説明

複方生薬抽出物を有効成分として含有する皮膚外用剤組成物

【解決課題】皮膚保湿用、皮膚障壁機能強化用、及び皮膚角質形成細胞の分化誘導用の皮膚外用剤組成物を提供する。
【解決手段】本発明は、石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉の漢方生薬抽出物で構成された複方生薬抽出物を有効成分として含有する皮膚外用剤組成物に関し、より詳細には、上記漢方生薬を最適の割合で混合して複方で抽出することによって、各々の生薬を単方で抽出したものに比べて皮膚角質形成細胞の分化促進、損傷された皮膚障壁機能の回復及び皮膚保湿力を増加させる効果を示す皮膚外用剤組成物に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉の漢方生薬抽出物で構成された複方生薬抽出物を有効成分として含有する皮膚外用剤組成物に関し、より詳細には、上記漢方生薬を最適の割合で混合して複方で抽出することによって、各々の生薬を単方で抽出したものに比べて、皮膚角質形成細胞の分化促進、損傷された皮膚障壁機能の回復、及び皮膚保湿力を増加させる効果を示す皮膚外用剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、外部から個体を保護する障壁機能という非常に重要な機能を行う。障壁機能は、外部からの多様な刺激(化学物質、大気汚染物質、乾燥した環境、紫外線など)に対する防御と、皮膚を通じた体内水分の過度な発散を防止する保護機能であり、このような保護機能は、角質形成細胞で構成された角質層が正常に形成されている場合のみに、その機能を維持することができる。
【0003】
表皮のうち最も外側に存在する角質層(Stratum corneum, horney layer)は、角質形成細胞から形成され、分化が完結された角質細胞とそれを取り囲む脂質層とで構成されている(Marcelo C. L. et al, J. Invest. Dermatol. 80, pp. 37-44, 1983)。
【0004】
角質細胞は、表皮の最下層で持続的に増殖し、皮膚の表面まで上昇する基底細胞として形成され、この間、形態的に及び機能的に段階的な変化を経る特徴的な細胞であり、一定の期間が経過した後、古い角質細胞は皮膚から脱落し、新しい角質細胞が置換してその機能を代行するが、このような繰り返される一連の変化過程を「表皮細胞の分化」または「角化」と呼ぶ。
【0005】
また、角化過程中に角質形成細胞は、天然保湿因子(Natural Moisturizing Factor;NMF)と細胞間脂肪質(セラマイド、コレステロール、脂肪酸)を生成しながら角質層を形成し、角質層が堅固性と柔軟性を有するようにして、皮膚障壁としての機能を保有するようにする。
【0006】
このような角質層は、過度な洗顔や入浴などの生活習慣的要因、乾燥した大気、汚染物質などの環境的な要因、及びアトピー性皮膚や老人性皮膚のような内因性疾患などによってその機能が容易に損なわれてしまう。実際に、現代に入ってさらに増加した様々な要因に起因して、最近になって、皮膚の乾燥症状及びそれによる諸障害を訴える人々が徐々に増加している傾向にある。
【0007】
したがって、適切な皮膚水分を維持するために外部から水分を供給するか、または、体内からの水分損失を防止するための研究が多く進行されてきており、実際に水分保有能力がある様々な種類の保湿剤が開発されている。皮膚保湿剤としては、セラマイドなどの脂質成分と必修脂肪酸及び脂質複合体など角質層での水分保有を増加させることができる物質を使用することが一般的である(非特許文献1)。
【0008】
しかし、最近、皮膚に対する危害要因がますます増加しており、食生活の形態の変化によって角質層の生成及び脱落速度が遅くなり、角質形成細胞の機能低下に起因して角質層の保湿因子と脂質の量が減少し、角質層が正常な皮膚障壁機能を発揮しない皮膚を持つ人々が増加している傾向にある。このような皮膚障壁機能の崩壊は、皮膚乾燥症、アトピー皮膚炎、接触性皮膚炎及び乾癬などの多様な皮膚疾患を誘発するようになる。このような疾患は、既存の通常的な水分保有機能を有する保湿剤だけでも症状緩和は期待することができるが、根本的な治療は難しいのが実情である。
【0009】
ここで用いられる石榴皮(Granate bark)は、石榴(Punica granatum L.)の実、幹、枝及び根の皮(cortex)を言う。この植物、石榴は、熟した時に黄色または黄紅色になる多肉質植物であり、しばしば外皮が不規則に裂けて種子が見えるようになる。漢方では、止瀉、膓出血、口内炎、扁桃腺炎、條虫駆除、流産及び避妊に薬剤として使用される。
【0010】
杏仁(Prunus armeniaca)は、ローズ科に属する杏の成熟した果実を採取して果肉及び種皮を除去し、種子のみを乾燥した後に使用する。漢方では、咳嗽、喘息を治療するのに効果があると知られている。特に、不飽和脂肪酸を多量含有し、皮膚鎮静効果及び柔軟効果に優れていて、且つ美白効果にも優れたものと報告されている。
【0011】
ヨク苡仁(ヨクイニン)(Coix lacryma-jobi)は、稲科に属する鳩麦の種仁であって、漢方では、下痢、湿痺、水腫、頭痛及び筋肉痙攣などの治療に使用される。有効成分としては、コイキソール(Coixol)及びシトステロール(Sitosterol)などがある。
【0012】
三白草(Saururus chinensis)は、双子葉植物胡椒目三白草科の多年生草であって、根茎は白色であり、泥の中で横に伸びる。葉は互生であり、先端は尖っていて、下端部が心臓みたいな形状である。葉の表面は緑色であり、裏面は淡い白色であるが、幹の上部にある2〜3個の葉は表面が白色である。漢方では、植物体の全体を乾かし、身が腫れて小便が難しいときに使用し、脚気、黄疸及び肝炎などにも使用する。
【0013】
紫蘇葉(Perilla frutescens var. acuta)は、唇形科(シソ科: Labiatae)の一年草である紫蘇(beefsteak plant)の葉を言う。茎は、四角形でまっすぐに成長し、20〜80cmの高さになる。葉は、紫蘇葉と言い、えごま(Perilla japonica)の葉に似て幅広い卵形であり、紫色で強い香りがあり、鋸歯状の端部を有する。漢方では、根を含む全草が、貧血治療、発汗抑制、解熱、陣痛、気管支炎、咳嗽、喘息、除胆、胃膓炎、消化促進、めまい、身体の痛症、鼻詰まり及び鼻水に効果的であり、魚中毒の治療のための解毒剤としても使用される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Rawlings A. V. et al, J. Invest. Dermatol., 5, pp.731-741, 1994
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
これより、本発明者は、漢方生薬材から優れた皮膚保湿効果などを示す物質を捜すために研究したところ、石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉の漢方生
薬抽出物で構成された複方生薬抽出物が皮膚保湿、皮膚障壁機能の強化及び皮膚角質形成細胞の分化誘導効果があることを知見し、本発明を完成した。
【0016】
したがって、本発明は、上記5種の漢方生薬材の混合割合を最適な割合に調節し、有効活性成分の抽出を最大化し、これを活用した角質形成細胞の分化促進効果、損傷された皮膚障壁機能の回復、及び皮膚保湿量の増加効果を調査し、これに基づいて、皮膚保湿用、皮膚障壁機能強化用、及び皮膚角質形成細胞の分化誘導用の皮膚外用剤組成物を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明では、石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉で構成された複方生薬抽出物を有効成分として含有する皮膚外用剤組成物を提供する。
【0018】
上記複方生薬抽出物は、石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉を1:2:2:6〜8:6〜8の重量比で混合して抽出したものである。
【0019】
上記皮膚外用剤組成物は、皮膚保湿用、皮膚障壁機能強化用及び皮膚角質形成細胞の分化誘導用に使用される。
【発明の効果】
【0020】
本発明による上記石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉の漢方生薬抽出物で構成された複方生薬抽出物は、角質形成細胞の分化促進、損傷された皮膚障壁機能の回復及び皮膚保湿力を増加させる効果を示す。したがって、上記複方生薬抽出物を含む皮膚外用剤組成物は、表皮分化の不完全に起因して発生する皮膚乾燥症、アトピー皮膚炎、接触性皮膚炎または乾癬などを予防しまたは改善し、皮膚保湿用、皮膚障壁機能強化用、及び皮膚角質形成細胞の分化誘導化粧料組成物または薬学的組成物(pharmaceutical compositions)として有用に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は、本発明による複方生薬抽出物が損傷された皮膚障壁の回復に及ぶ効果を示すグラフである。
【0022】
【図2】図2は、本発明による複方生薬抽出物が皮膚水分量に及ぶ効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉の漢方生薬抽出物で構成された複方生薬抽出物有効成分として含有する皮膚保湿用皮膚外用剤組成物を提供する。
以下、本発明を詳しく説明する。
【0024】
本発明は、石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉の割合を1:2:2:6〜8:6〜8の乾燥重量比で混合して製造した複方生薬抽出物を含有する皮膚外用剤組成物を提供する。各漢方生薬の混合割合は、多様な条件で抽出物を製造して実験した結果、上記条件での効果が最も優れていた。
【0025】
本発明の抽出溶媒としては、精製水、メタノール、エタノール、グリセリン、エチルアセテート、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジクロロメタン及びヘキサンよりなる群から選択された1種を単独で使用するか、2種または3種の溶媒を混合して使用することができる。
【0026】
上記抽出物は、好ましくは、常温で冷浸、加熱及び濾過して得られた液相抽出物、または液相抽出物から溶媒を蒸発させ、噴霧乾燥させまたは凍結乾燥させて得られた抽出物であることを特徴とする。
【0027】
本発明の皮膚外用剤組成物は、上記複方生薬抽出物の含量を組成物の全体重量に対して各々0.0001〜20重量%の量で含有する。その含量が0.0001重量%未満の場合には、上記成分による皮膚保湿効果、皮膚障壁機能の強化効果及び皮膚角質形成細胞の分化誘導効果などを得ることができず、含量が20重量%を超過する場合には、含量増加に比べて効果の増加が大きくないだけでなく、製品の使用感及び剤形の安定度に問題が発生することができる。
【0028】
上記複方生薬抽出物を含有する皮膚外用剤組成物は、皮膚保湿用、皮膚障壁機能強化用及び皮膚角質形成細胞の分化誘導に使用されることができ、したがって、表皮分化の不完全に起因して発生する皮膚乾燥症、アトピー皮膚炎、接触性皮膚炎または乾癬などを予防または改善する皮膚外用剤組成物として有用に使用されることができる。
【0029】
本発明による皮膚外用剤組成物は、例えば、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、パウダー、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル、ボディーエッセンス、メーキャップベース、ファウンデーション、染毛剤、シャンプー、リンスまたはボディー洗浄剤などの化粧料組成物、または軟膏、ゲル、クリーム、パッチまたは噴霧剤などの薬学的組成物に製剤化されることができ、その剤形において特に限定されない。
【0030】
これら各薬学的組成物は、その製剤化に必要で適切な各種の基剤や添加物を含有することができ、これら成分の種類と量は、発明者によって容易に選定されることができる。
以下、本発明の皮膚外用剤組成物の剤形をさらに詳しく説明する。
【0031】
本発明による上記化粧料組成物は、前述の複方生薬抽出物以外に、本発明が目的にする主効果を損傷させない範囲内で、好ましくは、主効果に上昇効果を与えることができる他の成分などを含有してもよい。
【0032】
本発明による複方生薬抽出物は、各化粧料の剤形に製造され、皮膚にそのまま塗布することが好ましいが、通常の外用の製剤で製造してもよい。
【0033】
各剤形の化粧料組成物において、前述の複方生薬抽出物以外に、他の成分は、その他化粧料の剤形または使用目的に応じて当業者が困難なしに適宜選定して配合することができる。
【0034】
前述の製剤は、皮膚保湿効果、皮膚障壁機能の強化効果、及び皮膚角質形成細胞の分化誘導効果を増加させるために皮膚吸収促進物質を含有することができる。
【0035】
また、本発明の化粧料は、化粧料に通常的に使用される水溶性ビタミン、油溶性ビタミン、高分子ペプチド、高分子多糖、スフィンゴ脂質及び海草抽出物よりなる群から選択された1種以上を組成物にさらに含有することができる。
【0036】
また、その他、添加してもよい配合成分としては、油脂成分、保湿剤、皮膚軟化剤(emollients)、界面活性剤、有機及び無機顔料、有機粉体、紫外線吸収剤、防腐剤、殺菌剤、酸化防止剤、植物抽出物、pH調整剤、アルコール、色素、香料、血行促進剤、冷感剤、制汗剤または精製水などを例示することができる。
【0037】
本発明の上記複方生薬抽出物を含有する薬学的組成物は、薬学的組成物の製造に通常的に使用される適切な担体、賦形剤及び希釈剤をさらに含有することができる。
【0038】
その剤形としては、本発明による複方生薬抽出物を含有する薬学組成物は、各々通常の方法によって軟膏、ゲル、クリーム、パッチまたは噴霧剤などの外用剤などを含めて薬剤学的製剤に適したいずれの形態でも剤形化して使用することができる。
【0039】
上記製剤の投与量は、対象者の年齢、性別、体重、症状及び投与方法によって異なっているが、1日当たり1.0〜3.0mLで1日に1〜5回塗布し、1ヶ月以上継続することが好ましい。
【0040】
一方、本発明の上記複方生薬抽出物は、毒性及び副作用がほとんどないので、予防目的で長期間使用するときにも、安心して使用することができる。
【0041】
(発明の実施形態)
以下、実施例及び実験例により本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれらの例に限定されるものではない。
【0042】
[実施例1:複方生薬抽出物の製造1]
乾燥した石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉の割合を1:2:2:7:6の重量比で混合して2kgを準備し、80%-エタノール水溶液5Lを入れ、3回還流抽出した後、15℃で1日間浸漬させた。次に、濾過布を利用した濾過と遠心分離により残渣と濾液を分離し、分離した濾液を減圧濃縮して得た抽出物を水に懸濁した後、1Lのエーテルで5回抽出して色素を除去し、水層を1-ブタノール500mLで3回抽出した。得られた全体1-ブタノール層を減圧濃縮して1-ブタノール抽出物を得、これを少量のメタノールに溶解した後、大量のエチルアセテートに追加し、生成された沈殿物を乾燥することによって、複方生薬抽出物200gを収得した。
【0043】
[実施例2:複方生薬抽出物の製造2]
乾燥した石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉の割合を1:2:2:7:7の重量比で混合して2kgを準備し、実施例1と同一の方法で抽出し、抽出物150gを収得した。
【0044】
[実施例3:複方生薬抽出物の製造3]
乾燥した石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉の割合を1:2:2:7:8の重量比で混合して2kgを準備し、実施例1と同一の方法で抽出し、抽出物170gを収得した。
【0045】
[比較例1:石榴皮抽出物の製造]
乾燥した石榴皮を2kg準備し、80%-エタノール水溶液5Lを入れ、3回還流抽出した後、15℃で1日間沈積させた。次に、濾過布を利用した濾過と遠心分離により残渣と濾液を分離し、分離した濾液を減圧濃縮して得た抽出物を水に懸濁した後、1Lのエーテルで5回抽出して色素を除去し、水層を1-ブタノール500mLで3回抽出した。得られた全体1-ブタノール層を減圧濃縮して1-ブタノール抽出物を得、これを少量のメタノールに溶解した後、大量のエチルアセテートに追加して生成された沈殿物を乾燥することによって、石榴皮抽出物180gを収得した。
【0046】
[比較例2:杏仁抽出物の製造]
乾燥した杏仁を2kg準備したことを除いて、比較例1と同一の方法で抽出し、杏仁抽出物195gを製造した。
【0047】
[比較例3:ヨク苡仁(ヨクイニン)抽出物の製造]
乾燥したヨク苡仁(ヨクイニン)を2kg準備したことを除いて、比較例1と同一の方法で抽出し、ヨク苡仁(ヨクイニン)抽出物210gを製造した。
【0048】
[比較例4:三白草抽出物の製造]
乾燥した三白草を2kg準備したことを除いて、比較例1と同一の方法で抽出し、三白草抽出物150gを製造した。
【0049】
[比較例5:紫蘇葉抽出物の製造]
乾燥した紫蘇葉を2kg準備したことを除いて、比較例1と同一の方法で抽出し、紫蘇葉抽出物130gを製造した。
【0050】
[試験例1:角質形成細胞の分化促進効果]
上記実施例1〜3及び比較例1〜5から収得した抽出物の角質形成細胞の分化促進効果を調べるために、下記のように吸光度を利用して角質形成細胞の分化時に生成されるCE(Cornified Envelop)量を測定した。
【0051】
まず、新生児の表皮から分離して一次培養したヒトの角質形成細胞を培養用フラスコに入れて底に付着させた後、下記表1の試験物質を培養液に1ppm濃度で処理した後、細胞が底面積の70〜80%程度成長するまで5日間培養した。この際、低カルシウム(0.03mM)処理群と高カルシウム(1.2mM)処理群を各々陰性対照群と陽性対照群にした。次に、上記培養した細胞を収穫してPBS(Phophate buffered saline)で洗浄した後、2%SDS(sodium dodecyl sulfate)と20mM濃度のDTT(Dithiothreitol)を含有する10mM濃度のトリス−塩酸緩衝液(Tris-HCl、pH7.4)1mLを加えて、順にソニケイション、ボイリング及び遠心分離を行い、沈殿物をさらに1mLのPBSに懸濁させて、340nmでの吸光度を測定した。これとは別に、上記ソニケイション後の溶液を一部取って、タンパク質の含量を測定し、細胞分化程度の評価時に基準にした。その結果を下記表1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
上記表1から明らかなように、5種の複方生薬抽出物である実施例1〜3を処理した場合、各々の抽出物である比較例1〜5を処理した場合より角質形成細胞の分化促進効果が非常に優れていることを確認することができた。
【0054】
[試験例2:無毛マウス皮膚での皮膚障壁機能の回復及び皮膚保湿力の増加効果測定]
上記複方生薬抽出物が、皮膚損傷によって損傷された皮膚障壁機能の回復に及ぶ効果及び皮膚保湿力の増加に及ぶ効果を測定するために、下記のような実験を行った。
【0055】
まず、生まれ後8〜10週が経過した無毛マウス(Charles River、Japan)の背中にアセトンを1日2回ずつ5日間周期的に塗布し、実験動物の背中皮膚の障壁機能損失を誘導した後、蒸発計でTEWL(Transepidermal water loss;経表皮水分喪失)を測定し、40g/m2/hr以上の経表皮水分喪失を示す皮膚を持つ実験動物のみを対象にし、試験物質としてプロピレングリコールとエタノールを7:3の割合で混合したビヒクル(ビヒクル処理群)と実施例1〜3及び比較例1〜5を各々1%含有するサンプルを皮膚面積5cm2当たり200μLの用量で1日に2回ずつ3日間連続塗布しながら一定時間ごとにTEWLを測定し、その結果を図1に示した。
【0056】
図1の結果から、上記実施例1〜3の処理群がビヒクル及び比較例1〜5の処理群よりさらに速く損傷障壁が回復したことが分かった。
【0057】
また、コニオメータ(ドイツCourage Khazaka社)を使用して皮膚水分量を同時に測定し、その結果を図2に示した。この際、無処理群の皮膚水分量も一緒に測定した。
【0058】
図2の結果において、皮膚水分量においても実施例1〜3の処理群がビヒクル及び比較例1〜5の処理群より高かった。これから、上記複方生薬抽出物を処理した場合、障壁損傷の回復とともに、皮膚水分量も増加することが分かった。
【0059】
以上の結果から、上記複方生薬抽出物は、角質形成細胞の分化促進、損傷された皮膚の障壁の回復及び皮膚保湿力の増加においてその効果が非常に優れていることを確認することができた。
【0060】
以下、上記組成物の剤形例を説明するが、本発明は、これを限定しようとするものではなく、具体的に説明するためである。
【0061】
[剤形例1:せっけん製造]
下記表2に記載された組成によって通常的な方法で剤形例1のせっけんを製造した(単位:重量%)。
【0062】
【表2】

【0063】
[剤形例2:ローションの製造]
下記表3に記載された組成によって通常的な方法で剤形例2のローションを製造した(単位:重量%)。
【0064】
【表3】

【0065】
[剤形例3:クリームの製造]
下記表4に記載された組成によって通常的な方法で剤形例3のクリームを製造した(単位:重量%)。
【0066】
【表4】

【0067】
[剤形例4:パックの製造]
下記表5に記載された組成によって通常的な方法で剤形例4のパックを製造した(単位:重量%)。
【0068】
【表5】

【0069】
[剤形例5:美容液の製造]
下記表6に記載された組成によって通常的な方法で剤形例5の美容液を製造した(単位:重量%)。
【0070】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉で構成された複方生薬抽出物を有効成分として含有する皮膚外用剤組成物。
【請求項2】
上記複方生薬抽出物は、石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉を1:2:2:6〜8:6〜8の重量比で混合して抽出したものであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項3】
上記複方生薬抽出物は、組成物の全体重量に対して0.0001〜20重量%の量で含有されることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項4】
上記複方生薬抽出物は、精製水、メタノール、エタノール、グリセリン、エチルアセテート、ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジクロロメタン及びヘキサンよりなる群から選択された1種、2種または3種の溶媒を使用して抽出されたものであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項5】
上記複方生薬抽出物は、常温で冷浸、加熱または濾過して得られた液相物であるか、または上記液相物から溶媒を蒸発、噴霧乾燥または凍結乾燥させて得たものであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項6】
上記組成物は、柔軟化粧水、収斂化粧水、栄養化粧水、栄養クリーム、マッサージクリーム、エッセンス、アイクリーム、アイエッセンス、クレンジングクリーム、クレンジングフォーム、クレンジングウォーター、パック、パウダー、ボディーローション、ボディークリーム、ボディーオイル、ボディーエッセンス、メーキャップベース、ファウンデーション、染毛剤、シャンプー、リンスまたはボディー洗浄剤の化粧料組成物に剤形化されるものであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項7】
上記組成物は、軟膏、ゲル、クリーム、パッチまたは噴霧剤の薬学組成物に剤形化されるものであることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項8】
上記薬学組成物は、1日当たり1.0〜3.0mLの量で、1日に1〜5回、1ヶ月以上続いて塗布するものであることを特徴とする請求項7に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項9】
上記組成物は、皮膚保湿用であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項10】
上記組成物は、皮膚障壁機能強化用であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項11】
上記組成物は、皮膚角質形成細胞の分化誘導用であることを特徴とする請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。
【請求項12】
石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉で構成された複方生薬抽出物を有効成分として含有する組成物の皮膚保湿用途。
【請求項13】
石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉で構成された複方生薬抽出物を有効成分として含有する組成物の皮膚障壁機能強化用用途。
【請求項14】
石榴皮、杏仁、ヨク苡仁(ヨクイニン)、三白草及び紫蘇葉で構成された複方生薬抽出物を有効成分として含有する組成物の皮膚角質形成細胞の分化誘導用途。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2011−505353(P2011−505353A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−535870(P2010−535870)
【出願日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際出願番号】PCT/KR2008/006698
【国際公開番号】WO2009/069906
【国際公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(503327691)株式會社アモーレパシフィック (73)
【住所又は居所原語表記】181, Hankang−ro 2−ka, Yongsan−ku, Seoul 140−777 Republic of Korea
【Fターム(参考)】