説明

角形電池

【課題】電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の大電流用途に使用される角形電池を提供すること。
【解決手段】本発明の角形電池は、正極と負極とがセパレータを介して幅方向に互いにずらして積層或いは巻回された偏平状の電極群10と、押え板13Aと、集電体18Aないし18Bとを備え、正極及び負極の少なくとも一方の芯体の幅方向の端部は正極合剤又は負極合剤が塗布されていない複数の露出部16を有し、前記複数の露出部16に押え板13Aが溶接された角形電池において、前記押え板13Aは、金属板が折り返されて隙間を空けて互いに対向する面が形成されて前記対向する面の少なくとも一方側に折り返し部に沿ったスリット15が設けられ、前記複数の露出部16が前記押え板13Aの隙間に挿入されて、前記複数の露出部16と前記押え板13Aとが前記スリット15を介して実質的に横方向から高エネルギー線により溶接されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状の正負両電極を帯状のセパレータを介して巻回した電極巻回体を備えた角形電池に関し、特に電気自動車、ハイブリッド電気自動車等の大電流用途に使用される角形電池に関する。
【背景技術】
【0002】
環境保護運動の高まりを背景として二酸化炭素ガス等の排出規制が強化されており、自動車業界ではガソリン、ディーゼル油、天然ガス等の化石燃料を使用する自動車にだけでなく、電気自動車(EV)やハイブリッド電気自動車(HEV)の開発が活発に行われている。加えて、近年の化石燃料の価格の急激な高騰はこれらのEVやHEVの開発を進める追い風となっている。
【0003】
このようなEV、HEV用電池としては、一般にニッケル−水素二次電池やリチウムイオン二次電池が使用されているが、環境対応だけでなく、自動車としての基本性能、すなわち、走りの能力の高度化も要求されるようになってきている。この走りの機能の高度化には、単に電池容量を大きくすることのみならず、自動車の加速性能や登坂性能に大きな影響を及ぼすために電池出力を大きくすることも必要である。ところが、高出力の放電を行うと電池に大電流が流れるため、電池の芯体と集電体との間の接触抵抗による発熱が大きくなる。したがって、EV、HEV用電池は、大型で、大容量であるだけでなく、大電流を取り出せることが必要とされることから、電池内部の電力損失を防止して発熱を低下させるために、これらの電池の芯体と集電体との間の溶接不良を防止して内部抵抗を低下させることについても種々の改良が行われてきている(下記特許文献1及び2参照)
【0004】
一般に、EV、HEV用のニッケル−水素二次電池やリチウムイオン二次電池等においては、帯状の負極と正極を帯状のセパレータを介して長円筒形に巻回したものが用いられている。このうちリチウムイオン二次電池を例にとると、負極は負極芯体である薄い帯状の銅箔の上端部を除く表面にグラファイト等の負極活物質を塗布したものが用いられ、正極は正極芯体である薄い帯状のアルミニウム箔の下端部を除く表面にリチウムコバルト複合酸化物等の正極活物質を塗布したものが用いられ、これらの負極及び正極は、それぞれ上下に少しずつずらして巻回することにより、上方には負極芯体が露出した上端部を突出させ、下方には正極芯体が露出した下端部を突出させて巻回電極体を形成している。
【0005】
そして、未塗布部側の負極芯体及び正極芯体と溶接接続される集電体としては、集電体にスリットを形成し、このスリットに未塗布部側の芯体の端縁を差し込み、この部分にレーザを照射して未塗布部側の芯体の端縁と集電体とをレーザ溶接する方法が採用されている(下記特許文献1及び2参照)。これにより、信頼性良く電極の未塗布部側の芯体の端縁と集電体とが溶接できるようになるとともに、電池の内部抵抗が低減し、かつ抵抗のばらつきが少ない電池が得られるというものである。
【0006】
ここで、下記特許文献1に開示されている電極の未塗布部側の芯体の端縁と集電体との接合形態を図7〜図8を用いて説明する。なお、図7は下記特許文献1に開示されている電池で使用されている集電体の斜視図であり、図8は図7の集電体に未塗布部側の芯体の端縁に集電体を取り付けた後にレーザ溶接する際の模式図である。この集電体40は、極板の芯体と同じ材質からなり、厚さが5mm、スリット41の間隔が0.2mmであり、表面側はスリット41部分の端面に対して集電体の端縁部が0.5mm突出するようにしたものが用いられ、下面側は複数の芯体の端縁部が束ねて差し込まれる前記スリット41に連なる差し込み溝42が設けられている。
【0007】
そして、このような構成の集電体40は、例えば負極側について説明すると、図8に示したように負極43側の集電体40のスリット41から複数の芯体の端縁部44が突出するように電極巻回体45に取り付けられ、この集電体40のスリット41から突出した芯体の端縁部44に沿って、集電体集電体40のスリット41部分と芯体の端縁部44とをレーザ光46の光軸を溶接面からθ=15°傾けてレーザ溶接することにより溶接している。
【0008】
次に、下記特許文献2に開示されている電極の未塗布部側の芯体の端縁と集電体との接合形態を図9〜図12を用いて説明する。なお、図9は下記特許文献2に開示されている電池の巻回電極体に集電体を取り付けた状態を示す斜視図であり、図10は図9の集電体部の部分拡大斜視図であり、図11は図9の集電体のスリットに挿入された電極の未塗布部側の芯体の端縁を屈曲する前の拡大断面図であり、図12は図9の集電体のスリットに挿入された電極の未塗布部側の芯体の端縁を屈曲した後の拡大断面図である。
【0009】
下記特許文献2に開示されている電池の巻回電極体50には、負極51の集電体52と正極53の集電体(図示せず)が接続固定されるが、負極51の集電体52は、電極巻回体50の長円筒形における中央の直線部と一方の湾曲部の上方を覆う銅合金板であり、この直線部の片側の上方に配置される部分には銅合金板を上方で折り返して下方に向けて開口する間隙を開けて向かい合わせにした挟持部54を設けている。各挟持部54には、折り返しの上端頂部における両端部を除いた部分の銅合金板を削り取ることにより間隙を露出させた窓部55が形成されている。また、電極巻回体50の長円筒形における湾曲部の上方を覆う部分には、銅合金製の負極端子56の下端部が接続固定されている。正極53の集電体は電極巻回体50の長円筒形における中央の直線部の上方と側方と下方及び他方の湾曲部の上方を覆うアルミニウム合金板(図示せず)であり、この直線部の下方の先端側に配置される部分に、アルミニウム合金板を下方で折り返して上方に向けて開口する間隙を開けて向かい合わせにした負極51の集電体52の挟持部54と同様の構成の挟持部を備えている。
【0010】
この上記特許文献2に開示されている電池の挟持部54の窓部55は従来よりも深く、しかも、挟持部54で向かい合う銅合金板の一方から上方に突出する押板片58を残して削り取られる。なお、図12に示す押板片58は、後の工程で押し潰された状態を示す。この押板片58は、挟持部54で向かい合う銅合金板の一方よりも薄い板厚で、窓部55の両端部に隙間を開けた幅の板状として削り出される。そして、上記負極集電体52の挟持部54の間隙には、図11に示すように、電極巻回体50の負極51の上端部の芯体が複数枚ずつ、深く削り取られた窓部55に先端部が十分に突出するように挟み込まれる。このようにして窓部55に突出した負極51の銅箔の先端部は、図12に示すように、押板片58を斜め上方から押し潰すことにより押板片58が突出する側とは反対の方向に屈曲され、この押板片58の先端で屈曲された負極51の芯体を上から押え込むようにして固定される。そして、この押板片58の先端で押え込まれた負極51の芯体の先端をレーザ溶接により周囲の銅合金板に溶接させて接続固定する。この下記特許文献2に開示されている電池の正極集電体の挟持部も負極の集電体の場合と同様の構成を備えている。
【0011】
上記特許文献2に開示されている構成によれば、例えば、負極集電体52の挟持部54の窓部55から突出する負極51の上端部の芯体は先端部が屈曲され固定されるので、これら芯体の先端の溶接が不十分であったり外れたとしても、挟持部54から容易には抜け落ちるようなことがなくなり、また、負極51の上端部の芯体がこのように確実に挟持部54に挟持されるのでこれら芯体の先端の溶接部に無理な力が加わるようなこともなくなり、溶接も外れ難くなる。従って、電池が電気自動車等に搭載されて繰り返し振動や衝撃を受けても、電極巻回体50の負極51や正極53と負極集電体52や正極集電体の接続が外れ易くなるというおそれがなくなり、電池性能の低下を防止することができるようになるというものである。
【0012】
【特許文献1】特開平10−261441号公報(特許請求の範囲、段落[0011]〜[0014]、図8〜図10)
【特許文献2】特開2000−200594号公報(段落[0002]〜[0007]、[0018]〜[0021]、図1〜図3、図8、図9)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述のような従来例によれば、負極及び正極それぞれの芯体と集電体とをレーザ溶接により接続固定したので、一応電池の内部抵抗が低減し、かつ抵抗のばらつきが少ない電池を得ることができる。しかしながら、上記特許文献1の図7及び図8に示した集電体40のスリット41の構成では、例えば負極43の上端部の多数枚の銅箔からなる芯体44は、束ねられて負極集電体40のスリット41に挟持された状態で上端がレーザ溶接されるだけなので、このレーザ溶接による溶接が不完全になったり、簡単に外れ易くなること、このレーザ溶接部分が外れると負極43は薄い芯体44が他の多数の負極43の芯体44と重なってスリット41に挟まれただけの状態となるので、振動や衝撃を受けた場合に抜け落ちるおそれがあること、及び、一旦負極43の芯体44が1枚でもスリット41から抜け落ちると残りの負極43の芯体44に対する挟持力が弱くなるので、これらの芯体44も抜け落ち易くなるという問題点が存在する。
【0014】
加えて、上記特許文献1に開示された接合形態では、束ねられた芯体44の上方からレーザ光が照射されているため、レーザ光の照射時にスパッタリングされた微細な粒子が電極巻回体内部に浸入するため、内部短絡の危険性がある。
【0015】
また、上記特許文献2に開示されている電池の挟持部54は、従来よりも深く、しかも、挟持部54で向かい合う銅合金板の一方から上方に突出する押板片58を残して削り取られており、電極巻回体50の負極51の上端部の芯体が複数枚ずつ集合されて挟持部54内の深く削り取られた窓部55に先端部が十分に突出するように挟み込まれている。しかしながら、負極51の上端部の芯体の長さは通常一定長とされるから、挟持部54内に挟み込まれた負極51の芯体の先端部は電極巻回体50の厚さに対応する距離差が生じるため、図11に示したような一定の高さに揃うことはなく、図13Aに示したように、挟持部54内の中央部が最も高く、両端部に行くに従って高さが低くなることは明らかである。
【0016】
したがって、挟持部54の高さL1が低いと、図13Aに示したように、負極51の上端部の芯体が窓部55にまで達しないものが生じる虞が生じる。これを解決するためには、図13Bに示したように、挟持部54の高さL2を大きくするとともに切り欠かれた窓部55を大きくし、露出される負極51の芯体代を増加させることにより解決し得るが、このような構成を採用すると電池缶内の巻回電極体が占めるスペースが減少するため、電池容量が低下するという問題点が存在する。
【0017】
加えて、上記特許文献2に開示されている電極の挟持部54は、少なくとも押板片58の両端側では、集合された負極51の上端部の芯体は、上記特許文献1に開示されているものと同様に、上方に向かって窓部51から露出した状態となる。従って、挟持部54の押圧辺58が存在していない部分において負極51の上端部の芯体と挟持部54とをレーザ溶接すると、上記特許文献1に開示されているものと同様に、スパッタリングされた微細な粒子によって内部短絡の危険性を生じる。
【0018】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に対処するためになされたものであり、その目的は、レーザ光等の高エネルギー線を用いて電極の露出した芯体と押え板ないし集電体とを溶接する際に、スパッタリングされた微細な粒子が電極体内部に入って内部短絡が生じる虞を減少するとともに、電極の露出した芯体部分の長さが短くても露出した芯体と押え板ないし集電体とを強固に溶接することができる構成の角形電池を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記目的を達成するため、請求項1に係る角形電池の発明は、
正極芯体に正極合剤が塗布された正極と、負極芯体に負極合剤が塗布された負極とがセパレータを介して幅方向に互いにずらして積層或いは巻回された偏平状の電極群と、押え板と、前記押え板に電気的に接続された集電体とを備え、前記正極芯体及び負極芯体の少なくとも一方の幅方向の端部は前記正極合剤又は負極合剤が塗布されていない複数の露出部を有し、前記複数の露出部に押え板が溶接された角形電池において、
前記押え板は、金属板が折り返されて隙間を空けて互いに対向する面が形成されて前記対向する面の少なくとも一方側に折り返し部に沿ったスリットが設けられ、
前記複数の露出部が前記押え板の隙間に挿入されて、前記複数の露出部と前記押え板とが前記スリットを介して実質的に横方向から高エネルギー線により溶接されていることを特徴とする。
【0020】
また、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の角形電池において、前記集電体は、実質的に横断面が逆L字型の金具と前記金具から直接帯状に延びている接続部とからなり、前記集電体の逆L字型の金具の内側面が前記押え板の対向する面の一方及び前記折り返し部に当接するように載置されているとともに、前記集電体の逆L字型の金具の前記押え板の対向する面の一方と当接している部分が実質的に横方向から高エネルギー線により溶接されていることを特徴とする。
【0021】
また、請求項3に係る発明は、請求項2に記載の角形電池において、前記集電体の逆L字型の金具の前記押え板の対向する面の一方と当接している部分には前記押え板に設けられたスリットと重複する位置にスリットが設けられ、前記複数の露出部と、前記押え板と、前記集電体の逆L字型の金具とが、前記押え板及び集電体の逆L字型の金具に設けられたそれぞれのスリットを介して実質的に横方向から高エネルギー線により溶接されていることを特徴とする。
【0022】
また、請求項4に係る発明は、請求項1〜3のいずれかに記載の角形電池において、前記高エネルギー線はレーザ光又は電子ビームからなることを特徴とする。
【0023】
更に、上記目的を解決するため、請求項5に係る角形電池の発明は、
正極芯体に正極合剤が塗布された正極と、負極芯体に負極合剤が塗布された負極とがセパレータを介して幅方向に互いにずらして積層或いは巻回された偏平状の電極群と集電体とを備え、前記正極芯体及び負極芯体の少なくとも一方の幅方向の端部は前記正極合剤又は負極合剤が塗布されていない複数の露出部を有し、前記複数の露出部に押え板が溶接された角形電池において、
前記集電体は、金属板がコ字状に折り返されて隙間を空けて互いに対向する対向面と前記対向面間を接続する面が形成され、前記対向面のそれぞれに前記折り返し部に沿ったスリットが設けられているとともに、前記対向面間を接続する面から直接帯状に延びている接続部が形成されており、
前記複数の露出部は2組に分けられてこれらの2組の露出部間に配置された押え板とともに前記集電体の対向面間の隙間に挿入され、
前記2組の露出部と、前記押え板と、前記集電体のそれぞれの対向面とが前記集電体の対向面のそれぞれに設けられたスリットを介して実質的に横方向から高エネルギー線により溶接されていることを特徴とする。
【0024】
また、請求項6に係る発明は、請求項5に記載の角形電池において、前記押え板は金属板がコ字状に折り返されて隙間を空けて互いに対向する対向面が形成されており、前記押え板の対向面の外側がともに前記露出部と接する状態で前記集電体の隙間に挿入されていることを特徴とする。
【0025】
また、請求項7に係る発明は、請求項5又は6に記載の角形電池において、前記高エネルギー線はレーザ光又は電子ビームからなることを特徴とする。
【0026】
更に、上記目的を解決するため、請求項8に係る角形電池の発明は、
正極芯体に正極合剤が塗布された正極と、負極芯体に負極合剤が塗布された負極とがセパレータを介して幅方向に互いにずらして積層或いは巻回された偏平状の電極群と集電体とを備え、前記正極芯体及び負極芯体の少なくとも一方の幅方向の端部は前記正極合剤又は負極合剤が塗布されていない複数の露出部を有し、前記複数の露出部に押え板が溶接された角形電池において、
前記集電体は、金属板がコ字状に折り返されて隙間を空けて互いに対向する対向面と前記対向面間を接続する面が形成され、前記対向面のそれぞれに前記折り返し部に沿ったスリットが設けられているとともに、前記対向面間を接続する面から直接帯状に延びている接続部が形成されており、
前記押え板は、金属板が折り返されて隙間を空けて互いに対向する面が形成された押え部が2個、それぞれ互いに平行にかつ互いに所定間隔を空けて一体に形成されているとともに、前記2つの押え部の互いに外側に位置する面にそれぞれ前記折り返し部に沿ったスリットが設けられており、
前記複数の露出部は2組に分けられてこれらの2組の露出部のそれぞれが前記2つの押え部の隙間に挿入された状態で前記集電体の対向面間の隙間に挿入され、
前記2組の複数の露出部と、前記押え板と、前記集電体のそれぞれの対向面とが、前記集電体の対向面にそれぞれ設けられたスリット及び前記押え板の外側に位置する面にそれぞれ設けられたスリットを介して実質的に横方向から高エネルギー線により溶接されていることを特徴とする。
また、請求項9に係る発明は、請求項8に記載の角形電池において、前記高エネルギー線はレーザ光又は電子ビームからなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0027】
本発明は上記の構成を備えることにより以下に述べるような優れた効果を奏する。すなわち、請求項1に係る発明によれば、押え板は金属板が折り返されて隙間を空けて互いに対向する面が形成されているとともに前記対向する面の少なくとも一方側に折り返し部に沿ったスリットが設けられているから、この押え板の隙間に挿入された正極芯体ないし負極芯体の露出部は横方向からの高エネルギー線により溶接されている。したがって、スパッタリングされた微粒子は高エネルギー線の進行方向、即ち実質的に水平方向に飛散するため、電極群の内部にまで浸入することがなくなるので、内部短絡の可能性が少ない角形電池が得られる。加えて、高エネルギー線の溶接エネルギーが大きすぎた場合でも角形電池の電極群にダメージを与えることはほとんどなくなる。
【0028】
また、押え板の隙間に挿入された複数の正極芯体ないし負極芯体の露出部は、これらの芯体の露出部代は一定であるため、これらの芯体の先端部は偏平状の電極群の厚さに対応する距離差が生じるので、押え板の中央部が最も高い位置まで延び、両端部に行くに従って高さが低くなる。しかしながら、請求項1に係る発明によれば、押え板として金属板が折り返されて隙間を空けて互いに対向する面が形成されているとともに前記対向する面の少なくとも一方側に折り返し部に沿ったスリットが設けられているものを使用したから、押え板のスリットが設けられている位置、即ち溶接箇所は従来例のものに比すると露出部の根本に近くなるので、芯体の露出代を大きくしなくても全ての芯体の露出部と押え板とを確実に溶接した角形電池が得られる。
【0029】
また、請求項2に係る発明によれば、集電体の実質的に断面が逆L字型の金具の内側面が押え板の対向する面の一方及び折り返し部に当接するように載置されているとともに、逆L字型の金具の押え板の対向する面の一方と当接している部分を実質的に横方向から高エネルギー線により溶接したから、逆L字状の金具の取付強度が大きくなるとともに、逆L字状の金具から直接帯状に延びている接続部として押え板の折り返し部よりも幅が太いものを使用し得るため、大電流を取り出すことができる角形電池が得られる。
【0030】
また、請求項3に係る発明によれば、実質的に断面が逆L字型の金具の押え板の対向する面の一方と当接している部分には押え板に設けられたスリットと重複する位置にスリットを設けたから、前記正極芯体及び負極芯体の少なくとも一方の複数の露出部と、前記押え板と、前記、逆L字型の金具の押え板とをそれぞれのスリットを介して同時に溶接できるようになるため、製造工数を増やすことなく金属製端子を押え板に取り付けることができるようになる。
【0031】
また、請求項4に係る発明によれば、レーザ光及び電子ビームともに溶接用高エネルギー線として慣用的に用いられており、溶接部の信頼性及び品質が良好な角形電池が得られる。
【0032】
更に、請求項5に係る発明によれば、電極群の厚さが厚く、集電体の対向面間の隙間に挿入される正極芯体ないし負極芯体の露出部の数が多くなっても、これらの芯体の複数の露出部を2組に分けるとそれぞれの組の露出部から見れば電極群の厚さを薄くした場合と等価になるため、これらの芯体の露出部代を特に大きくしなくても、2組の複数の露出部と、押え板と、集電体とを、これら集電体の対向面の両方に設けられたスリットを介して両側から実質的に横方向の高エネルギー線によって一体に溶接することができるようになり、実質的に請求項1に係る発明と同様の効果が得られる外、より大電流を取り出すことができる角形電池が得られる。
【0033】
また、請求項6に係る発明によれば、押え板の対向面同士の弾性力によって、2組の複数の露出部と押え板とを集電体の対向面間の隙間に挿入した際、押え板の対向面により2組の複数の露出部のそれぞれに対して集電体の対応面に向かう押圧力を与えることができるため、溶接する前に2組の複数の露出部と押え板と集電体とを一体的に固定でき、高エネルギー線による溶接を安定して行うことができるようになる。
【0034】
また、請求項7に係る発明によれば、請求項6に係る発明の効果に加えて、更に請求項4に係る発明と同様の効果を奏することができる角形電池が得られる。
【0035】
また、請求項8に係る発明によれば、電極群の厚さが厚く、押え板の隙間に挿入される正極芯体ないし負極芯体の露出部の数が多くなっても、これらの芯体の複数の露出部を2組に分けるとそれぞれの組の露出部から見れば電極群の厚さを薄くした場合と等価になるため、これらの芯体の露出部代を特に大きくしなくても、2組の複数の露出部のそれぞれを押え板の2つの押え部の隙間に挿入した状態で、2組の複数の露出部と、押え板と、集電体のそれぞれの対向面とを、集電体の対向面にそれぞれ設けられたスリット及び押え板の外側に位置する面にそれぞれ設けられたスリットを介して、実質的に横方向から高エネルギー線一体に溶接することができるようになり、実質的に請求項1に係る発明と同様の効果が得られる外、より大電流を取り出すことができる角形電池が得られる。
【0036】
また、請求項9に係る発明によれば、請求項8に係る発明の効果に加えて、更に請求項4に係る発明と同様の効果を奏することができる角形電池が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
以下、本願発明を実施するための最良の形態を巻回された偏平状の電極群を用いた角形電池の場合を例にとり、実施例及び比較例を用いて図面を参照しながら詳細に説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための巻回された偏平状の電極群を用いた角形電池の一例を例示するものであって、本発明をこの実施例に特定することを意図するものではなく、本発明は例えば正極板及び負極板をそれぞれセパレータを介して複数枚積層した積層型の電極群の場合等、特許請求の範囲に示した技術思想を逸脱することなく種々の変更を行ったものにも均しく適用し得るものである。なお、この発明における高エネルギー線の照射方向を示す「実質的に横方向」とは、完全に水平な方向だけでなく、水平方向からある程度傾いていても実質的に横方向と見なされる範囲を含むものである。この傾きは何ら臨界的なものではなく、具体的には完全に水平な方向を基準として約±30°程度の範囲にあればよい。
【0038】
まず、実施例及び比較例で使用する巻回された偏平状の電極群の作製方法について説明する。
【0039】
〔正極の作製〕
正極は次のようにして作製した。まず、コバルト酸リチウムからなる正極活物質94質量%をアセチレンブラック、グラファイト等の炭素粉末3質量%と、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)よりなる結着剤3質量%とを混合し、得られた混合物にN−メチルピロリドンを加えて混練して活物質合剤スラリーを作製した。これらの活物質合剤スラリーを厚さが20μmのアルミニウム箔からなる正極芯体の片面に、電極の端部にはアルミニウム箔の露出部ができるようにして、均一に塗付して活物質層を塗布した正極板を形成した。この後、活物質層を塗布した正極板を乾燥機中に通過させて、スラリー作製時に必要であった有機溶剤を除去して乾燥させた。乾燥後、この乾燥正極板をロールプレス機により圧延して、厚みが0.06mmの正極板とした。このようにして作製された電極を幅96mmの短冊状に切り出し、幅10mmの帯状のアルミニウム箔露出部を設けた正極を得た。
【0040】
〔負極の作製〕
負極は次のようにして作製した。まず、黒鉛粉末98質量%、カルボキシメチルセルロース、スチレンブタジエンゴムをそれぞれ1質量%混合し、水を加えて混練してスラリーを作製した。このスラリーを厚さ12μmの銅箔からなる負極芯体の片面に、電極の端部には銅箔の露出部ができるように均一に塗布して負極活物質層を塗布した負極板を得た。この後、活物質層を塗布した負極板を乾燥機中に通過させて、スラリー作製時に必要であった有機溶剤を除去して乾燥させた。乾燥後、この乾燥負極板をロールプレス機により圧延して、厚みが0.05mmの負極板とした。次いで、得られた電極を幅98mmの短冊状に切り出し、幅8mmの帯状の銅箔露出部を設けた負極を得た。
【0041】
〔巻回された偏平状の電極群の作製〕
上述のようにして得られた正極板のアルミニウム箔露出部と負極板の銅箔露出部とがそれぞれ対向する電極の活物質層と重ならないようにずらして、厚さ0.022mmのポリエチレン製多孔質セパレータを介して巻回し、両側端にそれぞれ複数のアルミニウム箔露出部と複数の銅箔露出部が形成された実施例及び比較例で使用する巻回された偏平状の電極群10を作製した。
【実施例1】
【0042】
実施例1の角形電池を図1〜図3を用いて説明する。なお、図1Aは巻回された偏平状の電極群に押え板を取り付けた状態の斜視図であり、図1Bは図1AのIB−IB断面図である。図2Aは図1の偏平状の電極群に取り付けられた押え板上に更にスリットを有しない集電体を取り付けた状態の、図2Bは同じくスリットを有する集電体を取り付けた状態の、それぞれ図1のIB−IB断面図に対応する断面図である。また、図3は図2Bに示したスリットを有する集電体を取り付けた偏平状の電極群を電池外装缶内に組み込んだ実施例1の角形電池の部分断面図である。
【0043】
この実施例1の角形電池における偏平状の電極群10には、金属板を折り返し部14で折り返すことにより隙間を空けて互いに対向する面11A、12Aが形成された押え板13Aが取り付けられている。この押え板13Aの互いに対向する面11A及び12Aの少なくとも一方側には折り返し部14に沿って実質的に平行にスリット15が設けられている。そして、巻回された偏平状の電極群10から延びる正極芯体ないしは負極芯体の複数の露出部16が押え板13Aの隙間に挿入され、正極芯体ないしは負極芯体の複数の露出部16と押え板13Aとをスリット15を介してレーザ光を実質的に横方向から照射することにより一体に溶接されている。
【0044】
このような構成によれば、レーザ光を照射して溶接した際にスパッタリングされた微粒子は、レーザ光の進行方向、即ち実質的に水平方向に飛散するため、巻回された偏平状の電極群10の内部にまで浸入することがなくなるので、内部短絡の可能性が少なくなる。更に、レーザ光の溶接エネルギーが大きすぎた場合、スリットが設けられた面12Aに対向する面11Aをレーザ光が貫通してしまうこととなるが、このような状態となっても巻回された偏平状の電極群10にダメージを与えることはほとんどなくなる。
【0045】
また、押え板13Aの隙間に挿入された複数の正極芯体ないし負極芯体の露出部16は、図1Bに示したように、これらの芯体の露出部代は一定であるため、これらの芯体の先端部は巻回された偏平状の電極群10の厚さに対応する距離差が生じるので、押え板の中央部が最も高い位置まで延び、両端部に行くに従って高さが低くなる。しかしながら、実施例1で採用された押え板13Aによれば、押え板13Aのスリット15が設けられている位置が従来例のものに比すると芯体の露出部16の根本に近くなるので、芯体の露出代を大きくしなくても全ての芯体の露出部16と押え板13Aとを溶接することができるようになる。
【0046】
なお、押え板13Aは、図示しない電池外装缶に設けられた外部出力端子と集電体によって接続する必要がある。そこで、実施例1の角形電池の集電体18Aとしては、図2Aに示すように、実質的に横断面が逆L字型の金具とこの金具から直接帯状に延びている接続部(図示せず)とを有するものを使用した。そして、この集電体18Aの内側面が押え板13Aの対向する面の一方及び前記折り返し部14に当接するように載置し、この逆L字型の金具のうち前記押え板13Aの対向する面の一方と当接している部分を、別途押え板13Aのスリット15が設けられている方向とは逆の方向から、かつ実質的に横方向からレーザ光により溶接した。
【0047】
このような実施例1の角形電池の集電体18Aでは、集電体18Aを押え板13Aに溶接する必要があるため、レーザ溶接工程が1回増えるが、逆L字型の金具から直接帯状に延びている接続部の幅を押え板13Aの折り返し部14の幅よりも十分に広くすることができるため、大電流を取り出すことができる角形電池が得られる。
【0048】
なお、この集電体18Aの逆L字型の金具の折り曲げ部分は、必ずしも直角に曲がっている必要はなく、符号18Aで示した折り曲げ部分のように曲線状のふくらみを持たせて実質的に逆L字型となるようにしてもよい。このような構成とすることにより、集電体18Aや押え板13Aの形状に誤差があっても、集電体18Aの取付・固定が容易となる。更に、押え板13Aの下端側に正極芯体ないしは負極芯体の複数の露出部16の上部に広がるスカート状部分13Aを設けてもよい。このような構成を採用すると、押え板13Aが動き難くなるので、電池に振動等が加わっても押え板13Aと正極芯体ないしは負極芯体の複数の露出部16との間の接触抵抗が大きくなることが少なくなる。
【0049】
また、実施例1の角形電池の集電体の変形例としては、図2Bに示すように、スリットを有する集電体18Bを採用できる。この図2Bに示した集電体18Bは、実質的に横断面が逆L字型の金具と前記金具から直接帯状に延びている接続部21(図3参照)とを備えているとともに、スリット15'を有している。この変形例の場合、集電体18Bのスリット15'と押え板13Aのスリット15が重なるように配置してレーザ溶接する以外は前記集電体18Aの場合と同様であるが、レーザ溶接工程は一回ですむ。この実施例1の変形例の場合も、集電体18Bの逆L字型の金具の折り曲げ部分は符号18Bで示した折り曲げ部分のように曲線状のふくらみを持たせて実質的に逆L字型となるようにしてもよく、更に、押え板13Aの下端側に正極芯体ないしは負極芯体の複数の露出部16の上部に広がるスカート状部分13A及び逆L型の金具の下端部にもスカート部分18Bを設けてもよい。
【0050】
この図2Bに示した実施例1の変形例の集電体18Bを採用した角形電池20の部分断面図を図3に示す。この角形電池20は、巻回された偏平状の電極群10の正極側には例えば押え板13Aが取り付けられており、この押え板13Aには図2Bに示したような構成の集電体18Bが取り付けられ、この集電体18Bの接続部21は封口板22に絶縁性物質23を介して取り付けられた正極外部端子24に接続されている。同様にして、巻回された偏平状の電極群10の負極側には押え板13A'が取り付けられており、この押え板13A'には集電体18B'が取り付けられ、この集電体18B'の接続部21'は封口板22に絶縁性物質23'を介して取り付けられた負極外部端子24'に接続されている。
【0051】
そして、封口板22と一体化された巻回された電極群10を電池外装缶25内に挿入し、封口板22の周囲と電池外装缶25の接合部26をレーザ溶接し、図示しない電解液注入孔から所定量の所定の組成の電解液を注入した後、電解液注入孔を密閉することにより角形電池20が完成される。なお、電解液としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネ一卜を体積比3:7で混合した溶媒に対し、LiPFを1モル/Lとなるように溶解した非水電解液等を使用することができる。このようにして得られた角形電池20は、正極芯体ないしは負極芯体の複数の露出部16と押え板13A、13A'との間の接触面積が非常に大きく、しかも、押え板13A、13A'と集電体18B、18B'との間、及び集電体18B、18B'と正極外部端子24ないし負極外部端子24'との間の抵抗も低いため、大電流が必要とされるEV、HEV用電池として最適となる。
【実施例2】
【0052】
巻回された偏平状の電極群10の厚さが厚くなると、実施例1に示したような押え板13Aの構成では、押え板13Aの隙間に挿入される正極芯体ないし負極芯体の露出部16の数が多くなるので、露出代を大きくしないと全ての露出部16が押え板13Aの隙間内に入らない場合が生じる。そこで、実施例2として厚さが厚い巻回された偏平状の電極群に集電体を取り付けた角形電池の構成を図4を参照して説明する。なお、図4Aは実施例2の角形電池の巻回された偏平状の電極群に集電体を取り付けた状態の斜視図であり、図4Bは図4AのIVB−IVB断面図であり、図4A及び図4Bにおいては実施例1の角形電池の集電構造10A及び10Bと同一の構成部分には同一の参照符号を付与して説明する。
【0053】
実施例2の角形電池における偏平状の電極群10には、金属板を間隔を開けて2箇所の折り返し部18C及び18Cで折り返すことにより、実質的にコ字状の、隙間W1を空けて互いに対向する面18C及び18Cが形成された集電体18Cが取り付けられており、この集電体18Cは互いに対向する面18C及び18Cの両方側に折り返し部18C及び18Cに沿って実質的に平行にスリット15'及び15'が設けられている。そして、巻回された偏平状の電極群10から延びる正極芯体ないしは負極芯体の複数の露出部16を偏平部分において2組に分けて束ね、それぞれ第1の露出部16および第2の露出部16とした。そして、第1の露出部16及び第2の露出部16の間に押え板13Cを配置し、図4Bに示したように、この第1の露出部16、第2の露出部16及び押え板13Cを同時に集電体18Cの互いに対向する面18C及び18Cの間に挿入した。
【0054】
この押え板13Cの横幅W2は、集電体18Cの互いに対向する面18C及び18Cの隙間W1と少なくとも正極芯体ないしは負極芯体の第1の露出部16の幅と第2の露出部16の幅との和W3との差、すなわちW2=W1−W3の関係を満たしていればよく、その形状は任意である。しかしながら、押え板13Cによって正極芯体ないしは負極芯体の第1の露出部16と第2の露出部16を集電体18Cの互いに対向する面18C及び18C側に押圧することができるようにするため、図4Bに示したように、押え板13Cは金属板が折り返されて隙間を空けて互いに対向する面が形成されたものとし、この押え板13Cの互いに対向する面間に隙間を形成することによりこれらの面が変位できるようにして弾性力を発揮できるようにするとよい。
【0055】
このようにして第1の露出部16と押え板13C、及び、押え板13Cと第2の露出部16とを、それぞれ集電体18Cの互いに対向する面18C及び18Cに設けられた2つのスリット15'及び15'を介して両側からレーザ光を照射することにより、一体に溶接することができる。この実施例2の角形電池によれば、実質的に実施例1の角形電池20の場合と同様の効果が得られる外、より大電流を取り出すことができる大型の角形電池が得られる。
【実施例3】
【0056】
実施例3の角形電池は、実施例2の場合と同様に、巻回された偏平状の電極群10の厚さが厚い場合に適用したものであるが、押え板として実施例1の角形電池の押え板13Aと同様の構成のものを2個一体に組み合わせたものを使用したものである。この実施例3の角形電池における巻回された偏平状の電極群に集電体を取り付けた構成を図5を用いて説明する。なお、図5は実施例3の角形電池における巻回された偏平状の電極群に集電体を取り付けた状態を示す図4AのIVB−IVB断面図に対応する断面図であり、実施例2の角形電池の集電体18Cと同一の構成部分には同一の参照符号を付与して説明する。
【0057】
この実施例3の角形電池における偏平状の電極群10には、金属板を間隔を開けて2箇所の折り返し部18D及び18Dで折り返すことにより、実質的にコ字状の、隙間を空けて互いに対向する面18D及び18Dが形成された集電体18Dが取り付けられており、この集電体18Dは互いに対向する面18D及び18Dの両方側に折り返し部18D及び18Dに沿って実質的に平行にスリット15'及び15'が設けられている。そして、巻回された偏平状の電極群10から延びる正極芯体ないしは負極芯体の複数の露出部16を偏平部分において2組に分けて束ね、それぞれ第1の露出部16および第2の露出部16とした。
【0058】
また、押え板13Dとしては、金属板が折り返されて隙間を空けて互いに対向する面が形成された2つの押え部19、19がそれぞれ互いに平行にかつ互いに所定間隔を空けて一体に形成されているとともに、2つの押え部19、19の互いに外側に位置する面にそれぞれ折り返し部に沿ったスリット15、15を設けたものを使用した。そして、第1の露出部16及び第2の露出部16を押え板13Dのそれぞれ2つの押え部19、19の隙間内に配置し、この第1の露出部16、第2の露出部16及び押え板13Dを同時に、図5に示したように、集電体18Dの互いに対向する面18D及び18Dの間に挿入した。
【0059】
このようにして第1の露出部16と押え板13の一方の押え部19、及び、押え板13Dの他方の押え部19と第2の露出部16とを、それぞれ集電体18Dの互いに対向する面18D及び18Dに設けられた2つのスリット15'、15'、及び、2つの押え部19、19の互いに外側に位置する面に設けられた2つのスリット15、15を介して両側からレーザ光を照射することにより、一体に溶接することができる。この実施例3の角形電池によれば、実質的に実施例2の角形電池の場合と同様の効果が得られる。
【0060】
[比較例1]
比較例1の角形電池においては、正極芯体ないしは負極芯体の露出部と集電体との間の溶接方法としてレーザ溶接法を採用したが、レーザ光の照射方向を実施例1〜3とは異なり、正極芯体ないしは負極芯体の露出部に対し垂直方向から行った。この比較例1の角形電池の巻回された偏平状の電極群に集電体を取り付けた状態を図6を用いて説明する。なお、図6Aは比較例1の角形電池の巻回された偏平状の電極群に集電体を取り付けた状態の斜視図であり、図6Bは図6AのVIB−VIB断面図である。
【0061】
この比較例1の角形電池で使用する集電体18Eとしては、金属板がコ字状に折り返されて隙間を空けて互いに対向する面18E及び18Eと前記互いに対向する面18E及び18Eの間を接続する面が形成され、前記互いに対向する面18E及び18Eの間を接続する面から直接帯状に延びている接続部21が形成されているものを使用した。なお、この集電体18にはスリットは設けられていない。この集電体18Eの互いに対向する面18E及び18Eの間に全ての正極芯体ないしは負極芯体の露出部16を差し込み、集電体18E側よりレーザ光を照射して正極芯体ないしは負極芯体の露出部16と集電体18Eとをレーザ溶接した。この場合、レーザ光が集電体18Eを貫通しない場合には特に問題は生じなかったが、レーザ光が集電体18Eを貫通した場合には、レーザ光が巻回された偏平状の電極群10の内部にまで浸入してしまうため、内部短絡が発生した。
【0062】
なお、上記実施例1〜3においては、溶接方法としてレーザ溶接法を採用したものを示したが、これに限らず周知の高エネルギー線、例えば電子ビーム溶接法も使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】図1Aは巻回された偏平状の電極群に押え板を取り付けた状態の斜視図であり、図1Bは図1AのIB−IB断面図である。
【図2】図2Aは図1の偏平状の電極群に取り付けられた押え板上に更にスリットを有しない集電体を取り付けた状態の、図2Bは同じくスリットを有する集電体を取り付けた状態の、それぞれ図1のIB−IB断面図に対応する断面図である。
【図3】図2Bに示したスリットを有する集電体を取り付けた偏平状の電極群を電池外装缶内に組み込んだ実施例1の角形電池の部分断面図である。
【図4】図4Aは実施例2の角形電池の巻回された偏平状の電極群に集電体を取り付けた状態の斜視図であり、図4Bは図4AのIVB−IVB断面図である。
【図5】実施例3の角形電池における巻回された偏平状の電極群に集電体を取り付けた状態を示す図4AのIVB−IVB断面図に対応する断面図である。
【図6】図6Aは比較例1の角形電池の巻回された偏平状の電極群に集電体を取り付けた状態の斜視図であり、図6Bは図6AのVIB−VIB断面図である。
【図7】従来例の電池の集電体の斜視図である。
【図8】図7の集電体に未塗布部側の芯体の端縁に集電体を取り付けた後にレーザ溶接する際の模式図である。
【図9】別の従来例の電池の巻回電極体に集電体を取り付けた状態を示す斜視図である。
【図10】図9の集電体部の部分拡大斜視図である。
【図11】図9の集電体のスリットに挿入された電極の未塗布部側の芯体の端縁を屈曲する前の拡大断面図である。
【図12】図9の集電体のスリットに挿入された電極の未塗布部側の芯体の端縁を屈曲した後の拡大断面図である。
【図13】図13Aは図9の集電体内の芯体の実際の配置状態を示す拡大断面図であり、図13Bは図13Aの挟持部の高さを高くした場合の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0064】
10 巻回された偏平状の電極群
11、12 押え板の互いに対向する面
13A、13C、13D 押え板
13A、18B スカート部
14 折り返し部
15、15、15 押え板のスリット
15'、15' 集電体のスリット
16、16、16 正極芯体ないしは負極芯体の複数の露出部
18A〜18E 集電体
18C、18C 集電体の折り返し部
18C〜18E、18C〜18E 集電体の互いに対向する面
19、19 押え部
20 角形電池
21 接続部
22 封口板
23、23' 絶縁性物質
24 正極外部端子
24' 負極外部端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極芯体に正極合剤が塗布された正極と、負極芯体に負極合剤が塗布された負極とがセパレータを介して幅方向に互いにずらして積層或いは巻回された偏平状の電極群と、押え板と、前記押え板に電気的に接続された集電体とを備え、前記正極芯体及び負極芯体の少なくとも一方の幅方向の端部は前記正極合剤又は負極合剤が塗布されていない複数の露出部を有し、前記複数の露出部に押え板が溶接された角形電池において、
前記押え板は、金属板が折り返されて隙間を空けて互いに対向する面が形成されて前記対向する面の少なくとも一方側に折り返し部に沿ったスリットが設けられ、
前記複数の露出部が前記押え板の隙間に挿入されて、前記複数の露出部と前記押え板とが前記スリットを介して実質的に横方向から高エネルギー線により溶接されていることを特徴とする角形電池。
【請求項2】
前記集電体は、実質的に横断面が逆L字型の金具と前記金具から直接帯状に延びている接続部とからなり、前記集電体の逆L字型の金具の内側面が前記押え板の対向する面の一方及び前記折り返し部に当接するように載置されているとともに、前記集電体の逆L字型の金具の前記押え板の対向する面の一方と当接している部分が実質的に横方向から高エネルギー線により溶接されていることを特徴とする請求項1に記載の角形電池。
【請求項3】
前記集電体の逆L字型の金具の前記押え板の対向する面の一方と当接している部分には前記押え板に設けられたスリットと重複する位置にスリットが設けられ、前記複数の露出部と、前記押え板と、前記集電体の逆L字型の金具とが、前記押え板及び集電体の逆L字型の金具に設けられたそれぞれのスリットを介して実質的に横方向から高エネルギー線により溶接されていることを特徴とする請求項2に記載の角形電池。
【請求項4】
前記高エネルギー線は、レーザ光又は電子ビームからなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の角形電池。
【請求項5】
正極芯体に正極合剤が塗布された正極と、負極芯体に負極合剤が塗布された負極とがセパレータを介して幅方向に互いにずらして積層或いは巻回された偏平状の電極群と集電体とを備え、前記正極芯体及び負極芯体の少なくとも一方の幅方向の端部は前記正極合剤又は負極合剤が塗布されていない複数の露出部を有し、前記複数の露出部に押え板が溶接された角形電池において、
前記集電体は、金属板がコ字状に折り返されて隙間を空けて互いに対向する対向面と前記対向面間を接続する面が形成され、前記対向面のそれぞれに前記折り返し部に沿ったスリットが設けられているとともに、前記対向面間を接続する面から直接帯状に延びている接続部が形成されており、
前記複数の露出部は2組に分けられてこれらの2組の露出部間に配置された押え板とともに前記集電体の対向面間の隙間に挿入され、
前記2組の露出部と、前記押え板と、前記集電体のそれぞれの対向面とが前記集電体の対向面のそれぞれに設けられたスリットを介して実質的に横方向から高エネルギー線により溶接されていることを特徴とする角形電池。
【請求項6】
前記押え板は金属板がコ字状に折り返されて隙間を空けて互いに対向する対向面が形成されており、前記押え板の対向面の外側がともに前記露出部と接する状態で前記集電体の隙間に挿入されていることを特徴とする請求項5に記載の角形電池。
【請求項7】
前記高エネルギー線は、レーザ光又は電子ビームからなることを特徴とする請求項5又は6に記載の角形電池。
【請求項8】
正極芯体に正極合剤が塗布された正極と、負極芯体に負極合剤が塗布された負極とがセパレータを介して幅方向に互いにずらして積層或いは巻回された偏平状の電極群と集電体とを備え、前記正極芯体及び負極芯体の少なくとも一方の幅方向の端部は前記正極合剤又は負極合剤が塗布されていない複数の露出部を有し、前記複数の露出部に押え板が溶接された角形電池において、
前記集電体は、金属板がコ字状に折り返されて隙間を空けて互いに対向する対向面と前記対向面間を接続する面が形成され、前記対向面のそれぞれに前記折り返し部に沿ったスリットが設けられているとともに、前記対向面間を接続する面から直接帯状に延びている接続部が形成されており、
前記押え板は、金属板が折り返されて隙間を空けて互いに対向する面が形成された押え部が2個、それぞれ互いに平行にかつ互いに所定間隔を空けて一体に形成されているとともに、前記2つの押え部の互いに外側に位置する面にそれぞれ前記折り返し部に沿ったスリットが設けられており、
前記複数の露出部は2組に分けられてこれらの2組の露出部のそれぞれが前記2つの押え部の隙間に挿入された状態で前記集電体の対向面間の隙間に挿入され、
前記2組の複数の露出部と、前記押え板と、前記集電体のそれぞれの対向面とが、前記集電体の対向面にそれぞれ設けられたスリット及び前記押え板の外側に位置する面にそれぞれ設けられたスリットを介して実質的に横方向から高エネルギー線により溶接されていることを特徴とする角形電池。
【請求項9】
前記高エネルギー線は、レーザ光又は電子ビームからなることを特徴とする請求項8のいずれかに記載の角形電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2007−149353(P2007−149353A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−338120(P2005−338120)
【出願日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】