説明

試験装置および試験方法

【課題】地球環境への負荷を低減し、かつ、試験装置や試験のための設備を複雑にすることなく、高電圧試験を実現する。
【解決手段】この試験装置1は、圧力容器10と、圧力容器10の内部空間13に配置され、被試験体12が載置される載置台30と、圧力容器10の内部空間13に配置され、載置台30に載置された被試験体12に試験電圧を供給する試験電極26,27と、圧力容器10の内部空間13の気圧を上昇させる加圧手段と、を有し、加圧手段により圧力容器10の内部空間13の気圧を上昇させた状態で、載置台30に載置された被試験体12に試験電極26,27から試験電圧を供給して、被試験体12の試験を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被試験体の高電圧試験を行う試験装置および試験方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被試験体に高電圧の試験電圧を供給して、被試験体の高電圧試験を行う試験方法が存在する。このような試験方法では、被試験体の電極間または被試験体の電極と試験装置との間等に絶縁破壊が発生して放電がおこり、被試験体や試験装置が損傷する可能性や、被試験体の試験が正しく行われない可能性がある。
【0003】
このため、被試験体を、絶縁性の高いガス、例えば六フッ化硫黄ガス(SF6)、の雰囲気中に配置させ、試験雰囲気の絶縁耐圧を確保した上で高電圧試験を実施する技術が存在する。
【0004】
しかしながら、六フッ化硫黄ガスに代表される高絶縁性能ガスは、地球温暖化係数(GWP:Global Warming Potential)が高く、地球環境への負荷が大きい。例えば、六フッ化硫黄ガスの地球温暖化係数は、「23,900」である。
【0005】
このため、高絶縁性能ガスを用いる方法とは別の方法で、放電を抑制することが考えられる。例えば、放電経路に絶縁遮蔽体を配置させる技術がある。例えば、被測定対象物の第1および第2のリード間の封止体表面に当接する絶縁遮蔽体を有する高電圧試験装置が存在する(例えば、特許文献1参照)。また、ウエハに接触する一対のプローブの先端間に、絶縁部材をウエハに接触するようにして介在させる半導体ウエハ測定装置が存在する(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
また、他の方法として、被試験体を絶縁溶液中に浸漬させた状態で試験を行う技術がある。例えば、半導体装置を絶縁性のフロロカーボン溶液中に浸漬して耐電圧測定を実施する技術が存在する(例えば、特許文献3参照)。また、半導体基板の少なくとも表面を絶縁溶液で覆い、半導体基板における少なくとも2カ所の間に電圧を印加することで、半導体基板の耐圧を検査する技術が存在する(例えば、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−271387号公報
【特許文献2】特開2010−10306号公報
【特許文献3】特開平6−120315号公報
【特許文献4】特開2003−100819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、放電経路に絶縁遮蔽体を配置させる方法では、絶縁遮蔽体を所定の位置に配置させる構造を必要とするため、試験装置が複雑になってしまう可能性がある。
また、被試験体を絶縁溶液中に浸漬させた状態で試験を行う方法では、絶縁溶液を扱うため、試験のための設備が複雑になってしまう可能性がある。例えば、絶縁溶液に、フロロカーボンのような低沸点の溶液が用いられた場合、試験中に絶縁溶液を蒸発させないための設備や、乾燥時のガスの排気や回収のための設備が必要となる。また、絶縁溶液に、低沸点ではない溶液が用いられた場合でも、洗浄のための設備が必要となる。
【0009】
このような点に鑑み、本発明は、地球環境への負荷を低減し、かつ、試験装置や試験のための設備を複雑にすることなく、高電圧試験を実現する試験装置および試験方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために以下のような試験装置および試験方法が提供される。
この試験装置は、圧力容器と、圧力容器の内部空間に配置され、被試験体が載置される載置台と、圧力容器の内部空間に配置され、載置台に載置された被試験体に試験電圧を供給する試験電極と、圧力容器の内部空間の気圧を上昇させる加圧手段と、を有し、加圧手段により圧力容器の内部空間の気圧を上昇させた状態で、載置台に載置された被試験体に試験電極から試験電圧を供給して、被試験体の試験を行う。
【0011】
また、この試験方法は、圧力容器の内部空間に配置された載置台に、被試験体を載置する工程と、圧力容器の内部空間の気圧を上昇させる工程と、圧力容器の内部空間の気圧を上昇させた状態で、載置台に載置された被試験体に、内部空間に配置された試験電極から試験電圧を供給して、被試験体の試験を行う工程と、を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の試験装置および試験方法によれば、地球環境への負荷を低減し、かつ、試験装置や試験のための設備を複雑にすることなく、高電圧試験を実現させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第1の実施の形態に係る試験装置の一例を示す図である。
【図2】第1の実施の形態に係る試験方法の一例を示すフローチャートである。
【図3】パッシェンカーブの一例を示す図である。
【図4】第2の実施の形態に係る試験装置の一例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る試験方法の一例を示すフローチャートである。
【図6】第2の実施の形態に係る試験方法の別の例を示すフローチャートである。
【図7】第3の実施の形態に係る絶縁耐圧試験の一例を示す図である。
【図8】第3の実施の形態に係る絶縁耐圧試験の別の例を示す図である。
【図9】第4の実施の形態に係る試験回路の一例とそのタイミングチャートを示す図である。
【図10】第4の実施の形態に係る試験回路の別の例とそのタイミングチャートを示す図である。
【図11】第4の実施の形態に係る試験回路のさらに別の例とそのタイミングチャートを示す図である。
【図12】第4の実施の形態に係る試験回路のさらに別の例とそのタイミングチャートを示す図である。
【図13】第4の実施の形態に係る試験回路のさらに別の例とそのタイミングチャートを示す図である。
【図14】第5の実施の形態に係る発明の被試験体の一例を示す図である。
【図15】第5の実施の形態に係る発明の被試験体の別の例を示す図である。
【図16】第5の実施の形態に係る発明の被試験体のさらに別の例を示す図である。
【図17】第5の実施の形態に係る発明の被試験体のさらに別の例を示す図である。
【図18】第6の実施の形態に係る絶縁耐圧測定結果の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、実施の形態を図面を参照して説明する。
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る試験装置の一例を示す図である。
【0015】
試験装置1は、圧力容器10と底板11と測定器23とを有する。圧力容器10は、被試験体(DUT:Device Under Test)12の試験が行われる内部空間13を備え、内部空間13の圧力が規定値となるまで耐えることができる。圧力容器10は、例えば、チャンバーと称される場合もある。なお、ここでは、被試験体12が、電極28,29を備えた半導体装置である場合を例としている。また、被試験体12は、半導体ウエハ、半導体チップ、半導体パッケージ、および、半導体モジュールのいずれであってもよい。試験装置1も、これらの被試験体12に合わせて適宜ウエハプローバやハンドラーなどを用いて構成することができる。
【0016】
底板11は、圧力容器10の内部空間13を覆うように配置され、Oリング14を介して、圧力容器10に密着されている。圧力容器10と底板11とが密着することにより、圧力容器10の内部空間13の気密性が確保されている。さらに、底板11は、下降、または、上昇することができ、下降することで、圧力容器10から離間する。このとき、内部空間13は開放される。
【0017】
まず、圧力容器10について詳細に説明する。圧力容器10には、ガスを内部空間13に供給するための配管15と、内部空間13からガスを排気するための配管16とが設けられている。配管15は、ガス供給源17に繋がっている。ガス供給源17は、高圧ボンベ内または圧縮機で圧縮された圧縮ガス、または、液化ガス(例えば、液体窒素)等の高圧ガス(例えば、0.12MPa以上)を供給する。
【0018】
また、ガス供給源17が供給するガスは、地球温暖化係数が低いガスである。具体的には、窒素、空気、二酸化炭素、アルゴン、酸素のいずれか1つ、または、これらのうちの1つまたは複数を含む混合ガスである。また、ガスに高い絶縁性が求められる場合には、これらのガスと六フッ化硫黄ガスなどのGWPは高いが絶縁性に優れたガスとの混合ガスが供給される。
【0019】
さらに、配管15には、ガス供給源17と内部空間13との間に、レギュレーター18と、供給用ソレノイドバルブ19とが設けられている。レギュレーター18は、ガス供給源17から供給された高圧ガスの圧力を所定の値に調整する。供給用ソレノイドバルブ19は、開閉されることにより、レギュレーター18により圧力が調整された高圧ガスの、内部空間13への供給、または、供給停止を制御する。
【0020】
配管16には、排気用ソレノイドバルブ20が設けられている。排気用ソレノイドバルブ20は、開閉されることにより、内部空間13のガスの排気、または、排気停止を制御する。また、配管16は、真空ポンプ(図示せず)に繋がっていてもよい。
【0021】
さらに、圧力容器10には、リリーフ弁21が設けられている。リリーフ弁21は、内部空間13が、規定の気圧以上になった場合、内部空間13のガスの排気を行い、内部空間13を規定の気圧に保つ。なお、リリーフ弁21により、内部空間13の気圧を調整する場合には、レギュレーター18を設けなくてもよい。
【0022】
さらに、圧力容器10には、圧力計22が設けられている。圧力計22は、内部空間13の気圧を測定する。また、圧力計22は、接点スイッチを備え、内部空間13の気圧が所定値に達したことを検出すると、検出信号を測定器23に送信する。
【0023】
さらに、圧力容器10には、一対の試験端子24,25が設けられている。なお、本実施例では説明の簡単化のために試験端子を24,25の2つとしているが、本発明は試験端子を2つに限定するものではなく、測定仕様に応じて3つ以上の試験端子を設ける場合も含めるものである。試験端子24,25はそれぞれ、圧力容器10の外部から内部空間13に延在している。圧力容器10の外部に位置する試験端子24,25のそれぞれの部分は、測定器23と電気的に接続されている。試験端子24,25にはそれぞれ、測定器23から試験電圧が供給される。
【0024】
さらに、圧力容器10の内部空間13には、一対の試験電極26,27が設けられている。試験電極26,27は、試験コンタクターと称される場合もある。試験電極26は、試験端子24に接続され、試験端子24から試験電圧を受け取り、受け取った試験電圧を内部空間13に配置された被試験体12の電極28に供給する。
【0025】
試験電極27は、試験端子25に接続され、試験端子25から試験電圧を受け取り、受け取った試験電圧を内部空間13に配置された被試験体12の電極29に供給する。試験電極26,27から被試験体12の電極28,29に試験電圧が供給されることで、被試験体12の試験が行われる。
【0026】
次に、底板11について説明する。底板11には、圧力容器10の内部空間13と対向する面側に、被試験体12が載置される載置台30が設けられている。底板11が圧力容器10と密着しているとき、載置台30に載置された被試験体12は、圧力容器10の内部空間13に位置し、被試験体12の電極28,29はそれぞれ、試験電極26,27と接触する。
【0027】
また、底板11が下降し、圧力容器10から離間すると、被試験体12は、圧力容器10の外側に運び出され、被試験体12の電極28,29はそれぞれ、試験電極26,27から離れる。
【0028】
次に、測定器23について説明する。測定器23は、高電圧電源や測定回路等の試験回路を備え、試験電圧を試験端子24,25に供給することで、被試験体12の試験を行う。試験電圧の供給、すなわち、試験の開始は、圧力計22から送信された検出信号に応じて行われる。また、試験電圧の供給を、手動により開始することも可能である。
【0029】
次に、試験装置1を用いて、被試験体12の試験を行う方法について説明する。
図2は、第1の実施の形態に係る試験方法の一例を示すフローチャートである。
[ステップS100]初期状態として、供給用ソレノイドバルブ19を閉じ、排気用ソレノイドバルブ20を開いておく。さらに、底板11を下降させ、底板11と圧力容器10とを離間させておく。
【0030】
[ステップS101]レギュレーター18を調整し、指定の圧力設定にする。
[ステップS102]載置台30に被試験体12を載置する。なお、この作業は、手動により行ってもよいし、搬送機を用いて自動的に行ってもよい。
【0031】
[ステップS103]底板11を上昇させて、圧力容器10と密着させる。ここで、予め、試験電極26,27の位置を調整しておき、もしくはイメージセンサを用いたパターン認識などにより特定した被試験体12の位置に試験電極26,27の位置を調整して、底板11と圧力容器10とが密着した際、被試験体12の電極28,29と、試験電極26,27とが接触するようにしておく。
【0032】
[ステップS104]排気用ソレノイドバルブ20を閉じ、供給用ソレノイドバルブ19を開く。これにより、レギュレーター18により圧力が調整された高圧ガスが、内部空間13に供給され、内部空間13の気圧が上昇する。
【0033】
[ステップS105]圧力計22が所定の値に達すると、圧力計22が検出信号を測定器23に送信し、測定器23が、受信した検出信号に応じて試験電圧を試験端子24,25に供給することで、被試験体12の試験を開始する。このように、試験の開始を自動的に行うことで、人的コストを低減することができる。また、このとき、供給用ソレノイドバルブ19を閉じてもよい。
【0034】
このように、被試験体12の試験は、試験雰囲気である圧力容器10の内部空間13の気圧を上昇させた状態で行われる。
[ステップS106]試験が終了したら、供給用ソレノイドバルブ19を閉じ、排気用ソレノイドバルブ20を開いて、圧力容器10の内部空間13を常圧に戻す。
【0035】
[ステップS107]底板11を下降させ、被試験体12を内部空間13から取り出す。取り出された被試験体12には、試験結果に応じて、良品、不良品の分類等の処理が施される。
【0036】
[ステップS108]次の被試験体12を載置台30に載置して、処理をステップS103に進める。
以上のステップにより、被試験体12の試験が行われる。なお、内部空間13において、大気成分の排除が必要な場合、または、供給するガスの濃度を高める必要がある場合には、配管16を真空ポンプに繋ぎ、ステップS103とステップS104との間において、真空ポンプを動作させ、内部空間13の残存空気を排出させる。
【0037】
また、圧力容器10の内部空間13の湿度が高い場合、被試験体12や試験電極26,27への水分吸着や、雰囲気ガスそのものの含有水分により、試験雰囲気の絶縁耐圧が低下する場合がある。そのため、内部空間13の湿度を80%RH以下に抑えることが、絶縁耐圧を低下させないために効果的である。
【0038】
その実現手段としては、例えば、試験雰囲気のガス圧指定値が、例えば、0.2MPaである場合、圧力容器10の内部空間13に供給するガスそのものの湿度を60%RH以下とする方法と、ガス供給前の内部空間13(大気圧)の湿度を80%RH以下としておくとともに、供給するガスの湿度も80%RH以下とする方法とがある。
【0039】
前者の場合、仮に、ガス供給前の内部空間13の湿度が100%RHであったとしても、湿度60%RH以下のガスを同一体積分だけ供給すれば、全体の湿度は80%RH以下となる。ガス供給源17により供給されるガスに、例えば、液体窒素から作成する窒素ガスや、市販の高圧ボンベに封入されているガスを用いる場合、これらのガスの湿度は1%RH以下であり、試験で要求される湿度の上限と比較して極めて低い。そのため、内部空間13の指定気圧が比較的高ければ、容易に低湿度雰囲気を実現させることが可能である。
【0040】
以上のように、第1の実施の形態では、試験雰囲気となる圧力容器10の内部空間13の気圧を上昇させた状態で、試験電極26,27から被試験体12に試験電圧を供給して、被試験体12の試験を行う。この構成によれば、試験中に内部空間13の雰囲気に絶縁破壊が発生して、被試験体12の電極28,29の間や電極28,29と試験装置1との間等において放電がおこってしまう可能性を抑制することができる。
【0041】
すなわち、圧力容器10の内部空間13の圧力が上昇すると、内部空間13の雰囲気の絶縁耐圧は向上する。これはパッシェンの法則に基づくものである。パッシェンの法則は、平行な電極間において火花放電が生じる電圧は、気圧と電極の間隔との積の関数であることを示す法則である。
【0042】
気圧を「p」、電極間隔を「d」としたとき、放電電圧と「p*d」との関係は、気圧の種類によって異なるが、その多くは、「p*d」(単位:気圧*mm)が10-2から10-1の範囲で放電電圧の最低値がみられる。
【0043】
火花放電は、電界で加速された電子が気体分子と衝突し、気体を電離させることによっておこる。そのため、ある境界より気体が少ない場合は、衝突がおこりにくくなり電離する気体が少ないため、火花放電がおこりにくくなる。また、反対に、ある境界より気体が多い場合には、電子が衝突までに十分に加速されにくくなり電離する気体が少ないため、火花放電がおこりにくくなる。すなわち、この境界において、火花放電が最もおこりやすくなり、放電電圧が最低値となる。
【0044】
パッシェンの法則では、放電電圧が最低値をとる値よりも「p*d」が大きい範囲では、「p*d」が大きくなるに従って放電電圧も大きくなる。すなわち、パッシェンの法則は、電極間が一定の条件では、気体の圧力を上昇させれば、放電電圧が高くなり、絶縁耐圧を向上できることを示している。
【0045】
図3は、パッシェンカーブの一例を示す図である。図3(A)は、六フッ化硫黄ガスのパッシェンカーブを示す図であり、図3(B)は、窒素のパッシェンカーブを示す図である。ここで、横軸は、「p*d」を示し、縦軸は放電電圧[kV]を示している。図3(A)、(B)に示すように、「p*d」が10-2から10-1の範囲よりも大きい場合、「p*d」が大きくなるに従って放電電圧も高くなる。
【0046】
このように、圧力容器10の内部空間13の圧力が上昇すると、内部空間13の雰囲気の絶縁耐圧は向上するため、上述したように、第1の実施の形態によれば、試験中に内部空間13の雰囲気に絶縁破壊が発生して放電がおこってしまう可能性を抑制することができる。
【0047】
このため、圧力容器10の内部空間13に供給するガスに、地球温暖化係数の高い、六フッ化硫黄ガスに代表される高絶縁性能ガスを用いなくても、高電圧試験を実施できるため、地球環境への負荷を低減することが可能となる。
【0048】
すなわち、圧力容器10の内部空間13に供給されるガスが、例えば、窒素の場合、窒素の絶縁性は、六フッ化硫黄ガスよりも低い。例えば、図3(A)のパッシェンカーブで示されるように、「p」が1気圧で、「d」が1mmの場合、すなわち、「p*d」が100の場合、六フッ化硫黄ガスの放電電圧は、9.5kVである。それに対して、図3(B)のパッシェンカーブで示されるように、窒素の放電電圧は、「p*d」が100の場合、約4kVである。
【0049】
しかしながら、供給ガスに窒素を用いた場合でも、第1の実施の形態によれば、内部空間13の気圧を上昇させることで、内部空間13の雰囲気の絶縁耐圧を向上させることができ、高電圧試験を実施することが可能となる。
【0050】
また、高絶縁性能ガスは比較的高価であるため、高絶縁性能ガスを用いなくても高電圧試験を実施できることで、試験コストを大幅に低減することが可能となる。
さらに、第1の実施の形態では、内部空間13の気圧を上昇させることのみで、内部空間13の雰囲気の絶縁耐圧を向上させることができるため、試験装置や試験のための設備を複雑にすることなく、高電圧試験を実現することが可能となる。
【0051】
次に、試験装置1に対して、圧力容器10の内部空間13の気圧を上昇させるための他の加圧手段を用いた実施の形態を、第2の実施の形態として説明する。
[第2の実施の形態]
図4は、第2の実施の形態に係る試験装置の一例を示す図である。
【0052】
試験装置2は、試験装置1と比較して、圧力容器の形状が異なり、さらに、ピストン31と、サーボモーター32とが追加して設けられている。また、リリーフ弁は設けられていないが、設けるようにしてもよい。その他の構成は試験装置1と同様である。
【0053】
圧力容器33は、その上方が開口している。ピストン31は、圧力容器33の開口を塞ぐように配置されている。ピストン31には、サーボモーター32が設けられている。サーボモーター32による制御により、ピストン31は、圧力容器33の内部空間34を上昇、または、下降する。
【0054】
このとき、ピストン31は、圧力容器33の内側壁35に密着しながら、内側壁35に沿って移動する。すなわち、圧力容器33は、シリンダーとして機能する。なお、ピストン31の制御を、サーボモーター32に替えて、手動により行ってもよい。この場合、例えば、錘や、てこの原理を用いたハンドプレス等が用いられる。
【0055】
ピストン31が下降することで、圧力容器33の内部空間34のガスが圧縮され、内部空間34の気圧は上昇する。ピストン31が上昇することで、圧力容器33の内部空間34の気圧は下降し、常圧となる。
【0056】
また、ガス供給源17が供給する高圧ガスの圧力は、試験装置1の場合よりも低いものでよく、例えば、0.1MPa以上でよい。
なお、内部空間34に供給するガスが、大気である場合、ガス供給源17やレギュレーター18は設けなくてもよく、配管15から大気を吸入できる構造となっていればよい。また、この場合、配管15と配管16とを別々に設ける必要がなく、共通の配管によりガスの給排気を行うようにしてもよい。
【0057】
次に、試験装置2を用いて、被試験体12の試験を行う方法について説明する。まず、圧力容器33の内部空間34に供給されるガスが大気であり、試験装置2には、ガス供給源17やレギュレーター18が設けられておらず、配管15から大気が吸入される場合を例に、説明を進める。
【0058】
図5は、第2の実施の形態に係る試験方法の一例を示すフローチャートである。
[ステップS200]初期状態として、供給用ソレノイドバルブ19、排気用ソレノイドバルブ20を開けておく。さらに、底板11を下降させ、底板11と圧力容器33とを離間させておく。ここで、供給用ソレノイドバルブ19、排気用ソレノイドバルブ20の開閉は任意であるが、開けておいた方が底板11の下降がスムースに行われる。
【0059】
[ステップS201]載置台30に被試験体12を載置する。なお、この作業は、手動により行ってもよいし、搬送機を用いて自動的に行ってもよい。
[ステップS202]底板11を上昇させて、圧力容器33と密着させる。ここで、予め、試験電極26,27の位置を調整しておき、底板11と圧力容器33とが密着した際、被試験体12の電極28,29と、試験電極26,27とが接触するようにしておく。
【0060】
[ステップS203]排気用ソレノイドバルブ20、および、供給用ソレノイドバルブ19を閉じる。
[ステップS204]サーボモーター32により、ピストン31を下降させて、圧力容器33の内部空間34の気圧を上昇させる。
【0061】
[ステップS205]圧力計22が所定の値に達したら、圧力計22が検出信号を測定器23とサーボモーター32とに送信する。サーボモーター32は、検出信号を受信すると、ピストン31の下降を停止する。測定器23は、受信した検出信号に応じて試験電圧を試験端子24,25に供給することで、被試験体12の試験を開始する。また、予め確認がとれている規定の気圧を確保できる位置までピストン31が下降したら、ピストン31の下降を停止し、試験を開始するようにしてもよい。
【0062】
このように、被試験体12の試験は、試験雰囲気である圧力容器33の内部空間34の気圧を上昇させた状態で行われる。
[ステップS206]試験が終了したら、供給用ソレノイドバルブ19、および、排気用ソレノイドバルブ20を開いて、圧力容器33の内部空間34を常圧に戻すとともに、サーボモーター32によりピストン31を上昇させて元の位置に戻す。
【0063】
なお、供給用ソレノイドバルブ19、および、排気用ソレノイドバルブ20が閉じた状態で、ピストン31を上昇させても、内部空間34を常圧に戻すことは可能であるが、開いた方が、次のステップS207での底板11の下降をスムースに行うことができる。
【0064】
[ステップS207]底板11を下降させ、被試験体12を内部空間34から取り出す。取り出された被試験体12には、試験結果に応じて、良品、不良品の分類等の処理が施される。
【0065】
[ステップS208]次の被試験体12を載置台30に載置して、処理をステップS202に進める。
以上のステップにより、被試験体12の試験が行われる。
【0066】
次に、圧力容器33の内部空間34に供給されるガスに、大気以外のガスが用いられる場合を例に、試験装置2を用いた試験方法について説明する。なお、この例では、試験装置2には、ガス供給源17とレギュレーター18が設けられているものとする。
【0067】
図6は、第2の実施の形態に係る試験方法の別の例を示すフローチャートである。
[ステップS300]初期状態として、供給用ソレノイドバルブ19を閉じ、排気用ソレノイドバルブ20を開けておく。さらに、底板11を下降させ、底板11と圧力容器33とを離間させておく。
【0068】
[ステップS301]レギュレーター18を調整し、指定の圧力設定にする。
[ステップS302]載置台30に被試験体12を載置する。なお、この作業は、手動により行ってもよいし、搬送機を用いて自動的に行ってもよい。
【0069】
[ステップS303]底板11を上昇させて、圧力容器33と密着させる。ここで、予め、試験電極26,27の位置を調整しておき、底板11と圧力容器33とが密着した際、被試験体12の電極28,29と、試験電極26,27とが接触するようにしておく。
【0070】
[ステップS304]排気用ソレノイドバルブ20を閉じ、供給用ソレノイドバルブ19を開く。これにより、レギュレーターにより圧力が調整されたガスが、内部空間34に供給される。
【0071】
[ステップS305]内部空間34に供給されたガスの濃度が指定値となるよう、所定時間経過するのを待って、供給用ソレノイドバルブ19を閉じる。
[ステップS306]サーボモーター32により、ピストン31を下降させて、圧力容器33の内部空間34の気圧を上昇させる。
【0072】
[ステップS307]圧力計22が所定の値に達したら、圧力計22が検出信号を測定器23とサーボモーター32とに送信する。サーボモーター32は、検出信号を受信すると、ピストン31の下降を停止する。測定器23は、受信した検出信号に応じて試験電圧を試験端子24,25に供給することで、被試験体12の試験を開始する。また、予め確認がとれている規定の気圧を確保できる位置までピストン31が下降したら、ピストン31の下降を停止し、試験を開始するようにしてもよい。
【0073】
このように、被試験体12の試験は、試験雰囲気である圧力容器33の内部空間34の気圧を上昇させた状態で行われる。
[ステップS308]試験が終了したら、排気用ソレノイドバルブ20を開いて、圧力容器33の内部空間34を常圧に戻すとともに、サーボモーター32によりピストン31を上昇させて元の位置に戻す。
【0074】
なお、排気用ソレノイドバルブ20が閉じた状態でピストン31を上昇させても内部空間34を常圧に戻すことは可能であるが、開いた方が、次のステップS309での底板11の下降をスムースに行うことができる。
【0075】
[ステップS309]底板11を下降させ、被試験体12を内部空間34から取り出す。取り出された被試験体12には、試験結果に応じて、良品、不良品の分類等の処理が施される。
【0076】
[ステップS310]次の被試験体12を載置台30に載置して、処理をステップS303に進める。
以上のステップにより、被試験体12の試験が行われる。なお、内部空間34において、大気成分の排除が必要な場合、または、供給するガスの濃度を高める必要がある場合には、配管16を真空ポンプに繋ぎ、ステップS303とステップS304との間において、真空ポンプを動作させ、内部空間34の残存空気を排出させる。
【0077】
また、圧力容器33の内部空間34の湿度が高い場合、被試験体12や試験電極26,27への水分吸着や、雰囲気ガスそのものの含有水分により、試験雰囲気の絶縁耐圧が低下する場合がある。そのため、内部空間34の湿度を80%RH以下に抑えることが、絶縁耐圧を低下させないために効果的である。
【0078】
以上のように、第2の実施の形態では、試験雰囲気となる圧力容器33の内部空間34の気圧を上昇させた状態で、試験電極26,27から被試験体12に試験電圧を供給して、被試験体12の試験を行う。この構成によれば、第1の実施の形態と同様に、試験中に内部空間34の雰囲気に絶縁破壊が発生して、被試験体12の電極28,29の間や電極28,29と試験装置2との間等において放電がおこってしまう可能性を抑制することができる。
【0079】
このため、圧力容器33の内部空間34に供給するガスに高絶縁性能ガスを用いなくても、高電圧試験を実施できるため、地球環境への負荷を低減することが可能となる。
また、高絶縁性能ガスを用いなくても高電圧試験を実施できることで、試験コストを大幅に低減することが可能となる。
【0080】
さらに、内部空間34の気圧を上昇させることのみで、内部空間34の雰囲気の絶縁耐圧を向上させることができるため、試験装置や試験のための設備を複雑にすることなく、高電圧試験を実現することが可能となる。
【0081】
次に、第1および第2の実施の形態の試験方法が適用される絶縁耐圧試験の一例を、第3の実施の形態として説明する。
[第3の実施の形態]
図7は、第3の実施の形態に係る絶縁耐圧試験の一例を示す図である。図7(A)は、被試験体40の上面図であり、図7(B)は、試験用電極47a,47bが取り付けられた被試験体40の断面図である。
【0082】
図7(A)に示すように、被試験体40は、フレーム電極41と、複数のリード端子42,43と、半導体チップ44とを有している。半導体チップ44はフレーム電極41上に形成され、半導体チップ44とリード端子42,43とは、内部配線45により電気的に接続されている。さらに、フレーム電極41と、複数のリード端子42,43と、半導体チップ44と、内部配線45とは、樹脂46により封止されている。ここで、フレーム電極41の端部と、リード端子42,43の端部とは樹脂46から露出している。
【0083】
試験を行う際、図7(B)に示すように、被試験体40は、試験用電極47a,47bにより挟まれる。さらに、試験用電極47a,47bを短絡させ、フレーム電極41とリード端子42,43とを短絡させる。そして、測定器23から、例えば、フレーム電極41に「+」の電圧を供給し、試験用電極47aに「−」の電圧を供給することで、被試験体40の試験が行われる。ここで、測定器23は、ACまたはDCの高電圧発生機と電流計を有している。
【0084】
この試験は、フレーム電極41およびリード端子42,43と樹脂46の表面との絶縁性能(漏れ電流や絶縁破壊の有無)を測定するための試験である。目的に応じ、指定の電圧を指定時間印加し合否判定する方法と、電圧をステップアップし、破壊電圧を測定する方法とがある。
【0085】
この試験を行う場合、試験雰囲気の絶縁耐圧が低いと、樹脂46から露出しているフレーム電極41およびリード端子42,43と、試験用電極47aまたは試験用電極47bとの間(図中の矢印48,49参照)に絶縁破壊が発生して放電がおこってしまう可能性がある。
【0086】
第1および第2の実施の形態に係る試験方法によれば、試験雰囲気の絶縁耐圧を向上させることができるので、このような被試験体40の絶縁耐圧試験も、放電の影響を抑制して行うことが可能となる。
【0087】
次に、絶縁耐圧試験の他の例を説明する。図8は、第3の実施の形態に係る絶縁耐圧試験の別の例を示す図である。
被試験体50は、金属ベース51と、金属ベース51上に配置された絶縁基板52と、絶縁基板52上に配置されたIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)チップ53と、金属ベース51、絶縁基板52、および、IGBTチップ53を収容する樹脂ケース54とを有する。さらに、樹脂ケース54上には、樹脂カバー55が配置され、樹脂カバー55上には主端子56,57,58が配置されている。さらに、樹脂ケース54上には、補助端子59,60が配置されている。主端子56,57,58および補助端子59,60は図示しない内部配線によりIGBTチップ53と電気的に接続されている。
【0088】
試験を行う際、主端子56,57,58と補助端子59,60とを全て短絡させる。そして、測定器23から、例えば、補助端子60に「+」の電圧を供給し、金属ベース51に「−」の電圧を供給することで、被試験体50の試験が行われる。ここで、測定器23は、ACまたはDCの高電圧発生機と電流計を有している。
【0089】
この試験は、金属ベース51と、IGBTチップ53、主端子56,57,58、および、補助端子59,60との絶縁性能を測定するための試験である。目的に応じ、指定の電圧を指定時間印加し合否判定する方法と、電圧をステップアップし、破壊電圧を測定する方法とがある。
【0090】
この試験を行う場合、試験雰囲気の絶縁耐圧が低いと、主端子56,57,58と金属ベース51との間(図中の矢印61参照)、または、補助端子59,60と金属ベース51との間(図中の矢印62参照)に絶縁破壊が発生して放電がおこってしまう可能性がある。
【0091】
第1および第2の実施の形態に係る試験方法によれば、試験雰囲気の絶縁耐圧を向上させることができるので、このような被試験体50の絶縁耐圧試験も、放電の影響を抑制して行うことが可能となる。
【0092】
次に、第1および第2の実施の形態に係る試験方法に適用される試験回路の例を、第4の実施形態として説明する。
[第4の実施の形態]
以下に説明する試験回路は、第1および第2の実施の形態における試験装置1,2の測定器23に設けられる。
【0093】
まず、RBSOA(Reverse Bias Safe Operation Area)試験回路について説明する。図9は、第4の実施の形態に係る試験回路の一例とそのタイミングチャートを示す図である。
【0094】
ここでは、ゲート電極とコレクタ電極とエミッタ電極とを備えるトランジスタを被試験体71としている。図9(A)に示すように、RBSOA試験回路70は、被試験体71のゲート電極と接続される端子72と、コレクタ電極と接続される端子73と、エミッタ電極に接続される端子74とを有する。さらに、RBSOA試験回路70は、試験電源75と、コンデンサ76と、負荷用コイル77と、FWD(Free Wheeling Diode)78と、ゲート抵抗79と、ゲートドライバ80とを有する。
【0095】
端子73と試験電源75の正極との間には負荷用コイル77とFWD78とが電気的に接続されている。端子74は試験電源75の負極と電気的に接続されている。端子73,74と試験電源75の正極、負極との間を接続する配線には、浮遊インダクタンス81a,81bが存在する。試験電源75の正極と負極との間にはコンデンサ76が電気的に接続されている。端子72と端子74との間にはゲート抵抗79とゲートドライバ80とが電気的に接続されている。
【0096】
図9(B)は、RBSOA試験回路70のタイミングチャートを示す。図中には、被試験体71のコレクタ−エミッタ間電圧(VCE)82と、コレクタ電流(IC)83とが示されている。拡大図中の矢印84は、回路の浮遊インダクタンス81a,81bによる跳ね上がり電圧を示す。跳ね上がり電圧のピークは、例えば、1700Vである。
【0097】
次に、L負荷アバランシェ試験回路について説明する。図10は、第4の実施の形態に係る試験回路の別の例とそのタイミングチャートを示す図である。
ここでは、ゲート電極とコレクタ電極とエミッタ電極とを備えるトランジスタ、または、ゲート電極とドレイン電極とソース電極とを備えるトランジスタを、被試験体91としている。
【0098】
図10(A)に示すように、L負荷アバランシェ試験回路90は、被試験体91のゲート電極と接続される端子92と、コレクタ電極またはドレイン電極と接続される端子93と、エミッタ電極またはソース電極と接続される端子94とを有する。さらに、L負荷アバランシェ試験回路90は、試験電源95と、コンデンサ96と、負荷用コイル97と、ゲート抵抗98と、ゲートドライバ99とを有する。
【0099】
端子93と試験電源95の正極との間には負荷用コイル97が電気的に接続されている。端子94は試験電源95の負極と電気的に接続されている。試験電源95の正極と負極との間にはコンデンサ96が電気的に接続されている。端子92と端子94との間にはゲート抵抗98とゲートドライバ99とが電気的に接続されている。
【0100】
図10(B)は、L負荷アバランシェ試験回路90のタイミングチャートを示す。図中には、被試験体91のコレクタ−エミッタ間電圧(VCE)またはドレイン−ソース間電圧(VDS)100と、コレクタ電流(IC)またはドレイン電流(ID)101とが示されている。矢印102では、負荷インダクタンスによる跳ね上がり電圧が素子耐圧まで上昇する。跳ね上がり電圧のピークは、例えば、1000Vである。
【0101】
次に、負荷短絡試験回路について説明する。図11は、第4の実施の形態に係る試験回路のさらに別の例とそのタイミングチャートを示す図である。
ここでは、ゲート電極とコレクタ電極とエミッタ電極とを備えるトランジスタを被試験体111としている。図11(A)に示すように、負荷短絡試験回路110は、被試験体111のゲート電極と接続される端子112と、コレクタ電極と接続される端子113と、エミッタ電極に接続される端子114とを有する。さらに、負荷短絡試験回路110は、試験電源115と、コンデンサ116と、ゲート抵抗117と、ゲートドライバ118とを有する。
【0102】
端子113は試験電源115の正極と電気的に接続されている。端子113と試験電源115の正極との間を接続する配線には、浮遊インダクタンス119が存在する。端子114は試験電源115の負極と電気的に接続されている。試験電源115の正極と負極との間にはコンデンサ116が電気的に接続されている。端子112と端子114との間にはゲート抵抗117とゲートドライバ118とが電気的に接続されている。
【0103】
図11(B)は、負荷短絡試験回路110のタイミングチャートを示す。図中には、被試験体111のコレクタ−エミッタ間電圧(VCE)120と、コレクタ電流(IC)121とが示されている。矢印122は、回路の浮遊インダクタンス119による跳ね上がり電圧を示す。跳ね上がり電圧のピークは、例えば、1700Vである。
【0104】
次に、逆回復動作保証試験回路について説明する。図12は、第4の実施の形態に係る試験回路のさらに別の例とそのタイミングチャートを示す図である。
ここでは、カソード電極とアノード電極とを備えるダイオードを被試験体131としている。図12(A)に示すように、逆回復動作保証試験回路130は、被試験体131のカソード電極と接続される端子132とアノード電極と接続される端子133とを有する。さらに、逆回復動作保証試験回路130は、試験電源134と、コンデンサ135と、スイッチ素子136と、負荷用コイル137と、ゲート抵抗138と、ゲートドライバ139とを有する。
【0105】
端子132と試験電源134の正極との間にはスイッチ素子136が電気的に接続されている。端子132と試験電源134の正極との間を接続する配線には、浮遊インダクタンス140が存在する。端子133は試験電源134の負極と電気的に接続されている。試験電源134の正極と負極との間にはコンデンサ135が電気的に接続されている。
【0106】
端子132と端子133との間には負荷用コイル137が電気的に接続されている。スイッチ素子136の制御電極と端子132との間にはゲート抵抗138とゲートドライバ139とが電気的に接続されている。
【0107】
図12(B)は、逆回復動作保証試験回路130のタイミングチャートを示す。図中には、スイッチ素子136のコレクタ電流141と、被試験体131のカソード−アノード間電圧(VAK)142および電流(IF)143とが示されている。拡大図中の矢印144は、跳ね上がり電圧を示す。跳ね上がり電圧のピークは、例えば、1700Vである。
【0108】
次に、降伏電圧(耐圧)およびリーク電流測定回路について説明する。図13は、第4の実施の形態に係る試験回路のさらに別の例とそのタイミングチャートを示す図である。
ゲート電極とコレクタ電極とエミッタ電極とを備えるトランジスタ、または、ゲート電極とドレイン電極とソース電極とを備えるトランジスタを、被試験体151としている。
【0109】
図13(A)に示すように、降伏電圧およびリーク電流測定回路150は、被試験体151のゲート電極と接続される端子152と、被試験体151のコレクタ電極またはドレイン電極と接続される端子153と、被試験体151のエミッタ電極またはソース電極と接続される端子154とを有する。さらに、降伏電圧およびリーク電流測定回路150は、試験電圧可変電源155と、電流測定回路156と、電圧測定回路157とを有する。
【0110】
端子153は試験電圧可変電源155の正極と電気的に接続されている。端子154と試験電圧可変電源155の負極との間には電流測定回路156が電気的に接続されている。端子153と端子154との間には電圧測定回路157が電気的に接続されている。端子152と端子154とは電気的に接続されている。
【0111】
図13(B),(C)は、降伏電圧およびリーク電流測定回路150のタイミングチャートを示す。図13(B)は、降伏電圧測定におけるタイミングチャートを示し、図13(C)は、リーク電流測定におけるタイミングチャートを示す。
【0112】
図13(B)には、被試験体151のコレクタ−エミッタ間電圧(VCE)またはドレイン−ソース間電圧(VDS)158と、コレクタ電流(IC)またはドレイン電流(ID)159とが示されている。矢印160はコレクタ電流またはドレインに指定の電流が流れたときのコレクタ−エミッタ間電圧(VCE)またはドレイン−ソース間電圧(VDS)である降伏電圧を示し、矢印161は指定の電流値を示す。降伏電圧は、例えば、1821Vである。
【0113】
図13(C)には、コレクタ−エミッタ間電圧(VCE)またはドレイン−ソース間電圧(VDS)162と、コレクタ電流(IC)またはドレイン電流(ID)163とが示されている。矢印164は指定の電圧値を示し、矢印165は当該指定の電圧が印加されたときのリーク電流を示す。指定の電圧値は、通常、定格電圧であり、例えば、1700Vである。
【0114】
次に、第1および第2の実施の形態に係る試験方法が適用される被試験体の例を、第5の実施の形態として説明する。
[第5の実施の形態]
図14は、第5の実施の形態に係る発明の被試験体の一例を示す図である。図14(A)は被試験体170の上面図であり、図14(B)は被試験体170の断面図である。
【0115】
被試験体170は、半導体チップである。ここでは、IGBTチップを例としている。図14(A)、(B)に示すように、被試験体170は、シリコン基板171と、シリコン基板171の上面および下面に形成されたコレクタ電極172と、シリコン基板171の上面に形成されたゲート電極173、エミッタ電極174、および絶縁膜175とを有する。シリコン基板171の上面に形成されたコレクタ電極172とゲート電極173とエミッタ電極174とは、絶縁膜175により互いに絶縁されている。
【0116】
この被試験体170に、高電圧試験を実施する場合、例えば、コレクタ電極172とエミッタ電極174との間、または、コレクタ電極172とゲート電極173との間に規定の高電圧が印加される。これにより、各電極間で放電がおこってしまう可能性がある。
【0117】
第1および第2の実施の形態に係る試験方法によれば、試験雰囲気の絶縁耐圧を向上させることができるので、このような被試験体170の高電圧試験も、放電の影響を抑制して行うことが可能となる。なお、半導体チップが複数形成された半導体ウエハを被試験体に用いてもよい。
【0118】
図15は、第5の実施の形態に係る発明の被試験体の別の例を示す図である。図15(A)は被試験体180の上面図であり、図15(B)は被試験体180の断面図である。
被試験体180は、半導体モジュールの半製品である。ここでは、IGBTモジュールの半製品を例としている。図15(A)、(B)に示すように、被試験体180は、セラミック基板181と、セラミック基板181の上面に形成されたコレクタ電極182、ゲート電極183、およびエミッタ電極184とを有している。コレクタ電極182の上方には、IGBTチップ185が形成(搭載)されている。IGBTチップ185と、ゲート電極183およびエミッタ電極184とは、配線186で接続されている。
【0119】
この被試験体180に、高電圧試験を実施する場合、例えば、コレクタ電極182とエミッタ電極184との間、または、コレクタ電極182とゲート電極183との間に規定の高電圧が印加される。これにより、各電極間や、各電極と配線186との間で放電がおこってしまう可能性がある。
【0120】
第1および第2の実施の形態に係る試験方法によれば、試験雰囲気の絶縁耐圧を向上させることができるので、このような被試験体180の高電圧試験も、放電の影響を抑制して行うことが可能となる。
【0121】
図16は、第5の実施の形態に係る発明の被試験体のさらに別の例を示す図である。図16(A)は被試験体190の上面図であり、図16(B)は被試験体190の回路図である。
【0122】
被試験体190は、半導体モジュールである。ここでは、IGBTモジュールを例としている。図16(A)、(B)に示すように、被試験体190は、P電極191とN電極192とU電極193とを有する。図16(B)に示すように、P電極191とU電極193との間にはIGBT素子194とダイオード195とが電気的に接続され、U電極193とN電極192との間にはIGBT素子196とダイオード197とが電気的に接続されている。
【0123】
この被試験体190に、高電圧試験を実施する場合、例えば、P電極191とN電極192との間に規定の高電圧が印加される。また、構造によっては、P電極191とU電極193との間、N電極192とU電極193との間、または、P電極191、N電極192、およびU電極193と裏面金属ベース(図示せず)間に高電圧が印加される場合もある。これにより、各電極間で放電がおこってしまう可能性がある。なお、被試験体190である半導体モジュールや後述の半導体パッケージ(被試験体200)は、定格電圧以下では放電が起こらないよう設計されていて、放電が懸念されるのは定格電圧以上の電圧が印加されたときである。
【0124】
第1および第2の実施の形態に係る試験方法によれば、試験雰囲気の絶縁耐圧を向上させることができるので、このような被試験体190の高電圧試験も、放電の影響を抑制して行うことが可能となる。
【0125】
図17は、第5の実施の形態に係る発明の被試験体のさらに別の例を示す図である。
被試験体200は、アノード電極201とカソード電極202とを有し、樹脂203により封止された半導体パッケージである。
【0126】
この被試験体200に、高電圧試験を実施する場合、例えば、アノード電極201とカソード電極202との間に規定の高電圧が印加される。これにより、各電極間で放電がおこってしまう可能性がある。
【0127】
被試験体210は、ゲート電極211とドレイン電極212とソース電極213とを有し、樹脂214で封止された半導体パッケージである。
この被試験体210に、高電圧試験を実施する場合、例えば、ドレイン電極212とゲート電極211との間、または、ドレイン電極212とソース電極213との間に、規定の高電圧が印加される。これにより、各電極間で放電がおこってしまう可能性がある。
【0128】
第1および第2の実施の形態に係る試験方法によれば、試験雰囲気の絶縁耐圧を向上させることができるので、このような被試験体200,210の高電圧試験も、放電の影響を抑制して行うことが可能となる。
【0129】
次に、第1および第2の実施の形態の試験装置1,2において、試験雰囲気の気圧を規定する方法を、第6の実施の形態として説明する。
[第6の実施の形態]
ここでは、代表して試験装置1について説明を進めるが、試験装置2についても同様である。まず、測定用デバイスを、試験装置1の圧力容器10の内部空間13に配置する。ここでは、測定用デバイスに、図15で示される被試験体180と同じ構造を備えるIGBTモジュールの半製品を用いた場合を例としている。なお、電極間距離は1.1mmであるものとする。
【0130】
次に、圧力容器10の内部空間13の気圧を0.1MPaとし、この状態で、試験電圧を徐徐に上昇させ、絶縁破壊発生電圧を読み取り、これを絶縁耐圧とする。なお、内部空間13に供給されるガスは窒素であるとする。
【0131】
次に、内部空間13の気圧を0.15MPaとし、同様に絶縁耐圧を求める。以下、気圧を変えて、それぞれの絶縁耐圧を求める。これをグラフにプロットしたものが図18である。
【0132】
図18は、第6の実施の形態に係る絶縁耐圧測定結果の一例を示す図である。図18のグラフの横軸は気圧(MPa)を示し、縦軸は絶縁耐圧(KV)を示す。
このようにして作成したグラフを参照することで、安全に高電圧試験を行える気圧を読み取り、試験雰囲気の気圧条件を決定することが可能となる。
【0133】
例えば、試験電圧の最大値が2KVである場合、試験雰囲気の気圧を0.15MPa以上とすることで、放電を抑制して試験を実施することができる。
なお、絶縁耐圧を高くするには、例えば、圧力容器10の内部空間13の気圧を上昇させる方法と、ガス供給源17が供給するガスに、六フッ化硫黄ガス等の高絶縁性能ガスを混合させる方法とがある。
【符号の説明】
【0134】
1,2 試験装置
10,33 圧力容器
11 底板
12 被試験体
13,34 内部空間
14 Oリング
15,16 配管
17 ガス供給源
18 レギュレーター
19 供給用ソレノイドバルブ
20 排気用ソレノイドバルブ
21 リリーフ弁
22 圧力計
23 測定器
24,25 試験端子
26,27 試験電極
28,29 電極
30 載置台
31 ピストン
32 サーボモーター
35 内側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧力容器と、
前記圧力容器の内部空間に配置され、被試験体が載置される載置台と、
前記圧力容器の前記内部空間に配置され、前記載置台に載置された被試験体に試験電圧を供給する試験電極と、
前記圧力容器の前記内部空間の気圧を上昇させる加圧手段と、を有し、
前記加圧手段により前記圧力容器の前記内部空間の気圧を上昇させた状態で、前記載置台に載置された前記被試験体に前記試験電極から試験電圧を供給して、前記被試験体の試験を行うことを特徴とする試験装置。
【請求項2】
前記加圧手段は、圧力を調整した高圧ガスを前記圧力容器の前記内部空間に供給するレギュレーターを有することを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項3】
前記圧力容器の前記内部空間の気圧を制御するリリーフ弁を有することを特徴とする請求項1または2記載の試験装置。
【請求項4】
前記加圧手段は、前記圧力容器の前記内部空間のガスを圧縮するピストンを有することを特徴とする請求項1記載の試験装置。
【請求項5】
前記圧力容器の前記内部空間に供給されるガスは、窒素、圧縮空気、酸素、二酸化炭素、アルゴンのいずれか1つ、または、これらのうちの1つまたは複数を含む混合ガスであることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の試験装置。
【請求項6】
前記圧力容器の前記内部空間へのガスの流入および前記内部空間からのガスの流出を制御するソレノイドバルブを有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の試験装置。
【請求項7】
試験時における前記圧力容器の前記内部空間の湿度が、80%RH以下であることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の試験装置。
【請求項8】
前記圧力容器の前記内部空間の気圧を測定し、前記内部空間の気圧が所定の値に達すると、前記試験電極に試験電圧を供給する測定器に、試験開始のための信号を送信する圧力計を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載の試験装置。
【請求項9】
圧力容器の内部空間に配置された載置台に、被試験体を載置する工程と、
前記圧力容器の前記内部空間の気圧を上昇させる工程と、
前記圧力容器の前記内部空間の気圧を上昇させた状態で、前記載置台に載置された前記被試験体に、前記内部空間に配置された試験電極から試験電圧を供給して、前記被試験体の試験を行う工程と、
を有することを特徴とする試験方法。
【請求項10】
前記圧力容器の前記内部空間に窒素、圧縮空気、酸素、二酸化炭素、アルゴンのいずれか1つ、または、これらのうちの1つまたは複数を含む混合ガスを供給する工程を有することを特徴とする請求項9記載の試験方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2011−252792(P2011−252792A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−126680(P2010−126680)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000005234)富士電機株式会社 (3,146)
【Fターム(参考)】