説明

複合型センサ

【課題】受動型センサに対するマスク画策行為を確実に検知する。
【解決手段】複合型センサ2は、入力画像を取得する撮像部11と人体の有無を検出する受動型センサ12とから構成され、撮像部11近傍と受動型センサ12近傍のそれぞれに照度センサ13,14が設けられる。複合型センサ2に内蔵の制御部17は、受動型センサ12近傍の照度センサ13の照度変化が所定以上であり、撮像部11近傍の照度センサ14の照度変化が所定未満の場合に、受動型センサ12に隠蔽行為がなされたと判定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力画像を取得する撮像部(カメラ)と人体を検出する受動型センサとから構成される複合型センサに関し、特に受動型センサに対するマスク画策行為を確実に検知可能とする複合型センサに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、監視領域への侵入者の有無を検知する検知装置として画像センサを用いたものが知られているが、より信頼性を高めるべく、例えば下記特許文献1に開示されるような画像センサと他の受動型センサとを併用した複合型の検知装置が提案されている。この複合型の検知装置には、例えば受動型センサとしてPIR(Passive Infrared Ray)センサを用い、このPIRセンサと画像センサとを併用し、画像センサとPIRセンサとのどちらか一方で人体検知した場合に侵入者ありとして異常発報するものや、画像センサとPIRセンサとの双方で人体検知した場合に侵入者ありとして異常発報するものがある。
【0003】
また、検知装置として、受動型センサにて監視領域内への侵入者を検知すると、それ以後(又は前後)の画像を記録又は遠隔監視センタにて表示可能とさせるものもある。
【0004】
さらに、この種の検知装置には、例えば下記特許文献2に開示されるように、不正行為者がカメラにスプレーを吹き付けたりカバーをかぶせて撮像できないようする行為(本発明ではこれを画策行為と呼ぶ)を検知する機能を持たせているものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−151657号公報
【特許文献2】特開2001−218189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述した特許文献2の検知装置では、カメラ部分に対する画策行為は入力画像から検出可能であるが、上述した画像センサとPIRセンサを併用した複合型のセンサに対しては、監視領域の警備が解除中に悪意者によりPIRセンサ部分にだけカバーして、全体的な性能を低減させようとする行為を検出することができない。
【0007】
そこで、本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、画像センサと受動型センサより成る複合型センサに関し、特に受動型センサに対する画策行為を確実に検出することができる複合型センサを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本願請求項1に係る複合型センサは、入力画像を取得する撮像部と人体の有無を検出する受動型センサとから構成される複合型センサであって、
前記撮像部近傍と前記受動型センサ近傍のそれぞれに照度センサが設けられ、
前記受動型センサ近傍の照度センサの照度変化が所定以上であり、前記撮像部近傍の照度センサの照度変化が所定未満の場合に、前記受動型センサに隠蔽行為がなされたと判定する制御部を備えたことを特徴とする。
【0009】
本願請求項2に係る複合型センサは、請求項1の複合型センサにおいて、
前記制御部は、前記撮像部から入力した入力画像から移動物体を検出する画像処理手段と、
前記移動物体が有する人体特徴度合いと前記受動型センサの出力結果から監視領域への侵入者の有無を判定する統合判定手段とを有することを特徴とする。
【0010】
本願請求項3に係る複合型センサは、請求項1の複合型センサにおいて、
前記制御部は、前記受動型センサの出力の有無に応じて前記撮像部から入力される入力画像を記憶するか否かを判定することを特徴とする。
【0011】
本願請求項4に係る複合型センサは、請求項1乃至3の何れかの複合型センサにおいて、
前記制御部は、前記監視領域を照らす照明部を、前記入力画像を処理した昼間/夜間判定結果に基づいて制御する照明制御手段を有し、
前記照明制御手段は、夜間から昼間に切り替わったとき、前記受動型センサ近傍の照度センサの照度が所定未満の場合は所定時間経過後に前記照明部を消灯させ、
前記受動型センサ近傍の照度センサの照度が所定以上である場合には、前記所定時間の経過前でも、前記照明部を消灯させるように制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る複合型センサによれば、入力画像を取得する撮像部と人体を検出する受動型センサのそれぞれの近傍に照度センサを設け、受動型センサ近傍の照度センサの照度に変化があり、撮像部近傍の照度センサの照度に変化がなければ、受動型センサに隠蔽行為がなされたと判定するので、極めて簡素で安価な構成により受動型センサに対するマスク画策行為を確実に検知することができる。
【0013】
また、受動型センサの出力の有無に応じて撮像部から入力される入力画像を記憶するか否かを判定するので、受動型センサの出力をトリガとして撮像部からの入力画像の画像処理を行うことができ、撮像部からの入力画像に対する無駄な画像処理が省け、撮像部からの入力画像と受動型センサの検出信号により効率的に人体検知を行うことができる。
【0014】
さらに、夜間から昼間に切り替わったとき、受動型センサ近傍の照度センサの照度が所定未満の場合は所定時間経過後に照明部を消灯させ、照度センサの照度が所定異常である場合は所定時間が経過する前でも照明部を消灯させるように照明部を制御するので、受動型センサに対するマスク画策行為をより高精度に検知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る複合型センサのブロック構成図である。
【図2】本発明に係る複合型センサを含む警備システムの概略構成図である。
【図3】第1照度センサに対する照度変動判定と受動型センサに対する画策判定のフローチャートである。
【図4】第2照度センサに対する照度変動判定のフローチャートである。
【図5】夜から昼への移行時の照明制御手段による照明制御のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。図1は本発明に係る複合型センサのブロック構成図、図2は本発明に係る複合型センサを含む警備システムの概略構成図、図3は第1照度センサに対する照度変動判定と受動型センサに対する画策判定のフローチャート、図4は第2照度センサに対する照度変動判定のフローチャート、図5は夜から昼への移移行時の照明制御手段による照明制御のフローチャートである。
【0017】
(本発明に係る複合型センサについて)
本発明に係る複合型センサは、カメラから取得した画像の処理結果と受動型センサからの出力結果を併用し、建物内外の監視領域に対する侵入者の有無を検知するものであり、ここでは、例えば複合型センサを屋外に設置し、建物の外周などの建物敷地内にある屋外の空間を監視領域としてが侵入者の検知を行う場合について説明する。
【0018】
本発明に係る複合型センサは、監視対象の物件の随所に適宜設置され、例えば図2に示すような警備システム1に採用することができる。図2に示す警備システム1は、複数の複合型センサ2(2−1,2−2,…,2−n)と、警備主装置3と、監視センタ4とを備えて構築される。
【0019】
複数の複合型センサ2(2−1,2−2,…,2−n)は、監視対象の物件ごとに各複合型センサ2(2−1,2−2,…,2−n)を統括する警備主装置3に無線/有線を介して相互に通信可能に接続され、異常発生時には警備主装置3に対して異常信号を送出する。
【0020】
警備主装置3は、警備モードとして少なくとも監視モードと監視解除モードとを有し、監視モード中に各複合型センサ2(2−1,2−2,…,2−n)から侵入者検知による異常信号を受信すると、システムを統括制御する遠隔の監視センタ4へ通信網を介して異常発生を通報し、監視解除モード中は各複合型センサ2(2−1,2−2,…,2−n)からの異常信号を無視する。そして、異常通報を受けた監視センタ4は、監視対象の物件に警備員を急行させる等、適切な対処をとる。
【0021】
また、警備主装置3は、監視解除モード中も画策検知を行い、警備モードが監視解除モードから監視モードに移行するとき、複合型センサ2に対して画策がなされている場合はモード移行を禁止し、異常通報を監視センタ4へ送信する。
【0022】
尚、画策検知は、監視解除モード中に検知したときは即座に監視センタ4へ異常通報するようにしてもよい。さらに、警備主装置3は、モード切替時に各複合型センサ2(2−1,2−2,…,2−n)に対してモード変更を通知し、監視モード中のみ各複合型センサ2(2−1,2−2,…,2−n)が侵入者判定処理を実行するようにしてもよい。
【0023】
また、各複合型センサ2(2−1,2−2,…,2−n)のそれぞれに監視モードと監視解除モードとを切替設定するモード設定手段を設け、監視モード中の異常発生時に、警報手段として、例えばブザー鳴動、警告灯を点灯させるなどして、警備主装置3を用いずに複合型センサ2単体で使用することもできる。
【0024】
(複合型センサの構成)
図1は本発明に係る複合型センサ2の構成を示したブロック図である。
【0025】
複合型センサ2は、図1に示すように、撮像部11、受動型センサ12、第1照度センサ13、第2照度センサ14、照明部15、記憶部16、制御部17、警報出力部18を1つの筐体の中に備えて概略構成される。
【0026】
撮像部11は、監視領域を撮像するカメラ(以下単にカメラともいう)であり、レンズ部分が筐体の表面位置に配置されており、例えば近赤外領域の光を検出するCCD撮像素子等の画像取得回路を有するカメラで構成され、毎秒数フレームの所定時間周期で監視領域を撮影した撮影画像を記憶部16に逐次送出している。なお、撮像部11としては、CCD撮像素子以外にCMOS撮像素子などを用いることができる。
【0027】
受動型センサ12は、画像による人体検出とは異なる検知ロジックで監視空間における人体を検出する受動型のセンサであり、ここでは受動型の赤外線センサ(PIRセンサ)を採用した例について説明する。
【0028】
受動型センサ12としてのPIRセンサは、監視領域において放射されている赤外線を検出し、監視領域において放射されている赤外線をミラーやレンズなどの光学系により集光して焦電素子で受光し、この赤外線受光量の変化(監視領域の状態変化)に基づくレベルの検出信号(受光量変化が大きいほどレベルが大きい)を制御部17の後述する統合判定手段17cへ出力している。
【0029】
ここでの受動型センサ12は、撮像部11であるカメラと所定距離の間隔をおいて配置され、ミラー部分が筐体の表面位置より所定距離凹んだ位置に設置される。
【0030】
尚、複合型センサ2は、上記構造に限定されるものではなく、種々のバリエーションが可能である。例えば、受動型センサ12と撮像部11であるカメラがカバー内部に含まれる構造としてもよい。
【0031】
また、受動型センサ12は、上記赤外線センサ(PIRセンサ)に限定されるものではなく、マイクロホン等を用いた音響センサなどでもよい。
【0032】
第1照度センサ13は、受動型センサ12であるPIRセンサ近傍に設置され、監視領域の照度を検出する。第2照度センサ14は、撮像部11であるカメラ近傍に設置され、第1照度センサ13と同様に、監視領域の照度を検出する。
【0033】
照明部15は、複合型センサ2の筐体内部に複数の発光ダイオード(LED)やランプ等が配列され、監視領域を照射する。この照明部15は、制御部17の後述する照明制御手段17aによって駆動が制御される。
【0034】
記憶部16は、半導体メモリ、ハードディスク装置等から構成され、背景画像、入力画像、蓄積画像等の各種画像データ、各種パラメータ及び制御部17で実行される画像処理プログラム等の各種プログラムを格納及び保持する。なお、背景画像とは、監視空間に侵入者が存在しないときに撮像された画像である。入力画像とは、所定フレーム数の最新の入力画像である。蓄積画像とは、侵入者の検出時の画像を含む前後複数のフレームの入力画像である。蓄積画像は、記憶部16に一時記憶される画像であり、侵入者の検出処理が終了すると記憶部16から消去される。
【0035】
画像処理プログラムには、侵入者判定プログラム、通信用プログラム等の画像センサの処理に必要なものが含まれる。また、記憶部16には、画像処理に必要なワークエリアが確保されている。
【0036】
制御部17は、CPUであって、記憶部16に格納されたプログラムを実行することによって複合型センサ2の各部を統合的に制御するものであり、照明制御手段17a、画像処理手段17b、統合判定手段17c、そして画策検知手段17dの機能を有する。
【0037】
照明制御手段17aは、撮像部11であるカメラからの入力画像の状況に応じて照明部15の駆動を制御している。例えば夜間など、画像が暗い場合に照明部15を点灯させモードをNightモードに移行させ、昼間の自然光によって監視空間の撮像に十分な光量が得られていると判定した場合には照明部15を消灯させモードをDayモードに移行させることで、カメラから得られる入力画像を一定の画質に保持している。
【0038】
ここで、夜から昼に変わり、すぐ照明部15を消灯すると、実際にはあまりまだ明るくない場合に再度夜と判定して照明部15を点灯するといった動作が繰り返し行われる可能性がある。このため、照明制御手段17aは、夜から昼に変わってから所定時間(例えば10分間の遅延時間)は照明部15を点灯させたままとし、その間に昼から夜に変わらなければ照明部15を消灯してDayモードに移行するようにしている。
【0039】
これに対し、昼から夜に変わる場合は、すぐ照明部15を点灯する。これは街灯の光が点灯している状態(昼だと思っている)で街灯の光が急に消えると真っ暗になり、上記のような遅延時間を設定せずに照明部15を点灯しないと侵入検知が行えないからである。
【0040】
画像処理手段17bは、撮像部11であるカメラからの入力画像を解析して動体領域を抽出し、抽出した動体領域が人体の特徴を有するか否かを判定する人体判定処理機能を有する。
【0041】
画像処理手段17bは、人などの動体が存在しない状態の監視領域の撮影画像を背景画像として記憶部16に記憶しておき、撮像部11であるカメラからの入力画像と背景画像とを比較し、差分二値化処理等を用いて所定の変化が生じている領域を動体領域として抽出する。
【0042】
そして、画像処理手段17bは、抽出した動体領域ごとにラベリング処理し、ラベリングされた動体領域の高さ、幅、面積などに基づいて人体の特徴を有するか否かの判定処理を行い、この判定処理による結果(人体検知データ)を統合判定手段17cへ出力している。
【0043】
統合判定手段17cは、受動型センサ12からの検出信号と画像処理手段17bからの人体検知データに基づいて、監視領域における侵入者の有無を判定し、判定結果を警報出力部18へ出力している。この統合判定手段17cは、画像処理手段17bから入力画像に対する判定結果を受信すると、該入力画像に対する侵入者判定処理を実行し、監視領域における侵入者の有無を判定している。
【0044】
画策検知手段17dは、入力画像に基づいて撮像部11であるカメラに対する画策行為を検知するとともに、第1照度センサ13及び第2照度センサ14で検出した照度に基づいて、受動型センサ12に対する画策行為を検出する。
【0045】
撮像部11であるカメラに対する画策行為は、入力画像の輝度値やエッジ量に基づいて判定する周知の技術が採用できる。受動型センサ12に対する画策行為の検知については第1照度センサ13と第2照度センサ14の照度に基づいて検知する。これについて後ほど詳述する。
【0046】
警報出力部18は、統合判定手段17cにて侵入者あり(異常)と判定されると、無線/有線で通信可能に接続される警備主装置3に対し、異常信号を出力している。その際、異常時の画像(撮影日時の情報を含む)を、その前後フレームの画像も含めて警備主装置3に出力することができる。また、警報出力部18は、人体(侵入者)と認識した動体領域を明示した画像(撮影日時の情報を含む)を警備主装置3に出力することもできる。さらに、警報出力部18は、警報手段としてのスピーカや警告灯を有し、異常発生時にはブザー鳴動し、警告灯の点灯を行うことで周囲に異常発生を報知してもよい。
【0047】
また、警報出力部18は、撮像部11であるカメラあるいは受動型センサ12に対する画策行為を画策検知手段17dが検知すると、警備主装置3に対して異常信号を出力している。
【0048】
(受動型センサに対する画策判定)
以下、図3および図4のフローチャートを用いて画策検知手段17dによる受動型センサ(PIRセンサ)12へのマスク画策判定の説明を行う。
【0049】
受動型センサ12であるPIRセンサに対する画策判定は、第1照度センサ13と第2照度センサ14の2つのセンサ出力に基づいて行われる。
【0050】
図3は主に受動型センサ12であるPIRセンサ近傍の第1照度センサ13に対する照度変動の有無とPIRセンサに対する画策判定の処理について説明した図である。また、図4は撮像部11であるカメラ近傍の第2照度センサ14の変動の有無について判定する処理を説明した図である。
【0051】
S001:
所定時間間隔ごとに第1照度センサ13の照度の移動平均値を算出する。第1照度センサ13から得られる照度は、時々刻々と徐々に変化するため、照度の急激な変化を検出するためにはこの移動平均値との比較を行う。
【0052】
第1照度センサ13では、移動平均の算出区間長をNpとして、時刻nのセンサ値をXp(n)で表すと、下記式(1)のようになる。尚、式(1)において、Xp:第1照度センサ13の照度値、Ap:第1照度センサ13の照度の移動平均値である。
【0053】
【数1】

【0054】
S002:
第1照度センサ13の照度変動の有無を判定する。照度変動の有無は下記の条件を満たすことで照度変動有りと判定する。下記照度変動条件を満たさない場合はS001へ戻る。下記照度変動条件を満たす場合は第1照度センサ13の照度変動があったとしてS003へ進む。尚、下記照度変動条件において、thVpday はDayモードにおける判定のための閾値、thVpnight はNightモードにおける判定のための閾値である。
(照度変動条件)
・Ap−Xp>thVpday :Dayモード
・Xp−Ap>thVpnight :Nightモード
【0055】
S003:
ここでは、照度変動条件を満たす場合、照度変動検知時での照度センサ移動平均値をSp(現在の移動平均値)とし保持し、タイマをスタートさせる。そして、移動平均値はリセット(初期化)する。
【0056】
S004:
ここでは移動平均値を算出する。この計算はS001と同じである。尚、移動平均値をリセットした場合(及び動作開始時)、リセット後の経過時間をTaとするとき、Ta<Npのときは下記式(2)で計算する。
【0057】
【数2】

【0058】
S005:
ここでは、第1照度センサ13の照度値が復旧条件を満たすか否か判定する。PIRセンサ側の第1照度センサ13の照度値の復旧条件判定を行い、復旧条件を満たす場合は、S001へ戻る。復旧条件を満たさない場合は、S006へ進む。PIRセンサ側の第1照度センサ13の復旧条件は、Sp−Ap<htRpday を満たすこと(Dayモード時)、または、Ap−Sp<htRpnight を満たすこと(Nightモード時)のいずれかである。
【0059】
Spは前述のとおり、照度変化検知時の移動平均値であり、Apは照度変動検知後にリセットしていることから、復旧条件は、照度値が照度変動を検出した時点の照度に近い値に戻ったことを意味する。
【0060】
S006:
ここでは照度変動が発生してから所定時間が経過したか否かを判定する。所定時間が経過した場合は、S007へ進む。
【0061】
S007:
ここではカメラ側の照度変動の有無をカメラ近傍の第2照度センサ14の照度から判定する。PIRセンサ側の第1照度センサ13に変動があり、図4のフローチャートで判定するカメラ近傍の第2照度センサ14が照度変動無しの場合はS008へ進み画策異常とし、この時点で画策異常信号を送出する。
【0062】
PIRセンサ側の第1照度センサ13の照度変動に加え、第2照度センサ14も照度変動を検出している場合は、第1照度センサ13及び第2照度センサ14が両方とも変動状態にあるので、外部照明の変化等と考えられるため、異常とせずS001へ戻る。
【0063】
尚、画策を検知した場合は、即異常としてもよい。また、警備モードの解除中に画策を検知した場合は、警備モードに移行したときに異常を通報するようにしてもよい。
【0064】
(カメラ側の第2照度センサ14の照度判定)
撮像部11であるカメラ側の第2照度センサ14もPIRセンサ側の第1照度センサ13と同様の処理を行う。図4に第2照度センサ14のフローチャートを示す。S011〜S016の動作は、図3のS001〜S006の動作と同じである。
【0065】
但し、カメラ側の第2照度センサ14の照度判定では、カメラ側の第2照度センサ14の照度値に基づいて撮像部11であるカメラへの画策判定は行わない。このため、S016でタイムアップした後はS011へ戻る点が図3のS006の動作とは異なる。
図3のS007において、S011〜S012の状態であれば照度変動無しとし、S012〜S016の状態であれば照度変動有りとする。
【0066】
また、タイマの長さもPIRセンサ側の第1照度センサ13の判定に用いる閾値よりも長くする。これは、第1照度センサ13及び第2照度センサ14の両方が照度変動した場合には、たとえ変動のタイミングに時間差があり、第2照度センサ14が早く変動していたとしても、その時間差が所定値以下ならば光による照度値の変化と判定して誤報を防ぐためである。
【0067】
(Day/Nightモード切り替え時の動作状態)
DayモードからNightモード、NightモードからDayモードのモードの切り替えに依らず、第1照度センサ13及び第2照度センサ14の両センサとも移動平均はリセット状態にし、通常状態から始まるものとする。
【0068】
(複合型センサの照明制御)
次に、本発明における複合型センサ2の照明制御手段17aの処理について図5のフローチャートを用いて説明する。
【0069】
S111:
撮像部11であるカメラからの入力画像の処理により夜から昼の変化を検知したか否かを判定する。照明制御手段17aが撮像部11であるカメラから得られる入力画像から夜から昼に変わったことを検知すると、S112でタイマをスタートさせる。
【0070】
S113ではタイマ計時中に撮像部11であるカメラからの入力画像から昼から夜へ戻っていないか否かを判定する。そして、タイマ計時中に入力画像から昼から夜へ戻ったと判定すると、S114でタイマをリセットしてS111に戻る。
【0071】
タイマ計時中に入力画像の処理結果より昼から夜に戻っていないと判定すると、S115でPIRセンサ側の照度が所定値以上か否か判定する。PIRセンサ側の第1照度センサ13の値が所定以上である場合は、ステップS117へ進みモードをNightモードからDayモードへ変更し、ステップS118で照明部15であるLEDを消灯する。この理由については後述する。
【0072】
一方、ステップS115で第1照度センサ13の値が所定未満の場合は、ステップS116でタイマスタートから所定時間(例えば10分)が経過しているか否か判定する。所定時間が経過していない場合はステップS113へ戻るが、所定時間が経過した場合はステップS117へ移行し、ステップS118で照明部15であるLEDを消灯する。
【0073】
ここで、上述した照明制御におけるステップS115で、照度が所定以上の場合にS116でカウントする所定時間の経過を待たずに、照明部15を消灯する理由について説明する。
【0074】
照明制御手段17aは、前述のように、入力画像上で夜から昼に変わったことを検知した場合でもモード切替の繰り返しを防止するため、所定時間経過後に照明部15であるLEDを消灯させるようにしている。
【0075】
しかし、その場合、モードがNightモードのままLEDが点灯している。このため、この状態でPIRセンサ部分に画策行為がなされると、PIRセンサの第1照度センサ13は筐体内部から照射されるLEDの反射光がPIRセンサ近傍の第1照度センサ13で検知され高い照度値が観測されるため、照度変動条件を満たさず、画策行為の検知ができない。
【0076】
よって、上記所定時間内でも受動型センサ12であるPIRセンサ近傍の第1照度センサ13の値が高い場合はLEDを消灯させ、Dayモードに移行させることで、確実に画策検知が可能となる。
【0077】
尚、この場合、LEDを即座に消灯するのではなく、S116でカウントする所定時間より短い時間(例えば3分)経過している場合にのみLEDを消灯するようにしてもよい。
【0078】
また、上記判定には第1照度センサ13の照度に基づいてLEDの点灯・消灯の制御を行うようにしている。これは、LEDの反射で画策行為がなされたとしてもPIRセンサ側の第1照度センサ13の値の変化を検出できなくなるときに問題になるためである。例えば明るい光がカメラ側の第2照度センサ14にだけ当たっている場合は、受動型センサに画策行為がされると第1照度センサ13の照度変化を検出し、第2照度センサ14の照度は変化しないので急いでNightモードからDayモードに変化する必要はない。
【0079】
このように、本発明に係る複合型センサ2は、入力画像を取得する撮像部(カメラ)11と受動型センサ(PIRセンサ)12のそれぞれの近傍に照度センサ(第1照度センサ13、第2照度センサ14)を設け、2つの照度センサ13,14の照度値の差が大きい場合、すなわち受動型センサ12近傍の照度センサ13の照度に変化があり、撮像部11近傍の照度センサ14の照度に変化がなければ、受動型センサ12に隠蔽行為がなされたと判定している。これにより、極めて簡素で安価な構成で受動型センサに対するマスク画策行為を確実に検知することができる。
【0080】
また、複合型センサ2の制御部17は、受動型センサ12の出力の有無に応じて撮像部11から入力される入力画像を記憶するか否かを判定している。これにより、受動型センサ12の出力をトリガとして撮像部11からの入力画像の画像処理を行うことができ、撮像部11からの入力画像に対する無駄な画像処理が省け、撮像部11からの入力画像と受動型センサ12の検出信号により効率的に人体検知を行うことができる。
【0081】
さらに、複合型センサ2の制御部17(照明制御手段17a)は、夜間から昼間に切り替わったとき、受動型センサ12近傍の照度センサ13の照度が所定未満の場合は所定時間経過後に照明部15を消灯させ、照度センサ13の照度が所定以上である場合は所定時間が経過する前でも照明部15を消灯させるように照明部15を制御している。これにより、受動型センサ12に対するマスク画策行為をより高精度に検知することができる。
【0082】
尚、上述した実施の形態では、本発明に係る複合型センサ2として、撮像部11であるカメラから取得した画像と受動型センサ12であるPIRセンサの出力に基づいて監視領域への侵入者を検知する場合を例にとって説明したが、これに限定されるものではない。例えば受動型センサ12であるPIRセンサで人を感知したことを契機に撮像部11であるカメラからの入力画像を記録又は遠隔の施設にてモニター表示させる複合型センサにおいて、PIRセンサに対する画策行為を検知させるようにすることも可能である。その場合には、制御部17の有する機能として複雑な処理を行う画像処理手段17b、統合判定手段17cは必要とせず、PIRセンサの出力に応じてカメラから入力される画像の記録/再生を制御する機能を制御部17に用意すればよい。
【符号の説明】
【0083】
1 警備システム
2(2−1,2−1,…,2−n) 複合型センサ
3 警備主装置
4 監視センタ
11 撮像部(カメラ)
12 受動型センサ(PIRセンサ)
13 第1照度センサ
14 第2照度センサ
15 照明部(LED)
16 記憶部
17 制御部
17a 照明制御手段
17b 画像処理手段
17c 統合判定手段
17d 画策検知手段
18 警備出力部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力画像を取得する撮像部と人体の有無を検出する受動型センサとから構成される複合型センサであって、
前記撮像部近傍と前記受動型センサ近傍のそれぞれに照度センサが設けられ、
前記受動型センサ近傍の照度センサの照度変化が所定以上であり、前記撮像部近傍の照度センサの照度変化が所定未満の場合に、前記受動型センサに隠蔽行為がなされたと判定する制御部を備えたことを特徴とする複合型センサ。
【請求項2】
前記制御部は、前記撮像部から入力した入力画像から移動物体を検出する画像処理手段と、
前記移動物体が有する人体特徴度合いと前記受動型センサの出力結果から監視領域への侵入者の有無を判定する統合判定手段とを有することを特徴とする請求項1記載の複合型センサ。
【請求項3】
前記制御部は、前記受動型センサの出力の有無に応じて前記撮像部から入力される入力画像を記憶するか否かを判定することを特徴とする請求項1記載の複合型センサ。
【請求項4】
前記制御部は、前記監視領域を照らす照明部を、前記入力画像を処理した昼間/夜間判定結果に基づいて制御する照明制御手段を有し、
前記照明制御手段は、夜間から昼間に切り替わったとき、前記受動型センサ近傍の照度センサの照度が所定未満の場合は所定時間経過後に前記照明部を消灯させ、
前記受動型センサ近傍の照度センサの照度が所定以上である場合には、前記所定時間の経過前でも、前記照明部を消灯させるように制御することを特徴とする請求項1乃至3の何れかに記載の複合型センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−48382(P2012−48382A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−188533(P2010−188533)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【出願人】(000108085)セコム株式会社 (596)
【Fターム(参考)】