説明

調湿パネル

【課題】内装建材に適用可能な表面硬度を有するとともに、軽量で反りを低減し得る調湿パネルを提供する。
【解決手段】調湿パネル1は、植物長繊維2aの集合体に、バインダーとなる樹脂材を分散させて、該植物長繊維間を熱圧接着して形成された表層ボード2と、水分の吸放湿性を有する軽量調湿基材3とを、透湿性を有する水性接着剤4aで接着して積層形成されており、前記表層ボードの密度が500kg/m以上、1200kg/m以下とされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿パネルに関し、詳しくは、住居の内装建材などに使用される調湿パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近時の住宅においては、高断熱、高気密化の傾向が進み住宅内の湿度調節が困難となっている。それに起因する結露やカビ、ダニの発生が問題となり、住宅内の湿度調節が重要な課題となっている。
そこで、従来から住宅の内装建材などに使用される調湿機能を有した建築材料が提案されている。
一般的には、軽量で安価であることからロックウールボードやインシュレーションボード等が調湿建材として利用されている。あるいは、上記したようなボードの主材(ロックウールや木質繊維)に、珪藻土、炭、シリカゲル、ゼオライト等の調湿材と、無機系あるいは樹脂系のバインダーとを混合して熱圧成形等によって板状に形成された調湿建材が汎用されている。
【0003】
また、下記特許文献1では、表面に配置された表面板材と、表面板材の背面で外周に沿って配置されたC形鋼材からなる外周枠材と、表面板材の背面で外周枠材の内側空間に配置された厚板状の繊維質層とから構成された建築用床パネルが提案されている。
上記床パネルの繊維質層は、主原料となるロックウールに、粉粒炭と珪藻土等の無機多孔質粉粒体とを添加して、結合剤によって板状に形成されている。また、上記表面板材は、パーティクルボード等の木材から構成されている。
前記構成とされた建築用床パネルでは、床下空間側に配置される繊維質層の調湿機能により、床下空気の清浄化が図れる、とされている。
【特許文献1】特許3535715号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載の建築用床パネルは、床下空間等の室内の居住スペース側とは異なる側の調湿を主たる目的としており、室内空間側の調湿については、考慮がなされておらず、更なる改善が望まれていた。
また、上記特許文献1に記載の建築用床パネルのように、ロックウール等を調湿建材として使用することで、軽量かつ安価な調湿建材となる利点がある。しかしながら、上記のようなロックウールボードやインシュレーションボードは、表面硬度が低く、従来は、断熱材として壁構造体等に内設される場合が殆どであった。
【0005】
例えば、内装用の表面建材として使用される場合には、切断・穴あけ加工や釘打ち等がなされるため、表面硬度や耐欠け性が要求され、このような箇所に施工する場合は、ロックウール等を基材として、その表面に硬質の板材を貼着することが考えられる。しかしながら、前記したように、その表面側からの調湿性を考慮する必要があるとともに、そのような基材と硬質の表面材とは、水分の吸放湿性が大きく異なることから、接着剤により接着して積層形成する際に、該接着剤を乾燥させる際や、吸放湿によって、硬質の表面材の乾燥収縮が大きく影響し、パネル全体に反りが生じやすいという問題があった。この問題を解決するためには、表面材と同質同形状の裏面材を更に貼着することも考えられるが、コストアップになるという問題もあった。
【0006】
本発明は、前記問題を解決するために提案されたもので、その目的は、内装建材に適用可能な表面硬度を有するとともに、軽量で反りを低減し得る調湿パネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために、本発明に係る調湿パネルは、植物長繊維の集合体に、バインダーとなる樹脂材を分散させて、該植物長繊維間を熱圧接着して形成された表層ボードと、水分の吸放湿性を有する軽量調湿基材とを、透湿性を有する水性接着剤で接着して積層形成されており、前記表層ボードの密度が500kg/m以上、1200kg/m以下とされていることを特徴とする。
【0008】
本発明の前記調湿パネルにおいては、前記軽量調湿基材を、ロックウールボードとしてもよい。あるいは、本発明の前記調湿パネルにおいては、前記軽量調湿基材を、インシュレーションボードとしてもよい。
【0009】
本発明の前記調湿パネルにおいては、前記軽量調湿基材に、水分の吸放湿性を有する調湿材を含有させたものとしてもよい。
また、本発明の前記調湿パネルにおいては、前記水性接着剤に、水分の吸放湿性を有する調湿材を含有させたものとしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る前記調湿パネルは、バインダーとなる樹脂材を分散させて植物長繊維間を熱圧接着して形成された表層ボードと、軽量調湿基材とを、透湿性を有する水性接着剤で接着して積層形成されているので、軽量調湿基材に室内空間側あるいは収納空間側から吸湿される水分、及び室内空間側あるいは収納空間側へ放湿される水分は、接着層及び表層ボードの透湿性によって透過する。従って、吸放湿効果を十分に発揮できる調湿パネルとなる。
また、前記表層ボードは、バインダーとなる樹脂材を分散させて植物長繊維間を熱圧接着して形成されているので、透湿性の高い多孔質の表層ボードとなるとともに、その密度を、500kg/m以上、1200kg/m以下としているので、透湿性を阻害することなく、内装用の表面建材として使用される場合に要求される表面硬度や耐欠け性を確保できるとともに、寸法安定性に優れたものとなる。すなわち、表層ボードの密度が500kg/m未満であると、調湿パネルの表面硬度が低下する恐れがあるとともに、釘や木ネジ等の保持力が低下する恐れがあり、また、表層ボードの密度が1200kg/m超であると、表層ボードの透湿性が低くなり、調湿パネルの調湿性能が低下する恐れがある。
【0011】
さらに、前記調湿パネルは、その基材を軽量の調湿基材としているので、軽量でありながら、上記したように、表層ボードを積層形成することで調湿性能を阻害することなく、表面硬度等の高いものとなる。
さらにまた、表層ボードの透湿性及び寸法安定性により、積層構成とされた表層ボードと軽量調湿基材との間の水分の吸放湿性能の差が低減できるとともに、表層ボード自体の表裏における水分蒸発にかかる時間差が低減できるので、乾燥前後や吸放湿前後における表層ボードの変形が生じにくく、調湿パネル自体の反りを効果的に低減できる。
【0012】
本発明の前記調湿パネルにおいて、前記軽量調湿基材を、ロックウールボードあるいはインシュレーションボードからなるものとすれば、これらロックウールボード及びインシュレーションボードは、建材として汎用されていることから安価に調達できるとともに軽量であるため、軽量且つ安価な調湿パネルとなる。
また、本発明の前記調湿パネルにおいて、前記軽量調湿基材及び/又は前記水性接着剤に、水分の吸放湿性を有する調湿材を含有したものとすれば、調湿パネル自体の調湿性能をより高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、本発明の最良の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、第1実施形態に係る調湿パネルを模式的に示す概略縦断面図である。
尚、以下では、調湿パネルの表面とは、室内空間あるいは収納空間側の面を指すものとする。
【0014】
図例の調湿パネル1は、植物長繊維2aの集合体に、バインダーとなる樹脂材を分散させて、植物長繊維2a間を熱圧接着して形成された表層ボード2と、水分の吸放湿性を有する軽量調湿基材3とを、透湿性を有する水性接着剤4aで接着して積層形成されている。
尚、この調湿パネル1は、住宅の内壁の留め付け仕上げ用の表面建材、打上天井材等の内装建材として適用され、押入れやクローゼット内の内壁や天井などへの施工も可能である。
また、調湿パネル1の表面に表面仕上げのための通気性・透湿性を有する化粧シートや壁紙を更に貼着するようにしてもよい。
【0015】
本実施形態に係る調湿パネル1の表層ボード2に採用される植物長繊維2aとしては、植物の靭皮から採取される靭皮繊維材(例えば、ケナフ、亜麻、ラミー、大麻、ジュート等の麻類植物の靭皮から採取される繊維)や、マニラ麻、サイザル麻等の麻類植物の茎又は端の筋から採取される繊維、油ヤシやココヤシ等のヤシ科植物から採取される繊維、パルプなどの木材繊維が挙げられる。
特に、近年、枯渇化が叫ばれている木材資源ではなく、非木材資源である麻類植物やヤシ科植物から得られる麻類植物繊維材やヤシ科植物繊維材を植物長繊維2aとして使用すれば、環境資源にも配慮した表層ボード2となる。また、そのような麻類植物やヤシ科植物から採取される繊維は、従来の繊維板に使用されている針葉樹や広葉樹から採取される繊維よりも引張強度が2倍〜14倍程度高く、麻類植物やヤシ科植物から採取される繊維を表層ボード2に使用することで、後記するように調湿パネル1自体の強度をより効果的に高めることができる。
この表層ボード2の厚さは、0.5mm以上、5.0mm以下とすることが好ましく、これにより、調湿パネル1自体の表面硬度や強度を阻害することなく、軽量かつ安価な調湿パネル1となる。
尚、上記各種の繊維は、一種あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
上記表層ボード2に採用されるバインダー(接着成分)となる樹脂材を含有する接着剤としては、特に限定されず、ユリア樹脂や、メラミン樹脂、ユリア・メラミン共縮合樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などの熱硬化性樹脂を含有する接着剤、あるいは、酢酸ビニル樹脂や、合成ゴム、ポリ乳酸、澱粉、アクリル樹脂等を含有する水性接着剤あるいはエマルジョン接着剤などが挙げられる。
【0017】
また、本実施形態に係る表層ボード2にバインダーとして含有される上記樹脂材の含有量は、成形後の表層ボード2に対して、その固形分が5重量%以上、50重量%以下とすることが好ましく、より好ましくは10重量%以上、30重量%以下である。これにより、調湿性能を阻害することなく、上記植物長繊維2a同士の接着性を高められる。すなわち、樹脂材の含有量が5重量%未満であれば、上記植物長繊維2a間を熱圧接着する際に、十分な接着がなされず、植物長繊維がばらけたり、表面硬度が低くなり、剥離が生じたりする恐れがある。また、樹脂材の含有量が50重量%超であれば、植物長繊維2a同士の接着性は高められるが、表層ボード2自体の透湿性、通気性が阻害される恐れがある。
尚、後記するように、成形された表層ボード2が多孔質状態で透湿性・通気性を有するように、植物長繊維2a間を接着し得るバインダーとなる樹脂材であれば、上記以外の樹脂材を使用してもよい。また、上記各種の樹脂材は、一種あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0018】
本実施形態に係る調湿パネル1に採用される水分の吸放湿性を有する軽量調湿基材3としては、ロックウールやスラグウール、ミネラルウール、グラスウール等の人造鉱物繊維を主材とする人造鉱物繊維板、あるいは、木材等の繊維を主材とする木質繊維板などが挙げられる。ここで、軽量調湿基材3は、その密度が40kg/m以上、500kg/m以下のものとすることが好ましい。すなわち、密度が40kg/m未満であると、調湿パネル1自体の強度が不足する恐れがあり、また、密度が500kg/m超であると、調湿パネル1の軽量化が阻害されるとともに、調湿性能が低下する恐れがある。
【0019】
特に、ロックウールボードやインシュレーションボード(軟質繊維板)は、それら自体が調湿性能を有するとともに軽量且つ安価であるため、軽量調湿基材3として好ましく採用され、本実施形態では、インシュレーションボード3を用いている。
このインシュレーションボード3の厚さは、上記表層ボード2の倍以上の厚さとすることが好ましく、例えば、2倍〜10倍程度としてもよい。これにより、軽量かつ安価な調湿パネル1となる。
尚、後記する第2実施形態で説明する調湿材3bを上記インシュレーションボードに含有させるようにしてもよい。
【0020】
本実施形態に係る調湿パネル1に採用される透湿性を有する水性接着剤4aとしては、乾燥固化して接着剤層4となった際に、透湿性を有するものであれば、どのようなものでもよく、例えば、澱粉系接着剤や酢酸ビニル系接着剤などが挙げられる。
尚、図1及び後記する第2実施形態を示す図2では、接着剤層4の層厚が比較的厚いものとして図示しているが、実際には、50μm〜500μm程度である。また、後記する第2実施形態で説明する調湿材3bを上記水性接着剤に含有させるようにしてもよい。
【0021】
次に、本実施形態に係る調湿パネル1の製造方法の一例を説明する。
尚、以下では、表層ボード2は、植物長繊維2aとして、ケナフを解繊して得たケナフ長繊維2aを使用し、樹脂材として、フェノール樹脂を含有するフェノール樹脂系接着剤を使用した場合について説明し、軽量調湿基材3は、木質繊維3aを主材とするインシュレーションボード3として説明するが、植物長繊維、樹脂材及び軽量調湿基材としては、上記した各種から適宜、選択可能である。
【0022】
まず、表層ボード2の成形工程について説明する。
アオイ科の一年生草本類であるケナフを、例えば、水中に浸漬することによって、芯部と外皮部分である靭皮部とに分離し、この靭皮部から得たケナフ繊維束をオープナーなどの解繊装置に供給して、平均繊維径が20μm〜500μm、好ましくは、50μm〜100μm程度となるように解繊するとともに、所定の長さ、例えば、6mm以上の長さに切断して、ケナフ長繊維とする。このケナフ長繊維の長さは、6mm以上であれば良いが例えば、6mm〜2000mm程度、好ましくは、10mm〜200mm程度、より好ましくは、20mm〜100mm程度である。
【0023】
ケナフ長繊維の平均繊維径が、上記の範囲より小径であると、接着面積が増加するため表層ボード2自体の強度は高くなるが、ケナフ長繊維間の空隙が小さくなり、透湿性を阻害する恐れがあり、また、ケナフ長繊維の平均繊維径が上記の範囲より大径であると、透湿性は高くなるが、ケナフ長繊維同士の接着箇所が少なくなって表層ボード2自体の強度が低下する恐れがある。
また、ケナフ長繊維の繊維長が、上記の範囲より短いと、ケナフ長繊維同士の絡み合いが不足して表層ボード2自体の強度や透湿性が低下する恐れがあり、また、ケナフ長繊維の繊維長が、上記の範囲より長いと、後記するようにケナフ長繊維の集合体を形成する際に所定の形状にすることが困難となるとともに、樹脂材を均一に分散させることが困難となる恐れがある。
【0024】
従来の針葉樹や広葉樹から採取される繊維を使用したMDF等の繊維板では、6mm未満、一般的には2mm以下の短繊維に樹脂系接着剤を混合して成形されているが、本実施形態では、上記のように繊維長が6mm以上とされたケナフ長繊維を使用することで、それら長繊維が絡み合い表層ボード2自体の強度を高められるとともに、長繊維が絡み合うことによって微小な空隙が形成された多孔質の表層ボード2となり、透湿性に優れたものとなる。特に、そのケナフ長繊維の繊維長を、上記のように10mm〜200mm程度とすることで、表層ボード2自体の透湿性を阻害することなく、長繊維の絡み合いによる強度をより効果的に高めることができる。
【0025】
上記ケナフ長繊維を堆積、積層して所定の厚さの長繊維マット体(ケナフ長繊維の集合体)とする。この際、ケナフ長繊維のそれぞれが、ほぼ一方向に配向するようにしたり、ほぼ直交する二方向に配向するようにしたりしてもよい。また、上記長繊維マット体に多数のニードルによってパンチング処理を施し、長繊維同士をより絡み合わせるようにしてもよい。
【0026】
次に、上記のように形成された長繊維マット体を、液状フェノール樹脂の含浸槽に浸漬させ、ローラー等の絞り機で絞って所定の混合量となるようにして、フェノール樹脂を長繊維マット体に均一に分散させ、その後、乾燥機によって揮発分を蒸発させ、フェノール樹脂含浸長繊維マット体とする。このフェノール樹脂は、成形後の表層ボード2に対して、その含有量が固形分で、好ましくは、5重量%〜50重量%、より好ましくは、10重量%〜30重量%であり、これにより、ケナフ長繊維間の接着強度、及び成形後の表層ボード2の透湿性を阻害することがない。
尚、フェノール樹脂を長繊維マット体に均一に分散させる態様としては、例えば、粉末のフェノール樹脂を所定の混合量で上記ケナフ長繊維に混合して、その後に、長繊維マット体とするようにしてもよい。あるいは、ケナフ長繊維に、液状フェノール樹脂をスプレー噴霧しながら長繊維マット体を形成するようにしてもよい。
【0027】
次いで、上記長繊維マット体を、熱プレス機に導入し、熱プレス(加熱加圧)を行う。この際、成形後の表層ボード2の密度が、500kg/m以上、1200kg/m以下となるように熱プレスがなされる。この熱プレス時の条件、すなわち、プレス圧、プレス時間、及び型面温度は、成形後の表層ボード2の密度や板厚、樹脂材の含有量等により適宜、選択可能であるが、例えば、120℃〜200℃程度の温度、1.0〜4.0MPa程度のプレス圧、1分〜3分程度のプレス時間としてもよい。
【0028】
上記のように熱プレスがなされ、脱型してケナフ長繊維2aを主材とする表層ケナフボード2が得られる。このように成形された表層ケナフボード2は、ケナフ長繊維2aの絡み合いによって透湿性、通気性のある多孔質状態となり、ケナフ長繊維2aのそれぞれは、絡み合うようにして、そのケナフ長繊維2a同士が樹脂材で部分的に接着連結されている。
尚、上記した表層ケナフボード2の製造方法は、一例に過ぎず、上記以外の製造方法によって製造し得ることは当然である。
【0029】
次に、軽量調湿基材3の成形工程について説明する。
本実施形態では、上記したように軽量調湿基材3として、インシュレーションボード3を用いている。
このインシュレーションボード3は、JIS A5905(繊維板)に準拠した木質繊維板であって、針葉樹や広葉樹等の木本類を蒸煮し、解繊して得られる木質短繊維片3aを主材として、これにコーンスターチや澱粉系等のサイズ剤や樹脂材を添加して形成されている。このインシュレーションボード3は、その密度が400kg/m以下とされ、軽量であるとともに、多孔質で優れた透湿性、通気性を有している(JIS A5905(繊維板)で規定されている密度が350kg/m未満からなるものとしてもよい)。
【0030】
上記のようなインシュレーションボード3の製造方法としては、従来公知の湿式法が採用され、例えば、蒸煮し、解繊した木質短繊維片3aに、サイズ剤や樹脂材等を配合してスラリーを調整する。次いで、このスラリーを丸網式や長網式、ハチェック式等の通常の抄造機によって抄造してフォーミングマットを形成し、このフォーミングマットをコールドプレスにて脱水しながら所定の厚さに成形し、乾燥機にて加熱乾燥して、調湿することにより板状に形成するようにしてもよい。
尚、上記したインシュレーションボード3の製造方法は、一例に過ぎず、上記以外の製造方法によって製造し得ることは当然である。また、上記したように調湿材3bを含有させる場合は、上記スラリーを調整する際に、後記する調湿材3bを配合するようにしてもよく、あるいは、上記のように抄造して得られるフォーミングマットに対して調湿材3bを散布して配合するようにしてもよい。
【0031】
前記のようにそれぞれ形成された表層ケナフボード2と、インシュレーションボード3とを、上記した水性接着剤4aで接着し、乾燥機にて水性接着剤4aの水分を蒸発させる。これにより透湿性を有する接着剤層4で表層ケナフボード2と、インシュレーションボード3とが連結されて調湿パネル1が積層形成される。
尚、この際、必要に応じてプレスにて調湿パネル1の厚さ調整をしてもよい。
【0032】
前記構成とされた本実施形態に係る調湿パネル1は、バインダーとなる樹脂材(フェノール樹脂)を分散させて、ケナフ長繊維2a間を熱圧接着して形成された表層ケナフボード2と、インシュレーションボード3とを、透湿性を有する水性接着剤4aで接着して積層形成されているので、インシュレーションボード3に室内空間側あるいは収納空間側から吸湿される水分、及び室内空間側あるいは収納空間側へ放湿される水分は、接着剤層4及び表層ケナフボード2の透湿性によって透過する。従って、吸放湿効果を十分に発揮できる調湿パネル1となる。
【0033】
また、表層ケナフボード2は、バインダーとなる樹脂材を分散させてケナフ長繊維2a間を熱圧接着して形成されているので、透湿性の高い多孔質の表層ケナフボード2となるとともに、その密度を、500kg/m以上、1200kg/m以下としているので、透湿性を阻害することなく、内装用の表面建材として使用される場合に要求される表面硬度や耐欠け性を確保できるとともに、寸法安定性に優れたものとなる。すなわち、表層ケナフボード2の密度が500kg/m未満であると、調湿パネル1の表面硬度が低下する恐れがあるとともに、釘や木ネジ等の保持力が低下する恐れがあり、また、密度が1200kg/m超であると、表層ケナフボード2の透湿性が低くなり、調湿パネル1の調湿性能が低下する恐れがある。
【0034】
さらに、調湿パネル1は、その基材を上記のように軽量のインシュレーションボード3としているので、軽量かつ安価でありながら、上記したように、表層ケナフボード2を積層形成することで調湿性能を阻害することなく、表面硬度等の高いものとなる。
さらにまた、表層ケナフボード2の透湿性及び寸法安定性により、積層構成とされた表層ケナフボード2とインシュレーションボード3との間の水分の吸放湿性能の差が低減できるとともに、表層ケナフボード2自体の表裏における水分蒸発にかかる時間差が低減できるので、乾燥前後や吸放湿前後における表層ケナフボード2の変形が生じにくく、調湿パネル1自体の反りを効果的に低減できる。
【0035】
次に、本発明に係る他の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
図2は、第2実施形態に係る調湿パネルを模式的に示す概略縦断面図である。
尚、第1実施形態との相違点を中心に説明し、同様の構成については、同一符合を付して説明を省略する。
【0036】
本実施形態に係る調湿パネル1Aは、軽量調湿基材及び接着剤層の構成が上記第1実施形態の調湿パネル1とは異なる。
軽量調湿基材3Aは、本実施形態では、人造鉱物繊維であるロックウール3Aaを主材とし、これに後記する調湿材3bを均一に分散させて含有させたロックウールボード3Aとしている。このロックウールボード3Aは、JIS A9504に準拠した人造鉱物繊維板であって、このロックウールボード3Aの製造方法としては、従来公知の湿式法が採用され、例えば、高炉スラグと岩石を高温で溶かして得られる無機質のロックウール3aに、調湿材3b、樹脂材等を含有する結合剤等を配合してスラリーを調整する。次いで、このスラリーを丸網式や長網式、ハチェック式等の通常の抄造機によって抄造してフォーミングマットを形成し、このフォーミングマットをコールドプレスにて脱水しながら所定の厚さに成形し、乾燥機にて加熱乾燥して、調湿することにより板状に形成するようにしてもよい。
【0037】
上記ロックウールボード3Aに含有される調湿剤3bとしては、粒子状の木炭、竹炭などの炭類、タルク、ゼオライト、珪藻土、シリカゲル、モンモリロナイト、セピオライトなどの粘土鉱物、アルミナ、シリカなどの無機物等が挙げられる。この調湿剤3bの含有量は、成形後のロックウールボード3Aに対して、1重量%〜30重量%とすることが好ましく、より好ましくは、5重量%〜20重量%である。1重量%未満であると調湿性能を高められず、30重量%超であると、耐水性が悪化する傾向があるからである。また、調湿材3bの粒径は、50μm以上、4mm以下とすることが好ましく、より好ましくは、1mm以上、2mm以下である。
また、上記各種の調湿材は、一種あるいは二種以上を組み合わせて使用してもよい。また、上記以外の調湿材を使用してもよい。
【0038】
尚、上記したロックウールボード3Aの製造方法は、一例に過ぎず、上記以外の製造方法によって製造し得ることは当然である。また、上記調湿材3bの配合は、上記のように抄造して得られるフォーミングマットに対して散布して配合するようにしてもよい。
また、本実施形態では、軽量調湿基材3として、調湿材3bを含有させたロックウールボード3Aとしているが、調湿材3bを含有させないものとしてもよい。調湿材3bを含有させたものと比べると調湿性能は劣るが、このようなロックウールボードであっても調湿性能を有し、軽量かつ安価な調湿パネル1Aとなる。
【0039】
また、本実施形態では、表層ボード2とロックウールボード3Aとを接着するための水性接着剤4Aaには、上記同様の調湿材3bを含有させている。
この水性接着剤4Aaへの調湿材3bの含有量は、上記同様、1重量%〜30重量%とすることが好ましく、より好ましくは、5重量%〜20重量%である。1重量%未満であると調湿性能を高められず、30重量%超であると、接着性が悪化する傾向があるからである。尚、前記第1実施形態と同様、調湿材3bを含有させない水性接着剤としてもよい。
【0040】
以上のように、本実施形態に係る調湿パネル1Aによれば、軽量調湿基材として調湿材3bを含有させたロックウールボード3Aを用い、表層ボード2とロックウールボード3Aとを接着する接着剤層4Aに調湿材3bを含有させた構成としているので、調湿パネル1Aの調湿性能をより高めることができる。
【0041】
次に、本発明に係る調湿パネルの実施例の一例と比較例とを図3の表に基づいて説明する。
尚、実施例1〜5では、ケナフ長繊維2として、ケナフの靭皮部を解繊して得た平均径82μm、長さが20mm〜100mmのケナフ長繊維(比較例1,2も同様)を用い、樹脂材として、液状のフェノール樹脂系接着剤(群栄化学工業(株)PL−3725)を用い(比較例1,2も同様)、表層ボードと軽量調湿基材とを接着する水性接着剤として澱粉系の接着剤(矢沢化学工業(株)ウォールボンド100)を用いた(比較例1〜4も同様)。
【0042】
(実施例1,2,4)
上記のケナフ長繊維2を上記したように長繊維マット体とし、液状フェノール樹脂系接着剤に浸漬させて、フェノール樹脂を均一に分散させ、絞り機によってフェノール樹脂の含有量を調整した後、乾燥機によって揮発分を蒸発させ、フェノール樹脂含浸長繊維マット体を形成した。上記フェノール樹脂の含有量は、その固形分が成形後の表層ケナフボードに対して15重量%となるように設定している。
その後、プレス型間(スペーサー厚)が1.5mmとされた熱プレス機で熱プレスを行い、板厚が1.5mm、大きさが600mm×600mmの表層ケナフボードを成形した。
また、上記したようにロックウールに調湿材3bとしてシリカゲルを適量混合して板厚が11.5mm、大きさが600mm×600mmのロックウールボードを成形した。
上記表層ボードとロックウールボードとを澱粉系接着剤で接着して常温プレスし、乾燥機(80℃)で乾燥させて、板厚が13mmとされた調湿パネルをそれぞれ得た。
尚、実施例1では、表層ケナフボードの密度を500kg/mとし、実施例2では、表層ケナフボードの密度を700kg/mとし、実施例4では、表層ケナフボードの密度を1200kg/mとしている。また、上記ロックウールボードの密度は、いずれも500kg/mとしている。
【0043】
(実施例3)
実施例3では、上記澱粉系接着剤に調湿材3bとしてシリカゲルを適量含有させ、該シリカゲル混合澱粉系接着剤にて上記実施例2とそれぞれ同条件とされた表層ケナフボードとロックウールボードとを接着して調湿パネルを成形した。
【0044】
(実施例5)
実施例5では、上記実施例2と同様の表層ケナフボード及び水性接着剤を用い、軽量調湿基材として板厚が9mm、密度が400kg/mとされた市販のインシュレーションボードを用いた。このインシュレーションボードと表層ケナフボードとを上記同様に水性接着剤で接着して調湿パネルを成形した。
尚、上記インシュレーションボードの密度は、JIS A5905に規定されたインシュレーションボードの密度とは異なるが実測値である。
【0045】
(比較例1及び2)
比較例1及び2のパネルは、上記実施例1,2,4の各調湿パネルとは、表層ケナフボードの成形後の密度のみをそれぞれ異ならせたものである。すなわち、比較例1では、表層ケナフボードの密度を400kg/mとし、比較例2では、表層ケナフボードの密度を1300kg/mとしており、他の条件は同様である。
【0046】
(比較例3)
比較例3では、上記比較例1及び2と同様のロックウールボードに、表層ボードとして板厚が1.4mm、密度が750kg/mの市販のMDF(木質中密度繊維板、中質繊維板)を澱粉系接着剤で接着して、厚さ12.9mmのパネルを成形した。上記のような木質MDFは、一般的に、針葉樹や広葉樹等の木本類を解繊して得られる木質短繊維片に、バインダーとなる熱硬化性樹脂接着剤を混合して加熱加圧されて成形されるもので、その繊維の緻密さから表面平滑性や端面の緻密さには優れているが、透湿性が比較的悪いボードである。
(比較例4)
比較例4では、上記比較例1及び2と同様のロックウールボードに、表層ボードとして板厚が3mmの市販のラワン合板を澱粉系接着剤で接着して、厚さ14.5mmのパネルを成形した。上記のようなラワン合板は、一般的に、薄板を互いに繊維方向がほぼ直交するようにして複数枚を接着剤で張り合わせたもので、曲げ強度や寸法安定性には優れているが、高価であるとともに、透湿性が比較的悪いボードである。
【0047】
(比較例5)
比較例5では、上記比較例1乃至4と同様のロックウールボードの表面に、上記実施例3と同様のシリカゲル混合澱粉系接着剤を塗布して乾燥させたボードとした。
(比較例6)
比較例6では、上記比較例1乃至4と同様のロックウールボードとした。
(比較例7)
比較例7では、調湿性基準として、上記実施例5と同様のインシュレーションボードとした。
【0048】
上記各実施例1〜5、比較例1〜7のパネルに対して、以下の評価試験を行った(尚、比較例3〜7では、必要最低限の評価試験のみを行った)。
【0049】
(評価試験)1)反り量測定試験
各実施例1〜5、比較例1〜4の各パネルの上記接着剤の乾燥工程後における各パネルの反り量を計測した。
反り量の計測は、各パネルの外周縁近傍表面の二点(対向する辺近傍表面の二点)を基点とし、表面中央点を測定点として、反り測定器具を用いて計測し、その絶対値を反り量とした。
反り量の判定は、施工上の不具合を考慮し、反り量が0.5mm以下を○と判定した。
結果は、図3の表の通りであり、実施例1〜5及び比較例1,2では、反り量が僅かであり、概ね良好であった。
比較例3及び4では、それぞれ軽量調湿基材に硬質の表層ボードを貼着したものであるが、これらの表層ボードは、いずれも表層ケナフボードに比べて透湿性及び寸法安定性が低く、表層ボード自体の表裏における水分蒸発に掛かる時間に差異が生じ、該表層ボードの表面を凹とした反りが大きく発生した。また、比較例5においても乾燥後に接着剤塗布側の面を凹とした反りが大きく発生した。
【0050】
(評価試験)2)調湿性能試験
各実施例1〜5、比較例1,2,6,7から得られた各試験体を、温度25℃、湿度50%の恒温恒湿雰囲気中に放置して恒量に達するまで養生した。
その後、各試験体を、温度25℃、湿度90%の恒温恒湿雰囲気中に24時間放置した後、各試験体の重量を測定して、吸湿後の重量を得た。
その後、さらに、各試験体を、温度25℃、湿度50%の恒温恒湿雰囲気中に24時間放置した後、各試験体の重量を測定して、放湿後の重量を得た。
上記吸湿後の重量と上記放湿後の重量との差から得た吸放湿量(各試験体1平方メートル当りの重量変化)を調湿性能として比較した。
調湿性能の比較は、インシュレーションボード(比較例7)の吸放湿量を調湿性基準として、当該インシュレーションボードの吸放湿量よりも15%以上良い場合(吸放湿量が149.5g/m以上)を○と判定した。
結果は、図3の表の通りであり、実施例1〜5及び比較例1では、調湿性能の結果は、概ね良好であった。特に、シリカゲル混合澱粉系接着剤を用いた実施例3では、他の条件が同じ実施例2に比べて、良好な結果となった。
比較例2では、試験体の表層ケナフボードの密度が高密度であるため、調湿性能を十分に発揮できない結果となった。
【0051】
(評価試験)3)落球試験
各実施例1〜5、比較例1〜4,6,7のパネルの耐欠け性、表面硬度の特性評価のために以下の落球試験を行った。
各実施例1〜5、比較例1〜4,6,7から得られた各試験体の表面に対して、1mの高さから重さ5gの鉄球を20回垂直に落下させ、各試験体表面の変化を目視観察した。
結果は、図3の表の通りであり、実施例1〜6、及び比較例2〜4では、各試験体表面に変化が見られず、概ね良好な結果となった。
比較例1では、試験体の表層ケナフボードの密度が低密度であるため、表面硬度が低く、試験体表面に小さい凹みと面荒れが見られた。
比較例6では、試験体表面に、欠け、崩れの発生が見られた。
比較例7では、試験体表面に大きな凹みが見られた。
以上の結果から実施例1〜5の各調湿パネルは、調湿性能及び耐欠け性、表面硬度ともに良好であるとともに、成形後の反りも小さく良好な結果となり、住宅の内装建材、特に表面建材としても十分に適用可能なことが示された。
また、特に、表層ボードをケナフボードとすることで、ケナフボード自体にも優れた調湿性能があることが示され、軽量調湿基材単体の場合と比べて、調湿性能により優れた調湿パネルとなることが示された。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明に係る調湿パネルの一実施形態を模式的に示す概略縦断面図である。
【図2】本発明に係る調湿パネルの他の実施形態を模式的に示す概略縦断面図である。
【図3】本発明に係る調湿パネルの実施例の一例と比較例とを評価試験の結果とともに示す表である。
【符号の説明】
【0053】
1,1A 調湿パネル
2 表層ケナフボード(表層ボード)
2a ケナフ長繊維(植物長繊維)
3 インシュレーションボード(軽量調湿基材)
3A ロックウールボード(軽量調湿基材)
3b 調湿材
4a,4Aa 水性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物長繊維の集合体に、バインダーとなる樹脂材を分散させて、該植物長繊維間を熱圧接着して形成された表層ボードと、水分の吸放湿性を有する軽量調湿基材とを、透湿性を有する水性接着剤で接着して積層形成されており、
前記表層ボードの密度が500kg/m以上、1200kg/m以下とされていることを特徴とする調湿パネル。
【請求項2】
請求項1において、
前記軽量調湿基材は、ロックウールボードとされている調湿パネル。
【請求項3】
請求項1において、
前記軽量調湿基材は、インシュレーションボードとされている調湿パネル。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項において、
前記軽量調湿基材には、水分の吸放湿性を有する調湿材が含有されていることを特徴とする調湿パネル。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項において、
前記水性接着剤には、水分の吸放湿性を有する調湿材が含有されていることを特徴とする調湿パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−144452(P2009−144452A)
【公開日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−324183(P2007−324183)
【出願日】平成19年12月17日(2007.12.17)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】