触媒劣化の診断装置
【課題】EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することのできる触媒劣化の診断装置を提供する。
【解決手段】EGR実施時に触媒劣化有りと診断されるCmaxよりも、EGR非実施時に触媒劣化有りと診断されるCmaxの方が大きくなるように、EGR実施時、非実施時とで劣化判定値を異ならせるようにすることで、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことを可能とした。
【解決手段】EGR実施時に触媒劣化有りと診断されるCmaxよりも、EGR非実施時に触媒劣化有りと診断されるCmaxの方が大きくなるように、EGR実施時、非実施時とで劣化判定値を異ならせるようにすることで、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことを可能とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載等の内燃機関の排気通路に設置される触媒には、酸素吸蔵能を有したものがある。こうした触媒は、触媒に流入する排気の空燃比が理論空燃比よりもリーンとなると、排気中の過剰酸素を吸着保持し、触媒に流入する排気の空燃比が理論空燃比よりもリッチとなると、吸着保持した酸素を放出する特性を有している。こうした触媒では、運転状況に応じて実際の空燃比が理論空燃比から多少ぶれたとしても、触媒の酸素吸蔵/放出作用により、空燃比のずれを吸収して排気浄化効率を維持することが可能である。
【0003】
こうした触媒の劣化は、その酸素吸蔵容量、すなわち最大限吸蔵可能な酸素の量の低下から診断することができる。触媒の酸素吸蔵容量は、Cmax法により測定することができる。Cmax法は、触媒に流入する排気の空燃比をリッチ側及びリーン側に強制的に切り換えるアクティブ空燃比制御を行い、リッチ側制御時の酸素放出量の積算値OSAFALL及びリーン制御時の酸素吸蔵量の積算値OSARISEの2つの積算値の平均値として触媒酸素吸蔵容量の指数であるCmaxを求めることで行われる。
【0004】
そして従来、このような触媒劣化の診断を行う装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。同文献1に記載の装置では、排気再循環(EGR)の非実施時に気筒間の空燃比差の是正を行った上で、EGRの導入を再開し、その状態で気筒間の空燃比差の是正を行うようにしている。そしてEGR再開後の気筒間の空燃比差の是正を行った状態で触媒の劣化診断を行うことで、EGR実施下での適正な触媒劣化の診断を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−101211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、上記文献1に記載の装置では、EGR実施時に触媒の劣化診断を行うようにしている。しかしながら、内燃機関の運転中には、EGRが導入されているときもあれば、EGRが導入されていないときもある。特に、寒冷地においては、運転期間の多くを半暖機状態で過ごすことがある。一方、EGRは一般に、暖機完了を条件に実施されるようになっている。そのため、寒冷地では、EGRの導入が無い状態で運転を行う期間が長くなる。また内燃機関とモーターとの2つの駆動源を備えるハイブリッド車では、モーター走行中や停車中は、内燃機関が停止されるため、冬季などには暖機未了の状態で機関運転がなされることが多く、やはりEGRの導入が無い状態で運転を行う期間が長くなる。そのため、診断機会を十分に確保するには、EGRの実施時及び非実施時の双方において、触媒の劣化診断を行うことが望ましい。
【0007】
ところで、ハイブリッド車に搭載の内燃機関などでは、15%以上の高いEGR率でのEGR導入を行うようにしている。発明者らの行った調査の結果によれば、こうした大量EGRを行う内燃機関では、EGR実施時と非実施時とでは、触媒の状況が大きく様変わりしてしまうことが明らかとなっている。
【0008】
図10は、EGR実施時と非実施時とのそれぞれにおける内燃機関の吸入空気量と上記Cmaxとの関係を示している。なお、ここでの関係は、劣化の程度が同じ触媒を用いて測定されている。同図から明らかなように、EGRの非実施時には、実施時に比して、Cmaxが、すなわち触媒の酸素吸蔵容量が明らかに大きくなっている。ちなみに、EGR実施時(EGR有り)には、非実施時(EGR無し)に比して、排気温度が低くなり、それに応じて触媒の温度分布も、図11に示すように多少低くはなる。しかしながら、上記のような酸素吸蔵容量の差は、そうした触媒の温度分布の違いだけでは、説明し切れないものとなっている。
【0009】
このように、触媒の酸素吸蔵能(容量)は、EGRの実施時と非実施時とで大きく異なったものとなる。そのため、EGRの実施時と非実施時とで一律の態様で劣化診断を行っては、適切な診断はできないことになる。
【0010】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することのできる触媒劣化の診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置としての請求項1に記載の発明では、排気再循環の実施時に触媒劣化有りと診断される酸素吸蔵容量よりも、排気再循環の非実施時に触媒劣化有りと診断される酸素吸蔵容量の方が大きくなるようにしている。
【0012】
上述したように、劣化の進行度が同じでも、触媒の酸素吸蔵容量は、EGRの実施時よりも非実施時の方が大きくなる。そこで、EGRの非実施時には、その実施時に比して、より大きい酸素吸蔵容量で触媒の劣化有りと診断するようにすれば、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、請求項1に記載の発明によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0013】
上記課題を解決するため、酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置としての請求項2に記載の発明では、酸素吸蔵容量が基準値を下回った回数又は時間によって触媒劣化の有無を判定するとともに、排気再循環の非実施時には、その実施時よりも少ない回数又は時間で触媒の劣化有りとの診断を行うようにしている。
【0014】
上記構成では、EGRの非実施時には、その実施時に比して、酸素吸蔵容量が基準値を下回った回数や時間が少なくても、触媒の劣化有りとの診断がなされるようになる。そのため、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、請求項2に記載の発明によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができるようになる。
【0015】
上記課題を解決するため、酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置としての請求項3に記載の発明は、劣化の有無の判定に使用する酸素吸蔵容量の値を排気再循環の実施の有無により補正するようにしている。
【0016】
上述のように劣化の進行度が同じでも、触媒の酸素吸蔵容量は、EGRの実施時よりも非実施時の方が大きくなる。そこで、劣化の有無の判定に使用する触媒の酸素吸蔵容量の値を、EGRの実施時にはその値がより大きくなるように補正したり、あるいはEGRの非実施時にはその値がより小さくなるように補正したりすれば、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、請求項3に記載の発明によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0017】
なお、高温に曝された期間が長ければ、酸素吸蔵容量が大きいままでも、触媒の排気浄化性能が、特にNOxの浄化性能が低下していることがある。そこで、劣化の有無の判定に使用する触媒の酸素吸蔵容量の値を、触媒が高温に曝された期間が長いほど、その値が小さくなるように補正すれば、触媒の温度履歴に応じた劣化診断を、酸素吸蔵容量の低下に基づく劣化診断と同時に行うことができるようになる。したがって、請求項4によるように、劣化の有無の判定に使用する酸素吸蔵容量の値を触媒の温度履歴に応じて補正するようにすれば、より好適に触媒の劣化診断を行うことができる。ちなみに、EGRの非実施時には、その実施時に比して、触媒の酸素吸蔵容量は大きくなるものの、触媒に流入する排気の温度はより高くなるため、長期的に見れば、EGR非導入の期間が長いほど、触媒の劣化が進行する傾向にある。
【0018】
また、EGRの実施時と非実施時とでは、排気温度が異なり、触媒温度も異なるようになる。具体的には、EGRの非実施時には、その実施時に比して排気温度が高くなり、触媒温度も高くなる。そのため、EGR非実施の時間が長くなれば、高温に曝される時間が長くなって、触媒が劣化し易くなる。したがって、請求項5によるように、劣化の有無の判定に使用する酸素吸蔵容量の値を、内燃機関の運転時間に占める排気再循環の非実施時間の比率に応じて補正するようにすれば、EGRの有無による劣化進行度合いの違いを反映して触媒の劣化診断を行うことが可能となる。
【0019】
なお、触媒の酸素吸蔵容量は、請求項6によるように、Cmax法に基づいて、触媒に流入する排気の空燃比をリッチ側及びリーン側に強制的に切り換えたときの、リッチ側制御時における酸素放出量の積算値とリーン制御時における酸素吸蔵量の積算値との2つの積算値の平均値として求めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る触媒劣化の診断装置が適用される内燃機関の構成を模式的に示す略図。
【図2】同実施の形態に採用される空燃比センサーの出力特性を示すグラフ。
【図3】同実施の形態に採用される酸素センサーの出力特性を示すグラフ。
【図4】同実施の形態に適用されるアクティブ空燃比制御時の目標空燃比、空燃比センサー出力及び酸素センサー出力の推移を示すタイムチャート。
【図5】同実施の形態に適用される触媒劣化診断ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2の実施の形態に適用される触媒劣化診断ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図7】本発明の第3の実施の形態に適用される触媒劣化診断ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図8】本発明の第4の実施の形態に適用される触媒劣化診断ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図9】本発明の第5の実施の形態に適用される触媒劣化診断ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図10】EGRの実施時、非実施時のそれぞれにおける吸入空気量と触媒の酸素吸蔵容量(Cmax)との関係を示すグラフ。
【図11】EGRの実施時、非実施時のそれぞれにおける触媒の温度分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の触媒劣化の診断装置を具体化した第1の実施の形態を、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、内燃機関の吸気通路1には、その上流から順に、吸入した空気を浄化するエアクリーナー4、吸気の温度を検出する吸気温度センサー5、吸気の流量を検出するエアフローメーター6が配設されている。また吸気通路1のエアフローメーター6の下流には、スロットルモーター7により駆動されて吸気の流量を調節するスロットルバルブ8、及び吸気中に燃料を噴射するインジェクター9が配設されている。そして吸気通路1は、吸気バルブ10を介して燃焼室2に接続されている。ここで吸気バルブ10は、開弁に応じて吸気通路1と燃焼室2とを連通し、閉弁に応じてその連通を遮断する。
【0023】
燃焼室2には、その内部に導入された燃料と空気との混合気を火花点火する点火プラグ11が設置されている。そして燃焼室2は、排気バルブ12を介して排気通路3に接続されている。ここで排気バルブ12は、開弁に応じて燃焼室2と排気通路3とを連通し、閉弁に応じてその連通を遮断する。
【0024】
排気通路3には、排気を浄化するための触媒が担持された触媒コンバーター14が設置されている。また排気通路3の触媒コンバーター14の上流には、空燃比センサー13が、その下流には、酸素センサー15がそれぞれ配設されている。
【0025】
こうした内燃機関には、排気の一部を吸気中に再循環させる排気再循環(EGR)システムが設置されている。EGRシステムは、排気通路3の触媒コンバーター14の上流側と吸気通路1のスロットルバルブ8の下流側とを連通するEGR通路16を備えている。なお、EGR通路16には、同通路を通じて再循環される排気を冷却するEGRクーラー17と、排気再循環量を調節するEGRバルブ18とが配設されている。
【0026】
こうした内燃機関は、電子制御ユニット(ECU)22により制御されている。ECU22は、機関制御に係る各種の演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)、機関制御用のプログラムやデータの記憶された読み出し専用メモリー(ROM)を備えている。またECU22は、CPUの演算結果やセンサーの検出結果等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリー(RAM)と、外部との信号の授受を媒介するインターフェイスとして機能する入出力ポート(I/O)とを備えている。
【0027】
こうしたECU22の入力ポートには、上記の吸気温度センサー5、エアフローメーター6、空燃比センサー13、及び酸素センサー15の検出信号が入力されている。さらにECU22の入力ポートには、機関出力軸であるクランクシャフト23の回転位相を検出するクランクポジションセンサー24、スロットルバルブ8の開度を検出するスロットルセンサー26などの検出信号も入力されている。
【0028】
一方、ECU22の出力ポートには、スロットルモーター7、インジェクター9、点火プラグ11などの、内燃機関各部に設けられた各種アクチュエーターの駆動回路が接続されている。そしてECU22は、それらアクチュエーターの駆動回路に指令信号を出力することで、機関制御を行っている。
【0029】
図2は、本実施の形態に採用される空燃比センサー13の出力特性を示している。同図に示すように、空燃比センサー13は、空燃比が大きいほど、すなわち空燃比がリーンとなるほど、その出力が大となる。なお、同図に示される出力Vstは、理論空燃比時の空燃比センサー13の出力を示している。
【0030】
図3は、本実施の形態に採用される酸素センサー15の出力特性を示している。同図に示すように、酸素センサー15の出力は、理論空燃比を境に大きく変化する。なお、ここでは、リーン空燃比からリッチ空燃比への切り替わりを、酸素センサー15の出力がリッチ判定値VRを跨いで大きくなったことをもって確認し、リッチ空燃比からリーン空燃比への切り替わりを、酸素センサー15の出力がリーン判定値VLを跨いで小さくなったことをもって確認するようにしている。
【0031】
さて、ECU22は、機関運転中、必要に応じて触媒の劣化診断を行っている。この診断において触媒の劣化は、触媒の酸素吸蔵容量、すなわち最大限吸蔵可能な酸素の量の低下に基づいて診断されている。そしてECU22は、触媒の酸素吸蔵容量をCmax法により求めている。
【0032】
Cmax法では、図4に示すように、目標空燃比を強制的にリーン側、リッチ側に振る、いわゆるアクティブ空燃比制御が行われる。アクティブ空燃比制御では、酸素センサー15がリーン出力を発している間は、目標空燃比を理論空燃比よりもリッチ側に振り、酸素センサー15がリッチ出力を発すると、目標空燃比を理論空燃比よりもリーン側に振る。このようにアクティブ空燃比制御では、酸素センサー15の出力が反転する毎に、目標空燃比をリッチ空燃比とリーン空燃比との間で反転させている。
【0033】
こうした空燃比アクティブ制御下では、触媒が酸素を一杯に吸蔵した状態と、触媒が吸蔵酸素をすべて放出した状態とが繰り返される。そこで、このときのリッチ側制御時の酸素放出量の積算値OSAFALL及びリーン制御時の酸素吸蔵量の積算値OSARISEを求めることで、触媒酸素吸蔵容量の指数であるCmaxを求めることができる。
【0034】
ここでOSAFALL及びOSARISEは、次式(1)にて算出される単位時間当りのOSA(酸素吸蔵/放出量)を積算することで求められる。なお、下式(1)の「α」は、空気中の酸素質量割合を示す定数(=0.23)であり、「ΔA/F」は、空燃比センサー出力からその理論空燃比出力Vstを減算したものである。
【0035】
単位時間当りのOSA=α×ΔA/F×燃料噴射量 …(1)
Cmaxは、OSAFALLとOSARISEとの平均値として求められる。そしてこのCmaxに、触媒温度に応じた補正や大気圧に応じた補正を行ったものを用いて、触媒の劣化診断が行われる。
【0036】
なお、上述したように、EGRの実施時と非実施時とでは、触媒の酸素吸蔵容量に大きな違いが生じる。具体的には、先の図10に示したように、EGRの実施時(EGR有り)には、非実施時(EGR無し)に比して、触媒の酸素吸蔵容量は大きくなる。よって、EGRの実施時に測定したCmaxの値では、十分な酸素吸蔵容量があり、触媒の劣化無しとの判定がなされても、EGRの非実施時には、触媒の酸素吸蔵容量が不足するといった事態が生じることがある。
【0037】
そこで本実施の形態では、EGRの実施時と非実施時とで、触媒劣化の判定値を異ならせるようにしている。具体的には、排気再循環の実施時に触媒劣化有りと診断されるCmaxの値よりも、排気再循環の非実施時に触媒劣化有りと診断されるCmaxの値の方が大きくなるようにしている。
【0038】
図5は、こうした本実施の形態の採用される触媒劣化診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンの処理は、触媒劣化診断の実行条件が成立したときにECU22により実行されるものとなっている。
【0039】
本ルーチンが開始されると、まずステップS100において、アクティブ空燃比制御が実施される。そして続くステップS101にて、Cmaxの測定が行われる。
次に、ステップS102において、EGRの実施中であるか否かの判定が行われる。ここでEGRが実施されていれば、ステップS103において、Cmaxが劣化判定値α未満であるか否かで触媒が劣化しているか否かの判定が行われる。そしてCmaxが劣化判定値α未満であれば(S103:YES)、ステップS104にて劣化有りとの診断が行われ、Cmaxが劣化判定値α以上であれば(S103:NO)、ステップS105にて劣化無しとの診断が行われる。
【0040】
一方、EGRが実施されていなければ、ステップS106において、Cmaxが劣化判定値β未満であるか否かで触媒が劣化しているか否かの判定が行われる。ここで使用される劣化判定値βには、EGRの実施時に使用される劣化判定値αよりも大きい値が設定されている。そしてCmaxが劣化判定値β未満であれば(S106:YES)、ステップS107にて劣化有りとの診断が行われ、Cmaxが劣化判定値β以上であれば(S106:NO)、ステップS105にて劣化無しとの診断が行われる。
【0041】
以上の本実施の形態の触媒劣化の診断装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、EGRの実施時に触媒劣化有りと診断される酸素吸蔵容量(Cmax)よりも、EGRの非実施時に触媒劣化有りと診断される酸素吸蔵容量(Cmax)の方が大きくなるようにしている。上述したように、劣化の進行度が同じでも、触媒の酸素吸蔵容量は、EGRの実施時よりも非実施時の方が大きくなる。そこで、EGRの非実施時には、その実施時に比して、より大きい酸素吸蔵容量で触媒の劣化有りと診断するようにすれば、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の触媒劣化の診断装置を具体化した第2の実施の形態を、図6を併せ参照して詳細に説明する。なお本実施の形態及び以降の各実施の形態にあって、上述の実施の形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0043】
第1の実施の形態では、Cmaxが劣化判定値α、βを下回ることで触媒の劣化有りとの診断を下すようにしていた。そして劣化判定値を異ならせることで、EGRの実施時、非実施時のいずれにおいても、良好な劣化診断を可能としていた。
【0044】
これに対して本実施の形態では、Cmaxが基準値γを下回ることが確認された回数をカウントし、その回数が劣化判定値を超えることで触媒の劣化有りとの診断を下すようにしている。そしてEGRの非実施時には、その実施時よりも少ない回数で触媒の劣化有りとの診断を行うことで、EGRの実施時、非実施時のいずれにおいても良好な劣化診断を可能としている。
【0045】
図6は、こうした本実施の形態に採用される触媒劣化診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンの処理は、触媒劣化診断の実行条件が成立したときにECU22により実行されるものとなっている。
【0046】
本ルーチンが開始されると、まずステップS200において、アクティブ空燃比制御が実施される。そして続くステップS201にて、Cmaxの測定が行われる。
続いてステップS202にて、測定したCmaxが基準値γを下回っているか否かの判定が行われる。ここでCmaxが基準値γを下回っていれば(S202:YES)、ステップS203において、Cmaxが基準値γを下回った回数を示す計数カウンターの値のカウントアップが行われる。
【0047】
次に、ステップS204において、EGRが実施されているか否かの判定が行われる。ここでEGRが実施されていれば、ステップS205において、計数カウンターの値が劣化判定値δを超えているか否かの判定が行われる。ここで計数カウンターの値が劣化判定値δを超えていれば(S205:YES)、ステップS206にて劣化有りとの診断が行われ)、劣化判定値δ以下であれば(S205:NO)、ステップS207にて劣化無しとの診断が行われる。
【0048】
一方、EGRが実施されていなければ、ステップS208において、計数カウンターの値が劣化判定値εを超えているか否かの判定が行われる。ここで使用される劣化判定値εには、EGRの実施時に使用される劣化判定値δよりも小さい値が設定されている。そして計数カウンターの値が劣化判定値εを超えていれば(S208:YES)、ステップS209にて劣化有りとの診断が行われ、劣化判定値ε以下であれば(S208:NO)、ステップS207にて劣化無しとの診断が行われる。
【0049】
以上の本実施の形態の触媒劣化の診断装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、Cmaxが基準値γを下回った回数によって触媒劣化の有無を判定するとともに、EGRの非実施時には、その実施時よりも少ない回数で触媒の劣化有りとの診断を行うようにしている。そのため、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0050】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の触媒劣化の診断装置を具体化した第3の実施の形態を、図7を併せ参照して詳細に説明する。
【0051】
第1及び第2の実施の形態では、EGRの実施時と非実施時とで劣化判定値を変えることで、EGR実施、非実施のいずれにおいても、良好な触媒の劣化診断を可能としていた。本実施の形態では、触媒劣化の有無の判定に使用するCmaxの値をEGRの実施の有無により補正するようにしている。本実施の形態では、EGRの実施時には、測定したCmaxの値をそのまま用いて劣化診断を行うとともに、EGRの非実施時には、測定したCmaxの値にEGR補正を行ったものを用いて劣化診断を行うようにしている。なお、ここでは、EGR非実施時の劣化判定用Cmaxの値がより小さくなるようにEGR補正を行うようにしている。
【0052】
図7は、こうした本実施の形態に採用される触媒劣化診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンの処理は、触媒劣化診断の実行条件が成立したときにECU22により実行されるものとなっている。
【0053】
本ルーチンが開始されると、まずステップS300において、アクティブ空燃比制御が実施される。そして続くステップS301にて、Cmaxの測定が行われる。
続いてステップS302において、EGRが実施されているか否かの判定が行われる。ここでEGRが実施されていれば、ステップS303において、劣化判定用のCmaxに同Cmaxの測定値がそのまま代入される。一方、EGRが実施されていなければ、ステップS304において、劣化判定用のCmaxに、同Cmaxの測定値にEGR補正計数φを乗算した値が代入される。EGR補正係数φは、EGRの実施時、非実施時のCmaxの偏差分を補正するための係数であって、「1.0」よりも小さい値に設定されている。なお、EGR補正係数φの値は、内燃機関の吸入空気量等に応じて可変設定されている。
【0054】
こうして劣化判定用Cmaxが設定されると、次のステップS305において、劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回るか否かが判定される。そして劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回っているのであれば(S305:YES)、ステップS306にて劣化有りとの診断が行われ、そうでなければ(S305:NO)、ステップS307にて劣化無しとの診断が行われる。
【0055】
以上の本実施の形態の触媒劣化の診断装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では劣化の有無の判定に使用するCmaxの値をEGRの実施の有無により補正するようにしている。上述のように劣化の進行度が同じでも、触媒の酸素吸蔵容量は、すなわちCmaxの値は、EGRの実施時よりも非実施時の方が大きくなる。そこで、劣化判定用のCmaxの値を、EGRの非実施時にはその値がより小さくなるように補正すれば、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0056】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の触媒劣化の診断装置を具体化した第4の実施の形態を、図8を併せ参照して詳細に説明する。
【0057】
ところで、高温に曝された期間が長ければ、酸素吸蔵容量が大きいままでも、触媒の排気浄化性能が、特にNOxの浄化性能が低下していることがある。そこで本実施の形態では、劣化の有無の判定に使用するCmaxの値を、触媒が高温に曝された期間が長いほど、その値が小さくなるように補正するようにしている。そしてそれにより、触媒の温度履歴に応じた劣化診断を、酸素吸蔵容量の低下に基づく劣化診断と同時に行うようにしている。
【0058】
図8は、こうした本実施の形態に採用される触媒劣化診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンの処理は、触媒劣化診断の実行条件が成立したときにECU22により実行されるものとなっている。
【0059】
本ルーチンが開始されると、まずステップS400において、アクティブ空燃比制御が実施される。そして続くステップS401にて、Cmaxの測定が行われる。
続いてステップS402において、触媒の温度履歴に基づく温度補正係数μの算出が行われる。ここでの温度補正係数μには、「1.0]以下の正の値が設定され、触媒が高温に曝された期間が長いほど、小さい値が設定される。
【0060】
次に、ステップS403において、EGRが実施されているか否かの判定が行われる。そしてEGRが実施されていれば、ステップS404において、Cmaxの測定値に温度補正係数μを乗算したものが劣化判定用Cmaxの値に代入される。一方、EGRが実施されていなければ、ステップS405において、Cmaxの測定値に温度補正係数μ及び上述のEGR補正係数φを乗算したものが劣化判定用Cmaxの値に代入される。
【0061】
こうして劣化判定用Cmaxが設定されると、続くステップS406において、その劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回っているか否かの判定が行われる。ここで劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回っていれば(S406:YES)、ステップS407にて劣化有りとの診断が行われ、そうでなければ(S406:NO)、ステップS408にて劣化無しとの診断が行われる。
【0062】
以上の本実施の形態の触媒劣化の診断装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では劣化の有無の判定に使用するCmaxの値をEGRの実施の有無により補正するようにしている。そのため、本実施の形態によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0063】
(2)本実施の形態では、劣化の有無の判定に使用するCmax量の値を触媒の温度履歴に応じて補正するようにしている。そのため、酸素吸蔵能力の低下による劣化の診断と同時に、触媒の温度履歴に応じたNOx等の浄化性能の低下による劣化の診断を併せ行うことができる。
【0064】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の触媒劣化の診断装置を具体化した第5の実施の形態を、図9を併せ参照して詳細に説明する。
【0065】
先の図11に示したように、EGRの有無により、触媒温度は変化する。具体的には、EGRの実施時に比して非実施時の方が、触媒温度は高くなる傾向にある。そのため、EGR非実施の期間が長いほど、触媒が高温に曝される期間が長くなり、NOx等の浄化性能が低下し易くなる。そこで本実施の形態では、劣化判定用のCmaxの値を、EGRの実施時間と非実施時間との比率に応じて補正するようにしている。そしてこれにより、酸素吸蔵能力の低下による劣化の診断と同時に、触媒の温度履歴に応じたNOx等の浄化性能の低下による劣化の診断を併せ行うようにしている。
【0066】
図9は、こうした本実施の形態に採用される触媒劣化診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンの処理は、触媒劣化診断の実行条件が成立したときにECU22により実行されるものとなっている。
【0067】
本ルーチンが開始されると、まずステップS500において、アクティブ空燃比制御が実施される。そして続くステップS501にて、Cmaxの測定が行われる。
次に、ステップS502において、内燃機関の運転時間に占めるEGR非実施時間の比率に基づく温度補正係数νの算出が行われる。温度補正係数νは、下式(2)に基づいて算出される。
【0068】
温度補正係数ν=β×(EGR非実施時間/内燃機関の運転時間) …(2)
ここで定数βは、図11に示したEGR実施時、非実施時の触媒の温度分布に基づいて設定されている。同図に示すように、EGR実施時の触媒の温度分布において、頻度が最大となるのは800℃であり、その頻度は13%となる。一方、EGR非実施時の触媒の温度分布において、頻度が最大となるのは875℃であり、その頻度は19%となる。そして定数βは、これらにより、下式(3)により算出される。
【0069】
β=(875℃×19%)/(800℃×13%)≒1.6 …(3)
こうして温度補正係数νが算出されると、続くステップS503において、EGRが実施されているか否かの判定が行われる。ここでEGRが実施されていれば、ステップS504において、Cmaxの測定値に温度補正係数νを乗算した値が劣化判定用Cmaxに代入される。一方、EGRが実施されていなければ、ステップS505において、Cmaxの測定値に温度補正係数ν及び上述のEGR補正係数φを乗算したものが劣化判定用Cmaxの値に代入される。
【0070】
こうして劣化判定用Cmaxが設定されると、続くステップS506において、その劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回っているか否かの判定が行われる。ここで劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回っていれば(S506:YES)、ステップS507にて劣化有りとの診断が行われ、そうでなければ(S506:NO)、ステップS508にて劣化無しとの診断が行われる。
【0071】
以上の本実施の形態の触媒劣化の診断装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では劣化の有無の判定に使用するCmaxの値をEGRの実施の有無により補正するようにしている。そのため、本実施の形態によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0072】
(2)本実施の形態では、劣化の有無の判定に使用する酸素吸蔵容量の値を、内燃機関の運転時間に占めるEGRの非実施時間の比率に応じて補正するようにしている。EGRの非実施の時間が長くなれば、触媒が高温に曝される時間が長くなり、触媒が劣化し易くなるが、こうした本実施の形態では、EGRの有無による劣化進行度合いの違いを反映して触媒の劣化診断を行うことが可能となる。
【0073】
なお、上記各実施の形態は以下のように変更して実施することもできる。
・第5の実施の形態では、内燃機関の運転時間に占めるEGR非実施時間の比率から温度補正係数νを算出していたが、内燃機関の運転時間に占めるEGR実施時間の比率から温度補正係数νの算出を行うことも可能である。この場合の温度補正係数νは、EGR実施時の劣化判定用Cmaxの算出に際して、Cmaxの測定値に乗算されることになる。
【0074】
・第3乃至第5の実施の形態では、EGR補正係数φを内燃機関の吸入空気量に応じて算出するようにしていたが、EGR補正係数φの算出にEGRの導入量を反映することも考えられる。この場合のEGR補正係数φには、EGRの導入量が多いほど、小さい値を設定することになる。
【0075】
・第3乃至第5の実施の形態では、EGR実施時には、測定したCmaxの値をそのまま用いて劣化診断を行うとともに、EGR非実施時には、測定したCmaxの値にEGR補正を行ったものを用いて劣化診断を行うようにしている。すなわち、第3の実施の形態では、EGR非実施時のCmax測定値にEGR補正を行ったものを用いて触媒の劣化診断を行うようにしている。なお、EGR実施時のCmax測定値にEGR補正を行ったものを用いて触媒の劣化診断を行うことも可能である。この場合、EGRの実施時には、劣化判定用のCmaxの値がより大きくなるようにEGR補正を行うことになる。
【0076】
・第2の実施の形態では、Cmaxが基準値γを下回ることが確認された回数に基づいて触媒の劣化診断を行うようにしていたが、Cmaxが基準値γを下回っている時間に基づいても触媒の劣化診断を行うことが可能である。この場合にも、EGRの非実施時には、その実施時よりも少ない時間で触媒の劣化有りとの診断を行うようにすれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0077】
・第2の実施の形態及びその変形例において、劣化有りと診断する回数又は時間を、EGRの導入量に応じて可変とするようにしても良い。この場合の劣化有りと診断する回数又は時間は、EGRの導入量が多いほど、少ない値に設定されることになる。
【0078】
・第1の実施の形態では、EGR導入時と非導入時とで劣化判定値を切り換えるようにしていたが、EGRの導入量に応じて劣化判定値を変更するようにすることもできる。この場合の劣化判定値には、EGRの導入量が多いほど、大きい値が設定されることになる。
【0079】
・第1及び第2の実施の形態において、触媒の劣化判定に使用するCmaxの値を、触媒の温度履歴や、内燃機関の運転時間に占める排気再循環の非実施時間の比率に応じて補正するようにしても良い。こうした場合には、触媒の温度履歴やEGRの有無による劣化進行度合いの違いを反映した触媒の劣化診断を行うことが可能となる。
【0080】
・上記実施の形態では、触媒の酸素吸蔵容量をCmax法に基づき測定するようにしていたが、他の方法で触媒の酸素吸蔵容量を測定することも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…吸気通路、2…燃焼室、3…排気通路、4…エアクリーナー、5…吸気温度センサー、6…エアフローメーター、7…スロットルモーター、8…スロットルバルブ、9…インジェクター、10…吸気バルブ、11…点火プラグ、12…排気バルブ、13…空燃比センサー、14…触媒コンバーター、15…酸素センサー、16…EGR通路、17…EGRクーラー、18…EGRバルブ、22…電子制御ユニット(ECU)、22…ECU、23…クランクシャフト、24…クランクポジションセンサー、26…スロットルセンサー。
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載等の内燃機関の排気通路に設置される触媒には、酸素吸蔵能を有したものがある。こうした触媒は、触媒に流入する排気の空燃比が理論空燃比よりもリーンとなると、排気中の過剰酸素を吸着保持し、触媒に流入する排気の空燃比が理論空燃比よりもリッチとなると、吸着保持した酸素を放出する特性を有している。こうした触媒では、運転状況に応じて実際の空燃比が理論空燃比から多少ぶれたとしても、触媒の酸素吸蔵/放出作用により、空燃比のずれを吸収して排気浄化効率を維持することが可能である。
【0003】
こうした触媒の劣化は、その酸素吸蔵容量、すなわち最大限吸蔵可能な酸素の量の低下から診断することができる。触媒の酸素吸蔵容量は、Cmax法により測定することができる。Cmax法は、触媒に流入する排気の空燃比をリッチ側及びリーン側に強制的に切り換えるアクティブ空燃比制御を行い、リッチ側制御時の酸素放出量の積算値OSAFALL及びリーン制御時の酸素吸蔵量の積算値OSARISEの2つの積算値の平均値として触媒酸素吸蔵容量の指数であるCmaxを求めることで行われる。
【0004】
そして従来、このような触媒劣化の診断を行う装置として、特許文献1に記載の装置が知られている。同文献1に記載の装置では、排気再循環(EGR)の非実施時に気筒間の空燃比差の是正を行った上で、EGRの導入を再開し、その状態で気筒間の空燃比差の是正を行うようにしている。そしてEGR再開後の気筒間の空燃比差の是正を行った状態で触媒の劣化診断を行うことで、EGR実施下での適正な触媒劣化の診断を可能としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−101211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、上記文献1に記載の装置では、EGR実施時に触媒の劣化診断を行うようにしている。しかしながら、内燃機関の運転中には、EGRが導入されているときもあれば、EGRが導入されていないときもある。特に、寒冷地においては、運転期間の多くを半暖機状態で過ごすことがある。一方、EGRは一般に、暖機完了を条件に実施されるようになっている。そのため、寒冷地では、EGRの導入が無い状態で運転を行う期間が長くなる。また内燃機関とモーターとの2つの駆動源を備えるハイブリッド車では、モーター走行中や停車中は、内燃機関が停止されるため、冬季などには暖機未了の状態で機関運転がなされることが多く、やはりEGRの導入が無い状態で運転を行う期間が長くなる。そのため、診断機会を十分に確保するには、EGRの実施時及び非実施時の双方において、触媒の劣化診断を行うことが望ましい。
【0007】
ところで、ハイブリッド車に搭載の内燃機関などでは、15%以上の高いEGR率でのEGR導入を行うようにしている。発明者らの行った調査の結果によれば、こうした大量EGRを行う内燃機関では、EGR実施時と非実施時とでは、触媒の状況が大きく様変わりしてしまうことが明らかとなっている。
【0008】
図10は、EGR実施時と非実施時とのそれぞれにおける内燃機関の吸入空気量と上記Cmaxとの関係を示している。なお、ここでの関係は、劣化の程度が同じ触媒を用いて測定されている。同図から明らかなように、EGRの非実施時には、実施時に比して、Cmaxが、すなわち触媒の酸素吸蔵容量が明らかに大きくなっている。ちなみに、EGR実施時(EGR有り)には、非実施時(EGR無し)に比して、排気温度が低くなり、それに応じて触媒の温度分布も、図11に示すように多少低くはなる。しかしながら、上記のような酸素吸蔵容量の差は、そうした触媒の温度分布の違いだけでは、説明し切れないものとなっている。
【0009】
このように、触媒の酸素吸蔵能(容量)は、EGRの実施時と非実施時とで大きく異なったものとなる。そのため、EGRの実施時と非実施時とで一律の態様で劣化診断を行っては、適切な診断はできないことになる。
【0010】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その解決しようとする課題は、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することのできる触媒劣化の診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置としての請求項1に記載の発明では、排気再循環の実施時に触媒劣化有りと診断される酸素吸蔵容量よりも、排気再循環の非実施時に触媒劣化有りと診断される酸素吸蔵容量の方が大きくなるようにしている。
【0012】
上述したように、劣化の進行度が同じでも、触媒の酸素吸蔵容量は、EGRの実施時よりも非実施時の方が大きくなる。そこで、EGRの非実施時には、その実施時に比して、より大きい酸素吸蔵容量で触媒の劣化有りと診断するようにすれば、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、請求項1に記載の発明によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0013】
上記課題を解決するため、酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置としての請求項2に記載の発明では、酸素吸蔵容量が基準値を下回った回数又は時間によって触媒劣化の有無を判定するとともに、排気再循環の非実施時には、その実施時よりも少ない回数又は時間で触媒の劣化有りとの診断を行うようにしている。
【0014】
上記構成では、EGRの非実施時には、その実施時に比して、酸素吸蔵容量が基準値を下回った回数や時間が少なくても、触媒の劣化有りとの診断がなされるようになる。そのため、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、請求項2に記載の発明によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができるようになる。
【0015】
上記課題を解決するため、酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置としての請求項3に記載の発明は、劣化の有無の判定に使用する酸素吸蔵容量の値を排気再循環の実施の有無により補正するようにしている。
【0016】
上述のように劣化の進行度が同じでも、触媒の酸素吸蔵容量は、EGRの実施時よりも非実施時の方が大きくなる。そこで、劣化の有無の判定に使用する触媒の酸素吸蔵容量の値を、EGRの実施時にはその値がより大きくなるように補正したり、あるいはEGRの非実施時にはその値がより小さくなるように補正したりすれば、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、請求項3に記載の発明によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0017】
なお、高温に曝された期間が長ければ、酸素吸蔵容量が大きいままでも、触媒の排気浄化性能が、特にNOxの浄化性能が低下していることがある。そこで、劣化の有無の判定に使用する触媒の酸素吸蔵容量の値を、触媒が高温に曝された期間が長いほど、その値が小さくなるように補正すれば、触媒の温度履歴に応じた劣化診断を、酸素吸蔵容量の低下に基づく劣化診断と同時に行うことができるようになる。したがって、請求項4によるように、劣化の有無の判定に使用する酸素吸蔵容量の値を触媒の温度履歴に応じて補正するようにすれば、より好適に触媒の劣化診断を行うことができる。ちなみに、EGRの非実施時には、その実施時に比して、触媒の酸素吸蔵容量は大きくなるものの、触媒に流入する排気の温度はより高くなるため、長期的に見れば、EGR非導入の期間が長いほど、触媒の劣化が進行する傾向にある。
【0018】
また、EGRの実施時と非実施時とでは、排気温度が異なり、触媒温度も異なるようになる。具体的には、EGRの非実施時には、その実施時に比して排気温度が高くなり、触媒温度も高くなる。そのため、EGR非実施の時間が長くなれば、高温に曝される時間が長くなって、触媒が劣化し易くなる。したがって、請求項5によるように、劣化の有無の判定に使用する酸素吸蔵容量の値を、内燃機関の運転時間に占める排気再循環の非実施時間の比率に応じて補正するようにすれば、EGRの有無による劣化進行度合いの違いを反映して触媒の劣化診断を行うことが可能となる。
【0019】
なお、触媒の酸素吸蔵容量は、請求項6によるように、Cmax法に基づいて、触媒に流入する排気の空燃比をリッチ側及びリーン側に強制的に切り換えたときの、リッチ側制御時における酸素放出量の積算値とリーン制御時における酸素吸蔵量の積算値との2つの積算値の平均値として求めることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る触媒劣化の診断装置が適用される内燃機関の構成を模式的に示す略図。
【図2】同実施の形態に採用される空燃比センサーの出力特性を示すグラフ。
【図3】同実施の形態に採用される酸素センサーの出力特性を示すグラフ。
【図4】同実施の形態に適用されるアクティブ空燃比制御時の目標空燃比、空燃比センサー出力及び酸素センサー出力の推移を示すタイムチャート。
【図5】同実施の形態に適用される触媒劣化診断ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図6】本発明の第2の実施の形態に適用される触媒劣化診断ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図7】本発明の第3の実施の形態に適用される触媒劣化診断ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図8】本発明の第4の実施の形態に適用される触媒劣化診断ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図9】本発明の第5の実施の形態に適用される触媒劣化診断ルーチンの処理手順を示すフローチャート。
【図10】EGRの実施時、非実施時のそれぞれにおける吸入空気量と触媒の酸素吸蔵容量(Cmax)との関係を示すグラフ。
【図11】EGRの実施時、非実施時のそれぞれにおける触媒の温度分布を示すグラフ。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の触媒劣化の診断装置を具体化した第1の実施の形態を、図1〜図5を参照して詳細に説明する。
【0022】
図1に示すように、内燃機関の吸気通路1には、その上流から順に、吸入した空気を浄化するエアクリーナー4、吸気の温度を検出する吸気温度センサー5、吸気の流量を検出するエアフローメーター6が配設されている。また吸気通路1のエアフローメーター6の下流には、スロットルモーター7により駆動されて吸気の流量を調節するスロットルバルブ8、及び吸気中に燃料を噴射するインジェクター9が配設されている。そして吸気通路1は、吸気バルブ10を介して燃焼室2に接続されている。ここで吸気バルブ10は、開弁に応じて吸気通路1と燃焼室2とを連通し、閉弁に応じてその連通を遮断する。
【0023】
燃焼室2には、その内部に導入された燃料と空気との混合気を火花点火する点火プラグ11が設置されている。そして燃焼室2は、排気バルブ12を介して排気通路3に接続されている。ここで排気バルブ12は、開弁に応じて燃焼室2と排気通路3とを連通し、閉弁に応じてその連通を遮断する。
【0024】
排気通路3には、排気を浄化するための触媒が担持された触媒コンバーター14が設置されている。また排気通路3の触媒コンバーター14の上流には、空燃比センサー13が、その下流には、酸素センサー15がそれぞれ配設されている。
【0025】
こうした内燃機関には、排気の一部を吸気中に再循環させる排気再循環(EGR)システムが設置されている。EGRシステムは、排気通路3の触媒コンバーター14の上流側と吸気通路1のスロットルバルブ8の下流側とを連通するEGR通路16を備えている。なお、EGR通路16には、同通路を通じて再循環される排気を冷却するEGRクーラー17と、排気再循環量を調節するEGRバルブ18とが配設されている。
【0026】
こうした内燃機関は、電子制御ユニット(ECU)22により制御されている。ECU22は、機関制御に係る各種の演算処理を実行する中央演算処理装置(CPU)、機関制御用のプログラムやデータの記憶された読み出し専用メモリー(ROM)を備えている。またECU22は、CPUの演算結果やセンサーの検出結果等を一時的に記憶するランダムアクセスメモリー(RAM)と、外部との信号の授受を媒介するインターフェイスとして機能する入出力ポート(I/O)とを備えている。
【0027】
こうしたECU22の入力ポートには、上記の吸気温度センサー5、エアフローメーター6、空燃比センサー13、及び酸素センサー15の検出信号が入力されている。さらにECU22の入力ポートには、機関出力軸であるクランクシャフト23の回転位相を検出するクランクポジションセンサー24、スロットルバルブ8の開度を検出するスロットルセンサー26などの検出信号も入力されている。
【0028】
一方、ECU22の出力ポートには、スロットルモーター7、インジェクター9、点火プラグ11などの、内燃機関各部に設けられた各種アクチュエーターの駆動回路が接続されている。そしてECU22は、それらアクチュエーターの駆動回路に指令信号を出力することで、機関制御を行っている。
【0029】
図2は、本実施の形態に採用される空燃比センサー13の出力特性を示している。同図に示すように、空燃比センサー13は、空燃比が大きいほど、すなわち空燃比がリーンとなるほど、その出力が大となる。なお、同図に示される出力Vstは、理論空燃比時の空燃比センサー13の出力を示している。
【0030】
図3は、本実施の形態に採用される酸素センサー15の出力特性を示している。同図に示すように、酸素センサー15の出力は、理論空燃比を境に大きく変化する。なお、ここでは、リーン空燃比からリッチ空燃比への切り替わりを、酸素センサー15の出力がリッチ判定値VRを跨いで大きくなったことをもって確認し、リッチ空燃比からリーン空燃比への切り替わりを、酸素センサー15の出力がリーン判定値VLを跨いで小さくなったことをもって確認するようにしている。
【0031】
さて、ECU22は、機関運転中、必要に応じて触媒の劣化診断を行っている。この診断において触媒の劣化は、触媒の酸素吸蔵容量、すなわち最大限吸蔵可能な酸素の量の低下に基づいて診断されている。そしてECU22は、触媒の酸素吸蔵容量をCmax法により求めている。
【0032】
Cmax法では、図4に示すように、目標空燃比を強制的にリーン側、リッチ側に振る、いわゆるアクティブ空燃比制御が行われる。アクティブ空燃比制御では、酸素センサー15がリーン出力を発している間は、目標空燃比を理論空燃比よりもリッチ側に振り、酸素センサー15がリッチ出力を発すると、目標空燃比を理論空燃比よりもリーン側に振る。このようにアクティブ空燃比制御では、酸素センサー15の出力が反転する毎に、目標空燃比をリッチ空燃比とリーン空燃比との間で反転させている。
【0033】
こうした空燃比アクティブ制御下では、触媒が酸素を一杯に吸蔵した状態と、触媒が吸蔵酸素をすべて放出した状態とが繰り返される。そこで、このときのリッチ側制御時の酸素放出量の積算値OSAFALL及びリーン制御時の酸素吸蔵量の積算値OSARISEを求めることで、触媒酸素吸蔵容量の指数であるCmaxを求めることができる。
【0034】
ここでOSAFALL及びOSARISEは、次式(1)にて算出される単位時間当りのOSA(酸素吸蔵/放出量)を積算することで求められる。なお、下式(1)の「α」は、空気中の酸素質量割合を示す定数(=0.23)であり、「ΔA/F」は、空燃比センサー出力からその理論空燃比出力Vstを減算したものである。
【0035】
単位時間当りのOSA=α×ΔA/F×燃料噴射量 …(1)
Cmaxは、OSAFALLとOSARISEとの平均値として求められる。そしてこのCmaxに、触媒温度に応じた補正や大気圧に応じた補正を行ったものを用いて、触媒の劣化診断が行われる。
【0036】
なお、上述したように、EGRの実施時と非実施時とでは、触媒の酸素吸蔵容量に大きな違いが生じる。具体的には、先の図10に示したように、EGRの実施時(EGR有り)には、非実施時(EGR無し)に比して、触媒の酸素吸蔵容量は大きくなる。よって、EGRの実施時に測定したCmaxの値では、十分な酸素吸蔵容量があり、触媒の劣化無しとの判定がなされても、EGRの非実施時には、触媒の酸素吸蔵容量が不足するといった事態が生じることがある。
【0037】
そこで本実施の形態では、EGRの実施時と非実施時とで、触媒劣化の判定値を異ならせるようにしている。具体的には、排気再循環の実施時に触媒劣化有りと診断されるCmaxの値よりも、排気再循環の非実施時に触媒劣化有りと診断されるCmaxの値の方が大きくなるようにしている。
【0038】
図5は、こうした本実施の形態の採用される触媒劣化診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンの処理は、触媒劣化診断の実行条件が成立したときにECU22により実行されるものとなっている。
【0039】
本ルーチンが開始されると、まずステップS100において、アクティブ空燃比制御が実施される。そして続くステップS101にて、Cmaxの測定が行われる。
次に、ステップS102において、EGRの実施中であるか否かの判定が行われる。ここでEGRが実施されていれば、ステップS103において、Cmaxが劣化判定値α未満であるか否かで触媒が劣化しているか否かの判定が行われる。そしてCmaxが劣化判定値α未満であれば(S103:YES)、ステップS104にて劣化有りとの診断が行われ、Cmaxが劣化判定値α以上であれば(S103:NO)、ステップS105にて劣化無しとの診断が行われる。
【0040】
一方、EGRが実施されていなければ、ステップS106において、Cmaxが劣化判定値β未満であるか否かで触媒が劣化しているか否かの判定が行われる。ここで使用される劣化判定値βには、EGRの実施時に使用される劣化判定値αよりも大きい値が設定されている。そしてCmaxが劣化判定値β未満であれば(S106:YES)、ステップS107にて劣化有りとの診断が行われ、Cmaxが劣化判定値β以上であれば(S106:NO)、ステップS105にて劣化無しとの診断が行われる。
【0041】
以上の本実施の形態の触媒劣化の診断装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、EGRの実施時に触媒劣化有りと診断される酸素吸蔵容量(Cmax)よりも、EGRの非実施時に触媒劣化有りと診断される酸素吸蔵容量(Cmax)の方が大きくなるようにしている。上述したように、劣化の進行度が同じでも、触媒の酸素吸蔵容量は、EGRの実施時よりも非実施時の方が大きくなる。そこで、EGRの非実施時には、その実施時に比して、より大きい酸素吸蔵容量で触媒の劣化有りと診断するようにすれば、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0042】
(第2の実施の形態)
次に、本発明の触媒劣化の診断装置を具体化した第2の実施の形態を、図6を併せ参照して詳細に説明する。なお本実施の形態及び以降の各実施の形態にあって、上述の実施の形態と共通する構成については、同一の符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0043】
第1の実施の形態では、Cmaxが劣化判定値α、βを下回ることで触媒の劣化有りとの診断を下すようにしていた。そして劣化判定値を異ならせることで、EGRの実施時、非実施時のいずれにおいても、良好な劣化診断を可能としていた。
【0044】
これに対して本実施の形態では、Cmaxが基準値γを下回ることが確認された回数をカウントし、その回数が劣化判定値を超えることで触媒の劣化有りとの診断を下すようにしている。そしてEGRの非実施時には、その実施時よりも少ない回数で触媒の劣化有りとの診断を行うことで、EGRの実施時、非実施時のいずれにおいても良好な劣化診断を可能としている。
【0045】
図6は、こうした本実施の形態に採用される触媒劣化診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンの処理は、触媒劣化診断の実行条件が成立したときにECU22により実行されるものとなっている。
【0046】
本ルーチンが開始されると、まずステップS200において、アクティブ空燃比制御が実施される。そして続くステップS201にて、Cmaxの測定が行われる。
続いてステップS202にて、測定したCmaxが基準値γを下回っているか否かの判定が行われる。ここでCmaxが基準値γを下回っていれば(S202:YES)、ステップS203において、Cmaxが基準値γを下回った回数を示す計数カウンターの値のカウントアップが行われる。
【0047】
次に、ステップS204において、EGRが実施されているか否かの判定が行われる。ここでEGRが実施されていれば、ステップS205において、計数カウンターの値が劣化判定値δを超えているか否かの判定が行われる。ここで計数カウンターの値が劣化判定値δを超えていれば(S205:YES)、ステップS206にて劣化有りとの診断が行われ)、劣化判定値δ以下であれば(S205:NO)、ステップS207にて劣化無しとの診断が行われる。
【0048】
一方、EGRが実施されていなければ、ステップS208において、計数カウンターの値が劣化判定値εを超えているか否かの判定が行われる。ここで使用される劣化判定値εには、EGRの実施時に使用される劣化判定値δよりも小さい値が設定されている。そして計数カウンターの値が劣化判定値εを超えていれば(S208:YES)、ステップS209にて劣化有りとの診断が行われ、劣化判定値ε以下であれば(S208:NO)、ステップS207にて劣化無しとの診断が行われる。
【0049】
以上の本実施の形態の触媒劣化の診断装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では、Cmaxが基準値γを下回った回数によって触媒劣化の有無を判定するとともに、EGRの非実施時には、その実施時よりも少ない回数で触媒の劣化有りとの診断を行うようにしている。そのため、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0050】
(第3の実施の形態)
次に、本発明の触媒劣化の診断装置を具体化した第3の実施の形態を、図7を併せ参照して詳細に説明する。
【0051】
第1及び第2の実施の形態では、EGRの実施時と非実施時とで劣化判定値を変えることで、EGR実施、非実施のいずれにおいても、良好な触媒の劣化診断を可能としていた。本実施の形態では、触媒劣化の有無の判定に使用するCmaxの値をEGRの実施の有無により補正するようにしている。本実施の形態では、EGRの実施時には、測定したCmaxの値をそのまま用いて劣化診断を行うとともに、EGRの非実施時には、測定したCmaxの値にEGR補正を行ったものを用いて劣化診断を行うようにしている。なお、ここでは、EGR非実施時の劣化判定用Cmaxの値がより小さくなるようにEGR補正を行うようにしている。
【0052】
図7は、こうした本実施の形態に採用される触媒劣化診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンの処理は、触媒劣化診断の実行条件が成立したときにECU22により実行されるものとなっている。
【0053】
本ルーチンが開始されると、まずステップS300において、アクティブ空燃比制御が実施される。そして続くステップS301にて、Cmaxの測定が行われる。
続いてステップS302において、EGRが実施されているか否かの判定が行われる。ここでEGRが実施されていれば、ステップS303において、劣化判定用のCmaxに同Cmaxの測定値がそのまま代入される。一方、EGRが実施されていなければ、ステップS304において、劣化判定用のCmaxに、同Cmaxの測定値にEGR補正計数φを乗算した値が代入される。EGR補正係数φは、EGRの実施時、非実施時のCmaxの偏差分を補正するための係数であって、「1.0」よりも小さい値に設定されている。なお、EGR補正係数φの値は、内燃機関の吸入空気量等に応じて可変設定されている。
【0054】
こうして劣化判定用Cmaxが設定されると、次のステップS305において、劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回るか否かが判定される。そして劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回っているのであれば(S305:YES)、ステップS306にて劣化有りとの診断が行われ、そうでなければ(S305:NO)、ステップS307にて劣化無しとの診断が行われる。
【0055】
以上の本実施の形態の触媒劣化の診断装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では劣化の有無の判定に使用するCmaxの値をEGRの実施の有無により補正するようにしている。上述のように劣化の進行度が同じでも、触媒の酸素吸蔵容量は、すなわちCmaxの値は、EGRの実施時よりも非実施時の方が大きくなる。そこで、劣化判定用のCmaxの値を、EGRの非実施時にはその値がより小さくなるように補正すれば、EGRの実施、非実施による触媒の酸素吸蔵容量の変化によらず適切に劣化の有無の診断を行うことが可能となる。したがって、本実施の形態によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0056】
(第4の実施の形態)
次に、本発明の触媒劣化の診断装置を具体化した第4の実施の形態を、図8を併せ参照して詳細に説明する。
【0057】
ところで、高温に曝された期間が長ければ、酸素吸蔵容量が大きいままでも、触媒の排気浄化性能が、特にNOxの浄化性能が低下していることがある。そこで本実施の形態では、劣化の有無の判定に使用するCmaxの値を、触媒が高温に曝された期間が長いほど、その値が小さくなるように補正するようにしている。そしてそれにより、触媒の温度履歴に応じた劣化診断を、酸素吸蔵容量の低下に基づく劣化診断と同時に行うようにしている。
【0058】
図8は、こうした本実施の形態に採用される触媒劣化診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンの処理は、触媒劣化診断の実行条件が成立したときにECU22により実行されるものとなっている。
【0059】
本ルーチンが開始されると、まずステップS400において、アクティブ空燃比制御が実施される。そして続くステップS401にて、Cmaxの測定が行われる。
続いてステップS402において、触媒の温度履歴に基づく温度補正係数μの算出が行われる。ここでの温度補正係数μには、「1.0]以下の正の値が設定され、触媒が高温に曝された期間が長いほど、小さい値が設定される。
【0060】
次に、ステップS403において、EGRが実施されているか否かの判定が行われる。そしてEGRが実施されていれば、ステップS404において、Cmaxの測定値に温度補正係数μを乗算したものが劣化判定用Cmaxの値に代入される。一方、EGRが実施されていなければ、ステップS405において、Cmaxの測定値に温度補正係数μ及び上述のEGR補正係数φを乗算したものが劣化判定用Cmaxの値に代入される。
【0061】
こうして劣化判定用Cmaxが設定されると、続くステップS406において、その劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回っているか否かの判定が行われる。ここで劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回っていれば(S406:YES)、ステップS407にて劣化有りとの診断が行われ、そうでなければ(S406:NO)、ステップS408にて劣化無しとの診断が行われる。
【0062】
以上の本実施の形態の触媒劣化の診断装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では劣化の有無の判定に使用するCmaxの値をEGRの実施の有無により補正するようにしている。そのため、本実施の形態によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0063】
(2)本実施の形態では、劣化の有無の判定に使用するCmax量の値を触媒の温度履歴に応じて補正するようにしている。そのため、酸素吸蔵能力の低下による劣化の診断と同時に、触媒の温度履歴に応じたNOx等の浄化性能の低下による劣化の診断を併せ行うことができる。
【0064】
(第5の実施の形態)
次に、本発明の触媒劣化の診断装置を具体化した第5の実施の形態を、図9を併せ参照して詳細に説明する。
【0065】
先の図11に示したように、EGRの有無により、触媒温度は変化する。具体的には、EGRの実施時に比して非実施時の方が、触媒温度は高くなる傾向にある。そのため、EGR非実施の期間が長いほど、触媒が高温に曝される期間が長くなり、NOx等の浄化性能が低下し易くなる。そこで本実施の形態では、劣化判定用のCmaxの値を、EGRの実施時間と非実施時間との比率に応じて補正するようにしている。そしてこれにより、酸素吸蔵能力の低下による劣化の診断と同時に、触媒の温度履歴に応じたNOx等の浄化性能の低下による劣化の診断を併せ行うようにしている。
【0066】
図9は、こうした本実施の形態に採用される触媒劣化診断ルーチンのフローチャートである。本ルーチンの処理は、触媒劣化診断の実行条件が成立したときにECU22により実行されるものとなっている。
【0067】
本ルーチンが開始されると、まずステップS500において、アクティブ空燃比制御が実施される。そして続くステップS501にて、Cmaxの測定が行われる。
次に、ステップS502において、内燃機関の運転時間に占めるEGR非実施時間の比率に基づく温度補正係数νの算出が行われる。温度補正係数νは、下式(2)に基づいて算出される。
【0068】
温度補正係数ν=β×(EGR非実施時間/内燃機関の運転時間) …(2)
ここで定数βは、図11に示したEGR実施時、非実施時の触媒の温度分布に基づいて設定されている。同図に示すように、EGR実施時の触媒の温度分布において、頻度が最大となるのは800℃であり、その頻度は13%となる。一方、EGR非実施時の触媒の温度分布において、頻度が最大となるのは875℃であり、その頻度は19%となる。そして定数βは、これらにより、下式(3)により算出される。
【0069】
β=(875℃×19%)/(800℃×13%)≒1.6 …(3)
こうして温度補正係数νが算出されると、続くステップS503において、EGRが実施されているか否かの判定が行われる。ここでEGRが実施されていれば、ステップS504において、Cmaxの測定値に温度補正係数νを乗算した値が劣化判定用Cmaxに代入される。一方、EGRが実施されていなければ、ステップS505において、Cmaxの測定値に温度補正係数ν及び上述のEGR補正係数φを乗算したものが劣化判定用Cmaxの値に代入される。
【0070】
こうして劣化判定用Cmaxが設定されると、続くステップS506において、その劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回っているか否かの判定が行われる。ここで劣化判定用Cmaxの値が劣化判定値λを下回っていれば(S506:YES)、ステップS507にて劣化有りとの診断が行われ、そうでなければ(S506:NO)、ステップS508にて劣化無しとの診断が行われる。
【0071】
以上の本実施の形態の触媒劣化の診断装置によれば、以下の効果を奏することができる。
(1)本実施の形態では劣化の有無の判定に使用するCmaxの値をEGRの実施の有無により補正するようにしている。そのため、本実施の形態によれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0072】
(2)本実施の形態では、劣化の有無の判定に使用する酸素吸蔵容量の値を、内燃機関の運転時間に占めるEGRの非実施時間の比率に応じて補正するようにしている。EGRの非実施の時間が長くなれば、触媒が高温に曝される時間が長くなり、触媒が劣化し易くなるが、こうした本実施の形態では、EGRの有無による劣化進行度合いの違いを反映して触媒の劣化診断を行うことが可能となる。
【0073】
なお、上記各実施の形態は以下のように変更して実施することもできる。
・第5の実施の形態では、内燃機関の運転時間に占めるEGR非実施時間の比率から温度補正係数νを算出していたが、内燃機関の運転時間に占めるEGR実施時間の比率から温度補正係数νの算出を行うことも可能である。この場合の温度補正係数νは、EGR実施時の劣化判定用Cmaxの算出に際して、Cmaxの測定値に乗算されることになる。
【0074】
・第3乃至第5の実施の形態では、EGR補正係数φを内燃機関の吸入空気量に応じて算出するようにしていたが、EGR補正係数φの算出にEGRの導入量を反映することも考えられる。この場合のEGR補正係数φには、EGRの導入量が多いほど、小さい値を設定することになる。
【0075】
・第3乃至第5の実施の形態では、EGR実施時には、測定したCmaxの値をそのまま用いて劣化診断を行うとともに、EGR非実施時には、測定したCmaxの値にEGR補正を行ったものを用いて劣化診断を行うようにしている。すなわち、第3の実施の形態では、EGR非実施時のCmax測定値にEGR補正を行ったものを用いて触媒の劣化診断を行うようにしている。なお、EGR実施時のCmax測定値にEGR補正を行ったものを用いて触媒の劣化診断を行うことも可能である。この場合、EGRの実施時には、劣化判定用のCmaxの値がより大きくなるようにEGR補正を行うことになる。
【0076】
・第2の実施の形態では、Cmaxが基準値γを下回ることが確認された回数に基づいて触媒の劣化診断を行うようにしていたが、Cmaxが基準値γを下回っている時間に基づいても触媒の劣化診断を行うことが可能である。この場合にも、EGRの非実施時には、その実施時よりも少ない時間で触媒の劣化有りとの診断を行うようにすれば、EGR導入の如何によらず、触媒の劣化を好適に診断することができる。
【0077】
・第2の実施の形態及びその変形例において、劣化有りと診断する回数又は時間を、EGRの導入量に応じて可変とするようにしても良い。この場合の劣化有りと診断する回数又は時間は、EGRの導入量が多いほど、少ない値に設定されることになる。
【0078】
・第1の実施の形態では、EGR導入時と非導入時とで劣化判定値を切り換えるようにしていたが、EGRの導入量に応じて劣化判定値を変更するようにすることもできる。この場合の劣化判定値には、EGRの導入量が多いほど、大きい値が設定されることになる。
【0079】
・第1及び第2の実施の形態において、触媒の劣化判定に使用するCmaxの値を、触媒の温度履歴や、内燃機関の運転時間に占める排気再循環の非実施時間の比率に応じて補正するようにしても良い。こうした場合には、触媒の温度履歴やEGRの有無による劣化進行度合いの違いを反映した触媒の劣化診断を行うことが可能となる。
【0080】
・上記実施の形態では、触媒の酸素吸蔵容量をCmax法に基づき測定するようにしていたが、他の方法で触媒の酸素吸蔵容量を測定することも可能である。
【符号の説明】
【0081】
1…吸気通路、2…燃焼室、3…排気通路、4…エアクリーナー、5…吸気温度センサー、6…エアフローメーター、7…スロットルモーター、8…スロットルバルブ、9…インジェクター、10…吸気バルブ、11…点火プラグ、12…排気バルブ、13…空燃比センサー、14…触媒コンバーター、15…酸素センサー、16…EGR通路、17…EGRクーラー、18…EGRバルブ、22…電子制御ユニット(ECU)、22…ECU、23…クランクシャフト、24…クランクポジションセンサー、26…スロットルセンサー。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置であって、
排気再循環の実施時に触媒劣化有りと診断される前記酸素吸蔵容量よりも、排気再循環の非実施時に触媒劣化有りと診断される前記酸素吸蔵容量の方が大きい
ことを特徴とする触媒劣化の診断装置。
【請求項2】
酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置であって、
前記酸素吸蔵容量が基準値を下回った回数又は時間によって触媒劣化の有無を判定するとともに、
排気再循環の非実施時には、その実施時よりも少ない前記回数又は時間で触媒の劣化有りとの診断を行う
ことを特徴とする触媒劣化の診断装置。
【請求項3】
酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置であって、
前記診断に係る劣化の有無の判定に使用する前記酸素吸蔵容量の値を排気再循環の実施の有無により補正する
ことを特徴とする触媒劣化の診断装置。
【請求項4】
前記診断に係る劣化の有無の判定に使用する前記酸素吸蔵容量の値を前記触媒の温度履歴に応じて補正する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒劣化の診断装置。
【請求項5】
前記診断に係る劣化の有無の判定に使用する前記酸素吸蔵容量の値を、内燃機関の運転時間に占める排気再循環の非実施時間の比率に応じて補正する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒劣化の診断装置。
【請求項6】
前記酸素吸蔵容量は、触媒に流入する排気の空燃比をリッチ側及びリーン側に強制的に切り換えたときの、リッチ側制御時における酸素放出量の積算値とリーン制御時における酸素吸蔵量の積算値の2つの積算値との平均値として求められる
請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒劣化の診断装置。
【請求項1】
酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置であって、
排気再循環の実施時に触媒劣化有りと診断される前記酸素吸蔵容量よりも、排気再循環の非実施時に触媒劣化有りと診断される前記酸素吸蔵容量の方が大きい
ことを特徴とする触媒劣化の診断装置。
【請求項2】
酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置であって、
前記酸素吸蔵容量が基準値を下回った回数又は時間によって触媒劣化の有無を判定するとともに、
排気再循環の非実施時には、その実施時よりも少ない前記回数又は時間で触媒の劣化有りとの診断を行う
ことを特徴とする触媒劣化の診断装置。
【請求項3】
酸素吸蔵容量の低下から触媒の劣化を診断する装置であって、
前記診断に係る劣化の有無の判定に使用する前記酸素吸蔵容量の値を排気再循環の実施の有無により補正する
ことを特徴とする触媒劣化の診断装置。
【請求項4】
前記診断に係る劣化の有無の判定に使用する前記酸素吸蔵容量の値を前記触媒の温度履歴に応じて補正する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒劣化の診断装置。
【請求項5】
前記診断に係る劣化の有無の判定に使用する前記酸素吸蔵容量の値を、内燃機関の運転時間に占める排気再循環の非実施時間の比率に応じて補正する
請求項1〜3のいずれか1項に記載の触媒劣化の診断装置。
【請求項6】
前記酸素吸蔵容量は、触媒に流入する排気の空燃比をリッチ側及びリーン側に強制的に切り換えたときの、リッチ側制御時における酸素放出量の積算値とリーン制御時における酸素吸蔵量の積算値の2つの積算値との平均値として求められる
請求項1〜5のいずれか1項に記載の触媒劣化の診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2012−112334(P2012−112334A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−262656(P2010−262656)
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】
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