説明

認証システム、コントローラ

【課題】事象が短時間で集中して発生するような状況下であっでも、コントローラ側で検出した状態を、短時間でモニター側へと送信してモニター側において反映できる認証システムを提供する
【解決手段】コントローラ側では、未送信の履歴情報の件数が所定件数を上回った優先モード下の送信処理においては、ステップS44〜S46の履歴情報の送信は後回しにして、ステップS41〜S43までの状態記憶部116に記憶された状態情報の送信を先にする。モニター側では、先に受信した状態情報に基づいて状態の提示を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザーを認証する認証システムに関する。
【背景技術】
【0002】
認証システムは、ユーザーから認証情報を読み取った結果を基に扉の施解錠を制御する1以上のコントローラと、各コントローラと接続されたモニターとから構成される。
コントローラにおける読み取りや施解錠といった事象の履歴を、モニターにおいて収集することで履歴の分析に用いる技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-047977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、コントローラからモニターへと履歴を送信する場合には、事象を検出した順番で送ることが考えられる。
もっとも、(A)朝の出勤時間帯などに読み取りや施解錠などが集中するなどして、短時間で大量に事象を検出した場合や、(B)コントローラとモニターとの間の通信回線が一時的に遅延や断絶した場合などには、単位時間あたりに検出する事象の件数が単位時間あたりに送信できる事象の件数を上回ることで、未送信の履歴の件数が滞留し、事象の検出から送信までのタイムラグが長くなるおそれがある。
【0005】
このタイムラグを緩和するために、コントローラの送信リソースや通信回線を増強する手立ても考えられるが、自ずと限界がある上、コスト高を招くので回避したい。
モニター側においては異常検知時の警報機能を備えるものがあり、上述のように異常の検出から送信までのタイムラグが長いと、係る警報機能の無力化を招くことも考えられる。
【0006】
本発明は、このような背景の元になされたものであって、事象が短時間で集中して発生するような状況下であっでも、コントローラ側で検出した状態を短時間でモニター側へと送信して、モニター側で提示できる認証システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る認証システムは、ユーザーの入退室に係る機器を制御するコントローラと、前記コントローラとネットワークを介して接続されるモニターとを備える認証システムであって、コントローラは、制御対象の機器における事象を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した結果を示す履歴情報を第1記憶手段に記憶させる履歴記憶制御手段と、前記機器の状態を記憶する第2記憶手段を、前記検出手段による検出に基づいて更新する状態更新手段と、第1記憶手段に記憶された履歴情報を、記憶された順番に逐次モニターへと送信する送信手段とを備え、前記送信手段は、前記第1記憶手段に記憶された未送信の履歴情報の量に関する所定条件を満たすと、前記第2記憶手段に記憶された状態を示す状態情報を前記履歴情報より先にモニターへと送信し、モニターは、前記送信手段により送信される状態情報および履歴情報を受信する受信手段と、受信された履歴情報を記憶する履歴保持手段と、受信された状態情報に基づいて、機器の状態を提示する提示手段とを備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る認証システムによれば、コントローラの送信手段は、所定条件を満たすと、第2記憶手段に記憶された状態を示す状態情報を履歴情報より先にモニターへと送信し、モニターの提示手段は、送信された状態情報に基づいて、機器の状態を提示するので、例えば、第1記憶手段に記憶された履歴情報が大量件数溜まるような状況下においても、履歴情報より先に送信する状態情報を利用してモニター側の提示手段で最新の状態を提示することができる。
【0009】
また、前記提示手段は、前記所定条件が満たされていない間の検出に係る履歴情報に基づいて、機器の状態を提示し、前記所定条件が満たされている間の検出に係る履歴情報に基づいては機器の状態を提示せず、前記受信された状態情報に基づいて機器の状態を提示するとしても構わない。
この構成によれば、例えば所定条件が履歴情報の件数がある閾値を上回ったことを条件とすると、提示手段は、所定条件が満たされていない間、つまり履歴情報の件数がある閾値以下の場合には、順々に送信されてくる履歴情報に基づいて機器の状態を提示することができる。
【0010】
また、所定条件が満たされていない間、つまり履歴情報の件数がある閾値を上回った場合には、先に送信されてくる状態情報に基づいて機器の状態を素早く提示できる。
また、後から遅れて送信されてくることになる履歴情報は、未送信のまま滞留した時間が長く上記状態情報より古い情報であることが予想される。このためこの履歴情報に基づいては機器の状態を提示しないことで、遅れて送信される古い履歴情報により意味の無い提示を行うことを回避できる。
【0011】
また、コントローラは、前記所定条件が満たされていない間は第1モード、前記所定条件が満たされている間は第2モードに設定するモード設定手段を備え、前記送信手段は、前記モード設定手段により設定されているモードを示す設定情報を送信し、前記受信手段は、前記送信手段により送信される設定情報を受信し、前記提示手段は、設定情報に示されるモードが第1モードである間には、前記履歴情報に基づいて機器の状態を提示し、設定情報に示されるモードが第2モードである間には、前記履歴情報に基づいては機器の状態を提示せず、前記受信された状態情報に基づいて機器の状態を提示するとしても構わない。
【0012】
この構成によれば、モード管理を利用することで、モニター側において正確に状態の提示を行うことができる。
また、前記送信手段は、前記所定条件が満たされていない間には、送信すべき履歴情報に、当該履歴情報に基づいて機器の状態を提示すべき旨を示す第1識別子を付加して送信し、前記所定条件が満たされている間には、送信すべき履歴情報に、当該履歴情報に基づいては機器の状態を提示すべきでない旨を示す第2識別子を付加して送信し、送信すべき状態情報に、当該状態情報に基づいて機器の状態を提示すべき旨を示す第3識別子を付加して送信し、前記提示手段は、前記第1識別子が付加された履歴情報に基づいて、機器の状態を提示し、前記第2識別子が付加された履歴情報に基づいては機器の状態を提示せず、前記第3識別子が付加された状態情報に基づいて、機器の状態を提示するとしても構わない。
【0013】
この構成によれば、コントローラの送信手段から送信する履歴情報または状態情報に各識別子を付加し、付加された各識別子に基づいて提示手段への提示の可否を判断するので、モニター側において正確に状態の提示を行うことができる。
また、前記機器の状態には、n(nは2以上の自然数)種類の値が存在し、前記状態更新手段は、前記検出手段による検出に応じて、機器の状態に係る検出回数をインクリメントし、前記提示手段は、前記検出回数を前記nで除した剰余に基づいて、前記機器の状態の値がn種類のうちのいずれであるかを特定して前記提示に用いるとしても構わない。
【0014】
この構成によれば、状態更新手段は、検出に応じて機器の状態に係る回数をインクリメントするので、機器の状態が頻繁に変更される状況下においても、変更を取りこぼさずに捕捉することができる。
特に、そのときどきの瞬間の状態だけを重要視するのではなく、状態がこれまでどのように変遷したかを重要視するシステムにおいて有効である。
【0015】
本発明に係るコントローラは、ユーザーの入退室に係る機器を制御するコントローラであって、制御対象の機器における事象を検出する検出手段と、前記検出手段が検出した結果を示す履歴情報を第1記憶手段に記憶させる履歴記憶制御手段と、前記機器の状態を記憶する第2記憶手段を、前記検出手段による検出次第更新する状態更新手段と、第1記憶手段に記憶された履歴情報を、記憶された順番に逐次モニターへと送信する送信手段とを備え、前記送信手段は、前記第1記憶手段に記憶された未送信の履歴情報の量に関する所定条件を満たすと、前記第2記憶手段に記憶された状態を示す状態情報を前記履歴情報より先にモニターへと送信することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】認証システム1のシステム構成を示す図
【図2】ゲートコントローラ100の機能ブロック図
【図3】モニター10の機能ブロック図
【図4】状態記憶部116が記憶する状態のデータ構造を示すテーブル
【図5】事象検出部108が検出する事象のデータ構造を示すテーブル
【図6】履歴記憶部112のデータ構造を示すテーブル
【図7】ゲートコントローラ100が行う検出・記憶処理を示すフローチャート
【図8】ゲートコントローラ100が行うモード設定処理を示すフローチャート
【図9】ゲートコントローラ100が行う通常モード下での送信処理を示すフローチャートである。
【図10】ゲートコントローラ100が行う優先モード下での送信処理を示すフローチャート
【図11】モニター10側における受信処理などを示すフローチャート
【図12】実施の形態2に係る送信処理を示すフローチャート
【図13】実施の形態3に係る状態記憶部116が記憶する状態のデータ構造を示すテーブル
【図14】実施の形態4に係る状態記憶部116が記憶する状態のデータ構造を示すテーブル
【発明を実施するための形態】
【0017】
(実施の形態1)
以下、本実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
<構成>
図1は、認証システム(ゲート管理システム)1のシステム構成を示す図である。
認証システム1は、モニター10,ゲートコントローラ100,101、ゲートコントローラ100の制御対象となるカードリーダ4a,4bおよび扉(ゲート扉)8a,8b、ゲートコントローラ101の制御対象となるカードリーダ4c、扉8cを備える。モニター10とゲートコントローラ100,101の間、またゲートコントローラ100,101とその制御対象となる機器(カードリーダ4a〜4c,扉8a〜8c)はそれぞれケーブルを介して接続されている。
【0018】
認証システム1の処理の流れの概要を、カードリーダ4a,扉8aに関する部分を中心に説明する。
すなわち、扉8aは普段は施錠されており、この扉8a付近に設置されたカードリーダ4aは、ユーザーがかざすカード6から認証情報としてのIDを読み取る。カードリーダ4aは読み取ったIDをゲートコントローラ100に送信する。ゲートコントローラ100は、受信したIDを、ID毎にゲート通行の権限有無を示すID権限DBと照合する。
【0019】
照合の結果、通行権限有りと判定すれば(認証OK)、ゲートコントローラ100は、カードリーダ4aに対応する扉8aの電気錠を一定時間(例えば5秒程度)解錠してユーザーの通行を可能にする。
照合の結果、通行権限無しと判定すれば(認証NG)、ゲートコントローラ100は、カードリーダ4aに認証失敗した旨を示す情報を送信し、扉8aの電気錠は施錠したままとする。
【0020】
なお、扉8a,8b,8cは、オフィスの建物の出入り口に設置されており、朝の出勤時間帯や夕方の帰宅時間帯に処理が集中する傾向にある。
以上が認証システム1の処理の流れの概要である。
続いて、ゲートコントローラ100、モニター10の機能ブロックについて順に説明する。
【0021】
図2は、ゲートコントローラ100の機能ブロック図である。なお、ゲートコントローラ101も同様な構成であるため説明を省略する。
ゲートコントローラ100は、CR制御・監視部102、認証部104、扉制御・監視部106、事象検出部108、履歴記憶制御部110、履歴記憶部112、状態更新部114、状態記憶部116、モード設定部118、送信部120を備える。
【0022】
CR制御・監視部102は、カードリーダ4a,4bが読み取ったIDを受信する。また、カードリーダ4a,4bを異常がないか監視する。
認証部104は、CR制御・監視部102が受信したIDを、ID権限DB(図示しない)と照合して、認証OKか認証NGかを判定する。
扉制御・監視部106は、認証部104が認証OKと判定した場合に、扉8a,8bの電気錠を一定時間解錠させる。また、扉8a,8bのセンサー(例えば、電気錠に付けられたマグネットセンサーや扉の人感センサーなど)を利用して、扉の施錠/解錠の別や扉の異常がないかを監視する。
【0023】
事象検出部108は、各機能ブロックにおいて検出(発生)した事象(イベント)を検出する。詳しくは後述する。
履歴記憶制御部110は、事象検出部108が検出した事象を検出時刻など関連付けた履歴情報として履歴記憶部112に記憶させる。履歴記憶部112に記憶された履歴情報は、送信部120によりモニターへと送信されるまで一時的に記憶されることとなる。
【0024】
状態更新部114は、事象検出部108が検出した事象が、制御対象機器(カードリーダ4a,4bや扉8a,8b)の状態に影響する事象である場合には、状態記憶部116の対応する部分の状態を即時更新して、状態記憶部116に記憶された状態が最新状態であるようにする。
モード設定部118は、普段は通常モードに設定し、履歴記憶部に蓄積された未送信の履歴情報の件数が所定件数(例えば、300件)以上となると、通常モードから優先モードに設定を変更する。優先モードに設定後、履歴の件数がゼロ件になれば再び通常モードに設定を戻す。
【0025】
送信部120は、モード設定部118により通常モードに設定されている場合には、履歴記憶部に蓄積された履歴情報を時刻の古い順に、逐次送信する。モード設定部118により優先モードに設定されている場合には、上記履歴情報の送信より先に、状態記憶部116に記憶された状態を示す状態情報を送信する。
図3は、モニター10の機能ブロック図である。
【0026】
モニター10は、受信部12、モード記憶部14、履歴記憶制御部16、履歴記憶部(履歴保持部)18、状態反映部20、状態記憶部22、提示部24を備える。
受信部12は、ゲートコントローラ100,101の送信部120から履歴情報、状態情報およびモード変更の旨を受信する。
モード記憶部14は、各ゲートコントローラ100,101におけるそれぞれのモードを記憶する。
【0027】
履歴記憶制御部16は、受信部12が受信した履歴情報を履歴記憶部18に記憶させる。
状態反映部(状態更新部)20は、受信部12が受信した履歴情報または状態情報に基づいて、状態記憶部22の対応する部分の状態を更新・反映する。
提示部24は、状態記憶部22に記憶された内容を提示する。例えば、モニター10に接続されたディスプレイの画面上に表示したり、警告灯・表示灯の点消灯制御を行うことにより、認証システム1の管理者やユーザーに対して提示を行う。
【0028】
次に、状態記憶部116、事象検出部108および履歴記憶部112のデータ構造について順に説明する。
図4は、状態記憶部116が記憶する状態のデータ構造を示すテーブルである。
テーブル130は、「状態名」132、「値」134、「機器ID」136、「フラグ」138の項目を含む。
【0029】
「値」134は、「状態名」132に対応する状態を示す値であり、「施錠/解錠」の場合は、"0"が施錠で"1"が解錠を示す。また、「電気錠こじ開け」または「電気錠故障」の場合は、"0"が正常で"1"がこじ開けまたは故障を示す。
「機器ID」136は、各機器のIDを示し、扉8a,8bのIDは"G01","G02"、カードリーダ4a,4bのIDは"C01","C02"とである。
【0030】
「フラグ」138は、「状態名」132、「値」134や「機器ID」136などを最優先して送信すべきことを示すフラグであり、優先モード下においてのみ用いられる。
なお、モニター10側の状態記憶部22のデータ構造も図4で示した構造と同様であるので説明を省略するが、モニター10側の状態記憶部22は、ゲートコントローラ100のみならずゲートコントローラ101が制御する機器に係る状態を含んでいる。
【0031】
図5に、事象検出部108が検出する事象のデータ構造を示すテーブル140である。
テーブル140は、「Event ID」142、「事象」144、の項目を含む。
"E01"〜"E08"のうちで"E03","E04"は、「施錠/解錠」の状態に影響する事象である。すなわち、事象検出部108により"E03"の事象が検出されると、状態更新部114は、状態記憶部116における「施錠/解錠」の状態の値を、"0"→"1"へと更新する。
【0032】
また、"E05","E06"の事象は、「電気錠こじ開け」の状態に影響し、"E07","E08"の事象は「電気錠故障」の状態に影響することとなる。
これらに対して、"E01","E02"は状態記憶部116が記憶する状態には影響しない。
なお、テーブル140中には図示していないが、事象検出部108は事象を検出する毎に、「Event ID」に加えて事象を検出した「機器ID」や、認証に用いたIDや施錠/解錠の要因となったIDなど事象に関するIDがある場合には「利用者ID」を関連付けて検出する。
【0033】
図6は、履歴記憶部112のデータ構造を示すテーブル150である。
テーブル150は、「時刻」152、「機器ID」154、「Event ID」156、「利用者ID」158の項目を含む。なお、履歴情報のサイズは1件あたり数十バイト程度である。
「時刻」152は、事象を検出したときの時刻を示す。なお、モニター10側の履歴記憶部18のデータ構造も図6で示した構造と同様である。
【0034】
テーブル150においては、4件分の履歴情報しか記載していないが、朝の出勤時間帯などにおいては事象の検出が集中して生じることがあり、何百件もの未送信の履歴情報が履歴記憶部112に蓄積されてしまうことがある。未送信の履歴情報の件数が増えるほど、事象の検出から送信までのタイムラグが長くなる。
ゲートコントローラ100の送信部120の構成にもよるが、例えば、数分〜数十分程度のタイムラグが発生することがある。
<動作>
次に、具体的な動作について、ゲートコントローラ100側の処理、モニター10側の処理の順に説明する。
【0035】
図7は、ゲートコントローラ100が行う検出・記憶処理を示すフローチャートである。
検出・記憶処理では、事象検出部108が事象を検出すると(S11:Yes)、履歴記憶制御部110は、事象検出部108が(A)検出した事象の検出時刻,(B)事象を検出した機器ID,(C)Event ID,(D)利用者ID(利用者IDが関与する事象に限る。)を履歴情報として履歴記憶部112に記憶させる(S12)。
【0036】
そして、状態更新部114は、事象検出部108が検出した事象のEvent IDが状態に影響する事象かどうか判定する(S13)。すなわち、Event IDが"E03"〜"E08"のいずれかならば(S13:Yes)、状態記憶部116の、対応する状態名の値,機器IDを更新する(S14)。例えば、事象検出部108が機器ID"G01"においてEvent ID"E03"の事象を検出すると、状態更新部114は、状態記憶部116のテーブル130の2行目の「施錠/解錠」状態の値を"0"から"1"へと更新する。
【0037】
状態更新部114は、事象検出部108が検出した事象が状態に影響しない事象、つまりEvent IDが"E01"か"E02"ならば(S13:No)、ステップS11に戻る。
図8は、ゲートコントローラ100が行うモード設定処理を示すフローチャートである。
モード設定処理では、モード設定部118は、まずは通常モードに設定し(S21)、履歴記憶部112の履歴情報の件数を監視する(S22)。
【0038】
履歴情報の件数が300件以上になったことを判定すると、モード設定部118は、モードを通常モードから優先モードへと設定変更する(S23)。そして、モード設定部118は、送信部120を介してモードを変更した旨をモニター10宛に送信する(S24)。
モード設定部118は優先モード設定後、履歴記憶部112の履歴情報の件数の監視を再開し、件数がゼロ件になったことを判定すると(S25:Yes)、モード設定部118は、モードを優先モードから通常モードへと設定変更し(S26)、変更した旨を送信部120を介してモニター10に送信する(S27)。
【0039】
図9は、ゲートコントローラ100が行う通常モード下での送信処理を示し、図10は優先モード下での送信処理を示すフローチャートである。
図9に示すように、通常モード下での送信処理では、送信部120は、履歴記憶部112に記憶された履歴情報の中で最も古い時刻の履歴情報を送信し(S31)、履歴記憶制御部110は、送信が完了すると送信した履歴情報を履歴記憶部112から削除する(S32)。この削除により履歴記憶部112には未送信の履歴情報だけが残ることとなる。ステップS31とS32の処理は、モード設定処理における優先モードへ移行(S22:Yes,S23)により割り込まれるまで、繰り返し実行される。
【0040】
図10に示すように、優先モード下での送信処理では、まず状態更新部114が状態記憶部116の各状態名に対応する全フラグを"1"にセットする(S41)。
次に、送信部120はフラグが"1"にセットされた(A)状態名、(B)状態名の値、(C)機器IDを含む状態情報を送信する(S42)。
送信が完了すると、状態更新部114は、送信した状態名に対応するフラグを"0"にセットする。続いて、送信部120は、ステップS31〜S32と同様に、履歴記憶部112に記憶された履歴情報の中で最も古い時刻の履歴情報から逐次送信する(S45)。
【0041】
このステップS44,S45の処理は、履歴記憶部112の履歴情報の件数がゼロになるまで(S46)、つまり、通常モードへの復帰条件を満足するまで(S25:Yes,S26)繰り返されることとなる。
図11は、モニター10側における受信処理など(受信から履歴情報の記憶、状態の更新・反映までの処理)を示すフローチャートである。
【0042】
まず、モード記憶部14におけるモードを判定する(S51)。上述のように、ゲートコントローラ100側のモード設定部118はモード変更の度に、その旨をモニター10側へと送信するので、モニター10側のモード記憶部14のモードはゲートコントローラ100側のモード設定部118のモードと普段から同期している。
判定されたモードが通常モードであれば(S51:「通常モード」)、通常モード下での受信処理となる。受信部12が履歴情報を受信すると、履歴記憶制御部16は受信した履歴情報を履歴記憶部18に記憶させる。
【0043】
そして、履歴情報に含まれるEvent IDが状態に影響するのであれば(S54:Yes)、状態反映部20は状態記憶部22の対応する状態名の値,機器IDを反映する(S55)。例えば、履歴情報に含まれるEvent IDが"E03"、機器IDが"G01"ならば、状態反映部20は、状態記憶部22(図4のテーブル130と同様のデータ構造である。)の「施錠/解錠」状態の値を"0"から"1"へと更新する。
【0044】
判定されたモードが優先モードであれば(S51:「優先モード」)、優先モード下での受信処理となる。受信部12が状態名の値,機器IDを受信すると(S56:Yes)、状態反映部20は受信した状態情報を状態記憶部22に反映させる。提示部24は、反映後の内容を提示することになる。
履歴情報を受信すると(S58)、履歴記憶制御部16は、ステップS53同様に、履歴情報を履歴記憶部18に記憶させる。ただし、履歴情報に含まれるEvent IDが状態に影響するものであったとしても、状態記憶部22には反映させない。なぜならば、優先モード下では先に受信した状態情報に基づいて状態記憶部22に反映しているので(S57)、後で受信した履歴情報に基づいて反映してしまうと、反映が重複した内容となるからである。
【0045】
また、先に受信する状態情報は最新の状態であると期待できるが、後に受信する履歴情報は、長い間未送信のまま滞留していた古い情報であるからそもそも反映させる必要性は低く、さらに、やみくもに反映させると、状態の値が状態情報が示す状態に対応しないおそれがあるからである。
以上、説明したように、本実施の形態によれば、履歴情報の件数が300以上を上回ると優先モードに設定し(図8:S22:Yes,S23)、優先モード下においては、状態情報を履歴情報より先に送信するので(図10:S41〜S44)、いち早くモニター10側へとコントローラ100側の状態を送信することが可能となる。
【0046】
例えば、図6に示した例では、"8:05:12"のEvent ID"E05"の件は電気錠こじ開け異常検出という緊急性を比較的要する状態に関する履歴である。このEvent ID"E05"の件が最も古い8:00:01から数えて仮に300件目の履歴とすると、通常モード下では、この件より古い299件の履歴情報を順々に送信した後でないと、このEvent ID"E05"の件を送信することができず、送信が異常検出から遅れてしまうおそれがある。
【0047】
本実施の形態によれば、優先モード下では、状態記憶部22が記憶している状態名「電気錠こじ開け」、こじ開けを示す値"1"などを、299件の履歴情報の送信完了を待たずに、先に送信するので、モニター10側へとより少ないタイムラグで送信することができる。
(実施の形態2)
実施の形態1では、モニター10側においてもモード記憶部14によりモードを管理する構成であったが、本実施の形態では、ゲートコントローラ100からモニター10へと送信するデータに工夫を施すことで、モニター10側におけるモード管理を不要にする。
【0048】
実施の形態2におけるゲートコントローラ100の機能ブロック図は図2と同様である。またモニター10の機能ブロック図は、モード記憶部14を備えない点以外は図3と同様であるので説明を省略する。
実施の形態2におけるモード設定処理は、図8で説明したものと基本的には同じである。ただし、モニター10側でのモード管理が不要なためステップS24,S27はスキップする。
【0049】
図12は、実施の形態2に係る送信処理を示すフローチャートである。
本送信処理では、モード設定部118により通常モードに設定されている場合には(S61:「通常モード」)、送信部120は、送信する履歴情報に、履歴と状態との両方に反映させるべき旨を示すヘッダー「両方」を付加して送信する。なお、ここでの履歴情報の送信手順の詳細は、図9で説明した手順と同様である。
【0050】
これに対して、モード設定部118により優先モードに設定されている場合には(S61:「優先モード」)、送信部120は、送信する状態情報に、状態を反映させるべき旨を示すヘッダー「状態」を付加して送信する。この状態情報の送信手順の詳細は図10のステップS41〜S43で説明した手順と同様である。
また、優先モード下での履歴情報の送信の際には、送信部120は、送信する履歴情報に、履歴にのみ反映させるべき旨(状態への反映を禁止する旨)を示すヘッダー「履歴」を付加して送信する。
【0051】
これらの「両方」「「履歴」「状態」のヘッダーが付加された情報を受信したモニター10側の受信部12では、受信した情報の性格を判断することができ、履歴記憶部16および状態反映部20は、ヘッダーに従って履歴記憶部18への記憶や状態記憶部22の反映を行うことで、モード管理なくとも、矛盾なく合理的に管理することが可能となる。
(実施の形態3)
実施の形態1においては、優先モードにおいてゲートコントローラ100から最新の状態をモニター10へと先に送ると、後に残された履歴情報に基づいてはモニター10側の状態記憶部22に反映しないとして説明したが、状態情報を送信しようとするときに、さらに状態名の値が変化した場合などには、モニター10側において状態の変化を取りこぼすおそれがある。
【0052】
例えば、ある時刻8:01:23にEvent ID"E07"(図6参照)を検出した直後の、時刻8:01:25にEvent ID"E08"を検出すると、状態名「電気錠故障」の値は、時刻8:01:23に"0"→"1"と変化し、時刻8:01:25に"1"→"0"へと変化する。この場合、2回の変化の後で単に状態の値"0"を送信すると、モニター10側においては単に状態の値"0"しか取得できないため、一時的に電気錠故障の状態になったことを直ちには把握できないおそれがある。
【0053】
このため、本実施の形態においては、図13に示すように、状態記憶部116が記憶する状態のデータ構造において、状態名の値を"0","1"でなく変化のたびに回数をインクリメントする方式とする。
図13の例では、「電気錠故障」の値は77であるので、最初(回数0)のときは正常であると設定すると、値が1,3,5...の奇数である場合には異常であることを示し、値が0,2,4,...の偶数である場合には正常であることがわかる。
【0054】
言い換えると、値77を電気錠故障の正常/異常という2値で除すると、77/2=38...1と剰余は1であるから、最初の正常とは異なる異常状態であることがわかる。また、回数をインクリメントする方式であるため、例えば値75と値77とでは同じ異常状態であるが、これらの値をモニター10へと送信することで、モニター10側では2回変化した旨を漏らさず記録することができる。
【0055】
なお、状態の値は、施錠/解錠や正常/異常など2値しか取らないもの多い。このため、優先モード中に、例えば通信不良で送信まで時間を要しその間に複数回状態が変化しているような場合には、通信復旧時に状態を送信する際に、奇数回状態が変化していれば通知するが、偶数回状態が変化していれば状態自体は変化前と同じなので通知しないとしても構わない。
【0056】
また、状態が2値の例を挙げて説明したが、例えば、"0"→"1"→"2"と3値の状態がサイクリックに変化する状態の場合にも、3で除した剰余に基づいて状態を特定することができる。
(実施の形態4)
実施の形態4においては、状態記憶部116に通常/優先のモードの別を状態の値として管理しておくことで、モード管理を容易化する。
【0057】
図14は、状態記憶部116が記憶する状態のデータ構造を示すテーブルである。
テーブル160は、「状態名」132、「値」134、「機器ID」136、「フラグ」138、「順番」139の項目を含む。
「状態名」132は、通常/優先のモードの別を示す「通常/優先」の状態を含む。値"0"が通常モード、値"1"が優先モードを示す。
【0058】
「順番」139は、優先モード移行時に「フラグ」138を"1"にした後で送信する順番を示す。
このように、通常/優先のモードの別を状態の値として管理し送信することで、モニター10側ではこの状態の値に基づいていずれのモードであるかを判断でき、モード記憶部14のようなモード管理のための特別な機能を省略化できる。
【0059】
また、特に、優先モード移行時には、「順番」139が1番の「通常/優先」のモードの別を示す値が真っ先に送信されることとなるため、モニター10側においては、1番に受信したモードの別を示す値に基づいて優先モードであることを判断でき、その後2番以降に受信する他の状態の値を状態記憶部22に反映することができる。
<補足>
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明は上記の内容に限定されず、本発明の目的とそれに関連又は付随する目的を達成するための各種形態においても実施可能であり、例えば、以下であっても構わない。
(1)実施の形態1においては、履歴記憶部112に記憶された履歴情報の件数が300件以上となったことを契機に優先モードに変更する(S22,S23)として説明したが、300件に限らず適宜件数を決めることができる。具体的には、1件あたりの履歴情報の送信に要する時間(ゲートコントローラ100のスペックや回線速度などに依存する。)、モニター10側においてゲートコントローラ100における状態変化を把握できるまでの遅れ(タイムラグ)が許容される時間などを勘案して件数を決定できる。
【0060】
また、履歴情報の件数に限らず、履歴情報のデータサイズに基づいて、モード移行のタイミングを定めてもよい。未送信の履歴情報のデータサイズが大きいと、送信が完了するまで時間を要するのは件数と同様だからである。
(2)実施の形態1においては、優先モードから通常モードへの設定変更は、履歴記憶部112の履歴情報の件数がゼロ件になったことを条件としていたが(S25:Yes,S26)、ゼロ件に限らず適宜件数を決めることができる。
(3)実施の形態1においては、送信が完了した履歴情報を履歴記憶部112から削除する(S32)として説明したが、削除せずとも、履歴情報を送信済かそうでないか識別できるようにすれば構わない。例えば、履歴情報をどの件まで送信したかの境界を示す情報を関連付けておき、1件の送信が完了する毎に、上記境界をずらすとしても構わない。
【符号の説明】
【0061】
4a,4b,4c カードリーダ
8a,8b,8c 扉
10 モニター
18 履歴記憶部(履歴保持部)
20 状態反映部(状態更新部)
22 状態記憶部
24 提示部
100,101 ゲートコントローラ
104 認証部
108 事象検出部
110 履歴記憶制御部
112 履歴記憶部
114 状態更新部
116 状態記憶部
118 モード設定部
120 送信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザーの入退室に係る機器を制御するコントローラと、前記コントローラとネットワークを介して接続されるモニターとを備える認証システムであって、
コントローラは、
制御対象の機器における事象を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した結果を示す履歴情報を第1記憶手段に記憶させる履歴記憶制御手段と、
前記機器の状態を記憶する第2記憶手段を、前記検出手段による検出に基づいて更新する状態更新手段と、
第1記憶手段に記憶された履歴情報を、記憶された順番に逐次モニターへと送信する送信手段とを備え、
前記送信手段は、前記第1記憶手段に記憶された未送信の履歴情報の量に関する所定条件を満たすと、前記第2記憶手段に記憶された状態を示す状態情報を前記履歴情報より先にモニターへと送信し、
モニターは、
前記送信手段により送信される状態情報および履歴情報を受信する受信手段と、
受信された履歴情報を記憶する履歴保持手段と、
受信された状態情報に基づいて、機器の状態を提示する提示手段とを備える
ことを特徴とする認証システム。
【請求項2】
前記提示手段は、
前記所定条件が満たされていない間の検出に係る履歴情報に基づいて、機器の状態を提示し、
前記所定条件が満たされている間の検出に係る履歴情報に基づいては機器の状態を提示せず、前記受信された状態情報に基づいて機器の状態を提示する
ことを特徴とする請求項1に記載の認証システム。
【請求項3】
コントローラは、前記所定条件が満たされていない間は第1モード、前記所定条件が満たされている間は第2モードに設定するモード設定手段を備え、
前記送信手段は、前記モード設定手段により設定されているモードを示す設定情報を送信し、
前記受信手段は、前記送信手段により送信される設定情報を受信し、
前記提示手段は、
設定情報に示されるモードが第1モードである間には、
前記履歴情報に基づいて機器の状態を提示し、
設定情報に示されるモードが第2モードである間には、
前記履歴情報に基づいては機器の状態を提示せず、前記受信された状態情報に基づいて機器の状態を提示する
ことを特徴とする請求項2に記載の認証システム。
【請求項4】
前記送信手段は、
前記所定条件が満たされていない間には、
送信すべき履歴情報に、当該履歴情報に基づいて機器の状態を提示すべき旨を示す第1識別子を付加して送信し、
前記所定条件が満たされている間には、
送信すべき履歴情報に、当該履歴情報に基づいては機器の状態を提示すべきでない旨を示す第2識別子を付加して送信し、
送信すべき状態情報に、当該状態情報に基づいて機器の状態を提示すべき旨を示す第3識別子を付加して送信し、
前記提示手段は、
前記第1識別子が付加された履歴情報に基づいて、機器の状態を提示し、
前記第2識別子が付加された履歴情報に基づいては機器の状態を提示せず、
前記第3識別子が付加された状態情報に基づいて、機器の状態を提示する
ことを特徴とする請求項1に記載の認証システム。
【請求項5】
前記機器の状態には、n(nは2以上の自然数)種類の値が存在し、
前記状態更新手段は、前記検出手段による検出に応じて、機器の状態に係る検出回数をインクリメントし、
前記提示手段は、前記検出回数を前記nで除した剰余に基づいて、前記機器の状態の値がn種類のうちのいずれであるかを特定して前記提示に用いる
ことを特徴とする請求項1に記載の認証システム。
【請求項6】
ユーザーの入退室に係る機器を制御するコントローラであって、
制御対象の機器における事象を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した結果を示す履歴情報を第1記憶手段に記憶させる履歴記憶制御手段と、
前記機器の状態を記憶する第2記憶手段を、前記検出手段による検出次第更新する状態更新手段と、
第1記憶手段に記憶された履歴情報を、記憶された順番に逐次モニターへと送信する送信手段とを備え、
前記送信手段は、前記第1記憶手段に記憶された未送信の履歴情報の量に関する所定条件を満たすと、前記第2記憶手段に記憶された状態を示す状態情報を前記履歴情報より先にモニターへと送信する
ことを特徴とするコントローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−176165(P2010−176165A)
【公開日】平成22年8月12日(2010.8.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−14998(P2009−14998)
【出願日】平成21年1月27日(2009.1.27)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】