説明

走行車両自動操舵用駆動装置

【課題】異なる走行車両に対応する汎用性の高い自動操舵駆動装置を提供するとともに、緊急時の手動ハンドル操作を可能にする自動操舵駆動装置を提供すること。
【解決手段】電磁クラッチのオンオフにより中間軸駆動用の正逆転モータを作動制御してステアリングシャフトを自動操舵モードで駆動制御する自動操舵制御手段を設け、例えはクラッチペダルのオン、左又は右のブレーキペダルのオン又は前後進レバーが前進側又は後進側に移動されるなどの何らかの走行車両の挙動操作が行われると、該自動操舵制御手段は正逆転モータによる自動操舵モードを禁止する制御とすることで走行安全性を確保する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農業用走行車両等のステアリングハンドル部に装着する走行車両自動操舵用駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
外部からの遠隔操舵信号の出力に基づき、ステッピングモータからの動力をベルトまたはチェンによりステアリングシャフトに伝動してステアリングハンドルを操舵する自動操舵用駆動装置を装着した走行車両が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7349779号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1記載の自動操舵のために操舵駆動装置を設ける構成においては、自動操舵駆動装置を作動中にもオペレータによって手動でステアリングハンドルの操舵を行うことがあるが、上記特許文献1記載の自動操舵駆動装置は、ステアリングハンドルを手動操作する場合についての配慮がなく、ベルトまたはチェーンによる動力伝達系の動力に逆らって手動によりステアリングハンドルを操作する必要があった。
【0005】
本発明の課題は、異なる走行車両に対応する汎用性の高い自動操舵駆動装置を提供するとともに、緊急時の手動ハンドル操作を可能にする自動操舵駆動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために次の構成を有する。
請求項1記載の発明は、走行車両の操舵をするステアリングハンドル(9)と、該ステアリングハンドル(9)に連動して正転と逆転をするステアリングシャフト(15)と、走行車両の操舵方向を検出する操舵方向検出手段(49)と、ステアリングシャフト(15)に回転駆動力を伝達するための正逆転モータ(20)と、該正逆転モータ(20)の回転駆動力をステアリングシャフト(15)に伝達するための電磁クラッチ(22)を有する連動機構と、該電磁クラッチ(22)の作動/非作動を司る自動スイッチ(24)と、
走行車両の挙動を検出する挙動検出手段(K)と、前記自動スイッチ(24)の操作により前記電磁クラッチ(22)が作動する自動モード中には前記操舵方向検出手段(49)の検出結果に基づいて前記正逆転モータ(20)の正逆転方向の出力によりステアリングシャフト(15)の自動操舵制御を行い、また前記挙動検出手段(K)の検出結果に基づいて前記電磁クラッチ(22)を非作動とする自動操舵制御手段(100)と
を備えた走行車両自動操舵装置である。
【0007】
請求項2記載の発明は、走行車両の旋回動作または旋回開始点を検出する検出手段(49,50,52)を設け、前記自動操舵制御手段(100)は走行車両が旋回動作または旋回開始点検出手段の検出結果に基づいて前記電磁クラッチ(22)によるステアリングシャフト(15)への動力を非伝達とすることを特徴とする請求項1記載の走行車両自動操舵装置である。
【0008】
請求項3記載の発明は、ステアリングハンドル(9)をオペレータが握り操作することを検出するステアリング握り検出手段(54,55)を設け、前記自動操舵制御手段(100)は前記ステアリング握り検出手段(54,55)の検出結果に基づいて前記電磁クラッチ(22)によるステアリングシャフト(15)への動力を非伝達とすることを特徴とする請求項1記載の走行車両自動操舵装置である。
【0009】
請求項4記載の発明は、走行車両の車速を検出する車速検出手段(57)を設け、前記自動操舵制御手段(100)は車速検出手段(57)の検出結果に基づき車速が規定車速以上または車両停止状態を検出すると前記電磁クラッチ(22)によるステアリングシャフト(15)への動力を非伝達とすること特徴とする請求項1記載の走行車両自動操舵装置である。
【発明の効果】
【0010】
請求項1記載の発明によれば、電磁クラッチ22の伝達又は非伝達により正逆転モータ20がステアリングシャフト15を自動操舵制御手段100により駆動制御する自動操舵モードのときに、挙動検出手段Kが、例えはクラッチペダルのオン、左又は右のブレーキペダルのオン又は前後進レバーが前進側又は後進側に移動されるなどの何らかの走行走行車両の挙動操作が行われると、電磁クラッチ22の伝達又は非伝達用正逆転モータ20による自動操舵モードを禁止する制御とすることができ、また、緊急時にステアリングハンドル9の手動操作に切替ができるので車両の走行安全性が確保できる。
【0011】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、走行車両の旋回動作または旋回開始点を検出する検出手段(ステアリング切れ角センサ49,リフトアーム傾斜角センサ50,カメラコントローラ52)を設け、該検出手段(49,50,52)により検出された旋回動作または旋回開始点の検出結果に基づいて電磁クラッチ22を非伝動として自動的に手動操舵操作に戻す制御を行うこともでき、自動操舵モードを解除等の操作を運転者がすることなく操舵制御が簡単にできる。
【0012】
請求項3記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、ステアリング握り検出手段(ステアリング歪みセンサ54,静電容量型検出センサ55)によるステアリング9の握り検出があるとステアリングハンドル9を手動に切り替えることができるので、ステアリングハンドル9に触れたときの自動解除を防ぐことができる。
【0013】
請求項4記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、車速が規定車速以上または走行停止状態であるとる自動操舵モードを解除して安全性を従来より高くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】農用作業走行車両の一例としての農用トラクタの右側面図である。
【図2】図1の農用トラクタの前部側面図である。
【図3】図1のトラクタのステアリングハンドルの自動操舵用駆動装置の概略構成である。
【図4】図3の矢印A方向からの矢視略図である。
【図5】図1のトラクタの自動操舵用駆動装置の制御構成図である。
【図6】図1のトラクタの自動操舵用駆動装置の制御ブロック図である。
【図7】図6の自動操舵用駆動装置の自動モード、手動モード、中立復帰モード及び通常モードへそれぞれ移行するためのモード変更のためのフローチャートである。
【図8】図1のトラクタに搭載したカメラから目標Xと走行車両の直進方向からのズレ角度の説明図
【図9】図6の自動操舵モードを含むフローチャートである。
【図10】図6の自動操舵モードを含むローチャートである。
【図11】図6の自動操舵モードを含むローチャートである。
【図12】図6の自動操舵モードを含むフローチャート(図12(a)、(b))である。
【図13】図6の自動操舵モードを含むフローチャート(図13(a)、(b))である。
【図14】図6の自動操舵モードを含むフローチャートである。
【図15】図6の自動操舵モードを含むフローチャート(図13(a))と走行車両の走行時の説明図(図15(b))である。
【図16】図6の自動操舵モードの遠目標の認識して走行制御する制御ブロック図である。
【図17】図16の制御ブロック図に基づく制御のフローチャート(図17(a))と走行車両走行時の説明図(図17(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の一実施例を図面に基づき説明する。
図1と図2に農用作業走行車両の一例としての農用トラクタの右側面図とその前部側面図を示す。走行車両1の前後部に前輪2と後輪3とを備え、ボンネット4内に装着されるエンジン5の回転動力をミッションケース6内の変速装置で適宜減速し、減速した回転動力を当該前輪2,後輪3に伝達すべく構成している。
【0016】
機体中央部の運転者席7の前方には、ハンドルポスト8を設け、ステアリングハンドル9を旋回操作可能に設けている。このステアリングハンドル9の旋回操作は操舵機構を介して左右前輪2,2を操向連動する構成としている。なお、ステアリングハンドル9の近傍にはアクセルレバー10を、ハンドルポスト8の下部側には左右独立するブレーキペダル11,11を配設すると共に、上記運転者席7とこのハンドルポスト8間には走行用変速レバー(図示せず)を配設している。
【0017】
上記機体1の後部には耕耘作業機12が装着されており、該耕耘作業機12はリフトアーム13とロアリンク14,14とからなる3点リンク機構を介して上下昇降可能に装着している。油圧シリンダ機構(図示せず)はポジションレバー(図示せず)の回動操作によって伸縮してリフトアーム13を上下回動し、これによりリフトロッド13aを介してロアリンク14,14を上下動させることにより作業機12を昇降連動する構成である。
【0018】
前記エンジン5から出力された回転動力は、図示しない主クラッチ、前後進切替機構を経由し主変速機構、副変速機構で適宜変速されて後輪デフ機構へ伝達される構成である。また、副変速機構からの回転動力は前輪駆動軸32へ伝達可能の構成である。
【0019】
前輪駆動軸32は前輪デフ機構33に連動連結される。この前輪デフ機構33はアクスルブラケット35に前後軸心回りに左右揺動自在に支承されるものである。ステアリングハンドル9に連動する伝動軸37は自在継手36を介して前輪2、2の操舵機構(パワステユニット)39(図5)に連結している。
【0020】
図3にステアリングハンドル9の自動操舵用駆動装置の概略構成図を示し、図4に図3の矢印A方向からの矢視図を示す。
ステアリングハンドル9のシャフト15の軸心周りに該シャフト15と一体的に従動スプロケット16を設ける。またステアリングシャフト15を支持するハンドルポスト8に対して着脱自在に運転席側に張り出すようカバー部材8aを構成し、該カバー部材8a内にはステアリングシャフト15の軸方向に平行する方向に配置した中間軸17を配置している。
【0021】
中間軸17と一体である駆動スプロケット21と従動スプロケット16の間にタイミングベルト27を掛けられているので、正逆転モータ20により駆動スプロケット21が駆動されると、その駆動力が従動スプロケット16を経由してステアリングハンドル9のシャフト15が回動する。
【0022】
駆動スプロケット21より下方には電磁コイル22aを有する電磁クラッチ22が取り付けられており、該電磁クラッチ22の近傍に正逆転モータ20及び該モータ20のモータ連動軸20aと一体の第1ギヤ19が配置されている。
【0023】
図4に示すように、中間軸17に遊嵌状態にアーマチュア29とロータリング28が取り付けられ、ロータリング28側には第2ギヤ18が形成され、前記第1ギア19と該第2ギア18が常時噛合している。アーマチュア29は前記駆動スプロケット21を縦方向ボルト等の伝達部材を介して一体的に設けられている。
【0024】
上記構成で、電磁クラッチ22がオン(作動)のとき、即ち電磁コイル22aに通電すると、ロータリング28にアーマチュア29が吸引され付着する。また、正逆転モータ20の駆動で、その連動軸20aに連動した第1ギヤ19が駆動し、該第1ギヤ19に噛合する第2ギヤ18が駆動し、該第2ギヤ18の駆動に伴ない回転するロータリング28の駆動で、前記吸着状態のアーマチュア29が駆動し、アーマチュア29と一体の駆動スプロケット21が回転する。なお、駆動スプロケット21は前記アーマチュア29、ロータリング28を遊嵌支持する中間軸17に固着されている。
【0025】
電磁クラッチ22がオフのときには、電磁コイル22aが非通電となるため、ロータリング28がアーマチュア29から離れる。正逆転モータ20が駆動中であっても、第1ギヤ19から第2ギヤ18を経由してロータリング28までが回転駆動力が伝達されるだけである。
【0026】
なお、カバー部材8aは、ステアリングポスト8に対して適宜の手段で着脱自在に取り付けられる側面視逆L型のモータ取付ベースプレート59を介して着脱自在に固着されている。なお、前記電磁クラッチ22の下面を受けるためのベースプレート62を支持すべくステアリングポスト8側から延出されたベースプレートブラケット34がステアリングポスト8に取り付けられている。
【0027】
前記モータ20のフランジ56には水平方向に配置される正逆転モータ20の本体軸(図示せず)から第1ギヤ19に変換するベベルギヤ群を収容するギア伝動部31a,31bが設けられている。
【0028】
また、本実施例の運転者席7のある操縦部には図示しないが、電磁クラッチ22のオン、オフを司る自動スイッチ24(図6参照)、ブレーキモードスイッチ25、正逆転モータ20を手動で所定量作動させるためのモータ手動ダイヤル26、ブレーキ圧調整ダイヤル44、左ブレーキペダルスイッチ42、右ブレーキペダルスイッチ43、クラッチペダルスイッチ45、前後進レバー中立位置スイッチ46、モニタ(自動モニタ47a,受信モニタ47b)等は配置されている。なお、自動モニタ47aはモータ20による自動操舵モードに入っていることを知らせる手段であり、受信モニタ47bはカメラ53からの受信信号が正常に自動操舵を司る状態のときを知らせる手段である。
【0029】
本実施例では前記中間軸17と前記正逆転モータ20との間の動力の伝達又は非伝達用の電磁クラッチ22と駆動スプロケット21と動力伝達部材27を既存ステアリングハンドル部に外付け可能なため汎用性の高い自動操舵装置が得られる。
【0030】
この自動操舵用駆動装置の制御構成図を図5に示す。
操舵用制御装置(コントローラ)100はドライバユニット23を経由して正逆転モータ20への出力を行い、駆動スプロケット21、従動スプロケット16、ステアリングシャフト15、パワステユニット39、前輪操舵部48を経由して、ハンドル9の操舵角に応じて前輪2が操舵される。前輪操舵角度は操舵角センサ41により検出され、操舵用コントローラ100にフィードバックされる。
また、車両の直進支援用のカメラコントローラ52を操舵用コントローラ100とは別に設けておき、カメラ53からの撮像信号に基づき、またはナビゲーションコントローラ30からの情報に基づき操舵用コントローラ100により車両の操舵を行うこともできる。
【0031】
操舵用コントローラ100には操作パネル38上に配置した前記自動操舵用駆動装置の制御を開始させるための自動スイッチ24、オペレータによるハンドル操作量をステアリングシャフト15に連動させるために、ハンドル操作量を可変抵抗器の抵抗値として出力して、ステアリングハンドル9の中立位置の調整を前記自動操舵中でも行うことができるトリムスイッチ、ステアリングハンドル9を中立位置に戻すための中立復帰スイッチ、左側又は右側に傾倒自在に設けられたモータ手動ダイヤル26等を接続し、さらに作業車両の各種作業などの操作指令、走行速度の制御指令などを発信するための操作パネル38と通信が出来る構成になっている。
【0032】
また図6の制御ブロック図に示すように、走行車両の適所にはステアリング切れ角センサ(方向操舵検出手段)49、リフトアーム傾斜角センサ50、傾斜地走行時に車両の傾斜角度を検出する車両傾斜角度センサ51、耕耘作業機12を昇降させるトップリンクの傾斜角度検出センサ51、カメラ53による目標地点までの距離を計測できる距離センサを含むカメラコントローラ52、ステアリングハンドル9を運転者が把持することを検出できるステアリングハンドル歪みセンサ54又はステアリングハンドル9の外周に設ける静電容量型検出センサ55、走行車両の車速を検出する車速センサ57、後述するように車両の直進走行性を維持するための角速度センサ58、エンジン回転軸の回転の有無を検出することによりエンジン回転停止を検出するエンジン回転停止センサ60(車速センサ57とは別にある)、傾斜地走行時に進行方向を補正する傾斜時補正ダイヤル61等を設けている。
【0033】
そして、図7には本実施例の自動操舵用駆動装置の制御フローチャートを示す。
まず各種センサ、スイッチの作動状態を読み込み、次いでステップ(Sa)で自動スイッチ24がオフなら正逆転モータ20をモータ手動ダイヤル26により左右に所定量回して、その分、旋回方向を決めて旋回ができる。正逆転モータ20の手動ダイヤル26の操作位置が中立位置であればそのまま本制御フローは終了し、正逆転モータ20の手動ダイヤル26が中立位置以外のハンドル切れ角(θm)に相当する位置に作動されると、電磁クラッチ22をオンとし、同時に正逆転モータ20も作動し、その後ステアリングハンドル切れ角センサ49が切れ角θmを検出すると正逆転モータ20の出力をオフとして前記切れ角θmでスタリングシャフト9を手動旋回操作させる。
【0034】
また、ステップ(Sa)で自動スイッチ24がオンなら電磁クラッチ22と自動モニタ47aをオンとし、カメラ53の受信データを読み込む。次いで、図8に示すように走行車両に搭載したカメラ53から複数のLEDの発光体でできた目標Xと走行車両の直進方向からのズレ角度(Δθ)を算出する。
【0035】
さらにステップ(Sb)で走行車両が傾斜地を走行であるかどうか車両の傾斜角度を車両傾斜角度センサ51で検出する。傾斜地を走行中であることが分かれば、そのまま走行車両を前進させると傾斜地をずれ落ちる方向に進行するので走行車両の前進方向を所定角度(θ’)だけ上向きにハンドル切れ角度を変えて目標Xに向かって走行車両を直進走行させる必要がある。
【0036】
従って走行車両は前記ズレ角度(Δθ)と所定角度(θ’)の和(Δθ+θ’)に対応するハンドル切れ角で前進させるために正逆転モータ20の駆動量を決めて、該駆動量に対応したハンドル切れ角が得られるように、該モータ20を正逆回転方向に回転させる。なお、正逆転モータ20を適切な正逆回転方向に回転させるときに左右ブレーキのいずれか片方だけを作動させて走行車両の前進方向を調整しても良い。
【0037】
その後ステップ(Sc)でスタリングハンドル切れ角(θn)を読み込み、次の数式の関係が成り立つと、
|θn−(Δθ+θ’)|<δ
ステップ(Sd)で正逆転モータ20の出力をオフとし、スタリングハンドル切れ角(θn)で目標Xに向かって走行車両を直進走行させる。次いで自動スイッチ24がオフであれば、電磁クラッチ22と自動モニタ47aをオフとして自動操舵用駆動装置の制御を終了する。
【0038】
なお、前記走行車両に搭載したカメラ53に角速度センサ58を設けてき、前記ズレ角度(Δθ)を算出する際に前記角速度センサ58の検出値が所定範囲を超えたときに始めて前記モータ20の駆動により走行車両の直進走行を行うようにすると、角速度センサ検出値の不感帯ができるので畝越え時などにおける直進性が従来より向上する。
【0039】
ここで図7のステップ(Sb)からステップ(Sd)の直前までの各ステップは、正逆転モータ20による自動操舵モードに対応しているが、ここで走行車両がそのまま自動操舵モードで走行中に、何らかの操作がなされる(これを走行走行車両の挙動ということにする)と、その操作に応じて図9のフローチャートに示すステップe(Se)ように作動中の電磁クラッチ22をオフにしてステアリングハンドルの手動操作を行う構成にしても良い。
【0040】
例えば、クラッチペダル(図示せず)がオンとなったとき、左又は右のブレーキペダルスイッチ42,43がオンとなったとき又は前後進レバーが前進側又は後進側に移動してオンとなったときには正逆転モータ20による自動操舵モードが作動しないような制御とすることで走行安全性が確保できる。
【0041】
このように電磁クラッチ22をオン・オフに切り替えることにより緊急時にステアリングハンドルを手動操作できる。
また、本実施例の制御装置は、走行車両の旋回動作または旋回開始点を検出する検出手段を設け、該検出手段により検出された旋回動作または旋回開始点の検出結果に基づいて電磁クラッチ22をオフとする制御を行うこともできる。
【0042】
前記旋回動作の検出手段は、例えばリフトアーム13の傾斜角度センサ50が、リフトアーム13の傾斜角度が所定の上昇側の傾斜角度になることを検出したとき、又はステアリングハンドル切り角センサ49がステアリングハンドル9が所定の旋回角度以上の旋回角度で旋回していることを検出したときであり、また旋回開始点は、例えば畦際に達してカメラ53によりカメラコントローラ52が測定される目標Xまでの距離が所定値以下であること(遠目標手前規定距離)を検出した場合である。
【0043】
この場合の制御フローチャートは、図7のステップ(Sb)からステップ(Sd)の直前までの各ステップにある正逆転モータ20による自動操舵モードに対応しているが、ここで走行車両がそのまま自動操舵モードで走行中に旋回動作の検出または旋回開始点の検出があると、その操作に応じて図10のフローチャートに示す自動操舵モードのステップ(Sf)のように作動中の電磁クラッチ22をオフにして、自動操舵モードを終了してステアリングハンドルの手動操作を行う構成にしても良い。
【0044】
上記制御により、例えば畦際に(圃場端)に走行車両が到達したときなど、耕耘作業機12が上昇したときには自動的に電磁クラッチ22がオフとなるので、自動操舵モードを解除等の操作を運転者がすることなく、走行車両の手動による旋回動作に入ることができるメリットがある。
【0045】
また、図11のフローチャートに示すように、図7のステップ(Sb)からステップ(Sd)の直前までの各ステップにある正逆転モータ20による自動操舵モードに対応しているが、ここでステアリングハンドル9をオペレータが握り操作すると、ステアリングハンドル握り操作の検出結果に基づいて前記電磁クラッチ22をオフとする出力する構成にしても良い。
【0046】
なお、ステアリング握りの検出は、例えばステアリングハンドル基部のステアリング軸に歪みセンサ54を設け、該センサ54の歪み検出でオペレータのステアリングハンドル9の押し作動を検出する。また、ステアリングハンドル9の外周に静電容量型検出センサ55を設けてオペレータのハンドルの握り検出をすることもできる。
【0047】
上記制御構成でステアリングハンドル9をオペレータが握ったことを検出して一定時間が経過したらステアリングハンドル9を手動に切り替えるようにしても良い。
【0048】
こうしてスイッチ操作を行うことなく自動操舵を解除することができ、操作性が従来より向上するとともに、一定時間の経過後に自動操舵解除をすることにより、誤操作でステアリングハンドル9に触れたときの自動解除を防ぐことができる。
【0049】
図12(a)のフローチャートに示すように自動スイッチ24をオンして後に、車速が規定車速より小さな車速で走行中は、初めて電磁クラッチ22を作動させて前述の自動操舵モードで走行制御を始める。しかし、車速が規定車速以上であると電磁クラッチ22を非作動として自動操舵モードによる走行を停止させる制御を行うことができる。
【0050】
また、図12(b)のフローチャートに示すように自動スイッチ24をオンして後にすぐに自動操舵モードで自動操舵を行う場合にも規定車速以上で走行中は、通電されることによりエンジン5を運転可能にすると共に通電を遮断されることにより燃料カット機構を作動してエンジン停止させるキーストップソレノイド(図示せず)を作動させて、走行車両の走行を停止させる。
【0051】
図13(a)のフローチャートに示すように自動スイッチ24をオンして後に、電磁クラッチ22を作動させて、前述のように自動操舵モードで走行制御をするが、自動操舵モードに入る前にエンジン回転センサ60によりエンジンが作動していないことが検出されると、前記自動操舵モードに入らないで電磁クラッチ22を作動させない制御構成とする。こうして正逆転モータ20等の操舵機構に不必要な負荷がかかるのを防止することができる。
【0052】
また、図13(b)のフローチャートに示すように走行開始前の走行停止時にステアリングハンドル9の自動スイッチ24をオンして後に電磁クラッチ22を作動させ、走行前にステアリングハンドル9の操作を自動操舵に切り替え、車両が走行を開始したらステアリングハンドル9の正逆転モータ20による自動操舵を開始するが、車速が「0」のときは自動操舵処理を行わない制御構成とすることもできる。なお、この制御構成の意義は、走行停止中にハンドル9を操作することはまずあり得ないので、電磁クラッチ22を作動させる必要性がないにも拘わらず通電状態のままで操舵信号によって正逆転モータ20が起動し不必要な負荷を引起す可能性を無くすためである。
【0053】
こうして、走行開始前の走行停止時にステアリングハンドル9の駆動を行わないため、正逆転モータ20の負荷を軽くすることが可能となる。
【0054】
図14のフローチャートに示すように自動スイッチ24をオンして後に、電磁クラッチ22を作動させて自動操舵モードで走行制御をするが、自動操舵モードに入るに当たって、前方に設置した遠目標(ランプ)X1をカメラ53で検出して直進走行を行うシステムに用いるカメラ53のコントローラ52からの受信データが入力できないとき又はカメラ53からの受信信号が途絶えた時はブザー63を鳴らし、自動操舵モードに入らないでステアリングハンドル9の操作を手動に切り替える。
【0055】
カメラコントローラ52からの受信データが制御装置100に入力できないとき又はカメラ53からの受信信号が途絶えた時はブザー63を鳴らし、自動操舵モードに入らないでステアリングハンドル9の操作を手動に切り替える制御構成にする。
【0056】
こうして本自動操舵システムの異常によりカメラ53からのデータが受信できないときに、確実にステアリングハンドル9を手動操作できる。
【0057】
また、カメラ53からの受信信号が途絶えた時から一定時間内であればモータ20の出力制御を中断し、通信データが受信を待って一定時間が経過したらブザー63をオンし、手動に切り替える制御構成とすると、本システムが異常になっても短時間で復帰したときは、継続して自動操舵を行うことができ、ステアリングハンドル9の操作性が従来より向上する。
【0058】
また、図15(a)のフローチャートと図15(b)の走行車両の走行時の説明図に示すように自動スイッチ24をオンして後に、電磁クラッチ22を作動させて、前述のように自動操舵モードで走行制御をするが、自動操舵モードに入るに当たって、前方に設置した遠目標(ランプ)X1をカメラ53で検出して直進走行を行う自動操舵システムにおいてカメラ53のコントローラ52からの受信データが制御装置100に入力できないとき又はカメラ53からの受信信号が途絶えた時に、自動操舵モードに入らないでステアリングハンドル9の操作を手動に切り替えたら、走行行程の遠目的ランプX1を消灯する。
【0059】
こうして必要時にだけ遠目標を点灯することができ、点灯に必要な電池容量を節約することができ、省エネ運転が可能となる。
【0060】
さらに、図16の制御ブロック図と図17(a)のフローチャートと図17(b)の走行車両走行時の説明図に示すように、自動スイッチ24をオンして後に、電磁クラッチ22を作動させて、前述のように自動操舵モードで走行制御をするが、自動操舵モードに入るに当たって、前方に設置した遠目標(ランプ)X1をカメラ53で検出して直進走行を行う。そして走行車両旋回などにより、カメラ53からの受信信号が途絶えたらステアリングハンドル9の操作を手動に切り替え、次いで、次の走行行程の遠目的X2のランプを点灯させる構成としても良い。
【0061】
なお、図16の制御ブロック図を示すように、遠目標X1,X2の点灯出力は送信回路で変調されて電波で遠目標X1又は遠目標X2の受信回路に出力される。
【0062】
こうして、必要時にだけ遠目標X1又は遠目標X2を点灯することができ、点灯に必要な電池容量を節約することができ省エネルギー効果が大となる。また、車両の旋回後の次行程の遠目標X2を自動で点灯させることにより操作性が向上する。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、汎用自動操舵用駆動装置として利用可能性が高い。
【符号の説明】
【0064】
1 走行車両 2 前輪
3 後輪 4 ボンネット
5 エンジン 6 ミッションケース
7 運転者席 8 ハンドルポスト
8a カバー部材 9 ステアリングハンドル
10 アクセルレバー 11 ブレーキペダル
12 耕耘作業機 13 トップリンク
13a リフトロッド 14 ロアリンク
15 ステアリングシャフト
16 従動スプロケット 17 中間軸
18 第2ギア 19 第1ギヤ
20 正逆転モータ 20a モータ駆動軸
21 駆動スプロケット 22 電磁クラッチ
23 ドライバユニット 24 自動スイッチ
25 ブレーキモードスイッチ
26 モータ手動ダイヤル
27 タイミングベルト 27a ベースプレート
28 ロータリング 29 アーマチュア
30 ナビゲーションコントローラ
31a,31b ギア伝動部
32 前輪駆動軸 33 前輪デフ機構
34 ベースプレートブラケット
35 アクスルブラケット
36 自在継手 37 伝動軸
38 操作パネル 39 パワステユニット
40 中央基準値補正ダイヤル
41 操舵角センサ
42 左ブレーキペダルスイッチ
43 右ブレーキペダルスイッチ
44 ブレーキ圧調整ダイヤル
45 クラッチペダルスイッチ
46 前後進レバー中立位置スイッチ
47a 自動モニタ 47b 受信モニタ
48 前輪操舵部
49 ステアリング切れ角センサ(方向操舵検出手段)
50 リフトアーム傾斜角センサ
51 車両傾斜角度センサ
52 距離センサ(カメラコントローラ)
53 カメラ
54 ステアリングハンドル歪みセンサ
55 静電容量型検出センサ
56 フランジ 57 車速センサ
58 角速度センサ
59 モータ取付ベースプレート
60 エンジン回転センサ
61 傾斜時補正ダイヤル 62 ベースプレート
100 操舵用コントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両の操舵をするステアリングハンドル(9)と、
該ステアリングハンドル(9)に連動して正転と逆転をするステアリングシャフト(15)と、
走行車両の操舵方向を検出する操舵方向検出手段(49)と、
ステアリングシャフト(15)に回転駆動力を伝達するための正逆転モータ(20)と、
該正逆転モータ(20)の回転駆動力をステアリングシャフト(15)に伝達するための電磁クラッチを有する連動機構と、
該電磁クラッチ(22)の作動/非作動を司る自動スイッチ(24)と、
走行車両の挙動を検出する挙動検出手段(K)と、
前記自動スイッチ(24)の操作により前記電磁クラッチ(22)が作動する自動モード中には前記操舵方向検出手段(49)の検出結果に基づいて前記正逆転モータ(20)の正逆転方向の出力によりステアリングシャフト(15)の自動操舵制御を行い、また前記挙動検出手段(K)の検出結果に基づいて前記電磁クラッチ(22)を非作動とするする自動操舵制御手段(100)と
を備えた走行車両自動操舵装置。
【請求項2】
走行車両の旋回動作または旋回開始点を検出する検出手段(49,50,52)を設け、前記自動操舵制御手段(100)は走行車両が旋回動作または旋回開始点検出手段の検出結果に基づいて前記電磁クラッチ(22)によるステアリングシャフト(15)への動力を非伝達とすることを特徴とする請求項1記載の走行車両自動操舵装置。
【請求項3】
ステアリングハンドル(9)をオペレータが握り操作することを検出するステアリング握り検出手段(54,55)を設け、前記自動操舵制御手段(100)は前記ステアリング握り検出手段(54,55)の検出結果に基づいて前記電磁クラッチ(22)によるステアリングシャフト(15)への動力を非伝達とすることを特徴とする請求項1記載の走行車両自動操舵装置。
【請求項4】
走行車両の車速を検出する車速検出手段(57)を設け、前記自動操舵制御手段(100)は車速検出手段(57)の検出結果に基づき車速が規定車速以上または車両停止状態を検出すると前記電磁クラッチ(22)によるステアリングシャフト(15)への動力を非伝達とすること特徴とする請求項1記載の走行車両自動操舵装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−207407(P2011−207407A)
【公開日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−78715(P2010−78715)
【出願日】平成22年3月30日(2010.3.30)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】