説明

走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測装置およびその方法

【課題】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた回路パターンの寸法計測において、試料上の任意の評価ポイント(EP)を自動で撮像し,評価ポイントに形成された回路パターンを自動で計測することを可能にする。
【解決手段】
本発明では、走査型電子顕微鏡(SEM)を用いた回路パターンの寸法計測において、EPの座標データと前記EPを含む回路パターンの設計データを入力とし,前記EP座標データと設計データから,前記EP内に存在するパターンを計測するための測長カーソルの生成および測長方法の選択あるいは設定を自動で行うようにしてレシピを自動生成し,このレシピを用いて自動撮像・計測を行うようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,試料上の任意の評価ポイントを撮像し,前記評価ポイントに形成された回路パターンの任意の寸法を自動で計測することが可能な走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)およびその方法に関するものであり,具体的には任意の評価ポイントのSEM画像を取得し,前記評価ポイントにおいて所望の計測(例えばラインパターンの配線幅やラインパターン間のギャップ計測)が可能なレシピを,回路パターンの設計データから実ウェーハを用いず,かつ自動で決定するレシピ自動生成機能を備えたSEM装置およびその方法に関するものである。レシピには,評価ポイントのSEM画像の撮像方法や,前記SEM画像を撮像した後,所望の回路パターンにおける寸法を計測するための測長カーソルの位置や形状,測長方法が指定されている。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハに配線パターンを形成するに際しては,半導体ウェーハ上にレジストと呼ばれる塗布材を塗布し,レジストの上に配線パターンの露光用マスク(レチクル)を重ねてその上から可視光線,紫外線あるいは電子ビームを照射し,レジストを感光(露光)して現像することによって半導体ウェーハ上にレジストによる配線パターンを形成し,このレジストの配線パターンをマスクとして半導体ウェハをエッチング加工することにより配線パターンを形成する方法が採用されている。このレジストで形成された配線パターンは照射する可視光線,紫外線あるいは電子ビームの強度や絞りによってパターンの形状が変化するため,高精度な配線パターンを形成するには,パターンの出来栄えを検査する必要がある。この検査には,従来から測長走査型電子顕微鏡(Critical Dimension Scanning Electron Microscope:CD−SEM)が広く用いられている。
【0003】
パターン形状の評価のため,SEM撮像を行う座標を評価ポイントと呼び,以降,EPと略記する。EPは,ユーザが指定する場合や,検査を要する半導体パターン上のホットスポット(危険ポイント)の座標が与える場合等があり,前記ホットスポットの座標は露光シミュレーション等によって推定することができる。SEM画像からパターンの配線幅などの各種寸法値を計測し,これらの寸法値からパターンの出来栄えを評価している。評価結果はマスクパターンの形状補正や半導体製造プロセス条件にフィードバックされ,高い歩留まりを実現する。
【0004】
EPを少ない撮像位置ずれ量で,かつ高画質で撮像するため,アドレッシングポイント(以降,APと呼ぶ)あるいはオートフォーカスポイント(以降,AFと呼ぶ)あるいはオートスティグマポイント(以降,ASTと呼ぶ)あるいはオートブライトネス・コントラストポイント(以降,ABCCと呼ぶ)の一部又は全ての調整ポイントを必要に応じて設定し,それぞれの調整ポイントにおいて,アドレッシング,オートフォーカス調整,オートスティグマ調整,オートブライトネス・コントラスト調整を行った後,EPを撮像する。前記アドレッシングにおける撮像位置のずれ量は,事前に登録テンプレートとして登録された座標既知のAPにおけるSEM画像と,実際の撮像シーケンスにおいて観察されたSEM画像(実撮像テンプレート)とをマッチングし,前記マッチングのずれ量を撮像の位置ずれ量として補正している。前記評価ポイント(EP),調整ポイント(AP,AF,AST,ABCC)をまとめて撮像ポイントと呼ぶ。EPの位置,撮像条件,ならびにEPを撮像するための撮像シーケンスと各調整ポイントの撮像条件,調整方法,ならびに前記登録テンプレートは撮像レシピとして管理され,SEMは前記撮像レシピに基づき,EPの撮像を行う。
【0005】
EPにおけるSEM画像が取得されると,前記SEM画像を用いてEP内において計測すべき計測ポイント(以降,MPと呼ぶ)における半導体パターンの所望の寸法を計測する。
【0006】
従来,レシピの生成はSEMオペレータがマニュアルで行っており,労力と時間を要する作業であった。また,各調整ポイントの決定や登録テンプレートをレシピに登録するためには,実際にウェーハを低倍で撮像する必要があることから,レシピの生成がSEM装置の稼働率低下の一因となっていた。更に,パターンの微細化・複雑化に伴い,評価を要するEPの点数は爆発的に増加し,前記レシピのマニュアルによる生成は,労力,生成時間の観点から非現実的になりつつある。
【0007】
そこで撮像レシピに関して,例えばGDSII形式で記述された半導体の回路パターンの設計データを基にAPを決定し,さらに設計データからAPにおけるデータを切り出して前記登録テンプレートとして撮像レシピに登録する半導体検査システムが開示されている(特許文献1:特開2002−328015号公報)。そこでは,APの決定ならびに登録テンプレートの登録の目的のみで実ウェーハを撮像する必要がなく,SEMの稼働率向上が実現する。また,実際の撮像シーケンスにおいてAPにおけるSEM画像(実撮像テンプレート)を取得した際,前記実撮像テンプレートと設計データの登録テンプレートとのマッチングを行い,前記設計データの登録テンプレートの位置に対応するSEM画像を登録テンプレートとして撮像レシピに再登録し,以降,前記再登録したSEM画像の登録テンプレートをアドレッシング処理に使用する機能を有する。さらに設計データから特徴のあるパターン部分を自動的に検出し,APとして登録する機能を有する。
【0008】
また,特許文献2には,CADデータを用いてEPを観察するための撮像レシピを作成する方法が記載されており,観察するための撮像ポイントの点数,座標,サイズ・形状,撮像シーケンス,撮像位置変更方法,撮像条件,撮像シーケンスの一部又は一部をCADデータから自動で算出すること,また,この撮像レシピの生成作業を実ウェハのSEM画像の代わりにCADデータを用いることによりオフラインで行うことが記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開2002−328015号公報
【特許文献2】特開2007−250528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は,撮像・計測レシピの自動生成機能を備えたSEM装置およびその方法に関するものであり,特に計測レシピの自動生成において問題となる次の課題を解決する。
【0011】
すなわち,従来技術においては,EPにおいてユーザの意図する計測を実現するための計測ツール(SEM)側の仕様や特性が考慮されていなかった。このため,レシピ生成後にオペレータによるレシピ修正が必要となるケースが多く発生していた。
【0012】
また,従来技術においては,レシピ生成システムならびにこのシステムにより生成あるいは取得された情報を複数台のSEM装置で共有することについて配慮されておらず,装置毎にレシピ生成を行う必要があった。また,複数台の装置から取得された撮像・計測データを共有することについて配慮されていなかった。
【0013】
本発明の目的は,上記した従来技術の課題を解決して,オペレータによるレシピの修正をより少なくするとともに,撮像あるいは計測の正解率を従来に対し向上させることが期待できるレシピ作成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために,本発明では,SEMのレシピを生成するときに設計データを用いることによってウェーハレス・オフライン(SEM装置を使わずに)かつ自動ですることを可能にした。
【0015】
また,レシピ生成手順においては,単にユーザが指定したEPを撮像するという観点だけでなく,EPにおいてユーザの意図する計測を実現するための計測ツール(SEM)側の仕様や特性も考慮するようにした。
【0016】
さらに,レシピ生成システムならびに前記システムにより生成あるいは取得された情報を複数台のSEM装置で共有するようにした。
【0017】
すなわち本発明では上記課題を解決するために,走査型電子顕微鏡を用いて基板上に形成された回路パターンの寸法を計測する方法において,基板上に形成された回路パターンのうち寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報ならびに寸法を計測すべき回路パターンを含む基板上に形成された回路パターンの設計情報を入力する工程と,入力した寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報と設計情報とを用いて寸法を計測すべき回路パターンのエッジを含む計測対象領域を設定すると共に設定した計測対象領域を含む領域を走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像領域と撮像条件とを設定する工程と,回路パターンの寸法を計測するために撮像領域を走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像シーケンスを設定する工程と,設定した撮像条件と撮像シーケンスとに基づいて走査型電子顕微鏡で基板上に形成された回路パターンを撮像する工程と,撮像して得た画像を処理して回路パターンの寸法を計測する工程とを備え,撮像領域と撮像条件とを設定する工程において,回路パターンの寸法を計測する位置を含む領域として計測する位置の近傍の回路パターンのエッジを含む領域を設定し,設定した領域内の回路パターンのエッジの方向に応じて走査型電子顕微鏡で走査する電子線の連続的なスキャンの方向を設定するようにした。
【0018】
また本発明では上記課題を解決するために,走査型電子顕微鏡を用いて基板上に形成された回路パターンの寸法を計測する方法において,基板上に形成された回路パターンのうち寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報ならびに寸法を計測すべき回路パターンを含む基板上に形成された回路パターンの設計情報を入力する工程と,この入力した寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報と設計情報とを用いて寸法を計測すべき回路パターンのエッジを含む計測対象領域を設定すると共にこの設定した計測対象領域を含む領域を走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像領域と撮像条件とを設定する工程と,この設定した撮像条件に基づいて走査型電子顕微鏡で基板上に形成された回路パターンを撮像する工程と,この撮像して得た画像を処理して撮像領域内の寸法を計測すべき回路パターンのエッジの情報を用いて回路パターンの寸法を計測する工程とを備え,撮像領域と撮像条件とを設定する工程において,寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報と設計情報とを用いて計測すべき寸法の種類を設定し,この設定した計測すべき寸法の種類に応じて計測対象領域を設定するようにした。
更に本発明では上記課題を解決するために,走査型電子顕微鏡を用いて基板上に形成された回路パターンの寸法を計測する装置を,基板上に形成された回路パターンのうち寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報ならびに寸法を計測すべき回路パターンを含む基板上に形成された回路パターンの設計情報を入力する入力手段と,この入力した寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報と設計情報とを用いて寸法を計測すべき回路パターンのエッジを含む計測対象領域を設定する計測対象領域設定部とこの計測対象領域設定部で設定した計測対象領域を含む領域を走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像領域と撮像条件とを設定する領域・条件設定部とを有する撮像条件設定手段と,この撮像条件設定手段で設定した回路パターンの寸法を計測するために撮像領域を走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像シーケンスを設定する撮像シーケンス設定手段と,撮像条件設定手段で設定した撮像条件と撮像シーケンス手段で設定した撮像シーケンスとに基づいて基板上に形成された回路パターンを撮像する走査型電子顕微鏡手段と,この走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た画像を処理して回路パターンの寸法を計測する画像処理手段とを備えて構成し,
撮像条件設定手段の計測領域設定部では,回路パターンの寸法を計測する位置を含む領域としてこの計測する位置の近傍の回路パターンのエッジを含む領域を設定し,撮像条件設定手段は更に計測領域設定部で設定した領域内の回路パターンのエッジの方向に応じて走査型電子顕微鏡で走査する電子線の連続的なスキャンの方向を設定するスキャン方向設定部を備えて構成した。
【0019】
更にまた本発明では上記課題を解決するために,走査型電子顕微鏡を用いて基板上に形成された回路パターンの寸法を計測する装置を,基板上に形成された回路パターンのうち寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報ならびに寸法を計測すべき回路パターンを含む基板上に形成された回路パターンの設計情報を入力する入力手段と,この入力手段で入力した前記寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報と前記設計情報とを用いて前記寸法を計測すべき回路パターンのエッジを含む計測対象領域を設定する計測対象領域設定部とこの計測対象領域設定部で設定した計測対象領域を含む領域を走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像領域と撮像条件とを設定する領域・条件設定部とを有する撮像条件設定手段と,撮像条件設定手段で設定した撮像条件に基づいて基板上に形成された回路パターンを撮像する走査型電子顕微鏡手段と,この走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た画像を処理して寸法を計測すべき回路パターンのエッジの情報を用いて回路パターンの寸法を計測する画像処理手段とを備えて構成し,撮像条件設定手段には,入力手段で入力した寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報と設計情報とを用いて計測すべき寸法の種類を設定する側長種設定部を備え,計測領域設定部においてこの側長種設定部で設定した計測すべき寸法の種類に応じて回路パターンのエッジを含む領域を計測対象領域として設定するように構成した。
【0020】
本発明では,EPにおけるSEM画像が取得されると,前記SEM画像を用いてEP内において計測すべき計測ポイント(以降,MPと呼ぶ)における半導体パターンの所望の寸法を計測する。この所望の寸法にはラインパターンの配線幅やラインパターン間のギャップ値等が挙げられ,以降,このようなMPにおける計測のバリエーションを測長種と呼ぶ。MPはEP内に複数個存在する場合もある。次に,測長種としてラインパターンの配線幅(ラインの左右エッジ間の距離)を例に挙げ,画像処理による計測方法の例を説明する。配線幅を正しく計測するためには,ライン左右のエッジの位置を正確かつ安定に計測する必要がある。そのため,左右のエッジそれぞれにエッジを含む一定サイズの領域を設定し,前記領域内でSEM信号をライン方向に積算することにより画像ノイズやラインエッジラフネスの影響を受けにくい積算プロファイルを算出し,前記プロファイルを用いてエッジ位置を検出する手法がある。前記エッジを含む一定サイズの計測対象領域(計測値を得るために参照されるSEM画像上の領域)は,測長カーソルと呼ばれるボックスにより指定される。測長カーソルの位置や形状,測長方法(測長アルゴリズムや測長パラメータ)は計測レシピとして管理され,SEMは前記計測レシピに基づき,EPでの計測を行う。
【0021】
本明細書では前述のような切り分けで撮像レシピ,計測レシピという言葉を用いる。ただし,前記撮像レシピ,計測レシピの切り分けは一実施例であり,各レシピで指定される各設定項目は,任意の組み合わせで管理することが可能である。よって前記撮像レシピ,計測レシピを特に区別しない場合,両者を合わせて単にレシピ,あるいは撮像・計測レシピと呼ぶ。
【発明の効果】
【0022】
本発明により,SEMに関する特別な知識を必要とせず,誰でも直ぐに高精度なレシピをウェーハレスかつ自動で生成することが可能となる。まとめると,本発明の効果は大きく次の(1)〜(3)である。
(1)設計データを用いることによってウェーハレス・オフライン(SEM装置を使わずに)かつ自動で,SEMのレシピを生成することが可能となり,オペレータの負担軽減およびSEM装置の稼働率向上に繋がる。また自動化により,各オペレータのスキルの違いに依存しないレシピ生成が可能となる。
(2)本発明によるレシピ生成手順においては,単にユーザが指定したEPを撮像するという観点だけでなく,EPにおいてユーザの意図する計測を実現するための計測ツール(SEM)側の仕様や特性も考慮したものであるため,レシピ生成後にオペレータによるレシピ修正が必要となるケースが少なくなり,また撮像あるいは計測の正解率も従来に対し向上することが期待できる。
(3)本発明によるレシピ生成システムならびに前記システムにより生成あるいは取得された情報を複数台のSEM装置で共有することにより,装置毎にレシピ生成を行う必要がなくなる。また,複数台の装置から取得された撮像・計測時の成功,失敗事例を含む結果データを共有するため,早期に多くの結果データを収集することができ,例えばレシピの生成ルールに不具合があった場合,前記結果データを基に早期に対策することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
本発明は次のような手段でレシピを自動生成し,前記レシピを用いて自動撮像・計測を行う機能を備えたSEM装置ならびにその方法に関するものである。
【0024】
(1)EPの座標データと前記EPを含む回路パターンの設計データを入力とし,前記EP座標データと設計データから,前記EP内に存在するパターンを計測するための測長カーソルの生成および測長方法の選択あるいは設定を自動で行うことを本発明の特徴とする。前記測長カーソルおよび測長方法はレシピとして保存される。設計データを基に処理を行うことによって,レシピ生成時にSEM撮像する必要がなく,作業のオフライン化が図れると共に,装置稼働率の向上に繋がる。EPの座標は,例えばEDAツールで実行される露光シミュレーション等の結果を基に検出されたホットスポット(危険ポイント)の座標が入力される。あるいは,ユーザが自身の判断により(必要に応じて前記EDAツールの情報も参考にしながら)入力される場合もある。
前記測長カーソルの生成においては,設計データ上で測長カーソルの位置と形状を決定する(測長カーソルは設計データと座標がリンクしている)。対応するEPを実際にSEM撮像した後,設計データとSEM画像とをマッチングすることにより両者の位置関係が求まり,同時に測長カーソルとSEM画像との位置関係も求まるため,SEM画像上に測長カーソルを自動配置することができる。
また,前記測長方法の選択あるいは設定とは,具体的には測長アルゴリズムや測長パラメータの選択あるいは設定である。前記選択あるいは設定は,必要に応じて測長種や計測対象のパターンの形状やパターン輪郭線の向き等の情報も考慮しながら行われる。
【0025】
(2)前記項目(1)において,測長カーソルを自動生成するためには,EP内において計測すべき計測ポイント(MP)の座標を知る必要がある。EP座標(EP領域の中心座標)がMP座標と一致する場合もあるが,一致しない場合やEP内に複数のMPが存在する場合もある。また,MP座標がユーザからの入力等によって与えられたとしても,座標値に誤差が含まれる可能性がある。そこで,EPの座標データと前記EPを含む回路パターンの設計データを基にMP座標を計算機内で推定し,前記推定したMP座標を基に測長カーソルを生成することを本発明の特徴とする。
【0026】
(3)前記項目(1)において,測長カーソルを自動生成するためには,EP内のMPの測長種を知る必要がある。すなわち,MPにおいてどのようなパターンの形状変形が発生する可能性があり,前記形状変形に対してどのような寸法値を計測・管理する必要があるかが分からなければ,測長カーソルを設定することはできない。またこのような測長種をユーザが手動で全て指定するのは容易でない。そこで,EPの座標データと前記EPを含む回路パターンの設計データを基に測長種を計算機内で推定し,前記推定した測長種を基に測長カーソルを生成することを本発明の特徴とする。ここで,測長種とはMPにおける計測のバリエーションであり,具体的にはラインパターンの線幅計測,ラインパターン間のギャップ計測,ライン端部の後退量,コンタクトホール径の計測,OPC(Optical Proximity Correction:光近接効果補正)形状の計測等が挙げられる。また単に「線幅計測」等のカテゴリだけでなく,配線領域のどこの部分とどこの部分の距離を計測するかという計測部位の情報や,例えば「後退量」の計測であればどの方向への後退量を計測するかという計測方向の情報も測長種に含めることができる。
【0027】
(4)前記項目(3)において,EPにおいて発生しうる不良の候補(以後,不良候補と呼ぶ)を与え,前記不良候補の情報を基に測長種を推定し,前記推定した測長種を基に測長カーソルを生成することを本発明の特徴とする。不良候補とは,例えばパターン同士が連結する可能性がある,あるいはパターンが断線する可能性がある等の不良モードである。EDAツール等の解析結果を参照しながら発生する可能性が最も高い不良候補を入力する,あるいはユーザが特に回避したいと考える不良候補を入力することが可能である。前記不良候補は複数入力することも可能である。不良候補の情報から,ユーザのEPにおけるパターン形状の管理意図を反映するように,計測ツールであるSEMがどのようにMPを計測するか(すなわち測長種)を決定する。
【0028】
(5)前記項目(2)(3)において,測長種/MPの推定はEPを含む回路設計パターンから算出された,各パターン部位において測長種の候補,発生しうる欠陥の候補,回路属性,変形し易さ,設計データ上の計測長,評価ポイント中心からの距離の少なくとも一つ以上の組み合わせからなる属性情報を算出し,前記属性情報に基づく推定ルールによりEPにおける測長種/MPの候補を抽出することを本発明の特徴とする。複数の属性情報を加味することにより,高い精度で測長種/MPの推定が可能となる。
【0029】
(6)前記項目(5)において,推定ルールの生成はユーザにとって困難な作業となることがある。また,システムがデフォルトで用意した推定ルールはユーザの判断基準と異なる場合がありうる。そこでユーザカスタマイズを容易に行う仕組みとして,少なくとも一つ以上のEPと前記EPにおけるMPの位置との組み合わせ教示,あるいはEPと前記EPにおける測長種との組み合わせ教示により前記推定ルールが最適化されることを本発明の特徴とする。
【0030】
(7)前記項目(1)において,EPを含む回路設計パターンを基にEPにおけるSEM撮像条件を求め,レシピに保存することを本発明の特徴とする。前記SEM撮像条件には少なくとも電子ビームの走査方向を含むことを特徴とする。SEM画像の生成するための電子ビームの二次元走査ではラスタスキャンが一般的であるが,例えばX方向に連続的な電子ビームスキャンをY方向に離散的にずらしながら複数回行うことで二次元領域のスキャンを行う場合と,Y方向に連続的な電子ビームスキャンをX方向に離散的にずらしながら複数回行うことで二次元領域のスキャンを行う場合とで,得られるSEM画像が異なる。そのため,EP内における計測部位や計測方向を考慮して,計測に有利なSEM画像が得られるスキャン方式を自動設定することが有効である。前記スキャン方式はXあるいはY方向に平行なスキャンに限らず,斜め方向のスキャンやEP内の場所によってスキャン方向が異なる等のバリエーションがありうる。
【0031】
(8)前記項目(1)において,測長カーソルの情報を基にEPの撮像範囲あるいは座標を最適化することを本発明の特徴とする。撮像範囲は,ユーザが見たい範囲という観点の他に,MPにおいて所望の部位の計測が良好な計測精度で実現されるという観点からも決定されなければならない。そのため,撮像範囲は計測精度の観点から少なくとも必要とされる測長カーソルの範囲を含むように設定される必要がある。また,ユーザが与えたEPの座標を必要に応じて変更することが可能である。EP座標の最適化とは大きく(a)EPの座標や撮像範囲を変更する,(b)複数EPの視野をマージして一つのEPを新たに設定する,(c)一つのEPの視野を分割して複数のEPを設定するの三つあるいはそれらの任意の組み合わせを含む。それぞれの処理内容や効果について次に具体例を示す。
(a)について,MP(あるいは計測に要する測長カーソル等を含む撮像領域)の位置が分かると,前記MPに対してEPの中心がずれているか否かを判別することができ,ずれている場合,EPの視野をMPの中心と合わせることにより,MPをEP視野の中央付近で撮像することができる。また,例えば撮像ずれに対しても十分に測長カーソルの範囲がEPの視野内におさまるように撮像範囲を調整することができる。
(b)について,例えば密集した連続パターンを順に撮像・計測する場合,パターン毎に設定された撮像範囲同士が重複する場合がある。この場合,あるEPの撮像時に他のEP内に含まれる計測領域(計測を行うために必要なSEM画像の領域)にコンタミネーションを発生させてしまい,計測精度を低下させる危険性がある。そこで,各EPに含まれるパターンをまとめて一つの視野におさまるようにEP領域を再設定することにより,前記計測領域でのコンタミネーションの発生を抑制することができる。EPをマージする際には,マージ後の視野あるいは撮像倍率が所定の大きさ以内であるか(低倍率になると一般に計測精度が低下するため),またマージ前のEPのSEM撮像条件(電子ビームの走査方向等)等が一致しているか等を加味して決定することができる。
(c)について,例えばEP内に複数のMPが含まれており,更に前記複数のMPで計測するパターンの方向がそれぞれ異なるため,MP毎にSEM撮像条件(電子ビームの走査方向)を変えたい場合は,それぞれのMPをEPとして分割し,異なるSEM撮像条件で撮像するのが有効である。また,EP内に多くのMPが含まれ,かつEPの視野ぎりぎりにMPが配置されている場合は,EP撮像時の視野ずれによりMPの計測領域の一部が視野外となってしまう危険性がある。このような場合もEPの分割が有効である。
【0032】
(9)前記項目(1)において,複数のEPを撮像する際にはレシピにEPの撮像順序を設定する必要があるが,ユーザのEP入力順をそのまま撮像順序とするのではなく,EPの座標と前記EPのSEM撮像条件を基に撮像順序を最適化することを本発明の特徴とする。EP全点での撮像のスループット向上のためにはSEMのステージシフトやイメージシフトの総移動距離を少なくすることが有効である。また,撮像条件の変更に要する時間を考慮し前記撮像条件の変更回数を少なくすることも有効である。そのため前記EPの座標と前記EPあるいはSEM撮像条件を基にスループットが短くなる撮像順序を決定する。
【0033】
(10)ウェーハレスでSEM装置を用いずに作成したレシピを用いて実際にEPを撮像・計測する際には,実際にウェーハ上に形成されたパターンと設計データにおけるパターンとの形状乖離が問題になりうる。そこで,前記項目(1)においてEPのSEM画像上に測長カーソルを自動配置した後,前記SEM画像におけるパターンと設計データにおけるパターンとの形状乖離を算出し,前記形状乖離の情報に基づき測長カーソルの位置あるいは形状を修正することを本発明の特徴とする。本処理により,実際のパターンの形状や位置が多少設計データと異なっていても正しく測長することができる。
【0034】
(11)レシピで指定する項目の中には,設計データのみでは正確に決定できない項目がある。例えばライン端部の後退量を計測する場合,前記端部の位置を正確に検出しなければならないが,リソグラフィの解像限界によりパターンのコーナ部はマスクパターンに対し丸まってしまう場合がある。直線部分が多ければ直線当てはめにより端部を検出するアルゴリズムが考えられるが,丸まり部分か支配的であれば曲線当てはめにより端部を検出するアルゴリズムが考えられる。しかし,設計データのみから端部の丸まり度合いを推測するのは限界がある。また,製造プロセスの変動により丸まり度合いも変化しうる。このような問題を解決するため,前記SEM画像を基に測長方法の一部又は全ての情報を変更することを本発明の特徴とする。前記項目(10)と本項目(11)は,ウェーハレスで設計データを基に生成したレシピが,実際のパターンに対して良好に適用できるようにするための仕組みである。
【0035】
(12)EPの座標,設計データ,測長種/MP,レシピの生成ルール,生成されたレシピ,実際の撮像シーケンスによって撮像した画像,計測結果,撮像あるいは計測の成否の少なくとも一つ以上の組み合わせを関連付けてデータベースで管理し,一つあるいは複数台のSEM装置でレシピをネットワーク等で共有可能なことを本発明の特徴とする。
つぎに,図1〜図13を用いて本発明を具体的に説明する。
【0036】
1. SEM
1.1 SEM構成要素
図1は本発明において試料の二次電子像(Secondary Electron:SE像)あるいは反射電子像(Backscattered Electron:BSE像)を取得する走査型電子顕微鏡(Scanning Electron Microscope:SEM)の構成概要のブロック図を示す。また,SE像とBSE像を総称してSEM画像と呼ぶ。また,ここで取得される画像は測定対象を垂直方向から電子ビームを照射して得られたトップダウン画像,あるいは任意の傾斜角方向から電子ビームを照射して得られたチルト画像の一部または全てを含む。
【0037】
電子光学計102は内部に電子銃103を備え,電子線104を発生する。電子銃103から発射された電子線はコンデンサレンズ105で細く絞られた後,ステージ117上におかれた試料である半導体ウェーハ101上の任意の位置において電子線が焦点を結んで照射されるように,偏向器106および対物レンズ108により電子線の照射位置と絞りとが制御される。電子線を照射された半導体ウェーハ101からは,2次電子と反射電子が放出され,ExB偏向器107によって照射電子線の軌道と分離された2次電子は2次電子検出器109により検出される。一方,反射電子は反射電子検出器110および111により検出される。反射電子検出器110と111とは互いに異なる方向に設置されている。2次電子検出器109および反射電子検出器110および111で検出された2次電子および反射電子はA/D変換機112,113,114でデジタル信号に変換され,処理・制御部115に入力されて,画像メモリ122に格納され,CPU121で目的に応じた画像処理が行われる。
【0038】
図2に半導体ウェーハ上に電子線を走査して照射した際,半導体ウェーハ上から放出される電子の信号量を画像化する方法を示す。電子線は,例えば図2(a)に示すようにx,y方向に201〜203又は204〜206のように走査して照射される。電子線の偏向方向を変更することによって走査方向を変化させることが可能である。x方向に走査された電子線201〜203が照射された半導体ウェーハ上の場所をそれぞれG1〜G3で示す。同様にy方向に走査された電子線204〜206が照射された半導体ウェーハ上の場所をそれぞれG4〜G6で示す。前記G1〜G6において放出された電子の信号量は,それぞれ図2(b)内に示した画像209における画素H1〜H6の明度値になる(G,Hにおける添字1〜6は互いに対応する)。208は画像上のx,y方向を示す座標系である。このように視野内を電子線で走査することにより,画像フレーム209を得ることができる。また実際には同じ要領で前記視野内を電子線で何回か走査し,得られる画像フレームを加算平均することにより,高S/Nな画像を得ることができる。加算フレーム数は任意に設定可能である。
【0039】
図1中の処理・制御部115はCPU121と画像メモリ122を備えたコンピュータシステムであり,レシピを基に撮像ポイントを撮像するため,ステージコントローラ119や偏向制御部120に対して制御信号を送る,あるいは半導体ウェーハ101上の任意の撮像ポイントにおける撮像画像に対し各種画像処理を行う等の処理・制御を行う。ここで撮像ポイントとはアドレッシングポイント(以降,APと呼ぶ),オートフォーカスポイント(以降,AFと呼ぶ),オートスティグマポイント(以降,ASTと呼ぶ),オートブライトネス・コントラストポイント(以降,ABCCと呼ぶ),評価ポイント(以降,EPと呼ぶ)の一部または全てを含む。また,処理・制御部115は処理端末116(ディスプレイ,キーボード,マウス等の入出力手段を備える)と接続されており,ユーザに対して画像等を表示する,あるいはユーザからの入力を受け付けるGUI(Graphic User Interface)を備える。117はXYステージであり,半導体ウェーハ101を移動させ,前記半導体ウェーハの任意の位置の画像撮像を可能にしている。XYステージ117により撮像位置を変更することをステージシフト,例えば偏向器106により電子線を偏向することにより観察位置を変更することをビームシフトと呼ぶ。一般にステージシフトは可動範囲は広いが撮像位置の位置決め精度が低く,逆にビームシフトは可動範囲は狭いが撮像位置の位置決め精度が高いという性質がある。
【0040】
図1では反射電子像の検出器を2つ備えた実施例を示したが,前記反射電子像の検出器をなくすことも,数を減らすことも,数を増やすことも可能である。
【0041】
前述したコンピュータシステム115では,後述する方法によりレシピを生成し,前記レシピに基づきSEM装置を制御することによりEPの撮像・計測を行う。これらの処理・制御の一部又は全ては異なる複数台の処理端末に割り振って処理・制御することも可能である。詳細は図12を用いて後述する。また,123はコンピュータシステム115における撮像・計測レシピ生成の入力となるEPの座標やウェーハ101上に形成される半導体回路パターンの設計レイアウト情報(以降,設計データと呼ぶ)を格納したデータベースである。また,また前記データベースには計測結果やコンピュータシステム115において生成したレシピを保存・共有することも可能である
図1に示す装置を用いて測定対象を任意の傾斜角方向から観察したチルト画像を得る方法としては(1)電子光学系より照射する電子線を偏向し,電子線の照射角度を傾斜させて傾斜画像を撮像する方式(例えば特開2000−348658号),(2)半導体ウェーハを移動させるステージ117自体を傾斜させる方式(図1においてはチルト角118でステージが傾斜している),(3)電子光学系自体を機械的に傾斜させる方式等がある。
【0042】
1.2 SEM撮像シーケンス
前述のSEMを用いたEPの撮像に関して,図3(a)に示すAP,AF,AST,ABCCの撮像を含む代表的な撮像シーケンスを例に補足説明する。
【0043】
まず図3(a)のステップ301において試料である半導体ウェーハをSEM装置のステージ117上に取り付ける。ステップ302において光学顕微鏡等でウェーハ上のグローバルアライメントマークを観察することにより,ウェーハの原点ずれやウェーハの回転を補正する。
【0044】
ステップ303において,処理・制御部115の制御及び処理に基づいてステージ117を移動して,撮像位置をAPに移動して撮像し,アドレッシングのパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてアドレッシングを行う。ここでアドレッシングについて説明を加えておく。EPを観察する場合,ステージシフトにより直接EPを観察しようとすると,ステージの位置決め精度により,大きく撮像位置がすれてしまう危険性がある。そこで,一旦位置決め用として予め撮像ポイントの座標値とテンプレート(撮像ポイントのパターン。データ形式はSEM画像でも設計データでもよい)とが与えられたAPをステージシフトにより観察する。前記テンプレートはレシピに登録されるので,以降,登録テンプレートと呼ぶ。
【0045】
APはEPの周辺領域(ビームシフトにより移動可能な範囲)から選択する。また,APはEPに対して一般に低倍視野であるため,多少の撮像位置のずれに対しても,登録テンプレート内のパターンが全て視野外となる危険性は低い。そこで,APの登録テンプレートと,実際に撮像されたAPのSEM像(実撮像テンプレート)とをマッチングすることにより,APにおける撮像ポイントの位置ずれ量を推定することができる。AP,EPの座標値は既知なので,AP−EP間の相対変位ベクトルを求めることができ,かつAPにおける撮像ポイントの位置ずれ量も前述のマッチングにより推定できるため,前記相対変位量から前記位置ずれ量を差し引くことにより,実際に移動すべきAP撮像位置からEPまでの相対変位ベクトルが分かる。前記相対変位ベクトル分だけ,位置決め精度の高いビームシフトによって移動することにより,高い座標精度でEPを撮像することが可能となる。
【0046】
次にステップ304において,処理・制御部115の制御及び処理に基づいて,ビームシフトにより撮像位置をAFに移動して撮像し,オートフォーカス調整のパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてオートフォーカス調整を行う。図3(a)のフロー図では,EPを鮮明に撮像するためのオートフォーカス処理がステップ304において行われているが,同様にAPを鮮明に撮像するためのAFを,ステップ303の前に設定して前記AFを用いたオートフォーカス処理をAP撮像前に行う等のバリエーションがありうる(後述するAST,ABCCに関しても同様)。
【0047】
次にステップ305において,処理・制御部115の制御及び処理に基づいて,ビームシフトにより撮像位置をASTに移動して撮像し,オートスティグマ調整(非点収差補正)のパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてオートスティグマ調整を行う。
【0048】
次にステップ306において,処理・制御部115の制御及び処理に基づいて,ビームシフトにより撮像位置をABCCに移動して撮像し,ブライトネス・コントラスト調整のパラメータを求め,該求められたパラメータに基づいてオートブライトネス・コントラスト調整を行う(EP撮像時に適切な明度値及びコントラストをもつ鮮明な画像を取得するため,例えば二次電子検出器109におけるフォトマル(光電子増倍管)の電圧値等のパラメータを調整することよって,例えば画像信号の最も高い部分と最も低い部分とがフルコントラストあるいはそれに近いコントラストになるように調整する)。
【0049】
最後にステップ307においてビームシフトにより撮像ポイントをEPに移動して撮像し,設定された計測条件でパターンの測長を行う。
【0050】
図3(b)にEPからのビームシフト可能領域308上におけるEP309,AP310,AF311,AST312,ABCC313のテンプレート位置の一例を点線枠で図示する。なお,前述したステップ303,304,305,306は場合によって一部あるいは全てが省略される,あるいはステップ303,304,305,306の順番が任意に入れ替わる,あるいはAP,AF,AST,ABCCの座標で重複するものがある(例えばオートフォーカス,オートスティグマを同一箇所で行う)等のバリエーションがありうる。
【0051】
2. レシピ自動生成処理フロー
本発明は,SEMのレシピを自動生成する方法に関する。レシピ生成時間の短縮およびオペレータの負担軽減を図るには自動化率の向上が不可欠であり,そのためには,オペレータがマニュアル生成したレシピと同等あるいはそれ以上の性能をもつレシピをいかに自動かつ高速に生成できるかが課題である。図4を用いて本発明の処理フローを説明する。
【0052】
2.1 データ入力
まず,EPの座標と半導体回路パターンの設計データを入力する(それぞれステップ401,402)。EPの座標は,例えばEDA(Electronic Design Automation)ツールで実行される露光シミュレーション等の結果を基に検出されたホットスポット(危険ポイント)の座標が入力される。あるいは,ユーザが自身の判断により(必要に応じて前記EDAツールの情報も参考にしながら)入力される場合もある。更にEPの属性情報が得られる場合もあり,必要に応じて前記属性情報を入力することもできる(ステップ403)。前記属性情報には,EPにおいて発生しうる不良の候補(以後,不良候補と呼ぶ)等が挙げられる。不良候補とは,EPにおいて例えばパターン同士が連結する可能性がある(bridging),あるいはパターンが細る又は断線する可能性がある(necking)等の不良モードである。EDAツール等の解析結果を参照しながら発生する可能性が最も高い不良候補を入力する,あるいはユーザが特に回避したいと考える不良候補を入力することが可能である。前記不良候補は一つのEPについて複数入力することも可能である。
【0053】
2.2 測長種推定/MP推定ステップ
次に計測レシピ生成部406において,各EP毎に測長種あるいはMPの座標を推定する(ステップ407)。後述するステップ408において測長カーソルを生成するためには,EP内のどこに計測すべきパターンがあり,かつ前記計測したいパターンにおいてどのような計測がしたいかが分からなければならない。前記MP座標の推定に関して,EP座標(EP領域の中心座標)がMP座標と一致する場合もあるが,一致しない場合やEP内に複数のMPが存在する場合もある。また,MP座標がユーザからの入力等によって与えられたとしても,座標値に誤差が含まれる可能性がある。そこで,EPの座標データと前記EPを含む回路パターンの設計データを基にMP座標を計算機内で推定する。また前記測長種とはMPにおける計測のバリエーションであり,具体的にはラインパターンの線幅計測,ラインパターン間のギャップ計測,ライン端部の後退量,コンタクトホール径の計測,OPC(Optical Proximity Correction:光近接効果補正)形状の計測等が挙げられる。また単に「線幅計測」等のカテゴリだけでなく,配線領域のどこの部分とどこの部分の距離を計測するかという計測部位の情報や,例えば「後退量」の計測であればどの方向への後退量を計測するかという計測方向の情報も測長種に含めることができる。
【0054】
測長種/MPの決定においてはステップ403において入力した不良候補等のEP属性情報を考慮しながら,ユーザのEPにおけるパターン形状の管理意図を反映するように,計測ツールであるSEMがどのようにMPを計測するか(すなわち測長種)を決定することができる。測長種/MPを計算機内で推定するための推定ルールは, システム内部に用意された推定ルールや推定のための処理パラメータに関するデフォルト値を必要に応じて入力し,用いることができる(ステップ404)。また,測長種/MPに関するユーザの要求仕様(例えば,「なるべく設計上の寸法値が小さい部位を計測して欲しい」あるいは「こういうパターンに対しては,この部位を計測して欲しい」という具体的な要求等)も必要に応じて入力し,前記要求仕様を考慮して推定ルールを生成することができる(ステップ405)。
【0055】
2.3 測長カーソル生成/測長方法決定ステップ
次にステップ408において,測長カーソルの生成や測長方法の選択や決定を行う。前記測長カーソルの生成においては,設計データ上で測長カーソルの位置と形状を決定する(測長カーソルは設計データと座標がリンクしている)。また,前記測長方法の決定とは,具体的には測長アルゴリズムや測長パラメータの決定である。前記測長方法の選択あるいは設定は,必要に応じて測長種や計測対象のパターンの形状やパターン輪郭線の向き等の情報も考慮しながら行われる。
【0056】
2.4 SEM撮像条件決定ステップ
次にステップ409において,EPにおけるSEMの撮像条件を決定する。前記SEM撮像条件には少なくとも電子ビームの走査方向を含む。SEM画像の生成するための電子ビームの二次元走査ではラスタスキャンが一般的であるが,例えばX方向に連続的な電子ビームスキャンをY方向に離散的にずらしながら複数回行うことで二次元領域のスキャンを行う場合と,Y方向に連続的な電子ビームスキャンをX方向に離散的にずらしながら複数回行うことで二次元領域のスキャンを行う場合とで,得られるSEM画像が異なる。そのため,EP内における計測部位や計測方向を考慮して,計測に有利なSEM画像が得られるスキャン方式を自動設定することが有効である。前記スキャン方式はXあるいはY方向に平行なスキャンに限らず,斜め方向のスキャンやEP内の場所によってスキャン方向が異なる等のバリエーションがありうる。
【0057】
2.5 EP撮像範囲/座標最適化ステップ
次にステップ410において,EPの撮像範囲や座標の最適化を行う。撮像範囲は,ユーザが見たい範囲という観点の他に,MPにおいて所望の部位の計測が良好な計測精度で実現されるという観点からも決定されなければならない。そのため,撮像範囲は計測精度の観点から少なくとも必要とされる測長カーソルの範囲を含むように設定される必要がある。また,ユーザが与えたEPの座標を必要に応じて変更することが可能である。EP座標の最適化とは大きく(a)EPの座標や撮像範囲を変更する,(b)複数EPの視野をマージして一つのEPを新たに設定する,(c)一つのEPの視野を分割して複数のEPを設定するの三つあるいはそれらの任意の組み合わせを含む。それぞれの処理内容や効果について次に具体例を示す。
【0058】
(a)について,MP(あるいは計測に要する測長カーソル等を含む撮像領域)の位置が分かると,前記MPに対してEPの中心がずれているか否かを判別することができ,ずれている場合,EPの視野をMPの中心と合わせることにより,MPをEP視野の中央付近で撮像することができる。また,例えば撮像ずれに対しても十分に測長カーソルの範囲がEPの視野内におさまるように撮像範囲を調整することができる。
【0059】
(b)について,例えば密集した連続パターンを順に撮像・計測する場合,パターン毎に設定された撮像範囲同士が重複する場合がある。この場合,あるEPの撮像時に他のEP内に含まれる計測領域にコンタミネーションを発生させてしまい,計測精度を低下させる危険性がある。そこで,各EPに含まれるパターンをまとめて一つの視野におさまるようにEP領域を再設定することにより,前記計測領域でのコンタミネーションの発生を抑制することができる。EPをマージする際には,マージ後の視野あるいは撮像倍率が所定の大きさ以内であるか(低倍率になると一般に計測精度が低下するため),またマージ前のEPのSEM撮像条件(電子ビームの走査方向等)等が一致しているか等を加味して決定することができる。
【0060】
(c)について,例えばEP内に複数のMPが含まれており,更に前記複数のMPで計測するパターンの方向がそれぞれ異なるため,MP毎にSEM撮像条件(電子ビームの走査方向)を変えたい場合は,それぞれのMPをEPとして分割し,異なるSEM撮像条件で撮像するのが有効である。また,EP内に多くのMPが含まれ,かつEPの視野ぎりぎりにMPが配置されている場合は,EP撮像時の視野ずれによりMPの計測領域の一部が視野外となってしまう危険性がある。このような場合もEPの分割が有効である。
【0061】
2.6 撮像シーケンス決定ステップ
次に撮像レシピ生成部411において,各EPを撮像するための撮像レシピを生成する。具体的には,図3を用いて説明したAP,AF,AST,ABCCの一部又は全ての調整ポイントの設定を含む撮像シーケンスの決定を行い(ステップ412),必要に応じて調整ポイントあるいはEPの各テンプレートを登録テンプレートとしてレシピに登録する(ステップ413)。さらに計測レシピの生成406において決定したEP座標,あるいは測長種,あるいはSEM撮像条件を基にEPの撮像順序を決定する。
【0062】
2.7 撮像・計測レシピ生成ステップ
ステップ414において計測レシピ生成部406と撮像レシピ生成部411において決定された各種パラメータ(測長カーソル,測長方法,撮像シーケンス,登録テンプレート等)をレシピ(又は撮像・計測レシピ)に保存する。実施例中には撮像レシピ,計測レシピに設定すべき項目や推定手順を切り分けて説明したが,前述の通り各レシピで指定される各設定項目は任意の組み合わせで管理することが可能である。設計データを基に処理を行うことによって,ステップ414までレシピ生成処理には実際のウェーハやSEM撮像する必要がなく,作業のオフライン化が図れると共に,装置稼働率の向上に繋がる。
【0063】
2.8 EP撮像ステップ
次に撮像・計測部416において,実際のウェーハを用いた撮像・計測を行う。まず,SEM装置にウェーハを投入し(ステップ415),レシピに基づきEPを撮像する(ステップ417)。
【0064】
2.9 測長カーソル配置/修正ステップ
EPの撮像後,前記EPのSEM画像と対応する設計データとをマッチングすることにより両者の位置関係が求まり,同時に測長カーソルとSEM画像との位置関係も求まるため,SEM画像上に測長カーソルを自動配置することができる(ステップ418)。ただし,設計データを基にウェーハレスで作成したレシピを用いて実際にEPを撮像・計測する際には,実際にウェーハ上に形成されたパターンと前記設計データにおけるパターンとの形状乖離が問題になりうる。そこで,ステップ418においてEPのSEM画像上に測長カーソルを自動配置した後,前記SEM画像におけるパターンと設計データにおけるパターンとの形状乖離を算出し,前記形状乖離の情報に基づき測長カーソルの位置あるいは形状を修正する(ステップ419)。本処理により,実際のパターンの形状や位置が多少設計データと異なっていても正しく測長することができる。
【0065】
2.10 測長方法変更ステップ
前述の測長カーソルの位置や形状と同様,レシピで指定する項目の中には,設計データのみでは正確に決定できない項目がある。例えばライン端部の後退量を計測する場合,前記端部の位置を正確に検出しなければならないが,リソグラフィの解像限界によりパターンのコーナ部はマスクパターンに対し丸まってしまう場合がある。直線部分が多ければ直線当てはめにより端部を検出するアルゴリズムが考えられるが,丸まり部分か支配的であれば曲線当てはめにより端部を検出するアルゴリズムが考えられる。しかし,設計データのみから端部の丸まり度合いを推測するのは限界がある。また,製造プロセスの変動により丸まり度合いも変化しうる。このような問題を解決するため,前記SEM画像を基に測長方法の一部又は全ての情報を実際のSEM画像を取得した後に必要に応じて変更する(ステップ420)。前記ステップ419,420は,ウェーハレスで設計データを基に生成したレシピが,実際のパターンに対して良好に適用できるようにするための仕組みである。これらの処理はSEM撮像後に行われるものの,オフラインで決定した設定項目の修正であって,多くの処理時間を要するものでない。大部分の処理はオフラインで実行されており,SEM撮像のスループットに大きな影響はない。
【0066】
2.11 測長ステップ
最終的に決定した測長カーソルや測長方法によりEPにおけるSEM画像を用いて測長を行う(ステップ421)。また必要に応じて計測の成否判定を行い(ステップ422),前記成否判定の結果を基に後述するステップ427において必要に応じレシピ生成ルールの変更を行う。前記計測の成否判定は,(a)撮像の失敗,(b)計測の失敗 のように失敗原因を分類して解析・管理することができ,更に(a)は,(a1)アドレッシングの失敗による撮像すれ,(a2)フォーカスずれによる画像のボケ 等,(b)は(b1)測長種/MP推定の失敗,(b2)測長カーソルの位置合わせずれ,(b3)測長カーソルの形状が不適切,(b4)測長方法が不適切 等のように更に詳細分類することもできる。
【0067】
2.12 計測結果解析・レシピ生成ルール最適化ステップ
次に計測結果解析・レシピ生成ルール最適化部423において,ステップ421で得られた計測結果を基にパターンの出来栄えを解析し(ステップ424),必要に応じてマスクパターンの形状補正や半導体製造プロセス条件の変更を実施することにより高い歩留まりを実現する(ステップ425)。
【0068】
また,作成されたレシピやレシピ生成ルール,更にステップ422で得られた撮像・計測成否の判定結果や撮像・計測に失敗した場合は失敗原因等の情報を基に,レシピ及び撮像・計測結果の解析を行い(ステップ426),必要に応じてレシピ生成ルールの変更を行う(ステップ427)。
【0069】
EPの座標,設計データ,測長種/MP,レシピの生成ルール,生成されたレシピ,実際の撮像シーケンスによって撮像した画像,計測結果,撮像あるいは計測の成否,撮像あるいは計測の失敗原因の少なくとも一つ以上の組み合わせを関連付けてデータベースで管理し,一つあるいは複数台のSEM装置でレシピをネットワーク等で共有可能である。装置毎にレシピ生成を行う必要がなくなるという利点の他に,複数台の装置から取得された撮像・計測時の成功,失敗事例を含む結果データを共有するため,早期に多くの結果データを収集することができ,例えばレシピの生成ルールに不具合があった場合,前記不具合を早期に対策することができる。
【0070】
3. 詳細
以下,図4の処理フローで詳細説明を要する箇所を抜き出し,補足説明する。
【0071】
3.1 測長種・測長カーソル・SEM撮像条件詳細
前記ステップ407〜409で述べた測長種,測長カーソル,SEM撮像条件の詳細について図6を用いて説明する。図6において601,604,608,612,615,621,624,628,632,645,648,651,656はEPの撮像範囲を示している。測長種の例として,図6(a)はラインパターン602の線幅計測,同図(b)はラインパターン605−606間のスペース計測,同図(c)はラインパターン609のライン端部とラインパターン610間のギャップ計測,同図(d)はラインパターン613のライン端部の後退量計測(伸縮を含む),同図(e)(f)はそれぞれコンタクトホール616,622の直径計測,同図(g)はパターン625の長軸長/短軸長計測,同図(h)はラインパターン629−630間のギャップ計測,同図(i)はパターン633の形状計測(特に点線枠634で示したコーナ部の形状)である。同図内において点線枠603A,603B,607A,607B,611A,611B,614,617A,617B,618A,618B,619A,619B,620A,620B,623A,623B,626A,626B,627A,627B,631A,631B,634は測長カーソルを示している。また点線枠とセットで矢印が描かれているが,前記矢印は測長箇所を示している。
【0072】
例えばライン幅を計測するためには,ライン左右のエッジの位置を正確かつ安定に計測する必要がある。そのため,左右のエッジそれぞれにエッジを含む一定サイズの領域(測長カーソルの領域。図6(a)においては603A,603B)を設定し,前記領域内でSEM信号をライン方向に積算することにより画像ノイズやラインエッジラフネスの影響を受けにくい積算プロファイルを算出し,前記プロファイルを用いてエッジ位置を検出する。図6(a)中α−β間のSEM信号プロファイルを同図(k)中の637に示す。前記SEM信号プロファイル637のS/Nを高めるため,例えば測長カーソルの範囲分(643)だけy方向にSEM信号を加算平均したプロファイルを用いることも可能である。
【0073】
SEM信号プロファイル637において左右のホワイトバンドのピーク位置638を検出し,その間を線幅として計測する。本例はSEM信号プロファイル638のピーク間を線幅としているが,プロファイルにおいてどの場所とどの場所の間隔を線幅として計測するかはバリエーションがありうる例えば左右のホワイトバンドにおいてピークの明度値と下地の明度値に対しX%の明度値となる位置を求め,その間を計測する等である(前述の計測に代表される測長アルゴリズムにおけるX%等のパラメータを測長パラメータと呼ぶ)。前記測長カーソルの位置や形状を決定する位置あるいは寸法パラメータの例を図6(a)の拡大図である同図(l)に示す。前記パラメータは,測長カーソル640Aと640Bの配置位置,前記測長カーソル640Aと640Bのそれぞれにおけるラインパターン639外部のプロファイル参照範囲641A,641B,ラインパターン639内部のプロファイル参照範囲642A,642B,プロファイル積算範囲643A,643Bが挙げられる。これによりライン幅644を正確に計測する。MPの座標は,例えば測長カーソル640Aと640Bの中点(あるいはライン幅644の中点)として定義できる。
【0074】
また,測長カーソルは図6(a)中の603Aと603Bのように対で設定する場合や,図6(d)中の614のように単独で指定する場合がある。図6(d)はラインパターン613のライン端部の後退量を計測するので,前記ライン端部の位置が測長カーソル614内のSEM信号解析により正確に算出できるように測長カーソルを設定する。
【0075】
図6(e)においては,平均的なホール径を計測するために,例えばホール616周囲に何箇所か測長カーソルを配置し(図例では,617Aと617B〜620Aと620Bの四箇所),計測した直径の平均を計算する等の処理を行う。図6(f)のように測長カーソル623A,623Bによりホール622の一箇所の直径を計測し,前記直径をホール径の代表値とすることもできる。
【0076】
図6(g)においては,パターン625の短径を測長カーソル626A,626Bで,長径を測長カーソル627A,627Bでそれぞれ計測している。測長カーソルの中心をMPの座標と定義した場合,前記短径計測と長径計測のMP座標は一致する。このように一つのMP座標に対し,複数の計測種を設定することも可能である。
【0077】
図6(i)においては,二次元的なパターン輪郭形状の出来栄え評価を行うため,同図(j)に示した領域634の拡大図に示すようにSEM画像上のパターン633と前記SEM画像上のパターンにオーバーレイ表示した設計データ635との間の密な形状ギャップベクトル636を求めている。このようにどこか一箇所の寸法計測ではなく複数箇所の計測もありうる。また前記複数箇所の計測値から例えば角の丸まり度合いを定量化し,一つの評価値として出力する等の計測方法もある。更に計測値はSEM画像上のパターンの任意の部位間の距離に限らず,前述のように例えば設計データとSEM画像上のパターンの任意の部位との乖離量を計測値とすることもできる。
【0078】
このように計測するパターンの種類やカーソルを当てる部位の違いを測長種として分類する。
【0079】
また,測長種には計測方向の情報も含めることができる。図6(m)はY方向にのびるラインパターン646の線幅,すなわちX方向の寸法を計測する例であり,図6(n)はX方向にのびるラインパターン649の線幅,すなわちY方向の寸法を計測する例である。このような計測方向の情報は,後述する図4中のステップ409においてSEM撮像条件決定を決定する際に必要な情報となる。SEM撮像条件の一つである電子ビームの走査方向の決定方法を例に説明する。図6(m)ではX方向の寸法を計測するため,電子ビームの走査はX方向に連続的なスキャンが望ましい。そこで,同図中に電子ビームの走査を647に模式的に示すように,X方向に連続的な電子ビームスキャンをY方向に離散的にずらしながら複数回行うことにより画像を取得することが考えられる(図ではY方向のずらしは模式的に4回としている)。図6(n)ではY方向の寸法を計測するため,同様に今度は電子ビームの走査を650のように,Y方向に連続的な電子ビームスキャンをX方向に離散的にずらしながら複数回行うことにより画像を取得することが考えられる。このように計測方向の情報により,適切なSEM撮像条件を決定することができる。図6(m)における662A,662B及び図6(n)における663A,663Bはそれぞれ測長カーソルを示す。
【0080】
3.2 測長種推定/MP推定詳細
前記ステップ407で述べた測長種推定/MP推定の詳細について図5を用いて説明する。測長カーソルを自動生成するためには,EP内の測長種/MPを知る必要がある。すなわち,どの場所でどのようなパターンの形状変形が発生する可能性があり,前記形状変形に対してどのような寸法値を計測・管理する必要があるかが分からなければ,測長カーソルを設定することはできない。またこのような測長種をユーザが手動で全て指定するのは容易でない。そこで,EPの座標データと前記EPを含む回路パターンの設計データを基に測長種/MPを計算機内で推定し,前記推定した測長種/MPを基に測長カーソルを生成する。まず図5中のステップ501においてEPを選択する。前記EPを含む領域に対応する設計データをステップ508で入力し,ステップ502において測長種/MP候補を絞込む。ここで,測長種/MP候補が決定した場合(ステップ503の「測長種/MP決定」の判定がYesの場合),ステップ504に進むが,測長種/MP候補が決定しなかった場合(ステップ503の「測長種/MP決定」の判定がNoの場合),GUI等を介してユーザに警告を発する(ステップ514)。ユーザは測長種が良好に決定しなかった例を参照し,測長種/MPの推定ルールを変更することができる。
【0081】
図7(a)は一例としてEPの視野701内に含まれるSEM画像上のパターン702,703を示している。同図(b)は前記EPに対応する設計データを示しており,パターン702,703に対応する設計データ上のパターンはそれぞれ704,705である。前記設定データより推定されるMP座標の候補例を挙げたのが同図(d)〜(g)における708,710,712,714,716,718である。測長種でいうと,MP708は測長カーソル709A,709Bで計測される部位のラインパターンのX方向の線幅計測,MP710は同様に測長カーソル711A,711Bで計測される部位のラインパターンのX方向の線幅計測,MP712は測長カーソル713で計測される部位のY方向のライン端部の後退量計測,MP714は測長カーソル715で計測される部位のY方向のライン端部の後退量計測,MP716は測長カーソル717A,717Bで計測される部位のラインパターン間のギャップ計測,EP718は測長カーソル719で計測される部位のOPC形状計測(コーナの丸み等の計測)である。このように測長種/MPの候補は一つのEPに対し複数存在し,実際にユーザが計測したい測長種/MPは,前記候補中の一つかもしれないし,複数個の組み合わせかもしれない。そこで,実際に計測を行う測長種/MPの推定はEPを含む回路設計パターン内に含まれる各パターン部位において,測長種の候補,発生しうる欠陥の候補,回路属性,変形し易さ,設計データ上の計測長,EP中心からの距離の少なくとも一つ以上の組み合わせからなる属性情報を算出し,前記属性情報に基づく推定ルールによりEPにおける測長種/MPの候補を抽出する。複数の属性情報を加味することにより,高い精度でユーザの要求する測長種/MPの自動推定が可能となる。
【0082】
また前述のように,測長種/MPの推定ルールは,必要に応じてEPの属性509(図4の403に対応),デフォルト値510(図4の404に対応),ユーザ要求仕様511(図4の405に対応)を考慮して決定することができる。更にユーザ毎の測長種/MPの設定基準の違いを反映するための仕組みとして,ユーザ指定の測長種/MP推定ルールを入力することもできる(ステップ512)。ただし,一般に推定ルールの生成はユーザにとって困難な作業である。そこでユーザカスタマイズを容易に行う仕組みとして,少なくとも一つ以上のEPと前記EPにおけるMPの位置との組み合わせ教示,あるいはEPと前記EPにおける測長種との組み合わせ教示をユーザが行うことにより(ステップ513),システム内部において前記教示に基づき推定ルールを最適化し,一般的な推定ルールを自動生成することができる。
【0083】
測長種/MPが決定すると,ステップ504において測長カーソル生成/測長方法決定を行い,ステップ505において必要に応じSEM撮像条件の決定を行う。ステップ501〜505までの処理を撮像すべき全EPに対し繰り返し行い(終了判定はステップ506),その後ステップ507においてEP撮像範囲/座標最適化を行う(ステップ410に相当)。
【0084】
ちなみに測長種/MPの推定あるいは測長カーソルの生成は,なるべくウェーハ上に形成される実際のパターン形状に近いパターンを基に行うのが有効である。そのため,図7に示す設計データ上のパターン704,705を変形させたパターン706,707(以後,変形設計データと呼ぶ)を用いて同推定あるいは同生成を行うことができる。変形設計データの生成方法は,設計データに対しリソシミュレータを用いて生成する方法や,前記リソシミュレータを簡易的に模した形状変形により生成する方法が考えられる。図中の変形設計データ706,707は,リソグラフィの解像限界によりパターンのコーナ部が丸まることを想定し,設計データ704,705のコーナ部を丸めた例である。
【0085】
3.3 EP撮像範囲/座標最適化詳細
前記ステップ410で述べたEP撮像範囲/座標最適化の具体例について図8を用いて説明する。図8(a)はユーザが6本のラインパターン802〜807の線幅をそれぞれ計測したい例である。MPは前記6本のラインパターンに対し,それぞれ808〜813となる。前記MPの中心に対し,各ラインパターンでの計測が可能なようにEPの視野を設定したものが図8(b)中のEP814〜819である。しかしながら,このようにEPを設定すると,各EPの撮像範囲が重複してしまい,あるEPの撮像時に他のEP内に含まれる計測領域にコンタミネーションを発生させてしまい,計測精度を低下させる危険性がある。そのため,図8(c)中のEP820,821に示すようにEPの撮像範囲を最適化することができる。本例ではEP820を用いてMP808〜810を,EP821を用いてMP811〜813を計測することができ,さらに両EP領域の重複はない。更に撮像回数もEP814〜819の6回から,EP820,821の二回に削減することができる。ちなみに撮像回数の観点から言えば,例えばMP808〜813の全てを含む領域801全体をEPとすることも考えられるが,低倍率になると計測精度が悪化してしまう恐れがある。そのため,領域の重複,撮像回数,計測精度等の情報を加味し,適切な折合いをつけたEP撮像範囲もしくはEP座標の設定を行う必要がある。
【0086】
また,EP撮像範囲/座標の最適化においてはEPにおけるSEM撮像条件を加味する必要がある。図8(d)〜(f)はSEM撮像条件の内,電子ビームの走査方向を基にEP撮像範囲/座標を最適化する例である。図8(d)には,設計データ823及び824に対して三つのMP825,828,830が存在し,初期状態としてそれぞれのMPを含むEP832,833,834が設定されている。三つのMPの内,MP825,828はX方向の線幅計測であり,電子ビームの走査方向は図6(m)に示すようにX方向に連続的なスキャン,Y方向に離散的なスキャンが望ましい。それに対し,MP830はY方向の線幅計測であり,電子ビームの走査方向は図6(n)に示すようにY方向に連続的なスキャン,X方向に離散的なスキャンが望ましい。そのため,MP825,828と,MP830とを異なる撮像条件でSEM撮像する必要があり,両者を同じEPとしてマージすることはできない。よって例えば図8(e)に示すようにMP825とMP828をマージして一つのEP835とし,MP830は一つのEP836として撮像することが考えられる。逆に図8(f)に示すようにMP825は一つのEP837に対応しているのに対してMP828とMP830がマージされたEP838が初期状態として与えられた場合は,前述の判断基準に基づき必要に応じて両MPを二つのEPに分割することが考えられる。このように,EPの撮像範囲の最適化,EPの統合/分割のためには,測長種,MP,測長カーソル(826A,826B,829A,829B,831A,831B)の情報を利用することが有効である。
【0087】
ちなみ,撮像範囲は計測領域(計測を行うために必要なSEM画像の領域)を適切に含んでいる必要があり,できれば多少の撮像ずれに対しても前記計測領域が視野内に含まれることが望ましい。図6(o)(p)に例に説明する。図6(o)はラインパターン652の線幅計測の例であり,測長カーソルは653A,653Bによって与えられる。EPの撮像範囲の設定に関しては最低限,前記即長カーソル653A,653Bを含んでいる必要があるが,例えば視野ずれがX方向に距離654だけ発生する可能性がある場合,撮像範囲651が前記距離654だけずれて撮像範囲655となっても,前記撮像範囲655内に計測範囲が含まれていることが望ましい。同例は視野ずれ量654に対して問題ない例である。一方,図6(p)はパターン657,658間のギャップ計測の例である。図6(o)の例と同様,撮像範囲656内に,測長カーソル659A,659Bがおさまっているが,前述の位置ずれ量654と同じ大きさの位置ずれ量660に対し,撮像範囲が661にずれた場合,測長カーソルの一部は視野外となってしまう。このように,撮像範囲は測長カーソルの範囲と視野ずれ量の予想値とを基に決定することが有効である。
【0088】
3.4 撮像シーケンス決定詳細
前記ステップ412で述べた撮像シーケンス決定の内,EPの撮像順序の決定の具体例について図11を用いて説明する。図11(a)は低倍の領域において,8つのEPが存在する例であり,それぞれEP[1]〜EP[8]と表示している。EP[1],EP[3],EP[5],EP[7]の視野内にはそれぞれX方向に走るラインパターンが3本含まれており,これらのEPをEPグループ1と呼ぶ。EP[2],EP[4],EP[6],EP[8]の視野内にはそれぞれY方向に走るラインパターンが3本含まれており,これらのEPをEPグループ2と呼ぶ。EPグループ1に属するEPはそれぞれY方向の線幅計測であり,図6(n)中の650に示すような電子ビームの走査方向が望ましい。一方,EPグループ2に属するEPはそれぞれX方向の線幅計測であり,図6(m)中の647に示すような電子ビームの走査方向が望ましい。よってEPグループ1に属するEPを撮像した後,EPグループ2に属するEPを撮像する場合,あるいはEPグループ2に属するEPを撮像した後,EPグループ1に属するEPを撮像する場合,視野あるいはビームスキャンのローテーションが必要になる。以上を踏まえて撮像順序の最適化を考える。(例えばユーザが入力した)初期の撮像順序は図11(b)に示すようにEP[1]〜EP[8]の順である。それに対し,ローテーションの回数を減らそうと考えると,例えば図11(c)に示すようにEPグループ1の撮像から先に始めて,EP[1]→EP[3]→EP[5]→EP[7]→EP[2]→EP[4]→EP[6]→EP[8]となる。ただし,EP間の視野移動の総距離を短くし,スループットを上げるためには,図11(d)に示すように,EP[1]→EP[5]→EP[7]→EP[3]→EP[2]→EP[6]→EP[8]→EP[4]となる(EP[1]−EP[3]間の距離より,EP[1]−EP[5]間の距離の方が短いため)。ただし,もしローテーションに要する時間がEP間の視野移動に要する時間に対し,極めて短いのであれば,視野移動の短縮を重視して撮像順序は図11(b)とすることもありうる。また,ローテーションに要する時間とEP間の視野移動に要する時間が同程度であれば,両者を加味し例えば同図(e)のような撮像順序もありうる(ローテーション回数は同図(b)より少なく,視野移動距離は同図(d)より短い)。このようにEP座標あるいは前記EPにおける少なくとも電子ビームの走査方向を含むSEM撮像条件を基にEPの撮像順序を決定する。
【0089】
3.5 測長カーソル修正詳細
前記ステップ419で述べた測長カーソル修正の具体例について図9を用いて説明する。本図は測長カーソルを決定する各種位置あるいは寸法パラメータの内,(A)測長カーソル間の距離906と,(B)設計データによるラインパターン901外部のプロファイル参照範囲903A,903Bと,(C)測長カーソル全体の配置位置を修正する例であるが,他の寸法パラメータについても同様に修正は可能である。また,各EPにおける計測値の整合性をとるため,一部又は全ての前記位置あるいは寸法パラメータの修正を行わないように設定することも可能である(例えば,プロファイル積算範囲905A,905BがEPによって変わってしまうと計測値を比較できなくなる場合もありうる)。
【0090】
(A)測長カーソル間の距離修正
図9(a)は図4中のステップ408において設計データ901に配置された測長カーソル902A,902Bを示している。それぞれの測長カーソル902A,902Bの内部を設計データによるラインパターン901の外部のプロファイル参照範囲903A,903Bと設計データによるラインパターン901の内部のプロファイル参照範囲904A,904Bとの分けている。図9(b)に示したSEM観察されたラインパターン907のX方向の線幅を計測することが目的である。まず,図9(c)に示すようにSEM画像上のパターン907と設計データ901をマッチングし,同図(d)に示すように測長カーソル902A,902BをSEM画像上に配置する。ここで,SEM画像上のパターン907は設計データ901に対し線幅が大きく広がっており(図中では幅908A,908Bだけ広がっている),設定データ上での線幅を想定して配置した測長カーソルの位置がSEM画像上のパターンのエッジ位置からずれてしまっている。そのため,図9(e)に示すように前記エッジ位置に合わせて測長カーソルの位置をずらすことにより計測を成功させることができる(測長カーソル間の距離906を909に広げている)。
【0091】
(B)パターン外部のプロファイル参照範囲修正
図9(e)中の910はラインパターン907を横切るラインα−β間のSEM信号プロファイルを示している。線幅計測においては,例えばSEM信号プロファイル910の左右のホワイトバンド(凡そラインパターンの左右エッジ位置に対応)においてピークの明度値と下地の明度値に対しX%の明度値となる位置を求め,その間を計測する等のアルゴリズムが用いられるが,そのような種々のプロファイル解析を行うためには,前記解析をおこなう計測範囲(測長カーソルの範囲)が前記ホワイトバンドの山を十分に含んでいる必要がある。ラインパターン907外部のプロファイル参照範囲903A,903Bは余裕をもって少し長めに設定していたが,実際のSEM信号プロファイル910においては想定以上にホワイトバンドの山の裾引き部分が長く,更に幅911A,911Bだけ広い範囲でプロファイルを解析しなければならないことが分かった。このように場合,図9(f)に示すようにラインパターン907外部のプロファイル参照範囲903A,903Bをそれぞれ912A,912Bのように引き伸ばすように修正することによって計測を成功させることができる。
【0092】
(C)測長カーソル全体の配置位置修正
図9(g)中の912は上層パターンの設計データ,913は下層パターンの設計データである。914A,914Bは測長カーソルであり,上層パターン912と下層パターン913の交わる場所における上層パターン912の線幅915を計測するように配置されている。これは,例えばデバイス特性に大きな影響を与えるゲートのアクティブ領域における線幅を計測したいという要求に相当する。図9(h)に設計データ上のパターン912,913にそれぞれ対応するSEM画像上のパターン916,917を表示している。パターン917はパターン916に対しウェーハ上のパターン積層方向に対し下部に位置しているため,両者が重なる領域において隠れが発生している。図9(i)はウェーハ上のパターンと設計データとをマッチングし,測長カーソル914A,914Bを配置した例である。本例において測長カーソルの配置結果は良好である。一方,図9(j)は製造プロセスの不良により上層パターン916(設計データ912に対応)と下層パターン919(設計データ913に対応)がずれてしまった例である(ずれ量は918で与えられる)。図9(j)は,上層パターンに関してウェーハ上のパターンと設計データとが一致するようマッチングした結果であるが,その結果,測長カーソルの位置が本来計測したかった上層・下層パターンの重なる位置から少しずれた位置に配置されるという問題が生じている。よって図9(k)に示すように上層パターン912とは独立に下層パターン921(913に対応)をSEM画像上のパターン919とマッチングし,前記下層パターン921の位置に連動させて,測長カーソル920A,920B(914A,914Bに対応)を配置することにより,所望の箇所の計測が実現する。このようにユーザの計測意図に基づき適切に測長カーソルを配置する必要がある。
【0093】
3.6 測長方法変更詳細
前記ステップ420で述べた測長方法変更の具体例について図10を用いて説明する。前記測長方法とは,具体的には測長アルゴリズムや測長パラメータである。図10(a)は設計データ上の二つのパターン1001,1002と前記二つのパターン間の距離1004を計測するための測長カーソル1003A,1003Bを示している。図10(b)はSEM画像上のパターン1005,1006と前記設計データとのマッチング結果を示しており,同図(c)は測長カーソル1003B付近の拡大図である。測長カーソルを当てはめた後,パターン1002の端部を精度良く検出するための画像処理アルゴリズムとして,例えば端部に直線部分が多ければ直線当てはめにより端部を検出するアルゴリズムが考えられる。図10(c)中に示した5つの×印1007はSEM画像から検出した端部の特徴点であり,前記特徴点に対し直線を当てはめることにより,端部の形状ばらつきに対し安定に端部を検出することができる(当てはめた直線は1008)。一方,同様の計測例においてリソグラフィの解像限界によりパターン1009,1010(1005,1006に対応)のコーナ部が大きく丸まってしまった例が図10(d)であり,同図(e)は測長カーソル1003B付近の拡大図である。前述の直線当てはめに対し,端部において特徴点1011として丸まり部分が支配的であれば曲線当てはめにより端部を検出するアルゴリズムが有効である(当てはめた曲線は1012)。このように,例えば端部の丸まり度合いは設計データのみでは正確に推定できない場合がある。このような問題を解決するため,前記SEM画像を基に測長方法の一部又は全ての情報を変更することができる。
【0094】
4.システム構成(データベース管理・共有)
本発明における装置の構成の実施例を図12(a)(b)を用いて説明する。
図12(a)において1201はマスクパターン設計装置,1202はマスク描画装置,1203はマスクパターンの露光・現像装置,1204はエッチング装置,1205および1207はSEM装置,1206および1208はそれぞれ前記SEM装置を制御するSEM制御装置,1209はEDA(Electronic Design Automation)ツールサーバ,1210はデータベースサーバ,1211はデータベースを保存するストレージ,1212は画像処理・撮像・計測レシピ作成演算装置,1213は撮像・計測レシピサーバ,1214は生成したパターン形状の計測・評価ツールサーバであり,これらはネットワーク1220を介して情報の送受信が可能である。データベースサーバ1210にはストレージ1211が取り付けられており,(a)EPの座標,(b)設計データ,(c)測長種/MP,(d)レシピの生成ルール(測長種/MPの推定ルール含む),(e)生成されたレシピ,(f)実際の撮像シーケンスによって撮像した画像,(g)計測結果,(h)撮像あるいは計測の成否,(i)撮像あるいは計測の失敗原因の一部または全てを,品種,製造工程,日時,データ取得装置等とリンクさせて保存し,また参照することが可能である。
【0095】
また,同図においては例として二台のSEM装置1205,1207がネットワークに接続されているが,本発明においては,任意の複数台のSEM装置において撮像・計測レシピをデータベースサーバ1211あるいは撮像・計測レシピサーバ1213により共有することが可能であり,一回の撮像・計測レシピ作成によって前記複数台のSEM装置を稼動させることができる。また複数台のSEM装置でデータベースを共有することにより,過去の前記撮像あるいは計測の成否や失敗原因の蓄積も早く,これを参照することにより良好な撮像・計測レシピ生成の一助となる。
【0096】
図12(b)は一例として図12(a)における1206,1208,1209,1210,1212〜1214を一つの装置1216に統合したものである。本例のように任意の機能を任意の複数台の装置に分割,あるいは統合して処理させることが可能である。
【0097】
5. GUI
本発明における入力・出力情報の設定あるいは表示を行うGUI例を図13に示す。図13中のウィンドウ1300内に描画された各種情報は一画面中にあるいは分割してディスプレイ等に表示することができる。また,図13中の*はシステムに入力された,あるいは出力された任意の数値(あるいは文字列)や数値の範囲であることを示す。
【0098】
ウィンドウ1320,1321において,必要に応じてレシピ生成のルールを指定する。デフォルトの値を入力することもできる。レシピ生成ルールの中で図中のウィンドウ1320,1321は具体的に測長種/MP推定のルールを設定するためのパラメータを例として表示しており,各パターン部位において算出した属性情報(測長種の候補,発生しうる欠陥の候補,回路属性,変形し易さ,設計データ上の計測長,EP中心からの距離等)に基づく推定ルールを設定することができる。すなわち,EP中に含まれる複数の測長種/MP候補に対し,最終的に選択される測長種/MPの各属性情報に関して満たして欲しい要求数値がある場合には,ウィンドウ1320にその数値を入力する。また測長種/MP推定の際に重視して評価したい属性情報があればウィンドウ1321に評価ウェイトを入力することができる。
【0099】
ウィンドウ1324,1325,1337には複数のレシピの情報が表示されている。前記各ウィンドウ1324,1325,1337に表示した情報は,必要に応じてユーザが指定値を入力する,あるいはシステム内部に用意された値をデフォルト値として与える,あるいはシステム内部のレシピ生成エンジンにて推定・出力することが可能である。以下EP IDの欄1324に表示したIDが1のEPを特に取り上げて表示内容を説明する(IDが2のEPで対応する項目を括弧内に記載する)。
【0100】
ウィンドウ1325には,EP内の回路パターン1326(1332)(SEM画像又は設計データ又はその両方)と測長カーソル1327,1328(1333),前記EPを撮像するための撮像シーケンス1329(1334)(各種調整ポイントの座標,範囲・形状,撮像条件等であり,同図ではAP1→AP2→AF→EP(IDが2の場合は,AP→AST→AF→EP)の順になっているが,EP毎に経由する調整テンプレートは異なりうる),EPに関する情報1330(1335)(EPの座標,範囲・形状,撮像条件等),EP内のMPに関する情報1331(1336)(座標,測長種,測長カーソルの座標・大きさ・形状,測長方法)が表示されている。ウィンドウ1337には,各MPにおける属性情報1338(1339)を表示することができる。MPに関する情報1331(1336)やMPにおける属性情報1338(1339)に関して,EP内に複数のMPが存在する場合は,各MP毎に情報を表示することができる。
【0101】
前記レシピの情報の一部又は全ては,レシピ生成ボタン1322を押すことによって決定される。また,ウィンドウ1324,1325,1337は,複数のEPに関する情報をID順で縦に表示しているが,任意の基準でEPの表示順をソートしたり,表示するEPを制限することができる。前記任意の基準はプルダウンメニュー1323を用いて指定することでき,基準の例としては,(a)測長種/MPの推定精度が低い順に表示(測長種/MP推定において推定の信頼度を算出し,前記信頼度に基づくソートを行う),(b)測長種/MPの推定に失敗したEPの未表示(例えば図5中のステップ514に該当する警告対象となったEP),(c)位置・サイズ・形状の変更を行ったEPの未表示(例えば,ユーザが初期に与えたEPに対し,EPの撮像範囲の変更や複数EPのマージやEPの分割を行ったEP),(d)MPが複数存在するEPのみ表示 等が挙げられる。このような複数の観点から情報をソートすることにより,レシピに不具合が生じた場合,あるいは生じうる場合,その原因内容別にGUI表示し,効率のよい問題解析ならびに修正が可能である。
【0102】
前記撮像シーケンス1329は,ウィンドウ1301において可視化して表示することができる。ウィンドウ1302にはID1番目のEPを撮像するための撮像シーケンスがAP1(1303)→AP2(1304)→AF(1305)→EP(1306)のように可視化されている。また,前記ウィンドウ1301内の表示方法にはいくつかのオプションが考えられる。例えば表示する積層レイヤーの指定(チェックボックス1317),1302の枠に表示されている座標ゲージの表示をEPからの相対座標とするか(ある基準点からの)絶対座標とするかの切り替えオプション(チェックボックス1318),表示倍率の指定(1319)等である。
【0103】
また,ウィンドウ1307はEPの一覧を示している。同ウィンドウ中1308〜1311は例えばユーザにより指定された初期のEP群であり,必要に応じてEP最適化ボタン1316を押すことによって例えば図8に示したように,EPの撮像範囲の変更や複数EPのマージやEPの分割を実施する。1312〜1315は最適化後のEP群であり,最適化前のEP群との対応関係でみると,例えば最適化前のEP1(1番目のIDのEP)とEP2(2番目のIDのEP)とをマージして新たなEP1としたことが分かる。また,EPの表示1308〜1315の左に表示されたチェックボックスにチェックを入れることによって,ウィンドウ1301内に前記チェックを入れたEPを表示することができる。
【0104】
なお,前述の実施例においてはSEM装置におけるレシピ生成について説明したが,本発明はSEM装置のみならず,光学式顕微鏡あるいは走査型プローブ顕微鏡(以降,SPM(Scanning Probe Microscope)と呼ぶ)等においても活用できる。すなわち,前記光学式顕微鏡あるいはSPMにおいても,所望のEPを観察し,前記EP内のMPにおいて計測を実施する場合があり,本発明で述べたレシピ自動生成方法,データ管理方法およびシステム構成,GUI等が活用可能である。SPMにおいては,実施例で述べたSEM画像は,SPMにより取得される奥行き情報あるいは前記奥行き情報を画像に変換したものとなる(奥行きの値を画像の明度値として変換)。
【産業上の利用可能性】
【0105】
LSIの微細化・高密度化に伴う設計マージンの減少等により,半導体パターンの寸法管理を行う必要がある評価ポイント数が格段に増加しつつあり,寸法管理ツールとして用いられるSEM装置等のスループット向上ならびに自動化率向上が強く求められている。本発明は,前記SEM装置のレシピ自動生成に関するものである。本発明により多数の評価ポイントを高い自動化率で高速かつ正確に撮像・計測することが可能となり,半導体デバイスのパターンの設計や製造プロセスへのフィードバックが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明を実現するためのSEM装置の構成を示す図である。
【図2】半導体ウェーハ上から放出される電子の信号量を画像化する方法を示す図である。
【図3】撮像シーケンスを表わす図である。
【図4】本発明における処理全体のフローを示す図である。
【図5】評価ポイントにおける測長種/計測ポイントの推定フローを示す図である。
【図6】評価ポイントにおける撮像種/計測ポイントのバリエーションを示す図である。
【図7】評価ポイントにおける撮像種/計測ポイントのバリエーションを示す図である。
【図8】評価ポイントの撮像範囲の最適化,複数の評価ポイントのマージ,評価ポイントの分割を示す図である。
【図9】測長カーソルの修正を示す図である。
【図10】測長方法の変更を示す図である。
【図11】評価ポイントの撮像順の最適化を示す図である。
【図12】本発明を実現するための装置システムの構成を示す図である。
【図13】本発明におけるGUI画面を示す図である。
【符号の説明】
【0107】
101…半導体ウェーハ, 102…電子光学系, 103…電子銃, 104…一次電子, 105…コンデンサレンズ, 106…偏向器, 107…ExB偏向器, 108…対物レンズ, 109…二次電子検出器, 110,111…反射電子検出器, 112〜114…A/D変換器, 115…処理・制御部, 116…GUI画面, 117…ステージ, 118…ステージチルト角,119…ステージコントローラ, 120…偏向制御部, 121…CPU, 122…画像メモリ,123…データベース, 201〜206…収束電子線の入射方向, 207…試料表面, 208…画像座標系, 209…画像, 308…EPからのビームシフト可動範囲, 309…評価ポイント(EP), 310…アドレッシングポイント(AP), 311…オートフォーカスポイント(AF), 312…オートスティグマポイント(AST), 313…オートブライトネス・コントラストポイント(ABCC), 1300…GUI画面, 1301…パターンならびに撮像シーケンス表示ウィンドウ, 1302…最適化後の一番目のEP周辺のパターンならびに前記EP撮像シーケンス表示ウィンドウ 1303〜1305…調整ポイント, 1306…評価ポイント, 1307…EP最適化ウィンドウ, 1316…EP最適化ボタン, 1317…表示レイヤー設定ウィンドウ, 1318…寸法表示切替設定ウィンドウ, 1319…表示倍率設定ボックス, 1320,1321…レシピ生成ルール設定ウィンドウ, 1322…レシピ自動生成ボタン, 1323…EP表示のソート条件あるいは限定条件設定プルダウンメニュー, 1324,1325,1337…レシピ情報表示ウィンドウ, 1326,1332…評価ポイントの撮像範囲, 1327,1328,1333…測長カーソル, 1329,1334…調整ポイント設定ウィンドウ, 1330,1335…EP設定ウィンドウ, 1331,1336…MP設定ウィンドウ, 1338,1339…MP属性情報表示ウィンドウ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて基板上に形成された回路パターンの寸法を計測する方法であって,
基板上に形成された回路パターンのうち寸法を計測すべき回路パターンを含むSEM撮像領域の中心座標ならびに前記寸法を計測すべき回路パターンを含む前記基板上に形成された回路パターンの設計情報を入力する工程と,
該入力した前記SEM撮像領域の中心座標と前記設計情報とを用いて前記寸法を計測すべき回路パターンのエッジを含む計測対象領域を設定すると共に該設定した計測対象領域を含む領域を走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像領域と撮像条件とを設定する工程と,
前記回路パターンの寸法を計測するために撮像領域を前記走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像シーケンスを設定する工程と,
該設定した撮像条件と撮像シーケンスとに基づいて前記走査型電子顕微鏡で前記基板上に形成された回路パターンを撮像する工程と,
該撮像して得た画像を処理して前記回路パターンの寸法を計測する工程とを有し,
前記撮像領域と撮像条件とを設定する工程において,前記回路パターンの寸法を計測する位置を含む領域として該計測する位置の近傍の前記回路パターンのエッジを含む領域を設定し,該設定した領域内の前記回路パターンのエッジの方向に応じて前記走査型電子顕微鏡で走査する電子線の連続的なスキャンの方向を設定することを特徴とする走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測方法。
【請求項2】
前記撮像領域と撮像条件とを設定する工程において,前記SEM撮像領域の中心座標と前記設計情報とを用いて計測すべき寸法の種類を設定し,該設定した計測すべき寸法の種類に応じて前記計測対象領域を設定することを特徴とする請求項1記載の走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測方法。
【請求項3】
走査型電子顕微鏡を用いて基板上に形成された回路パターンの寸法を計測する方法であって,
基板上に形成された回路パターンのうち寸法を計測すべき回路パターンを含むSEM撮像領域の中心座標ならびに前記寸法を計測すべき回路パターンを含む前記基板上に形成された回路パターンの設計情報を入力する工程と,
該入力した前記SEM撮像領域の中心座標と前記設計情報とを用いて前記寸法を計測すべき回路パターンのエッジを含む計測対象領域を設定すると共に該設定した計測対象領域を含む領域を走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像領域と撮像条件とを設定する工程と,
該設定した撮像条件に基づいて前記走査型電子顕微鏡で前記基板上に形成された回路パターンを撮像する工程と,
該撮像して得た画像を処理して前記撮像領域内の前記寸法を計測すべき回路パターンのエッジの情報を用いて前記回路パターンの寸法を計測する工程とを有し,
前記撮像領域と撮像条件とを設定する工程において,前記寸法を計測すべき回路パターンを含むSEM撮像領域の中心座標と前記設計情報とを用いて計測すべき寸法の種類を設定し,前記設定した計測すべき寸法の種類に応じて前記計測対象領域を設定することを特徴とする走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測方法。
【請求項4】
前記撮像領域と撮像条件とを設定する工程において,前記回路パターンの寸法を計測する位置を含む領域として該計測する位置の近傍の前記回路パターンのエッジを含む領域を設定し,該設定した領域内の前記回路パターンのエッジの方向に応じて前記走査型電子顕微鏡で走査する電子線の連続的なスキャンの方向を設定することを特徴とする請求項3記載の走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測方法。
【請求項5】
前記回路パターンの寸法を計測する工程において,前記撮像して得た画像に基づいて前記設計情報を用いて設定した前記寸法を計測すべき回路パターンのエッジを含む計測対象領域の位置を修正し,該修正した計測対象領域の内部に含まれる前記寸法を計測すべき回路パターンのエッジの位置情報を用いて前記回路パターンの形状を計測することを特徴とする請求項1又は3に記載の走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測方法。
【請求項6】
前記回路パターンの寸法を計測する工程において,前記撮像して得た画像を処理して前記回路パターンのうちのラインパターンの線幅又は前記ラインパターン間のギャップの寸法,前記ラインパターンの端部の後退量,前記回路パターンのうちのコンタクトホールの径,又は前記回路パターンのOPC形状を計測することを特徴とする請求項1又は3に記載の走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測方法。
【請求項7】
前記SEM撮像領域の中心座標ならびに回路パターンの設計情報を入力する工程において,前記SEM撮像領域内において発生しうるパターン形成不良の候補を指定する不良候補を入力し,前記入力した不良候補と前記SEM撮像領域の中心座標と前記設計情報とを用いて計測すべき寸法の種類を設定し,該設定した計測すべき寸法の種類に応じて前記計測対象領域を設定することを特徴とする請求項1又は3に記載の走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測方法。
【請求項8】
前記撮像領域と撮像条件とを設定する工程において,前記計測対象領域と前記電子線の連続的なスキャンの方向とを用いて,前記入力されたSEM撮像領域の中心座標を変更する,あるいは複数の撮像領域を合わせて一つの新たな撮像領域を設定することを特徴とする請求項1又は3に記載の走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測方法。
【請求項9】
前記撮像領域と撮像条件とを設定する工程において,前記寸法を計測すべき回路パターンを含むSEM撮像領域の中心座標と前記設計情報とを用いて計測すべき寸法の種類を設定する設定ルールは,少なくとも一つ以上の前記SEM撮像領域の中心座標と前記設計情報と前記計測すべき寸法の種類との組み合わせ教示,あるいは前記SEM撮像領域の中心座標と前記設計情報と前記計測対象領域との組み合わせ教示により決定されることを特徴とする請求項3記載の走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測方法。
【請求項10】
走査型電子顕微鏡を用いて基板上に形成された回路パターンの寸法を計測する装置であって,
基板上に形成された回路パターンのうち寸法を計測すべき回路パターンを含むSEM撮像領域の中心座標ならびに前記寸法を計測すべき回路パターンを含む前記基板上に形成された回路パターンの設計情報を入力する入力手段と,
該入力した前記SEM撮像領域の中心座標と前記設計情報とを用いて前記寸法を計測すべき回路パターンのエッジを含む計測対象領域を設定する計測対象領域設定部と該計測対象領域設定部で設定した計測対象領域を含む領域を走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像領域と撮像条件とを設定する領域・条件設定部とを有する撮像条件設定手段と,
該撮像条件設定手段で設定した前記回路パターンの寸法を計測するために撮像領域を前記走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像シーケンスを設定する撮像シーケンス設定手段と,
前記撮像条件設定手段で設定した撮像条件と前記撮像シーケンス手段で設定した撮像シーケンスとに基づいて前記基板上に形成された回路パターンを撮像する走査型電子顕微鏡手段と,
該走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た画像を処理して前記回路パターンの寸法を計測する画像処理手段とを備え,
前記撮像条件設定手段の計測領域設定部は,前記回路パターンの寸法を計測する位置を含む領域として該計測する位置の近傍の前記回路パターンのエッジを含む領域を設定し,前記撮像条件設定手段は更に前記計測領域設定部で設定した領域内の前記回路パターンのエッジの方向に応じて前記走査型電子顕微鏡で走査する電子線の連続的なスキャンの方向を設定するスキャン方向設定部を有することを特徴とする走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測装置。
【請求項11】
前記撮像条件設定手段は,前記寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報と前記設計情報とを用いて計測すべき寸法の種類を設定する側長種設定部を更に有し,前記計測領域設定部において該側長種設定部で設定した計測すべき寸法の種類に応じて前記回路パターンのエッジを含む領域を前記計測対象領域として設定することを特徴とする請求項10記載の走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測装置。
【請求項12】
走査型電子顕微鏡を用いて基板上に形成された回路パターンの寸法を計測する装置であって,
基板上に形成された回路パターンのうち寸法を計測すべき回路パターンを含むSEM撮像領域の中心座標ならびに前記寸法を計測すべき回路パターンを含む前記基板上に形成された回路パターンの設計情報を入力する入力手段と,
該入力した前記SEM撮像領域の中心座標と前記設計情報とを用いて前記寸法を計測すべき回路パターンのエッジを含む計測対象領域を設定する計測対象領域設定部と該計測対象領域設定部で設定した計測対象領域を含む領域を走査型電子顕微鏡で撮像するための撮像領域と撮像条件とを設定する領域・条件設定部とを有する撮像条件設定手段と,
前記撮像条件設定手段で設定した撮像条件に基づいて前記基板上に形成された回路パターンを撮像する走査型電子顕微鏡手段と,
該走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た画像を処理して前記寸法を計測すべき回路パターンのエッジの情報を用いて前記回路パターンの寸法を計測する画像処理手段とを備え,
前記撮像条件設定手段は,前記入力手段で入力した前記寸法を計測すべき回路パターンの位置の情報と前記設計情報とを用いて計測すべき寸法の種類を設定する側長種設定部を更に有し,前記計測領域設定部において該側長種設定部で設定した計測すべき寸法の種類に応じて前記回路パターンのエッジを含む領域を前記計測対象領域として設定することを特徴とする走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測装置。
【請求項13】
前記撮像条件設定手段の領域・条件設定部は,前記計測対象領域設定部で設定した計測対象領域内の前記回路パターンのエッジの方向に応じて前記走査型電子顕微鏡で走査する電子線の連続的なスキャンの方向を設定することを特徴とする請求項12記載の走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測装置。
【請求項14】
前記画像処理手段は,前記走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た画像に基づいて前記撮像条件設定手段の計測領域設定部で前記設計情報を用いて設定した前記計測対象領域の位置を修正する計測対象領域修正部と,該計測対象領域修正部で修正した計測対象領域の内部に含まれる前記寸法を計測すべき回路パターンのエッジの位置情報を用いて前記回路パターンの寸法を計測する寸法計測部とを有することを特徴とする請求項10又は12に記載の走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測装置。
【請求項15】
前記画像処理手段の寸法計測部は,前記走査型電子顕微鏡手段で撮像して得た画像を処理して前記回路パターンのうちのラインパターンの線幅又は前記ラインパターン間のギャップの寸法,前記ラインパターンの端部の後退量,前記回路パターンのうちのコンタクトホールの径,又は前記回路パターンのOPC形状を計測することを特徴とする請求項14記載の走査型電子顕微鏡を用いた回路パターンの寸法計測装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−243993(P2009−243993A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89131(P2008−89131)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(501387839)株式会社日立ハイテクノロジーズ (4,325)
【Fターム(参考)】