説明

赤外線遮断用二重窓システム

【課題】一般ガラスに赤外線反射物質をコーティングされたガラスを使用して赤外線を一次的に反射した後、遮断されない残りの赤外線を二次的にLow−Eガラスまたは熱変色性物質がコーティングされたガラスで反射させて、室内に流入または室外に流出される熱エネルギーを遮断できる二重窓システムを提供する。
【解決手段】本発明は第1ガラス部材、第2ガラス部材及び第1ガラス部材と前記第2ガラス部材間に設けられて前記第1ガラス部材と前記第2ガラス部材の間隔を維持するスペース部材を有する赤外線遮断のための二重窓システムであって、第1ガラス部材の一表面には近赤外線反射用ナノ物質コーティング膜が形成されており、第2ガラス部材の一表面には熱変色性物質コーティング膜が形成されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線遮断用二重窓システムに関するものであって、より詳しくは二重構造を持つ窓ガラスにおいて赤外線遮断率を増加させて室内の冷暖房に省エネルギー可能な赤外線遮断用二重窓システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般住宅及び建物の従来の窓は、断熱性に乏しかったので建物から45%以上の熱エネルギーが窓を通して損失されていた。
【0003】
このような熱損失を改善するために、二重窓、三重窓の形態で多重ガラス接合方式を利用して構成される複層ガラスは、一対のガラス板の間に間隔を維持させるスペース部材を形成し、スペース部材の両面にブチルゴムなどの接着液を塗布した後、真空状態で所定の圧力と熱を加えてスペース部材の両面にガラス管を接着させて作製されるが、このような複層ガラスはガラス管間に形成される真空部によって防音及び断熱効果に優れているので、建築資材として広く使用されている。
【0004】
複層ガラスの構成には、一般ガラスを二重に使用したり、Low−Eガラス(Low−E Glass,Low−emissivity Glass,低放射ガラス)と一般ガラスを二重に用いる方式が採用されているが、Low−Eガラスは透過率面においては一般ガラスと略同一だが、一般ガラスが赤外線の一部のみを反射するのに対し、Low−Eガラスは一般ガラス内部に赤外線反射率の高い特殊金属膜{一般的に銀(Ag)を使用}をコーティングさせたガラスであって建物の断熱性を高めるためのものである。Low−Eガラスの特殊金属膜は可視光線を透過させて室内の採光性を高め、赤外線は反射するので室内の熱の移動を極小化して室内の温度変化を少なくする省エネルギー型ガラスである。Low−Eガラスは、コーティング製造方法に応じてパイロリティック工法(pyrolytic process)によるハードローイー(hard low−E)とスパッタリング工法によるソフトローイー(soft low−E)に分けられる。
【0005】
このLow−Eガラスは使用条件によって差があるが、単板ガラスと比べれば約50%、一般複層ガラスよりは約25%の省エネルギー効果があるものと知られている。このような利点のため、住宅及び一般建物の窓や採光のための用途及び省エネルギーのための用途として使用される。特に24時間冷暖房稼動中の病院、ホテルなどに適合する。
【0006】
ところが、図1に示されたように、より改善された赤外線遮断のためにLow−Eガラスを二重に使用する場合、所望するLow−Eガラスを単一に使用する時よりも赤外線を2倍に遮断できないだけでなく、可視光の透過率も格段に劣って室内を暗くすることから、一般窓として使用し難い問題点がある。
【0007】
また、ガラスとガラスとの間に不活性ガスを詰めて熱線を一部減少させる効果もあるが、特殊装備を備えていない零細なガラス製造会社では再加工などの作業を行なうことができないので作業性が劣る問題点もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記のような問題点を解決するために案出されたものであって、本発明の目的は、一般ガラスに赤外線反射物質をコーティングされたガラスを使用して赤外線を一次的に反射した後、遮断されない残りの赤外線を二次的にLow−Eガラスまたは熱変色性物質がコーティングされたガラスで反射させて、室内に流入または室外に流出される熱エネルギーを遮断できる二重窓システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した課題を解決するために、本発明に係る二重窓システムは、第1ガラス部材、第2ガラス部材及び前記第1ガラス部材と前記第2ガラス部材間に設けられて前記第1ガラス部材と前記第2ガラス部材の間隔を維持するスペース部材を有する赤外線遮断のための二重窓システムを提供し、前記第1ガラス部材の一表面には近赤外線反射用ナノ物質コーティング膜が形成されており、前記第2ガラス部材の一表面には熱変色性物質コーティング膜が形成されていることを特徴とする二重窓システムを提供する。
【0010】
ここで近赤外線反射用ナノ物質コーティング膜は、異なる屈折率を持つ複数の絶縁体が積層されて形成されるのが好ましい。
【0011】
この時に積層される絶縁体は、ITO、ATO、ITO+ATO、IATO、TiO、Ta、ZnO、SiO及びSiN、Alから成るグループから選択された一つまたは一つ以上を含むことができる。
【0012】
また、第2ガラス部材に使用される熱変色性物質コーティング膜は二酸化バナジウムを主原料として含む。
【0013】
また、第2ガラス部材に使用される熱変色性物質コーティング膜は前記二酸化バナジウムの他にもモリブデン(Mo)またはタングステンを添加剤としてさらに含むことができる。
【0014】
また、本発明に係る二重窓システムに使用された第1ガラス部材は二重窓システムの外窓に使用されることもでき、前記第2ガラス部材は二重窓システムの内窓に使用されることもできるが、これとは逆に、前記第1ガラス部材が二重窓システムの内窓に使用され、前記第2ガラス部材が二重窓システムの外窓に使用されても類似した効果が得られる。
【0015】
また、近赤外線反射用コーティング膜は高い屈折率を持つTiOと割と低い屈折率を持つSiOを交互に積層して形成されたものが使用される。
【0016】
また、本発明によると、近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜が一面に構成された第1ガラス部材と、特殊金属膜が一面に形成されたLow−Eガラスで構成される第2ガラス部材と、前記第1ガラス部材及び前記第2ガラス部材間に設けられて各ガラス部材間に離隔された間隔を維持させるスペース部材と、を有し、前記第1ガラス部材の近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜と前記第2ガラス部材の特殊金属膜は相対するように設けられることを特徴とする赤外線遮断のための二重窓システムが提供される。
【0017】
第1ガラス部材の上部の近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜は、第1絶縁体と第2絶縁体とが交互に積層されて複層に構成され、前記第1絶縁体の屈折率は前記第2絶縁体の屈折率よりも大きいものが好ましい。
【0018】
また、第1絶縁体は、ITO、ATO、ITO+ATO、IATO、TiO、Ta、ZnOのうちいずれか一つで構成され、第2絶縁体はSiOまたはSiN、Alのうちいずれか一つで構成されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る赤外線遮断用二重窓システムは、室内に赤外線の流入割合を減少させて室内の温度が増加することを防止できる一方、熱が室外に流出されることを防止して室内の暖房/冷房の省エネルギーが可能になる。
【0020】
また、本発明に係る赤外線遮断用二重窓システムは、赤外線の遮断率を増加させるとともに可視光の透過率も増加させることによって室内での視野確保に有利である。
【0021】
本発明に係る赤外線遮断用二重窓システムは、赤外線反射物質及び熱変色性物質がコーティングされた一般ガラス2枚を使用した二重窓システムを提供することによって従来の赤外線遮断のための二重窓システムに比べて製造単価を格段に安くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】2枚のLow−Eガラスを使用して構成される二重窓システムの構成を示す図である。
【図2】本発明の好ましい第1実施の形態に係る赤外線遮断用二重窓システムの構成を示す図である。
【図3】本発明の好ましい第2実施の形態に係る赤外線遮断用二重窓システムの構成を示す図である。
【図4】本発明に係る近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜がガラス部材に複層で構成されることを例示的に示す図である。
【図5】近赤外線反射用ナノ物質コーティング膜が外窓に形成され熱変色性物質コーティング膜が内窓に形成された二重窓システムと、何もコーティングされていないガラスと熱変色性物質がコーティングされたガラスで成る二重窓システムと、近赤外線吸収物質がコーティングされたガラスと熱変色性物質がコーティングされたガラスで成る二重窓システムとの時間による温度の上昇及び赤外線透過率を示した図である。
【図6】近赤外線反射用ナノ物質コーティング膜が内窓に形成され、熱変色性物質コーティング膜が外窓に形成された二重窓システムと、何もコーティングされていないガラスと熱変色性物質がコーティングされたガラスで成る二重窓システムと、近赤外線吸収物質がコーティングされたガラスと熱変色性物質がコーティングされたガラスで成る二重窓システムとの時間による温度の上昇及び赤外線透過率を示した図である。
【図7】本発明に係る赤外線遮断用二重窓システムに流入される光の波長に対する透過度を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る赤外線遮断用二重窓システムは、一般ガラスに赤外線反射物質をコーティングして赤外線を一次的に遮断した後、Low−Eガラスまたは熱変色性(thormochromic)物質がコーティングされたガラスをさらに使用して、赤外線コーティングされた一般ガラスによって遮断されない残りの赤外線を反射させて、室内に流入または室外に流出される熱エネルギーを効果的に遮断することができる。
【0024】
<第1実施の形態>
図2は本発明の好ましい第1実施の形態に係る赤外線遮断用二重窓システムの構成を示す図であり、図3は本発明の好ましい第2実施の形態に係る赤外線遮断用二重窓システムの構成を示す図である。図4は本発明に係る近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜がガラス部材に複層で構成されるものを例示的に示す図である。
【0025】
以下、本発明の好ましい実施の形態を図面に沿って詳述する。
【0026】
本発明の好ましい第1実施の形態に係る赤外線遮断用二重窓システムは、図2に示されたように、近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜11が一面に構成された第1ガラス部材10と、熱変色性物質でコーティングされた膜21が一面に構成された第2ガラス部材20と、前記第1ガラス部材10及び前記第2ガラス部材20間に設けられて各ガラス部材間に離隔された間隔を維持させるスペース部材40と、を有し、前記第1ガラス部材の近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜11と前記第2ガラス部材の熱変色性物質でコーティングされた膜21は相対するように設けられる。
【0027】
一般に使用される近赤外線反射用ナノ物質は太陽光のうち赤外線領域の光を遮断する特性を持つナノ金属酸化物で構成されるが、殆どのナノ金属酸化物は金属結合をするため分子間の間隔が一定した規則的な構造を持ち、殆どの領域の赤外線を遮断できることから、一般的なナノ金属酸化物全てが使用可能である。本発明では、10〜100nm範囲の粒子サイズを持つ酸化スズ(Tin Oxide)系列で、ITO(Indium−Tin Oxide、酸化インジウムスズ)、ATO(Antimony doped Tin Oxide、アンチモンドープ酸化スズ)、ITO+ATO及びIATO(Indium Antimony doped Tin Oxide、スズアンチモンドープ酸化インジウム)のうち一つ以上を使用することができる。
【0028】
その他に、近赤外線反射用ナノ物質としては表1に示されたように、相対的に高い屈折率を持つZnO(Zinc Oxide、酸化亜鉛)、TiO(Titanium Oxide、二酸化チタン)、Ta(Tantalum pentoxide、五酸化タンタル)と、相対的に低い屈折率を持つAl(Aluminum Oxide、酸化アルミニウム)、SiO(Silicon Dioxide、二酸化ケイ素)、SiN(Silicon Nitride、窒化ケイ素)のうち一つ以上を使用し、必要に応じて波長を調整することができ、一般ガラスまたは熱処理過程を行なった強化ガラスなどガラスの厚さに関係なく様々な種類のガラスにコーティングされることができる。
【0029】
【表1】

【0030】
本発明によると、近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜11が一面に構成された第1ガラス部材10は図4に示されたように、近赤外線反射用ナノ物質の屈折率の差を利用して、目指す透過率に応じて複数層で構成することができる。
【0031】
即ち、ガラスの上部に2.0内外の相対的に高い屈折率を持つ第1絶縁体と1.5内外の相対的に低い屈折率を持つ第2絶縁体を交互にコーティングして高屈折率の絶縁層と低屈折率の絶縁層を交互に構成し、積層される高屈折率の絶縁層及び低屈折率の絶縁層の数は目指す透過率に応じて任意で調整することができる。
【0032】
図4(A)に示されたように、第1ガラス部材は、ガラスの上部に相対的に高い屈折率の第1絶縁体をコーティングした後、第1絶縁体の上部に相対的に低い屈折率を持つ第2絶縁体をコーティングし、再び第2絶縁体の上部に第1絶縁体をコーティングする方式を反復的に行なうことによって構成することができる。
【0033】
また、図4(B)に示されたように、第1ガラス部材は、ガラスの上部に相対的に低い屈折率の第2絶縁体をコーティングした後、第2絶縁体の上部に相対的に高い屈折率を持つ第1絶縁体をコーティングし、再び第1絶縁体の上部に第2絶縁体をコーティングする方式を反復的に行なうことによって構成することができる。
【0034】
好ましくは、高屈折率の絶縁層を構成する第1絶縁体としては、TiO(Titanium Oxide、二酸化チタン)またはTa、ZnO、ITO、ATO、ITO+ATO、IATOのうちいずれか一つを使用することができ、低屈折率の絶縁層を構成する第2絶縁体としては、SiO(Silicon Dioxide、二酸化ケイ素)、SiN(Silicon Nitride、窒化ケイ素)、SiOのうちいずれか一つを使用することができる。
【0035】
本発明に係る近赤外線反射用ナノ物質は、水またはアルコールの溶媒に分散させて、スピンコーティング(spin coating)、ディープコーティング(deep coating)、スプレーコーティング(spray coating)、オフセットプリンティング(offset printing)、筆またはスポンジを利用したコーティング、または液状コーティング方法など様々な方法のうちいずれか一つを使用して第1ガラス部材10の一面に塗布した後、50〜250℃に加熱処理してコーティング膜11を形成するが、本発明においては主にスパッタリング(Sputtering)、CVD方法(Chemical Vapor Deposition、化学気相成長)を使用して近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜11を形成することができる。
【0036】
次に、熱変色性(thermochromic)物質コーティング膜21が形成された第2ガラス部材20について説明する。熱変色性(thermochromic)物質コーティング膜21が形成された第2ガラス部材20は透過率可変ガラスであって特定波長の光や温度変化に反応して透過率が異なるガラスである。本発明においては二酸化バナジウム(VO)が特定の温度以上で電気抵抗が減少して投光性が減少する光学的物性変化を利用して、熱変色性物質として使用する。
【0037】
本発明において、熱変色性物質として使用される二酸化バナジウムは常温に割りと近接した温度の70(相転移温度)で半導体から導体に電気的な特性が変化するが、半導体領域では温度増加に応じて負(negative)の電気抵抗特性を示し、相転移温度以下まで温度増加に応じて指数的に電気抵抗が減少する。以降、相転移温度で1/10〜1/10程度に急に電気抵抗が減少する。また相転移温度以上では電気的な導体で作用し、大概一定した電気抵抗を持つ。二酸化バナジウムの薄膜合成及び蒸着の場合、ゾルゲル法、化学気相成長法、スパッタリング法などによって構成された後、熱処理過程を行なう。
【0038】
本発明によると、ガラスにコーティングされる熱変性物質として使用される二酸化バナジウムには、タングステン(W)、モリブデン(Mo)などのようなドーパント(dopant)が添加されるが、ドーパントの含量が増えるほど全体的な抵抗値が低くなって赤外線の透過率も低くなる。
【0039】
スペース部材40は、第1ガラス部材10及び第2ガラス部材20間に設けられて各ガラス部材間の間隔を維持させるよう様々な形態で構成することができる。本発明では6mmを維持するよう構成するが、本発明がこれに限定するものではない。
【0040】
図5は、本発明の第1実施の形態に係る二重窓システムでの時間による温度変化グラフ及び波長帯による透過率を示した図である。図5では、Δは何もコーティングされていないそれぞれの透明なガラス、本発明による近赤外線反射用ナノコーティング膜が形成されたガラス及び近赤外線吸収用コーティング膜が形成されたガラスを示し、TCは熱変色性物質がコーティングされたガラスを示す。
【0041】
この実験は、室内で2KWのハロゲンランプを利用して測定され、ハロゲンランプと二重窓システム間の距離は60cmだった。また、測定当時の相対湿度は52.5%、温度は26.6℃の環境で行い、第1ガラス部材と第2ガラス部材間の厚さ(スペースの厚さ)は12mm、外側ガラスに使用される第1ガラス部材の厚さは1.8mm、内側ガラスに使用される第2ガラス部材は2mmのものを使用した。
【0042】
また、本発明の第1実施の形態に係る近赤外線反射用コーティング膜11として、割と高い屈折率を持つTiOと割と低い屈折率を持つSiOを組み合わせて使用したが、第1ガラス部材の上に105nmのTiO、165nmのSiO、105nmのTiOを順次積層してコーティングしたものが使用された。
【0043】
図5(A)に示されたように、本発明の第1実施の形態に係る近赤外線反射用ナノ物質がコーティングされたガラスと熱変色性物質がコーティングされたガラスで成った二重窓システム(図ではR線(Reflection+TC)で表示される)は、何もコーティングされていないガラスと熱変色性物質がコーティングされたガラスで成った二重窓システム(図ではC線(Clear+TC)で表示される)と、近赤外線吸収物質がコーティングされたガラスと熱変色性物質がコーティングされたガラスで成った二重窓システム(図ではA線(Absorption+TC)で表示される)に比べて時間による温度の上昇が低く維持されることが分かる。
【0044】
また、図5(B)に示されたように、本発明の第1実施の形態に係る近赤外線用反射用ナノ物質がコーティングされたガラスと熱変色性物質がコーティングされたガラスで成った二重窓システム(図ではR線(Reflection+TC)で表示される)は、何もコーティングされていないガラスと熱変色性物質がコーティングされたガラスで成った二重窓システム(図ではC線(Clear+TC)で表示される)と、近赤外線吸収物質がコーティングされたガラスと熱変色性物質がコーティングされたガラスで成った二重窓システム(図ではA線(Absorption+TC)で表示される)に比べて略800〜2500nm波長帯域の近赤外線の透過率が非常に低く維持されることが分かる。
【0045】
本発明の第1実施の形態に係る赤外線遮断用二重窓システムは、近赤外線反射用ナノ物質がコーティングされたガラス10で800〜1300nm波長帯の近赤外線を約55%反射させ、第1ガラス部材10を透過した近赤外線45%のうち800〜2500nm波長帯の光が第2ガラス部材にコーティングされた熱変色性物質によって再び反射されるので、結果的に二重窓システムを透過する800〜2500nm波長帯の赤外線は第1ガラス部材10に入射された総赤外線の略15〜20%に過ぎないことから優れた赤外線遮断能力を持つことができる。
【0046】
以上、本発明の第1実施の形態について説明したが、本発明は上述した第1実施の形態に限定されるものは各種の変形例が可能である。例えば、第1実施の形態において外側ガラスとして近赤外線反射コーティング膜11がコーティングされたガラス部材が使用され、内側ガラスとしては熱変色性物質21がコーティングされたガラス部材が使用されたが、これと逆に、一つの変形例では外側ガラスに熱変色性物質21がコーティングされ、内側ガラスに赤外線反射物質11がコーティングされたガラスを使用することもできる。
【0047】
図6は、外側ガラスに熱変色性物質21がコーティングされ内側ガラスに赤外線反射物質11がコーティングされたガラスを使用した変形例で測定された時間による温度変化グラフ及び波長帯による透過率を示した図である。図6でΔは何もコーティングされていないそれぞれの透明なガラス、本発明に係る近赤外線反射用ナノコーティング膜が形成されたガラス及び近赤外線吸収用コーティング膜が形成されたガラスを示し、TCは熱変色性物質がコーティングされたガラスを示す。
【0048】
この実験は上述したものと同様に室内で2KWのハロゲンランプを利用して測定され、ハロゲンランプと二重窓システム間の距離は60cmだった。また、測定当時の相対湿度は52.5%、温度は26.6℃の環境で行い、第1ガラス部材と第2ガラス部材間の厚さ(スペースの厚さ)は12mm、外側ガラスに使用される第1ガラス部材の厚さは1.8mm、内側ガラスに使用される第2ガラス部材は2mmのものを使用した。
【0049】
また本発明の第1実施の形態と同様に変形例でも近赤外線反射用コーティング膜11として、割と高い屈折率を持つTiOと割と低い屈折率を持つSiOを組み合わせて使用したが、第1ガラス部材の上に105nmのTiO、165nmのSiO、105nmのTiOを順次積層してコーティングしたものが使用された。
【0050】
図6(A)に示されたように、熱変色性物質がコーティングされたガラスが外側ガラスに使用され、近赤外線反射用ナノ物質がコーティングされたガラスが内側ガラスに使用された二重窓システム(図ではR線(TC+Reflection)で表示される)は、熱変色性物質がコーティングされたガラスと何もコーティングされていないガラスで成った二重窓システム(図ではC線(TC+Clear)で表示される)と、熱変色性物質がコーティングされたガラスと近赤外線吸収物質がコーティングされたガラスで成った二重窓システム(図ではA線(TC+Absorption)で表示される)に約40分を基準点にして低い温度上昇が維持されることが分かる。
【0051】
図6(B)に示されたように、本発明の第1実施の形態に係る熱変色性物質がコーティングされたガラスが外側ガラスに使用され、近赤外線反射用ナノ物質がコーティングされたガラスが内側ガラスに使用された二重窓システム(図ではR線(TC+Reflection)で表示される)は、熱変色性物質がコーティングされたガラスと何もコーティングされていないガラスで成った二重窓システム(図ではC線(TC+Clear)で表示される)と、熱変色性物質がコーティングされたガラスと近赤外線吸収物質がコーティングされたガラスで成った二重窓システム(図ではA線(TC+Absorption)で表示される)に比べて略800〜1800nm波長帯域の近赤外線の透過率が非常に低く維持されることが分かる。
【0052】
以上、説明したように、本発明に係る赤外線遮断用二重窓システムは、赤外線反射物質がコーティングされたガラスと熱変色性物質がコーティングされたガラスを使用することによって優れた赤外線遮断能力を持つことが分かる。
【0053】
<第2実施の形態>
本発明の好ましい第2実施の形態に係る赤外線遮断用二重窓システムは、図3に示されたように、近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜11が一面に構成された第1ガラス部材10と、特殊金属膜31が一面に形成されたLow−Eガラスで構成される第2ガラス部材30と、前記第1ガラス部材10及び前記第2ガラス部材間に設けられて各ガラス部材間に離隔された間隔を維持させるスペース部材40と、を有し、前記第1ガラス部材の近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜11と前記第2ガラス部材の特殊金属膜31は相対するように設けられる。
【0054】
近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜11が一面に構成された第1ガラス部材10は上述した第1実施の形態と同様に構成される。
【0055】
第2ガラス部材に使用されるLow−Eガラスはガラスの一面に特殊金属{一般的に銀(Ag)}がコーティングされ、可視光線を透過させて室内の採光性を高め、赤外線は反射するので室内外の熱の移動を極小化して室内の温度変化を少なくする。
【0056】
スペース部材40は、第1ガラス部材10及び第2ガラス部材30間に設けられて各ガラス部材間の間隔を維持させるように様々な形態で構成することができる。本発明では6mmを維持するよう構成されるが、必ずしもこれに局限されるものではない。
【0057】
図7は、本発明に係る赤外線遮断用二重窓システムに流入される光の波長に対する透過度を示すグラフであって、板ガラスまたはLow−Eガラスのみを使用する場合よりも熱変色性物質がコーティングされたガラスと赤外線反射層がコーティングされた場合の方が近赤外線領域(750〜3000nm)の光透過率が格段に減少したことが分かる。
【0058】
以上の説明は、本発明の技術事項を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術分野において通常の知識を持つ者であれば本発明の本質的な特性から外れない範囲内で様々な修正及び変形が可能である。従って、本発明に開示された実施の形態は本発明の技術思想を限定するためのものではなく説明するためのものであって、この実施の形態によって本発明の技術思想の範囲が限定されるものではない。本発明の保護範囲は特許請求の範囲によって解釈しなければならず、それと同等な範囲内にある全ての技術思想は本発明の権利範囲に含まれるものと解釈しなければならない。
【符号の説明】
【0059】
10 第1ガラス部材
11 近赤外線反射物質コーティング膜
20 第2ガラス部材
21 熱変色性物質コーティング膜
40 スペーサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜が一面に構成された第1ガラス部材と、
熱変色性物質でコーティングされた膜が一面に構成された第2ガラス部材と、
前記第1ガラス部材及び前記第2ガラス部材間に設けられて各ガラス部材間に離隔された間隔を維持させるスペース部材と、を有し、
前記第1ガラス部材の近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた一面と前記第2ガラス部材の熱変色性物質でコーティングされた一面は相対するように設けられることを特徴とする赤外線遮断用二重窓システム。
【請求項2】
近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜が一面に構成された第1ガラス部材と、
特殊金属膜が一面に形成されたLow−Eガラスで構成される第2ガラス部材と、
前記第1ガラス部材及び前記第2ガラス部材間に設けられて各ガラス部材間に離隔された間隔を維持させるスペース部材と、を有し、
前記第1ガラス部材の近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜と前記第2ガラス部材の特殊金属膜は相対するように設けられることを特徴とする赤外線遮断用二重窓システム。
【請求項3】
前記第1ガラス部材の上部の近赤外線反射用ナノ物質でコーティングされた膜は第1絶縁体と第2絶縁体が交互に積層されて複層で構成され、前記第1絶縁体の屈折率は前記第2絶縁体の屈折率よりも大きいことを特徴とする請求項1または2に記載の赤外線遮断用二重窓システム。
【請求項4】
前記第1絶縁体は、ITO、ATO、ITO+ATO、IATO、TiO、Ta、ZnOのうちいずれか一つで構成されることを特徴とする請求項3に記載の赤外線遮断用二重窓システム。
【請求項5】
前記第2絶縁体は、SiOまたはSiN、Alのうちいずれか一つで構成されることを特徴とする請求項3に記載の赤外線遮断用二重窓システム。
【請求項6】
前記近赤外線反射用ナノ物質は、スパッタリングまたはCVD方法によって前記第1ガラス部材にコーティングされることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線遮断用二重窓システム。
【請求項7】
前記熱変色性物質は、二酸化バナジウムであることを特徴とする請求項1に記載の近赤外線遮断用二重窓システム。
【請求項8】
前記熱変色性物質には、モリブデン(Mo)またはタングステンが添加されることを特徴とする請求項7に記載の近赤外線遮断用二重窓システム。
【請求項9】
前記第1ガラス部材は前記二重窓システムの外側窓に設けられ、
前記第2ガラス部材は前記二重窓システムの内側窓に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線遮断用二重窓システム。
【請求項10】
前記第1ガラス部材は前記二重窓システムの内側窓に設けられ、
前記第2ガラス部材は前記二重窓システムの外側窓に設けられることを特徴とする請求項1または2に記載の近赤外線遮断用二重窓システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−57462(P2012−57462A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198115(P2011−198115)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(599028364)電子部品研究院 (28)
【氏名又は名称原語表記】KOREA ELECTRONICS TECHNOLOGY INSTITUTE
【住所又は居所原語表記】68 Yatap−dong, Bundang−gu, Seongnam−si, Gyeonggi−do 463−816, Republic of Korea
【Fターム(参考)】