説明

複合コイルとその製造方法

【課題】イメージ周波数を抑制する回路を有する高周波同調回路を簡素化し、セットの無調整化を図ると共に小型化、低価格化した複合コイルとその製造方法を提供する。
【解決手段】金属ケース、螺子コア、複数の外部接続端子を植設し、複数の巻線溝を有するボビンと、回路部を形成する回路基板と、を一体構造にした高周波同調回路を形成する複合コイルにおいて、入力コイル、同調コイル、出力コイルの巻線を該ボビンの所定の巻線溝に巻回し、各々の巻線端末を所定の該接続端子に接続し、高周波同調回路を構成する電子部品を搭載した回路基板をボビンの外部接続端子に取り付け、入力コイル、出力コイル、同調コイルが次の式からなる関係になるように磁気的に結合されたことを特徴とする。 K1・K2/K3<1 但し、K1は同調コイルと入力コイルの結合係数、K2は同調コイルと出力コイルの結合係数、K3は入力コイルと出力コイルの結合係数。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、日本、米国、欧州のFM受信機及び特定小電力通信機に用いられる同調回路に関し、特にイメージ信号を抑圧するイメージトラップを備えた高周波同調回路の複合トランスとその製造方法に関する。

【背景技術】
【0002】
図4は一般的なFMラジオ受信機のフロントエンド回路を示す回路図である。
このフロントエンド回路は、アンテナ同調回路21とRF同調回路22からなる高周波同調回路を具え、RF増幅回路22、局部発振回路24、およびミキサー回路25を備える。アンテナ同調回路21は、同調コイルl9、カソードが共通に接続された一対の可変容量ダイオードD13、D14及び容量素子C11を備える。また、RF同調回路23は、同調コイルL10、カソードが共通に接続された1対の可変容量ダイオードD15、D16及び容量素子C12を備える。局部発振同調回路(OSC)24は、発振コイル、カソードが共通に接続された1対の可変容量ダイオード及び容量素子を備える(図示せず)。可変容量ダイオードは同じ電圧対容量特性のものが用いられる。そして、アンテナ同調回路、RF同調回路、局部発振回路の1対の可変容量ダイオードに電圧源Vtから共通の同調電圧が加えられる電子同調回路である。
【0003】
この種のスーパヘテロダイン方式のFMラジオ受信機は、受信希望波の信号を中間周波数と呼ばれる周波数に変換した後、検波・復調される。この中間周波数は、通常、10.7MHzが使用される。希望波の信号は、希望波の信号の周波数(すなわち受信周波数)から常に10.7MHz離れた周波数で局部発振回路を発振させ、この局部発振回路の発振周波数と受信周波数とのビート成分で10.7MHzの信号を作りだすことにより中間周波数に変換される。
【0004】
この時、局部発振回路を受信周波数よりも10.7MHz高い周波数で発振させて希望波の信号が中間周波数に変換される場合、上側ヘテロダイン方式と呼ばれ、逆に局部発振回路を受信周波数よりも10.7MHz低い周波数で発振させて希望波の信号が中間周波数に変換される場合、下側ヘテロダイン方式と呼ばれる。FMラジオ受信機を上側ヘテロダイン方式にするか又は、下側ヘテロダイン方式にするかは、それぞれの国によって設定されるFMラジオ放送への周波数割当てと、イメージ周波数における妨害信号の状況によって決定される。
【0005】
スーパヘテロダイン方式のFMラジオ受信機は、局部発振回路の発振周波数を中心にして受信周波数と反対側に10.7MHz離れた周波数(受信周波数から21.4MHz離れた周波数)、すなわちイメージ周波数に妨害信号がある場合、この妨害信号によってイメージ信号妨害が発生する。日本の場合、FMラジオ放送の周波数割当ては76〜90MHzであるが、FMラジオ放送の周波数帯より21.4MHz高い周波数にはテレビ放送の2チャンネルが割り当てられている。また、米国の場合、FMラジオ放送の周波数割当ては88〜108MHzであるが、FMラジオ放送の周波数帯より21.4MHz低い周波数にはテレビ放送の4〜6チャンネルが割り当てられている。従って、これらのテレビ放送の、電界強度が強い信号によるイメージ信号妨害を避けるため、日本では下側ヘテロダイン方式が、米国や西欧では上側ヘテロダイン方式が採用されている。(特許文献1)
【0006】
スーパーヘテロダイン方式のFMラジオ受信機におけるイメージ信号を抑圧するためには、高周波同調フィルタの段数を増設したり、その同調コイルが反共振点を有するように構成したり、さらにイメージ信号用のトラップ回路を別に設けるなどの手法が従来用いられている。
しかし、同調フィルタの段数の増設は同調フィルタを構成するコイル、可変容量素子の数が増すので価格が高くなるばかりでなく、段数の増設による回路の調整も複雑になる。
【0007】
同調フィルタを並列共振回路で構成してコイルに反共振点をもたせる場合には、タップの位置やコイルの結合係数の調節が難しく、回路設計上の自由度が制限されるので望ましくない。また、反共振点と共振点の周波数の位置関係は固定されているので、特定の受信周波数に対応するイメージ信号は抑圧されても、受信周波数の変化と共にイメージ信号の周波数が移動すると効果がないばかりか、反共振点をすぎた周波数では反共振点を設けたことにより、あたかも跳ね返りが生ずるように信号の減衰量は急激に少なくなり、かえってイメージ信号の抑圧状態が悪くなることが多い。トラップ回路も特定のイメージ信号しか抑圧できない。
【0008】
そこで、図5に示すように、入力コイルL1と出力コイルL2及び容量素子が並列に接続された同調コイルL3を設け、図5の(b)に示すように同調周波数F0よりも高い周波数F1に減衰局を設けるための結合方法として、図5(a)に示すように、同調コイルL3と入力コイルL1の結合係数をK1、同調コイルL3と出力コイルL2の結合係数をK2、入力コイルL1と出力コイルL2の結合係数をK3とすると、K1・K2/K3<1になるように設定することにより、受信周波数の変化と共にイメージ周波数信号の周波数を移動させることができる(特許文献2)。
【0009】
このように形成された同調回路は、入力端子INから入力コイルL1に信号が入力され、同調コイルL3と可変コンデンサCoが並列に接続された並列回路の同調周波数の信号が選択される。この入力コイルL1に入力された信号は、同調コイルL3を介して出力コイルL2に伝達されると共に、同調コイルL3を介することなく出力コイルL2に伝達される。そして、この出力コイルL2に伝達された信号が、出力端子OUTから出力される。この同調回路は、結合係数K1、結合係数K2、結合係数K3がK1・K2/K3<1になる様に設定されているので、図5(b)に示される様に、同調コイルL1と可変コンデンサCoの並列回路によって受信周波数F0 の信号に同調し、同調コイルL3を介して出力コイルL2に伝達される信号レベルと、同調コイルL3を介することなく出力コイルL2に伝達される信号レベルが等しく、かつその位相が180°反転した周波数F1 に減衰極が形成される。
【0010】
この同調回路は、受信周波数近傍の不要な信号の周波数に減衰極が形成される様に結合係数K1、結合係数K2、結合係数K3の値が設定される。この減衰極が形成される周波数は、同調コイルと可変コンデンサが並列に接続された並列回路の同調周波数と所定の比をもっており、受信周波数に応じてこの同調周波数を変化させた場合もこの比を保って同調周波数に追従する。
【特許文献1】特開2000−156648号
【特許文献2】特許第3118411号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、イメージ周波数を抑制する回路を有する高周波同調回路を簡素化し、セットの無調整化を図ると共に小型化、低価格化した複合コイルとその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の複合コイルは、金属ケース、螺子コア、複数の外部接続端子を植設し、複数の巻線溝を有するボビンと、回路部を形成する回路基板と、を一体構造にした高周波同調回路を形成する複合コイルにおいて、入力コイル、同調コイル、出力コイルの巻線を該ボビンの所定の巻線溝に巻回し、各々の巻線端末を所定の該接続端子に接続し、高周波同調回路を構成する電子部品を搭載した該回路基板を該ボビンの外部接続端子に取り付け、
該入力コイル、該出力コイル、該同調コイルが次の式からなる関係になるように磁気的に結合されたことを特徴とする。
K1・K2/K3<1
但し、K1は同調コイルと入力コイルの結合係数、K2は同調コイルと出力コイルの結合係数、K3は入力コイルと出力コイルの結合係数。
【0013】
本発明の複合コイルの製造方法は、複数の巻線溝を有するボビンに、入力コイル、出力コイル、同調コイルの巻線を所定の巻数を所定の巻線溝に巻回し、各該コイルの巻線端末を所定の外部端子に接続し、該ボビンに螺子コアを螺合し、金属ケースを被せたコイル部を作成する工程、
予め設計段階で容量可変比が得られるように設定された可変容量ダイオードの容量値のランクとそれに応じた固定コンデンサを選択、パターンが形成された回路基板に高周波同調回路を構成する可変容量ダイオード、固定コンデンサ、バイアス抵抗を搭載する回路部を作成する工程、
該コイル部と該回路部を組み合わせる工程、
同調電圧で最適出力となるように該同調コイルの螺子コアを回してインダクタンスを調整する工程、とからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の複合コイルは、入力コイル、同調コイル、出力コイルを一つのボビンに設け、各コイル間の結合係数を所定の条件にすることによって、イメージ周波数の抑圧を具えた同調回路が形成でき、高周波同調回路の部品点数を削減し簡素化、ローコストかが可能となる。また、高周波同調回路の回路部を形成した回路基板をボビンに具えた外部接続端子に取り付け一体構造とすることで実装面積の低減および複合コイルのボビンに螺合する螺子コアで調整できることから調整が容易になる。また、受信機に取り付けた場合でもセットでの調整を必要とせず、金属ケースを使用していることから周囲回路の影響を少なくでき、回路間の干渉や回路素子の配置に制約の少ない複合コイルを提供することができる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の複合コイルの実施例を図1から図3を用いて説明する。
図1は、本発明の複合コイルを用いた高周波同調回路である。図2は、本発明の複合コイル。図3は、複合コイルにおけるコイル部を説明するための巻線仕様を示す。
【0016】
図1に示すように、本発明の複合コイルを用いた高周波同調回路は、出力側に混合回路を有する機能を具えた集積回路(IC)を用いた回路である。
1はアンテナに接続する入力端子、L1は入力コイル、L2は同調コイル、L3は出力コイル、D1,D2は可変容量素子である一対の可変容量ダイオード、C1は固定コンデンサ、R1はバイアス抵抗、2は混合回路(MIX)およびチューニング電圧(Vt:同調電圧)を供給する集積回路(IC)、6はコイルのインダクタンスを可変する可変用螺子コアである。点線部3が本発明の複合コイルに相当する部分である。なお、丸数字1〜6(以下、丸数字は数字の前に#記号を用いて記載する:例えば、#1)は複合コイルの外部接続端子を示す。
【0017】
このように形成された高周波同調回路は、アンテナからの入力端子1から入力コイルL1に信号が入力され、同調コイルL3と、カソードを共通端子として直列に接続された1対の同じ容量を持った可変容量ダイオードD1,D2と固定コンデンサC1とを並列に接続された並列回路により同調周波数が選択される。この入力コイルL1に入力された信号は、同調コイルL3を介して出力コイルL2に伝達されると共に、同調コイルL3を介することなく出力コイルL2に伝達される。
【0018】
そして、この出力コイルL2に伝達された信号が集積回路2の混合回路であるMIX端子に出力される。この同調回路は、結合係数K1、結合係数K2、結合係数K3がK1・K2/K3<1になるように設定されているので、図5(b)に示されるように、同調コイルL3とカソードを共通端子として直列に接続された1対の可変容量ダイオードD1、D2と固定コンデンサとの並列回路によって受信周波数Foの信号に同調し、同調コイルL3を介して出力コイルL2に伝達される信号レベルと、同調コイルL3を介することなく出力コイルL2に伝達される信号レベルが等しく、かつ、その位相が180°反転した周波数F1に減衰極が形成される。可変容量ダイオードD1、D2は、カソードが接続され、その接続点にバイアス抵抗R1を経て集積回路2のVt端子からチューニング電圧(同調電圧)が加えられる。
【0019】
受信周波数近傍の不要な信号(イメージ信号)の周波数に減衰極が形成されるように結合係数K1、結合係数K2、結合係数K3の値を設定する。この減衰極が形成される周波数は、同調コイルL3とカソードを共通端子として直列に接続された1対の可変容量ダイオードD1,D2と固定コンデンサC1とが並列に接続された並列回路の同調周波数と所定の比をもっており、受信周波数に応じてこの同調周波数を変化させた場合もこの比を保って同調周波数に追従する。この高周波同調回路を例えば、US、EUバンドのFM受信機に用いると、受信帯域(88MHz〜108MHz)の中央付近の受信周波数100MHzの信号を受信した時、イメージ信号の周波数は121.4MHz(受信周波数100MHz+2倍の中間周波数21.4MHz)に設定することによりイメージ信号を減衰することができる。
【0020】
また、複合コイルにインダクタンスを可変させる可変用螺子コア6を調整することにより、集積回路2からのチューニング電圧Vtに合わせた同調回路を形成することができる。さらに、受信帯域に必要な容量可変比を得るためには、一対の同じ容量値を持った可変容量ダイオードD1、D2の容量を区分してランクを決めておき、そのランクに応じた固定コンデンサC1との組み合わせを予め実験段階または設計段階で設定することが望ましい。
【0021】
こうすることにより、バラツキの大きい可変容量ダイオードの一部の容量範囲のものだけでなく幅広いランクの容量を用いることができ、部品コストの削減を図ることができる。これらの調整は複合コイルのみでできることから、無調整部品としてセットでの再調整を必要としない。また、後に述べるように、複合コイルはケースに金属製のシールド効果をもたせた金属ケースであり外部からの影響を受けず、回路間の干渉や回路素子の配置にも制約が少ない。
【0022】
次に、本発明の一実施例である複合コイルについて、図2、図3を用いて詳細に説明する。図2は、本発明の複合コイルの斜視図(a)、外付け基板の斜視図(b)および回路構成図(c)である。
【0023】
図2(c)に示すように、複合コイル3は、コイル部と回路部とから形成されており、コイル部は、内部に入力コイルL1、同調コイルL3、出力コイルL2を形成する巻線溝を備えたボビン5と、インダクタンスを変化させるフェライトコアから成る可変用螺子コア6と、スペーサ9と、外周を覆う金属ケース7の構成である。
回路部は、図2(b)に示すように、一方の面に回路を形成する面実装用電子部品である同じ容量を一対に構成したチップ型可変容量ダイオード11(東光製 型名KV1735)、チップ型固定コンデンサC1、チップ型バイアス抵抗R1を装着するとともに回路パターンが形成された回路基板10からなる。なお、回路基板10は両面基板を用いても良いが、回路的に複雑でないので価格の安い片面基板を用いてもよい。また、接続用端子孔8aはスルーホールを用いてもよく、価格の安い片面パターンでもよい。
図1に示すように、この複合コイル3の外部接続は、接続端子#2をアンテナに接続し、接続端子#1をアース端子(グランド)に接続し、接続端子#4、#5を集積回路2の混合回路のMIX端子に接続し、接続端子#6をチューニング電圧端子Vtに接続する。なお、接続端子#3は空き端子としてもよく、ゲインコントロールとして用いてもよく、米国等によるWEATHER BANDの切替えに用いてもよい。
【0024】
図2(a)の斜視図に示すように、複合コイル3は、底面側に複数の外部接続端子8を備え、接続端子8には、回路基板10に設けた接続端子用孔8aに接続端子8を通してボビン5底面に配置し、半田等により電気的に接続する。
【0025】
図3は、複合コイルにおけるコイル部を説明するための巻線仕様(a)とその部分断面図(b)を示す。
【0026】
コイル部は複数の巻き溝v、w、x、y、z、複数の鍔5bを備え、巻線軸中心に螺合する螺子コア6を装着する凹部5aを設け、底面には外部回路と接続する接続端子8を備えた絶縁性の樹脂ボビン5からなる。ボビン5の外周は金属ケース7で覆われている。ボビンの鍔の外周と金属ケース7の間にはリング状のスペーサ9が設けられ、インダクタンスを大きくしたいときには磁性粉をリング状に成型したリングコアーや磁性粉を樹脂に混合してリング状に成型したものを用いてもよく、また、インダクタンスが小さくてよい場合は樹脂をリング状に成型したものを用いてもよい。
【0027】
例えば、実施例として、入力コイルL1を巻き溝yに巻回し、その巻線の端末は接続端子#2と#1にからげて接続する。同調コイルL3を巻き溝y、zに均等に巻回し、その巻線の端末は接続端子#3と#1にからげて接続する。出力コイルL2を巻き溝v、w、xに均等に巻回し、その巻線の端末は接続端子#5と#4にからげて接続する。各接続端子にからげられた巻線端末は半田層による浸積半田等により電気的に接続する。
複合コイルの接続端子を除く外形寸法を縦、横7mm、高さ10mmにおいて、L1の巻数は1ターン、L2の巻数は4ターン、L3の巻数は6ターン、スペーサ9には樹脂製のリングを用いた。その結果、結合係数K1=0.455、K2=0.455、K3=0.7が得られた。
【0028】
ここで、特許文献2(特許第3118411号)の図4に示されている、各コイル間の結合係数と減衰極の周波数の相対的な位置関係をみると、以下のことが判ります。
特許文献2の図4は、横軸にK2とK3の比、縦軸に同調周波数F0と減衰極の周波数F1の比(F1/F0)をとった表である。
このような同調回路において、同調周波数F0よりも高い周波数に減衰極を設けることは、F1/F0が1より大きい有限値をとることである。従って、減衰極を設ける条件は、K1・K2/K3<1に従うことである。ここで、減衰極F1は、K1を小さくすることにより同調周波数F0から離れた位置に設けられ。さらに、K2/K3を大きくすることにより同調周波数F0から離れた位置に減衰極F1を設けられる。
【0029】
特許文献2の図4の表から、本願発明の実施例における減衰極の周波数を確認をする。
条件として、代表値の受信周波数である同調周波数F0は100MHz、イメージ周波数である減衰極F1は121.4MHz(100MHz+21.4MHz)である。そして、実施例の結合係数は、K1=0.455、K2=0.455、K3=0.7であり、K2/K3=0.65である。
この値より、特許文献2の図4より、F1/F0の値はおよそ1.2となります。
また、同調周波数F0と減衰極F1の比を計算しますと、F1/F0=1.214(121.4MHz/100MHz)となり、実施例におけるF1/F0とほぼ一致することが判ります。
このように、入力コイルL1、同調コイルL3、出力コイルL2の巻数とボビンの巻線溝は結合係数K1、K2、K3の条件がK1・K2/K3<1を満足するように予め設定することにより受信周波数に対するイメージ周波数が抑制された同調回路が得られる。
【0030】
次に、図2、図3を用いて本発明の複合コイルの製造方法について説明する。
【0031】
本発明の複合コイルの製造方法は、
1)コイル部を形成する第1の工程
入力コイルL1、同調コイルL2、出力コイルL3をボビンの所定の巻き数を指定の巻き溝に巻回し、指定の接続端子にからげる、からげ部を浸積半田等により電気的に接続する。ボビンに螺子コアを挿入、スペーサを装着、金属ケースを被せる。
2)回路部を形成する第2の工程
予め設計段階で設定された可変容量ダイオードD1,D2のランクに応じた固定コンデンサC1を選択、予め回路パターンが形成された回路基板に回路素子である可変容量ダイオードD1,D2、固定コンデンサC1、バイアス抵抗R1を搭載しリフロー半田等で電気的に接続する。
3)コイル部と回路部を組み合わせる第3の工程
回路基板の取付孔8aにコイル部の接続端子8を通してボビン底面部に配置して接続端子と回路基板のパターンを電気的に接続する。
4)複合コイルの調整
指定の集積回路を用いた調整治具により、チューニング電圧を複合コイルの接続端子#6に印可し、螺子コアを回して調整、適正な同調回路の出力を得る。
このように、本発明の複合コイルはアンテナ同調回路、RF同調回路、イメージ周波数を抑圧する回路を設けた一体構成としたもので、従来の高周波増幅回路と比較し構成部品を削減することができ小型で安価な複合コイルである。また、受信機における回路基板上の再調整は必要としない無調整化を実現、調整コストの削減をすることができる。
【0032】
以上、本発明の複合コイルおよび複合コイルの製造方法の実施例を述べたが、これらの実施例に限られるものではない。例えば、入力コイルと出力コイルは、それぞれ同調コイルに形成されたタップにより引き出して構成してもよい。また、実施例では入力コイル、出力コイルの巻き溝(y、z)の上側に同調コイルの巻き溝(v、w、x)を設けたが、入力コイル、出力コイルを上側の巻き溝(v、w)を用い、下側(接続端子側)の巻き溝(x、y、z)に同調コイルの巻線を巻回してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の複合コイルを用いた高周波同調回路。
【図2】本発明の複合コイルの斜視図(a)と回路基板の斜視図(b)と回路接続図(c)。
【図3】本発明の複合コイルの巻線仕様(a)とその断面図(b)。
【図4】従来のFM受信機の高周波回路図。
【図5】従来のイメージ周波数を抑圧する同調回路。
【符号の説明】
【0034】
1 入力端子
2 集積回路(IC)
3 複合コイル
6 螺子コア
7 金属ケース
8 接続端子
9 スペーサ
10 回路基板
11 一対の可変容量ダイオード
L1 入力コイル
L2 出力コイル
L3 同調コイル
D1、D2 可変容量ダイオード
C1 固定コンデンサ
R1 バイアス抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属ケース、螺子コア、複数の外部接続端子を植設し、複数の巻線溝を有するボビンと、回路部を形成する回路基板と、を一体構造にした高周波同調回路を形成する複合コイルにおいて、
入力コイル、同調コイル、出力コイルの巻線を該ボビンの所定の巻線溝に巻回し、各々の巻線端末を所定の該接続端子に接続し、高周波同調回路を構成する電子部品を搭載した該回路基板を該ボビンの外部接続端子に取り付け、
該入力コイル、該出力コイル、該同調コイルが次の式からなる関係になるように磁気的に結合されたことを特徴とする複合コイル。
K1・K2/K3<1
但し、K1は同調コイルと入力コイルの結合係数、K2は同調コイルと出力コイルの結合係数、K3は入力コイルと出力コイルの結合係数。
【請求項2】
金属ケース、螺子コア、複数の外部接続端子を植設し、複数の巻線溝を有するボビンと、回路部を形成する回路基板と、を一体構造にした高周波同調回路を形成する複合コイルにおいて、
入力コイル、同調コイル、出力コイルの巻線を該ボビンの所定の巻線溝に巻回し、各々の巻線端末を所定の該接続端子に接続し、同調コイルと並列に接続するカソードを共通端子として直列に接続された1対の可変容量ダイオードと固定コンデンサ、該1対の可変容量ダイオードの共通端子と接続するバイアス抵抗を搭載した該回路基板を該ボビンの外部接続端子に取り付け、
該入力コイル、該出力コイル、該同調コイルが次の式からなる関係になるように磁気的に結合されたことを特徴とする複合コイル。
K1・K2/K3<1
但し、K1は同調コイルと入力コイルの結合係数、K2は同調コイルと出力コイルの結合係数、K3は入力コイルと出力コイルの結合係数。
【請求項3】
前期カソードを共通端子として直列に接続された1対の可変容量ダイオードと前期固定コンデンサは、容量可変比が得られるように該可変容量ダイオードの容量値のランクを設け、該可変容量ダイオードの容量値のランクに応じた固定コンデンサの容量を予め設定されたことを特徴とする請求項2記載の複合コイル。
【請求項4】
複数の巻線溝を有するボビンに、入力コイル、出力コイル、同調コイルの巻線を所定の巻数を所定の巻線溝に巻回し、各該コイルの巻線端末を所定の外部端子に接続し、該ボビンに螺子コアを螺合し、金属ケースを被せたコイル部を作成する工程、
予め設計段階で容量可変比が得られるように設定された可変容量ダイオードの容量値のランクとそれに応じた固定コンデンサを選択、パターンが形成された回路基板に高周波同調回路を構成する可変容量ダイオード、固定コンデンサ、バイアス抵抗を搭載する回路部を作成する工程、
該コイル部と該回路部を組み合わせる工程、
同調電圧で最適出力となるように該同調コイルの螺子コアを回してインダクタンスを調整する工程、とからなることを特徴とする複合コイルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−237437(P2006−237437A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52564(P2005−52564)
【出願日】平成17年2月28日(2005.2.28)
【出願人】(000003089)東光株式会社 (243)
【Fターム(参考)】