説明

複素環化合物およびその使用

本発明は、化合物、その薬学的に受容可能な組成物、およびその使用法を提供する。他の局面では、本発明は、それぞれ、Cys814、Cys822、Cys788、Cys774、またはCys1024で阻害剤と共有結合したPDGFR−α、PDGFR−β、c−KIT、cFMS、またはKDR、またはそれらの突然変異体のいずれかを含む結合体を提供する。いくつかの実施形態では、上記阻害剤は、リンカー部分を介して共有結合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願への相互参照)
本発明は、2007年6月4日に出願された米国仮特許出願第60/941,873号および2007年9月13日に出願された米国仮特許出願第60/972,048号に対する優先権を主張し、この各々の全体は本明細書中に参考として援用される。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、タンパク質キナーゼ阻害剤として有用な化合物に関する。本発明はまた、本発明の化合物を含む、薬学的に受容可能な組成物、および各種疾患の処置における当該組成物の使用法を提供する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
近年、酵素の構造、および病気に関連する他の生体分子に関する理解の深まりが新規な治療薬の調査に大いに役立っている。広範囲な研究の対象とされてきた重要な酵素類の1つにタンパク質キナーゼがある。
【0004】
タンパク質キナーゼは、細胞内の各種のシグナル伝達過程の制御に関与する構造的に関係がある酵素の大ファミリーを構成する。タンパク質キナーゼは、共通の先祖遺伝子から、それらの構造および触媒機能の保存により進化したと考えられている。ほぼ全てのキナーゼには、類似のアミノ酸触媒ドメインが250〜300個含まれている。これらのキナーゼ類は、それらがリン酸化する基質によりいくつかのファミリーに区分することができる(例えば、タンパク質チロシン、タンパク質セリン/トレオニン、脂質等)。
【0005】
一般に、タンパク質キナーゼは、ヌクレオシド三リン酸から、シグナル伝達経路に関わるタンパク質受容体へのリン酸転移を行うことにより細胞内信号伝達を媒介する。これらのリン酸化事象は、標的タンパク質の生物学的機能を調整または調節し得る分子オン/オフスイッチとして作用する。これらのリン酸化事象は、最終的に、各種の細胞外刺激および他の刺激に応答して引き起こされる。そのような刺激の例としては、環境的および化学的ストレス信号(例えば、浸透圧衝撃、熱ショック、紫外線放射、細菌内毒素、およびH)、サイトカイン類(例えば、インターロイキン−1(IL−1)、ならびに腫瘍壊死因子α(TNF−α))および成長因子(例えば、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、および繊維芽細胞成長因子(FGF))が挙げられる。細胞外刺激は、細胞成長、移動、分化、ホルモン分泌、転写因子の活性化、筋収縮、グルコース代謝、タンパク質合成の制御、および細胞周期の調節に関連する1つ以上の細胞性応答に影響を及ぼし得る。
【0006】
上記のようなタンパク質キナーゼの媒介による事象により引き起こされる異常細胞性応答に関連する病気が多数存在する。それらの病気は、自己免疫疾患、炎症性疾患、骨疾患、代謝性疾患、神経および神経変性疾患、癌、心臓血管疾患、アレルギーおよびぜんそく、アルツハイマー病、ならびにホルモン関連疾患を含むがこれらに限定されない。従って、依然として、治療薬として有用なタンパク質キナーゼ阻害剤を見つける必要がある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
(発明の要旨)
現在、本発明の化合物、およびその薬学的に受容可能な組成物が、1つ以上のタンパク質キナーゼの阻害剤として有効であることが分かっている。そのような化合物は一般式I:
【0008】
【化1】

またはその薬学的に受容可能な塩を有し、式中、T、W、R、R、R、R、R、R、およびRは本明細書で定義するとおりである。
【0009】
本発明の化合物、およびその薬学的に受容可能な組成物は、タンパク質キナーゼの媒介による事象により引き起こされる異常細胞性応答に関連する各種病気、疾患、または病状の処置に有用である。そのような病気、疾患、または病状は、本明細書中に記載のものを含む。
【0010】
本発明により提供される化合物はまた、生物学的および病理学的現象におけるキナーゼ類の研究、そのようなキナーゼ類によって媒介される細胞内シグナル伝達経路の研究、および新規なキナーゼ阻害剤の比較評価にも有用である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】対照化合物および化合物II−2を用いたEOL−1細胞の細胞増殖の線量応答阻害を示す。
【図2】EOL−1細胞を用いた「ウォッシュアウト」実験における対照化合物および化合物II−2を用いたPDGFRの阻害を示す。
【図3】GIST430細胞を用いた「ウォッシュアウト」実験における化合物III−14を用いたc−KITの阻害を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(いくつかの実施形態の詳細な説明)
1.本発明の化合物の概要:
特定の実施形態では、本発明は、式Iの化合物:
【0013】
【化2】

またはその薬学的に受容可能な塩を提供し、ここで、
Tは−NHC(O)−または−C(O)NH−であり、
WはCHまたはNであり、
、R、R、およびRは、それぞれ独立して、R、OR、またはハロゲンから選択され、
各Rは、独立して、水素、低級アルキル、または低級ハロアルキルであり、
は弾頭基(warhead group)であり、
はR、ハロゲン、−N(R)C(O)OR、またはRで置換された1−イミダゾイルから選択されるか、または
およびRは、それらの介在原子と組み合わされ、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する5〜7員の飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であって、当該環は、弾頭基、およびオキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される0〜3個の基で置換される、環を形成し、
は水素、低級アルキル、またはハロゲンから選択される。
【0014】
特定の実施形態では、本発明は、式IIまたはIIIの化合物:
【0015】
【化3】

またはその薬学的に受容可能な塩を提供し、ここで、
各Wは、独立して、CHまたはNであり、
、R、R、およびRは、それぞれ独立して、R、OR、またはハロゲンから選択され、
各Rは、独立して、水素、低級アルキル、または低級ハロアルキルであり、
各Rは、独立して、弾頭基であり、
各Rは、独立して、R、ハロゲン、−N(R)C(O)OR、またはRで置換された1−イミダゾイルから選択されるか、または
およびRは、それらの介在原子と組み合わされ、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する5〜7員の飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であって、当該環は、弾頭基、およびオキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される0〜3個の基で置換される、環を形成し、
は水素、低級アルキル、またはハロゲンから選択される。
【0016】
2. 化合物および定義:
本発明の化合物は上記において一般的に記載したものを含んでおり、本明細書中に開示するクラス、サブクラス、および種によってさらに例示される。本明細書で用いる以下の定義は、特に明示しない限り適用されるものとする。本発明の目的のために、化学元素は、Periodic Table of the Elements,CAS version,Handbook of Chemistry and Physics,75th Edに従って特定される。さらに、有機化学の一般原則は、”Organic Chemistry”,Thomas Sorrell,University Science Books,Sausalito:1999、および”March’s Advanced Organic Chemistry”,5th Ed.,Ed.:Smith,M.B. and March,J.,John Wiley&Sons,New York:2001に記載されており、これらの内容の全てを本明細書において参考として援用する。
【0017】
本明細書に記載するように、本発明の化合物は、上記で一般的に記載したように、または本発明の特定のクラス、サブクラス、および種によって例示したように、1つ以上の置換基で随意に置換してもよい。「随意に置換」という文言は、「置換または非置換」という文言と相互互換的に用いられることは言うまでもない。一般に、「置換」という用語は、前に「随意に」という用語があるなしに関わらず、所与の構造における水素ラジカルと特定した置換基のラジカルの置換えを指す。特に明示しない限り、随意に置換した基は、当該基の各置換可能な位置に置換基を有することができ、いずれかの所与の構造における複数の位置が特定した群から選択される複数の置換基と置換可能な場合、当該置換基は、全ての位置で同じであっても異なっていてもよい。本発明で想定する置換基の組み合わせは、好ましくは、安定したまたは化学的に実現可能な化合物を形成するものである。本明細書で用いる「安定した」という用語は、本明細書に開示する1つ以上の目的のために産生、検出、ならびに、好ましくは、復元、精製、および使用を可能にする条件に置かれた際に実質的に変化しない化合物を指す。いくつかの実施形態では、安定した化合物または化学的に実現可能な化合物は、湿気または他の化学反応条件がない場合に、少なくとも1週間、40度以下の温度に維持されても実質的に変化しないものである。
【0018】
本明細書で用いる「脂肪族」または「脂肪族基」という用語は、完全に飽和しているかもしくは1つ以上の不飽和単位を含む直鎖(すなわち、非分岐鎖)もしくは分岐鎖の置換または非置換炭化水素鎖、または完全に飽和しているかもしくは1つ以上の不飽和単位を含むが芳香族ではなく(本明細書では「炭素環」、「脂環式」、または「シクロアルキル」とも呼ぶ)、当該分子の残りに対して1つの付着点を有する単環式炭化水素もしくは二環式炭化水素を意味する。特に明示しない限り、脂肪族基は、1〜6個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、脂肪族基は、1〜5個の脂肪族炭素原子を含む。他の実施形態では、脂肪族基は、1〜4個の脂肪族炭素原子を含む。さらに他の実施形態では、脂肪族基は、1〜3個の脂肪族炭素原子を含み、またさらに他の実施形態では、脂肪族基は、1〜2個の脂肪族炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、「脂環式」(または「炭素環」もしくは「シクロアルキル」)は、完全に飽和しているかもしくは1つ以上の不飽和単位を含むが芳香族ではなく、当該分子の残りに対して1つの付着点を有する単環式C〜C炭化水素または二環式C〜C10炭化水素であって、当該二重の環系における単一の環のいずれもが3〜7員であるものを指す。適切な脂肪族基は、直鎖もしくは分岐鎖の置換もしくは非置換アルキル、アルケニル、アルキニル基、および(シクロアルキル)アルキル、(シクロアルケニル)アルキル、または(シクロアルキル)アルケニル等、それらの混成物を含むがそれらに限定されない。
【0019】
「低級アルキル」という用語は、C1〜4直鎖もしくは分岐鎖アルキル基を指す。低級アルキル基の例として、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、およびtert−ブチルがある。
【0020】
「低級ハロアルキル」という用語は、1つ以上のハロゲン原子で置換されるC1〜4直鎖もしくは分岐鎖アルキル基を指す。
【0021】
「ヘテロ原子」という用語は、酸素、硫黄、窒素、リン、またはケイ素(酸化型の窒素、硫黄、リン、もしくはケイ素、いずれの塩基性窒素の四級化型、または、複素環の置換可能な窒素(例えば、(3,4−ジヒドロ−2H−ピロリルにおける)N、(ピロリルジニルにおける)NH、または(N置換ピロリルジニルにおける)NRのいずれも含む)の1つ以上を意味する。
【0022】
本明細書で用いる「不飽和」という用語は、一部分が1つ以上の不飽和単位を有することを意味する。
【0023】
本明細書で用いる「二価のC1〜8[またはC1〜6]飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖」という用語は、本明細書中で定義する直鎖もしくは分岐鎖である二価アルキレン、アルケニレン、およびアルキニレン鎖を指す。
【0024】
「アルキレン」という用語は、二価アルキル基を指す。「アルキレン鎖」は、ポリメチレン基、すなわち、−(CH−(ここで、nは正の整数であり、好ましくは、1〜6、1〜4、1〜3、1〜2、または2〜3)である。置換アルキレン鎖は、1つ以上のメチレン水素原子が置換基と置き換えられたポリメチレン基である。適切な置換基は、置換脂肪族基について後述するものを含む。
【0025】
「アルケニレン」という用語は、二価アルケニル基を指す。置換アルケニレン鎖は、1つ以上の水素原子が置換基と置き換えられた少なくとも1つの二重結合を含むポリメチレン基である。適切な置換基は、置換脂肪族基について後述するものを含む。
【0026】
本明細書で用いる、「シクロプロピレニル」という用語は、下記の構造の二価シクロプロピル基を指す:
【0027】
【化4】

「ハロゲン」という用語は、F、Cl、Br、またはIを意味する。
【0028】
「アリール」という用語は、単独で、または「アラルキル」、「アラルコキシ」、または「アリールオキシアルキル」のようにより大きな部分の一部として用いた場合、合計で5〜14環員を有する単環または二環系であって、当該系の少なくとも1つの環は芳香族であり、当該系の各環は3〜7環員を含むものを指す。「アリール」という用語は、「アリール環」という用語と相互互換的に用いられ得る。
【0029】
特に明示しない限り、本明細書中に示す構造は、当該構造の全ての異性体(例えば、エナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何学的形状(または立体配座))、例えば、各不斉中心ごとのRおよびS配置、ZおよびE二重結合異性体、ならびにZおよびE配座異性体を含むものとする。それゆえ、単一の立体化学異性体、ならびに本化合物のエナンチオマー、ジアステレオマー、および幾何学的形状(または立体配座)の混合物は本発明の範囲内である。特に明示しない限り、本発明の化合物の全ての互変異性型は、本発明の範囲内である。さらに、特に明示しない限り、本明細書中で示す構造は、1つ以上の同位体濃縮原子が存在することだけが異なる化合物も含むものとする。例えば、本構造において水素が重水素もしくは三重水素により置き換えられるか、または炭素が13Cまたは14C濃縮炭素で置き換えられる化合物は、本発明の範囲内である。そのような化合物は、例えば、解析ツール、生物学的アッセイにおけるプローブ、または本発明に係る治療薬として有用である。いくつかの実施形態では、式IのR基は1つ以上の重水素原子を含む。
【0030】
本明細書で用いる「不可逆」または「不可逆阻害剤」という用語は、実質的に元に戻せない様式で標的タンパク質キナーゼと共有結合可能な阻害剤(すなわち、化合物)を指す。すなわち、可逆的阻害剤は、標的タンパク質キナーゼと結合可能であり(一般には共有結合を形成できない)、それゆえ、標的タンパク質キナーゼから解離可能であるが、不可逆阻害剤は、一旦、共有結合が形成されると、実質的には、標的タンパク質キナーゼと結合したままとなる。不可逆阻害剤は、通常、時間依存性を示し、それにより、阻害剤が酵素と接触する時間とともに阻害度が増大する。化合物が不可逆阻害剤として作用しているかどうかを特定する方法は、当業者には公知である。そのような方法は、化合物のタンパク質キナーゼ標的との阻害プロファイルの酵素反応速度解析、阻害剤化合物の存在下で修飾したタンパク薬物標的の質量分析法の使用、断続的暴露(「ウォッシュアウト」実験としても知られる)、および放射性標識阻害剤等の標識の使用により酵素の共有結合修飾を示すこと、ならびに当業者に公知の他の方法を含むがそれらに限定されない。
【0031】
当業者は、特定の反応性官能基が「弾頭」として作用可能であることを認識する。本明細書で用いる「弾頭」または「弾頭基」という用語は、本発明の化合物上に存在する官能基であって、この官能基は、特定のタンパク質キナーゼの結合ポケット内に存在するアミノ酸残留物(システイン、リジン、ヒスチジン、または共有結合的に修飾可能な他の残留物)と共有結合することにより、タンパク質キナーゼを不可逆的に阻害することが可能であるものを指す。弾頭として有用な反応性化学官能基の例は、アクリルアミド、α、β、およびN置換アクリルアミド、ビニルスルホンアミド、ビニルスルホン、エポキシスルホン、アリルスルホン、エポキシド、アザペプチドエポキシド、α,β不飽和カルボニル誘導体、α,β不飽和アルコール、アシルラクタム、アシルオキサゾリジノン、およびアシル尿素官能性を有するマイケル受容体、置換アルコール基を有するエステル由来マイケル受容体、α位が置換されたcis−α,β−不飽和エステルまたはtrans−α,β−不飽和エステル、アミド含有マイケル受容体、クマリン、シンナマート、およびカルコンを含むがそれらに限定されない。
【0032】
本明細書で用いる、「阻害剤」という用語は、適度な親和性で標的タンパク質キナーゼと結合および/またはそれを阻害する化合物として定義される。特定の実施形態では、阻害剤は、約50μM、約1μM未満、約500nM未満、約100nM未満、または約10nM未満のIC50および/または結合定数を有する。
【0033】
本明細書で用いる「適度な親和性」および「適度に阻害する」という用語は、本発明の化合物またはその組成物およびPDGFR(αまたはβ)、cKit、KDR、またはcFMSを含むサンプルと本発明の化合物またはその組成物を含まずにPDGFR(αまたはβ)、cKit、KDR、またはcFMSを含む等価サンプル間のPDGFR(αまたはβ)、cKit、KDR、またはcFMS活性の変化が測定可能であることを意味する。
【0034】
3. 例示的な化合物の説明:
1つの局面では、本発明は、式II−aの化合物:
【0035】
【化5】

またはその薬学的に受容可能な塩を提供し、ここで、
WはCHまたはNであり、
、R、R、およびRの各々は、独立して、R、OR、またはハロゲンから選択され、
各Rは、独立して、水素、低級アルキル、または低級ハロアルキルであり、
は−L−Yであり、
Lは、共有結合または二価のC1〜8飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lの1つ、2つ、または3つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−N(R)C(O)−、−C(O)N(R)−、−O−、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)O−、−S−、−SO−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、または−C(=N)−により置き換えられ、
Yは、水素、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族
、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜10員の単環もしくは二環の、飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であり、当該環は、−Q−Z、オキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される1〜4個の基で置換され、
Qは、共有結合または二価のC1〜6飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Qの1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−S−、−O−、−C(O)−、−SO−、または−SO−により置き換えられ、
Zは、水素、または、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族であり、
は、R、ハロゲン、−N(R)C(O)OR、またはRで置換された1−イミダゾイルから選択されるか、または
およびRは、それらの介在原子と組み合わされ、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有し、弾頭基で置換される5〜7員の飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であって、当該弾頭基は−Q−Zであり、当該環は、オキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される0〜3個の基でさらに置換される、環を形成し、
は水素、低級アルキル、またはハロゲンから選択される。
【0036】
特定の実施形態では、上記W基はCHである。他の実施形態では、WはNである。よって、本発明の他の実施形態では、式II−bまたはII−cのいずれかの化合物:
【0037】
【化6】

またはその薬学的に受容可能な塩を提供し、ここで、R、R、R、R、R、R、およびRの各々は上記で定義し、本明細書中においてクラスおよびサブクラスで説明したとおりである。
【0038】
特定の実施形態では、上記R、R、R、およびR基の各々は水素である。
【0039】
上記で一般的に定義したように、Rは−L−Yであり、Lは、共有結合または二価のC1〜8飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lの1つ、2つ、または3つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−N(R)C(O)−、−C(O)N(R)−、−O−、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)O−、−S−、−SO−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、−N=N−、または−C(=N)−により置き換えられ、Yは、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する水素、C1〜6脂肪族、または3〜7員飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であり、当該環は、独立してオキソ、ハロゲン、CN、C1〜6脂肪族、または−Q−Zから選択される1〜4個の基で置換される。
【0040】
特定の実施形態では、Lは共有結合である。
【0041】
他の実施形態では、Lは、二価のC1〜8飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lの少なくとも1つのメチレン単位は、−S−、−S(O)−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、または−C(=N)−により置き換えられ、Lのさらに1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−O−、−N(R)−、または−C(O)−により置き換えられる。いくつかの実施形態では、Lは、二価のC2〜8直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lは少なくとも1つの二重結合を有し、Lの少なくとも1つのメチレン単位は、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−N(R)SO−、−SON(R)−、−S−、−S(O)−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、または−C(=N)−により置き換えられ、Lのさらに1つのまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、シクロプロピレン、−O−、−N(R)−、または−C(O)−により置き換えられる。さらに他の実施形態では、Lは、二価のC1〜8直鎖もしくは分岐アルキレン鎖であり、Lの少なくとも1つのメチレン単位は、−S−、−S(O)−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、または−C(=N)−により置き換えられ、Lのさらに1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−O−、−N(R)−、または−C(O)−により置き換えられる。いくつかの実施形態では、Lは、二価のC1〜8直鎖もしくは分岐アルキレン鎖であり、Lの少なくとも1つのメチレン単位は、−C(=N)−により置き換えられ、Lのさらに1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−S−、−S(O)−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、−O−、−N(R)−、または−C(O)−により置き換えられる。
【0042】
特定の実施形態では、Lは、二価のC1〜8飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖である。特定の実施形態では、Lは−CH−である。
【0043】
いくつかの実施形態では、Lは、二価のC2〜8直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lは、少なくとも1つの三重結合を有する。特定の実施形態では、Lは二価のC2〜8直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lは、少なくとも1つの三重結合を有し、Lのさらに1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−S−、−S(O)−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、−O−、−N(R)−、または−C(O)−により置き換えられる。いくつかの実施形態では、Lは、少なくとも1つの三重結合を有し、Lの少なくとも1つのメチレン単位は、−N(R)−、−N(R)C(O)−、または−O−により置き換えられる。
【0044】
L基の例には、−C≡C−、−C≡CCHN(イソプロピル)−、−NHC(O)C≡CCHCH−、−CH−C≡C−CH−、および−C≡CCHO−が含まれる。
【0045】
特定の実施形態では、Lは、二価のC2〜8直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lは、少なくとも1つの二重結合を有し、Lの少なくとも1つのメチレン単位は、シクロプロピレン、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−N(R)SO−、−SON(R)−、−S−、−S(O)−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、または−C(=N)−により置き換えられ、Lのさらに1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−O−、−N(R)−、または−C(O)−により置き換えられる。
【0046】
L基の例には、−CH−、−NH−、−CHNH−、−NHCH−、−NHC(O)−、−NHC(O)CHOC(O)−、−NHC(O)CH=CH−、−CHNHC(O)−、−NHC(O)CH=CHCHN(CH)−、−NHC(O)CH=CHCHO−、−CHNHC(O)CH=CH−、−NHSO−、−NHSOCH−、−NHSOCH=CH−、−NHSOCH=CHCH−、−NHC(O)(C=N)−、−NHC(O)(C=N)C(O)−、−NHC(O)CHOC(O)−、−SONH−、−NHC(O)CH=CHCHN(CH)−、および−NHC(O)CH=CHCHO−が含まれる。
【0047】
上述したように、特定の実施形態では、Lは、二価のC2〜8直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lは、少なくとも1つの二重結合を有する。当業者は、そのような二重結合が炭化水素主鎖内に存在し得ること、または主鎖の「exo」であるため、アルキリデン基を形成し得ることを認識する。例えば、そのようなアルキリデン分岐鎖を有するL基は、−CHC(=CH)CH−を含む。よって、いくつかの実施形態では、Lは、二価のC2〜8直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lは、少なくとも1つのアルキリデニル二重結合を有する。L基の例には、−NHC(O)C(=CH)CH−が含まれる。
【0048】
特定の実施形態では、Lは、二価のC2〜8直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lの1つのメチレン単位は、シクロプロピレンにより置き換えられ、Lのさらに1つまたは2つのメチレン単位は、独立して、−C(O)−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−N(R)SO−、または−SON(R)−により置き換えられる。L基の例には、−NHC(O)−シクロプロピレン−SO−および−NHC(O)−シクロプロピレン−が含まれる。
【0049】
特定の実施形態では、Yは水素である。
【0050】
特定の実施形態では、Yは、随意に、オキソ、ハロゲン、またはCNで置換されたC1〜6脂肪族である。他の実施形態では、Yは、C1〜6アルキルである。いくつかの実施形態では、YはC2〜6アルケニルである。他の実施形態では、YはC2〜4アルキニルである。特定の実施形態では、Yは、随意に、−CNまたは−NOで置換されたシクロプロピルである。いくつかの実施形態では、Yは、シクロプロペニルまたはシクロブテニルである。
【0051】
特定の実施形態では、Yは、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜10員の単環もしくは二環の、飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であり、当該環は、−Q−Z、オキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される1〜4個の基で置換される。
【0052】
いくつかの実施形態では、Yは、フェニルまたはピリジルである。
【0053】
特定の実施形態では、Yは、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する飽和3〜6員の単環であり、Yは上記で定義したように置換される。いくつかの実施形態では、Yは、酸素または窒素から選択される1個のヘテロ原子を有する飽和した3〜4員の単環である。環の例としては、エポキシドおよびオキセタン環がある。他の実施形態では、Yは、酸素または窒素から選択される1〜2個のヘテロ原子を有する飽和した5〜6員の単環である。そのような環は、ピペリジンおよびピロリジンを含む。
【0054】
他の実施形態では、Yは、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5員の部分不飽和もしくはアリール環であり、Yは、上記で定義したように置換される。いくつかの実施形態では、Yは、窒素、酸素、および硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する5員の部分不飽和もしくはアリール環である。環の例としては、チアジアゾール、オキサゾール、オキサジアゾール、および2,5−ジヒドロ−1H−ピロールがある。
【0055】
特定の実施形態では、Yは、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する8〜10員の二環の、飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であり、Yは上記で定義したように置換される。他の局面では、Yは、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する9〜10員の二環、部分不飽和、もしくはアリール環である。二環式環の例としては、2,3−ジヒドロベンゾ[d]イソチアゾールがある。
【0056】
一般に上記に定義するように、Yが環であるとき、当該環は、−Q−Z、オキソ、NO、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される1〜4個の基で置換される。特定の実施形態では、Qは、二価のC1〜6飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Qの1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−S−、−O−、−C(O)−、−SO−、または−SO−により置き換えられる。他の実施形態では、Qは、少なくとも1つの二重結合を有する二価のC2〜6直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Qの1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−S−、−O−、−C(O)−、−SO−、または−SO−により置き換えられる。いくつかの実施形態では、−Q−Zは、−NHC(O)CH=CHまたは−C(O)CH=CHである。特定の実施形態では、上記Y環は、オキソ、フルオロ、クロロ、−NHC(O)CH=CH、−C(O)CH=CH、NO、−C(O)OEt、またはCNから選択される少なくとも1つの基で置換される。
【0057】
特定の実施形態では、Yは、下記表1に記載のものから選択され、各破線は、分子の残りの部分に対する付着点を示す。
【0058】
【表1−1】

【0059】
【表1−2】

【0060】
【表1−3】

特定の実施形態では、Yは、Lが−CH−である場合、マレイミド以外である。他の実施形態では、Yは、Lが−CH−である場合、エポキシド以外である。
【0061】
特定の実施形態では、Rは、下記表2に記載されるものから選択され、各破線は、分子の残りの部分に対する付着点を示す。
【0062】
【表2−1】

【0063】
【表2−2】

【0064】
【表2−3】

【0065】
【表2−4】

特定の実施形態では、Rは、−NHC(O)CH=CHまたは−CHNHC(O)CH=CHから選択される。
【0066】
上記において一般的に定義するように、Rは弾頭基であるか、またはRおよびRが環を形成する場合、−Q−Zが弾頭基である。いずれの特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、そのようなR基、すなわち、弾頭基は、特定のタンパク質キナーゼの結合ドメインにおける重要なシステイン残基との共有結合に特に適していると考えられる。結合ドメイン内にシステイン残基を有するタンパク質キナーゼは、当業者には公知であり、PDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、およびcFMSを含む。特定の実施形態では、本発明の化合物は、発明化合物が下記のシステイン残基の1つ以上を標的とすることを特徴とする弾頭基を有する:
【0067】
【化7】

よって、いくつかの実施形態では、Rは、−L−Y部分は、システイン残基と共有結合することにより、酵素を不可逆的に阻害可能であることを特徴とする。当業者は、本明細書中に定義する各種の弾頭基がそのような共有結合に適していることを認識する。そのようなR基は、本明細書中に記載するとともに上記表2に示すものを含むがそれらに限定されない。
【0068】
他の局面では、本発明は、それぞれ、Cys814、Cys822、Cys788、Cys774、またはCys1024で阻害剤と共有結合したPDGFR−α、PDGFR−β、c−KIT、cFMS、またはKDR、またはそれらの突然変異体のいずれかを含む結合体を提供する。いくつかの実施形態では、上記阻害剤は、リンカー部分を介して共有結合する。
【0069】
特定の実施形態では、本発明は、式Cys814−リンカー−阻害剤部分、Cys822−リンカー−阻害剤部分、Cys788−リンカー−阻害剤部分、Cys774−リンカー−阻害剤部分、またはCys1024−リンカー−阻害剤部分の結合体を提供し、上記Cys814は、PDGFR−αのものであり、上記Cys822は、PDGFR−βのものであり、上記Cys788は、c−KITのものであり、上記Cys774は、cFMSのものであり、上記Cys1024は、KDRのものである。当業者は、上記「リンカー」基が本明細書中に記載する−L−Y弾頭基と対応することを認識する。従って、特定の実施形態では、上記リンカー基は、上記で定義し、本明細書のクラスおよびサブクラスで説明した−L−Yについて定義したとおりである。しかしながら、上記リンカー基は二価であるため、対応する−L−Y基も弾頭と標的システインの反応により生じる二価であることは言うまでもない。
【0070】
特定の実施形態では、上記阻害剤部分は、式Aの化合物:
【0071】
【化8】

であり、式AのR、R、R、R、R、R、およびW基の各々は、上記式Iについて定義し、本明細書のクラスおよびサブクラスにおいて説明したとおりである。よって、特定の実施形態では、本発明は、下記のいずれかの式の結合体:
【0072】
【化9】

を提供し、式AのR、R、R、R、R、R、およびW基の各々は、上記式Iについて定義し、本明細書のクラスおよびサブクラスにおいて説明したとおりであり、上記Cys814は、PDGFR−αのものであり、上記Cys822は、PDGFR−βのものであり、上記Cys788は、c−KITのものであり、上記Cys774は、cFMSlのものであり、上記Cys1024は、KDRのものである。
【0073】
上記において一般的に定義するように、Rは、R、ハロゲン、−N(R)C(O)OR、またはRで置換された1−イミダゾイルから選択されるか、またはRおよびRは、それらの介在原子と組み合わされ、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する5〜7員の飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であって、当該環は、オキソ、ハロゲン、CN、C1〜6脂肪族、または−Q−Zから独立して選択される1〜3個の基で置換される、環を形成する。
【0074】
特定の実施形態では、Rは、R、ハロゲン、−N(R)C(O)OR、またはRで置換された1−イミダゾイルから選択される。いくつかの実施形態では、Rは、ハロゲンである。他の実施形態では、RはRであり、ここで、Rは水素である。さらに他の実施形態では、RはRであり、ここで、Rは低級アルキルまたは低級ハロアルキルである。例示的なR基は、メチル、エチル、トリフルオロメチル、クロロ、ブロモ、フルオロ、およびヨードである。特定の実施形態では、Rはトリフルオロメチルである。
【0075】
いくつかの局面では、RおよびRは、それらの介在原子と組み合わされ、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する5〜7員の飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であって、当該環は、オキソ、ハロゲン、CN、C1〜6脂肪族、または−Q−Zから独立して選択される1〜3個の基で置換される、環を形成する。特定の実施形態では、RおよびRは、それらの介在原子と組み合わされ、それらと縮合したフェニル環とともに、ナフチル、テトラヒドロキノリン、インドリン、イソインドリン、1H−インドール、またはテトラヒドロイソキノリン環を形成する。特定の実施形態では、RおよびRは、それらの介在原子と組み合わされ、−Q−Zで置換されたナフチル環を形成する。
【0076】
特定の実施形態では、RおよびRによって形成された環は、−Q−Zで置換される。特定の実施形態では、RおよびRによって形成された環は、−NHC(O)CH=CH、−C(O)CH=CH、または−CHN(CHで置換される。いくつかの実施形態では、RおよびRは、それらの介在原子と組み合わされ、−NHC(O)CH=CHで置換されたナフチル環を形成する。
【0077】
上記において一般的に定義するように、Rは、水素、低級アルキル、またはハロゲンから選択される。特定の実施形態では、Rは低級アルキルである。いくつかの実施形態では、Rはメチルである。
【0078】
他の局面では、本発明は、式III−aの化合物:
【0079】
【化10】

またはその薬学的に受容可能な塩を提供し、ここで、
WはCHまたはNであり、
、R、R、およびRの各々は、独立して、R、OR、またはハロゲンから選択され、
各Rは、独立して、水素、低級アルキル、または低級ハロアルキルであり、
は−L−Yであり、ここで、
Lは、共有結合または二価のC1〜8飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lの1つ、2つ、または3つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−N(R)C(O)−、−C(O)N(R)−、−O−、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)O−、−S−、−SO−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、または−C(=N)−により置き換えられ、
Yは、水素、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜10員の単環もしくは二環の、飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であり、当該環は、独立して、−Q−Z、オキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から選択される1〜4個の基で置換され、
Qは、共有結合または二価のC1〜6飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Qの1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−S−、−O−、−C(O)−、−SO−、または−SO−により置き換えられ、
Zは、水素または随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族であり、
は、R、ハロゲン、−N(R)C(O)OR、またはRで置換された1−イミダゾイルから選択されるか、または
およびRは、それらの介在原子と組み合わされ、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有し、弾頭基で置換される5〜7員の飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環を形成し、当該弾頭基は−Q−Zであり、当該環は、独立してオキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から選択される0〜3個の基でさらに置換され、
は、水素、低級アルキル、またはハロゲンから選択される。
【0080】
特定の実施形態では、式III−aのW、R、R、R、R、R、R、およびR基の各々は、上記で定義し、本明細書のクラスおよびサブクラスで説明したとおりである。
【0081】
特定の実施形態では、式III−aのR基は低級アルキルである。
【0082】
本明細書に記載するように、特定の実施形態では、式III−aのW基はCHであり、他の実施形態では、WはNである。よって、本発明の他の実施形態では、式III−bまたはIII−cのいずれかの化合物:
【0083】
【化11】

またはその薬学的に受容可能な塩を提供し、R、R、R、R、R、R、およびRの各々は、上記で定義し、本明細書のクラスおよびサブクラスで説明したとおりである。
【0084】
式IIの化合物の例を下記表3に示す。
【0085】
【表3−1】

【0086】
【表3−2】

【0087】
【表3−3】

【0088】
【表3−4】

【0089】
【表3−5】

【0090】
【表3−6】

【0091】
【表3−7】

【0092】
【表3−8】

特定の実施形態では、本発明は、上記表3に示すいずれかの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0093】
式IIIの化合物の例を下記表4に示す。
【0094】
【表4−1】

【0095】
【表4−2】

【0096】
【表4−3】

【0097】
【表4−4】

特定の実施形態では、本発明は、上記表4に示すいずれかの化合物またはその薬学的に受容可能な塩を提供する。
【0098】
4.用途、調合、および投与
薬学的に受容可能な組成物
他の実施形態では、本発明は、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な誘導体を含む組成物および薬学的に受容可能な担体、アジュバント、または賦形剤を提供する。本発明の組成物中の化合物の量は、生物学的サンプル中または患者内のタンパク質キナーゼ、特に、PDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMSを適度に阻害するために有効な量である。特定の実施形態では、本発明の組成物中の化合物の量は、生物学的サンプル中または患者内のタンパク質キナーゼ、特に、PDGFR(αおよびβ)および/またはcKitを適度に阻害するために有効な量である。好ましくは、本発明の組成物は、そのような組成物が必要な患者への投与のために調合される。最も好ましくは、本発明の組成物は、患者に対する経口投与用に調合される。
【0099】
本明細書で用いる「患者」という用語は、動物、好ましくは、哺乳動物、および最も好ましくは、ヒトを意味する。
【0100】
「薬学的に受容可能な担体、アジュバント、または賦形剤」という用語は、調合に用いる化合物の薬理学的活性を損なわない非毒性担体、アジュバント、または賦形剤を指す。本発明の組成物に用いることが可能な薬学的に受容可能な担体、アジュバント、または賦形剤は、イオン交換体、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミン等の血清タンパク質、リン酸塩等の緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩もしくは電解質(硫酸プロタミン等)、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイドシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸塩、蝋、ポリエチレン−ポリオキシプロピレンブロック重合体、ポリエチレングリコール、および羊毛脂を含むがそれらに限定されない。
【0101】
「薬学的に受容可能な誘導体」は、レシピエントへの投与時に、本発明の化合物または阻害活性を有する代謝産物もしくはその残留物を直接または間接的に与えることが可能な任意の非毒性塩、エステル、エステル塩または本発明の化合物の他の誘導体を意味する。
【0102】
本明細書で用いる「阻害活性を有する代謝産物もしくはその残留物」という用語は、代謝産物またはその残留物もPDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMSの阻害剤であることを意味する。
【0103】
本発明の化合物の薬学的に受容可能な塩は、薬学的に受容可能な無機および有機酸および塩基から由来するものを含む。適切な酸性塩の例としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、クエン酸塩、カンホラート、カンファースルホネート、シクロペンタンプロピオナート、ジグルコネート、ドデシル硫酸塩、エタンスルホン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、グルコヘプタン酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエタンスルホン酸塩、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、メタンスルホン酸塩、2−ナフタレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、パルモエート、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、リン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、サリチル酸塩、コハク酸塩、硫酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、トシレート、およびウンデカン酸塩が挙げられる。それ自体は薬学的に受容可能なものではないシュウ酸等の他の酸を、本発明の化合物およびそれらの薬学的に受容可能な酸付加塩を得る際の中間体として有用な塩の調製に用いてもよい。
【0104】
適切な塩基由来の塩としては、アルカリ金属(例えば、ナトリウムおよびカリウム)、アルカリ土類金属(例えば、マグネシウム)、アンモニウム、およびN+(C1〜4アルキル)塩が含まれる。本発明はまた、本明細書に開示する化合物のあらゆる塩基性窒素含有基の四級化も想定している。そのような四級化により水溶性もしくは油溶性または分散性生成物を得るようにしてもよい。
【0105】
本発明の組成物は、経口、非経口、吸入噴霧、局所、経直腸、経鼻、口腔、経膣、または埋込リザーバーで投与してもよい。本明細書で用いる「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑液嚢内、胸骨内、くも膜下、肝内、病巣内および頭蓋内注射または注入技術を含む。好ましくは、上記組成物は、経口、腹腔内、または静脈内投与される。無菌注射用形態の本発明の組成物は、水性または油性懸濁液としてもよい。これらの懸濁液は、適切な分散または湿潤剤および懸濁化剤を用いて当該分野で公知の技術により調合してもよい。上記無菌注射用製剤はまた、非毒性の非経口で受容可能な希釈剤または溶剤に入れた無菌注射用溶液または懸濁液(例えば、1,3−ブタンジオール溶液)としてもよい。水、リンゲル液、および生理食塩水も使用可能な許容可能な賦形剤および溶剤に含まれる。さらに、従来、無菌の不揮発油が溶剤または懸濁化剤として用いられている。
【0106】
この目的のため、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無菌性不揮発油を用いてもよい。オレイン酸等の脂肪酸およびそのグリセリド誘導体は、オリーブ油またはヒマシ油の特にポリオキシエチル化したもの等、薬剤として許容可能な天然油と同様に、注射物質の調製に有用である。これらの油溶液または懸濁液はまた、エマルジョンおよび懸濁液を含む薬学的に受容可能な投薬形態の調合に一般に用いられるカルボキシメチルセルロースまたは類似の分散剤等の長鎖アルコール希釈剤または分散剤を含有するようにしてもよい。Tweens、Spans等の他の一般に用いられる界面活性剤および薬学的に受容可能な固体、液体、または他の投薬形態の製造に一般に用いられる他の乳化剤またはバイオアベイラビリティーエンハンサーを調合の目的で用いてもよい。
【0107】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、カプセル、錠剤、水性懸濁液、または水溶液を含むがそれらに限定されない任意の経口的に許容可能な投薬形態で経口投与してもよい。経口用錠剤の場合、一般に用いられる担体としては、ラクトースおよびコーンスターチが含まれる。典型的には、ステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤も添加される。カプセル形態での経口投与に有用な希釈剤としては、ラクトースおよび乾燥コーンスターチが含まれる。経口用水性懸濁液が必要な場合、その活性成分は乳化剤および懸濁化剤と組み合わせられる。所望であれば、特定の甘味料、香料、または着色料も添加してもよい。
【0108】
代替的には、本発明の薬学的に受容可能な組成物を直腸投与用坐剤の形態で投与してもよい。これらは、その薬剤と、室温では固体であるが直腸温では液体となり、直腸内で溶解して薬物を放出する適切な非刺激性賦形剤とを混合することにより調製可能である。そのような材料には、ココアバター、蜜蝋、およびポリエチレングリコールが含まれる。
【0109】
本発明の薬学的に受容可能な組成物はまた、特に、目、皮膚、または下部消化管の病気を含む処置標的が局所適用により容易に接近可能な領域または臓器含む場合には、局所投与してもよい。適切な局所製剤は、これらの領域または臓器ごとに容易に調製される。
【0110】
下部消化管への局所適用は、肛門坐剤の投薬形態(上記参照)または適切な浣腸製剤で行うことができる。局所−経皮貼布を用いてもよい。
【0111】
局所適用のために提供される薬学的に受容可能な組成物を、1つ以上の担体中で懸濁または溶解した活性成分を含有する適切な軟膏で調合してもよい。本発明の化合物の局所投与用担体は、鉱油、流動ワセリン、白色ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化蝋、および水を含むがそれらに限定されない。代替的には、提供される薬学的に受容可能な組成物は、1つ以上の薬学的に受容可能な担体中に懸濁または溶解した活性成分を含有する適切なローションまたはクリームで調合することができる。適切な担体は、鉱油、モノステアリン酸ソルビタン、ポリソルベート60、セチルエステル蝋、セテアリルアルコール、2−オクチルドデカノール、ベンジルアルコール、および水を含むがそれらに限定されない。
【0112】
眼科用に提供される薬学的に受容可能な組成物は、等張pH調節無菌食塩水中の微粉化懸濁液として、または、好ましくは、塩化ベンジルアルコニウム等の防腐剤の有無に関わらず等張pH調節無菌食塩水溶液として調合してもよい。代替的には、眼科用途については、薬学的に受容可能な組成物は、ワセリン等の軟膏で調合してもよい。
【0113】
本発明の薬学的に受容可能な組成物はまた、鼻内噴霧または鼻孔吸引により投与してもよい。そのような組成物は、製剤調合の分野で周知の技術に従って調製され、ベンジルアルコールまたは他の適切な防腐剤、バイオアベイラビリティーを促進する吸収促進剤、フッ化炭素、および/または他の従来の可溶化もしくは分散剤を用いて食塩水溶液として調製してもよい。
【0114】
最も好ましくは、本発明の薬学的に受容可能な組成物は、経口投与用に調合される。
【0115】
単回投薬形態の組成物を製造するために担体材料と組み合わせ可能な本発明の化合物の量は、処置する宿主、特定の投与方式に応じて変化する。好ましくは、提供する組成物は、それらの組成物を受容する患者に対して阻害剤の投薬量が1日あたり体重1kgにつき0.01〜100mgで投与可能に調合するべきである。
【0116】
任意の特定の患者に対する具体的な投薬量および処置計画は、使用する具体的な化合物の活性、年齢、体重、一般的健康状態、性別、食事、投与時間、排出速度、薬物の併用、および処置を担当する医師の判断、ならびに処置している特定の病気の重篤度を含む各種の要因に依存することも理解されるべきである。上記組成物中における本発明の化合物量は、当該組成物中の特定の化合物にも依存する。
【0117】
化合物および薬学的に受容可能な組成物の用途
本明細書に記載の化合物および組成物は、一般に、1つ以上の酵素のタンパク質キナーゼ活性の阻害に有用である。キナーゼの構造、機能、および病気または病徴におけるそれらの役割に関するさらなる情報については、Protein Kinase Resourceのウェブサイト(http://kinases.sdsc.edu/html/index.shtml)で入手可能である。
【0118】
薬物耐性は、標的療法の重要な課題として現れつつある。例えば、Gleevec(登録商標)およびIressa(登録商標)、ならびに開発中の他のキナーゼ阻害剤のいくつかについて薬物耐性が報告されている。さらに、cKitおよびPDGFR受容体について薬物耐性が報告されている。不可逆阻害剤が薬物耐性型のタンパク質キナーゼに有効であり得ることが報告されている(Kwak,E.L.,R.Sordellaら(2005)。“Irreversible inhibitors of the EGF receptor may circumvent acquired resistance to gefitinib”PNAS102(21):7665−7670)。いずれの特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、本発明の化合物は薬物耐性型のタンパク質キナーゼの有効な阻害剤であり得ると考えられる。
【0119】
本明細書で用いる「臨床的薬物耐性」という用語は、薬物標的における突然変異の結果による薬物処置に対する薬物標的の感受性の喪失を指す。
【0120】
本明細書で用いる「耐性」という用語は、標的タンパク質をコードする野生型核酸配列および/または当該標的のタンパク質配列の変化を指し、この変化により、阻害剤の標的タンパク質に対する阻害効果が減少または消失する。
【0121】
本明細書に記載の化合物および組成物により阻害されるとともに、本明細書に記載の方法が有用なキナーゼの例としては、PDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、およびcFMSが挙げられる。
【0122】
本発明においてPDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMSの阻害剤として利用される化合物の活性は、インビトロ、インビボ、または細胞株で測定してもよい。インビトロアッセイは、リン酸化活性および/もしくはその後の機能的結果、または活性PDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、もしくはcFMSのATPアーゼ活性のいずれかの阻害を判定するアッセイを含む。代替的なインビトロアッセイでは、PDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMSに対する阻害剤の結合能力を定量化する。結合前に阻害剤に放射性標識を行い、阻害剤/PDGFR、阻害剤/cKit、阻害剤/KDR、または阻害剤/cFMS結合体を単離し、結合した放射性標識の量を判定して阻害剤結合を測定してもよい。代替的には、阻害剤結合は、公知の放射性リガンドと結合したPDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMSを用いて新たな阻害剤をインキュベートする競合実験を行って判定してもよい。本発明においてPDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMSの阻害剤として利用する化合物のアッセイの詳細条件は下記実施例に記載する。
【0123】
チロシンキナーゼは、細胞内シグナル伝達経路を媒介する酵素の一種である。これらキナーゼの異常活性は、細胞増殖、発癌、および細胞分化に寄与することが示されている。よって、チロシンキナーゼの活性を調整する薬剤は、これらの酵素に関連する増殖性疾患の予防および処置に有用である。
【0124】
血小板由来成長因子受容体(PDGFR)は、腫瘍細胞増殖、細胞移動、および血管形成における重要な標的であり、腫瘍の高間質液圧(IFP)を媒介し得る。PDGFRシグナル伝達経路は、固形腫瘍の発生および成長に関連付けられてきた。PDGFR受容体の遮断は、血管形成、腫瘍血管成熟および維持、ならびに腫瘍退縮に繋がる腫瘍細胞増殖を阻害することが示されている。
【0125】
さらに、PDGFRシグナルは、内皮細胞における(VEGFを含む)血管新生促進シグナルの発現を誘発し、さらに腫瘍血管形成を刺激する。PDGFRは、血管形成における周皮細胞の増殖および腫瘍血管への移動の調節に不可欠である。周皮細胞は、内皮細胞の力を借りて、周囲に新たな血管が形成され得る構造を設ける平滑な血管筋細胞である。周皮細胞上におけるPDGFRの発現は、腫瘍血管系の成熟および生存に関与する重要事象である。さらに、新たなデータでは、PDGF受容体は、化学療法薬の効率的な摂取に対する障害であることが示されている腫瘍の高IFPを媒介することが示唆されている。
【0126】
PDGF受容体(PDGFR)には、リガンド結合時にホモまたはヘテロ二量体を形成可能な2つのサブユニット(PDGFR−αおよびPDGRR−β)がある。いくつかのPDGFリガンドが存在する:AB、BB、CCおよびDD。PDGFRは、初期幹細胞、肥満細胞、骨髄性細胞、間葉細胞、および平滑筋細胞上で発現する。PDGFR−βのみが、通常、Tel、ハンチンチン相互作用タンパク質(HIP1)、またはRabaptinとの転座相手として、骨髄性白血病と関係している。最近、PDGFR−αキナーゼドメインにおける活性化突然変異が消化管間質腫瘍(GIST)において重要な役割を果たすことが示された。
【0127】
他の実施形態では、本発明は、PDGFRの媒介による患者の病気または病状を処置するかまたはその重篤度を軽減する方法であって、上記患者に本発明に係る組成物を投与する工程を含む方法を提供する。
【0128】
本明細書で用いる「処置」、「処置する」、および「処置を行う」という用語は、本明細書に記載する病気もしくは疾患、またはその1つ以上の症状を回復させる、緩和する、もしくは発現を遅延させるか、またはその進行を阻害することを指す。いくつかの実施形態では、処置は、1つ以上の症状が現れてから行ってもよい。他の実施形態では、症状が無い場合に処置を行ってもよい。例えば、病気にかかりやすい個人に対して症状の発現前に(例えば、病歴に照らし合わせておよび/または遺伝因子または他の感受性因子に照らし合わせて)処置を行ってもよい。処置はまた、症状がなくなった後も、例えば、その再発予防または遅延のために継続してもよい。
【0129】
本明細書で用いる「PDGFRの媒介による病気」または「病状」という用語は、PDGFRが関与することが知られているあらゆる病気または他の有害な病状を意味する。従って、本発明の他の実施形態は、PDGFRが関与することが知られている1つ以上の病気の処置またはその重篤度の軽減に関する。具体的には、本発明は、増殖性疾患から選択される病気または病状を処置するかまたはその重篤度を軽減する方法であって、本発明に係る組成物をそれを必要とする患者に投与する工程を含む方法に関する。
【0130】
特定の実施形態では、本発明は、血管の形成を阻害する方法を提供する。このような方法は、糖尿病性網膜症または加齢に関連した黄斑変異等の網膜症を含む眼の新血管形成、乾癬、血管腫等の芽腫、慢性または急性腎疾患等のメサンギウム細胞増殖性疾患、例えば、糖尿病性腎症、悪性腎硬化症、血栓性微小血管症症候群、または移植片拒絶反応によって生じる病気等の無秩序な血管形成に関連する疾患の処置に有用である。そのような疾患には、糸球体腎炎、メサンギウム増殖性糸球体腎炎、溶血性−尿毒症性症候群、糖尿病性腎症、高血圧性腎硬化症等の炎症性腎疾患、アテローム、動脈再狭窄、自己免疫疾患、糖尿病、子宮内膜症、慢性ぜんそく、および乳癌、結腸癌、肺癌(例えば、小細胞肺癌)、前立腺癌、またはカポジ肉腫等の腫瘍性疾患(固形腫瘍だけでなく、白血病および他の「液性腫瘍」も含む)も含まれる。いくつかの実施形態では、本発明は、腫瘍の転移拡散および微小転移巣の成長を予防する工程を含む腫瘍の増殖を阻害する方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、白血病を処置する方法を提供する。
【0131】
他の実施形態では、本発明は、腫瘍/癌細胞、および癌腫(例えば、扁平上皮細胞癌、多発性骨髄腫、黒色腫、神経膠腫、グリア芽腫、白血病、肉腫、平滑筋腫、中皮腫、GIST、肺癌、乳癌、卵巣癌、頸癌、肝臓癌、胆道癌、消化管癌、膵臓癌、前立腺、および頭頸部癌の増殖または転移を処置する方法であって、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な組成物をそれを必要とする患者に投与する工程を含む方法に関する。
【0132】
特定の実施形態では、本発明は、過剰な細胞外基質の蓄積、(薬物または放射線によって誘発され得る)繊維性疾患(例えば、強皮症、ループス腎炎、結合組織病、創傷治癒、外科的瘢痕、脊髄損傷、CNS瘢痕、急性肺損傷、肺繊維症(突発性肺繊維症および放射線誘発肺繊維症等)、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、薬物誘発肺損傷、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、消化管もしくは胃腸繊維症、腎繊維症、肝もしくは胆管繊維症、肝硬変、原発性胆汁性肝硬変、脂肪肝疾患(アルコール性および非アルコール性脂肪変性)による肝硬変、原発性硬化性胆管炎、再狭窄、心筋繊維症、眼の瘢痕、繊維性硬化症、繊維性癌、類繊維腫、繊維腫、繊維腺腫、繊維肉腫、移植動脈疾患、およびケロイド)、ならびに悪液質、高血圧症、強直性脊椎炎、多発性硬化症における脱髄、脳血管障害、およびアルツハイマー病等の他の病状を含む病状の処置のための方法であって、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な組成物をそれを必要とする患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0133】
他の実施形態では、処置を必要とする患者の造血器または非造血器悪性腫瘍を処置する方法であって、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な組成物をそれを必要とする患者に投与する工程を含む方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、AML、慢性骨髄性白血病(CML)、肥満細胞症、未分化大細胞リンパ腫、ALL、消化管間質腫瘍(GIST)、T細胞リンパ腫、腺様嚢胞癌(adenoid cytsic carcinoma)、血管肉腫、子宮内膜癌、小細胞肺癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、甲状腺癌、悪性黒色腫、または結腸癌を処置する方法であって、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な組成物をそれを必要とする患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0134】
他の局面では、本発明は、脳癌、尿生殖器癌、リンパ系癌、胃癌、喉頭癌、肺癌、膵臓癌、乳癌、カポジ肉腫、および白血病等の癌、子宮内膜症、良性前立腺過形成、再狭窄およびアテローム性動脈硬化症等の血管疾患、リウマチ性関節炎および乾癬等の自己免疫疾患、増殖性または血管新生網膜症および黄斑変性症等の眼病、ならびに接触性皮膚炎、ぜんそく、および遅延型過敏反応等の炎症性疾患から選択される病気または病状を処置する方法であって、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な組成物をそれを必要とする患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0135】
特定の実施形態では、本発明は、骨粗しょう症、リウマチ性関節炎患者、炎症性腸疾患、糸球体腎炎、同種移植片拒絶反応、および動脈硬化症、および癌から選択される病気または病状を処置する方法であって、本発明の化合物、またはその薬学的に受容可能な組成物をそれを必要とする患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0136】
c−Kitを含む3型受容体チロシンキナーゼファミリーは、造血および非造血細胞の維持、成長、および発生において重要な役割を果たす。c−Kitは、幹細胞/初期前駆細胞プールの維持、ならびに成熟リンパ系および骨髄性細胞の発生を調節する。活性化すると、キナーゼドメインは、受容体の自己リン酸化、ならびに活性化シグナルの伝播に役立つ各種細胞質タンパク質のリン酸化反応を誘発し、成長、分化および生存を導く。c−Kit受容体シグナリングの下流調節因子のいくつかには、PLCγ、PI3−キナーゼ、Grb−2、SHIPおよびSrc関連キナーゼが含まれる。両方の受容体チロシンキナーゼは、各種の造血器および非造血器悪性腫瘍に関与することが示されている。c−Kitのリガンド非依存性活性化を誘発する突然変異は、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、肥満細胞症および消化管間質腫瘍(GIST)に関連する。これらの突然変異は、キナーゼドメイン内の単一アミノ酸変化、または遺伝子内縦列重複、受容体の膜近傍領域の点変異もしくはインフレーム欠失を含む。活性化突然変異の他に、過剰発現した野生型c−Kitのリガンド依存性(自己分泌または傍分泌)刺激が、悪性表現型に寄与し得る。
【0137】
他の実施形態では、本発明は、cKitの媒介による患者の病気または病状を処置またはその重篤度を軽減する方法であって、当該患者に本発明に係る組成物投与する工程を含む方法を提供する。
【0138】
本明細書で用いる「cKitの媒介による病気」または「病状」という用語は、cKitが関与することが知られているあらゆる病気または他の有害な病状を意味する。従って、本発明の他の実施形態は、cKitが関与することが知られている1つ以上の病気を処置するかまたはその重篤度を軽減することに関する。具体的には、本発明は、増殖性疾患から選択される病気または病状を処置するかまたはその重篤度を軽減する方法であって、本発明に係る組成物をそれを必要とする患者に投与する工程を含む方法に関する。
【0139】
本明細書で用いる「c−KITの媒介による病気」という用語は、c−KITファミリーキナーゼが関与することが知られているあらゆる病気または他の有害な病状を意味する。そのような病状には、AML、慢性骨髄性白血病(CML)、肥満細胞症、未分化大細胞リンパ腫、ALL、消化管間質腫瘍(GIST)、T細胞リンパ腫、腺様嚢胞癌、血管肉腫、子宮内膜癌、小細胞肺癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、甲状腺癌、悪性黒色腫および結腸癌が含まれるがこれらに限定されない。
【0140】
KDRは、VEGF(血管内皮増殖因子)も結合するチロシンキナーゼ受容体である。VEGFとKDR受容体の結合により、既存の血管からの毛細血管の出芽である血管形成が生じる。各種癌には高レベルのVEGFが見られ、腫瘍血管形成を生じるとともに、癌性細胞を急速に増殖させる。それゆえ、VEGF活性を抑制することが、腫瘍成長を阻害する1つの方法であり、これは、KDR受容体チロシンキナーゼを阻害することにより可能であることが示されている。例えば、チロシンキナーゼの阻害剤は、腫瘍血管新生および多発性腫瘍の成長も抑制することが報告されている。
【0141】
そのような阻害剤により処置可能な癌の例としては、脳癌、尿生殖器癌、リンパ系癌、胃癌、喉頭癌、肺癌、膵臓癌、乳癌、カポジ肉腫、および白血病が挙げられる。異常チロシンキナーゼ活性に関連する他の病気および病状には、血管疾患、自己免疫疾患、眼病、および炎症性疾患が含まれる。
【0142】
他の実施形態では、本発明は、KDRの媒介による患者の病気または病状を処置するかまたはその重篤度を軽減する方法であって、本発明に係る組成物を当該患者に投与する工程を含む方法を提供する。
【0143】
本明細書で用いる「KDRの媒介による病気」という用語は、KDRファミリーキナーゼが関与することが知られているあらゆる病気または他の有害な病状を意味する。従って、本発明の他の実施形態は、KDRが関与することが知られている1つ以上の病気を処置するかまたはその重篤度を軽減することに関する。具体的には、本発明は、脳癌、尿生殖器癌、リンパ系癌、胃癌、喉頭癌、肺癌、膵臓癌、乳癌、カポジ肉腫、および白血病等の癌、子宮内膜症、良性前立腺過形成、再狭窄およびアテローム性動脈硬化症等の血管疾患、リウマチ性関節炎および乾癬等の自己免疫疾患、増殖性または血管新生網膜症および黄斑変性症等の眼病、ならびに接触性皮膚炎、ぜんそく、および遅延型過敏反応等の炎症性疾患から選択される病気または病状を処置するかまたはその重篤度を軽減する方法に関する。
【0144】
cFMSは、単核性食細胞系統の生存、増殖、および分化を促進するコロニー刺激因子1(CSF−1)の受容体である。CSF−1は、細胞表面cFMS受容体と結合し、受容体cFMSキナーゼによる自己リン酸化、およびその後の一連の細胞内シグナルを生じることによりその作用を発揮する。マクロファージ系統における受容体発現は、リポ多糖(LPS)チャレンジ後のマウスにおけるサイトカイン産生の増加、マウスにおける単球およびマクロファージの産生の増加、およびマウスおよびラットにおける関節炎の悪化を引き起こす外因性CSF−1の能力と一致する。非機能性CSF−1リガンドまたは受容体を有するマウスは骨硬化症であり、いくつかのマクロファージ集団が欠け、炎症攻撃に対する反応が低下する。
【0145】
CSF−1−cFMS受容体経路は、組織マクロファージ集団の慢性的活性化を伴う多数のヒトの病変において上方に調節されため、薬物療法の標的とすることができる。CSF−1は、インビトロでの破骨細胞発生および骨分解を促進するため、骨粗しょう症および整形外科移植片の着床不全部位における過剰な破骨細胞活性に寄与し得る。CSF−1は、リウマチ性関節炎患者の滑液中で上昇し、リウマチ性関節炎患者の滑膜繊維芽細胞は高レベルのCSF−1を産生するが、これは、CSF−1が関節破壊に関与していることを示唆している。CSF−1産生の増加も炎症性腸疾患、糸球体腎炎、同種移植片拒絶反応、および動脈硬化症に見られる組織マクロファージの蓄積に関連する。さらに、いくつかの腫瘍型の成長は、癌細胞および/または腫瘍間質におけるCSF−1およびcFMS受容体の過剰発現に関連する。
【0146】
本発明の方法に係る化合物および組成物は、癌、自己免疫疾患、神経変性もしくは神経疾患、統合失調症、骨関連疾患、肝疾患、または心疾患の処置またはその重篤度の軽減に有効な任意の量および任意の投与ルートを用いて投与してもよい。必要とされる正確な量は、対象の種、年齢、および全身状態、感染の重篤度、特定の薬剤、その投与方法等に応じて対象ごとに異なる。本発明の化合物は、投与の容易さおよび投薬量の均一性のために、投薬量単位形態で調合することが好ましい。本明細書で用いる「投薬量単位形態」という表現は、処置する患者に適した薬剤の物理的に個別の単位を指す。しかしながら、本発明の化合物および組成物の総日用量は担当医により正しい医学的判断の範囲内で決められることは言うまでもない。任意の特定患者または生物に対する具体的な有効量レベルは、処置している疾患およびその疾患の重篤度、用いる具体的な化合物の活性、用いる具体的な組成物、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別、および食事、用いる具体的な化合物の投与時間、投与ルート、および排出速度、処置時間、用いる具体的な化合物と組み合わせてまたは同時にに用いる薬物、および医療分野で周知の同様の要因を含む各種の要因に依存する。本明細書で用いる「患者」という用語は、動物、好ましくは、哺乳動物、および最も好ましくは、ヒトを意味する。
【0147】
本発明の薬学的に受容可能な組成物は、ヒトおよび他の動物に対して、処置している感染の重篤度に応じて、経口、経直腸、非経口、大槽内(intracisternally)、膣内、腹腔内、局所(散剤、軟膏、または滴下による)、経口または鼻内噴霧として口腔内等により投与することができる。特定の実施形態では、本発明の化合物は、1日あたり対象の体重1kgにつき約0.01mg〜約50mg、好ましくは、約1mg〜約25mgの投薬量レベルで、1日1回以上、経口または非経口投与することにより所望の治療効果を得るようにしてもよい。
【0148】
経口投与用の液体投薬形態は、薬学的に受容可能なエマルジョン、マイクロエマルジョン、溶液、懸濁液、シロップおよびエリキシル剤を含むがそれらに限定されない。活性化合物の他に、液体投薬形態は、例えば、水もしくは他の溶剤等の当該分野において一般に用いられる不活性希釈剤、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジメチルホルムアミド、油類(特に、綿実、ラッカセイ、コーン、胚芽、オリーブ、ヒマシ、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコールおよびソルビタン脂肪酸エステル等の可溶化剤および乳化剤、ならびにそれらの混合物を含有してもよい。不活性希釈剤以外に、経口組成物は、湿潤剤、乳化および懸濁化剤、甘味料、香料、ならびに芳香剤等のアジュバントも含むようにすることができる。
【0149】
注射用製剤、例えば、無菌注射用水性または油性懸濁液は、適切な分散または湿潤剤および懸濁化剤を用いて公知の技術により調合してもよい。無菌注射用調製はまた、非毒性非経口により許容可能な希釈剤または溶剤中の無菌注射用溶液、懸濁液またはエマルジョンであってもよく、例えば、1,3−ブタンジオール溶液であってもよい。使用可能な許容可能な賦形剤および溶剤には、水、リンゲル液、USP、および生理食塩水がある。さらに、従来、無菌不揮発油が溶剤または懸濁化剤として用いられている。この目的のために、合成モノグリセリドまたはジグリセリドを含む任意の無菌性不揮発油を用いることができる。さらに、オレイン酸等の脂肪酸が注射物質の調製に用いられる。
【0150】
上記注射製剤は、例えば、細菌保持フィルターを介したろ過によって、または使用前に無菌水または他の無菌注射用媒体中に溶解または分散可能な滅菌剤を無菌固形組成物の形態で組み込むことにより滅菌することができる。
【0151】
本発明の化合物の効果を持続させるために、皮下または筋肉内注射から化合物の吸収を遅らせることが望ましい場合が多い。これは、水溶性が低い結晶質または非晶質の液体懸濁液の使用によって行うことができる。そして、化合物の吸収率はその溶解率に依存し、溶解率は結晶の大きさおよび結晶形態に依存し得る。代替的には、非経口投与化合物形態の吸収は、化合物を油賦形剤中に溶解または懸濁することにより遅延される。注射用デポー形態(injectable depot form)は、ポリラクチド−ポリグリコリド等の生分解性高分子中に化合物のマイクロカプセル基質を形成することにより作製される。化合物と高分子の割合、および使用する特定の高分子の性質に応じて、化合物放出速度を制御することができる。他の生分解性高分子の例としては、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物)が挙げられる。デポー注射製剤はまた、化合物を生体組織に適合するリポソームまたはマイクロエマルジョン中に封入することにより調製される。
【0152】
直腸または膣内投与用組成物は、本発明の化合物と、周囲温度では固体であるが体温では液体となるため直腸または膣腔内で溶解して活性化合物を放出するココアバター、ポリエチレングリコール、または坐剤蝋等の適切な非刺激性賦形剤または担体とを混合することにより調製可能な坐剤であることが好ましい。
【0153】
経口投与用固形投薬形態には、カプセル、錠剤、丸薬、散剤、および顆粒が含まれる。そのような固形投薬形態では、上記活性化合物は、少なくとも1つの不活性な薬学的に受容可能な賦形剤または担体ならびにクエン酸ナトリウムまたは第二リン酸カルシウムおよび/またはa)でんぷん、ラクトース、スクロース、グルコース、マン二トール、およびケイ酸等の充填剤もしくは増量剤、b)例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリジノン、スクロース、およびアラビアゴム等の結合剤、c)グリセロール等の保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモもしくはタピオカでんぷん、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウム等の崩壊剤、e)パラフィン等の溶解遅延剤、f)第四級アンモニウム化合物等の吸収促進剤、g)例えば、セチルアルコールおよびグリセロールモノステアレート等の湿潤剤、h)カオリンおよびベントナイト粘土等の吸収剤、およびi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびそれらの混合物等の潤滑剤と混合される。カプセル、錠剤、および丸薬の場合、投薬形態には、緩衝液も含まれ得る。
【0154】
類似のタイプの固形組成物をそのような賦形剤をラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコール等として用いた軟および硬ゼラチンカプセルの充填剤として用いてもよい。固形投薬形態の錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒は、腸溶コーティングおよび製剤調合分野で周知の他のコーティング等のコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。これらは、随意に、乳白剤を含有するとともに、活性成分(単数または複数)のみを放出するか、または活性成分を腸管の特定の部分において優先的に放出し、随意に、遅延して放出する組成となるようにしてもよい。使用可能な包埋組成物の例としては、高分子物質および蝋が挙げられる。類似のタイプの固形組成物はまた、そのような賦形剤をラクトースまたは乳糖および高分子量ポリエチレングリコール(high molecular weight polethylene glycols)等として用いた軟および硬ゼラチンカプセルの充填剤として用いてもよい。
【0155】
上記活性化合物はまた、上記の1つ以上の賦形剤を含むマイクロカプセル化した形態とすることもできる。固形投薬形態の錠剤、糖衣錠、カプセル、丸薬、および顆粒は、腸溶コーティング、放出制御コーティング、および製剤調合分野で周知の他のコーティング等のコーティングおよびシェルを用いて調製することができる。そのような固形投薬形態では、上記活性化合物は、スクロース、ラクトース、またはでんぷん等、少なくとも1つの不活性希釈剤と混合してもよい。そのような投薬形態はまた、通常の慣行どおり、不活性希釈剤以外のさらなる物質、例えば、ステアリン酸マグネシウムおよび微結晶性セルロース等の錠剤化滑剤および他の錠剤化補助剤を含んでもよい。カプセル、錠剤、および丸薬の場合、投薬形態は、緩衝液を含んでもよい。これらは、随意に、乳白剤を含有するとともに、活性成分(単数または複数)のみを放出するか、または活性成分を腸管の特定の部分において優先的に放出し、随意に、遅延して放出する組成となるようにしてもよい。使用可能な包埋組成物の例としては、高分子物質および蝋が挙げられる。
【0156】
本発明の化合物の局所または経皮投与用投薬形態には、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、散剤、溶液、スプレー、吸入剤、またはパッチが含まれる。活性成分は、薬学的に受容可能な担体および必要とされ得る任意の必要な防腐剤または緩衝液と無菌状態で混合される。眼科用調合剤、点耳薬、および点眼薬も本発明の範囲内において企図される。さらに、本発明は、体に対して化合物を制御して送達するというさらなる利点を有する経皮貼布の使用を企図する。そのような投薬形態は、上記化合物を適切な媒体で溶解または調剤することにより作製することができる。吸収促進薬を用いて化合物の皮膚上での流量を増すこともできる。その速度は、速度制御膜を設けるか、または化合物を高分子基質またはゲル中に分散させることにより制御することができる。
【0157】
1つの実施形態では、本発明は、生物学的サンプル中のタンパク質キナーゼ活性を阻害する方法であって、上記生物学的サンプルを本発明の化合物または上記化合物を含む組成物と接触させる工程を含む方法に関する。
【0158】
他の実施形態では、本発明は、生物学的サンプル中のPDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMS活性を阻害する方法であって、上記生物学的サンプルを本発明の化合物または上記化合物を含む組成物と接触させる工程を含む方法に関する。特定の実施形態では、本発明は、生物学的サンプル中のPDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMS活性を不可逆的に阻害する方法であって、上記生物学的サンプルを本発明の化合物または上記化合物を含む組成物と接触させる工程を含む方法に関する。
【0159】
本明細書で用いる「生物学的サンプル」という用語は、細胞培養液もしくはその抽出液、哺乳動物から得られた生検材料もしくはその抽出液、ならびに血液、唾液、尿、排泄物、精液、涙液、または他の体液もしくはその抽出液を含むがこれらに限定されない。
【0160】
タンパク質キナーゼ、または生物学的サンプル中のPDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMSから選択されるタンパク質キナーゼ活性の阻害は、当業者に公知の各種目的に有用である。そのような目的の例は、輸血、臓器移植、生物試料の保管、および生物学的アッセイを含むがそれらに限定されない。
【0161】
本発明の他の実施形態は、患者のタンパク質キナーゼ活性を阻害する方法であって、上記患者に本発明の化合物または上記化合物を含む組成物を投与する工程を含む方法に関する。
【0162】
他の実施形態では、本発明は、患者のPDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMS活性の1つ以上を阻害する方法であって、上記患者に本発明の化合物または上記化合物を含む組成物を投与する工程を含む方法に関する。特定の実施形態では、本発明は、患者のPDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMS活性の1つ以上を不可逆的に阻害する方法であって、上記患者に本発明の化合物または上記化合物を含む組成物を投与する工程を含む方法に関する。他の実施形態では、本発明は、処置を必要とする患者におけるPDGFR(αおよびβ)、cKit、KDR、またはcFMSの1つ以上の媒介による疾患を処置する方法であって、上記患者に本発明に係る化合物またはその薬学的に受容可能な組成物を投与する工程を含む方法を提供する。そのような疾患については本明細書で詳述する。
【0163】
処置する特定の病状または病気に応じて、その病状を処置するために通常投与されるさらなる治療薬も本発明の組成物に存在するようにしてもよい。本明細書で用いるように、特定の病気または病状を処置するために通常投与されるさらなる治療薬は、「処置する病気または病状に適切である」ものとして公知である。
【0164】
例えば、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な組成物は、増殖性疾患および癌を処置するための化学療法薬と組み合わせて投与される。公知の化学療法薬の例は、特に、アドリアマイシン、デキサメタゾン、ビンクリスチン、シクロフォスファミド、フルオロウラシル、トポテカン、タキソール、インターフェロン、白金誘導体、タキサン(例えば、パクリタキセル)、ビンカアルカロイド(例えば、ビンブラスチン)、アントラサイクリン(例えば、ドキソルビシン)、エピポドフィロトキシン(例えば、エトポシド)、シスプラチン、メトトレキサート、アクチノマイシンD、アクチノマイシンD、ドラスタチン10、コルヒチン、エメチン、トリメトレキサート、メトプリン、シクロスポリン、ダウノルビシン、テニポシド、アンフォテリシン、アルキル化剤(例えば、クロラムブシル)、5−フルオロウラシル、カンプトテシン、シスプラチン、メトロニダゾール、およびGleevec(登録商標)を含むがそれらに限定されない。他の実施形態では、本発明の化合物は、AvastinまたはVECTIBIX等の生物的薬剤と組み合わせて投与される。
【0165】
特定の実施形態では、本発明の化合物またはその薬学的に受容可能な組成物は、アバレリックス、アルデスロイキン、アルデスロイキン、アレムツズマブ、アリトレチノイン、アロプリノール、アルトレタミン、アミホスチン、アナストロゾール、三酸化ヒ素、アスパラギナーゼ、アザシチジン、BCG Live、ベバキュズマブ(Bevacuzimab)、アバスチン、フルオロウラシル、ベキサロテン、ブレオマイシン、ボルテゾミブ、ブスルファン、カルステロン、カペシタビン、カンプトセシン、カルボプラチン、カルムスチン、セレコキシブ、セツキシマブ、クロラムブシル、シスプラチン、クラドリビン、クロファラビン、シクロフォスファミド、シタラビン、ダクチノマイシン、ダルベポエチンアルファ、ダウノルビシン、デニロイキン、デクスラゾキサン、ドセタキセル、ドキソルビシン(中性)、ドキソルビシン塩酸塩、プロピオン酸ドロモスタノロン、エピルビシン、エポエチンアルファ、エルロチニブ、エストラムスチン、リン酸エトポシド、エトポシド、エキセメスタン、フィルグラスチム、フロクスウリジンフルダラビン(floxuridine fludarabine)、フルベストラント、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブ、酢酸ゴセレリン、酢酸ヒストレリン、ヒドロキシウレア、イブリツモマブ、イダルビシン、イホスファミド、メシル酸イマチニブ、インターフェロンアルファ−2a、インターフェロンアルファ−2b、イリノテカン、レナリドミド、レトロゾール、ロイコボリン、酢酸ロイプロリド、レバミゾール、ロムスチン、酢酸メゲストロール、メルファラン、メルカプトプリン、6−MP、メスナ、メトトレキサート、メトキサレン、マイトマイシンC、ミトタン、ミトキサントロン、ナンドロロン、ネララビン、ノフェツモマブ(Nofetumomab)、オプレルベキン、オキサリプラチン、パクリタキセル、パリフェルミン、パミドロネート、ペガデマーゼ、ペガスパルガーゼ、ペグフィルグラスチム、ペメトレキセド二ナトリウム、ペントスタチン、ピポブロマン、プリカマイシン、ポルフィマーナトリウム、プロカルバジン、キナクリン、ラスブリカーゼ、リツキシマブ、サルグラモスチム、ソラフェニブ、ストレプトゾシン、マレイン酸スニチニブ(Sunitinib Maleate)、タルク、タモキシフェン、テモゾロミド、テニポシド、VM−26、テストラクトン、チオグアニン、6−TG、チオテパ、トポテカン、トレミフェン、トシツモマブ、トラスツズマブ、トレチノイン、ATRA、ウラシルマスタード、バルルビシン、ビンブラスチン、ビンクリスチン、ビノレルビン、ゾレドロネート、またはゾレドロン酸のいずれか1つ以上から選択される抗増殖または化学療法薬と組み合わせて投与される。
【0166】
本発明の阻害剤と組み合わせ可能な薬剤の他の例は、Aricept(登録商標)およびExcelon(登録商標)等のアルツハイマー病の処置薬、L−ドーパ/カルビドパ、エンタカポン、ロピンロール(ropinrole)、プラミペキソール、ブロモクリプチン、ペルゴリド、トリヘキセフェンジル(trihexephendyl)、およびアマンタジン等のパーキンソン病の処置薬、βインターフェロン(例えば、Avonex(登録商標)およびRebif(登録商標))、Copaxone(登録商標)、およびミトキサントロン等の多発性硬化症(MS)の処置薬、アルブテロールおよびSingulair(登録商標)等のぜんそくの処置薬、ジブレキサ、リスパダール、セロクエル、およびハロペリドール等の統合失調症の処置薬、コルチコステロイド、TNF遮断薬、IL−1RA、アザチオプリン、シクロフォスファミド、およびスルファサラジン等の抗炎症剤、シクロスポリン、タクロリムス、ラパマイシン、ミコフェノール酸モフェチル、インターフェロン、コルチコステロイド、シクロホファミド(cyclophophamide)、アザチオプリン、およびスルファサラジン等の免疫調節および免疫抑制薬、アセチルコリンエステラーゼ阻害剤、MAO阻害剤、インターフェロン、抗けいれん薬、イオンチャンネル遮断薬、リルゾール、および抗パーキンソン病薬等の神経栄養因子、β遮断薬、ACE阻害剤、利尿薬、硝酸塩、カルシウムチャンネル遮断薬、およびスタチン等の心臓血管疾患の処置薬、コルチコステロイド、コレスチラミン、インターフェロン、および抗ウイルス薬等の肝疾患の処置薬、コルチコステロイド、抗白血病薬、および成長因子等の血液疾患の処置薬、ならびにγグロブリン等の免疫不全疾患の処置薬を含むがこれらに限定されない。
【0167】
これらのさらなる薬剤は、発明化合物含有組成物とは別に複数投与計画の一部として投与してもよい。代替的には、それらの薬剤は、本発明の化合物と混合して単一組成物とし、単回投薬形態の一部としてもよい。複数投与計画(multiple dosage regime)の一部として投与する場合、それら2つの活性薬剤は、同時に、連続して供されるか、または一方の投与から一定期間内に、通常、一方の投与から5時間以内に供されるようにしてもよい。
【0168】
本明細書で用いる「組み合わせ」、「組み合わせた」という用語、および関連する用語は、本発明に従った治療薬の同時または連続投与を指す。例えば、本発明の化合物は、他の治療薬と個別の単位投薬形態で同時にまたは連続して投与するか、または単一の単位投薬形態で一緒に投与してもよい。従って、本発明は、式Iの化合物、さらなる治療薬、ならびに薬学的に受容可能な担体、アジュバント、または賦形剤を含む単一の単位投薬形態を提供する。
【0169】
上記担体材料と組み合わせて単回投薬形態を産生可能な(上述したようにさらなる治療薬を含む組成物中における)発明化合物およびさらなる治療薬の両方の量は、処置する宿主および特定の投与方法に応じて変化する。好ましくは、本発明の組成物は、1日あたりの投薬量が体重1kgにつき0.01〜100mgで投与できるように調合される。
【0170】
さらなる治療薬を含むこれらの組成物では、当該さらなる治療薬および本発明の化合物が相乗的に作用し得る。それゆえ、そのような組成物中におけるさらなる治療薬の量は、その治療薬のみを利用する単剤療法において必要とされるよりも少ない。そのような組成物では、さらなる治療薬は、1日あたりの投薬量が体重1kgにつき0.01〜100μgで投与できる。
【0171】
本発明の組成物中に存在するさらなる治療薬の量は、上記治療薬を唯一の活性薬剤として含む組成物中において通常投与される量、と同程度である。好ましくは、本開示の組成物中におけるさらなる治療薬の量は、当該薬剤を治療効果のある唯一の活性薬剤として含む組成物中に通常存在するの量の約50%〜100%の範囲である。
【0172】
本発明の化合物またはその医薬組成物を、人工器官、人工弁、血管グラフト、ステント、およびカテーテル等の埋め込み型医療機器をコーティングする組成物に組み込んでもよい。例えば、血管ステントは、再狭窄(損傷後に血管壁が再び狭くなること)を克服するために用いられている。しかしながら、ステントまたは他の埋め込み型機器を用いる患者は、血栓形成または血小板活性化の危険がある。これらの望ましくない効果は、キナーゼ阻害剤を含む薬学的に受容可能な組成物で予め機器をコーティングすることにより予防または軽減可能である。本発明の化合物でコーティングした埋め込み型機器は本発明の他の実施形態である。
【実施例】
【0173】
下記の実施例に示すように、特定の例示的な実施形態では、化合物は、下記の基本手順に従って調製される。一般的な方法は本発明の特定の化合物の合成を示すが、本明細書に記載するように、下記の一般的方法およびに当業者に公知の他の方法が全ての化合物およびそれら化合物の各々のサブクラスおよび種に適用可能であることは言うまでもない。
【0174】
【化12】

(実施例1)
中間体Aの合成:
工程1:3−ジメチルアミノ−1−ピリジン−3−イル−プロペノン:3−アセチルピリジン(2.5g、20.64mmol)およびN,N−ジメチル−ホルムアミドジメチルアセタール(3.20mL、24mmol)をエタノール(10mL)中において一晩環流した。この反応混合液を室温まで冷却し、減圧下で蒸発させた。その残留物にジエチルエーテル(20mL)を加え、その混合液を0℃まで冷却した。その混合液をろ過して3−ジメチルアミノ−1−ピリジン−3−イル−プロペノン(1.9g、10.78mmol)を黄色結晶として得た。(収率:52%)この材料をさらに精製することなく次の工程で用いた。
【0175】
工程2:N−(2−メチル−5−ニトロ−フェニル)−硝酸グアニジン:2−メチル−5−ニトロアニリン(10g、65mmol)をエタノール(25mL)中に溶解し、その溶液に濃縮HNO(4.6mL)を滴下して加えた後、シアナミド(99mmol)の50%水溶液を加えた。この反応混合液を一晩環流した後、0℃まで冷却した。その混合液をろ過し、その残留物を酢酸エチルおよびジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させてN−(2−メチル−5−ニトロ−フェニル)−硝酸グアニジン(4.25g、収率:34%)を得た。
【0176】
工程3:2−メチル−5−ニトロフェニル−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−アミン:3−ジメチルアミノ−1−ピリジン−3−イル−プロペノン(1.70g、9.6mmol)およびN−(2−メチル−5−ニトロ−フェニル)−硝酸グアニジン(2.47g、9.6mmol)の2−プロパノール懸濁液(20mL)に、NaOH(430mg、10.75mmol)を加え、その結果得られた混合液を24時間環流した。その反応混合液を0℃まで冷却し、その結果得られた沈殿物をろ過した。その固体残留物を水中で懸濁し、ろ過した後、2−プロパノールおよびジエチルエーテルで洗浄し、乾燥させた。0.87g(2.83mmol)の2−メチル−5−ニトロフェニル−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−アミンを単離した。(収率:30%)
工程4:4−メチル−N−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−ベンゼン−1,3−ジアミン(中間体A):SnCl.2HO(2.14g、9.48mmol)の濃塩酸溶液(8mL)を2−メチル−5−ニトロ−フェニル−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−アミン(0.61g、1.98mmol)に激しく撹拌しながら加えた。30分間撹拌した後、その混合液を砕いた氷の上に注ぎ、KCOでアルカリ性にし、酢酸エチル(50mL)で3回抽出した。有機相を組み合わせ、MgSOで乾燥させ、蒸発乾固させた。ジクロロメタンからの再結晶により、252.6mg(0.91mmol)の4−メチル−N−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イル)−ベンゼン−1,3−ジアミン(収率:46%)がオフホワイトの固体として生じた。
【0177】
(実施例1)
【0178】
【化13】

工程1:4−(アクリルアミド)安息香酸 4−アミノ安息香酸(1.40g、10mmol)のDMF(10mL)およびピリジン(0.5mL)溶液を0℃まで冷却した。この溶液に塩化アクリロイル(0.94g、10mmol)を加え、その結果得られた混合液を3時間撹拌した。その混合液を水200mlに注ぎ、それによって得られた白色固体をろ過し、水およびエーテルで洗浄した。高真空下で乾燥させて1.8gの所望生成物を得て、精製することなく次工程で用いた。
【0179】
工程2:4−(アクリルアミド)安息香酸(82mg、0.43mmol)および中間体A(100mg、0.36mmol)を窒素雰囲気下においてピリジン(4mL)中で溶解し、撹拌した。この溶液に1−プロパンホスホン酸環状無水物(0.28g、0.43mmol)を加え、その結果得られた溶液を一晩室温で撹拌した。その溶剤を少量になるまで蒸発させた後、冷水50mlに注いだ。それにより形成された固体をろ過し、黄色の粉末を得た。カラムクロマトグラフィ(CHCl:MeOH=95:5)による粗生成物の精製により、30mgの4−アクリルアミド−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ベンズアミド(II−1)を白色粉末として得た。MS(M+H+):251.2;H NMR(DMSO−D,300MHz)δ(ppm):10.42(s,1H),10.11(s,1H),9.26(d,1H,J=2.2Hz),8.99(s,1H),8.68(dd,1H,J=3.0および1.7Hz),8.51(d,1H,J=5.2Hz),8.48(m,1H),8.07(d,1H,J=1.7Hz),7.95(d,2H,J=8.8Hz),7.79(d,2H,J=8.8Hz),7.45(m,3H),7.19(d,1H,J=8.5Hz),6.47(dd.1H,J=16.7および9.6Hz),6.30(dd,H,J=16.7および1.9Hz),5.81(dd,1H,J=9.9および2.2Hz),2.22(s,3H)。
【0180】
(実施例2)
【0181】
【化14】

化合物II−10は、4−(2,5−ジオキソ−2H−ピロール−1(5H)−イル)安息香酸および中間体Aから、実施例1に記載する方法と実質的に同じ方法で合成可能である。4−マレイミド安息香酸は、多数の業者より販売されている。
【0182】
(実施例3)
【0183】
【化15】

スキーム2
【0184】
【化16】

a)塩化アクリロイル、ピリジン、DMF b)BOP試薬、DIEA、CHCN、16時間
工程1:4−(アクリロイルアミノメチル)−安息香酸 4−アミノメチル安息香酸(5g、33.0mmol)およびピリジン(1.5mL)のDMF(35mL)撹拌溶液に、塩化アクリロイル(2.97g、33.0mmol)を0℃で滴下して加えた。この反応混合液を室温にし、さらに4日間撹拌した。その後、水(100mL)に注ぎ、15分間撹拌した後、EtOAc(3×150mL)で抽出した。この混合有機抽出液を塩水(50mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して粗生成物を得た。カラムクロマトグラフィ(シリカ、230〜400、CHCl/MeOHの混合物)により、所望生成物(0.7g、9.95%)を白色固体として得て、これを次工程で用いた。
【0185】
工程2:4−(アクリロイルアミノメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イルピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]ベンズアミド(II−6) 4−(アクリロイルアミノメチル)−安息香酸(75mg、0.37mmol)のCHCN(4mL)溶液に、BOP試薬(245mg、0.55mmol)を加えた後、DIEA(150mg、1.1mmol)および中間体A(100mg、0.37mmol)を加えた。この反応混合液を室温で16時間撹拌した後、水(10mL)で急冷し、酢酸エチル(3×5mL)で抽出した。この混合有機抽出液を水(2mL)、塩水(2mL)で洗浄した。NaSOで乾燥させた後、減圧下で濃縮して粗生成物を得て、これをカラムクロマトグラフィ(シリカ、230〜400、クロロホルム/メタノールの混合物)で精製してII−6(70mg、41%)を白色固体として得た。MS(M+H):464.5、1H NMR(DMSO−d、400 MHZ)δ(ppm):2.20(s,3H)、4.40−4.42(m,2H),5.62(dd,J=2.2&10Hz,1H),6.12(dd,J=2.2&17Hz,1H),6.26(dd,J=10&17Hz,1H),7.19(d,J=8.2Hz,1H),7.37−7.54(m,5H),7.90(d,J=8.2Hz,2H),8.06(s,1H),8.47−8.50(m,2H),8.67−8.68(m,2H),9.0(s,1H),9.26(s,1H),10.15(s,1H)。
【0186】
(実施例4)
【0187】
【化17】

スキーム3
【0188】
【化18】

a)AcOH、室温、18時間;b)P、ジオキサン、100℃、18時間;c)BOP試薬、DIEA、DMF、室温、16時間
工程1:4−[(3−カルボキシアクリロイルアミノ)メチル]安息香酸 4−アミノ安息香酸(1.54g、10.18mmol)の酢酸(20mL)溶液に、無水マレイン酸(1g、10.10mmol)を加え、その反応液を室温で18時間撹拌した。白色固体が沈殿し、それをろ過し、水(3×5mL)で洗浄し、乾燥させて所望生成物(2.3g、90%)を白色無定形固体として生じ、これをそのまま次工程で用いた。
【0189】
工程2:4−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロピロール−1−メチル)安息香酸 4−[(3−カルボキシアクリロイルアミノ)メチル]安息香酸(1g、4.0mmol)のジオキサン(20mL)撹拌溶液に、P(0.84g、6.0mmol)を加え、その反応混合液を18時間環流した。次いで、その反応混合液を冷却し、溶剤を減圧下において回転蒸発器で除去した。その残留物を氷水(5mL)に入れ、その溶液をEtOAc(3×50mL)で抽出した。その混合EtOAc抽出液を塩水(25mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮して4−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロピロール−1−メチル)安息香酸(0.1g、10%)を淡いクリーム色の固体として生じ、これをさらに精製することなく用いた。
【0190】
工程3:4−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロピロール−1−イルメチル)−N−[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イル−ピリミジン−2−イルアミノ)−フェニル]ベンズアミド(II−8) 4−(2,5−ジオキソ−2,5−ジヒドロピロール−1−メチル)安息香酸(84mg、0.37mmol)のDMF(2mL)溶液に、BOP試薬(240mg、0.54mmol)を加え、その反応液を10分間撹拌した。これに、DIEA(140mg、1.08mmol)を加え、その反応液を10分間さらに撹拌した。最後に、これに中間体A(100mg、0.37mmol)を加え、その反応液を室温で16時間撹拌した。次いで、この反応混合液を水(15mL)で希釈し、EtOAc(3×15mL)で抽出した。この混合EtOAc抽出液を塩水(5mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮して100mgの表題化合物を粗固体として得た。これを分取HPLCによりさらに精製し、純粋なII−8(30mg、16.6%)を淡褐色の固体として得た。MS(M+H):490.1,1H NMR(DMSO−d,400MHZ)δ(ppm):2.20(s,3H),4.66(s,2H),7.10(s,2H),7.19(d,J=8.4Hz,1H),7.35(d,J=8.34Hz,2H),7.41−7.52(m,3H),7.88(d,J=8.3Hz,2H),8.05(d,J=1.8Hz,1H),8.45−8.50(m,2H),8.66(dd,J=1.5&4.7Hz,1H),8.97(s,1H),9.25(s,1H),10.16(s,1H)。
【0191】
(実施例5)
【0192】
【化19】

化合物II−15は、Bioorganic&Medicinal Chemistry10(2002)355−360に記載のものと同様のプロトコルを用いて、アセトン中において(実施例1にしたがって調製した)化合物II−1をジメチルジオキシランで処理することにより合成することができる。
【0193】
(実施例6)
【0194】
【化20】

工程1:4−(アリルスルホンアミド)安息香酸は、実施例1のプロトコルを用いて、DMFとピリジンの混合液において4−アミノ安息香酸を市販のプロパ−2−エン−1−スルホニルクロリドで処理することにより調製することができる。
【0195】
工程2:4−(アリルスルホンアミド)−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ベンズアミドは、実施例1に記載のものと実質的に類似の方法で中間体Aおよび4−(アリルスルホンアミド)安息香酸を処理することにより調製することができる。
【0196】
工程3:化合物II−22は、Bioorganic&Medicinal Chemistry10(2002)355−360に記載のものと同様のプロトコルを用いて、アセトン中において4−(アリルスルホンアミド)−N−(4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)ベンズアミドをジメチルジオキシランで処理することにより合成することができる。
【0197】
(実施例7)
【0198】
【化21】

工程1:エテンスルホニルクロリドは、Canadian Journal of Chemistry(1984),62(10),1977−95に記載のものと実質的に類似のプロトコルを用いて、トリエチルアミンの存在下で市販の2−クロロエタンスルホニルクロリドから調製することができる。
【0199】
工程2:4−(ビニルスルホンアミド)安息香酸は、実施例1に記載のものと実質的に類似の方法で、DMFとピリジンの混合液において4−(アミノメチル)安息香酸をエテンスルホニルクロリドで処理することにより合成することができる。
【0200】
工程3:化合物II−23は、実施例1と同じ反応条件を用いて、4−(ビニルスルホンアミド)安息香酸および中間体Aから合成することができる。
【0201】
(実施例8)
【0202】
【化22】

工程1:2−(2−トシルヒドラゾノ)酢酸は、Organic Syntheses,49,22−7;1969に記載のプロトコルを用いて、HClと水の混合液においてグリオキサル酸を4−メチルベンゼンスルホノヒドラジドで処理することにより調製することができる。
【0203】
工程2:THF中においてDCCの存在下で市販のtert−ブチル4−アミノ安息香酸塩を2−(2−トシルヒドラゾノ)酢酸で処理した後、トリフルオロ酢酸でカルボン酸の脱保護を行うことにより、4−[[[(4−メチルフェニル)スルホニル]ヒドラゾノ]アセチルアミノ]安息香酸を得ることができる(Tetrahedron Letters,33(38),5509−10;1992に記載のものと同様のプロトコル)。
【0204】
工程3:THF中においてDCCの存在下で4−[[[(4−メチルフェニル)スルホニル]ヒドラゾノ]アセチルアミノ]安息香酸と中間体Aを結合した後、トリエチルアミンで処理することにより、化合物II−24を得ることができる(Tetrahedron Letters,33(38),5509−10;1992に記載のものと同様のプロトコル)。
【0205】
(実施例9)
【0206】
【化23】

スキーム4
【0207】
【化24】

a)KCO、アセトン、室温、16時間;b)TFA/DCM、0℃〜室温、16時間;c)SOCl、DMF触媒、CHCl、45℃、3時間;d)EtN、CHCl、0〜10℃、1.5時間。
【0208】
工程1:2,6−ジクロロ安息香酸(0.20g、1.05mmol)のアセトン(10mL)撹拌溶液に、ブロモエステル(0.25g、1.25mmol)を加え、その反応液を室温で16時間撹拌した。次いで、これをろ過し、ろ液を濃縮して得た残留物を粉砕し、石油エーテルを加えて対応するジエステルを白色結晶固体として得た。ろ過の後、乾燥させることにより、ジエステル(0.29g、91%)を白色固体として得て、これを次工程に用いた。
【0209】
工程2:ジエステル(0.26g、0.85mmol)をCHCl(5.0mL)中で溶解し、これに、トリフルオロ酢酸(0.39g、3.38mmol)を0℃で加えた。この反応混合液を室温にし、さらに12時間室温で撹拌した。次いで、これを濃縮して対応する酸(0.2g、95.3%)を白色固体として得た。
【0210】
工程3:酸(0.15g、0.80mmol)のCHCl(3.0mL)撹拌懸濁液に、DMF(1滴)を加えた後、SOCl(0.14g、1.2mmol)を加えた。この反応混合液を45℃で3時間熱し、冷却して、減圧下で濃縮して酸塩化物を得て、これをさらに精製することなくそのまま次工程に用いた。
【0211】
工程4:酸塩化物(HCl塩、0.1g、0.2mmol)のCHCl(3.0mL)撹拌懸濁液に、EtN(0.12g、1.1mmol)を0℃で加えた。これに、新たに調製した中間体B(0.33g、1.3mmol、粗)を加え、その反応混合液を0℃〜10℃で1.5時間撹拌した。反応(TLC)が終了した後、その反応液を水(1mL)で急冷し、CHCl(3×5mL)で抽出した。この混合CHCl抽出液を水(2mL)、塩水(2mL)で洗浄し、乾燥させ(NaSO)、減圧下で濃縮して粗II−26を得て、これを分取HPLCによりさらに精製して、純粋なII−26(0.07g、48%)を黄色固体として得た。LC/MS(M+H):627,1H NMR(CDOD,400MHZ)δ(ppm):2.21(s,3H),5.01(s,2H),7.19(d,J=8.48Hz,1H),7.42−7.64(m,6H),7.73(d,J=8.76Hz,2H),7.95(d,J=8.76Hz,2H),8.06(d,J=1.8Hz,1H),8.46−8.51(m,2H),8.67(dd,J=1.2&4.68Hz,1H),9.0(s,1H),9.28(s,1H),10.1(s,1H),10.52(s,1H)。
【0212】
中間体Bの合成
スキーム5
【0213】
【化25】

a)(BOC)O、ジオキサン/10%NaHCO溶液;b)EDCI/HOBT、DIPEA、CHCl;c)ジオキサン/HCl、室温、16時間。
【0214】
工程1:4−アミノ安息香酸(5.0g、36.44mmol)の1,4−ジオキサン/10%NaHCO水溶液(1:1、20mL)に、触媒量のTBAB(0.58g、1.82mmol)を加え、その反応混合液を0℃で撹拌した。これに、BOC無水物(11.91g、54.6mmol)を加え、その反応液を室温で22時間撹拌した。次いで、4N−Boc−アミノ安息香酸が白色固体として沈殿した際に、その反応混合液を10%クエン酸水溶液で酸性化した。これをろ過し、水(100mL)で洗浄し、乾燥させて、4N−Boc−アミノ安息香酸(6.8g、79%)を白色固体として得て、これを次工程に用いた。
【0215】
工程2:4N−Boc−アミノ安息香酸(0.85g、3.6mmol)のCHCl(20mL)溶液に、EDCI(0.76g、3.97mmol)およびHOBT(0.54g、3.97mmol)を加えた。この反応液を15分間撹拌し、それに、DIPEA(0.51g、3.97mmol)および中間体A(1.0g、3.6mmol)を加えた。この反応液を室温で24時間さらに撹拌した後、EtOAc(100mL)で希釈し、水(2×25mL)、塩水(10mL)で洗浄し、NaSOで乾燥させた。減圧下で濃縮して対応するアミドを粗固体として得て、これを結晶化(CHCl/MeOH)して当該アミド(0.4g、22%)を白色固体として得た。
【0216】
工程3:上記アミド(0.4g、0.8mmol)のジオキサン(10mL)溶液を0℃まで冷却し、乾燥HClで10分間パージし(反応混合液が酸性化)、16時間撹拌した。その後、この溶剤を減圧下で除去し、中間体Bを得て、これをエーテル(10mL)で洗浄して中間体B(0.28g、87%)をオレンジ色の固体として得た。
【0217】
(実施例10)
【0218】
【化26】

工程1:2−(クロロカルボニル)フェニル次亜塩素酸(2−Chlorocarbonyl)phenyl hypochlorothioite)は、Synthetic Communications,13(12),977−83;1983に記載されるような塩化チオニルで処理することにより2,2’−ジチオジ安息香酸から調製することができる。
【0219】
工程2:ピリジンの存在下でグリシンを2−(クロロカルボニル)フェニル次亜塩素酸で処理することにより、Farmaco,44(9),795−807;1989に記載されるような2−(3−オキソベンゾ[d]イソチアゾール−2(3H)−イル)酢酸を得ることができる。
【0220】
工程3:DMF/CHClにおいて、DCCおよびN−ヒドロキシスクシンイムデ(N−hydroxysuccinimde)の存在下で2−(3−オキソベンゾ[d]イソチアゾール−2(3H)−イル)酢酸と中間体Aを結合することにより、化合物II−30を得ることができる(Synthesis,(17),2647−2654;2003に記載のものと同様のプロトコル)。
【0221】
(実施例11)
【0222】
【化27】

スキーム6
【0223】
【化28】

中間体B(0.4g、1.01mmol)とピリジニルスルホニルクロリド(0.23g、1.11mmol)のNMP(5mL)撹拌混合液に、乾燥KCO(0.35g、2.52mmol)を加え、その反応液を85℃で18時間熱した。次いで、この反応混合液を冷却し、CHCl(5mL)で希釈し、小型のCelite(登録商標)ベッドに通した。このろ液を濃縮し、クロマトグラフィ(アルミナ、CHClとMeOHの混合物)により精製し、粗II−40を得て、これを分取HPLCによりさらに精製してII−40(0.015g、2.6%)を淡黄色固体として得た。LC/MS(M−H):569.8,1H NMR(DMSO−d,400MHZ)δ(ppm):2.19(s,3H),7.16(d,J=8.28Hz,1H),7.22(d,J=8.68Hz,2H),7.38−7.41(m,2H),7.49−7.52(m,1H),7.77−7.82(m,3H),8.0(s,1H),8.44−8.49(m,2H),8.67(dd,J=1.36&4.68Hz,1H),8.74(d,J=5.28Hz,1H),8.96(s,1H),9.14(s,1H),9.25(d,J=1.36Hz,1H),10.06(s,1H),11.32(s,1H)。
【0224】
(実施例12)
【0225】
【化29】

スキーム7
【0226】
【化30】

中間体B(0.40g、1.01mmol)とピリジニルスルホニルクロリド(0.32g、1.5mmol)のNMP撹拌溶液に、乾燥KCO(0.56g、4.04mmol)を加え、その反応液を85℃で18時間熱した。次いで、この反応液を冷却し、CHCl(5mL)で希釈し、Celite(登録商標)パッドに通した。このろ液を濃縮し、クロマトグラフィ(中性アルミナ、CHClとMeOHの混合物)により精製してII−41を得て、これを分取HPLCによりさらに精製してII−41(0.028g、4.8%)をオフホワイトの固体として得た。LC/MS(M+H):572.1,1H NMR(MeOD,400MHZ)δ(ppm):2.31(s,3H),7.24−7.28(m,3H),7.35〜7.38(m,2H),7.53−7.56(m,1H),7.59(d,J=8.44Hz,1H),7.86(d,J=8.72Hz,2H),8.14−8.18(m,2H),8.46(d,J=5.24Hz,1H),8.57−8.61(m,2H),8.63(d,J=1.56Hz,1H),9.30(s,1H)。
【0227】
(実施例13)
【0228】
【化31】

スキーム8
【0229】
【化32】

a)塩化アクリロイル、ピリジン、DMF;b)HATU、DIEA、DMF、室温、16時間
工程1:6−アクリロイルアミノナフタレン−2−カルボン酸
2−アミノ−6−ナフトエ酸(0.3g、1.6mmol)のDMF(2mL)およびピリジン(0.3mL)撹拌溶液に、0℃で塩化アクリロイル(0.15g、1.6mmol)を加えた。その結果得られた混合液を室温にし、さらに2時間撹拌した。その後、これを水(5mL)に注ぎ、その分離した固体をろ過し、減圧下で乾燥させて所望生成物(160mg、41.5%)を薄茶色の固体として得た。この固体をさらに精製することなく次工程で用いた。
【0230】
工程2:6−アクリロイルアミノナフタレン−2−カルボン酸[4−メチル−3−(4−ピリジン−3−イルピリミジン−2−イルアミノ)フェニル]アミド(II−44) 6−アクリロイルアミノナフタレン−2−カルボン酸(74mg、0.31mmol)と中間体A(85mg、0.31mmol)のDMF(2mL)撹拌溶液に、DIEA(0.08mL)を加えた。これに、HATU(0.176g、0.47mmol)を加え、その反応混合液を室温で16時間撹拌した。次いで、その反応混合液を水(5mL)およびEtOAc(10mL)で希釈し、小型のcelite(登録商標)パッドに通して無機物を除去した。その有機相および水相を分離し、水相をEtOAc(2×10mL)で再抽出した。その混合有機物を塩水(10mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させた後、フラッシュクロマトグラフィ(シリカ、230−400、CHCl/MeOHの混合物)により精製してII−44(33mg、21%)を淡黄色固体として得た。MS(M+H):500.5,1H NMR(DMSO−d,400MHZ)δ(ppm):2.23(s,3H),5.82(d,J=10Hz,1H),6.32(d,J=16Hz,1H),6.51(dd,J=10&16Hz,1H),7.22(d,J=8.2Hz,1H),7.43(dd,J=0.8&5.2Hz,1H),7.50−7.54(m,2H),7.73(d,J=9.2Hz,1H),7.93−8.0(m,2H),8.04(d,J=8.8Hz,1H),8,12(s,1H),8.48−8.68(m,4H),8.67(d,J=4.7Hz,1H),9.0(s,1H),9.28(d,J=1Hz,1H),10.34(s,1H),10.49(s,1H)。
【0231】
(実施例14)
【0232】
【化33】

工程1:tert−ブチル6−((4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)カルバモイル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシレートは、実施例1と同じ反応条件を用いて、市販の2−[[(1,1−ジメチルエチル)オキシ]カルボニル]−1,2,3,4−テトラヒドロ−6−イソキノリンカルボン酸および中間体Aを処理することにより合成することができる。
【0233】
工程2:HCl/ジオキサンでtert−ブチル6−((4−メチル−3−(4−(ピリジン−3−イル)ピリミジン−2−イルアミノ)フェニル)カルバモイル)−3,4−ジヒドロイソキノリン−2(1H)−カルボキシレートを脱保護した後、実施例1の工程2のプロトコルを用いて、DMFとピリジンの混合液中において塩化アクリロイルで処理することにより、化合物II−46を得ることができる。
【0234】
スキーム9
【0235】
【化34】

a)NHCN、EtOH/HCl、90℃、15時間、b)DMF−DMA、エタノール、環流、16時間、c)NaOH/EtOH、環流、16時間
工程1:アニリンエステル(5g、30.27mmol)のエタノール(12.5mL)撹拌溶液に、濃縮HNO(3mL)を加えた後、50%シアナミド(1.9g、46.0mmol)水溶液を室温で加えた。この反応混合液を90℃で16時間熱した後、0℃まで冷却した。沈殿した固体をろ過し、酢酸エチル(10mL)、ジエチルエーテル(10mL)で洗浄し、乾燥させて対応するグアニジン(4.8g、76.5%)を紅梅色の固体を得て、これをさらに精製することなく用いた。
【0236】
工程2:3−アセチルピリジン(10.0g、82.56mmol)とN,N−ジメチルホルムアミドジメチルアセタール(12.8g、96.00mmol)のエタノール(40mL)撹拌溶液を16時間環流した。次いで、それを室温まで冷却し、減圧下で濃縮して粗塊を得た。この残留物をエーテル(10mL)に入れ、0℃まで冷却し、ろ過して対応するエナミド(7.4g、50.8%)を黄色結晶固体として得た。
【0237】
工程3:上記グアニジン誘導体(2g、9.6mmol)、エナミド誘導体(1.88g、10.7mmol)、およびNaOH(0.44g、11.0mmol)のエタノール(27mL)撹拌混合液を90℃で48時間環流した。次いで、この反応混合液を冷却し、減圧下で濃縮して残留物を得た。この残留物を酢酸エチル(20mL)に入れ、水(5mL)で洗浄した。その有機層および水層を分離し、個別に処理して、それぞれ、対応するエステルおよび中間体Cを得た。この水層を冷却し、白色固体が沈殿した際に1.5NのHCl(pH約3〜4)で酸性化した。この沈殿物をろ過し、乾燥させ、トルエン(2×10mL)との共沸蒸留により余分な水分を除去して中間体C(0.5g)を淡黄色固体として得た。1H NMR(DMSO−d,400MHz)δ(ppm):2.32(s,3H),7.36(d,J=10.44Hz,1H),7.53(d,J=6.84Hz,1H),760−7.72(m,2H),8.26(s,1H),8.57(d,J=6.84Hz,1H),8.64(d,J=10.28Hz,1H),8.70−8.78(bs,1H),9.15(s,1H),9.35(s,1H)。この有機抽出液を塩水(3mL)で洗浄し、乾燥(NaSO)させ、減圧下で濃縮して中間体Cのエステルを粗固体として得た。これをカラムクロマトグラフィ(SiO、60〜120メッシュ、MeOH/CHCl:10/90)によりさらに精製して中間体C(0.54g)のエステルを黄色固体として得た。
【0238】
スキーム10
【0239】
【化35】

a)(BOC)O、DMAP、EtN、THF、b)H、Pd/C、CH3OH
工程1:上記ニトロアニリン(0.15g、0.7mmol)のTHF(0.3mL)撹拌溶液に、EtN(0.11ml、0.73mmol)およびDMAP(0.05g、0.44mmol)を加えた。これに、BOC無水物(0.33ml、1.52mmol)を加え、その反応液を5時間環流した。次いで、その反応混合液を冷却し、THF(15mL)で希釈し、塩水(5mL)で洗浄した。この有機相を分離し、NaSOで乾燥させ、ろ過し、減圧下で濃縮して粗塊を得た。この粗生成物をカラムクロマトグラフィ(SiO、230〜400メッシュ、ヘキサン/EtOAc:8/2)によりさらに精製して対応するジBOC保護アニリン(0.25g、88%)を白色結晶固体として得て、これをさらに精製することなく次工程に供した。
【0240】
工程2:BOC保護アニリン(0.25g、0.62mmol)のMeOH(5mL)溶液を10%Pd/C(0.14g、0.13mmol)により20℃で12時間かけて水素化(H、3Kg)した。この反応混合液をCelite(登録商標)のショートパッドに通し、減圧下で濃縮して対応するアニリンをオフホワイトの固体(0.18g、77.6%)として得た。1H NMR(CDOD,400MHz)δ(ppm):1.36(s,18H),6.84−6.87(m,1H),6.95〜6.97(m,2H)。
【0241】
(実施例15)
【0242】
【化36】

スキーム11
【0243】
【化37】

a)HATU、DIEA、CHCN、85℃、16時間、b)TFA/CHCl、0℃〜室温、3時間、c)塩化アクリロイル、ピリジン、DMF、室温
工程1:アセトニトリル中において、HATU、DIEAの存在下で中間体CとジBOC保護アニリンを結合することにより、対応するアミドを得ることができる。
【0244】
工程2:塩化メチレンにおいて上記アミドをTFAにより0℃で処理した後、室温まで暖めることにより、上記Boc基を脱保護して中間体Dを得ることができる。
【0245】
工程3:ピリジンとDMFの混合液中において、中間体Dを塩化アクリロイルでアシル化することにより、実施例1で用いたものと類似の手順でIII−1を得ることができる。
【0246】
(実施例16)
【0247】
【化38】

化合物III−5は、実施例7と同様のプロトコルを用いて、ピリジンとDMFの混合液中において、中間体Dをエテンスルホニルクロリドで処理することにより調製することができる。
【0248】
(実施例17)
【0249】
【化39】

化合物III−7は、実施例9と同様のプロトコルを用いて、トリエチルアミンと塩化メチレンの混合液中において、中間体Dを実施例9の工程3で調製した酸塩化物で処理することにより調製することができる。
【0250】
(実施例18)
【0251】
【化40】

化合物III−8は、Bioorganic&Medicinal Chemistry10(2002)355−360に記載のものと同様のプロトコルを用いて、アセトン中において、(実施例15に従って調製した)化合物III−1をジメチルジオキシランで処理することにより合成することができる。
【0252】
(実施例19)
【0253】
【化41】

化合物III−10は、実施例11に記載のものと同様のプロトコルを用いて、中間体Dをクロロピリジニルスルホニルクロリドで処理することにより合成することができる。
【0254】
(実施例20)
【0255】
【化42】

化合物III−11は、実施例12に記載のものと同様のプロトコルを用いて、中間体Dをクロロピリジニルスルホニルクロリドで処理することにより合成することができる。
【0256】
(実施例21)
【0257】
【化43】

トランス−4−ジメチルアミノ−2−ブテン酸(0.13g、0.80mmol)のアセトニトリル(1.0mL)撹拌溶液に、塩化オキサリル(0.153g、1.2mmol)を0℃で加えた。その反応混合液を0℃で30分間撹拌した後、室温で2時間撹拌した。最後に、これを45℃で5分間熱し、室温に冷却した。この混合液を中間体D(0.075g、0.16mmol)のN−メチルピロリドン(1.0mL)溶液に0℃で加えた。その反応混合液を0℃〜10℃で2時間撹拌し、冷水(1mL)で急冷し、CHCl(3×5mL)で抽出した。その混合有機抽出液を連続して水(1mL)と塩水(1mL)で洗浄し、次いで、NaSOで乾燥させ、減圧下で濃縮した後、カラムクロマトグラフィ(SiO、230〜400メッシュ、CHCl/MeOH、95/5)により精製してIII−6(0.02g、22%)を淡黄色固体として得た。1H NMR(DMSO−d6)δppm:2.18(s,6H),2.34(s,3H),3.06(d,J=5.6Hz,2H),6.25〜6.45(m,1H),6.65〜6.85(m,1H),7.43(d,J=8.12Hz,1H),7.47−7.52(m,3H),7.74(dd,J=1.76&8.0Hz,1H),8.06(dd,J=2&8.76Hz,1H),8.22(d,J=2.68Hz,1H),8.29(s,1H),8.43−8.45(m,1H),8.54(d,J=5.16Hz,1H),8.68(dd,J=1.64&4.8Hz,1H),9.16(s,1H),9.27(d,J=1.8Hz,1H),9.62(s,1H),10.48(s,1H);LCMS m/e:576.3(M+1)。
【0258】
(実施例22)
【0259】
【化44】

0℃の中間体D(0.1g、0.22mmol)のTHF(10mL)撹拌溶液に、N雰囲気下でEtN(0.033g、0.32mmol)を加えた。塩化クロロアセチル(0.029g、0.26mmol)を撹拌しながら滴下して加え、その反応混合液を室温にし、12時間撹拌した。その反応混合液を減圧下で濃縮して残留物を得て、これをEtOAc(10mL)に入れた。この溶液を水(2mL)で洗浄し、その水層をEtOAc(2×10mL)で再抽出した。そのEtOAc画分を混合し、塩水(2mL)で洗浄した。NaSOで乾燥させ、ろ過した後、そのEtOAc溶液を減圧下で濃縮して粗残留物を得た後、これをカラムクロマトグラフィ(SiO、60〜120メッシュ、CHCl/MeOH:9/1)により精製してIII−14(50mg、43%)を淡黄色固体として得た。1H NMR(DMSO−d)δppm:2.34(s,3H),4.30(s,2H),7.42−7.48(m,4H),7.73−7.75(m,1H),8.05〜8.10(m,1H),8.24(d,J=2.2Hz,1H),8.29(s,1H),8.43(d,J=8.04Hz,1H),8.54(d,J=5.16Hz,1H),8.67(dd,J=1.6&4.76Hz,1H),9.16(s,1H),9.26(d,J=2.2 Hz,1H),9.89(s,1H),10.50(s,1H);LCMS:m/e 541.2(M+1)。
【0260】
(実施例23)
PDGFR阻害アッセイ
方法A:
Robertsら、“Antiangiogenic and Antitumor Activity of a Selective PDGFR Tyrosine Kinase Inhibitor,CP−673,451”Cancer Research 65,957−966,2005年2月1日に記載の方法と実質的に類似の方法で化合物をPDGFRの阻害剤としてアッセイしてもよい。このアッセイでは、PDGFR−β(アミノ酸693−1,401、アクセッション番号J03278)の細胞内部分のグルタチオンS−トランスファーゼ標識キナーゼドメイン構造体は、Sf−9細胞(バキュロウィルス発現系、Invitrogen,Carlsbad,CA)において発現される。酵素反応速度は、リン酸化反応緩衝液[予めPBS100μLで希釈した100μg/mLのPoly−Glu−Tyr(比率4:1)でコーティングした96ウェルNunc Immuno MaxiSorpプレート中のHEPES50mmol/L(pH7.3)、NaCl125mmol/L、MgCl24mmol/LのATP濃度を上げながら酵素をインキュベートすることにより決定される。10分後、これらのプレートを洗浄し(PBS、0.1%Tween20)、抗ホスホチロシン−ホースラディッシュペルオキシターゼ抗体を用いてインキュベートし、30分かけて室温でPBS、0.05%Tween20、3%BSAで希釈する。これらのプレートを上記のように洗浄し、3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジンを用いてインキュベートする。同量の0.09NのHSOを加えることにより、この反応を停止する。次いで、ホスホチロシン依存性シグナルをプレートリーダーにより450nmで測定する。通常の酵素アッセイについては、上記のように6.25μg/mLのpoly−Glu−Tyr100μLで予めコーティングしたプレートにおいて30分間室温でDMSO(最終的な1.6%v/vのDMSOアッセイ)で希釈した化合物の存在下で(最終)ATP10μmol/Lで上記酵素をインキュベートする。残りのアッセイを上記のように実施し、IC50値を制御阻害パーセント(percent inhibition of control)として算出する。(上記のように生成した)精製組み換え酵素および各酵素につきKの3倍以上のATP濃度を用いて選択性アッセイを上記のとおりに行う。
【0261】
方法B:
Z’−LYTE(商標)生化学アッセイ手順または類似の生化学アッセイを用いて、Invitrogen Corp(Invitrogen Corporation,1600 Faraday Avenue,Carlsbad,California,CA;http://www.invitrogen.com/downloads/Z−LYTE_Brochure_1205.pdf)に記載のものと実質的に類似の方法で化合物をPDGFRの阻害剤としてアッセイした。Z’−LYTE(商標)生化学アッセイは蛍光ベースの共役酵素形態を採用し、タンパク質分解切断に対するリン酸化および非リン酸化ペプチドの感受性差に基づくものである。
【0262】
化合物I−1を0.1μMおよび1μMで2回テストした。化合物I−1が示したPDGFR−αの阻害の平均値は、1μMが76%、0.1μMが29%であった。
【0263】
方法C
化合物はまた、Upstate(http://www.upstate.com/img/pdf/KP_Protocol_121506.pdf)に記載のものと実質的に類似の方法でPDGFRα(h)の阻害剤としてアッセイしてもよい。タンパク質は、N末端にHis6−tagを含む組み換えヒトPDGFRα、残基550端(550−end)である。Sf21昆虫細胞においてバキュロウィルスにより発現する。Ni2+/NTAアガロースを用いて精製する。最終反応容積25μLにおいて、8mMのMOPS、pH7.0、0.2mMのEDTA、10mMのMnCl、0.1mg/mLのpoly(Glu、Tyr)4:1、10mMのMgAcetate、および[(c)−33P−ATP](比活性度約500cpm/pmol、必要に応じて濃縮)を用いてPDGFRα(野生型)(5〜10mU)をインキュベートする。MgATP混合液を加えて反応を開始する。40分間かけて室温でインキュベートした後、3%リン酸溶液5μLを加えて反応を停止する。次いで、反応液10μLをろ過マットA上にスボッティングし、75mMリン酸中において5分間かけて3回洗浄し、乾燥およびシンチレーション計数の前にメタノール中において1回洗浄する。この化合物を100%DMSO中において50倍の最終アッセイ濃度まで溶解し、上記のように最終反応容積25μlにおいてこの化合物の0.5μL溶液を用いてアッセイを行う。DMSOのみ(0.5μl)を対照として並行してテストする。
【0264】
方法D
簡単に説明すると、20mMトリス、pH7.5、5mMのMgCl、1mMのEGTA、5mMのβ−グリセロリン酸塩、5%グリセロール(10倍量、KB002A)、および0.2mMのDTT(DS001A)からなる1倍キナーゼ反応緩衝液中において、10倍量のPDGFRα(PV3811)酵素、1.13倍のATP(AS001A)、およびY12−Soxペプチド基質(KCZ1001)を調製した。酵素5μLを、0.5μLの容量の50%DMSOを用いてCorning(#3574)384ウェル(白色非結合表面マイクロタイタープレート(Corning,NY))で、30分間、27℃でプレインキュベートし、50%DMSOで連続して希釈した化合物を調製した。ATP/Y9またはY12−Soxペプチド基質混合液45μLを加えてキナーゼ反応を開始し、BioTek(Winooski,VT)のSynergyプレートリーダーで、60分間の間、λex360/λem485で30〜9秒毎に観察した。各アッセイの最後に、各ウェルからの進行曲線を線形反応速度および適合度統計量(fit statistics)(R、95%信頼区間、絶対平方和)について調べた。各反応からの初期速度(0分〜20分以上)を相対蛍光単位対時間(分)のプロットの勾配から判断した後、阻害剤濃度に対するプロットを作成し、GraphPad Software(San Diego,CA)のGraphPad Prismにおいてlog[阻害剤]対応答の可変勾配モデルからIC50を予測した。
【0265】
[PDGFRα]=2−5nM、[ATP]=60μM、および[Y9−Soxペプチド]=10μM(ATP KMapp=61μM)
本発明の特定の化合物に関するPDGFR阻害データを下記表5に示す。
【0266】
【表5】

(実施例24)
化合物I−1のPDGFR質量スペクトル解析
試験化合物I−1の存在下でのPDGFR−αの質量スペクトル解析を行なった。PDGFR−αタンパク質(Invitrogenより販売:PV3811)を、1μM、10μM、および100μMの試験化合物を用いて60分間インキュベートした。具体的には、0.4μg/μLPDGFR−α(Invitrogen PV3811)ストック溶液1μL(50mMトリスHCl、ph7.5、150mMのNaCl、0.5mMのEDTA、0.02%Triton X−100、2mMのDTT、50%グリセロール)を10%DMSO(1μM、10μM、および100μMの最終濃度)において試験化合物9μLに加えた。60分後、50mM重炭酸アンモニウム9μL、6mMヨードアセトアミドを含む50mM重炭酸アンモニウム溶液3.3μL、および35ng/μLトリプシン1μLを加えて反応を停止した。
【0267】
このトリプシン消化物を質量分析計(MALDI−TOF)により10μMで解析した。PDGFR−αタンパク質中に見られる5つのシステイン残基のうち、4つのシステイン残基は、ヨードアセトアミドにより修飾されていることが同定されたが、5番目のシステイン残基は、試験化合物により修飾されていた。トリプシン消化物の質量スペクトル解析は、PDGFR−αタンパク質とCys814で共有結合している試験化合物と一致した。トリプシン消化物のMS/MS解析により、Cys814に試験化合物が存在することが確認された。
【0268】
(実施例25)
化合物III−14のPDGFR質量スペクトル解析
試薬III−14の存在下でPDGFR−αの質量スペクトル解析を行った。PDGFR−α(43pmol)を、化合物III−14(434pmol)を用いてトリプシン消化の前に3時間かけて10倍のアクセス速度でインキュベートした。化合物のインキュベーション後に、ヨードアセトアミドをアルキル化剤として用いた。トリプシン消化物については、MALDI標的上に直接マイクロC18によるZip Tip処理を行う前に、αシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を基質(5mg/ml、0.1%TFA:アセトニトリル、50:50)を用いて5μLアリコート(7pmol)を0.1%TFA10μLで希釈した。
【0269】
このトリプシン消化物を質量分析計(MALDI−TOF)により解析した。トリプシン消化物の質量スペクトル解析は、PDGFR−αタンパク質とCys814で共有結合している試験化合物と一致した。トリプシン消化物のMS/MS解析により、試験化合物がCys814に存在することが確認された。
【0270】
(実施例26)
EOL−1細胞増殖アッセイ
DSMZ(ACC386)から購入したEOL−1細胞をRPMI(Invitrogen#21870)+10%FBS+1%ペニシリン/ストレプトマイシン(Invitrogen#15140−122)中で維持した。細胞増殖アッセイについては、完全培地中の細胞を2×10細胞/ウェルの密度で96ウェルプレートに播種し、500nM〜10pMの範囲の化合物で72時間かけて2回インキュベートした。Alamar Blue試薬(Invitrogenカタログ番号DAL1100)で代謝活性を測定して細胞増殖をアッセイした。Alamar Blueを用いて37℃で8時間かけてインキュベーションした後、590nmの吸光度を読み取り、GraphPadを用いて細胞増殖のIC50を算出した。対照化合物および化合物II−2を有するEOL−1細胞の細胞増殖の線量応答阻害を図1に示す。
【0271】
(実施例27)
EOL−1細胞ウォッシュアウトアッセイ
完全培地の懸濁液中でEOL−1細胞を増殖させ、1時間かけて1つのサンプルにつき2×10の細胞数で化合物を加えた。1時間後、その細胞をペレット化し、培地を除去し、化合物を含まない培地と取り替えた。細胞を2時間毎に洗浄し、化合物を含まない新鮮な培地で再懸濁した。細胞を特定の時点で採取し、細胞抽出緩衝液中に溶解させ、15μgの総タンパク質溶解物を各レーンに充填した。Santa Cruz社の抗体sc−12910を用いたウェスタンブロットによりPDGFRリン酸化反応をアッセイした。図2にこの実験の結果を示しており、DMSO対照および可逆的対照化合物と比較して、化合物II−2が「ウォッシュアウト」の0時間後および4時間後にEOL−1細胞においてPDGFRの酵素を阻害し続けることが分かる。
【0272】
(実施例28)
cKit阻害アッセイ
方法A
Upstate(http://www.upstate.com/img/pdf/KP_Protocol_121506.pdf)に記載のものと実質的に類似の方法でcKitの阻害剤として化合物をアッセイしてもよい。このアッセイでは、Sf21昆虫細胞においてバキュロウィルスにより発現され、グルタチオンアガロースにより精製されるN末端GST標識組み換えヒトキットアミノ酸544末端を用いる。最終反応容積25μLにおいて、c−kit(野生型)(5〜10mU)を、8mMのMOPS、pH7.0、0.2mMのEDTA、10mMのMnCl、0.1mg/mLのpoly(Glu,Tyr)4:1、10mMのMgAcetate、および[(c)−33P−ATP](比活性度約500cpm/pmol、必要に応じて濃縮)を用いてインキュベートする。MgATP混合液を加えて反応を開始する。40分間かけて室温でインキュベートした後、3%リン酸溶液5μLを加えて反応を停止する。次いで、反応液10μLをろ過マットA上にスボッティングし、75mMリン酸中において5分間かけて3回洗浄し、乾燥およびシンチレーション計数の前にメタノール中において1回洗浄する。この化合物を100%DMSO中において50倍の最終アッセイ濃度まで溶解し、上記のように最終反応容積25μlにおいてこの化合物の0.5μl溶液を用いてアッセイを行う。DMSOのみ(0.5μl)を対照として並行してテストする。
【0273】
方法B
CellSignal(http://www.cellsignal.com/pdf/7755.pdf)に記載のものと実質的に類似の方法でcKitの阻害剤として化合物をアッセイしてもよい。アミノ末端GST標識を有するヒトc−Kit(Thr544−Val976)のフラグメントを発現する構造体を有するバキュロウィルス発現系を用いてGST−c−Kit融合タンパク質を産生する。グルタチオンアガロースを用いて、一段階親和性クロマトグラフィによりこのタンパク質を精製する。このアッセイでは、10mMのATP10μLを6μMのKDR(Tyr996)ビオチン化ペプチド基質ペプチド1.25mlに加える。その混合液をdH20で2.5mlまで希釈して2×ATP/基質混合液([ATP]=40μM、[基質]=3μm)を作成する。このc−KIT酵素をすぐに−80℃から氷に変換する。この酵素を解凍する。このバイアルを4℃で短時間微小遠心分離機にかけ、バイアルの底に液体を生じさせた後、すぐに氷に戻す。10μLのDTT(1.25M)を4倍HTScan(商標)チロシンキナーゼ緩衝液(Cellsignal;240mMのHEPES、pH7.5、20mMのMgCl、20mMのMnCl、12μMのNa3VO4)2.5mlに加えてDTT/キナーゼ緩衝液を作成する。DTT/キナーゼ緩衝液1.25mlを酵素チューブに移し、4倍反応混合液を作成する(4倍反応混合液中、[酵素]=4ng/μL)。4倍反応混合液12.5μLを予め希釈した化合物12.5μl/ウェルを用いて5分間かけて室温でインキュベートする。2倍ATP/基質混合液25μLをプレインキュベートした25μL/ウェルの反応混合液/化合物に加える。この反応プレートを室温で30分間インキュベートし、50μL/ウェルの停止緩衝液(50mM EDTA、pH8)を加えて反応を停止する。各反応液25μLおよびdH2O/ウェル75μLを96ウェルストレプトアビジン被覆プレートに移し、室温で60分間インキュベートする。これを200μL/ウェルのPBS/Tで3回洗浄する。一次抗体(ホスホチロシンmAb(P−Tyr−100))を、1%BSAを含むPBS/Tで1:1000に希釈する。100μL/ウェルの一次抗体を加え、室温で60分間インキュベートする。これを200μL/ウェルのPBS/Tで3回洗浄する。ユーロピウム標識抗マウスIgGを含む1:500のPBS/Tを1%BSAで希釈する。次いで、100μL/ウェルの希釈抗体を加える。次いで、これを室温で30分間インキュベートし、200μL/ウェルのPBS/Tで5回洗浄する。100μL/ウェルのDELFIA(登録商標)増強溶液を加えた後、室温で5分間インキュベートする。時間分解プレートリーダーを用いて615nm蛍光放射を検出する。アッセイ混合液および試験化合物を有さないDMSOを含む標準的なウェルに対して50%より高い阻害を示す化合物を滴定してIC50値を判定する。
【0274】
方法C
ヒト組み換えc−KIT(Milliporeから入手、カタログ番号14−559)を用いて、フルオレセイン標識ペプチド基質(1.5μM)のリン酸化反応を観察して本発明の化合物をc−KITの阻害剤としてアッセイした。100mMのHEPES(pH7.5)、10mMのMnCl、1mMのDDT、0.015%Brij−35、および300μMのATPにおいて、試験化合物を含む場合と含まない場合について反応を行った。反応はATPを加えて、1時間、室温でインキュベートすることにより開始した。100mMのHEPES(pH7.5)、30mのMEDTA、0.015%Brij−35、および5%DMSOを含有する停止緩衝液を加えて反応を終了した。リン酸化および非リン酸化基質を電気泳動移動度シフトにより電荷分離した。形成した生成物を対照ウェルと比較して酵素活性の阻害または増強を判定した。
【0275】
本発明の特定の化合物に関するc−KIT阻害データを下記表6に示す。
【0276】
【表6】

方法D
事前活性酵素(Pre−Activated Enzyme)を用いた効力評価のためのc−Kit(V654AおよびT670I)Omniaアッセイ
事前活性c−KIT(V654A)およびc−KIT(T670I)酵素に対する化合物の固有の効力を測定する連続読取キナーゼアッセイを記載する下記のプロトコルを用いて、化合物を突然変異体c−KITの阻害剤としてテストした。
【0277】
簡単に説明すると、20mMトリス、pH7.5、5mMのMgCl、1mMのEGTA、5mMのβ−グリセロリン酸塩、5%グリセロール(10倍ストック溶液、KB002A)、および0.2mMのDTT(DS001A)からなる1倍キナーゼ反応緩衝液中において、Millipore(14−733)のc−KIT(V654A)またはCell Signaling(7922)のc−Kit(T670I)を10倍ストック溶液と、1mMのATP(AS001A)および1.13倍のY9−SoxもしくはY12−Soxペプチド基質(KCZ1001)を調製した。10倍酵素/ATPストック溶液を30分間、室温でプレインキュベートし、各酵素を化合物に曝露する前に予め活性化した。次いで、容積0.5μLの50%DMSOを用いてCorning(#3574)384ウェル(白色非結合表面マイクロタイタープレート(Corning,NY))で各酵素5μLを30分間、27℃でプレインキュベートし、50%DMSO中において、連続して希釈した化合物を調製した。Y9またはY12−Soxペプチド基質45μLを加えてキナーゼ反応を開始し、BioTek(Winooski,VT)のSynergyプレートリーダーで、60分間の間に、λex360/λem485で30〜90秒毎に観察した。各アッセイの最後に、各ウェルからの進行曲線を線形反応速度および適合度統計量(R、95%信頼区間、絶対平方和)について調べた。各反応からの初期速度(0分〜20分以上)を相対蛍光単位対時間(分)のプロットの勾配から判断した後、阻害剤濃度に対するプロットを作成し、GraphPad Software(San Diego,CA)のGraphPad Prismにおいてlog[阻害剤]対応答の可変勾配モデルからIC50を予測した。
【0278】
[c−Kit V654A]=5nM、[ATP]=100μM、および[Y9−Sox]=10μM(ATP KMapp=240μM)
[c−Kit T670I]=5nM、[ATP]=100μM、および[Y12−Sox]=10μM(ATP KMapp=220μM)。
【0279】
方法E
効力評価のためのc−Kit(V654AおよびT670I)Omniaアッセイ
簡単に説明すると、20mMトリス、pH7.5、5mMのMgCl、1mMのEGTA、5mMのβ−グリセロリン酸塩、5%グリセロール(10倍ストック溶液、KB002A)、および0.2mMのDTT(DS001A)からなる1倍キナーゼ反応緩衝液中において、Millipore(14−733)のc−KIT(V654A)またはCell Signaling(7922)のc−Kit(T670I)を10倍ストック溶液と、1.13倍の(AS001A)およびY9−SoxもしくはY12−Soxペプチド基質(KCZ1001)を調製した。容積0.5μLの50%DMSOを用いて、Corning(#3574)384ウェル(白色非結合表面マイクロタイタープレート(Corning,NY))で各酵素5μLを30分間、27℃でプレインキュベートし、50%DMSO中において、連続して希釈した化合物を調製した。Y9またはY12−Soxペプチド基質45μLを加えてキナーゼ反応を開始し、BioTek(Winooski,VT)のSynergyプレートリーダーで、60分間の間に、λex360/λem485で30〜90秒毎に観察した。各アッセイの最後に、各ウェルからの進行曲線を線形反応速度および適合度統計量(R、95%信頼区間、絶対平方和)について調べた。各反応からの初期速度(0分〜20分以上)を相対蛍光単位対時間(分)のプロットの勾配から判断した後、阻害剤濃度に対するプロットを作成し、GraphPad Software(San Diego,CA)のGraphPad Prismにおいてlog[阻害剤]対応答の可変勾配モデルからIC50を予測した。
【0280】
[c−Kit V654A]=5nM、[ATP]=220μM、および[Y9−Sox]=10μM(ATP KMapp=240μM)
[c−Kit T670I]=5nM、[ATP]=220μM、および[Y12−Sox]=10μM(ATP KMapp=220μM)。
【0281】
上記アッセイプロトコルの方法Dを用いてIC50値を得た場合、および上記アッセイプロトコルの方法Eを用いて見かけのIC50値を得た場合の例示的な化合物に関する突然変異体c−KIT(V654A)阻害データを下記表7に要約する。
【0282】
【表7】

例示的な化合物に関する突然変異体c−KIT(T6701)阻害データを下記表8に要約する。
【0283】
【表8】

(実施例29)
化合物III−14のc−KIT質量スペクトル解析
試験化合物III−14の存在下でc−KITの質量スペクトル解析を行った。具体的には、c−KITキナーゼ(86pmol)を、化合物III−14(863pmol)を用いてトリプシン消化の前に3時間かけて10倍のアクセス速度でインキュベートした。化合物のインキュベーション後に、ヨードアセトアミドをアルキル化剤として用いた。キモトリプシン活性を取り除いた高級トリプシンを用いた新たなサンプルも調製した。トリプシン消化物については、MALDI標的上に直接マイクロC18によるZip Tip処理を行う前に、αシアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を基質(5mg/ml、0.1%TFA:アセトニトリル、50:50)を用いて5μLアリコート(14pmol)を0.1%TFA10μlで希釈した。
【0284】
このトリプシン消化物を質量分析計(MALDI−TOF)により解析した。トリプシン消化物の質量スペクトル解析は、c−KITタンパク質と2つの標的システイン残基:Cys808(副)およびCys788(主)で共有結合している試験化合物と一致した。
【0285】
(実施例30)
cKitウォッシュアウトアッセイ
GIST430細胞を8×10細胞/ウェルの密度で6ウェルプレートに播種し、翌日に、完全培地で希釈した化合物1μMで90分間処理した。90分後、その培地を除去し、化合物を含まない培地で細胞を洗浄した。細胞を2時間毎に洗浄し、化合物を含まない新鮮な培地で再懸濁した。細胞を特定の時点で採取し、Roche社のcomplete protease inhibitor tablets(Roche11697498001)およびphosphatase inhibitors(Roche 04 906 837 001)を添加した細胞抽出緩衝液中(Invitrogen FNN0011)に溶解させ、10μgの総タンパク質溶解物を各レーンに充填した。Cell Signaling TechnologyのpTyr(4G10)抗体およびtotal kit抗体を用いたウェスタンブロットによりc−KITリン酸化反応をアッセイした。図3にこの実験の結果を示しており、化合物III−14が「ウォッシュアウト」の0時間後および6時間後にGIST430細胞においてc−KIT酵素を阻害し続けることが分かる。
【0286】
(実施例31)
cFMS阻害アッセイ
Upstate(http://www.upstate.com/img/pdf/KP_Protocol_121506.pdf)に記載のものと実質的に類似の方法で化合物をcFMS(h)の阻害剤としてアッセイしてもよい。このタンパク質は、Sf21昆虫細胞のバキュロウィルスにおいて、N末端His標識、組み換え、ヒトcFms、アミノ酸538末端として発現され、Ni2+/NTAアガロースを用いて精製される。最終反応容積25μLにおいて、Fms(h)(5〜10mU)を、8mMのMOPS、pH7.0、0.2mMのEDTA、250μMのKKKSPGEYVNIEFG、10mMのMgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性度約500cpm/pmol、必要に応じて濃縮)を用いてインキュベートする。MgATP混合液を加えて反応を開始する。40分間かけて室温でインキュベートした後、3%リン酸溶液5μLを加えて反応を停止する。次いで、反応液10μLをP30ろ過マット上にスボッティングし、75mMリン酸中において5分間かけて3回洗浄し、乾燥およびシンチレーション計数の前にメタノール中において1回洗浄する。この化合物を100%DMSO中において50倍の最終アッセイ濃度まで溶解し、上記のように最終反応容積25μlにおいてこの化合物の0.5μL溶液を用いてアッセイを行う。DMSOのみ(0.5μL)を対照として並行してテストする。
【0287】
(実施例32)
KDR阻害アッセイ
方法A
標準的な共役酵素アッセイ(Foxら、Protein Sci.,(1998)7,2249)を用いてKDRを阻害する能力について化合物をスクリーニングしてもよい。
200mMのHEPES 7.5、10mMのMgCl、25mMのNaCl、1mMのDTT、および1.5%DMSOの混合液中でアッセイを行う。アッセイにおける最終基質濃度は、ATP(Sigma Chemicals)300μM、ポリE4Y(Sigma)10μMである。37℃、30nM KDRでアッセイを行う。共役酵素系の成分の最終濃度は、ホスホエノールピルベート2.5mM、NADH200μM、ピルベートキナーゼ30μg/ML、および乳酸デヒドロゲナーゼ10μg/mlである。
【0288】
ATPおよび対象試験化合物を除く、上記の全ての試薬を含むアッセイのストック緩衝溶液を調製する。177μLのストック溶液を96ウェルプレートに載せた後、試験化合物(最終化合物濃度30μM)を含む3μLの2mM DMSOストックを加える。このプレートを約10分間、37℃でプレインキュベートし、20μLのATP(最終濃度300μM)を加えて反応を開始する。Molecular Devicesプレートリーダー(Sunnyvale,CA)を用いて、5分間の読み取り時間、37℃で反応速度を求める。アッセイ混合液および試験化合物を有さないDMSOを含む標準的なウェルに対して50%より高い阻害を示す化合物を滴定してIC50値を判定する。
【0289】
方法B
Upstate(http://www.upstate.com/img/pdf/KP_Protocol_121506.pdf)に記載のものと実質的に類似の方法でKDR(h)の阻害剤として化合物をアッセイしてもよい。このタンパク質は、Sf21昆虫細胞のバキュロウィルスによりN末端6His標識、組み換え、ヒトKDR、アミノ酸790末端として発現され、Ni2+/NTAアガロースを用いて精製される。最終反応容積25μLにおいて、KDR(h)(5〜10mU)を、8mMのMOPS、pH7.0、0.2mMのEDTA、250μMのKKKSPGEYVNIEFG、10mMのMgAcetate、および[γ−33P−ATP](比活性度約500cpm/pmol、必要に応じて濃縮)を用いてインキュベートする。MgATP混合液を加えて反応を開始する。40分間かけて室温でインキュベートした後、3%リン酸溶液5μLを加えて反応を停止する。次いで、反応液10μLをP30ろ過マット上にスボッティングし、75mMリン酸中において5分間かけて3回洗浄し、乾燥およびシンチレーション計数の前にメタノール中において1回洗浄する。この化合物を100%DMSO中において50倍の最終アッセイ濃度まで溶解し、上記のように最終反応容積25μlにおいてこの化合物の0.5μL溶液を用いてアッセイを行う。DMSOのみ(0.5μl)を対照として並行してテストする。
【0290】
方法C
Invitrogenに記載のものと実質的に類似の方法で化合物をKDRの阻害剤としてアッセイした。4mlの5倍ストック溶液を16mlのHOに加えて5倍キナーゼ緩衝ストック溶液(Invitrogenより市販される、商品番号PV3189)を希釈し、20mlの1倍キナーゼ反応緩衝液を作成してキナーゼ反応緩衝液を調製した。
【0291】
低容積の384ウェルプレートにおいて容積10μLでキナーゼ反応を行った。典型的には、Corningモデル3676(黒)または3673(白)プレートを用いる。アッセイにおける基質(Invitrogenより市販されるフルオレセイン−ポリGATまたはフルオレセイン−ポリGT)の濃度は200nMであり、1倍キナーゼ反応緩衝液は、50mMのHEPES、pH7.5、0.01%BRIJ−35、10mMのMgCl、および1mMのEGTAからなる。50mMのHEPES、pH7.5、0.01%BRIJ−35、10mMのMgCl、1mMのEGTAにおいて2倍KDR(VEGFR2)/Tyr01ペプチド混合液を調製した。最終的な10μLキナーゼ反応液は、50mMのHEPES、pH7.5、0.01%BRIJ−35、10mMのMgCl、1mMのEGTAにおける0.5〜11.7ngのKDR(VEGFR2)および2μMのTyr01ペプチドから構成された。このキナーゼ反応を1時間、室温で続けてから、Development Reagent Bの1:128希釈液5μLを加えた。
【0292】
上記アッセイプロトコル(方法C)を用いて化合物II−2をKDRの阻害剤としてテストし、試験化合物の濃度が10μMの場合にKDR酵素が7%阻害されることが分かった。
【0293】
方法D
簡単に説明すると、20mMトリス、pH7.5、5mMのMgCl、1mMのEGTA、5mMのβ−グリセロリン酸塩、5%グリセロール(10倍ストック溶液、KB002A)、および0.2mMのDTT(DS001A)からなる1倍キナーゼ反応緩衝液中において、InvitrogenもしくはBPS Bioscience(PV3660または40301)のKDRの10倍ストック溶液、1.13倍ATP(AS001A)、およびY9−Soxペプチド基質(KCZ1001)を調製した。容積0.5μLの50%DMSOを用いてCorning(#3574)384ウェル(白色非結合表面マイクロタイタープレート(Corning,NY))で各酵素5μLを30分間、27℃でプレインキュベートし、50%DMSO中において、連続して希釈した化合物を調製した。ATP/Y9またはY12−Soxペプチド基質混合液45μLを加えてキナーゼ反応を開始し、BioTek(Winooski,VT)のSynergyプレートリーダーで、60分間の間に、λex360/λem485で30〜90秒毎に観察した。各アッセイの最後に、各ウェルからの進行曲線を線形反応速度および適合度統計量(R、95%信頼区間、絶対平方和)について調べた。各反応からの初期速度(0分〜20分以上)を相対蛍光単位対時間(分)のプロットの勾配から判断した後、阻害剤濃度に対するプロットを作成し、GraphPad Software(San Diego,CA)のGraphPad Prismにおいてlog[阻害剤]対応答の可変勾配モデルからIC50を予測した。
【0294】
[KDR]=2.5nM、[ATP]=75μM、および[Y12−Soxペプチド]=5μM(ATP KMapp=75μM)
上記アッセイプロトコルの方法Dを用いて得た例示的な化合物に関するKDR阻害データを下記表9に要約する。
【0295】
【表9】

本発明の実施形態を多数説明したが、我々の基本例を改変して本発明の化合物および方法を利用する他の実施形態とすることが可能であるのは明白である。それゆえ、本発明の範囲は、例示した具体的な実施形態ではなく、添付の請求の範囲により規定されることは言うまでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物:
【化45】

またはその薬学的に受容可能な塩であって、ここで、
Tは−NHC(O)−または−C(O)NH−であり、
WはCHまたはNであり、
、R、R、およびRは、それぞれ独立して、R、OR、またはハロゲンから選択され、
各Rは、独立して、水素、低級アルキル、または低級ハロアルキルであり、
は弾頭基であり、
はR、ハロゲン、−N(R)C(O)OR、またはRで置換された1−イミダゾイルから選択されるか、または
およびRは、それらの介在原子と組み合わされ、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する5〜7員の飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であって、該環は、弾頭基、およびオキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される0〜3個の基で置換される、環を形成し、
は水素、低級アルキル、またはハロゲンから選択される、化合物。
【請求項2】
前記化合物は式II−aもしくはIII−aの化合物:
【化46】

またはそれらの薬学的に受容可能な塩であって、ここで、
は−L−Yであり、
Lは二価のC2〜8直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lは少なくとも1つの二重結合を有し、Lの少なくとも1つのメチレン単位は、シクロプロピレン、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−S−、−S(O)−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、−N=N−、または−C(=N)−により置き換えられ、Lのさらに1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−O−、−N(R)−、または−C(O)−により置き換えられ、
Yは、水素、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜10員の単環もしくは二環の、飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であり、該環は、−Q−Z、オキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される1〜4個の基で置換され、
Qは、共有結合または二価のC1〜6飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Qの1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−S−、−O−、−C(O)−、−SO−、または−SO−により置き換えられ、
Zは、水素、または、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族であり、
は、R、ハロゲン、−N(R)C(O)OR、またはRで置換された1−イミダゾイルから選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
Yは、水素、または、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族であり、
は低級アルキルである、請求項2に記載の化合物。
【請求項4】
Lは、−NHC(O)CH=CH−、−NHC(O)CH=CHCHN(CH)−、−NHC(O)CH=CHCHO−、−CHNHC(O)CH=CH−、−NHSOCH=CH−、−NHSOCH=CHCH−、−NHC(O)(C=N)−、−NHC(O)(C=N)C(O)−、−NHC(O)CH=CHCHN(CH)−、−NHSOCH=CH−、−NHSOCH=CHCH−、−NHC(O)CH=CHCHO−、または−NHC(O)C(=CH)CH−である、請求項2または3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】
Lは少なくとも1つのアルキリデニル二重結合を有する、請求項2に記載の化合物。
【請求項6】
は、水素、−CF、またはRで置換された1−イミダゾイルである、請求項2、3、4、または5に記載の化合物。
【請求項7】
は−L−Yであり、
Lは二価のC2〜8直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lは少なくとも1つの三重結合を有し、Lのさらに1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−S−、−S(O)−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、−O−、−N(R)−、または−C(O)−により置き換えられ、
Yは、水素、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜10員の単環もしくは二環の、飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であり、該環は、−Q−Z、オキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される1〜4個の基で置換され、
Qは、共有結合または二価のC1〜6飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Qの1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−S−、−O−、−C(O)−、−SO−、または−SO−により置き換えられ、
Zは、水素、または、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族である、請求項1に記載の化合物。
【請求項8】
Lは、−C≡C−、−C≡CCHN(イソプロピル)−、−NHC(O)C≡CCHCH−、−CH−C≡C−CH−、または−C≡CCHO−であり、
Yは、水素、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族、フェニル、ピリジル、または窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する随意に置換された飽和3〜6員の単環であり、該環は、−Q−Z、オキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される1〜4基で置換される、請求項7に記載の化合物。
【請求項9】
は−L−Yであり、
Lは二価のC2〜8直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lの1つのメチレン単位は、シクロプロピレンにより置き換えられ、Lのさらに1つまたは2つのメチレン単位は、独立して、−C(O)−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−N(R)SO−、または−SON(R)−により置き換えられ、
Yは、水素、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜10員の単環もしくは二環の、飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であり、該環は、−Q−Z、オキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される1〜4個の基で置換され、
Qは、共有結合または二価のC1〜6飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Qの1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−S−、−O−、−C(O)−、−SO−、または−SO−により置き換えられ、
Zは、水素、または、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族である、請求項1に記載の化合物。
【請求項10】
Lは、−NHC(O)−シクロプロピレン−SO−および−NHC(O)−シクロプロピレン−であり、
Yは、水素、CN、または、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族である、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
は−L−Yであり、
Lは、共有結合または二価のC1〜8飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Lの1つ、2つ、または3つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−N(R)C(O)−、−C(O)N(R)−、−O−、−C(O)−、−OC(O)−、−C(O)O−、−S−、−SO−、−SO−、または−C(=S)−により置き換えられ、
Yは、以下:
【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
Lは、共有結合、−CH−、−NH−、−CHNH−、−NHCH−、−NHC(O)−、−NHC(O)CHOC(O)−、−CHNHC(O)−、−NHSO−、−NHSOCH−、−NHC(O)CHOC(O)−、または−SONH−である、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
は−L−Yであり、
Lは二価のC1〜8直鎖もしくは分岐アルキレン鎖であり、Lの少なくとも1つのメチレン単位は、−C(=N)−により置き換えられ、Lのさらに1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−S−、−S(O)−、−SO−、−C(=S)−、−C(=NR)−、−O−、−N(R)−、または−C(O)−により置き換えられ、
Yは、水素、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する3〜10員の単環もしくは二環の、飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であり、該環は、−Q−Z、オキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される1〜4個の基で置換され、
Qは、共有結合または二価のC1〜6飽和もしくは不飽和の、直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Qの1つまたは2つのメチレン単位は、随意に、かつ独立して、−NR−、−S−、−O−、−C(O)−、−SO−、または−SO−により置き換えられ、
Zは、水素、または、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族である、請求項1に記載の化合物。
【請求項14】
Lは、−NHC(O)(C=N)−または−NHC(O)(C=N)C(O)−であり、
Yは、水素、または随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族、または窒素、酸素、もしくは硫黄から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を有する随意に置換された飽和3〜6員の単環、フェニルまたはピリジルである、請求項13に記載の化合物。
【請求項15】
前記化合物は式II−aもしくはIII−aの化合物:
【化51】

またはそれらの薬学的に受容可能な塩であり、ここで、
およびRは、それらの介在原子と組み合わされ、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有し、弾頭基で置換される5〜7員の飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であって、該弾頭基は−Q−Zであり、該環は、オキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される0〜3個の基でさらに置換される、環を形成し、
Qは、少なくとも1つの二重結合を有する二価のC2〜6直鎖もしくは分岐炭化水素鎖であり、Qの1つまたは2つのメチレン単位は、独立して、−NR−、−NRC(O)−、−C(O)NR−、−S−、−O−、−C(O)−、−SO−、または−SO
により置き換えられ、
Zは、水素、または、随意に、オキソ、ハロゲン、もしくはCNで置換されたC1〜6脂肪族である、請求項1に記載の化合物。
【請求項16】
およびRは、それらの介在原子と組み合わされ、それらと縮合したフェニル環とともに、ナフチル、テトラヒドロキノリン、インドリン、イソインドリン、1H−インドール、またはテトラヒドロイソキノリン環を形成する、請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
−Q−Zは、−NHC(O)CH=CHまたは−C(O)CH=CHである、請求項15または16のいずれかに記載の化合物。
【請求項18】
下記:
【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

【化56】

【化57】

からなる群から選択される、化合物。
【請求項19】
下記:
【化58】

【化59】

【化60】

からなる群から選択される、化合物。
【請求項20】
下記の構造:
【化61】

の化合物。
【請求項21】
下記の構造:
【化62】

の化合物。
【請求項22】
下記の構造:
【化63】

の化合物。
【請求項23】
下記の構造:
【化64】

の化合物。
【請求項24】
下記の構造:
【化65】

の化合物。
【請求項25】
下記の構造:
【化66】

の化合物。
【請求項26】
請求項1に記載の化合物、および薬学的に受容可能なアジュバント、担体、もしくは賦形剤を含む組成物。
【請求項27】
さらなる治療薬と組み合わせた請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
前記さらなる治療薬は化学療法薬である、請求項27に記載の組成物。
【請求項29】
生物学的サンプル中のPDGFR、cKit、KDR、またはcFMS活性を阻害する方法であって、該生物学的サンプルを請求項1に記載の化合物またはその組成物と接触させる工程を包含する、方法。
【請求項30】
患者のPDGFR、c−KIT、KDR、またはcFMS活性を阻害する方法であって、該患者に請求項1に記載の化合物またはその組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項31】
患者のPDGFR、c−KIT、KDR、またはcFMS活性を阻害する方法であって、該患者に請求項1に記載の化合物またはその組成物を投与する工程を包含し、該PDGFR、c−KIT、KDR、またはcFMS活性は不可逆的に阻害される、方法。
【請求項32】
前記PDGFR、c−KIT、KDR、またはcFMS活性は、PDGFR−αのCys814、PDGFR−βのCys822、KDRのCys1024、c−KITのCys788、またはcFMSのCys774を共有結合的に修飾することにより不可逆的に阻害される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
処置を必要とする患者におけるPDGFR、c−KIT、KDR、またはcFMSの媒介による疾患を処置する方法であって、該患者に請求項1に記載の化合物、またはその組成物を投与する工程を包含する、方法。
【請求項34】
処置を必要とする患者におけるPDGFR、c−KIT、KDR、またはcFMSの媒介による疾患を処置する方法であって、PDGFR−αのCys814、PDGFR−βのCys822、KDRのCys1024、c−KITのCys788、またはcFMSのCys774を共有結合的に修飾することによりPDGFR、c−KIT、KDR、またはcFMSを不可逆的に阻害する工程を包含する、方法。
【請求項35】
式Cys814−リンカー−阻害剤部分の結合体であって、該Cys814はPDGFR−αのCys814である、結合体。
【請求項36】
式Cys822−リンカー−阻害剤部分の結合体であって、該Cys822はPDGFR−βのCys822である、結合体。
【請求項37】
式Cys788−リンカー−阻害剤部分の結合体であって、該Cys788はc−KITのCys788である、結合体。
【請求項38】
式Cys774−リンカー−阻害剤部分の結合体であって、該Cys774はcFMSのCys774である、結合体。
【請求項39】
式Cys1024−リンカー−阻害剤部分の結合体であって、該Cys1024はKDRのCys1024である、結合体。
【請求項40】
下記のいずれかの式の結合体であって:
【化67】

前記Cys814はPDGFR−αのCys814であり、前記Cys822はPDGFR−βのCys822であり、前記Cys788はc−KITのCys788であり、前記Cys774はcFMSのCys774であり、前記Cys1024はKDRのCys1024であり、
各Tは−NHC(O)−または−C(O)NH−であり、
各WはCHまたはNであり、
、R、R、およびRの各々は、独立して、R、OR、またはハロゲンから選択され、
各Rは、独立して、水素、低級アルキル、または低級ハロアルキルであり、
各Rは、R、ハロゲン、−N(R)C(O)OR、またはRで置換された1−イミダゾイルから選択されるか、または
およびRは、それらの介在原子と組み合わされ、窒素、酸素、または硫黄から独立して選択される0〜3個のヘテロ原子を有する5〜7員の飽和環、部分不飽和環、もしくはアリール環であって、該環は弾頭基、およびオキソ、ハロゲン、CN、またはC1〜6脂肪族から独立して選択される0〜3個の基で置換される、環を形成し、
各Rは水素、低級アルキル、またはハロゲンから選択される、結合体。
【請求項41】
前記疾患は、扁平上皮細胞癌、多発性骨髄腫、黒色腫、神経膠腫、グリア芽腫、白血病、肉腫、平滑筋腫、中皮腫、GIST、肺癌、乳癌、卵巣癌、頸癌、肝臓癌、胆道癌、消化管癌、膵臓癌、前立腺、および頭頸部癌から選択される癌腫である、請求項33に記載の方法。
【請求項42】
前記疾患は、過剰な細胞外基質の蓄積、繊維性疾患(例えば、強皮症、ループス腎炎、結合組織病、創傷治癒、外科的瘢痕、脊髄損傷、CNS瘢痕、急性肺損傷、肺繊維症(突発性肺繊維症および放射線誘発肺繊維症等)、慢性閉塞性肺疾患、成人呼吸窮迫症候群、急性肺損傷、薬物誘発肺損傷、糸球体腎炎、糖尿病性腎症、高血圧性腎症、消化管もしくは胃腸繊維症、腎繊維症、肝もしくは胆管繊維症、肝硬変、原発性胆汁性肝硬変、脂肪肝疾患(アルコール性および非アルコール性脂肪変性)による肝硬変、原発性硬化性胆管炎、再狭窄、心筋繊維症、眼の瘢痕、繊維性硬化症、繊維性癌、類繊維腫、繊維腫、繊維腺腫、繊維肉腫、移植動脈疾患、およびケロイド)、ならびに悪液質、高血圧症、強直性脊椎炎、多発性硬化症における脱髄、脳血管障害、およびアルツハイマー病等の他の病状を含む病状である、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記疾患は、AML、慢性骨髄性白血病(CML)、肥満細胞症、未分化大細胞リンパ腫、ALL、消化管間質腫瘍(GIST)、T細胞リンパ腫、腺様嚢胞癌、血管肉腫、子宮内膜癌、小細胞肺癌、前立腺癌、卵巣癌、乳癌、甲状腺癌、悪性黒色腫、または結腸癌である、請求項33に記載の方法。
【請求項44】
前記疾患は、脳癌、尿生殖器癌、リンパ系癌、胃癌、喉頭癌、肺癌、膵臓癌、乳癌、カポジ肉腫、および白血病等の癌、子宮内膜症、良性前立腺過形成、再狭窄およびアテローム性動脈硬化症等の血管疾患、リウマチ性関節炎および乾癬等の自己免疫疾患、増殖性または血管新生網膜症および黄斑変性症等の眼病、変形性関節炎、または接触性皮膚炎、ぜんそく、および遅延型過敏反応等の炎症性疾患である、請求項33に記載の方法。
【請求項45】
前記疾患は、変形性関節炎、骨粗しょう症、リウマチ性関節炎、炎症性腸疾患、糸球体腎炎、同種移植片拒絶反応、または動脈硬化症である、請求項33に記載の方法。
【請求項46】
前記疾患はGISTである、請求項33に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−529134(P2010−529134A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−511276(P2010−511276)
【出願日】平成20年6月3日(2008.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2008/065646
【国際公開番号】WO2008/151183
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(509333597)アビラ セラピューティクス, インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】