説明

製品、及び、製品の製造方法

【課題】金属めっき層を保護するとともに、金属めっき層の表面の金属光沢を装飾要素として取り入れることが可能であり、且、多種多様な装飾を安価に施すことができる製品、及び、製品の製造方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る製品は、製品本体部10と、金属めっき層20と、樹脂層31とを含む。製品本体部10は、金属材料を主成分とする棒状体である。金属めっき層20は、表面200に金属光沢を有し、製品本体部10の外面100を覆っている。樹脂層31は、熱硬化性樹脂と、接着成分とを含有し、金属めっき層20の表面200に接着され、その表面310から金属めっき層が透けてみえる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製品、及び、製品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ゴルフ用品、スキー用品、登山用品等の運動用製品において、機能性の向上にむけた構造の改良や、新素材の開発は頭打ち状態となっている。そこで、この種の運動用製品では、市場での製品価値を高め、消費者の購買意欲を刺激しうるデザイン性の多様化や、製品の装飾性の向上が重要になっている。この種の装飾性の向上に向けた技術として、特許文献1が知られている。
【0003】
特許文献1には、ゴルフクラブ用繊維強化樹脂製シャフトの表面に、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の物理的気相成長法、プラズマCVD法などの化学的気相成長法、湿式めっき法、銀鏡反応を利用したダブルガンスプレーなどの金属膜形成法により金属装飾層を形成し、さらに形成した金属装飾層の外側に、傷つきや剥離を防止するための保護層を具備する発明が開示されている。
【0004】
ところで、この種の保護層を合成樹脂塗料によって形成しようとする場合、金属装飾層の表面の凹凸が少なくなればなるほど、合成樹脂塗料の接着性が低下するという問題が生じる。例えば、特許文献1で開示されている金属装飾層の表面には、前記金属膜形成法に基づき微細な凹凸が存在するから、必ずしも合成樹脂塗料を接着させることができない訳ではない。
【0005】
しかし、ゴルフクラブ用スチールシャフトの表面に、電気めっき法、又は、イオン還元めっき法により金属めっき層が形成されている場合、金属めっき層の表面は鏡面状の平滑面となり、合成樹脂塗料を接着させることができない。
【0006】
そこで、従来、ゴルフクラブ用スチールシャフトの表面に形成された金属めっき層に、合成樹脂塗料を用いて樹脂層を形成する場合には、塗装工程前にブラスト処理を施すことにより、金属めっき層の表面に微細な凹凸を形成するか、又は、金属めっき層を完全に除去していた。このような塗装工程では、ブラスト処理の分だけ作業工数が増加し、コスト高を招く。
【0007】
また、この種のゴルフクラブ用スチールシャフトには、クロム(Cr)を主成分とする金属めっき層が形成される。クロムは鮮やかな金属光沢を有するから、この金属光沢を製品の装飾要素として取り入れることができれば、製品の装飾性の向上を図ることができる。しかし、従来の塗装工程では、ブラスト処理によって金属めっき層の金属光沢が失われるから、金属光沢をデザインに取り入れることはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2003−284795号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、金属めっき層を保護するとともに、金属めっき層の表面の金属光沢を装飾要素として取り入れることができる製品、及び、製品の製造方法を提供することである。
【0010】
本発明のもう一つの課題は、多種多様な装飾を安価に施すことができる製品、及び、製品の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した課題を解決するため、本発明に係る製品は、製品本体部と、金属めっき層と、樹脂層とを含む。製品本体部は、金属材料を主成分とする棒状体である。金属めっき層は、表面に金属光沢を有し、製品本体部の外面を覆っている。樹脂層は、熱硬化性樹脂と、接着成分とを含有し、金属めっき層の表面に接着され、その表面から金属めっき層が透けてみえる。
【0012】
上述した構造によると、樹脂層は熱硬化性樹脂を含有し、製品本体部は金属材料を主成分とするから、焼付け塗装が可能となる。従って、特殊な装置を用いることなく、既存の設備で安価に塗装することができる。
【0013】
金属めっき層は、表面に金属光沢を有し、製品本体部の外面を覆っている。金属めっき層は、表面が鏡面状の平滑面となるから、従来は樹脂塗料を接着させることができなかった。これに対し、本発明に係る樹脂層は、接着成分を有することにより金属めっき層との接着性が確保され、金属めっき層の表面に樹脂層が接着される。従って、金属めっき層の表面を外部の物理的衝撃から保護することができる。
【0014】
樹脂層は金属めっき層の表面に接着され、その表面から金属めっき層が透けてみえる。この構造によると、金属めっき層の表面の金属光沢を装飾要素として取り入れることができる。
【0015】
さらに、樹脂層が着色成分を有する構成によると、金属めっき層の表面の金属光沢が、着色成分の色を伴ったメタリックカラーとして反映されるから、装飾性を向上させることができる。
【0016】
本発明に係る製品の製造方法は、まず、製品本体部の表面に、電気めっき法、又は、イオン還元めっき法により、金属めっき層を形成し、次に、熱硬化性樹脂と、接着成分とを含有する塗料を、金属めっき層の表面に塗布し、次に、製品本体部を熱処理し、塗料を硬化させる工程を含む。
【0017】
上述した製造方法において、塗料は接着成分を有しているから、金属めっき層に対して予めブラスト処理を施すことなく、金属めっき層の表面に塗料を直接塗布し、樹脂層を形成することができる。従って、金属めっき層の表面の金属光沢を装飾要素として取り入れることが可能となり、もって製品の美観を向上させることができる。
【0018】
また、本発明では、金属めっき層の表面に少なくとも1層の樹脂層が形成されることにより、この樹脂層を下地として着色成分を含む樹脂層を接着させることができる。この構造によると、外部の物理的衝撃から、より確実に金属めっき層を保護することができるとともに、装飾性を向上することができる。
【0019】
本発明の別の態様に係る製品は、製品本体部と、樹脂層とを含む。製品本体部は、棒状であって、金属材料、又は、繊維強化プラスチックの何れかを主成分とする。樹脂層は、樹脂成分と、着色成分とを含有し、製品本体部の表面に接着されている領域内において、製品本体部の表面に貫通する部分を有している。
【0020】
上述した製品の効果は、製造方法を検討すると、より顕著に現れる。即ち、本発明の別の態様に係る製品の製造方法は、まず、剥離可能な塗料を、スクリーン印刷によって、製品本体部の表面に印刷し、製品本体部の表面にマスクパターンに沿った剥離可能領域を形成し、次に、樹脂成分と、着色成分とを含有する樹脂塗料を、製品本体部の表面、及び、剥離可能領域の表面に塗布し、次に、剥離可能領域、及び、剥離可能領域上に塗布された樹脂塗料を除去する工程を含む。
【0021】
本発明の別の態様に係る製品、及び、製品の製造方法によると、製品本体部の表面に対して、マスクパターンに応じた多種多様な抜き文字、抜き模様などの装飾を施することができる。その結果、例えば、樹脂層の着色成分と、貫通部分に現れる下地色とのコントラストを装飾要素として取り入れることができる。また、スクリーン印刷技術を用いて装飾を施すことができるから、製造コストを低減することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように、本発明によれば、次のような効果を得ることができる。
(a)金属めっき層を保護するとともに、金属めっき層の表面の金属光沢を装飾要素として取り入れることができる製品、及び、製品の製造方法を提供することができる。
(b)多種多様な装飾を安価に施すことができる製品、及び、製品の製造方法を提供することができる。
【0023】
本発明の他の目的、構成及び利点については、添付図面を参照し、更に詳しく説明する。添付図面は、単に、例示に過ぎない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施形態に係る製品の断面図である。
【図2】図1に示した断面図の一部を拡大して示す図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る製品の製造方法について端部を省略して示す断面図である。
【図4】図3に示した工程のあとの工程を示す断面図である。
【図5】図4に示した工程のあとの工程を示す断面図である。
【図6】本発明のもう一つの実施形態に係る製品の断面図である。
【図7】本発明の更にもう一つの実施形態に係る製品の断面図である。
【図8】本発明の更にもう一つの実施形態に係る製品の断面図である。
【図9】本発明の更にもう一つの実施形態に係る製品の製造方法について端部を省略して示す断面図である。
【図10】図9に示した工程のあとの工程を示す断面図である。
【図11】図10の11−11線に沿った断面図である。
【図12】図10及び図11に示した工程のあとの工程を示す断面図である。
【図13】図12の13−13線に沿った断面図である。
【図14】本発明の更にもう一つの実施形態に係る製品について端部を省略して示す断面図である。
【図15】本発明の更にもう一つの実施形態に係る製品の製造方法について端部を省略して示す断面図である。
【図16】図15に示した工程のあとの工程を示す断面図である。
【図17】図16の17−17線に沿った断面図である。
【図18】図16及び図17に示した工程のあとの工程を示す断面図である。
【図19】図18の19−19線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は本発明の一実施形態に係る製品の断面図、図2は図1に示した断面図の一部を拡大して示す図である。本発明に係る製品は、ゴルフクラブ用シャフト、釣竿、歩行用ステッキ、スキー用ストック、登山用ストック、テニス用ラケット、バトミントン用ラケットから選択された何れか一種である。以下、説明の都合上、ゴルフクラブ用シャフトを例として説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0026】
図1及び図2の製品は、製品本体部10と、金属めっき層20と、樹脂層31と、保護層40とを含む。製品本体部10は、金属材料を主成分とする棒状体である。ここで、棒状体とは、軸方向aでみた長さ寸法が、径方向dでみた最大差し渡し径寸法より大きいことを意味する程度のものである。
【0027】
製品本体部10が、所謂スチールシャフトである場合、金属材料には鉄鋼が用いられ、より好ましくは炭素鋼(Fe、Cの合金)、又は、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)、ニッケル(Ni)、バナジウム(V)などを添加して得られる特殊鋼が用いられる。
【0028】
また、製品本体部10は、スチールシャフトが通常有すべき構成を有している。即ち、製品本体部10は、断面円形状の管状体、又は、パイプ状体であって、内部を軸方向aに貫通する貫通孔を有し、軸方向aの一端(グリップ側)から他端(ヘッド側)に向かって、徐々に細くなるテーパー構造となっている。
【0029】
金属めっき層20は、製品本体部10に耐衝撃性、耐摩耗性、耐蝕性、耐候性、装飾性を付与する観点から、製品本体部10の外面100を覆うように設けられる。通常、スチールシャフトに設けられる金属めっき層20は、電気めっき法、又は、イオン還元めっき法により形成される。金属めっき層20は、スチールシャフトが有するフレックス、ねじり剛性、キックポイント等の各種特性を損なわない厚みであることが求められ、好ましくは外面100に0.1μm程度の厚み寸法で成形されている。
【0030】
金属めっき層20の表面200は、鏡面状の平滑面であって、金属光沢、及び、鏡面光沢が現れている。具体的に、金属めっき層20が、クロム(Cr)を主成分としている場合、表面200にはクロムが有する白色金属光沢が現れる。
【0031】
図1及び図2では、説明の都合上、金属めっき層20を一層のものとして表現しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。例えば、金属めっき層20を、ニッケルめっき層と、クロムめっき層との多層構造とし、製品本体部10の外面100にニッケルめっき層を5〜15μm程度の厚みで形成し、さらにニッケルめっき層の表面に、クロムめっき層を0.1μm程度の厚みで形成してもよい。上述しためっき層の多層構造は、装飾クロムめっきと呼ばれるものである。
【0032】
本発明の特徴の一つは、金属めっき層20の表面200に樹脂層31が接着されている点にある。図1及び図2の樹脂層31は、熱硬化性樹脂を主成分とし、さらに接着成分と、着色成分とを含有し、金属めっき層20の表面200に接着されている。樹脂層31は、焼付け膜であって、層厚み寸法が、好ましくは0.3mm以下、より好ましくは0.1mm以下である。
【0033】
樹脂層31に用いられる接着成分は、イソシアネート、ブロックイソシアネート樹脂、又は、シランカップリング剤から選択された少なくとも1種類を主成分とする。シランカップリング剤は、その構造中に、エポキシ基、及び、シラン(Si)を含有するものであり、好ましくは、下記(i)、〜(v)から選択される。
(i)3−アミノプロピルトリエトキシシラン
(ii)3−アミノプロピルトリメトキシシラン
(iii)N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
(iv)N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン
(v)3−(N−フェニル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
本発明において、接着とは、製品の通常使用できるとされる期間内に剥離することがない性質を指す。本発明において、接着成分とは、それ単独で接着効果を有するものを指し、接着促進剤等の補助的な接着剤は含まない。
【0034】
樹脂層31に用いられる熱硬化性樹脂は、接着成分を混合し得るものであって、通常、焼付け塗装に使用されている焼付け塗料用樹脂から選択することができる。本発明において、焼付け塗装とは、塗り付けた塗料の層を、あらかじめ設定された最低温度で加熱して、バインダーの架橋を起こさせて硬化させる塗装を指す。また、焼付け塗料とは、素地に塗ってから加熱して塗膜が形成できるように作った塗料であって、加熱の温度が、100℃以上のものを指す。
【0035】
樹脂層31に用いられる熱硬化性樹脂は、メラミン樹脂(MF)、フェノール樹脂(PF)、エポキシ樹脂(EP)、ユリア樹脂(UF)、不飽和ポリエステル樹脂(UP)、ジアリルフタレート樹脂(PDAPまたはDAP)等から選択された少なくても1種類である。
【0036】
樹脂層31は、樹脂層31の表面310から金属めっき層20が透けてみえる。即ち、樹脂層31は、透明である。樹脂層31の透明度(透過率)は、樹脂成分を適宜調節することにより獲得することができる。例えば、熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂(EP)を用いることにより、樹脂層31は、表面310から金属めっき層20が透けてみえる程度に透明になる。また、樹脂層31は、樹脂成分として、前記熱硬化性樹脂に加え、さらにアクリル樹脂、又は、ウレタン樹脂の何れか少なくとも一方を含むことにより、透明になる。
【0037】
着色成分は、染料、又は、顔料を主成分とし、15wt%以下の割合で混合されている。着色成分は、通常使用されているものから選択することが可能であり、特に限定するものではない。着色成分の例として、酸化チタン、有機赤色系顔料、硫酸バリウム、カーボンブラックなどを挙げることができる。着色成分の含有率は、色調に応じて調節することができる。
【0038】
図1及び図2の製品は、樹脂層31の表面310に、透明な合成樹脂材料を用いて保護層40が接着されている。保護層40に用いられる樹脂は、樹脂層31との重ね塗り適合性を有するもの、又は、樹脂層31に接着可能なものから選択することが可能であり、好ましくは、樹脂層31を構成する合成樹脂材料と同一、又は、同種のものを用いることできる。保護層40は、耐衝撃性、耐摩耗性、耐蝕性、耐候性など(耐久性)を確保するものであり、樹脂層31よりも高硬度とすることができる。
【0039】
図1及び図2では、保護層40を一層のものとして表現しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。樹脂層31に透明な保護層40を多層接着させることにより、耐久性を向上させることができる。
【0040】
図1及び図2の製品の構成によると、樹脂層31は熱硬化性樹脂を主成分とし、製品本体部10は金属材料を主成分とするから、焼付け塗装が可能となる。焼付け塗装は、既存の塗装装置を用いて行うことができるから、特殊な装置、又は、高価な装置を用いることなく、安価に実行することができる。
【0041】
金属めっき層20は、表面200に金属光沢を有し、製品本体部10の外面100を覆っている。従来、金属めっき層20が、電気めっき法、又は、イオン還元めっき法により形成されている場合、表面200は、鏡面状の平滑面となるから、樹脂塗料を用いて構成された樹脂層31を接着させることができなかった。これに対し、本発明の一実施形態に係る樹脂層31は、シランカップリング剤を主成分とする接着成分を有することにより、金属めっき層20との接着性が確保されているから、表面200が鏡面状であっても樹脂層31を接着させることができる。従って、金属めっき層20の表面200を外部の物理的衝撃から保護し、耐久性を確保することができる。
【0042】
図1及び図2の樹脂層31は、透明な熱硬化性樹脂を主成分とし、さらに着色成分を有し、金属めっき層20の表面200に接着され、その表面310から金属めっき層20が透けてみえる。この構造によると、表面200の金属光沢が、着色成分の色を伴ったメタリックカラーとして反映されることにより、表面200の金属光沢を装飾要素として取り入れ、製品の美観を向上させることができる。
【0043】
図3乃至図5は、本発明の一実施形態に係る製品の製造方法について端部を省略して示す断面図である。図3乃至図5において、図1及び図2に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0044】
図1及び図2に示した製品の作用効果について、さらに、製造方法の観点から説明する。まず、図3を参照すると、製品本体部10の外面100には、電気めっき法、又は、イオン還元めっき法により、金属めっき層20が形成されている。この金属めっき層20には、塗料を塗布する前に、予め、クリーニング処理が施される。具体的にクリーニング処理は、洗浄工程と、脱脂工程とを含み、洗浄工程では中性洗剤を用いて金属めっき層20の表面200に付着した塵埃や汚れを除去する。脱脂工程では、洗浄工程を経た金属めっき層20について、さらにナフサを染み込ませたウエスによって表面200に付着している油脂性の汚れを除去する。
【0045】
図4に示す工程は、図3に示した工程のあとの工程であって、熱硬化性樹脂を主成分とし、さらに接着成分と、着色成分とを含有する塗料(焼付け塗料)を、金属めっき層20の表面200に塗布し、樹脂層31の元となる塗料層を形成する。図4の工程で用いられる塗料は、さらに希釈剤を含有することができる。本発明において、希釈剤とは、塗料の粘度を調整するために用いられるものであり、通常、使用されているものから選択することができる。希釈剤は、好ましくは有機溶媒であり、特に、トルエン、キシレン、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、酢酸エチル、酢酸ブチル等から選択される少なくとも1種類である。
【0046】
本発明に係る製品がゴルフシャフトの場合、図4の塗布工程は、スプレーガンを用いた吹付け塗装、又は、しごき塗装などで行うことができる。しごき塗装は、まず、カップに焼付け塗料を入れる。カップは、底部に厚さ0.8〜2.0mm程度の板ゴムが配置され、板ゴムの面内には4.0〜5.5mm程度の円形の貫通孔が開口している。この貫通孔に、製品本体部10を細径側(ヘッド側)の先端から挿通し、カップ内の焼付け塗料に浸した後、貫通孔から引き抜くことにより、金属めっき層20の表面200に塗料層が形成される。
【0047】
さらに、金属めっき層20に塗料層が形成された製造中間品を熱処理し、塗料層を硬化させる。熱処理は、密閉された熱処理室を有する電気炉内に製造中間品を案内し、所定の温度範囲の雰囲気で、全体的に熱処理する。温度範囲は、好ましくは100℃以上200℃以下であり、より好ましくは150℃以上180℃以下である。また、処理時間は、好ましくは10分以上30分以下である。例えば150℃の温度の雰囲気で熱処理させた場合、塗料層は15分程度で熱硬化し、樹脂層31が形成される。
【0048】
図5に示す工程は、図4に示した工程のあとの工程であって、樹脂層31の表面310に、さらに保護層40を形成する。保護層40は、樹脂層31に対し重ね塗り適合性を有する透明な合成樹脂材料をしごき塗装によって表面310に塗布し、さらに上述した条件で熱処理することにより形成される。保護層40は、製品に要求される耐久性に応じて、上述した塗装工程及び熱処理工程を所定の回数繰り返し、多層構造とすることができる。
【0049】
図3乃至図5を参照して説明した製品の製造方法において、樹脂層31を構成するために用いられる塗料は、熱硬化性樹脂を主成分とし、さらに接着成分を有しているから、金属めっき層20の表面200にブラスト処理を施すことなく、表面200に直接塗布することができる。従って、金属めっき層20の表面200の金属光沢を装飾要素として取り入れることが可能となり、もって製品の美観を向上させることができる。
【0050】
従来、真空蒸着法などを用いた金属膜成形法では、金属蒸着膜が剥がれやすいため、金属蒸着膜の形成後、直ちに樹脂層(31)を形成する必要がある。これに対し、本発明に係る樹脂層31は、金属めっき層20の表面200に接着することができるから、製造が容易である。また、形成された塗料膜に不具合がある場合には、塗装のやり直しができるなど製造歩留まりが向上する。
【0051】
樹脂層31を構成するために用いられる塗料は、透明な熱硬化性樹脂を主成分とし、さらに着色成分を有しているから、金属めっき層20の表面200の金属光沢が、着色成分の色を伴ったメタリックカラーとして反映される。従って、製品の装飾性を向上させることができる。
【0052】
金属めっき層20の表面200に樹脂層31が形成されることにより、樹脂層31を下地とし、さらに樹脂層31に対し重ね塗り適合性を有する透明な樹脂塗料を用いて、表面310に保護層40を形成することが可能となる。従って、樹脂層31の剥離や不正移動を防止することができるとともに、耐久性を確保することができる。
【0053】
図6は、本発明のもう一つの実施形態に係る製品の断面図である。図6において、図1乃至図5に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0054】
図6の実施形態は、図1乃至図5の樹脂層31が一層で奏する2つの作用効果、即ち、金属めっき層20の表面200に対する接着効果と、金属光沢を反映させる装飾効果とを多層構造で実現するものである。以下、相違点を中心に説明する。
【0055】
図6の実施形態において、製品は、製品本体部10と、金属めっき層20と、第1の樹脂層32と、第2の樹脂層33と、保護層40とを含む。
【0056】
第1の樹脂層32は、透明な熱硬化性樹脂と、接着成分とを含有し、金属めっき層20の表面200に接着されている。第1の樹脂層32を構成する熱硬化性樹脂、及び、接着成分は、図1乃至図5を参照して説明した樹脂層31と同じものを用いることができる。
【0057】
第2の樹脂層33は、透明な熱硬化性樹脂と、着色成分とを含有し、第1の樹脂層32の表面320に接着され、その表面330から金属めっき層20が透けてみえる。
【0058】
第2の樹脂層33を構成する熱硬化性樹脂、及び、着色成分は、図1乃至図5を参照して説明したものを用いることができる。さらに、第2の樹脂層33に用いられる樹脂は、第1の樹脂層32との重ね塗り適合性を有するもの、又は、第1の樹脂層32に接着可能なものから選択することが可能であり、好ましくは、第1の樹脂層32を構成する熱硬化性樹脂と同一、又は、同種のものを用いることできる。
【0059】
図6の実施形態によっても、図1乃至図5を参照して説明した利点を全て有することができる。さらに、図6の実施形態によると、第2の樹脂層33は、第1の樹脂層32を下地としている。この構造によると、製品本体部10の表面100、及び、金属めっき層20の表面200に傷や凹凸などの表面不良がある場合、第1の樹脂層32によって前記表面不良を解消し、解消された状態で、第1の樹脂層32の表面320に第2の樹脂層33を接着することができる。従って、製造歩留まりが向上するとともに、装飾性の向上が図られる。
【0060】
図7は本発明の更にもう一つの実施形態に係る製品の断面図である。図7において、図1乃至図6に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。図7の実施形態は、第2の樹脂層33を有している点で図1乃至図5の実施形態とは違いがある。以下、図1乃至図5の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0061】
図7の製品において、樹脂層31は、透明な熱硬化性樹脂と、接着成分と、着色成分とを含有し、金属めっき層20の表面200に接着され、好ましくは、表面310から金属めっき層20が透けてみえる。第2の樹脂層33は、透明な熱硬化性樹脂と、着色成分とを含有し、樹脂層31の表面310に接着され、その表面330から金属めっき層20の表面200、又は、樹脂層31の表面310が透けてみえる。
【0062】
第2の樹脂層33を構成する熱硬化性樹脂、及び、着色成分は、図6を参照して説明したものを用いることができる。さらに、第2の樹脂層33に用いられる樹脂は、樹脂層31との重ね塗り適合性を有するもの、又は、樹脂層31に接着可能なものから選択することが可能であり、好ましくは、樹脂層31を構成する熱硬化性樹脂と同一、又は、同種のものを用いることできる。
【0063】
樹脂層31と、第2の樹脂層33とは、互いに異なる着色成分を含み。第2の樹脂層33は、点P1から点P2に向かうに従って、徐々に層厚みが減少している。第2の樹脂層33は、スプレーガンを用いた吹付け塗装により形成することができる。
【0064】
図7の実施形態によると、樹脂層31と第2の樹脂層33との重なり合い、及び、第2の樹脂層33の層厚み減少部分により、色の段階的変化(グラデーション)を表現することが可能となる。従って、デザイン性の多様化を図ることができる。
【0065】
図8は、本発明の更にもう一つの実施形態に係る製品の断面図である。図8において、図1乃至図7に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0066】
図8の実施形態は、樹脂層31の一部に貫通部分35を有する点で、図1乃至図7の実施形態とは異なる。以下、相違点を中心に説明する。
【0067】
図8の実施形態では、樹脂層31は、金属めっき膜20の表面200(広くは製品本体部10の外面100)に接着されている領域内において、表面200に貫通する部分35を有し、貫通部分35には透明な保護層40が充填されている。この構造により、製品の表面には、表面200の金属光沢が透明な保護層40を通じて反映される領域と、表面200の金属光沢が樹脂層31による色彩を伴って反映される部分とが形成されている。従って、図8の実施形態によると、貫通部分35の平面形状を適宜形成することにより複雑微細な抜き文字、抜き模様などの装飾を施すことができる。
【0068】
図9乃至図13は、本発明の更にもう一つの実施形態に係る製品の製造方法について端部を省略して示す断面図である。図9乃至図13において、図1乃至図8に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0069】
図8に示した製品の作用効果について、さらに、製造方法の観点から説明する。まず、
金属めっき膜20の表面200(広くは製品本体部10の外面100)には、電気めっき法、又は、イオン還元めっき法により、金属めっき層20が形成されている。この金属めっき層20には、塗料を塗布する前に、予め、図3乃至図5を参照して説明したクリーニング処理が施される。
【0070】
次に、図9を参照すると、金属めっき層20の表面200に、剥離可能な塗料をスクリーン印刷により塗布し、剥離可能領域50を形成する。剥離可能塗料は、一例として、主剤と硬化剤とを混合して用いる2液混合型塗料において硬化剤(硬化要素)を含まないものや、通常使用しうる塗料にシリコーンオイルなどの剥離促進成分を混合したものを用いることができる。
【0071】
図9からは必ずしも明らかではないが、スクリーン印刷工程では、剥離可能塗料をスクリーンに入れる。スクリーンは、文字や記号、ロゴ、模様など(文字等)に対応したマスクパターンを有しており、スクリーン上の剥離可能塗料をスキージによって押し伸ばすことにより、スクリーンの下に置かれた金属めっき層20の表面200に剥離可能塗料が塗布され、マスクパターンに沿った文字等の剥離可能領域50が形成される。図9では、一例として剥離可能領域50を、アルファベットAで示している。
【0072】
図10に示す工程は、図9に示した工程のあとの工程であって、樹脂層31に用いられる塗料を、スプレーガンを用いた吹付け塗装、しごき塗装などで金属めっき層20の表面200、及び、剥離可能領域50の表面500に塗布する。この工程により、図11に示すように、金属めっき層20の表面200、及び、剥離可能領域50の表面500に、樹脂層31が形成された製造中間品が得られる。
【0073】
図12に示す工程は、図10及び図11に示した工程のあとの工程であって、次に、溶剤などでの製造中間品の表面を洗浄し、剥離可能領域50を、剥離可能領域50上に形成された樹脂層31ごと除去する。この工程により、図13に示すように、金属めっき層20に接着されている樹脂層31の領域内に、表面200に貫通し、表面200を外部に露出する貫通部分35が形成される。
【0074】
図12及び図13に示した工程のあと、図3乃至図5を参照して説明した熱処理工程、及び、保護層40の形成工程を行うことにより、図8に示した製品が得られる。
【0075】
図9乃至図13を参照して説明した製造方法によると、金属めっき層20の表面200に、マスキング等では実現不能な多種多様、且、複雑微細な抜き文字、抜き模様などの装飾を有する樹脂層31を形成することができる。しかも、マスキングシールやマスキング工賃が不要となる分だけ製造コストを低減し、製品歩留まりも向上する。従って、多種多様な装飾を安価に施すことができる。
【0076】
また、多種多様、且、複雑微細な抜き文字、抜き模様などの装飾を、スクリーン印刷技術により施すことができるから、小ロットの注文に対応することができる。これに対し、マスキングやレーザー加工により樹脂層31の一部を除去する方法では、製造コストを低減することができない。特に、マスキングの場合、マスキングシールやマスキング工賃の分だけコスト高を招くから、小ロットの注文に対応することはできない。
【0077】
図14は、本発明の更にもう一つの実施形態に係る製品について端部を省略して示す断面図である。図14において、図1乃至図13に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0078】
本発明に係るゴルフクラブ用シャフト、釣竿、歩行用ステッキ、スキー用ストック、登山用ストック、テニス用ラケット、バトミントン用ラケットから選択された何れか一種である。例えば、ゴルフクラブ用シャフトは、炭素鋼(Fe、Cの合金)で構成されたスチールシャフトと、繊維強化プラスチック(Fiber Reinforced Plastics,FRP)で構成された繊維強化プラスチック製シャフトとが知られている。また、繊維強化プラスチック製シャフトは、強化材として炭素繊維を用いたCFRP製シャフトと、強化材としてガラス繊維を用いたGFRP製シャフトとが知られている。以下、説明の都合上、CFRP製シャフト(カーボンシャフト)を例として説明するが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0079】
図14の製品は、製品本体部10と、下地層21と、樹脂層34と、保護層40とを含む。製品本体部10は、棒状である。ここで、棒状体とは、軸方向aでみた長さ寸法が、径方向dでみた最大差し渡し径寸法より大きいことを意味する程度のものである。
【0080】
製品本体部10は、カーボンシャフトが通常有すべき構成を有している。即ち、製品本体部10は、断面円形状の管状体、又は、パイプ状体であって、内部を軸方向aに貫通する中空部を有し、軸方向aの一端(グリップ側)から他端(ヘッド側)に向かって、徐々に細くなるテーパー構造の外形形状を有している。
【0081】
下地層21は、製品本体部10に耐衝撃性、耐摩耗性、耐蝕性、耐候性、装飾性を付与する観点から、製品本体部10を覆うように設けられ、外面100に接着されている。下地層21は、製品本体部10の外面100に接着可能なものから選択することが可能であり、金属材料を主成分とするものでも、合成樹脂を主成分とするものであってもよい。
【0082】
樹脂層34は、樹脂成分と、着色成分とを含有し、さらに必要に応じて接着成分を含み、下地層21の表面210に接着され、好ましくは表面210から下地層21が透けてみえる。樹脂層34を構成する樹脂成分は、下地層21の表面210に接着可能なものから選択することが可能である。樹脂層34は、層厚み寸法が好ましくは0.3mm以下、より好ましくは0.1mm以下である。
【0083】
樹脂層34を構成する接着成分は、下地層21が金属材料を主成分としているときに含有され、好ましくはイソシアネート、ブロックイソシアネート樹脂、又は、シランカップリング剤から選択された少なくとも1種類を主成分とする。シランカップリング剤は、その構造中に、エポキシ基、及び、シラン(Si)を含有するものであり、好ましくは、下記(i)、〜(v)から選択される。
(i)3−アミノプロピルトリエトキシシラン
(ii)3−アミノプロピルトリメトキシシラン
(iii)N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
(iv)N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン
(v)3−(N−フェニル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン
本発明において、接着とは、製品の通常使用できるとされる期間内に剥離することがない性質を指す。本発明において、接着成分とは、それ単独で接着効果を有するものを指し、接着促進剤等の補助的な接着剤は含まない。
【0084】
樹脂層34を構成する樹脂成分は、通常使用されているものから選択することができ、特に限定するものではない。もっとも、下地層21が金属材料を主成分としている場合にあっては、樹脂層34を構成する樹脂成分は、接着成分を混合し得るものであって、メラミン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ系樹脂、又は、ウレタン樹脂等から選択された少なくても1種類である。
【0085】
樹脂層34を構成する着色成分は、染料、又は、顔料を主成分とし、15wt%以下の割合で混合されている。着色成分は、通常使用されているものから選択することができ、特に限定するものではない。一例として、酸化チタン、有機赤色系顔料、硫酸バリウム、カーボンブラックを挙げることができる。着色成分の含有率は、着色成分によって表そうとしている色調に応じて調節することができる。
【0086】
再び、図14を参照して説明する。樹脂層34は、合成樹脂を主成分とし、下地層21の表面210(広くは製品本体部10の外面100)に接着されている領域内において、表面210に貫通する部分35を有し、貫通する部分35から下地層21が透けてみえる。
【0087】
さらに樹脂層34の表面340には、透明な合成樹脂材料を用いて保護層40が形成されている。保護層40に用いられる樹脂は、樹脂層34との重ね塗り適合性を有するもの、又は、樹脂層31に接着可能なものから選択することが可能であり、好ましくは、樹脂層31を構成する合成樹脂材料と同一、又は、同種のものを用いることできる。保護層40は、耐衝撃性、耐摩耗性、耐蝕性、耐候性など(耐久性)を確保するものであり、樹脂層34よりも高硬度とすることができる。
【0088】
保護層40は、樹脂層34、下地層21、及び、製品本体部10への耐久性を確保するために形成される。図14では、説明の都合上、保護層40を一層のものとして表現しているが、必ずしもこれに限定されるものではない。保護層40は、その目的によって組成を調節することができる。具体的に、樹脂層34に透明な保護層40を形成する場合、この層によって、樹脂層34の剥離や色の変色、不正移動が防止される。また、樹脂層34とは異なる色調の着色成分を有する保護層40を接着することにより、多様な色を表現することができる。
【0089】
図14の実施形態では、樹脂層34は、製品本体部10の外面100に接着されている領域内において、製品本体部10の外面100に貫通する部分35を有し、貫通部分35に透明な保護層40が充填されている。この構造により、製品の表面には、下地層21の表面210の金属光沢や色彩が透明な保護層40を通じて反映される領域と、下地層21の表面210の金属光沢や色彩が樹脂層34による色彩を伴って反映される部分とが形成されている。
【0090】
図14の実施形態によると、貫通部分35を適宜形成することにより複雑微細な抜き文字、抜き模様などの装飾を施すことができる。
【0091】
図15乃至図19は、本発明の更にもう一つの実施形態に係る製品の製造方法について端部を省略して示す断面図である。図15乃至図19において、図1乃至図14に示した構成部分と同一の構成部分には、同一の参照符号を付す。
【0092】
図14に示した製品の作用効果について、さらに、製造方法の観点から説明する。まず、製品本体部10の外面100には、下地層21が形成されている。この下地層21には、塗装を行う前に、予め、クリーニング処理が施される。具体的にクリーニング処理は、洗浄工程と、脱脂工程とを含み、洗浄工程では中性洗剤を用いて下地層21の表面(210)に付着した塵埃や汚れを除去する。さらに、脱脂工程では、洗浄工程により表面の塵埃等が除去された下地層21について、さらにナフサを染み込ませたウエスによって下地層21に付着している油脂性の汚れを除去する。
【0093】
次に、図15を参照すると、下地層21の表面210に、剥離可能な塗料をスクリーン印刷により塗布し、剥離可能領域50を形成する。剥離可能塗料は、一例として、主剤と硬化剤とを混合して用いる2液混合型塗料において硬化剤(硬化要素)を含まないものや、通常使用しうる塗料にシリコーンオイルなどの剥離促進成分を混合したものを用いることができる。
【0094】
図15からは必ずしも明らかではないが、スクリーン印刷工程では、剥離可能塗料をスクリーンに入れる。スクリーンは、文字や記号、ロゴ、模様など(文字等)に対応したマスクパターンを有しており、スクリーン上の剥離可能塗料をスキージによって押し伸ばすことにより、スクリーンの下に置かれた下地層21の表面210に剥離可能塗料が塗布され、マスクパターンに沿った文字等の剥離可能領域50が形成される。
【0095】
図16に示す工程は、図15に示した工程のあとの工程であって、樹脂層34に用いられる塗料を、スプレーガンを用いた吹付け塗装、しごき塗装などで下地層21の表面210、及び、剥離可能領域50の表面500に塗布する。この工程により、図17に示すように、下地層21の表面210、及び、剥離可能領域50の表面500に、樹脂層34が形成された製造中間品が得られる。
【0096】
図18に示す工程は、図16及び図17に示した工程のあとの工程であって、次に、溶剤などでの製造中間品の表面を洗浄し、剥離可能領域50を、剥離可能領域50上に形成された樹脂層34ごと除去する。この工程により、図19に示すように、下地層21の表面210に接着されている樹脂層34の領域内に、表面210に貫通し、表面210を外部に露出する貫通部分35が形成される。
【0097】
図18及び図19に示した工程のあと、樹脂層34の乾燥工程(熱処理工程)、及び、保護層40の形成工程を行うことにより、図14に示した製品が得られる。
【0098】
図15乃至図19を参照して説明した製造方法によると、下地層21の表面210に、マスキング等では実現不能な多種多様、且、複雑微細な抜き文字、抜き模様などの装飾を有する樹脂層34を形成することができる。しかも、マスキングシールやマスキング工賃が不要となる分だけ製造コストを低減し、製品歩留まりも向上する。従って、多種多様な装飾を安価に施すことができる。
【0099】
さらに、また、多種多様、且、複雑微細な抜き文字、抜き模様などの装飾を、スクリーン印刷技術により施すことができるから、小ロットの注文に対応することができる。
【0100】
これに対し、マスキングやレーザー加工により樹脂層34の一部を除去する方法では、製造コストを低減することができない。特に、マスキングの場合、マスキングシールやマスキング工賃の分だけコスト高を招くから、小ロットの注文に対応することはできない。
【0101】
以上、好ましい実施例を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種種の変形態様を採り得ることは自明である。
【符号の説明】
【0102】
10 製品本体部
20 金属めっき層
31〜34 着色層
40 保護層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品本体部と、金属めっき層と、樹脂層とを含む製品であって、
前記製品本体部は、金属材料を主成分とする棒状体であり、
前記金属めっき層は、表面に金属光沢を有し、前記製品本体部の外面を覆っており、
前記樹脂層は、熱硬化性樹脂と、接着成分とを含有し、前記金属めっき層の前記表面に接着され、その表面から前記金属めっき層が透けてみえる、
製品。
【請求項2】
請求項1に記載された製品であって、さらに前記樹脂層は、着色成分を含有している、
製品。
【請求項3】
製品本体部と、金属めっき層と、第1の樹脂層と、第2の樹脂層とを含む製品であって、
前記製品本体部は、金属材料を主成分とする棒状体であり、
前記金属めっき層は、表面に金属光沢を有し、前記製品本体部の外面を覆っており、
前記第1の樹脂層は、熱硬化性樹脂と、接着成分とを含有し、前記金属めっき層の前記表面に接着されており、
前記第2の樹脂層は、熱硬化性樹脂と、着色成分とを含有し、前記第1の樹脂層の表面に接着され、その表面から前記金属めっき層が透けてみえる、
製品。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れかに記載された製品であって、ゴルフクラブ用シャフト、釣竿、歩行用ステッキ、スキー用ストック、登山用ストック、テニス用ラケット、バトミントン用ラケットから選択された何れか一種である、
製品。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載された製品を製造する方法であって、
まず、前記製品本体部の表面に、電気めっき法、又は、イオン還元めっき法により、前記金属めっき層を形成し、
次に、熱硬化性樹脂と、接着成分とを含有する塗料を、前記金属めっき層の前記表面に塗布し、
次に、前記製品本体部を熱処理し、前記塗料を硬化させる、
工程を含む製造方法。
【請求項6】
製品本体部と、樹脂層とを含む製品であって、
前記製品本体部は、棒状であって、金属材料、又は、繊維強化プラスチックの何れかを主成分とし、
前記樹脂層は、樹脂成分と、着色成分とを含有し、前記製品本体部の表面に接着されている領域内において、前記製品本体部の表面に貫通する部分を有している、
製品。
【請求項7】
請求項6に記載された製品であって、ゴルフクラブ用シャフト、釣竿、歩行用ステッキ、スキー用ストック、登山用ストック、テニス用ラケット、バトミントン用ラケットから選択された何れか一種である、
製品。
【請求項8】
請求項6又は7に記載された製品を製造する方法であって、
まず、剥離可能な塗料を、スクリーン印刷によって、前記製品本体部の表面に印刷し、前記製品本体部の前記表面にマスクパターンに沿った剥離可能領域を形成し、
次に、樹脂成分と、着色成分とを含有する樹脂塗料を、前記製品本体部の表面、及び、前記剥離可能領域の表面に塗布し、
次に、前記剥離可能領域、及び、前記剥離可能領域上に塗布された前記樹脂塗料を除去する、
工程を含む製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2010−253035(P2010−253035A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−106561(P2009−106561)
【出願日】平成21年4月24日(2009.4.24)
【出願人】(509119393)岩城フィルム化工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】