説明

触媒系

不斉触媒から構成される触媒系で、ここに触媒の多孔率は1.40ml/gより低い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は不斉触媒を含む新しい触媒系に関係する。
【背景技術】
【0002】
1つ以上の触媒成分の溶液(例えば遷移金属および随意的に助触媒)である触媒系は当分野においては均一触媒系として知られている。均一触媒系は重合工程において液状で用いられる。このような系は一般に満足な触媒作用を持つが、かくして作られたポリマーが形態学的に劣る(例えば、末端ポリマーのかさ密度が低いふわふわ形態である)ということが問題であった。その結果として、均一触媒系を用いたスラリーおよび気相反応装置の運転では反応装置の汚れのような実際面の問題を引き起こす。
【0003】
上の問題はいくつかの方法により克服しようと試みられてきている:例えば均一系を実際の重合段階の前にオレフィンモノマーで予備重合されてきている。しかしながらこの前記予備重合ではふわふわ重合物の形成の問題は解決できなかった。Finaのヨーロッパ特許EP426646ではさらにこのようにして得られた重合物の形態を改善するための特定の予備重合条件、すなわち狭く、特定の範囲の反応温度および反応時間を用いることを提案している。
【0004】
国際出願 WO 98/37103 では気相重合により生産されるポリオレフィンの平均粒子寸法を調整するために均一触媒系を特定の寸法の液滴として重合反応装置内に導入している。前記液滴は導入の直前にアトマイザー(例えばスプレーノズル)を用いて形成される。
【0005】
さらに、非溶媒製造法における均一系の問題を克服するために触媒成分を多孔質の有機または無機の保持素材、例えばシリカに、例えばその溶液を含浸させて保持している。
不均一触媒系として知られるこれらの保持体系は、触媒成分をさらに固定し安定させるために追加的に予備重合することもできる。
【0006】
しかしながら、保持および随意的に予備重合された系にもまた問題がある。多孔質の保持素材内で触媒成分を均一に配分すること、および保持体から触媒成分へ到達することが難しいことが起こり得る。このような欠点は触媒の不満足な重合挙動につながり、その結果このようにして得られたポリマー製品の形態もまた劣るものになる。このことはとりわけポリプロピレンを生産しようという場合にその通りとなるが、一方でポリプロピレンはブローフィルム、押出被覆、発泡押出およびブロー成形のように多くの用途に適した高い溶融強度を持たなくてはならない。とりわけ多分岐ポリプロピレン、すなわちポリプロピレンの骨格鎖に比較的多くの側鎖(枝分かれしたポリプロピレン)が与えられているだけでなくさらに一部の側鎖それ自体がさらなる側鎖が付いているもの、を製造する製造法、特に触媒系を開発する際に困難がある。
【0007】
さらに、保持素材内の触媒成分の不均一な分布により重合段階において保持素材の細分化に悪影響を与えることもあり得る。
さらに保持体は触媒の作用、その重合反応性および最終ポリマーの特性に逆効果を与える場合もある。
このため、均一触媒系の特性を改善するために種々の対策が提案されてきている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、触媒系の複雑さのため未だに従来の技術の実践に伴う問題を克服するためにさらに触媒系およびその準備方法を開発する必要がある。とりわけ多分岐ポリプロピレンの製造を可能とする、特に分岐指数g’が 1.00 未満のように低く、かつひずみ硬化係数(SHI@ls−1)が少なくとも0.30 のように高いもの、またはひずみ硬化係数(SHI)が変形速度(dε/dt)の増加と共に増加することを特徴とするポリプロピレンの製造を可能とする触媒系を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明による成果は不斉触媒から構成される触媒系を提供することである。不斉触媒から構成される触媒系がポリプロピレンの生産に適していることがより好ましい。さらにより好適なのは不斉触媒から構成される触媒系がポリプロピレンの生産には適しているがポリエチレンの製造には不適切であるということである。
【0010】
したがって本発明は不斉触媒から構成された新しい触媒系に関係し、ここに触媒系の多孔率は1.40ml/g 未満、より好ましくは 1.30ml/g 未満および最も好ましくは 1.00ml/g 未満である。多孔率は DIN 66135(N)に基づき測定されている。別の好適な実施態様においては、DIN66135に基づく方法で判定した場合に多孔率は検出限界より低い。
【0011】
本発明による不斉触媒はその化学構造が異なる少なくとも2つの有機配位子を含む触媒であることが好ましい。より好ましくは、本発明による不斉触媒はその化学構造が異なる少なくとも2つ有機配位子を含むメタロセン化合物であることである。さらにより好ましくは、本発明による不斉触媒はメタロセン化合物が好ましく、少なくとも2つの化学構造が異なる有機配位子を含む触媒で、かつ触媒はメタロセン化合物で、C−対称および/またはより高位の対称を全く含まないことが好ましい。不斉触媒、より好ましくは不斉メタロセン化合物は、2つの異なる有機配位子を含みかつ橋かけにより連結していることが好ましい。さらにより好ましくは不斉触媒、より好ましくは不斉メタロセン化合物が、ただ2つの有機配位子を含むことで、ただ2つの有機配位子を含みそれらは異なりかつ橋かけにより連結していることがさらにより好ましい。
【0012】
非常に多孔率が低い不斉触媒を含む新触媒系を用いることにより以下に定義するような多分岐ポリプロピレンの製造が可能となる。そのようなポリプロピレンは技術的に既知の触媒では得られない。
【0013】
さらに、本触媒系の表面積は 25m/g未満であることが好ましく、20m/g未満であることがなおより好ましく、15m/g未満であることがさらにより好ましく、10m/g 未満であることがなおさらにより好ましく、5m/g未満であることが最も好ましい。本発明による表面積は ISO 9277(N)にしたがって測定される。
【0014】
とりわけ本発明による触媒系が不斉触媒、すなわち下に定義するような触媒を含み、かつ多孔率がDIN 66135 による方法を適用した場合には不検出でかつ表面積がISO 9277 で測定した場合に5m/g 未満であることが好適である。
採用した不斉触媒は周期律表(IUPAC)の第3から10族またはアクチニドまたはランタニドの遷移金属の有機金属化合物を含むことが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
不斉触媒は次の化学式(I)による遷移金属化合物であることがより好ましい:
(L)MX (I)
ここに
M は周期律表(IUPAC)の第3から10族またはアクチニドまたはランタニドの遷移金属、
それぞれの X は独立的に σの様な1価の陰イオン性配位子、
それぞれの L は独立的に M に配位結合する有機配位子、
R は2つの配位子 L を連結する橋かけ基、
m は 2 または 3、
n は 0 または 1、
q は1、2 または 3、
m+q は金属の原子価に等しい、
ただし、少なくとも2つの配位子「L」の化学構造が異なる。
前記不斉触媒はシングルサイト触媒(SSC)であることが好ましい。
【0016】
より好ましい定義では、それぞれの「L」は独立的に:
(a)置換または非置換のシクロアルキルジエン、すなわち、シクロペンタジエンか、もしくはシクロアルキルジエンのモノ−、ビ−またはマルチ融合誘導体、すなわちシクロペンタジエンで、これらは随意的にさらに周期律表(IUPAC)の13から16族までの置換基および/または1つ以上の複素環原子を担っている;または
(b)周期律表の13から16族の原子から構成される非環式、η− から η− またはη− 配位子で、かつそこでは開鎖配位子が2ヶが好ましいが1ヶまたは2ヶの芳香族または非芳香族環と融合しているか、および/またはさらなる置換基を担う;または
(c)環状 σ−、η− から η− またはη−、単座、二座−または多座配位子で非置換または置換された単環−、二環−または多環式環構造で構成され、これは芳香族または非芳香族環または部分的飽和環系から選択され、かつ炭素環原子および随意的に周期律表の15および16族から選ばれた一つ以上のヘテロ原子を含む。
【0017】
全体の記述を通し、用語「σ−配位子」は既知の意味、すなわち、シグマ結合を介して1ヶ所以上で金属に結合している基と解釈されている。
【0018】
好適な実施態様において、不斉触媒は化学式(I)による遷移金属化合物であることが好ましい:
(L)MX (I)
ここに
M は周期律表(IUPAC)の第3から10族、またはアクチニドまたはランタニドの遷移金属、
それぞれの X は独立的にσの様な1価の陰イオン性配位子、
それぞれの L は独立的に M に配位結合する有機配位子、
ここに有機配位子は不飽和の有機環状配位子で、置換または非置換のシクロアルキルジエン、すなわち、シクロペンタジエン、またはシクロアルキルジエンのモノ−、ビ−またはマルチ融合誘導体、すなわちシクロペンタジエンが好ましく、これらは随意的にさらに周期律表(IUPAC)の13から16族の置換基および/または1つ以上の複素環原子を担い、
R は2つの配位子 L を連結する橋かけ基、
m は 2 または 3、
n は 0 または 1、
q は 1、2 または 3、
m+q は金属の原子価に等しい、
ただし、少なくとも2つの配位子「L」は異なる化学構造であるという条件付である。
【0019】
好適な実施態様によると前記不斉触媒化合物(I)はメタロセンとして知られる化合物群である。前記メタロセンは少なくとも1つ、一般には1、2または3つ、例えば1または2つの有機配位子を担いこれらは、金属、例えばη− 配位子のような η2〜6配位子に η− 結合している。メタロセンは4から6族の遷移金属が好ましく、ジルコニウムがより好ましく、これは η− 配位子を少なくとも1つ含む。
【0020】
不斉触媒化合物は化学式(II)を持つことが好ましい:
(Cp)MX (II)
ここに
M は Zr、Hf または Ti で、Zr が好ましく、
それぞれの X は独立的に σ− 配位子のような一価の陰イオン性配位子、
それぞれの Cp は独立的に不飽和な有機環状配位子で M に配位結合する、
R は2つの配位子 L を連結する橋かけ基、
n は 0 または 1で、より好ましくは 1、
q は1、2 または 3で、より好ましくは 2、
m+q は金属の原子価に等しく、かつ
少なくとも1つの Cp−配位子、好ましくは両方のCp−配位子は非置換シクロペンタジエニル、非置換インデニル、非置換テトラヒドロインデニル、非置換フルオレニル、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル、 置換テトラヒドロインデニル、および置換フルオレニルから成る群から選択される、
ただし両方の Cp−配位子が上述の群から選択される場合には両方のCp−配位子は化学的に互いに異ならなければならないという条件付である。
【0021】
不斉触媒は上で示した化学式(II)のものであることが好ましく、
ここに
M は Zr、
それぞれの X は Cl、
n は 1、および
q は 2 である。
【0022】
非対称構造を得るために、両Cp−配位子は異なる残基をもっていることが好ましい。
両Cp−配位子は置換シクロペンタジエニル環、置換インデニル環、置換テトラヒドロインデニル環、および置換フルオレニル環から選択されることが好ましく、ここにCp−配位子は環に結合する置換基において異なる。
【0023】
随意的な1つ以上の置換基でシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、またはフルオレニルに結合したものは、ハロゲン、ヒドロカルビル(例えばC〜C20−アルキル、C〜C20− アルケニル、C〜C20−アルキニル、C〜C12− シクロアルキル、C〜C20−アリールまたは C〜C20− アリールアルキル)、1、2、3または4つのヘテロ原子を環状部分に含む C〜C12−シクロアルキル、C〜C20− ヘテロアリール、C〜C20−ハロアルキル、−SiR”、−OSiR”、−SR”、−PR”および −NR” を含む群から独立的に選択することができ、ここにそれぞれの R”は独立的に水素またはヒドロカルビル、例えばC〜C20− アルキル、C〜C20−アルケニル、C〜C20− アルキニル、C〜C12−シクロアルキルまたは C−C20− アリールである。
【0024】
より好ましくは両Cp−配位子がインデニル部分でそれぞれのインデニル部分が上に定義した1つまたは2つの置換基を担うことである。より好ましくはそれぞれのCp−配位子がインデニル部分で上に定義した2つの置換基を担うことであり、ただし、置換基は両Cp−配位子が異なる化学構造となるように選ばれる、すなわち両Cp−配位子がインデニル部分に結合した少なくとも1つの置換基で異なる、とりわけインデニル部分の5員環に結合した置換基で異なるという条件付である。
【0025】
さらにより好ましくは両Cpがインデニル部分であることで、ここにインデニル部分はインデニル部分の少なくとも5員環に、より好ましくは第2の位置に、C〜Cアルキルのようなアルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル、およびトリアルキルオキシシロキシから成る群から選択された置換基を含み、それぞれのアルキルは独立的にメチルまたはエチルのようなC〜Cアルキルから選択され、ただし両Cpのインデニル部分は化学的に互いに異ならなければならない、すなわち両Cpのインデニル部分は異なる置換基を含むという条件付である。
【0026】
さらにより好適には両Cpはインデニル部分で、ここにインデニル部分はインデニル部分の少なくとも6員環に、より好ましくは第4位置に、随意的にC〜Cアルキルのような1つ以上の置換基で置換される、フェニルが好ましいがフェニルまたはナフチルのようなC〜C20 芳香族環部分、および芳香族複素環部分から成る群から選択された置換基を含むが、ただし両Cpのインデニル部分は化学的に互いに異ならなければならない、すなわち両Cpのインデニル部分は異なる置換基を含むという条件付である。
【0027】
なおより好ましくは両Cpがインデニル部分で、インデニル部分はインデニル部分の5員環、より好ましくは第2位置に置換基を含み、およびインデニル部分の6員環、より好ましくは第4位置にさらなる置換基を含み、ここに5員環の置換基はC〜Cのようなアルキル、例えばメチル、エチル、イソプロピル、およびトリアルキルオキシシロキシから成る群から選択され、それぞれのアルキルはメチルまたはエチルのようなC〜Cアルキルから独立的に選択され、6員環のさらなる置換基は、随意的にC〜Cアルキルのような1つ以上の置換基で置換される、フェニルが好ましいがフェニルまたはナフチルのようなC〜C20の芳香族環部分、および芳香族複素環部分から成る群から選択されるが、ただし両Cpのインデニル部分は化学的に互いに異ならなければならない、すなわち両Cpのインデニル部分は異なる置換基を含むという条件付である。とりわけ好適なのは、両Cpがそれぞれ2つの置換基を含むインデニル環でインデニル環の5員環に結合している置換基において異なることである。
【0028】
部分「R」に関しては、「R」が化学式(III)を持つことが好適である:
−Y(R’)− (III)
ここに
Y は C、Si または Ge、および
R’は Cから C20アルキル、C〜C12 アリール、C〜C12 アリールアルキルまたはトリメチルシリルである。
【0029】
上に定義したような不斉触媒の両Cp−配位子が、とりわけ2つのインデニル部分が、橋かけメンバーR で連結されている場合には、橋かけメンバー R は一般的には第1の位置に配置される。橋かけメンバー R は1つ以上の橋かけ原子を含む場合があり、例えば C、Si および/または Ge から、好ましくは C および/または Si から選択される。好ましい橋かけ R の1つは −Si(R’)− で、ここに R’は例えば、C〜C10アルキル、C〜C12 アリールのような C〜C20アルキル、または C〜C12アリールアルキルのような C〜C40の1つ以上から独立的に選択され、ここにアルキルとしてまたはアリールアルキルの一部としてのアルキルは、メチルが好ましいがエチルかメチルのようなC〜Cアルキルが好ましく、アリールはフェニルが好ましい。橋かけ−Si(R’)− は例えば −Si(C〜Cアルキル)−、−Si(フェニル)−または −Si(Me)− のような −Si(C〜Cアルキル)(フェニル)−が好ましい。
【0030】
好適な実施態様において不斉触媒は化学式(IV)で定義される:
(Cp)ZrX (IV)
ここに
それぞれの X は独立的に、σ− 配位子、とりわけ塩素などハロゲンのような1価の陰イオン性配位子、
両 Cp は M に配位結合し非置換シクロペンタジエニル、非置換インデニル、非置換テトラヒドロインデニル、非置換フルオレニル、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル、置換テトラヒドロインデニル、および置換フルオレニルから成る群から選択されるが、両Cp−配位子は化学的に互いに異ならねばならないという条件付であり、さらに
R は2つの配位子 L を連結する橋かけ基で、ここに R は化学式(III)で定義される:
【0031】
−Y(R’)− (III)
ここに
Y は C、Si または Ge、および
R’は Cから C20のアルキル、C〜C12 アリール、C〜C12 アリールアルキルまたはトリメチルシリルである。
【0032】
より好ましくは不斉触媒は化学式(IV)で定義され、その両 Cp が置換シクロペンタジエニル、置換インデニル、置換テトラヒドロインデニル、および置換フルオレニルから成る群から選択される。
【0033】
なおより好ましくは不斉触媒が化学式(IV)で定義され、その両Cpは置換シクロペンタジエニル、置換インデニル、置換テトラヒドロインデニル、および置換フルオレニルから成る群から選択されるが、ただし両Cp配位子の置換基が異なる、すなわち上で定義した置換基がシクロペンタジエニル、インデニル、テトラヒドロインデニル、またはフルオレニルに結合しているという条件付である。
【0034】
さらにより好ましくは不斉触媒が化学式(IV)で定義され、その両Cpがインデニルであり、かつ両インデニルが1つの置換基において異なる、すなわち上で定義した置換基においてインデニルの5員環に結合していることである。
とりわけ、不斉触媒が上に定義したように非シリカ保持体触媒であること、とりわけ上で定義したメタロセン触媒であることが好適である。
【0035】
好適な実施態様において不斉触媒はジメチルシランジイル[(2−メチル−(4’−第3ブチル)−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−(4’−第3ブチル)−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウムジクロリドである。より好適な前記不斉触媒はシリカ保持体ではない。
上述の不斉触媒成分は国際出願WO01/48034に記載の方法にしたがって調えられる。
【0036】
不斉触媒系が国際出願 WO 03/051934 に記載されているエマルジョン凝固法により得ることがとりわけ好適である。この文献はここに全体として本願に引用し本明細書とする。かくして不斉触媒は固体触媒粒子の形状であることが好ましく、以下の手順から構成される工程で得られる:
a)1種類以上の不斉触媒成分の溶液を準備する;
b)前記溶液をこれと不混和性の溶媒中に分散し前記の1種類以上の触媒成分が液滴の分散相として存在するエマルジョンを形成する;
c)前記分散相を固化し前記液滴を固体粒子に転換し随意的に前記粒子を回収して前記触媒を得る。
【0037】
好ましくは溶媒、より好ましくは有機溶媒が前記溶液を形成するために用いられる。有機溶媒は直鎖アルカン、環状アルカン、直鎖アルケン、環状アルケン、芳香族炭化水素およびハロゲン含有炭化水素から成る群から選択されることがさらにより好ましい。
【0038】
さらに、連続相を形成する不混和性の溶媒は不活性溶媒で、より好ましくは不混和性の溶媒はフッ化有機溶媒および/またはその機能性誘導体を含み、さらにより好ましくは不混和性の溶媒は半−、高−、または過フッ化炭化水素および/またはその機能性誘導体を含む。前記不混和性の溶媒がペルフルオロヒドロカーボンまたはその機能性誘導体を含むことがとりわけ好適で、C〜C30ペルフルオロアルカン類、−アルケン類または −シクロアルカン類が好ましく、C〜C10 ペルフルオロアルカン類、−アルケン類または −シクロアルカン類がより好適で、ペルフルオロヘキサン、ペルフルオロヘプタン、ペルフルオロオクタンまたはペルフルオロ(メチルシクロヘキサン)またはこれらの混合物がとりわけ好適である。
【0039】
さらに、前記連続相および前記分散相を含むエマルジョンは技術的には2相または多相系として知られるものであることが好適である。エマルジョンを形成するために乳化剤を用いることもできる。エマルジョン系を形成した後、前記触媒は前記溶液内の触媒成分からそのまま形成される。
【0040】
原則的に、乳化剤はエマルジョンの形成および/または安定化に寄与しかつ触媒の触媒活動に悪影響がない全ての適当な物質であってもよい。乳化剤は例えば炭化水素をベースとした界面活性剤であってもよく、該炭化水素は随意的にヘテロ原子、好ましくは官能基を随意的に持つハロゲン化炭化水素の、好ましくは技術的に既知の半−、高−または過フッ化炭化水素で遮られる構造である。あるいは、乳化剤はエマルジョンの準備中に、例えば界面活性剤前駆物質を触媒溶液の化合物と反応させて製造される場合もある。前記界面活性剤前駆物質は少なくとも1つの官能基を伴うハロゲン化炭化水素の場合もあり、例えば高度にフッ化したCから C30 アルコールで、これは例えばアルミノキサンのような助触媒成分と反応する。
【0041】
原則的に分散した液滴から固体粒子を形成するためにはどのような固化方法も用いることができる。ある好ましい実施態様において固化は温度変化処理により生じている。かくして、エマルジョンは最大10℃/分、好ましくは 0.5 から 6℃/分およびより好ましくは1から 5℃/分の緩やかな温度変化に曝される。さらにより好適にはエマルジョンは10秒未満、好ましくは 6秒未満に、40℃を超える、好ましくは 50℃を超える温度変化に曝される。
【0042】
回収された粒子は平均寸法が 5 から 200μm の範囲であることが好ましく、10から100μm がより好ましい。
さらに、固化された粒子の形状は球形であることが好ましく、事前に決めた粒子寸法分布および上に述べた表面積は25m/g 未満であることが好ましく、20m/g 未満であることがさらにより好ましく、15m/g 未満であることがなおより好ましく、10m/g未満であることがなおさらにより好ましく、5m/g 未満であることが最も好ましいが、ここに前記粒子は上に記載した工程により得られる。
【0043】
連続相および分散相系、エマルジョン形成方法、乳化剤および固化方法の実施態様および実施例についてのさらなる詳細は、例えば上で言及した国際特許出願WO03/051934を引用している。
上に述べたように触媒系はさらに助触媒として活性剤を含む場合もあり、これは国際出願WO03/051934に記載されており、ここに本願に引用して本明細書とする。
【0044】
メタロセンおよび非メタロセン用の触媒として好適なのは、必要なら、アルミノキサン類で、とりわけC〜C10−アルキルアルミノキサン類、とりわけメチルアルミノキサン(MAO)である。このようなアルミノキサン類は単独の触媒としてもまたは他の触媒と共に用いることもできる。かくしてアルミノキサン類とは別に、またはこれに加えて、他の陽イオン複合体形成触媒活性剤を用いることができる。前記活性剤は市販されているしまたは先行技術文献にしたがって準備することができる。
【0045】
さらなるアルミノキサン助触媒が国際出願WO 94/28034に記載されていて、ここに本願に引用して本明細書とする。これらは直鎖状または環状オリゴマーで最大40まで、好ましくは3から20の、−(Al(R”’)O)−繰り返しユニットを持つ(ここにR”’は水素、C〜C10−アルキル(メチルが好ましい)または C〜C18−アリールまたはこれらの混合物である)。
【0046】
このような活性剤の使用および量はこの分野の専門家の技術の範疇内である。実例として、ホウ素活性剤では、ホウ素活性剤に対する遷移金属の比率が5:1から1:5、好ましくは2:1から1:2、例えば1:1で用いることができる。メチルアルミニウムオキサン(MAO)のような好適なアルミノキサン類の場合、アルミノキサンにより供給されるAlの量はAl:遷移金属のモル比が例えば1 から 10000、5 から 8000が適し、好ましくは 10 から 7000、例えば 100 から 4000 の 1000 から3000のような範囲で供給するように選定できる。一般に個体(不均一)触媒の場合には比率は500 未満が好ましい。
【0047】
本発明による触媒に用いられる助触媒の量はこのように変動し、状況および当業者が周知するやり方で選定した特定の遷移金属化合物次第である。
有機遷移化合物を含む溶液に加えるべき全ての追加的な化合物は前記溶液に分散手順の前に、または反対に後に加えることができる。
【0048】
さらに、本発明は上に定義した触媒系をポリマー類、とりわけポリプロピレン、例えば多数の側鎖を持ちそれら自体もさらに側鎖を持つ(多分岐ポリプロピレン)ポリプロピレンの製造のために用いることにも関係する。さらにより好適なことに上に定義した触媒系は以下に定義するポリプロピレンの製造に用いられる。
【0049】
かくして、本発明は第1の実施態様において、以下であるポリプロピレンに関係する:
a.分岐指数 g’が 1.00未満であり、および/または
b.180℃ の温度で 1.00s−1 の変形速度 dε/dt により測定したひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.30あること、ここにひずみ硬化指数(SHI)はHenchyひずみの底を10とする対数(以下、常用対数と称す)(lg(ε))の関数である引張応力増加関数の常用対数(lg(η))のHenchyひずみが1から3の範囲の傾斜として定義される。
驚くべきことに、このような特性のポリプロピレンは技術的に知られているポリプロピレンに比べて優れた特性を持つことが見いだされた。特に、押出工程におけるポリプロピレンの溶融物は高い安定性を示す。
【0050】
新しいポリプロピレンはとりわけ伸長溶融流れ特性に特徴がある。伸長流れ、つまり粘性素材の延伸を伴う変形は典型的なポリマー処理作業で起こる纏めおよび絞り流れの変形の主要な形である。伸長溶融流れの測定はポリマーを特徴づける上で特に有用でありそれはこれらがテストしている重合系の分子構造に対し非常に敏感であるからである。Henckyひずみ速度とも称される伸長の真のひずみ速度が一定の場合、単純伸長はこれが単純剪断の流れよりもずっと高い度合いの分子配向および伸長を起こすという意味で「強流れ」であるといわれる。その結果、伸長流れは長鎖分岐のような結晶化度およびマクロ構造効果に対して非常に敏感であり、このためこれらはポリマーの特徴付けに関しては、剪断流れを応用する他の型のバルクレオロジー測定よりもはるかに説明的である。
【0051】
本発明の第1実施態様に基づくポリプロピレンの第1の特徴は、分岐指数g’が必ず1.00未満となることで、より好ましくは0.90未満、さらにより好ましくは0.80未満となる。好適な実施態様においては、分岐指数g’は必ず0.75未満となる。分岐指数g’は分岐の程度を定義づけさらにポリマーの分岐の量に関連する。分岐指数g’はg’=[IV]br/[IV]linで定義されここにg’は分岐指数、[IV]br は分岐ポリプロピレンの固有粘度および[IV]lin は分岐ポリプロピレンと同じ重量平均分子量(±10%範囲内)を持つ直鎖状ポリプロピレンの固有粘度である。これにより、低いg’値は高分岐ポリマーの指標となる。言い換えると、g’値が減少するならポリプロピレンの分岐が増加する。これに関連した参考資料はB.H.ZimmおよびW.H.Stockmeyer,J.Chem.Phys.17,1301(1949)にある。この文献を本願に引用して本明細書とする。
【0052】
分岐指数g’を判定するために必要な固有粘度は DIN ISO 1628/1、1999年10月(135℃のデカリン内)に基づき測定される。
第1の実施態様に基づくポリプロピレンのさらなる要件および/または代用特性はひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.30、より好適には少なくとも0.40、さらにより好適には少なくとも0.50 であるべきことである。好適な実施態様においてはひずみ硬化指数(SHI@1s−1)は少なくとも0.55である。
【0053】
ひずみ硬化指数はポリプロピレン溶融物のひずみ硬化挙動に対する指標である。本発明においてひずみ硬化指数(SHI@1s−1)は、ひずみ硬化の性質を判定するために温度180℃における 1.00s−1 の変形速度 dε/dt で測定されてきているが、ここにひずみ硬化指数(SHI)は引張応力増加関数ηを Henchy ひずみ ε の関数とした 1 から 3 の範囲の対数目盛上の傾斜として定義される。これに関して Henchyひずみ ε は次の式で定義される:
【0054】
【数1】

【0055】
【数2】

「L」は伸ばされている試料サンプルの一定の、無支持の長さで、主ドラムおよび従ドラムの中心線間距離に等しく
「R」は等寸法の巻き取りドラムの半径、および
「Ω」は駆動軸の一定回転速度である。
【0056】
同様に引張応力増加関数 ηは次式で定義される
【数3】

【0057】
Henchyひずみ速度ε´ は Henchyひずみ ε と同様に定義される
「F」は接線方向の引張力で、測定トルク信号「T」から計算される
「R」は等寸法巻き取りドラムの半径である
「T」は測定したトルク信号で、接線方向の引張力「F」に関係する
「A」は引き伸ばした溶融試料の瞬間的断面積である
「A」は固体状態の(つまり溶融前の)試料の断面積である
「d」は固体状態の密度(ISO 1183 にしたがって決定)であり
「d」はポリマーの溶融密度(ISO 1133、手順 B にしたがって決定)である。
【0058】
なお、ポリプロピレンがひずみ速度の濃化を示すことが好適で、これは引張り速度につれてひずみ硬化が増加することを意味する。SHI@1s−1の測定と同様に、ひずみ硬化指数(SHI)も異なるひずみ速度で判定することができる。ひずみ硬化指数(SHI)は Henckyひずみ ε の常用対数 lg(ε)の関数である引張応力増加関数 ηの常用対数 lg(η)のHenckyひずみ 1.00 から 3.00 上の温度180℃の傾斜として定義され、ここに SHI@0.1s−1 は 0.10s−1の変形速度ε´ により決定され、SHI@0.3s−1 は 0.30s−1 の変形速度ε´により判定され、SHI@3s−1 は3.00s−1の変形速度ε´により判定され、SHI@10s−1 は10.0s−1の変形速度ε´により判定される。これら 0.10、0.30、1.00、3.00 および10.0s−1の5つのひずみ速度ε´ のひずみ硬化指数(SHI)の比較において、ε´の常用対数(lg(ε´))の関数である傾斜は多分岐特有の指標である。したがって、多分岐指数(MBI)はlg(ε´)の関数である SHI の傾斜として、すなわちひずみ硬化指数(SHI)対 lg(ε´)の最小二乗法による近似直線の傾斜として定義され、ひずみ硬化指数(SHI)は0.05s−1 および 20.0s−1の間の変形速度ε´ で定義されることが好ましく、0.10s−1 および 10.0s−1 の間がより好ましく、0.10、0.30、1.00、3.00および10.0s−1における変形速度がさらにより好ましい。なおより好ましくは変形速度 0.10、0.30、1.00、3.00および10.0s−1 から決定されたSHI値が多分岐指数(MBI)を確立する際の最小二乗法による直線近似に用いられることである。
【0059】
したがって、本発明のさらに好適である必要条件は多分岐指数(MBI)が少なくとも0.15、より好ましくは少なくとも0.20、およびさらにより好ましくは0.25となることである。なおより好適な実施態様においては、多分岐指数(MBI)は少なくとも0.28である。
【0060】
とりわけ好適なのは本発明によるポリプロピレンの分岐指数g’が 1.00未満、ひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも 0.30 および多分岐指数(MBI)が少なくとも0.15であることである。さらにより好適なのは本発明によるポリプロピレンの分岐指数g’が0.80未満、ひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.40および多分岐指数(MBI)が少なくとも0.15であることである。別の好適な実施態様において本発明によるポリプロピレンの分岐指数g’が 1.00未満、ひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.30および多分岐指数(MBI)が少なくとも0.20である。さらに別の好適な実施態様において本発明によるポリプロピレンの分岐指数g’が1.00未満、ひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.40および多分岐指数(MBI)が少なくとも0.20である。なおさらに別の好適な実施態様において本発明によるポリプロピレンの分岐指数g’が0.80未満、ひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.50および多分岐指数(MBI)が少なくとも0.30である。
【0061】
したがって本発明によるポリプロピレン、すなわち多分岐ポリプロピレンはそのひずみ硬化指数(SHI)が変形速度ε´と共に増加するという事実、すなわち他のポリプロピレンでは観察できない現象により特徴づけられている。単分岐のポリマータイプ(いわゆるYポリマーで骨格鎖に1本の長い側鎖を持ちその構造が「Y」に似ている)またはH分岐のポリマータイプ(2つのポリマー鎖が橋かけ基により連結され構造が「H」に似ている)は直鎖状または短鎖分岐ポリマーと同様にこのような関連を示さない、すなわちひずみ硬化指数(SHI)は変形速度に影響されない(図2および3参照)。したがって、既知のポリマー、とりわけ既知のポリプロピレン類およびポリエチレン類のひずみ硬化指数(SHI)は変形速度(dε/dt)の増加に伴い増加しないか無視できる範囲でしか増加しない。延伸流れを伴う工業的な転換工程においては非常に速い伸長速度で運転される。したがって高いひずみ速度でより明白なひずみ硬化(ひずみ硬化指数SHIで測定される)を示す材料の優位さは明らかである。材料がより速く延伸される程、ひずみ硬化指数(SHI)は高く、したがって材料は転換時により安定となる。特に高速押出工程において、多分岐ポリプロピレンの溶融物は高い安定性を持つ。
【0062】
分岐指数g’、引張応力増加関数η、Henckyひずみ速度ε´、Henckyひずみεおよび多分岐指数(MBI)に対する関連データを得るために用いられる測定方法に関連するさらなる情報については例の項で言及している。
【0063】
第2の実施態様において、本発明はひずみ硬化が伸長速度に伴って増加することを意味するひずみ速度の濃化を示すポリプロピレンに関係している。ひずみ硬化指数(SHI)は異なるひずみ速度で決定することができる。ひずみ硬化指数(SHI)は温度180℃において1.00から3.00の対数目盛上のHenckyひずみεの関数である引張応力増加関数ηの傾斜として定義され、ここにSHI@0.1s−1は0.10s−1の変形速度ε´により決定され、SHI@0.3s−1は0.30s−1の変形速度ε´により決定され、SHI@3s−1は3.00s−1の変形速度ε´により決定され、SHI@10s−1は10.0s−1の変形速度ε´により決定される。これら0.10、0.30、1.00、3.00および10.0s−1の5つのひずみ速度ε´のひずみ硬化指数の比較において、ε´の常用対数lg(ε´)の関数であるひずみ硬化指数(SHI)の傾斜は多分岐に特有の指標である。したがって、多分岐指数(MBI)はひずみ硬化指数(lg(ε´)の関数としてのSHI)の傾斜として、すなわちひずみ硬化指数(SHI)対lg(ε´)の最小二乗法による近似直線の傾斜として定義され、ひずみ硬化指数(SHI)は0.05s−1および20.0s−1の間の変形速度ε´で定義されることが好ましく、0.10s−1および10.0s−1の間がより好ましく、0.10、0.30、1.00、3.00および10.0s−1の変形速度がさらにより好ましい。なおより好ましくは変形速度0.10、0.30、1.00、3.00および10.0s−1 から決定されたSHI値が多分岐指数(MBI)を確立する際の最小二乗法による直線近似に用いられることである。
【0064】
したがって、第2の実施態様においてポリプロピレンは少なくとも0.15の多分岐指数(MBI)を持つ。
驚いたことに、このような特性を持つポリプロピレンは技術的に知られているポリプロピレンに比べて勝れた特徴を持つことが見いだされている。とりわけ、押出工程におけるポリプロピレンの溶融物は高い安定性を持っている。
【0065】
新しいポリプロピレンはとりわけ伸長溶融流れ特性に特徴がある。伸長流れ、つまり粘性素材の延伸を伴う変形は典型的なポリマー処理作業で起こる纏めおよび絞り流れの変形の主要な形である。伸長溶融流れの測定はポリマーを特徴づける上で特に有用でありそれはこれらがテストしている重合系の分子構造に対し非常に敏感であるからである。Henckyひずみ速度とも称される伸長の真のひずみ速度が一定の場合、単純伸長はこれが単純剪断の流れよりもずっと高い度合いの分子配向および伸長を起こすという意味で「強流れ」であるといわれる。その結果、伸長流れは長鎖分岐のような結晶化度およびマクロ構造効果に対して非常に敏感であり、このためこれらはポリマーの特徴付けに関しては、剪断流れを応用する他の型のバルクレオロジー測定よりもはるかに説明的である。
【0066】
本発明に基づく第1の必要条件はポリプロピレンが少なくとも0.15、より好ましくは少なくとも0.20、およびなおより好ましくは少なくとも0.30の多分岐指数(MBI)を持つことである。
上に述べたように、多分岐指数(MBI)はlg(dε/dt)[dSHI/dlg(dε/dt)]の関数として表した多分岐指数(MBI)の傾斜として定義される。
【0067】
したがって本発明によるポリプロピレン、すなわち多分岐ポリプロピレンはそのひずみ硬化指数(SHI)が変形速度ε´と共に増加するという事実、すなわち他のポリプロピレンでは観察できない現象により特徴づけられている。単分岐のポリマータイプ(いわゆるY ポリマーで骨格鎖に1本の長い側鎖を持ちその構造が「Y」に似ている)または H 分岐のポリマータイプ(2つのポリマー鎖が橋かけ基により連結され構造が「H」に似ている)は直鎖状または短鎖分岐ポリマーと同様にこのような関連を示さない、すなわちひずみ硬化指数(SHI)は変形速度に影響されない(図2および3参照)。したがって、既知のポリマー、とりわけ既知のポリプロピレン類およびポリエチレン類のひずみ硬化指数(SHI)は変形速度(dε/dt)の増加に伴い増加しないか無視できる範囲でしか増加しない。延伸流れを伴う工業的な転換工程においては非常に速い伸長速度で運転される。したがって高いひずみ速度でより明白なひずみ硬化(ひずみ硬化指数(SHI)で測定される)を示す材料の優位さは明らかである。材料がより速く延伸される程、ひずみ硬化指数は高く、したがって材料は転換時により安定となる。特に高速押出工程においては、多分岐ポリプロピレンの溶融物は高い安定性を持つ。
【0068】
さらなる必要条件はひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.30、より好適には少なくとも0.40、なおより好適には少なくとも 0.50でなくてはならないということである。
【0069】
ひずみ硬化指数はポリプロピレン溶融物のひずみ硬化挙動に対する指標である。本発明においてひずみ硬化指数(SHI@1s−1)は、ひずみ硬化の性質を判定するために温度180℃における1.00s−1の変形速度dε/dtで測定されてきているが、ここにひずみ硬化指数(SHI)は引張応力増加関数ηを Henchyひずみεの関数とした1から3の範囲の対数目盛上の傾斜として定義される。これに関してHenchyひずみεは次の式で定義される:
【0070】
【数4】

【数5】

「L」は伸ばされている試料サンプルの一定の、無支持の長さで、主ドラムおよび従ドラムの中心線間距離に等しく
「R」は等寸法の巻き取りドラムの半径、および
「Ω」は駆動軸の一定回転速度である。
【0071】
同様に引張応力増加関数 ηは次式で定義される
【数6】

【0072】
ここに
Henchyひずみ速度ε´は Henchyひずみεと同様に定義される
「F」は接線方向の引張力で、測定トルク信号「T」から計算される
「R」は等寸法巻き取りドラムの半径である
「T」は測定したトルク信号で、接線方向の引張力「F」に関係する
「A」は引き伸ばした溶融試料の瞬間的断面積である
「A」は固体状態の(つまり溶融前の)試料の断面積である
「d」は固体状態の密度(ISO 1183 にしたがって決定)であり
「d」はポリマーの溶融密度(ISO 1133、手順Bにしたがって決定)である。
【0073】
さらに、分岐指数g’は好ましくは 1.00未満となるべきで、より好ましくは0.90未満で、さらにより好ましくは0.80未満である。好適な実施態様においては、分岐指数g’は0.70未満となるべきである。分岐指数g’は分岐の程度を定義しさらにポリマーの分岐の量にも関連する。分岐指数g’はg’=[IV]br/[IV]lin で定義されここにg’は分岐指数、[IV]brは分岐ポリプロピレンの固有粘度、および [IV]lin は分岐ポリエチレンと同じ重量平均分子量(±10%範囲内)を持つ直鎖状ポリプロピレンの固有粘度である。これにより、g’値が低いことは高分岐ポリマーの指標となる。言い換えると、g’値が減少するとポリプロピレンの分岐が増加する。これに関連した参考資料はB.H.Zimmおよび W.H.Stockmeyer,J.Chem.Phys.17,1301(1949)にある。この文献を本願に引用して本明細書とする。
【0074】
分岐指数g’を決定するために必要な固有粘度はDIN ISO 1628/1、1999年10月(135℃のデカリン内)に基づき測定される。
多分岐指数(MBI)、引張応力増加関数η、Henckyひずみ速度ε´、Henckyひずみεおよび分岐指数g’に対する関連データを得るために用いられる測定方法に関連するさらなる情報は実施例の項で言及する。
【0075】
とりわけ好適なのは本発明によるポリプロピレンの分岐指数g’が1.00未満、ひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.30および多分岐指数(MBI)が少なくとも0.15 であることである。さらにより好適なのは本発明によるポリプロピレンの分岐指数g’が0.80未満、ひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.40および多分岐指数(MBI)が少なくとも0.15であることである。別の好適な実施態様において本発明によるポリプロピレンの分岐指数g’が1.00未満、ひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.30および多分岐指数(MBI)が少なくとも0.20である。さらに別の好適な実施態様において本発明によるポリプロピレンの分岐指数g’が1.00未満、ひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.40および多分岐指数(MBI)が少なくとも0.20である。なおさらに別の好適な実施態様において本発明によるポリプロピレンの分岐指数g’が0.80未満、ひずみ硬化指数(SHI@1s−1)が少なくとも0.50および多分岐指数(MBI)が少なくとも0.30である。
下に言及する事項は両実施態様、すなわち上で定義した第1および第2実施態様に適用できる。
【0076】
さらに、ポリプロピレンは特定の範囲内にある溶融流動速度(MFR)を持つことが好適である。溶融流動速度は主に平均分子量に依存する。これは長い分子の方が短い分子よりも素材に低い流動性を与えるという事実による。分子量の増加はMFR値の減少を意味する。溶融流動速度(MFR)は指定された温度および圧力条件の元で規定の金型を通して排出されるポリマーのg/10分で測定され、同様にそれぞれのポリマーのタイプのポリマーの粘度の測定値は、主にその分子量の、しかし同時にその分岐の程度の影響を受ける。230℃で荷重2.16kgの許(ISO133)で測定した溶融流動速度はMFRと表示される。というわけで、本発明の中でポリプロピレンのMFRの範囲は0.01から1000.00g/10分が好適で、0.01から100.00g/10分がより好ましく、0.05から50g/10分がなおより好ましい。好適な実施態様においてMFRは、1.00から11.00g/10分の範囲内である。別の好適な実施態様に於いてMFRは、3.00から11.00g/10分の範囲内である。
【0077】
数平均分子量(Mn)はそれぞれの分子量範囲の分子の数のプロットの分子量に対する1次モーメントとして表現されるポリマーの平均分子量である。実質的に、これは全ての分子の合計分子量を分子の数で割ったものである。同様に、重量平均分子量(Mw)はそれぞれの分子量範囲のポリマーの重量のプロットの分子量に対する1次モーメントである。
数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)は分子量分布と同様に立体排除クロマトグラフィー(SEC)によりオンラインの粘度計付きのWaters AllianceGPCV2000装置を用いて判定される。オーブン温度は140℃である。溶媒としてトリクロロベンゼンを用いる。
【0078】
ポリプロピレンは10000から2000000g/モルの重量平均分子量(Mw)であることが好適で、20000から1500000g/モルがより好ましい。
より好ましくは本発明によるポリプロピレンはかなり高い5価の基の濃度、すなわち90%より高く、より好ましくは92%より高く、および最も好ましくは93%より高くなくてはならない。別の好適な実施態様においては5価の基の濃度は95%より高い。5価の基の濃度はポリプロピレンの規則性分布の狭さの指標である。
【0079】
さらに、ポリプロピレンの溶融温度Tmが125℃ より高いことが好適である。ポリプロピレンが下に定義するようにポリプロピレンのコポリマーであるならば溶融温度が125℃より高いことがとりわけ好適である。同様に、ポリプロピレンが下に定義するようにポリプロピレンのホモポリマーの場合はポリプロピレンの溶融温度が150℃より高いことが好適で、155℃より高いことがより好適である。
【0080】
より好ましくは本発明によるポリプロピレンは多峰性であることで、2峰性であることがさらにより好適である。「多峰性」または「2峰性分布」とは幾つかの極大を持つ頻度分布を意味する。とりわけ、「ポリマーの様相」という表現はその分子量分布(MWD)曲線の形、すなわちポリマー重量割合をその分子量の関数としたグラフの形を意味する。ポリマーを逐次処理工程、すなわち連続的に組み合わせた反応器を利用しかつそれぞれの反応器で異なる条件を用いて製造するなら、異なるポリマー部分が異なる反応器で製造されそれぞれが独自の分子量分布を持ち、それが互いにかなり異なる可能性がある。できた最終ポリマーの分子量分布曲線はポリマー部分の分子量分布曲線の重ね合わせとして見ることができ、これは、当然ながら、より明確な極大を示すか、または少なくとも個別の部分に比べて明らかに広がっている。
【0081】
このような分子量分布を示すポリマーはそれぞれ、2峰性または多峰性と呼ばれる。
ポリプロピレンは2峰性が好ましい。
本発明によるポリプロピレンはホモポリマーでもコポリマーであってもよい。したがって、ホモポリマーはコポリマーと同様に多峰性ポリマー組成物になることができる。
ここに用いるホモポリマーという表現は実質的に、すなわち少なくとも97wt%、好ましくは少なくとも99wt%、および最も好ましくは少なくとも99.8wt%のプロピレン単位から成るポリプロピレンに合致する。
【0082】
本発明によるポリプロピレンがプロピレンコポリマーである場合、コモノマーはエチレンであることが好適である。しかしながら、技術的に知られた他のコモノマーもまた適切である。プロピレンコポリマー中のコモノマー、より好ましくはエチレンの合計量は30wt%までが好ましく、25wt%までがより好ましい。
好適な実施態様において、ポリプロピレンはポリプロピレンマトリックスおよびエチレン−プロピレンゴム(EPR)を含むプロピレンコポリマーである。
【0083】
ポリプロピレンマトリックスはホモポリマーでもコポリマーでもあり得るが、多峰性の、すなわち2峰性のホモポリマーまたは多峰性の、すなわち2峰性のコポリマーであることがより好ましい。ポリプロピレンマトリックスがプロピレンコポリマーである場合、それならコモノマーはエチレンまたはブテンが好適である。しかしながら、技術的に知られた他のコモノマーもまた適切である。ポリプロピレンマトリックス内のコモノマー、より好ましくはエチレンの好適な量は8.00モル%までである。プロピレンコポリマーマトリックスのコモノマー成分がエチレンである場合、とりわけ好適なのはマトリックス中のエチレンの量が8.00モル%までで、6.00モル%未満であることがより好ましい。プロピレンコポリマーマトリックスのコモノマー成分がブテンである場合、とりわけ好適なのはマトリックス中のエチレンの量が6.00モル%までで、4.00モル%未満であることがより好ましい。
【0084】
好ましくは、全プロピレンコポリマー中のエチレン−プロピレンゴム(EPR)は80wt%までであることである。より好ましくは全プロピレンコポリマー中のエチレン−プロピレンゴム(EPR)の量は20から80wt%の範囲内であること、さらにより好ましくは30から60wt%の範囲内であることである。
これに加え、ポリプロピレンがポリプロピレンマトリックスを含むコポリマーでありかつエチレン−プロピレンゴム(EPR)はエチレン含有量が50wt%までのエチレン−プロピレンゴム(EPR)であることが好適である。
【0085】
さらに、本発明はポリマーの生産の製造法にも関係し、とりわけ上で定義したポリプロピレンで、そのために上で定義した触媒系が採用される。製造法は上に定義したような多峰性ポリプロピレンを得るために多段製造法であることが好ましい。さらに工程の温度は60℃よりも高いことが好適である。
多段製造法は多峰性プロピレンポリマーを生産するためにさらにマルチゾーン気相反応器として知られるバルク/気相反応器も含む。
【0086】
好適な多段製造法はデンマークのBorealis A/Sが開発したような「ループ式気相」製造法(BORSTARTM 技術として知られる)で、例えば特許文献のヨーロッパ特許 EP 0887379 または国際出願WO 92/12182のようなものに記載されている。
多峰性ポリマーは例えば国際出願WO 92/12182、ヨーロッパ特許EP0887379および国際出願WO 97/22633に記載されている幾つかの製造法により生産できる。
【0087】
本発明による多峰性ポリプロピレンは国際出願WO 92/12182に記載されているような多段反応系列による多段製造法で生産されることが好ましい。この文献の内容を本願に引用して本明細書とする。
多峰性、とりわけ2峰性のポリプロピレンを2つ以上の連続した反応器、すなわち異なる手順(a)および(b)で生産できることは知られている。
上に定義した製造法、およびさらに下に定義するそれはスラリー重合が好ましく、さらに好適にはバルク重合である。
【0088】
本発明によると、主重合段階はスラリー重合/気相重合の組合せにより実行されることが好ましく、より好適には主重合段階はバルク重合/気相重合の組合せにより実行されることが好ましい。
バルク重合はいわゆるループ式反応器内で行われることが好ましい。
【0089】
ここに用いた用語「スラリー重合」とは少なくとも2つの相を伴う重合工程、すなわちここに微粒子、固体ポリマー(例えば顆粒状)が液体または重合媒体内、または液体/気体重合媒体内に形成されることを意味する。ここに記載した製造法のある実施態様はスラリー重合であり、例えば重合による製品が固体である製造法である。これらの工程による重合製品(例えばポリプロピレン)は十分に高い融点を持っていることが好ましくこれにより重合中の溶融を防ぎ多くの場合これらを顆粒状ポリマーとして回収できる。スラリー重合は溶媒(すなわち希釈剤と言及されることもあるもの)を含む場合があり、または下で論じるバルク製造法の場合もある。
【0090】
ここに用いた用語「バルク製造法」とは重合媒体が完全にまたは実質的にモノマー類および行われた重合による全ての生成物、例えばマクロマー類およびポリマー類から成り、溶媒を含まない(すなわち、希釈剤も存在しないことをも意味する)か、または少量の溶媒、50容積パーセント未満と定義されるが好ましくはずっと少なくしか、含まないことを意味する。
【0091】
本発明による多峰性ポリプロピレンを生産するためには、柔軟な方法が好まれる。このため、組成物はループ式反応器/気相反応器を組合せた2つの主反応段階で生産されることが好まれる。
随意的に、かつ好ましくは、工程はさらにこの分野で知られているやり方でプレ‐重合手順を含む場合がありこれは重合手順(a)に先立つこともある。
【0092】
要求があるならば、得られたプロピレンポリマーにさらなるエラストマー系コモノマー、本発明ではいわゆるエチレン−プロピレンゴム(EPR)成分を組み入れて上で定義したプロピレンコポリマーを形成することもできる。エチレン−プロピレンゴム(EPR)成分は気相重合手順(b)の後に続く第2のまたはもっと先の気相重合で1つ以上の気相反応器を用いて生産されることが好ましい。
工程は連続製造法が好ましい。
【0093】
上に定義したプロピレンポリマーを生産する製造法において手順(a)のバルク反応器の条件は例えば次の通りである:
− 温度は40℃から110℃の範囲内で、好ましくは 60℃および100℃の間、70から90℃、
− 圧力は20バールから80バールの範囲内で、好ましくは30バールから60バールの間、
− モル質量を調整するためにそれ自体知られている方法で水素を加えることもできる。
【0094】
続いて、バルク(バルク)反応器の反応混合物(手順a)を気相反応器へ、すなわち手順(b)へ移送するが、手順(b)の条件は次のものであることが好ましい:
− 温度は50℃から130℃の範囲内で、好ましくは60℃および100℃の間、
− 圧力は5バールから50バールの範囲内で、好ましくは15バールから35バールの間、
− モル質量を調整するためにそれ自体知られている方法で水素を加えることもできる
【0095】
滞留時間は両反応器ゾーンで変化することもできる。プロピレンポリマーを生産する製造法の1つの実施態様において、バルク反応器、例えばループ内の滞留時間は0.5から5時間の範囲内、例えば0.5から2時間で一方気相反応器内の滞留時間は通常1から8時間となる。
要求があれば、重合はバルク反応器内、好ましくはループ式で、および/または凝縮モードの気相反応器内で既知の方法の超臨界状態の下で実施することもできる。
【0096】
上に示した本発明またはその全ての実施態様による製造法は本発明の範囲内のプロピレンポリマー組成物の生産およびさらには調整する実行性の高い方法を可能とし、例えばポリマー組成物の特性は既知の方法、例えば次の工程パラメータの1つ以上:温度、水素供給、コモノマー供給、プロピレン供給、例えば気相反応器内の触媒、外部供与体の種類および量(使用する場合は)、成分間の分割、により調整または制御できる。
【0097】
上の製造法は上で定義した反応器製のプロピレンポリマーを得る極めて実現可能な手段を可能にする。
これ以降では、本発明を例により記載する。
【0098】
<例>
<1.定義/測定方法>
以下の用語の定義および定量法は上記の本発明の一般的な記述同様に以下の実施例にも別途規定しない限り適用される。
<A.5価基の濃度>
メソ5価基濃度分析は、ここでは5価基濃度分析とも称され、帰属分析は T.林の5価基濃度、R.中条およびT.朝倉のPolymer29 138−43(1988)およびR.中条、他、のPolymer35339(1994)に基づいて実施される。
【0099】
<B.多分岐指数>
<1.実験データの取得>
ポリマーはT=180℃で溶融され、続く実験で下に記述するSER万能試験プラットホームにより変形速度dε/dt=0.1、0.3、1.0、3.0および10s−1で引き伸ばされる。生データを入手する方法はSentmanat他の、J.Rheol.2005の「SER万能試験プラットホームを使用したポリエチレン溶融物の過渡的伸長レオロジーの測定」に記載されている。
【0100】
<実験用装置>
TC30温度制御ユニットおよび CTT600オーブン(対流および輻射加熱)および温度センサー付のSERVP01−025 外部装置および RHEO−PLUS/32v2.66 ソフトウェアを装備した Paar Physica MCR300を用いる。
【0101】
<サンプルの準備>
安定化したペレットを金型内で試料内の気泡を防ぐために十分な圧力をかけ220℃で圧縮成型し(ゲルタイム3分、加圧時間3分、合計成形時間3+3=6分)、室温まで冷却する。このようにして調えられた厚み0.7mmのプレートから、幅10mmおよび長さ18mmの細長片を切り出した。
【0102】
<SER装置のチェック>
薄い厚みに伸長したサンプルに作用する力が小さいため、装置の全ての本質的な摩擦は結果の精度を悪くするかもしれないので防がなくてはならない。
【0103】
装置の摩擦は、これが精密で正確な測定に必要な限界とされる 5x10−3 mNm(ミリニュートンメートル)未満であることを確認するため、以下のチェック手順がそれぞれの測定に先だって実施される:
・ サンプルがクランプに存在しない状態で装置を最短でも20分間、試験温度(180℃)にセットする、
・ 0.3s−1 の標準試験を装置により試験温度(180℃)で実施する、
・ トルク(mNmで測定する)を記録し時間に対してプロットする、
・ 装置の摩擦が容認できる低い範囲内にあることを確実にするため、トルクは5x10−3mNmの値を超えてはならない。
【0104】
<実験の実施>
装置をクランプと共に、しかしサンプル無しで 20分間加熱し試験温度(180℃、SER装置に取り付けた熱電対により測定する)にする。つづいて、上に記載したようにして準備したサンプル(0.7x10x18mm)を高温装置内に固定する。サンプルは実験を始める前に2分±20秒間放置して溶融する。
不活性雰囲気中(窒素)で一定のHenckyひずみ速度による伸長試験の間、トルクを時間の関数として等温状態で記録する(SER装置に取り付けた熱電対で測定および制御する)。
【0105】
引き伸ばしの後、装置を開け、引き伸ばしたフィルム(ドラム面に巻かれている)を検査する。均一な伸長が必須である。引き伸ばしが均一であったか否かはドラム面の引き伸ばしたフィルムの形から目視で判断される。テープは両方のドラムに対称に、さらに試料の上および下半分も対称に巻かれていなくてはならない。
これにより対称的な引き伸ばしが確認されたなら、過渡的伸長粘度を下に概説しているように記録されたトルクから計算する。
【0106】
<2.評価>
適用したそれぞれ異なるひずみ速度dε/dtについて、引張応力増加関数η(dε/dt、t)の結果を合計Henckyひずみεに対してプロットし溶融物のひずみ硬化挙動を決定する。図1参照。
【0107】
Henckyひずみが1.0および3.0の範囲内では、引張応力増加関数ηは次の関数によく適合する
【数7】

ここに Cおよび Cは適合変数である。このように誘導された C は溶融物のひずみ硬化挙動に対する尺度でありひずみ硬化指数 SHI と呼ばれる。
【0108】
ポリマー構造に依存し、SHIは:
− ひずみ速度からは独立すること(直鎖状材料、Y−またはH−構造)
− ひずみ速度と共に増加すること(短鎖−、高−、または 多−分岐構造)
が可能である。
これは図2に示されている。
【0109】
ポリエチレンに関しては、直鎖状(HDPE)、短鎖分岐(LLDPE)および高分岐した構造(LDPE)がよく知られこのためこれらは伸長粘度の結果に基づく構造分析を示すために用いられる。これらはYおよびH構造を持つポリプロピレンとひずみ速度の関数であるひずみ硬化挙動の変化に関して比較される。図2および表1参照。
【0110】
異なるひずみ速度におけるSHIと同様に多分岐指数(MBI)の決定法を説明するため、鎖構造が既知の4種類のポリマーを上に記載した分析的方法で検査した。
第1のポリマーはH−およびY−型ポリプロピレンホモポリマーでヨーロッパ特許EP879830(“A”)実施例1に基づいて作り、ブタジエンの量でMFRを調整している。そのMFR30/2.16は2.0g/10分、縦弾性係数は1950MPaおよび分岐指数g’は0.7である。
【0111】
第2のポリマーは市販されている高分岐LDPEの Borealis“B”で、技術的に知られている高圧製造法により作られている。このMFR190/2.16は4.5 および密度は 923kg/mである。
第3のポリマーは短鎖分岐LLDPEの Borealis“C”で、技術的に知られている低圧製造法で作られている。このMFR190/2.16は1.2および密度は919kg/mである。
第4のポリマーは直鎖状HDPEの Borealis“D”で、技術的に知られている低圧製造法で作られている。このMFR190/2.16は4.0および密度は954kg/mである。
【0112】
4種類の鎖構造が既知の材料は過渡的伸長粘度を測定するという方法により180℃ で 0.10、0.30、1.0、3.0および10s−1のひずみ速度で調べられた。得られたデータ(過渡的伸長粘度対 Henckyひずみ)を関数
【0113】
【数8】

にそれぞれ述べたひずみ速度について当てはめる。パラメータcおよびcは過渡的伸長粘度の対数をHenckyひずみの対数に対してプロットし、このデータの直線近似を最小二乗法の適用によりおこなうことにより見いだされる。パラメータcはlg(h)対lg(ε)のデータの近似直線の切片として
【数9】

から計算し、cは特定のひずみ速度におけるひずみ硬化指数(SHI)である。
【0114】
この手順を5種類全てのひずみ速度について行いこれにより、SHI@0.1s−1、SHI@0.3s−1、SHI@1.0s−1、SHI@3.0s−1、SHI@10s−1 が決定する。図1および表1を参照。
【0115】
【表1】

【0116】
SHI@1s−1の値から測定されたひずみ硬化挙動から早くも明確に2つのポリマー群を区別することできる:直鎖状および短鎖分岐ではSHI@1s−1が0.30よりかなり小さい。対照的に、YおよびH分岐は高分岐材料と同様にSHI@1s−1が0.30よりかなり大きい。
【0117】
ひずみ硬化指数をこれら0.10、0.30、1.0、3.0および10s−1の5つのひずみ速度ε´で比較してみると、ε´の対数、lg(ε´)の関数であるSHIの傾斜は多分岐の特徴的な指標である。したがって、多分岐指数(MBI)はSHI対lg(ε´)の直線近似曲線の傾斜から計算される:
【0118】
【数10】

【0119】
パラメータcおよびMBIはSHIをHenckyひずみ速度の対数lg(ε´)に対してプロットしこのデータに最小二乗法を適用して直線近似を行うことにより見いだすことができる。図2を参照されたい。
【0120】
【表2】

【0121】
多分岐指数MBIは今や0.05より小さいMBIのYまたはH分岐ポリマーと0.05より大きいMBIの高分岐ポリマーを区別することを可能にしている。さらに、これは0.10より大きいMBIの短鎖分岐ポリマーと0.10より小さなMBIの直鎖状材料を区別することも可能にしている。
【0122】
異なるポリプロピレン類を比較した場合にも似たような結果、すなわち比較的高い分岐構造のポリプロピレン類はその対照物である直鎖状に比べてそれぞれより高いSHIおよびMBI値であることが観察できる。新開発のポリプロピレン類は高分岐ポリエチレン類と同様に高度の分岐を示す。しかしながら本発明によるポリプロピレン類は既知の高分岐ポリエチレン類と比較した場合に明らかにSHIおよびMBI値において識別できる。この仮説に拘るまでもなく、異なるSHIおよびMBI値は異なる分岐構造の結果であると考えられている。このため本発明により新たに見いだされたポリプロピレン類を多分岐と指名する。
【0123】
ひずみ硬化指数(SHI)および多分岐指数(MBI)の両者を組合せることにより、表3に示すように鎖構造を見極めることができる:
【0124】
【表3】

【0125】
<C.さらなる測定方法>
粒度分布:粒度分布はコールターカウンターLS200を介し室温でn−ヘプタンを媒体として測定される。
<NMR>
<NMR−分光法測定>
ポリプロピレンの13C−NMRスペクトルを1,2,4−トリクロロベンゼン/ベンゼン−d6(90/10w/w)に溶解したサンプルから130℃でBruker400MHzスペクトロメータ上に記録した。5価の基の分析では、任務は次の文献に記載の方法によりおこなった:(T.林、Y.井上、R.中条およびT.朝倉のPolymer29138−43(1988)および中条 R他の Polymer35339(1994)。
NMR測定は技術的によく知られた方法で5価の基の mmmm 濃度を決定するために用いられた。
【0126】
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)および分子量分布(MWD)はオンライン粘度系付WatersAlliance GPCV 2000装置を用いたサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により決定される。オーブンの温度は140℃である。トリクロロベンゼンが溶媒として使われる(ISO16014)。
【0127】
溶融温度 Tm、結晶化温度 Tc、および結晶化度 : Mettler TA 820 差動走査熱量計により5〜10mgのサンプルについて測定した。結晶化および溶融曲線の両者は30℃および225℃の間の10℃/分の冷却および加熱スキャンの間に入手した。溶融および結晶化温度は吸熱および発熱のピークとしてとらえた。
さらに溶融および結晶化エンタルピー(HmおよびHc)はISO 11357−3に基づくDSC法により測定した。
【0128】
MFR:ISO1133(230℃、荷重2.16kg)に基づいて測定した。
固有粘度:DINISO 1628/1、1999年10月に基づいて測定する(135℃のデカリン内で)。
【0129】
コモノマー含有量:13C−NMRで調整したフーリエ変換赤外分光計(FTIR)により測定する。ポリプロピレン中のエチレン含有量を測定する際、サンプルの薄いフィルム(厚み約250mm)をホットプレスにより準備した。−CH−吸収ピーク(800〜650cm−1)の面積をPerkinElmer FTIR 1600分光計により測定した。この方法は13C−NMRで測定したエチレン含有量データにより調整した。
【0130】
多孔率:DIN66135 に基づいて測定する。
表面積:ISO9277 に基づいて測定する。
【0131】
<2.例>
<例1(比較)>
シリカ保持メタロセン触媒(I)を国際出願WO 01/48034(実施例27)に基づき準備した。保持体の多孔率は 1.6ml/g である。不斉メタロセンはジメチルシランジイル[(2−メチル−(4’−第3ブチル)−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−(4’−第3ブチル)−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウムジクロリドが用いられている。
【0132】
プロピレンの重合のために 5リットルのステンレス反応器が使用された。110gの液体プロピレン(Borealis重合グレード)を反応器に仕込んだ。0.2mlのトリエチルアルミニウム(100%、Cromptonより購入)を補足剤として仕込みさらに3.7ミリモルの水素(品質 6.0、Agaより供給)を連鎖移動剤として仕込んだ。反応器温度は30℃にセットした。21mgの触媒を窒素過圧力により反応機内へ吹き込んだ。約14分の間に反応器を60℃まで加熱した。重合を60℃で30分間継続し、次いでプロピレンを噴出させ、ポリマーを乾燥し計量した。
【0133】
ポリマーの収量は182gと計量された。
SHI@1s−1は0.29である。MBIは 0.04である。g’は1.00である。このことは直鎖状構造を示唆している。MFR230/2.16 は7.9g/10分である。溶融温度は155℃である。
【0134】
<例2(比較)>
国際出願 WO 03/051934の実施例5に記載の触媒(II)を準備した。
プロピレンの重合のために5リットルのステンレス反応器が使用された。1100gの液体プロピレン(Borealis重合グレード)を反応器に仕込んだ。0.1mlのトリエチルアルミニウム(100%、Cromptonより購入)を補足剤として仕込みさらに15ミリモルの水素(品質6.0、Aga供給)を連鎖移動剤として仕込んだ。反応器温度は30℃にセットした。21mgの触媒を窒素過圧力により反応機内へ吹き込んだ。約14分の間に反応器を70℃まで加熱した。重合を70℃で50分間継続し、次いでプロピレンを噴出させ、5ミリモルの水素を仕込み(ガス状)プロピレンを供給することにより圧力を210バールまで上げた。重合は気相で210分間継続し、次いで反応器を圧抜きし、ポリマーを乾燥し計量した。
【0135】
ポリマーの収量は790gと計量され、これは36.9kgpp/g触媒の生産性に相当する。
SHI@1s−1は0.15である。MBIは0.12である。g’は0.95である。このことは短鎖分岐構造(SCB)を示唆している。
<例3(発明)>
【0136】
国際出願WO 03/051934の実施例5に記載されている保持体なし触媒(III)が準備されていて一方で不斉メタロセンのジメチルシランジイル[(2−メチル−(4’−第3ブチル)−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−(4’−第3ブチル)−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウムジクロリドを用いている。
【0137】
プロピレンの重合のために5リットルのステンレス反応器が使用された。1100gの液体プロピレン(Borealis重合グレード)を反応器に仕込んだ。0.1mlのトリエチルアルミニウム(100%、Cromptonより購入)を補足剤として仕込みさらに3.7ミリモルの水素(品質6.0、Aga供給)を連鎖移動剤として仕込んだ。反応器温度は30℃にセットした。20mgの触媒を窒素過圧力により反応機内へ吹き込んだ。約14分の間に反応器を70℃まで加熱した。重合を70℃で30分間継続し、次いでプロピレンを噴出させ、ポリマーを乾燥し計量した。
【0138】
ポリマーの収量は =390gと計量された。
SHI@1s−1は0.55である。MBIは0.32である。g’は0.70である。MFRは10.7である。このことは多分岐構造を示唆している。より多くのデータが表4および図4に与えられている。
【0139】
<例4(発明)>
例3と同じ触媒(III)が使用された。
プロピレンの重合のために5リットルのステンレス反応器が使用された。1100gの液体プロピレン+ 50gのエチレン(Borealis 重合グレード)を反応器に仕込んだ。0.1mlのトリエチルアルミニウム(100%、Cromptonより購入)を補足剤として仕込みさらに7.5ミリモルの水素(品質6.0、Aga供給)を連鎖移動剤として仕込んだ。反応器温度は30℃にセットした。21mgの触媒を窒素過圧力により反応器内へ吹き込んだ。約14分の間に反応器を70℃まで加熱した。重合を70℃で30分間継続し、次いでプロピレンを噴出させ、ポリマーを乾燥し計量した。エチレンの合計含有量は4.2wt%である。溶融温度は125.6℃である。
【0140】
ポリマーの収量は258gと計量された。
SHI@1s−1は0.66である。MBIは 0.28である。g’は0.70である。MFRは8.6である。このことは多分岐構造を示唆している。より多くのデータが表4および図4に与えられている。
【0141】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0142】
【図1】ひずみ速度が0.1s−1における「A」のSHIを決めるグラフである。
【図2】ひずみ硬化に対する変形速度を示すグラフである。
【図3】ひずみ速度に対するひずみ硬化指数を纏めた表1の結果を表示したグラフである。
【図4】例1から4の結果の表4を表示したグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不斉触媒を含む触媒系で、その触媒系の多孔率が DIN 66135 の検出限界より低い触媒系。
【請求項2】
触媒系がポリプロピレンの製造に適した、請求項1に記載の触媒系。
【請求項3】
不斉触媒が定義したように非シリカ保持体触媒である、請求項1または2に記載の触媒系。
【請求項4】
触媒系の表面積が ISO 9277に基づく測定で 25m/g 未満である、請求項1から3のいずれかに記載の触媒系。
【請求項5】
不斉触媒が少なくとも2つの化学的に異なる有機配位子を持つ、請求項1から4のいずれかに記載の触媒系。
【請求項6】
不斉触媒の2つの異なる有機配位子が橋かけ、好ましくは請求項16から18のいずれかで定義された橋かけを介して連結される、請求項5に記載の触媒系。
【請求項7】
不斉触媒が次の化学式(I)による遷移金属化合物である、請求項1から6のいずれかに記載の触媒系:
(L)MX (I)
ここに
M は周期律表(IUPAC)の第3から10族、またはアクチニドまたはランタニドの遷移金属、
それぞれの X は独立的に σの様な1価の陰イオン性配位子、
それぞれの L は独立的に有機配位子で M に配位結合する、
R は2つの配位子 L を連結する橋かけ基、
m は 2 または 3、
n は 0 または 1、
q は 1、2 または 3、
m+q は金属の原子価に等しい、
ただし、少なくとも2つの配位子「L」は化学構造が異なる。
【請求項8】
配位子「L」が以下のものである、請求項7に記載の触媒系:
(a)置換または非置換のシクロアルキルジエン、または
(b)周期律表の13から16族の原子から構成される非環式の η− から η−または η− 配位子、または
(c)環式の σ−、η−から η− またはη−、単座、二座または多座配位子で、芳香族または非芳香族または部分的に飽和した環構造から選択された非置換または置換の単環、二環または多環の環構造から構成され、かつ炭素環原子を含んでいるもの。
【請求項9】
不斉触媒が化学式(II)を持つ、請求項1から8のいずれかに記載の触媒系:
(Cp)mMX (II)
ここに
M は Zr、Hfまたは Ti で、Zr が好ましい、
それぞれの X は独立的に σ− 配位子のような1価の陰イオン性配位子、
それぞれの Cp は独立的に不飽和な有機環状配位子で M に配位結合する、
R は2つの配位子 L を連結する橋かけ基、
m は 2、
n は 0 または 1、好ましくは 1
q は1、2 または 3、
m+q は金属の原子価に等しい、および
少なくとも1つの Cp− 配位子は非置換シクロペンタジエニル、非置換インデニル、非置換テトラヒドロインデニル、非置換フルオレニル、置換シクロペンタジエニル、置換インデニル、 置換テトラヒドロインデニル、および置換フルオレニルから成る群から選択される、
ただし両方の Cp− 配位子が上述の群から選択される場合には両方の Cp− 配位子は互いに化学的に異ならなくてはならない。
【請求項10】
M が Zr、X が Cl、n が 1、および q が 2 である、請求項9に記載の触媒系。
【請求項11】
両方の Cp− 配位子が置換シクロペンタジエニル環、置換インデニル環、置換テトラヒドロインデニル環、および置換フルオレニル環から成る群から選択され、ここにCp−配位子は環に結合している置換基において異なる、請求項9または10に記載の触媒系。
【請求項12】
有機配位子が置換インデニル環である、請求項1から11のいずれかに記載の触媒系。
【請求項13】
環に結合した置換基が C〜Cアルキル部分、芳香族環部分および芳香族複素環部分からなる群から独立的に選択される、請求項9から12のいずれかに記載の触媒系。
【請求項14】
両方の Cp− 環が2つの置換基を持ち、一方の置換基が置換されたフェニル部分でありおよび他方の置換基がC〜Cアルキル部分で、両方のCp− 環が C〜Cアルキル部分で異なることが好ましい、請求項9から13のいずれかに記載の触媒系。
【請求項15】
部分「R」が化学式(III)を持つ、請求項1から14のいずれかに記載の触媒系:
−Y(R’)− (III)
ここに Y は C、Si または Ge であり、および
R’は Cから C20 アルキル、C〜C12 アリールまたはC〜C12 アリールアルキルである。
【請求項16】
Y が Si である、請求項15に記載の触媒系。
【請求項17】
「R」が −Si(C〜Cアルキル)−、−Si(フェニル)−、および−Si(C〜Cアルキル)(フェニル)− から成る群から選択される、請求項15または16に記載の触媒系。
【請求項18】
不斉触媒が ジメチルシランジイル[(2−メチル−(4’−第3ブチル)−4−フェニル−インデニル)(2−イソプロピル−(4’−第3ブチル)−4−フェニル−インデニル)]ジルコニウムジクロリドである、請求項1から17のいずれかに記載の触媒系。
【請求項19】
触媒系がポリプロピレンの製造に適していて以下のものである、請求項1から18のいずれかに記載の触媒系:
(a)分岐指数 g’が 1.00未満であること、および/または
(b)温度 180℃ で 1.00s−1 の変形速度 dε/dt で測定したひずみ硬化指数(SHI)が少なくとも 0.30 であること、ここにひずみ硬化指数(SHI)は Henchyひずみの底を10とする対数(以下、常用対数と称す)(lg(ε))の関数である引張応力増加関数の常用対数(lg(η))のHenchyひずみが1 から 3 の範囲の傾斜として定義される、および/または
(c)多分岐指数(MBI)が少なくとも 0.15 であること、ここに多分岐指数(MBI)は Henchyひずみ速度の常用対数(lg(lg(dε/dt))の関数であるひずみ硬化指数(SHI)の傾斜として定義され、ここに
dε/dt は変形速度である、
ε は Henchyひずみ、および
ひずみ硬化指数(SHI)は 180℃ で測定され、ここにひずみ硬化指数(SHI)はHenchyひずみの常用対数(lg(ε))の関数である引張応力増加関数の常用対数(lg(η))のHenchyひずみが1 から3 の範囲の傾斜として定義される。
【請求項20】
請求項1から19のいずれかに記載の触媒系を製造する製造法で以下の手順を含む:
a.請求項1から19のいずれかで定義された不斉触媒溶液を調整する
b.前記溶液をこれと混和しない溶媒中に分散し前記触媒が分散相内の小滴として存在するエマルジョンを形成する
c.前記分散相を固化し前記液滴を固体粒子に変換し、随意的に前記粒子を回収して触媒を得る。
【請求項21】
請求項20の工程により触媒系を得ることが可能な、好ましくは得られている、請求項1から19のいずれかに記載の触媒系。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2009−534481(P2009−534481A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−505761(P2009−505761)
【出願日】平成19年4月16日(2007.4.16)
【国際出願番号】PCT/EP2007/003335
【国際公開番号】WO2007/118697
【国際公開日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(500224380)ボレアリス テクノロジー オイ (39)
【Fターム(参考)】