説明

触媒変換器装置の温度を電気の使用により増加させるための抵抗器としての粉末被覆されたニッケル発泡体の使用

開示されている発明は、ディーゼルエンジンの触媒反応の最適化に関する。粉末被覆されたニッケル又は他の金属系発泡体が、触媒変換器の基板兼抵抗器として使用されている。開示されている方法は、電流を用いて金属系発泡体を加熱してディーゼル排気を昇温させ、それにより触媒反応の起こる温度を最適化する閉ループシステムを使用している。開示されている装備は、触媒被覆を備える金属系発泡体基板を備えている。基板は、触媒反応を最適化するべく電流を用いて加熱される。金属系発泡体基板を被覆するのに各種ウォシュコート及び/又は触媒を使用することができ、最適温度は、使用される触媒によって決まる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、触媒変換器の反応の最適化に関する。より厳密には、本開示は、粉末被覆されたニッケル発泡体を、触媒変換器装置の温度を増加させそれにより装置の効率を上げるための抵抗器として使用することに関する。
【背景技術】
【0002】
触媒変換器の温度は、触媒変換器の効率に影響を及ぼす最も重大な要因の1つである。高い温度でも低い温度でも効率は急速に落下するものであり、効率が最大となる動作温度の帯域は比較的狭い帯域に限定される。最も重要なこととして、自動車やトラックのエンジンが動作を開始するとき、触媒変換器は、排気中の汚染物質を減らすのに必要な反応を発生させるには低すぎる温度にある。エンジンが始動したとき、触媒変換器は排気中の汚染物質を減らすために全くと言っていいほど何もしていない。
【0003】
これまで、多くの触媒変換器は、触媒反応を起して有害な排気ガスである主として一酸化炭素(CO)と窒素酸化物(NO)を有害性の低いガスである主として二酸化炭素と窒素(N)と酸素(O)に変換して大気中に吐き出させるのに必要な温度を発生させるために、車両の排気流中に存在する熱を使用してきた。触媒変換器を加熱するのに使用されている1つの解決手法は、触媒変換器をエンジンのより近くへ移し、より高温の排気ガスが変換器に到達できるようにすることである。この配置の仕方は、触媒変換器がより速やかに昇温することを可能にしはするが、変換器を極めて高い温度に曝すことにより変換器の寿命を縮めてしまう可能性がある。
【0004】
触媒変換器を予熱するというのが、効率を上げ排出物を減らすためのもう1つのやり方である。変換器を予熱する場合の最もよく普及しているやり方の1つは、電気抵抗ヒーターを使用することである。殆どの乗用車及びトラックに載っている12ボルトの電気系統では、触媒変換器を十分に速やかに加熱するのに十分なエネルギー又はパワーを提供するのは無理である。高電圧バッテリーパックを備えるハイブリッド車は、触媒変換器を非常に速やかに昇温させるのに十分なパワーを提供できる場合もある。
【0005】
標準エンジンに比べ、ディーゼルエンジンの触媒変換器は、より低い温度で作動しているため、なおいっそう効率が低い。この問題に対する1つの解決手法は、変換器に到達するより手前の排気管に尿素溶液(炭素、窒素、酸素、及び水素で作られている有機化合物)を注入するシステムである。尿素は蒸発し、排気と混ざり合って、窒素酸化物(NO)を減らす化学反応を引き起こす。尿素はNOと反応して窒素と水蒸気を発生させるので、排気ガス中の窒素酸化物が減る。もう1つの方法は、ディーゼル微粒子トラップを、排気流中の可溶性有機分が凝縮する結果としてトラップの中に形成される煤を焼却できるほどに加熱することである。この加熱は、排気ガスを用いて熱的に達成されている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、金属系発泡体を、(単数又は複数の)触媒用の支持体として使用すると共に、閉ループサーモスタット調節式制御装置に取り付けて抵抗器そのものとしても使用している。本発明は、エンジンによって生成される残存電気エネルギーを、車両のラジオの様な他の電子装置と同じ要領で使用して、触媒変換器を、直接、触媒反応を実施するのにより効率的な温度へ加熱する。開示されている発明は、ディーゼルエンジン排気の温度を最適化する方法において、金属発泡体から成る基板を提供する段階と、基板を触媒材料で被覆する段階と、電流を用いて、基板を、触媒反応を最適化するように設計された温度範囲へ加熱する段階と、ディーゼルエンジン排気を基板の上方へ流して触媒材料に前記排気と相互作用させる段階と、を備える方法から成るものである。本発明の全ての実施形態では、基板は、ニッケル発泡体又は金属発泡体の形態をとるものとされている。触媒材料は、更に、ウォッシュコートを備えていてもよい。触媒材料は、鉄マンガン触媒、二酸化チタン触媒、選択的触媒還元(「SCR」)触媒、又は白金触媒を含め、各種触媒で構成することができるであろう。
【0007】
開示されている発明は、更に、ディーゼルエンジン排気システムにおいて、ディーゼル排気を受け取るための入口を有するハウジングと、ハウジング内に在って触媒被覆を有している金属系発泡体基板と、前記基板を加熱するための電気系統と、ディーゼルエンジン排気を排出するための出口と、を備えているディーゼルエンジン排気システムから成るものである。システムの全ての実施形態では、基板は、ニッケル発泡体又は他の金属発泡体の形態をとるものとされている。触媒被覆は、更に、ウォッシュコートを備えていてもよい。触媒被覆は、鉄マンガン触媒、二酸化チタン触媒、SCR触媒、又は白金触媒を含め、各種触媒で構成することができるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】特許請求の対象である金属系発泡体基板兼抵抗器の概略図であり、電流源1、DC制御装置2、金属発泡体シート3、母線4、サーモカプル又は他の高温測定装置5を示している。
【図2】触媒変換器装置の概略図であり、排気1の流れ、通電させる触媒2並びに含まれている発泡体基板3、制御ユニット4、ディーゼル微粒子フィルタ5、第2の触媒6、及びハウジング7を示している。
【発明を実施するための形態】
【0009】
開示されている発明は、粉末被覆されたニッケル発泡体を、触媒変換器装置の温度を増加させそれにより装置の効率を上げるための抵抗器として使用することを記載している。従来、触媒変換器は、幾つかの構成要素、即ち、(1)基板であって、殆どの場合がセラミックハニカム又はステンレス鋼箔ハニカムである基板、(2)ウォッシュコートであって、多くの場合がシリコンとアルミニウムと他の元素の混合物であり、基板表面より遥かに大きい表面積を有する粗く凸凹した表面を形成するウォッシュコート、及び(3)触媒そのものであって、多くの場合が白金やパラジウムの様な貴金属である触媒、から成っている。触媒は、基板へ塗工される前にウォッシュコート(懸濁液)へ添加される。
【0010】
開示されている方法及び装備では、基盤は、粉末被覆されたニッケル発泡体であり、同発泡体は、Inco Limitedに保持されている、2006年2月20日付けの「開放細孔金属発泡体を備えるディーゼル粒子フィルタ」という名称のドイツ特許第DE1025006009164A1号に開示されているプロセスに従って製造されている。100%開放細孔材料の優れた延性と高い可撓性のおかげで、基板設計を自由に決められる。異なった孔隙率により、システムの深層濾過のレベルを定めることが可能になる。発泡体は、その高い温度耐性及び腐食耐性と非常に優れた煤蓄積能力とが相まって、有効な基板としての役目を果たす。製造プロセス時、ニッケル金属発泡体は、特定の用途及び設計に特注仕立てされている高合金粉末で被覆され、熱処理が施される。溶融が起こり、軽金属発泡体の比表面積を拡大させる。同時に、熱伝導性合金発泡体の温度耐性は1000℃まで上がり、ピークは1200℃にもなる。発泡体は、可撓性且つ延性であり、どの長さで切断することもできる。材料は、焼結され、シートとして製造することもできる。当技術では他の型式の金属系抵抗製品も知られており、それらも開示されている方法及び装備で使用することができるであろう。
【0011】
発泡体を触媒変換器として使えるようにするために、発泡体には数多くの異なったウォッシュコート及び/又は触媒を塗工することができる。塗工されている触媒は、二酸化窒素(NO)の量を増加させ、窒素酸化物(NO)の量を減少させ、一酸化炭素(CO)の含有量を減らし、炭化水素の含有量を減らす。更に、発泡体は、受動的に再生するDPFとして機能することができる。ドイツ特許第DE102006009164A1号に開示されている様に、ニッケル発泡体に塗工されている粉末被覆は、鉄とクロムの組合せである。粉末が塗工された後、材料は焼結されて、より広い表面積を持つ材料となる。
【0012】
粉末被覆されたニッケル発泡体は、それ自体は触媒としての性質を持たないが、適切なウォッシュコート及び/又は触媒を含んでいる触媒材料のための優良な支持体である。発泡体には、少なくとも4つの異なった触媒被覆、即ち(1)COを二酸化炭素(CO)に変換する鉄マンガン触媒、(2)COをCOに変換し、炭化水素をCOと水蒸気に変換する、触媒ウォッシュコート及び白金触媒、(3)NOを一酸化窒素(NO)に変換する、二酸化チタン(TO)から作られている触媒、及び(4)NOを窒素ガス(N)と水に変換する触媒、が塗工されている。NOを窒素ガス(N)と水に変換する触媒は、基材金属(バナジウムとタングステンなど)の酸化物とゼオライトを含め、何れの型式のSCR触媒であってもよい。他の触媒被覆が商業的に又は現在の技術に存在しており、それらをニッケル発泡体に塗工することもできる。
【0013】
触媒材料毎に触媒が最も効果を発揮する温度があることはよく知られている。多くのディーゼルシステムでは、排気排出物は、触媒が最も効果を発揮する温度には決して達しないか、或いはゆっくりとしか到達しない。開示されている実施形態では、触媒支持体として使用されている金属発泡体は、少量の電流を用いて触媒を最も効率的な温度に制御するべく電流が送り込まれる。電流は、エンジン活動の副産物として生成されるものであり、よって、エンジン系統へ追加のエネルギーを導入することは無用である。システムは、排気流の温度を測定し次いで電流の量を調節して事前に選択されている温度を維持させるサーモカプルを使用している閉ループシステムである。システムのための回路構成は、電子技術の分野における当業者であれば必要以上の実験をせずとも設計することができるであろう。
【0014】
開示されている装備は、金属発泡体の温度を増加させるために適度な電流を供給することのできるバッテリー又は発電源の何れかに取り付けられている回路を備える調節可能な直流電気源から成る。電流源は、サーモカプルからの、又は限定するわけではないが抵抗温度計、充満式温度計、バイメタル温度計、又は放射高温計を含む他の型式の温度センサーからの、温度入力を受信する比例制御装置によってサーモスタット式に制御されている。システムは、更に、化学技術者ハンドブック(Chemical Engineer's Handbook)の第22章に記載されている装置に従って構築することができるとされる制御装置を含んでいる。電流は、シート又は他の形態をとっている金属発泡体の互いに反対の側に接続されている母線に接続された配線によって運ばれる。発泡体は、エンジンからの排出物を受け入れる容器で、触媒変換器支持体を収容するのに典型的に使用されている様な容器の中に搭載されている。但し、開示されている発明では、触媒支持体は触媒及び周囲の排気を最適温度へ加熱するヒーターとしての役目も果たしている。
【符号の説明】
【0015】
(図1)
1 金属系発泡体基板兼抵抗器の電流源
2 金属系発泡体基板兼抵抗器のDC制御装置
3 金属系発泡体基板兼抵抗器の金属発泡体シート
4 金属系発泡体基板兼抵抗器の母線
5 金属系発泡体基板兼抵抗器のサーモカプル又は他の高温測定装置
(図2)
1 触媒変換器装置の排気
2 触媒変換器装置の触媒
3 触媒変換器装置の発泡体基板
4 触媒変換器装置の制御ユニット
5 触媒変換器装置のディーゼル微粒子フィルタ
6 触媒変換器装置の第2の触媒
7 触媒変換器装置のハウジング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディーゼルエンジン排気の温度を最適化する方法において、
触媒材料で被覆されている金属発泡体から成る基板を提供する段階と、
電流を前記基板に通すことによって、当該基板を、触媒反応を最適化するように設計されている温度範囲へ加熱する段階と、
前記ディーゼルエンジン排気を前記基板の上方へ流して前記触媒材料に当該排気と相互作用させる段階と、を備えている方法。
【請求項2】
前記基板は、ニッケル発泡体の形態をとっている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ウォッシュコートが触媒と組み合わされて前記触媒材料を形成している、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記触媒材料は、鉄マンガン触媒を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記触媒材料は、二酸化チタンから成る触媒を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記触媒材料は、SCR触媒を備えている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
ウォッシュコートが触媒と組み合わされて前記触媒材料を形成している、請求項2に記載の方法。
【請求項8】
前記触媒材料は、鉄マンガン触媒を備えている、請求項2に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒材料は、二酸化チタンから成る触媒を備えている、請求項2に記載の方法。
【請求項10】
前記触媒材料は、SCR触媒から成る触媒を備えている、請求項2に記載の方法。
【請求項11】
前記触媒材料は、鉄マンガン触媒を備えている、請求項3に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒材料は、二酸化チタンから成る触媒を備えている、請求項3に記載の方法。
【請求項13】
前記触媒材料は、SCR触媒から成る触媒を備えている、請求項3に記載の方法。
【請求項14】
前記触媒材料は、白金から成る触媒を備えている、請求項3に記載の方法。
【請求項15】
前記触媒材料は、鉄マンガン触媒を備えている、請求項7に記載の方法。
【請求項16】
前記触媒材料は、二酸化チタンから成る触媒を備えている、請求項7に記載の方法。
【請求項17】
前記触媒材料は、SCR触媒から成る触媒を備えている、請求項7に記載の方法。
【請求項18】
前記触媒材料は、白金から成る触媒を備えている、請求項7に記載の方法。
【請求項19】
ディーゼルエンジン排気システムにおいて、ディーゼル排気を受け取るための入口を有するハウジングと、前記ハウジング内に在って触媒被覆を有している金属系発泡体基板と、前記基板を加熱するための電気系統と、ディーゼルエンジン排気を排出するための出口と、を備えている、ディーゼルエンジン排気システム。
【請求項20】
前記基板は、ニッケル発泡体の形態をとっている、請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
前記触媒被覆は、更に、ウォッシュコートを備えている、請求項19に記載のシステム。
【請求項22】
前記触媒被覆は、鉄マンガン触媒を備えている、請求項19に記載のシステム。
【請求項23】
前記触媒被覆は、二酸化チタンから成る触媒を備えている、請求項19に記載のシステム。
【請求項24】
前記触媒被覆は、SCR触媒から成る触媒を備えている、請求項19に記載のシステム。
【請求項25】
前記触媒被覆は、更に、ウォッシュコートを備えている、請求項20に記載のシステム。
【請求項26】
前記触媒被覆は、鉄マンガン触媒を備えている、請求項20に記載のシステム。
【請求項27】
前記触媒被覆は、二酸化チタンから成る触媒を備えている、請求項20に記載のシステム。
【請求項28】
前記触媒被覆は、SCR触媒から成る触媒を備えている、請求項20に記載のシステム。
【請求項29】
前記触媒被覆は、鉄マンガン触媒を備えている、請求項21に記載のシステム。
【請求項30】
前記触媒被覆は、二酸化チタンから成る触媒を備えている、請求項21に記載の方法。
【請求項31】
前記触媒被覆は、SCR触媒から成る触媒を備えている、請求項21に記載のシステム。
【請求項32】
前記触媒材料は、白金から成る触媒を備えている、請求項21に記載のシステム。
【請求項33】
前記触媒材料は、鉄マンガン触媒を備えている、請求項25に記載のシステム。
【請求項34】
前記触媒材料は、二酸化チタンから成る触媒を備えている、請求項25に記載のシステム。
【請求項35】
前記触媒材料は、SCR触媒から成る触媒を備えている、請求項25に記載のシステム。
【請求項36】
前記触媒材料は、白金から成る触媒を備えている、請求項25に記載のシステム。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2013−510990(P2013−510990A)
【公表日】平成25年3月28日(2013.3.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−538964(P2012−538964)
【出願日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際出願番号】PCT/US2010/056306
【国際公開番号】WO2011/060117
【国際公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(512110514)エアーフロー・カタリスト・システムズ,インコーポレーテッド (2)
【Fターム(参考)】