説明

記録装置

【課題】 動画像全体の画質が均質で最良となるように、記録媒体の記録可能容量に応じて、ビットストリームを可変ビットレートで記録できるようにする。
【解決手段】入力動画像信号を第1のビットレートに圧縮符号化する第1の符号化器51と、第1の符号化器51による符号化時の圧縮度に対応する第1の符号化情報を第1の圧縮データに多重する多重回路53と、多重化データを記録媒体57に書き込む手段55と、記録媒体57から多重化データを再生する手段59と、再生された多重化データを第1の符号化情報と第1の圧縮データに分離する分離回路200と、分離された第1の圧縮データから第2の符号化情報に基づいて可変ビットレートの第2の圧縮データを生成する第2の符号化手段205,220と、第2の圧縮データの目標総データ量に基づいて第1の符号化情報を第2の符号化情報に変換して第2の符号化手段220に与える制御回路210とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放送等の動画像を容量に制限のある記録媒体に記録する記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動画像信号の圧縮符号化方式として、H.261規格、MPEG−1規格、MPEG−2規格等の標準が提案されている。これらの方式では、動き補償付き予測符号化、変換符号化、可変長符号化等の周知の技術が取り入れられている。
【0003】
例えば、MPEG規格では、前方予測符号化、後方予測符号化、双方向予測符号化が行われる。このため、時間的に後の画面や時間的に前の画面との差分をとる必要があり、図6のように、まず、ビデオ信号の並び変え(10)が行われる。
【0004】
次に、動き補償の単位である16×16画素のマクロブロックに分割するマクロブロック化(11)が行われ、さらに、時間的に後の画面や時間的に前の画面で最も良く一致するとして検索された領域との差分がとられる(23)。なお、イントラマクロブロックの場合は差分はとられず、そのままDCT12に入力される。
【0005】
上記差分値又はイントラマクロブロックは、8×8画素のブロック単位でDCT変換されて(12)、8×8の係数行列とされる。また、この8×8の係数行列の各係数Cijが各々量子化される(13)。ここで、量子化とは、各係数Cijに固有の定数Kij(量子化行列テーブルで与えられる定数)に量子化サイズQSを乗算した値で、各係数Cijを除算して、余りを丸める処理をいう。これにより、上記係数行列の高周波項の係数が削減されてデータ量が大きく圧縮される。この圧縮データが可変長符号化(15)されて、バッファ16に入力される。
【0006】
一方、上述の時間的に後の画面や時間的に前の画面は、逆量子化17及び逆DCT18により再現されて、画像メモリ19に格納されている。なお、逆量子化17及び逆DCT18されるデータが前述の差分値の場合は、画像メモリ19内のデータが加算されて(24)、上述の時間的に後の画面や時間的に前の画面が再現される。この画像メモリ19内の再現画面内で、カレントマクロブロック(減算(23)対象のマクロブロック)と最も良く一致する領域が検索される。これを、動き検出(22)といい、この動きを考慮して減算(23)することを動き補償(20)という。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述のように、量子化は、
Cij/(Kij×QS)
のように行われる。つまり、量子化サイズQSを大きくすると、高周波項の係数の削減度が大きくなって、データの圧縮度が大きくなる。従来の動画像の圧縮符号化方式では、圧縮符号化後のビットストリームは固定ビットレートとされている。つまり、可変長符号化(15)後のビットストリームがビットレート制御部14によって監視され、ビットレートの検出値が目標の値となるように、前記量子化サイズQSが制御されている。
【0008】
近年、バッファサイズの改良等により、可変ビットレートのビットストリーム出力が許容されるようになっている。つまり、バッファ16の出力として、可変ビットレートのビットストリームが許容されるようになっている。図5は可変ビットレートのソフトのヒットレートの時間的な推移を示す。この可変ビットレートのビットストリームを、例えば、ホ
ームビデオ等にデジタル記録したい場合、記録媒体の記録容量との関係で、ビットレート制御が問題となる。即ち、従来はビットレートが固定であったため、番組の記録時間が判っていれば、記録媒体に必要な記録容量は、
ビットレート×記録時間
として求めることが可能であった。
【0009】
しかし、可変ビットレートで記録する場合には、全符号量を予め知ることができず、記録媒体の記録可能容量をオーバーする恐れがある。また、記録媒体の容量をオーバーしないように平均の圧縮度を高めに設定すると、動画像の全体の画質が低下するという問題が生ずる。これは、可変ビットレートが、動画像の全体の画質を改善する目的で導入されたという経緯からも、避けたいことである。
【0010】
本発明は上記の事情に鑑みたものであり、動画像全体の画質が均質で最良となるように、記録媒体の記録可能容量に応じて、ビットストリームを可変ビットレートで記録できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、第1の記録媒体と、前記第1の記録媒体よりも記録可能容量の小さい第2の記録媒体と、入力動画像信号を第1のビットレートの第1の圧縮データに圧縮符号化する第1の符号化手段と、前記第1の圧縮データを前記第1の記録媒体に記録する第1の記録手段と、前記第1の圧縮データを復号し復号画像信号を生成する復号手段と、前記復号画像信号を前記第2のビットレートの第2の圧縮データに圧縮符号化する第2の符号化手段と、前記第2の圧縮データを前記第2の記録媒体に記録する第2の記録手段とを備え、前記第2の符号化手段は、前記復号手段からの復号画像信号を前記第1のビットレートよりも小さい第2のビットレートで、且つ前記第2の圧縮データの総データ量が前記第2の記録媒体の記録可能容量よりも小さくなるように符号化することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
動画像全体の画質が均質で最良となるように、記録媒体の記録可能容量に応じて符号化することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0014】
図1を参照しながら説明する。
【0015】
この実施例は、放送系の動画像信号に推奨ビットレート等の符号化情報が多重されている場合である。例えば、動画像信号がNTSC信号であれば、上記符号化情報は、垂直帰線期間(垂直ブランキング期間)内や、第1画素列及び/又は最終画素列(通常は非表示)に挿入されたり、或いは、映像信号中に多重されており、これが、分離回路100にて分離される。
【0016】
ここで、各画面もしくは各場面の各推奨ビットレートは、当該動画像全体の目標平均ビットレートや目標総データ量(<目的の記録媒体の容量)に対応付けられていることが望ましい。例えば、或る任意の場面の推奨ビットレートは、目標平均ビットレートが2Mbpsの場合、3Mbpsの場合、4Mbpsの場合、5Mbpsの場合等のように、各目標平均ビットレートに各々対応付けて多重もしくは挿入されていることが望ましい。その理由は、ビットストリーム中には、ビットレートにかかわらずデータ量が不変のデータ(動きベクトルデータ,ヘッダデータ等)が含まれており、且つ、その統計的な分布も一様ではないため、例えば、目標平均ビットレートが2Mbpsの場合の或る場面の推奨ビットレートを単純に2倍したとしても、目標平均ビットレートが4Mbpsの場合の当該或る場面の推奨ビットレート
には合致しないためである。
【0017】
分離回路100にて分離された動画像信号は符号化器120へ送られ、一方、符号化情報はビットレート制御回路110へ送られる。符号化器120は、動画像信号を所定の方式で圧縮符号化して、圧縮符号化データのビットストリームを出力する回路であり、例えば、DCT回路、量子化回路、可変長符号化回路、局部復号回路(逆量子化回路、逆DCT回路)、フレームメモリ、動き補償付き予測回路等で構成される。ビットレート制御回路110は、符号化器120が出力するビットストリームのビットレートが各画面もしくは各場面の符号化情報に対応するビットレートになるように、上記量子化回路と上記逆量子化回路での各場面もしくは各場面の量子化ステップ幅を制御する。符号化情報として推奨ビットレートではなく推奨量子化ステップ幅が与えられている場合には、その推奨量子化ステップ幅がそのまま用いられる。
【0018】
なお、符号化情報は、各画面毎に多重又は挿入される場合や、各場面もしくは数枚〜数十枚の画面を単位とする各場面毎に多重又は挿入される場合がある。後者の場合であれば、多重又は挿入されている符号化情報をメモリの所定の領域に記憶しておき、順に読み出して上述の制御に供すればよい。
【実施例2】
【0019】
図2を参照しながら説明する。
【0020】
この実施例は、ディスク等の記録媒体に記録されている動画像信号を再生して圧縮符号化する場合であり、推奨ビットレート等の符号化情報は、各画面の先頭毎に記録されている場合、数枚〜数十枚の画面を単位とする各場面の先頭に記録されている場合の他、リードインエリアや、当該動画像信号(プログラム)の先頭に記録されている場合もある。
【0021】
分離回路以降の構成は実施例1と同様であるため、説明は省略して、実施例1と同一の符号にて示した。
【実施例3】
【0022】
図3を参照しながら説明する。
【0023】
この実施例では、図中の第1の符号化器51及び第2の符号化器220として、DCT回路と、該DCT回路による変換後のDCT係数を量子化する回路を備えた符号化器(例:MPEGエンコーダ等)を想定している。
【0024】
この実施例では、動画像信号を固定の量子化ステップ幅で第1のビットストリームに圧縮符号化して第1の記録媒体(大容量の記録媒体)に記録した後、該第1の記録媒体を読み出して動画像データに復号し、復号後の動画像データを各画面もしくは各場面に最適なビットレートの第2のビットストリームに圧縮符号化して、第2の記録媒体(比較的小容量の記録媒体)に記録している。
【0025】
各画面もしくは各場面に最適なビットレートとは、動画像の全体を通して各画面もしくは各場面の主観的な画質(視聴者に感じられる画質)が略一様になるように制御されたビットレートである。換言すれば、視聴者の目に画質の劣化が目立ち難い画面もしくは場面(動きの速い場面等)では圧縮度を上げて発生ビット量を減らし、劣化が目立ち易い画面もしくは場面(動きの遅い場面等)では圧縮度を下げて発生ビット量を増やすように制御されたビットレートである。
【0026】
このため、実施例3では、第1のビットストリームの総データ量と第2のビットストリームの目標総データ量(<第2の記録媒体の記録可能容量)に基づいて、各画面もしくは各場面の発生ビット量が決定され、各画面もしくは各場面のビットレートが制御される。例えば、第2のビットストリームの目標総データ量が第1のビットストリームの総データ量の半分であれば、各画面もしくは各場面の発生ビット量が各々第1のビットストリームの半分となるように、各画面もしくは各場面のビットレートが制御される。
【0027】
受信機から入力される動画像信号は、まず、第1の符号化器51で圧縮符号化され、この圧縮符号化されたビットストリームに、多重化回路53にて符号化情報が多重されるとともに、当該ビットストリームの総データ量情報が付加される。こうして、第1のビットストリームが生成される。この第1のビットストリームが書込装置55によって第1の記録媒体57に記録される。符号化情報としては、本実施例3では、各画面もしくは各場面の発生ビット量情報が用いられる。
【0028】
記録媒体57に記録された第1のビットストリームは、読出装置59によって読み出される。この時、前記総データ量情報が最初に読み出される。読み出された第1のビットストリームは、分離回路200にて、前記総データ量情報及び前記発生ビット量情報と、残りのデータとに分離される。分離された前記総データ量情報及び前記発生ビット量情報はビットレート制御回路210へ送られ、一方、前記残りのデータは復号器205へ送られる。
【0029】
復号器205では、前記残りのデータが動画像データに復号される。この復号のパラメータとしては、前記第1の符号化器51で用いられたパラメータが用いられる。復号された動画像データは第2の符号化器220へ送られる。第2の符号化器220では、ビットレート制御回路210から随時送られて来るパラメータに従って圧縮符号化が行われる。このパラメータは、各画面もしくは各場面の発生ビット量が、前記総データ量情報及び前記発生ビット量情報と、第2のビットストリームの目標総データ量とで定まる値となるように、前述のようにしてビットレート制御回路210にて決定されたパラメータである。
【0030】
このようにして生成された第2のビットストリームは、第2の書込装置61によって第2の記録媒体63に記録される。なお、上述の説明から明らかなように、第1の記録媒体57としては大容量の記録媒体が必要であるが、第2の記録媒体63では、第1の記録媒体57ほどの記録容量は必要とされない。
【実施例4】
【0031】
図3を参照しながら説明する。
【0032】
この実施例は、実施例3と同じブロック図によって記述される。
【0033】
本実施例4が前記実施例3と異なる点は、第1のビットストリームを可変ビットレートではなく固定ビットレートになるように生成し、且つ、符号化情報として、第1のビットストリームの各画面もしくは各場面の発生ビット量ではなく、各マクロブロックの量子化ステップ幅と第1のビットストリーム全体の平均の量子化ステップ幅を用いている点である。
【0034】
周知のように、固定ビットレートのビットストリームを出力する圧縮符号化器では、DCT・量子化・可変長符号化後のビットストリームのビットレートが目標ビットレートになるように、量子化ステップ幅を制御している。つまり、検出されるビットレートが目標ビットレートより大きければ量子化ステップ幅を大きくして圧縮度を上げ、検出されるビットレートが目標ビットレートより小さければ量子化ステップ幅を小さくして圧縮度を下げている。したがって、量子化ステップ幅と発生ビット量には相関がある、この相関を利用して、本実施例4では、第2のビットストリームのビットレートを最適に制御している。
【0035】
例えば、第1のビットストリームの量子化ステップ幅の平均値が10であった場合、第1のビットストリームに於いて量子化ステップ幅が15であった領域では、第2のビットストリームの発生ビット量が第2のビットストリームの平均の発生ビット量の1.5倍となるように制御し、また、第1のビットストリームに於いて量子化ステップ幅が5であった領域では、第2のビットストリームの発生ビット量が第2のビットストリームの平均の発生ビット量の半分となるように制御すればよい。
【0036】
なお、本実施例4では、第1のビットストリームが固定ビットレートであるため、その総データ量を、
第1のビットレート×記録時間
として求めることができる。
【0037】
また、第2のビットストリームの平均の発生ビット量は、
第2のビットストリームの総データ量÷記録時間
として求めることができる。
【実施例5】
【0038】
図4(a)を参照しながら説明する。
【0039】
実施例5では、放送局から送信するビデオ信号に、符号化情報として各画面もしくは各場面の発生ビット量と総データ量を多重している。このため、前記実施例3と同様に、固定の量子化ステップ幅を用いてビデオ信号が圧縮符号化され、その際、各画面もしくは各場面の発生ビット量が観測される。また、上記圧縮符号化データの総データ量が演算される。これらが、ビデオ信号に多重されて送信される。多重は、前記実施例1と同様に、垂直帰線期間(垂直ブランキング期間)内や、第1画素列及び/又は最終画素列(通常は非表示)に挿入することで、また、映像信号中に多重することで行われ得る。なお、総データ量は、送信の先頭に付加される。
【0040】
また、ビデオ信号ではなく、ビデオ信号を圧縮符号化したビットストリームに上記の符号化情報を多重して送信してもよい。
【実施例6】
【0041】
図4(b)を参照しながら説明する。
【0042】
実施例6では、放送局から送信するビデオ信号に、符号化情報として各マクロブロックの量子化ステップ幅と平均の量子化ステップ幅を多重している。このため、前記実施例4と同様に、ビデオ信号が固定ビットレートのビットストリームに圧縮符号化される。その際、各マクロブロックの量子化ステップ幅が記憶され、また、平均の量子化ステップ幅が演算される。これらが、ビデオ信号の垂直帰線期間(垂直ブランキング期間)内や、第1画素列及び/又は最終画素列(通常は非表示)に挿入されたり、ビデオ信号中に多重されて送信される。
【0043】
なお、ビデオ信号ではなく、ビデオ信号を圧縮符号化したビットストリームに上記の符号化情報を多重して送信してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施例1の概略構成を示すブロック図。
【図2】実施例2の概略構成を示すブロック図。
【図3】実施例3及び4の概略構成を示すブロック図。
【図4】(a)は実施例5の概略構成を示すブロック図、(b)は実施例6の概略構成を示すブロック図。
【図5】可変ビットレートのソフトのビットレートの推移を示す説明図。
【図6】MPEGエンコーダを示すブロック図。
【符号の説明】
【0045】
51 第1符号化器
53 多重回路
55 書込装置
57 第1記録媒体
59 読出装置
200 分離回路
205 復号化器
210 ビットレート制御回路
220 第2符号化器
61 書込装置
63 第2記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の記録媒体と、前記第1の記録媒体よりも記録可能容量の小さい第2の記録媒体と、入力動画像信号を第1のビットレートの第1の圧縮データに圧縮符号化する第1の符号化手段と、前記第1の圧縮データを前記第1の記録媒体に記録する第1の記録手段と、前記第1の圧縮データを復号し復号画像信号を生成する復号手段と、前記復号画像信号を前記第2のビットレートの第2の圧縮データに圧縮符号化する第2の符号化手段と、前記第2の圧縮データを前記第2の記録媒体に記録する第2の記録手段とを備え、
前記第2の符号化手段は、前記復号手段からの復号画像信号を前記第1のビットレートよりも小さい第2のビットレートで、且つ前記第2の圧縮データの総データ量が前記第2の記録媒体の記録可能容量よりも小さくなるように符号化することを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−182723(P2008−182723A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−32823(P2008−32823)
【出願日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【分割の表示】特願2005−68596(P2005−68596)の分割
【原出願日】平成7年5月31日(1995.5.31)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】