説明

計測方法

【課題】凹部の形状を正確に把握することができる計測方法を提供する。
【解決手段】絶縁膜に形成された凹部の底面に対する側壁の角度を測定する工程(処理S1)と、凹部の底面に対する側壁の角度、幅寸法、深さ寸法を含んだパラメータ群を複数設定し、複数のパラメータ群にそれぞれ関連づけられた複数の反射光の波形を有するライブラリを作成する工程(処理S2)と、凹部に対し光を照射する工程と(処理S4)、反射光を検出する工程(処理S5)と、反射光の波形と、ライブラリから選択した波形とを照合する工程(処理S6)と、反射光の波形とライブラリから選択した波形とのずれが所定値未満である場合に、選択した波形に関連づけられた凹部の幅寸法等のパラメータを最適値とし、凹部の形状を把握する工程を含む。ライブラリの複数のパラメータ群の凹部の底面に対する側壁の角度は処理S1での測定値である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凹部の形状を測定する計測方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体装置の製造工程においては、絶縁膜中にエッチングにより配線溝やビアホールを形成し、形成された配線溝やビアホール中に金属層を埋め込み、配線やビアを形成する方法が採用されている。
配線溝やビアホール(以下、配線溝等という)の形状は、従来、エッチング時間により管理していた、しかしながら、エッチング時間による管理では、配線溝等の形状を正確に把握することが困難であるという問題があった。
そこで、光を配線溝等に照射して、反射光から配線溝等の形状を把握する方法(たとえば、スキャトロメトリ法(OCD(Optical Critical Dimension)法))が提案されている(特許文献1〜3参照)。
【0003】
この方法では、あらかじめ、配線溝等の形状を規定するパラメータ(たとえば、配線溝等の深さ、配線溝等の底面に対する側壁の角度、配線溝等の深さの中間位置における幅寸法)と、反射光の波形とを関連づけてデータベース(ライブラリ)に格納しておく。
一方で、配線溝等に光を照射し、検出器にて、反射光を検出し、反射光の波形を取得する。
その後、反射光の波形と、データベース中の波形とを照合する。反射光の波形と、データベース中の波形とが一致したら、データベース中の波形に関連づけられた配線溝等の形状を規定するパラメータを、配線溝等の形状とする。
ここで、データベースを作成する際には、配線溝等の形状を規定するパラメータ(たとえば、配線溝等の深さ、配線溝等の底面に対する側壁の角度、配線溝等の深さの中間位置における幅寸法)を所定の関数に代入し、波形を算出する。
このとき、様々な配線溝等の形状に対応できるように、各パラメータは、可変となっている。
【0004】
【特許文献1】特表2004−510152号公報
【特許文献2】特表2002−506198号公報
【特許文献3】特表2006−512561号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
以上のような測定方法では、スキャトロメトリ法による測定結果と、SEM(scanning electron microscope)での実測値とが大きく異なってしまうことがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者が検討した結果、スキャトロメトリ法による測定結果と、SEMでの実測値とが大きく異なってしまう要因として、以下のようなことがわかった。
まず、異なる底部の幅寸法のビアホールを形成し、スキャトロメトリ法と、測長SEMとで計測を行い、2つの測定方法の相関関係を調べた。
図7に結果を示す。なお、図7中横軸は、SEMによる底部の幅寸法の値を示し、縦軸は、スキャトロメトリ法による底部の幅寸法の値を示す。
【0007】
図7(B)には、スキャトロメトリ法で、データベースを作成する際に、ビアホールの深さ、ビアホールの底面に対する側壁の角度、ビアホールの深さの中間位置における幅寸法の3つのパラメータをいずれも可変とした場合の結果が示されている。
この場合には、スキャトロメトリ法によるビアホールの底部の幅寸法の測定値平均と、SEMによるビアホールの底部の幅寸法の実測値平均とは大きく異なっており、相関係数は0.861と低くなっている。
なお、ビアホールの底部の幅寸法は、ビアホールの深さ、ビアホールの底面に対する側壁の角度、ビアホールの深さの中間位置における幅寸法の3つのパラメータから算出される値である。
【0008】
図7(C)には、スキャトロメトリ法で、データベースを作成する際に、前記3つのパラメータのうち、ビアホールの深さの中間位置における幅寸法を所定の値に固定し、他のパラメータを可変とした場合の結果が示されている。
この場合においても、スキャトロメトリ法によるビアホールの底部の幅寸法の測定値平均と、SEMによるビアホールの底部の幅寸法の実測値平均とは大きく異なっており、相関係数は低い。
【0009】
図7(A)には、スキャトロメトリ法で、データベースを作成する際に、前記3つのパラメータのうち、ビアホールの底面に対する側壁の角度を所定の値に固定し、他のパラメータを可変とした場合の結果が示されている。
この場合には、スキャトロメトリ法によるビアホールの底部の幅寸法の測定値平均と、SEMによるビアホールの底部の幅寸法の実測値平均とは略同様の値を示し、相関係数は0.992と非常に高いものとなる。
【0010】
以上のことから、配線溝等の底面に対する側壁の角度を所定の値に固定し、ライブラリを作成することで、スキャトロメトリ法によって、正確な形状を把握することができると考えられる。
【0011】
本発明によれば、絶縁膜に形成された凹部の底面に対する側壁の角度を測定する工程と、絶縁膜に形成された凹部の底面に対する側壁の角度、前記凹部の所定深さ位置における幅寸法、前記凹部の深さ寸法を含んだパラメータ群を複数設定し、前記複数のパラメータ群にそれぞれ関連づけられた複数の反射光の波形を有するライブラリを作成する工程と、絶縁膜に形成された凹部に対し光を照射する工程と、前記光が照射された前記凹部からの反射光を検出する工程と、検出した前記反射光の波形と、前記ライブラリから選択した波形とを照合する工程と、検出した前記反射光の波形と、前記ライブラリから選択した波形とのずれが所定値以上である場合には、再度、検出した前記反射光の波形と、前記ライブラリから選択した波形とを照合し、検出した前記反射光の波形と、前記ライブラリから選択した波形とのずれが所定値未満である場合には、前記ライブラリから選択した波形に関連づけられた凹部の前記幅寸法、凹部の前記深さ寸法および、凹部の前記底面に対する側壁の角度を含む前記パラメータ群を、前記光が照射された前記凹部の形状を示す値とし、前記凹部の形状を把握する工程とを含み、ライブラリを作成する前記工程における前記複数のパラメータ群は、前記凹部の底面に対する側壁の角度が同じで、凹部の前記幅寸法、凹部の前記深さ寸法を含む他のパラメータの少なくともいずれか一つが異なっており、前記凹部の底面に対する側壁の角度は、凹部の底面に対する側壁の角度を測定する前記工程で得られた測定値である計測方法が提供される。
【0012】
ここで、光を照射して形状を把握する凹部は、底面に対する側壁の角度を測定した凹部と同じ凹部でなくてもよく、前記角度を測定した凹部と略同じ底面に対する側壁の角度であると推測される凹部であればよい。たとえば、光を照射して形状を把握する凹部と、角度を測定する凹部とは、同じエッチング条件にて形成されたものであればよい。
【0013】
この発明によれば、ライブラリを作成するための複数のパラメータ群は、凹部の底面に対する側壁の角度が同じで、凹部の幅寸法、凹部の深さ寸法を含む他のパラメータの少なくともいずれか一つが異なっている。
そして、凹部の底面に対する側壁の角度は測定値である。
このように、凹部の底面に対する側壁の角度を測定値に固定し、波形を作成することで、スキャトロメトリ法によって、正確な形状を把握することができる。
なお、反射光の波形とは、反射光強度の波長依存性を示すが、反射光強度のデータとしては、凹部に対する光の入射角を固定して測定したものであってもよく、また、入射角を稼働させた(変動させた)入射角依存性のデータであってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、凹部の形状を正確に把握することができる計測方法が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
はじめに、図1,6を参照して、本実施形態の計測方法の概要について説明する。
本実施形態の計測方法は、
絶縁膜51に形成された凹部511の底面に対する側壁の角度を測定する工程(処理S1)と、
凹部511の底面に対する側壁の角度、凹部511の所定深さ位置における幅寸法、凹部511の深さ寸法を含んだパラメータ群A1〜An、B1〜Bn、C1〜Cnを複数設定し、複数のパラメータ群A1〜An、B1〜Bn、C1〜Cnにそれぞれ関連づけられた複数の反射光の波形(反射光強度の波長依存性)を有するライブラリ231,232,233を作成する工程(図3〜5参照)(処理S2)と、
凹部511に対し光を照射する工程と(処理S4)、
凹部511からの反射光を検出する工程(処理S5)と、
検出した反射光の波形(反射光強度の波長依存性)と、ライブラリ231,232,233から選択した波形とを照合する工程(処理S6)と、
検出した反射光の波形と、ライブラリ231,232,233から選択した波形とのずれが所定値以上である場合(処理S7)には、再度、検出した反射光の波形と、ライブラリ231,232,233から選択した波形とを照合し、
検出した反射光の波形と、ライブラリ231,232,233から選択した波形とのずれが所定値未満である場合(処理S7)には、ライブラリ231,232,233から選択した波形に関連づけられた凹部511の幅寸法、凹部511の深さ寸法および、凹部511の底面に対する側壁の角度を含む前記パラメータを、凹部511の形状を示す値として、凹部511の形状を把握する工程を含む。
ライブラリ231,232,233を作成する工程における複数のパラメータ群A1〜An、B1〜Bn、C1〜Cnは、凹部511の底面に対する側壁の角度が同じで、凹部511の幅寸法、凹部511の深さ寸法を含む他のパラメータの少なくともいずれか一つが異なっており、凹部511の底面に対する側壁の角度は処理S1での測定値である。
ここで、反射光の波形とは、反射光強度の波長依存性を示すが、反射光強度のデータとしては、凹部511に対する光の入射角を固定して測定したものであってもよく、また、入射角を稼働させた(変動させた)入射角依存性のデータであってもよい。
【0016】
次に、本実施形態の計測方法の詳細について説明する。
はじめに、本実施形態の計測方法に使用される計測装置1について説明する。
この計測装置1は、ウェハ5の基板(たとえば半導体基板)50上部の絶縁膜51に形成された配線溝等の溝や、ビアホール等の孔等の凹部511の形状を計測するものである。
ウェハ5には、図示しないが、複数のチップ形成領域があり、各チップ形成領域には、凹部511が複数形成されている。複数の凹部511は同一のエッチング条件にて形成されたものである。
【0017】
計測装置1は、図1に示すように、測定対象(ウェハ)を設置するステージ11と、このステージ11上の測定対象に対し光を照射する光源12と、測定対象からの反射光を検出する検出器13と、検出器13で検出した反射光から凹部511の形状を算出する算出装置2とを有する。
【0018】
図2に算出装置2を示す。
この算出装置2は、取得部21と、第一算出部22と、データベース23と、照合部24と、補正データ記憶部25と、第二算出部26と、出力部27とを備える。
取得部21は、検出器13に接続され、検出器13で検出した反射光の波形を取得する。また、取得部21では、凹部511の形状を示すパラメータ等のデータも取得する。
第一算出部22は、取得部21で凹部511の形状を示す複数のパラメータ(パラメータ群)を取得した際に、このパラメータ群から反射光の波形を算出する。
【0019】
具体的には、たとえば、パラメータ群には、凹部511の底面に対する側壁の角度(以下、θと表示する場合もある)、凹部511の所定深さ位置(本実施形態では、深さの中間位置)における幅寸法(以下、MCDと示す場合もある)、凹部511の深さ寸法(以下、Hと示す場合もある)、凹部511が形成された絶縁膜51の厚み等の各パラメータが含まれる。
これらのパラメータ群の各パラメータを、所定の関数に代入することで、反射光の波形を算出することができる。
算出した反射光の波形と、パラメータ群とは、関連づけられてデータベース23に記憶される。
【0020】
図3〜5にデータベース23に記憶されたライブラリ231,232,233を示す。
このデータベース23には、複数のライブラリ231,232,233が記憶されている。
ライブラリ231,232,233は、複数のパラメータ群にそれぞれ関連づけられた複数の反射光の波形を有する。
【0021】
具体的には、第一のライブラリ231では、凹部511の底面に対する側壁の角度および膜厚が同じである第一のパラメータ群A1〜Anが記憶されている。各第一のパラメータ群A1〜Anにおいて、凹部511の底面に対する側壁の角度および膜厚のみが同じであり、凹部511の深さ、凹部511の所定深さ位置(本実施形態では、深さの中間位置)における幅寸法の少なくともいずれか一方は異なった値となっている。
そして、各第一のパラメータ群A1〜Anに関連づけられた複数の反射光の波形が記憶される。
【0022】
図4に示すように、第二のライブラリ232では、凹部511の底面に対する側壁の角度が第一のライブラリ231と同じ値であり、膜厚が第一のライブラリ231とは異なる第二のパラメータ群B1〜Bnが記憶されている。
第二のパラメータ群B1〜Bnにおいて、凹部511の底面に対する側壁の角度および膜厚のみが同じであり、凹部511の深さ、凹部511の所定深さ位置(本実施形態では、深さの中間位置)における幅寸法の少なくともいずれか一方は異なった値となっている。
第二のライブラリ232には、各第二のパラメータ群B1〜Bnに関連づけられた複数の反射光の波形が記憶される。
【0023】
図5に示すように、第三のライブラリ233では、凹部511の底面に対する側壁の角度が第一のライブラリ231と同じ値であり、膜厚が第一のライブラリ231とは異なる第三のパラメータ群C1〜Cnが記憶されている。
第三のパラメータ群C1〜Cnにおいて、凹部511の底面に対する側壁の角度および膜厚のみが同じであり、凹部511の深さ、凹部511の所定深さ位置(本実施形態では、深さの中間位置)における幅寸法の少なくともいずれか一方は異なった値となっている。
第三のライブラリ233には、各第三のパラメータ群C1〜Cnに関連づけられた複数の反射光の波形が記憶される。
【0024】
図2に示す照合部24は、取得部21で取得した反射光の波形と、データベース23中に記憶された波形とを照合する。
取得部21で取得した反射光の波形と、データベース23中のライブラリ231〜233から選択した波形とのずれが所定値以上である場合には、再度、データベース23中のライブラリ231〜233から波形を選択し、検出した反射光の波形と、選択した波形とを照合する。
取得部21で取得した反射光の波形と、ライブラリ231〜233から選択した波形とのずれが所定値未満である場合には、ライブラリ231〜233から選択した波形に関連づけられた凹部511のパラメータ群を、凹部511の形状を示す値として検出する。
【0025】
第二算出部26では、照合部24で検出した凹部511の形状を示すパラメータ群から把握される凹部511の形状を補正する。
補正データ記憶部25に記憶された補正データに基づいて、凹部511の形状を補正する。
たとえば、本実施形態では、照合部24で検出した凹部511の形状を示すパラメータ群から凹部511の底部の幅寸法が把握できる。この底部の幅寸法を第二算出部26にて補正する。
そして、補正後のデータを凹部511の形状として出力する。
【0026】
次に、図6を参照して、以上のような計測装置1を用いた計測方法について説明する。
はじめに、ライブラリ231〜233を作成するにあたり、ウェハ5の絶縁膜51の凹部511の底面に対する側壁の角度を測定する。ここでは、測長SEMを使用して、測定を行う(処理S1)。
計測する凹部511は、ウェハ5の中央部分のチップ形成領域に形成された凹部511であることが好ましい。
具体的には、凹部511のエッチングレートおよびエッチング時間から凹部511の深さ寸法を推測する。次に、測長SEMにより、凹部511の底部の幅寸法、凹部511の開口(凹部511の上端側)の幅寸法を実測する。
そして、凹部511の底部の幅寸法、凹部511の開口の幅寸法、凹部511の深さ寸法とから凹部511の底面に対する側壁の角度を算出する。
【0027】
次に、ライブラリを作成する(処理S2)。
作業者が凹部511の底面に対する側壁の角度、凹部511の所定深さ位置における幅寸法、凹部511の深さ寸法、絶縁膜51の膜厚を含んだ第一のパラメータ群A1〜Anを複数設定する。
ここで、凹部511の底面に対する側壁の角度は、処理S1で測定した測定値である。
そして、算出装置2に入力された第一のパラメータ群A1〜Anを、取得部21にて取得する。さらに、第一算出部22では、取得部21で取得した各第一のパラメータ群A1〜Anを所定の関数に代入し、第一のパラメータ群A1〜Anにそれぞれ関連づけられた複数の反射光の波形を算出する。第一のパラメータ群A1〜Anおよびこれに関連づけられた複数の波形を第一のライブラリ231としてデータベース23に記憶させる。
【0028】
同様にして、第二のパラメータ群B1〜Bnおよびこれに関連づけられた複数の波形を第二のライブラリ232としてデータベース23に記憶させる。
同様にして、第三のパラメータ群C1〜Cnおよびこれに関連づけられた複数の波形を第三のライブラリ233としてデータベース23に記憶させる。
【0029】
ここで、各ライブラリ231〜233において、θの値を測定値に固定している理由について説明する。
前述したように、図7(B)には、スキャトロメトリ法で、データベースを作成する際に、ビアホールの深さ、ビアホールの底面に対する側壁の角度、ビアホールの深さの中間位置における幅寸法の3つのパラメータをいずれも可変とした場合の結果が示されている。
この場合には、スキャトロメトリ法によるビアホールの底部の幅寸法の測定値平均と、SEMによるビアホールの底部の幅寸法の実測値平均とは大きく異なっており、相関係数は0.861と低くなっている。
【0030】
図7(C)には、スキャトロメトリ法で、データベースを作成する際に、前記3つのパラメータのうち、ビアホールの深さの中間位置における幅寸法を所定の値に固定し、他のパラメータを可変とした場合の結果が示されている。
この場合においても、スキャトロメトリ法によるビアホールの底部の幅寸法の測定値平均と、SEMによるビアホールの底部の幅寸法の実測値平均とは大きく異なっており、相関係数は低い。
【0031】
一方、図7(A)には、スキャトロメトリ法で、データベースを作成する際に、前記3つのパラメータのうち、ビアホールの底面に対する側壁の角度を所定の値に固定し、他のパラメータを可変とした場合の結果が示されている。
この場合には、スキャトロメトリ法によるビアホールの底部の幅寸法の測定値平均と、SEMによるビアホールの底部の幅寸法の実測値平均とは略同様の値を示し、相関係数は0.992と非常に高いものとなる。
以上のことから、凹部の底面に対する側壁の角度を所定の値に固定し、ライブラリを作成することで、スキャトロメトリ法によって、正確な形状を把握することができると考えられる。
【0032】
凹部の底面に対する側壁の角度を所定の値に固定することで、正確な形状を把握できる理由としては、以下のようなことが推測される。
図8(A)、(B)に示すように、MCD、Hの値が同じ値であっても、θの値が異なることで、凹部の底部の幅寸法L1,L2は大きく変動してしまう。
ウェハ5の絶縁膜51をエッチングする際には、同一ウェハの面内において、図9(A)に示すように、凹部511の形状が断面矩形形状となる場合や、図9(B)に示すように、凹部511がボーイング形状となる場合がある。
このとき、θの値を可変としてしまうと、ボーイング形状の湾曲部分の形状を基準にして得られる角度θ2をパラメータとして算出した波形と、反射光の波形とが一致してしまうことがある。このθ2は、実際の底面に対する側壁の角度θ1と異なる角度である。
そのため、ボーイング形状の場合において底部の幅寸法が実測値から大きくずれてしまうことがある。
これにより、同一ウェハ面内の凹部511の底部の幅寸法の値に大きくばらつきが生じ、スキャトリメトリ法による凹部511の底部の幅寸法の平均値と、SEMでの凹部511の底部の幅寸法の平均値とが大きくずれてしまう。
【0033】
これに対し、図10(A)、(B)に示すように、θの値を一定の値(実測値)θ1に固定し、ボーイング形状の場合においても、断面矩形形状の場合と同じ角度とすることで、スキャトロメトリ法による凹部511の底部の幅寸法と、SEMでの凹部511の底部の幅寸法の実測値とが大きくずれてしまうことを防止できる。
【0034】
また、各ライブラリ231〜233間において、膜厚の値を異なる値としているのは、以下の理由による。
図11には、膜厚を400nmの値に固定して、スキャトロメトリ法により、計測を行った場合の凹部511の底部の幅寸法の値と、SEMによる凹部511の底部の幅寸法の実測値とを示す。
図11の横軸は、絶縁膜の膜厚を示す。また、図11中、OCDと示されているものは、スキャトロメトリ法により計測したものである。
この図11によれば、膜厚がある一定の範囲(ゾーンB)外となると(ゾーンA,C)、ずれが大きくなることがわかる。
これは、実際の膜厚が凹部511の形状に影響を及ぼしていることを示しており、膜厚の値を固定した場合には、ある一定範囲内にのみ正確な計測が行えることを示している。
従って、各ライブラリ231〜233間において、膜厚の値を異なる値とし、実際の絶縁膜の膜厚に近いライブラリ231〜233を選択して、波形の照合を行うことで、正確な凹部511の形状を把握することができるのである。
ウェハの製造プロセスにおいては、絶縁膜51の膜厚は必ずしも一定の値とならず、多少の変動を生じる。従って、同一プロセスで製造された絶縁膜51に形成された凹部511を測定する場合において、凹部511の形状を正確に計測するためには、絶縁膜51の厚みを把握し、これに応じたライブラリを選択することが重要となる。
【0035】
次に、補正データ記憶部25に記憶させる補正データを作成する(処理S3)。
各ライブラリ231〜233においてθを一定の固定した場合、スキャトロメトリ法での測定値と、SEMによる実測値とのずれは従来に比べ改善されるが、スキャトロメトリ法での測定値と、SEMによる実測値との間には、わずかなずれが生じることがわかった。
図12に示すように、各ライブラリ231〜233においてθを一定の値に固定し、測定した場合、スキャトロメトリ法から把握される凹部511の底部の幅寸法と、測長SEMでの凹部511の底部の幅寸法の実測値との間に一定のずれ量があることがわかった。
そして、このずれ量は、凹部511の底部の幅寸法の大きさによらず、凹部511のエッチング条件が同じであれば、略一定となることがわかった。そこで、ずれ量を、平均化して補正データ(本実施形態では、たとえば、29.28nm)として補正データ記憶部25に記憶させておく。
図13(A)〜(C)には、補正データを反映させた凹部の底部の幅寸法と、測長SEMでの凹部の底部の幅寸法とのずれを示す。
図13(B)は、ウェハ面内のx軸方向に沿った所定の位置の凹部の底部の幅寸法を示し、図13(C)はウェハ面内のy軸方向に沿った所定の位置の凹部底部の幅寸法を示す。
これにより、補正データを反映させた凹部511の底部の幅寸法と、測長SEMでの凹部511の底部の幅寸法とのずれがほとんどなくなっていることがわかる。
【0036】
次に、計測を開始する。
ウェハの凹部511に光源12から光を照射し(処理S4)、その反射光を検出器13にて検出する(処理S5)。ここで、計測する凹部511は、θを測定した凹部511であってもよく、絶縁膜51に形成されている他の凹部511であってもよい。
反射光の波形は、取得部21を介して照合部24に送られる。
この際、測定対象となるウェハ5の絶縁膜51の厚みを入力する。絶縁膜51の厚みは取得部21を介して照合部24に送られる。
【0037】
照合部24では、取得した反射光の波形とデータベース中に記憶された波形とを照合する(処理S6)。
このとき、照合部24では、取得した絶縁膜51の厚みに応じたライブラリ231〜233を選択する。
たとえば、第一のライブラリ231は膜厚が410nmであり、測定対象となるウェハの絶縁膜の膜厚が410±20nmの範囲にある場合には、第一のライブラリ231が選択される。
第二のライブラリ232の膜厚は370nmであり、測定対象となるウェハの絶縁膜の膜厚が370±20nmの範囲にある場合には、第二のライブラリ232が選択される。
また、第三のライブラリ233の膜厚は450nmであり、測定対象となるウェハの絶縁膜の膜厚が450±20nmの範囲にある場合には、第三のライブラリ233が選択される。
照合部24にて、選択した波形と、反射光の波形とを照合し、ずれ量が所定値以上である場合には(処理S7)、再度、波形の選択を行うとともに、選択した波形と、反射光との波形の照合を行う。
【0038】
一方、ずれ量が所定値未満である場合(処理S7)には、選択した波形に関連づけられたパラメータ群を凹部511の形状を示すパラメータとする。
次に、第二算出部26では、照合部24にて得られたパラメータ群から得られる凹部511の形状の補正を行う(処理S8)。具体的には、補正データ記憶部25に記憶された補正データに基づいて、パラメータ群から算出される凹部511の底部の幅寸法の補正を行う。
なお、パラメータ群から算出される底部の幅寸法とは、凹部511のMCDと、Hと、θとから算出される値である。
その後、補正後の凹部511の底部の幅寸法を把握した凹部511の形状として出力する。
【0039】
次に、計測を行った凹部511とは異なる他の凹部511(たとえば、計測を行った凹部511とは異なるチップ形成領域にある凹部511)がある場合には、異なる凹部511の計測を行う(処理S9)。
具体的には、処理S4〜処理S8を行う。
以上のようにして、ウェハ5の各チップ形成領域の凹部511の計測を行う。
さらに、ウェハ5とは異なる他のウェハであって、ウェハ5と同一の製造プロセスで製造され、凹部511と同じエッチング条件にて形成された凹部を有し、絶縁膜の層構成や絶縁膜の厚みがおおよそ同一である他のウェハの凹部を、計測装置1を用いて計測してもよい。
この場合には、処理S4〜処理S9を行えばよい。
【0040】
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
ライブラリ231,232,233を作成するための複数のパラメータ群A1〜An、B1〜Bn、C1〜Cnは、凹部511の底面に対する側壁の角度が同じで、凹部511の幅寸法、凹部511の深さ寸法を含む他のパラメータの少なくともいずれか一つが異なっている。
そして、凹部511の底面に対する側壁の角度は測長SEMを使用して測定した測定値である。
このように、凹部511の底面に対する側壁の角度を測定値で固定し、波形を作成することで、スキャトロメトリ法によって、正確な形状を把握することができる。
【0041】
また、本実施形態では、凹部511の底面に対する側壁の角度を、測長SEMにより計測している。これによりウェハ5を破壊することなく、凹部511の底面に対する側壁の角度を実測することができる。
そして、測長SEMによる測定値をライブラリの作成に使用するとともに、測長SEMにより計測したウェハ5を用いて凹部511の形状を把握している。
すなわち、ライブラリを作成するために使用するウェハ5と、凹部511の形状を把握するウェハ5とを同一のウェハとすることができる。
従って、サンプルウェハ等を用いて凹部の形状を実測し、ライブラリを作成する場合に比べ、より正確に凹部511の形状を把握することができる。
【0042】
また、本実施形態では、ライブラリ231,232,233の波形と、反射光の波形とを照合することにより得られた値から把握される凹部511の形状(具体的には、凹部511の底部の幅寸法)と、凹部511の形状の測長SEMによる実測値とのずれを把握し、凹部511の形状を補正しているため、より正確に凹部511の形状を把握することができる。
【0043】
凹部511の底面に対する側壁の角度を固定した複数のパラメータ群を使用して計測を行う場合、複数のパラメータ群において、絶縁膜の膜厚を所定の値に固定してしまうと、計測から得られた凹部511の形状と実際の凹部511の形状とにずれが生じることがある。
そこで、絶縁膜51の膜厚の厚みに応じたライブラリ231,232,233を複数設け、実際の絶縁膜51の膜厚に応じたライブラリ231,232,233を選択することで、より正確な計測を行うことができる。
【0044】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
たとえば、前記実施形態では、パラメータ群を構成するパラメータとして、θ、MCD、Hをあげたが、これに限られるものではない。θ、MCD,Hに加えて、凹部511の奥行き寸法をパラメータとしてもよい。
たとえば、凹部としてビアホールを計測する場合には、ビアホールの奥行き寸法をパラメータとして採用することが好ましい。
このようにすることで、凹部の形状を、より正確に把握することができる。
【0045】
さらに、前記実施形態では、第一のパラメータ群A1〜An、第二のパラメータ群B1〜Bn、第三のパラメータ群C1〜Cnの各パラメータ群において、それぞれ絶縁膜の膜厚の値を一定の値としていたが、これに限らず、絶縁膜の膜厚の値を固定せずに、適宜設定するものとしてもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、θの値を測長SEMを使用して測定していたが、これに限らず、測長SEM以外の方法によりθの値を測定してもよい。
たとえば、サンプルウェハを用意し、サンプルウェハの凹部のθの値を断面SEMにより実測してもよい。そして、サンプルウェハと同様の製造プロセスにて製造されたウェハの凹部511の形状を計測してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態にかかる計測装置を示す模式図である。
【図2】計測装置の算出装置を示すブロック図である。
【図3】ライブラリの構造を示す図である。
【図4】ライブラリの構造を示す図である。
【図5】ライブラリの構造を示す図である。
【図6】計測方法を示す図である。
【図7】スキャトロメトリ法の測定値と、測長SEMの測定値との相関関係を示す図である。
【図8】凹部の底面に対する側壁の角度による凹部の形状の影響を示す図である。
【図9】凹部の形状が断面矩形形状の場合と、ボーイング形状の場合とにおける凹部の底面に対する側壁の角度による影響を示す図である。
【図10】凹部の形状が断面矩形形状の場合と、ボーイング形状の場合とにおける凹部の底面に対する側壁の角度による影響を示す図である。
【図11】膜厚を400nmの値に固定して、スキャトロメトリ法により、計測を行った場合の凹部の底部の幅寸法の値と、SEMによる凹部の底部の幅寸法の実測値とを示す図である。
【図12】スキャトロメトリ法から把握される凹部の底部の幅寸法と、測長SEMでの凹部の底部の幅寸法のずれを示す図である。
【図13】スキャトロメトリ法から把握される凹部の底部の幅寸法と、測長SEMでの凹部の底部の幅寸法のずれを示す図である。
【符号の説明】
【0048】
1 計測装置
2 算出装置
5 ウェハ
11 ステージ
12 光源
13 検出器
21 取得部
22 第一算出部
23 データベース
24 照合部
25 補正データ記憶部
26 第二算出部
27 出力部
50 基板
51 絶縁膜
231 第一のライブラリ
232 第二のライブラリ
233 第三のライブラリ
511 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁膜に形成された凹部の底面に対する側壁の角度を測定する工程と、
絶縁膜に形成された凹部の底面に対する側壁の角度、前記凹部の所定深さ位置における幅寸法、前記凹部の深さ寸法を含んだパラメータ群を複数設定し、
前記複数のパラメータ群にそれぞれ関連づけられた複数の反射光の波形を有するライブラリを作成する工程と、
絶縁膜に形成された凹部に対し光を照射する工程と、
前記光が照射された前記凹部からの反射光を検出する工程と、
検出した前記反射光の波形と、前記ライブラリから選択した波形とを照合する工程と、
検出した前記反射光の波形と、前記ライブラリから選択した波形とのずれが所定値以上である場合には、再度、検出した前記反射光の波形と、前記ライブラリから選択した波形とを照合し、
検出した前記反射光の波形と、前記ライブラリから選択した波形とのずれが所定値未満である場合には、前記ライブラリから選択した波形に関連づけられた凹部の前記幅寸法、凹部の前記深さ寸法および、凹部の前記底面に対する側壁の角度を含む前記パラメータ群を、前記光が照射された前記凹部の形状を示す値とし、前記凹部の形状を把握する工程とを含み、
ライブラリを作成する前記工程における前記複数のパラメータ群は、前記凹部の底面に対する側壁の角度が同じで、凹部の前記幅寸法、凹部の前記深さ寸法を含む他のパラメータの少なくともいずれか一つが異なっており、前記凹部の底面に対する側壁の角度は、凹部の底面に対する側壁の角度を測定する前記工程で得られた測定値である計測方法。
【請求項2】
請求項1に記載の計測方法において、
絶縁膜に形成された凹部の底面に対する側壁の角度を測定する前記工程では、前記凹部の深さ寸法を取得するとともに、測長SEMにより、前記凹部の底部の幅寸法、前記凹部の開口の幅寸法を計測し、前記凹部の底面に対する側壁の角度を測定する計測方法。
【請求項3】
請求項2に記載の計測方法において、
前記測長SEMにより計測した前記凹部が形成された前記絶縁膜には、複数の凹部が形成され、
凹部に対し光を照射する前記工程において、前記測長SEMにより計測した前記凹部とは異なる他の凹部に対し光を照射して、前記他の凹部の形状を把握する計測方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の計測方法において、
前記凹部の形状を示す前記値から把握される前記凹部の形状と、前記凹部を当該計測方法以外の方法により測定することにより得られた前記凹部の形状とのずれをあらかじめ取得しておき、
凹部の形状を把握する前記工程では、
取得した前記ずれに基づいて、前記凹部の形状を示す前記値から把握される前記凹部の形状を補正する計測方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載の計測方法において、
前記各パラメータ群は、パラメータとして前記絶縁膜の膜厚を有し、
前記ライブラリを作成する前記工程では、
絶縁膜の膜厚の値が同じである複数の第一のパラメータ群を設定し、この前記複数の第一のパラメータ群にそれぞれ関連づけられた複数の反射光の波形を有する第一のライブラリを作成するとともに、
前記第一のパラメータ群の前記絶縁膜の膜厚とは異なる膜厚であり、パラメータ群間で膜厚が同じ値である複数の第二のパラメータ群を設定し、
この前記複数の第二のパラメータ群にそれぞれ関連づけられた複数の反射光の波形を有する第二のライブラリを作成し、
前記第一のパラメータ群および前記第二のパラメータ群では、前記凹部の底面に対する側壁の角度は同じ値であり、
検出した前記反射光の波形と、前記ライブラリから選択した波形とを照合する前記工程では、
前記光が照射された前記凹部が形成された前記絶縁膜の膜厚を取得して、前記複数のライブラリのなかから、取得した膜厚に応じた前記ライブラリを選択し、選択したライブラリの中から波形を選択して、検出した前記反射光の波形との照合を行う計測方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−162494(P2009−162494A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−339158(P2007−339158)
【出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(302062931)NECエレクトロニクス株式会社 (8,021)
【Fターム(参考)】