説明

触媒つきフィルタ、その製造方法及び排気ガス浄化システム

【課題】
ある程度再生を繰り返してもススの再生率が変化せず、貴金属触媒を減少させることができるとともに、圧力損失の小さい触媒つきフィルタを提供すること。
【解決手段】
セル壁により区画された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の両端部が封止体によって交互に目封止されるとともに、セル壁表面にはサポート材と触媒が担持されたセラミックフィルタであって、上記セラミックフィルタの上記セル壁表面には、一方の端部側にサポート材が所定量担持され、他方の端部に向かうに従って、相対的にサポート材が少なく担持されており、さらに、上記セラミックフィルタには、触媒担持部位が設けられていることを特徴とする触媒つきフィルタ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触媒つきフィルタ、触媒つきフィルタの製造方法及び排気ガス浄化システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車の台数は今世紀に入って飛躍的に増加しており、それに比例して自動車の内燃機関から出される排気ガスの量も急激な増加の一途を辿っている。特にディーゼルエンジンの出す排気ガス中に含まれる種々の物質は、汚染を引き起こす原因となるため、現在では世界環境にとって深刻な影響を与えつつある。また、最近では排気ガス中のススやSOF(Soluble Organic Fraction)等の浮遊粒子状物質(以下PMと略記する)が、ときとしてアレルギー障害や精子数の減少を引き起こす原因となるとの研究結果も報告されている。つまり、排気ガス中のPMを除去する対策を講じることが、人類にとって急務の課題であると考えられている。
【0003】
このような事情のもと、多様多種の排気ガス浄化装置が提案されてきた。図18は、一般的な排気ガス浄化装置を模式的に示す概略図である。図18に示すように、一般的な排気ガス浄化装置101は、ディーゼルエンジン102の排気マニホールド103に連結された排気通路104の途上にケーシング105が設けられており、その中に微細な孔を有するフィルタ10が配置されてなる構造を有している。フィルタ10の形成材料としては、金属や合金のほか、セラミックがある。セラミックからなるフィルタ10の代表例としては、コーディエライト製のハニカムフィルタが知られている。最近では、耐熱性・機械的強度・捕集効率が高い、化学的に安定している、圧力損失が小さい等の観点から、炭化珪素をフィルタ形成材料として用いることが好適であると考えられている。
【0004】
上記ハニカムフィルタは自身の軸線方向に沿って延びる多数のセルを有している。従って、排気ガスがフィルタ10を通り抜ける際、その濾過壁(セル壁)によってPMがトラップされる。そして、フィルタ10内に捕集されたPMが多くなるに従って、フィルタ内の抵抗を増し、圧力損失が大きくなる。そこで、再生即ち、所定の温度(着火温度)にフィルタ内温度を加熱し、PMを着火して燃焼する方法が採られてきた。
【0005】
現在、排気ガス浄化装置としては、排気ガスの熱のみにより着火するもの(自然着火方式)、及び、排気ガスの熱に加えバーナやヒータ等の加熱手段からの熱により着火するもの(加熱着火方式)があり、フィルタのセル壁に一様に触媒を担持して、着火温度を下げてやる方法が頻繁に用いられる。
また、特開2001−207836号公報には、NOx吸収型触媒成分を、ハニカムフィルタの排気ガス流入側に多く担持する技術が開示されている。
【0006】
【特許文献1】特開2001−207836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところが、ディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)によってPMを捕集した後、フィルタ全体の再生を行うことを一定期間繰り返すと、フィルタの性能が劣化することがわかってきた。
図19は、再生の回数と再生率との関係を示すグラフである。ここで再生率とは、フィルタ内に堆積したススを除去(再生という)した重量と堆積したスス重量との比を百分率で表したものである。図19に示すグラフから明かなように、初めのうちは、再生率が高く、再生によりPMが燃焼されているが、何度か繰り返してみると、再生率が低くなり、触媒としての反応性が下がっていく。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者は、フィルタの性能劣化の問題を解決するために、様々な試行錯誤を行った。まず、触媒担持量が性能劣化に関係していると考え、触媒担持量を増加させてみた。しかし、触媒担持量を増加させると、フィルタの圧力損失が大きくなるため、フィルタの性能劣化をくい止めることはできなかった。
次に、再生するフィルタに熱電対を差し込み、複数の部位における温度を測定すると、予想に反して、排気ガス流入側よりも、流出側の方が高温になる現象がみられた。これは、フィルタとヒータとの位置の問題とも考えられたために、温度が低くなる傾向の見られた排気ガス流入側にのみヒータを取り付けて再生を行った。
図20は、再生時のおけるフィルタ内の温度変化を示すグラフである。図20のグラフに示すように、このとき、フィルタの排気ガス流入側は、触媒がよく反応する600℃程度に制御可能である反面、流出側の方は800℃を越えてしまうことがわかった。また、触媒について調査してみると、触媒として用いられる貴金属は、800℃を越えるとすぐにシンタリング(金属が大きい粒子に変化してしまう)して反応性が悪くなり、使えなくなってしまうことが判明した。
【0009】
この事実から、本願発明者は、排気ガス流入側における触媒担持量に注目した結果、触媒の担持場所を全体的に一様に担持することから、その濃度を変化させたり、部分的に担持することに変更しても、ある程度再生を繰り返した後のススの再生率が変わらない事実に到達した。そして、触媒として用いられ、貴重な資源である貴金属等の無駄使いを防止し、コストを安くすることができるとともに、圧力損失の小さい触媒つきフィルタを作り出すことに成功した。
【0010】
その条件は、排気ガス流出側の貴金属等の触媒を減らすことで、劣化する貴金属等の触媒を減少させることである。
【0011】
(1)本発明の触媒つきフィルタは、セル壁により区画された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の両端部が封止体によって交互に目封止されるとともに、触媒が担持されたセラミックフィルタであって、一方の端部側に上記触媒を所定量担持し、他方の端部に向かうに従って、相対的に触媒を少なく担持したことを特徴とする。
【0012】
(2)本発明の触媒つきフィルタは、セル壁により区画された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の両端部が封止体によって交互に目封止されるとともに、触媒が担持されたセラミックフィルタであって、一方の端面から他方の端面に向かって所定長さ離間した箇所までの領域に、触媒担持部位が設けられ、当該箇所から他方の端面に到る領域に、触媒非担持部位が設けられたことを特徴とする。
【0013】
(3)本発明の触媒つきフィルタは、セル壁により区画された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の両端部が封止体によって交互に目封止されるとともに、触媒が担持されたセラミックフィルタであって、一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の1/2〜4/5だけ離間した箇所までの領域に、触媒担持部位が設けられ、当該箇所から他方の端面に到る領域に、触媒非担持部位が設けられたことを特徴とする。
【0014】
(4)上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記触媒は、貴金属元素、元素周期表VIa族の元素、及び、元素周期表VIII族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする。
【0015】
(5)上記(1)〜(3)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記触媒は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及び、遷移金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする。
【0016】
(6)本発明の触媒つきフィルタは、セル壁により区画された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の両端部が封止体によって交互に目封止されるとともに、触媒が担持されたセラミックフィルタであって、一方の端部側にNOx選択還元型触媒成分及び/又はNOx吸蔵型触媒成分を所定量担持し、他方の端部に向かうに従って、相対的にNOx選択還元型触媒成分及び/又はNOx吸蔵型触媒成分を少なく担持したことを特徴とする。
【0017】
(7)本発明の触媒つきフィルタは、セル壁により区画された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の両端部が封止体によって交互に目封止されるとともに、触媒が担持されたセラミックフィルタであって、一方の端面から他方の端面に向かって所定長さ離間した箇所までの領域に、NOx選択還元型触媒成分及び/又はNOx吸蔵型触媒成分を担持した部位が設けられ、当該箇所から他方の端面に到る領域に、NOx選択還元型触媒成分及び/又はNOx吸蔵型触媒成分が非担持である部位が設けられたことを特徴とする。
【0018】
(8)本発明の触媒つきフィルタは、セル壁により区画された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の両端部が封止体によって交互に目封止されるとともに、触媒が担持されたセラミックフィルタであって、一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の1/2〜4/5だけ離間した箇所までの領域に、NOx選択還元型触媒成分及び/又はNOx吸蔵型触媒成分を担持した部位が設けられ、当該箇所から他方の端面に到る領域に、NOx選択還元型触媒成分及び/又はNOx吸蔵型触媒成分が非担持である部位が設けられたことを特徴とする。
【0019】
(9)上記(6)〜(8)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記NOx吸蔵型触媒成分は、貴金属元素に加えて、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、及び、遷移金属の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むもので構成されていることを特徴とする。
【0020】
(10)上記(1)〜(9)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記フィルタのセル壁表面には、サポート材が担持されていることを特徴とする。
【0021】
(11)上記(1)〜(9)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記フィルタのセル壁表面には、一方の端部側にサポート材を所定量担持し、他方の端部に向かうに従って、相対的にサポート材を少なく担持したことを特徴とする。
【0022】
(12)上記(1)〜(9)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記フィルタのセル壁表面には、一方の端面から他方の端面に向かって所定長さ離間した箇所までの領域に、サポート材担持部位が設けられ、当該箇所から他方の端面に到る領域に、サポート材非担持部位が設けられたことを特徴とする。
【0023】
(13)上記(1)〜(9)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記フィルタのセル壁表面には、一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の1/2〜4/5だけ離間した箇所までの領域に、サポート材担持部位が設けられ、当該箇所から他方の端面に到る領域に、サポート材非担持部位が設けられたことを特徴とする。
【0024】
(14)上記(10)〜(13)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記サポート材は、アルミナ、ジルコニア、チタニア及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする。
【0025】
(15)上記(10)〜(14)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記サポート材は、針状アルミナで構成されていることを特徴とする。
【0026】
(16)上記(1)〜(15)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記フィルタは珪素を含有するセラミック多孔質体で構成されていること特徴とする。
【0027】
(17)上記(1)〜(15)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記フィルタは炭化珪素、窒化珪素、コーディエライト、ムライト、サイアロン、シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多孔質体で構成されていることを特徴とする。
【0028】
(18)上記(1)〜(17)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記フィルタのセル壁表面には、一方の端部側に助触媒を所定量担持し、他方の端部に向かうに従って、相対的に助触媒を少なく担持していることを特徴とする。
【0029】
(19)上記(1)〜(17)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記フィルタのセル壁表面には、一方の端面から他方の端面に向かって所定長さ離間した箇所までの領域に、助触媒担持部位が設けられ、当該箇所から他方の端面に到る領域に、助触媒非担持部位が設けられたことを特徴とする。
【0030】
(20)上記(1)〜(17)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記フィルタのセル壁表面には、一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の1/2〜4/5だけ離間した箇所までの領域に、助触媒担持部位が設けられ、当該箇所から他方の端面に到る領域に、助触媒非担持部位が設けられたことを特徴とする。
【0031】
(21)上記(18)〜(20)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記助触媒は、希土類酸化物を含むもので構成されていることを特徴とする。
【0032】
(22)上記(18)〜(20)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記助触媒は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、及び、遷移金属元素からなる群から選ばれる元素を含むことを特徴とする。
【0033】
(23)上記(18)〜(20)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記助触媒は、セリウム(Ce)、ランタン(La)、バリウム(Ba)、カルシウム(Ca)及びカリウム(K)からなる群から選ばれる少なくとも1つの単体または化合物からなることを特徴とする。
【0034】
(24)上記(1)〜(23)のいずれか1に記載の触媒つきフィルタであって、上記フィルタのセル壁表面には、一方の端面から他方の端面に向かってサポート材、助触媒、触媒の担持した領域が、同じ長さであることを特徴とする。
【0035】
(25)本発明の触媒つきフィルタの製造方法は、フィルタの一方の端面から他方の端面に向かって所定長さ離間した箇所までの領域を、貴金属を含有する金属化合物の溶液で浸した後、乾燥させることを特徴とする。
【0036】
(26)本発明の触媒つきフィルタの製造方法は、アルミニウムを含有する金属化合物の溶液中に、フィルタの一方の端面から他方の端面に向かって所定長さ離間した箇所までの領域を含浸する溶液含浸工程と、含浸後のフィルタを乾燥する乾燥工程と、乾燥後のフィルタを300〜500℃以上の温度に加熱焼成することによりアモルファスアルミナ膜を形成する仮焼成工程と、仮焼成後のフィルタを熱水中に浸漬処理したのち乾燥する熱水処理工程と、熱水処理後のフィルタを500〜1200℃にて本焼成する本焼成工程とを含む方法によって、フィルタにアルミナサポート材をつけることを特徴とする。
【0037】
(27)本発明の触媒つきフィルタの製造方法は、希土類元素を含有する金属化合物の溶液中に、フィルタの一方の端面から他方の端面に向かって所定長さ離間した箇所までの領域を含浸する溶液含浸工程と、含浸後のフィルタを乾燥する乾燥工程と、乾燥後のフィルタを窒素雰囲気で500〜800℃に加熱焼成することにより、希土類酸化物膜を形成する焼成工程とを含む方法によって、フィルタに希土類酸化物膜をつけることを特徴とする。
【0038】
(28)本発明の排気ガス浄化システムは、ディーゼルエンジンの排気通路に、上記(1)〜(24)のいずれか1つのフィルタが、排気ガス流入側に相対的に触媒が多く担持されている側の端部を向け、流出側に相対的に触媒が少なく担持または担持されていない側の端部を向けた状態で設置されていることを特徴とする。
【0039】
(29)本発明の排気ガス浄化システムは、ディーゼルエンジンの排気通路に、上記(1)〜(24)のいずれか1つのフィルタが、排気ガス流入側に相対的に触媒が多く担持されている側の端部を向け、流出側に相対的に触媒が少なく担持または担持されていない側の端部を向けた状態で設置されていて、上記フィルタの排気ガス流入側にヒータを設置し、ヒータを用いて再生することを特徴とする。
【0040】
(30)本発明の排気ガス浄化システムは、ポストインジェクション方式によるディーゼルエンジンの排気通路に、上記(1)〜(24)のいずれか1つのフィルタが、排気ガス流入側に相対的に触媒が多く担持されている側の端部を向け、流出側に相対的に触媒が少なく担持または担持されていない側の端部を向けた状態で設置されていることを特徴とする。
【0041】
(31)本発明の触媒つきフィルタは、一方の端部に触媒を規定量担持し、他方の端部に向かうに従って、相対的に触媒を少なく担持したことを特徴とする。
【0042】
(1)に記載の発明によれば、フィルタの排気ガス流出側のように、再生時に高温となる側の触媒を少なく担持することで、シンタリングによる触媒の無駄を減らすことができる。また、最もPM濃度が高く、汚染された排気ガスを排気ガス流入側において、効率よく浄化することが出来る。
【0043】
(2)に記載の発明によれば、フィルタの排気ガス流出側のように、再生時に高温となる側の触媒を少なく担持することで、シンタリングによる触媒の無駄を減らすことができる。また、最もPM濃度が高く、汚染された排気ガスを排気ガス流入側において、効率よく浄化することが出来る。
さらに、従来技術のように、セル壁表面に触媒を一様に担持するよりも圧力損失を小さくすることができる。
【0044】
(3)に記載の発明によれば、フィルタの排気ガス流出側のように、再生時に高温となる側の触媒を少なく担持することで、シンタリングによる触媒の無駄を減らすことができる。また、最もPM濃度の高く、汚染された排気ガスを排気ガス流入側から、効率よく浄化することが出来る。
さらに、従来技術のようにセル壁表面に触媒を一様に担持するよりも圧力損失を小さくすることができる。
このとき、触媒担持部位の長さがフィルタ全長の1/2より短いと、再生率が悪くなり、PMが燃え残るため、何度か使用すると、圧力損失が大きくなってしまう。また、触媒担持部位の長さがフィルタ全長の4/5より長いと圧力損失が大きくなるとともに、シンタリングによる触媒の無駄が大きくなる。
【0045】
(4)に記載の発明によれば、貴金属元素、元素周期表VIa族の元素、及び、元素周期表VIII族の元素を触媒として用いることにより、酸素を活性化させ、PM、HC、CO等を酸化浄化することが可能になる。
【0046】
(5)に記載の発明によれば、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及び、遷移金属元素によって、NOx、SOxガスを、硝酸塩、硫酸塩といった形で取り込み、還元雰囲気にすることで、無害なガスに還元浄化することが可能になる。また、PMの捕集を行いながら、活性酸素の吸収、放出を行なうことで、上記反応を、還元剤を排気ガス中に放出しなくとも、行うことができる。
【0047】
(6)〜(9)に記載の発明によれば、フィルタの排気ガス流出側のように、再生時に高温となる側の触媒を少なくすることでシンタリングによる触媒の無駄を減らすことができると同時に、従来技術のようにセル壁表面に触媒を一様につけるよりも圧力損失を低くすることができる。
また、最もPM濃度の高く、汚染された排気ガスを、排気ガス流入側から効率よく浄化することが出来る。このとき、触媒担持部位の長さがフィルタ全長の1/2より短いと再生率が悪くなり、PMが燃え残るため、何度か使用すると、圧力損失が高くなってしまう。また、4/5より長いと圧力損失が高くなるし、触媒が無駄となる。
【0048】
また、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、遷移元素によって、活性酸素のNOx、SOxガスを、硝酸塩、硫酸塩といった形で取り込むことができる。そのとき、フィルタによって捕集されたPMによって、表面が一時的に酸素不足の状態(還元雰囲気)になることで、硫酸塩、硝酸塩から、NO、SO活性酸素が放出され、活性酸素はPMを酸化する。このことから、フィルタのPMが酸化されにくい場所においても、PMを酸化させることができる。
また、NO、SOは、Pt等により酸化され再度硝酸塩、硫酸塩といった形で取り込まれることとなる。もちろん、未燃HC、COと反応して還元しNガスとなって放出されることもある。
【0049】
(10)に記載の発明によれば、上記フィルタのセル壁表面に、比表面積が大きいサポート材が担持されているため、触媒の分散度を高めることが可能となっている。これにより、触媒の反応サイトを増すことが出来る。また、サポート材によって触媒金属のシンタリングを防止することが出来るので、触媒の耐熱性も向上する。
【0050】
(11)、(12)に記載の発明によれば、フィルタの触媒を担持する端部側のセル壁表面にサポート材をコーティングすることで、比表面積を大きくすることができ、触媒の分散度を高めることが可能となる。そのため、触媒の反応サイトを増すことが出来る。また、サポート材によって触媒金属のシンタリングを防止することが出来るので、触媒の耐熱性も向上する。加えて、圧力損失を小さくすることを可能にしている。
【0051】
(13)に記載の発明によれば、フィルタの触媒を担持する側のセル壁表面にサポート材をコーティングすることで、比表面積を大きくすることができ、触媒の分散度を高めることが可能となる。そのため、触媒の反応サイトを増すことが出来る。また、サポート材によって触媒金属のシンタリングを防止することが出来るので、触媒の耐熱性も向上する。加えて、圧力損失を下げることを可能にしている。
このとき、触媒担持部位の長さがフィルタ全長の1/2より短いと再生率が悪く、PMが燃え残るため、何度か使用すると、圧力損失が高くなってしまう。また、4/5より長いと圧力損失が大きくなり触媒が無駄となるため、サポート材の担持部位も触媒担持部位と合わせる方がより効率がよい。
【0052】
(14)に記載の発明によれば、サポート材は、アルミナ、ジルコニア、チタニア及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1つを含んでおり、これらのセラミック酸化物は比表面積が高く、触媒を担持するものとして適している。
特にチタニアを選択した場合には、触媒の活性を妨げる硫黄成分がセラミック担体から離脱するのを促進することが可能になる。特に、触媒担持フィルタをディーゼルエンジンの排気ガスを浄化するものに使用する場合には、燃料中に硫黄成分が多く含まれているため、これらの酸化物をサポート材に使用することは有効的であると考えられる。
【0053】
(15)に記載の発明によれば、サポート材として、針状アルミナを用いることで、フィルタを形成する粒子上を個別にコートすることが出来る。その為、ウォッシュコートのようにセル壁上に気孔を埋めるように担持したアルミナより圧力損失を下げることができる。また本発明では、触媒をフィルタの一部分で効率よく反応させることが要求されている。
また、サポート材として、針状アルミナを用いることで、触媒、助触媒、NOx選択還元型触媒、NOx吸蔵型触媒等の分散度を増し反応性を高めることが可能になる。
【0054】
(16)に記載の発明によれば、珪素(Si)を含んだフィルタを用いることで耐熱性、熱伝導性に優れたフィルタを提供することができる。
【0055】
(17)に記載の発明によれば、炭化珪素、窒化珪素、コーディエライト、ムライト、サイアロン、シリカのいずれかの多孔質体を用いることで、機械的強度、耐熱性、熱伝導性等がより優れたフィルタが提供できる。
【0056】
(18)、(19)に記載の発明によれば、助触媒によって、反応する酸素濃度域を広くすることが可能となるとともに、酸素の活性をよくして、PM、HC、CO等を酸化浄化することが可能になる。また、排気ガスを浄化する再生時に高温となる側の助触媒を少なくすることでシンタリングによる触媒の無駄を減らすことができる。
【0057】
(20)に記載の発明によれば、助触媒によって、反応する酸素濃度域を広くし、かつ酸素の活性をよくして、PM、HC、CO等を酸化浄化することが可能になる。このとき、助触媒担持部位の長さがフィルタ全長の1/2より短いと再生率が悪く、4/5より長いと圧力損失が高くなり助触媒が無駄となるため、助触媒も触媒担持部位に合わせる方がより効率がよい。
【0058】
(21)〜(23)に記載の発明によれば、希土類酸化物、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、遷移金属元素を含んだものを助触媒として使用することによって、より優れた助触媒効果を得ることができる。
【0059】
(24)に記載の発明によれば、フィルタの触媒、助触媒、触媒の担持領域が、同じ長さである。このことから、低い圧力損失がえられ、それぞれが排気ガス浄化のために相乗効果をもたらす。また、貴金属等の無駄もなくなる。
【0060】
(25)に記載の発明によれば、溶液の付着位置が目視で確認できるために、フィルタを片端面から、フィルタの一方の端面から他方の端面に向かって所定長さ離間した箇所までの領域まで簡単に触媒を担持することができる。
【0061】
(26)に記載の発明によれば、フィルタを片端面から、フィルタの一方の端面から他方の端面に向かって所定長さ離間した箇所までの領域にまで簡単に針状アルミナサポート材を担持することができる。なお、触媒の比表面積を稼ぐためにサポート材をコートするので、コートする触媒に合わせた位置までコートすれば、無駄を無くした適量のサポート材がコートされ、圧力損失が低く比表面積の高いものを得ることができる。
【0062】
(27)に記載の発明によれば、フィルタを片端面から、フィルタの一方の端面から他方の端面に向かって所定長さ離間した箇所までの領域にまで簡単に希土類酸化物膜を担持することができる。なお、希土類酸化物膜は触媒の反応する酸素濃度域を広くし、かつ酸素の活性をよくするものなので、コートする触媒に合わせた位置までコートすれば、無駄を無くした適量の希土類酸化物膜がコートされ、圧力損失が低いものを得ることができる。
【0063】
(28)に記載の発明によれば、ディーゼルエンジンの排気通路に、排気ガス流入側に相対的に触媒が多く担持されている側の端部を向け、流出側に相対的に触媒が少なく担持または担持されていない側の端部を向けた状態で設置してフィルタを高温にすることで捕集されたPMを酸化処理することが可能となる。また、最もPM濃度の高い汚染された排気ガスを、流入側から、最も効率よく浄化することが出来る。
【0064】
(29)に記載の発明によれば、ディーゼルエンジンの排気通路に、排気ガス流入側に相対的に触媒が多く担持されている側の端部を向け、流出側に相対的に触媒が少なく担持または担持されていない側の端部を向けた状態で設置してヒータを用いてフィルタを高温にすることで、排ガス温度が低くても捕集されたPMを酸化処理することが可能となる。
【0065】
(30)に記載の発明によれば、ポストインジェクション方式のエンジンシステムを採用することによって、ヒータ、バーナ等を使用しなくても、排気ガス温度が高くなり、フィルタの温度を高くすることができ、PMを酸化浄化することができる。
なお、ポストインジェクション方式とは、燃料のメインインジェクションにより、シリンダーの膨張ストロークが開始した後、シリンダーが圧縮ストロークに転換する前に、少量の燃料を注入する方式であり、この方式を用いたディーゼルエンジンでは、排気ガスの温度を450℃以上に高めることができる。
従って、ポストインジェクション方式のディーゼルエンジンから排出される排気ガスは、フィルタ内に流入する際の温度が高く、より短期間で確実に触媒の活性温度や、黒鉛の燃焼開始温度(約600℃)に達することになる。
【0066】
(31)に記載の発明によれば、再生時に高温となる側の触媒を少なくすることでシンタリングによる触媒の無駄を減らすことができる。また、最もPM濃度の高い汚染された排気ガスを、流入側から、最も効率よく浄化することが出来る。
【発明の効果】
【0067】
以上詳述したように、(1)〜(24)、(31)に記載の発明によれば、片端面側の触媒を減らすことで、劣化する貴金属触媒を減少させることができるとともに、圧力損失の小さい触媒つきフィルタを提供できる。
(25)〜(27)に記載の発明によれば、片端面側にサポート材、触媒及び助触媒を相対的に多く担持した触媒つきフィルタを簡単に製造することができる。
(28)〜(30)に記載の発明によれば、フィルタでススを捕集した後、再生することができる排気ガス浄化システムを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0068】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図面に基づき詳細に説明する。
図1〜図3に示すように、本実施形態にかかる触媒つきフィルタ10は、多孔質な珪素含有セラミック焼結体からなるセラミック担体15を備えており、セラミック担体15にはセル壁12が形成されている。セル壁12を構成するSiC粒子4の表面には、それぞれに触媒コート層2が所定の厚みで個別に被覆されている。なお、本実施形態にかかる触媒つきフィルタ10としては、セラミック、金属、合金製のフィルタを用いることも出来るが、重量等の観点からセラミックを用いることが望ましく、特に珪素含有セラミック、例えば、炭化珪素を好適例とする多孔質な珪素含有セラミック焼結体からなることが望ましい。
【0069】
触媒つきフィルタ10には、シール材層を介して分割された柱状フィルタを用いることが望ましい。また、シール材は、接着力を有するものであることが望ましい。分割されているため、熱が後方まで迅速に伝達されるからである。
【0070】
また、触媒コート層2は、サポート材上に、触媒、助触媒、NOx選択還元型触媒、NOx吸蔵型触媒等を担持させたものである。本実施形態において、上記サポート材は、アルミナ(Al)からなる膜(以下アルミナ膜という)3である。アルミナ以外にも、ジルコニア(二酸化ジルコニウム:ZrO)、チタニア(酸化チタン:TiO)、シリカ(酸化珪素:SiO)の中から選ばれる少なくとも1つを含むものであれば任意に変更してもよい。
【0071】
具体的にいうと、一種類の酸化物としては、ZrO、TiO又はSiOがある。2種類の酸化物としては、Al/ZrO、Al/TiO、Al/SiO、ZrO/TiO、又はZrO/SiOがある。3種類の酸化物としては、Al/ZrO/TiO、Al/ZrO/SiO、Al/TiO/SiO又はZrO/TiO/SiOがある。4種類の酸化物としては、Al/ZrO/TiO/SiOがある。
【0072】
窒素含有セラミック担体15としては、炭化珪素粉末の他、窒化珪素粉末のような酸化物系セラミック、またはサイアロンやムライト、コーディエライト等のような酸化物系セラミックに属するセラミック粉末に、有機バインダ、潤滑剤、可塑剤及び水を配合して混練し、押出し成形した後に焼結したものを用いることができる。このようにして、図1(a)、(b)及び図2に示すような、ウォールフローハニカム型フィルタが形成される。
【0073】
以下、炭素含有セラミック担体15として、SiC焼結体を用いた例について説明する。SiC焼結体を採用した理由は、他のセラミックに比較して、機械的強度、耐熱性及び熱伝導性、化学的安定性等に優れるという利点があるからである。従って、フィルタの熱応答性がよく、排ガスによって変化するフィルタの温度が、流入側から流出側に向かって非常にはやく伝わりやすいからである。
【0074】
なお、特開2001−207836号公報に記載されているフィルタでは、アルミナ、シリカーアルミナ、ゼオライト、コーディエライト、層状酸化物等の熱伝導率が低い材料を用いることができると記載されているが、熱伝導率が低い材料を用いると冷めにくくなる。従って、フィルタのある部位では、温度が高すぎ、触媒のシンタリングが起こって触媒が無駄になり、またある部位では、温度不足により、PMが燃え残り、再生不良を引き起こしてしまう。
【0075】
セラミック担体15は、複数の貫通孔としてのセル11がその軸線方向に沿って規則的に形成された断面略正方形状のSiC焼結体から構成されている。セル11は、セル壁12によって互いに隔てられており、各セル11の開口部は一方の端面側においては封止体14により封止されており、該当するセル11の他方の端面は解放され、全体としては各端面とも開放部と封止部とがそれぞれ市松模様状を呈するように配置されている。そして、該SiC焼結体からなるセラミック担体15には、断面四角形状をした多数のセル11が形成されている。言い換えると、これらのセラミック担体15はハニカム構造を有している。
【0076】
なお、セル11の密度は200〜350個/平方インチである。即ち、多数あるセル11のうち、約半数のものは上流側端面において開口し、残りのものは下流側端面において開口しており、各セル11を隔てるセル壁12の厚さは0.4mm前後に設定されている。
【0077】
このようなセラミック担体15を製造する場合は、例えば、原料として、10μm程度の平均気孔径を有する炭化珪素粉末約70重量部に、0.5μm程度の平均粒子径を有する炭化珪素粉末約30重量部、バインダーとしてのメチルセルロースをセラミック粉末100重量部に対して約6重量部、その他、有機溶媒及び水からなる分散溶液をセラミック粉末100重量部に対して約25重量部を配合したものを用いる。次いで、この配合原料を混練した後押し出し成形によってハニカム状に成形してから、セル11の一部を市松模様状に封止する。次いで、その成形体を乾燥脱脂した後、不活性雰囲気下にて2200℃、4時間にわたって焼成をすることにより、所望のセラミック担体15とする。
【0078】
本実施形態において最も特徴的な構成は、図5に示すように、セラミック担体15を実質的に構成するセル壁12の表面に触媒コート層2を担持する際に、フィルタ10の一方の端部に、触媒を多く担持した触媒担持部位が設けられ、他方の端部には、触媒を少なく担持した触媒非担持部位が設けられていることにある。従って、セル壁12の表面全体に触媒コート層2を担持するときよりも、圧力損失を小さくすることができ、低コストとなる。
【0079】
本実施形態では、図5(a)に示すように、目封止のない部分に触媒コート層2をつけることも可能であるが、サポート材、助触媒、触媒担持溶液のスラリーを浸透性の強いものに変更することで、図5(b)に示すように目封止のある部分に触媒コート層2をつけることも可能である。このようにすることで、排気ガスの中の気体分の浄化反応を行なうことができる。このような反応は発熱を伴うものであるため、フィルタ全体の温度上昇につながり、再生効率を高くすることができる。
【0080】
また、サポート材、助触媒、触媒担持溶液のスラリーにフィルタを含浸領域をずらしながら何度か重ねて含浸して図5(c)に示すような触媒コート層2にグラデーションをつけることも可能である。他にも、濃度の異なる溶液に含浸領域をずらしながら含浸することで図5(c)に示すような触媒コート層2にグラデーションをつけることも可能である。また、図5(d)に示すようにセラミック担体15のもう片側の端面まで触媒コート層2にグラデーションをつけることも可能である。このようにすることで、排気ガスの汚染濃度にあわせて、流入側から、浄化し、浄化した熱を効率よく排出側に送り込むことが可能となる。また、圧力損失が低くなる。
そこで、触媒コート層2を部分的にコートしたときの圧力損失特性について説明する。
【0081】
一般に、セル壁12を排気ガスが通過するときの圧力損失特性は、次のように考えられる。即ち、セラミック担体15を排気ガスが通過するときの圧力損失は、図4のように示すことができる。この場合、抵抗ΔP1、ΔP2、ΔP3はそれぞれのフィルタのセル構造に依存するものであって、ディーゼルパティキュレートの堆積等の時間変化によらない一定の値Δpi=(ΔP1+ΔP2+ΔP3)であり、初期圧力損失という。また、ΔP4は堆積したディーゼルパティキュレートを通過するときの抵抗であり、初期圧力損失の2〜3倍以上の値となる。
【0082】
ここで、全体にコートすると、セル壁12内を通過する抵抗ΔP3に加え、触媒コート層2を通り抜ける抵抗も増す。さらに開口が小さくなりΔP1も大きくなる。そのため、コートしていないフィルタ10と比較して圧力損失が著しく大きくなり、その傾向は、フィルタ10にパティキュレートが堆積した場合に、より一層顕著になる。
【0083】
しかし、本実施形態のように、フィルタ10の一方の端部に多く担持した触媒担持部位が設けられ、他方の端部には少なく担持した触媒非担持部位が設けられると、セル壁12内を通過する抵抗ΔP3に加え、触媒コート層2を通り抜ける抵抗を減らすことが可能になる。そのため、セル壁の表面全体をコートするときよりも、低い圧力損失が可能になる。
但し、この時PMの燃え残りが生じると、ΔP4が生じるので、圧力損失を小さくすることが困難となる。
【0084】
次に、触媒コート層2を部分的にコートした場合の耐洗浄性について説明する。
セル壁12の表面に堆積したパティキュレートの主成分はカーボンであり、これは、燃焼等の方法により酸化除去することができる。ところが燃焼後も灰分として残る物質がある。このような物質としては、例えば、中和剤あるいは潤滑剤等としての役割を持たすために、エンジンオイル中に添加してあるCa、Mg、Zn等の化合物が酸化されたり、硫酸塩になったりしたものがある。また、あらかじめ、燃料中にCeOやCuO等のカーボン燃焼のために混入してある触媒がパティキュレートと一緒に堆積したものがある。これらの灰分は、車両の長時間走行に伴って堆積していき、フィルタ10の圧力損失を増加させていくので、高圧水等による洗浄が必要である。このとき30kg/cm以上の圧力で洗浄すると灰分を完全に除去できる。
この点に関し、本実施形態のように、フィルタ10の一方の端部に、触媒を多く担持し、他方の端部には触媒を少なく担持すると、触媒のない部分の抵抗が下がるため、高圧水等による洗浄能力があがり、灰分は確実に取り去ることができる。
【0085】
ここで本実施形態において用いられる、針状アルミナについて説明する。
セラミック担体15を実質的に構成してなるセル壁12の表面、特に該セル壁12を構成する各SiC粒子4の表面をアルミナ膜3で被膜することにある。このことをもっと正確に言うと、該セル壁12を構成しているSiC粒子4を対象として、それぞれのSiC粒子4の表面を個別に、各種の方法によってアルミナ膜3にて被覆したことにある。
【0086】
なお、図6(a)、(b)は、セル壁12表面に一様に、ウォッシュコート法によって触媒コート層2を被覆形成する従来技術によって製造された触媒つきフィルタを示したものであり、図3(a)、(b)は、本実施形態で用いられるセラミック担体15の説明図である。セル壁12を構成する各SiC粒子4の表面に、アルミナ膜3が個別に被覆された状態のものを示している。
【0087】
このように、本実施形態にかかる触媒つきフィルタ10は、従来のように単にセル壁12の壁面を触媒コート層2で一様に被覆したものではない。例えば、従来のように、セル壁12を一様に被覆すると、SiC粒子4間の間隙が封塞され、目封じされることにより、通気性を阻害することになる。これに対して、本実施形態で用いるセラミック担体15の場合、セル壁12を構成している各SiC粒子4の表面を、個別にアルミナ膜3にて被覆した構造にしてある。
【0088】
従って、本実施形態については、セル壁12自体の気孔、即ち各SiC粒子4間に生じた間隙を完全に塞ぐようなことなく、気孔は気孔としてそのまま維持されることになるから、従来の触媒コート層2に比べると圧力損失が著しく小さい。しかも、耐熱性にも優れ、さらにはアルミナ膜3が各SiC粒子4自体を個別に被覆しているので、例えば、洗浄によってアルミナ膜3がセル壁12から剥落するようなことがなく、耐洗浄性に優れたものになる。さらに、排気ガスが触媒に接触する面積が大きくなることにより、排気ガス中のCOやHCの酸化を促進することができる。
【0089】
そこで、以下にアルミナ膜3の圧力損失特性について説明する。
先述したように初期圧力損失はΔpi=(ΔP1+ΔP2+ΔP3)である。また、ΔP4は堆積したディーゼルパティキュレートを通過するときの抵抗であり、初期圧力損失の2〜3倍以上の値となる。
【0090】
14/200のセル構造をもつセラミック担体15の比表面積は8.931cm/cmであり、セラミック担体15の密度は0.675g/cmであるので、セル壁12の比表面積は0.0013m/gとなる。一方、セル壁12内の細孔比表面積は、水銀ポロシメーターの測定によると0.12m/gであり、約50〜100倍の表面積をもつ。このことから、同じ重量のアルミナ膜3をセル壁12の表面に形成する場合、単にセル壁12の表面を一様に覆うように被覆するよりも、このセル壁12を構成している各SiC粒子4の表面を個別に被覆した方が、同じ効果を得るためのアルミナ膜3の厚みを1/50〜1/100にすることが可能となる。
【0091】
ウォッシュコートでアルミナ膜3を一様に形成するときには、触媒活性に必要な3wt%程度のアルミナを被覆するのに、50μmが必要であるが、本実施形態のように、セル壁12を構成するSiC粒子4の表面にアルミナをコートするときは、0.5μm程度で充分である。
【0092】
これにより、セル壁12内を通過する抵抗ΔP3に加え、触媒コート層2を通り抜ける抵抗も小さくすることができ、さらに開口が小さくなりΔP1も小さくできる。そのため、ウォッシュコートでアルミナ膜3を一様に形成したフィルタ10と比較して圧力損失が著しく小さくなり、その傾向は、フィルタ10にパティキュレートが堆積した場合に、より一層顕著になる。
【0093】
次に、アルミナ膜3の耐洗浄性について説明する。
先述したように、セル壁12の表面には、灰分が蓄積され、高圧水等による洗浄が必要である。
この点に関し、セル壁12の表面にウォッシュコートによってアルミナコートすると、物理吸着による厚いコート層となり、洗浄時に剥離することが多い。しかし、本実施形態のアルミナ膜3では、アルミナがセラミック担体15を構成する各SiC粒子4の表面に薄く個別に被覆されており、しかも、セラミック担体15を構成しているSiCからはSiが供給されて化学的にも結合していることから、SiC粒子個々と硬く密着した状態となっている。従って、密着性が高く、洗浄に対する抵抗も高いため、被膜として耐久性が強い。
【0094】
次に、アルミナ膜3の耐熱性について説明する。
一般にアルミナは高い比表面積をもっており、触媒担持膜として適している。特に、より高温で安定に作動する耐熱性の高い触媒つきフィルタ10の開発が望まれている現在、それに伴って、アルミナ膜3についても、より高い耐熱性が要求されている。
よって、各アルミナ粒子の形状を小繊維状とすると共に、セリア(酸化セリウム)等の希土類酸化物を含有させることとした。
各アルミナ粒子の形状を小繊維状とすることで、隣接するアルミナ小繊維の互いの接触点が減少し、燃焼速度の低下を通じて粒成長を抑制し、比表面積を大きくして、耐熱性が向上する。
【0095】
また、セリア等の添加によっても耐熱性は改善される。その理由は、アルミナ膜3を構成する結晶粒子の表面に新しく化合物を形成し、アルミナ粒子同士の成長を妨げるからである。また、SiCやそのごく表層に存在しているSiOから、熱処理時にSiが供給され、物質移動経路を遮断する作用を担うことからも耐熱性が向上する。発明者らの研究によれば、意図的にSiCを高温で処理して酸化膜を形成させると、耐熱性がさらに向上することがわかっている。
【0096】
次に本実施形態においても用いられる、一般的な触媒による再生特性について述べる。
この排気ガス浄化用フィルタとしてのDPFは、それ自体ではPMをセル壁12で捕集する機能しか持たないが、これに触媒活性成分を担持することにより、排気ガス中の炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)等を酸化分解することができる。このような、触媒としては、Pt、Pd、Rhなどの貴金属からなる触媒活性成分が知られている。これらの触媒は、排気ガス中の酸素を活性化することにより、酸化反応を引き起こしている。
【0097】
加えて、セリア(CeO)やランタナ(La)のような希土類酸化物を添加すると、アルミナの耐熱性を向上させるだけではなく、触媒表面での酸素濃度を調節する役割も果たす。よって、排気ガス中への酸素の供給を活発にして、フィルタ10に付着したディーゼルパティキュレートの燃焼除去効率が向上し、ひいては触媒担体の再生率が著しく向上することになる。
【0098】
一般に、排気ガス中に存在するHCや、COは酸化反応により、また、NOxは、還元反応により除去される。ディーゼルエンジンでは通常空気過剰のもとで燃焼が行なわれるために、排気ガスは多量の過剰空気を含んでいる。即ち、吸気通路及び燃料室内に供給された空気と燃料との比を排気ガスの空燃比と称すると、この空燃比はリーン域となっている。しかし、ディーゼルエンジンから放出されたPMが、触媒表面に接触すると部分的に酸素不足の状態となるため、一時的にリッチ域に達する。このように触媒表面の作用雰囲気も激しく変動することになる。
【0099】
ところで、触媒に添加されるセリアは、Ce3+とCe4+の酸化還元電位が比較的小さく、2CeO⇔Ce+1/2O
の反応が可逆的に進行する。即ち、排気ガスがリッチ域(酸素不足域)になると上記の反応は右に進行して雰囲気中に酸素を供給するが、逆にリーン域(酸素過剰域)になると左に進行して雰囲気中の余剰酸素を吸蔵する。このようにして、雰囲気中の酸素濃度を調節することにより、セリアは、炭化水素や一酸化炭素あるいはNOxを効率よく除去できる空燃比の幅を広げる作用を担う。
【0100】
また、フィルタ10のセル壁12にあるセリアの酸素を用いることは、セリアが捕集されているPMと直接接触しているため、排気ガス中の酸素を用いるよりも、より効率よくPMを酸化することができる。
しかもこの場合のセリアは、貴金属触媒を担持することによりOSC(酸素貯蔵機能)を増大させる。というのは、触媒(貴金属)は、排気ガス中の酸素を活性化し、貴金属近傍のセリア表面の酸素も活性化するため、上記OSCが増大するのである。
【0101】
また、図7のグラフは、アルミナ膜3中へのセリア等希土類酸化物の添加効果について、再生特性を調べた結果を示すものである。ここで、参考例1では、触媒をPt(3.5g/L)、助触媒をCeO(40wt%)、サポート材を針状Al(1wt%)とした触媒つきフィルタ10とした。参考例2では、Pt(3.5g/L)/針状Al(1wt%)とした触媒つきフィルタ10とした。参考例3ではPt(3.5g/L)のみの触媒つきフィルタ10とした。この実験は、ススが付着したディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF、全長150mm)を電気炉に収容して650℃に加熱する一方、回転数を1100rpm、負荷状態を3.9Nmとしたディーゼルエンジンを接続し、その排気ガス(350℃)を該フィルタに導入したときのフィルタ温度(導入口より145mm位置での測温)の推移を調べたものである。
【0102】
図7に示すように、参考例3(Ptのみあり)では、Oが律速になって50sec―680℃でピーク温度を迎え、そして、参考例2(アルミナ(コート材)、Ptあり、セリア(助触媒)なし)でもOが律速になって60sec―750℃でピーク温度を迎えた。ところが、参考例1(アルミナ(コート材)、Pt、セリア(助触媒)あり)では、Oが律速になって50sec―900℃と速い速度で高いピーク温度を迎えていることから、ススの酸化除去効率が高く、高い再生率を示していることがわかる。
【0103】
図9のグラフは、再生率そのものを比較したものであるが、参考例1(セリア含有触媒)の効果が際だっていることが明らかである。ここでの再生率とは、DPF内に堆積したススを除去(再生という)した重量と堆積したスス重量との比を百分率で表したものである。
以上より、最良の方式は、参考例1で示したようなセラミック担体15にアルミナ、触媒及び助触媒をつけたものであることがわかる。
【0104】
なお、上記希土類酸化物については、上述した例にある単独酸化物(CeO)の他に、例えば、希土類元素とジルコニウムの複合酸化物を用いることがより好ましい。それは、希土類酸化物中にジルコニウム酸化物を含有していることで、希土類酸化物の粒成長の抑制を通じて酸素濃度の制御特性が向上するからであると考えられる。
【0105】
ジルコニウムとの複合酸化物の形態をとる上記希土類酸化物は、その粒子径が1〜30nm程度にすることが好ましく、より好ましくは2〜20nmの大きさが好適である。その理由は、粒子径は、粒子径が1nm未満の複合酸化物は製造上困難である。一方、粒子径が30nmを超えると、粒子がシンタリングしやすくなるため、粒子表面積が小さくなり、ひいては排気ガスとの接触面積が小さくなって、活性が弱まるという問題が残るからである。しかも、排気ガス通過時の圧力損失も大きくなるという問題も懸念される。
【0106】
上記触媒としては、貴金属元素、元素周期表VIa族の元素、及び、元素周期表VIII族の元素の中から選ばれる元素を担持させることが望ましい。この元素を具体的にあげれば、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、ニッケル(Ni)、コバルト(Co)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、セリウム(Ce)、銅(Cu)、バナジウム(V)、鉄(Fe)、金(Au)、銀(Ag)等があり、これらの中から選ばれる少なくとも1つの単体または化合物を選択すればよい。
【0107】
例えば、化合物として上記元素の組合せによる二元系合金や三元系合金が用いられる。これらの合金は、上述したように助触媒として作用するセリアやランタナのような希土類酸化物とともに用いた方が有利である。こうした触媒担持フィルタ10は被毒劣化(鉛被毒、燐被毒、硫黄被毒)が少なく、かつ熱劣化も小さいので耐久性に優れる。なお、上記元素の組合せによる合金以外にも、他の元素との組み合わせによる化合物(酸化物、窒化物、炭化物)であってもよい。
【0108】
ちなみに、二元系化合物としては、例えば、Pt/Pd、Pt/Rh、Pt/Ni、Pt/Co、Pt/Mo、Pt/W、Pt/Ce、Pt/Cu、Pt/V、Pt/Fe、Pt/Au、Pt/Ag、Pd/Rh、Pd/Ni、Pd/Co、Pd/Mo、Pd/W、Pd/Ce、Pd/Cu、Pd/V、Pd/Fe、Pd/Au、Pd/Ag、Rh/Ni、Rh/Co、Rh/Mo、Rh/W、Rh/Ce、Rh/Cu、Rh/V、Rh/Fe、Rh/Au、Rh/Ag、Ni/Co、Ni/Mo、Ni/W、Ni/Ce、Ni/Cu、Ni/V、Ni/Fe、Ni/Au、Ni/Ag、Co/Mo、Co/W、Co/Ce、Co/Cu、Co/V、Co/Fe、Co/Au、Co/Ag、Mo/W、Mo/Ce、Mo/Cu、Mo/V、Mo/Fe、Mo/Au、Mo/Ag、W/Ce、W/Cu、W/V、W/Fe、W/Au、W/Ag、Ce/Cu、Ce/V、Ce/Fe、Ce/Au、Ce/Ag、Cu/V、Cu/Fe、Cu/Au、Cu/Ag、V/Fe、V/Au、V/Ag、Fe/Au、Fe/Ag、Au/Ag等がある。
【0109】
また、三元系化合物としては、例えば、Pt/Pd/Rh、Pt/Pd/Ni、Pt/Pd/Co、Pt/Pd/Mo、Pt/Pd/W、Pt/Pd/Ce、Pt/Pd/Cu、Pt/Pd/V、Pt/Pd/Fe、Pt/Pd/Au、Pt/Pd/Ag、Pt/Rh/Ni、Pt/Rh/Co、Pt/Rh/Mo、Pt/Rh/W、Pt/Rh/Ce、Pt/Rh/Cu、Pt/Rh/V、Pt/Rh/Fe、Pt/Rh/Au、Pt/Rh/Ag、Pt/Ni/Co、Pt/Ni/Mo、Pt/Ni/W、Pt/Ni/Ce、Pt/Ni/Cu、Pt/Ni/V、Pt/Ni/Fe、Pt/Ni/Au、Pt/Ni/Ag、Pt/Co/Mo、Pt/Co/W、Pt/Co/Ce、Pt/Co/Cu、Pt/Co/V、Pt/Co/Fe、Pt/Co/Au、Pt/Co/Ag、Pt/Mo/W、Pt/Mo/Ce、Pt/Mo/Cu、Pt/Mo/V、Pt/Mo/Fe、Pt/Mo/Au、Pt/Mo/Ag、Pt/W/Ce、Pt/W/Cu、Pt/W/V、Pt/W/Fe、Pt/W/Au、Pt/W/Ag、Pt/Ce/Cu、Pt/Ce/V、Pt/Ce/Fe、Pt/Ce/Au、Pt/Ce/Ag、
Pt/Cu/V、Pt/Cu/Fe、Pt/Cu/Au、Pt/Cu/Ag、Pt/V/Fe、Pt/V/Au、Pt/V/Ag、Pt/Fe/Au、Pt/Fe/Ag、Pt/Au/Ag等がある。
【0110】
加えて、ディーゼル排気ガスのような酸化雰囲気においてもNOxを還元できるNOx選択還元型触媒成分や吸蔵型触媒成分(以下NOx触媒と略記する)を担持すればNOxの還元も可能である。
従来、NOx触媒とは、ゼオライト(沸石)をアルカリ金属元素で一部を置換し、金属元素(Pt、Au、Cu、Ag)を加え、酸化雰囲気中に還元剤を放出することで、NOxをNへ還元するものであるが、最近採用されてきているNOx吸蔵型触媒がNOxの吸蔵、還元だけでなく、活性酸素の放出により、PMの酸化にも役立つことがわかってきており、ディーゼルエンジンの浄化触媒として有益であるため、以下に詳細に説明する。
【0111】
NOx吸蔵型触媒とは、白金(Pt)のような貴金属元素に加えて、活性酸素放出剤としてアルカリ金属元素(元素周期表Ia族)、アルカリ土類金属元素(元素周期表IIa族の元素)、希土類元素(元素周期表IIIb族)、遷移金属元素の中から選ばれる元素を担持させているものをいう。
活性酸素放出剤とは、活性酸素を放出することによってパティキュレートの酸化を促進するものであり、好ましくは、周囲に過剰酸素が存在すると酸素を取込んで酸素を保持しかつ周囲の酸素濃度が低下すると保持した酸素を活性酸素の形で放出するものである。
【0112】
上記活性酸素放出剤の元素を具体的にあげれば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、セシウム(Ce)、ベリリウム(Be)、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、ランタン(La)等があり、これらの中から選ばれる少なくとも1つの単体または化合物を選択すればよい。
【0113】
しかし、活性酸素放出剤として効果的に作用させるには、カルシウム(Ca)よりもイオン化傾向の高いアルカリ金属又はアルカリ土類金属を用いることが望ましい。本例では、白金(Pt)とリチウム(Li)の例を用いて説明するが他の貴金属元素、アルカリ金属元素(元素周期表Ia族)、アルカリ土類金属元素(元素周期表IIa族の元素)、希土類元素(元素周期表IIIb族)、遷移金属元素を選択しても同様のメカニズムとなる。
【0114】
ディーゼルエンジンでは、通常空気過剰のもとで燃焼が行われるために、排気ガスは多量の過剰空気を含んでいる。即ち、吸気通路及び燃焼室内に供給された空気と燃料との比を排気ガスの空燃比と称すると、この空燃比はリーンとなっている。また、燃焼室内ではNOが発生するので排気ガス中にはNOが含まれている。さらに、燃料(軽油)中には硫黄(S)が含まれており、燃焼室内で酸素と反応してSOとなる。従って、排気ガス中にはSOが含まれている。
以上のことから、ディーゼルエンジンでは過剰酸素、NO及びSOを含んだ排気ガスがフィルタの排気上流側へ流入することになる。
【0115】
図8(a)〜(c)はフィルタの排気ガス接触面における様子を模式的に表した拡大図である。なお、図8(a)及び(b)において20は白金(Pt)の粒子を示しており、21はリチウム(Li)を含んでいる活性酸素放出剤を示している。
すなわち、流入排気ガスには、大量の過剰酸素があるので、図8(a)に示すように、過剰酸素OはO2―、Oとして白金(Pt)20の表面に付着する。また、流入排気ガス中のNOは、このO2―、Oと反応してNOとなる(2NO+O→2NO)。このようにして生成されたNOの一部は、白金(Pt)上でさらに酸化されながら、活性酸素放出剤内に吸収されて酸化リチウム(LiO)と結合する。その結果、硝酸イオンNOとして活性酸素放出剤に拡散され硝酸リチウム(LiNO)を生成する。
【0116】
このようにして、本実施例では、排気ガスに含まれる有害なNOガスを活性酸素放出剤に吸収し、大気中への放出量を大幅に減少させることができる。
また、一方、上述したように排気ガス中にはSOも含まれており、このSOもNOと同様なメカニズムによって活性酸素放出剤に吸収される。即ち、図8(b)に示すように、過剰酸素OはO2―、Oとして白金(Pt)の表面に付着し、流入排気ガス中のSOは、このO2―、Oと反応してSOとなる(2SO+O→2SO)。このようにして生成されたSOの一部は、白金(Pt)上でさらに酸化されながら、活性酸素放出剤内に吸収されて酸化リチウム(LiO)と結合する。その結果、硫酸イオンSO2―として活性酸素放出剤内で拡散され硫酸リチウム(LiSO)を生成する。このようにして活性酸素放出剤内には、硝酸リチウム(LiNO)及び硫酸リチウム(LiSO)が生成される。
【0117】
排気ガス中のPM22は、図8(c)に示すように、フィルタに担持された活性酸素放出剤の表面上に付着する。この時、PMと活性酸素放出剤との接触面では酸素濃度が低下する。酸素濃度が低下すると活性酸素放出剤の内部において、酸素濃度に差が生じ、活性酸素放出剤内の酸素がPMと活性酸素放出剤との接触面に向けて移動しようとする。その結果、活性酸素放出剤内に形成されている硝酸リチウム(LiNO)がリチウム(Li)と酸素(O)とNOとに分解され、酸素OがPM22と活性酸素放出剤21との接触面に向かい、NOが活性酸素放出剤21から外部に放出される。外部に放出されたNOは白金(Pt)上において酸化され、再び活性酸素放出剤21内に吸収される。もちろん、PMに比べて反応しやすい未燃HC、COと反応し、Nガスとなって放出されることもある。
【0118】
一方、この時、活性酸素放出剤21内に形成されている硫酸リチウム(LiSO)もリチウム(Li)と酸素(O)とSOとに分解され、酸素(O)がPM22と活性酸素放出剤21との接触面に向かい、SOが活性酸素放出剤21から外部に放出される。外部に放出されたSOは白金(Pt)上において酸化され、再び活性酸素放出剤内に吸収される。但し、硫酸リチウム(LiSO)は、安定化しているために、硝酸リチウム(LiNO)に比べて活性酸素を放出し難い。
そのため、硫酸塩を分解させるために、サポート材として、チタニアを含むものを選択すると、触媒の活性を妨げる硫黄成分がセラミック担体から離脱するのを促進することが可能になる。
【0119】
一方、PM22と活性酸素放出剤21との接触面に向かう酸素(O)は硝酸リチウム(LiNO)や硫酸リチウム(LiSO)のような化合物から分解された酸素である。化合物から分解された酸素(O)は高いエネルギを有しており、極めて高い活性を有する。従ってPM22と活性酸素放出剤21との接触面に向かう酸素は活性酸素(O)となっている。また、パティキュレート22を酸化する活性酸素(O)は、活性酸素放出剤21へNO及びSOが吸収される時にも放出される。
【0120】
ところで白金20(Pt)及び活性酸素放出剤21はフィルタの温度が高くなるほど活性化するので単位時間当りに活性酸素放出剤21から放出される活性酸素(O)の量はフィルタの温度が高くなるほど増大する。また、当然のことながら、PM22自身の温度が高いほど酸化除去され易くなる。従ってフィルタ上においてPM22を酸化除去可能な酸化除去可能微粒子量はPM22の温度が高くなるほど増大する。
【0121】
本来、フィルタの再生を100%この活性酸素から行なうことが望ましいのであるが、PMに対して温度が低かったり、活性酸素が低いとどうしてもPMが燃え残ることになる。燃え残ったPM上にPMが蓄積されていくと悪循環に陥るため、最終的には、高温にしてPM自身の温度を上げ、そのものの活性を高めてやる必要が生じる。
【0122】
本発明において、上流部の触媒を下流部の触媒よりも多くしたのは、温度がどうしても下がる傾向の強いフィルタの上流部において、活性酸素の放出を促すことで、低温でもPMの酸化反応を促進させることに特徴がある。
また、上述したように、ディーゼルエンジンの排気ガスは、基本的に酸素過剰の雰囲気にあるため、PMがフィルタに捕集されるときに、そのフィルタ表面にある活性酸素放出剤と接触する。そのため活性酸素放出剤から放出される活性酸素によって、たとえリッチの運転中であっても、酸化反応を引き起こす。
【0123】
PMの酸化反応は、通常、発熱を伴うものであるので、その熱は、排気ガスによる気体伝導に加えて、本願のような熱伝導の高いフィルタの場合はフィルタを形成する固体伝導も相まって、瞬時に伝播し、フィルタ流出側の温度を上昇させることにつながる。
【0124】
よって、このような、NOx吸蔵還元型触媒においても、ヒータの位置に関係なく排気ガス流出側の温度上昇がおこるのである。だから、流出側の触媒の担持量を減少させても、流入側の触媒の担持量を相対的に増加させてやることで、この再生システムは成り立つのである。
【0125】
次に、上記のセラミック担体15を構成する各SiC粒子4の表面にアルミナ膜3、助触媒、触媒をコートする手順を説明する。具体的には、以下に記載する(A)、(B)及び(C)の方法をその順番で実施する。
【0126】
(A) アルミナコート方法
溶液含浸工程
この工程は、セル壁12を構成するセラミック担体15の表面にそれぞれにアルミニウムを含有する金属化合物の溶液、たとえば、硝酸アルミニウムの水溶液などを用いてゾルーゲル法により含浸させることにより、アルミナ膜を被膜するための処理である。
【0127】
上記水溶液のうち、アルミニウム含有化合物の溶液については、出発金属化合物としては、金属無機化合物と金属有機化合物とがある。金属無機化合物としては、Al(NO、AlCl、AlOCl、AlPO、Al(SO、Al、Al(OH)、Alなどが用いられる。なかでも特に、Al(NOやAlClは、アルコール、水などの溶媒に溶解しやすく扱い易いので好適である。
【0128】
金属有機化合物の例としては、金属アルコキシド、金属アセチルアセトネート、金属カルボキシレートがある。具体例としてはAl(OCH、Al(OC、Al(iso−OCなどがある。
上記混合溶液の溶媒としては、水、アルコール、ジオール、多価アルコール、エチレングリコール、エチレンオキシド、トリエタノールアミン、キシレンなどから上記の金属化合物の溶解を考慮し少なくとも1つ以上を混合して使う。
また、溶液を作成するときの触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸を加えることもある。
【0129】
本実施形態において、好ましい金属化合物の例としては、Al(NOをあげることができるが、これらは比較的低温で溶媒に溶解し、原料溶液の作製が容易である。また、好ましい溶媒の例としては、1,3−ブタンジオールが挙げられる。第1の理由は、粘度が適当であり、ゲル状態でSiC粒子4上に適当な厚みのゲル膜をつけることが可能だからである。第2の理由は、この溶媒は、溶液中で金属アルコキシドを形成するので酸素・金属・酸素の結合からなる金属酸化物重合体、即ち金属酸化物ゲルの前駆体を形成しやすいからである。
【0130】
Al(NOの量は10〜50wt%であることが好ましい。その理由は、10wt%未満だと触媒の活性を長時間維持するだけの表面積をもつアルミナ量を担持することができず、50wt%より多いと溶解時に発熱量が多く溶液がゲル化しやすくなってしまうからである。
上記金属化合物の含浸溶液を作製するときの温度は、50〜130℃が望ましい。50℃未満だと溶質の溶解度が低いからであり、一方130℃より高いと反応が急激に進行しゲル化に至るため、塗布溶液として使用できないからである。攪拌時間は1〜9時間が望ましい。この理由は、上記範囲内では溶液の粘度が安定しているからである。
【0131】
本実施形態において重要なことは、上記のようにして調整された金属化合物の溶液を部分的に含浸して、定着させることである。その為に、例えば、容器内にセラミック担体15(フィルタ10)を担持する目的のところ(例えばフィルタ10の一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の2/3離間した箇所までの領域)まで含浸して所定時間おく。それによって、溶液が付着した部分と、付着していない部分とが明確になり、担持部位と非担持部位が設けられる。その後次の乾燥工程に進む。
【0132】
乾燥工程
この工程は、NOなどの揮発成分を蒸発除去し、溶液をゲル化してセラミック粒子表面に固定すると同時に、余分の溶液を除去する処理であって、120〜170℃で2時間程度の加熱を行う。それは、加熱温度が120℃よりも低いと揮発成分が蒸発し難く、一方170℃よりも高いとゲル化した膜厚が不均一になるからである。
【0133】
仮焼成工程
この工程は、残留成分を除去して、アモルファスのアルミナ膜3を形成するための仮焼成の処理であり、300〜500℃の温度に加熱することが望ましい。仮焼成の温度が300℃より低いと残留有機物を除去し難く、一方500℃より高いとAlが結晶化し、その後の熱水処理により、小繊維突起状のベーマイトが形成できなくなるからである。
【0134】
熱水処理工程
この工程では、上述した本実施形態に特有のアルミナ膜3の構造を形作るため、仮焼成したフィルタ10を熱水中へ浸漬する処理を行う。このような熱水処理を行うと、その直後にアモルファスアルミナ膜表面の粒子が解膠作用を受けてゾル状態で溶液中に放出され、また水和によって生じたベーマイト粒子が小繊維状突起となって凝縮し、解膠に対して安定な状態をつくる。
【0135】
即ち、この熱水処理により、各セラミック粒子の表面に個別に付着したアルミナは、小繊維状(針状粒子)となって林立し、いわゆる植毛構造を呈して粗い表面となる。それ故に高い比表面積のアルミナ膜が形成される。
上記熱水処理の温度は50〜100℃が望ましい。50℃より低いとアモルファスアルミナ膜3の水和が進行せず、小繊維突起状のベーマイトを形成しないからである。一方、100℃より高いと水が蒸発し、工程を長時間維持しがたい。処理時間については1時間以上が望ましい。1時間より短いとアモルファスアルミナの水和が不十分になるからである。
【0136】
本焼成工程
この工程では、水和によって生じたベーマイトを膜水させてアルミナ結晶とするための処理を行う。好ましい本焼成の温度は500〜1000℃で、5〜20時間の処理を行う。この温度が500℃より低いと結晶化が進まないからであり、一方、1000℃よりも高いと、結晶が進行しすぎて、表面積が低下する傾向にあるからである。
【0137】
別の担持方法としては、以下の方法もある。
まず、溶液作成方法としては、サポート材の粉末を粉砕機等で微細に粉砕し、サポート材の粉末を溶剤と攪拌し混合することで、溶液を製作する。
具体的には、アルミナ、チタニア、ジルコニア等の酸化物の粉末をゾルゲル法等によって製作する。このとき、触媒のコート層として用いるために出来るだけ高い比表面積を有したものであることがよく、望ましくは250m/g以上の高い比表面積値を有するものを選択することが望ましい。比表面積が高いことからγ―アルミナを選択することが望ましい。また、硫黄の分解反応を促進させるため、チタニアを加えることが望ましい。
【0138】
これらの粉末に、水和アルミナ、アルミナゾル、シリカゾルのような、無機質のバインダを加えたり、純水、水、アルコール、ジオール、多価アルコール、エチレングリコール、エチレンオキシド、トリエタノールアミン、キシレンなどの溶媒を、5〜20wt%程度加え、粉砕して攪拌する。
実際サポート材として用いられる酸化物が500nm以下程度になるまで粉砕を行なう。細かく粉砕することでセル壁12の表層にコートされた従来技術のウオッシュコートによる触媒コート層13とは異なり、粒子上に均一にアルミナ膜3を形成することができる。
【0139】
上記金属酸化物の粉末入り溶液を、先述したように、部分的に含浸する。
これを、110〜200℃で2時間程度の加熱を行って乾燥させた後、本焼成を行なう。好ましい本焼成の温度は500〜1000℃で、1〜20時間の処理を行う。この温度が500℃より低いと結晶化が進まないからであり、一方、1000℃よりも高いと、結晶が進行しすぎて、表面積が低下する傾向にあるからである。また、これらの工程前後の重量を測定することで、担持量を計算することができる。
【0140】
なお、アルミナ含浸を行う前に、SiC粒子4の各々の表面に、アルミナとの化学的な結合を助成するために必要な量のSiを提供すべく、800〜1600℃で5〜100時間加熱して酸化する処理を行ってもよい。このようにすることで、Siを供給するのに十分なSiOを表面に形成することができ、かつ、セラミック担体15の気孔率、気孔径を殆ど変化させないので、圧力損失特性を損なうことがないからである。
【0141】
(B) 助触媒、NOx触媒を担持する方法
溶液含浸工程
この工程は、セル壁12を構成するセラミック担体15の表面にそれぞれに希土類元素を含有する金属化合物の溶液、たとえば、硝酸セリウム、酢酸リチウムの水溶液などを用いてゾルーゲル法により含浸させることにより、希土類酸化物膜、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類元素、及び、遷移金属元素を含む膜を被膜するための処理である。
上記水溶液のうち、セリウム含有化合物の溶液については、Ce(NO、CeCl、Ce(SO、CeO、Ce(OH)、Ce(COなどが用いられる。
【0142】
上記混合溶液の溶媒としては、水、アルコール、ジオール、多価アルコール、エチレングリコール、エチレンオキシド、トリエタノールアミン、キシレンなどから上記の金属化合物の溶解を考慮し少なくとも1つ以上を混合して使う。
また、溶液を作成するときの触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、フッ酸を加えることもある。
さらに、アルミナ膜3の耐熱性を向上するために、希土類酸化物の他に、Li、K、Ca、Sr、Ba、La、Pr、Nd、Si、Zrの単体及び化合物を出発原料に添加してもよい。
【0143】
本実施形態において、好ましい金属化合物の例としては、Ce(NOをあげることができるが、これらは比較的低温で溶媒に溶解し、原料溶液の作製が容易である。また、好ましい溶媒の例としては、エチレングリコールを推奨する。その理由は、粘度が適当であり、SiC粒子4上に適当な厚みのゲル膜をつけることが可能だからである。
Ce(NOの量は1〜30wt%であることが好ましい。その理由は、1wt%未満だとスス酸化を促進することができず、30wt%より多いと焼成後CeOの粒成長が起こるからである。
【0144】
Al(NOとCe(NOとの配合割合は、10:2となるように設定することが好ましい。その理由は、Al(NOをリッチにすることで、焼成後のCeO粒子の分散度を向上できるからである。
上記金属化合物の含浸溶液を作製するときの温度は、50〜130℃が望ましい。50℃未満だと溶質の溶解度が低いからであり、一方130℃より高いと反応が急激に進行し不均一溶液となって使用できないからである。攪拌時間は1〜9時間が望ましい。この理由は、上記範囲内では溶液の粘度が安定しているからである。
【0145】
上記のセリウム含有金属化合物Ce(NOについては、上述した例の他、ジルコニウムとの複合酸化物または固溶体を生成させるために、ジルコニウム源として、例えばZrO(NOやZrOを用い、これらを水やエチレングリコールに溶解して混合溶液とし、その混合溶液に含浸させた後、乾燥、焼成することにより、上記複合酸化物を得るようにすることが好ましい。
【0146】
本実施形態において重要なことは、上記のようにして調整された金属化合物の溶液を部分的に含浸して、定着させることである。その為に、例えば、容器内にセラミック担体15(フィルタ10)を担持する目的のところ(例えばフィルタ10の一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の2/3離間した箇所までの領域)まで含浸して所定時間おく。それによって、溶液が付着した部分と、付着していない部分が明確になり、担持部位と非担持部位が設けられる。その後次の乾燥工程に進む。
【0147】
乾燥工程
この工程は、NOなどの揮発成分を蒸発除去し、溶液をセラミック粒子表面に分散して固定すると同時に、余分の溶液を除去する処理であって、120〜170℃で2時間程度の加熱を行う。それは、加熱温度が120℃よりも低いと揮発成分が蒸発し難く、一方170℃よりも高いと分散が不均一になるからである。
【0148】
焼成工程
この工程は、残留成分を除去して、アルミナ膜3にCeOを形成するための焼成の処理であり、窒素雰囲気中で、500〜800℃の温度で1〜2時間加熱することが望ましい。仮焼成の温度が500℃より低いと残留有機物を除去し難く、一方800℃より高いと粒成長が起こるからである。
【0149】
(C) 触媒(活性成分)の担持
SiCセラミック担体15(フィルタ10)の表面に、例えば、希土類酸化物含有アルミナ膜3を被覆し、そのアルミナ膜3の凹凸状表面に対してPtなどの活性成分を担持する。この場合、活性成分の担持量は、Pt等を含む水溶液を担体の吸水量だけ浸して、表面がわずかに濡れ始める状態になるようにして決定する。
【0150】
例えば、SiCセラミック担体15が保持する吸水量というのは、乾燥担体の吸水量測定値を22.46wt%とし、この担体の質量が110g、容積が0.163lを有するものであれば、この担体は24.7g/lの水を吸水する。
ここで、Ptの出発物質としては、例えばジニトロジアンミン白金硝酸溶液([Pt(NH(NO]HNO、Pt濃度4.53wt%)を使用する。所定の量1.7g/lのPtを、フィルタ10の全体に担持させるためには、担体に1.7(g/l)×0.163(l)=0.272gのPtを担持すれば良いので、蒸留水によりジニトロアンミン白金硝酸溶液(Pt濃度4.53wt%)を希釈する。即ち、ジニトロジアンミン白金硝酸溶液(Pt濃度4.53wt%)/蒸留水の重量比率X(%)は、X=0.272(Pt量g)/24.7(含水量g)/4.53(Pt濃度wt%)で計算され、24.8wt%となる。
【0151】
液含浸工程
上記のようにして調整した所定量のジニトロジアンミン白金硝酸水溶液を、目的のフィルタ10の担持させたい量に調整してパレットに注ぐ。例えばフィルタ10の一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の2/3離間した箇所までの領域まで吸水させる場合は、濃度を上記条件(24.8wt%)として、水溶液の量を24.8×2/3=16.47g/lとして、2/3まで吸水させる所定時間おく。それによって、溶液が付着した部分と、付着していない部分とが明確になる。そして、SiC担体15を覆うアルミナ担持膜表面にPtを均一に分散固定化させる。
【0152】
乾燥、焼成工程
水溶液を浸した担体15は、110℃、2時間程度の処理にて乾燥して水分を除去したのち、窒素雰囲気中で、約500℃で1時間程度の条件の下で焼成を行いPtの金属化を図る。
本実施形態では、白金等の活性成分の担持には、吸水させて白金を担持させたが、溶液の所定位置に固定し所定時間含浸して、目標位置まで担持させる含浸法、蒸発乾固法、平衡吸着法、インシピアント・ウエットネス法あるいはスプレー法を用いてもよい。
以上の工程でセラミック担体15にサポート材、助触媒、NOx吸蔵型触媒、触媒が担持される。
このときに、それぞれの担持する高さ(フィルタ10を流れる排気ガスの方向に沿った長さ)については、特に、限定はされないが、触媒のつける高さに他のものすべてを合わせることが望ましい。なぜなら、サポート材、助触媒、NOx吸蔵型触媒、触媒がすべて合わさると、相乗効果を持って、再生効果を増すし、必要ない所には、省くことで圧力損失を低くしたり、原料の無駄を無くしコスト低減につながるからである。
【0153】
従って、本実施形態によれば以下のような効果を得ることができる。
本実施形態にかかる触媒担持フィルタ10は、ハニカムを交互に目封じしたディーゼルパティキュレートフィルタ(DPF)として用いられる。
このDPF自体ではをセル壁12で捕集する機能しか持たないが、これに触媒を担持することにより、排気ガス中の炭化水素、一酸化炭素を酸化することができる。
【0154】
また、ディーゼル排気ガスのような酸化雰囲気においてもNOxを還元できるNOx選択還元型触媒成分や吸蔵型触媒成分を担持すればNOxの還元も可能である。なお、このDPF中に捕集される上記PMは、堆積とともに上記DPFの圧力損失の増加を招くため、通常は燃焼処理などにより除去して再生する必要がある。通常のディーゼル排気ガス中に含まれるPMの主成分であるスス(炭素)の燃焼が開始される温度は約550〜630℃である。この点、触媒活性成分をDPFに担持すると、そのススの燃焼反応パスが変わり、エネルギー障壁を低くすることができ、ひいては燃焼温度を300〜400℃と大幅に低下させることができ、再生に要するエネルギーを削減でき、いわゆる上述したセリアの作用とも相まって、再生効率の高いDPFシステムを構築できるようになる。
【0155】
しかし、触媒活性成分として頻繁に用いられる貴金属触媒は、およそ800℃を境にして急速にシンタリングして、再生率を下げることがわかった。本来、触媒の効果を発揮させるためには、高温で再生させるのが効果的ではあるが、製造初期段階の効果を持続させて、何度も再生させるためには800℃を越えない値に制御することが特に要求されることが明確になった。先述したようにスス(炭素)の燃焼が開始される温度は約550〜630℃である。この事も考慮に入れると、フィルタ10の温度を600〜750℃に制御してやることが最も効果的である。
【0156】
本実施形態において、一方の端部側に触媒を所定量担持し、他方の端部に向かうに従って、相対的に触媒を少なく担持したことを特徴とする触媒つきフィルタ10を用いて再生試験を行った結果、フィルタの温度を600〜750℃に制御して再生することが可能となり、ある程度再生を繰り返した後のススの再生率が変わらない事実に到達した。
これに加えて、触媒として用いられる貴重な資源である貴金属等の無駄使いを防止し、コストを安くすることと並んで、圧力損失を下げた触媒つきフィルタ10を作り出すという効果も得ることとなった。
【実施例】
【0157】
以下、実施例及び比較例により、本発明をより詳細に説明する。
第一実施例では、フィルタに、アルミナ、白金、セリアをコートした後、ヒータを用いて再生した。実施の条件及び特性については図10の表に示す。すべてフィルタ10は、SiC製のハニカムフィルタを用いて、セル構造は14/200、気孔率42%、平均気孔径10μmのものを使用し、触媒等を担持した場合、単位体積当たりのアルミナ量(8g/L)、セリア量(2g/L)、Pt量(1.7g/L)は同じとなるように調整した。
【0158】
なお、この実施例は、セラミック担体15のSiC粒子4の表面にアルミナ膜(8g/L)3を有するものである。
実施例1−1は、フィルタ10の一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の2/3(67%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、アルミナ、セリア、Ptをコートしたものである。実施例1−2は、同様に1/2(50%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、アルミナ、セリア、Ptをコートしたものである。実施例1−3は、同様に4/5(80%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、アルミナ、セリア、Ptをコートしたものである。
【0159】
また、比較例1−1は、セラミック担体15の一方の端面から他方の端面まで(100%)を触媒担持部位とし、アルミナ、セリア、Ptをコートしたものである。試験例1−1は、セラミック担体15の一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の1/3(33%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、アルミナ、セリア、Ptをコートしたものである。比較例1−2はフィルタ10のすべての領域を触媒非担持部位としたもの、即ち、アルミナ、セリア、白金を何もコートしないものである。
【0160】
再生方法としては、図11に示すように、内燃機関としてのディーゼルエンジン102から延びる排気通路104の途中には、排気ガス浄化装置101が設置されている。各排気ガス浄化装置101はケーシング105を備え、その内部は排気ガス浄化用ハニカムフィルタ10が収容されている。このフィルタ10は、前述した触媒つきフィルタ10からなり、排気ガス流入側に相対的に触媒が多く担持されている側の端部を向け、流出側に相対的に触媒が少なく担持または担持されていない側の端部を向けた状態で設置されている。また、フィルタ10の外周面とケーシング105の内周面との間には、断熱材層107が配設されている。断熱材層107はセラミックファイバを含んで形成されたマット状物であり、その厚さは1mm〜50mmである。
【0161】
ケーシング105内には、フィルタ10を加熱する電気ヒータ108が設けられている。各電気ヒータ108は、フィルタ10のガス流入側端面に近接して配置された渦巻き状をなす抵抗加熱ヒータであり、車載された図示しないバッテリーから電力が供給される。電気ヒータ108の形状は、渦巻きに限定されるものではない。
そして、ディーゼルエンジン102から排出される排気ガスは、排気通路104を通ってフィルタ10を通過する。このとき、フィルタ10によって排気ガス中に含まれるパティキュレートが捕集されることにより、排気ガスは浄化される。
【0162】
今回、フィルタ10の排気ガス流入側端面より10mm、75mm、140mmの3箇所にハニカム温度を測定するための熱電対を取り付けた。また、ディーゼルエンジン102から延びる排気通路104の途中の、排気ガス浄化装置101の前に図示しない圧力センサを取り付けた。
次に、このディーゼルエンジン102を50N・mの負荷状態で、エンジンの回転数を3000rpmに設定して運転を行い、フィルタ10内にPMを8g/L捕集した。
【0163】
ここで、圧力センサにより背圧を測定した結果を図12のグラフに示した。図12から、実施例、比較例を比較すると、実施例1−1、1−2、1−3、試験例1−1では部分的にアルミナ等の触媒コート層2がないために、比較例1−1よりも比較例1−2に近く、低い圧力損失特性を示すことがわかる。
【0164】
次に、電気ヒータ108で、フィルタ10の加熱を開始し、このときのフィルタ10内の温度変化を熱電対により測定した。図13には、実施例1−1の温度変化をグラフに代表として示し、まとめたものを図14の表に示した。
これらの結果から、実施例1−1、1−2、1−3及び比較例1−1では、フィルタ10内の温度が、前方では、黒鉛の燃焼開始温度である600℃にまで速やかに上昇しており、後方でも、700℃近くまで上昇し、触媒が無くてもフィルタ10の再生が充分に行われていることが明らかとなった。しかし、試験例1−1及び比較例1−2では、温度が上昇せずに再生が不十分であった。実際重量測定を行い再生率を求めた結果は、図15に示す表のようになった。このことから、触媒は片端面からフィルタ全長の1/2以上の位置に担持する必要があることがわかる。
【0165】
ここで、上記再生を連続的に10回繰り返し、その再生率を求めた結果は図16の表、図17のグラフのようになった。このことからも、10回程度繰り返した使用する場合は、端面からフィルタ全長の1/2以上の位置に、触媒を担持すれば充分であることがわかった。
【0166】
また、および1回目の使用時及び10回目の使用時における実施例、比較例、試験例に係るフィルタの圧力損失を測定し、その結果を図21に表した。
図21に示すように、比較例、試験例に係るフィルタでは、1回目の圧力損失と10回目の圧力損失とが大きく異なるのに対して、実施例に係るフィルタでは、顕著な相異が見られないことがわかる。従って、実施例に係るフィルタは、繰り返し使用した場合であっても、圧力損失が大きくならないことがわかった。
【0167】
第二実施例では、フィルタに、アルミナ、白金、セリアをコートした後、ヒータを用いずに、ディーゼルエンジンの運転をポストインジェクション方式に切り替えて再生した。実施の条件及び特性については、図22の表に示す。
フィルタとしては、SiC製のハニカムフィルタを用いて、セル構造は12/300、気孔率50%、平均気孔径10μmのものを使用し、触媒等を担持した場合、単位体積当たりのアルミナ量(60g/L)、セリア量(5g/L)、Pt量(2g/L)は同じとなるように調整した。
【0168】
なお、この実施例は、セラミック担体15のSiC粒子4の表面にアルミナ膜(60g/L)3を有するものである。
ここで、実施例2−1は、フィルタ10の一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の2/3(67%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、実施例2−2は、同様に1/2(50%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、実施例2−3は、同様に4/5(80%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、それぞれアルミナ、セリア、Ptをコートしたものである。
【0169】
また、比較例2−1は、セラミック担体15の一方の端面から他方の端面まで(100%)を触媒担持部位とし、試験例2−1は、他方の端面に向かってフィルタ全長の1/3(33%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、アルミナ、セリア、Ptをコートしたものである。比較例2−2はフィルタ10のすべての領域を触媒非担持部位としたもの、即ち、アルミナ、セリア、白金を何もコートしないものである。
【0170】
そして、第一実施例の場合と同様に図11に示すような排気ガス浄化装置を用いて、フィルタ10内の温度変化を熱電対により測定したものを図23の表に示した。
これらの結果から、実施例2−1、2−2、2−3及び比較例2−1では、フィルタ10内の温度が、前方では、黒鉛の燃焼開始温度である600℃にまで速やかに上昇しており、後方でも、650℃近くまで上昇し、触媒が無くてもフィルタ10の再生が充分に行われていることが明らかとなった。しかし、試験例2−1及び比較例2−2では、温度が上昇せずに再生が不十分であった。実際重量測定を行い再生率を求めた結果は、図24に示す表のようになった。このことから、触媒は片端面からフィルタ全長の1/2以上の位置に担持する必要があることがわかる。なお、このとき再生率を高くするため、再生時間を長めに設定した。
【0171】
ここで、上記再生を連続的に10時間行い、その再生率を求めた結果は図25の表、図26のグラフのようになった。このことからも、10時間繰り返して使用する場合は、端面からフィルタ全長の1/2以上の位置に、触媒を担持すれば充分であることがわかった。
【0172】
また、使用開始時及び使用開始から500時間経過後おける実施例、比較例、試験例に係るフィルタの圧力損失を測定し、その結果を図27に表した。
図27に示すように、比較例、試験例に係るフィルタでは、開始時の圧力損失と500時間経過後の圧力損失とが大きく異なるのに対して、実施例に係るフィルタでは、顕著な相異が見られないことがわかる。従って、実施例に係るフィルタは、繰り返し使用した場合であっても、圧力損失が大きくならないことがわかった。
【0173】
第三実施例では、フィルタに、アルミナ、白金、酸化リチウムをコートした後、ヒータを用いずに排気ガスの熱のみにより着火した。なお、このとき、途中で空燃比を変えて再生を行った。実施の条件及び特性については、図28の表に示す。
フィルタとしては、SiC製のハニカムフィルタを用いて、セル構造は14/200、気孔率65%、平均気孔径20μmのものを使用し、触媒等を担持した場合、単位体積当たりのアルミナ量(200g/L)、酸化リチウム量(2mol/L)、Pt量(2.0g/L)は同じとなるように調整した。
なお、気孔率65%のハニカムフィルタを製造する際、アクリル粒子からなる造孔剤を添加し、気孔率の調整を行った。
【0174】
この実施例は、セラミック担体15のSiC粒子4の表面にアルミナ膜(200g/L)3を有するものである。
ここで、実施例3−1は、フィルタ10の一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の2/3(67%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、実施例3−2は、同様に1/2(50%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、実施例3−3は、同様に4/5(80%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、それぞれアルミナ、酸化リチウム、Ptをコートしたものである。
【0175】
また、比較例3−1は、セラミック担体15の一方の端面から他方の端面まで(100%)を触媒担持部位とし、試験例3−1は、他方の端面に向かってフィルタ全長の1/3(33%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、アルミナ、酸化リチウム、Ptをコートしたものである。比較例3−2はフィルタ10のすべての領域を触媒非担持部位としたもの、即ち、アルミナ、酸化リチウム、白金を何もコートしないものである。
【0176】
そして、第一実施例の場合と同様に図11に示すような排気ガス浄化装置を用いて、フィルタ10内の温度変化を熱電対により測定したものを図29の表に示した。
これらの結果から、実施例3−1、3−2、3−3及び比較例3−1では、フィルタ10内の温度が、前方では、黒鉛の燃焼開始温度である500℃にまで速やかに上昇しており、後方でも、600℃近くまで上昇し、触媒が無くてもフィルタ10の再生が充分に行われていることが明らかとなった。しかし、試験例3−1及び比較例3−2では、温度が上昇せずに再生が不十分であった。
【0177】
また、使用開始時及び使用開始から500時間経過後における実施例、比較例、試験例に係るフィルタの圧力損失を測定し、その結果を図30に表した。
図30に示すように、比較例、試験例に係るフィルタでは、使用開始時の圧力損失と500時間経過後の圧力損失とが大きく異なるのに対して、実施例に係るフィルタでは、顕著な相異が見られないことがわかる。従って、実施例に係るフィルタは、繰り返し使用した場合であっても、圧力損失が大きくならないことがわかった。
【0178】
第四実施例では、フィルタに、アルミナ、チタニア、白金、酸化リチウムをコートした後、ヒータを用いずに排気ガスの熱のみにより着火し、再生を行った。実施の条件及び特性については、図31の表に示す。
フィルタとしては、SiC製のハニカムフィルタを用いて、セル構造は14/200、気孔率65%、平均気孔径20μmのものを使用し、触媒等を担持した場合、単位体積当たりのアルミナ量(150g/L)、チタニア量(50g/L)、Pt量(2.0g/L)、酸化リチウム量(2mol/L)、は同じとなるように調整した。
【0179】
なお、この実施例は、セラミック担体のSiC粒子の表面にアルミナ膜(150g/L)、チタニア膜(50g/L)を有するものである。
ここで、実施例4−1は、フィルタ10の一方の端面から他方の端面に向かってフィルタ全長の2/3(67%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、実施例4−2は、同様に1/2(50%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、実施例4−3は、同様に4/5(80%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、それぞれアルミナ、チタニア、Pt、酸化リチウムをコートしたものである。
【0180】
また、比較例4−1は、セラミック担体15の一方の端面から他方の端面まで(100%)を触媒担持部位とし、試験例4−1は、他方の端面に向かってフィルタ全長の1/3(33%)離間した箇所までの領域を触媒担持部位とし、アルミナ、チタニア、Pt、酸化リチウムをコートしたものである。
【0181】
そして、第一実施例の場合と同様に図11に示すような排気ガス浄化装置を用いて、使用開始時及び使用開始から500時間経過後における実施例、比較例、試験例に係るフィルタの圧力損失を測定し、その結果を図32に表した。
図32に示すように、比較例、試験例に係るフィルタでは、使用開始時の圧力損失と500時間経過後の圧力損失とが大きく異なるのに対して、実施例に係るフィルタでは、顕著な相異が見られないことがわかる。従って、実施例に係るフィルタは、繰り返し使用した場合であっても、圧力損失が大きくならないことがわかった。
【0182】
なお、本発明の実施形態は以下のように変更してもよい。
・フィルタ10を濃度差をつけたい向きに立てて、ゆっくり乾燥して重力により濃度差をつけてもよい。
【0183】
・本実施形態では、アルミナ、セリア、白金等を別々に担持したが、それぞれを同じ溶液にして担持してもよい。ただし、シンタリングを防止するために窒素雰囲気下で焼成したほうがよい。
【0184】
・本実施形態では、フィルタ担体15としてハニカム構造のセラミックフィルタを用いたが、これに限定されることなく、セラミックフォームや、メッシュ状の構造をもつフィルタを用いたり、金属、合金製等のフィルタを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】(a)は一実施形態における触媒つきフィルタの概略図であり、(b)はその断面図である。
【図2】触媒つきフィルタの一部分を示す拡大斜視図である。
【図3】(a)は本実施形態のアルミナ膜の概念図であり、(b)はSiC粒子の一部分を拡大して示した図である。
【図4】圧力損失特性の説明図である。
【図5】(a)は実施形態の触媒つきフィルタを示す断面図であり、(b)〜(d)は別の実施形態の触媒つきフィルタを示す図である。
【図6】(a)はウオッシュコートアルミナ層の概念図であり、(b)は(a)の一部分を拡大した概念図である。
【図7】(a)〜(c)はDPFの再生特性に影響するススの酸化特性の比較グラフである。
【図8】(a)〜(c)はNOxの吸蔵作用を説明するための概念図である。
【図9】DPFの再生率の比較グラフである。
【図10】第一実施例における実施例、比較例及び試験例の気孔率等を示す表である。
【図11】排気ガス浄化システムを示す概略図である。
【図12】第一実施例の実施例、比較例及び試験例におけるスス捕集持の圧力損失の比較グラフである。
【図13】第一実施例の実施例1−1におけるDPF再生の温度グラフである。
【図14】第一実施例における再生時のフィルタ温度を示す表である。
【図15】第一実施例における1回目の再生率の結果を示す表である。
【図16】第一実施例におけるDPFの再生繰り返しによる再生率の変化を示す表である。
【図17】第一実施例におけるDPFの再生繰り返しによる再生率の変化を示すグラフである。
【図18】一般的な、排気ガス浄化装置を示す概略図である。
【図19】DPFの再生繰り返しによる再生率の変化を示したグラフである。
【図20】DPFの再生時における温度変化を示したグラフである。
【図21】第一実施例におけるDPFの再生回数と圧力損失との関係を示したグラフである。
【図22】第二実施例の実施例、比較例及び試験例の気孔率等を示す表である。
【図23】第二実施例における捕集1時間後の圧力損失と再生時のフィルタ温度とを示す表である。
【図24】第二実施例における使用開始時の再生率の結果を示す表である。
【図25】第二実施例におけるDPFの再生繰り返しによる再生率の変化を示す表である。
【図26】第二実施例におけるDPFの再生繰り返しによる再生率の変化を示すグラフである。
【図27】第二実施例におけるDPFの再生時間と圧力損失との関係を示したグラフである。
【図28】第三実施例の実施例、比較例及び試験例の気孔率等を示す表である。
【図29】第三実施例における再生時のフィルタ温度を示す表である。
【図30】第三実施例におけるDPFの再生時間と圧力損失との関係を示したグラフである。
【図31】第四実施例の実施例、比較例及び試験例の気孔率等を示す表である。
【図32】第四実施例におけるDPFの再生時間と圧力損失との関係を示したグラフである。
【符号の説明】
【0186】
2 触媒コート層
3 サポート材(アルミナ膜)
4 SiC粒子
10 触媒つきフィルタ
11 貫通孔
12 セル壁
14 封止体
101 ディーゼルエンジン
102 排気通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セル壁により区画された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の両端部が封止体によって交互に目封止されるとともに、セル壁表面にはサポート材と触媒が担持されたセラミックフィルタであって、
前記セラミックフィルタの前記セル壁表面には、一方の端部側にサポート材が所定量担持され、他方の端部に向かうに従って、相対的にサポート材が少なく担持されており、
さらに、前記セラミックフィルタには、触媒担持部位が設けられていることを特徴とする触媒つきフィルタ。
【請求項2】
セル壁により区画された複数の貫通孔を有するハニカム構造体の両端部が封止体によって交互に目封止されるとともに、セル壁表面にはサポート材と触媒が担持されたセラミックフィルタであって、
前記セラミックフィルタの前記セル壁表面には、一方の端部側にサポート材が所定量担持され、他方の端部に向かうに従って、相対的にサポート材が少なく担持されており、
さらに、サポート材が相対的に多く担持された端部と同じ側の端面からサポート材が相対的に少なく担持された端部と同じ側の端面に向かって所定長さ離間した箇所までの領域に、触媒担持部位が設けられ、当該箇所から他方の端面に到る領域に、触媒非担持部位が設けられたことを特徴とする触媒つきフィルタ。
【請求項3】
サポート材が相対的に多く担持された端部と同じ側の端面からサポート材が相対的に少なく担持された端部と同じ側の端面に向かってフィルタ全長の1/2〜4/5だけ離間した箇所までの領域にサポート材が担持されている請求項1又は2に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項4】
前記触媒担持部位は、サポート材が相対的に多く担持された端部と同じ側の端面からサポート材が相対的に少なく担持された端部と同じ側の端面に向かってフィルタ全長の1/2〜4/5だけ離間した箇所までの領域に設けられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項5】
前記サポート材は、アルミナ、ジルコニア、チタニア及びシリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項6】
前記サポート材は、針状アルミナで構成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項7】
前記サポート材担持部位と前記触媒担持部位が、同じ部位であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項8】
前記触媒は、貴金属元素、元素周期表VIa族の元素、及び、元素周期表VIII族の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項9】
前記触媒は、アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、希土類元素、及び、遷移金属元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項10】
前記触媒は、NOx選択還元型触媒成分及び/又はNOx吸蔵型触媒成分であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項11】
前記NOx吸蔵型触媒成分は、貴金属元素に加えて、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類、及び、遷移金属の元素からなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含むもので構成されていることを特徴とする請求項10に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項12】
前記触媒は、助触媒であることを特徴とする請求項1〜9のいずれか1項に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項13】
前記フィルタは珪素を含有するセラミック多孔質体で構成されていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか1項に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項14】
前記フィルタは炭化珪素、窒化珪素、コーディエライト、ムライト、サイアロン、シリカからなる群から選ばれる少なくとも1種を含む多孔質体で構成されていることを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の触媒つきフィルタ。
【請求項15】
アルミニウムを含有する金属化合物の溶液に含浸領域をずらしながらフィルタを含浸し、乾燥させることによって、一方の端部側にサポート材を所定量担持させ、他方の端部に向かうに従って、相対的にサポート材を少なく担持させることを特徴とする触媒つきフィルタの製造方法。
【請求項16】
アルミニウムを含有する金属化合物の溶液に含浸領域をずらしながらフィルタを何度か重ねて含浸することを特徴とする請求項15に記載の触媒つきフィルタの製造方法。
【請求項17】
アルミニウム濃度の異なる金属化合物の溶液に含浸領域をずらしながらフィルタを含浸することを特徴とする請求項15に記載の触媒つきフィルタの製造方法。
【請求項18】
アルミニウムを含有する金属化合物の溶液に含浸領域をずらしながらフィルタを含浸する溶液含浸工程と、含浸後のフィルタを乾燥する乾燥工程と、乾燥後のフィルタを300〜500℃以上の温度に加熱焼成することによりアモルファスアルミナ膜を形成する仮焼成工程と、仮焼成後のフィルタを熱水中に浸漬処理したのち乾燥する熱水処理工程と、熱水処理後のフィルタを500〜1200℃にて本焼成する本焼成工程とを含む方法によって、フィルタにアルミナサポート材をつけることを特徴とする触媒つきフィルタの製造方法。
【請求項19】
アルミニウムを含有する金属化合物の溶液に含浸領域をずらしながらフィルタを含浸する溶液含浸工程と、含浸後のフィルタを乾燥する乾燥工程と、乾燥後のフィルタを窒素雰囲気で500〜800℃に加熱焼成することにより、希土類酸化物膜を形成する焼成工程とを含む方法によって、フィルタに希土類酸化物膜をつけることを特徴とする請求項15〜18のいずれか1項に記載の触媒つきフィルタの製造方法。
【請求項20】
アルミニウムを含有する金属化合物の溶液にフィルタを含浸し、含浸後のフィルタを立てて乾燥させることによって、一方の端部側にサポート材を所定量担持させ、他方の端部に向かうに従って、相対的にサポート材を少なく担持させることを特徴とする触媒つきフィルタの製造方法。
【請求項21】
アルミニウムを含有する金属化合物の溶液にフィルタを含浸する溶液含浸工程と、含浸後のフィルタを立てて乾燥させる乾燥工程と、乾燥後のフィルタを300〜500℃以上の温度に加熱焼成することによりアモルファスアルミナ膜を形成する仮焼成工程と、仮焼成後のフィルタを熱水中に浸漬処理したのち乾燥する熱水処理工程と、熱水処理後のフィルタを500〜1200℃にて本焼成する本焼成工程とを含む方法によって、フィルタにアルミナサポート材をつけることを特徴とする触媒つきフィルタの製造方法。
【請求項22】
アルミニウムを含有する金属化合物の溶液にフィルタを含浸する溶液含浸工程と、含浸後のフィルタを立てて乾燥させる乾燥工程と、乾燥後のフィルタを窒素雰囲気で500〜800℃に加熱焼成することにより、希土類酸化物膜を形成する焼成工程とを含む方法によって、フィルタに希土類酸化物膜をつけることを特徴とする請求項20又は21に記載の触媒つきフィルタの製造方法。
【請求項23】
ディーゼルエンジンの排気通路に、請求項1〜14のいずれか1つのフィルタが、排気ガス流入側にサポート材が相対的に多く担持された端部を向け、流出側にサポート材が相対的に少なく担持された端部を向けた状態で設置されていることを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項24】
ディーゼルエンジンの排気通路に、請求項1〜14のいずれか1つのフィルタが、排気ガス流入側にサポート材が相対的に多く担持された端部を向け、流出側にサポート材が相対的に少なく担持された端部を向けた状態で設置されていて、前記フィルタの排気ガス流入側にヒータを設置し、ヒータを用いて再生することを特徴とする排気ガス浄化システム。
【請求項25】
ポストインジェクション方式によるディーゼルエンジンの排気通路に、請求項1〜14のいずれか1つのフィルタが、排気ガス流入側にサポート材が相対的に多く担持された端部を向け、流出側にサポート材が相対的に少なく担持された端部を向けた状態で設置されていることを特徴とする排気ガス浄化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【公開番号】特開2009−22953(P2009−22953A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215522(P2008−215522)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【分割の表示】特願2002−210300(P2002−210300)の分割
【原出願日】平成14年7月18日(2002.7.18)
【出願人】(000000158)イビデン株式会社 (856)
【Fターム(参考)】