下でインキュベーションした後のHBGF−1βの生理活性
実施例2に記載の、ヘパリン5U/ml含有インキュベーション混合物中のHBGF−1の生理活性を、NIH 3T3細胞の3H−チミジン取り込みアッセイを使用して測定した。
【0134】
NIH 3T3細胞を96ウェルプレートに挿入し、37℃で、0.5%ウシ胎児血清(BCS;GIBCO、ニューヨーク、グランド・アイランド)含有ダルベッコ修飾培地(DMEM;GIBCO、ニューヨーク、グランド・アイランド)中で飢餓条件下で、細胞が30から50%コンフルエンスに到達するまでインキュベーションした。2日後、サンプル由来の実施例2中で製造した種々の希釈のHBGF−1を各々のウェルに培地を代えずに添加した。希釈剤(インキュベーション緩衝液)を成長因子の場所に、陰性対照として加え、成育のために必要な成長因子含有10%BCS含有DMEMをHBGF−1の場所に、陽性対照として加えた。
【0135】
37℃で18時間インキュベーションした後、0.25Ciの3H−チミジン、特異的活性6.7μCi/molを各々のウェルに加え、インキュベーションを37℃で更に4時間続けた。プレートをリン酸緩衝化食塩水(PBS)で濯ぎ、冷10%トリクロロ酢酸(TCA)0.5mmolで15分、4℃で固定した。TCAを除去し、プレートをPBSで濯ぎ、酸沈殿物質を0.1N 水酸化ナトリウム0.5ml/ウェルで、1時間室温で溶解させた。サンプルをシンチレーションバイアルに移し、シンチレーション液(ニューイングランド・ヌクリアー、アクアシュア(登録商標))10mlをバイアル当たりに加えた。
【0136】
図2に示す結果は、トロンビンおよびヘパリン存在下でインキュベーションしたHBGF−1が生理活性を残していることを証明する。観察されたチミジン取り込み濃度依存性は、インキュベーション時間と別であり、典型的には成長因子濃度の関数として細胞増殖に依存することが予期された。成長因子は典型的には細胞増殖が最大で最適濃度を示す。
【0137】
トロンビンおよびヘパリン存在下でのHBGF−1の生理活性はまたは内皮細胞増殖観察により測定した。ペトリ皿表面をHBGF−1補足FGで飽和した。
【0138】
内皮細胞の浅い層を加え、細胞数を測定した。経時的に細胞数が増加した。加えて、細胞は血管に組織化するように見えた。
【0139】
したがって、HBGF−1はその生理活性を、HBGF−1をトロンビンの分会活性から守り成長因子補足FG中のHBGF−1活性を促進し得るヘパリンを含むHBGF−IFG中で残す。
【0140】
実施例4
FG血餅からのHBGF−1分散
ヘパリン10U/mlおよびトロンビンおよび40mM CaCl2含有フィブリノーゲン複合体0.3mlを混合することにより、5mlプラスチック試験官内でFG血餅を形成させた。4個の試験官は下記の通りである:
(A)トロンビン0.5U/mlおよびHBGF−1 10μg/ml;
(B)トロンビン0.5U/mlおよびHBGF−1 50μg/ml;
(C)トロンビン5U/mlおよびHBGF−1 10μg/ml;
(D)トロンビン5U/mlおよびHBGF−1 50μg/ml。
【0141】
各々の血餅は、0.2Mヒスチジン緩衝液、pH7.3で覆った。重層緩衝液のサンプル30μlを各々の管から2時間毎に回収し、ウエスタンブロットを行った。
【0142】
実験の結果は、血餅から分散したHBGF−1が時間の関数および血餅中のその濃度の関数であり、血餅中のトロンビン濃度はHBGF−1が血餅から遊離する速度に影響を与えないことを証明する。
【0143】
実施例5
成長因子補足FG中のヒト臍帯静脈内皮細胞の行動: 野生型および変異体FGF−1の効果
酸性線維芽細胞成長因子(FGF−1)補足FGのヒト内皮細胞におけるインビトロでの効果を研究するために、これらの細胞の懸濁液を、均等に広げた層のフィブリノーゲン約9mg/mlおよびトロンビン0.25NIH単位/ml含有FGを含む2.5ml直径10cmのペトリ皿に加えた。FGを以下の方法で添加した:
(A)成長因子補足せず;
(B)100ng/ml、活性、野生型FGF−1補足;
(C)100ng/ml、不活性変異体FGF−1補足;
(D)10ng/ml、活性、野生型FGF−1補足。
【0144】
FG層上に蒔いた細胞を7日間、10%ウシ胎児血清(FBS)含有DMEM中に維持した。
【0145】
細胞は、生理活性FGF−1補足FGに接触させた場合、効率良く伸長し、増殖する(図3および4)。非補足FG(図5)または生理的不活性FGF−1補足FG(図6)と接触させた場合、細胞は伸長するが、増殖は相対的に遅い。
【0146】
実施例6
FGF−1補足FG中のヒト臍帯静脈内皮細胞の行動
その成長を研究するために、1mlあたり105またはそれ以上の細胞のヒト臍帯内皮細胞を、そのタンパク質濃度が4mg/mlであるFGに着床させた。FG中のトロンビンの濃度は0.6NIHU/mlに調整した。全実験に使用する培養培地は、10%ウシ胎児血清、ストレプトマイシン10μg/ml、ペニシリン100U/ml、FGF−1 1ng/mlおよびヘパリン10U/ml添加M199(シグマ・ケミカル・カンパニー、セントルイス、MO)であった。
【0147】
FG中24時間以内に細胞は伸長し、多足形になり、互いに接触した場合、細胞ネットワークを形成した(図7)。この成長は少なくとも5日間続いた。図8は48時間のこの状態を示す。
【0148】
対照として、同一細胞懸濁液をフィブロネクチン10μg/cm2で覆った表面で培養した。対照細胞は敷石状形を獲得し、本形態を少なくとも5日保った。図9および10はそれぞれ24時間および48時間のこの状況を示す。
【0149】
実施例7
FG中のPMEXNEO−3T3−2.2細胞の行動
PMEXNEO−3T3−2.2細胞は、遺伝子操作したタンパク質の発現が可能な修飾ゲノムを含む線維芽細胞である(フォローら、J.Biol.Chem.268:2960-2968(1993))。本細胞のFG中での行動を測定するために、ウェル当たり105細胞を3種の条件下で培養した:(1)FG中;(2)FGの表面;および(3)FGの非存在下(対照)着床させた。実験を、24ウェルプレートで、10%FBS添加DMEM培地(シグマ・ケミカル・カンパニー、セントルイス、MO)中で2個ずつ行った。FGタンパク質濃度は4mg/mlであった。同様の実験において、1.5%FBS添加媒体を陰性対照として使用した。
【0150】
10%FBS添加媒体の存在下、3群全ての細胞は成育し、コンフルエントになった。1.5%FBS添加培地の陰性対照実験において、細胞は成育し、FG存在下で少なくとも5日生存したが、それなしではしなかった。しかしながら、成育は、1.5%FBS添加よりも10%FBS添加FGにおいて速かった。FG非存在下、1.5%FBF添加培地において、細胞は48時間以内に死滅した。生存の基準は、試験細胞の10%FBS添加新鮮培地に移した時の細胞の増殖する能力であった。
【0151】
実施例8
HBGF−1予備処理による伸長PTFE血管移植片の内皮細胞化
2種の研究は、血液接触生体材料の内皮細胞(EC)マイトジェンによる予備処理は、内皮細胞化を促進することを証明した。第1の研究は、ウサギ大動脈に移植した伸長PTFE移植片に適応したHBGF−1補足FG懸濁液のインビボ崩壊特性を試験した。第2の研究において、同様の移植片をイヌの大動脈狭窄部位に移植した。脈管形成因子であるHBGF−1を研究に使用した。FGF、FGF−4および/またはOP−1のような他の成長因子もまた血管移植片の補足剤として使用できる。
【0152】
A.崩壊研究
一般に、修飾FGを、ヒト組み替え125I−HBGF−1の内部および外部移植片表面約1mg/cm2領域、ブタ腸粘膜ヘパリン20μg/cm2、およびフィブリノーゲン2.86mg/mlを、再組成した、商業的に入手可能なヒト・トロンビン(1000U/ml)2.86×10-2U/mlに加えることにより滅菌的に調整し、重合を誘発した。
【0153】
125I−HBGF−1は、以下のようにして特異的に製造した。フィブリノーゲンは、25mlPBS中にフィブリノーゲン500mgを加え、フィブリノーゲン濃度20mg/PBSmlを作ることにより再組成した。フィブリノーゲン60mgを含有する本溶液3mlを、12個のエッペンドルフプラスチック管に入れ、−70℃に維持した。これらの各々のアリコートを個々に使用した。
【0154】
商業的に入手可能な製造物(アルモール・ファーマシューティカル・カンパニー、カンカキー、IL)を希釈することにより、滅菌溶液中1:10の割合で、1000U/mlの濃度でトロンビンを再組成し、100U/mlの濃度を産生した。本トロンビン溶液を再び1:10に希釈し、10U/mlの溶液を産生した。
ウシヘパリン(アップジョン、カラマズー、MI)を、通常の食塩水を使用して1:1000の割合で1000U/mlの濃度の製造物を希釈することにより再組成した。
【0155】
再組成フィブリノーゲン 1および48/100(1.48)ml、再組成ヘパリン63μL、加えて125I−HBGF−115.66μLをガラスシンチレーション管に混合した。本混合物を、次いで3mlプラスチックシリンジに吸引した。本再組成トロンビン5mlをガラスシンチレーション管中に入れた。
【0156】
伸長PTFE移植片の一端を、プラスチック3方向栓ノズル上におき、そこで2−0絹縫合糸で結んだ。次いで、PTFEを3×3平方cmのパラフィン(登録商標)で包み、それを次いで直線止血鉗子出止め、防水性封印を確立した。第2の2−0絹縫合糸を、パラフィルムの栓への接合の上に行い、他の封印を形成した。直線止血鉗子を、次いで、PTFE/パラフィルムの2mmの末端を止めるのに使用した。
【0157】
等量のフィブリノーゲンおよびトロンビン溶液を上記のように調整し、混合して約30秒反応させ、その時、重合化が起こった。トロンビン−重合化フィブリンは、次いで不透明である。(この時間因子は、概算であり、一つのトロンビンロットと他のでは異なる。重合化する時間の好適な長さは、混合物の不透明さを見ることにより決定できる。)フィブリン/トロンビン混合物を、次いで1ccのシリンジに吸引した。(注:本移植片の容量は0.42mlであった。より多くの移植片の容量のために、より大きいシリンジの使用が必要である。)シリンジをコック栓に付け、混合物を手で5秒にわたって、液体がPTFEの割れ目から「露を結ぶ」ように見えるまで注入し、PTFEとパラフィルムの間の領域を満たした。3方向栓ノズルをPTFE移植片に対して3秒間閉め、コック栓上のPTFEの末端の結び目を切断するために、外科用メス刃を使用した。PTFE移植片/パラフィルムを栓から除き、パラフィルムエンベロープからPTFEを回収するのに止血鉗子を使用した。残った成長因子補足FGを移植片腔管から除くために、3番目の塞栓カテーテルを、移植片腔管が完全に奇麗になるまで、移植片に5回通した。成長因子補足FG処理PTFE移植片を、一晩、約12時間層流フード下で乾燥させた。処理移植片は、次いで処理移植片は移植の用意ができた。
【0158】
あるいは、本HBGF補足FGを34mm(24mm+両端5mm)×4mm(内部直径)の薄い壁で囲まれた、伸長PTEF移植片中へ圧還流し、それにより移植片腔管表面を覆い、移植片外部表面まで節を通って伸長させた。これらの移植片は、次いで24匹の3−5kgニュージーランドホワイドウサギの腎臓下部腹部大静脈中に挿入した。第1の研究において、動物を屠殺し、標本を0時間(外科的操作による損失を訂正するため)および、5、30および60分、1、7、14および30日後に外移植した。残った放射活性をガンマ計数により決定した。自然崩壊を訂正した残った125I−HBGF−1を、ゼロ時間の値に対するパーセントで示す。
【0159】
125I−HBGF−1の崩壊は、循環の再確立を伴う急速初期損失(%/分=−24.1、5および60分の間)、続く、一週間後の残り13.4%±6.9%および30日後の残り3.8%±1.1%である1時間後の遅延損失(%/分=−0.03)である古典的動態に従う。
【0160】
B.インビボ内皮細胞化実験
第2の実験は、HBGF−1補足FG懸濁液の効果を次の項目について評価した:イヌ大動脈腸骨内へ移植され広範囲に膨張した60μm節間距離の膨張PTFE移植片の内皮細胞化速度、時間の関数としてこれら内皮細胞の増殖活性、および観察された内皮細胞増殖を刺激するHBGF−1およびFGの相対的貢献度。
【0161】
3群の50×4mm非強化膨張PTFE移植片を12匹のイヌの大動脈腸骨位置に移植した。群1(6匹)にヘパリン20μg/cm2、2.86mg/cm2フィブリノーゲンおよび2.86×10-2U/cm2ヒトトロンビン+1ng/cm2HBGF-1を投与した。群2(3匹)には、HBGF-1を除き、同じFGを投与した。群3(3匹)には同じであるが、未処理対照移植片を投与した。トリチウム化チミジン(3H−Tdr:0.5μCi/kg)を10時間、移植前に注入した。移植片を7および28日において、ランダム高出力磁場で内皮細胞増殖に関し光線および電子顕微鏡、第VIII因子免疫歴化学およびエン・フェース(en face)オートラジオグラフィーのために移植した。各移植片は、処理群移植片がどれであるかを知らない3人の観察者によって観察した。内皮細胞増殖の相異は、統計学的に2方法ANOVAおよび独立(independent)t検定で分析した。
【0162】
7日において、FGおよびHBGF補足FG移植片の両者の33%は、内皮細胞が非連続的病巣であることが証明された(図11)。対照移植片の表面はフィブリン血塊のままであった。28日において、すべてのHBGF−1補足FGは、広範にわたり毛細管内方成長と内皮細胞化支流血管の表面との接触が観察され、これらは他の2群のいずれの試験片でも観察されなかった(図11および12)。
【0163】
図12が証明するように、未処理移植片(28日)はその表面において数個の可視的な内皮細胞を有する(パネルG)。FG単独で処理した移植片は内皮細胞を被覆した表面33%を有し、これは、FGの単独処理がある種の再内皮化を促進することを示す(パネルH)。しかしながら、HBGF-1を補足したFGで処理した移植片(パネル1)は、内皮細胞を完全に(95%以上)被覆しているようであり、これは、内皮細胞の敷石状形態を示す。すなわち、FGにより誘導された成長因子の組合わせは、生きている非血栓形成性内皮細胞により血管移植片を実質的に完全に被覆することを促進することができる。エン・フェース・オートラジオグラフィは、他の全ての群(時間および移植片処理の関数)に対する、28日でのHBGF-1-補足FG移植片における3H−TdRの内皮細胞DNAへの組み込みに関し、統計学的に有意な増加(p<0.5)を示した。
【0164】
これらのデータが証明するように、HBGF−1補足FG懸濁液の節間距離60膨張PTFE移植片への圧縮還流は毛細管内方成長および内皮細胞増殖の増加を介し内皮化を促進する。
【0165】
以上の実験は、小直径の血管移植片の自発的再内皮化および移植内皮細胞のより急速な合流を刺激する方法を向上させる。
【0166】
実施例9
FGにより使用のための血小板由来抽出物の製造
血漿減少血小板を調製し、ペレット化した。上清血漿を除去した。ペレット化した血小板を洗浄し、緩衝液(50mMヒスチジンおよび0.15M塩化ナトリウム、pH6.5)中に懸濁し、ウシトロンビンで処理した。処理の後、上清を遠心で集め、アリコートを−80℃で凍結した。抽出物を溶解し、FGまたは他のTSと混合した。
【0167】
この方法で得られた血小板抽出物は生理学的に活性であった。なぜなら、それは、放射活性標識チミジンの増殖NIH3T3のDNAへの組み込みを、対照に比し、増加させるからである。
【0168】
血小板抽出物の傷治療に対する効果を評価するため、HBGF−1βで実施例10以下で実施したと同じ実験を、糖尿病マウスで血小板抽出物を用い、行った。これらの実験結果から、血小板抽出物中の所定の低能度の成長因子(1つの傷あたり100μg以上の用量の血小板抽出物蛋白)が傷抽出物の促進に使用する必要性が明白である。
【0169】
実施例10
皮膚創傷治癒におけるインビボでのFG(フィブリン膠)の効果
材料および試験方法
A.補足なしのFG
実験動物
雌性C57BL/KsJ-db/dbマウスをジャクソン・ラボラトリーズ(Jackson Laboratories)[メイン州バー・ハーバー(Bar Harbor)]から入手したが、該動物は試験開始時において8〜12週齢であった。マウスは、検体の保護促進のために外科処置後は別々のケージで飼育した。
【0170】
これらのマウスに見られる代謝異常が、ヒトの糖尿病患者の代謝異常と類似しているため、糖尿病患者における創傷治癒のモデルとして用いる。さらに、細胞浸潤が著しく遅いこと、肉芽組織が形成されること、および傷口が閉じるのに必要となる時間を特徴とするこのマウスモデルにおける創傷治癒から、ヒト糖尿病患者における創傷治癒との関連性が示唆されるといえよう。
【0171】
FG
本試験に用いた濃縮フィブリノーゲン複合体(TFC)は、新鮮な冷凍保存したヒト血漿から製造されたものである。このTFC製品[カリフォルニア州ロサンゼルスのアメリカン・レッド・クロス(American Red Cross)−バクスター・ハイランド・ディビジョン(Baxte rHyland Division)製]は凍結乾燥体で提供される。凍結乾燥体を3.3mlの滅菌水で還元した後の本試験で用いたTFC溶液のタンパク質特性は次のとおりである:総タンパク質120mg/ml;フィブリノーゲン90mg/ml;フィブロネクチン13.5mg/ml;XIII因子17U/ml;およびプラスミノーゲン2.2μg/ml。
【0172】
ウシトロンビン[500ユニットバイアル,イリノイ州カンカキーのアーマー・ファーマシューテイカル・カンパニー(Armour Pharmaceutical Co.)製]を5mlの滅菌水で再構成し、80mMの塩化カルシウム溶液[ニューヨーク州シャーリーのアメリカン・リエージェント・ラボラトリーズ(American Reagent Laboratories)製]で滅菌的に希釈し、濃度を15U/mlにした。
【0173】
等体積のTFCと再構成トロンビンを混合してFGを製造した。直径6mmの円い全厚(フル・シックネス)創傷をふさぐために、0.05mlのTFCを0.015mlのトロンビンと混合した。このように製造されたFGのタンパク質濃度は約60mg/mlであった。
【0174】
タンパク質濃度を約1mg/mlに希釈したFGも用いた。
【0175】
外科処置
マウスに、7mlのケタミン塩酸塩[100mg/ml;Ketaset,アイオワ州フォート・ドッジのアヴェコ・カンパニー(Aveco Company)製]、3mlのキシラジン[20mg/ml;Rompun,カンザス州シャウニーのモベイ・コーポレイション(Mobey Corp.)製]および20mlの生理的食塩水の混合液を、体重100g当たり0.1mlの投与量で筋肉内投与して麻酔した。背中の毛を刈り込み、皮膚をポビドン−ヨウ素溶液で洗浄し、70%アルコール溶液で拭いた。2つの全厚の円い外科的創傷(直径6mm)を、マウスの背中の下部の両側に、それぞれ中心線から等距離の位置に作成した。2つの創傷の中央端部が、少なくとも1.5cmの非創傷皮膚部分で分離されているように創傷を作成した。
【0176】
創傷作成後すぐに、FGおよび/または包帯(dressing)で該計画的創傷を覆った。包帯は透明な半透性の接着性ポリウレタン包帯[商品名:オプサイト(Opsite),オハイオ州マシロンのスミス・アンド・ネフュー(Smith and Nephew)製]を用いた。包帯の適用前に、創傷領域の周囲にベンゾイン化合物のチンキ剤[ミネソタ州ミネアポリスのパドック・ラボラトリーズ(Paddock Laboratories)製]を塗布した。ベンゾインによって傷口に炎症が生じる可能性を回避するために、創傷の縁から少なくとも0.5cmはチンキ剤を塗布しない領域を設けた。試験期間中、創傷に対して、もうこれ以上の処置は行わなかった。
【0177】
処置グループ
マウスは4つのグループに分けて処置を行い、それぞれその個体自身を対照と設定した。
グループI:実験動物の創傷のうち、一方にFG(60mg/ml)を処置し、他方には何も処置をしなかった。両方の創傷をオプサイトで覆った。
グループII:創傷の一方に希FG(1.0mg/ml)を局所的に処置し、他方には何も処置をしなかった。両方の創傷をオプサイトで覆った。
グループIII:創傷の両方にFG(60mg/ml)を局所的に処置した。創傷の一方は何も覆いをせず、他方はオプサイトで覆った。
グループIV:両方の創傷に対して何も局所的処置をしなかった。創傷の一方は何も覆いをせず、他方はオプサイトで覆った。
【0178】
創傷の分析
試験の9日目に実験動物を安楽死させた。0.5mmの非創傷皮膚も含めて、創傷を筋肉層まで切開し、緩衝10%ホルマリン溶液に浸けた。組織学研究室にて標本を加工した。標本をパラフィンに埋め込み、創傷の中間部分を5μm毎に切断した。組織学的分析のために、ヘマトキシリンおよびエオシン、またはマッソンのトリクロム液を用いてスライドを染色した。
【0179】
各スライドに1〜15までの組織学的評点を付与した(表1)。1は全く治癒しなかったに相当し、15はコラーゲン繊維からなる瘢痕が生じたことに相当する。評点のスケールは既存のものを用いた。既存の評価基準に変更を施し、上皮形成、細胞侵入の度合、肉芽組織の形成、コラーゲン沈着、血管分布および創傷収縮の程度をさらに正確に反映するようにした。組織学的評点は、少なくとも3名の分析者が別々に付与した。創傷の治療結果を描写するコードは、全部の観測者の評点付与が完了してから解読した。
【0180】
【表1】
【0181】
統計的分析
分析者の組織学的評点を平均し、平均値±その標準誤差で表した。1対t試験を用いて、異なる処置グループにおける1対平均を比較した。分析は、RS/1 リリース3.0統計ソフトウェアパッケージ[BBNソフトウェア・プロダクツ・コーポレイション製]を用いて行った。
【0182】
サンプル平均の差を試験するためにスタティスティカル・アナリシス・ソフトウェア(SAS)システムを用いて変動を分析した。
【0183】
結果
結果創傷のふさがりにおけるFGの効果(グループI)
グループIでは、各マウスの両方の創傷をオプサイトで覆った。このような条件下で、タンパク質濃度60mg/mlのFGを片方の創傷のみに局所適用すると、FG処置側で(3.06)、非処置側で(5.26)と統計的に低い平均組織学的評点となった(P<0.005)(表2)。
【0184】
【表2】
【0185】
創傷のふさがりにおける希FGの効果(グループII)
このグループでは、両方の創傷をオプサイトで覆い、片方の創傷に希FG(タンパク質含量1mg/ml)の局所適用を行った結果、非処置の創傷の平均組織学的評点(4.36)と有意には異ならない値(4.0)が処置創傷において得られた(P=0.17)(表3)。
【0186】
【表3】
【0187】
FG処置創傷におけるオプサイトの効果(グループIII)
両方の創傷にタンパク質濃度60mg/mlのFGを処置したこのグループでは、片方のみオプサイトを適用した結果、オプサイトで覆わなかった創傷の平均組織学的評点(4.93)と有意には異ならない値(4.2)が、オプサイト適用創傷において得られた(p=0.11)(表4)。
【0188】
【表4】
【0189】
1対の非処置創傷のふさがりにおけるオプサイトの効果(グループIV)
両方の創傷にFGの局所的処置を行わないこのグループでは、片方のみオプサイトを適用した結果、オプサイトで覆わなかった創傷の平均組織学的評点(6.31)よりもかなり低い値(4.92)が、オプサイト適用創傷において得られた。(P<0.0005)(表5)。
【0190】
サンプル平均の差における処置効果のANOVAは、<0.0001において有意であった。
【0191】
【表5】
【0192】
論考
本試験の結果から、マウスにおいて開口した創傷に適用した場合、(1)止血用に製剤された濃度(60mg/ml)のFGを処置すると、9日目における組織学的評点は低く、すなわち非処置の創傷の治癒速度よりも治癒速度が遅いこと;(2)タンパク質濃度(1mg/ml)の希FGを処置すると、9日目における組織学的評点は高く、すなわちこれによって治癒速度が速められること;および(3)この動物モデルにおいては、半透性包帯オプサイトの適用は、それ自身単独で創傷のふさがりを非常に妨害するものであることが示された。
【0193】
FGを用いた試験の結果を比較する場合、FGの総タンパク質濃度は重要な変数である。創傷治癒および組織修復の促進におけるフィブリンの優れた効果が報告されているが、本試験では、通常市販製剤におけるフィブリノーゲン濃度よりも低濃度のフィブリノーゲンを用いた。
【0194】
濃度60mg/mlのFGは創傷のふさがりを遅らせた(グループI)。ヨーロッパで市販されているFGの総タンパク質濃度は、フィブリノーゲンとトロンビン成分とを混合した後では、37.5〜57.5mg/mlである。この試験で得られたデータは、現在、止血および接着用製剤として製剤化されているFGが開口性の皮膚創傷に適用した場合、その治癒を遅らせることを示すものである。この効果は、(1)創傷治癒過程に積極的に関係している細胞成分の移動あるいは増殖に対する機構的妨害、(2)創傷収縮の機構的阻害、または(3)1つ以上のFG成分による創傷治癒上の化学的阻害効果によるものであろう。9日目において固体フィブリノーゲン由来の血餅が創傷表面に残っていることから、創傷のふさがりに対する機構的妨害および阻害の方が、治癒を遅らせることに対して、より実際性の高い説明であろう。
【0195】
これが原因であるかどうかを審査するために、FGの総タンパク質濃度を1mg/mlに希釈した。この希FGの局所的適用からは、非処置の創傷と余り異ならない組織学的評点が得られた(グループII)が、このことは、総タンパク質濃度が低いと、創傷治癒過程を有意であるほどには阻害しないことを示唆している。
【0196】
同じ濃度のFG(60mg/ml)で処置され、かつオプサイトで覆われた創傷であって、異なる処置グループ(グループIおよびIII)に属する創傷の平均の組織学的評点が有意に差がある値である(グループIでは3.06、グループIIIでは4.2)ことも注目に値する。これらのデータは、幾らかの動物が、同じ処置を受けたにもかかわらず、他の動物よりも治癒が速かったり遅かったりするために、動物個体間の変動が、同じ処置変数をもつある動物群から明確な結論を導くのを困難にすることを示している。このことは、平均評点の標準誤差の範囲に反映される。このような理由で、各動物はそれ自身を対照とするのであり、たとえば同じ動物における創傷を相互に比較した。試験創傷として、同じ動物に対照となる創傷があることによって、動物個体間の変異性は最小化される。これらのデータはまた、オプサイトなどの接着性包帯が創傷のふさがりを有意に遅らせることも示している。しかし、ブタにおける部分的(partial)厚み皮膚創傷では、FGのタンパク質濃度が、創傷治癒速度に関係するとは考えられないことにも注意すべきである。
【0197】
B.インビボでの創傷治癒における成長因子を補足されたFG
糖尿病マウスの創傷修復速度におけるHBGF−IB成長因子補足FGの効果を評価した。この試験に用いた方法は前記の試験と全く同じである。6匹の試験マウスの背中に2つの直径6mmの全厚皮膚バイオプシーを施し、5μgのHBGF−1βを加えたFGを満たした。6匹のマウスにおける同一のバイオプシーには処置を行わず、6匹の対照マウスのバイオプシーにおいては、補足なしのFGを満たした。9日後、すべてのマウスを屠殺し、各創傷および周囲の皮膚からなる厚さ5ミクロンの組織学的プレパレーションを製造し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。各サンプルにおける創傷修復の程度、処置グループについては、どのグループ由来かは同定せずに、それぞれ3人の熟練した分析者が、ブラインドで評価をおこない、コラーゲン沈着、上皮形成、肉芽組織の厚みおよび炎症細胞,繊維芽細胞の密度ならびに血管分布を審査した。各サンプルに対して1〜15の評点を付与した(修復なし〜完全修復)。補足なしのFGで処置した創傷からのサンプルは、一貫して低めの評点を付与され、非処置創傷または成長因子補足FGで処置された創傷からのサンプルは、高い評点を付与された。
【0198】
実施例11
インビボ系における骨誘導物質の運搬ベシクルとしてのFG材料及び方法
フィブリンシーラント
濃ヒトTFC(Baxter Hyland Division,San Pedro CA)及びヒトトロンビン(Baxter Hyland Division,Glendale,CA)をスクリーンされた、凍結したばかりのプールされた血漿から米国赤十字のために製造した。それらの製造中、両方の成分は溶媒洗浄方法(ニューヨーク血液センター)を用いるウイルス不活性化を行い、凍結乾燥の形態で供給された。無菌水(3.3ml)を用いて再構成後、TFC溶液の蛋白特性は以下の様であった。総蛋白=120mg/ml;フィブリノーゲン=90mg/ml;フィブロネクチン=13.5mg/ml;因子XIII=17U/ml;及びプラスミノーゲン=2.2μg/ml。
【0199】
ヒトトロンビン(1000Uバイアル)を無菌水(3.3ml)を用いて再構成し、続いて40mM塩化カルシウム溶液(American Regent Laboratories,Shiriey,NY)中に希釈して濃度を15U/mlとした。ヒトトロンビンを頭蓋冠の損傷上に置いた埋め込まれたディスクを調製するために使用した。
【0200】
局所用牛トロンビン(5000Uバイアル、Armour Pharmaceutical Co.,Kankakee,IL)を無菌水(5ml)を用いて再構成し、40mM塩化カルシウム溶液中に希釈して濃度を15U/mlとした。牛トロンビンを筋肉内バイオアッセイのためのインプラントを調製するために使用した。
【0201】
本発明の態様を実施する場合にフィブリノーゲンは1から120mg/mlFGの濃度で存在しなければならず、より好ましくは3から60mg/mlFG、最も好ましくは10から30mg/mlFGの濃度で存在しなければならない。DBMは約1から1000mg/mlFG、より好ましくは50から500mg/mlFG、最も好ましくは300から500mg/mlFGの近似濃度で存在しなければならない。決定された骨粉末のサイズは0.01から1000ミクロン、好ましくは20−500ミクロン及び最も好ましくは70−250ミクロンでなければならない。骨誘導成長因子(群)又はBMP群は約1から100μg/mlの濃度で存在しなければならず、その濃度は所望の目的を達成するために効果的である。この態様において骨誘導物質として使用してもよい成長因子には以下のものが含まれるがそれらに限定されない:オステオゲニン(BMP3);BMP−2;OP−1;HBGF−1;HBGF−2;BMP2A,2B及び7;FGF−1;FGF−4;及びTGF−β。骨修復における利用のためのTSを補うために抗生物質などの薬を追加して使用できる。
【0202】
インプラント調製
ラットDBMを以下の様に調製した。ラットの長い骨の骨端を後ろに骨幹のみを残して除去した。必要ならば骨幹を裂き、次に骨髄を脱イオン化水(Milli−Q 水精製システム(登録商標)、Milliporeコーポレーション、Bedford,MA)を用いて徹底的に洗い流した。次に骨幹を室温にて洗浄した。4℃において脱イオン化水1000mlを骨100gに加えた。この混合物を30分間攪拌し、水を捨てた。このステップを2時間繰り返した。
【0203】
4℃において、冷無水エタノール(1リットル)(Quantum Chemicalコーポレーション、U.S.I.Division,Tuscola,IL)を骨各100gに加えた。15分間攪拌後、エタノールを捨てた。これを計1時間の持続期間において4回繰り返した。
【0204】
フェームフード下、ジエチルエーテル(500ml)(Mallinckrodt Speciality Chemicals,Paris,KY)を骨に加えて骨を覆った。これを15分間穏やかに攪拌し、次にエーテルを捨てた。骨にさらにエーテル500mlを加え、この混合物を15分間攪拌した。エーテルを再度捨てた。発生するエーテルの蒸発用のフェームフード下に骨を残した。脱脂した骨は超低温フリーザー(−135℃)中に無期限に保管できる。
【0205】
次に骨を粉砕して骨粉末とした。この粉末をふるいにかけて74から420ミクロンサイズの粒子を集めた。
【0206】
この骨粉末の10グラムを遠心管(250ml)に入れた。泡立ちを避けるために各々の管に0.5NHCl(8ml)をゆっくり加えた。次に各々の管の内容物を穏やかに攪拌した。15分後、各々の管に追加の0.5NHCl(100ml)を10分かけて加えた。次にこの管を穏やかにさらに35分間攪拌した。
【0207】
この粉末がHCl中にある総時間は1時間を越えなかった。
【0208】
次に各々の混合物を4℃において3000rpmにて15分間遠心分離した。
【0209】
次に上清のpHを調べた。もしもpHが2よりも大きければ、ペレットを妨害せずに、化学シンクに注いだ。pHが2より小さい場合には、上清を有害廃棄容器に注いだ。ペレットが失われた場合には遠心分離時間を30分に増加した。上清のpHが0.5N HClと等しくなるまでこれらのステップを繰り返した。
【0210】
次にペレットを攪拌によって脱イオン水(180ml)を用いて洗浄し、一様な懸濁液を得た。次にこの懸濁液をさらに15分間遠心分離した。次にこの上清を以前の様にデカントした。上清のpHが脱イオン水のpHと等しくなるまで、この洗浄を繰り返した。
【0211】
次にペレットをフリーザー中で−180℃にて凍結した。次に標準的手順を用いてそれらを凍結乾燥した。
【0212】
1mm厚及び8mm直径のディスク型インプラントを4片のアルミニウム型を用いて製造した(図13)。ラットDBM粉末(25mg)を型の穴に入れた。
【0213】
次にTFC(30μl)をDBMの上にピペットでおき、DBMが全溶液に取り込まれるまで混合した。使用したTFCの濃度は10、20、40、80又は120mg/mlであった。次にトロンビン溶液(30μl)(40mM塩化カルシウム中15U/ml)をDBM−TFC複合体に加え、混合し、ピストン形態のふたを用いてディスク型に圧縮した。DBM粉末25mgが20μlの体積を有することが決定された。DBMがFGに添加された後、最終蛋白濃度は以下の様であった:
【0214】
【表6】
【0215】
DBMのみ又はFGのみ(4,8,15及び45mg/ml総蛋白濃度)からなるディスクインプラントを同じ型を用いて同様に製造した。
【0216】
DBM(50mg)をアルミニウムの型に注ぎ、次にTFC(60μl)をこのDBMに加え、十分取り込まれるまで混合した。次にトロンビン(60μl)をこのDBM−TFC複合体に加えて混合し、ピストン形態のふたを用いて直径1cm及び厚さ2mmのディスク型に圧縮した。次にこのディスクを手動で所望の型(三角、四角又はドーナツ形)に切り抜いた。
【0217】
筋肉内バイオアッセイ実験のために、70ミクロンのメッシュサイズを有し、1cm×1cmの大きさである無菌のナイロン袋にインプラントを入れた。
【0218】
動物
雄のLong−EvansラットをCharles River Labor atories(Wilmington,MA)から入手した。筋肉内バイオアッセイのために28から35日齢のラットを使用した。3カ月齢のラットを開頭術実験のために使用した。
【0219】
手術
塩酸ケタミン(10ml)[ベタラー(Vetalar)、100mg/ml,Parke−Davis,Morris Plains,NJ]及びキシラジン(5ml)[ロムプン(Rompun)、20mg/ml、Mobayコーポレーション、Shawnee,KN]及び生理食塩水(0.9%NaCl)からなる混合物を用いて、体重100グラム当たり0.1ml用量にて筋肉内投与することにより動物を麻酔した。動物の手術部位を70%アルコール溶液を用いて、その後ポビドン−イオジン溶液で準備した。その後、無菌技術を用いて手術手順を行った。
【0220】
筋肉内バイオアッセイ。中線腹切開を行い、平滑切開を用いて胸筋の間にスペースを作った。デザインされた実験物質を含むナイロンエンベロープを筋肉内のスペースに挿入し、3−0 Dexon縫合を用いて固定した(図14)。次に反対側面において同じ手順を繰り返した。次にステープルを用いて皮膚を閉じた。4週間後にインプラントを採集し、x線にかけて組織学用の準備をした。
【0221】
ディスク型インプラントを無作為に配置し、それらは以下のものを含んでいた:DBMのみ(n=12);種々の濃度のFGのみ(4mg/ml,n=14;8mg/ml,n=3;15mg/ml,n=3;及び45mg/ml,n=12)及びDBM−FG複合体(4mg/ml,n=12;8mg/ml,n=12;15mg/ml,n=12;及び45mg/ml,n=12)。四角の、三角の及びドーナツの形のインプラントが各々4つあった。
【0222】
開頭術手順。 鼻の骨から中央矢状縫合稜へ線状切開を行った。柔らかい組織を穏やかに折り返して骨膜を開頭術部位(後頭の、前頭の、頭頂部の骨)から切開した。必要に応じて豊富な食塩水潅注を用いた遅い速度の回転ハンドピースの中でトレフィンを用いて8mmの開頭術を調製した。頭蓋冠ディスクを切開してはずし、その間、硬膜の穿孔及び上位矢状縫合洞貫入を避けた。この8mmの頭蓋冠の傷は対照として処理を行わないで放置するか又は1×8mmDBM又はDBM−FGディスクを詰める(図15)。次に皮膚を皮膚ステープルで閉じた。
【0223】
手術後、各々のラットを耳のパンチにより識別し、ケージに戻し、そこで2−3時間の以内を歩行させた。
【0224】
第1のセットの頭蓋冠のインブラントはDBMのみ(25mg,n=3)又はFGマトリックス中のDBM(15mg/ml,n=2,30mg/ml,n=3;及び45mg/ml,n=3)からなり、28日後に回収した。第2のセットの頭蓋冠のインプラントはFGマトリックス(30mg/ml)中のDBM(25mg)からなり、手術後の種々の時間(28日、n=10;3カ月、n=9;及び4カ月、n=5)に回収した。
【0225】
インプラントの回収
指定された時間にラットを二酸化炭素室中で安楽死させた。実験受容体床(すなわち、大胸筋又は頭蓋冠)の周囲にて皮膚を切開し、柔らかい組織を受容体床から折り返した。オルトトピックの部位において、3−4mmの隣接する骨を有する開頭術を正面−後頭−頭頂複合体から回収した。ヘテロトピックの部位において鋭い平滑な切開が、埋め込まれたナイロンエンベロープを回収するために用いられた。
【0226】
ラジオグラフィー
このインプラントを、X−OMATL(登録商標)高コントラストのコダックx線フィルム(イーストマン コダックカンパニー、Rochester,NY)を用いて、Minishot Benchtop Cabinetx線システム(TFIコーポレーション、West Haven,CT)中、30kvp、3Ma及び10秒においてラジオグラフィーを行った。灰色レベルの濃度の筋肉内及び開頭術部位のラジオグラフィーをケンブリッジ920像分析システム(登録商標)(Cambridge Instruments Limited,ケンブリッジ、英国)を用いて分析した。
【0227】
組織学的分析
回収された標本(柔らかい及び硬い組織)を直ちに保存液の入った適切にラベルされたバイアルに入れ、組織学処理を行った。組織学の標本は頭頂の直径を通って4.5ミクロメーターの厚さの切片であった。各々の受容体部位に対してヘマトキシリン及びエオジン染色を用いて1つの切片を調製した(細胞及び基質の細部のフォトマイクログラフィー及び試験のために)及びもう1つの切片はフォン・コッサ染色を用いて調製した。
【0228】
結果
筋肉内プラントのラジオグラフィー
すべてのDBMディスクは放射線−不透明(radio−opaque)像を示した。48個の埋め込まれたDBM−FCディスクの内45個(93.75%)が放射線−不透明であった。すべてのDBM−FCディスクは蛋白質濃度(4−45mg/ml)には無関係に放射線−不透明を誘き起こした(図16)。いくつかのDBMディスクの放射線−不透明測定(図16)ではDBM−FGディスクよりも高かったが、他の測定はDBM−FGディスクの測定範囲内に良く入った。DBMが補充されていない32個のFGディスクの内30個(93.75%)が放射線−不透明を展開しなかった。
【0229】
四角、三角又はドーナツの形のDBM−FGディスクはまた、DBMを補充していないFGディスクと比較して顕著に放射線−不透明であった。インプラントの元の形は一般に残っていた。
【0230】
筋肉内インプラントの組織学
骨髄で満たされた中心の洞を伴う小骨の形成及びあらかじめ埋め込まれたDBM粒子の吸収によって証明される様に、筋肉内のバイオアッセイはDBM及びDBM−FGインプラントに対して陽性であった。
【0231】
頭蓋冠のインプラントのラジオグラフィー FGマトリックス中のDBMインプラントは、一般に、DBMインプラントのみ又は未処理の対照よりもより放射線−不透明であることがx線によって示された。DBMを運搬するために使用された種々のFG濃度の間には認識できる違いはなかった。未処理の8mm直径の頭蓋冠の損傷のラジオグラフィーでは無視し得る量の放射線−不透明を示した。
【0232】
30mg/mlFGマトリックス中のDBMを用いる第2のセットの頭蓋冠のインプラントは、28日の頭蓋冠と比較して3カ月の又はは4カ月の頭蓋冠の開頭術の傷内における放射線−不透明部が顕著に増加していることを示した(図17)。
【0233】
頭蓋冠のインプラントの組織学
未処理の8mmの開頭術の傷は繊維結合性組織が開頭術の傷を横切って発達していることのみを示した(図18)。DBMインプラントの組織学は、DBM粒子が全ての部位に拡散されていることを示した。いくつかのDBM粒子は宿主の骨の先端の上下に移動した(図19)。しかし、大部分のDBM粒子は開頭術の傷の範囲内にあり、良く脈管形成された緩い結合性の組織に囲まれていた。破骨細胞によるDBMの活性的な吸収が示された。多くのDBM粒子はまた肝細胞によって集団化されることがわかった。破骨細胞によって建造される新しい類骨及び骨は全く明白であった。
【0234】
FGマトリックス中のDBMインプラントの組織学によって、DBM粒子が開頭術の傷内に局在し、より密なそしてより多くの細胞結合性の組織に囲まれていることが示された(図20及び図21)。類骨マトリックス及び骨の柱形成が全く明白であった。DBMインプラントのみを埋め込んだ開頭術の傷よりもDBM−FGディスクを埋め込んだ開頭術の傷において、より多くの骨髄が形成されることが示された。また、DBMインプラントのみ又は未処理の対照よりもDBM−FGディスクはより多くの新しい脈管形成があった。DBMを運搬するために用いた全ての濃度のFGにおいて骨再形成が明白であった。
【0235】
検討
FGの自然の生物適合性及び生物分解性は、それをDBM及びBMPのための理想的な運搬ベシクルとする特性である。FGは、骨の損傷を満たすために望ましい形態へのDBMの形状化を促進し、その損傷内にDBMを維持した、そしてDBMと共同性であったかもしれない。さらには、柔らかい組織の脱出は起こらず、骨の輪郭が維持された。DBMが補充されたFGは、骨芽の補充及び骨再形成を助けるために適切なミクロ構造、生物分解性プロフィール及び放出速度論を有していた。
【0236】
全般的に、データによると、FG中のDBM運搬は、いかなる試験されたFC蛋白質濃度においてもDBMのみが誘導した骨形成と同量の骨形成を誘導することが示された。さらに、DBMをFGと共に遠心分離して、特定の手術前の形態とした場合、誘導された骨は手術後に元の形がよく維持された。
【0237】
DBM−FGマトリックスの形態が新しく形成された骨の形態学を決定したので、DBM−FGマトリックスはあらかじめ決定された形に作らなければならない。しかし、溶液の形態のDBM−FGマトリックスは不規則的に形態化された損傷へ運搬するか又は注入でき、その場所において重合化し、DBM−FGが満たされた領域における骨形成を促進するだろう。
【0238】
実施例12
FGからの抗生物質(AB)の放出及びAB補足FGの寿命増加方法
A.AB−FGの製造
1.TETフリー塩基
注射用の水3.5mlを米国赤十字より提供された凍結ヒト局所フィブリノーゲン濃縮物(TFC)のバイアルに注入した。得られる溶液の蛋白濃縮物は約120mg/mlであった。
【0239】
米国赤十字/バクスター−ハイランド・インコーポレイテッド、グレンデイル、CAより提供された凍結乾燥トロンビン濃縮物を、注射用の水で調製した塩化カルシウムの40mM溶液3.5mlで再構成した。得られた溶液は約250U/mlを含有した。
【0240】
所望重量のTETを注射品質の塩化カルシウム(アメリカン・リエイジェント、シャーレイ、NYから購入)の存在で、1mlの再構成TFC溶液と、及び1mlの再構成トロンビン溶液と混合することにより、TET−FGを調製した。TETはフリー塩基形であり、シグマ・ケミカル・カンパニィ(セントルイス、MO)から購入した。直径12mmのミリポア培養プレート(ミリポア・コーポレイション、ベッドフォード、MA)中のミリポア膜上、ジュオフロ(商標)ディスペンサー(ハマーディクス、CA)によってTFCとトロンビンを混合することにより、TET−FGを形成させた。混合物を22℃で1時間放置した。TET−FG及びミリポア膜を含む6mm直径ディスクを6mmパンチバイオプシーを用い後者からカットした。TET−FG含有ディスクをTET放出研究に用いた。
【0241】
TET−FGからリン酸緩衝食塩水(PBS)又は唾液へのTETの放出は、2つの異なる設定条件下、24−ウエル細胞培養プレート(コーニング・グラス・ワークス、コーニング、NY)を用い測定した。一つの条件では、静止形態、2mlのPBS又は0.75mlの唾液を毎日、24−ウエル培養プレート中で置き換えた。他の条件では、連続変換形態、TET−FGからのTET放出を1日当り約3mlの速度で変換されるPBSで測定した。試料は分析するまで−20℃で貯えた。唾液は、10人の異なる人達から収集し、まとめて、5,000gで遠心により浄化した。次いで0.45μm孔径膜で濾過し、毎日の使用に4℃で保存した。
【0242】
TET−FGディスクから放出されたTETの濃度及び生物活性を測定するために、溶出TETを解凍し、320nmでスペクトル光度測定法で、及び/又は寒天平板上、イー・コリの阻害により生物学的に分析した。これらのアッセイを較正するために、それぞれ0ないし50及び0ないし500μg/mlのTET濃度をカバーする標準曲線を用いた。
【0243】
2.シプロフロキサシンHCl(CIP)−、アモキサシリン(AMO)− 及びメトロニダゾール(MET)補足FG
CIP HCl、AMO又はMETを含有するFGはTETについての前述の通りに製造した。これらABの、対応するAB−FGから近接の環境への放出をモニターするため、AB−FGディスクを、24ウエル細胞培養プレートの個々のウエルに置き、分析するまで、前のように収集し、毎日置き換え、そして−20℃で保存したPBS 2mlでカバーした。溶出液中のCIP、AMO及びMETの濃度をそれぞれ275、274及び320nmでスペクトル光度測定法で測定し、対応するABの0ないし50μg/mlを含有する標準曲線と比較した。
【0244】
B.AB−FGの構造的統合性
FG及びTET−FGディスクの構造的統合性の維持は、小さなスパーテルでディスクを「つつく」(poking)ことによる視覚観察と物理的調査によって評価した。ディスクを保存している間に切り取った多孔膜をTET−FGに付着し、それらの構造的統合性の評価の間にディスクの位置を守るのに用いた。又、ディスクの上部及び側方視覚の写真をとり、評価に用いた。
【0245】
FG及びTET−FGの構造的統合性は、無菌及び非無菌の両条件下で測定した。非無菌実験については、分析までPBS及び唾液を凍結保存した。無菌実験については、全方法を無菌条件下で行う以外は同一の操作を用いた。システムの不稔性は0.2mlの試料と2mlのブロスを37℃でインキュベートすることにより試験し、ブロスの濁度を48時間モニターした。濁度の欠除はシステムの不稔性を示した。CIP−、AMO−及びMET−FGの安定性は、非無菌条件下のみで上記と同様に研究した。
【0246】
C.AB−FGから放出されたABのインビボ抗菌活性
AB−FGから放出されたABの抗菌活性は、AB−FGの回りの毎回収集されたPBS又は唾液からの6mm直径ディスクの溶出液によりもたらされる阻止の領域の直径を測定することによって評価した。未補足FGからの溶出液をコントロールとして用いた。既知濃度のAB溶液を標準として用いた。寒天平板上で培養したイー・コリは、放出されたTET、CIP及びMETのAB活性を測定するのに用いた。培養プレートを作るために、約108時間/mlを含む100μlの細菌細胞懸濁液と3mlの上面寒天とを50℃で混合し、直ちに硬底面寒天平板(plate hard,bottom agar)上に移して細胞の均一層を作った。プレートを37℃で18時間インキュベートした。
【0247】
結果
A.TET
1.TET放出データ
「静置」実験でのTET−FGディスクから周囲のPBSへのTETの放出は、毎日置き換えた2mlのPBSで達成されたTET濃度を測定することによるスペクトル光度測定法で測定した。TET−FGに取り込まれた異なる量のTETについて得られたTET濃度を図面22に示す。50mg/ml以下のTET−FGでのTET濃度で、TETの放出は、5日又はそれ以下で測定した。しかしながら、100及び200mg/mlのTET濃度を含んだTET−FGディスクからのTETの放出は、それぞれ約2週間と3週間以上、生じた。TET−FGディスクの構造的統合性は、3ないし5週間保持した。これらの結果は、TET放出がFG産生と独立であること、及びTET放出の速度がTET−FGディスクに残ったTETの量に依存することを示した。
【0248】
連続交換実験で収集したスペクトル光度測定データを図面23に示す。これらのデータは、100mg/mlFGのTET濃度をもともと含有したTET−FGディスクからの連続TET放出が2週間にわたって生じたことを示す。FGディスクは、この2週間以内、その構造的統合性を維持した。連続モード実験で得たTET放出データも、TET放出状況の速度がTET−FGディスクに残ったTETの濃度に依存することを示した。
【0249】
理論に縛られることを望まないが、これらの実験で観察された初期の高TET濃度は、多分、ディスク表面又はその近くからのTETの拡散の結果であると信じられた。即ち、これらの位置で「トラップされた」TETが消耗されたので、溶液化及び/又は拡散の速度が、TET濃度勾配により、又、FGの形状は又は立体構造により多分測定されたやり方で減少した。
【0250】
温度及びFG蛋白濃度もTET−FGディスクからのTET拡散速度を測定するのに割役を演した(実施例13及び14参照)が、これら二つのパラメーターはこれらの実験で一定を保った。
【0251】
50及び100mg/mlのTETを含むTET−FGから唾液へのTETの放出は、静置実験で、毎日取り替えた0.75mlの唾液中のTET濃度を決定することにより測定した。これらの結果(Fig.24)は、TETの濃度が高かった以外、PBSで得られたものと同様で、放出TETを収集するのに用いた少容量の唾液を多分反映している。さらに、FGマトリックス中のTETの存在も、9日までに崩壊し始めて15日までにほとんど完全に崩壊したコントロールFGディスクに関するものと比較して少なくとも15日間TET−FGマトリックスの構造的統合性を予期せずに延長した(図面25)。
【0252】
2.TET抗菌データ
PBS中の幾つかのTET濃度のイー・コリ生育に対する抗菌効果は図面26に示される。本方法により検出可能な最低TET濃度は約5μg/mlであった。
【0253】
これらの結果は、明らかに、放出TETが抗菌活性を有することを示す。これらのTETデータはスペクトル光度測定により得られたものを裏付け、FGに取り込まれたTETの量がTET−FGの周囲の溶液中のTET濃度を決定することを示す。これらのデータもFG中のTETの量がTET−FGの周囲の媒体中の所望TET濃度を最小所望TET濃度で又はそれ以上で維持するのに適応できることを示す。
【0254】
3.TET−FGマトリックス寿命
コントロールFG及びAB−FGディスクの寿命は、ディスクの視覚評価により評価した。ディスクの製造の間に切り取った多孔膜は、依然FGに付着し、それらの統合性評価の間にディスクを適当な位置に置くのを助けた。TETを含まない(コントロール)及びmlのFG当り50又は100mgのTETを含有するディスクの0、9及び15日の上部展望を図面25に示す。本図は、典型的な結果、即ち、FGコントロールディスクが2週間以内に崩壊し、一方、TET−FGディスクは15日間又はその付近で依然無傷であったことを示す。付加的実験で、TET−FGディスクは、少なくとも5週間又は付近で依然無傷であった(データ示さず)。FGの寿命について有意な変化は無菌及び非無菌TET放出実験の間で観察されなかった。
【0255】
B.CIP、AMO及びMETデータ
1.CIP、AMO及びMET放出データ
CIP−、AMO−及びMET−FGから放出された抗生物質を図面27に示す。CIPは約4週間明らかな一定速度で放出され、次いで速度はさらに約1過間徐々に減少した。AMO及びMETの放出は、完全に3日以内であった。
【0256】
2.CIP及びMET抗細菌活性
放出されたCIP及びMETの抗菌活性(データ示さず)は同一のAB−FGディスクについてスペクトル光度測定で決定したプロフィルに近似している。
【0257】
3.補足−FGマトリックス寿命
CIP−FGについての結果は、TET−FGについてのものと類似した。AMO−及びMET−FGについての結果は、FGコントロールについて得たものと類似した。FGの寿命での有意な変化は、無菌及び非無菌実験の間で観察されなかった。
【0258】
検討
結果は、CIP及びTETの水難溶性形がそれらが混合されるFGマトリックスの最大AB負荷、放出期間及び寿命を有意に増加する因子の組合せを提供することを示した。これとは別に、FGディスクはAB、例えばTET又はCIPの溶液中にそれを浸漬することにより安定化できる。
【0259】
この結果も、AB−FGにより導出されたABがイー・コリ生育の阻害により示されるように、その抗菌活性を保持したことを明らかに示した。これらの結果は、FG及び他のTSのTET及びCIP補足がそこからのドラッグデリバリィで制限(limiting)因子としてFGの崩壊に打ち勝つことができることを示した。即ち、これらのABはFGを安定化し、それによりそれらの放出期間と放出AB濃度をFG中のAB濃度を用いてコントロールできる。これらの方法を用い、TET及びCIPはFGに負荷でき、それらの放出は有効な抗菌濃度で数日又は数週間コントロールできる。
【0260】
TET−及びCIP−誘発FG安定化は、これらのABについてだけでなく、その放出速度及び/又は全放出持続がFGマトリックスの寿命に依存するFGに加えられる他の薬物又は「補足物」についても、全放出時間をコントロールするのに利用できる。
【0261】
それらの結果は、FGが局在ドラッグデリバリーシステムとして利用できる歯周及び他の条件で、臨床適用性を有する。TET−又はCIP−誘発FG安定化は、TET、CIP及びTET−FG又はCIP−FGマトリックスに加えられた他の薬物又は補足物の全放出時間をコントロールするのに利用できる。
【0262】
実施例13
TET−補足FGからのTET放出速度に対する温度の影響 FGは50mg/mlのTET遊離塩基を補足し、本研究用に6×2.5mmディスクに形造った。FGの蛋白濃度を60mg/mlに調整した。ディスクを2mlのPBS、pH7.3に置き、4、23及び37℃で放置した。ディスクを洗浄するため、PBSは、10分毎に6回、2mlの新鮮なPBSで置き換えた。その後、PBSは1時間毎に4時間、置き換えた。収集した試料中のTET濃度を前のように、標準曲線に対してスペクトル光度測定で測定した。
【0263】
結果及び結論
結果は、TET放出の速度が温度に比例することを示した(図面28)。
【0264】
実施例14
TET−補足FGからのTET放出速度に対するFG蛋白濃度の影響 1mg/mlのTET HCl溶液を補足したFGを調製し、本研究用に6×2.5mmディスクとして形造った。FGの蛋白濃度を60、30及び15mg/mlに調整した。各ディスクを3mlの蒸留水に置いた。水は、10分毎に、全1時間、同容量の水で置き換えた。収集した試料中のTET濃度を前のように標準曲線に対してスペクトル光度測定法で測定した。
【0265】
データ(図面29)は、TET放出速度が最低全蛋白濃度のFGから最大で、逆であることを示す。即ち、TET放出速度はFG蛋白濃度に反比例した。
【0266】
実施例15
AB−補足FGから放出されたABのインビボ抗菌活性
TET−及びCIP−FGから放出されたTET及びCIPの抗菌活性を試験するため、これらのAB−補足FGの誘発腹膜炎からマウスを保護する能力を評価した。実験的に、1日目に、グループ当り5匹の動物の各1匹に0.5mlPBS(グループI)、FG(グループII)、TET−FG(グループIII)又はCIP−FG(グループIV)を腹膜内注射した。FG及びAB−FGを、120mg/mlのTFC0.25ml及び250U/mlのヒトトロンビン0.25mlを含むハマーデクスディスペンサーを用い投与した。TET−及びCIP−FGの場合、トロンビン溶液は50mgの各ABを含有した。2日目に、全動物に2×108(実験1)又は4×108(実験2)コロニー形成単位(cfu)のエス.アウレウス202Aを腹膜内注射した。結果:(実験1、実験2。動物は感染後48時間、生存):グループI、0及び1の生存;グループII、3及び1の生存;グループIII、3及び5の生存;及びグループIV、5及び4の生存。ほとんどの生存動物は実験(2週間)の間を通して生きたが、幾らかは死亡したか又は病気であったので故意に殺した。
【0267】
これらのデータは、マウスを死から守ったTET−FG及びCIP−FGがAB−補足FGの投与後、少なくとも48時間、エス.アウレウス202Aにより生じることを示した。
【0268】
実施例16
FGから細胞傷害/抗増殖薬物の長期部位指定送達
フィブリノーゲンは、無菌水で、1グループについては17mg/mlの濃度に5−FUで飽和した水で可溶化した。トロンビン溶液は、無菌水で作り、次いで、40mM CaCl2中に15U/mlの濃度に希釈し、又はトロンビンは17mg/mlの濃度に5−FUで飽和した40mM CaCl2に溶解した。
【0269】
コントロールFGクロット(凝塊、clots)は、5−FUを含有せず、200μlのTFC溶液(60mg/mlで)を200μlのトロンビン溶液(15U/mlで)と混合し、20分重合することにより生成した。これらのクロットは12×75mm試験管中で作り、次いで0.05Mヒスチジン、0.15M NaCl、pH7.3(緩衝液)10ml中に置いた。
【0270】
標準濃度の液体5−FUを含むFGクロットは、200μlのTFC(60mg/ml+17mg/ml 5−FU)と200μlトロンビン溶液(15U/ml+17mg/ml5−FU)を混合し、クロットを20分、完全に重合することにより作った。TFC及びトロンビン溶液での飽和濃度の5−FUの添加は、完全に不透明であったコントロールFGクロットに比べて、半透明であったクロットを生成するクロット形成を幾らか変えた。形成されたクロットは、FGのみで作ったものと色以外は物理的に同一であった。クロットは12×75mm試験管中で作り、次いで10mlの緩衝液中に置いた。
【0271】
5−FUの飽和溶液により形成したクロットに含まれる量に等しい量の固体無水5−FUを含む第二グループのFGクロットを作った。これらのクロットは、7mgの固体無水5−FUを200μlのTFC(60mg/ml)と200μlのトロンビン(15U/ml)に添加することにより形成した。7mgの5−FUを12×75mm試験管中に置いた。次いで20μlのTFCを、続けて200μlのトロンビンを加えた。次いで、3成分を、均一混合物が観察され、そしてそれ以上の混合が凝固反応によって阻止されるまで、ピペットを前後させることにより混合した。次いでクロットを10mlのヒスチジン緩衝液中に置いた。
最終グループはクロット当り50mgの固体無水5−FUを含有した。多量の5−FU(7mgの代わりに50mg)のために、これまでに用いられた方法ではうまくいかなかった。均一のクロットを作る代わりに、クロットは試験管の底に固らせている大量の5−FUで形成させた。この問題を避けるために、試験管の底を初めに100μlのTFC(60mg/ml)と100μlのトロンビン(15U/ml)で被覆した。これは試験管の凹形の底を被覆したクロットを形成した。次に、50mgの固体無水5−FUを200μlクロットの表面に加えた。これに続いて100μlのTFCを100μlのトロンビンと共に加えた。2つの溶液を、自動ピペッターを用い、蛋白がゲル化し始めるまで混合した。これが生じたとき、ピペット操作を終えてクロットを20分間、重合した。最終生成物は、約50mgの5−FUの濃密なコアを含有するクロットであった。他のクロットに関しては、これらは次いで10mlの緩衝液中に置いた。全グループ中のFGの最終全蛋白濃度は30mg/mlであった。
【0272】
各グループは10複製を含んだ。各複製は10mlの緩衝液中、37℃でインキュベートした。緩衝液は5、10、22、33、52、75及び114時間に10mlの新鮮な緩衝液で置き換えた。次いで溶出緩衝液のアリコートを260nmの波長セッティングで分光測光器で試験した。これまでの実験は5−FUがこの波長で強く吸収するが、一方コントロールFGクロットからの溶出液は吸収しないことを示した。
【0273】
結果は図面30に示す。5−FUを含まないコントロールクロットは有意な解読を与えなかった。5−FUの飽和溶液の形で又は同等量の固体無水5−FUのいずれかの7mgの5−FUで作られたクロットは5ないし10時間の間、5−FUのそれらの送達を完全にしたが、一方50mgの固体無水5−FUを含むクロットは少なくとも75時間5−FUを送達することを続けた。全ての場合での最高濃度は5時間点で生じた。
【0274】
理論に縛られることを望まないが、5−FU送達の持続はゲルに負荷された5−FUの塊の作用であるようであった。結果として、溶液中に5−FUを含むクロットから送達可能な5−FUの量は、薬物の溶解性により限定された。即ち、5−FUを飽和した液体から形成したクロットに存在する量に等しい固体無水形の量の含有は、ほとんど同一の送達動態となったが、一方、液体形を用いることが可能であるよりも大量の固体形5−FUの含有は、3倍の送達の持続、典型的には与えられた濃度の薬物の送達の持続を10倍増加した。大量の固体無水5−FUの含有さえも大きな送達時間となることが期待された。他の実験では、我々はクロットに含まれる5−FUの量が少なくとも5倍そして多分それ以上増加すること、及び5−FU−FG混合物も注射可能形に処方しうること(データ示さず)を見出した。さらに、無水形よりも周りの水性媒体に溶解しにくい、及び/又は低溶解速度を有する5−FUの類似体又は他の形は、送達時間をさらに増加させることとなろう。
【0275】
この方法の結果は、液体形での薬物を使用できるよりも少なくとも10倍長いフィブリンクロットからの抗増殖/細胞傷害薬物5−FUの持続しうる送達である。本技術(即ち、固体形の薬物、多分、低溶解度及び/又は溶解速度のものの用途)は、薬物粒子が懸濁するマトリックス又は薬物自体と関係なく一般に適用できる筈である。
【0276】
実施例17
線維芽細胞成長因子補足化FGおよびフィブロネクチンに対する応答における線維芽細胞化学走性
材料および方法
材料
ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)は、ミズーリ州、セント・ルイスのシグマ・ケミカルカンパニーから購入した。抗生物質−抗真菌溶液は、GIBCO(ニューヨーク州、グランド・アイランド)から購入した。組換え線維芽細胞成長因子−1(FGF−1)および−4(FGF−4)は、メリーランド州、ロックビルのアメリカン・レッド・クロス、プラズマ・デリバーティブズ・ラボラトリー、レジナルド・キッド氏およびジェネティックス・インスティテュート(マサチューセッツ州、ケンブリッジ)のご厚意によりそれぞれ頂戴した。組換え線維芽細胞成長因子−2(FGF−2、塩基性FGFまたはbFGFとしても知られている)は、アップステイト・バイオテクノロジー・インコーポレイテッド(ニューヨーク州、レイク・プラシド)から購入した。培養物の滅菌増殖並びに化学走性アッセイに必要な全てのプラスチック製品は、フィッシャー・サイエンティフィック(デラウェア州、ニューアーク)から購入した。ミリセル−PCF(12.0μm)挿入物は、ミリポア・インコーポレイテッド(マサチューセッツ州、ベッドホード)から購入した。ヘパリンは、アップジョン・カンパニー(ミシガン州、カラマズー)から購入した。
【0277】
細胞培養
継代126のNIH/3T3線維芽細胞は、メリーランド州、ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから購入した。継代129−133由来の培養物を化学走性アッセイに使用した。10%ウシ血清および約1%抗生物質抗真菌溶液を補足したDMEM中で培養物を増殖させた。ヒト皮膚線維芽細胞(HDFs)は、クロネティックス・インコーポレイテッド(カリフォルニア州、サンディエゴ)から継代2のものを購入した。継代3−5由来の培養物を化学走性アッセイに使用した。20%FBS(ユタ州、ローガンのハイクローン・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド)および約1%抗生物質抗真菌溶液(ニューヨーク、グランド・アイランドのジブコ)を補足したDMEM中で培養物を培養した。
【0278】
細胞化学走性アッセイ
細胞化学走性を測定するのに使用した方法は、既知の2つの方法体系を組み合わせたものであった。ボイデン・チェンバーを修飾したものを以下のようにして使用した:ミリセル−PCF(ミリポア・インコーポレイテッド、マサチューセッツ州、ベッドホード)(12.0μm)、直径12.0mmの挿入物を24ウェルプレートの個々のウェルに入れ、上部化学走性チェンバーと下部化学走性チェンバーを設けた。化学走性結果は、細胞と成長因子との各組み合わせ毎にチェッカー盤分析を実施することにより、得られた。材料の所で記載した全種類の細胞を伴うFGF−1、FGF−2(ヘパリン無し)およびFGF−4について、ヘパリン(10U/ml)を加えた場合も/加えない場合も、0.1、1、10、100ng/mlの濃度範囲を採用した。要するに、培養物をトリプシン処理し、DMEM+0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)(シグマ・ケミカル・カンパニー、ミズーリ州、セント・ルイス)中に入れて、約1時間、37℃で5%CO2湿潤チェンバー中に置いた。50μl中2から2.5×105細胞を24ウェルプレートに設けた上部チェンバーに挿入添加した。上記のように、処置を加えた。アッセイを、37℃で5%CO2湿潤チェンバー中4時間続けた。4時間終了時点で、プレートをインキュベーターから取り出し、フィルターをミリセル−PCF挿入物と共に染色するためのプロトコールに従い染色した。要するに、ミリセル−PCF挿入物の内側および外側を取り巻く流体を取り除いた。3パーセントのグルタルアルデヒド(シグマ・ケミカル・カンパニー、ミズーリ州、セント・ルイス)を約20分間、挿入物の内側および外側に加えた。3.0%グルタルアルデヒドを除去後、0.5%トリトンX−100(E.M.サイエンス、ニュージャージー州、チェリー・ヒル)を5−7分間加えた。0.5%トリトンX−100を除去するときに、フィッシャー社のヘマトキシリン溶液ジル製剤(フィッシャー・サイエンティフィック、デラウェア州、ニューアーク)No.1を約10分間加えた。
【0279】
この溶液を、蒸留水で5分間流して洗浄除去した。綿棒を用いて、フィルターの上面をぬぐい、移動しなかった細胞を取り除いた。フィルターをクリスタルマウントTM(バイオメダ・インコーポレイテッド、カリフォルニア州、フォスター・シティ)溶液におけるスライドに面する低部側にマウントし、フィルターの下面にある細胞を自動的に数え上げるイメージ・アナライジング・システムを用いて400×および200×の両方で可視的に、無作為の10視野(フィールド)をスライドによりカウントした。
【0280】
チェッカー盤分析
必須のものとして、チェッカー盤分析を実施し、無作為の移動および正および負の化学走性を測定した。成長因子を上部および/または下部チェンバーに加えて、細胞が、GF方向に単独で移動する(化学走性)かどうか、成長因子を上部または低部ウェルに加えたかどうか(ケモキネシス)、または細胞移動が化学走性勾配に逆らっているかどうか(負の化学走性)にかかわりなく、移動がランダムであるかどうかを観察した。
【0281】
FGから放出されたFGFに対する細胞移動アッセイ
化学走性チェンバーおよび細胞を上記の通り利用した。8mg/ml局所フィブリノーゲン複合体(TFC、アメリカン・レッド・クロス、メリーランド州、ロックビル)50μlを24ウェルプレートの底に加えた。試験成長因子+/−ヘパリン40μlを最終濃度10U/ml(ヘパリンを含むFGF−1、FGF−4、FGF−2単独)でTFCに加え、勢いよく混合した。ウシ・トロンビン(アームア・ファーマシュウティカル・カンパニー、イリノイ州、カンカキー)10μlを加え、勢いよく混合した。成分を室温で約30分間ゲル化させた。下部および上部チェンバーの総容量は、DMEM+0.1%BSAも含めて、それぞれ0.5mlまでにした。下式に定めるとおり、TFCに加えられたFGFの濃度を調整して、所望の全体濃度とした:
【0282】
【数1】
【0283】
アッセイは、5%CO2湿潤チェンバー中37℃で約24時間実施した。24時間終了後、フィルターを取り出し、固定し、染色して、フィルターの下面の細胞数を、上記のようにして数えた。
【0284】
結果
線維芽細胞の移動能力
種々のよく知られた化学走性剤(chemotactic agents)の方向に移動するNIH 3T3線維芽細胞の能力を測定して、このアッセイに使用した細胞がこの能力を維持したことを確認した。フィブロネクチンは、NIH 3T3およびHDF類の両方について試験した中で、最も有効な化学走性剤であり、20μg/mlで最大の応答を示した(図31、表7)。従って、20μg/mlのフィブロネクチンを、移動についての正の対照として使用した。
【0285】
NIH 3T3線維芽細胞のFGF−1方向への化学走性
FGF−1によるNIH 3T3線維芽細胞移動の最大刺激は、ヘパリン10U/mlの存在下、10ng/mlで観察された(図32)。チェッカー盤分析により、FGF−1が、NIH 3T3細胞に対する化学走性物質であることが明らかになった。
【0286】
NIH 3T3線維芽細胞のFGF−2方向への化学走性
FGF−2によるNIH 3T3線維芽細胞移動の最大刺激は、FGF−2の1ng/mlで観察された(図33)。チェッカー盤分析は、FGF−2が、NIH 3T3細胞に対する化学走性物質であることを示した(データは示さない)。
NIH 3T3線維芽細胞のFGF−4方向への化学走性 FGF−4によるNIH 3T3線維芽細胞移動の最大刺激は、10ng/mlで観察された(図34)。チェッカー盤分析により、FGF−4が、NIH 3T3細胞に対する化学走性物質であることが明らかになった。
【0287】
HDFsのFGF−1方向への化学走性
FGF−1によるHDFs移動の最大刺激は、1ないし10ng/mlで観察された(図35)。チェッカー盤分析は、FGF−1が、HDFsに対する化学走性物質であることを示した(表9)。
【0288】
HDFsのFGF−4方向への化学走性
FGF−1によるHDFs移動の最大刺激は、10ng/mlで観察された(図36)。チェッカー盤分析により、FGF−2が、HDFsに対する化学走性物質であることが明らかになった(データは示さない)。
【0289】
HDFsのFGF−4方向への化学走性
FGF−4によるHDFs移動の最大刺激が、10ng/mlで観察された(図37)。チェッカー盤分析は、FGF−4が、HDFsに対する化学走性物質であることを示した(データは示さない)。
【0290】
FGに組み込まれたFGF−1、−2および-4に対するヒト皮膚線維芽細胞移動
FGから放出されたFGFに対する最大移動応答は、1ng/mlのFG中、FGF−4の組み込まれた濃度、および全体の濃度で引き起こされた(図38)。FGF−1およびFGF−2をFGに組み込んだ場合でも、化学走性応答ピークを生ぜしめるFGF−2の濃度が0.01mg/mlであった以外は、同様の結果が得られた(データは示さない)。
【0291】
【表7】
【0292】
【表8】
【0293】
【表9】
【0294】
考察
FGF類は、HFDsにおいて十分な化学走性応答を生ぜしめた。HDFsを用いて実施した各化学走性アッセイの場合、負の対照と、最大移動応答を生ぜしめたFGF濃度との間に非常に良好な差異が得られ、FGF−1、−2および−4に対する応答では、それぞれ18、12および10倍であった。
【0295】
成長因子による化学走性刺激は、NIH 3T3細胞の場合、HDFsの場合ほど高くはなかったが、これは恐らく、NIH 3T3細胞の入手可能なストック培養物の継代数が、HDFsの場合に比べて高いことが原因であると思われる。
FGF−1、FGF−2およびFGF−4が、線維芽細胞化学走性の強力な刺激物質であることが、見い出された。上記成長因子類の1つまたはその組み合わせにより線維芽細胞が方向性を持って移動するという結果を、損傷部位に存在する線維芽細胞に応用して、それにより、線維増殖、およびコラーゲンおよび細胞外マトリクスの産生を導くことが出来る。従って、その充分に認識されている血管形成誘導特性とは別に、FGF類は、単独で、またはPDGF、IGF−I、TGF−βおよび/またはその他の因子との組合せのいずれかで作用して、損傷治癒する役割を有し得るのである。
【0296】
損傷治癒を速めるためのFGF類の使用に関する従来研究では、有意な結果が得られたものはない(カーター等、1988年)。これは、最大応答を得るために細胞をイン・ビボで因子類に長い時間さらす必要が有ることが原因であり得る(プレスタ等、セル・レギュレーション、2巻:719−726巻(1991年)およびルスナチ等、ジャーナル・オブ・セル・フィジオロジー、154巻:152−161頁(1993年))。残念ながら、治癒工程を妨害しないような条件下で、長時間、成長因子を損傷箇所に届けるのは困難である。
【0297】
FGF類をFGに組み込むものである本願発明は、細胞をFGF類に長い時間さらすことを可能にし、損傷箇所に適用され得るものである。生じたフィブリンコーティングは、組織損傷に対する本来の応答を擬態するものであり、その一方で成長因子を損傷箇所に直接届けるものである。本願出願人による従来研究では、FGF−1を含むFGを、人工血管移植片の内側を覆うのに使用した(本明細書、実施例8)。これらの移植片をウサギの血管内に置くと、FGF−1が、28日間放出された。イヌ科の移植片に関する更なる研究では、FGF−1を移植片壁へ組み込んだ結果、同期間内で人工移植片が全部内皮化した(グレイスラー等、サージェリー、112巻:244−255頁(1992年))。従って、この適用形態は、イン・ビボにおける非常に有意な生物学的効果を導くことが出来るのである。本研究では、出願人は、線維芽細胞が、FGから放出されるFGF類方向に引き付けられ得ることを示している。この特性は、GF−補足化TSを用いた損傷の処置において有用なものである。
【0298】
実施例18
脈管形成性物質を送達するためのTSシーラントを用いる、直接的な部位脈管形成
この実施例では、新規血管を制御した方法によって体内で直接形成することができる。またこの実施例では、TSは、脈管形成性物質、たとえば線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)を、補足TSから放出される濃度が脈管形成の誘発に有効になるような量で含有し、送達する。
【0299】
この実施例は、心臓や脳や筋肉組織のような充分な血液供給が欠けている体内域において脈管形成を促進するような制御した方法に用いられる。またこの実施例は、移植器官や再結合四肢に対する循環を保持したり改善するのに用いる。さらにこの実施例は、つぎのようなものに関し血管網または「血管床」を発生させるのに使用することができる;人工器官/類器官の形成、遺伝子治療に用いられる細胞の送達および/または局在化および/または栄養補給、遺伝子治療の標的、組織拡大用の細胞の栄養補給および/または局在化。またこの実施例は、脈管形成やその下部器官の機能を損なうような異物や過剰な炎症反応を誘発しうる器具または物質の移植の必要性を排除することができる。
【0300】
本発明は、フィブロネクチンおよび/またはコラーゲンを含むかまたは含まずに、組成の1つとしてフィブリノーゲン(好適にはフィブリンの形成用)を含み、これを、適した濃度のFGF-1のような脈管形成性物質に配合する。フィブリノーゲンは、また、トロンビンのたん白分解活性に抗して保護するための安定化剤を含有することができる。FGF-1の場合、ヘパリン硫酸塩(1〜1000U/ml)を安定化剤として、濃度範囲1ng/ml〜1mg/mlで用いることもできる。
【0301】
別の態様として、脈管形成物質を好適な濃度にてトロンビン、カルシウムまたは水成分中に含ませることもできる。この組成物をトロンビンと混合し、次いで所望の部位とつながる体内ラインまたは単一の部位へ迅速に適用する。フィブリノーゲン-トロンビン混合物を重合してFGを形成する。FGF-1または他の脈管形成物質は、FGマトリックス内に、遊離形または安定化剤もくしく混合物の他の成分に結合した状態で閉じ込めた状態のままにする。1つの実施例では、TS中のFGF-1の濃度は0.1ng/ml〜1mg/ml、好適には1ng/ml〜100μg/ml、より好適には100ng/ml〜10μg/mlである。FGF-1または他の脈管形成物質は、FG沈積体内で血管形成を誘発することができる。FGは自然に生分解し、血管から排出される。
【0302】
実施例19
直接的な軟骨部位誘発
この実施例は、新規軟骨の制御した形成が可能であり、また体内における損傷した軟骨の制御した再生が可能である。この実施例では、TSは、単数または複数の軟骨促進因子、たとえば軟骨誘発因子-Aおよび/または-B(CIF−AおよびCIF-B、各々、TGF-B1およびTGF-B2としても知られている)および/または他の因子、たとえば骨有機基質誘発因子(OIF)を、補足TSから放出される当該誘発因子の濃度が軟骨形成を誘発するのに有効な量で含有し、送達することができる。1つの実施例では、誘発因子の濃度は、0.1ng/ml〜1mg/ml、好適には1ng/ml〜500ng/ml、より好適には100〜250ng/mlである。この実施例はまた薬剤、たとえば抗生物質、他の成長因子、たとえばEGF,PDGFおよびbFGFをTS中に含むことができる。軟骨誘発物質は適した濃度で、TS製造に使用されるフィブリノーゲン、トロンビン、カルシウムまたは水成分中に含まれる。
【0303】
補足TSは、移植前に所望の最終軟骨に予め形成するかまたはTSを被移植者の体内に、当該TSが混合され重合される液体形で移植することができる。得られた形態は、次いで所望の形態に加工して、必要な軟骨に適した形態を得ることができる。軟骨誘発TS(CI−TS)混合物を用いて、従来からのインプラントに予め被覆することができ、生きた軟骨を有する従来形のインプラントを得ることができる。
【0304】
前記した任意の技術を用い、CI-TSを次いで被移植者の体内に移植する。
この移植は異所または正位とすることができる。適当な間隔ののち、CI-TSは、当初のCI-TSインプラントの形態の生存軟骨によって置き換えられる。
かかるインプラントを用いて、損傷した軟骨または失った軟骨を置換することができ、また人工インプラントの組織との一体性や機能を改善することができる。かかる用途の例示には、鼻組織や耳組織の置換または再構築、イン・ビボにおいて成長した骨インプラント上の機能的連結面の形成、人工インプラント上の同様な表面の形成が包含される。リウマチ性間接炎などの疾患によって損傷した軟骨の修復も、CI-TSを用い、当該間接に新規で滑らかな軟骨面を形成することができる。プラスチック/再構築外科手術における空間充填用途を意図したインプラントは、CI-TSから形成するか、またはCI-TSを被覆して組織の一体性を向上させて異物反応を減少させることができる。
【0305】
現在の技術では、制御された軟骨の再構築は不可能であるため、本発明は、身体の構造を完全に模写することが必要な軟骨組織の形成が可能である点で、充分に進歩性を有するものである。これは、整形外科的用途や他の用途の両方について、間接や人工間接や他のインプラントの改善された修復をもたらすことができる。
【0306】
たとえば、この実施例を用いて、外傷性損傷、先天性損傷もしくは病原性損傷の軟骨または機能不全の軟骨について、改善された整形外科インプラントや、改善されたプラスチック/再構築インプラントを形成でき、またペースメーカーインプラントおよびワイヤーの被膜を形成して組織の一体性を増加させるとともに異物反応を減少させることができる。同様な軟骨も、同様な目的のために任意の移植可能な器具に適用することができる。
【0307】
実施例20
自己充足性TS傷用包帯
この実施例は、自己充足性TS包帯またはバンデージ(bandage)であり、これは、FG成分のトロンビンとフィブリノーゲンの両方を含んでいる。カルシウムはトロンビンおよび/またはフィブリノーゲン成分のいずれかに含まれる。トロンビンまたはフィブリノーゲンのいずれかまたは一方は、成長因子、たとえばFGFまたはbFGF、または薬剤、たとえば鎮痛剤、抗生物質または他の薬剤(これらは、感染を阻止し、傷の回復を促進しおよび/または傷跡の形成を阻止できる)を補足できるが、補足する必要性はない。補足物は、所期の目的、たとえば抗生物質で微生物の増殖を阻止したり、鎮痛剤で痛みを和らげたりするのに有効であるようなTS中の濃度とする。
【0308】
トロンビンおよびフィブリノーゲンは、不浸透性膜で相互に分離し、1対として別の当該膜で被覆する。トロンビンおよびフィブリノーゲンは急速に蒸発するゲル(たとえばメチルセルロース/アルコール/水)中に含まれる。バンデージは、ゲルと接触するその表面を被覆して、使用の間に種々の位置でゲルパッドが残存するのを保証する(図39参照)。
【0309】
処置に際し、2成分を分離する膜を除去して、2成分を混合する。次いで、外膜を除去し、バンデージを傷口にあてる。フィブリノーゲン製剤のトロンビンおよび他の成分の作用は、FSの適用の場合と同様に、フィブリノーゲンをフィブリンへ変換させることである。これは、傷口からの出血や流体の損失を自発的に抑制し、また感染に対する天然のバリヤーを形成する。
【0310】
同様な実施例において、トロンビン成分および、トロンビンゲルとフィブリノーゲンゲルを分離するプラスック膜は、省略してもよい。予めトロンビンゲル中に存在するカルシウムは、所望によりフィブリノーゲンゲル中に含ませてもよく、含ませなくともよい。処置において、前記したように、不浸透性外膜を除去し、バンデージを傷口に直接あてる。トロンビンおよびカルシウムは当然傷口に存在し、前記したようにフィブリノーゲンのフィブリンへの変換を誘発するとともに、傷口からの出血や流体の損失を阻止する。この実施例は、簡易で安価で製造が容易である利点を有する。しかしながら、患者の傷に不充分なトロンビンが存在する状況がある。このような場合、本発明の先に記載の実施例を使用すべきである。
【0311】
この実施例は、成分の可溶化/混合に伴う時間の遅れが生じることなくTSの傷口への迅速な適用が可能である点で、現在実施の技術よりも、進歩性を有する。また、処置のため知識や熟練が不要である。これらの特徴によって、種々の分野で理想的に使用することができ、これらの分野として、兵士や救助作業や救急車/医学関係者のチームや消防士のための外傷用パックの用途や、一般公衆用の1次救助用キット、病院の緊急室職員による用途が挙げられる。小型の形態は一般公衆の用途に有用である。
【0312】
実施例21
生体材料の表面被覆用としての補足TS
この実施例は、補足TSを、整形外科器具や動物体内へ移植される他の生体材料の表面被覆として使用する。これらの器具として、たとえば尿カテーテル、静脈カテーテル、縫合材、血管プロテーゼ、眼内レンズ、コンタクトレンズ、心臓弁、肩/ひじ/でん部/ひざ代替具、全人工心臓などが挙げられる。不幸にも、これら生体材料は、結局は動物の生命を危険にする臨床的感染につながりうる細菌付着やコロニー化の部位となる。この問題を最小にするため、生体材料に補足TSを被覆する。
【0313】
この実施例において、TSは成長因子、抗生物質などの薬剤、BMPおよび/または培養細胞などを補足することができる。TSに組み込むことができる抗生物質の例示には、以下のものに制限されるものではないが、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、メトロニダゾール、およびアミノグリコサイドが包含される。TSに組み込むことができる成長因子の例示には、以下のものに制限されるものではないが、FGF、PDGF、TGF-βが包含される。TSに組み込むことができるBMPの例示には、以下のものに制限されるものではないが、BMP1〜8が包含される。またDBMをTSに添加することができる。TSに組み込むことができる培養細胞の例示には、以下のものに制限されるものではないが、内皮細胞、骨芽細胞、線維芽細胞などが包含される。
【0314】
補足物は、トロンビン、フィブリノーゲン、カルシウムまたは水成分のいずれかに含めることができる。TS中の補足物の濃度は、所期の目的、たとえば、抗生物質によって生体材料上の微生物の増殖を抑制したり、成長因子によってTS中および/または生体材料表面上に所望のセルタイプの増殖を誘発するのにに有効であるのに充分なものとする。
【0315】
本発明は、現存する生体材料製品を改善したもので、これには、チタンおよびチタン合金器具(たとえば、固定プレート、肩/ひじ/でん部/ひざ代替器具、骨一体歯科インプラントなど)、固体シリコン製品(たとえば、シラスチック鼻インプラント)、液体および/またはゲルシリコン製品(たとえば、乳房インプラント、こう丸インプラント)、および傷口の治療に通常の材料として使用される天然または合成ポリマーが包含され、またこれは、種々の形態をとることができ、たとえばモノフィラメント、線維アッセンブリイ(たとえば、綿、紙、不織布ファブリック)、フィルム、スポンジ、バッグなどが挙げられる。
【0316】
FGは、次の3成分から製造することができる:フィブリノーゲン(たとえばTFCとして)およびトロンビン(これら両者は凍結乾燥形とすることができる。)並びにカルシウム。凍結乾燥フィブリノーゲンは、滅菌水で再生できる一方、トロンビン成分は塩化カルシウム溶液で再生することができる。補足物は、混合前の3成分のいずれかに添加することができる。好適な容量のフィブリノーゲンとカルシウム含有トロンビンを混合して、FGを製造する。次いで、FGを生体材料の表面にその被膜として、たとえばスプレイ、塗装などにより適用する。別法として、インプラントを液体形のFGに浸漬処理する。補足物は、また生体材料表面に被覆する前後のFGに添加することもできる。たとえば、FG被覆インプラントを抗生物質溶液に所定の期間浸漬して、抗生物質をTSに分散させる。別の実施例では、培養細胞をフィブリン被膜に接種したのちに、インプラント器具にTSを被覆する。生体材料の被膜面は、動物内に移植されるが、これは、補足TSとともに、以下のような種々の目的に有用である:生体材料に対する細菌付着の抑制、生体材料に付着した細菌増殖の抑制、局部的免疫刺激および/または正常化、傷治療の促進、生体材料の周囲組織への適合の促進。
【0317】
本発明の他の実施例も、本明細書記載の本発明の具体的な詳細を考慮に入れれば、当業者には明白である。種々の変形が当業者に明白であるため、本発明は、添付の請求の範囲に記載の範囲によってのみ制限されるものと、理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0318】
【図1】図1は、増加させた濃度のヘパリンの存在下でトロンビン250U/mlと共にHBGF−1βをインキュベーションしたゲルのウエスタンブロットを示す。HBGF−1β(10μg/ml)、トロンビン(250μg/ml)および増加させた濃度のヘパリン(0、0.5、5、10、20および50単位/ml)を含む溶液を37℃で72時間インキュベーションした。各々のインキュベーション混合物からアリコートを定期的に回収し、レミリ(Nature227:680(1970))に記載のように調製し、走らせた8%SDSポリアクリルアミドゲルに導入した。ゲルを、次いでニトロセルロース上に電気ブロットし、HBGF−1βに対応するバンドを、HBGF−1βに対する親和性精製ポリクローナルウサギ抗血清を使用して同定した。 インキュベーション混合物中のヘパリンの濃度は;パネルA)0単位/ml;パネルB)0.5U/ml;パネルC)5U/ml;パネルD)10U/ml;パネルE)20U/ml;およびパネルF)50U/mlであった。各々のパネルA−Fに図示したゲルにおいて、各々のレーンは以下を含む:レーン1はSDS−PAGE低分子量標準を含む;レーン2はビオチニル化標準を含む;レーン3は10μg/mlHBGF−1βを含む;レーン4は250U/mlトロンビンを含む;およびレーン5−13は0、1、2、4、6、8、24、48および72時間にインキュベーション混合物から回収したサンプルを含む。
【図2】図2は、相対的HBGF−1β濃度の関数としての3H−チミジン取り込みを示す。HBGF−1βのサンプルを、図1および実施例2に記載のように、トロンビン250U/mlおよびヘパリン5U/mlの存在下、0、24または72時間インキュベーションした。これらのサンプルの希釈を、次いでNIH 3T3細胞に加え、それを実施例3に記載のように置いた。CPMは、HBGF−1濃度に対してプロットする。
【図3】図3は、活性、野生型FGF−1 100ng/ml補足FG上で7日間培養した後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。多数の細胞およびその伸長した形に注目する。非補足FG上で成育させた少数の細胞と比較する(図5)。
【図4】図4は、活性、野生型FGF−1 10ng/ml補足FG上で7日間培養した後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。多数の細胞およびその伸長した形に注目する。非補足FG上で成育させた少数の細胞と比較する(図5)。
【図5】図5は、非補足FG上で7日間培養した後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。少数の細胞に注目し、図3および4の細胞数と比較すると、それは遅い増殖速度を示唆する。
【図6】図6は、不活性、変異体FGF−1 100ng/ml補足FG上で7日間培養した後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。少数の細胞に注目し、図3および4の細胞数と比較すると、それは遅い増殖速度を示唆する。
【図7】図7は、105細胞/FGmlの濃度でFGに着床させた24時間後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。FGのタンパク質およびトロンビンの濃度は、それぞれ4mg/mlおよび0.6NIH単位/mlであった。その伸長した、多足形態に注目し、それらは違いに接触している場所で細胞ネットワークを形成した。フィブロネクチン中で成育した同様の細胞の敷石状形と比較する(図9)。
【図8】図8は、105細胞/FGmlの濃度でFGに着床させた48時間後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。培養条件は図7で記載したとおりであった。その更に強調された、伸長および多足形態および発達した細胞ネットワークの発展の増加に注目する。フィブロネクチン中で成育した細胞の敷石状形と比較し(図10)、後者が細胞性ネットワークに欠けることに注目する。
【図9】図9は、フィブロネクチンで覆われた表面で成育させた24時間後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。敷石状の形および細胞ネットワークの欠如に注目する。図7と比較する。
【図10】図10は、通常使用されるフィブロネクチンのフィルム中で成育させた48時間後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。敷石状の形および細胞ネットワークの欠如に注目する。図8と比較する。
【図11】図11は、イヌから外移植したPTFE血管移植片の7日後(パネルA、C、E)または28日後(パネルB、D、F)の交差部位の顕微鏡写真である。移植の前に移植片は未処理(AおよびB)、FG単独で被覆(CおよびD)またはヘパリンおよびHBGF−1補足FGで被覆(EおよびF)の何れかであった。 未処理対照(AおよびB)は、最小間葉組織内成育を示し、両方の間隙は満たされ、それらの管腔表面は、フィブリン凝固物により覆われていた。FG−処理移植片は、間葉組織内成育を僅かに移植片の間隙の外半分でのみ示し、残りはフィブリン凝固物で満たされていた。非常に少ない間隙毛細管が存在した。比較して、FGF−1含有FGで処理した移植片は、更に豊富な間隙内部成育を示し、28日までに多くの毛細管、筋線維芽細胞およびマクロファージを示し、筋線維芽細胞の数層からなる内部カプセルは、コンフルエント内皮細胞層に近付いた。移植128日後の同じ移植片の結果は同様であり、より多数の毛細管がFG+FGF−1群であった(データは示していない)。
【図12】図12は、図11で記載した移植28日後の血管移植片の内部裏層の走査電子顕微鏡である。移植片は、未処理(G)、FG単独で被覆(H)またはヘパリンおよびHBGF−1補足FGで被覆(I)の何れかであった。未処理対照移植片(G)は、赤血球、血小板を含む血栓の内皮細胞範囲中心領域の希薄な領域、および暴露PTFE移植片材料の領域(図11の中心および上に見ることができる)を示した。 FG単独で被覆された移植片(H)は、フィブリン凝固物の内皮細胞中心領域の島を示した。比較して、FG+FGF−1で処理した移植片は、血流の方向に沿って配置されたコンフルエント内皮細胞を示した。
【図13】図13は、アルミニウム鋳型を使用して製造した1mm厚および8mm直径のディスク型移植片の製造を示す。
【図14】図14は、DBM単独、FG移植片またはDBM−FGによるラットにおける骨形成の誘発の筋肉内生物検定を説明する図表である。
【図15】図15は、DMB−FGによる頭頂部移植片における骨形成の誘発を説明する図表である。
【図16】図16は、DBM−FG、DBMまたはFGの筋肉内移植手術後28日の放射線不透性データである。
【図17】図17は、手術後28日、3カ月および4カ月後のDBM−FG(30mg/ml)頭頂部移植片の放射線不透性データである。
【図18】図18は、Aは、処理動物の手術後28日の開頭部位の写真である。Bは、未処理対照の手術後28日頭頂部傷の写真である。頭頂部傷に沿って、線維性結合組織のみが発達していることに注目する。
【図19】図19は、DMB粒子のみで処理した動物の頭頂部傷の写真である。
【図20】図20は、DBM−FG(15mg/ml)に応答して頭頂部に形成された新しい骨の写真である。
【図21】図21は、DBM−FG(15mg/ml)に応答して頭頂部に形成された新しい骨の写真である。典型的に、DBM移植片単独より、DBM−FGディスクを移植した頭頂部傷において、骨髄がより形成したことを注目する。
【図22】図22は、3×6mm直径のFGのディスクからの37℃でのTETの遊離である。遊離TETの濃度は、毎日取り換えるPBS2ml上清において分光光度的に測定した。これらのインビトロでの2回の「静止」実験は、別々の結果を導いた。その結果の一つをここに示す。
【図23】図23は、3×6mm直径のFGのディスクからの37℃でのTETの遊離である。ディスクはTET100mg/mlを含み、PBS2mlで満たした密封容器中に入れた。遊離TETの濃度は、3ml/日の割合で連続して取り換えるPBS排出液において分光光度的に測定した。PBS上清の用量は、常に約2mlに維持した。データは2回の実験の平均である。
【図24】図24は、50または100TETmg/mlFG含有3×6mm直径ディスクからの唾液へのTETの遊離である。TETの濃度は、毎日取り換える唾液上清0.75mlにおいて分光光度的に測定した。これらの実験に使用する唾液は、10人の供給者から溜め、遠心し、濾過して4℃に維持した。
【図25】図25は、TETなしならびに50および100mg/mlTET有りの3×6mm直径FGマトリックスの15日間にわたる写真である。TET補足FGの安定性は、対照FGより増加した。ディスクは、毎日取り換える唾液0.75ml中に維持した。唾液は10人の供給者から溜めた。それを実験に使用する前に遠心し、濾過し、4℃に保存した。9日目に、TETを含まないFGマトリックスが、TET50または100mg/ml何れかを含むマトリックスよりも衰えたことを注目する。15日目に、TET非含有FGマトリックスはほとんど完全に衰え、一方TET50または100mg/mlの何れかを含むFGマトリックスはほとんど変化しなかったことをまた注目する。したがって、TET50または100mg/mlの含有は、インビボで唾液内のFGマトリックスの寿命を劇的に延長する。
【図26】図26は、TET補足FGから遊離したTETの抗菌活性を示す。3×6mmTET補足FGディスクを囲む2mlのPBSを毎日取り換えた。遊離TETの抗菌活性を試験するために、回収した溶出液で飽和した6mm紙ディスクを、大腸菌を含む寒天プレート上で37℃で18時間インキュベーションした。次いで、阻害区域の直径を測定した。
【図27】図27は、FGマトリックスからのシプロフロキサシン、アミノキシチリンおよびメトロニダゾールの遊離を示す。別々の、各々の抗生物質100mlを含む3×6mm直径のディスクをリン酸緩衝化食塩水2ml中に浸した。上清を毎日取り換え、抗生物質濃度をそれぞれ275、274および320nmで分光光度的に測定した。
【図28】図28は、TET補足FGディスクからのTETの遊離が、TET−FGディスクのPBS浴の温度に比例したことを示す。
【図29】図29は、TET−FGからのTETの遊離におけるFGタンパク質濃度の効果を示す。高いFGタンパク質濃度は、TET−FGからの遅いTETの遊離をもたらすことに注目する。
【図30】図30は、5−FU補足FGからの5−FUの遊離は、5−FUの固体形を使用することにより延長した。
【図31】図31は、NIH 3T3線維芽細胞のフィブロネクチンに対する走化性反応の用量依存関係を示す。フィブロネクチンの濃度増加の段階勾配を、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、フィブロネクチンはNIH 3T3細胞のそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図32】図32は、NIH 3T3線維芽細胞のFGF−1に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−1の濃度増加の段階勾配を、ヘパリン存在下で、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−1はNIH 3T3細胞のそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図33】図33は、NIH 3T3線維芽細胞のFGF−2に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−2の濃度増加の段階勾配を、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−2はNIH 3T3細胞のそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図34】図34は、NIH 3T3線維芽細胞のFGF−4に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−4の濃度増加の段階勾配を、ヘパリン存在下で、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−4はNIH 3T3細胞のそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図35】図35は、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)のFGF−1に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−1の濃度増加の段階勾配を、ヘパリン存在下で、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−1はHDFのそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図36】図36は、HDFのFGF−2に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−2の濃度増加の段階勾配を、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−2はHDFのそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図37】図37は、HDFのFGF−4に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−4の濃度増加の段階勾配を、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−4はHDFのそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図38】図38は、HDFのFGF−4に対する走化性反応の溶液中およびFG中の用量依存関係を示す。FGF−4をFG中へ取り込み、走化性チャンバーの下部ウェルにおく。FG中のFGF−4の用量は、FGおよび中および低チャンバーを通って均等に分散した場合、示唆する濃度をもたらすのに十分であった。陰性対照は培地のみおよびFGを含み、FGFを含まない。低チャンバーでFGF−4 10ng/ml含有する培地は、陽性対照として使用した。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−4はHDFのそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図39】図39は、自己充足TS傷周辺の図表である。
【技術分野】
【0001】
本発明は補足されていない(unsupplemented)及び補足された(supplemented)、フィブリン接着剤(FG)ようなTS類(TS)、同様にそれらの製造法及び使用法に関する。ある1つの態様では、本発明は、全層の皮膚創傷の治癒を妨げないTS類に関する。別の態様では、本発明は成長因子(類)及び/又は薬物(類)で補足されたTS類に関し、同様にそれらの製造法及び使用法に関する。選択された特定の成長因子(類)又は薬物(類)はその使用の機能である。
【背景技術】
【0002】
関連出願のクロス・リファレンス
本出願は、1990年11月27日に出願された米国出願番号07/618,419号(現在、放棄)及び1991年11月27日にそれぞれ出願された同第07/798,919号の一部継続出願であり、これらを参考のためにここに引用する。
【0003】
本発明における米国政府の権利
米国赤十字社及び米国陸軍歯科研究所の間の共同研究及び開発の契約の下、米国政府は本発明の1つ又はそれ以上の態様において通常実施の、取り消し不能の、納付済みのライセンスを有する。
【0004】
A.創傷治癒及び成長因子
創傷治癒、即ち外傷の修復は、ほぼ手術直後に始まる。様々な細胞の機能の相次ぐ整合機能と緻密な減成調節及び再生段階を必要とする。細胞の増殖、分化及び移動は創傷治癒の基礎となる重要な生物学的過程であり、またこれは、線維増多、内皮形成、上皮形成などのフィブリン凝塊の形成、凝塊の吸収、組織の再設計も含む。創傷治癒は、特殊化した皮膚組織の形成だけでなく、多数の毛細管、多くの活発な線維芽細胞、及び多くのコラーゲン原線維を含む高度な血管化組織の形成に関わる。
【0005】
創傷治癒の過程は、損傷細胞の外に流出するトロンボプラスチンによって開始される。トロンボプラスチンは血漿因子VIIに接触して因子X活性化因子を形成し、その後に、因子Vとともにリン脂質及びカルシウムとの複合体となり、プロトロンビンをトロンビンに変換する。トロンビンは、フィブリノペプチドA及びBのフィブリノーゲンからの放出を触媒し、フィブリンモノマーを産生する。
【0006】
トロンビンはまた、トランスグルタミナーゼ、因子XIIIaを活性化し、これはフィブリンフィラメントに共有結合的に架橋するイソペプチド結合の形成を触媒する。次に因子XIIIによってアルファ−抗プラスミンがフィブリンフィラメント上に結合し、それによってフィラメントをプラスミンによる変性から保護する(例えば、ドーリトル(Doolittle)ら,アニューアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Ann.Rev.Biochem.)53巻:195〜229頁(1984年)を参照されたい)。
【0007】
組織が損傷した場合、一連の生物学的活性を示すポリペプチド成長因子は治療において決定的な役割を担っている創傷中へ放出される(例えば、ホルモナル・プロテイン・アンド・ペプチド(Hormonal Proteins and Peptides)(リー(Li),C.H.ed)7巻,アカデミック・プレス・インコーポレイテッド(Academic Press,Inc.),ニューヨーク,ニューヨーク 231〜277頁(1979年)及びブラント(Brunt)ら,バイオケミストリー(Biotechnology)6巻:25〜30頁(1988年)を参照されたい)。これらの活性には、損傷領域中の白血球及び線維芽細胞などの再成長する細胞が含まれ、細胞の増殖及び分化を誘導する。
【0008】
創傷治癒に関与し得る成長因子は、次のものを含むがこれに限定されない:血小板−誘導成長因子類(PDGF類);インシュリン−結合成長因子−1(IGF−1);インシュリン−結合成長因子−2(IGF−2);表皮成長因子(EGF);変換成長因子−α(TGF−α); 変換成長因子−β(TGF−β);血小板因子4(PE−4);及びヘパリン結合成長因子1及び2(それぞれHBGF−1及びHBGF−2)。
【0009】
PDGF類は循環血小板のアルファ顆粒中に蓄えられ、血液の凝固中、創傷部位で放出される(例えば、リンチ(Lynch)ら,ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション(J.Clin.Invest.)84巻:640〜646頁(1989年)を参照されたい)。PDGF類は次のものを含む:PDGF;血小板誘導脈管形成因子(PDAF);TGF−β;及びPF−4、これは好中球の化学誘引剤である(ナイトン(Knighton)ら,イン・グロウス・ファクターズ・アンド・アザー・アスペクツ・オブ・ウーンド・ヒーリング(in Growth Factors and Other Aspects of Wound Healing):バイオロジカル・アンド・クリニカル・インプリケーションズ(Biological and Clinical Implications),アラン・アール・リス・インコーポレイテッド(Alan R.Liss,Inc.),ニューヨーク,ニューヨーク,319〜329頁(1988年))。PDGFはミトゲン、化学誘引剤、及び線維芽細胞及び平滑筋を含む、間葉に由来する細胞におけるタンパク合成の剌激剤である(例えば、エイデルマン−グリル(Adelmann-Grill)ら,ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・セル・バイオロジー(Eur.J.Cell.Biol.)51巻:322〜326頁(1990年)を参照されたい)。
【0010】
IGF−1はPDGFと組み合わさって有糸分裂誘発及び培養間葉細胞に於けるタンパクの合成を推進する。PDGF又はIGF−1のいずれか一方の皮膚創傷への適用では治癒が増強されないが、両方の因子をともに適用すると結合組織及び上皮組織の成長を推進するようである(リンチ(Lynch)ら,プロシーディング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス(Proc.Natl.Acad.Sci)76巻:1279〜1283頁(1987年))。
【0011】
TGF−βはマクロファージ及び単球の化学誘引剤である。他の成長因子の存在又は非存在に依存した、TGF−βは多くの細胞型の成長を刺激又は阻害し得る。例えば、インビボで適用する場合、TGF−βは治癒している皮膚創傷の引張強さを増加する。TGF−βはまた、内皮細胞有糸分裂を阻害し、線維芽細胞によるコラーゲン及びグリコサミノグリカンの合成を剌激する。
EGF、TGF−α、HBGF類及びオステオゲニンなどのその他の成長因子はまた、創傷の治療において重要である。胃の分泌物及び唾液に存在するEGF、及び正常な及び転換された細胞によりつくられるTGF−αは、構造的に関連があり、同じ受容体を認識し得る。これらの受容体は上皮細胞の増殖を媒介する。
【0012】
両方の因子は、皮膚創傷の上皮の再形成を促進する。外因性のEGFはケラチノサイト及び皮膚の線維芽細胞の増殖を剌激することによって創傷の治療を推進する(ナニー(Nanney)ら,ジャーナル・オブ・インベスティゲイティング・オブ・ダーマトロジー(J.Invest.Dermatol.)83巻:385〜393頁(1984年)及びコフェイ(Coffey)ら,ネイチャー(Nature)328巻:817〜820頁(1987年))。EGFの局所的適用は、ヒトにおける部分的厚さの創傷の治療速度を促進する(シュルツ(Schulz)ら,サイエンス(Science)235巻:350〜352頁(1987年))。脱ミネラル化した骨から精製されるオステオゲニンは、骨の成長を推進するようである(ルイテン(Luyten)ら,ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(J.Biol.Chem.)264巻:13377頁(1989年)を参照されたい)。さらに血小板抽出物は、局所的適用のための軟膏(salve又はointment)の形になっている血小板−誘導創傷治療処方が記載されている(例えば、ナイトン(Kinghton)ら,アニューアル・オブ・サージェリー(Ann.Surg.)204巻:322〜330頁(1986年)を参照されたい)。
【0013】
ヘパリン結合成長因子類(HBGF類)はまた、線維芽細胞成長因子類(FGF類)としても知られ、酸性HBGF(aHBGFもまたHBGF−1又はFGF−1として知られる)及び塩基性HBGF(bHBGFもまたHBGF−2として知られる)を含み、上皮細胞を含む中胚葉細胞及び神経外胚葉細胞に対する有効なミトゲンである(例えば、バーゲス(Burgess)ら,アニューアル・レビュー・オブ・バイオケミストリー(Ann.Rev.Biochem.)58巻:575〜606頁(1989年))。さらにHBGF−1は内皮細胞及び大グリア細胞に対して走化性である。HBGF−1及びHBGF−2は両方ともヘパリンに結合し、タンパク質の分解からそれらを保護する。HBGF類によって示される一連の生物学的活性は、これらが創傷治癒において重要な役割を担っていることを示唆している。
【0014】
塩基性線維芽細胞成長因子(FGF−2)は脈管形成及び線維芽細胞の移動及び増殖の有効な刺激剤である(例えば、ゴスポダロウィッツ(Gospodarowicz)ら,モレキュラー・アンド・セルラー・エンドクリノロジー(Mol.Cell.Endocinol,.)46巻:187〜204頁(1986年)及びゴスポダロウィッツ(Gospodarowicz)ら,エンドクライン・レビューズ(Endo.Rev.)8巻:95〜114頁(1985年)を参照されたい)。酸性線維芽細胞成長因子(FGF−1)は内皮細胞の有効な脈管形成因子であると示されている(バーゲスら,前掲(1989年))。しかし、FGF成長因子が線維芽細胞に対して化学走性であるにしても確立はされていない。
【0015】
従って、成長因子は創傷治癒及び組織修復の特異的な促進に非常に有用である。しかし、これらの創傷治癒の促進への使用は矛盾した結果を与える(例えば、カーター(Carter)ら,イン・グロウス・ファクターズ・アンド・アザー・アスペクツ・オブ・ウーンド・ヒーリング:バイオロジカル・アンド・クリニカル・インプリケーションズ,アラン・アール・リス・インコーポレイテッド,ニューヨーク,ニューヨーク,303〜317頁(1988年)を参照されたい)。例えば、ブタにおいて標準化された皮膚創傷に別々に適用したPDGF、IGF−1、EGF、TGF−α、TGF−β及びFGF(HBGFとしても知られる)は、創傷において結合組織又は上皮の再生についてほとんど効果がなかった(リンチら,ジャーナル・クリニカル・インベステイゲーション 84巻:640〜646頁(1989年))。残る因子については、TGF−βは単独で最大きい応答を剌激する。しかしPDGF−bbホモダイマーとIGF−1又はTGF−αのようなファクターの組み合わせは、結合組織の再生及び外皮形成において劇的な増加をもたらす。(Id.)ツボイ(Tsuboi)らは、開いた創傷へのbFGFの日常的な適用は、治癒が減退したマウスにおいて創傷治癒を刺激するが、正常なマウスにおいては刺激しないことを報告している(ジャーナル・オブ・エクスペリメンタル・メティスン(J.Exp.Med.)172巻:245〜251頁(1990年))。一方、恐らく成長因子を含んでいるであろうブタ又はウシの血小板溶解産物の粗調製物の、ヒトの皮膚の創傷への適用は創傷の閉鎖の速度を高め、治癒領域の細胞の数を増加し、血管の成長を増加させ、コラーゲンの沈着の全速度を増加させ、瘢痕組織の強度を強める(カーターら、前掲)。
【0016】
このような矛盾した結果の理由はわかってはいないが、通常の一連の生物学的活性を示し得る方法による創傷への成長因子の適用における困難さの結果であろう。例えば、数種の成長因子受容体は、最大の生物学的作用の産出を少なくとも12時間占有しなければならないと現在では考えられている(プレスタ(Presta)ら、Cell Regul.2巻:719〜726頁(1991年)及びルスナチ(Rusnati)ら、ジャーナル・オブ・セルラー・フィジオロジー(J.Cell.Physiol.)154巻:152〜161頁(1993年))。このような矛盾した結果のために、創傷治癒の刺激における成長因子の外因的な適用による役割は明らかではない。さらに、創傷と成長因子の間の接触を長引かせるための、成長因子を創傷へ適用することによる方法は現在知られていない。
【0017】
B.TS類
血漿タンパクを含むTS類及び外科手術用接着剤は、骨及び皮膚などにおける創傷の内部又は外部を密閉するために用いられ、血液の損失を減少し、止血を維持する。このようなTS類は、血液凝固因子及び他の血液タンパクをを含む。フィブリンシーラントとも呼ばれているFGは、血漿から調製される天然の凝塊に類似するゲルである。各FGの正確な成分は、出発物質として使用される特定の血漿画分の機能である。血漿成分の分画は、エタノール、ポリエチレングリコール、及び硫酸アンモニウム沈殿、イオン交換及びゲル濾過クロマトグラフィーなどの標準的なタンパク精製法によって行う。典型的なFGは微量のアルブミン、フィブロネクチン、プラスミノーゲンを含有する。カナダ、欧州及び恐らくどの地域でも市販で入手可能なFGはまた、安定化剤としてアプロチニンも典型的に含有する。
【0018】
FG類は通常、次のものから製造される:(1)フィブロネクチン、因子XIII、及びフォンウィレブラント(von Willebrand)因子を含有するフィブリノーゲン濃縮物;(2)乾燥ヒト又はウシトロンビン;及び(3)カルシウムイオン。商業生産されたFG類は通常、ウシの成分を含有する。フィブリノーゲン濃縮物は寒冷沈降反応、次いで濾過によって血漿から製造し、トロンビンとカルシウムイオンのようなトロンビン活性化剤の混合物の、シーラント又は凝塊の形の組成物を得る。フィブリノーゲン及びトロンビン濃縮物は凍結乾燥して製造され、使用する前に塩化カルシウムの溶液と速やかに混合する。混合したら、組織表面上で凝固させ、架橋フィブリンを含む凝塊を形成する組織に成分を適用する。フィブリノーゲン濃縮物に存在する因子XIIIは架橋を触媒する。
【0019】
オーストラリア特許第75097/87号は1成分の接着剤を記載している。これはフィブリノーゲンの水溶液、因子XIII、アンチトロンビンIIIのようなトロンビン阻害剤、プロトロンビン因子、カルシウムイオン、及び必要であればプラスミン阻害剤を含む。ストロエトマン(Stroetmann),米国特許第4,427,650号及び同第4,427,651号は、創傷の閉鎖及び治癒を増強する、フィブリノーゲン、トロンビン及び/又はプロトロンビン、及びフィビリン溶解阻害剤、及びまた血小板抽出物のような他の成分も含有する粉末また噴霧可能な製剤の形の濃血漿誘導体の製造について記載している。ローズ(Rose)らの米国特許第4,627,879号及び同第4,928,603号は、フィブリノーゲン及び因子XIIIを含む寒冷沈降懸濁液の製造方法及びFG製造のための該懸濁液の使用を開示している。JP 1−99565は、創傷治癒のためのフィブリン接着剤の製造のためのキットを開示している。アルターバウム(Alterbaum)(米国特許第4,714,457号)及びモース(Morse)ら(米国特許第5,030,215号)は、自系のFG製造のための方法を開示している。さらに、改良FGデリバリーシステムは、次のいずれかに開示されているミラー(Miller)ら,米国特許第4,932,942号及びモースら,PCT出願WO91/09641号)。
【0020】
イムノ AG(IMMUNO AG)(ウィーン、オーストリア)及びベーリングヴェルケ(BEHRINGWERKE)(ドイツ)(ギフル(Gibble)ら,トランスフュージョン(Transfusion)30巻:741〜747頁(1990年))は、FG類を現在欧州及びほかの地域で市販している(例えは、イムノAGが所有する米国特許第4,377,572号及び同第4,298,598号を参照されたい)。TS類は米国では市販されていない。しかし、米国赤十字社及びバクスター/ハイランド(BAXTER/HYLAND)(ロサンジェルス,カリフォルニア)は最近FG(ARC/BH FG)を共同開発し、現在臨床試験中である。
【0021】
米国国外で臨床的に使用されているTS類はある種の臨床上の危険性が持ち上がり、米国では使用のための食物又は薬物による投与は認可されていない。例えば、欧州で許可されているTS類は、アプロチニン及びウシトロンビンなどの非−ヒト由来のタンパクを含んでいる。これらのタンパクは非−ヒト由来であるので、人々はこのタンパクに対してアレルギー反応を起こし得る。欧州では、FGの成分中に存在するウイルスの不活性化に加熱失活を使用している。しかし、この加熱失活法は、アレルギーになり得る変性タンパクを生じ得る。さらに、この失活法は、TS類中にウシタンパクを使用しているためにTS類中に存在し得る、ウシの海綿様脳症「狂牛病」を引き起こすプリオン(prion)が失活されないという心配がある。この病気は「スクレイピー(scrapies)」と呼ばれヒツジからウシへすでに交雑している考えらえているので、ヒトに感染し得るということは些細な問題ではない。
【0022】
ARC/BH FGはウシタンパクを含んでいないので、欧州で入手可能なTS類に勝るものである。例えば、ARC/BH TSはウシトロンビンの代わりにヒト・トロンビンを含み、アプロチニンを含まない。ARC/BH FGはウシタンパクを含まないので、欧州で入手可能なTS類よりもヒトに於けるアレルギーが少ない。さらに、ARC/BH FGは、溶媒デタージェント法(solvent detergent method)によりウイルスが不活性化され、この方法は生成する変性タンパクがより少なく、従って欧州で入手可能なものよりもアレルギーが少ない。
【0023】
従って、ARC/BH FGは、現在他の国で市販で入手可能なTS類に勝っている。
【0024】
FGは、主として臨床の局所的な適用のために処方され、出血を抑え、止血を維持し創傷の治癒を推進するために用いられる。FGの臨床的用途は最近、再検討されている(ギブルら,トランスフュージョン 30巻:741〜747頁(1990年);ラーナー(Lerner)ら,ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ(J.Surg.Res.)48巻:165〜181頁(1990年))。組織を密閉することによりFGは空気又は体液漏出を防止し、止血を誘発し、出血、血腫、感染などの創傷治癒を妨害し得る事象を減少又は防止することによって創傷治癒に間接的に寄与する。FGは止血を維持し、血液の損失を減少するけれども真の損失治癒特性を有することはまだ証明されていない。FGは、骨及び皮膚の損傷のような内部と外部の両方の損傷に適しており、止血の維持に有用であるので、その創傷治癒特性の増強に望ましいものである。
【0025】
フィブリノーゲン濃度が約39g/lであり、トロンビン濃度が200〜600U/mlであるFGは著しく増加した応力、エネルギー吸収及び弾性値を有する凝塊を生じる(バイアン(Byrne)ら,ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・サージェリー(Br.J.Surg.)78巻:841〜843頁(1991年))。フィブリン凝塊で満たされ(5mg/ml)、皮下に埋め込まれた貫通テトロンシリンダーは、空のシリンダーと比較したとき、コラーゲンの沈着増加の誘発を含む組織の肉芽形成を剌激する(ヘデリン(Hedelin)ら,ヨーロピアン・サージカル・リサーチ(Eur.Surg.Res.)15巻:312頁(1983年))。
【0026】
C.骨創傷とその修復
一連の骨(bone induction)誘導は、ウリスト(Urist)らによって最初に記載され、脱ミネラル化した皮質性骨マトリックスを使用するものである(クリニカル・オルソペディクス・アンド・リレイテッド・リサーチ(Clin.Orthop.Rel.Res.)71巻:271頁(1970年)及びプロシーディング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス・オブ・USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)70巻:3511頁(1973年))。同種異系のレシピエントに皮下的に埋め込まれた脱ミネラル化皮質性骨マトリックスは局所のミトゲンとして作用する因子を放出し間葉細胞の増殖を剌激する(ラス(Rath)ら,ネイチャー(ロンドン)278巻:855頁(1979年))。新たな骨形成が埋め込み後12日から18日の間に起こる。造血骨髄系統で充満した小骨の発達は21日までに起こる(レデイー(Reddi),A.,イン・エクストラセルラー・マトリックス・バイオケミストリー(in Extracellular Matrix Biochemistry)(ピーツ(Piez)ら,ed.)エルセビアー(Elsevier),ニューヨーク,ニューヨーク,375〜412頁(1984年))。
【0027】
脱ミネラル化骨マトリックス(DBM)は骨形成タンパク(BMP)として知られる骨誘発タンパク源であり、骨細胞の先祖の増殖を調節する成長因子である(例えば、ホイスカ(Hauschka)ら,ジャーナル・オブ・バイオケミストリー261巻:12665〜12674頁(1986年)及びカナリス(Canalis)ら,ジャーナル・オブ・クリニカル・インベスティゲーション 81巻:277〜281頁(1988年)を参照されたい)。8つのBMPが現在同定されており、BMP−1からBMP−8と略記されている。BMP−3及びBMP−7はまた、それぞれオステオゲニン(osteogenin)及び骨形成タンパク−1(OP−1)として知られている。
【0028】
残念ながら、DBM物質は粒子状骨髄自己移植と組み合わせない限り、臨床上の用途は殆ど無い。レシピエントの骨に外科的に注入し、治療効果をあげ得るDBMの量は制限されている。さらに、吸収は少なくとも49%であると報告されている(トリウミ(Toriumi)ら,アチーヴス・オブ・オトラリンゴロジー−ヘッド・アンド・ネック・サージェリー−(Arch.Otolaryngo.Head Neck Surg.)116巻:676〜680頁(1990年))。
【0029】
DBM粉末及びオステオゲニンは骨誘発潜在性が発現される前に、組織液により洗い流され得る。さらに、DBMパックされた骨腔への組織液の浸出又は創傷床への軟組織虚脱は、DBM及びオステオゲニンの骨誘発特性に有意に影響し得る2つの因子である。創傷床への軟組織虚脱は、創傷床内への骨適応幹細胞の適切な移行を同様に阻害し得る。
【0030】
粉末状のヒトDBMはアメリカの歯科医によって、口腔手術の間にできた顎骨腔をパックするために現在使用されている。しかし、粉末状のDBMは使用が困難である。
【0031】
精製BMP類は、FG(ハットリ(Hattori)ら,日本整形外科学会雑誌(Nippon.Seikeigeka.Gakkai.Zasshi.)64巻:824〜834頁(1990年);カワムラ(Kawamura)ら,クリニカル・オルソペディクス・アンド・リレイテッド・リサーチ235巻:302〜310頁(1988年);シュラグ(Schlag)ら,クリニカル・オルソペディクス・アンド・リレイテッド・リサーチ227巻:269〜285頁(1988住)及びシュワルツら,クリニカル・オルソペディクス・アンド・リレイテッド・リサーチ238巻:282〜287頁(1989年))、及び全血凝塊(ワン(Wang)ら,ジャーナル・オブ・セルラー・バイオケミストリー(J.Cell.Biochem.)15F:Q20 アブストラクト(1990年))を含む様々な方法によって投与されたとき、動物において骨誘発作用を有する。しかし、シュワルツら(前掲)は、異所性の骨誘発又はBMP依存性の骨再生におけるFGの明らかな正の作用も負の作用も実証してはいない。カワムラら(前掲)は、FG中の部分精製BMPを異所性の非骨部位中で試験した場合に、相乗効果を見いだした。
【0032】
TSはまた、創傷領域中へ移動し新しい組織を産生するために使用し得る細胞である「スカフォルド(scaffold)」としても供給し得る。しかし、市販で入手可能なFG及び他のTS類の調製品は非常に密度が濃いために、調製品中への及びそれを通る、細胞の移動が不可能になる。このことによってインビボ使用での調製品の効果が制限されることがある。
【0033】
骨癒着欠損と呼ばれている骨創傷のあるタイプでは、その上に新たな骨形成が自然には起こらない極微の隙間が存在する。臨床上、これらの状況のための治療は骨移植である。しかし、骨自己移植源は普通限られており、同種異系の骨の使用はウイルス汚染の高い危険性を伴う。この状況のために脱ミネラル化された、ウイルスを不活性化した骨粉末を誘引溶液として用いる。
【0034】
D.血管プロテーゼ
人工血管プロテーゼは、通常ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)から製造され、ヒト及び他の動物の病的な血管の代わりに使用される。血管プロテーゼの開通性の程度を最大にし、凝塊形成を最小にするために、プロテーゼ上への非自己の内皮細胞の接種を含む様々な技術が用いられてきた。血管移植片と内皮細胞の両方に付着する様々な基質が、内皮細胞接種を増強する中間体基質として研究されてきた。これらの基質は凝固前の血液(ヘリング(Herring)ら,サージェリー(Surgery)84巻:498〜504頁(1978年))、FG(ローゼンマン(Rosenman)ら,ジャーナル・オブ・バスキュラー・サージェリー(J.Vasc.Surg.)2巻:778〜784頁(1985年);シュレンク(Schrenk)ら,ソーラシック・アンド・カーディオバスキュラー・サージェリー(Thorac.Card iovasc. Surg.) 35巻:6〜10頁(1986年);ケベカー(Keveker)ら,ソーラシック・アンド・カーディオバスキュラー・サージェオン(Thorac.Cardiovasc.Surgeon)34巻:49〜51頁(1986年)及びジラ(Zilla)ら,サージェリー 105巻:515〜522頁(1989年))、フィブロネクチン(例えば、ケスラー(Kesler)ら,ジャーナル・オブ・バスキュラー・サージェリー 3巻:58〜64頁(1986年);マセラク(Macarak)ら,ジャーナル・オン・セルラー・フィジオロジー(J.Cell.Physiol.)116巻:76〜86頁(1983年)及びラマナンジェノナ(Ramalanjenona)ら,ジャーナル・オブ・バスキュラー・サージェリー 3巻:264〜272頁(1986年)を参照されたい)、又はコラーゲン(ウィリアムス(Willams)ら,ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ 38巻:618〜629頁(1985年))を含む。しかし、これらの技術に関するひとつの一般的な問題は、接種に非自己の細胞を用いるため組織拒絶反応の可能性が生じるということである(例えば、シュレンクら,前掲)。さらに、融合性の内皮は通常、決してつくられるものではなく、作られるとしても数カ月を要する。この遅れの結果、血管プロテーゼは大きい閉塞(occlusion)速度を有する(例えば、ジラら,前掲)。
【0035】
E.脈管形成
脈管形成は新たな血管を誘導する。HBFG−1及びHBFG−2などの、ある成長因子は脈管形成性の成長因子である。しかし、コラーゲン海綿(トンプソン(Tompson)ら,サイエンス 241巻:1349〜1352頁(1988年));ビーズ(ヘイエク(Hayek)ら,バイオケミカル・アンド・バイオフィジカル・リサーチ・コミュニケーションズ(Biochem.Biophys.Res.Commun.)147巻:876〜880頁(1987年));海綿状構造に配列されたコラーゲンでコテーィングされた固形PTFEファイバー(トンプソンら,プロシーディング・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンス USA(Proc.Natl.Acad.Sci.USA)86巻:7928〜7932頁(1989年))を伴った投与;又は注入(プーマラ(Puumala)ら,ブレイン・リサーチ(Brain Res.)534巻:283〜286頁(1990年))は不規則で無秩序な血管の発生をもたらす。これらの成長因子は、インビボで一定の部位にて新しい血管の成長にうまく向かわせるように用いられていない。さらに、プラスチックガラスチェンバー中の皮下的に埋め込まれたフィブリンゲル(0.5〜10mg/ml)は、空のチェンバー又は食塩水培養液で満たしたチェンバーと比較すると、埋め込みから4日以内で脈管形成を誘導する(ドボラク(Dvorak)ら,ラボラトリー・インベスティゲーション(Lab.Invest.)57巻:673頁(1987年))。
【0036】
F.部位指向的、局所化ドラッグデリバリー
有効な、部位指向性のドラッグデリバリーシステムは医薬の幾つかの領域では非常に必要である。例えば、局所化ドラッグデリバリーは、歯周炎のような抗菌剤の全身的な投与が効かない局所的な感染の治療に必要である。全身的投与後の問題は、普通、標的部位に到達し得る抗菌剤の濃度の低さにある。局所的な濃度を上げるために全身的な用量を増加することは効果的ではあるだろうが、同時に毒性、微生物の耐性及び薬物不適合をもたらし得る。これらの問題を克服するために幾つかの別の方法が考案されているがどれも理想的ではない。例えば、非結晶の流動性マスとして、水性媒質に分散したコラーゲン及び/又はフィブリノーゲン及び安定な配置を可能にするタンパク様のマトリックス組成物もまた、薬物を局所的にデリバーすることが示されている(ルック(Luck)ら,米国再発行特許第33,375号;ルックら,米国特許第4,978,332号)。
【0037】
しかし、様々な抗生物質(AB)がFGから、比較的低い濃度で、数時間から数日の範囲の比較的短時間放出されると報告されている(クラム(Kram)ら,ジャーナル・オブ・サージカル・リサーチ50巻:175〜178頁(1991年))。大部分のAB類は自由に水に溶解し、調製するときはTS類中に加えられてきた。しかし、TET HCl及びFG中への自由に水に溶解する他のAB類の併合は、AB−添加FGを形成する間のフィブリンの重合を妨害する(シュラグ(Schlag)ら,バイオマテリアルズ(Biomaterials) 4巻:29〜32頁(1983年))。この妨害は、AB−FG混合物中に達成し得るTET HClの量と濃度を制限し、AB濃度依存性であるようだった。FGからのABの比較的短い放出時間はAB−添加TSの比較的短い寿命及び/又はAB−TS中のABの形及び/又は量を反映し得る。
【0038】
G.TS類からの薬物放出の制御
幾つかの臨床的応用のために、制御され、局所化された薬物放出は望ましいものである。前記で論じたように、幾つかの薬物、特にAB類はFGのようなTS類に取り込まれ、そこから放出されている。しかし、薬物を補足したFGの比較的短い寿命を少なくとも部分的に明らかに反映する薬物放出の持続期間は、ほとんどあるいは全く制御されていない。したがって、延長された、局所的な薬物放出を可能にするためのFG及び他のTS類を安定化する方法は、TSからの他の補足物の取り込みと延長された放出のための新しい技術と同様、望ましくそして必要なものである。
【発明の開示】
【0039】
発明の要旨
一態様において、本発明は、シーラントが全層の皮膚創傷の治癒を阻害しない、TSを含む、問題の組成物を提供する。
【0040】
別の態様において、本発明は、シーラントの全タンパク質濃度が30mg/ml未満である、TSを含む、問題の組成物を提供する。
【0041】
別の態様において、本発明は、全タンパク質濃度が30mg/ml未満であり、補足物質が成長因子および/または薬物である補足TSを含む、問題の組成物を提供する。
【0042】
別の態様において、本発明は、全タンパク質濃度が30mg/ml以上であり、補足物質が成長因子および/または薬物である補足TSを含む、問題の組成物を提供する。
【0043】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含む、動物細胞の指向性移動を促進させる、問題の組成物を提供する(該成長因子は動物細胞の指向性移動を促進させるのに有効である)。
【0044】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含む、創傷治癒を促進させる、問題の組成物を提供する(該濃度は創傷治癒を促進させるのに有効である)。
【0045】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含む、人工血管の内皮形成を促進させる、問題の組成物を提供する(該濃度は人工血管の内皮形成を促進させるのに有効である)。
【0046】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含む、動物細胞の増殖および/または分化を促進させる、問題の組成物を提供する(該濃度は動物細胞の増殖および/または分化を促進させるのに有効である)。
【0047】
別の態様において、本発明は、TSおよび少なくとも1つの薬物を含む、少なくとも1つの薬物の局所的輸送を促進させる、問題の組成物を提供する。
別の態様において、本発明は、TSおよび少なくとも1つの成長因子を含む、少なくとも1つの成長因子の局所的輸送を促進させる、問題の組成物を提供する。
【0048】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含有する組成物を創傷に適用することを含んでなる、創傷治癒を促進するための方法を提供する(該濃度は創傷治癒を促進させるのに有効である)。
【0049】
別の態様において、本発明は、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含有する組成物を人工血管に適用することを含んでなる、人工血管の内皮形成を促進させるための方法を提供する(該濃度は人工血管の内皮形成を促進させるのに有効である)。
【0050】
別の態様において、本発明は、有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含有するTSの十分近くに細胞を置くことを含んでなる、動物細胞の増殖および/または分化を促進させるための方法を提供する(該濃度は該細胞の増殖および/または分化を促進させるのに有効である)。
【0051】
さらなる態様において、本発明は、少なくとも1つの薬物含有するTSを組織に適用することを含んでなる、少なくとも1つの薬物を組織へ局所的に輸送するための方法を提供する。
【0052】
別の態様において、本発明は、少なくとも1つの成長因子含有するTSを組織に適用することを含んでなる、少なくとも1つの成長因子を組織へ局所的に輸送するための方法を提供する。
【0053】
別の態様において、本発明は、有効濃度の少なくとも1つの成長因子を含有するTSを細胞の十分近くに置くことを含んでなる、動物細胞の指向性移動を得るための方法を提供する(該濃度は該細胞の所望の指向性移動を得るのに有効である)。
【0054】
本発明の態様において、TSはFGであってよい。
【0055】
本発明の種々の態様において、局所的フィブリノーゲン・コンプレックス(TFC)、ヒト・トロンビンおよび塩化カルシウムを混合することからFGを調製することができる。TFC濃度を変化させることは、最終FGマトリックスの密度に最も有意な影響を及ぼす。トロンビン濃度を変化させることは、最終FGの全タンパク質濃度に有意な影響を及ぼさないが、TFCのフィブリノーゲン成分の、フィブリンへの重合に必要とされる時間に深い影響を及ぼす。この作用はよく知られているが、FGを単独でかまたは補足されて用いる場合に、FGの有効性を最大限にするために用いることは、一般に認識されていない。この作用のために、FG成分の混合およびFG凝固間の時間を変化させることができる。従って、FGを創傷の深い間隙中により自由に流動させ、FGが凝固する前にFGを創傷に完全に満たすことができる。別法として、特に圧力下で創傷が液体を漏出している場合(即ち、血液、リンパ液、細胞間液等)、FGが創傷部位を刺激させないぐらい十分迅速にFGを凝固させることができる。この性質はまた、長い通路(即ち、カテーテル、内視鏡等)を伴う輸送装置をFGによって詰まらせないために重要であり、FGまたは添加FGを外科手術によってのみ近付き易い身体の部位に適用するために重要である。この作用はまた、懸濁液中の不溶性添加物質を保有し、それがアプリケーターまたは組織部位で凝固するのを妨げるのに重要である。
【0056】
本明細書中で用いるTFCは、精製およびウイルス的に不活性化されているヒト血漿タンパク質の凍結乾燥混合物である。再構成したTFCは、以下を含有する:
全タンパク質:100〜130mg/ml
フィブリノーゲン (凝固可能タンパク質として)全タンパク質の80% (最小)
アルブミン(ヒト):5〜25mg/ml
プラスミノーゲン:5mg/ml
XIII因子:10〜40U/ml
ポリソルベート−80:0.3%(最大)
pH:7.1〜7.5
【0057】
また、再構成したTFCはトレース量のフィブロネクチンも含有する。
【0058】
本明細書中に用いるヒト・トロンビンは、精製およびウイルス的に不活性化されているヒト血漿タンパク質の凍結乾燥混合物である。再構成したヒト・トロンビンは以下を含有する: トロンビンポテンシィ:300±50 IU/ml アルブミン(ヒト):5mg/ml グリシン:0.3M±.05M pH:6.5〜7.1 塩化カルシウムを十分な濃度で加えて、トロンビンを活性化させる。カルシウムが十分量である限り、その濃度は重要でない。
【0059】
成長因子を含有する本発明の組成物において、該組成物は阻害化合物および/または強化化合物を含有してもよく、ここで該阻害化合物は成長因子のどんな生物学的活性をも阻害するシーラントの活性を阻害し、強化化合物は成長因子のどんな生物学的活性をも強化するか、媒介(mediate)するか、または増進する(該阻害化合物または該強化化合物の濃度は阻害、強化、媒介または増進を達成するのに有効である)。
【0060】
本発明の成長因子補足TSは、創傷、特に糖尿病患者の皮膚潰瘍のような容易に治癒しない創傷の治癒を促進するのに有用であり、FGF−1、FGF−2、FGF−4、PDGF、EGF、IGF、PDGF−bb、BMP−1、BMP−2、OP−1、TGF−B、CIF−A、CIF−B、OIF、アンジオゲニン、エンドセリン、肝細胞成長因子およびケラチノサイト成長因子を含むがそれらに限定されない成長因子を輸送するのに有用であり、創傷部位および成長因子間の延長された接触のための媒体を提供する。成長因子を補足したTSは、熱傷および他の皮膚創傷を治療するのに用いられ、TSおよび、成長因子に加えて、抗生物質および/または鎮痛薬等を含むことができる。成長因子を補足したTSは天然または人工移植片(例えば、皮膚創傷用皮膚)の移植を助けるのに用いられる。また、成長因子を補足したTSは美容的に用いられてもよく(例えば、毛髪移植において)、ここでTSはFGF、EGF、抗生物質およびミノキシジル、ならびに他の化合物を含有することができる。さらに、皺および傷跡を治療するのに、シリコンまたは他の化合物を使用する代わりに、本発明の組成物を美容的使用する。この態様において、例えば、TSはFGF−1、FGF−4、および/またはPDGF、および脂肪細胞を含有する。該成長因子を補足したTSは外科創傷、骨折、または胃潰瘍および他のこのような内部創傷に、それらの治癒を促進するために適用することができる。例えば移植片が天然組織からなる場合のように、人工または天然移植片のいずれかを動物体内に組み込むのを助けるのに、本発明のTSを用いることができる。ある症状、例えば歯周炎、即ち持続性感染、骨吸収、靭帯損失および歯根膜ポケットの早発の上皮再形成を伴う主な問題の幾つかと戦うのに、本発明のTSを用いることができる。
【0061】
別の態様において、本発明はFG、DBM、および/または精製BMPの混合物を提供する。この混合物は、身体の細胞成分をその内に移動させ、従って必要とされる所で骨誘導を生じさせるマトリックスを提供する。タンパク質(例えば、フィブリノーゲンおよびXIII因子)、酵素(例えば、トロンビンおよびプラスミン)、BMP、成長因子およびDBM、ならびにそれらの濃度の点から、該マトリックス組成物は適切に配合されて、側頭骨骨格構造の寿命および発生する必要のある骨誘導を最適化する。全てのFG成分は生分解され得るが、骨誘導の間、新しく形成された骨の位置および形を決定できる小形にできない骨格を、該混合物は提供する。従って、軟組織の、骨の再建手術において問題である骨の偽関節欠乏への虚脱は避けられるであろう。後述の、軟骨発達を促進する、CIF−AおよびCIF−Bのような成長因子を補足したTSの使用は、損失または損傷した軟骨および/または損傷した骨の再建において有用であるだろう。
【0062】
好ましい態様において、有効濃度のHBGF−1をFGに加えて、創傷治癒能力を有する成長因子を補足したTSを得る。別の好ましい態様において、有効量の血小板由来抽出物をFGに加える。他の好ましい態様において、有効濃度の少なくとも2つの成長因子の混合物をFGに加え、有効量の成長因子を補足したFGを創傷組織に適用する。
【0063】
成長因子に加えて、DBMおよびBMPが含まれるがそれらに制限されない、薬物、ポリクローナルおよびモノクローナル抗体、ならびに他の化合物をTSに加えてもよい。これらは創傷治癒を促進し、感染、新形成、および/または他の疾患過程に抵抗し、またはTS中の成長因子の活性を媒介または増強し、および/またはTS中の成長因子の活性を阻害するTS成分を阻害する。これら薬物には以下に挙げるものが含まれるが、それらに制限されない:テトラサイクリンおよびシプロフロキサシンのような抗生物質;5−フルオロウラシル(5−FU)、タキソールおよび/またはタキソテールのような抗増殖/細胞毒性薬物;ガングシクロビル、ジドブジン、アマンチジン、ビダラビン、リバラビン、トリフルリジン、アシクロビル、ジデオキシウリジン、およびウイルス成分または遺伝子産物に対する抗体のような抗ウイルス物質;α−またはβ−またはγ−インターフェロン、α−またはβ−腫瘍壊死因子、およびインターロイキンのようなサイトカイン;コロニー刺激因子;エリトロポイエチン;ジフルカン、ケタコニゾールおよびナイスタチンのような抗菌類物質;ペンタミジンのような抗駆虫物質;抗α−1−トリプシン、抗α−1−キモトリプシンのような抗炎症薬;ステロイド;麻酔薬;鎮痛薬およびホルモン。TSに加えてもよい他の化合物には以下に挙げるものが含まれるが、それらに制限されない:ビタミンおよび他の栄養添加物質;ホルモン;糖タンパク質;フィブロネクチン;ペプチドおよびタンパク質;炭水化物(単純および/または複雑の両方);プロテオグリカン;抗アンジオゲニン;抗原;オリゴヌクレオチド(センスおよび/またはアンチセンスDNAおよび/またはRNA)BMP;DBM;抗体(例えば、感染物質、腫瘍、薬物またはホルモンに対する);ならびに遺伝子治療試薬。遺伝的に変化させた細胞および/または他の細胞もまた、本発明のTSに含ませることができる。本発明の実施に用いることのできる骨誘導化合物には、以下に挙げるものが含まれるが、それらに制限されない:オステオゲニン(BMP3);BMP−2;OP−1;BMP−2A、−2B、および−7;TGF−β、HBGF−1および−2;ならびにFGF−1および−4。さらに、TSを破壊しないいずれのものをも、本発明のTSに加えることができる。
【0064】
本明細書中で報告する研究によって、FG中に遊離塩基TETまたはシプロフロキサシンHClのような化合物を含有させ、またはそれらによりFGをしょりすると、補足されたFGに延長された寿命を与えることが図らずも示される。この現象を利用して、TSからの薬物放出期間を増加させることができる。別法として、この現象を利用して、FGを安定化させるのに用いる化合物とは異なる、別の薬物の放出を調節でき(該薬物もまたTET−FGに組み込まれている)、および/またはインビボまたはインビトロでFGをより長期間持続させることができる。
【0065】
一般に、水に溶解し難い形態の薬物(例えば、遊離塩基のTET)は、その水に自由に溶解する形態よりも、TSからの薬物の輸送を増加させる。故に、薬物をフィブリノーゲンまたは活性炭のような不溶性担体にTS中で結合させて、補足されたTSからの薬物の輸送を延長させることができる。
別の態様において、補足されたTSは小器官中に用いることができ、例えばFGF−1、FGF−2、FGF−4、およびOP−1のような成長因子を含有することができる。
【0066】
別の態様において、本発明は、水難溶性形態の抗生物質(例えば、遊離塩基型のTET)および他の薬物の局所的輸送を促進する、TSおよび有効濃度の少なくとも1つの不完全水溶解形態の抗生物質を含む組成物を提供する。
【0067】
本発明は、以前に用いられたTS組成物および方法より幾つかの点で有利である。最初の有利な点は、本発明の成長因子および/または薬物を補足したTSが理想的生分解可能な担体の多くの特徴を有すること、即ち、ヒト・タンパク質のみ含有して製剤化することができ、従って免疫原性問題および異物反応を排除するまたは最小限にできる;該組成物の投与は融通が効く;ならびに該組成物は宿主自身の自然のフィブリン溶解系によって分解するので、宿主細胞からの除去が必要でないことである。
【0068】
第二の有利な点は、内部または外部創傷に、延長した期間、成長因子および/または薬物を有効に輸送する、良い方法を本発明は提供することである。幾つかの成長因子受容体は、最大の生物学的効果を生じるのに少なくとも12時間占有されなければならないと現在信じられている。以前は、これを実行する方法がなかった。本発明は、成長因子およびその受容体間の延長された接触を生じさせ、従って強力な生物学的効果を生じさせる。
【0069】
本発明の第三の有利な点は、動物細胞が本発明のTS中におよびTSを通って移動することができ、TS中で成長できることである。これは隣接した組織および人工器官に細胞を移植するのを助ける。欧州で利用可能なTSの組成物に基づいて、それらの製剤を用いては不可能であると予想される。その代わり、動物細胞は市販のTSを分解するか周囲を移動しなければならない。欧州から市販TSを米国へ輸入することは不法であるので(米国における該市販TSの使用は、米国FDAによって許可されていない)、出願人はこれを容易に実証できない。
【0070】
第四の有利な点は、最初の液体の性質のために、本発明のTSが、多くの以前から利用可能な輸送系よりも、より徹底的かつ完全に表面を覆うことができることである。成長因子を補足したFGは人工血管の内部、外部、および細孔を覆うであろうから、生物材料の被覆および人工血管の内皮形成における本発明の使用について、これは特に重要である。この結果、TS中におよびTSを通って移動する内皮細胞の能力に加えて、自己内皮細胞の移植が人工血管の全長に沿って起こり、それによって血栓形成および抗原性が減少するであろう。以前に用いられたTSの場合、人工血管の末端で移植を開始し、少しでもその内部に進行させ、従って血栓形成および抗原性をより長期間発現させた。また、人工血管に対して以前に用いられたTSは最初、身体に拒絶され得、人工器官を通過する血液の剪断力によって容易に洗い落とされ得る非自己細胞でシード(seed)された。
【0071】
第五の有利な点は、本発明の補足されたおよび補足されないTSを成型することができ、従って殆どどんな所望の形でも注文して作ることができる。例えば、FGのようなTSはBMPおよび/またはDBMを補足でき、最も適当に骨創傷を治療するのに必要とされる形に注文して作ることができる。DMB粉末はその形を維持できないであろうから、DMB粉末単独でこれを行うことはできない。
【0072】
第六の有利な点は、TET−FGのような本発明のABを補足したFGが、補足しないFGに比べてFGの寿命および安定性を予想外にも増していることである。認知できる量のABがFG中にもはや残っていない後にさえ、この増加した安定性は継続する。例えば、遊離塩基TETから生成したTET飽和溶液中にか、またはCIP HCl溶液中に新しく形成したFG塊を浸すことによって、実質的に全部のTETまたはCIPがFG塊に残っている後にさえ保存されかつ安定であるFG塊を生成する。この効果をどのようにして得られるかに関して、どんな理論によっても拘束されることを望まないが、TETまたはCIPのようなABがTFC中にあるプラスミノーゲンを阻害し、FGを破壊すると信じられている。プラスミノーゲンを一度阻害すると、その継続された阻害はFG中に残っている認知できる量のTETまたはCIPに依存しないと思われる。この安定化効果の結果、TSの増加した貯蔵可能期間、および恐らくインビボにおける増加した持続性が期待できるであろう。
【0073】
本発明の第七の有利な点は、TSの延長された寿命および安定性の直接的な結果である。この予想外であるTSの安定性の増加の結果、薬物および/または成長因子の局所的な長い期間の輸送を得るために、ABを補足したFGを用いることができる。TETまたはCIPのような安定化薬物が実質的にTSを去った後にさえ、この輸送は継続するであろう。従って、例えばTETまたはCIPによって安定化されているTS中に固体形態、好ましくは遊離塩基のような水に難溶性形態の薬物を包含させることによって、安定化したTSに薬物(または成長因子)を延長された期間局所的に輸送させることができる。遊離塩基TETのような薬物の幾つかの形態は、TSの安定化および延長された薬物輸送の両方を可能にする。他の薬物は両方でなくどちらか一方を可能にすることができる。出願人の知る限りでは、延長された局所的薬物輸送を得るのに、TSを安定化させる化合物を用いた者は他にいない。
【0074】
出願人の発明の第八の有利な点は、部分指向的血管形成がインビボで起こり得ることである。局所的非特異的血管形成が証明されているが[同上]、出願人の知る限りでは、部分指向的血管形成を示している者は他にいない。
【0075】
本明細書に使用する場合、傷は生存器官中の任意の組織の傷害を含む。組織は、胃裏層または骨のような内部組織もしくは皮膚のような外部組織であり得る。
【0076】
このような傷は、胃腸管潰瘍、折れた骨、腫瘍、および皮膚の切傷または擦傷を含み得る。このような傷は、脾臓のような軟組織または骨のような硬組織中であり得る。傷は、外傷性傷を含む任意の薬剤、感染または外科的介入によるものであり得る。
【0077】
好ましい実施態様の記載
定義
他に定義しない限り、本明細書で使用する全ての技術的および科学的語量は、本発明が属する技術分野の技術者により通常理解されているのと同じ意味を有する。本明細書に記載の全ての特許および公開は、参照して本明細書に包含する。
【0078】
本明細書に使用する場合、TSは、傷に適用して、傷を封鎖し、それにより血液の流失を減少させ、止血を維持する物質または組成物である。本明細書に使用する場合、FGは、組換体または血漿タンパク質から調整され、傷に適用して血餅を作り、それにより傷を封鎖し、血液の流失を減少させ、止血を維持する組成物である。FG、前掲はTSの1つの形である。
【0079】
本明細書に使用する場合、補足TSは、実質的な修飾なしで、成長因子、医薬または他の化合物、またはそれらの混合物を送達させる担体媒体として働くことができ、その粘性または吸着特性により、補足TSが所望の作用、例えば傷治癒の促進を産生するのに充分な時間その部位に接触し続けることができる任意のTSを含む。
【0080】
本明細書に使用する場合、成長因子補足TSは、少なくとも1種の成長因子が、その決まった目的に有効な濃度で添加されている任意のTSである。成長因子は、例えば傷治癒または組織(再)生を加速、促進または改善できる。成長因子補足TSは、医薬、抗体、抗凝固剤および:1)TS中の成長因子の生理活性を強化し、刺激し、または媒介する;2)シーラント中の成長因子の生理活性を阻害しまたは破壊するであろう成長因子補足TSの成分の活性を減少させる;または3)TSからの補足剤の延長した送達を可能にする;4)他の所望の特性を有する他の化合物を含む付加成分をまた含み得る。
【0081】
本明細書に使用する場合、強化化合物は、TS中の成長因子の生理活性を媒介し、またはそうでなければ増加させる化合物である。ヘパリンは、HBGF−1の生理活性を強化する化合物の例である。
【0082】
本明細書に使用する場合、阻害化合物は、TS中の成長因子(複数もある)の生理活性を妨害し、または阻害するTSの成分の有害活性を阻害し、妨害し、またはそうでなければ破壊する化合物である。阻害化合物は、成長因子を破壊から守ることによりその効果を働かせ得る。阻害化合物は、しかしながら、例えば成長因子補足TSの傷治癒のような所望の目的の本質である任意の活性を阻害しない。阻害化合物の例はヘパリンである。
【0083】
本明細書に使用する場合、成長因子は、細胞増殖、細胞分化、組織再生、細胞親和力、傷回復および/または任意の発育または増殖過程を制御または媒介する任意の可溶性因子を含む。成長因子は、当業者に既知の、天然源からの抽出、化学合成による製造、組換DNA技術を使用した製造および、ウィルスで不活化した成長因子に富む血小板遊離を含む他の技術を含む好適な手段により製造し得る。成長因子の語は、任意の前駆体、変異体、誘導体または同様の生理活性を有する他の形、または、成長因子が由来するまたはそうでなければ遊離されるそのサブセットを含むことを意味する。
【0084】
本明細書に使用する場合、内皮細胞成長因子(ECGF)およびFGF−1のような別の名前で当分野の技術者に知られているHBGF−1は、HBGF−1αの前駆体であるHBGF−1βまたはFGFのような他の切断された形を含むHBGF−1の任意の生理活性形を意味する。本明細書に参照して包含する米国特許第4,868,113号、ジェーヤら、はHBGFの各々の形のアミノ酸配列を明らかにする。HBGF−1は、したがって、HBGF−1の前駆体、切断または他の変形、生理活性を示すその変異体、またはそのサブセットを含む任意の生理活性ペプチドを含む。
【0085】
他の成長因子は、また当業者に別の学名で既知である。したがって、本明細書で一つの名前で言及されている特定の成長因子は、当業者に知られている成長因子の他の名前をまた含み、またその生理活性誘導体、前駆体、切断変異体またはその他の変形を含む。
【0086】
本明細書に使用する場合、生理活性は、インビボおよび/またはインビトロで特定の成長因子が関与する1個または全ての活性を意味する。一般に、成長因子は、分裂誘発活性(細胞増殖を誘発または持続する能力)を含む数個の活性、ならびに分化および/または発育を誘発または持続する能力を含む非分裂誘発活性を示す。加えて、成長因子は増殖および発育過程が進行する特定の細胞を集めまたは引き付けることができる。例えば、好適な条件下で、HBGF−1は内皮細胞を集め、そこからの血管形成を指示することができる。この活性により、成長因子補足TSは、それにより特定部位への血流および栄養を促進する手段を提供する。
【0087】
本明細書に使用する場合、延長された寿命は、TSの有用な寿命が、少なくとも2倍伸びることが視覚的に観察できることを意味する。
【0088】
本明細書に使用する場合、脱鉱物骨マトリックス(DBM)は、骨が塩酸または他の酸により脱カルシウムされた後の器官マトリックスを意味する。
【0089】
本明細書に使用する場合、骨形態形成タンパク質(BMP)は、DBMの骨誘導抽出物の存在により本来同定されるタンパク質に関する群を意味する。少なくとも8種の関連メンバーが同定され、BMP−1〜BMP−8と呼ばれる。BMPはまた他の名前でも既知である。BMP−2はまたBMP−2Aとして既知である。BMP−4はまたBMP−2Bとして既知である。BMP−3はまたオステオゲニンとして既知である。BMP−6はまたVgr−1として既知である。BMP−7はまたOP−1として既知である。骨形態形成タンパク質は、BMP−1〜BMP−8を意味するが、これに限定されない。
【0090】
本明細書で使用する場合、増加は、補足または非補足TSに使用して、動物の体の成分の内部または外部表面外形を変化することを意味する。
【0091】
本明細書に使用する場合、損傷を受けた骨は、折れた、砕けた、一部が欠けたまたはそうでなければ健康でない正常骨を意味する。
【0092】
本明細書に使用する場合、不完全な骨は、その機能を実行するために不充分な形または容量の骨を意味する。
【0093】
本明細書に使用する場合、TSに補足するのに使用する骨またはDBMは、粉末、懸濁液、細長い形または塊またはその所望の機能を行うのに必要な他の形であることができる。
【0094】
本明細書に使用する場合、細胞小器官は、天然、人工または天然および人工要素の組み合わせからなり得、天然細胞小器官の機能の完全または一部を代替する。例は、インシュリン遺伝子を含有する発現ベクターを形質導入された細胞で囲まれている毛細管のネットワークからなる人工膵臓である。このような細胞小器官は、I型糖尿病の患者の血流中にインシュリンを遊離する機能をする。
【0095】
補足TSの製造
本明細書に記載の本発明の任意の態様を実施する場合の第1工程として、補足物およびTSを選択しなければならない。補足物およびTSは当業者に既知の方法で製造し得、その供給者から購入し得、または本発明の方法により製造し得る。好ましい態様において、成長因子、医薬またはDBM補足FGを製造する。
【0096】
本発明の態様のいずれの場合も、補足剤は混合してTSを形成する前に、フィブリノーゲン、トロンビン、カルシウムおよび/または水成分に添加し得る。別法として、補足剤は、混合してTSを形成する成分に添加できる。
【0097】
本発明の態様において、カルシウムおよび/またはトロンビンが、例えば傷中の体液から、内因性に添加され得る。
【0098】
TSの製造
これに限定はされないが、血管プロテーゼのような本発明のある実施態様ならびに骨および軟骨増加において、細胞がその中および/またはそれを通して移動するTSが使用するのに好ましい。
【0099】
商業的に入手可能なFGのような任意のTSが、本発明のある実施態様において使用し得る。例えば、当業者に既知のFG(すべて本明細書に引用して包含する米国特許第4,627,879号;第4,377,572号;および第4,298,598号参照)は、イムノ・アクチエンゲゼルシャフト(IMMUNO AG)(オーストリア、ウィーン)およびベーリングヴェルケ・アクチエンゲゼルシャフト(BEHRINGWERKE AG)(ドイツ)のようなその供給者または製造者から購入できる。局所医薬伝達のようなこれらの使用において、選択したTSの特定の組成は、その機能が所望である限り重要でない。商業的に入手可能なFGは、インビトロ細胞増殖および/または分化;医薬伝達;成長因子伝達等のこれらに限定されないが、これらを含む本発明の態様における使用のために、成長因子、抗生物質および/または他の医薬を添加できる。
【0100】
本明細書に例示した実験のために、FGは新鮮凍結血漿由来の氷点沈殿物から製造した。使用したFGの成分は;フィブリノーゲン濃縮物;トロンビン;およびカルシウムイオンを含んだ。
【0101】
本発明の好ましい態様において、製造FG中の全タンパク質濃度は約0.01から500mg/FGmlである。更に好ましい態様において、製造FG中の全タンパク質濃度は約1から120mg/FGmlである。最も好ましい態様において、製造FG中の全タンパク質濃度は約4から30mg/FGmlである。
【0102】
本発明の好ましい態様において、FGを製造するために使用するフィブリノーゲン濃度は、約0.009から450mg/溶液mlである。更に好ましい態様において、本予備溶液中のフィブリノーゲンの濃度は、約0.9から110mg/mlである。最も好ましい態様において、本予備溶液中のフィブリノーゲンの濃度は、約3から30mg/mlである。
【0103】
好ましい態様において、FGを製造するために使用するトロンビンの濃度は、0.01から350U/mlである。更に好ましい態様において、トロンビン濃度は1から175U/mlである。最も好ましい態様において、トロンビン濃度は2−4U/mlである。
【0104】
カルシウムイオン濃度が、トロンビンの活性化を可能にするのに充分であることが重要である。好ましい態様において、USP塩化カルシウム濃度は0−100mMである。更に好ましい態様において、USP塩化カルシウム濃度は1−40mMである。最も好ましい態様において、USP塩化カルシウム濃度は2−4mMである。本発明のある態様において、カルシウムは、例えば傷周辺態様のように組織または体液から供給され得る。
【0105】
TSの製造において、注射用滅菌水を使用すべきである。
【0106】
成長因子、医薬および他の化合物の濃度は所望の目的に依存して変化するが、濃度はその決まった目標の達成するために有効であるのに充分多くなければならない。本発明の好ましい態様において、成長因子濃度は約1ng/FGmlから1mg/FGmlである。更に好ましい態様において、成長因子濃度は約1μg/FGmlから100μg/FGmlである。最も好ましい態様において、成長因子濃度は約5μg/FGmlから20μg/FGmlである。本発明の好ましい態様において、TETまたはCIP濃度は、0.01から300mg/FGmlである。本発明の更に好ましい態様において、TETまたはCIP濃度は0.01−200mg/mlである。本発明の最も好ましい態様において、TETまたはCIPの濃度は1−150mg/mlである。添加すべき補足剤の量は、種々の濃度で試験し、意図される目的および適用部位に有効であるものを選択することにより当業者が経験上決定できる。
【0107】
成長因子の製造 成長因子、またはその混合物は、当業者に既知の任意の製造法により製造し得、または商業的に購入し得る。任意の成長因子は、例えば、内皮細胞、線維芽細胞、上皮細胞、平滑筋細胞、肝細胞および角膜細胞のようなある細胞型の増殖を刺激するおよび/または引き付ける成長因子および/または同じ細胞型および平滑筋細胞の成育を阻害する成長因子を含むものから選択され得るが、これに限定されない。このような選択は成長因子補足TSが適用される特定の組織部位および/または所望の作用の型に依存し得る。例えば、EGF補足TSが、眼の傷へのへの適用および胃潰瘍の治療に好ましいが、一方オステオゲニン補足TSが骨折および骨破壊の治癒の促進に好ましいものであり得る。
【0108】
他の好ましい態様において、HBGF−1βを製造し、FGに添加した。HBGF−1βまたはHBGF−1αまたは任意の他のHBGF−1の活性形は、天然源から、HBGF−1またはその誘導体を発現する遺伝的に製造した細胞から、または当業者の既知の方法により精製できる。
【0109】
HBGF−1βは、組換DNA法(ジェーエら、米国特許第4,868,113号;ジェーエら、J.Biol.Chem.262:16612−16617(1987))を使用して製造した。簡単には、DNAコードHBGF−1βを原核発現ベクター、pUC9誘導体にクローン化し、細胞内的に大腸菌内で発現させた。発現ペプチドを、次いで細胞から、高圧−減圧サイクルで作用する細胞分裂器を使用して、圧力により細胞を遊離させた。分裂の後、細胞残骸を濾過して回収し、ヘパリンセファロース(登録商標)親和性クロマトグラフィー、続いてCM−セファロース(登録商標)クロマトグラフィーを含む標準タンパク質精製法を使用して、上清からHBGF−1βを精製した。
【0110】
上記のHBGF−1に加えて、FGに加え得る他の成長因子は、HBGF−2、IGF−1、EGF、TGF−β、TGF−α、任意の血小板由来成長因子または抽出物、BMPおよび任意の成長因子の混合物を含むが、これに限定されない。後えば、成長因子の豊富な源として働く血小板由来抽出物を、TSに、HBGF−1のような他の成長因子に加えて、またはこれに代えて添加し得る。
【0111】
好ましい態様において、当業者に既知の任意の方法で製造した血小板由来抽出物を、TSに加える。このような抽出物は、FGと使用するために、血漿由来血小板から製造し得る。
【0112】
PDWHFは、製造し、FGに加え得る(キングトンら、Ann. Surg. 204: 322-33O (1986))。簡単には、PDWHFを製造するために、血液を抗凝固溶液に入れ、血小板豊富血漿を冷却遠心により製造する。血小板を単離し、トロンビンで刺激し、それはα顆粒球内容物の内容物を遊離する。血小板を回収し、残りの抽出物の有効な濃度をTSに加える。
【0113】
成長因子補足TSの付加成分
それらが本質的に血漿フラクションであるため、成長因子と共に使用することを計画したTSは、種々の要素を含み、その中のいくつかは選択された成長因子の生理活性を妨げる。例えば、FGの本質的な成分であるトロンビンは、タンパク質分解酵素として働き得、特異的にHBGF−1βを開裂する。したがって、選択した成長因子を、成長因子の生理活性を阻害しまたは破壊するTSの他の成分の活性から守るプロテアーゼまたは他の阻害剤のような付加成分を含むことが必要であり得る。
特定の阻害化合物の選択は、TS内の成長因子の生理活性を評価する下記の方法により経験的に決定できる。生理活性の評価法は当業者に既知である。
【0114】
加えて、ある成長因子が生理活性を発現するために、所望の活性を促進または媒介する化合物を含むことが必要であり得る。例えば、ヘパリンはHBGF−1の生理活性をインビボで促進する(例えば、ブルゲスら、Annu. Rev. Biochem. 58: 575-606 (1989)参照)。
【0115】
本発明の補足TSは、医薬、他の化学物質およびタンパク質を含み得る。それらは:TET、シプロフロキサシン、アミノキシチリンまたはメトロニダゾールのような抗生物質、活性化タンパク質C、ヘパリン、プロストラサイクリン(PGI2)、プロスタグランジン、ロイコトリエン、抗トロンビンIII、ADPアーゼのような抗凝固剤およびプラスミノーゲンアクティベーター;デキサメタゾンのようなステロイド、プロスタサイクリン、プロスタグランジン、ロイコトリエンの阻害剤および/または炎症を阻害するためのキニン;カルシウムチャンネル阻害剤のような心臓血管薬;ブピバカインのような局所麻酔剤;および5−フルオロウラシル(5−FU)、タクソールおよび/またはタクソトレートのような抗増殖/抗癌剤を含み得るが、これらに限定されない。これらの添加化合物は、ポリクローナル、モノクローナルまたはキメラ抗体または機能的誘導体またはフラグメントをまた含み得る。それらは、例えばPDGFおよび/またはTGF−βのような平滑筋増殖、またはTSで処理する領域内または近くの他の望ましくない細胞型の増殖を阻害する抗生物質であり得る。これらの抗生物質は、抗癌、抗血小板または抗炎症活性が必要な場合、また有用であり得る。一般に、効果が部位直接的送達により改善された任意の抗生物質が、TS送達系と共に使用するのに優れている。
【0116】
成長因子補足TSの傷治癒特性の評価のためのアッセイ 特定の成長因子補足TSが、傷治癒を促進するか否かを確認するため、およびそれを行うのに最適な成長因子の濃度を選択するために、組成物を、当業者に既知の任意の方法で試験し得る(例えば、ツボイら、J.Exp.Med.172:245-251(1990);クサンダーら、J.Am.Acad.Dermatol.22:781-791(1990);およびグリーンハルら、Am.J.Path.136:1235(1990)参照)。インビボおよびインビトロアッセイの両方を含み、それによりTS組成物中の選択された成長因子の活性が評価できる任意の方法を使用し得る。例えば、HBGF−1βの活性は、2個の別々のインビトロアッセイを使用して評価する。第1に、成長因子補足FGで飽和したプラスチック表面で覆われた浅い液体層中に懸濁した内皮細胞の増殖を測定した。第2に、HBGF−1存在下の培養線維芽細胞の3H−チミジン取り込みを測定した。
【0117】
インビボアッセイとして、HBGF−1βを添加したFGで、マウスをモデル系として使用して、インビボ治癒促進能力を測定した。本方法において、同一のパンチバイオプシーをマウスの背面領域に作り、それを次いで試験群、処理対象群および未処理対照群に分けた。試験群マウスの傷は成長因子補足TSで処理した。処理対照群のマウスの傷は、非補足TSで処理した。未処理群の傷はTSで処理しなかった。傷治癒の進行が測定可能になった、一般に1週間から10日後、マウスを屠殺し、傷組織を顕微鏡試験し、各々の群の傷治癒の程度を組織学的に評価した。
【0118】
成長因子補足TSの細胞増殖誘発および細胞増加能力をまた当業者に既知のインビトロ法で評価した。例えば、成長因子の生理活性の測定について上記のおよび実施例に詳述のインビトロアッセイを、TS組成物内の成長因子の活性の試験に使用し得る。
【0119】
一般に、阻害および/または強化化合物の補足の必要性は経験的に決定できる。例えば、下記の実験において、HBGF−1補足FG中のHBGF−1βは、特異的に確率的方法で開裂され、FG調整物の成分、ほとんどトロンビンは、応答可能であったことを示唆する。HBGF−1に結合し、あるタンパク質分解活性から守ることが知られているヘパリンを、HBGF−1補足FGに加えた。相対的に低い濃度のヘパリンが、HBGF−1βをFG中のその活性を破壊する開裂から守った。したがって、HBGF−1を含むTS組成物は、ヘパリンまたはHBGF−1をFG中のトロンビンまたは他のタンパク質分解物質による開裂から守る他の物質を含み得る。
【0120】
同様に、TS成分による分解から成長因子を守る選択阻害剤の能力は、当業者に既知の任意の方法により評価し得る。例えば、ヘパリンの、FGの本質的な成分であるトロンビンによるHBGF−1の開裂阻害能力を試験する。このようにして、種々のヘパリン濃度の混同物およびHBGF−1補足FGを製造し、種々の時間インキュベーションした。混合物中のHBGF−1の生理活性およびHBGF−1の無傷さをSDSゲルのウエスタンブロットを使用して試験する。相対的に低い濃度、約1:1モル比のヘパリン:HBGF−1が、HBGF−1をFG中の分解から守るのに十分である。
【0121】
ある化合物が、TS中の成長因子の生理活性を強化、媒介または促進するのに使用できるか否かもまた経験的に決定できる。
【0122】
内部または外部傷への成長因子補足TSの局所的または内部的適用 臨床的使用の前に、成長因子およびTS、または成長因子補足TSを滅菌し、またはそうでなければウイルスのようにそれに混入している任意の病原菌を不活性にする処理をする。混入物を不活性にする方法は当業者に既知であり、溶媒−界面活性剤処理および熱処理を含むが、これに限定されない(例えば、タボールら、Thrombosis Res.22:233:238(1981)およびピッツキウィッチら、Transfusion28:198-199(1988))。
【0123】
補足TSは、直接、傷、他の組織または他の所望の位置に適用する。外傷で典型的には、傷の上部にスプレーすることを含む任意の手段で直接適用できる。手術中のように、内部にまた適用できる。骨のように、内部に適用する場合、血餅は段階的に経時的に溶解する。
【0124】
以下の実施例は説明の目的のみで包含されており、本発明の範囲を限定する意図はない。
【実施例】
【0125】
実施例1
FGへの補足のためのHBGF−1の製造
HBGF−1βコード化DNA含有プラスミドを含む組換大腸菌の培養800mlを製造した。誘発および24時間37℃で培養した後、細胞を遠心し、上清を捨てた。細胞ペレットを0.15M NaCl、pH7.3含有20mMリン酸緩衝液25mlに再懸濁した。懸濁細胞を細胞分裂器で分裂し、5000g、20分遠心して細胞残骸を残った溶液から分離した。
【0126】
ペレットを捨て、可溶性HBGF−1βおよび他の細菌性タンパク質を含む上清を2.6cm直径、10cm高のヘパリン−セファロース(登録商標)カラム(ファルマシア・ファイン・ケミカルズ、スエーデン、ウプサラ)に導入した。カラムを5カラム容量の20mMリン酸緩衝液、pH7.3中の0.15M NaClで洗浄し、20mMリン酸緩衝液中の0.15M NaClから2.0M NaCl勾配で溶出した。
【0127】
溶出液を280nmの吸光度で追跡した。UV吸収材料の3回のピークが溶出し、SDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で分析した。ピーク番号3は、約17,400ダルトンの単一バンドとして電気泳動し、実質的に純粋なHBGF−1βを含んだ。
【0128】
HBGF−1βが混入細菌性タンパク質を含まないか更に確認するために、成長因子活性を含むピーク番号3を一晩20mMヒスチジン、0.15M NaCl、pH7.5に対して透析した。タンパク質2mgを1ml CM−セファロース(登録商標)(ファルマシア、スエーデン、ウプサラ)イオン交換カラムに掛けた。カラムを10ベッド容量(0.5ml/分)の20mMヒスチジン、0.15M NaCl、pH7.5で洗浄し、20mMヒスチジン、pH7.5中の0.15M NaClから1.0M NaCl勾配で溶出した。溶出液を280nmの吸光度で追跡しHBGF−1βがSDSポリアクリルアミドゲル電気泳動で同定された。
【0129】
本精製HBGF−1を、続く実施例においてFGに補足するのに使用した。
【0130】
実施例2
HBGF−1の安定性
FGの成分であるトロンビンによるHBGF−1βの分解(ロブ、Biochem.27:2572-2578(1988))を妨げ、または予防する成分をFGに加えることが必要であった。HBGF−1に吸収されるヘパリンを選択し、それがHBGF−1をトロンビンおよび他のFG中のタンパク質分解成分による分解から守ることができるか否かを試験した。増加させた濃度のヘパリン存在下でのHBGF−1の安定性を評価した。
【0131】
HBGF−1β(10μg/ml)、トロンビン(250U/ml)および増加した濃度のヘパリン(0、0.5、5、10、20および50U/ml)を含む溶液を37℃でインキュベーションした。アリコートを一定時間にインキュベーション溶液から回収し、凍結し、−70℃で更なる試験のために保存した。
【0132】
インキュベーションが終了した後、サンプルを融解し、15%SDSポリアクリルアミドゲル上で、ラミリ(Nature227:680(1970))の方法に従った還元条件下で分離した。ゲルをニトロセルロース上に電気ブロットし、HBGF−1に対応するバンドを、HBGF−1に対する親和性精製ポリクローナルウサギ抗血清を使用して同定した。ウエスタンブロットを図1に示し、それに17,400mwでHBGF−1バンドを見ることができる。結果は、5U/ml程低い濃度のヘパリン存在下で、HBGF−1がトロンビンによる分解から保護されていることを示唆する。加えて、実施例3に記載のようにその生理活性は変わらなかった。
【0133】
実施例3
ヘパリンおよびトロンビン存在下でインキュベーションした後のHBGF−1βの生理活性
実施例2に記載の、ヘパリン5U/ml含有インキュベーション混合物中のHBGF−1の生理活性を、NIH 3T3細胞の3H−チミジン取り込みアッセイを使用して測定した。
【0134】
NIH 3T3細胞を96ウェルプレートに挿入し、37℃で、0.5%ウシ胎児血清(BCS;GIBCO、ニューヨーク、グランド・アイランド)含有ダルベッコ修飾培地(DMEM;GIBCO、ニューヨーク、グランド・アイランド)中で飢餓条件下で、細胞が30から50%コンフルエンスに到達するまでインキュベーションした。2日後、サンプル由来の実施例2中で製造した種々の希釈のHBGF−1を各々のウェルに培地を代えずに添加した。希釈剤(インキュベーション緩衝液)を成長因子の場所に、陰性対照として加え、成育のために必要な成長因子含有10%BCS含有DMEMをHBGF−1の場所に、陽性対照として加えた。
【0135】
37℃で18時間インキュベーションした後、0.25Ciの3H−チミジン、特異的活性6.7μCi/molを各々のウェルに加え、インキュベーションを37℃で更に4時間続けた。プレートをリン酸緩衝化食塩水(PBS)で濯ぎ、冷10%トリクロロ酢酸(TCA)0.5mmolで15分、4℃で固定した。TCAを除去し、プレートをPBSで濯ぎ、酸沈殿物質を0.1N 水酸化ナトリウム0.5ml/ウェルで、1時間室温で溶解させた。サンプルをシンチレーションバイアルに移し、シンチレーション液(ニューイングランド・ヌクリアー、アクアシュア(登録商標))10mlをバイアル当たりに加えた。
【0136】
図2に示す結果は、トロンビンおよびヘパリン存在下でインキュベーションしたHBGF−1が生理活性を残していることを証明する。観察されたチミジン取り込み濃度依存性は、インキュベーション時間と別であり、典型的には成長因子濃度の関数として細胞増殖に依存することが予期された。成長因子は典型的には細胞増殖が最大で最適濃度を示す。
【0137】
トロンビンおよびヘパリン存在下でのHBGF−1の生理活性はまたは内皮細胞増殖観察により測定した。ペトリ皿表面をHBGF−1補足FGで飽和した。
【0138】
内皮細胞の浅い層を加え、細胞数を測定した。経時的に細胞数が増加した。加えて、細胞は血管に組織化するように見えた。
【0139】
したがって、HBGF−1はその生理活性を、HBGF−1をトロンビンの分会活性から守り成長因子補足FG中のHBGF−1活性を促進し得るヘパリンを含むHBGF−IFG中で残す。
【0140】
実施例4
FG血餅からのHBGF−1分散
ヘパリン10U/mlおよびトロンビンおよび40mM CaCl2含有フィブリノーゲン複合体0.3mlを混合することにより、5mlプラスチック試験官内でFG血餅を形成させた。4個の試験官は下記の通りである:
(A)トロンビン0.5U/mlおよびHBGF−1 10μg/ml;
(B)トロンビン0.5U/mlおよびHBGF−1 50μg/ml;
(C)トロンビン5U/mlおよびHBGF−1 10μg/ml;
(D)トロンビン5U/mlおよびHBGF−1 50μg/ml。
【0141】
各々の血餅は、0.2Mヒスチジン緩衝液、pH7.3で覆った。重層緩衝液のサンプル30μlを各々の管から2時間毎に回収し、ウエスタンブロットを行った。
【0142】
実験の結果は、血餅から分散したHBGF−1が時間の関数および血餅中のその濃度の関数であり、血餅中のトロンビン濃度はHBGF−1が血餅から遊離する速度に影響を与えないことを証明する。
【0143】
実施例5
成長因子補足FG中のヒト臍帯静脈内皮細胞の行動: 野生型および変異体FGF−1の効果
酸性線維芽細胞成長因子(FGF−1)補足FGのヒト内皮細胞におけるインビトロでの効果を研究するために、これらの細胞の懸濁液を、均等に広げた層のフィブリノーゲン約9mg/mlおよびトロンビン0.25NIH単位/ml含有FGを含む2.5ml直径10cmのペトリ皿に加えた。FGを以下の方法で添加した:
(A)成長因子補足せず;
(B)100ng/ml、活性、野生型FGF−1補足;
(C)100ng/ml、不活性変異体FGF−1補足;
(D)10ng/ml、活性、野生型FGF−1補足。
【0144】
FG層上に蒔いた細胞を7日間、10%ウシ胎児血清(FBS)含有DMEM中に維持した。
【0145】
細胞は、生理活性FGF−1補足FGに接触させた場合、効率良く伸長し、増殖する(図3および4)。非補足FG(図5)または生理的不活性FGF−1補足FG(図6)と接触させた場合、細胞は伸長するが、増殖は相対的に遅い。
【0146】
実施例6
FGF−1補足FG中のヒト臍帯静脈内皮細胞の行動
その成長を研究するために、1mlあたり105またはそれ以上の細胞のヒト臍帯内皮細胞を、そのタンパク質濃度が4mg/mlであるFGに着床させた。FG中のトロンビンの濃度は0.6NIHU/mlに調整した。全実験に使用する培養培地は、10%ウシ胎児血清、ストレプトマイシン10μg/ml、ペニシリン100U/ml、FGF−1 1ng/mlおよびヘパリン10U/ml添加M199(シグマ・ケミカル・カンパニー、セントルイス、MO)であった。
【0147】
FG中24時間以内に細胞は伸長し、多足形になり、互いに接触した場合、細胞ネットワークを形成した(図7)。この成長は少なくとも5日間続いた。図8は48時間のこの状態を示す。
【0148】
対照として、同一細胞懸濁液をフィブロネクチン10μg/cm2で覆った表面で培養した。対照細胞は敷石状形を獲得し、本形態を少なくとも5日保った。図9および10はそれぞれ24時間および48時間のこの状況を示す。
【0149】
実施例7
FG中のPMEXNEO−3T3−2.2細胞の行動
PMEXNEO−3T3−2.2細胞は、遺伝子操作したタンパク質の発現が可能な修飾ゲノムを含む線維芽細胞である(フォローら、J.Biol.Chem.268:2960-2968(1993))。本細胞のFG中での行動を測定するために、ウェル当たり105細胞を3種の条件下で培養した:(1)FG中;(2)FGの表面;および(3)FGの非存在下(対照)着床させた。実験を、24ウェルプレートで、10%FBS添加DMEM培地(シグマ・ケミカル・カンパニー、セントルイス、MO)中で2個ずつ行った。FGタンパク質濃度は4mg/mlであった。同様の実験において、1.5%FBS添加媒体を陰性対照として使用した。
【0150】
10%FBS添加媒体の存在下、3群全ての細胞は成育し、コンフルエントになった。1.5%FBS添加培地の陰性対照実験において、細胞は成育し、FG存在下で少なくとも5日生存したが、それなしではしなかった。しかしながら、成育は、1.5%FBS添加よりも10%FBS添加FGにおいて速かった。FG非存在下、1.5%FBF添加培地において、細胞は48時間以内に死滅した。生存の基準は、試験細胞の10%FBS添加新鮮培地に移した時の細胞の増殖する能力であった。
【0151】
実施例8
HBGF−1予備処理による伸長PTFE血管移植片の内皮細胞化
2種の研究は、血液接触生体材料の内皮細胞(EC)マイトジェンによる予備処理は、内皮細胞化を促進することを証明した。第1の研究は、ウサギ大動脈に移植した伸長PTFE移植片に適応したHBGF−1補足FG懸濁液のインビボ崩壊特性を試験した。第2の研究において、同様の移植片をイヌの大動脈狭窄部位に移植した。脈管形成因子であるHBGF−1を研究に使用した。FGF、FGF−4および/またはOP−1のような他の成長因子もまた血管移植片の補足剤として使用できる。
【0152】
A.崩壊研究
一般に、修飾FGを、ヒト組み替え125I−HBGF−1の内部および外部移植片表面約1mg/cm2領域、ブタ腸粘膜ヘパリン20μg/cm2、およびフィブリノーゲン2.86mg/mlを、再組成した、商業的に入手可能なヒト・トロンビン(1000U/ml)2.86×10-2U/mlに加えることにより滅菌的に調整し、重合を誘発した。
【0153】
125I−HBGF−1は、以下のようにして特異的に製造した。フィブリノーゲンは、25mlPBS中にフィブリノーゲン500mgを加え、フィブリノーゲン濃度20mg/PBSmlを作ることにより再組成した。フィブリノーゲン60mgを含有する本溶液3mlを、12個のエッペンドルフプラスチック管に入れ、−70℃に維持した。これらの各々のアリコートを個々に使用した。
【0154】
商業的に入手可能な製造物(アルモール・ファーマシューティカル・カンパニー、カンカキー、IL)を希釈することにより、滅菌溶液中1:10の割合で、1000U/mlの濃度でトロンビンを再組成し、100U/mlの濃度を産生した。本トロンビン溶液を再び1:10に希釈し、10U/mlの溶液を産生した。
ウシヘパリン(アップジョン、カラマズー、MI)を、通常の食塩水を使用して1:1000の割合で1000U/mlの濃度の製造物を希釈することにより再組成した。
【0155】
再組成フィブリノーゲン 1および48/100(1.48)ml、再組成ヘパリン63μL、加えて125I−HBGF−115.66μLをガラスシンチレーション管に混合した。本混合物を、次いで3mlプラスチックシリンジに吸引した。本再組成トロンビン5mlをガラスシンチレーション管中に入れた。
【0156】
伸長PTFE移植片の一端を、プラスチック3方向栓ノズル上におき、そこで2−0絹縫合糸で結んだ。次いで、PTFEを3×3平方cmのパラフィン(登録商標)で包み、それを次いで直線止血鉗子出止め、防水性封印を確立した。第2の2−0絹縫合糸を、パラフィルムの栓への接合の上に行い、他の封印を形成した。直線止血鉗子を、次いで、PTFE/パラフィルムの2mmの末端を止めるのに使用した。
【0157】
等量のフィブリノーゲンおよびトロンビン溶液を上記のように調整し、混合して約30秒反応させ、その時、重合化が起こった。トロンビン−重合化フィブリンは、次いで不透明である。(この時間因子は、概算であり、一つのトロンビンロットと他のでは異なる。重合化する時間の好適な長さは、混合物の不透明さを見ることにより決定できる。)フィブリン/トロンビン混合物を、次いで1ccのシリンジに吸引した。(注:本移植片の容量は0.42mlであった。より多くの移植片の容量のために、より大きいシリンジの使用が必要である。)シリンジをコック栓に付け、混合物を手で5秒にわたって、液体がPTFEの割れ目から「露を結ぶ」ように見えるまで注入し、PTFEとパラフィルムの間の領域を満たした。3方向栓ノズルをPTFE移植片に対して3秒間閉め、コック栓上のPTFEの末端の結び目を切断するために、外科用メス刃を使用した。PTFE移植片/パラフィルムを栓から除き、パラフィルムエンベロープからPTFEを回収するのに止血鉗子を使用した。残った成長因子補足FGを移植片腔管から除くために、3番目の塞栓カテーテルを、移植片腔管が完全に奇麗になるまで、移植片に5回通した。成長因子補足FG処理PTFE移植片を、一晩、約12時間層流フード下で乾燥させた。処理移植片は、次いで処理移植片は移植の用意ができた。
【0158】
あるいは、本HBGF補足FGを34mm(24mm+両端5mm)×4mm(内部直径)の薄い壁で囲まれた、伸長PTEF移植片中へ圧還流し、それにより移植片腔管表面を覆い、移植片外部表面まで節を通って伸長させた。これらの移植片は、次いで24匹の3−5kgニュージーランドホワイドウサギの腎臓下部腹部大静脈中に挿入した。第1の研究において、動物を屠殺し、標本を0時間(外科的操作による損失を訂正するため)および、5、30および60分、1、7、14および30日後に外移植した。残った放射活性をガンマ計数により決定した。自然崩壊を訂正した残った125I−HBGF−1を、ゼロ時間の値に対するパーセントで示す。
【0159】
125I−HBGF−1の崩壊は、循環の再確立を伴う急速初期損失(%/分=−24.1、5および60分の間)、続く、一週間後の残り13.4%±6.9%および30日後の残り3.8%±1.1%である1時間後の遅延損失(%/分=−0.03)である古典的動態に従う。
【0160】
B.インビボ内皮細胞化実験
第2の実験は、HBGF−1補足FG懸濁液の効果を次の項目について評価した:イヌ大動脈腸骨内へ移植され広範囲に膨張した60μm節間距離の膨張PTFE移植片の内皮細胞化速度、時間の関数としてこれら内皮細胞の増殖活性、および観察された内皮細胞増殖を刺激するHBGF−1およびFGの相対的貢献度。
【0161】
3群の50×4mm非強化膨張PTFE移植片を12匹のイヌの大動脈腸骨位置に移植した。群1(6匹)にヘパリン20μg/cm2、2.86mg/cm2フィブリノーゲンおよび2.86×10-2U/cm2ヒトトロンビン+1ng/cm2HBGF-1を投与した。群2(3匹)には、HBGF-1を除き、同じFGを投与した。群3(3匹)には同じであるが、未処理対照移植片を投与した。トリチウム化チミジン(3H−Tdr:0.5μCi/kg)を10時間、移植前に注入した。移植片を7および28日において、ランダム高出力磁場で内皮細胞増殖に関し光線および電子顕微鏡、第VIII因子免疫歴化学およびエン・フェース(en face)オートラジオグラフィーのために移植した。各移植片は、処理群移植片がどれであるかを知らない3人の観察者によって観察した。内皮細胞増殖の相異は、統計学的に2方法ANOVAおよび独立(independent)t検定で分析した。
【0162】
7日において、FGおよびHBGF補足FG移植片の両者の33%は、内皮細胞が非連続的病巣であることが証明された(図11)。対照移植片の表面はフィブリン血塊のままであった。28日において、すべてのHBGF−1補足FGは、広範にわたり毛細管内方成長と内皮細胞化支流血管の表面との接触が観察され、これらは他の2群のいずれの試験片でも観察されなかった(図11および12)。
【0163】
図12が証明するように、未処理移植片(28日)はその表面において数個の可視的な内皮細胞を有する(パネルG)。FG単独で処理した移植片は内皮細胞を被覆した表面33%を有し、これは、FGの単独処理がある種の再内皮化を促進することを示す(パネルH)。しかしながら、HBGF-1を補足したFGで処理した移植片(パネル1)は、内皮細胞を完全に(95%以上)被覆しているようであり、これは、内皮細胞の敷石状形態を示す。すなわち、FGにより誘導された成長因子の組合わせは、生きている非血栓形成性内皮細胞により血管移植片を実質的に完全に被覆することを促進することができる。エン・フェース・オートラジオグラフィは、他の全ての群(時間および移植片処理の関数)に対する、28日でのHBGF-1-補足FG移植片における3H−TdRの内皮細胞DNAへの組み込みに関し、統計学的に有意な増加(p<0.5)を示した。
【0164】
これらのデータが証明するように、HBGF−1補足FG懸濁液の節間距離60膨張PTFE移植片への圧縮還流は毛細管内方成長および内皮細胞増殖の増加を介し内皮化を促進する。
【0165】
以上の実験は、小直径の血管移植片の自発的再内皮化および移植内皮細胞のより急速な合流を刺激する方法を向上させる。
【0166】
実施例9
FGにより使用のための血小板由来抽出物の製造
血漿減少血小板を調製し、ペレット化した。上清血漿を除去した。ペレット化した血小板を洗浄し、緩衝液(50mMヒスチジンおよび0.15M塩化ナトリウム、pH6.5)中に懸濁し、ウシトロンビンで処理した。処理の後、上清を遠心で集め、アリコートを−80℃で凍結した。抽出物を溶解し、FGまたは他のTSと混合した。
【0167】
この方法で得られた血小板抽出物は生理学的に活性であった。なぜなら、それは、放射活性標識チミジンの増殖NIH3T3のDNAへの組み込みを、対照に比し、増加させるからである。
【0168】
血小板抽出物の傷治療に対する効果を評価するため、HBGF−1βで実施例10以下で実施したと同じ実験を、糖尿病マウスで血小板抽出物を用い、行った。これらの実験結果から、血小板抽出物中の所定の低能度の成長因子(1つの傷あたり100μg以上の用量の血小板抽出物蛋白)が傷抽出物の促進に使用する必要性が明白である。
【0169】
実施例10
皮膚創傷治癒におけるインビボでのFG(フィブリン膠)の効果
材料および試験方法
A.補足なしのFG
実験動物
雌性C57BL/KsJ-db/dbマウスをジャクソン・ラボラトリーズ(Jackson Laboratories)[メイン州バー・ハーバー(Bar Harbor)]から入手したが、該動物は試験開始時において8〜12週齢であった。マウスは、検体の保護促進のために外科処置後は別々のケージで飼育した。
【0170】
これらのマウスに見られる代謝異常が、ヒトの糖尿病患者の代謝異常と類似しているため、糖尿病患者における創傷治癒のモデルとして用いる。さらに、細胞浸潤が著しく遅いこと、肉芽組織が形成されること、および傷口が閉じるのに必要となる時間を特徴とするこのマウスモデルにおける創傷治癒から、ヒト糖尿病患者における創傷治癒との関連性が示唆されるといえよう。
【0171】
FG
本試験に用いた濃縮フィブリノーゲン複合体(TFC)は、新鮮な冷凍保存したヒト血漿から製造されたものである。このTFC製品[カリフォルニア州ロサンゼルスのアメリカン・レッド・クロス(American Red Cross)−バクスター・ハイランド・ディビジョン(Baxte rHyland Division)製]は凍結乾燥体で提供される。凍結乾燥体を3.3mlの滅菌水で還元した後の本試験で用いたTFC溶液のタンパク質特性は次のとおりである:総タンパク質120mg/ml;フィブリノーゲン90mg/ml;フィブロネクチン13.5mg/ml;XIII因子17U/ml;およびプラスミノーゲン2.2μg/ml。
【0172】
ウシトロンビン[500ユニットバイアル,イリノイ州カンカキーのアーマー・ファーマシューテイカル・カンパニー(Armour Pharmaceutical Co.)製]を5mlの滅菌水で再構成し、80mMの塩化カルシウム溶液[ニューヨーク州シャーリーのアメリカン・リエージェント・ラボラトリーズ(American Reagent Laboratories)製]で滅菌的に希釈し、濃度を15U/mlにした。
【0173】
等体積のTFCと再構成トロンビンを混合してFGを製造した。直径6mmの円い全厚(フル・シックネス)創傷をふさぐために、0.05mlのTFCを0.015mlのトロンビンと混合した。このように製造されたFGのタンパク質濃度は約60mg/mlであった。
【0174】
タンパク質濃度を約1mg/mlに希釈したFGも用いた。
【0175】
外科処置
マウスに、7mlのケタミン塩酸塩[100mg/ml;Ketaset,アイオワ州フォート・ドッジのアヴェコ・カンパニー(Aveco Company)製]、3mlのキシラジン[20mg/ml;Rompun,カンザス州シャウニーのモベイ・コーポレイション(Mobey Corp.)製]および20mlの生理的食塩水の混合液を、体重100g当たり0.1mlの投与量で筋肉内投与して麻酔した。背中の毛を刈り込み、皮膚をポビドン−ヨウ素溶液で洗浄し、70%アルコール溶液で拭いた。2つの全厚の円い外科的創傷(直径6mm)を、マウスの背中の下部の両側に、それぞれ中心線から等距離の位置に作成した。2つの創傷の中央端部が、少なくとも1.5cmの非創傷皮膚部分で分離されているように創傷を作成した。
【0176】
創傷作成後すぐに、FGおよび/または包帯(dressing)で該計画的創傷を覆った。包帯は透明な半透性の接着性ポリウレタン包帯[商品名:オプサイト(Opsite),オハイオ州マシロンのスミス・アンド・ネフュー(Smith and Nephew)製]を用いた。包帯の適用前に、創傷領域の周囲にベンゾイン化合物のチンキ剤[ミネソタ州ミネアポリスのパドック・ラボラトリーズ(Paddock Laboratories)製]を塗布した。ベンゾインによって傷口に炎症が生じる可能性を回避するために、創傷の縁から少なくとも0.5cmはチンキ剤を塗布しない領域を設けた。試験期間中、創傷に対して、もうこれ以上の処置は行わなかった。
【0177】
処置グループ
マウスは4つのグループに分けて処置を行い、それぞれその個体自身を対照と設定した。
グループI:実験動物の創傷のうち、一方にFG(60mg/ml)を処置し、他方には何も処置をしなかった。両方の創傷をオプサイトで覆った。
グループII:創傷の一方に希FG(1.0mg/ml)を局所的に処置し、他方には何も処置をしなかった。両方の創傷をオプサイトで覆った。
グループIII:創傷の両方にFG(60mg/ml)を局所的に処置した。創傷の一方は何も覆いをせず、他方はオプサイトで覆った。
グループIV:両方の創傷に対して何も局所的処置をしなかった。創傷の一方は何も覆いをせず、他方はオプサイトで覆った。
【0178】
創傷の分析
試験の9日目に実験動物を安楽死させた。0.5mmの非創傷皮膚も含めて、創傷を筋肉層まで切開し、緩衝10%ホルマリン溶液に浸けた。組織学研究室にて標本を加工した。標本をパラフィンに埋め込み、創傷の中間部分を5μm毎に切断した。組織学的分析のために、ヘマトキシリンおよびエオシン、またはマッソンのトリクロム液を用いてスライドを染色した。
【0179】
各スライドに1〜15までの組織学的評点を付与した(表1)。1は全く治癒しなかったに相当し、15はコラーゲン繊維からなる瘢痕が生じたことに相当する。評点のスケールは既存のものを用いた。既存の評価基準に変更を施し、上皮形成、細胞侵入の度合、肉芽組織の形成、コラーゲン沈着、血管分布および創傷収縮の程度をさらに正確に反映するようにした。組織学的評点は、少なくとも3名の分析者が別々に付与した。創傷の治療結果を描写するコードは、全部の観測者の評点付与が完了してから解読した。
【0180】
【表1】
【0181】
統計的分析
分析者の組織学的評点を平均し、平均値±その標準誤差で表した。1対t試験を用いて、異なる処置グループにおける1対平均を比較した。分析は、RS/1 リリース3.0統計ソフトウェアパッケージ[BBNソフトウェア・プロダクツ・コーポレイション製]を用いて行った。
【0182】
サンプル平均の差を試験するためにスタティスティカル・アナリシス・ソフトウェア(SAS)システムを用いて変動を分析した。
【0183】
結果
結果創傷のふさがりにおけるFGの効果(グループI)
グループIでは、各マウスの両方の創傷をオプサイトで覆った。このような条件下で、タンパク質濃度60mg/mlのFGを片方の創傷のみに局所適用すると、FG処置側で(3.06)、非処置側で(5.26)と統計的に低い平均組織学的評点となった(P<0.005)(表2)。
【0184】
【表2】
【0185】
創傷のふさがりにおける希FGの効果(グループII)
このグループでは、両方の創傷をオプサイトで覆い、片方の創傷に希FG(タンパク質含量1mg/ml)の局所適用を行った結果、非処置の創傷の平均組織学的評点(4.36)と有意には異ならない値(4.0)が処置創傷において得られた(P=0.17)(表3)。
【0186】
【表3】
【0187】
FG処置創傷におけるオプサイトの効果(グループIII)
両方の創傷にタンパク質濃度60mg/mlのFGを処置したこのグループでは、片方のみオプサイトを適用した結果、オプサイトで覆わなかった創傷の平均組織学的評点(4.93)と有意には異ならない値(4.2)が、オプサイト適用創傷において得られた(p=0.11)(表4)。
【0188】
【表4】
【0189】
1対の非処置創傷のふさがりにおけるオプサイトの効果(グループIV)
両方の創傷にFGの局所的処置を行わないこのグループでは、片方のみオプサイトを適用した結果、オプサイトで覆わなかった創傷の平均組織学的評点(6.31)よりもかなり低い値(4.92)が、オプサイト適用創傷において得られた。(P<0.0005)(表5)。
【0190】
サンプル平均の差における処置効果のANOVAは、<0.0001において有意であった。
【0191】
【表5】
【0192】
論考
本試験の結果から、マウスにおいて開口した創傷に適用した場合、(1)止血用に製剤された濃度(60mg/ml)のFGを処置すると、9日目における組織学的評点は低く、すなわち非処置の創傷の治癒速度よりも治癒速度が遅いこと;(2)タンパク質濃度(1mg/ml)の希FGを処置すると、9日目における組織学的評点は高く、すなわちこれによって治癒速度が速められること;および(3)この動物モデルにおいては、半透性包帯オプサイトの適用は、それ自身単独で創傷のふさがりを非常に妨害するものであることが示された。
【0193】
FGを用いた試験の結果を比較する場合、FGの総タンパク質濃度は重要な変数である。創傷治癒および組織修復の促進におけるフィブリンの優れた効果が報告されているが、本試験では、通常市販製剤におけるフィブリノーゲン濃度よりも低濃度のフィブリノーゲンを用いた。
【0194】
濃度60mg/mlのFGは創傷のふさがりを遅らせた(グループI)。ヨーロッパで市販されているFGの総タンパク質濃度は、フィブリノーゲンとトロンビン成分とを混合した後では、37.5〜57.5mg/mlである。この試験で得られたデータは、現在、止血および接着用製剤として製剤化されているFGが開口性の皮膚創傷に適用した場合、その治癒を遅らせることを示すものである。この効果は、(1)創傷治癒過程に積極的に関係している細胞成分の移動あるいは増殖に対する機構的妨害、(2)創傷収縮の機構的阻害、または(3)1つ以上のFG成分による創傷治癒上の化学的阻害効果によるものであろう。9日目において固体フィブリノーゲン由来の血餅が創傷表面に残っていることから、創傷のふさがりに対する機構的妨害および阻害の方が、治癒を遅らせることに対して、より実際性の高い説明であろう。
【0195】
これが原因であるかどうかを審査するために、FGの総タンパク質濃度を1mg/mlに希釈した。この希FGの局所的適用からは、非処置の創傷と余り異ならない組織学的評点が得られた(グループII)が、このことは、総タンパク質濃度が低いと、創傷治癒過程を有意であるほどには阻害しないことを示唆している。
【0196】
同じ濃度のFG(60mg/ml)で処置され、かつオプサイトで覆われた創傷であって、異なる処置グループ(グループIおよびIII)に属する創傷の平均の組織学的評点が有意に差がある値である(グループIでは3.06、グループIIIでは4.2)ことも注目に値する。これらのデータは、幾らかの動物が、同じ処置を受けたにもかかわらず、他の動物よりも治癒が速かったり遅かったりするために、動物個体間の変動が、同じ処置変数をもつある動物群から明確な結論を導くのを困難にすることを示している。このことは、平均評点の標準誤差の範囲に反映される。このような理由で、各動物はそれ自身を対照とするのであり、たとえば同じ動物における創傷を相互に比較した。試験創傷として、同じ動物に対照となる創傷があることによって、動物個体間の変異性は最小化される。これらのデータはまた、オプサイトなどの接着性包帯が創傷のふさがりを有意に遅らせることも示している。しかし、ブタにおける部分的(partial)厚み皮膚創傷では、FGのタンパク質濃度が、創傷治癒速度に関係するとは考えられないことにも注意すべきである。
【0197】
B.インビボでの創傷治癒における成長因子を補足されたFG
糖尿病マウスの創傷修復速度におけるHBGF−IB成長因子補足FGの効果を評価した。この試験に用いた方法は前記の試験と全く同じである。6匹の試験マウスの背中に2つの直径6mmの全厚皮膚バイオプシーを施し、5μgのHBGF−1βを加えたFGを満たした。6匹のマウスにおける同一のバイオプシーには処置を行わず、6匹の対照マウスのバイオプシーにおいては、補足なしのFGを満たした。9日後、すべてのマウスを屠殺し、各創傷および周囲の皮膚からなる厚さ5ミクロンの組織学的プレパレーションを製造し、ヘマトキシリンおよびエオシンで染色した。各サンプルにおける創傷修復の程度、処置グループについては、どのグループ由来かは同定せずに、それぞれ3人の熟練した分析者が、ブラインドで評価をおこない、コラーゲン沈着、上皮形成、肉芽組織の厚みおよび炎症細胞,繊維芽細胞の密度ならびに血管分布を審査した。各サンプルに対して1〜15の評点を付与した(修復なし〜完全修復)。補足なしのFGで処置した創傷からのサンプルは、一貫して低めの評点を付与され、非処置創傷または成長因子補足FGで処置された創傷からのサンプルは、高い評点を付与された。
【0198】
実施例11
インビボ系における骨誘導物質の運搬ベシクルとしてのFG材料及び方法
フィブリンシーラント
濃ヒトTFC(Baxter Hyland Division,San Pedro CA)及びヒトトロンビン(Baxter Hyland Division,Glendale,CA)をスクリーンされた、凍結したばかりのプールされた血漿から米国赤十字のために製造した。それらの製造中、両方の成分は溶媒洗浄方法(ニューヨーク血液センター)を用いるウイルス不活性化を行い、凍結乾燥の形態で供給された。無菌水(3.3ml)を用いて再構成後、TFC溶液の蛋白特性は以下の様であった。総蛋白=120mg/ml;フィブリノーゲン=90mg/ml;フィブロネクチン=13.5mg/ml;因子XIII=17U/ml;及びプラスミノーゲン=2.2μg/ml。
【0199】
ヒトトロンビン(1000Uバイアル)を無菌水(3.3ml)を用いて再構成し、続いて40mM塩化カルシウム溶液(American Regent Laboratories,Shiriey,NY)中に希釈して濃度を15U/mlとした。ヒトトロンビンを頭蓋冠の損傷上に置いた埋め込まれたディスクを調製するために使用した。
【0200】
局所用牛トロンビン(5000Uバイアル、Armour Pharmaceutical Co.,Kankakee,IL)を無菌水(5ml)を用いて再構成し、40mM塩化カルシウム溶液中に希釈して濃度を15U/mlとした。牛トロンビンを筋肉内バイオアッセイのためのインプラントを調製するために使用した。
【0201】
本発明の態様を実施する場合にフィブリノーゲンは1から120mg/mlFGの濃度で存在しなければならず、より好ましくは3から60mg/mlFG、最も好ましくは10から30mg/mlFGの濃度で存在しなければならない。DBMは約1から1000mg/mlFG、より好ましくは50から500mg/mlFG、最も好ましくは300から500mg/mlFGの近似濃度で存在しなければならない。決定された骨粉末のサイズは0.01から1000ミクロン、好ましくは20−500ミクロン及び最も好ましくは70−250ミクロンでなければならない。骨誘導成長因子(群)又はBMP群は約1から100μg/mlの濃度で存在しなければならず、その濃度は所望の目的を達成するために効果的である。この態様において骨誘導物質として使用してもよい成長因子には以下のものが含まれるがそれらに限定されない:オステオゲニン(BMP3);BMP−2;OP−1;HBGF−1;HBGF−2;BMP2A,2B及び7;FGF−1;FGF−4;及びTGF−β。骨修復における利用のためのTSを補うために抗生物質などの薬を追加して使用できる。
【0202】
インプラント調製
ラットDBMを以下の様に調製した。ラットの長い骨の骨端を後ろに骨幹のみを残して除去した。必要ならば骨幹を裂き、次に骨髄を脱イオン化水(Milli−Q 水精製システム(登録商標)、Milliporeコーポレーション、Bedford,MA)を用いて徹底的に洗い流した。次に骨幹を室温にて洗浄した。4℃において脱イオン化水1000mlを骨100gに加えた。この混合物を30分間攪拌し、水を捨てた。このステップを2時間繰り返した。
【0203】
4℃において、冷無水エタノール(1リットル)(Quantum Chemicalコーポレーション、U.S.I.Division,Tuscola,IL)を骨各100gに加えた。15分間攪拌後、エタノールを捨てた。これを計1時間の持続期間において4回繰り返した。
【0204】
フェームフード下、ジエチルエーテル(500ml)(Mallinckrodt Speciality Chemicals,Paris,KY)を骨に加えて骨を覆った。これを15分間穏やかに攪拌し、次にエーテルを捨てた。骨にさらにエーテル500mlを加え、この混合物を15分間攪拌した。エーテルを再度捨てた。発生するエーテルの蒸発用のフェームフード下に骨を残した。脱脂した骨は超低温フリーザー(−135℃)中に無期限に保管できる。
【0205】
次に骨を粉砕して骨粉末とした。この粉末をふるいにかけて74から420ミクロンサイズの粒子を集めた。
【0206】
この骨粉末の10グラムを遠心管(250ml)に入れた。泡立ちを避けるために各々の管に0.5NHCl(8ml)をゆっくり加えた。次に各々の管の内容物を穏やかに攪拌した。15分後、各々の管に追加の0.5NHCl(100ml)を10分かけて加えた。次にこの管を穏やかにさらに35分間攪拌した。
【0207】
この粉末がHCl中にある総時間は1時間を越えなかった。
【0208】
次に各々の混合物を4℃において3000rpmにて15分間遠心分離した。
【0209】
次に上清のpHを調べた。もしもpHが2よりも大きければ、ペレットを妨害せずに、化学シンクに注いだ。pHが2より小さい場合には、上清を有害廃棄容器に注いだ。ペレットが失われた場合には遠心分離時間を30分に増加した。上清のpHが0.5N HClと等しくなるまでこれらのステップを繰り返した。
【0210】
次にペレットを攪拌によって脱イオン水(180ml)を用いて洗浄し、一様な懸濁液を得た。次にこの懸濁液をさらに15分間遠心分離した。次にこの上清を以前の様にデカントした。上清のpHが脱イオン水のpHと等しくなるまで、この洗浄を繰り返した。
【0211】
次にペレットをフリーザー中で−180℃にて凍結した。次に標準的手順を用いてそれらを凍結乾燥した。
【0212】
1mm厚及び8mm直径のディスク型インプラントを4片のアルミニウム型を用いて製造した(図13)。ラットDBM粉末(25mg)を型の穴に入れた。
【0213】
次にTFC(30μl)をDBMの上にピペットでおき、DBMが全溶液に取り込まれるまで混合した。使用したTFCの濃度は10、20、40、80又は120mg/mlであった。次にトロンビン溶液(30μl)(40mM塩化カルシウム中15U/ml)をDBM−TFC複合体に加え、混合し、ピストン形態のふたを用いてディスク型に圧縮した。DBM粉末25mgが20μlの体積を有することが決定された。DBMがFGに添加された後、最終蛋白濃度は以下の様であった:
【0214】
【表6】
【0215】
DBMのみ又はFGのみ(4,8,15及び45mg/ml総蛋白濃度)からなるディスクインプラントを同じ型を用いて同様に製造した。
【0216】
DBM(50mg)をアルミニウムの型に注ぎ、次にTFC(60μl)をこのDBMに加え、十分取り込まれるまで混合した。次にトロンビン(60μl)をこのDBM−TFC複合体に加えて混合し、ピストン形態のふたを用いて直径1cm及び厚さ2mmのディスク型に圧縮した。次にこのディスクを手動で所望の型(三角、四角又はドーナツ形)に切り抜いた。
【0217】
筋肉内バイオアッセイ実験のために、70ミクロンのメッシュサイズを有し、1cm×1cmの大きさである無菌のナイロン袋にインプラントを入れた。
【0218】
動物
雄のLong−EvansラットをCharles River Labor atories(Wilmington,MA)から入手した。筋肉内バイオアッセイのために28から35日齢のラットを使用した。3カ月齢のラットを開頭術実験のために使用した。
【0219】
手術
塩酸ケタミン(10ml)[ベタラー(Vetalar)、100mg/ml,Parke−Davis,Morris Plains,NJ]及びキシラジン(5ml)[ロムプン(Rompun)、20mg/ml、Mobayコーポレーション、Shawnee,KN]及び生理食塩水(0.9%NaCl)からなる混合物を用いて、体重100グラム当たり0.1ml用量にて筋肉内投与することにより動物を麻酔した。動物の手術部位を70%アルコール溶液を用いて、その後ポビドン−イオジン溶液で準備した。その後、無菌技術を用いて手術手順を行った。
【0220】
筋肉内バイオアッセイ。中線腹切開を行い、平滑切開を用いて胸筋の間にスペースを作った。デザインされた実験物質を含むナイロンエンベロープを筋肉内のスペースに挿入し、3−0 Dexon縫合を用いて固定した(図14)。次に反対側面において同じ手順を繰り返した。次にステープルを用いて皮膚を閉じた。4週間後にインプラントを採集し、x線にかけて組織学用の準備をした。
【0221】
ディスク型インプラントを無作為に配置し、それらは以下のものを含んでいた:DBMのみ(n=12);種々の濃度のFGのみ(4mg/ml,n=14;8mg/ml,n=3;15mg/ml,n=3;及び45mg/ml,n=12)及びDBM−FG複合体(4mg/ml,n=12;8mg/ml,n=12;15mg/ml,n=12;及び45mg/ml,n=12)。四角の、三角の及びドーナツの形のインプラントが各々4つあった。
【0222】
開頭術手順。 鼻の骨から中央矢状縫合稜へ線状切開を行った。柔らかい組織を穏やかに折り返して骨膜を開頭術部位(後頭の、前頭の、頭頂部の骨)から切開した。必要に応じて豊富な食塩水潅注を用いた遅い速度の回転ハンドピースの中でトレフィンを用いて8mmの開頭術を調製した。頭蓋冠ディスクを切開してはずし、その間、硬膜の穿孔及び上位矢状縫合洞貫入を避けた。この8mmの頭蓋冠の傷は対照として処理を行わないで放置するか又は1×8mmDBM又はDBM−FGディスクを詰める(図15)。次に皮膚を皮膚ステープルで閉じた。
【0223】
手術後、各々のラットを耳のパンチにより識別し、ケージに戻し、そこで2−3時間の以内を歩行させた。
【0224】
第1のセットの頭蓋冠のインブラントはDBMのみ(25mg,n=3)又はFGマトリックス中のDBM(15mg/ml,n=2,30mg/ml,n=3;及び45mg/ml,n=3)からなり、28日後に回収した。第2のセットの頭蓋冠のインプラントはFGマトリックス(30mg/ml)中のDBM(25mg)からなり、手術後の種々の時間(28日、n=10;3カ月、n=9;及び4カ月、n=5)に回収した。
【0225】
インプラントの回収
指定された時間にラットを二酸化炭素室中で安楽死させた。実験受容体床(すなわち、大胸筋又は頭蓋冠)の周囲にて皮膚を切開し、柔らかい組織を受容体床から折り返した。オルトトピックの部位において、3−4mmの隣接する骨を有する開頭術を正面−後頭−頭頂複合体から回収した。ヘテロトピックの部位において鋭い平滑な切開が、埋め込まれたナイロンエンベロープを回収するために用いられた。
【0226】
ラジオグラフィー
このインプラントを、X−OMATL(登録商標)高コントラストのコダックx線フィルム(イーストマン コダックカンパニー、Rochester,NY)を用いて、Minishot Benchtop Cabinetx線システム(TFIコーポレーション、West Haven,CT)中、30kvp、3Ma及び10秒においてラジオグラフィーを行った。灰色レベルの濃度の筋肉内及び開頭術部位のラジオグラフィーをケンブリッジ920像分析システム(登録商標)(Cambridge Instruments Limited,ケンブリッジ、英国)を用いて分析した。
【0227】
組織学的分析
回収された標本(柔らかい及び硬い組織)を直ちに保存液の入った適切にラベルされたバイアルに入れ、組織学処理を行った。組織学の標本は頭頂の直径を通って4.5ミクロメーターの厚さの切片であった。各々の受容体部位に対してヘマトキシリン及びエオジン染色を用いて1つの切片を調製した(細胞及び基質の細部のフォトマイクログラフィー及び試験のために)及びもう1つの切片はフォン・コッサ染色を用いて調製した。
【0228】
結果
筋肉内プラントのラジオグラフィー
すべてのDBMディスクは放射線−不透明(radio−opaque)像を示した。48個の埋め込まれたDBM−FCディスクの内45個(93.75%)が放射線−不透明であった。すべてのDBM−FCディスクは蛋白質濃度(4−45mg/ml)には無関係に放射線−不透明を誘き起こした(図16)。いくつかのDBMディスクの放射線−不透明測定(図16)ではDBM−FGディスクよりも高かったが、他の測定はDBM−FGディスクの測定範囲内に良く入った。DBMが補充されていない32個のFGディスクの内30個(93.75%)が放射線−不透明を展開しなかった。
【0229】
四角、三角又はドーナツの形のDBM−FGディスクはまた、DBMを補充していないFGディスクと比較して顕著に放射線−不透明であった。インプラントの元の形は一般に残っていた。
【0230】
筋肉内インプラントの組織学
骨髄で満たされた中心の洞を伴う小骨の形成及びあらかじめ埋め込まれたDBM粒子の吸収によって証明される様に、筋肉内のバイオアッセイはDBM及びDBM−FGインプラントに対して陽性であった。
【0231】
頭蓋冠のインプラントのラジオグラフィー FGマトリックス中のDBMインプラントは、一般に、DBMインプラントのみ又は未処理の対照よりもより放射線−不透明であることがx線によって示された。DBMを運搬するために使用された種々のFG濃度の間には認識できる違いはなかった。未処理の8mm直径の頭蓋冠の損傷のラジオグラフィーでは無視し得る量の放射線−不透明を示した。
【0232】
30mg/mlFGマトリックス中のDBMを用いる第2のセットの頭蓋冠のインプラントは、28日の頭蓋冠と比較して3カ月の又はは4カ月の頭蓋冠の開頭術の傷内における放射線−不透明部が顕著に増加していることを示した(図17)。
【0233】
頭蓋冠のインプラントの組織学
未処理の8mmの開頭術の傷は繊維結合性組織が開頭術の傷を横切って発達していることのみを示した(図18)。DBMインプラントの組織学は、DBM粒子が全ての部位に拡散されていることを示した。いくつかのDBM粒子は宿主の骨の先端の上下に移動した(図19)。しかし、大部分のDBM粒子は開頭術の傷の範囲内にあり、良く脈管形成された緩い結合性の組織に囲まれていた。破骨細胞によるDBMの活性的な吸収が示された。多くのDBM粒子はまた肝細胞によって集団化されることがわかった。破骨細胞によって建造される新しい類骨及び骨は全く明白であった。
【0234】
FGマトリックス中のDBMインプラントの組織学によって、DBM粒子が開頭術の傷内に局在し、より密なそしてより多くの細胞結合性の組織に囲まれていることが示された(図20及び図21)。類骨マトリックス及び骨の柱形成が全く明白であった。DBMインプラントのみを埋め込んだ開頭術の傷よりもDBM−FGディスクを埋め込んだ開頭術の傷において、より多くの骨髄が形成されることが示された。また、DBMインプラントのみ又は未処理の対照よりもDBM−FGディスクはより多くの新しい脈管形成があった。DBMを運搬するために用いた全ての濃度のFGにおいて骨再形成が明白であった。
【0235】
検討
FGの自然の生物適合性及び生物分解性は、それをDBM及びBMPのための理想的な運搬ベシクルとする特性である。FGは、骨の損傷を満たすために望ましい形態へのDBMの形状化を促進し、その損傷内にDBMを維持した、そしてDBMと共同性であったかもしれない。さらには、柔らかい組織の脱出は起こらず、骨の輪郭が維持された。DBMが補充されたFGは、骨芽の補充及び骨再形成を助けるために適切なミクロ構造、生物分解性プロフィール及び放出速度論を有していた。
【0236】
全般的に、データによると、FG中のDBM運搬は、いかなる試験されたFC蛋白質濃度においてもDBMのみが誘導した骨形成と同量の骨形成を誘導することが示された。さらに、DBMをFGと共に遠心分離して、特定の手術前の形態とした場合、誘導された骨は手術後に元の形がよく維持された。
【0237】
DBM−FGマトリックスの形態が新しく形成された骨の形態学を決定したので、DBM−FGマトリックスはあらかじめ決定された形に作らなければならない。しかし、溶液の形態のDBM−FGマトリックスは不規則的に形態化された損傷へ運搬するか又は注入でき、その場所において重合化し、DBM−FGが満たされた領域における骨形成を促進するだろう。
【0238】
実施例12
FGからの抗生物質(AB)の放出及びAB補足FGの寿命増加方法
A.AB−FGの製造
1.TETフリー塩基
注射用の水3.5mlを米国赤十字より提供された凍結ヒト局所フィブリノーゲン濃縮物(TFC)のバイアルに注入した。得られる溶液の蛋白濃縮物は約120mg/mlであった。
【0239】
米国赤十字/バクスター−ハイランド・インコーポレイテッド、グレンデイル、CAより提供された凍結乾燥トロンビン濃縮物を、注射用の水で調製した塩化カルシウムの40mM溶液3.5mlで再構成した。得られた溶液は約250U/mlを含有した。
【0240】
所望重量のTETを注射品質の塩化カルシウム(アメリカン・リエイジェント、シャーレイ、NYから購入)の存在で、1mlの再構成TFC溶液と、及び1mlの再構成トロンビン溶液と混合することにより、TET−FGを調製した。TETはフリー塩基形であり、シグマ・ケミカル・カンパニィ(セントルイス、MO)から購入した。直径12mmのミリポア培養プレート(ミリポア・コーポレイション、ベッドフォード、MA)中のミリポア膜上、ジュオフロ(商標)ディスペンサー(ハマーディクス、CA)によってTFCとトロンビンを混合することにより、TET−FGを形成させた。混合物を22℃で1時間放置した。TET−FG及びミリポア膜を含む6mm直径ディスクを6mmパンチバイオプシーを用い後者からカットした。TET−FG含有ディスクをTET放出研究に用いた。
【0241】
TET−FGからリン酸緩衝食塩水(PBS)又は唾液へのTETの放出は、2つの異なる設定条件下、24−ウエル細胞培養プレート(コーニング・グラス・ワークス、コーニング、NY)を用い測定した。一つの条件では、静止形態、2mlのPBS又は0.75mlの唾液を毎日、24−ウエル培養プレート中で置き換えた。他の条件では、連続変換形態、TET−FGからのTET放出を1日当り約3mlの速度で変換されるPBSで測定した。試料は分析するまで−20℃で貯えた。唾液は、10人の異なる人達から収集し、まとめて、5,000gで遠心により浄化した。次いで0.45μm孔径膜で濾過し、毎日の使用に4℃で保存した。
【0242】
TET−FGディスクから放出されたTETの濃度及び生物活性を測定するために、溶出TETを解凍し、320nmでスペクトル光度測定法で、及び/又は寒天平板上、イー・コリの阻害により生物学的に分析した。これらのアッセイを較正するために、それぞれ0ないし50及び0ないし500μg/mlのTET濃度をカバーする標準曲線を用いた。
【0243】
2.シプロフロキサシンHCl(CIP)−、アモキサシリン(AMO)− 及びメトロニダゾール(MET)補足FG
CIP HCl、AMO又はMETを含有するFGはTETについての前述の通りに製造した。これらABの、対応するAB−FGから近接の環境への放出をモニターするため、AB−FGディスクを、24ウエル細胞培養プレートの個々のウエルに置き、分析するまで、前のように収集し、毎日置き換え、そして−20℃で保存したPBS 2mlでカバーした。溶出液中のCIP、AMO及びMETの濃度をそれぞれ275、274及び320nmでスペクトル光度測定法で測定し、対応するABの0ないし50μg/mlを含有する標準曲線と比較した。
【0244】
B.AB−FGの構造的統合性
FG及びTET−FGディスクの構造的統合性の維持は、小さなスパーテルでディスクを「つつく」(poking)ことによる視覚観察と物理的調査によって評価した。ディスクを保存している間に切り取った多孔膜をTET−FGに付着し、それらの構造的統合性の評価の間にディスクの位置を守るのに用いた。又、ディスクの上部及び側方視覚の写真をとり、評価に用いた。
【0245】
FG及びTET−FGの構造的統合性は、無菌及び非無菌の両条件下で測定した。非無菌実験については、分析までPBS及び唾液を凍結保存した。無菌実験については、全方法を無菌条件下で行う以外は同一の操作を用いた。システムの不稔性は0.2mlの試料と2mlのブロスを37℃でインキュベートすることにより試験し、ブロスの濁度を48時間モニターした。濁度の欠除はシステムの不稔性を示した。CIP−、AMO−及びMET−FGの安定性は、非無菌条件下のみで上記と同様に研究した。
【0246】
C.AB−FGから放出されたABのインビボ抗菌活性
AB−FGから放出されたABの抗菌活性は、AB−FGの回りの毎回収集されたPBS又は唾液からの6mm直径ディスクの溶出液によりもたらされる阻止の領域の直径を測定することによって評価した。未補足FGからの溶出液をコントロールとして用いた。既知濃度のAB溶液を標準として用いた。寒天平板上で培養したイー・コリは、放出されたTET、CIP及びMETのAB活性を測定するのに用いた。培養プレートを作るために、約108時間/mlを含む100μlの細菌細胞懸濁液と3mlの上面寒天とを50℃で混合し、直ちに硬底面寒天平板(plate hard,bottom agar)上に移して細胞の均一層を作った。プレートを37℃で18時間インキュベートした。
【0247】
結果
A.TET
1.TET放出データ
「静置」実験でのTET−FGディスクから周囲のPBSへのTETの放出は、毎日置き換えた2mlのPBSで達成されたTET濃度を測定することによるスペクトル光度測定法で測定した。TET−FGに取り込まれた異なる量のTETについて得られたTET濃度を図面22に示す。50mg/ml以下のTET−FGでのTET濃度で、TETの放出は、5日又はそれ以下で測定した。しかしながら、100及び200mg/mlのTET濃度を含んだTET−FGディスクからのTETの放出は、それぞれ約2週間と3週間以上、生じた。TET−FGディスクの構造的統合性は、3ないし5週間保持した。これらの結果は、TET放出がFG産生と独立であること、及びTET放出の速度がTET−FGディスクに残ったTETの量に依存することを示した。
【0248】
連続交換実験で収集したスペクトル光度測定データを図面23に示す。これらのデータは、100mg/mlFGのTET濃度をもともと含有したTET−FGディスクからの連続TET放出が2週間にわたって生じたことを示す。FGディスクは、この2週間以内、その構造的統合性を維持した。連続モード実験で得たTET放出データも、TET放出状況の速度がTET−FGディスクに残ったTETの濃度に依存することを示した。
【0249】
理論に縛られることを望まないが、これらの実験で観察された初期の高TET濃度は、多分、ディスク表面又はその近くからのTETの拡散の結果であると信じられた。即ち、これらの位置で「トラップされた」TETが消耗されたので、溶液化及び/又は拡散の速度が、TET濃度勾配により、又、FGの形状は又は立体構造により多分測定されたやり方で減少した。
【0250】
温度及びFG蛋白濃度もTET−FGディスクからのTET拡散速度を測定するのに割役を演した(実施例13及び14参照)が、これら二つのパラメーターはこれらの実験で一定を保った。
【0251】
50及び100mg/mlのTETを含むTET−FGから唾液へのTETの放出は、静置実験で、毎日取り替えた0.75mlの唾液中のTET濃度を決定することにより測定した。これらの結果(Fig.24)は、TETの濃度が高かった以外、PBSで得られたものと同様で、放出TETを収集するのに用いた少容量の唾液を多分反映している。さらに、FGマトリックス中のTETの存在も、9日までに崩壊し始めて15日までにほとんど完全に崩壊したコントロールFGディスクに関するものと比較して少なくとも15日間TET−FGマトリックスの構造的統合性を予期せずに延長した(図面25)。
【0252】
2.TET抗菌データ
PBS中の幾つかのTET濃度のイー・コリ生育に対する抗菌効果は図面26に示される。本方法により検出可能な最低TET濃度は約5μg/mlであった。
【0253】
これらの結果は、明らかに、放出TETが抗菌活性を有することを示す。これらのTETデータはスペクトル光度測定により得られたものを裏付け、FGに取り込まれたTETの量がTET−FGの周囲の溶液中のTET濃度を決定することを示す。これらのデータもFG中のTETの量がTET−FGの周囲の媒体中の所望TET濃度を最小所望TET濃度で又はそれ以上で維持するのに適応できることを示す。
【0254】
3.TET−FGマトリックス寿命
コントロールFG及びAB−FGディスクの寿命は、ディスクの視覚評価により評価した。ディスクの製造の間に切り取った多孔膜は、依然FGに付着し、それらの統合性評価の間にディスクを適当な位置に置くのを助けた。TETを含まない(コントロール)及びmlのFG当り50又は100mgのTETを含有するディスクの0、9及び15日の上部展望を図面25に示す。本図は、典型的な結果、即ち、FGコントロールディスクが2週間以内に崩壊し、一方、TET−FGディスクは15日間又はその付近で依然無傷であったことを示す。付加的実験で、TET−FGディスクは、少なくとも5週間又は付近で依然無傷であった(データ示さず)。FGの寿命について有意な変化は無菌及び非無菌TET放出実験の間で観察されなかった。
【0255】
B.CIP、AMO及びMETデータ
1.CIP、AMO及びMET放出データ
CIP−、AMO−及びMET−FGから放出された抗生物質を図面27に示す。CIPは約4週間明らかな一定速度で放出され、次いで速度はさらに約1過間徐々に減少した。AMO及びMETの放出は、完全に3日以内であった。
【0256】
2.CIP及びMET抗細菌活性
放出されたCIP及びMETの抗菌活性(データ示さず)は同一のAB−FGディスクについてスペクトル光度測定で決定したプロフィルに近似している。
【0257】
3.補足−FGマトリックス寿命
CIP−FGについての結果は、TET−FGについてのものと類似した。AMO−及びMET−FGについての結果は、FGコントロールについて得たものと類似した。FGの寿命での有意な変化は、無菌及び非無菌実験の間で観察されなかった。
【0258】
検討
結果は、CIP及びTETの水難溶性形がそれらが混合されるFGマトリックスの最大AB負荷、放出期間及び寿命を有意に増加する因子の組合せを提供することを示した。これとは別に、FGディスクはAB、例えばTET又はCIPの溶液中にそれを浸漬することにより安定化できる。
【0259】
この結果も、AB−FGにより導出されたABがイー・コリ生育の阻害により示されるように、その抗菌活性を保持したことを明らかに示した。これらの結果は、FG及び他のTSのTET及びCIP補足がそこからのドラッグデリバリィで制限(limiting)因子としてFGの崩壊に打ち勝つことができることを示した。即ち、これらのABはFGを安定化し、それによりそれらの放出期間と放出AB濃度をFG中のAB濃度を用いてコントロールできる。これらの方法を用い、TET及びCIPはFGに負荷でき、それらの放出は有効な抗菌濃度で数日又は数週間コントロールできる。
【0260】
TET−及びCIP−誘発FG安定化は、これらのABについてだけでなく、その放出速度及び/又は全放出持続がFGマトリックスの寿命に依存するFGに加えられる他の薬物又は「補足物」についても、全放出時間をコントロールするのに利用できる。
【0261】
それらの結果は、FGが局在ドラッグデリバリーシステムとして利用できる歯周及び他の条件で、臨床適用性を有する。TET−又はCIP−誘発FG安定化は、TET、CIP及びTET−FG又はCIP−FGマトリックスに加えられた他の薬物又は補足物の全放出時間をコントロールするのに利用できる。
【0262】
実施例13
TET−補足FGからのTET放出速度に対する温度の影響 FGは50mg/mlのTET遊離塩基を補足し、本研究用に6×2.5mmディスクに形造った。FGの蛋白濃度を60mg/mlに調整した。ディスクを2mlのPBS、pH7.3に置き、4、23及び37℃で放置した。ディスクを洗浄するため、PBSは、10分毎に6回、2mlの新鮮なPBSで置き換えた。その後、PBSは1時間毎に4時間、置き換えた。収集した試料中のTET濃度を前のように、標準曲線に対してスペクトル光度測定で測定した。
【0263】
結果及び結論
結果は、TET放出の速度が温度に比例することを示した(図面28)。
【0264】
実施例14
TET−補足FGからのTET放出速度に対するFG蛋白濃度の影響 1mg/mlのTET HCl溶液を補足したFGを調製し、本研究用に6×2.5mmディスクとして形造った。FGの蛋白濃度を60、30及び15mg/mlに調整した。各ディスクを3mlの蒸留水に置いた。水は、10分毎に、全1時間、同容量の水で置き換えた。収集した試料中のTET濃度を前のように標準曲線に対してスペクトル光度測定法で測定した。
【0265】
データ(図面29)は、TET放出速度が最低全蛋白濃度のFGから最大で、逆であることを示す。即ち、TET放出速度はFG蛋白濃度に反比例した。
【0266】
実施例15
AB−補足FGから放出されたABのインビボ抗菌活性
TET−及びCIP−FGから放出されたTET及びCIPの抗菌活性を試験するため、これらのAB−補足FGの誘発腹膜炎からマウスを保護する能力を評価した。実験的に、1日目に、グループ当り5匹の動物の各1匹に0.5mlPBS(グループI)、FG(グループII)、TET−FG(グループIII)又はCIP−FG(グループIV)を腹膜内注射した。FG及びAB−FGを、120mg/mlのTFC0.25ml及び250U/mlのヒトトロンビン0.25mlを含むハマーデクスディスペンサーを用い投与した。TET−及びCIP−FGの場合、トロンビン溶液は50mgの各ABを含有した。2日目に、全動物に2×108(実験1)又は4×108(実験2)コロニー形成単位(cfu)のエス.アウレウス202Aを腹膜内注射した。結果:(実験1、実験2。動物は感染後48時間、生存):グループI、0及び1の生存;グループII、3及び1の生存;グループIII、3及び5の生存;及びグループIV、5及び4の生存。ほとんどの生存動物は実験(2週間)の間を通して生きたが、幾らかは死亡したか又は病気であったので故意に殺した。
【0267】
これらのデータは、マウスを死から守ったTET−FG及びCIP−FGがAB−補足FGの投与後、少なくとも48時間、エス.アウレウス202Aにより生じることを示した。
【0268】
実施例16
FGから細胞傷害/抗増殖薬物の長期部位指定送達
フィブリノーゲンは、無菌水で、1グループについては17mg/mlの濃度に5−FUで飽和した水で可溶化した。トロンビン溶液は、無菌水で作り、次いで、40mM CaCl2中に15U/mlの濃度に希釈し、又はトロンビンは17mg/mlの濃度に5−FUで飽和した40mM CaCl2に溶解した。
【0269】
コントロールFGクロット(凝塊、clots)は、5−FUを含有せず、200μlのTFC溶液(60mg/mlで)を200μlのトロンビン溶液(15U/mlで)と混合し、20分重合することにより生成した。これらのクロットは12×75mm試験管中で作り、次いで0.05Mヒスチジン、0.15M NaCl、pH7.3(緩衝液)10ml中に置いた。
【0270】
標準濃度の液体5−FUを含むFGクロットは、200μlのTFC(60mg/ml+17mg/ml 5−FU)と200μlトロンビン溶液(15U/ml+17mg/ml5−FU)を混合し、クロットを20分、完全に重合することにより作った。TFC及びトロンビン溶液での飽和濃度の5−FUの添加は、完全に不透明であったコントロールFGクロットに比べて、半透明であったクロットを生成するクロット形成を幾らか変えた。形成されたクロットは、FGのみで作ったものと色以外は物理的に同一であった。クロットは12×75mm試験管中で作り、次いで10mlの緩衝液中に置いた。
【0271】
5−FUの飽和溶液により形成したクロットに含まれる量に等しい量の固体無水5−FUを含む第二グループのFGクロットを作った。これらのクロットは、7mgの固体無水5−FUを200μlのTFC(60mg/ml)と200μlのトロンビン(15U/ml)に添加することにより形成した。7mgの5−FUを12×75mm試験管中に置いた。次いで20μlのTFCを、続けて200μlのトロンビンを加えた。次いで、3成分を、均一混合物が観察され、そしてそれ以上の混合が凝固反応によって阻止されるまで、ピペットを前後させることにより混合した。次いでクロットを10mlのヒスチジン緩衝液中に置いた。
最終グループはクロット当り50mgの固体無水5−FUを含有した。多量の5−FU(7mgの代わりに50mg)のために、これまでに用いられた方法ではうまくいかなかった。均一のクロットを作る代わりに、クロットは試験管の底に固らせている大量の5−FUで形成させた。この問題を避けるために、試験管の底を初めに100μlのTFC(60mg/ml)と100μlのトロンビン(15U/ml)で被覆した。これは試験管の凹形の底を被覆したクロットを形成した。次に、50mgの固体無水5−FUを200μlクロットの表面に加えた。これに続いて100μlのTFCを100μlのトロンビンと共に加えた。2つの溶液を、自動ピペッターを用い、蛋白がゲル化し始めるまで混合した。これが生じたとき、ピペット操作を終えてクロットを20分間、重合した。最終生成物は、約50mgの5−FUの濃密なコアを含有するクロットであった。他のクロットに関しては、これらは次いで10mlの緩衝液中に置いた。全グループ中のFGの最終全蛋白濃度は30mg/mlであった。
【0272】
各グループは10複製を含んだ。各複製は10mlの緩衝液中、37℃でインキュベートした。緩衝液は5、10、22、33、52、75及び114時間に10mlの新鮮な緩衝液で置き換えた。次いで溶出緩衝液のアリコートを260nmの波長セッティングで分光測光器で試験した。これまでの実験は5−FUがこの波長で強く吸収するが、一方コントロールFGクロットからの溶出液は吸収しないことを示した。
【0273】
結果は図面30に示す。5−FUを含まないコントロールクロットは有意な解読を与えなかった。5−FUの飽和溶液の形で又は同等量の固体無水5−FUのいずれかの7mgの5−FUで作られたクロットは5ないし10時間の間、5−FUのそれらの送達を完全にしたが、一方50mgの固体無水5−FUを含むクロットは少なくとも75時間5−FUを送達することを続けた。全ての場合での最高濃度は5時間点で生じた。
【0274】
理論に縛られることを望まないが、5−FU送達の持続はゲルに負荷された5−FUの塊の作用であるようであった。結果として、溶液中に5−FUを含むクロットから送達可能な5−FUの量は、薬物の溶解性により限定された。即ち、5−FUを飽和した液体から形成したクロットに存在する量に等しい固体無水形の量の含有は、ほとんど同一の送達動態となったが、一方、液体形を用いることが可能であるよりも大量の固体形5−FUの含有は、3倍の送達の持続、典型的には与えられた濃度の薬物の送達の持続を10倍増加した。大量の固体無水5−FUの含有さえも大きな送達時間となることが期待された。他の実験では、我々はクロットに含まれる5−FUの量が少なくとも5倍そして多分それ以上増加すること、及び5−FU−FG混合物も注射可能形に処方しうること(データ示さず)を見出した。さらに、無水形よりも周りの水性媒体に溶解しにくい、及び/又は低溶解速度を有する5−FUの類似体又は他の形は、送達時間をさらに増加させることとなろう。
【0275】
この方法の結果は、液体形での薬物を使用できるよりも少なくとも10倍長いフィブリンクロットからの抗増殖/細胞傷害薬物5−FUの持続しうる送達である。本技術(即ち、固体形の薬物、多分、低溶解度及び/又は溶解速度のものの用途)は、薬物粒子が懸濁するマトリックス又は薬物自体と関係なく一般に適用できる筈である。
【0276】
実施例17
線維芽細胞成長因子補足化FGおよびフィブロネクチンに対する応答における線維芽細胞化学走性
材料および方法
材料
ダルベッコ修飾イーグル培地(DMEM)は、ミズーリ州、セント・ルイスのシグマ・ケミカルカンパニーから購入した。抗生物質−抗真菌溶液は、GIBCO(ニューヨーク州、グランド・アイランド)から購入した。組換え線維芽細胞成長因子−1(FGF−1)および−4(FGF−4)は、メリーランド州、ロックビルのアメリカン・レッド・クロス、プラズマ・デリバーティブズ・ラボラトリー、レジナルド・キッド氏およびジェネティックス・インスティテュート(マサチューセッツ州、ケンブリッジ)のご厚意によりそれぞれ頂戴した。組換え線維芽細胞成長因子−2(FGF−2、塩基性FGFまたはbFGFとしても知られている)は、アップステイト・バイオテクノロジー・インコーポレイテッド(ニューヨーク州、レイク・プラシド)から購入した。培養物の滅菌増殖並びに化学走性アッセイに必要な全てのプラスチック製品は、フィッシャー・サイエンティフィック(デラウェア州、ニューアーク)から購入した。ミリセル−PCF(12.0μm)挿入物は、ミリポア・インコーポレイテッド(マサチューセッツ州、ベッドホード)から購入した。ヘパリンは、アップジョン・カンパニー(ミシガン州、カラマズー)から購入した。
【0277】
細胞培養
継代126のNIH/3T3線維芽細胞は、メリーランド州、ロックビルのアメリカン・タイプ・カルチャー・コレクションから購入した。継代129−133由来の培養物を化学走性アッセイに使用した。10%ウシ血清および約1%抗生物質抗真菌溶液を補足したDMEM中で培養物を増殖させた。ヒト皮膚線維芽細胞(HDFs)は、クロネティックス・インコーポレイテッド(カリフォルニア州、サンディエゴ)から継代2のものを購入した。継代3−5由来の培養物を化学走性アッセイに使用した。20%FBS(ユタ州、ローガンのハイクローン・ラボラトリーズ・インコーポレイテッド)および約1%抗生物質抗真菌溶液(ニューヨーク、グランド・アイランドのジブコ)を補足したDMEM中で培養物を培養した。
【0278】
細胞化学走性アッセイ
細胞化学走性を測定するのに使用した方法は、既知の2つの方法体系を組み合わせたものであった。ボイデン・チェンバーを修飾したものを以下のようにして使用した:ミリセル−PCF(ミリポア・インコーポレイテッド、マサチューセッツ州、ベッドホード)(12.0μm)、直径12.0mmの挿入物を24ウェルプレートの個々のウェルに入れ、上部化学走性チェンバーと下部化学走性チェンバーを設けた。化学走性結果は、細胞と成長因子との各組み合わせ毎にチェッカー盤分析を実施することにより、得られた。材料の所で記載した全種類の細胞を伴うFGF−1、FGF−2(ヘパリン無し)およびFGF−4について、ヘパリン(10U/ml)を加えた場合も/加えない場合も、0.1、1、10、100ng/mlの濃度範囲を採用した。要するに、培養物をトリプシン処理し、DMEM+0.1%ウシ血清アルブミン(BSA)(シグマ・ケミカル・カンパニー、ミズーリ州、セント・ルイス)中に入れて、約1時間、37℃で5%CO2湿潤チェンバー中に置いた。50μl中2から2.5×105細胞を24ウェルプレートに設けた上部チェンバーに挿入添加した。上記のように、処置を加えた。アッセイを、37℃で5%CO2湿潤チェンバー中4時間続けた。4時間終了時点で、プレートをインキュベーターから取り出し、フィルターをミリセル−PCF挿入物と共に染色するためのプロトコールに従い染色した。要するに、ミリセル−PCF挿入物の内側および外側を取り巻く流体を取り除いた。3パーセントのグルタルアルデヒド(シグマ・ケミカル・カンパニー、ミズーリ州、セント・ルイス)を約20分間、挿入物の内側および外側に加えた。3.0%グルタルアルデヒドを除去後、0.5%トリトンX−100(E.M.サイエンス、ニュージャージー州、チェリー・ヒル)を5−7分間加えた。0.5%トリトンX−100を除去するときに、フィッシャー社のヘマトキシリン溶液ジル製剤(フィッシャー・サイエンティフィック、デラウェア州、ニューアーク)No.1を約10分間加えた。
【0279】
この溶液を、蒸留水で5分間流して洗浄除去した。綿棒を用いて、フィルターの上面をぬぐい、移動しなかった細胞を取り除いた。フィルターをクリスタルマウントTM(バイオメダ・インコーポレイテッド、カリフォルニア州、フォスター・シティ)溶液におけるスライドに面する低部側にマウントし、フィルターの下面にある細胞を自動的に数え上げるイメージ・アナライジング・システムを用いて400×および200×の両方で可視的に、無作為の10視野(フィールド)をスライドによりカウントした。
【0280】
チェッカー盤分析
必須のものとして、チェッカー盤分析を実施し、無作為の移動および正および負の化学走性を測定した。成長因子を上部および/または下部チェンバーに加えて、細胞が、GF方向に単独で移動する(化学走性)かどうか、成長因子を上部または低部ウェルに加えたかどうか(ケモキネシス)、または細胞移動が化学走性勾配に逆らっているかどうか(負の化学走性)にかかわりなく、移動がランダムであるかどうかを観察した。
【0281】
FGから放出されたFGFに対する細胞移動アッセイ
化学走性チェンバーおよび細胞を上記の通り利用した。8mg/ml局所フィブリノーゲン複合体(TFC、アメリカン・レッド・クロス、メリーランド州、ロックビル)50μlを24ウェルプレートの底に加えた。試験成長因子+/−ヘパリン40μlを最終濃度10U/ml(ヘパリンを含むFGF−1、FGF−4、FGF−2単独)でTFCに加え、勢いよく混合した。ウシ・トロンビン(アームア・ファーマシュウティカル・カンパニー、イリノイ州、カンカキー)10μlを加え、勢いよく混合した。成分を室温で約30分間ゲル化させた。下部および上部チェンバーの総容量は、DMEM+0.1%BSAも含めて、それぞれ0.5mlまでにした。下式に定めるとおり、TFCに加えられたFGFの濃度を調整して、所望の全体濃度とした:
【0282】
【数1】
【0283】
アッセイは、5%CO2湿潤チェンバー中37℃で約24時間実施した。24時間終了後、フィルターを取り出し、固定し、染色して、フィルターの下面の細胞数を、上記のようにして数えた。
【0284】
結果
線維芽細胞の移動能力
種々のよく知られた化学走性剤(chemotactic agents)の方向に移動するNIH 3T3線維芽細胞の能力を測定して、このアッセイに使用した細胞がこの能力を維持したことを確認した。フィブロネクチンは、NIH 3T3およびHDF類の両方について試験した中で、最も有効な化学走性剤であり、20μg/mlで最大の応答を示した(図31、表7)。従って、20μg/mlのフィブロネクチンを、移動についての正の対照として使用した。
【0285】
NIH 3T3線維芽細胞のFGF−1方向への化学走性
FGF−1によるNIH 3T3線維芽細胞移動の最大刺激は、ヘパリン10U/mlの存在下、10ng/mlで観察された(図32)。チェッカー盤分析により、FGF−1が、NIH 3T3細胞に対する化学走性物質であることが明らかになった。
【0286】
NIH 3T3線維芽細胞のFGF−2方向への化学走性
FGF−2によるNIH 3T3線維芽細胞移動の最大刺激は、FGF−2の1ng/mlで観察された(図33)。チェッカー盤分析は、FGF−2が、NIH 3T3細胞に対する化学走性物質であることを示した(データは示さない)。
NIH 3T3線維芽細胞のFGF−4方向への化学走性 FGF−4によるNIH 3T3線維芽細胞移動の最大刺激は、10ng/mlで観察された(図34)。チェッカー盤分析により、FGF−4が、NIH 3T3細胞に対する化学走性物質であることが明らかになった。
【0287】
HDFsのFGF−1方向への化学走性
FGF−1によるHDFs移動の最大刺激は、1ないし10ng/mlで観察された(図35)。チェッカー盤分析は、FGF−1が、HDFsに対する化学走性物質であることを示した(表9)。
【0288】
HDFsのFGF−4方向への化学走性
FGF−1によるHDFs移動の最大刺激は、10ng/mlで観察された(図36)。チェッカー盤分析により、FGF−2が、HDFsに対する化学走性物質であることが明らかになった(データは示さない)。
【0289】
HDFsのFGF−4方向への化学走性
FGF−4によるHDFs移動の最大刺激が、10ng/mlで観察された(図37)。チェッカー盤分析は、FGF−4が、HDFsに対する化学走性物質であることを示した(データは示さない)。
【0290】
FGに組み込まれたFGF−1、−2および-4に対するヒト皮膚線維芽細胞移動
FGから放出されたFGFに対する最大移動応答は、1ng/mlのFG中、FGF−4の組み込まれた濃度、および全体の濃度で引き起こされた(図38)。FGF−1およびFGF−2をFGに組み込んだ場合でも、化学走性応答ピークを生ぜしめるFGF−2の濃度が0.01mg/mlであった以外は、同様の結果が得られた(データは示さない)。
【0291】
【表7】
【0292】
【表8】
【0293】
【表9】
【0294】
考察
FGF類は、HFDsにおいて十分な化学走性応答を生ぜしめた。HDFsを用いて実施した各化学走性アッセイの場合、負の対照と、最大移動応答を生ぜしめたFGF濃度との間に非常に良好な差異が得られ、FGF−1、−2および−4に対する応答では、それぞれ18、12および10倍であった。
【0295】
成長因子による化学走性刺激は、NIH 3T3細胞の場合、HDFsの場合ほど高くはなかったが、これは恐らく、NIH 3T3細胞の入手可能なストック培養物の継代数が、HDFsの場合に比べて高いことが原因であると思われる。
FGF−1、FGF−2およびFGF−4が、線維芽細胞化学走性の強力な刺激物質であることが、見い出された。上記成長因子類の1つまたはその組み合わせにより線維芽細胞が方向性を持って移動するという結果を、損傷部位に存在する線維芽細胞に応用して、それにより、線維増殖、およびコラーゲンおよび細胞外マトリクスの産生を導くことが出来る。従って、その充分に認識されている血管形成誘導特性とは別に、FGF類は、単独で、またはPDGF、IGF−I、TGF−βおよび/またはその他の因子との組合せのいずれかで作用して、損傷治癒する役割を有し得るのである。
【0296】
損傷治癒を速めるためのFGF類の使用に関する従来研究では、有意な結果が得られたものはない(カーター等、1988年)。これは、最大応答を得るために細胞をイン・ビボで因子類に長い時間さらす必要が有ることが原因であり得る(プレスタ等、セル・レギュレーション、2巻:719−726巻(1991年)およびルスナチ等、ジャーナル・オブ・セル・フィジオロジー、154巻:152−161頁(1993年))。残念ながら、治癒工程を妨害しないような条件下で、長時間、成長因子を損傷箇所に届けるのは困難である。
【0297】
FGF類をFGに組み込むものである本願発明は、細胞をFGF類に長い時間さらすことを可能にし、損傷箇所に適用され得るものである。生じたフィブリンコーティングは、組織損傷に対する本来の応答を擬態するものであり、その一方で成長因子を損傷箇所に直接届けるものである。本願出願人による従来研究では、FGF−1を含むFGを、人工血管移植片の内側を覆うのに使用した(本明細書、実施例8)。これらの移植片をウサギの血管内に置くと、FGF−1が、28日間放出された。イヌ科の移植片に関する更なる研究では、FGF−1を移植片壁へ組み込んだ結果、同期間内で人工移植片が全部内皮化した(グレイスラー等、サージェリー、112巻:244−255頁(1992年))。従って、この適用形態は、イン・ビボにおける非常に有意な生物学的効果を導くことが出来るのである。本研究では、出願人は、線維芽細胞が、FGから放出されるFGF類方向に引き付けられ得ることを示している。この特性は、GF−補足化TSを用いた損傷の処置において有用なものである。
【0298】
実施例18
脈管形成性物質を送達するためのTSシーラントを用いる、直接的な部位脈管形成
この実施例では、新規血管を制御した方法によって体内で直接形成することができる。またこの実施例では、TSは、脈管形成性物質、たとえば線維芽細胞成長因子-1(FGF-1)を、補足TSから放出される濃度が脈管形成の誘発に有効になるような量で含有し、送達する。
【0299】
この実施例は、心臓や脳や筋肉組織のような充分な血液供給が欠けている体内域において脈管形成を促進するような制御した方法に用いられる。またこの実施例は、移植器官や再結合四肢に対する循環を保持したり改善するのに用いる。さらにこの実施例は、つぎのようなものに関し血管網または「血管床」を発生させるのに使用することができる;人工器官/類器官の形成、遺伝子治療に用いられる細胞の送達および/または局在化および/または栄養補給、遺伝子治療の標的、組織拡大用の細胞の栄養補給および/または局在化。またこの実施例は、脈管形成やその下部器官の機能を損なうような異物や過剰な炎症反応を誘発しうる器具または物質の移植の必要性を排除することができる。
【0300】
本発明は、フィブロネクチンおよび/またはコラーゲンを含むかまたは含まずに、組成の1つとしてフィブリノーゲン(好適にはフィブリンの形成用)を含み、これを、適した濃度のFGF-1のような脈管形成性物質に配合する。フィブリノーゲンは、また、トロンビンのたん白分解活性に抗して保護するための安定化剤を含有することができる。FGF-1の場合、ヘパリン硫酸塩(1〜1000U/ml)を安定化剤として、濃度範囲1ng/ml〜1mg/mlで用いることもできる。
【0301】
別の態様として、脈管形成物質を好適な濃度にてトロンビン、カルシウムまたは水成分中に含ませることもできる。この組成物をトロンビンと混合し、次いで所望の部位とつながる体内ラインまたは単一の部位へ迅速に適用する。フィブリノーゲン-トロンビン混合物を重合してFGを形成する。FGF-1または他の脈管形成物質は、FGマトリックス内に、遊離形または安定化剤もくしく混合物の他の成分に結合した状態で閉じ込めた状態のままにする。1つの実施例では、TS中のFGF-1の濃度は0.1ng/ml〜1mg/ml、好適には1ng/ml〜100μg/ml、より好適には100ng/ml〜10μg/mlである。FGF-1または他の脈管形成物質は、FG沈積体内で血管形成を誘発することができる。FGは自然に生分解し、血管から排出される。
【0302】
実施例19
直接的な軟骨部位誘発
この実施例は、新規軟骨の制御した形成が可能であり、また体内における損傷した軟骨の制御した再生が可能である。この実施例では、TSは、単数または複数の軟骨促進因子、たとえば軟骨誘発因子-Aおよび/または-B(CIF−AおよびCIF-B、各々、TGF-B1およびTGF-B2としても知られている)および/または他の因子、たとえば骨有機基質誘発因子(OIF)を、補足TSから放出される当該誘発因子の濃度が軟骨形成を誘発するのに有効な量で含有し、送達することができる。1つの実施例では、誘発因子の濃度は、0.1ng/ml〜1mg/ml、好適には1ng/ml〜500ng/ml、より好適には100〜250ng/mlである。この実施例はまた薬剤、たとえば抗生物質、他の成長因子、たとえばEGF,PDGFおよびbFGFをTS中に含むことができる。軟骨誘発物質は適した濃度で、TS製造に使用されるフィブリノーゲン、トロンビン、カルシウムまたは水成分中に含まれる。
【0303】
補足TSは、移植前に所望の最終軟骨に予め形成するかまたはTSを被移植者の体内に、当該TSが混合され重合される液体形で移植することができる。得られた形態は、次いで所望の形態に加工して、必要な軟骨に適した形態を得ることができる。軟骨誘発TS(CI−TS)混合物を用いて、従来からのインプラントに予め被覆することができ、生きた軟骨を有する従来形のインプラントを得ることができる。
【0304】
前記した任意の技術を用い、CI-TSを次いで被移植者の体内に移植する。
この移植は異所または正位とすることができる。適当な間隔ののち、CI-TSは、当初のCI-TSインプラントの形態の生存軟骨によって置き換えられる。
かかるインプラントを用いて、損傷した軟骨または失った軟骨を置換することができ、また人工インプラントの組織との一体性や機能を改善することができる。かかる用途の例示には、鼻組織や耳組織の置換または再構築、イン・ビボにおいて成長した骨インプラント上の機能的連結面の形成、人工インプラント上の同様な表面の形成が包含される。リウマチ性間接炎などの疾患によって損傷した軟骨の修復も、CI-TSを用い、当該間接に新規で滑らかな軟骨面を形成することができる。プラスチック/再構築外科手術における空間充填用途を意図したインプラントは、CI-TSから形成するか、またはCI-TSを被覆して組織の一体性を向上させて異物反応を減少させることができる。
【0305】
現在の技術では、制御された軟骨の再構築は不可能であるため、本発明は、身体の構造を完全に模写することが必要な軟骨組織の形成が可能である点で、充分に進歩性を有するものである。これは、整形外科的用途や他の用途の両方について、間接や人工間接や他のインプラントの改善された修復をもたらすことができる。
【0306】
たとえば、この実施例を用いて、外傷性損傷、先天性損傷もしくは病原性損傷の軟骨または機能不全の軟骨について、改善された整形外科インプラントや、改善されたプラスチック/再構築インプラントを形成でき、またペースメーカーインプラントおよびワイヤーの被膜を形成して組織の一体性を増加させるとともに異物反応を減少させることができる。同様な軟骨も、同様な目的のために任意の移植可能な器具に適用することができる。
【0307】
実施例20
自己充足性TS傷用包帯
この実施例は、自己充足性TS包帯またはバンデージ(bandage)であり、これは、FG成分のトロンビンとフィブリノーゲンの両方を含んでいる。カルシウムはトロンビンおよび/またはフィブリノーゲン成分のいずれかに含まれる。トロンビンまたはフィブリノーゲンのいずれかまたは一方は、成長因子、たとえばFGFまたはbFGF、または薬剤、たとえば鎮痛剤、抗生物質または他の薬剤(これらは、感染を阻止し、傷の回復を促進しおよび/または傷跡の形成を阻止できる)を補足できるが、補足する必要性はない。補足物は、所期の目的、たとえば抗生物質で微生物の増殖を阻止したり、鎮痛剤で痛みを和らげたりするのに有効であるようなTS中の濃度とする。
【0308】
トロンビンおよびフィブリノーゲンは、不浸透性膜で相互に分離し、1対として別の当該膜で被覆する。トロンビンおよびフィブリノーゲンは急速に蒸発するゲル(たとえばメチルセルロース/アルコール/水)中に含まれる。バンデージは、ゲルと接触するその表面を被覆して、使用の間に種々の位置でゲルパッドが残存するのを保証する(図39参照)。
【0309】
処置に際し、2成分を分離する膜を除去して、2成分を混合する。次いで、外膜を除去し、バンデージを傷口にあてる。フィブリノーゲン製剤のトロンビンおよび他の成分の作用は、FSの適用の場合と同様に、フィブリノーゲンをフィブリンへ変換させることである。これは、傷口からの出血や流体の損失を自発的に抑制し、また感染に対する天然のバリヤーを形成する。
【0310】
同様な実施例において、トロンビン成分および、トロンビンゲルとフィブリノーゲンゲルを分離するプラスック膜は、省略してもよい。予めトロンビンゲル中に存在するカルシウムは、所望によりフィブリノーゲンゲル中に含ませてもよく、含ませなくともよい。処置において、前記したように、不浸透性外膜を除去し、バンデージを傷口に直接あてる。トロンビンおよびカルシウムは当然傷口に存在し、前記したようにフィブリノーゲンのフィブリンへの変換を誘発するとともに、傷口からの出血や流体の損失を阻止する。この実施例は、簡易で安価で製造が容易である利点を有する。しかしながら、患者の傷に不充分なトロンビンが存在する状況がある。このような場合、本発明の先に記載の実施例を使用すべきである。
【0311】
この実施例は、成分の可溶化/混合に伴う時間の遅れが生じることなくTSの傷口への迅速な適用が可能である点で、現在実施の技術よりも、進歩性を有する。また、処置のため知識や熟練が不要である。これらの特徴によって、種々の分野で理想的に使用することができ、これらの分野として、兵士や救助作業や救急車/医学関係者のチームや消防士のための外傷用パックの用途や、一般公衆用の1次救助用キット、病院の緊急室職員による用途が挙げられる。小型の形態は一般公衆の用途に有用である。
【0312】
実施例21
生体材料の表面被覆用としての補足TS
この実施例は、補足TSを、整形外科器具や動物体内へ移植される他の生体材料の表面被覆として使用する。これらの器具として、たとえば尿カテーテル、静脈カテーテル、縫合材、血管プロテーゼ、眼内レンズ、コンタクトレンズ、心臓弁、肩/ひじ/でん部/ひざ代替具、全人工心臓などが挙げられる。不幸にも、これら生体材料は、結局は動物の生命を危険にする臨床的感染につながりうる細菌付着やコロニー化の部位となる。この問題を最小にするため、生体材料に補足TSを被覆する。
【0313】
この実施例において、TSは成長因子、抗生物質などの薬剤、BMPおよび/または培養細胞などを補足することができる。TSに組み込むことができる抗生物質の例示には、以下のものに制限されるものではないが、ペニシリン、セファロスポリン、テトラサイクリン、クロラムフェニコール、メトロニダゾール、およびアミノグリコサイドが包含される。TSに組み込むことができる成長因子の例示には、以下のものに制限されるものではないが、FGF、PDGF、TGF-βが包含される。TSに組み込むことができるBMPの例示には、以下のものに制限されるものではないが、BMP1〜8が包含される。またDBMをTSに添加することができる。TSに組み込むことができる培養細胞の例示には、以下のものに制限されるものではないが、内皮細胞、骨芽細胞、線維芽細胞などが包含される。
【0314】
補足物は、トロンビン、フィブリノーゲン、カルシウムまたは水成分のいずれかに含めることができる。TS中の補足物の濃度は、所期の目的、たとえば、抗生物質によって生体材料上の微生物の増殖を抑制したり、成長因子によってTS中および/または生体材料表面上に所望のセルタイプの増殖を誘発するのにに有効であるのに充分なものとする。
【0315】
本発明は、現存する生体材料製品を改善したもので、これには、チタンおよびチタン合金器具(たとえば、固定プレート、肩/ひじ/でん部/ひざ代替器具、骨一体歯科インプラントなど)、固体シリコン製品(たとえば、シラスチック鼻インプラント)、液体および/またはゲルシリコン製品(たとえば、乳房インプラント、こう丸インプラント)、および傷口の治療に通常の材料として使用される天然または合成ポリマーが包含され、またこれは、種々の形態をとることができ、たとえばモノフィラメント、線維アッセンブリイ(たとえば、綿、紙、不織布ファブリック)、フィルム、スポンジ、バッグなどが挙げられる。
【0316】
FGは、次の3成分から製造することができる:フィブリノーゲン(たとえばTFCとして)およびトロンビン(これら両者は凍結乾燥形とすることができる。)並びにカルシウム。凍結乾燥フィブリノーゲンは、滅菌水で再生できる一方、トロンビン成分は塩化カルシウム溶液で再生することができる。補足物は、混合前の3成分のいずれかに添加することができる。好適な容量のフィブリノーゲンとカルシウム含有トロンビンを混合して、FGを製造する。次いで、FGを生体材料の表面にその被膜として、たとえばスプレイ、塗装などにより適用する。別法として、インプラントを液体形のFGに浸漬処理する。補足物は、また生体材料表面に被覆する前後のFGに添加することもできる。たとえば、FG被覆インプラントを抗生物質溶液に所定の期間浸漬して、抗生物質をTSに分散させる。別の実施例では、培養細胞をフィブリン被膜に接種したのちに、インプラント器具にTSを被覆する。生体材料の被膜面は、動物内に移植されるが、これは、補足TSとともに、以下のような種々の目的に有用である:生体材料に対する細菌付着の抑制、生体材料に付着した細菌増殖の抑制、局部的免疫刺激および/または正常化、傷治療の促進、生体材料の周囲組織への適合の促進。
【0317】
本発明の他の実施例も、本明細書記載の本発明の具体的な詳細を考慮に入れれば、当業者には明白である。種々の変形が当業者に明白であるため、本発明は、添付の請求の範囲に記載の範囲によってのみ制限されるものと、理解すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0318】
【図1】図1は、増加させた濃度のヘパリンの存在下でトロンビン250U/mlと共にHBGF−1βをインキュベーションしたゲルのウエスタンブロットを示す。HBGF−1β(10μg/ml)、トロンビン(250μg/ml)および増加させた濃度のヘパリン(0、0.5、5、10、20および50単位/ml)を含む溶液を37℃で72時間インキュベーションした。各々のインキュベーション混合物からアリコートを定期的に回収し、レミリ(Nature227:680(1970))に記載のように調製し、走らせた8%SDSポリアクリルアミドゲルに導入した。ゲルを、次いでニトロセルロース上に電気ブロットし、HBGF−1βに対応するバンドを、HBGF−1βに対する親和性精製ポリクローナルウサギ抗血清を使用して同定した。 インキュベーション混合物中のヘパリンの濃度は;パネルA)0単位/ml;パネルB)0.5U/ml;パネルC)5U/ml;パネルD)10U/ml;パネルE)20U/ml;およびパネルF)50U/mlであった。各々のパネルA−Fに図示したゲルにおいて、各々のレーンは以下を含む:レーン1はSDS−PAGE低分子量標準を含む;レーン2はビオチニル化標準を含む;レーン3は10μg/mlHBGF−1βを含む;レーン4は250U/mlトロンビンを含む;およびレーン5−13は0、1、2、4、6、8、24、48および72時間にインキュベーション混合物から回収したサンプルを含む。
【図2】図2は、相対的HBGF−1β濃度の関数としての3H−チミジン取り込みを示す。HBGF−1βのサンプルを、図1および実施例2に記載のように、トロンビン250U/mlおよびヘパリン5U/mlの存在下、0、24または72時間インキュベーションした。これらのサンプルの希釈を、次いでNIH 3T3細胞に加え、それを実施例3に記載のように置いた。CPMは、HBGF−1濃度に対してプロットする。
【図3】図3は、活性、野生型FGF−1 100ng/ml補足FG上で7日間培養した後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。多数の細胞およびその伸長した形に注目する。非補足FG上で成育させた少数の細胞と比較する(図5)。
【図4】図4は、活性、野生型FGF−1 10ng/ml補足FG上で7日間培養した後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。多数の細胞およびその伸長した形に注目する。非補足FG上で成育させた少数の細胞と比較する(図5)。
【図5】図5は、非補足FG上で7日間培養した後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。少数の細胞に注目し、図3および4の細胞数と比較すると、それは遅い増殖速度を示唆する。
【図6】図6は、不活性、変異体FGF−1 100ng/ml補足FG上で7日間培養した後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。少数の細胞に注目し、図3および4の細胞数と比較すると、それは遅い増殖速度を示唆する。
【図7】図7は、105細胞/FGmlの濃度でFGに着床させた24時間後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。FGのタンパク質およびトロンビンの濃度は、それぞれ4mg/mlおよび0.6NIH単位/mlであった。その伸長した、多足形態に注目し、それらは違いに接触している場所で細胞ネットワークを形成した。フィブロネクチン中で成育した同様の細胞の敷石状形と比較する(図9)。
【図8】図8は、105細胞/FGmlの濃度でFGに着床させた48時間後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。培養条件は図7で記載したとおりであった。その更に強調された、伸長および多足形態および発達した細胞ネットワークの発展の増加に注目する。フィブロネクチン中で成育した細胞の敷石状形と比較し(図10)、後者が細胞性ネットワークに欠けることに注目する。
【図9】図9は、フィブロネクチンで覆われた表面で成育させた24時間後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。敷石状の形および細胞ネットワークの欠如に注目する。図7と比較する。
【図10】図10は、通常使用されるフィブロネクチンのフィルム中で成育させた48時間後のヒト臍帯静脈内皮細胞の典型的なパターンである。敷石状の形および細胞ネットワークの欠如に注目する。図8と比較する。
【図11】図11は、イヌから外移植したPTFE血管移植片の7日後(パネルA、C、E)または28日後(パネルB、D、F)の交差部位の顕微鏡写真である。移植の前に移植片は未処理(AおよびB)、FG単独で被覆(CおよびD)またはヘパリンおよびHBGF−1補足FGで被覆(EおよびF)の何れかであった。 未処理対照(AおよびB)は、最小間葉組織内成育を示し、両方の間隙は満たされ、それらの管腔表面は、フィブリン凝固物により覆われていた。FG−処理移植片は、間葉組織内成育を僅かに移植片の間隙の外半分でのみ示し、残りはフィブリン凝固物で満たされていた。非常に少ない間隙毛細管が存在した。比較して、FGF−1含有FGで処理した移植片は、更に豊富な間隙内部成育を示し、28日までに多くの毛細管、筋線維芽細胞およびマクロファージを示し、筋線維芽細胞の数層からなる内部カプセルは、コンフルエント内皮細胞層に近付いた。移植128日後の同じ移植片の結果は同様であり、より多数の毛細管がFG+FGF−1群であった(データは示していない)。
【図12】図12は、図11で記載した移植28日後の血管移植片の内部裏層の走査電子顕微鏡である。移植片は、未処理(G)、FG単独で被覆(H)またはヘパリンおよびHBGF−1補足FGで被覆(I)の何れかであった。未処理対照移植片(G)は、赤血球、血小板を含む血栓の内皮細胞範囲中心領域の希薄な領域、および暴露PTFE移植片材料の領域(図11の中心および上に見ることができる)を示した。 FG単独で被覆された移植片(H)は、フィブリン凝固物の内皮細胞中心領域の島を示した。比較して、FG+FGF−1で処理した移植片は、血流の方向に沿って配置されたコンフルエント内皮細胞を示した。
【図13】図13は、アルミニウム鋳型を使用して製造した1mm厚および8mm直径のディスク型移植片の製造を示す。
【図14】図14は、DBM単独、FG移植片またはDBM−FGによるラットにおける骨形成の誘発の筋肉内生物検定を説明する図表である。
【図15】図15は、DMB−FGによる頭頂部移植片における骨形成の誘発を説明する図表である。
【図16】図16は、DBM−FG、DBMまたはFGの筋肉内移植手術後28日の放射線不透性データである。
【図17】図17は、手術後28日、3カ月および4カ月後のDBM−FG(30mg/ml)頭頂部移植片の放射線不透性データである。
【図18】図18は、Aは、処理動物の手術後28日の開頭部位の写真である。Bは、未処理対照の手術後28日頭頂部傷の写真である。頭頂部傷に沿って、線維性結合組織のみが発達していることに注目する。
【図19】図19は、DMB粒子のみで処理した動物の頭頂部傷の写真である。
【図20】図20は、DBM−FG(15mg/ml)に応答して頭頂部に形成された新しい骨の写真である。
【図21】図21は、DBM−FG(15mg/ml)に応答して頭頂部に形成された新しい骨の写真である。典型的に、DBM移植片単独より、DBM−FGディスクを移植した頭頂部傷において、骨髄がより形成したことを注目する。
【図22】図22は、3×6mm直径のFGのディスクからの37℃でのTETの遊離である。遊離TETの濃度は、毎日取り換えるPBS2ml上清において分光光度的に測定した。これらのインビトロでの2回の「静止」実験は、別々の結果を導いた。その結果の一つをここに示す。
【図23】図23は、3×6mm直径のFGのディスクからの37℃でのTETの遊離である。ディスクはTET100mg/mlを含み、PBS2mlで満たした密封容器中に入れた。遊離TETの濃度は、3ml/日の割合で連続して取り換えるPBS排出液において分光光度的に測定した。PBS上清の用量は、常に約2mlに維持した。データは2回の実験の平均である。
【図24】図24は、50または100TETmg/mlFG含有3×6mm直径ディスクからの唾液へのTETの遊離である。TETの濃度は、毎日取り換える唾液上清0.75mlにおいて分光光度的に測定した。これらの実験に使用する唾液は、10人の供給者から溜め、遠心し、濾過して4℃に維持した。
【図25】図25は、TETなしならびに50および100mg/mlTET有りの3×6mm直径FGマトリックスの15日間にわたる写真である。TET補足FGの安定性は、対照FGより増加した。ディスクは、毎日取り換える唾液0.75ml中に維持した。唾液は10人の供給者から溜めた。それを実験に使用する前に遠心し、濾過し、4℃に保存した。9日目に、TETを含まないFGマトリックスが、TET50または100mg/ml何れかを含むマトリックスよりも衰えたことを注目する。15日目に、TET非含有FGマトリックスはほとんど完全に衰え、一方TET50または100mg/mlの何れかを含むFGマトリックスはほとんど変化しなかったことをまた注目する。したがって、TET50または100mg/mlの含有は、インビボで唾液内のFGマトリックスの寿命を劇的に延長する。
【図26】図26は、TET補足FGから遊離したTETの抗菌活性を示す。3×6mmTET補足FGディスクを囲む2mlのPBSを毎日取り換えた。遊離TETの抗菌活性を試験するために、回収した溶出液で飽和した6mm紙ディスクを、大腸菌を含む寒天プレート上で37℃で18時間インキュベーションした。次いで、阻害区域の直径を測定した。
【図27】図27は、FGマトリックスからのシプロフロキサシン、アミノキシチリンおよびメトロニダゾールの遊離を示す。別々の、各々の抗生物質100mlを含む3×6mm直径のディスクをリン酸緩衝化食塩水2ml中に浸した。上清を毎日取り換え、抗生物質濃度をそれぞれ275、274および320nmで分光光度的に測定した。
【図28】図28は、TET補足FGディスクからのTETの遊離が、TET−FGディスクのPBS浴の温度に比例したことを示す。
【図29】図29は、TET−FGからのTETの遊離におけるFGタンパク質濃度の効果を示す。高いFGタンパク質濃度は、TET−FGからの遅いTETの遊離をもたらすことに注目する。
【図30】図30は、5−FU補足FGからの5−FUの遊離は、5−FUの固体形を使用することにより延長した。
【図31】図31は、NIH 3T3線維芽細胞のフィブロネクチンに対する走化性反応の用量依存関係を示す。フィブロネクチンの濃度増加の段階勾配を、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、フィブロネクチンはNIH 3T3細胞のそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図32】図32は、NIH 3T3線維芽細胞のFGF−1に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−1の濃度増加の段階勾配を、ヘパリン存在下で、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−1はNIH 3T3細胞のそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図33】図33は、NIH 3T3線維芽細胞のFGF−2に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−2の濃度増加の段階勾配を、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−2はNIH 3T3細胞のそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図34】図34は、NIH 3T3線維芽細胞のFGF−4に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−4の濃度増加の段階勾配を、ヘパリン存在下で、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−4はNIH 3T3細胞のそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図35】図35は、ヒト皮膚線維芽細胞(HDF)のFGF−1に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−1の濃度増加の段階勾配を、ヘパリン存在下で、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−1はHDFのそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図36】図36は、HDFのFGF−2に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−2の濃度増加の段階勾配を、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−2はHDFのそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図37】図37は、HDFのFGF−4に対する走化性反応の用量依存関係を示す。FGF−4の濃度増加の段階勾配を、変形ボイデンチャンバーの低いウェルに加えた。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−4はHDFのそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図38】図38は、HDFのFGF−4に対する走化性反応の溶液中およびFG中の用量依存関係を示す。FGF−4をFG中へ取り込み、走化性チャンバーの下部ウェルにおく。FG中のFGF−4の用量は、FGおよび中および低チャンバーを通って均等に分散した場合、示唆する濃度をもたらすのに十分であった。陰性対照は培地のみおよびFGを含み、FGFを含まない。低チャンバーでFGF−4 10ng/ml含有する培地は、陽性対照として使用した。データは、ハイパワー領域当たりの移動細胞の平均±S.E.として示し、用量の関数として、FGF−4はHDFのそれに向かう走化性を誘発することを証明する。
【図39】図39は、自己充足TS傷周辺の図表である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)少なくとも1つの寿命を延長する補薬(supplement);および
(ii)フィブリンマトリックスを形成する量のフィブリノーゲン;
を含む生適合性の補足された(supplemented)フィブリン膠組織シーラント組成物であって、
該フィブリノーゲンはトロンビン、Ca++および水の存在下にあった場合にフィブリンマトリックスを形成し、
該組成物は繊維素溶解阻害剤を実質的に含まず、
該補薬は該フィブリンマトリックスから、持続された期間の間、使用の外部環境に運搬され、該持続された期間は24時間より長い組成物。
【請求項2】
全厚の皮膚創傷の治癒を抑制しない請求項1の組成物。
【請求項3】
該寿命を延長する補薬が薬物である請求項1または2の組成物。
【請求項4】
該組成物が該薬物の局所的運搬を促進する請求項3の組成物。
【請求項5】
該薬物が固体である請求項4の組成物。
【請求項6】
該寿命を延長する補薬が該補薬の水難溶性形である請求項1の組成物。
【請求項7】
該寿命を延長する補薬が抗生物質である請求項4、5または6の組成物。
【請求項8】
該寿命を延長する補薬がテトラサイクリン遊離塩基である請求項4、5、6または7の組成物。
【請求項9】
該抗生物質がテトラサイクリン塩酸塩である請求項7の組成物。
【請求項10】
該抗生物質がシプロフロキサシン塩酸塩である請求項7の組成物。
【請求項11】
該薬物が抗増殖剤である請求項4の組成物。
【請求項12】
該薬物が5−フルオロウラシルである請求項4、5または11の組成物。
【請求項13】
物質組成物であって、該組成物は延長された寿命を有する補足されたフィブリン膠組織シーラント(TS)であって、TSおよび有効量の寿命を延長する補薬を含み、その有効量は該補足されたTSの寿命を該寿命を延長する補薬のない場合の寿命の少なくとも2倍延長するのに効果的であり、そして該組成物は繊維素溶解阻害剤を実質的に含まない組成物。
【請求項14】
該寿命がインビトロで延長される請求項13の組成物。
【請求項15】
該寿命を延長する補薬が固体である請求項13の組成物。
【請求項16】
該寿命を延長する補薬が該寿命を延長する補薬の水難溶性形である請求項13の組成物。
【請求項17】
該寿命を延長する補薬がテトラサイクリン遊離塩基である請求項13、14、15または16の組成物。
【請求項18】
該寿命を延長する補薬がシプロフロキサシン塩酸塩である請求項13、14、15または16の組成物。
【請求項19】
薬物を補足したフィブリン膠組織シーラントの製造方法であって、該薬物は寿命を延長する補薬でもあり、該組織シーラントは、(i)少なくとも1つの寿命を延長する補薬、および(ii)トロンビン、カルシウムイオンおよび水が存在する場合に、フィブリンマトリックスを形成する量のフィブリノーゲンを含み、
該組成物は実質的に繊維素溶解阻害剤を含まず、
該薬物は該フィブリンマトリックスから持続された期間の間使用の外部環境に運搬され、該持続された期間は24時間より長い方法。
【請求項20】
該組織シーラント(TS)が固化する前に該組織シーラントと薬物を混合することを含む請求項19の方法。
【請求項21】
該薬物が固体である請求項19または20の方法。
【請求項22】
該薬物が該薬物の水難溶性形である請求項19の方法。
【請求項23】
該薬物がテトラサイクリン遊離塩基である請求項19、20、21または22の方法。
【請求項24】
該薬物がシプロフロキサシン塩酸塩である請求項19、20、21または22の方法。
【請求項25】
該薬物が5−フルオロウラシルである請求項19、20、21または22の方法。
【請求項26】
該フィブリン膠組織シーラントが固化する前に該薬物をフィブリノーゲン濃厚物、トロンビンおよび塩化カルシウムと混合する請求項19の方法。
【請求項27】
該組織シーラントを該薬物を含有する溶液に浸漬する請求項19の方法。
【請求項28】
該薬物が抗炎症薬である請求項1、3、4、5または6のいずれかの組成物。
【請求項29】
該薬物が抗真菌性である請求項1、3、4、5または6のいずれかの組成物。
【請求項30】
該補薬がペプチドである請求項1または3の組成物。
【請求項31】
該薬物が抗増殖性または細胞毒性薬である請求項19、20、21または22のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
該薬物が抗真菌性である請求項19、20、21または22のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
該薬物が抗炎症性である請求項19、20、21または22のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
(i)有効量の少なくとも1つの寿命を延長する補薬、および
(ii)フィブリンマトリックスを形成する量のフィブリノーゲンを含む生適合性のフィブリン膠組織シーラント組成物、
を含む補薬運搬システムであって、
該フィブリノーゲンはトロンビン、Ca++および水の存在下にある場合フィブリンマトリックスを形成し、
該寿命を延長する補薬は該フィブリンマトリックスから、持続された期間の間使用の外部環境に運搬され、
該組成物はプロテアーゼ阻害剤を実質的に含まず、そして該持続した期間は24時間より長い補薬運搬システム。
【請求項35】
該寿命を延長する補薬が薬物である請求項34の補薬運搬システム。
【請求項36】
該薬物が、抗生物質、鎮痛薬、細胞毒性薬、抗炎症剤、抗真菌薬、抗増殖薬およびペプチドよりなる群から選択される請求項35に記載の補薬運搬システム。
【請求項37】
抗生物質がテトラサイクリン遊離塩基である請求項36の補薬運搬システム。
【請求項38】
抗生物質がシプロフロキサシン塩酸塩である請求項36の補薬運搬システム。
【請求項39】
該抗増殖剤が5−フルオロウラシルである請求項36の補薬運搬システム。
【請求項40】
増殖因子、薬物、抗生物質、抗増殖剤、または抗炎症剤の運搬のための担体のビークルとしての請求項1〜18のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項41】
増殖因子、薬物、抗生物質、抗増殖剤、または抗炎症剤の運搬のための担体のビークルとしての請求項34〜39のいずれかに記載の補薬運搬システムの使用。
【請求項42】
該担体が増殖因子、薬物、抗生物質、抗増殖剤、または抗炎症剤を4日以上の期間にわたって放出する請求項40または41に記載の使用。
【請求項43】
局在化ドラッグデリバリーのための請求項1〜18のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項44】
局在化薬物運搬のための請求項34〜39のいずれかに記載の補薬運搬システムの使用。
【請求項45】
血液損失を減少させるための、そして/または止血を維持するための、内部または外部の傷をシールするための請求項1〜18のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項46】
血液損失を減少させるための、そして/または止血を維持するための、内部または外部の傷をシールするための請求項34〜39のいずれかに記載の補薬運搬システムの使用。
【請求項47】
該組成物が更に増殖因子を含む傷の治癒を促進するための請求項1〜18のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項48】
該組成物が更に増殖因子を含む傷の治癒を促進するための請求項34〜39のいずれかに記載の補薬運搬システムの使用。
【請求項49】
組織シーラントの寿命を延長させるためのテトラサイクリン遊離塩基、シプロフロキサシン、および/または5−フルオロウラシルの使用。
【請求項1】
(i)少なくとも1つの寿命を延長する補薬(supplement);および
(ii)フィブリンマトリックスを形成する量のフィブリノーゲン;
を含む生適合性の補足された(supplemented)フィブリン膠組織シーラント組成物であって、
該フィブリノーゲンはトロンビン、Ca++および水の存在下にあった場合にフィブリンマトリックスを形成し、
該組成物は繊維素溶解阻害剤を実質的に含まず、
該補薬は該フィブリンマトリックスから、持続された期間の間、使用の外部環境に運搬され、該持続された期間は24時間より長い組成物。
【請求項2】
全厚の皮膚創傷の治癒を抑制しない請求項1の組成物。
【請求項3】
該寿命を延長する補薬が薬物である請求項1または2の組成物。
【請求項4】
該組成物が該薬物の局所的運搬を促進する請求項3の組成物。
【請求項5】
該薬物が固体である請求項4の組成物。
【請求項6】
該寿命を延長する補薬が該補薬の水難溶性形である請求項1の組成物。
【請求項7】
該寿命を延長する補薬が抗生物質である請求項4、5または6の組成物。
【請求項8】
該寿命を延長する補薬がテトラサイクリン遊離塩基である請求項4、5、6または7の組成物。
【請求項9】
該抗生物質がテトラサイクリン塩酸塩である請求項7の組成物。
【請求項10】
該抗生物質がシプロフロキサシン塩酸塩である請求項7の組成物。
【請求項11】
該薬物が抗増殖剤である請求項4の組成物。
【請求項12】
該薬物が5−フルオロウラシルである請求項4、5または11の組成物。
【請求項13】
物質組成物であって、該組成物は延長された寿命を有する補足されたフィブリン膠組織シーラント(TS)であって、TSおよび有効量の寿命を延長する補薬を含み、その有効量は該補足されたTSの寿命を該寿命を延長する補薬のない場合の寿命の少なくとも2倍延長するのに効果的であり、そして該組成物は繊維素溶解阻害剤を実質的に含まない組成物。
【請求項14】
該寿命がインビトロで延長される請求項13の組成物。
【請求項15】
該寿命を延長する補薬が固体である請求項13の組成物。
【請求項16】
該寿命を延長する補薬が該寿命を延長する補薬の水難溶性形である請求項13の組成物。
【請求項17】
該寿命を延長する補薬がテトラサイクリン遊離塩基である請求項13、14、15または16の組成物。
【請求項18】
該寿命を延長する補薬がシプロフロキサシン塩酸塩である請求項13、14、15または16の組成物。
【請求項19】
薬物を補足したフィブリン膠組織シーラントの製造方法であって、該薬物は寿命を延長する補薬でもあり、該組織シーラントは、(i)少なくとも1つの寿命を延長する補薬、および(ii)トロンビン、カルシウムイオンおよび水が存在する場合に、フィブリンマトリックスを形成する量のフィブリノーゲンを含み、
該組成物は実質的に繊維素溶解阻害剤を含まず、
該薬物は該フィブリンマトリックスから持続された期間の間使用の外部環境に運搬され、該持続された期間は24時間より長い方法。
【請求項20】
該組織シーラント(TS)が固化する前に該組織シーラントと薬物を混合することを含む請求項19の方法。
【請求項21】
該薬物が固体である請求項19または20の方法。
【請求項22】
該薬物が該薬物の水難溶性形である請求項19の方法。
【請求項23】
該薬物がテトラサイクリン遊離塩基である請求項19、20、21または22の方法。
【請求項24】
該薬物がシプロフロキサシン塩酸塩である請求項19、20、21または22の方法。
【請求項25】
該薬物が5−フルオロウラシルである請求項19、20、21または22の方法。
【請求項26】
該フィブリン膠組織シーラントが固化する前に該薬物をフィブリノーゲン濃厚物、トロンビンおよび塩化カルシウムと混合する請求項19の方法。
【請求項27】
該組織シーラントを該薬物を含有する溶液に浸漬する請求項19の方法。
【請求項28】
該薬物が抗炎症薬である請求項1、3、4、5または6のいずれかの組成物。
【請求項29】
該薬物が抗真菌性である請求項1、3、4、5または6のいずれかの組成物。
【請求項30】
該補薬がペプチドである請求項1または3の組成物。
【請求項31】
該薬物が抗増殖性または細胞毒性薬である請求項19、20、21または22のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
該薬物が抗真菌性である請求項19、20、21または22のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
該薬物が抗炎症性である請求項19、20、21または22のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
(i)有効量の少なくとも1つの寿命を延長する補薬、および
(ii)フィブリンマトリックスを形成する量のフィブリノーゲンを含む生適合性のフィブリン膠組織シーラント組成物、
を含む補薬運搬システムであって、
該フィブリノーゲンはトロンビン、Ca++および水の存在下にある場合フィブリンマトリックスを形成し、
該寿命を延長する補薬は該フィブリンマトリックスから、持続された期間の間使用の外部環境に運搬され、
該組成物はプロテアーゼ阻害剤を実質的に含まず、そして該持続した期間は24時間より長い補薬運搬システム。
【請求項35】
該寿命を延長する補薬が薬物である請求項34の補薬運搬システム。
【請求項36】
該薬物が、抗生物質、鎮痛薬、細胞毒性薬、抗炎症剤、抗真菌薬、抗増殖薬およびペプチドよりなる群から選択される請求項35に記載の補薬運搬システム。
【請求項37】
抗生物質がテトラサイクリン遊離塩基である請求項36の補薬運搬システム。
【請求項38】
抗生物質がシプロフロキサシン塩酸塩である請求項36の補薬運搬システム。
【請求項39】
該抗増殖剤が5−フルオロウラシルである請求項36の補薬運搬システム。
【請求項40】
増殖因子、薬物、抗生物質、抗増殖剤、または抗炎症剤の運搬のための担体のビークルとしての請求項1〜18のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項41】
増殖因子、薬物、抗生物質、抗増殖剤、または抗炎症剤の運搬のための担体のビークルとしての請求項34〜39のいずれかに記載の補薬運搬システムの使用。
【請求項42】
該担体が増殖因子、薬物、抗生物質、抗増殖剤、または抗炎症剤を4日以上の期間にわたって放出する請求項40または41に記載の使用。
【請求項43】
局在化ドラッグデリバリーのための請求項1〜18のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項44】
局在化薬物運搬のための請求項34〜39のいずれかに記載の補薬運搬システムの使用。
【請求項45】
血液損失を減少させるための、そして/または止血を維持するための、内部または外部の傷をシールするための請求項1〜18のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項46】
血液損失を減少させるための、そして/または止血を維持するための、内部または外部の傷をシールするための請求項34〜39のいずれかに記載の補薬運搬システムの使用。
【請求項47】
該組成物が更に増殖因子を含む傷の治癒を促進するための請求項1〜18のいずれかに記載の組成物の使用。
【請求項48】
該組成物が更に増殖因子を含む傷の治癒を促進するための請求項34〜39のいずれかに記載の補薬運搬システムの使用。
【請求項49】
組織シーラントの寿命を延長させるためのテトラサイクリン遊離塩基、シプロフロキサシン、および/または5−フルオロウラシルの使用。
【図2】
【図5】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図22】
【図23】
【図24】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図1】
【図3】
【図4】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図25】
【図5】
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【図15】
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【図34】
【図35】
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【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図25】
【公開番号】特開2006−297130(P2006−297130A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−178637(P2006−178637)
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【分割の表示】特願平6−520353の分割
【原出願日】平成6年3月14日(1994.3.14)
【出願人】(506182103)ジ・アメリカン・ナショナル・レッド・クロス (1)
【出願人】(500160734)ロヨラ ユニバーシティ オブ シカゴ (5)
【出願人】(506222018)アメリカ合衆国 (1)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年6月28日(2006.6.28)
【分割の表示】特願平6−520353の分割
【原出願日】平成6年3月14日(1994.3.14)
【出願人】(506182103)ジ・アメリカン・ナショナル・レッド・クロス (1)
【出願人】(500160734)ロヨラ ユニバーシティ オブ シカゴ (5)
【出願人】(506222018)アメリカ合衆国 (1)
【Fターム(参考)】
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