説明

触媒金属を使用した固体ガスセンサー用の保護コーティング

保護コーティングは、水素の電気化学的解離を促進する触媒層を含む固体水素センサーの長期性能を維持する。触媒は、一酸化炭素、硫化水素、塩素、水、及び酸素を含む少なくとも1つの汚染物質の存在下で、劣化しやすい。コーティングは、水素を触媒層に拡散させ且つ汚染物質の触媒層への拡散を抑制する厚みを有する少なくとも一層の二酸化ケイ素を含む。好ましいコーティングは、保護コーティングを通して水が触媒層に拡散することを抑制するために、少なくとも一層の疎水性組成物、好ましくはポリテトラフルオロエチレンをさらに含む。好ましい保護コーティングは、保護コーティングを通して酸素が触媒層に拡散することを抑制するために、少なくとも一層のアルミナをさらに含む。保護的コーティングセンサーの製造において、二酸化ケイ素層は好ましくはアニール処理される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、「汚染物質の影響を受けやすい電界触媒を使用した固体ガスセンサー用の保護コーティング」という発明の名称で2008年4月6日に出願された米国仮特許出願第61/042,755号に関連し、その優先権の利益を請求するものである。前記仮特許出願は、参照によってその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、流体(ガスまたは液体)流中の成分の存在を検出するためのセンサーに関する。より具体的には、本発明は、センサーに有害な反応を有する成分の混合物を含む流体(ガスまたは液体)流中の成分、特に水素の存在を検出するための触媒金属を使用した固体ガスセンサー用の保護コーティングに関する。
【背景技術】
【0003】
ガスセンサー、より具体的には固体水素センサーは、センサーの触媒金属と反応し得る成分を有する用途、例えば、炭化水素、並びに一酸化炭素(CO)、硫化水素(H2S)、塩素(Cl2)、及び塩素のような汚染物質が存在するような用途においてよく用いられる。そのような汚染物質の存在が、触媒金属を用いる固体水素センサーの性能を劣化させるが、保護コーティングを使用してセンサー性能の劣化を防止または改善することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本明細書において、「固体」という用語は、成分、デバイス、及び/またはシステム(トランジスタ等)について言及するものであり、そこでは、電流を伝導、スイッチ、及び増幅することができる固体元素及び化合物に電流が限定される。
【0005】
本願において、全てのパーセント及び百万分の一(ppm)の濃度は、体積で表している。
【0006】
保護コーティングは、安定した性能で水素の直接測定を可能とし、限定されるものではないが以下の用途等におけるセンサー動作を可能とする。
【0007】
(a)最大20%の一酸化炭素(CO)、1000ppmの硫化水素(H2S)、及びセンサー動作に影響する他の有害汚染物質の高濃度のバックグラウンドがある石油精製装置、水素処理設備、水素の製造及び貯蔵設備における水素レベルの連続監視。例えば、COはセンサー表面をブロックして反応時間を減少させ、H2Sはセンサー表面を汚染しセンサーに回復不能な損傷を与える。
【0008】
(b)約99%超の湿潤塩素の高濃度バックグラウンドにおける塩素製造設備内の水素の正確な監視。
【0009】
(c)炭化水素油中にセンサーを直接浸漬することによる、変圧器などの油入り電気機器における水素の溶解ガス分析。
【0010】
(d)アシスト及び非アシストフレア(assisted and non−assisted flares)における水素濃度の監視(40 CFR 60.18及び63.11のEPAフレアリング規制を参照)。
【0011】
精製プラントなどの水素を製造する加工プラントにおいて(例えば、Parias等の米国特許出願公開第2006/0233701号を参照)、貯蔵設備、水素処理設備(Cohen等の米国特許第7,191,805号を参照)、及び水素燃料ステーションは、高温においてCO、H2S、及びCl2のような汚染物質を含む過酷なバックグラウンド中の水素のパーセント濃度を正確に測定することができる水素検出器を必要とする。パラジウム系センサーは、これらのより高い温度にてこれらの汚染物質の存在下で固有の不安定さを有し、汚染物質によって顕著なドリフトを示して水素を検出するセンサー性能が変わってしまう。汚染物質のバックグラウンドでのドリフトのために、水素センサーを、上記のようなプロセス用途に信頼性をもって使用することができない。
【0012】
本技術は、パラジウム、白金、ルテニウム、バナジウム、及び/または他の貴金属(precious/noble metal)触媒、並びにこれらの合金などの触媒金属を用いるセンサーの表面に保護コーティングを適用することを含む。また、本技術は、CO(表面吸着/阻害する化学種)、H2S(貴金属触媒毒)、Cl2(電気活性種)のような汚染物質を含む過酷な化学プロセス流のバックグラウンド中における水素検出の精度及び性能を改良するために用いられるコーティングの製造方法を提供する。本技術によって調製されたコーティングは、水素(H2、分子量(MW)は2)に対して透過性であり、例えばH2S(分子量は34)及びCO(分子量は28)などの高分子量の不純物を阻止する。
【0013】
本発明の保護コーティングを備えた、水素センサー並びに概して表面触媒反応による電気変換に基づくセンサーは、過酷なガス及び温度の様々なバックグラウンドを伴う化学プロセスにおける多点水素監視を可能とするだろう。「多点」監視とは、一点監視とは対照的に、水素がプロセスの二点以上にて監視させるプロセスを意味する。「過酷なガス」とは、表面部位を占め、H2がPd−Ni格子内に侵入することを妨げまたは阻害するものである。本発明のコーティングは、過酷なガスがPd−Ni触媒表面に直接接することを防止することによって汚染物質を阻止する。基本的に、サイズ選択的な防止メカニズムを利用するものである。
【0014】
また、本技術は、限定されるものではないが、化学処理プラント内における約100℃〜150℃の用途などの、高温における固体パラジウム水素センサーの安定動作を可能とする。
【0015】
本技術のアニール処理の態様は、水素、窒素、酸素、不活性化合物(例えば、ヘリウム及びアルゴンなど)、またはそれらの組み合わせ等の1以上のガスのバックグラウンド中の高温に、センサーをさらすことが含まれる。
【0016】
従来の先行技術は、特に長時間にわたるガス状成分、具体的にはH2の正確で汚染されない検出方法を、具体的に提供することができなかった。
【0017】
いくつかの無機及び有機コーティングが、汚染物質から水素センサーの表面を保護することについての以下の技術文献に引用されている。
【0018】
揮発性有機化合物(VOC)保護のための、プラズマ化学蒸着(CVD)SiO2膜:Y. Wang et al., “Potential Application of Micro sensor Technology in Radioactive Waste Management with Emphasis on Headspace Gas Detection”, Sandia National Laboratory report, September 2004, page 59。
【0019】
Honeywell International Incの名義で刊行されたO’Connor等の米国特許第6,634,213号は、センサー触媒表面を保護することを目的として、水素透過性有機ポリマーコーティングの使用について記載している。この特許は、汚染物質による浸透から、センサー触媒表面を保護することについて開示していない。
【0020】
従来の先行技術のセンサーコーティング技術は、CO及びH2Sなどの汚染物質への長期の曝露の悪影響から、センサー表面を保護することができない。さらに、例えばH2/N2、不活性ガス、及びO2などの1以上のガスを含むバックグラウンド中の300℃超の温度における熱アニール処理などの堆積後加工による、パラジウム系(並びに他の貴金属/合金)触媒を用いる水素センサーの安定性を向上するための技術について特定の報告がない。
【0021】
また、技術論文は、長期ドリフト特性及びガスセンサーへの汚染物質の影響についての試験データを提供することもしていない。
【0022】
また、先行技術は、センサー電界触媒表面上にコーティングを適用することによる不純物分子の効果的な阻止または封鎖についても示していない。
【0023】
センサーの電界触媒表面に適用されるコーティングを有する従来の先行技術のセンサーは、水素への反応時間が非常に遅いので(100秒超)、多くの最終用途について不適または不所望なセンサーとなる。その上、従来のコーティングは、センサーの長期性能を可能としなかった。長期性能とは、センサー性能の測定可能な劣化無しに、数週間、数ヶ月、または数年の連続動作を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0024】
ガスセンサーの触媒表面上の有害反応を抑制するための従来の先行技術の前述及び他の欠陥は、ガス状成分についての固体センサーの性能を維持するための保護コーティングによって克服される。センサーは、ガス状成分の電気化学的解離を促進するための触媒層を含む。そのコーティングは、少なくとも一層の二酸化ケイ素を含み、センサーの長期性能を可能とする。長期性能とは、センサー性能の測定可能な劣化無しに、数週間、数ヶ月、または数年の連続動作を意味する。
【0025】
触媒層が、水素分子の水素イオンへの電気化学的解離を促進する固体水素センサーの場合、少なくとも一層の二酸化ケイ素を含む保護コーティングが、センサーの性能を維持する。
【0026】
本発明のコーティング及び方法は、以下の汚染物質分子に対するセンサー触媒表面の抵抗を強化する。汚染物質分子には、制限されるものではないが、COのような電気活性化合物、H2Sのような触媒毒、Cl2のような腐食性ガス、酸素(O2)、水(H2O)、二酸化炭素(CO2)、塩酸(HCl)のような酸塩化物、アルゴン(Ar)及びヘリウム(He)のような不活性ガス、メタン(CH4)のような脂肪族及び芳香族炭化水素、アンモニア(NH3)、並びにこれらの化合物の混合ガス流(100ppmのCO+100ppmのH2S等)が含まれる。
【0027】
本技術において、パラジウム系固体水素センサーの水素特異性、安定性、及びドリフト低減は、保護コーティングを用いて向上される。
【0028】
また、本技術は、特有の熱アニール処理プロセスによる処理プラント内での高温(150℃の高温)におけるパラジウム系センサーの安定動作のための方法を提供する。
【0029】
また、本技術は、水素以外のほとんどの汚染ガスの侵入を阻止する薄膜コーティングを提供する。本コーティングは、水素感受性材料(パラジウム−ニッケルまたは他の汚染ガス感受性材料)上へのSiO2薄膜の蒸着またはプラズマ強化化学気相成長によって形成される。本コーティングは、水素感受性にほとんど悪影響を及ぼさず、水素より大きい分子の透過性を制限することが分かった。
【0030】
また、本技術は、水及び/または酸素分子の浸透の抑制を提供する1以上の堆積技術を用いて、本コーティングを、限定されるものではないが、Al23及び疎水性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)などの材料、と組み合わせる「分子積層(molecular stack)」を提供する。
【0031】
本技術の一態様において、熱アニール処理方法は、水素より大きい分子の浸透に対する抵抗を増大させる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】ガス流中の汚染物質の浸透を抑制する、固体センサー、特に水素センサー用のコーティングの調製に使用される二段階プロセスを示す工程系統図である。この実施態様において、コーティング2は、コーティング1の少なくとも2倍の厚みである。
【図2】保護コーティングの厚みを増加することによって形成される、汚染物質に対する改良されたバリアを調製するための工程系統図である。
【図3】パラジウム−ニッケルセンサー表面上のO2の浸透速度についての開示した熱アニール処理プロセスの効果を表した工程系統図である。
【図4】300ppmのH2S及び約10%のH2/N2混合物を含む流れ中の水素センサーの性能について、コーティング1及びコーティング2を適用することの効果を比較したグラフである。
【図5】1000ppmのH2S及び約10%のH2/N2混合物を含む流れ中の水素センサーの性能について、コーティング1及びコーティング2を適用することの効果を比較したグラフである。
【図6】2日間の、20%のCO、35%のH2、2%のN2、20%のCH4、及び23%のCO2を含む流れ中の水素センサーの性能について、コーティング1の効果を示したグラフである。
【図7】(i)コーティング1(熱処理無し)及び(ii)本技術の熱処理態様を施したコーティング1を備えた、加湿空気(95%の相対湿度(RH)及び18%のO2)中の水素センサーの反応を示すグラフである。
【図8】電気設備を絶縁するために用いられる炭化水素油に浸漬しながらの、保護されたパラジウム−ニッケル水素センサーの動作を示すグラフである。
【図9】90%のH2、100ppmのCO、及び100ppmのH2Sを含む流れ中の水素センサーの性能について、コーティング1の効果を示すグラフである。
【図10】60%のCO2及び2%のCH4を含む流れ中の水素センサーの性能について、コーティング1の効果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0033】
薄膜コーティングは、ガスセンサーの触媒表面に適用され、汚染物質分子の浸透を抑制する。
【実施例】
【0034】
例1:H2O、H2S、CO、O2、及び炭化水素を阻止するためのSiO2コーティング
【0035】
蒸着したSiO2薄膜(以下、コーティング1という)及び熱処理技術(アニール処理ともいう)は、汚染物質を阻止し、選択的に水素を透過させるコーティングの適合性(Conformity)を改良する。
【0036】
図1は、センサー上への上記のようなコーティングを形成するための方法を示す。コーティング1は、熱蒸着、化学気相成長、プラズマアシスト化学気相成長法などの標準の知られた堆積方法によって調製され得る。
【0037】
図2は、コーティング厚みを増加することによって、汚染物質に対する改良されたバリアを調製するための方法を示す。熱蒸着法によるSiO2コーティングの厚みを増加する方法も知られている。
【0038】
本技術において、コーティング厚みは選択的に調整され、H2S、CO、H2O、Cl2、O2、炭化水素、及び前述の他の化合物のような汚染物質分子の浸透を制限することができる。
【0039】
例2:H2O及びO2の浸透に対するさらなる防止を提供するAl23、SiO2、及び疎水性コーティングを含む無機コーティング
【0040】
本技術はまた、水分子がパラジウム−ニッケル水素センサーの表面に浸透することを抑制する疎水性層を含む、分子蒸着(molecular vapor deposition)によって調製される分子積層を提供する。図2は、センサー表面上に分子積層を形成する方法を示す。一実施態様において、分子積層は、SiO2の層(10Å〜1000Å)を堆積し、その後に疎水性層(10Å〜100Å)を堆積することによって形成される。PTFEのような疎水性材料が、本実施態様に使用され得る。
【0041】
例3:空気中における固体水素センサー動作のためのさらなる安定性を提供する方法としての350℃におけるN2アニール処理
【0042】
本技術はまた、コーティングの適合性及び安定性を改良するための、コーティング1及びコーティング2を用いた、窒素バックグラウンド中の350℃におけるアニール処理を提供する。「適合性」とは、汚染物質に対するより良好なバリアを提供するためのコーティングの緻密化をいう。図3は、コーティング1への酸素分子の浸透が、熱アニール処理後に減少することを示している。同様の効果が、H2S、CO、Cl2、及び炭化水素の場合にもみられる。
【0043】
コーティング2を用いた硫化水素(H2S)の阻止
【0044】
本技術にしたがって適用されたコーティング2は、H2S300ppmのバックグラウンド中のパラジウム−ニッケル水素センサーの連続動作を可能とした。図4は、300ppmのH2Sの存在下で、70時間、10%のH2を検出する水素センサーの連続動作を示す。
【0045】
機能及び性能の差異を、図4〜7に示す。
【0046】
図4に示すように、本コーティング技術は、H2S300ppmの存在下で、水素センサーのドリフトがない動作を可能とする。H2S中でのドリフトは、処理プラント内での許容用途について少なくとも一桁の減少を示した。
【0047】
図5を参照すると、コーティング2はまた、H2S1000ppmのバックグラウンド中でパラジウム−ニッケル水素センサーの連続動作を可能とした。図5は、H2S1000ppmの存在下で、93時間、10%のH2を検出する水素センサーの連続動作を示している。このように、本技術は、H2S1000ppmの存在下で、水素センサーの実質的にドリフトがない動作を可能とする。H2S1000ppm中でのドリフトは、処理プラント内での許容用途について少なくとも一桁の減少を示した。
【0048】
コーティング1を用いた一酸化炭素(CO)の阻止
【0049】
本技術によって調製されたコーティング1はまた、20%COのバックグラウンド中でパラジウム−ニッケル水素センサーの連続動作を可能とする。図6は、20%COの存在下で、2日間、約35%のH2を検出する水素センサーの連続動作を示す。
【0050】
このように、図6は、本技術が、少なくとも20%CO、20%CH4、及び23%CO2の存在下で、水素センサーのドリフトがない動作を可能とすることを示している。これらの汚染物質バックグラウンド中での水素センサーの動作は、水素センサーの問題のない動作を可能とする。
【0051】
酸素(O2)阻止及び湿気(H2O)中の強化された性能
【0052】
図7は、ゼロオフセット(水素が存在しない場合の可逆的陽性反応(reversible positive response)として定義される)を示すパラジウム−ニッケル水素センサーの動作を示す。パラジウム−ニッケル水素センサーは、ゼロオフセットのために、0%H2の空気バックグラウンド(0.5%未満のH2/air;0.5ppmのH2を含む地表面における大気)の場合、誤検出シグナルを示し得ることが知られている。上方へのドリフトは、水素が存在しない場合のセンサー表面上の酸素の反応によるものである。図に示すようにアニール処理を行った開示したコーティングは、少なくとも一桁、「ゼロオフセット」を低減する。本技術のコーティング及び方法は、0.5%未満のH2/空気にて誤検出無しのパラジウム−ニッケル水素センサーの動作を可能とする。
【0053】
このように、本技術は、水素を正確に監視すべきプロセス用途で、ガスクロマトグラフ、質量分析、及び熱伝導性のような分析技術を置きかえるかまたは補うための、プロセス強化された(process−hardened)水素センサーを提供する。本技術によって提供されるコーティング及びコーティングの製造方法は、過酷なバックグラウンドの汚染物質からの干渉を受けずに水素含有量の正確な検出を可能とする。また、本発明は、化学プロセス流中の水素含有量を、正確に調節することを可能とし、それによって、水素含有流の製造を含む生産化学工程に、大きなコスト削減を提供する。
【0054】
コーティング1を用いたセンサーの油中への直接浸漬による溶解ガス測定
【0055】
図8は、電気設備を絶縁するために使用される炭化水素油に浸漬しながらの、保護されたパラジウム−ニッケル水素センサーの動作を示す。露出したパラジウムが、炭化水素と反応して、油を分解し及び/または表面炭素で汚染されることによってセンサーの動作が阻害されることが知られている。
【0056】
図9は、90%H2、100ppmCO、及び100ppmH2Sを含む流れ中の水素センサーの性能について、コーティング1の効果を示すグラフである。コーティング1を備えたセンサーは、100ppmCO及び100ppmH2S中で連続動作が可能である。図10は、60%CO2及び2%CH4を含む流れ中の水素センサーの性能について、コーティング1の効果を示すグラフである。図9及び10は、本方法及び装置が、多成分ガス流中及びCO、H2S、CO2、及びCH4などの複数の汚染物質を含むガス流中で用いられ得ることを示す。
【0057】
本明細書に記載したデータによって示されるように、本コーティングは、センサーの長期性能を可能にとする。長期性能とは、センサー性能の測定可能な劣化無しに、数週間、数ヶ月、または数年の連続動作を意味する。従来使用されているコーティングは、センサーの長期性能を維持することができなかった。
【0058】
本発明の特定の工程、要素、実施態様、及び用途を表し記載したが、もちろん、本発明は、特に上述の教示に照らして当業者によって変更が可能であるので、限定されるものではないということが理解されるだろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流中のガス状成分についての固体センサーの長期性能を維持するための保護コーティングであって、該センサーが、該ガス状成分の電気化学的解離を促進するための触媒層を含み、該コーティングが、少なくとも一層の二酸化ケイ素を含む、保護コーティング。
【請求項2】
該コーティングが、アニールされた二酸化ケイ素を含む、請求項1に記載の保護コーティング。
【請求項3】
該保護コーティングを通して該触媒層へ水が拡散することを抑制するための、少なくとも一層の疎水性組成物をさらに含む、請求項2に記載の保護コーティング。
【請求項4】
該疎水性組成物がポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項3に記載の保護コーティング。
【請求項5】
該保護コーティングを通して該触媒層へ酸素が拡散することを抑制するための、少なくとも一層のアルミナをさらに含む、請求項3に記載の保護コーティング。
【請求項6】
流体炭化水素並びに汚染物質の存在下における水素についての固体センサーの長期性能を維持するための保護コーティングであって、該センサーが、水素の電気化学的解離を促進するための触媒層を含み、該コーティングが、少なくとも一層の二酸化ケイ素を含む、保護コーティング。
【請求項7】
該コーティングが、アニールされた二酸化ケイ素を含む、請求項6に記載の保護コーティング。
【請求項8】
該保護コーティングを通して該触媒層へ水が拡散することを抑制するための、少なくとも一層の疎水性組成物をさらに含む、請求項7に記載の保護コーティング。
【請求項9】
該疎水性組成物がポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項8に記載の保護コーティング。
【請求項10】
該保護コーティングを通して該触媒層へ酸素が拡散することを抑制するための、少なくとも一層のアルミナをさらに含む、請求項8に記載の保護コーティング。
【請求項11】
保護コーティングを備えた長期性能を有することができる固体センサーの製造方法であって、該センサーが流体流中に存在する水素の電気化学的解離を促進するための触媒層を含み、該触媒が、少なくとも1つの汚染物質が該流体流中に存在するときに該汚染物質の存在下で劣化しやすく、該製造方法が、少なくとも一層の二酸化ケイ素を該センサーに適用する工程を含み、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層を通して該触媒層に水素を拡散させ、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層を通して該触媒層に該少なくとも1つの汚染物質が拡散することを抑制する、固体センサーの製造方法。
【請求項12】
該少なくとも1つの二酸化ケイ素層をアニール処理する工程をさらに含む、請求項11に記載の製造方法。
【請求項13】
該アニール処理する工程が、窒素環境中で約350℃にて行われる、請求項12に記載の製造方法。
【請求項14】
該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、熱蒸着によって適用される、請求項11に記載の製造方法。
【請求項15】
該少なくとも1つの汚染物質が、一酸化炭素、硫化水素、塩素、酸素、二酸化炭素、塩酸、メタン、アンモニア、及び水からなる群から選択される、請求項11に記載の製造方法。
【請求項16】
少なくとも一層の疎水性組成物を該センサーに適用する工程をさらに含み、該少なくとも1つの疎水性組成物層が該触媒への水の拡散を抑制するのに十分な厚みを有する、請求項15に記載の製造方法。
【請求項17】
該疎水性組成物がポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項16に記載の製造方法。
【請求項18】
少なくとも一層のアルミナを該センサーに適用する工程をさらに含み、該少なくとも1つのアルミナ層が該触媒への酸素の拡散を抑制するのに十分な厚みを有する、請求項16に記載の製造方法。
【請求項19】
流体流中に存在する水素の電気化学的解離を促進するための触媒層を含む、長期性能を発揮できる保護的にコーティングされた固体センサーであって、該触媒が、少なくとも1つの汚染物質が該流体流中に存在するときに該汚染物質の存在下で劣化しやすく、該センサーが、そこに適用された少なくとも一層の二酸化ケイ素を有し、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層を通して該触媒層に水素を拡散させ、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層を通して該触媒層に該少なくとも1つの汚染物質が拡散することを抑制する、保護的にコーティングされた固体センサー。
【請求項20】
該触媒層が、パラジウム及びパラジウム−ニッケルのうち少なくとも1つを含み、該少なくとも1つの汚染物質が、一酸化炭素、硫化水素、塩素、酸素、及び水からなる群から選択される、請求項19に記載のコーティングされたセンサー。
【請求項21】
少なくとも一層の疎水性組成物をさらに含み、該少なくとも1つの疎水性組成物層が該触媒への水の拡散を抑制するのに十分な厚みを有する、請求項20に記載のコーティングされたセンサー。
【請求項22】
該疎水性組成物がポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項21に記載のコーティングされたセンサー。
【請求項23】
少なくとも一層のアルミナをさらに含み、該少なくとも1つのアルミナ層が該触媒への酸素の拡散を抑制するのに十分な厚みを有する、請求項21に記載のコーティングされたセンサー。
【請求項24】
流体流中に存在する水素の電気化学的解離を促進するための触媒層を含む固体水素センサーの長期性能を維持する方法であって、該触媒が、少なくとも1つの汚染物質が該流体流中に存在するときに該汚染物質の存在下で劣化しやすく、該方法が、少なくとも一層の二酸化ケイ素を該センサーに適用する工程を含み、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層を通して該触媒層に水素を拡散させ、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層を通して該触媒層に該少なくとも1つの汚染物質が拡散することを抑制する、固体水素センサーの長期性能を維持する方法。
【請求項25】
該少なくとも1つの二酸化ケイ素層をアニール処理する工程をさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
該アニール処理する工程が、窒素環境中で約350℃にて行われる、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、熱蒸着によって適用される、請求項24に記載の方法。
【請求項28】
該触媒層が、パラジウム及びパラジウム−ニッケルのうち少なくとも1つを含み、該少なくとも1つの汚染物質が、一酸化炭素、硫化水素、塩素、酸素、及び水からなる群から選択される、請求項24に記載の方法。
【請求項29】
少なくとも一層の疎水性組成物をさらに含み、該少なくとも1つの疎水性組成物層が該触媒への水の拡散を抑制するのに十分な厚みを有する、請求項28に記載のコーティングされたセンサー。
【請求項30】
該疎水性組成物がポリテトラフルオロエチレンを含む、請求項29に記載のコーティングされたセンサー。
【請求項31】
少なくとも一層のアルミナをさらに含み、該少なくとも1つのアルミナ層が該触媒への酸素の拡散を抑制するのに十分な厚みを有する、請求項29に記載のコーティングされたセンサー。
【請求項32】
保護コーティングを有する長期性能を発揮できる固体センサーの製造方法であって、該センサーが流体流中に存在する水素の電気化学的解離を促進するための触媒層を含み、該触媒が、液体炭化水素が該流体流中に存在するときに該液体炭化水素の存在下で劣化しやすく、該製造方法が、少なくとも一層の二酸化ケイ素を該センサーに適用する工程を含み、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層を通して該触媒層に水素を拡散させ、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層を通して該触媒層に該液体炭化水素が拡散することを抑制する、固体センサーの製造方法。
【請求項33】
流体流中に存在する水素の電気化学的解離を促進するための触媒層を含む、長期性能を発揮できる保護的にコーティングされた固体センサーであって、該触媒が、液体炭化水素が該流体流中に存在するときに該液体炭化水素の存在下で劣化しやすく、該センサーが、そこに適用された少なくとも一層の二酸化ケイ素を有し、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層を通して該触媒層に水素を拡散させ、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層が、該少なくとも1つの二酸化ケイ素層を通して該触媒層に該液体炭化水素が拡散することを抑制する、保護的にコーティングされた固体センサー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公表番号】特表2011−519417(P2011−519417A)
【公表日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−504108(P2011−504108)
【出願日】平成21年4月6日(2009.4.6)
【国際出願番号】PCT/US2009/039646
【国際公開番号】WO2009/126568
【国際公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【出願人】(510266734)エイチツースキャン コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】