試験材料のガス透過率を測定するためのセンサ
試験材料のガス透過率を測定するためのセンサであって、水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子であって、感知素子を水及び/又は酸素と接触させたときの前記材料と水又は酸素との反応により、感知素子の電気伝導度の変化が生じる感知素子と、前記感知素子に電気的に接続されている2つの電極とを備えるセンサ。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本発明は、試験材料のガス透過率を測定するためのセンサ、センサの作製方法、及びガス透過率測定システムに関する。本発明はまた、試験材料のガス透過率を決定する方法に関する。
【0002】
[0002]近年、エレクトロニクス分野及び生物医学分野における新しい技術の出現により、それに並行した新しい材料及び構造の開発が促進されている。
【0003】
[0003]このような技術の一例は、フレキシブル有機発光デバイス(FOLED)を使用するフレキシブルフラットパネルディスプレイである。各FOLEDは、大面積ディスプレイを可能にする電気的、機械的及び光学的特性を有する材料及び構造を備える。しかしながら、FOLEDのアーキテクチャは、大気中の水蒸気及び酸素との反応による損傷を受けやすい有機電界発光材料及び陰極を備える。したがって、FOLEDディスプレイの最低寿命について指定されている業界標準を実現するために、水及び酸素に対して極度に不透過性である高バリア性基板、シーラント及び封入材料がFOLEDディスプレイには必要とされる。
【0004】
[0004]水及び酸素感応材料を必要とする別の技術は、メモリ記憶の分野、特にハードディスクドライブ業界において見出される。ハードディスクプラッタで使用される材料は、酸素によって劣化することがある金属又は金属酸化物を含む。磁気データのインテグリティを維持するには、プラッタ中のシール及び金属酸化物の劣化を防止するように、パッケージ構造及びパッケージ材料が低いガス透過レベルを提供しなければならない。
【0005】
[0005]ガスバリア特性を提供する材料の使用を必要とする用途の他の例には、食品、薬品及び生物サンプルのパッケージに見出される密封パッケージが含まれる。加えて、シーラント、プラスチック及び複合材料もしばしばガスバリア特性を有することが必要とされる。
【0006】
[0006]つい最近では、非常にガス透過率が低い材料及び構造を必要とする用途が開発されている。これらの材料及び構造には、非常に低いガス透過レベルにおいてガス透過特性を評価することができる高感度の測定装置、特にガスセンサの使用が必要となっている。
【0007】
[0007]あるクラスのセンサは、ターゲットガスとの化学反応を伴わない検出方法を利用する。テキサスインスツルメンツ社に付与された米国特許第6,067,840号は、光学赤外(IR)ガスセンサを開示している。各々がターゲットガス及び基準ガスに向けられた2つのIR線源間の吸収差を使用して、モニタしているガスの濃度を決定する。
【0008】
[0008]MOCON社に付与された米国特許第6,460,405号は、ヘリウムや二酸化炭素など化学的に不活性なトレーサガスに試験片がさらされるガスセンサを開示している。この試験片を通り抜けるトレーサガスの流れを測定するためにトレーサガス検出器が設けられ、その測定値が試験片のガス透過率と相互に関係付けられている。
【0009】
[0009]米国特許第6,567,753号は、複数の流体に対するバリアコーティングのバリア特性を決定するためのセンサを開示している。デュアルレスポンス音波トランスデューサがこのバリアコーティングで被覆され、複数の流体にさらされる。続いて、流体の透過又はコーティングの溶解が、音波及び光学的検出の測定値を用いて測定される。
【0010】
[0010]別のクラスのセンサでは、ターゲットガスと反応する感知素子が利用される。Kumar et al.(Thin Solid Films 417, 2002, 120-126)は、カルシウム膜表面上での腐食の光学測定を利用する低水分透過用センサを開示している。このカルシウム膜は、最初は反射性の高い金属表面である。水蒸気及び酸素が次第にこのカルシウム膜と反応するにつれて、反射性表面は徐々に不透明な膜に変わる。カルシウム膜の透過特性の変化をモニタするために、試験片が一定の間隔で撮影される。画像解析ソフトウェアを用いてカルシウム膜の写真を分析することによって、カルシウム膜の光学特性の変化が封入構造への水蒸気の流量と相互に関係付けられる。このタイプのセンサは、G. Nisato et al., Evaluating High Performance Barrier Films,International Display Workshop, October 2001にも開示されている。
【0011】
[0011]現在利用可能なガスセンサの1つの欠点は、ガス透過率が非常に低い材料を評価するのに必要な十分に高いレベルの感度でガス透過が測定できないことである。たとえば、FOLEDデバイスの寿命について指定されている業界標準は、10,000動作時間よりも長い。この寿命を実現するためには、FOLEDデバイスの封入構造の酸素透過率及び水蒸気透過率が、それぞれ10−5g/m2/day未満及び10−6cc/m2/day未満であるべきである(38℃及び相対湿度95%で)。しかしながら、利用可能な装置の感度限界は、水では約10−3g/m2/dayであり、酸素では約10−3cc/m2/dayである。
【0012】
[0012]現在利用できるガスセンサの別の欠点は、通常約50度の高くない温度に使用温度が制限されていることである。低い温度に制限されると、ガス透過の加速をもたらす条件下で性能試験を行うことができず、その結果、実施するには不経済な長時間の試験となってしまう。
【0013】
[0013]したがって、本発明の一目的は、現在知られているセンサの不利な点を克服することである。本発明のさらなる目的は、高感度を有し、優れた空間分解能及び時間分解能を有し、使用温度が高いが、依然として経済的に作製され使用されるセンサを提供することである。この目的は、独立請求項に指定されている特徴を有するセンサ及びこのセンサのそれぞれの作製方法によって実現される。本発明のこのようなセンサは、試験材料のガス透過率を測定するためのセンサである。このセンサは、水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子であって、感知素子を水及び/又は酸素と接触させたときの前記材料と水又は酸素との反応により、感知素子の電気伝導度の変化が生じる感知素子と、この感知素子に電気的に接続されている2つの電極とを備えるセンサである。
【0014】
[0014]本発明は、ガスセンサの電気特性を、また任意選択でノイズ特性を測定中にモニタすることによって、低ガス透過率材料などの材料及び構造で行われるガス透過測定をはるかに高感度で行うことができるという発見に基づいている。したがって、本発明のガスセンサはまた、水と酸素のいずれか一方、又は水と酸素の両方を感知する電気伝導性の感知素子を備える。加えて、この感知素子は、測定試験中に水及び/又は酸素と徐々に反応するにつれて変化する光学、電気及びノイズ特性を有する電気抵抗器として機能する。この変化により、低ガス透過率高分子基板を通り抜ける水分の透過速度(定常状態条件下で)を、水蒸気とセンサの化学反応の物理的証拠、たとえば光学測定技術によって直接決定することが可能となる。あるいは、1/fノイズスペクトル測定やセンサの抵抗など他の方法を利用して、センサの劣化をモニタすることもできる。これらの測定から、時間に対するカルシウムの厚さの変化率、したがって試験片のガス透過速度を導き出すことができる。
【0015】
[0015]本発明のセンサをガス透過測定で使用すると、いくつかの利点がある。第一に、本センサは、10−8g/m2dayよりも良好な高感度でガス透過速度を測定することができ、より優れた時間分解能並びに低いエラー率を提供する。したがって、このセンサは、低ガス透過率特性を有する高分子基板、バリアコーティング膜又は多層バリアスタックのガス透過特性を評価するのに適している。第二に、本発明は、単一の試験で酸素と水蒸気の複合透過速度の測定を提供する。これは、水蒸気透過速度(WVTR)及び酸素透過速度(OTR)の測定を単一の装置コンソールで行うことができることを意味する。第三に、透過係数、拡散係数、溶解度係数などの輸送係数を1回の試験で同時に決定することができる。
【0016】
[0016]本発明の文脈において、「ターゲットガス」という用語は、試験材料又は試験構造を通り抜けるガスの透過速度を測定するためにその材料又は構造がさらされるガスを指す。この用語には、酸素や水蒸気など個別のガスが含まれ、それらの単一成分又は複数成分との混合物、たとえば窒素、二酸化炭素、水素及び二酸化硫黄との混合物が含まれる。複数成分との混合物の例には空気及び排ガスが含まれる。
【0017】
[0017]「試験材料」、「試験構造」及び「試験片」という用語は、本発明のガスセンサを用いてそのガス透過率特性が試験される材料/構造を指すために同義的に使用される。
【0018】
[0018]この感知素子は、酸素及び/又は水を感知する任意の適切な電気伝導性材料を含むことができる。これは、この材料が水と酸素のいずれか一方だけに感応性が高いものでも、又は水と酸素の両方に感応性が高いものでよいことを意味する。適切な材料には、金属、金属合金、金属酸化物、導電性高分子、並びにそれらの混合物及び組合せが含まれる。
【0019】
[0019]原理的には、水及び酸素と反応することができるすべての金属を、感知素子として又は感知素子内で使用することができる。このような金属には、第1族元素(たとえば、ナトリウム及びカリウム)など反応性の高い金属、第2族元素(マグネシウム、カルシウム、バリウム)など反応性があまり高くない金属、及び鉄、スズ、クロムなどの遷移金属が含まれる。特に適切な金属は、カルシウム及びマグネシウムである。水及び酸素に対して反応性であることとは別に、これらの金属は、ブロック、ストリップ、薄膜など任意の適切な形状及び寸法に容易に加工することもできる。
【0020】
[0020]感知素子内で又は感知素子としての使用が企図される導電性高分子の例には、共役有機高分子、共役金属高分子(無機高分子)及びレドックス高分子が含まれる。有用な導電性高分子の例には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、並びにポリビニルピリジン、チオフェン−ビピリジン共重合体、ポリピリジン、ポリビピリジン及び有機金属ポリフェニレンが含まれる。
【0021】
[0021]感知素子として又は感知素子内での使用が企図される金属酸化物の例には、VO2、CrO2、MoO2及びLiMn2O4、スズ酸カドミウム(Cd2SnO4)、インジウム酸カドミウム(CdIn2O4)、スズ酸亜鉛(Zn2SnO4及びZnSnO3)、酸化亜鉛インジウム(Zn2In2O5)などの透明導電性酸化物が含まれる。使用される酸化物の結晶構造は特に制限されず、たとえば結晶性、ナノ結晶性又はアモルファスでよい。
【0022】
[0022]上記材料の混合物及び組合せから感知素子を形成することもできる。たとえば、適切な有機高分子と、鉄又はカルシウム粒子などの金属粒子とを含有する溶液から感知素子用組成物を形成することが可能である。
【0023】
[0023]測定試験を行うために、センサをいくつかのやり方で配置することができる。たとえば、センサを試験材料内に埋め込むこともでき、あるいは試験材料の表面に形成する(堆積させる)こともできる。あるいは、封入環境を評価しようとする場合は、センサをその封入環境内に設置することもできる。次いで、試験材料及び付随するセンサを、感知素子に対して反応性のあるターゲットガスを含有する雰囲気にさらす。測定には所定量の感知素子を使用し、感知素子を部分的に又は完全に反応させるのにかかる時間を決定することができる。そうするための1つの可能なやり方は、ある期間にわたって電流の流れの変化を測定し、次いで、感知素子を完全に反応させるのにかかる予測時間を計算することである。別の可能なやり方は、センサを流れる電流の流れの中断をモニタすることである。たとえば、電流の流れが止まると、感知素子が完全に反応したと想定することができる。
【0024】
[0024]原則として、十分な量のターゲットガスが試験材料を通って拡散し、感知素子と反応するのに十分な時間が経過しているのであれば、感知素子はどんな厚さでも動作することができる。しかしながら、低いガス透過レベルを測定する場合には、測定試験時間を妥当な時間内としておくために、感知素子が少量の感知材料を含むことができる。このため、マイクロメートル領域又はナノメートル領域となるよう感知素子の厚さを設計することができる。低ガス透過率材料を測定する目的では、感知材料の厚さは10nmから10ミクロンでよく、好ましくは50nm〜1μm、場合によってより好ましくは120nm〜500nmである。試験サンプルの寸法、形状、タイプ及び要件に応じて、長さや幅など感知素子の他の寸法を変えることができる。
【0025】
[0025]いくつかの設計原理を本感知素子に適用することができる。第一に、感知素子は、好ましくは低い、又は感知材料のバルク特性に十分近い電気特性を有するべきである。第二に、感知素子の最小厚さ(H)、最小長さ(L)、及び最小幅(W)を、測定した電気特性を用いて最適化することができる。この点に関し、感知素子の面積(L×W)が、試験基板の寸法、並びに測定試験を行うための実験設計によって変わることがある。たとえば、封入のために、また導電性トラックのために十分な空間を割り当てる必要がある。1つ又は複数の感知素子を単一の試験基板と共に使用することができることに留意されたい。各感知素子は、試験される品目上の異なる箇所で透過率を測定するために、正方形、長方形、又は複数の縞の形状、あるいは他の任意の所望形状とすることができる。さらに、感知素子の最小寸法(面積)が、センサの電気特性などの要因に影響されることもあり、最大寸法(面積)も、基板寸法や実験設計などの要因に影響されることがある。
【0026】
[0026]感知素子用の材料としてカルシウムを使用する特定の一実施形態では、このカルシウム感知素子の最適寸法が、長さ約1cm、幅約2cm、厚さ約150nmである。この感知素子で形成されたセンサの測定抵抗値は、約0.37Ωcmであり、したがってバルクカルシウム感知素子の3.4μΩcmという抵抗値に近い。この実施形態で電極として使用される2つの金属トラックの寸法は、約2cm×2cmである。この実施形態ではカバーガラス(約3.5cm×約3.5cm)が封入に使用され、リムシーリング(接着剤)の幅は約2mmである。
【0027】
[0027]本発明では、感知素子を電圧源と結合する手段を提供するために、感知素子が電極(電気コネクタ)を備える。電極は、従来の絶縁銅配線、金属プレート又は導電性薄膜トラックなど、任意の適切な形状、寸法又は形態をとることができる。これらの電極は、いかなるタイプの電気伝導性材料も含むことができ、一般に使用されている材料は、金属、金属酸化物又はそれらの混合物である。ここで使用される材料は、試験中にセンサの精度が悪影響を受けないように、試験条件下で水や酸素などターゲットガスに含まれている反応性ガスに対して好ましくは非反応性である。とは言え、このようなガスとの反応速度が感知素子の反応性ガスとの反応速度よりもはるかに遅い場合には、これらの反応性ガスと反応する金属を使用することができる。このような金属を使用する場合、このような使用の前にこれらの金属に保護材料を提供することも可能である。これは、たとえば、金属を不活性保護コーティングで表面処理することにより実現することができる。これにより、確実に電極の電気抵抗値が試験中に影響を受けないようになる。
【0028】
[0028]低ガス透過率材料を試験するためにこのセンサを使用する場合、電極が、このようなセンサの作製に使用される堆積装置で使用するのに適している材料を含むことが好ましい。適切な材料には、金属、金属合金及び金属酸化物が含まれる。適切な金属の例には、銀、銅、金、白金、チタン、ニッケル、アルミニウム、鉛、スズ及びそれらの合金が含まれる。アルミニウム合金、あるいは鉄/ニッケル合金、鉄/クロム合金、鉄/コバルト合金などの合金を本発明で使用することもできる。加えて、酸化インジウムスズ、酸化アルミニウム亜鉛、酸化インジウム亜鉛など良好な電気伝導性を有する酸化物も同様に使用することができる。これらの材料のいかなる混合物又は組合せも使用することができる。
【0029】
[0029]2つの電極と感知素子との間の電気的接続は、任意の適切な接続手段を用いて形成することができる。たとえば、導電性テープを用いてこれらの電極をセンサの表面に固着させ、あるいは低抵抗のはんだ金属、たとえばスズを用いてこれらの電極を感知素子にはんだづけすることが可能である。あるいは、導電性接着パッドを感知素子上に適用することもでき、その上で電極を接続することができる。
【0030】
[0030]一実施形態では、このセンサは、感知素子を支持するベース基板を備える。ベース基板を用いると、センサを予め作製し、パッケージし、取り扱い、輸送することが容易になる。たとえば、このベース基板は、適当に大きい表面積を提供することができ、その上に電極との補助的な電気的接続、たとえば接着パッドを形成することができる。ベース基板は、試験片に取り付け可能なPVC板、PETシート、接着膜など、様々な形をとることができる。
【0031】
[0031]原理的には、ターゲットガス中に存在するいかなる反応性ガスに対しても不活性であり、試験を行うことが可能となる程度まで十分に透過性であるいかなる材料も、ベース基板として使用することができる。本発明の文脈において、不活性材料は、ターゲットガス中に存在する水蒸気又は酸素に対して反応性がない任意の材料を指す。この材料は、任意の適切なガス透過率を有することができ、たとえば多孔質材料又は低透過率材料である。センサを支持するために使用することができ、広範囲のガスバリア特性を示すことができる適切な1クラスの材料は、高分子である。
【0032】
[0032]本発明におけるベース基板での使用が企図される高分子には、有機高分子も無機高分子も含まれる。ベース基板を形成するのに適している有機高分子の例には、セロファン、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン、ポリ(4−メチル−2−ペンチン)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリジメチルフェニレンオキシドなど、高透過率高分子も低透過率高分子も含まれる。スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ナイロン、ニトロセルロース、セルロース、アセテートなどのマイクロポーラス及びマクロポーラス高分子を使用することもできる。本発明において適切である無機高分子の例には、シリカ(ガラス)、ナノ粘土、シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ビスシクロペンタジエニル鉄、ポリホスファゼン及びその誘導体が含まれる。ベース基板は、有機及び/又は無機高分子の混合物又は組合せを含むこともできる。これらの高分子は、透明でも、半透明でも、又は完全に不透明でもよい。感知素子に関する光学測定を、以下に説明する電気測定と併せて行おうとする場合は、感知素子を観察又は撮影する際に助けとなる適切なレベルの反射率も提供するベース基板材料を使用することが好ましい。
【0033】
[0033]ベース基板はガス流に対してある程度の抵抗を有することがあり、したがってガス透過読取り値に影響を与えるはずなので、ベース基板の影響を考慮に入れて最終的な測定値を適切に調整することができるように、好ましくはベース基板のガス透過特性を使用前に特徴付けるべきである。ベース基板として低ガス透過率材料を使用する場合、ターゲットガスがベース基板を透過するまでにより長い時間がかかり、したがってより長い試験時間が必要となることがある。あるいは、ベース基板として透過性の高い材料、たとえばセロファンを使用する場合、ガス流に対して比較的小さい抵抗となる。
【0034】
[0034]さらなる一実施形態では、ベース基板はさらにバリア層を備える。この文脈において、バリア層は、システム又は物品、たとえば電子構成部品又は食品を環境から分離するために使用することができるバリア高分子、バリア金属又はバリアセラミックスなど、1つ又は複数の材料の層から形成されることが当技術分野で一般に知られている(米国特許第6,567,753−第1欄の17〜21行目又は請求項5を参照のこと)。ベース基板が(好ましくはターゲットガスに対して低透過率を有する)このようなバリア層を備える場合、ベース基板とバリア層の各々がセンサ内で異なるタイプの機能を提供する。たとえば、ベース基板自体は、ターゲットガスに対して大きな抵抗を提供することなく支持構造としてのみ機能することができ、バリア層が所望のレベルのガス抵抗を提供する。バリア層及びベース基板用に選択されるそれぞれの材料は、各々本発明のセンサの使用に必要な対応する適切なレベルのガス透過率を有するべきである。
【0035】
[0035]この実施形態ではバリア層をいくつかのやり方で配置する又は位置決めすることができることが企図される。一例では、バリア層が感知素子とベース基板の間に単一層として、あるいは積層シート又は積層コーティングとして存在することができる。あるいは、バリア層はベース基板内に位置する層でもよい。バリア層がベース基板の底部に、すなわち、感知素子とは正反対に位置することができることもさらに企図される。通常、バリア層が存在する場合、バリア層は、試験すべき材料、すなわちターゲットガスに対する透過率を測定すべき材料からなり、又はその材料を含む。
【0036】
[0036]別の実施形態では、ベース基板がバリア層のみからなり、これは感知素子が直接バリア層の上だけに形成されることを意味する。この実施形態は、本発明のセンサを用いてバリア層の透過特性を試験する手段を提供する。このようにして、本実施形態は、たとえばバリア層を通り抜ける透過プロセスをシミュレートするためのキットで使用される既製ユニットとして働くこともできる。
【0037】
[0037]バリア層を形成するための適切な材料は、無機材料又は有機材料を含むことができる。特に適切な無機材料には、金属(たとえばアルミニウム、鉄、スズ)、金属酸化物(たとえばAl2O3、MgO、TiO2)、セラミック酸化物、無機高分子、有機高分子、並びにそれらの混合物及び組合せが含まれる。それぞれの無機高分子の例には、有機−無機高分子、金属キレート配位高分子、及び完全に窒素をベースとする無機高分子が含まれる。具体例は、たとえばガラス、シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ビスシクロペンタジエニル鉄、並びにポリジクロロホスファゼン及びその誘導体が含まれる。適切な有機材料には、アクリルをベースとする高分子、ポリイミド、エポキシ樹脂、及び架橋ポリエチレンなどのポリアルキレン誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどの有機高分子が含まれる。適切なレベルの透過率及び安定度を有する特に適切な有機高分子には、PET、ポリカーボネート及びポリエーテルスルホンが含まれる。バリア層は、単一層膜でも多層スタックでもよい。無機材料(たとえば金属酸化物)及び有機材料の独立した層が存在する多層膜の場合、無機層間の接触を最大にするために、有機層を無機金属酸化物膜の間に挟まれるように配置することができる。多層バリア層/スタックの具体例には、たとえば、ポリカーボネート−酸化アルミニウム、PET−酸化マグネシウム、ガラス−酸化スズ、酸化アルミニウム−ポリアクリレート−酸化アルミニウム、及び酸化アルミニウム−シリコーン−酸化アルミニウムスタックが含まれる。したがって、ベース基板及びバリア層中に同じ材料が存在することがあることに留意されたい。本発明の文脈において、バリア層は通常、本発明のセンサを用いてその透過特性を試験すべき構造である。ベース基板とバリア層の両方に同じ材料が存在する可能な構造の例は、次の通りである。透過率が既知のベース基板を使用するセンサが、たとえばセンサの貯蔵寿命を向上させるために、そのベース基板に組み込まれた、低ガス透過率高分子、たとえばポリカーボネートの薄い層を有する。続いて、このようなセンサを試験片の透過特性を測定するために使用する場合、このセンサを試験片の表面に直接取り付ける。たとえば、ベース基板中に存在するのと同じ低ガス透過率高分子、たとえばポリカーボネートを含むことができるバリア層、たとえば複合液晶ディスプレイ(LCD)バリアスタック上で試験を行うことができる。このような場合、ベース基板とバリア層の両方が共通の材料としてポリカーボネートを有することになる。別の例では、ベース基板はポリイミド膜を備えることができることができ、一方バリア層は、一般に層間ハイブリッド又は剥離ハイブリッド、あるいはナノコンポジットとして知られているポリイミド膜含有シリカ粒子/ナノ粘土を含むことができる。ナノ粘土の典型例には、モンモリロナイトなど、スメクタイト群粘土鉱物の任意のメンバーが含まれる。
【0038】
[0038]本発明のセンサの電極は、銅やスズなどの金属から作製される配線又はストリップとして作製することができ、各電極の一方の端部は感知素子に取り付けられており、もう一方の端部は自由に移動可能である。しかしながら、これらの電極が被膜として設計される場合、たとえ電極を自由に移動可能な状態のままにしておくことがが可能であったとしても、そうしないことが望ましく、電極をベース基板又は試験片(ここではバリア層が試験片である)上に直接固定することが望ましい。被膜層は脆弱なことがあり、また容易に損傷を受けることがあるので、この層を固定することは機械的損傷の可能性を低減するのに役立つ。したがって、本発明の一実施形態は、電極がベース基板の表面に形成されるセンサを対象とする。
【0039】
[0039]電極をベース基板(の表面)上に形成する場合、本センサは様々な構成をとることができる。一実施形態では、電極を互いに離隔してトレンチを形成する。この文脈において、このトレンチは通常、2つの電極間にある部分によって形成され、トレンチの縁部は各電極の縁部によって画定され、トレンチの底部はベース基板である。センサの構成要素は、いくつかの可能なやり方で配置することができる。たとえば、感知素子が2つの電極間に電気的接続を形成するのであれば、トレンチを覆って、トレンチの下に、又はトレンチの側面に沿って感知素子を設置することができる。
【0040】
[0040]一実施形態では、感知素子はトレンチ内に位置する。まず電極を形成してトレンチの構造を画定することができる。続いて、感知素子をトレンチ内に堆積させるとき、それを所定のトレンチ寸法と一致させることが可能となり、それにより感知素子の形状及び寸法を設定することが可能となる。このように、トレンチは感知素子用のモールド又は鋳型のようなものである。
【0041】
[0041]この点に関連して、トレンチを、感知素子の所要寸法に応じて部分的に又は完全に感知素子によって充てんすることができる。あるいは、隣り合う電極の縁部と部分的に重なるように、感知素子をトレンチの外側へ延ばすこともできる。感知素子と電極との間に適切な電気的接続が形成されるのであれば、トレンチの断面は通常、長方形でも、正方形でも又は他の任意の適切な形状でもよい。たとえば、一実施形態では、トレンチの底部が上端よりも狭いトレンチを形成することが必要である場合、トレンチに向かって先細りになる端部を有する電極を形成することができる。続いて感知素子をトレンチ内に堆積させると、図2Cに示す構成を有するセンサを得ることができる。あるいは、別の実施形態では、上面よりも幅の広い底部を有する感知素子を形成することが望ましい場合、ベース基板上にまず感知素子を堆積させることができ、次いで感知素子の縁部と部分的に重なるように電極を堆積させる(図2Dを参照のこと)。いずれの実施形態においても、感知素子と電極との間の接触面が傾斜するように、すなわち、電極の表面に対して90°よりも大きい又は小さい角度を有するようにセンサを設計する。このような設計により、感知素子と電極との間の電気接触が改善され、したがってセンサ/電極界面での電気抵抗が低下し、電気伝導の向上がもたらされる。
【0042】
[0042]別の実施形態では、センサは、感知素子を取り囲むカプセル体を含む。カプセル体は、ターゲットガスが試験片を透過することしかできないように、センサの周りを密封することができる。さらにカプセル体は、感知素子が試験でそれを使用する前に周囲の水蒸気及び酸素と接触することを防ぐはずである。加えて、このカプセル体は、感知素子に損傷を与えるかもしれないどんな物理的衝撃も和らげる保護カバーとしても作用する。
【0043】
[0043]カプセル化材を意味する、封入材料を形成するための材料は、好ましくはガス透過率がかなり低い任意のタイプの材料を含むことができる。炭化水素プラスチック、熱可塑性プラスチック、ゴム及び無機高分子を含めた、多くのタイプの高分子をこの目的に使用することができる。適切な有機高分子の例には、紫外線(UV)硬化性エポキシ、ポリスルフィド、シリコーン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアルキレン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール及びポリアクリレートが含まれる。センサの形状と完全に一致させることが可能であるカプセル体を提供する必要がある場合、好ましくは適切な材料が、後に熱又はUV放射によって硬化させ硬くすることができる成形可能なゲル又は粘性流体として利用可能である。
【0044】
[0044]このカプセル体は、様々な構成をとることができる。企図される1つの構成は、センサの露出表面の周りに硬いカバーとしてこのカプセル体を提供することである。このカプセル体は感知素子と直接接触していてもよく、感知素子と直接接触せずに感知素子を囲むこともできる。前者の場合、本センサを使用して発光ダイオード(LED)の封入構造をシミュレートすることができるように、感知素子がカプセル体内に完全に取り囲まれる。後者の場合、カプセル体は感知素子の周りに中空空間を提供する。この中空空間は、窒素、あるいはアルゴンなどの希ガスの1つなどの不活性ガスで充てんすることができる。
【0045】
[0045]別の実施形態では、センサはさらにカバー基板を備える。カプセル体が感知素子を囲む側壁(横壁)を形成し、これら側壁(横壁)と接触するようにカバー基板が配置される。より詳細には、この実施形態では、感知素子の周囲にあるベース基板/試験片上にこのカプセル体を適用し、それにより感知素子を取り囲み、一方カバー基板を側壁(横壁)上にふたのように設置する。このような配置は、感知素子を収容する封入構造を構成する。さらに、この封入構造内に不活性ガスを捕捉することができるように、活性ガス環境中で側壁上にカバー基板を設置することもできる。この点に関連して、使用されるカプセル化材は、UV(紫外線)硬化性エポキシでも他の任意の適切なシーラントでもよい。この実施形態は、有機発光デバイス(OLED)及びFOLEDに見られるような多層有機/無機薄膜及び封入構造のガス透過率をシミュレートし、したがって評価する手段を提供する。このガス透過率は、封入構造内の酸素又は水分感知デバイスの寿命を見積もることを可能にする。本質的に、センサはこの封入構造と類似の構造である。たとえば、環境条件下でOLEDの封入構造におけるガス透過のシミュレーションを行うために、発光デバイスを本発明の感知素子で置き換えた同じOLEDデバイスを作製することができる(図7A及び7Bを参照のこと)。
【0046】
[0046]一般に、カバー基板を形成するために使用される材料は、センサを良好に耐密密封するために、好ましくは低ガス透過率を有するべきである。ベース基板及びカバー基板は、高分子、バリアで被覆した高分子、ガラス、アルミ箔など任意の材料を含むことができる。ベース基板又はカバー基板を構成する材料の例にはガラス、低ガス透過率高分子及び積層金属箔がある。いくつかの実施形態では、コストの面で、ガラス、アルミニウム及び銅が好ましい。
【0047】
[0047]上記からわかるように、本センサは、高分子基板、カプセル化材、シーラント、接着剤、並びに封入構造全体のガス透過率を含めて多種多様の用途におけるガス透過率の決定に使用されるのに十分なほど用途が広い。
【0048】
[0048]一実施形態では、センサが感知素子の少なくとも一部分を覆う保護層をさらに備える。この保護層の目的は、感知素子の汚染又は早期劣化を防ぐことである。これは、感知素子を収容する封入構造の欠陥のために生じることがある。感知素子の露出表面を保護層で覆うことによって、反応性ガスが感知素子と接触する機会を減らすことができる。感知素子の保護を改善することが望まれる場合には、保護層が電気絶縁材料を含むこともできる。この目的で、保護層を、任意の有機又は無機材料を用いて形成することができる。適切な材料には、金属酸化物、金属フッ化物、有機高分子及びそれらの混合物が含まれる。特に適切な材料の例には、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、並びにフッ化ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウムなどの金属フッ化物が含まれるが、それだけには限らない。上記の材料に加えて、他の適切な材料には金属及び金属合金が含まれる。特に適切な金属及び合金には、銅、銀、白金、金及びそれらの混合物が含まれるが、それだけには限らない。保護層が金属又は合金を含む場合、この金属又は合金は好ましくは感知素子と直接接触するべきではない。こうすると、センサのバルク電気特性が、センサに接続されるさらなる電気的構成要素に影響されないことを保証するのに役立ち、したがってセンサのこの実施形態のバルク電気特性より正確な測定値を得ることが可能となる。よって、金属や合金などの電気伝導性材料を保護層で使用する場合には、たとえば上記金属酸化物及び金属フッ化物のうちのいずれか1つを含む電気絶縁層を導電層と感知素子の間に配置することが有利であることがある。したがって、「保護層」という用語は、単一層だけでなく2層以上、すなわち多層構成を示すこともある。
【0049】
[0049]本発明の別の実施形態では、センサとベース基板との間に挿入された(有機及び/又は無機高分子を含む又はからなる)ライナ層をさらに備える。無機コーティングや無機層(たとえば、金属酸化物コーティング)などの材料は、アモルファスゾーン又はピンホール、クラックもしくは粒界の形の欠陥を有する又は生じることがある。このような欠陥が、高分子基板を覆っているバリアコーティングの表面に存在すると、サンプルの表面上の欠陥がない他の場所でよりも速い速度で、透過ガスが欠陥を通って逃げることができる。したがって、感知素子のこのような欠陥に隣接する部分は、より速い速度で反応することになる。感知素子が不均一に劣化すると、感知素子内に材料が未反応の区域が残り、その結果不正確な読取り値をもたらすことがある。ライナ層は通常、緩衝領域として振る舞って、透過ガスを吸い取り(染み込ませ)、その後にガスが均一に脱着される。透過ガスが均一に脱着されると、感知素子の均一な劣化がもたらされ、それによりセンサの電気伝導度の減少を、感知素子の厚さの減少とより正確に相互に関係付けることが可能となる。
【0050】
[0050]試験材料が、単純な有機高分子もしくは欠陥のない金属を含み又はそれからなり、あるいは多層バリア層を使用する場合には有機最上層を有する低ガス透過率高分子を含み又はそれからなる場合には、ライナ層は不要であることに留意されたい。一般に、表面欠陥がない試験材料は、ライナ層の使用を必要としない。しかしながら、センサの性能を向上させることが望まれる場合には、ライナ層を適用することもできる。
【0051】
[0051]ライナ層は、10nmから数ミクロンまで又はそれ以上の厚さを有する層として堆積させることができ、比較的小さいガスバリア特性を示す任意の有機材料を含むことができる。適切な材料の例には、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンなどの有機高分子、並びにそれらの共重合体が含まれる。他の適切な高分子には、パリレン型高分子、及びポリアクリレート(たとえば、ポリメチルメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのアクリル高分子が含まれる。セロファン膜も、有機ライナ層中で又は有機ライナ層としての使用に適している。さらに、ライナ層は、シリコーン型高分子、ポリシラン、ポリゲルマン、ポリスタナン、ポリホスファゼンなどの無機高分子の組合せを含むこともできる。これに関連して、ベース基板(層)及びバリア層用として先に指定した材料の一部は、ライナ層にも共通であり、これはベース基板、バリア層及び/又はライナ層に同じ材料を選択することが可能であることを意味することに留意されたい。たとえば、ベース基板が特定の高分子を含む場合に、ライナ層が同じ高分子を含むこともできる。別の例では、ベース基板が高分子である場合、ナノ粘土又はナノ粒子を含む酸化ケイ素又は他の酸化物などの無機材料を含む複合物である場合、バリア層も同じ高分子又は複合材料を含むことができる。
【0052】
[0052]他の態様では、本発明は、上述したような試験材料のガス透過率を測定するためのセンサを作製する方法に関する。前記方法は、2つの電極を設けること、及び水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子を前記2つの電極に接続することを含む。
【0053】
[0053]感知素子も電極も共に、直接組み立ててセンサを形成することができる特定の形の既製品、たとえばウエハ、ストリップ又は乾燥パッドとして得ることができる。あるいは、感知を被膜堆積法、たとえば熱蒸着、スパッタリング又は任意の表面技術により試験片の表面上に被膜として形成しようとする場合には、被膜堆積装置での使用に適した形で感知素子を作製することができ、次いで所望の形に成形し型成形してセンサを形成することができる。
【0054】
[0054]本方法を実施する目的で、センサを作製するためにいくつかのやり方で電極を設けることができる。たとえば、まず電極を一対のホルダにつるし、次いで感知素子をこれらの電極にはんだ付けすることが可能である。あるいは、一実施形態では、感知素子を支持体上に、たとえばベース基板の表面上に固定し、その後電極を感知素子にはんだ付けする。機能的電気接続を形成するために感知素子と電極とをはんだ付けすることが必ずしも必要とは限らないことが当業者には理解されるであろう。感知素子を直接電極上に形成し、又はその逆にし、それにかかる重量によってこの配置を固定するだけで十分で、はんだ付け、導電性接着剤又は他の接続手段によって接続する必要はないこともある。しかしながら、用途並びに利用する電極及びセンサのタイプによっては、任意の適切なタイプの接続手段を使用することができる。
【0055】
[0055]本発明の別の実施形態では、(試験すべき材料でもよい)ベース基板の表面上に電極を形成する。電極が電気配線である場合、これらの電極をまず、接触領域が露出した基板上に固定し、それにより感知素子の位置に対応するギャップを電極間に残し、次いでこのギャップに電極と接触する感知素子を形成することができる。電極を薄膜又は厚膜として形成しようとする場合には、真空気相成長法(VVD)、物理気相成長法(PVD)、化学気相成長法(CVD)、熱蒸着、スパッタリング、他の任意の表面堆積技術など、従来の被膜堆積技術を使用することができる。次いで、電極を形成するために説明したような適切なマスク、従来のリソグラフィ又はエッチング技術、任意の熱蒸着技術を用いて、電極間に形成されたギャップに感知素子用の材料を蒸着させる。
【0056】
[0056]本方法は、任意の適切な一連のステップに従って実施することができる。たとえば、感知素子を堆積させる前に、まず試験材料上に電極を形成することができる。あるいは、接続電極を形成する前に、まず試験材料上に感知素子を形成することも可能である。
【0057】
[0057]高レベルの感度(たとえば、10−3g/m2/dayより低い)を必要とする測定を、本発明のセンサで行おうとする場合、低ガス透過率材料の試験は、理想的には、表面上に見られる酸素及び水と反応性のある物質やマクロスケールの吸着粒子などの汚染物質が実質上ない試験材料及びセンサ構成要素で行うべきである。このため、センサ構成要素並びに試験材料を洗浄して、マクロスケールの吸着粒子を含めた、作製中又は堆積プロセスを行う際に取り込まれることがある汚染物質も取り除くことが(必ずしも必要ではないが)望ましい。レーザ洗浄、物理的及び化学的プラズマプロセス、UV放射、シリコンフラックスなど、半導体産業で一般に使用される従来の表面洗浄技術のいかなる組合せも使用することができる。
【0058】
[0058]本発明のセンサを作製する方法の一実施形態では、このような汚染物質を取り除くために、試験材料の表面に表面処理手順が施される。好ましい表面処理手順は、試験材料又は基板、及びその上に堆積された電極をアルコールですすぐこと、不活性ガスを用いて送風乾燥すること、及び真空脱気することを含む。使用することができる適切なアルコールには、第二級、第三級及び枝分かれアルコール、たとえばイソプロピルアルコール又はイソブチルアルコールが含まれる。実際には、アセトン及び/又はメタノールなどの短鎖第一級アルコールなどの化学薬品、又は基板中の任意の高分子に対する有機溶媒として作用することができる任意の他の化学薬品を用いた洗浄は、本発明のセンサを作製する方法におけるいくつかの実施形態では適当ではないかもしれないことが当業者には理解されるであろう。したがって、このような化学薬品に対して耐性のない高分子がベース基板及び/又はライナ層中に存在する場合、これらの化学薬品を洗浄手順において使用することはできない。とは言え、ベース基板中に存在するすべての高分子又は他の材料がこれらの化学薬品に対して耐性がある場合には、それらの化学薬品を洗浄に使用することができる。
【0059】
[0059]上記の表面処理手順において、センサをアルコールですすいだ後、高圧ガスを用いてセンサを送風乾燥して、すすぎに用いた痕跡量のアルコールを取り除く。続いて、表面に確実に吸着水分又は吸着酸素がないようにするために、センサを真空オーブン内に設置する。センサに有機高分子が使用されている場合、真空脱気を行うことができる温度は、使用される有機高分子及びそのそれぞれのガラス転移温度によって変わることがある。一般に、真空脱気を行うのに適した温度は、ベース基板中に存在する高分子のガラス転移温度(Tg)より低い。たとえば、従来のLCDバリアスタックを使用する場合、30℃〜100℃、好ましくは50℃〜85℃の温度で、1〜80時間、好ましくは6〜60時間減圧下で真空脱気を行うことができる。
【0060】
[0060]さらなる実施形態では、真空脱気の後、センサが形成されている表面をアルゴンガスプラズマで処理する。感知素子を形成する前に、微量の表面汚染物質を取り除くため、RFアルゴンプラズマを使用してバリア膜の表面に低エネルギーイオンを衝突させることができる。表面状態に応じて、30W〜2kWのプラズマ出力、20sccm〜100sccmのアルゴンガス流量、10秒〜2時間の継続時間でプラズマ処理を行うことができる。たとえば、酸化インジウムスズ(ITO)をバリア層として使用する場合、適切なプラズマ処理は、200WのRF出力、50Vの基板バイアス、70sccmのアルゴンガス及び5〜8分の処理継続時間を含む。
【0061】
[0061]感知素子の望ましくない劣化の可能性を低減させるために、感知素子の堆積を行った後、その上に保護層、好ましくは絶縁保護層を適用することによって、感知素子の露出表面を水蒸気又は酸素への露出から保護することができる。この絶縁層は、従来のプロセス、たとえばPVD又はCVDによって堆積させた薄膜など、任意のタイプの有機又は無機層を含むことができる。フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの透明な膜が、この目的には適切である。
【0062】
[0062]プラズマ処理プロセスを行った後、試験基板が無機(たとえば、金属又は金属酸化物)層を終端層又は最上層として含む場合には、ライナ層又はバッファ層を形成することができる。このライナ層は、スピンコーティング、真空蒸着又は他の任意の従来の表面堆積プロセスによって、薄い層として堆積させることができる。
【0063】
[0063]本方法の別の実施形態は、さらに感知素子を封入することを含む。感知素子を封入するための従来の封入技術を使用することができ、グローブボックスなどの不活性環境内で実施することができる。たとえば、モールドのキャビティに感知素子を設置すること、その後そのキャビティに熱硬化性材料を注入することを含むトランスファ成形を、センサを形成するために実施することができる。この熱硬化性樹脂は、感知素子が完全に覆われるまで感知素子の上を流れることができ、その後、硬くなって(harden)保護カバーとなるように硬化させる(cure)。センサが基板を含む場合、感知素子及びその基板の少なくとも一部分をモールドキャビティ内に設置することができる。熱硬化性材料を、基板の片面上で感知素子全体の上を流れさせ、その後硬化させる(set)ことができる。紫外線(UV)硬化性シーラント、たとえばエポキシをこの目的に使用することもできる。
【0064】
[0064]上記封入手順の1つの変形形態は、基板のリムにシーラントを塗布すること、及びそれに続いて感知素子をカバー基板、たとえばガラスカバーで密封することを含む。このカバー基板は、性能試験の実施中に感知素子を見えるようにするために透明でよい。しかしながら、測定試験中に感知素子が変質するときに感知素子を見る又は感知素子の写真を撮る必要がない場合には、不透明なカバーを使用することもできる。試験チャンバ内の汚染物質のない環境を維持するための追加の措置として、たとえば、カバー基板をアセトン及び水中ですすぐことによって、カバー基板を使用前に洗浄することもできる。
【0065】
[0065]さらなる態様においては、本発明は、試験材料のガス透過率を測定するためのシステムも対象としている。前記システムは、本発明のセンサを備える。このシステムは、試験チャンバ、定電流源、デジタル信号アナライザ、及び抵抗を測定するためのメータを備えることもできる。
【0066】
[0066]より詳細には、試験サンプルと、それに付随するセンサを、特定の環境をシミュレートするために湿度、圧力及び温度を任意の所望のレベルに設定することができる適切なチャンバに設置することができる。湿度チャンバをこの試験に使用する場合、試験材料を通り抜ける他のガス、たとえば酸素の透過を、試験中にこれらのガスをチャンバに導入することによって試験することもできる。センサの電極は定電流源メータに接続され、このメータは、一定の間隔でメータから送信されるデータを記録するコンピュータとインターフェースさせることができる。本システムでは、任意の適切な定電流源メータを使用することができる。例には、Keithley社(米国オハイオ州)、Bridge Technology社(米国アリゾナ州)又はGlen Spectra社(英国ミドルセックス)から入手可能なものがある。センサの抵抗を時間の関数としてプロットできるように、データプロットソフトウェアを使用することもできる。
【0067】
[0067]このシステムは、試験を実施する際にセンサの1/fノイズを評価するためのダイナミックスペクトルアナライザをさらに含む。使用することができる適切なスペクトル信号アナライザには、Agilent社(米国カリフォルニア州)のHP35670A、HP3561A又はHP35665A、及びStanford Research社(米国カリフォルニア州)のSR785又はSR780が含まれる。ノイズ信号のスペクトル密度を評価するための高速フーリエ変換(FET)ルーチンを提供するアナライザを選択することも望ましい。任意選択で、Stanford Research社のSR570低ノイズ増幅器などの低ノイズ増幅器を使用して、信号アナライザで処理される前にノイズ信号を増幅することもできる。
【0068】
[0068]この測定システムは、湿度チャンバだけでなく、異なる条件下で水蒸気以外の他のガスに対して試験材料を試験することができる他の適切なタイプの試験チャンバも組み込むことができる。適切なチャンバの例には、加圧ガスチャンバ及び高圧酸素チャンバが含まれる。ガス透過測定を行うことができる試験チャンバの好ましい構成(図13参照)は、試験片(基板又は被膜)によって2つの区域に分割された中空の中央部を備えることができる。一方の区域には、所定の圧力及び温度で試験ガスが提供され、試験片の反対側には、存在する試験ガスを排出するためのスイープガスとして不活性ガスが同じ又は異なる圧力で提供される。試験片をガスチャンバに装着する前に試験片上にセンサを作製し、ガスチャンバの側壁に取り付ける。
【0069】
[0069]本発明の別の態様は、ガス透過率を決定する方法を対象としている。この方法は、本発明のセンサの感知素子を測定試験中に水及び/又は酸素と接触させること、センサの電気伝導度の変化をある期間にわたって測定すること、及びその測定値に基づいて試験材料のガス透過率を計算することを含む。
【0070】
[0070]ガス透過率の計算は、感知素子がターゲットガスと反応する速度に基づいて行われる。この反応速度を計算するために通常確定される初期値は、感知素子の初期量である。このため、有利には、指定量の材料を感知素子の作製に使用することができる。あるいは、感知素子を所定の寸法(長さ×幅×高さ)を有するように設計することもでき、この寸法から次式(I)を用いて感知素子の量を計算することができる。
反応した感知素子の量(mol)=(体積×密度)/Ar
ここで、変数「体積」は感知素子の体積を指し、「密度」は感知素子の密度を指し、「Ar」は感知素子の相対原子質量を指す。センサで使用される感知素子の(モル)量に、水、酸素又は他の任意のガスの反応の化学量論比の値を乗じることによって、感知素子と反応するガスの量を得ることができる。この量は、試験片又は試験構造を透過するガスの量と等しいと見なされる。
【0071】
[0071]センサが電気伝導を部分的に又は完全に中止する、すなわち、測定された電気伝導度=0Mhoとなるのにかかる時間も通常必要とされ、ソースメータで決定することができる。ガス透過速度は次式(II)から計算することができる。
ガス透過速度=単位表面積当たりの透過水量(g)×(24hr/時間)
ここで、変数「時間」は、センサが導電を中止するのにかかる時間である。この点に関連して、特定の量/構成の感知素子を完全に消費する/反応させるのに必要な時間を決定することによってセンサを較正することが有用であることがあることに留意されたい。このような較正を行うと、寸法及び特性が同じである感知素子を有するセンサを後で使用する際に利用できる基準点が得られる。このような後の使用では、較正されたセンサが、その後感知素子の部分的な反応しか必要としないことがある。
【0072】
[0072]感知素子の反応量に基づいてガス透過を計算する代わりに、たとえば感知素子の電気抵抗又は電気伝導度など他の変数に基づいてガス透過を計算することも可能である。一実施形態では、センサの1/fノイズの測定を行ってガス透過率を決定する。本発明の文脈における1/fノイズについての簡単な説明は次の通りである。抵抗器を流れる電流、抵抗器の抵抗、抵抗器にかかる電圧などの信号は、ランダムなゆらぎを示すことが知られている。信号のノイズと称されるこれらのゆらぎは、信号に特徴的なものである。周波数fの関数としてのノイズP(f)のパワースペクトルは通常、方程式P(f)=1/fβに従った挙動を示す。β=1又はβが1に近い場合、示されるノイズのタイプは通常単純に1/fノイズ(又はピンクノイズ)と称され、このノイズは自然界に見出されるプロセス(たとえば、1/fノイズは任意の分子運動又は電子運動において見られる)で非常に頻繁に発生する。β=0の場合、このノイズは通常ホワイトノイズと呼ばれる。β=2の場合、このノイズはブラウンノイズと呼ばれる。1/fノイズ、ホワイトノイズ、ブラウンノイズ、他のタイプのノイズなど、すべてのノイズ形式のパワースペクトルP(f)をすべてダイナミックスペクトルアナライザで測定することができる。電気抵抗など、測定試験中に変化する測定可能な別の変数の関数として信号の1/fノイズを決定する際には、以下の計算方法を利用することができる。まず第一に、ある期間にわたる平均値に対する信号のゆらぎを、ゆらぎデータとして記録する。この平均値は、たとえばその期間にわたる信号の平均値でよい。続いて、このゆらぎデータを、時間領域から周波数領域にフーリエ変換する。最後に、ゆらぎの確率(信号のスペクトル密度としても知られている)を、電気抵抗など上記の別の変数の関数としてプロットする。このようなプロットは通常、スペクトル密度の変化がこの変数の変化に比例することを示す。このようにして、1/fノイズの測定値を変数の変化と直接相互に関係付けることができる。
【0073】
[0073]この実施形態は、1/fノイズの変化(dN)とセンサの抵抗値の変化(dR)の関係を利用する。この関係を決定するために、デジタル信号アナライザを直接使用して、試験が進行する際に、センサの抵抗値の関数として1/fノイズの値を求めることができる。センサの抵抗値の測定は、試験中に1/fノイズの測定と同時に行われる。システムとインターフェースされているコンピュータを、NとRを表及びグラフにし、それから抵抗値に対する1/fノイズの変化率(dN/dR)が得られるようにプログラミングすることができる。
【0074】
[0074]1/fノイズを用いるこの実施形態においてガス透過率の計算のために通常確定される実験変数及び初期値には、感知素子の初期厚さ、センサの初期抵抗値及び初期コンダクタンス、試験にかかる時間、並びにデジタル信号アナライザの1/fノイズ分析の感度(S)が含まれる。
【0075】
[0075]以下の一般式は、(dN/dR)に基づいてガス透過速度を得るために実施する必要がある計算を示す。
1/fノイズの単位変化当たりの抵抗の変化(R1/f)=S÷(dN/dR)(III)
センサの厚さの変化(IV)=R1/f×(感知素子の厚さ÷センサの初期抵抗値)
【0076】
[0076]センサの厚さの変化が決定されると、ガス透過速度を式(I)及び(II)を用いて容易に計算することができる。
【0077】
[0077]測定しようとする変数の変化を直接測定する代わりに、1/fノイズの変化をモニタする際の1つの利点は、デジタル信号アナライザによって提供される1/fノイズを読み取る際の高い感度レベルの感度(典型的には1×10−14V2rms/Hz未満)に帰することができる。この感度レベルは、測定されている1/fノイズの値よりも約5〜7桁小さくなることがある。これにより、センサにおける非常に微細な酸化の検出が容易になり、したがって10−8g/m2/day未満のガス透過速度の測定が可能となる。たとえば、センサの1/fノイズの変化を測定し、センサの抵抗値の関数としてプロットすることができる。プロットしたグラフから、dN/dRが非常に小さいことがわかるであろう。これは、測定可能な1/fノイズの単位変化が、約10−7〜10−8オームの非常に小さい抵抗の単位変化に対応することを意味する。言い換えれば、20℃〜95℃の温度での水蒸気透過速度及び酸素輸送速度を検出するための感度が約10−8g/m2/day及び10−8cc/m2/dayになる。この感度レベルは、FOLEDに見出されるような低ガス透過率材料及び低ガス透過率構造を試験する目的に十分である。
【0078】
[0078]感度の向上に加えて、本発明は、単一の試験を用いて試験材料の拡散係数、透過係数並びに溶解度係数を決定することができる利点があるが、以前は別々の独立した試験を実施することによってこれらの係数の各々を決定することが可能であるにすぎなかった。
【0079】
[0079]前述の説明から、たとえば単層又は多層の保護層を有するフレキシブル又はリジッドな高分子基板、カバー基板を有する又はカバー基板なしの封入構造、リム又は高分子基板上のエポキシあるいは接着材料又は接着タップ、多層の有機又は無機薄膜含むバリア/保護層を有する基板の試験を含めた、多くのタイプの用途に本発明を適用することができることがわかる。この多層は、低ガス透過率性能のカプセル体を提供するために、いくつかのセラミック酸化物層又は無機層、及び有機層を有することができる。このような用途は、密封されたOLEDデバイスを用いるディスプレイパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、集積チップパッケージ/構造など、エレクトロニクスのパッキング用途で広く利用されている。これらの基板を形成するために使用される材料には、ポリエチレン、ポリエチレンスルフィド、ポリカーボネートなどの高分子、単層又は多層の金属酸化物コーティング又はセラミックバリアコーティングを積層することができる基板、並びにガラス基板が含まれる。本発明を使用することができる他の用途は、LED、OLED及びLCDのカプセル体、ハードディスクドライブの金属筐体、さらには食料及び薬品のパッケージ、真空用途、弾薬容器、並びにプラスチック容器ガスの透過特性の測定である。
【0080】
[0080]本発明を、以下の非限定的な実施例及び添付図面によってさらに説明する。
【0081】
実施例1:本発明のセンサの例示的実施形態
例示的実施形態1
[0094]図1は本発明によるセンサ10を示し、カルシウムのストリップなどの感知素子100が一対の電極102に接続されている。電極102がセンサの短辺に接続されていることが図からわかる。接着バッドなどのコンタクト接着剤を使用する感知素子の短辺の上に塗布して、電極と感知素子との間の接触を向上させることができる。電極は、感知素子の短辺又は長辺に接続することができる。
【0082】
例示的実施形態2
[0095]図2A〜2Gは、ベース基板104によって支持されているセンサ200の様々な実施形態を示す。図2Aにおいて、電極102はベース基板104より上に保持されている。
【0083】
[0096]図2B〜2Gは、電極106が試験材料の表面上に配置され、かつ互いに離隔されてそれらの間にギャップ/トレンチが形成されているセンサ200を示す。このトレンチは、感知素子100によって占められる。図2Bでは、電極と感知素子との間の接触面は、ベース基板に対して垂直である。図2Cでは、接触面は基板の表面に対して垂直ではなく、90°未満の角度を形成する。センサの断面図には、幅の狭い底面と幅の広い上面とを有する感知素子が示してある。この構成は、たとえば、まず基板上に電極を形成し、次いでその堆積プロセスを制御して端部に向かって先細りする電極を形成することによって形成することができる。続いて、感知素子100を2つの電極の間に堆積させる。
【0084】
[0097]図2Dは、感知素子100の底面が上面よりも幅広であるセンサ200を示す。この例では、感知素子と電極との間の接触角が約45°である。図2Eは、感知素子が電極106間のトレンチから延び、電極106と部分的に重なるセンサ200を示す。図2Fは、感知素子が基板104の表面を覆って延び、電極106が感知素子上に形成されているセンサ200を示す。図2Gは、基板104がバリア層108で被覆されているセンサ200を示す。
【0085】
例示的実施形態3
[0098]図3A及び3Bは、感知素子とベース基板との間にライナ層110が組み込まれているセンサ300の諸実施形態を示す。図3Aは、ベース基板と感知素子との間に位置するライナ層を示す。図3Bは、電極と同一平面にある、すなわち電極とほぼ同じ厚さを有するライナ層を示す。
【0086】
例示的実施形態4
[0099]図4Aは、カプセル体112に封入されているセンサ400を示す。図4Bは、カプセル体112が感知素子100と直接物理的に接触してはおらず、中空空間114を提供しているセンサを示す。この中空空間は真空にする、あるいは必要であれば不活性ガスを充てんすることができる。特定の一実施形態では、カプセル体112がエポキシ樹脂であり、中空空間114がアルゴンガスで充てんされる。別の特定の実施形態では、カプセル体112がポリウレタン樹脂であり、中空空間が窒素ガスで充てんされる。
【0087】
例示的実施形態5
[00100]図5は、電極106が基板104の表面上に形成されている封入センサ500を示す。電極106は互いに離隔されて、感知素子100を収容するトレンチを形成する。感知素子100の厚さは、電極106の厚さとほぼ同じレベルである。感知素子100の上にカプセル体112が形成されている。
【0088】
例示的実施形態6
[00101]図6は、カプセル体が組み込まれ、そのカプセル体に隣接するカバー基板114を備えるセンサ600を示す。この実施形態では、感知素子100の周りの電極及びベース基板上に、カプセル体112の層を付着させている。カバー基板114はカプセル体112上に設置され、それにより感知素子100が密閉される。これらカプセル体及びカバー基板内に封入されている中空空間116は、アルゴン又は窒素などの不活性ガスで充てんすることができる。この構成は、図7A及び7B示す構造を有するOLEDパッケージのガス透過特性を試験するのに適している。
【0089】
例示的実施形態7
[00102]図8は、エポキシを含むカプセル体/シーラント112及びガラスのカバー基板114が組み込まれているセンサ800を示す。この実施形態では、試験片104及び電極を構成する一対の金属トラック106上に、カプセル体112(エポキシシーラント)の層を付着させている。感知素子100としてカルシウムが使用され、感知素子100の上面が保護層118で覆われている。ガラスのカバー基板はカプセル体上に設置され、それにより感知素子が密閉される。感知素子の上に封入されている中空空間116は窒素で充てんされている。
【0090】
実施例2:ガス透過センサの作製
[00103]この実施例では、図8に示す、また図9に概略的に示すセンサを作製した。試験サンプル(厚さ175μm)は、厚さ30nmの酸化ケイ素バリア層で被覆された厚さ133μmのポリカーボネート膜を含んでいた。この試験サンプル(基板)を、空気圧で動作する穴あけダイパンチ切断機で50mm×50mmの寸法に切断した。切断を行った後、適切なマスクを用いて試験サンプル上に銀を堆積させて、試験サンプルの表面上に電気伝導性のトラックを2つ形成した。これらの導電性トラックは、各トラックの幅が互いに向き合うように方向を合わせた。厚さ300nm(長さ18mm、幅20mm)の導電性金属(銀)トラックの2つのストリップを試験サンプル上に堆積させ、それにより長さ10mm×幅20mm×高さ300μmギャップをストリップの間に形成した。続いて、カルシウム感知素子を以下に説明するように形成した。実施例3に説明するような測定を行い、正規化された1m2の感知素子面積を想定した。
【0091】
[00104]導電性トラックを作製した後、試験サンプルをイソプロピルアルコール(IPA)ですすぎ、窒素で送風乾燥した。次いで、送風乾燥した基板を、吸着水分又は吸着酸素を脱気するために真空オーブン内に設置した。オーブン内の圧力を10−1ミリバールに設定し、この実施例で使用されるバリアスタック中に存在する高分子のガラス転移温度よりも低い60〜100℃の高い温度で数時間真空脱気を行った。ここで使用された真空オーブンは、真空ポンプから真空オーブンへの炭化水素油の逆流を防止するために、加えてフォアライントラップを具備していた。
【0092】
[00105]脱気プロセスの直後、一部分を形成したセンサ及び試験サンプルを、ULVAC SOLCIETクラスタツールへ移し、ここで数時間プラズマ処理を行った。表面の汚染物質を取り除くために、高周波(RF)アルゴンプラズマを使用してバリア膜の表面に低エネルギーイオンを衝突させた。チャンバ内のベース圧力を4×10−6ミリバールより低く維持した。アルゴン流量を70sccmとし、RFパワーを200Wに設定した。
【0093】
[00106]プラズマ処理プロセスの後、アクリル高分子を含むライナ層を、スピンコーティングによって約100nmの薄膜として堆積させた。このライナ層は、比較的低いガスバリア特性しか示さないが、カルシウム感知素子の均一な層状酸化を確実にする。
【0094】
[00107]この薄い有機バッファ層の堆積後、試験サンプルを真空蒸着チャンバに移した。続いて、2つの電極間の空間に適切なマスクを通してカルシウムを堆積させて、厚さ150nmの層を形成した。カルシウムの堆積後、LiFを含む100nmの絶縁膜をPVDによってカルシウム上に堆積した。
【0095】
[00108]続いて、一部分を形成したセンサをグローブボックスに移し、ここでセンサを封入した。試験サンプルのリム上にUV硬化性エポキシを塗布した。適合する寸法のガラススライドをエポキシ上に設置してカルシウム感知素子を密封した。400Wのメタルハライド光源(2000−ECシリーズUV光源、DYMAX社)を使用してエポキシを約2分間で硬化させた。この光源の波長は300nm〜365nmで、その強度はそれぞれ22mW/cm2及び85mW/cm2であった。最適な封入を確実に行うために、全封入プロセスが不活性窒素ガス雰囲気下で行われた。
【0096】
実施例3:1/fノイズの測定を用いる水蒸気透過試験
[00109]バリアスタックを二酸化ケイ素と共に含む試験サンプルを備える、実施例2において作製された封入センサ(図9参照)を、湿度チャンバ(WK1モデル、Weiss社、独国)に移した。センサの1/fノイズをモニタするために、HP35670Aデジタル信号アナライザを電極に接続した。同時に、センサに定電流源を提供し、時間にともなうカルシウムの抵抗値の変化率をモニタするために、Keithley社の24203Aソースメータを電極に並列接続した(図9参照)。1/fノイズ、並びにカルシウムのコンダクタンス及び抵抗値の測定を、温度40℃、相対湿度90%、大気圧で行った。
【0097】
[00110]時間に対するカルシウムの抵抗値変化のグラフを図10Aに示す。図からわかるように、約2〜3時間の遅延時間が認められ、この期間カルシウムセンサは劣化しない。この遅延時間は、水蒸気が感知素子に到達する前に試験サンプルを横切るのに必要な時間を示す。
【0098】
[00111]図10Bに示すような、時間に対するカルシウムのコンダクタンスの変化率のグラフも得られた。図からわかるように、カルシウムのコンダクタンスが最初のコンダクタンスから減少し始めるまでにかかる時間は、試験の開始から約2.8時間である。コンダクタンスは約7時間でゼロにまで低下する。これは、カルシウム感知素子が完全に消費されるには約4.2時間必要であったことを意味する。
【0099】
[00112]デジタル信号アナライザによって得られた1/fノイズの測定値を、センサの抵抗値の関数としてプロットした。そのグラフを図10Cに示す。
【0100】
[00113]このデータを基づいて、以下のさらなる実施例において示すように水蒸気透過特性の定量的評価を行うことができる。
【0101】
実施例4:水蒸気透過速度の計算−ノイズ測定の感度
[00114]この実施例では、本発明によるノイズ測定の感度に基づき、上記実施例において使用したような二酸化ケイ素コーティングで被覆された従来のバリアスタックを通して水蒸気透過速度を導くための手順を説明する。
【0102】
[00115]本計算を行うために必要なデータは、実施例1の抵抗及びノイズの測定値から持ってくる。150nmのカルシウムを酸化させるのにかかる時間は、図10Bのグラフに示すように約4.2時間であった。
【0103】
[00116]デジタル信号アナライザ(HP35670A)の1/fノイズ分析の感度は、64Hz及び1mAの定電流で10−14V2rms/Hz未満であると特定された。
【0104】
[00117]実施例1で行われた測定から得られるデータを用いて、水蒸気透過速度の導出を次のように行った。
1)抵抗値(R)の変化に対するセンサの1/fノイズ(N)の変化率、すなわち、(dN/dR)
=1/fノイズとRのグラフの傾き(図10C)
=3.38×10−7V2rms/Hz(R=23.13オームの値で)
したがって、1Ωの抵抗値変化では、1/fノイズが3.38×10−7V2rms/Hz変化する。
2)反対に、1×10−14V2rms/Hzの1/fノイズ変化では、センサの抵抗値の変化
=1×10−14÷3.38×10−7=2×10−8オーム
3)2×10−8オームの変化では、カルシウムの厚さの変化=0.8×10−5nm
4)対応するカルシウム量の変化(mol)
=(体積×密度)/Ar(Ca)
=(0.8×10−14m3×1.55g/10−6m3)/40.08g/mol
=3×10−10mol
5)1つのカルシウム原子と反応させるために2つの水分子が必要とされる。したがって、3×10−10molのカルシウムと反応させるために必要とされる水分子のモル数
=2×3×10−10mol
=6×10−10mol
6)H2Oの分子量は18g/molである。したがって、2.2×10−10molのH2Oの重量
=6×10−10mol×18g/mol
≒1×10−8g/m2
したがって、水蒸気透過の検出についてのデジタル信号アナライザの感度は、1×10−8g/m2となる。
7)水蒸気透過速度(WVTR)
=1×10−8g/m2×(24hrs/day÷4.2hrs)
≒5.71×10−8g/m2/day
【0105】
[00118]上記から、ノイズ測定法の感度によって10−6g/m2/day未満の水蒸気透過速度を測定すること可能となり、したがって低ガス透過速度を測定するのに十分に感度が高いことがわかる。
【0106】
実施例5:水蒸気透過速度の計算−カルシウムの抵抗の直接測定
[00119]本実施例では、カルシウムの電気抵抗の直接測定に基づき、水蒸気透過速度を導く方法を説明する。
【0107】
[00120]本計算を行うために必要なデータは、実施例2の抵抗及びノイズの測定値から持ってくる。150nmのカルシウムを酸化させるのにかかる時間は、図10A及び10Bのグラフに示すように約4.2時間であった。
【0108】
[00121]水蒸気透過速度の導出を次のように行った。
1)コンダクタンスが0Mhoにまで下がった(すなわち、カルシウムセンサを完全に反応させた)ときの、反応したカルシウムの量(mol)
=(体積×密度)/Ar(Ca)
=(150×10−9m3×1.55g/10−6m3)/Ar(カルシウム)g/mol
=5.8×10−3mol
2)1つのカルシウム原子と反応させるために2つの水分子が必要とされる。したがって、5.8×10−3molのカルシウムと反応させるために必要とされる水分子のモル数
=2×5.8×10−3mol
=11.6×10−3mol
6)H2Oの分子量は18g/molである。したがって、11.6×10−3molのH2Oの重量
=11.6×10−3mol×18g/mol
=0.208g/m2
≒0.2g/m2
したがって、カルシウムの抵抗の直接測定に基づく実現可能な感度は、0.2g/m2である。
7)水蒸気透過速度(WVTR)
=0.2g/m2×(24hrs/day÷4.2hrs)
≒1.1g/m2.day
【0109】
[00122]したがって、この直接抵抗法を本センサで使用して、ガス透過速度を計算することもできる。しかしながら、この特定の実験構成では、10−6g/m2/day未満のガス透過速度を決定するのにこの直接抵抗測定法は適していない。
【0110】
実施例6:水蒸気透過速度の計算−抵抗測定の感度
[00123]本実施例では、Keithley社の24203Aソースメータを用いた抵抗測定の感度に基づき、水蒸気透過速度を導く方法を示す。計算目的のために必要とされるデータは、実施例1で行った測定から得た。ソースメータの感度は、約1mΩであると特定された。
【0111】
[00124]水蒸気透過速度の導出を次のように行った。
1)1mΩの抵抗変化(ΔR)に対するカルシウムセンサの厚さの変化(Δt)
=ΔR/R=1mΩ/0.37Ω=2.7×10−3
=Δt/t=Δt/150nm=0.4nm
2)1mΩの変化に対するカルシウム量の変化(mol)
=(体積×密度)/Ar(Ca)
=(0.4×10−9m3×1.55g/10−6m3)/40.08g/mol
=1.55×10−5mol
3)1つのカルシウム原子と反応させるために2つの水分子が必要とされる。したがって、1.55×10−5molのカルシウムと反応させるために必要とされる水分子のモル数
=2×1.55×10−5mol
=3.1×10−10mol
4)H2Oの分子量は18g/molである。したがって、3.1×10−5molのH2Oの重量
=3.1×10−5mol×18g/mol
≒5×10−3g/m2
したがって、水蒸気透過の検出についてのデジタル信号アナライザの感度は、5×10−3g/m2となる。
5)水蒸気透過速度(WVTR)
=5×10−3g/m2×(24hrs/day÷4.2hrs)
≒2.9×10−2g/m2/day
【0112】
[00125]したがって、この直接抵抗法を本センサで使用して、ガス透過速度を計算することもできる。しかしながら、この特定の実験構成では、抵抗測定の感度によって10−6g/m2/day未満のガス透過速度を決定することはできなかった。
【0113】
実施例7:拡散係数の試算
[00126]図10Aの定常状態領域における曲線をゼロまで外挿することにより、遅延時間(L)が得られ、この遅延時間を、次式(V)に従って定常状態前の経過時間と関係付けることができる。
L=l2/6D
高分子ベース基板は3%の抵抗しか提供しないので、バリアで被覆した高分子基板を、均質な単一の基板であると仮定する、あるいは酸化物層をバリア層であると考える。この遅延時間技法を使用して拡散係数を決定する。必要な境界条件は以下の通りであり、最初はガスを含まない膜であること、ガス−高分子界面で平衡を実現すること、及びカルシウム側でガスの濃度がゼロであることである。これらの条件下で、遅延時間Lによる方法を用いて、必要とされるバリア膜の拡散係数を以下の方程式で計算することが可能である。ここで、Lは遅延時間、lはバリア層の厚さ、Dは拡散係数(m2/s)である。
【0114】
[00127]本計算を行うために必要なデータは、実施例2の抵抗及びノイズの測定値から持ってくる。150nmのカルシウムを酸化させるのにかかる時間は、図10A及び10Bのグラフに示すように約4.2時間であった。
【0115】
[00128]したがって、遅延時間(L)が4.2時間であり、酸化ケイ素で被覆したポリカーボネートバリアスタックの全体の厚さは175ミクロンであるので、拡散係数(D)は、
D=(175μm)2/(6×4.2×60×60s)
=30625(μm)2/90720s=3.4×10−13m2/s
となる。
【0116】
[00129]したがって、酸化ケイ素で被覆された所与の基板の拡散係数Dは、3.4×10−13m2/sとなる。
【0117】
実施例8:透過係数(P)の試算
[00130]定常状態における膜を通るガス又は蒸気の輸送速度は、通常次式(VI)に従って計算される。
WVTR=P(p1−p2)/l
ここで、WVTRは所与の時間における水蒸気透過速度[g/m2.day]、Pは透過係数[g.μm/m2.day.bar]、p1はバリアスタックの高圧側の圧力、p2はバリアスタックの低圧側の圧力、lは拡散の路程(μm)(バリアスタックの厚さ)である。
【0118】
[00131]本計算を行うために必要なデータは、実施例2の抵抗及びノイズの測定値から持ってきた。150nmのカルシウムを酸化させるのにかかる時間は、図10A及び10Bのグラフに示すように約4.2時間であった。
【0119】
[00132]実施例5で計算した水蒸気透過速度は1.1g/m2/dayである。バリアスタック全体の厚さは175ミクロン、p1=55mbar(相対湿度90%の湿度チャンバにおける蒸気圧)、p2=0[水蒸気はすべてカルシウムと反応するはずなので、カルシウムを封入した試験バリアスタック内部の蒸気圧はほぼ0である]である。
【0120】
[00133]これらの値を上記透過係数の方程式に当てはめる。
【数1】
【0121】
[00134]したがって、酸化ケイ素で被覆した所与の基板の透過係数(P)は、40℃及び相対湿度90%の条件では、1バールで3.5×103g.μm/m2.dayである。
【0122】
実施例9:センサの劣化パターンに与えるライナ層の影響の検討
[00135]本実施例では、感知素子の劣化パターンに与えるライナ層の影響を検討するために、高分子基板の試験を行った。
【0123】
[00136]実施例1に記載されている手順に従って、カルシウム感知素子を備えるセンサを、金属酸化物バリアコーティングを有するPET基板上に作製した。厚さ100nmのアクリル高分子ライナを、金属酸化物コーティングの表面上に適用した。このセンサを、図6に示すようにOLEDパッケージと同様にして封入した。ライナ層を組み込まずに対照物を作製した。温度50℃及び相対湿度90%の湿度チャンバ内で、両方の試験片の試験を行った。
【0124】
[00137]図11A及び11Bに示す画像は、試験中数時間の間隔で撮影した。カルシウムの劣化を、光学顕微鏡によってモニタし、デジタル画像を感知素子の表面上の5箇所から撮影した。図11Aは、試験が進んだときの感知素子の均一な劣化を示す。比較すると、図11Bは、対照物内の感知素子が不均一に劣化したことを示す。
【0125】
[00138]これらの結果から、このライナ層によりセンサ内の感知素子の均一な層状劣化が容易になったことがわかる。
【0126】
実施例10:試験材料がガラスである場合にセンサの劣化パターンに与える無機でない終端層の影響の検討
[00139]本実施例では、本発明のセンサを用いる試験をガラス基板上について行った。この目的は、センサの劣化の均一性を検討することである。
【0127】
[00140]実施例1に記載されている手順に従って、ガラス基板上にセンサを作製した。ガラス基板の表面上にはライナ層を適用しなかった。図6に示すOLEDパッケージ構造と同様のレイアウトを有するようにセンサを設計した。このセンサを、接着材料及びガラスのカバー基板で封入した。温度50℃及び相対湿度90%の湿度チャンバ内で試験を行った。水蒸気が接着材料を貫通するにつれて、感知素子が徐々に劣化した。このセンサを光学顕微鏡によってモニタした。数時間の間隔の測定ごとに確定した5箇所からデジタル画像を撮影した(図12A参照)。これらの画像は、OLEDパッケージにおいて感知素子の劣化が均一であることを示している。
【0128】
[00141]島津製作所製のUV−3101PC UV−VIS−NIR走査型分光光度計を用いてカルシウムセンサの光学特性をモニタした。図12Bは、数時間の間隔で感知素子上の異なる5箇所について測定したカルシウムセンサの反射率のグラフを示す。センサの各箇所で測定した反射率は同じままであり、実質的な変化を示さないことがグラフからわかる。したがって、カルシウムの酸化はセンサ全域で均一のようであり、反射率の低下によりカルシウムの酸化のダイナミクスは層状に進行することが確認される。
【0129】
[00142]OLEDパッケージ構造を用いて作製されたカルシウム感知素子は均一に酸化され、その酸化は層状に進行することがわかる。したがって、センサの電気伝導度の減少を、対応する感知素子の厚さの減少と相互に関係付けることができる。
【0130】
実施例11:試験材料を通り抜ける酸素と水蒸気の複合透過特性の測定
[00143]本発明は、湿度チャンバ内だけでなく特注の試験セル内で実施することができる。本発明により、任意の試験基板又はパッケージを通り抜ける酸素、水蒸気又は他の任意のガスの透過測定を単一の試験チャンバ内で実施することができる。加えて、その測定を、高い温度及び圧力で実施することも可能である。
【0131】
[00144]図13は、2組のガス入口及びガス出口を備える従来のガスチャンバを有する試験セルを示す。このチャンバは、チャンバの中間部分に位置する試験片クランピング区域を備える。この試験チャンバ内で測定を行うために、試験材料をまず必要とされる寸法に従って切断する。上述の方法に従って、試験材料上にカプセル体なしのセンサを作製する。この試験片をチャンバに挿入し、クランピング区域でクランプすると、チャンバが2つの領域A及びBに分割される。必要とされる試験条件をシミュレートする組成を有する混合ガスを用意し、チャンバAへ導入する。この混合ガスは、入口を通ってチャンバに入り、出口を通して排出される。必要ならば、乾燥窒素ガスをチャンバ内に循環させることによってチャンバBに不活性環境を提供する。これにより、チャンバBへと通り抜ける任意の反応性ガスを押し出す役目を果たすこともできる。適切な相対湿度プローブが相対湿度をモニタする。
【0132】
[00145]適切な電気的フィードスルーを使用して、抵抗及び1/fノイズスペクトルを測定するための導電性トラックを接続することができる。低ガス透過率試験基板を貫通した水分子又は酸素分子は、カルシウムセンサと反応する。一定のソースメータ及びデジタル信号アナライザにより、それぞれ抵抗及び1/fノイズスペクトルを測定することができる。抵抗及びノイズ特性の変化率を使用して、試験膜の水蒸気又は酸素輸送特性を計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明のセンサの一実施形態の断面図である。
【図2A】ベース基板によって支持されているセンサの一実施形態を示す図である。
【図2B】ベース基板によって支持されているセンサの図2Aと異なる一実施形態を示す図である。
【図2C】ベース基板によって支持されているセンサの図2A及び2Bと異なる一実施形態を示す図である。
【図2D】ベース基板によって支持されているセンサの図2A〜2Cと異なる一実施形態を示す図である。
【図2E】ベース基板によって支持されているセンサの図2A〜2Dと異なる一実施形態を示す図である。
【図2F】ベース基板によって支持されているセンサの図2A〜2Eと異なる一実施形態を示す図である。
【図2G】バリアで被覆した基板上に支持されているセンサを示す図である。
【図3A】ライナ層が組み込まれている本発明のセンサの一実施形態を示す図である。
【図3B】ライナ層が組み込まれている本発明のセンサの図3Aと異なる一実施形態を示す図である。
【図4A】カプセル体が組み込まれているセンサを示す図である。
【図4B】カプセル体が組み込まれているセンサを示す図である。
【図5】ベース基板上に形成され、カプセル体を備えるセンサを示す図である。
【図6】従来のOLEDデバイスと類似のやり方で構成されるセンサを示す図である。
【図7A】OLED封入構造を示す図である。
【図7B】図7Aとは異なるタイプのOLED封入構造を示す図である。
【図8】基板上に形成され、感知素子の表面上に形成されている保護層が組み込まれている封入センサを示す図である。
【図9】測定システムの概略図である。
【図10A】市販の基板を二酸化ケイ素コーティングで被覆した場合の試験で得られた測定値を示す図であり、「カルシウムの抵抗値と時間」のグラフを示す図である。
【図10B】市販の基板を二酸化ケイ素コーティングで被覆した場合の試験で得られた測定値を示す図であり、「カルシウムのコンダクタンスと時間」のグラフを示す図である。
【図10C】市販の基板を二酸化ケイ素コーティングで被覆した場合の試験で得られた測定値を示す図であり、「センサの1/fノイズとセンサの抵抗値」のグラフを示す図である。
【図11A】ポリエチレンテレフタレート(PET)基板の試験において使用したカルシウム感知素子のデジタル画像を示す図であり、異なる時間間隔において10倍の倍率で撮影したカルシウム感知素子の画像を示す図である。
【図11B】ポリエチレンテレフタレート(PET)基板の試験において使用したカルシウム感知素子のデジタル画像を示す図であり、対照構成におけるカルシウム感知素子の画像を示す図である。
【図12A】ガラス基板の試験において使用したカルシウム感知素子のデジタル画像を示す図であり、異なる時間間隔におけるセンサの劣化パターンを示す図である。
【図12B】ガラス基板の試験において使用したカルシウム感知素子のデジタル画像を示す図であり、異なる時間間隔におけるカルシウム感知素子の反射率を示す図である。
【図13】本発明のセンサを用いて透過試験を行うために使用することができるガス透過試験セルを示す図である。
【発明の詳細な説明】
【0001】
[0001]本発明は、試験材料のガス透過率を測定するためのセンサ、センサの作製方法、及びガス透過率測定システムに関する。本発明はまた、試験材料のガス透過率を決定する方法に関する。
【0002】
[0002]近年、エレクトロニクス分野及び生物医学分野における新しい技術の出現により、それに並行した新しい材料及び構造の開発が促進されている。
【0003】
[0003]このような技術の一例は、フレキシブル有機発光デバイス(FOLED)を使用するフレキシブルフラットパネルディスプレイである。各FOLEDは、大面積ディスプレイを可能にする電気的、機械的及び光学的特性を有する材料及び構造を備える。しかしながら、FOLEDのアーキテクチャは、大気中の水蒸気及び酸素との反応による損傷を受けやすい有機電界発光材料及び陰極を備える。したがって、FOLEDディスプレイの最低寿命について指定されている業界標準を実現するために、水及び酸素に対して極度に不透過性である高バリア性基板、シーラント及び封入材料がFOLEDディスプレイには必要とされる。
【0004】
[0004]水及び酸素感応材料を必要とする別の技術は、メモリ記憶の分野、特にハードディスクドライブ業界において見出される。ハードディスクプラッタで使用される材料は、酸素によって劣化することがある金属又は金属酸化物を含む。磁気データのインテグリティを維持するには、プラッタ中のシール及び金属酸化物の劣化を防止するように、パッケージ構造及びパッケージ材料が低いガス透過レベルを提供しなければならない。
【0005】
[0005]ガスバリア特性を提供する材料の使用を必要とする用途の他の例には、食品、薬品及び生物サンプルのパッケージに見出される密封パッケージが含まれる。加えて、シーラント、プラスチック及び複合材料もしばしばガスバリア特性を有することが必要とされる。
【0006】
[0006]つい最近では、非常にガス透過率が低い材料及び構造を必要とする用途が開発されている。これらの材料及び構造には、非常に低いガス透過レベルにおいてガス透過特性を評価することができる高感度の測定装置、特にガスセンサの使用が必要となっている。
【0007】
[0007]あるクラスのセンサは、ターゲットガスとの化学反応を伴わない検出方法を利用する。テキサスインスツルメンツ社に付与された米国特許第6,067,840号は、光学赤外(IR)ガスセンサを開示している。各々がターゲットガス及び基準ガスに向けられた2つのIR線源間の吸収差を使用して、モニタしているガスの濃度を決定する。
【0008】
[0008]MOCON社に付与された米国特許第6,460,405号は、ヘリウムや二酸化炭素など化学的に不活性なトレーサガスに試験片がさらされるガスセンサを開示している。この試験片を通り抜けるトレーサガスの流れを測定するためにトレーサガス検出器が設けられ、その測定値が試験片のガス透過率と相互に関係付けられている。
【0009】
[0009]米国特許第6,567,753号は、複数の流体に対するバリアコーティングのバリア特性を決定するためのセンサを開示している。デュアルレスポンス音波トランスデューサがこのバリアコーティングで被覆され、複数の流体にさらされる。続いて、流体の透過又はコーティングの溶解が、音波及び光学的検出の測定値を用いて測定される。
【0010】
[0010]別のクラスのセンサでは、ターゲットガスと反応する感知素子が利用される。Kumar et al.(Thin Solid Films 417, 2002, 120-126)は、カルシウム膜表面上での腐食の光学測定を利用する低水分透過用センサを開示している。このカルシウム膜は、最初は反射性の高い金属表面である。水蒸気及び酸素が次第にこのカルシウム膜と反応するにつれて、反射性表面は徐々に不透明な膜に変わる。カルシウム膜の透過特性の変化をモニタするために、試験片が一定の間隔で撮影される。画像解析ソフトウェアを用いてカルシウム膜の写真を分析することによって、カルシウム膜の光学特性の変化が封入構造への水蒸気の流量と相互に関係付けられる。このタイプのセンサは、G. Nisato et al., Evaluating High Performance Barrier Films,International Display Workshop, October 2001にも開示されている。
【0011】
[0011]現在利用可能なガスセンサの1つの欠点は、ガス透過率が非常に低い材料を評価するのに必要な十分に高いレベルの感度でガス透過が測定できないことである。たとえば、FOLEDデバイスの寿命について指定されている業界標準は、10,000動作時間よりも長い。この寿命を実現するためには、FOLEDデバイスの封入構造の酸素透過率及び水蒸気透過率が、それぞれ10−5g/m2/day未満及び10−6cc/m2/day未満であるべきである(38℃及び相対湿度95%で)。しかしながら、利用可能な装置の感度限界は、水では約10−3g/m2/dayであり、酸素では約10−3cc/m2/dayである。
【0012】
[0012]現在利用できるガスセンサの別の欠点は、通常約50度の高くない温度に使用温度が制限されていることである。低い温度に制限されると、ガス透過の加速をもたらす条件下で性能試験を行うことができず、その結果、実施するには不経済な長時間の試験となってしまう。
【0013】
[0013]したがって、本発明の一目的は、現在知られているセンサの不利な点を克服することである。本発明のさらなる目的は、高感度を有し、優れた空間分解能及び時間分解能を有し、使用温度が高いが、依然として経済的に作製され使用されるセンサを提供することである。この目的は、独立請求項に指定されている特徴を有するセンサ及びこのセンサのそれぞれの作製方法によって実現される。本発明のこのようなセンサは、試験材料のガス透過率を測定するためのセンサである。このセンサは、水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子であって、感知素子を水及び/又は酸素と接触させたときの前記材料と水又は酸素との反応により、感知素子の電気伝導度の変化が生じる感知素子と、この感知素子に電気的に接続されている2つの電極とを備えるセンサである。
【0014】
[0014]本発明は、ガスセンサの電気特性を、また任意選択でノイズ特性を測定中にモニタすることによって、低ガス透過率材料などの材料及び構造で行われるガス透過測定をはるかに高感度で行うことができるという発見に基づいている。したがって、本発明のガスセンサはまた、水と酸素のいずれか一方、又は水と酸素の両方を感知する電気伝導性の感知素子を備える。加えて、この感知素子は、測定試験中に水及び/又は酸素と徐々に反応するにつれて変化する光学、電気及びノイズ特性を有する電気抵抗器として機能する。この変化により、低ガス透過率高分子基板を通り抜ける水分の透過速度(定常状態条件下で)を、水蒸気とセンサの化学反応の物理的証拠、たとえば光学測定技術によって直接決定することが可能となる。あるいは、1/fノイズスペクトル測定やセンサの抵抗など他の方法を利用して、センサの劣化をモニタすることもできる。これらの測定から、時間に対するカルシウムの厚さの変化率、したがって試験片のガス透過速度を導き出すことができる。
【0015】
[0015]本発明のセンサをガス透過測定で使用すると、いくつかの利点がある。第一に、本センサは、10−8g/m2dayよりも良好な高感度でガス透過速度を測定することができ、より優れた時間分解能並びに低いエラー率を提供する。したがって、このセンサは、低ガス透過率特性を有する高分子基板、バリアコーティング膜又は多層バリアスタックのガス透過特性を評価するのに適している。第二に、本発明は、単一の試験で酸素と水蒸気の複合透過速度の測定を提供する。これは、水蒸気透過速度(WVTR)及び酸素透過速度(OTR)の測定を単一の装置コンソールで行うことができることを意味する。第三に、透過係数、拡散係数、溶解度係数などの輸送係数を1回の試験で同時に決定することができる。
【0016】
[0016]本発明の文脈において、「ターゲットガス」という用語は、試験材料又は試験構造を通り抜けるガスの透過速度を測定するためにその材料又は構造がさらされるガスを指す。この用語には、酸素や水蒸気など個別のガスが含まれ、それらの単一成分又は複数成分との混合物、たとえば窒素、二酸化炭素、水素及び二酸化硫黄との混合物が含まれる。複数成分との混合物の例には空気及び排ガスが含まれる。
【0017】
[0017]「試験材料」、「試験構造」及び「試験片」という用語は、本発明のガスセンサを用いてそのガス透過率特性が試験される材料/構造を指すために同義的に使用される。
【0018】
[0018]この感知素子は、酸素及び/又は水を感知する任意の適切な電気伝導性材料を含むことができる。これは、この材料が水と酸素のいずれか一方だけに感応性が高いものでも、又は水と酸素の両方に感応性が高いものでよいことを意味する。適切な材料には、金属、金属合金、金属酸化物、導電性高分子、並びにそれらの混合物及び組合せが含まれる。
【0019】
[0019]原理的には、水及び酸素と反応することができるすべての金属を、感知素子として又は感知素子内で使用することができる。このような金属には、第1族元素(たとえば、ナトリウム及びカリウム)など反応性の高い金属、第2族元素(マグネシウム、カルシウム、バリウム)など反応性があまり高くない金属、及び鉄、スズ、クロムなどの遷移金属が含まれる。特に適切な金属は、カルシウム及びマグネシウムである。水及び酸素に対して反応性であることとは別に、これらの金属は、ブロック、ストリップ、薄膜など任意の適切な形状及び寸法に容易に加工することもできる。
【0020】
[0020]感知素子内で又は感知素子としての使用が企図される導電性高分子の例には、共役有機高分子、共役金属高分子(無機高分子)及びレドックス高分子が含まれる。有用な導電性高分子の例には、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、並びにポリビニルピリジン、チオフェン−ビピリジン共重合体、ポリピリジン、ポリビピリジン及び有機金属ポリフェニレンが含まれる。
【0021】
[0021]感知素子として又は感知素子内での使用が企図される金属酸化物の例には、VO2、CrO2、MoO2及びLiMn2O4、スズ酸カドミウム(Cd2SnO4)、インジウム酸カドミウム(CdIn2O4)、スズ酸亜鉛(Zn2SnO4及びZnSnO3)、酸化亜鉛インジウム(Zn2In2O5)などの透明導電性酸化物が含まれる。使用される酸化物の結晶構造は特に制限されず、たとえば結晶性、ナノ結晶性又はアモルファスでよい。
【0022】
[0022]上記材料の混合物及び組合せから感知素子を形成することもできる。たとえば、適切な有機高分子と、鉄又はカルシウム粒子などの金属粒子とを含有する溶液から感知素子用組成物を形成することが可能である。
【0023】
[0023]測定試験を行うために、センサをいくつかのやり方で配置することができる。たとえば、センサを試験材料内に埋め込むこともでき、あるいは試験材料の表面に形成する(堆積させる)こともできる。あるいは、封入環境を評価しようとする場合は、センサをその封入環境内に設置することもできる。次いで、試験材料及び付随するセンサを、感知素子に対して反応性のあるターゲットガスを含有する雰囲気にさらす。測定には所定量の感知素子を使用し、感知素子を部分的に又は完全に反応させるのにかかる時間を決定することができる。そうするための1つの可能なやり方は、ある期間にわたって電流の流れの変化を測定し、次いで、感知素子を完全に反応させるのにかかる予測時間を計算することである。別の可能なやり方は、センサを流れる電流の流れの中断をモニタすることである。たとえば、電流の流れが止まると、感知素子が完全に反応したと想定することができる。
【0024】
[0024]原則として、十分な量のターゲットガスが試験材料を通って拡散し、感知素子と反応するのに十分な時間が経過しているのであれば、感知素子はどんな厚さでも動作することができる。しかしながら、低いガス透過レベルを測定する場合には、測定試験時間を妥当な時間内としておくために、感知素子が少量の感知材料を含むことができる。このため、マイクロメートル領域又はナノメートル領域となるよう感知素子の厚さを設計することができる。低ガス透過率材料を測定する目的では、感知材料の厚さは10nmから10ミクロンでよく、好ましくは50nm〜1μm、場合によってより好ましくは120nm〜500nmである。試験サンプルの寸法、形状、タイプ及び要件に応じて、長さや幅など感知素子の他の寸法を変えることができる。
【0025】
[0025]いくつかの設計原理を本感知素子に適用することができる。第一に、感知素子は、好ましくは低い、又は感知材料のバルク特性に十分近い電気特性を有するべきである。第二に、感知素子の最小厚さ(H)、最小長さ(L)、及び最小幅(W)を、測定した電気特性を用いて最適化することができる。この点に関し、感知素子の面積(L×W)が、試験基板の寸法、並びに測定試験を行うための実験設計によって変わることがある。たとえば、封入のために、また導電性トラックのために十分な空間を割り当てる必要がある。1つ又は複数の感知素子を単一の試験基板と共に使用することができることに留意されたい。各感知素子は、試験される品目上の異なる箇所で透過率を測定するために、正方形、長方形、又は複数の縞の形状、あるいは他の任意の所望形状とすることができる。さらに、感知素子の最小寸法(面積)が、センサの電気特性などの要因に影響されることもあり、最大寸法(面積)も、基板寸法や実験設計などの要因に影響されることがある。
【0026】
[0026]感知素子用の材料としてカルシウムを使用する特定の一実施形態では、このカルシウム感知素子の最適寸法が、長さ約1cm、幅約2cm、厚さ約150nmである。この感知素子で形成されたセンサの測定抵抗値は、約0.37Ωcmであり、したがってバルクカルシウム感知素子の3.4μΩcmという抵抗値に近い。この実施形態で電極として使用される2つの金属トラックの寸法は、約2cm×2cmである。この実施形態ではカバーガラス(約3.5cm×約3.5cm)が封入に使用され、リムシーリング(接着剤)の幅は約2mmである。
【0027】
[0027]本発明では、感知素子を電圧源と結合する手段を提供するために、感知素子が電極(電気コネクタ)を備える。電極は、従来の絶縁銅配線、金属プレート又は導電性薄膜トラックなど、任意の適切な形状、寸法又は形態をとることができる。これらの電極は、いかなるタイプの電気伝導性材料も含むことができ、一般に使用されている材料は、金属、金属酸化物又はそれらの混合物である。ここで使用される材料は、試験中にセンサの精度が悪影響を受けないように、試験条件下で水や酸素などターゲットガスに含まれている反応性ガスに対して好ましくは非反応性である。とは言え、このようなガスとの反応速度が感知素子の反応性ガスとの反応速度よりもはるかに遅い場合には、これらの反応性ガスと反応する金属を使用することができる。このような金属を使用する場合、このような使用の前にこれらの金属に保護材料を提供することも可能である。これは、たとえば、金属を不活性保護コーティングで表面処理することにより実現することができる。これにより、確実に電極の電気抵抗値が試験中に影響を受けないようになる。
【0028】
[0028]低ガス透過率材料を試験するためにこのセンサを使用する場合、電極が、このようなセンサの作製に使用される堆積装置で使用するのに適している材料を含むことが好ましい。適切な材料には、金属、金属合金及び金属酸化物が含まれる。適切な金属の例には、銀、銅、金、白金、チタン、ニッケル、アルミニウム、鉛、スズ及びそれらの合金が含まれる。アルミニウム合金、あるいは鉄/ニッケル合金、鉄/クロム合金、鉄/コバルト合金などの合金を本発明で使用することもできる。加えて、酸化インジウムスズ、酸化アルミニウム亜鉛、酸化インジウム亜鉛など良好な電気伝導性を有する酸化物も同様に使用することができる。これらの材料のいかなる混合物又は組合せも使用することができる。
【0029】
[0029]2つの電極と感知素子との間の電気的接続は、任意の適切な接続手段を用いて形成することができる。たとえば、導電性テープを用いてこれらの電極をセンサの表面に固着させ、あるいは低抵抗のはんだ金属、たとえばスズを用いてこれらの電極を感知素子にはんだづけすることが可能である。あるいは、導電性接着パッドを感知素子上に適用することもでき、その上で電極を接続することができる。
【0030】
[0030]一実施形態では、このセンサは、感知素子を支持するベース基板を備える。ベース基板を用いると、センサを予め作製し、パッケージし、取り扱い、輸送することが容易になる。たとえば、このベース基板は、適当に大きい表面積を提供することができ、その上に電極との補助的な電気的接続、たとえば接着パッドを形成することができる。ベース基板は、試験片に取り付け可能なPVC板、PETシート、接着膜など、様々な形をとることができる。
【0031】
[0031]原理的には、ターゲットガス中に存在するいかなる反応性ガスに対しても不活性であり、試験を行うことが可能となる程度まで十分に透過性であるいかなる材料も、ベース基板として使用することができる。本発明の文脈において、不活性材料は、ターゲットガス中に存在する水蒸気又は酸素に対して反応性がない任意の材料を指す。この材料は、任意の適切なガス透過率を有することができ、たとえば多孔質材料又は低透過率材料である。センサを支持するために使用することができ、広範囲のガスバリア特性を示すことができる適切な1クラスの材料は、高分子である。
【0032】
[0032]本発明におけるベース基板での使用が企図される高分子には、有機高分子も無機高分子も含まれる。ベース基板を形成するのに適している有機高分子の例には、セロファン、ポリ(1−トリメチルシリル−1−プロピン、ポリ(4−メチル−2−ペンチン)、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリジメチルフェニレンオキシドなど、高透過率高分子も低透過率高分子も含まれる。スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ナイロン、ニトロセルロース、セルロース、アセテートなどのマイクロポーラス及びマクロポーラス高分子を使用することもできる。本発明において適切である無機高分子の例には、シリカ(ガラス)、ナノ粘土、シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ビスシクロペンタジエニル鉄、ポリホスファゼン及びその誘導体が含まれる。ベース基板は、有機及び/又は無機高分子の混合物又は組合せを含むこともできる。これらの高分子は、透明でも、半透明でも、又は完全に不透明でもよい。感知素子に関する光学測定を、以下に説明する電気測定と併せて行おうとする場合は、感知素子を観察又は撮影する際に助けとなる適切なレベルの反射率も提供するベース基板材料を使用することが好ましい。
【0033】
[0033]ベース基板はガス流に対してある程度の抵抗を有することがあり、したがってガス透過読取り値に影響を与えるはずなので、ベース基板の影響を考慮に入れて最終的な測定値を適切に調整することができるように、好ましくはベース基板のガス透過特性を使用前に特徴付けるべきである。ベース基板として低ガス透過率材料を使用する場合、ターゲットガスがベース基板を透過するまでにより長い時間がかかり、したがってより長い試験時間が必要となることがある。あるいは、ベース基板として透過性の高い材料、たとえばセロファンを使用する場合、ガス流に対して比較的小さい抵抗となる。
【0034】
[0034]さらなる一実施形態では、ベース基板はさらにバリア層を備える。この文脈において、バリア層は、システム又は物品、たとえば電子構成部品又は食品を環境から分離するために使用することができるバリア高分子、バリア金属又はバリアセラミックスなど、1つ又は複数の材料の層から形成されることが当技術分野で一般に知られている(米国特許第6,567,753−第1欄の17〜21行目又は請求項5を参照のこと)。ベース基板が(好ましくはターゲットガスに対して低透過率を有する)このようなバリア層を備える場合、ベース基板とバリア層の各々がセンサ内で異なるタイプの機能を提供する。たとえば、ベース基板自体は、ターゲットガスに対して大きな抵抗を提供することなく支持構造としてのみ機能することができ、バリア層が所望のレベルのガス抵抗を提供する。バリア層及びベース基板用に選択されるそれぞれの材料は、各々本発明のセンサの使用に必要な対応する適切なレベルのガス透過率を有するべきである。
【0035】
[0035]この実施形態ではバリア層をいくつかのやり方で配置する又は位置決めすることができることが企図される。一例では、バリア層が感知素子とベース基板の間に単一層として、あるいは積層シート又は積層コーティングとして存在することができる。あるいは、バリア層はベース基板内に位置する層でもよい。バリア層がベース基板の底部に、すなわち、感知素子とは正反対に位置することができることもさらに企図される。通常、バリア層が存在する場合、バリア層は、試験すべき材料、すなわちターゲットガスに対する透過率を測定すべき材料からなり、又はその材料を含む。
【0036】
[0036]別の実施形態では、ベース基板がバリア層のみからなり、これは感知素子が直接バリア層の上だけに形成されることを意味する。この実施形態は、本発明のセンサを用いてバリア層の透過特性を試験する手段を提供する。このようにして、本実施形態は、たとえばバリア層を通り抜ける透過プロセスをシミュレートするためのキットで使用される既製ユニットとして働くこともできる。
【0037】
[0037]バリア層を形成するための適切な材料は、無機材料又は有機材料を含むことができる。特に適切な無機材料には、金属(たとえばアルミニウム、鉄、スズ)、金属酸化物(たとえばAl2O3、MgO、TiO2)、セラミック酸化物、無機高分子、有機高分子、並びにそれらの混合物及び組合せが含まれる。それぞれの無機高分子の例には、有機−無機高分子、金属キレート配位高分子、及び完全に窒素をベースとする無機高分子が含まれる。具体例は、たとえばガラス、シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ビスシクロペンタジエニル鉄、並びにポリジクロロホスファゼン及びその誘導体が含まれる。適切な有機材料には、アクリルをベースとする高分子、ポリイミド、エポキシ樹脂、及び架橋ポリエチレンなどのポリアルキレン誘導体、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホンなどの有機高分子が含まれる。適切なレベルの透過率及び安定度を有する特に適切な有機高分子には、PET、ポリカーボネート及びポリエーテルスルホンが含まれる。バリア層は、単一層膜でも多層スタックでもよい。無機材料(たとえば金属酸化物)及び有機材料の独立した層が存在する多層膜の場合、無機層間の接触を最大にするために、有機層を無機金属酸化物膜の間に挟まれるように配置することができる。多層バリア層/スタックの具体例には、たとえば、ポリカーボネート−酸化アルミニウム、PET−酸化マグネシウム、ガラス−酸化スズ、酸化アルミニウム−ポリアクリレート−酸化アルミニウム、及び酸化アルミニウム−シリコーン−酸化アルミニウムスタックが含まれる。したがって、ベース基板及びバリア層中に同じ材料が存在することがあることに留意されたい。本発明の文脈において、バリア層は通常、本発明のセンサを用いてその透過特性を試験すべき構造である。ベース基板とバリア層の両方に同じ材料が存在する可能な構造の例は、次の通りである。透過率が既知のベース基板を使用するセンサが、たとえばセンサの貯蔵寿命を向上させるために、そのベース基板に組み込まれた、低ガス透過率高分子、たとえばポリカーボネートの薄い層を有する。続いて、このようなセンサを試験片の透過特性を測定するために使用する場合、このセンサを試験片の表面に直接取り付ける。たとえば、ベース基板中に存在するのと同じ低ガス透過率高分子、たとえばポリカーボネートを含むことができるバリア層、たとえば複合液晶ディスプレイ(LCD)バリアスタック上で試験を行うことができる。このような場合、ベース基板とバリア層の両方が共通の材料としてポリカーボネートを有することになる。別の例では、ベース基板はポリイミド膜を備えることができることができ、一方バリア層は、一般に層間ハイブリッド又は剥離ハイブリッド、あるいはナノコンポジットとして知られているポリイミド膜含有シリカ粒子/ナノ粘土を含むことができる。ナノ粘土の典型例には、モンモリロナイトなど、スメクタイト群粘土鉱物の任意のメンバーが含まれる。
【0038】
[0038]本発明のセンサの電極は、銅やスズなどの金属から作製される配線又はストリップとして作製することができ、各電極の一方の端部は感知素子に取り付けられており、もう一方の端部は自由に移動可能である。しかしながら、これらの電極が被膜として設計される場合、たとえ電極を自由に移動可能な状態のままにしておくことがが可能であったとしても、そうしないことが望ましく、電極をベース基板又は試験片(ここではバリア層が試験片である)上に直接固定することが望ましい。被膜層は脆弱なことがあり、また容易に損傷を受けることがあるので、この層を固定することは機械的損傷の可能性を低減するのに役立つ。したがって、本発明の一実施形態は、電極がベース基板の表面に形成されるセンサを対象とする。
【0039】
[0039]電極をベース基板(の表面)上に形成する場合、本センサは様々な構成をとることができる。一実施形態では、電極を互いに離隔してトレンチを形成する。この文脈において、このトレンチは通常、2つの電極間にある部分によって形成され、トレンチの縁部は各電極の縁部によって画定され、トレンチの底部はベース基板である。センサの構成要素は、いくつかの可能なやり方で配置することができる。たとえば、感知素子が2つの電極間に電気的接続を形成するのであれば、トレンチを覆って、トレンチの下に、又はトレンチの側面に沿って感知素子を設置することができる。
【0040】
[0040]一実施形態では、感知素子はトレンチ内に位置する。まず電極を形成してトレンチの構造を画定することができる。続いて、感知素子をトレンチ内に堆積させるとき、それを所定のトレンチ寸法と一致させることが可能となり、それにより感知素子の形状及び寸法を設定することが可能となる。このように、トレンチは感知素子用のモールド又は鋳型のようなものである。
【0041】
[0041]この点に関連して、トレンチを、感知素子の所要寸法に応じて部分的に又は完全に感知素子によって充てんすることができる。あるいは、隣り合う電極の縁部と部分的に重なるように、感知素子をトレンチの外側へ延ばすこともできる。感知素子と電極との間に適切な電気的接続が形成されるのであれば、トレンチの断面は通常、長方形でも、正方形でも又は他の任意の適切な形状でもよい。たとえば、一実施形態では、トレンチの底部が上端よりも狭いトレンチを形成することが必要である場合、トレンチに向かって先細りになる端部を有する電極を形成することができる。続いて感知素子をトレンチ内に堆積させると、図2Cに示す構成を有するセンサを得ることができる。あるいは、別の実施形態では、上面よりも幅の広い底部を有する感知素子を形成することが望ましい場合、ベース基板上にまず感知素子を堆積させることができ、次いで感知素子の縁部と部分的に重なるように電極を堆積させる(図2Dを参照のこと)。いずれの実施形態においても、感知素子と電極との間の接触面が傾斜するように、すなわち、電極の表面に対して90°よりも大きい又は小さい角度を有するようにセンサを設計する。このような設計により、感知素子と電極との間の電気接触が改善され、したがってセンサ/電極界面での電気抵抗が低下し、電気伝導の向上がもたらされる。
【0042】
[0042]別の実施形態では、センサは、感知素子を取り囲むカプセル体を含む。カプセル体は、ターゲットガスが試験片を透過することしかできないように、センサの周りを密封することができる。さらにカプセル体は、感知素子が試験でそれを使用する前に周囲の水蒸気及び酸素と接触することを防ぐはずである。加えて、このカプセル体は、感知素子に損傷を与えるかもしれないどんな物理的衝撃も和らげる保護カバーとしても作用する。
【0043】
[0043]カプセル化材を意味する、封入材料を形成するための材料は、好ましくはガス透過率がかなり低い任意のタイプの材料を含むことができる。炭化水素プラスチック、熱可塑性プラスチック、ゴム及び無機高分子を含めた、多くのタイプの高分子をこの目的に使用することができる。適切な有機高分子の例には、紫外線(UV)硬化性エポキシ、ポリスルフィド、シリコーン、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリアルキレン、ポリイミド、ポリベンゾオキサゾール及びポリアクリレートが含まれる。センサの形状と完全に一致させることが可能であるカプセル体を提供する必要がある場合、好ましくは適切な材料が、後に熱又はUV放射によって硬化させ硬くすることができる成形可能なゲル又は粘性流体として利用可能である。
【0044】
[0044]このカプセル体は、様々な構成をとることができる。企図される1つの構成は、センサの露出表面の周りに硬いカバーとしてこのカプセル体を提供することである。このカプセル体は感知素子と直接接触していてもよく、感知素子と直接接触せずに感知素子を囲むこともできる。前者の場合、本センサを使用して発光ダイオード(LED)の封入構造をシミュレートすることができるように、感知素子がカプセル体内に完全に取り囲まれる。後者の場合、カプセル体は感知素子の周りに中空空間を提供する。この中空空間は、窒素、あるいはアルゴンなどの希ガスの1つなどの不活性ガスで充てんすることができる。
【0045】
[0045]別の実施形態では、センサはさらにカバー基板を備える。カプセル体が感知素子を囲む側壁(横壁)を形成し、これら側壁(横壁)と接触するようにカバー基板が配置される。より詳細には、この実施形態では、感知素子の周囲にあるベース基板/試験片上にこのカプセル体を適用し、それにより感知素子を取り囲み、一方カバー基板を側壁(横壁)上にふたのように設置する。このような配置は、感知素子を収容する封入構造を構成する。さらに、この封入構造内に不活性ガスを捕捉することができるように、活性ガス環境中で側壁上にカバー基板を設置することもできる。この点に関連して、使用されるカプセル化材は、UV(紫外線)硬化性エポキシでも他の任意の適切なシーラントでもよい。この実施形態は、有機発光デバイス(OLED)及びFOLEDに見られるような多層有機/無機薄膜及び封入構造のガス透過率をシミュレートし、したがって評価する手段を提供する。このガス透過率は、封入構造内の酸素又は水分感知デバイスの寿命を見積もることを可能にする。本質的に、センサはこの封入構造と類似の構造である。たとえば、環境条件下でOLEDの封入構造におけるガス透過のシミュレーションを行うために、発光デバイスを本発明の感知素子で置き換えた同じOLEDデバイスを作製することができる(図7A及び7Bを参照のこと)。
【0046】
[0046]一般に、カバー基板を形成するために使用される材料は、センサを良好に耐密密封するために、好ましくは低ガス透過率を有するべきである。ベース基板及びカバー基板は、高分子、バリアで被覆した高分子、ガラス、アルミ箔など任意の材料を含むことができる。ベース基板又はカバー基板を構成する材料の例にはガラス、低ガス透過率高分子及び積層金属箔がある。いくつかの実施形態では、コストの面で、ガラス、アルミニウム及び銅が好ましい。
【0047】
[0047]上記からわかるように、本センサは、高分子基板、カプセル化材、シーラント、接着剤、並びに封入構造全体のガス透過率を含めて多種多様の用途におけるガス透過率の決定に使用されるのに十分なほど用途が広い。
【0048】
[0048]一実施形態では、センサが感知素子の少なくとも一部分を覆う保護層をさらに備える。この保護層の目的は、感知素子の汚染又は早期劣化を防ぐことである。これは、感知素子を収容する封入構造の欠陥のために生じることがある。感知素子の露出表面を保護層で覆うことによって、反応性ガスが感知素子と接触する機会を減らすことができる。感知素子の保護を改善することが望まれる場合には、保護層が電気絶縁材料を含むこともできる。この目的で、保護層を、任意の有機又は無機材料を用いて形成することができる。適切な材料には、金属酸化物、金属フッ化物、有機高分子及びそれらの混合物が含まれる。特に適切な材料の例には、酸化アルミニウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの金属酸化物、並びにフッ化ナトリウム、フッ化リチウム、フッ化マグネシウムなどの金属フッ化物が含まれるが、それだけには限らない。上記の材料に加えて、他の適切な材料には金属及び金属合金が含まれる。特に適切な金属及び合金には、銅、銀、白金、金及びそれらの混合物が含まれるが、それだけには限らない。保護層が金属又は合金を含む場合、この金属又は合金は好ましくは感知素子と直接接触するべきではない。こうすると、センサのバルク電気特性が、センサに接続されるさらなる電気的構成要素に影響されないことを保証するのに役立ち、したがってセンサのこの実施形態のバルク電気特性より正確な測定値を得ることが可能となる。よって、金属や合金などの電気伝導性材料を保護層で使用する場合には、たとえば上記金属酸化物及び金属フッ化物のうちのいずれか1つを含む電気絶縁層を導電層と感知素子の間に配置することが有利であることがある。したがって、「保護層」という用語は、単一層だけでなく2層以上、すなわち多層構成を示すこともある。
【0049】
[0049]本発明の別の実施形態では、センサとベース基板との間に挿入された(有機及び/又は無機高分子を含む又はからなる)ライナ層をさらに備える。無機コーティングや無機層(たとえば、金属酸化物コーティング)などの材料は、アモルファスゾーン又はピンホール、クラックもしくは粒界の形の欠陥を有する又は生じることがある。このような欠陥が、高分子基板を覆っているバリアコーティングの表面に存在すると、サンプルの表面上の欠陥がない他の場所でよりも速い速度で、透過ガスが欠陥を通って逃げることができる。したがって、感知素子のこのような欠陥に隣接する部分は、より速い速度で反応することになる。感知素子が不均一に劣化すると、感知素子内に材料が未反応の区域が残り、その結果不正確な読取り値をもたらすことがある。ライナ層は通常、緩衝領域として振る舞って、透過ガスを吸い取り(染み込ませ)、その後にガスが均一に脱着される。透過ガスが均一に脱着されると、感知素子の均一な劣化がもたらされ、それによりセンサの電気伝導度の減少を、感知素子の厚さの減少とより正確に相互に関係付けることが可能となる。
【0050】
[0050]試験材料が、単純な有機高分子もしくは欠陥のない金属を含み又はそれからなり、あるいは多層バリア層を使用する場合には有機最上層を有する低ガス透過率高分子を含み又はそれからなる場合には、ライナ層は不要であることに留意されたい。一般に、表面欠陥がない試験材料は、ライナ層の使用を必要としない。しかしながら、センサの性能を向上させることが望まれる場合には、ライナ層を適用することもできる。
【0051】
[0051]ライナ層は、10nmから数ミクロンまで又はそれ以上の厚さを有する層として堆積させることができ、比較的小さいガスバリア特性を示す任意の有機材料を含むことができる。適切な材料の例には、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドンなどの有機高分子、並びにそれらの共重合体が含まれる。他の適切な高分子には、パリレン型高分子、及びポリアクリレート(たとえば、ポリメチルメタクリレート)、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミドなどのアクリル高分子が含まれる。セロファン膜も、有機ライナ層中で又は有機ライナ層としての使用に適している。さらに、ライナ層は、シリコーン型高分子、ポリシラン、ポリゲルマン、ポリスタナン、ポリホスファゼンなどの無機高分子の組合せを含むこともできる。これに関連して、ベース基板(層)及びバリア層用として先に指定した材料の一部は、ライナ層にも共通であり、これはベース基板、バリア層及び/又はライナ層に同じ材料を選択することが可能であることを意味することに留意されたい。たとえば、ベース基板が特定の高分子を含む場合に、ライナ層が同じ高分子を含むこともできる。別の例では、ベース基板が高分子である場合、ナノ粘土又はナノ粒子を含む酸化ケイ素又は他の酸化物などの無機材料を含む複合物である場合、バリア層も同じ高分子又は複合材料を含むことができる。
【0052】
[0052]他の態様では、本発明は、上述したような試験材料のガス透過率を測定するためのセンサを作製する方法に関する。前記方法は、2つの電極を設けること、及び水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子を前記2つの電極に接続することを含む。
【0053】
[0053]感知素子も電極も共に、直接組み立ててセンサを形成することができる特定の形の既製品、たとえばウエハ、ストリップ又は乾燥パッドとして得ることができる。あるいは、感知を被膜堆積法、たとえば熱蒸着、スパッタリング又は任意の表面技術により試験片の表面上に被膜として形成しようとする場合には、被膜堆積装置での使用に適した形で感知素子を作製することができ、次いで所望の形に成形し型成形してセンサを形成することができる。
【0054】
[0054]本方法を実施する目的で、センサを作製するためにいくつかのやり方で電極を設けることができる。たとえば、まず電極を一対のホルダにつるし、次いで感知素子をこれらの電極にはんだ付けすることが可能である。あるいは、一実施形態では、感知素子を支持体上に、たとえばベース基板の表面上に固定し、その後電極を感知素子にはんだ付けする。機能的電気接続を形成するために感知素子と電極とをはんだ付けすることが必ずしも必要とは限らないことが当業者には理解されるであろう。感知素子を直接電極上に形成し、又はその逆にし、それにかかる重量によってこの配置を固定するだけで十分で、はんだ付け、導電性接着剤又は他の接続手段によって接続する必要はないこともある。しかしながら、用途並びに利用する電極及びセンサのタイプによっては、任意の適切なタイプの接続手段を使用することができる。
【0055】
[0055]本発明の別の実施形態では、(試験すべき材料でもよい)ベース基板の表面上に電極を形成する。電極が電気配線である場合、これらの電極をまず、接触領域が露出した基板上に固定し、それにより感知素子の位置に対応するギャップを電極間に残し、次いでこのギャップに電極と接触する感知素子を形成することができる。電極を薄膜又は厚膜として形成しようとする場合には、真空気相成長法(VVD)、物理気相成長法(PVD)、化学気相成長法(CVD)、熱蒸着、スパッタリング、他の任意の表面堆積技術など、従来の被膜堆積技術を使用することができる。次いで、電極を形成するために説明したような適切なマスク、従来のリソグラフィ又はエッチング技術、任意の熱蒸着技術を用いて、電極間に形成されたギャップに感知素子用の材料を蒸着させる。
【0056】
[0056]本方法は、任意の適切な一連のステップに従って実施することができる。たとえば、感知素子を堆積させる前に、まず試験材料上に電極を形成することができる。あるいは、接続電極を形成する前に、まず試験材料上に感知素子を形成することも可能である。
【0057】
[0057]高レベルの感度(たとえば、10−3g/m2/dayより低い)を必要とする測定を、本発明のセンサで行おうとする場合、低ガス透過率材料の試験は、理想的には、表面上に見られる酸素及び水と反応性のある物質やマクロスケールの吸着粒子などの汚染物質が実質上ない試験材料及びセンサ構成要素で行うべきである。このため、センサ構成要素並びに試験材料を洗浄して、マクロスケールの吸着粒子を含めた、作製中又は堆積プロセスを行う際に取り込まれることがある汚染物質も取り除くことが(必ずしも必要ではないが)望ましい。レーザ洗浄、物理的及び化学的プラズマプロセス、UV放射、シリコンフラックスなど、半導体産業で一般に使用される従来の表面洗浄技術のいかなる組合せも使用することができる。
【0058】
[0058]本発明のセンサを作製する方法の一実施形態では、このような汚染物質を取り除くために、試験材料の表面に表面処理手順が施される。好ましい表面処理手順は、試験材料又は基板、及びその上に堆積された電極をアルコールですすぐこと、不活性ガスを用いて送風乾燥すること、及び真空脱気することを含む。使用することができる適切なアルコールには、第二級、第三級及び枝分かれアルコール、たとえばイソプロピルアルコール又はイソブチルアルコールが含まれる。実際には、アセトン及び/又はメタノールなどの短鎖第一級アルコールなどの化学薬品、又は基板中の任意の高分子に対する有機溶媒として作用することができる任意の他の化学薬品を用いた洗浄は、本発明のセンサを作製する方法におけるいくつかの実施形態では適当ではないかもしれないことが当業者には理解されるであろう。したがって、このような化学薬品に対して耐性のない高分子がベース基板及び/又はライナ層中に存在する場合、これらの化学薬品を洗浄手順において使用することはできない。とは言え、ベース基板中に存在するすべての高分子又は他の材料がこれらの化学薬品に対して耐性がある場合には、それらの化学薬品を洗浄に使用することができる。
【0059】
[0059]上記の表面処理手順において、センサをアルコールですすいだ後、高圧ガスを用いてセンサを送風乾燥して、すすぎに用いた痕跡量のアルコールを取り除く。続いて、表面に確実に吸着水分又は吸着酸素がないようにするために、センサを真空オーブン内に設置する。センサに有機高分子が使用されている場合、真空脱気を行うことができる温度は、使用される有機高分子及びそのそれぞれのガラス転移温度によって変わることがある。一般に、真空脱気を行うのに適した温度は、ベース基板中に存在する高分子のガラス転移温度(Tg)より低い。たとえば、従来のLCDバリアスタックを使用する場合、30℃〜100℃、好ましくは50℃〜85℃の温度で、1〜80時間、好ましくは6〜60時間減圧下で真空脱気を行うことができる。
【0060】
[0060]さらなる実施形態では、真空脱気の後、センサが形成されている表面をアルゴンガスプラズマで処理する。感知素子を形成する前に、微量の表面汚染物質を取り除くため、RFアルゴンプラズマを使用してバリア膜の表面に低エネルギーイオンを衝突させることができる。表面状態に応じて、30W〜2kWのプラズマ出力、20sccm〜100sccmのアルゴンガス流量、10秒〜2時間の継続時間でプラズマ処理を行うことができる。たとえば、酸化インジウムスズ(ITO)をバリア層として使用する場合、適切なプラズマ処理は、200WのRF出力、50Vの基板バイアス、70sccmのアルゴンガス及び5〜8分の処理継続時間を含む。
【0061】
[0061]感知素子の望ましくない劣化の可能性を低減させるために、感知素子の堆積を行った後、その上に保護層、好ましくは絶縁保護層を適用することによって、感知素子の露出表面を水蒸気又は酸素への露出から保護することができる。この絶縁層は、従来のプロセス、たとえばPVD又はCVDによって堆積させた薄膜など、任意のタイプの有機又は無機層を含むことができる。フッ化リチウムやフッ化マグネシウムなどの透明な膜が、この目的には適切である。
【0062】
[0062]プラズマ処理プロセスを行った後、試験基板が無機(たとえば、金属又は金属酸化物)層を終端層又は最上層として含む場合には、ライナ層又はバッファ層を形成することができる。このライナ層は、スピンコーティング、真空蒸着又は他の任意の従来の表面堆積プロセスによって、薄い層として堆積させることができる。
【0063】
[0063]本方法の別の実施形態は、さらに感知素子を封入することを含む。感知素子を封入するための従来の封入技術を使用することができ、グローブボックスなどの不活性環境内で実施することができる。たとえば、モールドのキャビティに感知素子を設置すること、その後そのキャビティに熱硬化性材料を注入することを含むトランスファ成形を、センサを形成するために実施することができる。この熱硬化性樹脂は、感知素子が完全に覆われるまで感知素子の上を流れることができ、その後、硬くなって(harden)保護カバーとなるように硬化させる(cure)。センサが基板を含む場合、感知素子及びその基板の少なくとも一部分をモールドキャビティ内に設置することができる。熱硬化性材料を、基板の片面上で感知素子全体の上を流れさせ、その後硬化させる(set)ことができる。紫外線(UV)硬化性シーラント、たとえばエポキシをこの目的に使用することもできる。
【0064】
[0064]上記封入手順の1つの変形形態は、基板のリムにシーラントを塗布すること、及びそれに続いて感知素子をカバー基板、たとえばガラスカバーで密封することを含む。このカバー基板は、性能試験の実施中に感知素子を見えるようにするために透明でよい。しかしながら、測定試験中に感知素子が変質するときに感知素子を見る又は感知素子の写真を撮る必要がない場合には、不透明なカバーを使用することもできる。試験チャンバ内の汚染物質のない環境を維持するための追加の措置として、たとえば、カバー基板をアセトン及び水中ですすぐことによって、カバー基板を使用前に洗浄することもできる。
【0065】
[0065]さらなる態様においては、本発明は、試験材料のガス透過率を測定するためのシステムも対象としている。前記システムは、本発明のセンサを備える。このシステムは、試験チャンバ、定電流源、デジタル信号アナライザ、及び抵抗を測定するためのメータを備えることもできる。
【0066】
[0066]より詳細には、試験サンプルと、それに付随するセンサを、特定の環境をシミュレートするために湿度、圧力及び温度を任意の所望のレベルに設定することができる適切なチャンバに設置することができる。湿度チャンバをこの試験に使用する場合、試験材料を通り抜ける他のガス、たとえば酸素の透過を、試験中にこれらのガスをチャンバに導入することによって試験することもできる。センサの電極は定電流源メータに接続され、このメータは、一定の間隔でメータから送信されるデータを記録するコンピュータとインターフェースさせることができる。本システムでは、任意の適切な定電流源メータを使用することができる。例には、Keithley社(米国オハイオ州)、Bridge Technology社(米国アリゾナ州)又はGlen Spectra社(英国ミドルセックス)から入手可能なものがある。センサの抵抗を時間の関数としてプロットできるように、データプロットソフトウェアを使用することもできる。
【0067】
[0067]このシステムは、試験を実施する際にセンサの1/fノイズを評価するためのダイナミックスペクトルアナライザをさらに含む。使用することができる適切なスペクトル信号アナライザには、Agilent社(米国カリフォルニア州)のHP35670A、HP3561A又はHP35665A、及びStanford Research社(米国カリフォルニア州)のSR785又はSR780が含まれる。ノイズ信号のスペクトル密度を評価するための高速フーリエ変換(FET)ルーチンを提供するアナライザを選択することも望ましい。任意選択で、Stanford Research社のSR570低ノイズ増幅器などの低ノイズ増幅器を使用して、信号アナライザで処理される前にノイズ信号を増幅することもできる。
【0068】
[0068]この測定システムは、湿度チャンバだけでなく、異なる条件下で水蒸気以外の他のガスに対して試験材料を試験することができる他の適切なタイプの試験チャンバも組み込むことができる。適切なチャンバの例には、加圧ガスチャンバ及び高圧酸素チャンバが含まれる。ガス透過測定を行うことができる試験チャンバの好ましい構成(図13参照)は、試験片(基板又は被膜)によって2つの区域に分割された中空の中央部を備えることができる。一方の区域には、所定の圧力及び温度で試験ガスが提供され、試験片の反対側には、存在する試験ガスを排出するためのスイープガスとして不活性ガスが同じ又は異なる圧力で提供される。試験片をガスチャンバに装着する前に試験片上にセンサを作製し、ガスチャンバの側壁に取り付ける。
【0069】
[0069]本発明の別の態様は、ガス透過率を決定する方法を対象としている。この方法は、本発明のセンサの感知素子を測定試験中に水及び/又は酸素と接触させること、センサの電気伝導度の変化をある期間にわたって測定すること、及びその測定値に基づいて試験材料のガス透過率を計算することを含む。
【0070】
[0070]ガス透過率の計算は、感知素子がターゲットガスと反応する速度に基づいて行われる。この反応速度を計算するために通常確定される初期値は、感知素子の初期量である。このため、有利には、指定量の材料を感知素子の作製に使用することができる。あるいは、感知素子を所定の寸法(長さ×幅×高さ)を有するように設計することもでき、この寸法から次式(I)を用いて感知素子の量を計算することができる。
反応した感知素子の量(mol)=(体積×密度)/Ar
ここで、変数「体積」は感知素子の体積を指し、「密度」は感知素子の密度を指し、「Ar」は感知素子の相対原子質量を指す。センサで使用される感知素子の(モル)量に、水、酸素又は他の任意のガスの反応の化学量論比の値を乗じることによって、感知素子と反応するガスの量を得ることができる。この量は、試験片又は試験構造を透過するガスの量と等しいと見なされる。
【0071】
[0071]センサが電気伝導を部分的に又は完全に中止する、すなわち、測定された電気伝導度=0Mhoとなるのにかかる時間も通常必要とされ、ソースメータで決定することができる。ガス透過速度は次式(II)から計算することができる。
ガス透過速度=単位表面積当たりの透過水量(g)×(24hr/時間)
ここで、変数「時間」は、センサが導電を中止するのにかかる時間である。この点に関連して、特定の量/構成の感知素子を完全に消費する/反応させるのに必要な時間を決定することによってセンサを較正することが有用であることがあることに留意されたい。このような較正を行うと、寸法及び特性が同じである感知素子を有するセンサを後で使用する際に利用できる基準点が得られる。このような後の使用では、較正されたセンサが、その後感知素子の部分的な反応しか必要としないことがある。
【0072】
[0072]感知素子の反応量に基づいてガス透過を計算する代わりに、たとえば感知素子の電気抵抗又は電気伝導度など他の変数に基づいてガス透過を計算することも可能である。一実施形態では、センサの1/fノイズの測定を行ってガス透過率を決定する。本発明の文脈における1/fノイズについての簡単な説明は次の通りである。抵抗器を流れる電流、抵抗器の抵抗、抵抗器にかかる電圧などの信号は、ランダムなゆらぎを示すことが知られている。信号のノイズと称されるこれらのゆらぎは、信号に特徴的なものである。周波数fの関数としてのノイズP(f)のパワースペクトルは通常、方程式P(f)=1/fβに従った挙動を示す。β=1又はβが1に近い場合、示されるノイズのタイプは通常単純に1/fノイズ(又はピンクノイズ)と称され、このノイズは自然界に見出されるプロセス(たとえば、1/fノイズは任意の分子運動又は電子運動において見られる)で非常に頻繁に発生する。β=0の場合、このノイズは通常ホワイトノイズと呼ばれる。β=2の場合、このノイズはブラウンノイズと呼ばれる。1/fノイズ、ホワイトノイズ、ブラウンノイズ、他のタイプのノイズなど、すべてのノイズ形式のパワースペクトルP(f)をすべてダイナミックスペクトルアナライザで測定することができる。電気抵抗など、測定試験中に変化する測定可能な別の変数の関数として信号の1/fノイズを決定する際には、以下の計算方法を利用することができる。まず第一に、ある期間にわたる平均値に対する信号のゆらぎを、ゆらぎデータとして記録する。この平均値は、たとえばその期間にわたる信号の平均値でよい。続いて、このゆらぎデータを、時間領域から周波数領域にフーリエ変換する。最後に、ゆらぎの確率(信号のスペクトル密度としても知られている)を、電気抵抗など上記の別の変数の関数としてプロットする。このようなプロットは通常、スペクトル密度の変化がこの変数の変化に比例することを示す。このようにして、1/fノイズの測定値を変数の変化と直接相互に関係付けることができる。
【0073】
[0073]この実施形態は、1/fノイズの変化(dN)とセンサの抵抗値の変化(dR)の関係を利用する。この関係を決定するために、デジタル信号アナライザを直接使用して、試験が進行する際に、センサの抵抗値の関数として1/fノイズの値を求めることができる。センサの抵抗値の測定は、試験中に1/fノイズの測定と同時に行われる。システムとインターフェースされているコンピュータを、NとRを表及びグラフにし、それから抵抗値に対する1/fノイズの変化率(dN/dR)が得られるようにプログラミングすることができる。
【0074】
[0074]1/fノイズを用いるこの実施形態においてガス透過率の計算のために通常確定される実験変数及び初期値には、感知素子の初期厚さ、センサの初期抵抗値及び初期コンダクタンス、試験にかかる時間、並びにデジタル信号アナライザの1/fノイズ分析の感度(S)が含まれる。
【0075】
[0075]以下の一般式は、(dN/dR)に基づいてガス透過速度を得るために実施する必要がある計算を示す。
1/fノイズの単位変化当たりの抵抗の変化(R1/f)=S÷(dN/dR)(III)
センサの厚さの変化(IV)=R1/f×(感知素子の厚さ÷センサの初期抵抗値)
【0076】
[0076]センサの厚さの変化が決定されると、ガス透過速度を式(I)及び(II)を用いて容易に計算することができる。
【0077】
[0077]測定しようとする変数の変化を直接測定する代わりに、1/fノイズの変化をモニタする際の1つの利点は、デジタル信号アナライザによって提供される1/fノイズを読み取る際の高い感度レベルの感度(典型的には1×10−14V2rms/Hz未満)に帰することができる。この感度レベルは、測定されている1/fノイズの値よりも約5〜7桁小さくなることがある。これにより、センサにおける非常に微細な酸化の検出が容易になり、したがって10−8g/m2/day未満のガス透過速度の測定が可能となる。たとえば、センサの1/fノイズの変化を測定し、センサの抵抗値の関数としてプロットすることができる。プロットしたグラフから、dN/dRが非常に小さいことがわかるであろう。これは、測定可能な1/fノイズの単位変化が、約10−7〜10−8オームの非常に小さい抵抗の単位変化に対応することを意味する。言い換えれば、20℃〜95℃の温度での水蒸気透過速度及び酸素輸送速度を検出するための感度が約10−8g/m2/day及び10−8cc/m2/dayになる。この感度レベルは、FOLEDに見出されるような低ガス透過率材料及び低ガス透過率構造を試験する目的に十分である。
【0078】
[0078]感度の向上に加えて、本発明は、単一の試験を用いて試験材料の拡散係数、透過係数並びに溶解度係数を決定することができる利点があるが、以前は別々の独立した試験を実施することによってこれらの係数の各々を決定することが可能であるにすぎなかった。
【0079】
[0079]前述の説明から、たとえば単層又は多層の保護層を有するフレキシブル又はリジッドな高分子基板、カバー基板を有する又はカバー基板なしの封入構造、リム又は高分子基板上のエポキシあるいは接着材料又は接着タップ、多層の有機又は無機薄膜含むバリア/保護層を有する基板の試験を含めた、多くのタイプの用途に本発明を適用することができることがわかる。この多層は、低ガス透過率性能のカプセル体を提供するために、いくつかのセラミック酸化物層又は無機層、及び有機層を有することができる。このような用途は、密封されたOLEDデバイスを用いるディスプレイパネル、液晶ディスプレイ(LCD)、集積チップパッケージ/構造など、エレクトロニクスのパッキング用途で広く利用されている。これらの基板を形成するために使用される材料には、ポリエチレン、ポリエチレンスルフィド、ポリカーボネートなどの高分子、単層又は多層の金属酸化物コーティング又はセラミックバリアコーティングを積層することができる基板、並びにガラス基板が含まれる。本発明を使用することができる他の用途は、LED、OLED及びLCDのカプセル体、ハードディスクドライブの金属筐体、さらには食料及び薬品のパッケージ、真空用途、弾薬容器、並びにプラスチック容器ガスの透過特性の測定である。
【0080】
[0080]本発明を、以下の非限定的な実施例及び添付図面によってさらに説明する。
【0081】
実施例1:本発明のセンサの例示的実施形態
例示的実施形態1
[0094]図1は本発明によるセンサ10を示し、カルシウムのストリップなどの感知素子100が一対の電極102に接続されている。電極102がセンサの短辺に接続されていることが図からわかる。接着バッドなどのコンタクト接着剤を使用する感知素子の短辺の上に塗布して、電極と感知素子との間の接触を向上させることができる。電極は、感知素子の短辺又は長辺に接続することができる。
【0082】
例示的実施形態2
[0095]図2A〜2Gは、ベース基板104によって支持されているセンサ200の様々な実施形態を示す。図2Aにおいて、電極102はベース基板104より上に保持されている。
【0083】
[0096]図2B〜2Gは、電極106が試験材料の表面上に配置され、かつ互いに離隔されてそれらの間にギャップ/トレンチが形成されているセンサ200を示す。このトレンチは、感知素子100によって占められる。図2Bでは、電極と感知素子との間の接触面は、ベース基板に対して垂直である。図2Cでは、接触面は基板の表面に対して垂直ではなく、90°未満の角度を形成する。センサの断面図には、幅の狭い底面と幅の広い上面とを有する感知素子が示してある。この構成は、たとえば、まず基板上に電極を形成し、次いでその堆積プロセスを制御して端部に向かって先細りする電極を形成することによって形成することができる。続いて、感知素子100を2つの電極の間に堆積させる。
【0084】
[0097]図2Dは、感知素子100の底面が上面よりも幅広であるセンサ200を示す。この例では、感知素子と電極との間の接触角が約45°である。図2Eは、感知素子が電極106間のトレンチから延び、電極106と部分的に重なるセンサ200を示す。図2Fは、感知素子が基板104の表面を覆って延び、電極106が感知素子上に形成されているセンサ200を示す。図2Gは、基板104がバリア層108で被覆されているセンサ200を示す。
【0085】
例示的実施形態3
[0098]図3A及び3Bは、感知素子とベース基板との間にライナ層110が組み込まれているセンサ300の諸実施形態を示す。図3Aは、ベース基板と感知素子との間に位置するライナ層を示す。図3Bは、電極と同一平面にある、すなわち電極とほぼ同じ厚さを有するライナ層を示す。
【0086】
例示的実施形態4
[0099]図4Aは、カプセル体112に封入されているセンサ400を示す。図4Bは、カプセル体112が感知素子100と直接物理的に接触してはおらず、中空空間114を提供しているセンサを示す。この中空空間は真空にする、あるいは必要であれば不活性ガスを充てんすることができる。特定の一実施形態では、カプセル体112がエポキシ樹脂であり、中空空間114がアルゴンガスで充てんされる。別の特定の実施形態では、カプセル体112がポリウレタン樹脂であり、中空空間が窒素ガスで充てんされる。
【0087】
例示的実施形態5
[00100]図5は、電極106が基板104の表面上に形成されている封入センサ500を示す。電極106は互いに離隔されて、感知素子100を収容するトレンチを形成する。感知素子100の厚さは、電極106の厚さとほぼ同じレベルである。感知素子100の上にカプセル体112が形成されている。
【0088】
例示的実施形態6
[00101]図6は、カプセル体が組み込まれ、そのカプセル体に隣接するカバー基板114を備えるセンサ600を示す。この実施形態では、感知素子100の周りの電極及びベース基板上に、カプセル体112の層を付着させている。カバー基板114はカプセル体112上に設置され、それにより感知素子100が密閉される。これらカプセル体及びカバー基板内に封入されている中空空間116は、アルゴン又は窒素などの不活性ガスで充てんすることができる。この構成は、図7A及び7B示す構造を有するOLEDパッケージのガス透過特性を試験するのに適している。
【0089】
例示的実施形態7
[00102]図8は、エポキシを含むカプセル体/シーラント112及びガラスのカバー基板114が組み込まれているセンサ800を示す。この実施形態では、試験片104及び電極を構成する一対の金属トラック106上に、カプセル体112(エポキシシーラント)の層を付着させている。感知素子100としてカルシウムが使用され、感知素子100の上面が保護層118で覆われている。ガラスのカバー基板はカプセル体上に設置され、それにより感知素子が密閉される。感知素子の上に封入されている中空空間116は窒素で充てんされている。
【0090】
実施例2:ガス透過センサの作製
[00103]この実施例では、図8に示す、また図9に概略的に示すセンサを作製した。試験サンプル(厚さ175μm)は、厚さ30nmの酸化ケイ素バリア層で被覆された厚さ133μmのポリカーボネート膜を含んでいた。この試験サンプル(基板)を、空気圧で動作する穴あけダイパンチ切断機で50mm×50mmの寸法に切断した。切断を行った後、適切なマスクを用いて試験サンプル上に銀を堆積させて、試験サンプルの表面上に電気伝導性のトラックを2つ形成した。これらの導電性トラックは、各トラックの幅が互いに向き合うように方向を合わせた。厚さ300nm(長さ18mm、幅20mm)の導電性金属(銀)トラックの2つのストリップを試験サンプル上に堆積させ、それにより長さ10mm×幅20mm×高さ300μmギャップをストリップの間に形成した。続いて、カルシウム感知素子を以下に説明するように形成した。実施例3に説明するような測定を行い、正規化された1m2の感知素子面積を想定した。
【0091】
[00104]導電性トラックを作製した後、試験サンプルをイソプロピルアルコール(IPA)ですすぎ、窒素で送風乾燥した。次いで、送風乾燥した基板を、吸着水分又は吸着酸素を脱気するために真空オーブン内に設置した。オーブン内の圧力を10−1ミリバールに設定し、この実施例で使用されるバリアスタック中に存在する高分子のガラス転移温度よりも低い60〜100℃の高い温度で数時間真空脱気を行った。ここで使用された真空オーブンは、真空ポンプから真空オーブンへの炭化水素油の逆流を防止するために、加えてフォアライントラップを具備していた。
【0092】
[00105]脱気プロセスの直後、一部分を形成したセンサ及び試験サンプルを、ULVAC SOLCIETクラスタツールへ移し、ここで数時間プラズマ処理を行った。表面の汚染物質を取り除くために、高周波(RF)アルゴンプラズマを使用してバリア膜の表面に低エネルギーイオンを衝突させた。チャンバ内のベース圧力を4×10−6ミリバールより低く維持した。アルゴン流量を70sccmとし、RFパワーを200Wに設定した。
【0093】
[00106]プラズマ処理プロセスの後、アクリル高分子を含むライナ層を、スピンコーティングによって約100nmの薄膜として堆積させた。このライナ層は、比較的低いガスバリア特性しか示さないが、カルシウム感知素子の均一な層状酸化を確実にする。
【0094】
[00107]この薄い有機バッファ層の堆積後、試験サンプルを真空蒸着チャンバに移した。続いて、2つの電極間の空間に適切なマスクを通してカルシウムを堆積させて、厚さ150nmの層を形成した。カルシウムの堆積後、LiFを含む100nmの絶縁膜をPVDによってカルシウム上に堆積した。
【0095】
[00108]続いて、一部分を形成したセンサをグローブボックスに移し、ここでセンサを封入した。試験サンプルのリム上にUV硬化性エポキシを塗布した。適合する寸法のガラススライドをエポキシ上に設置してカルシウム感知素子を密封した。400Wのメタルハライド光源(2000−ECシリーズUV光源、DYMAX社)を使用してエポキシを約2分間で硬化させた。この光源の波長は300nm〜365nmで、その強度はそれぞれ22mW/cm2及び85mW/cm2であった。最適な封入を確実に行うために、全封入プロセスが不活性窒素ガス雰囲気下で行われた。
【0096】
実施例3:1/fノイズの測定を用いる水蒸気透過試験
[00109]バリアスタックを二酸化ケイ素と共に含む試験サンプルを備える、実施例2において作製された封入センサ(図9参照)を、湿度チャンバ(WK1モデル、Weiss社、独国)に移した。センサの1/fノイズをモニタするために、HP35670Aデジタル信号アナライザを電極に接続した。同時に、センサに定電流源を提供し、時間にともなうカルシウムの抵抗値の変化率をモニタするために、Keithley社の24203Aソースメータを電極に並列接続した(図9参照)。1/fノイズ、並びにカルシウムのコンダクタンス及び抵抗値の測定を、温度40℃、相対湿度90%、大気圧で行った。
【0097】
[00110]時間に対するカルシウムの抵抗値変化のグラフを図10Aに示す。図からわかるように、約2〜3時間の遅延時間が認められ、この期間カルシウムセンサは劣化しない。この遅延時間は、水蒸気が感知素子に到達する前に試験サンプルを横切るのに必要な時間を示す。
【0098】
[00111]図10Bに示すような、時間に対するカルシウムのコンダクタンスの変化率のグラフも得られた。図からわかるように、カルシウムのコンダクタンスが最初のコンダクタンスから減少し始めるまでにかかる時間は、試験の開始から約2.8時間である。コンダクタンスは約7時間でゼロにまで低下する。これは、カルシウム感知素子が完全に消費されるには約4.2時間必要であったことを意味する。
【0099】
[00112]デジタル信号アナライザによって得られた1/fノイズの測定値を、センサの抵抗値の関数としてプロットした。そのグラフを図10Cに示す。
【0100】
[00113]このデータを基づいて、以下のさらなる実施例において示すように水蒸気透過特性の定量的評価を行うことができる。
【0101】
実施例4:水蒸気透過速度の計算−ノイズ測定の感度
[00114]この実施例では、本発明によるノイズ測定の感度に基づき、上記実施例において使用したような二酸化ケイ素コーティングで被覆された従来のバリアスタックを通して水蒸気透過速度を導くための手順を説明する。
【0102】
[00115]本計算を行うために必要なデータは、実施例1の抵抗及びノイズの測定値から持ってくる。150nmのカルシウムを酸化させるのにかかる時間は、図10Bのグラフに示すように約4.2時間であった。
【0103】
[00116]デジタル信号アナライザ(HP35670A)の1/fノイズ分析の感度は、64Hz及び1mAの定電流で10−14V2rms/Hz未満であると特定された。
【0104】
[00117]実施例1で行われた測定から得られるデータを用いて、水蒸気透過速度の導出を次のように行った。
1)抵抗値(R)の変化に対するセンサの1/fノイズ(N)の変化率、すなわち、(dN/dR)
=1/fノイズとRのグラフの傾き(図10C)
=3.38×10−7V2rms/Hz(R=23.13オームの値で)
したがって、1Ωの抵抗値変化では、1/fノイズが3.38×10−7V2rms/Hz変化する。
2)反対に、1×10−14V2rms/Hzの1/fノイズ変化では、センサの抵抗値の変化
=1×10−14÷3.38×10−7=2×10−8オーム
3)2×10−8オームの変化では、カルシウムの厚さの変化=0.8×10−5nm
4)対応するカルシウム量の変化(mol)
=(体積×密度)/Ar(Ca)
=(0.8×10−14m3×1.55g/10−6m3)/40.08g/mol
=3×10−10mol
5)1つのカルシウム原子と反応させるために2つの水分子が必要とされる。したがって、3×10−10molのカルシウムと反応させるために必要とされる水分子のモル数
=2×3×10−10mol
=6×10−10mol
6)H2Oの分子量は18g/molである。したがって、2.2×10−10molのH2Oの重量
=6×10−10mol×18g/mol
≒1×10−8g/m2
したがって、水蒸気透過の検出についてのデジタル信号アナライザの感度は、1×10−8g/m2となる。
7)水蒸気透過速度(WVTR)
=1×10−8g/m2×(24hrs/day÷4.2hrs)
≒5.71×10−8g/m2/day
【0105】
[00118]上記から、ノイズ測定法の感度によって10−6g/m2/day未満の水蒸気透過速度を測定すること可能となり、したがって低ガス透過速度を測定するのに十分に感度が高いことがわかる。
【0106】
実施例5:水蒸気透過速度の計算−カルシウムの抵抗の直接測定
[00119]本実施例では、カルシウムの電気抵抗の直接測定に基づき、水蒸気透過速度を導く方法を説明する。
【0107】
[00120]本計算を行うために必要なデータは、実施例2の抵抗及びノイズの測定値から持ってくる。150nmのカルシウムを酸化させるのにかかる時間は、図10A及び10Bのグラフに示すように約4.2時間であった。
【0108】
[00121]水蒸気透過速度の導出を次のように行った。
1)コンダクタンスが0Mhoにまで下がった(すなわち、カルシウムセンサを完全に反応させた)ときの、反応したカルシウムの量(mol)
=(体積×密度)/Ar(Ca)
=(150×10−9m3×1.55g/10−6m3)/Ar(カルシウム)g/mol
=5.8×10−3mol
2)1つのカルシウム原子と反応させるために2つの水分子が必要とされる。したがって、5.8×10−3molのカルシウムと反応させるために必要とされる水分子のモル数
=2×5.8×10−3mol
=11.6×10−3mol
6)H2Oの分子量は18g/molである。したがって、11.6×10−3molのH2Oの重量
=11.6×10−3mol×18g/mol
=0.208g/m2
≒0.2g/m2
したがって、カルシウムの抵抗の直接測定に基づく実現可能な感度は、0.2g/m2である。
7)水蒸気透過速度(WVTR)
=0.2g/m2×(24hrs/day÷4.2hrs)
≒1.1g/m2.day
【0109】
[00122]したがって、この直接抵抗法を本センサで使用して、ガス透過速度を計算することもできる。しかしながら、この特定の実験構成では、10−6g/m2/day未満のガス透過速度を決定するのにこの直接抵抗測定法は適していない。
【0110】
実施例6:水蒸気透過速度の計算−抵抗測定の感度
[00123]本実施例では、Keithley社の24203Aソースメータを用いた抵抗測定の感度に基づき、水蒸気透過速度を導く方法を示す。計算目的のために必要とされるデータは、実施例1で行った測定から得た。ソースメータの感度は、約1mΩであると特定された。
【0111】
[00124]水蒸気透過速度の導出を次のように行った。
1)1mΩの抵抗変化(ΔR)に対するカルシウムセンサの厚さの変化(Δt)
=ΔR/R=1mΩ/0.37Ω=2.7×10−3
=Δt/t=Δt/150nm=0.4nm
2)1mΩの変化に対するカルシウム量の変化(mol)
=(体積×密度)/Ar(Ca)
=(0.4×10−9m3×1.55g/10−6m3)/40.08g/mol
=1.55×10−5mol
3)1つのカルシウム原子と反応させるために2つの水分子が必要とされる。したがって、1.55×10−5molのカルシウムと反応させるために必要とされる水分子のモル数
=2×1.55×10−5mol
=3.1×10−10mol
4)H2Oの分子量は18g/molである。したがって、3.1×10−5molのH2Oの重量
=3.1×10−5mol×18g/mol
≒5×10−3g/m2
したがって、水蒸気透過の検出についてのデジタル信号アナライザの感度は、5×10−3g/m2となる。
5)水蒸気透過速度(WVTR)
=5×10−3g/m2×(24hrs/day÷4.2hrs)
≒2.9×10−2g/m2/day
【0112】
[00125]したがって、この直接抵抗法を本センサで使用して、ガス透過速度を計算することもできる。しかしながら、この特定の実験構成では、抵抗測定の感度によって10−6g/m2/day未満のガス透過速度を決定することはできなかった。
【0113】
実施例7:拡散係数の試算
[00126]図10Aの定常状態領域における曲線をゼロまで外挿することにより、遅延時間(L)が得られ、この遅延時間を、次式(V)に従って定常状態前の経過時間と関係付けることができる。
L=l2/6D
高分子ベース基板は3%の抵抗しか提供しないので、バリアで被覆した高分子基板を、均質な単一の基板であると仮定する、あるいは酸化物層をバリア層であると考える。この遅延時間技法を使用して拡散係数を決定する。必要な境界条件は以下の通りであり、最初はガスを含まない膜であること、ガス−高分子界面で平衡を実現すること、及びカルシウム側でガスの濃度がゼロであることである。これらの条件下で、遅延時間Lによる方法を用いて、必要とされるバリア膜の拡散係数を以下の方程式で計算することが可能である。ここで、Lは遅延時間、lはバリア層の厚さ、Dは拡散係数(m2/s)である。
【0114】
[00127]本計算を行うために必要なデータは、実施例2の抵抗及びノイズの測定値から持ってくる。150nmのカルシウムを酸化させるのにかかる時間は、図10A及び10Bのグラフに示すように約4.2時間であった。
【0115】
[00128]したがって、遅延時間(L)が4.2時間であり、酸化ケイ素で被覆したポリカーボネートバリアスタックの全体の厚さは175ミクロンであるので、拡散係数(D)は、
D=(175μm)2/(6×4.2×60×60s)
=30625(μm)2/90720s=3.4×10−13m2/s
となる。
【0116】
[00129]したがって、酸化ケイ素で被覆された所与の基板の拡散係数Dは、3.4×10−13m2/sとなる。
【0117】
実施例8:透過係数(P)の試算
[00130]定常状態における膜を通るガス又は蒸気の輸送速度は、通常次式(VI)に従って計算される。
WVTR=P(p1−p2)/l
ここで、WVTRは所与の時間における水蒸気透過速度[g/m2.day]、Pは透過係数[g.μm/m2.day.bar]、p1はバリアスタックの高圧側の圧力、p2はバリアスタックの低圧側の圧力、lは拡散の路程(μm)(バリアスタックの厚さ)である。
【0118】
[00131]本計算を行うために必要なデータは、実施例2の抵抗及びノイズの測定値から持ってきた。150nmのカルシウムを酸化させるのにかかる時間は、図10A及び10Bのグラフに示すように約4.2時間であった。
【0119】
[00132]実施例5で計算した水蒸気透過速度は1.1g/m2/dayである。バリアスタック全体の厚さは175ミクロン、p1=55mbar(相対湿度90%の湿度チャンバにおける蒸気圧)、p2=0[水蒸気はすべてカルシウムと反応するはずなので、カルシウムを封入した試験バリアスタック内部の蒸気圧はほぼ0である]である。
【0120】
[00133]これらの値を上記透過係数の方程式に当てはめる。
【数1】
【0121】
[00134]したがって、酸化ケイ素で被覆した所与の基板の透過係数(P)は、40℃及び相対湿度90%の条件では、1バールで3.5×103g.μm/m2.dayである。
【0122】
実施例9:センサの劣化パターンに与えるライナ層の影響の検討
[00135]本実施例では、感知素子の劣化パターンに与えるライナ層の影響を検討するために、高分子基板の試験を行った。
【0123】
[00136]実施例1に記載されている手順に従って、カルシウム感知素子を備えるセンサを、金属酸化物バリアコーティングを有するPET基板上に作製した。厚さ100nmのアクリル高分子ライナを、金属酸化物コーティングの表面上に適用した。このセンサを、図6に示すようにOLEDパッケージと同様にして封入した。ライナ層を組み込まずに対照物を作製した。温度50℃及び相対湿度90%の湿度チャンバ内で、両方の試験片の試験を行った。
【0124】
[00137]図11A及び11Bに示す画像は、試験中数時間の間隔で撮影した。カルシウムの劣化を、光学顕微鏡によってモニタし、デジタル画像を感知素子の表面上の5箇所から撮影した。図11Aは、試験が進んだときの感知素子の均一な劣化を示す。比較すると、図11Bは、対照物内の感知素子が不均一に劣化したことを示す。
【0125】
[00138]これらの結果から、このライナ層によりセンサ内の感知素子の均一な層状劣化が容易になったことがわかる。
【0126】
実施例10:試験材料がガラスである場合にセンサの劣化パターンに与える無機でない終端層の影響の検討
[00139]本実施例では、本発明のセンサを用いる試験をガラス基板上について行った。この目的は、センサの劣化の均一性を検討することである。
【0127】
[00140]実施例1に記載されている手順に従って、ガラス基板上にセンサを作製した。ガラス基板の表面上にはライナ層を適用しなかった。図6に示すOLEDパッケージ構造と同様のレイアウトを有するようにセンサを設計した。このセンサを、接着材料及びガラスのカバー基板で封入した。温度50℃及び相対湿度90%の湿度チャンバ内で試験を行った。水蒸気が接着材料を貫通するにつれて、感知素子が徐々に劣化した。このセンサを光学顕微鏡によってモニタした。数時間の間隔の測定ごとに確定した5箇所からデジタル画像を撮影した(図12A参照)。これらの画像は、OLEDパッケージにおいて感知素子の劣化が均一であることを示している。
【0128】
[00141]島津製作所製のUV−3101PC UV−VIS−NIR走査型分光光度計を用いてカルシウムセンサの光学特性をモニタした。図12Bは、数時間の間隔で感知素子上の異なる5箇所について測定したカルシウムセンサの反射率のグラフを示す。センサの各箇所で測定した反射率は同じままであり、実質的な変化を示さないことがグラフからわかる。したがって、カルシウムの酸化はセンサ全域で均一のようであり、反射率の低下によりカルシウムの酸化のダイナミクスは層状に進行することが確認される。
【0129】
[00142]OLEDパッケージ構造を用いて作製されたカルシウム感知素子は均一に酸化され、その酸化は層状に進行することがわかる。したがって、センサの電気伝導度の減少を、対応する感知素子の厚さの減少と相互に関係付けることができる。
【0130】
実施例11:試験材料を通り抜ける酸素と水蒸気の複合透過特性の測定
[00143]本発明は、湿度チャンバ内だけでなく特注の試験セル内で実施することができる。本発明により、任意の試験基板又はパッケージを通り抜ける酸素、水蒸気又は他の任意のガスの透過測定を単一の試験チャンバ内で実施することができる。加えて、その測定を、高い温度及び圧力で実施することも可能である。
【0131】
[00144]図13は、2組のガス入口及びガス出口を備える従来のガスチャンバを有する試験セルを示す。このチャンバは、チャンバの中間部分に位置する試験片クランピング区域を備える。この試験チャンバ内で測定を行うために、試験材料をまず必要とされる寸法に従って切断する。上述の方法に従って、試験材料上にカプセル体なしのセンサを作製する。この試験片をチャンバに挿入し、クランピング区域でクランプすると、チャンバが2つの領域A及びBに分割される。必要とされる試験条件をシミュレートする組成を有する混合ガスを用意し、チャンバAへ導入する。この混合ガスは、入口を通ってチャンバに入り、出口を通して排出される。必要ならば、乾燥窒素ガスをチャンバ内に循環させることによってチャンバBに不活性環境を提供する。これにより、チャンバBへと通り抜ける任意の反応性ガスを押し出す役目を果たすこともできる。適切な相対湿度プローブが相対湿度をモニタする。
【0132】
[00145]適切な電気的フィードスルーを使用して、抵抗及び1/fノイズスペクトルを測定するための導電性トラックを接続することができる。低ガス透過率試験基板を貫通した水分子又は酸素分子は、カルシウムセンサと反応する。一定のソースメータ及びデジタル信号アナライザにより、それぞれ抵抗及び1/fノイズスペクトルを測定することができる。抵抗及びノイズ特性の変化率を使用して、試験膜の水蒸気又は酸素輸送特性を計算することができる。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明のセンサの一実施形態の断面図である。
【図2A】ベース基板によって支持されているセンサの一実施形態を示す図である。
【図2B】ベース基板によって支持されているセンサの図2Aと異なる一実施形態を示す図である。
【図2C】ベース基板によって支持されているセンサの図2A及び2Bと異なる一実施形態を示す図である。
【図2D】ベース基板によって支持されているセンサの図2A〜2Cと異なる一実施形態を示す図である。
【図2E】ベース基板によって支持されているセンサの図2A〜2Dと異なる一実施形態を示す図である。
【図2F】ベース基板によって支持されているセンサの図2A〜2Eと異なる一実施形態を示す図である。
【図2G】バリアで被覆した基板上に支持されているセンサを示す図である。
【図3A】ライナ層が組み込まれている本発明のセンサの一実施形態を示す図である。
【図3B】ライナ層が組み込まれている本発明のセンサの図3Aと異なる一実施形態を示す図である。
【図4A】カプセル体が組み込まれているセンサを示す図である。
【図4B】カプセル体が組み込まれているセンサを示す図である。
【図5】ベース基板上に形成され、カプセル体を備えるセンサを示す図である。
【図6】従来のOLEDデバイスと類似のやり方で構成されるセンサを示す図である。
【図7A】OLED封入構造を示す図である。
【図7B】図7Aとは異なるタイプのOLED封入構造を示す図である。
【図8】基板上に形成され、感知素子の表面上に形成されている保護層が組み込まれている封入センサを示す図である。
【図9】測定システムの概略図である。
【図10A】市販の基板を二酸化ケイ素コーティングで被覆した場合の試験で得られた測定値を示す図であり、「カルシウムの抵抗値と時間」のグラフを示す図である。
【図10B】市販の基板を二酸化ケイ素コーティングで被覆した場合の試験で得られた測定値を示す図であり、「カルシウムのコンダクタンスと時間」のグラフを示す図である。
【図10C】市販の基板を二酸化ケイ素コーティングで被覆した場合の試験で得られた測定値を示す図であり、「センサの1/fノイズとセンサの抵抗値」のグラフを示す図である。
【図11A】ポリエチレンテレフタレート(PET)基板の試験において使用したカルシウム感知素子のデジタル画像を示す図であり、異なる時間間隔において10倍の倍率で撮影したカルシウム感知素子の画像を示す図である。
【図11B】ポリエチレンテレフタレート(PET)基板の試験において使用したカルシウム感知素子のデジタル画像を示す図であり、対照構成におけるカルシウム感知素子の画像を示す図である。
【図12A】ガラス基板の試験において使用したカルシウム感知素子のデジタル画像を示す図であり、異なる時間間隔におけるセンサの劣化パターンを示す図である。
【図12B】ガラス基板の試験において使用したカルシウム感知素子のデジタル画像を示す図であり、異なる時間間隔におけるカルシウム感知素子の反射率を示す図である。
【図13】本発明のセンサを用いて透過試験を行うために使用することができるガス透過試験セルを示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験材料のガス透過率を測定するためのセンサであって、
水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子であって、感知素子を水及び/又は酸素と接触させたときの前記材料と水又は酸素との反応により、感知素子の電気伝導度の変化が生じる感知素子と、
前記感知素子に電気的に接続されている2つの電極と
を備えるセンサ。
【請求項2】
前記電極が、前記感知素子と電気信号評価手段との間に電気的接続を提供する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記水及び/又は酸素感知材料が、導電性有機高分子、金属、金属合金、金属酸化物並びにそれらの混合物及び組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記金属がカルシウム又はマグネシウムである、請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記導電性有機高分子が、ポリアニリン、ポリピロール及びポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、並びにポリビニルピリジン、チオフェン−ビピリジン共重合体、ポリピリジン、ポリビピリジン、及び有機金属ポリフェニレンからなる群から選択される、請求項3に記載のセンサ。
【請求項6】
前記金属酸化物が、VO2、CrO2、MoO2、LiMn2O4、Cd2SnO4、CdIn2O4、Zn2SnO4及びZnSnO3、並びにZn2In2O5からなる群から選択される、請求項3に記載のセンサ。
【請求項7】
前記電極が、金属、金属酸化物並びにそれらの混合物及び組合せからなる群から選択される電気伝導性材料を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記金属が、銀、金、アルミニウム及び銅からなる群から選択される、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記金属酸化物が、酸化インジウムスズ、酸化アルミニウム亜鉛及び酸化インジウム亜鉛からなる群から選択される、請求項7に記載のセンサ。
【請求項10】
前記感知素子を支持するベース基板をさらに備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
前記ベース基板が高分子材料を含む、請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
前記高分子材料が、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン及びポリアクリレートからなる群から選択される有機高分子を含む、請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
前記高分子材料が、シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ビスシクロペンタジエニル鉄、ポリジクロロホスファゼン及びその誘導体からなる群から選択される無機高分子を含む、請求項11に記載のセンサ。
【請求項14】
前記ベース基板上に形成されているバリア層をさらに備える、請求項10に記載のセンサ。
【請求項15】
前記バリア層が、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、無機高分子、有機高分子並びにそれらの混合物及び組合せからなる群から選択される材料を含む、請求項14に記載のセンサ。
【請求項16】
前記電極が前記基板の表面上に位置する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項17】
前記電極が互いに離隔され、それによりトレンチが形成されている、請求項16に記載のセンサ。
【請求項18】
前記感知素子が前記トレンチ内に位置する、請求項17に記載のセンサ。
【請求項19】
前記感知素子を封入するカプセル体をさらに備える、請求項1〜18のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項20】
前記カプセル体が、エポキシ高分子、ポリスルフィド、シリコーン及びポリウレタンからなる群から選択される高分子材料を含む、請求項19に記載のセンサ。
【請求項21】
前記カプセル体が、前記感知素子の周りに中空空間を提供する、請求項20に記載のセンサ。
【請求項22】
前記中空空間が不活性ガスで充てんされている、請求項21に記載のセンサ。
【請求項23】
さらにカバー基板を備え、前記カプセル体が前記感知素子を囲む側壁(横壁)として形成され、前記カバー基板が前記側壁(横壁)と接触するように配置される、請求項19に記載のセンサ。
【請求項24】
前記カバー基板が、ガラス、アルミニウム及び銅からなる群から選択される材料を含む、請求項23に記載のセンサ。
【請求項25】
前記感知素子の少なくとも一部分を覆う保護層をさらに備える、請求項1〜24のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項26】
前記保護層が、金属、金属合金、金属酸化物、金属酸化物の混合物、金属フッ化物及び有機高分子からなる群から選択される材料を含む、請求項25に記載のセンサ。
【請求項27】
前記金属フッ化物が、LiF及びMgF2からなる群から選択される、請求項26に記載のセンサ。
【請求項28】
前記感知素子と前記ベース基板との間に挿入されているライナ層をさらに備える、請求項10〜27のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項29】
前記ライナ層が有機高分子を含む、請求項28に記載のセンサ。
【請求項30】
前記有機高分子が、ガスに対してほぼ透過性である、請求項29に記載のセンサ。
【請求項31】
前記有機高分子が、アクリル高分子及びパリレン型高分子からなる群から選択される、請求項29又は30に記載のセンサ。
【請求項32】
前記ライナ層が無機高分子を含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項33】
前記無機高分子がシリコーンをベースとする高分子を含む、請求項32に記載のセンサ。
【請求項34】
試験材料のガス透過率を測定するためのセンサを作製する方法であって、
2つの電極を設けるステップと、
水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子を前記一対の電極に接続するステップとを含む方法。
【請求項35】
前記感知素子が、適切なベース基板の表面上に堆積される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記電極が、適切な基板の表面上に堆積される、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
試験材料の水分透過を検出するためのセンサを備える、前記試験材料のガス透過率を測定するためのシステムであって、
前記センサが、
水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子であって、感知素子を水及び/又は酸素と接触させたときの前記材料と水又は酸素との反応により、感知素子の電気伝導度の変化が生じる感知素子と、
前記感知素子に電気的に接続されている2つの電極であって、前記感知素子と電気信号評価手段との間に電気的接続を提供する電極とを備えるシステム。
【請求項38】
試験材料のガス透過率を測定するためのセンサを用いて前記試験材料のガス透過率を決定する方法であって、
前記センサが、
水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子であって、感知素子を水及び/又は酸素と接触させたときの前記材料と水又は酸素との反応により、感知素子の電気伝導度の変化が生じる感知素子と、
前記感知素子に電気的に接続されている2つの電極であって、前記感知素子と電気信号評価手段と間に電気的接続を提供する電極とを備え、
i.前記感知素子を水及び/又は酸素と接触させるステップと、
ii.前記感知素子の電気伝導度の変化をある期間にわたって測定するステップと、
iii.前記測定値に基づいて前記試験材料のガス透過係数を計算するステップとを含む方法。
【請求項39】
1/f型ノイズのスペクトル密度の変化を前記期間にわたって測定するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項1】
試験材料のガス透過率を測定するためのセンサであって、
水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子であって、感知素子を水及び/又は酸素と接触させたときの前記材料と水又は酸素との反応により、感知素子の電気伝導度の変化が生じる感知素子と、
前記感知素子に電気的に接続されている2つの電極と
を備えるセンサ。
【請求項2】
前記電極が、前記感知素子と電気信号評価手段との間に電気的接続を提供する、請求項1に記載のセンサ。
【請求項3】
前記水及び/又は酸素感知材料が、導電性有機高分子、金属、金属合金、金属酸化物並びにそれらの混合物及び組合せからなる群から選択される、請求項1又は2に記載のセンサ。
【請求項4】
前記金属がカルシウム又はマグネシウムである、請求項3に記載のセンサ。
【請求項5】
前記導電性有機高分子が、ポリアニリン、ポリピロール及びポリチオフェン、ポリアセチレン、ポリ−p−フェニレン、並びにポリビニルピリジン、チオフェン−ビピリジン共重合体、ポリピリジン、ポリビピリジン、及び有機金属ポリフェニレンからなる群から選択される、請求項3に記載のセンサ。
【請求項6】
前記金属酸化物が、VO2、CrO2、MoO2、LiMn2O4、Cd2SnO4、CdIn2O4、Zn2SnO4及びZnSnO3、並びにZn2In2O5からなる群から選択される、請求項3に記載のセンサ。
【請求項7】
前記電極が、金属、金属酸化物並びにそれらの混合物及び組合せからなる群から選択される電気伝導性材料を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項8】
前記金属が、銀、金、アルミニウム及び銅からなる群から選択される、請求項7に記載のセンサ。
【請求項9】
前記金属酸化物が、酸化インジウムスズ、酸化アルミニウム亜鉛及び酸化インジウム亜鉛からなる群から選択される、請求項7に記載のセンサ。
【請求項10】
前記感知素子を支持するベース基板をさらに備える、請求項1〜9のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項11】
前記ベース基板が高分子材料を含む、請求項10に記載のセンサ。
【請求項12】
前記高分子材料が、ポリカーボネート、ポリエチレン、ポリエーテルスルホン、エポキシ樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスチレン、ポリウレタン及びポリアクリレートからなる群から選択される有機高分子を含む、請求項11に記載のセンサ。
【請求項13】
前記高分子材料が、シリコーン、ポリジメチルシロキサン、ビスシクロペンタジエニル鉄、ポリジクロロホスファゼン及びその誘導体からなる群から選択される無機高分子を含む、請求項11に記載のセンサ。
【請求項14】
前記ベース基板上に形成されているバリア層をさらに備える、請求項10に記載のセンサ。
【請求項15】
前記バリア層が、金属、金属酸化物、セラミック酸化物、無機高分子、有機高分子並びにそれらの混合物及び組合せからなる群から選択される材料を含む、請求項14に記載のセンサ。
【請求項16】
前記電極が前記基板の表面上に位置する、請求項1〜15のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項17】
前記電極が互いに離隔され、それによりトレンチが形成されている、請求項16に記載のセンサ。
【請求項18】
前記感知素子が前記トレンチ内に位置する、請求項17に記載のセンサ。
【請求項19】
前記感知素子を封入するカプセル体をさらに備える、請求項1〜18のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項20】
前記カプセル体が、エポキシ高分子、ポリスルフィド、シリコーン及びポリウレタンからなる群から選択される高分子材料を含む、請求項19に記載のセンサ。
【請求項21】
前記カプセル体が、前記感知素子の周りに中空空間を提供する、請求項20に記載のセンサ。
【請求項22】
前記中空空間が不活性ガスで充てんされている、請求項21に記載のセンサ。
【請求項23】
さらにカバー基板を備え、前記カプセル体が前記感知素子を囲む側壁(横壁)として形成され、前記カバー基板が前記側壁(横壁)と接触するように配置される、請求項19に記載のセンサ。
【請求項24】
前記カバー基板が、ガラス、アルミニウム及び銅からなる群から選択される材料を含む、請求項23に記載のセンサ。
【請求項25】
前記感知素子の少なくとも一部分を覆う保護層をさらに備える、請求項1〜24のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項26】
前記保護層が、金属、金属合金、金属酸化物、金属酸化物の混合物、金属フッ化物及び有機高分子からなる群から選択される材料を含む、請求項25に記載のセンサ。
【請求項27】
前記金属フッ化物が、LiF及びMgF2からなる群から選択される、請求項26に記載のセンサ。
【請求項28】
前記感知素子と前記ベース基板との間に挿入されているライナ層をさらに備える、請求項10〜27のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項29】
前記ライナ層が有機高分子を含む、請求項28に記載のセンサ。
【請求項30】
前記有機高分子が、ガスに対してほぼ透過性である、請求項29に記載のセンサ。
【請求項31】
前記有機高分子が、アクリル高分子及びパリレン型高分子からなる群から選択される、請求項29又は30に記載のセンサ。
【請求項32】
前記ライナ層が無機高分子を含む、請求項28〜31のいずれか一項に記載のセンサ。
【請求項33】
前記無機高分子がシリコーンをベースとする高分子を含む、請求項32に記載のセンサ。
【請求項34】
試験材料のガス透過率を測定するためのセンサを作製する方法であって、
2つの電極を設けるステップと、
水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子を前記一対の電極に接続するステップとを含む方法。
【請求項35】
前記感知素子が、適切なベース基板の表面上に堆積される、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
前記電極が、適切な基板の表面上に堆積される、請求項34又は35に記載の方法。
【請求項37】
試験材料の水分透過を検出するためのセンサを備える、前記試験材料のガス透過率を測定するためのシステムであって、
前記センサが、
水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子であって、感知素子を水及び/又は酸素と接触させたときの前記材料と水又は酸素との反応により、感知素子の電気伝導度の変化が生じる感知素子と、
前記感知素子に電気的に接続されている2つの電極であって、前記感知素子と電気信号評価手段との間に電気的接続を提供する電極とを備えるシステム。
【請求項38】
試験材料のガス透過率を測定するためのセンサを用いて前記試験材料のガス透過率を決定する方法であって、
前記センサが、
水及び/又は酸素感知材料を含む電気伝導性の感知素子であって、感知素子を水及び/又は酸素と接触させたときの前記材料と水又は酸素との反応により、感知素子の電気伝導度の変化が生じる感知素子と、
前記感知素子に電気的に接続されている2つの電極であって、前記感知素子と電気信号評価手段と間に電気的接続を提供する電極とを備え、
i.前記感知素子を水及び/又は酸素と接触させるステップと、
ii.前記感知素子の電気伝導度の変化をある期間にわたって測定するステップと、
iii.前記測定値に基づいて前記試験材料のガス透過係数を計算するステップとを含む方法。
【請求項39】
1/f型ノイズのスペクトル密度の変化を前記期間にわたって測定するステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図4A】
【図4B】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13】
【公表番号】特表2007−537421(P2007−537421A)
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506112(P2007−506112)
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000075
【国際公開番号】WO2005/095924
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年3月31日(2004.3.31)
【国際出願番号】PCT/SG2004/000075
【国際公開番号】WO2005/095924
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(503231882)エージェンシー フォー サイエンス,テクノロジー アンド リサーチ (179)
【Fターム(参考)】
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