説明

親油性成分含有粉末

【課題】 賦形剤含有状態であっても、親油性成分に対して少量の乳化剤使用量で、親油性成分を容易に安定で且つ微小な乳化油滴とすることができ、更に親油性成分含有粉末を圧密/成型といった2次加工を施した場合に油の染み出しを効果的に抑制することができる親油性成分含有粉末及びその製造方法の提供。
【解決手段】 (A)親油性成分、(B)1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマー由来の構成単位を全構成単位中20〜95モル%、一般式(1)で表される構成単位を全構成単位中5〜80モル%含む両親媒性高分子化合物、(C)賦形剤及び水を含有するO/W型乳化物を乾燥させて得られる親油性成分含有粉末及びその製造方法。
【化1】


(式中、R1、R2及びR3はH又はC1-5のアルキル基、Xは疎水性基を示す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、親油性成分含有粉末及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
親油性成分を賦形剤(水溶性壁材物質)含有の乳化物とした後、該乳化物を乾燥することで得られる親油性成分含有粉末は、該粉末中で親油性成分が水溶性壁材のマトリクス中に保持/カプセル化されているため、香料に代表される揮発性の高い親油性成分であっても保存時の揮散が少なく香味の持続性に優れている。また、圧密/成型などの外力負荷をかけても、親油性成分は染み出しにくく、粉末加工に優れている。更には、該粉末を水に溶解すると微細カプセル化された油滴を放出し、乳化状態となるため、農薬に代表される農薬活性成分の散布時にも非常に利便性を兼ね備えたものである。この様な特長があるため、近年盛んに本手法による親油性成分の粉末化についての研究がなされており、その中から乳化物を調製する際、親油性成分を微小乳化油滴にすることで、有益な特性が得られることが判ってきている。
【0003】
特許文献1には、ポリ(メタ)アクリル酸系高分子、ポリ(メタ)アクリル酸エステル系高分子及びポリビニル系高分子からなる増粘剤用途の水溶性高分子乳化剤、および架橋澱粉を用いた乳化組成物が開示されているが、乳化組成物の粘度が10,000mPa・s程度と高粘度であり、噴霧及び乾燥処理が適さず、親油性含有粉末を得る事は困難である。
【0004】
特許文献2及び特許文献3には、水溶性高分子としてアラビアガム及びカゼインナトリウムを用いて親油性成分を乳化、噴霧乾燥することにより得られる親油性成分含有粉末が開示されているが、水溶性高分子を用いて親油性成分を乳化するためには、親油性成分に対して多量の水溶性高分子を用いる必要があった。更に、当該特許文献には、親油性成分含有粉末を、40℃の湯200リットルに対して0.005重量%溶解/再分散させた場合には、外観として白濁色を呈す事が示されており、粉末中で油滴のカプセルが微細保持されていないと考えられる。
【0005】
また特許文献4には、アラビアガムを用いて親油性成分を乳化、噴霧乾燥することにより得られる、油の染み出し抑制性に優れた親油性成分含有粉末が開示されているが、ここに開示されている油の染み出し抑制評価は、圧密/成型といった粉末加工を施した場合の評価ではなく、油の染み出し抑制性のレベルは、錠剤等への2次加工を考えた場合、満足いくレベルではない。
【特許文献1】特開2006−111549号公報
【特許文献2】特開平4−321619号公報
【特許文献3】特開平4−321620号公報
【特許文献4】特開2000−119686号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように特許文献1〜4に記載されている発明は、乳化物が増粘するため噴霧及び乾燥処理に不適であったり、親油性成分に対して多量の水溶性高分子を必要としたり、親油性成分含有粉末を圧密/成型といった2次加工を施した場合に求められる油の染み出し抑制性が満足のいくレベルではないという問題があった。
【0007】
従って、本発明の課題は、賦形剤含有状態であっても、親油性成分に対して少量の乳化剤使用量で、親油性成分を容易に安定で且つ微小な乳化油滴とすることができ、更に親油性成分含有粉末を圧密/成型といった2次加工を施した場合に油の染み出しを効果的に抑制することができる親油性成分含有粉末及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、特定構造の両親媒性高分子化合物を用いることにより、親油性成分に対して少量の使用量でも、賦形剤水溶液中で親油性成分を容易に安定で且つ微小な乳化油滴に乳化させることができ、更にそれを噴霧乾燥させることで、圧密/成型等の粉体加工を施した場合にも、油が染み出しにくい粉末の作成が可能である事を見出した。
【0009】
即ち、本発明は、(A)親油性成分、(B)1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマー由来の構成単位を全構成単位中20〜95モル%、一般式(1)で表される構成単位を全構成単位中5〜80モル%含む両親媒性高分子化合物、(C)賦形剤及び水を含有するO/W型乳化物を乾燥させて得られる親油性成分含有粉末、更に、(D)成分としてポリオキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜3、アルキレンオキサイド平均付加モル数2〜100)系非イオン界面活性剤を含有する親油性成分含有粉末、並びにその製造方法を提供する。
【0010】
【化5】

【0011】
(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、Xは疎水性基を示す。)
【発明の効果】
【0012】
本発明の親油性成分含有粉末は、親油性成分に対して特定の両親媒性高分子化合物を乳化剤として用いることにより、少量の使用量でも、賦形剤水溶液中で親油性成分を容易に安定で且つ微小な乳化油滴に乳化させることができ、また、噴霧乾燥での熱負荷によっておこる油滴の合一を抑制することができ、更に噴霧乾燥後の粉末は、親油性成分の含有量が増大しても、圧密/成型等の粉体加工を施した場合の油の染み出しを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
[(A)成分]
(A)成分は本発明により粉末化される親油性成分であり、親油性成分とは、25℃における水100gへの溶解度が10重量%未満のものを指す。親油性成分としては、特に制限されるものではないが、例えば、香粧品及び洗浄油剤として広く用いられる香料、油脂類、炭化水素類、高級脂肪酸類、高級アルコール類、エステル類、油性薬効成分及びシリコーン油類や、農薬活性剤等が挙げられる。
【0014】
香料としては、メントール、ワニリン等の香料、オレンジ、レモン、グレープフルーツ等のシトラス系、アップル等のフルーツ系、紅茶、緑茶等の茶系、コーヒー等のビーンズ系、ブラックペッパー、カレー等のスパイス系、ペパーミント、スペアミント等のミント系、デイリー系、ワニラ系、コーラナッツ等の調合香料や精油、抽出物の各種が挙げられる。
【0015】
油脂類としては、例えば大豆油、ヌカ油、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、ごま油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、豚脂等の天然油脂、また、これらの天然油脂を水素添加して得られる硬化油及びミリスチン酸グリセリド、2−エチルヘキサン酸グリセリド等の合成トリグリセリドなどが挙げられる。
【0016】
炭化水素類としては、例えば流動パラフィン、セラミド、レチノイド、ワセリン、パラフィンマイクロクリスタリンワックス、セレシン、スクワラン、プリスタン等が挙げられる。
【0017】
高級脂肪酸類としては、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸等が挙げられる。
【0018】
高級アルコール類としては、例えばラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール、2−ヘキシルデカノール等が挙げられる。エステル類としては、例えばオクタン酸セチル、乳酸ミリスチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸オクチルドデシル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル、イソステアリン酸イソステアリル等が挙げられる。
【0019】
油性薬効成分としては、一般式(5)で表されるフタリド誘導体、ニコチン酸メチル、ニコチン酸トコフェロール、トコフェロール、L−メントール、グアイアズレン等が挙げられる。
【0020】
【化6】

【0021】
(式中、R10は水酸基又はメトキシ基を、R11、R12及びR13は水素原子を、R14はアルキル基を示す。)
シリコーン油類としては、例えばジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、アクリル酸アルキル共重合体メチルポリシロキサンエステル等が挙げられる。
【0022】
農薬活性剤としては、フェンチオン(fenthion)、フェニトロチオン(fenitrothion)、プロパホス(propaphos)、シアノホス(cyanophos)、プロチオホス(prothiofos)、スルプロホス(sulprofos)、EPN、シアノフェンホス(cyanofenphos)、オキシデプロホス(oxydeprofos)、ジスルホトン(disulfoton)、チオメトン(thiometon)、マラソン(malathion)、メカルバム(mecalbam)、ピリミホスメチル(pirimiphosmethyl)、ダイアジノン(diazinon)、エトリムホス(etrimfos)、イソキサチオン(isoxathion)、ピラクロホス(pyraclophos)、クロルチオホス(chlorthiophos)、イソフェンホス(isofenphos)、EDDP、シフルスリン(cyfluthrin)、パーメスリン(permethrin)、シハロスリン(cyhalothrin)、フェンバレレート(fenvalerate)、フルシトリネート(flucythrinate)、エトフェンプロックス(ethofenprox)、シラネオファン(silaneophane)、シクロプロトリン(cycloprothrin)、IBP、エジフェンホス(edifenphos)、プロピコナゾール(propiconazole)、イマザリル(imazalil)、トリデモルフ(tridemorph)、エタゾール(ethazol)、ピリフェノックス(pyrifenox)、ブタクロール(butachlor)、メトラクロール(metolachlor)、チオベンカルブ(thiobencarb)、ブチレート(butylate)、EPTC、モリネート(molinate)、セトキシジム(sethoxydim)、フルアジホップーブチル(fluazifop-butyl)、ラクトフェン(lactofen)、ピペロホス(piperophos)、エスプロカルブ(esprocarb)、ピリブチカルブ(pyributicarb)、ベノキサゾール(benoxazol)などが挙げられる。
【0023】
これらの(A)成分の中では、香料、エステル油、油性薬効成分等の化粧用油性成分が好ましく、エステル油がより好ましい。なお、これら(A)成分は、必要に応じ2種以上を組合せて使用しても良い。
【0024】
本発明において粉末中の、(A)成分の含有量は、同量の親油性成分を配合するための粉末必要量の低減及び製品形態の自由度の観点から、1重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、20重量%以上がさらに好ましい。又、油保持性(油の染み出し防止)の観点から、80重量%以下が好ましく、60重量%以下がより好ましい。従って、油保持性の観点から、(A)成分の含有量は本発明の粉末中、1〜80重量%が好ましく、10〜80重量%がより好ましく、20〜60重量%が更に好ましい。
【0025】
[(B)成分]
(B)成分の両親媒性高分子化合物は、(A)成分を微小油滴に乳化させる為の乳化剤であるとともに、界面活性能から油滴に吸着し、その分子量による立体斥力から乾燥負荷における油滴の合一を抑制し油滴を粉末中に微細保持させる基材でもある。本発明で用いる両親媒性高分子化合物は、分子中に賦形剤水溶液に対して親和性の高い1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマー由来の構成単位(以下カチオン性構成単位という)と、親油性成分に対して親和性の高い疎水性基Xを有する、前記一般式(1)で表される疎水性構成単位(以下疎水性構成単位という)とを有するものであり、各構成単位の配列はランダムでもブロックでも良い。又、カチオン性構成単位及び疎水性構成単位を、全構成単位中に2単位以上組み合わせていても構わない。
【0026】
カチオン性構成単位を形成する1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマーとしては、一般式(2)〜(4)で表されるモノマーが好ましく、一般式(2)で表されるモノマーがより好ましい。
【0027】
【化7】

【0028】
(式中、R4は水素原子又はメチル基を示し、R5及びR6は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4、好ましくは1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、あるいはベンジル基を示し、Yは−O−又は−NH−基を示し、Zは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を示す。)
【0029】
【化8】

【0030】
(式中、R4、R5、R6及びZは前記の意味を示す。mは0又は1を示す。)
【0031】
【化9】

【0032】
(式中、R7及びR8は同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、R9は水素原子、炭素数1〜4、好ましくは1〜3の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、あるいはベンジル基を示す。)
【0033】
一般式(2)で表されるモノマーとしては、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジイソブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジt−ブチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジイソブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジt−ブチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のジアルキルアミノ基を有する(メタ)アクリル酸エステル又は(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0034】
一般式(3)で表されるモノマーとしては、ジメチルアミノスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン等のジアルキルアミノ基を有するスチレン類等が挙げられる。一般式(4)で表されるモノマーとしては、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミン等のジアリルアミン化合物が挙げられる。
【0035】
これらのモノマーの中でも、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアリルメチルアミン、ジアリルアミンが特に好ましい。
【0036】
疎水性構成単位において、R1、R2及びR3は水素原子又はメチル基が好ましく、R1及びR2が水素原子であるものがより好ましい。Xで示される疎水性基としては、−CO−W−R15(Wは酸素原子又はNH、R15は炭素数2〜30の直鎖もしくは分岐鎖の炭化水素基を示す)で示される基、−(AO)n−R15(Aは炭素数2〜3のアルキレン基、nはオキシアルキレン基の平均付加モル数を示す0〜100の数、R15は前記の意味を示す)で示される基が挙げられる。
【0037】
15としては、乳化安定性の点から、炭素数4〜30、更に炭素数8〜30、特に炭素数12〜22のアルキル基又はアルケニル基が好ましい。具体的には、t−ブチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、デシル基、ラウリル基、ミリスチル基、セチル基、ステアリル基、オレイル基、ベヘニル基等が挙げられる。Wは酸素原子が好ましい。
【0038】
両親媒性高分子化合物を構成する全構成単位中、カチオン性構成単位の割合は、乳化安定性の観点から、20〜95モル%であり、50〜95モル%が好ましく、70〜90モル%がより好ましい。疎水性構成単位の割合は、乳化安定性の観点から、5〜80モル%であり、5〜50モル%が好ましく、10〜30モル%がより好ましい。両親媒性高分子化合物は構成単位中に架橋構造が存在しても構わないが、非架橋型の物がより好ましい。また、両親媒性高分子化合物の重量平均分子量は、0.5万から70万が好ましく、ハンドリング性の面から0.5万から30万がより好ましい。
【0039】
本発明の(B)成分の両親媒性高分子化合物は、公知の合成方法により得ることができ、また市販品を用いることもできる。合成方法は、例えば、1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマーと、一般式(6)で表される疎水性構成単位を形成するモノマーを溶液重合法で重合する方法が挙げられる。
【0040】
【化10】

【0041】
(式中、R1、R2、R3及びXは前記と同じ意味を示す。)
【0042】
一般式(6)で表されるモノマーとしては、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリルアミド、オクチル(メタ)アクリルアミド、ラウリル(メタ)アクリルアミド、ステアリル(メタ)アクリルアミド、ベヘニル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。中でもラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0043】
上記モノマーの溶液重合に用いられる溶媒としては、例えば芳香族系化合物(トルエン、キシレン等)、低級アルコール(エタノール、イソプロパノール等)、ケトン(アセトン、メチルエチルケトン)、テトラヒドロフラン、ジエチレングリコールジメチルエーテル等の有機溶剤を使用することができる。溶媒量(重量基準)は、好ましくは全モノマーに対して等量〜20倍量、特に等量〜10倍量が好ましい。
【0044】
重合開始剤としては、公知のラジカル開始剤を用いることができ、例えばアゾ系重合開始剤、ヒドロ過酸化物類、過酸化ジアルキル類、過酸化ジアシル類、ケトンペルオキシド類等が挙げられる。また必要により、塩基性触媒(リチウム、ナトリウム、カリウム、セシウム等の金属、そのアルコキシド、ヒドロキシド等)、又は酸性触媒(硫酸、塩酸等)を用いても良い。重合開始剤量は、全モノマーを基準として0.01〜5モル%、特に0.01〜3モル%、更に0.01〜1モル%の範囲であるのが好ましい。
【0045】
重合反応は、窒素気流下、60〜180℃の温度範囲で行うのが好ましく、反応時間は0.5〜20時間が好ましい。
【0046】
本発明の粉末中の(B)成分の含有量は、乳化安定性の観点から、0.01重量%以上が好ましく、0.05重量%以上がより好ましい。又、コスト、配合の自由度及び乳化安定性の観点から、5重量%以下が好ましく、3重量%以下がより好ましい。従って、乳化安定性、配合の自由度及びコストの観点から、(B)成分の含有量は粉末中、0.01〜5重量%が好ましく、0.05〜3重量%がより好ましい。
【0047】
[(C)成分]
(C)成分は、粒子を形成させる為の賦形剤として用いられる水溶性壁材物質である。(C)成分としては、デキストリン、マルトデキストリン、シクロデキストリン、アラビノース、リボース、キシロース、フルクトース、フコース、ガラクトース、グルコース、マンノース、ラムノース、ソルボース、ラクトース、マルトース、メリビオース、スクロース、トレハロース、ラフィノース(オリゴ糖)などの単糖及び多糖類;ソルビトール、マルチトール、キシリトール、多価アルコールなどの糖アルコール;澱粉にエステル化、エーテル化処理、末端還元処理を施した澱粉誘導体などが挙げられる。この中でも、溶解性、乾燥性、皮膜形成能、乳化安定性の観点から、デキストリン、二糖類、糖アルコールが好ましく、デキストリン、二糖類がより好ましい。又、(C)成分は、必要に応じ2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0048】
本発明の粉末中の、(C)成分の含有量は、親油性成分の染み出し防止の観点から、20重量%以上が好ましく、30重量%以上がより好ましい。又、コスト及び配合の自由度の観点から、95重量%以下が好ましく、85重量%以下がより好ましい。従って、配合の自由度及びコストの観点から、(C)成分の含有量は粉末中、20〜95重量%が好ましく、30〜85重量%がより好ましい。
【0049】
[(D)成分]
(D)成分のポリオキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜3、アルキレンオキサイド平均付加モル数2〜100)系非イオン界面活性剤は、(A)成分の親油性成分と相溶させて用いる事で親油性成分に自己乳化能を持たせるために用いる剤であり、高圧乳化機等の高せん断乳化装置を用いることなく簡易攪拌にてO/W乳化物を調製させるためには、(D)成分を配合したほうが好ましい。
【0050】
(D)成分としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンソルビタンモノアルキレート、ポリオキシエチレンソルビタントリアルキレート、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜3)アルキルエーテル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどが挙げられる。特に、(A)成分への自己乳化能付与/相溶性/ハンドリングの観点よりHLBが20以下のものが好ましく、17以下のものがより好ましい。また、自己乳化能付与/相溶性の観点よりHLBが5以上のものが好ましい。又、必要に応じ2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0051】
本発明の粉末中の(D)成分の含有量は、水中での自己乳化能付与の観点から、1重量%以上が好ましく、5重量%以上がより好ましい。又、コスト、配合の自由度、乳化安定性及び粉末物性の観点から、30重量%以下が好ましく、20重量%以下がより好ましい。従って、(D)成分の含有量は、1〜30重量%が好ましく、5〜20重量%がより好ましい。
【0052】
[その他の成分]
本発明の粉末には、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分以外にも、必要に応じ他の物質が含まれていても良い。例えば、親油性成分として不飽和炭素を有している場合には、酸化抑制の為に酸化防止剤を含有することができる。
【0053】
また、本発明の両親媒性高分子化合物中のアミノ基の一部又は全部を中和するための中和剤を含有することもできる。中和剤としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸等の無機酸;酢酸、プロピオン酸、ギ酸、マレイン酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、アジピン酸、スルファミン酸、トルエンスルホン酸、乳酸、ピロリドン−2−カルボン酸、コハク酸、グリコール酸、リンゴ酸等の総炭素数1〜22の有機酸が例示される。
【0054】
[親油性成分含有粉末及びその製造法]
本発明の親油性成分含有粉末の製造法は、下記工程1及び2を含む。
工程1:(A)成分、(B)成分、(C)成分及び水を含有するO/W型乳化物を調製する工程
工程2:工程1で得られる乳化物を乾燥させて親油性成分含有粉末を得る工程。
【0055】
工程1において、O/W型乳化物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び水を混合することによって調製される。(D)成分を配合する場合には、(A)成分及び(D)成分を、混合物の融点以上で予め混合して配合することがより好ましい。(B)成分は、予め水相に混合しておいても良い。その場合には、水相混合物を撹拌状態とし、この水相に油相を徐々に添加することによって、乳化物を調製することができる(この方法を順相乳化法という)。また、(B)成分は、予め油相に混合しておいても良い。その場合には、油相混合物を撹拌状態とし、この油相に水相を徐々に添加することによって、乳化物を調製することができる(この方法を転相乳化法という)。本発明では、転相乳化法でO/W型乳化物を調製することが好ましい。(A)成分が酸化しやすい物質の場合、窒素などの不活性ガスを通気しながら乳化物の調製を行っても良い。
【0056】
乳化を行う場合に使用する乳化機としては、静止型乳化・分散機、一般的な攪拌機、ホモミクサー等の攪拌型乳化機、ホモジナイザー、ナノマイザー等の高圧乳化機を使用することが好ましいが、(D)成分を(A)成分とともに用いた場合には、弱い機械的シェアをかけても乳化油滴径は微細になるため、プロペラ羽や平板羽根等の一般的な攪拌機でも構わない。
【0057】
工程2では、工程1で得られた(A)成分を微小油滴として含むO/W型乳化物を、乾燥することによって、溶解性に優れる親油性成分含有粉末を得る。乾燥法は、一般的な方法を用いることができ、特に限定されないが、例えば、噴霧乾燥、凍結乾燥、真空乾燥、ベルト乾燥、棚乾燥、ドラム乾燥等が挙げられる。これらの乾燥法の中では、生産性、熱履歴、粒子形状等の観点から、噴霧乾燥法を用いるのが特に好ましい。尚、噴霧乾燥法で親油性成分含有粉末を形成させる場合、その粒径は、使用する噴霧ノズルにより任意に調整できるが、必要に応じ、更に得られた粒子を造粒操作等により凝集させ凝集粒子とすることも可能である。
【0058】
本発明の親油性成分含有粉末の平均粒径は、流動性、溶解性、圧縮加工成形性の観点から10〜500μm好ましく、10〜150μmがより好ましく、10〜100μmが更に好ましい。その粒径は、使用する噴霧ノズルにより任意に調整できるが、所望の平均粒子径の観点から、噴霧ノズルとしては、アトマイザー、1流体ノズル、2流体ノズル、加圧2流体ノズル、4流体ノズル、超音波ノズルが好ましい。
【0059】
本発明の親油性成分含有粉末は、荷重を加えても(A)成分及び(D)成分が染み出し難いので、押出造粒、ブリケット、打錠等により、顆粒や錠剤と加工成形することも可能である。その為、製品形態の多様化への対応性が高く、食品、化粧品、入浴剤、農薬製剤等への幅広い用途に利用する事ができる。例示すると、化粧品としてのファンデーションや、固形成型入浴剤等、農薬製剤としてペレット型肥料等が挙げられる。
【実施例】
【0060】
以下の例中で用いられる部及び%は、特記しない限りそれぞれ重量部及び重量%である。また、以下の例において、各物性の測定及び評価は下記に示す方法で行った。
【0061】
<親油性成分含有粉末の平均粒径>
レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA−920(堀場製作所(株)製)を用いて測定したメジアン径を粉末の平均粒径とした。分散溶媒には、アセトンを使用した。測定においては、攪拌を中位(具体的には、測定装置LA−920の7段階の4)とし、サンプルを添加して所定濃度に調整後、粉末測定時のみ中位レベル(具体的には、測定装置LA−920の7段階の4)の超音波を1分間照射し、各々の径を測定した。
【0062】
<打錠試験>
打錠機((株)理研商会製)のセルに、打錠セルの大きさに切り取ったNo.5Cの定量ろ紙を重ねて二枚入れ、更に30℃に保温した粉末31gを入れ、10MPaの圧力で圧縮打錠を行った。打錠後、粉末に直接接しない側のろ紙の重量を測定し、予め測定しておいた試験前のろ紙の重量を差し引き、親油性成分の打錠後染み出し量として算出した。この染み出し量が100mg以下であると顆粒化や錠剤化といった工程で、杵に親油性成分と粉の付着で生ずるプリンティング等のトラブルから回避できる。
【0063】
<粉末溶解試験>
作製粉末4gを40℃イオン交換水400gに溶解させ、油浮きの有無を観察した。
【0064】
<粉末SEM断面観察>
油剤粉末をメスにて割断し、走査型電子顕微鏡にて観察した。粉末中においても常温液状である成分は、真空条件下で飛散しカプセル化された油滴は空孔として観察される。
【0065】
合成例1(両親媒性高分子化合物(B−1)の合成)
ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)141部、ラウリルメタクリレート(LMA)25部、エタノールの初期添加分92部を均一に混合し、反応液とした。その10分の1量を、予め窒素置換しておいた内容量300mLのガラス製セパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下で内温80℃まで攪拌しながら昇温した。残りの反応液に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65B;和光純薬工業(株)製)3部を開始剤の初期添加分として添加し、均一な溶液とし、反応器内に3時間かけて滴下した。さらにV−65B 6部をエタノールの20%溶液としたものを、5時間かけて滴下した。滴下終了後2時間保持し、最後に冷却して濃度60%の高分子化合物(B−1)エタノール溶液を得た。
【0066】
高分子化合物(B−1)の重量平均分子量を下記のGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定条件−1により測定したところ、12000であった。また、高分子化合物(B−1)の構成単位の割合は、下記条件の1H−NMRによって確認したところ、全構成単位中、DMAEMA由来の構成単位は90モル%であり、LMA由来の構成単位は10モル%であった。
【0067】
<GPC測定条件−1>
ポリエチレンオキシド換算、カラム:東ソー社製α−M 2本、溶離液:50mmol/L LiBr、1% CH3COOH、エタノール:水(3:7)、流速:0.6mL/min、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折率計。
【0068】
1H−NMR測定条件>
1H−NMR測定条件は下記の通りである。
溶媒:重クロロホルム
サンプル濃度:1重量%
NMR装置:Varian社製 Mercury400(400MHz)
NMR測定条件:観測幅 6410.3Hz
データポイント 64K
パルス幅 4.5μs(45°パルス)
パルス遅延時間 10秒
測定温度 室温
【0069】
合成例2(両親媒性高分子化合物(B−2)の合成)
DMAEMAの量を110部、LMAの量を76部、エタノールの初期添加分を92部、開始剤の初期添加分を2部とした他は、合成例1と同様にして濃度60%の高分子化合物(B−2)エタノール溶液を得た。
【0070】
得られた高分子化合物(B−2)について、合成例1と同様に重量平均分子量を測定したところ9100であった。また高分子化合物(B−2)の全構成単位中、DMAEMA由来の構成単位は70モル%であり、LMA由来の構成単位は30モル%であった。
【0071】
合成例3(両親媒性高分子化合物(B−3)の合成)
ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)135部、ステアリルメタクリレート(SMA)32部、エタノールの初期添加分670部を均一に混合し、反応液とした。内容量300mLのガラス製セパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下で内温60℃まで攪拌しながら昇温した。反応液に2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65B;和光純薬工業(株)製)5部をエタノールの20%溶液としたものを添加し2時間保持した後、内温を70℃に昇温し6時間保持した。冷却して得られた反応液を、イオン交換水3Lに混合し、少量のNaOHを添加した。析出物を回収し、さらにイオン交換水で洗浄し、80℃減圧下で十分に乾燥した。最後にエタノールを加えて、濃度60%の高分子化合物(B−3)のエタノール溶液を得た。
【0072】
得られた高分子化合物(B−3)について、合成例1と同様に重量平均分子量を測定したところ13500であった。また高分子化合物(B−3)の全構成単位中、DMAEMA由来の構成単位は86モル%であり、SMA由来の構成単位は14モル%であった。
【0073】
合成例4(両親媒性高分子化合物(B−4)の合成)
エタノール33部を内容量300mLのガラス製セパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下で内温80℃まで攪拌しながら昇温した。ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)79部、ステアリルメタクリレート(SMA)170部、エタノール133部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65B;和光純薬工業(株)製)1.9部を均一に混合して反応液とし、これを3時間かけて反応器内に滴下した。さらに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(V−65B;和光純薬工業(株)製)3.1部をエタノールの20%溶液としたものを添加し、3時間保持した。冷却して得られた反応液を、イオン交換水3Lに混合し、析出物を回収し、さらにイオン交換水で洗浄し、80℃減圧下で十分に乾燥した。最後にエタノールを加えて、濃度60%の高分子化合物(B−4)のエタノール溶液を得た。
【0074】
得られた高分子化合物(B−4)について、重量平均分子量を下記GPC測定条件−2によって測定したところ、44000であった。また高分子化合物(B−4)の全構成単位中、DMAEMA由来の構成単位は50モル%であり、SMA由来の構成単位は50モル%であった。
【0075】
<GPC測定条件−2>
ポリスチレン換算、カラム:昭和電工社製KF−804L 2本、溶離液:1mmol/L ファーミンDM20(花王社製)、クロロホルム、流速:1.0mL/min、カラム温度:40℃、検出器:示差屈折率計。
【0076】
実施例1
親油性成分として、ISIS(イソステアリン酸イソステアリル 高級アルコール工業(株)製)577gとエキセパールIPP(パルミチン酸イソプロピル 花王(株)製)289gに、エマルゲン306P(ポリオキシエチレンステアリルエーテル、HLB9.7 花王(株)製)114gとニッコールGO440(テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット HLB12.5 ニッコーケミカル(株)製)257gと両親媒性高分子化合物(B−1)60%エタノール溶液26gを仕込み、分散/溶解して油相を調製し、40℃に保温した。イオン交換水1046gに2mol/Lの塩酸38gを投入し、40℃まで昇温した。撹拌状態の油相に水相を添加した後、H−PDX(松谷化学工業(株)製 水添デキストリン)1221gを投入した。得られた乳化物は乳白色であった。
【0077】
上記の乳化操作で得られた乳化物を、噴霧乾燥機(坂本技研(株)製 スプレードライヤー)を用い、乳化物供給量7100g/hr、送風温度170℃、排風温度90℃の条件で噴霧乾燥し、エステル油含有粉末を得た。得られたエステル油含有粉末について、粉末の平均粒径の測定と打錠試験及び粉末溶解試験を行った。粉末の平均粒径は、70μmであった。打錠試験を行ったところ、染み出し量は95mgであった。また、粉末溶解時に油浮きはなかった。粉末割断面のSEM写真を図1に示す。このSEMにて粉末割断面を観察したところ油滴が微細かつ均一に保持されている事が確認された。
【0078】
実施例2
両親媒性高分子化合物(B−1)の代わりに(B−2)の60%エタノール溶液を26g用い、塩酸の量を23gとする以外は実施例1と同じ操作を行い、乳化物を得た。得られた乳化物は乳白色であった。得られた乳化物を実施例1と同じ条件で噴霧乾燥し、エステル油含有粉末を得た。得られたエステル油含有粉末について、粉末の平均粒径の測定と打錠試験及び粉末溶解試験を行った。粉末の平均粒径は、90μmであった。打錠試験を行ったところ、染み出し量は36mgであった。また、粉末溶解時に油浮きはなかった。粉末割断面のSEM写真を図2に示す。このSEMにて粉末割断面を観察したところ油滴が微細かつ均一に保持されている事が確認された。
【0079】
実施例3
両親媒性高分子化合物(B−1)の代わりに(B−3)の60%エタノール溶液を26g用い、塩酸の量を36gとする以外は実施例1と同じ操作を行い、乳化物を得た。得られた乳化物は乳白色であった。得られた乳化物を実施例1と同じ条件で噴霧乾燥し、エステル油含有粉末を得た。得られたエステル油含有粉末について、粉末の平均粒径の測定と打錠試験及び粉末溶解試験を行った。粉末の平均粒径は、87μmであった。打錠試験を行ったところ、染み出し量は40mgであった。また、粉末溶解時に油浮きはなかった。粉末割断面のSEM写真を図3に示す。このSEMにて粉末割断面を観察したところ油滴が微細かつ均一に保持されている事が確認された。
【0080】
実施例4
両親媒性高分子化合物(B−1)の代わりに(B−4)の60%エタノール溶液を26g用い、塩酸の量を13gとする以外は実施例1と同じ操作を行い、乳化物を得た。得られた乳化物は乳白色であった。得られた乳化物を実施例1と同じ条件で噴霧乾燥し、エステル油含有粉末を得た。得られたエステル油含有粉末について、粉末の平均粒径の測定と打錠試験及び粉末溶解試験を行った。粉末の平均粒径は、92.2μmであった。打錠試験を行ったところ、染み出し量は78mgであった。また、粉末溶解時に油浮きはなかった。粉末割断面のSEM写真を図4に示す。このSEMにて粉末割断面を観察したところ油滴が微細かつ均一に保持されている事が確認された。
【0081】
比較例1
親油性成分として、ISIS(イソステアリン酸イソステアリル 高級アルコール工業(株)製)660gとエキセパールIPP(パルミチン酸イソプロピル 花王(株)製)264gにエマルゲン306P(ポリオキシエチレンステアリルエーテル、HLB9.7 花王(株)製)132gとニッコールGO440(テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット HLB12.5 ニッコーケミカル(株)製)264gとルナックS−98(ステアリン酸:花王(株)製)66.0gを仕込み、分散/溶解して油相を調製し、40℃に保温した。イオン交換水1760gに水酸化ナトリウム(キシダ化学(株)製純度96%)9.8gを投入し、40℃まで昇温した。撹拌状態の油相に水相を添加した後、H−PDX(松谷化学工業(株)製 水添デキストリン)1243.4gを投入した。得られた乳化物は乳白色であった。
【0082】
上記の乳化操作で得られた乳化物を、噴霧乾燥機(坂本技研(株)製 スプレードライヤー)を用い、乳化物供給量7100g/hr、送風温度170℃、排風温度90℃の条件で噴霧乾燥した。しかし、粉末化せず、ペースト状であった。このものについて打錠試験を行ったところ、染み出し量は120mg以上であった。
【0083】
実施例1〜4及び比較例1で得られた粉末の組成、粉末の平均粒径、打錠試験の結果、粉末溶解試験の結果、及びSEMによる割断面観察結果をまとめて表1に示す。
【0084】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0085】
【図1】実施例1で得られた親油性成分含有粉末の割断面の電子顕微鏡写真である。
【図2】実施例2で得られた親油性成分含有粉末の割断面の電子顕微鏡写真である。
【図3】実施例3で得られた親油性成分含有粉末の割断面の電子顕微鏡写真である。
【図4】実施例4で得られた親油性成分含有粉末の割断面の電子顕微鏡写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)親油性成分、(B)1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマー由来の構成単位を全構成単位中20〜95モル%、一般式(1)で表される構成単位を全構成単位中5〜80モル%含む両親媒性高分子化合物、(C)賦形剤及び水を含有するO/W型乳化物を乾燥させて得られる親油性成分含有粉末。
【化1】

(式中、R1、R2及びR3は、同一又は異なって、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基、Xは疎水性基を示す。)
【請求項2】
1〜3級アミノ基から選ばれる少なくとも1種のアミノ基を有する不飽和結合含有モノマーが、一般式(2)〜(4)で表されるモノマーである請求項1記載の親油性成分含有粉末。
【化2】

(式中、R4は水素原子又はメチル基を示し、R5及びR6は同一又は異なって、水素原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、あるいはベンジル基を示し、Yは−O−又は−NH−基を示し、Zは炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキレン基を示す。)
【化3】

(式中、R4、R5、R6及びZは前記の意味を示す。mは0又は1を示す。)
【化4】

(式中、R7及びR8は同一又は異なって、水素原子又はメチル基を示し、R9は水素原子、炭素数1〜4の直鎖若しくは分岐鎖のアルキル基又はアルケニル基、あるいはベンジル基を示す。)
【請求項3】
更に、(D)成分としてポリオキシアルキレン(アルキレン基の炭素数2〜3、アルキレンオキサイド平均付加モル数2〜100)系非イオン界面活性剤を含有する請求項1又は2記載の親油性成分含有粉末。
【請求項4】
親油性成分含有粉末中において(A)成分の含有量が、1〜80重量%である請求項1〜3いずれかに記載の親油性成分含有粉末。
【請求項5】
下記工程1及び2を含む請求項1〜4いずれかに記載の親油性成分含有粉末の製造方法。
工程1:(A)成分、(B)成分、(C)成分及び水を含有するO/W型乳化物を調製する工程
工程2:工程1で得られる乳化物を乾燥させて親油性成分含有粉末を得る工程
【請求項6】
(A)成分及び(D)成分を、混合物の融点以上で予め混合して配合する工程を含む、請求項5記載の親油性成分含有粉末の製造方法。
【請求項7】
工程1において、水相を、(B)成分を予め混合した油相中へ添加して乳化物を調製する、請求項5又は6記載の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−291047(P2008−291047A)
【公開日】平成20年12月4日(2008.12.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−135093(P2007−135093)
【出願日】平成19年5月22日(2007.5.22)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】