説明

認識装置およびこれを備える電子機器

本発明の目的は、キーの識別性および取り扱い担当者の使い勝手を向上させた認識装置およびこれを備える電子機器を提供することである。クラークキー10は、トランスポンダ101を内蔵し、磁力吸着によってリーダー11に固定するための磁性体で構成される磁性体リング102を装着している。リーダー11は、クラークキー10のトランスポンダ101と通信するためのアンテナ111および通信回路ブロック112を内蔵している。また、リーダー11には、磁力吸着によってクラークキー10を固定するための磁石リング115が装着されている。トランスポンダ101およびアンテナ111は、クラークキー10とリーダー11とが磁力吸着によって固定されている状態で通信可能となるように、磁性体リング102および磁石リング115の中心軸線L上に配置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、データを記憶したキーと、キーに記憶されたデータを無線通信で読み取るためのリーダーとを備え、キーから読み取ったデータに基づいてキーの識別を行う認識装置およびこれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
POS(Point of Sales)端末機およびECR(Electronic Cash Register)などの金銭登録機には、取り扱い担当者(クラーク)を区分するための認識装置であるクラークキー認識装置を備えている。クラークキー認識装置は、取り扱い担当者が所有するクラークキーと、クラークキーを挿入する鍵穴ユニットと、挿入されたクラークキーを識別する識別手段とを備えている。また、PC(パーソナルコンピュータ)サーバなどにおいて、使用者の認証を行うためのセキュリティー装置として、認識装置が使用されている。
図15は、従来のクラークキー認識装置200の構成図である。クラークキー201の鍵穴ユニット202に挿入される部分には凹凸201aが設けられ、クラークキー201を鍵穴ユニット202に挿入することによって、鍵穴ユニット202内の接点203が凹凸201aによってそれぞれON/OFFされる。ONされた接点203aは「1」を出力し、OFFされた接点203bは「0」を出力する。出力I/F(インターフェイス)204から識別手段205に対して各接点の状態を示す信号が出力される。クラークキー認識装置200では、凹凸201aの数および接点203の数はともに7であり、出力I/F204から出力される信号は7ビットの信号である。たとえば、鍵穴ユニット202の奥側の接点を上位ビット、手前側の接点を下位ビットとすると、図15の状態では、キーデータとして“1101111”が出力される。識別手段205には、取り扱い担当者とキーデータとの対応テーブルを記憶させておき、出力I/F204からの信号を受け取ると、対応テーブルに基づいてキーデータに対応する取り扱い担当者を識別する。
このように、従来のクラークキー認識装置では、凹凸と接点とが接触する必要があるため、使用している間に接触部分が摩耗し、正しく識別できないという問題がある。また、金銭登録機における鍵穴ユニットの取り付け位置は、限られた位置であるため、鍵穴が小さくなり、クラークキーの挿入が困難となっている。
これらの問題を解決するために、次のような技術が開発されている。
特開2003−129714号公報記載のキーシステムは、鍵と、シリンダと、コンピュータとから構成されている。鍵の挿入部にRFID(Radio Frequency Identification)モジュールを内蔵し、シリンダ内のアンテナユニットとRFIDモジュールとの無線通信によって非接触で鍵の識別を行う。IC素子をアンテナと一体成形にすることにより、RFIDモジュールを小型化し、鍵の小型化および低価格化を実現している。
特開平5−141139号公報記載の施錠装置は、発光素子を用いて、鍵装置から呼び出しコードを出力し、これを受け付けた施錠装置からランダムな応答コードを返す。応答コードを認識した鍵装置から認識コードが出力され、施錠装置が受信した認識コードが正しければ解錠する。
また、自動車のキー装置には、イモビライザーが用いられている。イモビライザーとは、イグニッションキーに埋め込まれたトランスポンダ(電子チップ)で、無線周波数リンクを使用してエンジン制御回路と通信を行う。キーに埋め込まれたトランスポンダの個有のIDコードと車両側コントローラのIDコードを電子的に照合し、IDコードが一致すれば点火しエンジンを始動する。一致しなければ点火せずエンジンが始動しない。
特開2003−129714号公報記載のキーシステムは、非接触であるため摩耗は問題とならないが、鍵をシリンダに挿入する必要があるので、キー挿入の困難さについては問題が残る。特開平5−141139号公報記載の施錠装置は、鍵装置と施錠装置との間に障害物があると使用できず、本発明の応用の1つであるキーが装着されている間電子機器の操作が可能となるように一時的にキーとリーダーを固定することができない。
【発明の開示】
【0003】
本発明の目的は、キーの識別性および取り扱い担当者の使い勝手を向上させた認識装置およびこれを備える電子機器を提供することである。
本発明は、データを記憶したトランスポンダを内蔵するキーと、
トランスポンダに記憶されたデータを無線通信で読み取るための質問器を内蔵するリーダーと、
質問器がトランスポンダから読み取ったデータに基づいてキーの識別を行う識別手段とを有する認識装置であって、
質問器とトランスポンダとの通信が的確に行われるように、質問器およびトランスポンダが備える各アンテナの指向方向が対向するように構成されることを特徴とする認識装置である。
本発明に従えば、無線通信によって、リーダーに内蔵された質問器が、キーに内蔵されたトランスポンダからデータを読み取ると、識別手段が読み取ったデータに基づいてキーの識別を行う。さらにキーとリーダーとが所定の位置に設置された状態のときに、質問器およびトランスポンダが備える各アンテナの指向方向が対向するように構成されるので、質問器とトランスポンダとの通信が的確に行われる。
また本発明は、質問器およびトランスポンダの各アンテナを、各アンテナの指向方向がキーの概略中央になるように配したことを特徴とする。
本発明に従えば、キーとリーダーとを磁力吸着によって固定されるような場合、質問器から発信する電波、およびトランスポンダから発信する電波がキーの中心付近を通過するため、無線通信の品質を確保することができる。
また本発明は、キーとリーダーとが磁力吸着によって着脱可能であることを特徴とする。
本発明に従えば、キーとリーダー間のデータ通信は、質問器とトランスポンダとによる、いわゆるRFIDシステムを用いているので、接点の汚れなどによる誤動作を減少させることができる。また、キーとリーダーとが磁力吸着によって一時的に固定が可能であることを特徴としているので、キーを鍵穴に挿入する必要がなく、キーを容易に所望の位置に固定することができる。したがって、キーの識別性と共に取り扱い担当者の使い勝手を向上させることができる。
また本発明は、キーおよびリーダーの双方に磁石を配するか、またはキーおよびリーダーの一方に磁石を配し、もう一方に磁性体を配することを特徴とする。
本発明に従えば、上記のような構成とすることでキーとリーダーとを磁力吸着によって着脱可能としている。
本発明では、キーおよびリーダーの双方またはいずれかに磁石あるいは磁性体を設けているが、磁石あるいは磁性体を通信に支障のない様キーおよびリーダーのアンテナの指向性が略対向する場所、空間を避けて配置することが望ましい。
またキーとリーダーとが吸着固定された状態のときに、トランスポンダが備えるアンテナの指向方向が、リング形状磁石の中心を通る中心軸と略平行となるようにトランスポンダを配置する。リーダーは一般的に電子機器に固定され、キーはユーザが所持する場合が多い。磁力吸着による固定のため、キーが常に同じ状態で固定されるとは限らないので、トランスポンダが備えるアンテナの指向方向を、リング形状磁石の中心を通る中心軸と略平行とすることで、キーがこの中心軸を中心に回転したとしても無線通信を確実に行うことができる。
また本発明は、リング形状の磁石を用い、その極性であるN極およびS極が円周方向に交互に配置されるように着磁されていることを特徴とする。
本発明に従えば、磁石によるリング中心付近の磁界の影響を小さくすることができ、質問器とトランスポンダとの無線通信の信頼性を向上させることができる。
また本発明は、キーをリーダーに対向する位置にセットできるように、キーまたはリーダーにガイドを設けたことを特徴とする。
本発明に従えば、ガイドにより、キーとリーダーとを的確に嵌合させることで、キーとリーダーとの位置、すなわち質問器とトランスポンダとの位置を最適な位置関係とすることができ、質問器とトランスポンダとの無線通信の信頼性を向上させることができる。また、磁気カードなどが磁石に接触することを防止することができる。
また本発明は、上記の認識装置を備える電子機器であって、
認識装置の認識結果により、少なくとも電子機器を操作可能とするか否かの決定を行うことを特徴とする電子機器である。
本発明に従えば、上記の認識装置を備える電子機器の識別手段は、質問器がトランスポンダから読み取ったデータに基づいて、少なくとも電子機器を操作可能とするか否かの決定を行う。
たとえば、予めトランスポンダに記憶されているデータを電子機器に登録しておき、質問器が読み取ったデータが、登録されていれば電子機器を操作可能とし、登録されていなければ操作不可能とする。これにより、セキュリティー機能を向上させることができる。
また本発明は、質問器がトランスポンダから読み取ったデータを第1のデータとし、
識別手段が、第1のデータの様式をこれとは異なる第2のデータの様式に変換することを特徴とする。
また、電子機器が電子式金銭登録機の場合は、登録モード、点検モード、精算モードなど複数の動作モードを切り替えて動作させ、電子機器がPCサーバーなどの場合は、アドミニストレータ(管理者)モード、ユーザモードなど複数のモードで動作させることが必要となる。
これらの動作モードは、機器の管理者、取り扱い担当者などの権限に応じて決定される必要がある。したがって、トランスポンダに記憶されているデータと、許可される動作モードとの対応を予め電子機器に登録しておき、質問器が読み取ったデータに応じて、キーを有する使用者が選択可能な動作モードを決定することも可能である。
本発明に従えば、質問器がトランスポンダから読み取ったデータを第1のデータとした場合に、識別手段が、第1のデータの様式をこれとは異なる第2のデータの様式に変換する。
トランスポンダに割り当てられるデータのコード体系は、従来の電子機器に用いられているキーを識別するためのキーデータとは機能の拡張あるいはセキュリティーの向上などを考え変更することも必要であり、またそのためにデータの情報量を増やすことも必要となる。また、トランスポンダに割り当てられる第1のデータを、従来様式の第2のデータに、変換する機能を認識装置に持たすことにより、従来の電子機器の認識装置部を本発明に置きかえれば容易に従来の構成による電子機器を開発することが可能になり開発効率を上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【0004】
本発明の目的、特色、および利点は、下記の詳細な説明と図面とからより明確になるであろう。
図1は、本発明の第1の実施形態である電子式金銭登録機100の構成を示すブロック図である。
図2は、RAM3のメモリ構成を示す図である。
図3は、ECR100の外観を示す斜視図である。
図4は、クラークキー10およびリーダー11の断面図である。
図5は、クラークキー10およびリーダー11の構成を示すブロック図である。
図6は、リーダー11のアンテナ111とクラークキーのトランスポンダ101との位置関係を示す図である。
図7は、磁石リング115の着磁状態を示す図である。
図8は、ECR100のキー認識処理を示すフローチャートである。
図9は、クラークキー10とリーダー11との無線通信処理におけるリーダー11の処理を示すフローチャートである。
図10は、リーダー11の構成を示すブロック図である。
図11は、コントローラ123によるデータ変換処理を示すフローチャートである。
図12は、内蔵メモリ123aに記憶しているキーデータテーブルを示す図である。
図13は、磁石および磁石と磁力吸着する磁性体の形状の他の例を示す図である。
図14は、磁石および磁石と磁力吸着する磁性体の形状の他の例を示す図である。
図15は、従来のクラークキー認識装置200の構成図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0005】
以下では、認識装置を備える電子機器としてPOS端末機およびECRなどの電子式金銭登録機について説明する。電子式金銭登録機では、装置を動作させるためには、許可された取り扱い担当者が使用するかどうかを識別する必要がある。この取り扱い担当者を識別する手段として認識装置を用いている。
まず、第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態である電子式金銭登録機(以下「ECR」と略称する)100の構成を示すブロック図である。ECR100は、たとえばマイクロプロセッサなどで実現され、ECR100全体の動作を制御する中央演算処理装置(以下「CPU」と略称する)1と、ECR100の各種動作を制御するプログラムなどが記憶されたリードオンリーメモリ(以下「ROM」と略称する。)2と、各種設定内容が記憶されたランダムアクセスメモリ(以下「RAM」と略称する)3とを有している。また、ECR100の動作モードを切り替えるために用いるモードスイッチ(SW)4と、商品の部門コード、売上金額などを入力するためのキーボード5と、CPU1の演算結果をレシートおよび記録紙に印字するためのプリンタ6と、売上金額などを表示するためのたとえば液晶ディスプレイなどで実現される表示装置7と、硬貨および紙幣を収納するためのドロア8と、操作ミスなどを報知するためのブザー9と、取り扱い担当者を識別するためのクラークキー10と、クラークキー10を識別するためのリーダー11とを含む。
図2は、RAM3のメモリ構成を示す図である。顧客との取引に関するメモリとして、商品の売上金額がセットされている売上金額メモリ3a、残額がセットされる残額メモリ3bがある。また、どのクラークキーを有効にするかを記録しておく取り扱い担当者コードメモリ3cがある。取り扱い担当者コードメモリ3cには、取り扱い担当者コードと、それらと対応するクラークキーのキーデータが記憶されている。このコードに一致するクラークキーがリーダーに取り付けられていないと、ECR100の動作モードが制限される。たとえば、モードSW4が「登録」位置になっていても、ECR100を操作できないことになる。なお、CPU1、ROM2、RAM3は識別手段を構成する。
図3は、ECR100の外観を示す斜視図である。ECR100の上面右上に表示装置7が配置され、表示装置7横にはプリンタ6が配置されている。キーボード5は上面下半分に配置されている。リーダー11は前面右側に配置され、図3では、クラークキー10がリーダー11に固定された状態を示している。
図4は、クラークキー10およびリーダー11の断面図である。図4(a)は、中心軸線Lに平行な断面図であり、図4(b)は、中心軸線Lに垂直な断面図である。クラークキー10には、トランスポンダ101が内蔵されており、磁力吸着によってリーダー11に固定するために磁性体(たとえば金属など)により構成される磁性体リング102が装着されている。リーダー11には、クラークキー10のトランスポンダ101と通信するためのアンテナ111および通信回路ブロック112が内蔵されている。アンテナ111および通信回路ブロック112は質問器を構成する。
また、リーダー11には、磁力吸着によってクラークキー10を固定するための磁石リング115が装着されており、この磁石リング115が誤って磁気カードなどと接触しないように、磁石リング115を外囲するとともに、クラークキー10が吸着しやすいようにキー10を磁石リング115に案内する樹脂製のガイド116が設けられている。このガイドにより、キーとリーダーとの位置、すなわちアンテナ111とトランスポンダ101との位置を、後述する最適な位置関係とすることができ、無線通信の信頼性を向上させることができる。
トランスポンダ101およびアンテナ111は、クラークキー10とリーダー11とが磁力吸着によって固定されている状態で通信可能となるように、磁性体リング102および磁石リング115の中心軸線L上に配置されている。さらに詳細には、キーとリーダーとが吸着固定された状態のときに、アンテナ111の指向方向が、中心軸線Lと略平行となるようにアンテナ111を配置している。
図5は、クラークキー10およびリーダー11の構成を示すブロック図である。図5(a)は、リーダー11のブロック図であり、図5(b)は、クラークキー10のブロック図である。通信回路ブロック112は、コントローラ113および通信回路114からなり、コントローラ113は、出力I/F113aを含んでいる。クラークキー10に内蔵されたトランスポンダ101は、アンテナ117および内蔵メモリ118を有する。
コントローラ113は、通信回路114に対して質問用電波の発信を命令し、通信回路114は、命令を受けると高周波を発生させ、アンテナ111を介して質問用電波を発信する。クラークキー10がリーダー11に固定されている状態では、トランスポンダ101のアンテナ117が質問用電波を受信し、電力変換して電力を得ると共に内蔵メモリ118で記憶しているキーデータをリーダー11に対して発信する。リーダー11のコントローラ113は、受信したキーデータを出力I/F113aからCPU1へ送信する。CPU1は、受信したキーデータと、取り扱い担当者コードとを比較することで、クラークキー10を識別することができる。なお、ここでキーデータは、トランスポンダ101に割り当てられたID(第1のデータ)である。
図6は、リーダー11のアンテナ111とクラークキーのトランスポンダ101との位置関係を示す図である。図7は、磁石リング115の着磁状態を示す図である。磁石リング115は、図7に示すように、N極およびS極が、円周方向に交互に配置されるように着磁されている。円周方向に着磁させることによって、磁石リング115の中心部における磁界の影響を小さくし、リーダー11のアンテナ111とクラークキーのトランスポンダ101との無線通信を可能としている。なお、円周方向の分割数は、図に示すとおり4等分割か、または6等分割が望ましい。分割数が6等分割より多くなると、N極とS極の境界領域、すなわち磁力吸着力が弱い領域の占める割合が多くなり、クラークキー10を固定するための吸着力が弱くなってしまい、簡単に外れてしまうなどの問題が生じてしまうからである。
このように、円周方向に交互に着磁した磁石リング115および磁性体リング102を介在して、キーリーダー11のアンテナ111とクラークキーのトランスポンダ101とが無線通信を行う。アンテナ111とトランスポンダ101とが通信可能な位置関係は、主にアンテナ111の出力特性に依存する。図6に示すようにアンテナ111を中心にして、電波のパワーによっては通信不可能範囲20が存在する。これはアンテナ111の近傍に存在し、アンテナ111から発生する電波が強すぎるため、この範囲内にトランスポンダ101がある場合は、コードを認識できず通信が不可能となる。また、通信不可能範囲20の外側に通信可能範囲21が存在する。この通信可能範囲21外にトランスポンダ101がある場合は、通信が不可能となる。したがって、アンテナ111と、トランスポンダ101との位置関係は、クラークキー10が磁力吸着によってリーダー11に固定されている状態で、トランスポンダ101が通信可能範囲21内に入るようにしなければならない。さらに、クラークキー10とリーダー11とは、リング状部材によって吸着固定されるため、クラークキー10は、中心軸線Lを中心に回転することが可能で、どのように回転した状態であっても通信可能範囲21内にトランスポンダ101が入るようにしなければならない。
アンテナ111とトランスポンダ101とが通信可能な所定の位置の実施例を下記に記載する。
通信が可能な通信可能範囲21は、トランスポンダ101内部の発生電圧が、0.5〜0.8Vとなるような範囲である。この範囲にトランスポンダ101が入るためには、たとえば、内周径14mm、外周径22mmの磁石リング115の中心軸線L近傍にアンテナ111を配置し、クラークキー10が固定された状態で、アンテナ111とトランスポンダ101との距離をD=3〜5mm程度とすればよい。なお、磁石リング115と磁性体リング102との吸着面を基準面とし、この基準面からアンテナ111との距離を2mmとする。また、クラークキー10が固定された状態で、トランスポンダ101の方向が、磁石リング115の半径方向を基準に75度〜90度(中心軸線と略平行)の範囲内とすればよい。なお、トランスポンダ101の方向とは、トランスポンダ101のアンテナ117の指向方向である。
図8は、ECR100のキー認識処理を示すフローチャートである。
まずステップS1でクラークキー10とリーダー11との無線通信処理が行われる。無線通信処理についての詳細は後述する。
ステップS2では、CPU1が、リーダー11からキーデータが送られてきたかどうかを判断し、送られてきたらステップS3に進み、送られてこなければ待機する。この判断は、リーダー11からのデータがある周期で送られてくることを前提としているが、クラークキー10が付いて無い状態から付いた状態になった場合など、変化が有ったときのみデータが送られてくる場合でも同様である。
ステップS3では、CPU1が、取り扱い担当者コードメモリ3cを参照して、受け取ったキーデータが登録されているかどうかを判断する。登録されていればステップS4に進み、登録されていなければステップS5に進む。
ステップS4では、登録情報に従い、たとえばキー入力を受け付けるなど、ECRを操作可能な動作モードにする。ステップS5では、キーが無いこと、または登録されていないキーであることを表示し、エラーとする。
図9は、クラークキー10とリーダー11との無線通信処理におけるリーダー11の処理を示すフローチャートである。まず、ステップS11では、トランスポンダ101に動作用の電力を与えるため、コントローラ113が、通信回路114を制御し、周波数が100〜150kHzの電波を30〜70ms程度の時間、出力する。なお、コントローラ113は、トランスポンダ101からの応答が有った場合でも、無い場合でも、一定の周期、たとえば150〜300ms間隔で電波の送信を行うようになっている。
ステップS12では、トランスポンダからの応答があるかどうかを判断する。応答がある場合は、ステップS13に進み、応答が無い場合は、ステップS14に進む。
クラークキー10が固定されている状態では、100〜150kHzの電波により発生した誘導起電力により、トランスポンダ101が低周波のFSK(周波数シフトキーイング)で記憶されているキーデータ(64ビット)を出力する。ステップS13では、通信回路114がそれを受信し、コントローラ113にキーデータを伝え、コントローラ113は、キーデータをCPU1に送る。
クラークキー10が固定されていない状態では、トランスポンダ101からの応答が無いので、「キー無し」を示すキーデータをCPU1に送る。
次に、第2実施形態について説明する。第1実施形態では、クラークキー10のキーデータとして、トランスポンダ101に割り当てられたIDを用いるため、取り扱い担当者コードメモリ3cには、トランスポンダ101のIDを登録することになる。トランスポンダ101のIDが上述したように従来とは異なるコード体系のデータである場合、また新たにこのコード体系を取り扱い担当者コードメモリ3cへの登録することが困難な場合の方法として、従来様式のキーデータ、たとえば図15に示した場合の7ビットデータを使用することを可能にするには、ECRの内部設定を変更する必要がある。
これに対して第2実施形態では、トランスポンダのIDをリーダーのコントローラにおいて、従来のキーデータに変換してCPU1に送ることにより、リーダーを入れ替えるだけで、取り扱い担当者コードメモリなどそれ以外の部位を従来から変更する必要がなくなる。
上記のように、第2実施形態のECRは、リーダー11のコントローラの構成が変わるのみで、他の構成は第1の実施形態と同様であるので、リーダー11のブロック図のみ説明し、他の部分についての説明は省略する。
図10は、リーダー11の構成を示すブロック図である。通信回路ブロック112は、コントローラ123および通信回路114からなり、コントローラ123は、内蔵メモリ123aおよび出力I/F123bおよび123cを含んでいる。リーダー11のコントローラ123は、トランスポンダ101のIDを受信すると、内蔵メモリ123aを参照して、第2のデータである従来様式のキーデータに変換して、出力I/F123cからCPU1に送る。なお、受信したトランスポンダ101のIDを変換せずに、出力I/F123bからCPU1に送ることも可能である。いずれのデータを用いるかは、取り扱い担当者が選択できるようにすればよい。
図11は、コントローラ112によるデータ変換処理を示すフローチャートである。図12は、内蔵メモリ123aに記憶しているキーデータテーブルを示す図である。
まずステップS21では、キーデータとしてトランスポンダ101のIDを読み込む。ステップS22でn=1にセットし、ステップS23で、キーデータテーブルを参照して、n=1番目のキーデータテーブルの内容を読み出し、ステップS24でトランスポンダ101のIDであるキーデータの登録欄がブランクかどうか判断する。ブランクであればステップS25に進み、ブランクでなければステップS27に進む。
ステップS25では、トランスポンダ101のIDであるキーデータをn=1番目のキーデータ登録欄に登録する。ステップS26では、n=1番目の従来キーデータ登録欄に登録されている従来様式のキーデータを読み出し、出力I/F123cから出力する。
ステップS27で、n=1番目のキーデータ登録欄に登録されているトランスポンダ101のIDであるキーデータと比較し、ステップS28で一致するかどうかを判断する。一致すればステップS26に進み、一致しなければステップS29に進む。ステップS29では、nに1を加えてステップS23に戻り、以上のステップを繰り返す。
なお、上記の実施形態では、リーダーに磁石リングを設け、クラークキーに磁性体リングを設けることで磁力吸着による固定を実現したが、これに限らずリーダーに磁性体リングを設け、クラークキーに磁石リングを設けてもよい。また、リーダーおよびクラークキーの双方に磁石リングを設けてもよい。なお、磁石リングの位置により、リーダーのアンテナとトランスポンダとの通信に最適な位置関係は変化するので、磁石リングの位置によって適宜位置関係を調整すればよい。
また、磁石および磁石と磁力吸着する磁性体の形状について、上記ではリング形状のものとして説明したがこれに限らず他の形状であってもよい。たとえば、図13(a)に示すように、中央に開口を有する四辺形状、いわゆる枠形状であってもよいし、図13(b)に示すように、枠形状を2等分割した形状であってもよいし、図13(c)に示すように、矩形状のものをアンテナの指向方向を妨げない位置に複数個(たとえば2個)配置してもよい。
さらに、着磁の方向を厚み方向としてもよい。たとえば、複数個(たとえば4個)の磁石をアンテナの指向方向を妨げない位置に配置し、それぞれの磁石の着磁の方向を厚み方向とする。図14(a)と図14(b)は、配置された4個の磁石を互いに逆方向からみた極性を示しており、一方側が全てN極、もう一方側が全てS極となっている。また、図14(c)と図14(d)も配置された4個の磁石を互いに逆方向からみた極性を示しており、隣接する磁石は、それぞれの極性が逆の極性となっている。
また、クラークキーの形状をつまみ形状として説明したが、これに限らずペン形状であってもよい。ペン形状の場合、ペンの軸内にトランスポンダを内蔵すればよい。
また、上記の説明では、認識装置をECRの取り扱い担当者の識別に用いたがこれに限らず、たとえばPCサーバーの使用者識別などセキュリティー装置として使用することができる。PCサーバーの場合、キーデータに基づいて、PCサーバーを操作可能とするか否かの識別や、PCサーバーをアドミニストレータモードで動作させるかユーザモードで動作させるかの識別などを行うことができる。また、セキュリティー装置としては、ホテルの客室ドアに設けられた電子錠に用いることもできる。
また、キーとリーダーとを磁石で固定する構成として説明してきたが、特に磁石を使用しないで、たとえばキーとリーダーとの位置を決めるガイドを設け、バネや突起物などで固定する構造あるいは単にガイドに沿って配置する構造にして、使用することもできる。
本発明は、その精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいろいろな形態で実施できる。したがって、前述の実施形態はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、本発明の範囲は特許請求の範囲に示すものであって、明細書本文には何ら拘束されない。さらに特許請求の範囲に属する変形や変更は全て本発明の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0006】
以上のように本発明によれば、質問器およびトランスポンダが備える各アンテナの指向方向が対向するように構成されるので、質問器とトランスポンダとの通信が的確に行われる。
また本発明によれば、キーとリーダーとを磁力吸着によって固定されるような場合、質問器から発信する電波、およびトランスポンダから発信する電波がキーの中心付近を通過するため、無線通信の品質を確保することができる。
また本発明によれば、キーの識別性と共に取り扱い担当者の使い勝手を向上させることができる。
また本発明によれば、キーとリーダーとを磁力吸着によって着脱可能としている。
また本発明によれば、磁石によるリング中心付近の磁界の影響を小さくすることができ、質問器とトランスポンダとの無線通信の信頼性を向上させることができる。
また本発明によれば、キーとリーダーとの位置、すなわち質問器とトランスポンダとの位置を最適な位置関係とすることができ、質問器とトランスポンダとの無線通信の信頼性を向上させることができる。また、磁気カードなどが磁石に接触することを防止することができる。
また本発明によれば、電子機器のセキュリティー機能を向上させることができる。
また本発明によれば、容易に従来の構成による電子機器を開発することが可能になり開発効率を上げることができる。
【図1】

【図2】

【図3】

【図4】

【図5】

【図6】

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

【図11】

【図12】

【図13】

【図14】

【図15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
データを記憶したトランスポンダを内蔵するキーと、
トランスポンダに記憶されたデータを無線通信で読み取るための質問器を内蔵するリーダーと、
質問器がトランスポンダから読み取ったデータに基づいてキーの識別を行う識別手段とを有する認識装置であって、
質問器とトランスポンダとの通信が的確に行われるように、質問器およびトランスポンダが備える各アンテナの指向方向が対向するように構成されることを特徴とする認識装置。
【請求項2】
質問器およびトランスポンダの各アンテナを、各アンテナの指向方向がキーの概略中央になるように配したことを特徴とする請求項1記載の認識装置。
【請求項3】
キーとリーダーとが磁力吸着によって着脱可能であることを特徴とする請求項1記載の認識装置。
【請求項4】
キーおよびリーダーの双方に磁石を配するか、またはキーおよびリーダーの一方に磁石を配し、もう一方に磁性体を配することを特徴とする請求項3記載の認識装置。
【請求項5】
リング形状の磁石を用い、その極性であるN極およびS極が円周方向に交互に配置されるように着磁されていることを特徴とする請求項4記載の認識装置。
【請求項6】
キーをリーダーに対向する位置にセットできるように、キーまたはリーダーにガイドを設けたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の認識装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の認識装置を備える電子機器であって、
認識装置の認識結果により、少なくとも電子機器を操作可能とするか否かの決定を行うことを特徴とする電子機器。
【請求項8】
質問器がトランスポンダから読み取ったデータを第1のデータとし、
識別手段が、第1のデータの様式をこれとは異なる第2のデータの様式に変換することを特徴とする請求項7記載の電子機器。

【国際公開番号】WO2005/014959
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【発行日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−512941(P2005−512941)
【国際出願番号】PCT/JP2004/011179
【国際出願日】平成16年8月4日(2004.8.4)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【出願人】(000213954)朝日電装株式会社 (184)
【Fターム(参考)】