説明

設備点検システム

【課題】設備について実施すべき各点検項目が適切に実施されたか否かを判定することができる、設備点検システムを提供すること。
【解決手段】設備点検システム1は、設備2について実施すべき点検項目を特定する点検項目情報と、点検項目を一意に識別する点検識別情報とを、相互に関連付けて格納する点検情報DB11aと、実施された点検項目を一意に識別する点検識別情報をRFIDタグリーダ3から取得し、当該取得した点検識別情報と、点検情報DB11aに格納されている点検項目情報及び点検識別情報とに基づき、設備2における点検状態を判定する点検状態判定部10aとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、設備点検システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータ、エスカレータ、防災設備等の各種設備については、これらの設備の機能を維持及び保全するために、定期的に点検作業を行う必要がある。これらの設備の点検作業を適切に行うためには、設備の構造や点検箇所、作業要領等に関する専門的な知識が必要とされる。そこで、設備のメンテナンス作業を作業者が適切に実施できるように支援するためのシステムが提案されている。
【0003】
例えば、エレベータの据付や保守を行う作業者に対して技術的な支援を行うための、エレベータの技術支援システムが提案されている。このシステムでは、エレベータにおける使用機器の技術情報が記録された技術情報ファイルを備えた中央管理装置を設けており、作業者が所持する携帯端末から通信回線を介して中央管理装置にエレベータにおける使用機器を特定する情報が伝送されると、当該伝送された情報に基づいて、当該エレベータの使用機器に関する技術情報を技術情報ファイルから読み出して携帯端末へ返送する(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−205882号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年では各種設備の高機能化等に伴って点検項目数が増大しつつあるが、設備の維持及び保全のためには、全ての点検項目について確実に点検が実施されることが要求される。しかしながら、上述の如き従来のシステムでは、エレベータにおける各使用機器に関する技術情報のリクエストが携帯端末から行われた場合に、当該技術情報を技術情報ファイルから読み出して携帯端末に返送するものに過ぎず、実際に全ての点検項目につて確実に点検が実施されたか否かをシステム側で確認することは困難であった。また、点検項目の抜けや点検順序の間違い等、点検が適切に実施されなかった場合に、これをシステム側で判定することは困難であった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、設備について実施すべき各点検項目が適切に実施されたか否かを判定することができる、設備点検システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、請求項1に記載の設備点検システムは、設備について実施すべき点検項目を特定する点検項目情報と、前記点検項目を一意に識別する点検識別情報とを、相互に関連付けて格納する点検情報格納手段と、実施された点検項目を一意に識別する点検識別情報を点検端末から取得し、当該取得した点検識別情報と、前記点検情報格納手段に格納されている前記点検項目情報及び前記点検識別情報とに基づき、前記設備における点検状態を判定する点検状態判定手段と、を備える。
【0008】
また、請求項2に記載の設備点検システムは、請求項1に記載の設備点検システムにおいて、前記点検端末は、前記設備に付されたRFIDタグに格納されている前記点検識別情報を読み取り可能なRFIDタグリーダである。
【0009】
また、請求項3に記載の設備点検システムは、請求項1または2に記載の設備点検システムにおいて、前記点検状態判定手段が前記点検端末から取得した点検識別情報に基づき、前記設備の点検における偽装の有無を判定する点検偽装判定手段を備える。
【0010】
また、請求項4に記載の設備点検システムは、請求項3に記載の設備点検システムにおいて、前記点検情報格納手段は、複数の前記点検項目を実施すべき順序を特定する点検順序情報を格納し、前記点検偽装判定手段は、前記点検状態判定手段が前記点検端末から取得した点検識別情報に対応する点検項目の実施順序を特定し、当該特定した実施順序と、前記点検順序情報により特定される実施順序とに基づき、前記設備の点検における偽装の有無を判定する。
【0011】
また、請求項5に記載の設備点検システムは、請求項3又は4に記載の設備点検システムにおいて、前記点検情報格納手段は、連続して実施される複数の前記点検項目の相互間における点検間隔を特定する点検間隔情報を格納し、前記点検偽装判定手段は、前記点検端末が前記点検識別情報を取得した時刻を特定する点検時刻情報を当該点検端末から取得し、当該取得した前記点検時刻情報と、前記点検状態判定手段が前記点検端末から取得した点検識別情報とに基づき、連続して実施された点検項目の相互間における点検間隔を特定し、当該特定した点検間隔と、前記点検間隔情報により特定される点検間隔とに基づき、前記設備の点検における偽装の有無を判定する。
【0012】
また、請求項6に記載の設備点検システムは、請求項3から5のいずれか一項に記載の設備点検システムにおいて、前記点検情報格納手段は、前記設備を点検可能な点検者を一意に識別する点検者識別情報を格納し、前記点検偽装判定手段は、点検が実施された設備を特定する設備情報、及び点検を実施した点検者を一意に識別する点検者識別情報を、前記点検端末から取得し、当該取得した設備情報、及び点検者識別情報と、前記点検情報格納手段に格納されている点検者識別情報とに基づき、前記設備の点検における偽装の有無を判定する。
【0013】
また、請求項7に記載の設備点検システムは、請求項3から6のいずれか一項に記載の設備点検システムにおいて、前記点検情報格納手段は、前記点検項目毎に点検箇所の画像情報を格納し、前記点検偽装判定手段は、前記点検識別情報と関連付けて前記点検端末から取得した画像情報と、前記点検状態判定手段が前記点検端末から取得した点検識別情報に対応して前記点検情報格納手段に格納されている前記画像情報とに基づき、前記設備の点検における偽装の有無を判定する。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の設備点検システムによれば、実施された点検項目を一意に識別する点検識別情報を点検端末から取得し、当該取得した点検識別情報と、点検情報格納手段に格納されている点検項目情報及び点検識別情報とに基づき、設備における点検状態を判定するので、設備について実施すべき各点検項目が適切に実施されたか否かをシステム側で自動的に判定することができる。
【0015】
請求項2に記載の設備点検システムによれば、点検端末は、設備に付されたRFIDタグに格納されている点検識別情報を読み取り可能なRFIDタグリーダであるので、RFIDタグリーダによりRFIDタグから非接触にて容易に取得された点検識別情報を用いて、設備について実施すべき各点検項目が適切に実施されたか否かを判定することができる。
【0016】
請求項3に記載の設備点検システムによれば、点検偽装判定手段は、点検状態判定手段が点検端末から取得した点検識別情報に基づき、設備の点検における偽装の有無を判定するので、例えば実際には点検を行っていないにも拘らず点検を行ったように見せかけることや、適切な作業手順を踏まずに点検を行うこと等、設備の点検に関する不正行為が行われていることを特定し、その旨の警告を出力することができる。
【0017】
請求項4に記載の設備点検システムによれば、点検偽装判定手段は、点検状態判定手段が点検端末から取得した点検識別情報に対応する点検項目の実施順序を特定し、当該特定した実施順序と、点検情報格納手段に格納されている点検順序情報により特定される実施順序とに基づき、設備の点検における偽装の有無を判定するので、例えば適切な作業手順を踏まずに点検が行われた場合に、設備の点検における偽装が有ったと判定することができる。
【0018】
請求項5に記載の設備点検システムによれば、点検偽装判定手段は、点検端末が点検識別情報を取得した時刻を特定する点検時刻情報を当該点検端末から取得し、当該取得した点検時刻情報と、点検状態判定手段が点検端末から取得した点検識別情報とに基づき、連続して実施された点検項目の相互間における点検間隔を特定し、当該特定した点検間隔と、点検情報格納手段に格納されている点検間隔情報により特定される点検間隔とに基づき、設備の点検における偽装の有無を判定するので、例えば必要な作業手順を省略して短時間で点検が済まされたり、あるいは余計な作業が行われた場合に、設備の点検における偽装が有ったと判定することができる。
【0019】
請求項6に記載の設備点検システムによれば、点検偽装判定手段は、点検が実施された設備を特定する設備情報、及び点検を実施した点検者を一意に識別する点検者識別情報を、点検端末から取得し、当該取得した設備情報、及び点検者識別情報と、点検情報格納手段に格納されている点検者識別情報とに基づき、設備の点検における偽装の有無を判定するので、例えば適切な資格を有しない点検者により点検が実施された場合や、同一の点検者が同一時間帯に複数の設備において作業したことになっている場合に、設備の点検における偽装が有ったと判定することができる。
【0020】
請求項7に記載の設備点検システムによれば、点検偽装判定手段は、点検識別情報と関連付けて点検端末から取得した画像情報と、点検状態判定手段が点検端末から取得した点検識別情報に対応して点検情報格納手段に格納されている画像情報とに基づき、設備の点検における偽装の有無を判定するので、例えば点検項目に対応する点検箇所について実際には点検が行われておらず、その点検項目の点検箇所が適切に撮影されていない場合に、設備の点検における偽装が有ったと判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】設備点検システムの適用対象であるエレベータの構成を示した概要図である。
【図2】実施の形態に係る設備点検システムの電気的構成を機能概念的に示したブロック図である。
【図3】点検情報DBに格納されている情報を例示した表である。
【図4】RFIDタグに格納されている点検識別情報をRFIDタグリーダによって読み取る様子を例示した図である。
【図5】RFIDタグリーダの記憶手段に格納される情報を例示した表である。
【図6】設備点検システムによって実行される設備点検処理のフローチャートである。
【図7】図6に続く設備点検処理のフローチャートである。
【図8】設備の点検に関する業務のフローチャートを表示したディスプレイを示す図である。
【図9】「かご室」の点検における各点検項目の状態を表示したディスプレイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下に添付図面を参照して、この発明に係る設備点検システムの実施の形態を詳細に説明する。ただし、実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0023】
なお、実施の形態に係る設備点検システムは、設備の点検に関する各種制御を行うためのものであり、例えばマンション等の集合住宅、高層ビル、商業施設等におけるエレベータ、エスカレータ、防災設備等の各種設備の点検に適用することができる。以下の実施の形態では、エレベータの点検に設備点検システムを適用した場合を例として説明する。
【0024】
(構成)
最初に、実施の形態に係る設備点検システムの構成について説明する。図1は、設備点検システムの適用対象であるエレベータの構成を示した概要図である。この図1に示すように、エレベータについて実施すべき点検項目としては、機械室における「受電盤及び制御盤」、及び「巻上機及びブレーキ」、昇降路における「調速機」、及び「はかり装置」、かご室における「かごの戸スイッチ」、及び「かご内停止スイッチ」、かご上における「上部ファイナルリミットスイッチ」、「ドアインターロックスイッチ(各階毎)」、及び「つり合おもり部」、ピットにおける「緩衝器及び緩衝材」、「下部ファイナルリミットスイッチ」、及び「かご非常止め装置」がある。なお、図1中の丸数字は、各点検項目を実施すべき順序を表しており、各丸数字の昇順に各点検項目を実施する必要がある。
【0025】
図2は、実施の形態に係る設備点検システムの電気的構成を機能概念的に示したブロック図である。図2に示すように、点検対象となる設備2(本実施の形態ではエレベータ)には、RFID(Radio Frequency IDentification)タグ20が付されている。RFIDタグ20は、設備2について実施すべき各点検項目に対応するように付されており、各RFIDタグ20には当該RFIDタグ20に対応する点検項目を一意に識別するための点検識別情報が格納されている。
【0026】
各RFIDタグ20に格納されている点検識別情報は、点検端末としてのRFIDタグリーダ3によって読取可能となっている。このRFIDタグリーダ3により読み取られた点検識別情報は、当該RFIDタグリーダ3をメンテナンス会社4のアップロード端末40に接続することにより、当該RFIDタグリーダ3からアップロード端末40に入力される。設備点検システム1は、例えばインターネット等のネットワーク5を介してこのアップロード端末40に接続されており、当該アップロード端末40との間で通信可能となっている。なお、設備点検システム1とアップロード端末40との間の通信方式及びデータ構造の秘匿化や通信データの暗号化を行うことにより、アップロード端末40以外の端末から不正なデータが設備点検システム1に入力されることを防止できる。また、設備点検システム1にはディスプレイ12が接続されている。このディスプレイ12は、設備点検システム1の制御に基づき各種の情報を表示出力するものであり、例えば液晶ディスプレイやプラズマディスプレイ等の公知のディスプレイが用いられる。
【0027】
(構成−設備点検システム)
設備点検システム1は、図2に示すように、制御部10、及びデータ記録部11を備えている。
【0028】
(構成−設備点検システム−制御部)
制御部10は、設備点検システム1を制御する制御手段であり、具体的には、CPU、当該CPU上で解釈実行される各種のプログラム(OSなどの基本制御プログラムや、OS上で起動され特定機能を実現するアプリケーションプログラムを含む)、及びプログラムや各種のデータを格納するためのRAMの如き内部メモリを備えて構成されるコンピュータである。
【0029】
この制御部10は、機能概念的に、点検状態判定部10a、及び点検偽装判定部10bを備えている。点検状態判定部10aは、設備2における点検状態を判定する点検状態判定手段である。ここで「設備2における点検状態の判定」とは、例えば設備2の点検に関する業務が適切に行われているか否かを判定することや、設備2について実施すべき各点検項目が実施されているか否かを判定すること等を含むものとする。点検偽装判定部10bは、設備2の点検における偽装の有無を判定する点検偽装判定手段である。ここで「設備2の点検における偽装」とは、例えば実際には点検を行っていないにも拘らず点検を行ったように見せかけることや、適切な作業手順を踏まずに点検を行うこと等、設備2の点検に関する不正行為を示すものとする。これら制御部10の各構成要素によって実行される処理の詳細については後述する。
【0030】
(構成−設備点検システム−データ記録部)
データ記録部11は、制御部10による制御に必要なプログラム及び各種のデータを記録する記録手段であり、例えば、外部記憶装置としてのハードディスク(図示省略)を用いて構成されている。ただし、ハードディスクに代えてあるいはハードディスクと共に、磁気ディスクの如き磁気的記録媒体、又はDVDやブルーレイディスクの如き光学的記録媒体を含む、その他の任意の記録媒体を用いることができる。このデータ記録部11は、点検情報データベース11a(以下、データベースをDBと略記する)を備えている。
【0031】
点検情報DB11aは、設備2の点検に関する情報を格納する点検情報格納手段である。図3は、点検情報DB11aに格納されている情報を例示した表である。図3に示すように、点検情報DB11aには、項目「設備ID」、「設備種別」、「点検者」、「業務」、「点検項目」、「点検ID」、「点検順序」、「点検間隔」、及び「画像情報」に対応する情報が相互に関連付けて格納されている。項目「設備ID」に対応して格納される情報は、点検対象となる設備2を特定する設備情報である(図3では「F001」)。項目「設備種別」に対応して格納される情報は、各設備2の種別を特定するための情報である(図3では「昇降機タイプA」)。項目「点検者」に対応して格納される情報は、各設備2を点検可能な点検者を一意に識別する点検者識別情報であり、例えば各設備2の点検を行うために必要な資格を有する点検者の点検者識別情報が格納される(図3では「C0101」等)。項目「業務」に対応して格納される情報は、設備2の点検に関する業務を特定する情報であり、例えば業務の内容を特定する情報(図3では「点検作業員確認」)や、各業務を実施する場所を特定する情報(図3では「機械室」や「昇降路」等)が格納される。項目「点検項目」に対応して格納される情報は、設備2について実施すべき点検項目を特定する点検項目情報である。この点検項目情報としては、例えば各点検項目の点検を実施すべき対象を特定する情報(図3では「点検者ID]、「受電盤及び制御盤」、「巻上機及びブレーキ」等)が用いられる。項目「点検ID」に対応して格納される情報は、上記の各点検項目を一意に識別する点検識別情報である(図3では「0000」、「0001」等)。項目「点検順序」に対応して格納される情報は、複数の点検項目を実施すべき順序を特定する点検順序情報であり、例えば図3では、項目「点検順序」に対応して格納されている数字が小さいほど、先に実施すべき点検項目であることを示している。項目「点検間隔」に対応して格納される情報は、連続して実施される複数の点検項目の相互間における点検間隔を特定する点検間隔情報である。図3では、一つ前の順序の点検項目が実施されてから各点検項目の点検が実施されるまでの標準的な経過時間を特定する情報(例えば「5分」等)が格納されている。項目「画像情報」に対応して格納される情報は、各点検項目に対応する点検箇所の画像情報である(図3の例では、画像情報のファイル名「0001.jpg」等が格納されている)。これら点検情報DB11aに格納される各情報は、例えば公知の入力手段やネットワーク5等を介して予め入力される。
【0032】
(設備点検の流れ)
次に、設備点検の流れについて説明する。図4は、RFIDタグ20に格納されている点検識別情報をRFIDタグリーダ3によって読み取る様子を例示した図である。この図4は、エレベータの「かご室」において点検項目「かご内停止スイッチ」の点検を実施する場合を示している。
【0033】
図4(a)に示すように、点検対象であるかご内停止スイッチの近傍に、点検項目「かご内停止スイッチ」に対応するRFIDタグ20が貼付されている。ここで、図4(b)に示すように、点検者がRFIDタグリーダ3をRFIDタグ20に近接させることにより、当該RFIDタグ20に格納されている点検識別情報がRFIDタグリーダ3によって読み取られ、当該RFIDタグリーダ3の記憶手段(図示省略)に記憶される。さらに、RFIDタグリーダ3が備える入力手段(図示省略)を介した入力操作等に基づき、点検に関する各種情報が点検識別情報に関連付けて記憶手段に格納される。
【0034】
図5は、RFIDタグリーダ3の記憶手段に格納される情報を例示した表である。図5に示すように、RFIDタグリーダ3の記憶手段には、項目「点検者ID」、「設備ID」、「点検ID」、「日時」、「モード」、及び「画像情報」に対応する情報が相互に関連付けて格納される。項目「点検者ID」に対応して格納される情報は、点検を実施した点検者を一意に識別する点検者識別情報である(図5では「C0113」)。項目「設備ID」に対応して格納される情報は、点検が実施された設備2を特定する設備情報である(図5では「F001」)。これらの項目「点検者ID」及び「設備ID」に対応する情報は、例えば点検対象の設備2における点検を開始する際に、RFIDタグリーダ3の入力手段を介して入力される。項目「点検ID」に対応して格納される情報は、実施された点検項目を一意に識別する点検識別情報であり(図5では「0001」等)、上述のように点検者がRFIDタグリーダ3をRFIDタグ20に近接させることにより当該RFIDタグ20から取得される。但し、RFIDタグリーダ3において点検者識別情報の入力を受け付ける点検項目に対応する点検識別情報「0000」については、RFIDタグリーダ3において点検者識別情報の入力が受け付けられた場合に、当該項目「点検ID」に対応して格納される。項目「日時」に対応して格納される情報は、RFIDタグリーダ3が各点検識別情報を取得した時刻を特定する点検時刻情報であり、例えば点検識別情報をRFIDタグ20から取得した際に、RFIDタグリーダ3の内部時計(図示省略)から取得される。項目「モード」に対応して格納される情報は、各点検項目の状態を特定する情報であり(図5では「1」等)、例えばRFIDタグ20からの点検識別情報の取得時に、RFIDタグリーダ3の入力手段を介して入力される。図7の例では、取得した点検識別情報に対応する点検項目の点検結果が正常であった場合に「1」、取得した点検識別情報に対応する点検項目の点検において設備2の調整を行った場合に「2」、取得した点検識別情報に対応する点検項目の点検において設備2の部品交換を行った場合に「3」、取得した点検識別情報に対応する点検項目の点検の結果が異常であり設備2の調整や部品交換を行わなかった場合に「4」が格納される場合を例示している。項目「画像情報」に対応して格納される情報は、点検が行われた点検箇所の画像情報であり、例えばRFIDタグリーダ3の内蔵カメラ(図示省略)により撮影された画像情報、あるいは外部のカメラ(図示省略)により撮影され、公知の接続ケーブル等(図示省略)を介してRFIDタグリーダ3に入力された画像情報が格納される(図5では「010011.jpg」等)。さらに、この画像情報に関連付けて、当該画像情報の画像が撮影された日時を特定する情報をRFIDタグリーダ3の記憶手段に格納するようにしてもよい。これらの情報は、各点検項目の点検が実施される毎に、図5に示すようにRFIDタグリーダ3の記憶手段に順次格納される。また、異なる設備2について点検が実施された場合には、当該設備2毎に図5に例示したような情報をRFIDタグリーダ3の記憶手段に記憶するようにしてもよい。
【0035】
点検作業が終了した後、RFIDタグリーダ3がメンテナンス会社4のアップロード端末40に接続されると、RFIDタグリーダ3の記憶手段に記憶されている情報がアップロード端末40に入力される。
【0036】
(処理)
次に、このように構成された設備点検システム1によって実行される処理について説明する。図6及び図7は、設備点検システム1によって実行される設備点検処理のフローチャートである(以下の各処理の説明ではステップを「S」と略記する)。この設備点検処理は、例えば設備点検システム1の電源が投入された後、公知の入力手段(図示省略)を介して設備点検処理を実行すべき旨の指示入力が行われた場合に開始される。
【0037】
図6に示すように、設備点検処理が開始されると、制御部10は、RFIDタグリーダ3からアップロード端末40に入力された情報をネットワーク5を介して取得する(SA1)。すなわち制御部10は、点検作業終了後にRFIDタグリーダ3からアップロード端末40に入力された情報をネットワーク5を介して取得する。なお本実施の形態では、一つの設備2について実施された一連の点検に関する情報(図5に例示したような情報)をアップロード端末40及びネットワーク5を介してRFIDタグリーダ3から取得する場合を例として説明するが、複数の設備2について実施された点検に関する情報をまとめてアップロード端末40から取得するようにしてもよい。
【0038】
続いて点検偽装判定部10bは、SA1で制御部10が取得した情報に基づき、点検が実施された設備2及び当該点検を実施した点検者を特定する(SA2)。具体的には、SA1で制御部10が取得した情報のうち、設備情報(図5の例では「F001」)に基づいて点検が実施された設備2を特定し、点検者識別情報(図5の例では「C0113」)に基づいて点検を実施した点検者を特定する。
【0039】
図6に戻り、点検偽装判定部10bは、図3に示した点検情報DB11aに格納されている設備情報及び点検者識別情報に基づき、SA2で特定した点検者が、SA2で特定した設備2の点検者として適切であったか否かを判定する(SA3)。すなわち点検偽装判定部10bは、SA2で特定した点検者に対応する点検者識別情報(図5の例では「C0113」)が、SA2で特定した設備2に対応する設備情報(図5の例では「F001」)に関連付けて点検情報DB11aの項目「点検者」に対応して格納されている点検者識別情報に含まれている場合に、SA2で特定した点検者が、SA2で特定した設備2の点検者として適切であったと判定する。図3の例では、SA2で特定した点検者に対応する点検者識別情報「C0113」が、図3の点検情報DB11aの項目「点検者」に対応して格納されている点検者識別情報に含まれているので、点検偽装判定部10bは点検者が適切であると判定する。
【0040】
図6に戻り、SA2で特定した点検者が、SA2で特定した設備2の点検者として適切ではなかった場合(SA3、No)、すなわちSA2で特定した点検者に対応する点検者識別情報が、SA2で特定した設備2に対応する設備情報に関連付けて点検情報DB11aに格納されている点検者識別情報に含まれていない場合、点検偽装判定部10bは、例えば適切な資格を有しない点検者により点検が実施された等、設備2の点検における偽装が有ったものと判定し、設備2の点検における偽装が有った旨を示す情報をディスプレイ12を介して出力させる(SA11)。SA11の処理の後、制御部10は設備点検処理を終了する。
【0041】
一方、SA2で特定した点検者が、SA2で特定した設備2の点検者として適切であった場合(SA3、Yes)、点検偽装判定部10bは、SA1で制御部10が取得した情報に基づき、SA2で特定した点検者が同一時間帯に複数の設備2において作業したことになっているか否かを判定する(SA4)。例えば、今回の設備点検処理のSA1で制御部10が取得した点検者識別情報と同一の点検者識別情報を、過去に実施した設備点検処理のSA1で制御部10が取得しており、今回の設備点検処理のSA1で制御部10が取得した点検者識別情報に関連付けられている設備情報と、過去に実施した設備点検処理のSA1において制御部10が取得した点検者識別情報に関連付けられている設備情報とが異なっており、且つ、今回の設備点検処理のSA1で制御部10が取得した点検者識別情報に関連付けられている点検時刻情報に基づき特定される点検時刻と、過去に実施した設備点検処理のSA1において制御部10が取得した点検者識別情報に関連付けられている点検時刻情報に基づき特定される点検時刻とが一定の時間範囲内(例えば1時間以内)に含まれている場合に、点検偽装判定部10bは、SA2で特定した点検者が同一時間帯に複数の設備2において作業したことになっていると判定する。
【0042】
その結果、SA2で特定した点検者が同一時間帯に複数の設備2において作業したことになっている場合(SA4、Yes)、現実には同一の点検者が同一時間帯に複数の設備2で点検作業を行うことは不可能であることから、点検偽装判定部10bは設備2の点検における偽装が有ったものと判定し、設備2の点検における偽装が有った旨を示す情報をディスプレイ12を介して出力させる(SA11)。その後、制御部10は設備点検処理を終了する。
【0043】
一方、SA2で特定した点検者が同一時間帯に複数の設備2において作業したことになっていない場合(SA2で特定した点検者が同一時間帯に単一の設備2において作業したことになっている場合)(SA4、No)、点検偽装判定部10bは、SA1で制御部10が取得した情報に基づき、点検項目の実施順序を特定する(SA5)。例えば点検偽装判定部10bは、SA1で制御部10が取得した情報に含まれる各点検識別情報を、当該各点検識別情報に関連付けられている点検時刻情報に基づき特定される点検時刻の昇順又は降順となるように並べ替えることにより、各点検識別情報に対応する点検項目の実施順序を特定する。
【0044】
続いて、点検偽装判定部10bは、SA5で当該点検偽装判定部10bが特定した実施順序と、点検情報DB11aに格納されている点検順序情報により特定される実施順序とに基づき、点検の実施順序が適切か否かを判定する(SA6)。すなわち、点検偽装判定部10bは、SA1で制御部10が取得した情報の中で、点検時刻情報に基づき特定される点検時刻をキーとして、昇順又は降順となるように並べ替えた点検識別情報の順序と、点検情報DB11aに格納されている情報の中で、点検順序情報により特定される実施順序をキーとして昇順又は降順となるように並べ替えた点検識別情報の順序とが、相互に一致するか否かを判定する。例えば、図5に例示した情報をSA1で制御部10が取得した場合、当該情報に基づきSA5で特定される点検項目の実施順序(すなわち点検時刻をキーとして昇順又は降順となるように並べ替えた点検識別情報の順序)と、当該情報に含まれる設備情報「F001」に関連付けて図3の点検情報DB11aに格納されている点検順序情報により特定される実施順序(すなわち点検順序情報により特定される実施順序をキーとして昇順又は降順となるように並べ替えた点検識別情報の順序)とを比較すると、SA5で特定される点検項目の実施順序においては点検ID「0006」及び「0014」に対応する点検項目が実施されていないものの、各点検項目の実施順序自体は図3の点検情報DB11aに格納されている点検順序情報により特定される実施順序と合致しているため、点検偽装判定部10bは点検の実施順序が適切であると判定する。
【0045】
図6に戻り、SA6の判定の結果、点検の実施順序が適切ではなかった場合(SA6、No)、適切な作業手順に従って点検作業が実施されていないと考えられることから、点検偽装判定部10bは設備2の点検における偽装が有ったものと判定し、設備2の点検における偽装が有った旨を示す情報をディスプレイ12を介して出力させる(SA11)。その後、制御部10は設備点検処理を終了する。
【0046】
一方、SA6の判定の結果、点検の実施順序が適切であった場合(SA6、Yes)、点検偽装判定部10bは、SA1で制御部10が取得した点検時刻情報と点検識別情報とに基づき、連続して実施された点検項目の相互間における点検間隔を特定する(SA7)。例えば点検偽装判定部10bは、SA1で制御部10が取得した情報に含まれる各点検識別情報を、当該各点検識別情報に関連付けられている点検時刻情報に基づき特定される点検時刻の昇順となるように並べ替えた上で、連続する各点検識別情報に対応する各点検時刻の相互間の差分を求めることにより、各点検識別情報に対応する点検項目の相互間における点検間隔を特定する。例えば、図5に例示した情報をSA1で制御部10が取得した場合、点検識別情報「0000」に対応する点検項目と、点検識別情報「0001」に対応する点検項目との間の点検間隔は、「8/26 10:05」と「8/26 10:08」との差分「3分」と特定される。
【0047】
図6に戻り、点検偽装判定部10bは、SA7で特定した点検間隔と、点検情報DB11aに格納されている点検間隔情報により特定される点検間隔とに基づき、連続して実施される複数の点検項目の相互間における点検間隔が適切か否かを判定する(SA8)。例えば点検偽装判定部10bは、SA7で特定した連続して実施された点検項目の相互間における各点検間隔が、当該連続して実施された点検項目に対応する点検識別情報に関連付けて点検情報DB11aに格納されている点検間隔情報により特定される点検間隔から所定範囲内(例えば5分以内)である場合に、連続して実施される複数の点検項目の相互間における点検間隔が適切であると判定する。例えば、図5に例示した情報をSA1で制御部10が取得した場合、点検識別情報「0000」に対応する点検項目と、点検識別情報「0001」に対応する点検項目との間の点検間隔は、「8/26 10:05」と「8/26 10:08」との差分「3分」であるのに対して、図3の点検情報DB11aによれば、点検識別情報「0000」に対応する点検項目が実施されてから点検識別情報「0001」に対応する点検項目が実施されるまでの点検間隔は「5分」であり、その差は2分であることから、点検偽装判定部10bは連続して実施される複数の点検項目の相互間における点検間隔が適切であると判定する。
【0048】
図6に戻り、SA8の判定の結果、連続して実施される複数の点検項目の相互間における点検間隔が適切ではなかった場合(SA8、No)、例えば必要な作業手順を省略して短時間で点検を済ませたり、あるいは余計な作業を行っていること等が考えられることから、点検偽装判定部10bは設備2の点検における偽装が有ったものと判定し、設備2の点検における偽装が有った旨を示す情報をディスプレイ12を介して出力させる(SA11)。その後、制御部10は設備点検処理を終了する。
【0049】
一方、連続して実施される複数の点検項目の相互間における点検間隔が適切であった場合(SA8、Yes)、点検偽装判定部10bは、SA1で制御部10が取得した画像情報と、当該画像情報に関連付けられている点検識別情報に対応して点検情報DB11aに格納されている画像情報とに基づき、各点検項目に対応する点検箇所が適切に撮影されているか否かを判定する(SA9)。例えば点検偽装判定部10bは、点検項目毎に、SA1で制御部10が取得した画像情報と、当該画像情報に関連付けられている点検識別情報に対応して点検情報DB11aに格納されている画像情報とを、公知の画像解析手法を用いて解析し、双方が同一の対象を同一アングルで撮影した画像か否かを判定する。その結果、同一の対象を同一アングルで撮影した画像である場合、その点検項目の点検箇所が適切に撮影されていると判定し、同一の対象を同一アングルで撮影した画像ではない場合には、その点検項目の点検箇所が適切に撮影されていないと判定する。
【0050】
その結果、各点検項目に対応する点検箇所が適切に撮影されていない場合(SA9、No)、例えば点検項目に対応する点検箇所について実際には点検が行われていない可能性があることから、点検偽装判定手段は設備2の点検における偽装が有ったものと判定し、設備2の点検における偽装が有った旨を示す情報をディスプレイ12を介して出力させる(SA11)。その後、制御部10は設備点検処理を終了する。
【0051】
一方、各点検項目に対応する点検箇所が適切に撮影されている場合(SA9、Yes)、点検状態判定部10aは、SA1で制御部10が取得した点検識別情報と、点検情報DB11aに格納されている点検項目情報及び点検識別情報とに基づき、設備2における点検状態を判定し、当該判定結果をディスプレイ12を介して出力する(SA10)。その後、制御部10は設備点検処理を終了する。
【0052】
図8及び図9はSA10におけるディスプレイ12の表示画面を例示した図であり、図8は設備2の点検に関する業務のフローチャートを表示したディスプレイ12を示す図、図9は「かご室」の点検における各点検項目の状態を表示したディスプレイ12を示す図である。例えば、図5に例示した情報をSA1で制御部10が取得した場合、点検状態判定部10aは、SA1で制御部10が取得した点検識別情報と、SA1で制御部10が取得した設備情報と同一の設備情報に関連付けて点検情報DB11aに格納されている点検識別情報とを比較することにより、点検識別情報「0006」及び「0014」に対応する点検項目が実施されていないと判定する。さらに、点検状態判定部10aは図3の点検情報DB11aを参照し、点検識別情報「0006」に対応する点検項目「かご内停止スイッチ」を含む業務「かご室」、及び、点検識別情報「0014」に対応する点検項目「下部ファイナルリミットスイッチ」を含む業務「ピット」において、実施すべき点検項目が実施されていないと判定する。そして、これらの業務「かご室」及び「ピット」に含まれる点検項目が実施されていない旨の情報として、図8に示すように業務「かご室」及び「ピット」を強調したフローチャートをディスプレイ12に表示させる。
【0053】
さらに、図8に例示した表示画面において、強調表示した「かご室」が入力手段(図示省略)を介して選択されると、図9に示すように、点検状態判定部10aは業務「かご室」に含まれる各点検項目の状態を示す情報をディスプレイ12に表示させる。この図9の例では、点検が実施された設備2を特定する情報(図9では「設備ID:F001」)、点検を実施した点検者を特定する情報(図9では「点検者ID:C0113」)、及び表示対象の業務を特定する情報(図9では「業務:かご室」)と共に、各点検項目の状態を示すテーブルが表示される。このテーブルには、業務「かご室」に含まれる点検項目「かごの戸スイッチ」については8月6日10時33分に点検が実施され、その点検項目の状態はモード3(部品交換)であった旨、及び、点検項目「かご内停止スイッチ」については点検が実施されなかった旨を示す情報が表示される。
【0054】
(効果)
このように実施の形態によれば、実施された点検項目を一意に識別する点検識別情報を点検端末から取得し、当該取得した点検識別情報と、点検情報DB11aに格納されている点検項目情報及び点検識別情報とに基づき、設備2における点検状態を判定するので、設備2について実施すべき各点検項目が適切に実施されたか否かをシステム側で自動的に判定することができる。
【0055】
特に、点検端末は、設備2に付されたRFIDタグ20に格納されている点検識別情報を読み取り可能なRFIDタグリーダ3であるので、RFIDタグリーダ3によりRFIDタグ20から非接触にて容易に取得された点検識別情報を用いて、設備2について実施すべき各点検項目が適切に実施されたか否かを判定することができる。
【0056】
また、点検偽装判定部10bは、点検状態判定部10aが点検端末から取得した点検識別情報に基づき、設備2の点検における偽装の有無を判定するので、例えば実際には点検を行っていないにも拘らず点検を行ったように見せかけることや、適切な作業手順を踏まずに点検を行うこと等、設備2の点検に関する不正行為が行われていることを特定し、その旨の警告を出力することができる。
【0057】
特に、点検偽装判定部10bは、点検状態判定部10aが点検端末から取得した点検識別情報に対応する点検項目の実施順序を特定し、当該特定した実施順序と、点検情報DB11aに格納されている点検順序情報により特定される実施順序とに基づき、設備2の点検における偽装の有無を判定するので、例えば適切な作業手順を踏まずに点検が行われた場合に、設備2の点検における偽装が有ったと判定することができる。
【0058】
また、点検偽装判定部10bは、点検端末が点検識別情報を取得した時刻を特定する点検時刻情報を当該点検端末から取得し、当該取得した点検時刻情報と、点検状態判定部10aが点検端末から取得した点検識別情報とに基づき、連続して実施された点検項目の相互間における点検間隔を特定し、当該特定した点検間隔と、点検情報DB11aに格納されている点検間隔情報により特定される点検間隔とに基づき、設備2の点検における偽装の有無を判定するので、例えば必要な作業手順を省略して短時間で点検が済まされたり、あるいは余計な作業が行われた場合に、設備2の点検における偽装が有ったと判定することができる。
【0059】
また、点検偽装判定部10bは、点検が実施された設備2を特定する設備情報、及び点検を実施した点検者を一意に識別する点検者識別情報を、点検端末から取得し、当該取得した設備情報、及び点検者識別情報と、点検情報DB11aに格納されている点検者識別情報とに基づき、設備2の点検における偽装の有無を判定するので、例えば適切な資格を有しない点検者により点検が実施された場合や、同一の点検者が同一時間帯に複数の設備2において作業したことになっている場合に、設備2の点検における偽装が有ったと判定することができる。
【0060】
また、点検偽装判定部10bは、点検識別情報と関連付けて点検端末から取得した画像情報と、点検状態判定部10aが点検端末から取得した点検識別情報に対応して点検情報DB11aに格納されている画像情報とに基づき、設備2の点検における偽装の有無を判定するので、例えば点検項目に対応する点検箇所について実際には点検が行われておらず、その点検項目の点検箇所が適切に撮影されていない場合に、設備2の点検における偽装が有ったと判定することができる。
【0061】
〔実施の形態に対する変形例〕
以上、本発明に係る実施の形態について説明したが、本発明の具体的な構成及び手段は、特許請求の範囲に記載した各発明の技術的思想の範囲内において、任意に改変及び改良することができる。以下、このような変形例について説明する。
【0062】
(解決しようとする課題や発明の効果について)
まず、発明が解決しようとする課題や発明の効果は、前記した内容に限定されるものではなく、本発明によって、前記に記載されていない課題を解決したり、前記に記載されていない効果を奏することもでき、また、記載されている課題の一部のみを解決したり、記載されている効果の一部のみを奏することがある。
【0063】
(分散や統合について)
また、上述した各電気的構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各部の分散・統合の具体的形態は図示のものに限られず、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成できる。
【0064】
(設備点検処理について)
上述の実施の形態では、図6のSA3、SA4、SA6、SA8、及び、図7のSA9の各判定結果に基づき、設備2の点検における偽装の有無を判定する場合を例として説明したが、これらの各判定の一部のみを実施し、その結果に基づいて設備2の点検における偽装の有無を判定するようにしてもよい。すなわち例えば、図6のSA4から図7のSA9までの各処理を省略し、図6のSA3における点検者が適切であったか否かの判定結果のみに基づいて設備2の点検における偽装の有無を判定するようにしてもよい。また、図6のSA3、SA4、SA6、SA8、及び、図7のSA9の各判定の順序を任意に変更してもよい。また、これらの判定結果の組み合わせに基づいて(例えば、これらの判定のうち2つ以上の判定において設備2の点検における偽装が有ると判定されたか否かに基づいて)、点検の偽装があった旨の情報を出力させるか否かを決定するようにしてもよい。
【0065】
また、上述の実施の形態では、図6のSA4において点検者が同一時間帯に複数の設備2において作業したことになっているか否かを判定する場合や、SA7において連続して実施された点検項目の相互間における点検間隔を特定する場合、点検時刻情報に基づいて点検時刻を特定すると説明したが、他の方法により点検時刻を特定するようにしてもよい。例えば、SA1で制御部10が取得した画像情報に当該画像の撮影時刻を特定する情報が含まれている場合には、当該情報に基づいて点検時刻を特定するようにしてもよい。
【0066】
また、上述の実施の形態では、図7のSA9において点検項目に対応する点検箇所が適切に撮影されているか否かを判定する際、図6のSA1で制御部10が取得した画像情報と、当該画像情報に関連付けられている点検識別情報に対応して点検情報DB11aに格納されている画像情報とを、公知の画像解析手法を用いて解析し、双方が同一の対象を同一アングルで撮影した画像か否かに基づいて点検箇所が適切に撮影されているか否かを判定する場合を例として説明したが、他の基準に基づいて当該判定を行うようにしてもよい。例えば、図6のSA1で制御部10が取得した画像情報の画像が撮影された際の露出と、当該画像情報に関連付けられている点検識別情報に対応して点検情報DB11aに格納されている画像情報の画像が撮影された際の露出とが一致しているか否かに基づいて、点検箇所が適切に撮影されているか否かを判定するようにしてもよい。
【0067】
また、上述の実施の形態では、図7のSA10において、図6のSA1で制御部10が取得した点検識別情報と、点検情報DB11aに格納されている点検項目情報及び点検識別情報とに基づき、設備2における点検状態を判定すると説明したが、SA1で制御部10が取得した画像情報に基づいて設備2における点検状態を判定するようにしてもよい。例えば、SA1で制御部10が取得した画像情報と、当該画像情報に関連付けられている点検識別情報に対応して点検情報DB11aに格納されている画像情報とを、公知の画像解析手法を用いて解析し、双方の画像の間で相違点がある場合には、当該相違点に対応する箇所で故障の可能性があると判定するようにしてもよい。
【0068】
(設備点検について)
上述の実施の形態では、設備点検システム1が、設備2における点検状態の判定や、設備2の点検における偽装の有無の判定を行う場合を説明したが、設備点検システム1により設備点検作業のサポートを行うようにしてもよい。例えば、点検情報DB11aに格納されている各情報(例えば、各設備2の点検を行うために必要な資格を有する点検者の点検者識別情報、設備2について実施すべき点検項目を特定する点検項目情報、複数の点検項目を実施すべき順序を特定する点検順序情報、各点検項目に対応する点検箇所の画像情報等)を、点検者が所持するヘッドアップディスプレイ等に表示させるようにしてもよい。これにより、各設備2の点検を行うために必要な資格、実施すべき点検項目、適切な点検順序、点検箇所の画像等を点検者に把握させることができ、点検作業を容易且つ確実に実施するためのサポートを行うことができる。また、点検箇所の画像撮影を行うべき基準となるアングルを示す情報を提供してもよい。例えば、点検箇所の画像撮影を行うべき基準となるアングルから撮影した画像をヘッドアップディスプレイ等を介して点検者に提示することで、当該画像と同じアングルで点検箇所の画像撮影を行わせるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 設備点検システム
2 設備
3 RFIDタグリーダ
4 メンテナンス会社
5 ネットワーク
10 制御部
10a 点検状態判定部
10b 点検偽装判定部
11 データ記録部
11a 点検情報DB
12 ディスプレイ
20 RFIDタグ
40 アップロード端末

【特許請求の範囲】
【請求項1】
設備について実施すべき点検項目を特定する点検項目情報と、前記点検項目を一意に識別する点検識別情報とを、相互に関連付けて格納する点検情報格納手段と、
実施された点検項目を一意に識別する点検識別情報を点検端末から取得し、当該取得した点検識別情報と、前記点検情報格納手段に格納されている前記点検項目情報及び前記点検識別情報とに基づき、前記設備における点検状態を判定する点検状態判定手段と、
を備える設備点検システム。
【請求項2】
前記点検端末は、前記設備に付されたRFIDタグに格納されている前記点検識別情報を読み取り可能なRFIDタグリーダである、
請求項1に記載の設備点検システム。
【請求項3】
前記点検状態判定手段が前記点検端末から取得した点検識別情報に基づき、前記設備の点検における偽装の有無を判定する点検偽装判定手段、
を備える請求項1又は2に記載の設備点検システム。
【請求項4】
前記点検情報格納手段は、複数の前記点検項目を実施すべき順序を特定する点検順序情報を格納し、
前記点検偽装判定手段は、前記点検状態判定手段が前記点検端末から取得した点検識別情報に対応する点検項目の実施順序を特定し、当該特定した実施順序と、前記点検順序情報により特定される実施順序とに基づき、前記設備の点検における偽装の有無を判定する、
請求項3に記載の設備点検システム。
【請求項5】
前記点検情報格納手段は、連続して実施される複数の前記点検項目の相互間における点検間隔を特定する点検間隔情報を格納し、
前記点検偽装判定手段は、前記点検端末が前記点検識別情報を取得した時刻を特定する点検時刻情報を当該点検端末から取得し、当該取得した前記点検時刻情報と、前記点検状態判定手段が前記点検端末から取得した点検識別情報とに基づき、連続して実施された点検項目の相互間における点検間隔を特定し、当該特定した点検間隔と、前記点検間隔情報により特定される点検間隔とに基づき、前記設備の点検における偽装の有無を判定する、
請求項3又は4に記載の設備点検システム。
【請求項6】
前記点検情報格納手段は、前記設備を点検可能な点検者を一意に識別する点検者識別情報を格納し、
前記点検偽装判定手段は、点検が実施された設備を特定する設備情報、及び点検を実施した点検者を一意に識別する点検者識別情報を、前記点検端末から取得し、当該取得した設備情報、及び点検者識別情報と、前記点検情報格納手段に格納されている点検者識別情報とに基づき、前記設備の点検における偽装の有無を判定する、
請求項3から5のいずれか一項に記載の設備点検システム。
【請求項7】
前記点検情報格納手段は、前記点検項目毎に点検箇所の画像情報を格納し、
前記点検偽装判定手段は、
前記点検識別情報と関連付けて前記点検端末から取得した画像情報と、前記点検状態判定手段が前記点検端末から取得した点検識別情報に対応して前記点検情報格納手段に格納されている前記画像情報とに基づき、前記設備の点検における偽装の有無を判定する、
請求項3から6のいずれか一項に記載の設備点検システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−63842(P2012−63842A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205600(P2010−205600)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(301018603)株式会社サイバー・ラボ (11)
【Fターム(参考)】