説明

複合機能カードおよび複合データ送受信システム

【課題】 カードを用いて物品売買、景品交換等を行う際の秘匿性を向上する。
【解決方法】 カード所有者の管理情報と口座残額情報とを記憶することができる記憶素子と、少なくとも数字および文字を入力可能な入力素子と、暗号化/解読が可能な情報処理装置を内蔵し、カードリーダとデータの送受信が可能なカードであって、カードリーダを介してサーバコンピュータとの間で暗号化されたデータの送受信が可能で、その際カードリーダの暗号化/解読機能を必要としない複合機能カード。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーバコンピュータとの間でデータの送受信が可能なカードおよびそのようなカードを前提としたデータ送受信システムに関するもので、特に、カードとサーバコンピュータとの間のデータの送受信が暗号化されており、その際、カード自体とサーバコンピュータとが暗号化/解読機能を有するカードおよびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カードを用いて口座からの現金の引き出し、現金の投入、送金等を行うことが行われている。また、カードの中に一定限度の金額を記憶しておき、買い物を行った場合にはこの金額を減算するものがある。さらには、パチンコ店で玉貸し機に使用されるプリペイドカード等、遊戯施設において使用されるプリペイドカードも知られている(特許文献1、2)。これは券売およびチャージ装置に現金を入金することによってプリペイドカードにポイントを記憶させ、玉貸し機に挿入することによって、プリペイドカードに記憶されたポイントの範囲内で玉の貸し出しを行うものである。また、残玉をポイントに変換してプリペイドカードに記憶させる機能を有することもある。さらに、プリペイドカードに記憶されたポイントは、玉貸以外の景品と引き換えを行ったり、場合によっては現金に換金することもできる。
【0003】
これらは、金融システムなどに対してアクセスする際に本人を特定し証明する機能を有する。また、金額を記憶するカードに関しては、カードリーダとの間で、ある種の売買を行うことを可能にするカードである。
【0004】
一方、現金または特定の銀行ロック口座預金の一部を、デビットカード、クレジットカード、電子マネー、プリペイドカード等の管理口座に一旦入金し、以後は、現金または特定の銀行ロック口座等を用いて勝ち馬投票権を購入し、当該投票資金を競馬場入場料、指定席料、売店などの施設での支払いに利用できる複合決済機能を備えた投票システムもある(特許文献3)。競馬場・ウインズ施設及び運営主催者と提携した郵便局、コンビニエンスストア、百貨店、スーパーマーケットを少なくとも含む施設外の店舗に設置された前記応答コンピュータとインターネットを含む通信回線で接続された特別会員申込端末機を備え、競馬場・ウインズ施設には特別会員に発行された会員カードの読取り機能を備えた勝馬投票券販売機、現金払戻機と飲食・購入レジスターとを備えたシステムであって、利用者は会員カードの読み取り機能を備えた勝ち馬投票権販売機、現金払い戻し機を通じて投票および払い戻しを受けるものも提案されている。
【特許文献1】特開2002−306793
【特許文献2】特開2004−303046
【特許文献3】特開2003−223528
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来知られているカードおよびこれを前提としたシステムは、一般に、カードをカードリーダと接続し、カードリーダを制御するコンピュータを介して口座情報などを有するサーバコンピュータとの間で必要なデータの授受を行うものであるが、カードに記憶された情報あるいはカード所有者がカードの使用に際して入力するパスワードなどの情報は、カードリーダやカードリーダを制御するコンピュータに対しては全く防御されていない。現在の使用態様であればもちろんこれで問題は無いが、多額の現金情報を記憶したカードや、重要な個人情報を記憶したカードが幅広い状況で使用されるようになると、利便性が向上する反面、データ送受信の経路に当たるカードリーダやカードリーダを制御するコンピュータからこれらの情報が盗用されることに対して何らかの防衛策が必要になる。
【0006】
また、上記のような情報の盗用に対して万全な防御策がとられることによって、非常に広範な利用が現実的になり、利便性が大幅に向上する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、カード所有者の管理情報と口座残額情報とを記憶することができる記憶素子と、少なくとも数字および文字を入力可能な入力素子と、暗号化/解読が可能な情報処理装置を内蔵し、カードリーダとデータの送受信が可能なカードであって、
カードリーダを介してサーバコンピュータとの間で暗号化されたデータの送受信が可能で、その際カードリーダの暗号化/解読機能を必要としない複合機能カードを提案する。
【0008】
ここでカード所有者の管理情報とは、氏名および生年月日程度の極めて基本的な情報であってもよいし、当該所有者のこれまでの取引の経過情報などデータとしてかなり大きくなるものであってもよい。口座残額情報とは、銀行口座の預金残高等、所定の口座に残る現金を表す情報である。少なくとも数字および文字を入力可能な入力素子とは、数字キー又はアルファベットキーのような入力専用のものであってもよいし、表示機能と入力機能とを有するタッチパネルのようなものであってもよい。暗号化/解読が可能な情報処理装置とは、何らかの形で暗号化/解読に必要な処理手順を記憶した記憶装置を有するCPU等がこれに当たる。サーバコンピュータとは、必須ではないが一般にカードリーダとは別に設けられたコンピュータであって、カード所有者の口座情報等を管理するコンピュータを言う。例えば、銀行の口座管理コンピュータなどがこれに当たる。
【0009】
カードリーダを介してサーバコンピュータとの間で暗号化されたデータの送受信が可能で、その際カードリーダの暗号化/解読機能を必要としないとは、カードからカードリーダにデータが送信される際は既に暗号化されており、サーバコンピュータから送信されるデータは、カードリーダを通過する際は暗号化されたままであることを意味する。つまり、カードリーダおよびカードリーダに別途カードリーダを制御するコンピュータが接続されていた場合にも、データは暗号化された状態でこれらの装置を通過するだけである。
【0010】
上記した本発明によれば、カードリーダおよびカードリーダに別途カードリーダを制御するコンピュータが接続されていた場合にも、データは暗号化された状態でこれらの装置を通過するだけであるから、これらの装置が当該暗号の解読機能を有しない限り内容を判別することは不可能なので、通信の安全性が高い。したがって、例えば、カードによる通信を開始するに当たってカード所有者のID番号を入力するような場合も、カードがID番号を暗号化し、暗号化された情報をカードリーダ、制御コンピュータを通じて、口座等を預かるサーバコンピュータに送信するので、カードリーダや制御コンピュータを操作してもID番号を知ることはできない。
【0011】
サーバコンピュータにはカード所有者の指紋情報を記憶しておき、カードリーダにはカード所有者の指紋を読み取らせてその情報をサーバコンピュータに送って照合させるように構成することもできる。あるいは、カードにカード所有者の指紋情報を記憶させ、カードリーダに指紋読取装置を内蔵させて(あるいは別途設けて)、カードに記憶された指紋情報と指紋読取装置が読み取った情報の照合を、カードリーダおよび制御コンピュータに行わせることも可能である。このような構成であれば、全てをサーバコンピュータが行う構成に比較してサーバコンピュータのロードを軽減することができる。この場合、カード自体に識別番号等が付与されていれば、カードリーダと制御コンピュータには、当該カードの識別番号と指紋情報とを対応付けて記憶することも可能になるが、カード自体に識別番号等を付与することは必須ではなく、仮に識別番号が付与されていたとしても、カードリーダに対して当該番号を送信することは必須ではない。
【0012】
前記記憶素子は、さらに金(gold)の残高情報を記憶することができるように構成されているのが好ましい。
つまり、カード所有者は、口座の残高と所有する金の残高(あるいは残量)をこのカードに記憶させておくことで、当該カードを用いて金の売買を直接行うことが可能になる。例えば、カードをカードリーダを介してサーバコンピュータに接続し、この場合は金の売買を行う機関のコンピュータであるサーバコンピュータとの間で、金の買取を行う。サーバコンピュータは、カードから口座に残った現金の残高から所定金額を減算し、それに代えて、カードに購入された金の残高を書き込ませる。
【0013】
この場合にも、金の売買に関する情報は全て暗号化された状態でカードリーダとカードリーダを管理するコンピュータを通過するので、当該情報が不正に盗用されたり改変されたりするリスクは非常に小さい。また、カードに記憶された暗号化/解読プログラムが正統なものであるか否かは、サーバコンピュータからの確認が可能である。この手法については、いくつかの従来技術が存在する。
【0014】
前記カードには、さらに登録された所有者の個人特定情報を記憶しており、前記入力素子を通じて所定の入力があった場合にのみ、当該個人特定情報を読み出し可能にするのが好ましい。
所有者の個人特定情報とは、例えばID番号のようなものであり、カードをカードリーダに差し込んで、まずID番号を入力させて、これら正統なものであることが確認された場合にのみその後の手続きを認めるものであってもよい。このID番号についても、カードからカードリーダに送られる際は既に暗号化されていれば、サーバコンピュータのみがその正統性を確認することができ、途中に介在するコンピュータ等がコピーすることは非常に困難である。
【0015】
正しいID番号が入力された場合にその後の手続きを認めることと同様に、特定の非常用IDを設定しておき、この非常用IDが入力された場合は無条件で不正使用と判断することを前提としたものであってもよい。非常用のIDが使用された瞬間に、カードリーダはカードを回収してしまうことや、これが扉を有するブースで行われた場合には扉を開かなくしてもよい。非常用のIDは、正しいIDと紛らわしいものであっては都合が悪いので、カードの所有者が一般には使わないと考えるもの、例えば、生年月日や電話番号などを用いているのが好ましい。
【0016】
さらに、前記カードは、少なくとも数字および文字を表示可能な表示素子を有するのが好ましい。
表示機能を用いて入力を確認することができるだけでなく、サーバコンピュータからカードに対して質問を送ってこれに答えさせる形で本人確認を行うことも可能になる。さらに、取引の結果を表示させて内容確認が可能になるので非常に利便性が高い。
【0017】
カードはさらに、年齢認証データ、本人確認のための本人の指紋・声紋情報、電子マネー情報、遊技施設における遊技媒体数情報、サービスポイント情報を記憶するものであれば、極めて便利である。また、カードリーダは、サーバコンピュータから取引終了を示す情報が送られてきたにもかかわらず一定時間経過してもカードが取り出さなければ警告音を発するようなものであってもよい。また、カード自体はエディカード機能、クレジットカード機能、スイカ機能、ホログラフによる本人確認あるいはカード自体の正当性確認情報を有するものであることが望ましい。
【0018】
本発明はさらに、上記に示した複合機能カードと、
該カードとデータの送受信が可能なカードリーダと、
カードがカードリーダを介して暗号化されたデータの送受信を行うサーバコンピュータとを含み、カードとサーバコンピュータとの間の暗号化されたデータの送受信は、サーバコンピュータとカードにおいて複合化される複合データ送受信システムを提案する。
【0019】
当該複合データ送受信システムによれば、通信経路の両端部に当たるカードおよびサーバコンピュータの内部以外では情報は暗号化されているので、情報の秘匿性が高い。さらに、カードの不正使用および不正改造に対して、指紋・声紋認証、ID番号確認等の対策を施しておくことで信頼性を一層高めることができる。
【0020】
本発明の1つの実施例に拠れば、前記サーバコンピュータは金の販売・買取機関のサーバコンピュータであり、
前記カードによって、カードリーダを通じて金の売買を行い、カードに記憶された口座残額情報と金の残高情報を、当該金の売買に応じて書き直すことができる。
【0021】
この場合、現金を管理するのが銀行口座を管理するコンピュータであるとすると、カードは、金の販売・買取機関のサーバコンピュータと同時に銀行の口座を管理するコンピュータに接続して、金の購入あるいは販売と銀行口座からの現金の引きおろしあるいは入金を可能にするものであってもよい。あるいは、カードに記憶された現金残高の範囲において金の購入を行うものであってもよい。
【0022】
前記カードリーダは、個人特定情報を表示する表示装置と接続されており、カードから読み出された個人特定情報がカード所有者のものと同一であると確認された場合にのみ、カードとサーバコンピュータとの間のデータの送受信を許可するものであってもよい。
この場合、個人特定情報がカード所有者の顔写真であれば、カードリーダが顔写真を読み取ったらこれを画面に表示して、管理者に本人確認を行わせるようなものであれば便利である。この場合には、本人特定情報は、カードからカードリーダに対して、カードリーダに解読可能な形式で送信される必要が有ることはいうまでもない。
【0023】
複合データ送受信システムは、
カードリーダが遊技場に設けられた遊技場コンピュータに接続されており、
遊技場コンピュータが前記サーバコンピュータとデータの送受信が可能なように接続されており、
カードが、カードリーダと遊技場コンピュータを介してサーバコンピュータとデータの送受信を行うようなものであってもよい。
【0024】
上記のような構成である場合、サーバコンピュータを管理する側は、暗号化された情報が通過するだけの遊技場カードリーダや遊技場コンピュータの信頼性(不正使用を排除する能力)に非常に気を使う必要は無くなる。したがって、クレジットカードと同様に、非常に広い範囲の遊技場あるいは遊技場に限らず物品売買施設においてカードの利用を促進することができる。
【0025】
遊技場コンピュータは、余った遊技媒体を金額に換算してカードに書き込むことができ、カードとサーバコンピュータとの間では、残り金額と金との間の売買を行うことができるようなものであってもよい。
このような構成であれば、本発明のカードおよびシステムを使用することにより、遊技場の遊技媒体の残量、現金残高、金残高の極めて流動的な価値の変換が可能になる。したがって、使用の利便性が一層向上する。
【発明の効果】
【0026】
本発明のカードを利用することにより、カードリーダおよびカードリーダを管理するコンピュータを介して情報が盗用あるいは不正コピーされることを排除することができるので、カードおよびシステムの利用範囲が格段に拡大する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カード所有者の管理情報と口座残額情報とを記憶することができる記憶素子と、少なくとも数字および文字を入力可能な入力素子と、暗号化/解読が可能な情報処理装置を内蔵し、カードリーダとデータの送受信が可能なカードであって、
カードリーダを介してサーバコンピュータとの間で暗号化されたデータの送受信が可能で、その際カードリーダの暗号化/解読機能を必要としない機能カード。
【請求項2】
前記記憶素子は、さらに金の残高情報を記憶することができる請求項1に記載の複合機能カード。
【請求項3】
さらに登録された所有者の個人特定情報を記憶しており、前記入力素子を通じて所定の入力があった場合にのみ、当該個人特定情報を読み出し可能にする請求項1又は2に記載の複合機能カード。
【請求項4】
前記所定の入力の代わりに第2の所定の入力があった場合、不正使用である旨示す情報をカードリーダに送信する請求項3に記載の複合機能カード。
【請求項5】
さらに、少なくとも数字および文字を表示可能な表示素子を有する請求項1ないし4の何れかに記載の複合機能カード。
【請求項6】
請求項1ないし5の何れかに記載の複合機能カードと、
該カードとデータの送受信が可能なカードリーダと、
カードがカードリーダを介して暗号化されたデータの送受信を行うサーバコンピュータとを含み、カードとサーバコンピュータとの間の暗号化されたデータの送受信は、サーバコンピュータとカードにおいて複合化される複合データ送受信システム。
【請求項7】
前記サーバコンピュータは金の販売・買取機関のサーバコンピュータであり、
前記カードによって、カードリーダを通じて金の売買を行い、カードに記憶された口座残額情報と金の残高情報を、当該金の売買に応じて書き直す請求項6に記載の複合データ送受信システム。
【請求項8】
前記カードリーダは、個人特定情報を表示する表示装置と接続されており、カードから読み出された個人特定情報がカード所有者のものと同一であると確認された場合にのみ、カードとサーバコンピュータとの間のデータの送受信を許可する請求項6又は7に記載の複合データ送受信システム。
【請求項9】
カードリーダは遊技場に設けられた遊技場コンピュータに接続されており、
遊技場コンピュータは前記サーバコンピュータとデータの送受信が可能なように接続されており、
カードは、カードリーダと遊技場コンピュータを介してサーバコンピュータとデータの送受信を行う請求項6又は7に記載の複合データ送受信システム。
【請求項10】
遊技場コンピュータは、余った遊技媒体を金額に換算してカードに書き込むことができ、カードとサーバコンピュータとの間では、残り金額と金との間の売買を行うことができる請求項6ないし9の何れかに記載の複合データ送受信システム。

【公開番号】特開2009−39413(P2009−39413A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209370(P2007−209370)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(505472562)アド・トラスト株式会社 (5)
【Fターム(参考)】