説明

走行車両

【課題】足踏み板12bから滑り止め体164,165が簡単に剥れないようにした走行車両を提供するものである。
【解決手段】走行機体1に搭載されたエンジン9と、走行機体1に設けた走行部5,6に前記エンジン9の動力を変速して伝えるミッションケース19と、オペレータが足踏み操作する運転操作用のペダル12とを備えてなる走行車両において、ペダル12は、走行機体1に回動可能に組付けるペダルアーム12aと、オペレータが足を載せる踏み板12bと、踏み板12bの表面に接着する滑り止め体164,165とを有し、ペダルアーム12aの滑り止め体取付け部171,172から突起173,174を突出し、突起173,174に踏み板164,165を被嵌したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面に植立した芝草を刈取るためのモア装置を備えた芝刈機等の走行車両に係り、より詳しくは、オペレータがペダルを足踏み操作して、走行変速機またはブレーキ等を作動する走行車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一般に、芝刈機等の走行車両は、走行機体に昇降動可能に装着したロータリ刈刃付きのモア装置と、当該モア装置から後向きに延びる略筒状の排出ダクトと、この排出ダクトに連通する集草ボックスとを備えている。また、左右の走行車輪または走行クローラ等の走行部にエンジンから動力伝達するに際しては、作業車両における走行機体に搭載したエンジンからミッションケースに動力伝達されて、ミッションケースの変速機構を介して左右の走行部に対して出力するように構成している。
【0003】
この場合、従来の走行車両においては、走行機体の前側にエンジンを搭載し、前車輪と後車輪の間にモア装置を搭載し、走行機体の下側に排出ダクトを配置し、走行機体の後方に集草ボックスを設け、走行機体の上面の運転座席にオペレータが座乗し、そのオペレータが走行機体の変速ペダルを足踏み操作して移動しながら、芝草等を刈取る構成を採用していた(例えば、特許文献1参照)。また、ブレーキペダルにペダルパット(滑り止め用の踏み板)を設け、ブレーキペダルのパット取付側部に、ペダルパット側部の肉厚と略同一高さの膨出部を設けた構成も公知である(例えば、特許文献2参照)。
【特許文献1】特開2004−105112号公報
【特許文献2】特開2004−175240号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1では、変速ペダルは、走行機体に回動可能に組付ける板金製のペダルアームと、オペレータが足を載せる滑り止め用の合成樹脂製の踏み板とから構成していた。ペダルアームの滑り止め体取付け部に、強い接着力の接着加工にて、踏み板を固着した場合、踏み板が摩耗しても簡単に交換できない等の問題がある。なお、摩耗しにくい踏み板は、表面が硬いので、滑り止め用としては不適である。また、強い接着力の接着加工にて、踏み板を固着したペダルアームは、踏み板が摩耗した場合、ペダルアーム全部を交換する必要がある等のコスト上の問題がある。そこで、ペダルアームの滑り止め体取付け部に、滑り止め用として有効な軟らかい(摩耗しやすい)踏み板を、弱い接着力の接着加工にて、固着した場合、摩耗した踏み板だけを簡単に交換して低コストに修理できるが、オペレータの足踏み操作によって踏み板が変形されることにより、その踏み板の変形力が、ペダルアームから踏み板が剥離する力として作用して、ペダルアームから踏み板が剥れる等の問題がある。
【0005】
本発明の目的は、摩耗した踏み板を簡単に交換して修理できるものでありながら、オペレータの足踏み操作によって踏み板が変形されても、ペダルアームから踏み板が簡単に剥れないようにした作業車両を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するため、請求項1に係る発明の走行車両は、走行機体に搭載されたエンジンと、前記走行機体に設けた走行部に前記エンジンの動力を変速して伝えるミッションケースと、オペレータが足踏み操作する運転操作用のペダルとを備えてなる走行車両において、前記ペダルは、前記走行機体に回動可能に組付けるペダルアームと、オペレータが足を載せる踏み板と、前記踏み板の表面に接着する滑り止め体を有し、前記踏み板の滑り止め体取付け部から突起を突出し、前記突起に前記滑り止め体を被嵌したものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の走行車両において、前記滑り止め体取付け部に柱状の突起を立設し、前記滑り止め体の対向する両面に貫通した嵌合孔に前記突起を嵌め込むように構成したものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の走行車両において、前記嵌合孔から露出させる前記突起の表面を扁平面に形成し、前記滑り止め体の厚み寸法より前記突起の高さ寸法を小さく形成し、オペレータの足を載せる前記滑り止め体の表面に対して、前記突起の先端側の扁平面を後退させて配置したものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の走行車両において、前記ミッションケースの変速手段に前記ペダルを連結した構造であって、扁平な形状の前記滑り止め体の略中央に前記嵌合孔を形成し、前記踏み板の足踏み操作によって変速出力される走行方向を表した矢印形に前記突起及び前記嵌合孔を形成したものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に係る発明によれば、走行機体に搭載されたエンジンと、前記走行機体に設けた走行部に前記エンジンの動力を変速して伝えるミッションケースと、オペレータが足踏み操作する運転操作用のペダルとを備えてなる走行車両において、前記ペダルは、前記走行機体に回動可能に組付けるペダルアームと、オペレータが足を載せる踏み板と、前記踏み板の表面に接着する滑り止め体とを有し、前記踏み板の滑り止め体取付け部から突起を突出し、前記突起に前記滑り止め体を被嵌したものであるから、前記滑り止め体取付け部と前記踏み板との接合面の延長方向に前記踏み板を変形させる変形力が、前記突起によって減衰される。即ち、前記滑り止め体取付け部から踏み板を剥がす剥離力が前記突起によって低減され、前記滑り止め体取付け部から前記踏み板が剥がれるのを簡単に防止できる。したがって、前記滑り止め体取付け部に、滑り止め用として有効な比較的軟らかい材質の前記滑り止め体を、簡単な交換作業によって、低コストに修理可能に、比較的弱い接着力の接着加工にて、固着できるものである。
【0011】
請求項2に係る発明によれば、前記踏み板の滑り止め体取付け部に柱状の突起を略直角に立設し、前記滑り止め体の対向する両面に貫通した嵌合孔に前記突起を嵌め込むように構成したものであるから、簡単に加工可能な前記突起及び前記嵌合孔によって、前記滑り止め体取付け部から前記滑り止め体が剥れるのを防止でき、且つ摩耗した前記滑り止め体だけを簡単に交換して低コストに修理できるものである。
【0012】
請求項3に係る発明によれば、前記嵌合孔から露出させる前記突起の表面を扁平面に形成し、前記滑り止め体の厚み寸法より前記突起の高さ寸法を小さく形成し、オペレータの足を載せる前記滑り止め体の表面に対して、前記突起の先端側の扁平面を後退させて配置したものであるから、前記滑り止め体が足踏み操作によって変形したり、前記滑り止め体が若干摩耗した場合であっても、オペレータの足裏側(靴底)が前記突起に接触するのを防止でき、ペダルの足踏み操作性を良好な状態に維持できるものである。
【0013】
請求項4に係る発明によれば、前記ミッションケースの変速手段に前記ペダルを連結した構造であって、扁平な形状の前記滑り止め体の略中央に前記嵌合孔を形成し、前記滑り止め体の足踏み操作によって変速出力される走行方向を表した矢印形に前記突起及び前記嵌合孔を形成したものであるから、前記踏み板または前記滑り止め体等に、走行方向(変速操作方向)を表示する指示手段を特別に設ける必要がなく、また印刷等の指示手段のように足踏み操作にて簡単に損傷することもなく、オペレータが最も視認しやすい前記滑り止め体の表面に、走行方向(変速操作方向)を明確に表示できる。例えば前記踏み板に前進側滑り止め体及び後進側滑り止め体等の複数の前記滑り止め体を配置する構造であっても、オペレータが足踏み操作する前記踏み板の誤操作を防止できるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。はじめに図1〜図4を参照しながら、芝刈機の概要について説明する。図1は芝刈機の全体の側面図、図2は同平面図、図3は芝刈機の走行機体を示す側面図、図4は同平面図である。
【0015】
図1及び図2に示すように、この実施形態の芝刈機においては、走行機体1は、複数の横桟フレーム2を介して一体的に連結された左右の機体フレーム3,4を備えている。当該機体フレーム3,4は、その左右両側の前後に配置した左右の前車輪5及び左右の後車輪6によって支持されている。
【0016】
走行機体1の上面前部を覆うフロントカウル7の上側のボンネット8には、動力源としてのエンジン9が内蔵されている。ボンネット8の後部の上方側には、丸形の操向ハンドル10を有する操縦コラム部11が搭載されている。操縦コラム部11の進行方向に向かって右側の下方には、車速を適宜調節するための変速ペダル12と、走行機体1を制動操作するためのブレーキペダル13とが配置されている。
【0017】
走行機体1の上面後部を覆うリヤカウル14上には運転座席15が設けられている。この運転座席15に座ったオペレータが操向ハンドル10を回動操作することにより、その操作量(回動量)に応じて左右の前車輪5の舵取り角(操向角度)が変わるように構成されている。運転座席15の左側には、後述するモア装置16を昇降操作するためのモア昇降レバー17が前後回動可能に設けられている。運転座席15の右側には、モア装置16を駆動または停止操作するためのPTOクラッチレバー18が前後回動可能に設けられている。
【0018】
リヤカウル14内には、静油圧式無段変速機(HST式)等を有するミッションケース19が配置されている。機体フレーム3,4の後部に前低後高形の傾斜部を形成し、機体フレーム3,4の傾斜部の前後幅の中間部にミッションケース19を支持している。ミッションケース19は、エンジン9からの動力をミッションケース19によって適宜変速して左右の後車輪6に伝達するように構成されている。機体フレーム3,4の傾斜部の後端部に、エンジン9に燃料を供給する燃料タンク20を搭載している。右機体フレーム4の傾斜部の外側に、ミッションケース19の静油圧式無段変速機69等に作動油を供給するオイルタンク21を搭載している。オイルタンク21と反対側で、燃料タンク20を挟むように、左機体フレーム3の傾斜部の外側に、エンジン9の始動等に用いるバッテリ22を搭載している。
【0019】
機体フレーム2の下面のうち左右両前車輪5と左右両後車輪6との間には、芝刈り用のモア装置16が前後のリンク杆23,24を介して昇降動可能に装着されている。モア装置16は、下向き開口椀状のモアケース25内に、水平回転可能な左右一対のロータリ刈刃(図示省略)を備えている。また、モアケース25の左右両側の前後には、下降時にモア装置16の高さを調節する4つの前後のゲージ車輪26,27が取付けられている。モアケース25の上面には、後向きに開口したダクト部28が設けられている。
【0020】
ダクト部28は、機体フレーム3,4の下面のうち左右両後車輪6の間に配置した排出ダクト29を介して走行機体1の後部に配置した集草ボックス30に連通している。集草ボックス30は、網状シートを四角箱形に張設して形成し、集草ボックス30の上面を防塵カバー31によって覆っている。モアケース25内のロータリ刈刃によって刈取られた芝草は、そのロータリ刈刃の起風によってダクト部28から排出ダクト29を介して集草ボックス30の内部に搬送され、モア装置16で刈取られた芝草が集草ボックス30に収集されるように構成している。
【0021】
次に、図1乃至図6を参照しながら、芝刈機の動力伝達系統について説明する。この実施形態の芝刈機では、エンジン9の回転動力の一部を左右両後車輪6に配分する二輪駆動方式が採用されている。
【0022】
すなわち、エンジン9の回転動力の一部は、当該エンジン9から前後外向きに突出する出力軸32の後端部から、前後両端に自在継手を備えた推進軸33と、ミッションケース19よりも前方の部位に配置した走行用伝動中継ケース34と、後述する無端入力ベルト35とを介して、ミッションケース19に伝達される。そして、このミッションケース19に左右外向きに突設した水平な後輪駆動軸36から、無端後輪駆動チェン37及びスプロケット38,39を介して走行機体1の後ろ寄り部位に設けた左右長手の車軸40に伝達される。その結果、車軸40の左右両端に取付けた後車輪6が回転駆動されることになる。
【0023】
他方、エンジン9の他の回転動力は、出力軸32の前端部から、PTO動力伝達用の無端PTO伝動ベルト41を介して、機体フレーム4の前部に軸支したPTO軸42に伝達される。次いで、このPTO軸42から、前後両端に自在継手を備えた中間軸43を介して、モアケース25の上面のうち機体フレーム4よりも右側の部位に配置したモア用ギヤボックス44に動力伝達される。その結果、モアケース25内の左ロータリ刈刃(図示省略)は平面視で時計方向に回転駆動し、右ロータリ刈刃(図示省略)は平面視で反時計方向に回転駆動し、左右ロータリ刈刃によって芝草を刈取りながら、刈取った芝草をモアケース25の左右幅の中央に集めてダクト部28から排出ダクト29に放出することになる。
【0024】
次に、図5及び図6を参照しながら、ミッションケース19及び走行用伝動中継ケース34の取付け構造及び動力入力構造について説明する。図6及び図7に示されるように、ミッションケース19の前部の左側は、左機体フレーム3の受け台45にボルト46にて締結する。同じく、ミッションケース19の前部の右側は、右機体フレーム4の受け台47にボルト48にて締結する。
【0025】
図6に示されるように、ミッションケース19の後部の左側及び右側に、左右の後輪駆動軸36をそれぞれ軸支するための左右の変速出力用の軸受部19aをそれぞれ突出し、左右の機体フレーム3,4の受け台49に左右の変速出力用の軸受部19aを各2本のミッション取付ボルト50にてそれぞれ締結する。即ち、排出ダクト29の上方で、排出ダクト29の上面に沿わせて前低後高形に走行機体1の機体フレーム3,4を傾斜させ、その機体フレーム3,4の前後方向の傾斜部の中間にミッションケース19を前低後高形(前傾形)に傾斜させて支持することになる。
【0026】
左の変速出力用の軸受部19aを締結する2本のミッション取付ボルト50のうち、ほかのミッション取付ボルト50よりも長尺に機体前方側のミッション取付ボルト50aを形成する。その機体前方側のミッション取付ボルト50aの頭部側に、後述するバネ取付け部51としての円筒体51a及び鍔体51bが被嵌されている。円筒体51aの外径より鍔体51bの外径を大きく形成している。
【0027】
なお、ミッション取付ボルト50aの頭部と、左の変速出力用の軸受部19aとの間に、円筒体51a及び鍔体51bを挟むように、軸受部19aがミッション取付ボルト50aによって締結される。即ち、円筒体51a及び鍔体51bは、左の変速出力用の軸受部19aとともに、ミッション取付ボルト50aによって受け台49に締結されることになる。
【0028】
一方、図6に示されるように、左右の機体フレーム3,4に左右の連結ブラケット2bをボルト53にてそれぞれ締結し、左右の連結ブラケット2bにパイプ形の横桟フレーム2aの両端部を一体的に連結する。走行用伝動中継ケース34の前面側は、横桟フレーム2aに固着した受け台52に2本のボルト54にて締結されている。また、走行用伝動中継ケース34の底部は、端面が四角パイプ形の左機体フレーム3の内側の側面に2本のボルト55にて締結されている。即ち、機体フレーム3,4の前後方向の傾斜部の前端側(傾斜下端側)に、前傾形(前低後高形)に傾斜させた姿勢で、走行用伝動中継ケース34が支持されることになる。
【0029】
図5及び図6に示されるように、伝動中継ケース34の前面で前側方に中継入力軸56を突出し、推進軸33の後端側にこの自在継手33aを介して中継入力軸56を連結する。伝動中継ケース34の上面に上向きに中継出力軸57を突出し、その中継出力軸57に、エンジン9の動力を伝える中継プーリ58を被嵌する。中継入力軸56と中継出力軸57とは、伝動中継ケース34に内蔵したベベルギヤ(図示省略)等を介して連結されている。
【0030】
また、ミッションケース19の上面に上向きに変速入力軸59を突出し、その変速入力軸59に、空冷ファン60を有する変速入力プーリ61を被嵌する。中継プーリ58と変速入力プーリ61とは、機体フレーム3,4と略平行な平面上に配置されることになる。
【0031】
中継プーリ58と変速入力プーリ61との間に、テンションローラ62を介してVベルト形の入力ベルト35が張設されている。テンションアーム64の先端側の上面に支点軸体64aを上向きに突出し、支点軸体64aにテンションローラ62を回転自在に軸支する。テンションアーム64の基端側は、中継出力軸57回りに回動可能に伝動中継ケース34に軸支されている。中継プーリ58の下方側でテンションアーム64が中継出力軸57回りに回動することになる。
【0032】
テンションアーム64の下面側に下向きに係止軸体65を突出し、係止軸体65にテンションバネ66の一端側のバネフック66aを連結する。上述した円筒体51a及び鍔体51bを有するバネ取付け部51にテンションバネ66の他端側のバネフック66bを連結する。バネフック66bは円筒体51aに係止される。バネフック66bが円筒体51aから離脱するのを鍔体51bにて阻止され、バネ取付け部51にテンションバネ66が係止維持されることになる。なお、テンションバネ66は引張バネにて形成している。
【0033】
上記の構成により、テンションバネ66は、側面視において、左の機体フレーム3と入力ベルト35との間で、左の機体フレーム3及び入力ベルト35と略平行に延設されている。また、テンションバネ66は、平面視において、左の機体フレーム3及び入力ベルト35と交叉する方向に延設されている。そして、テンションバネ66によって入力ベルト35にテンションローラ62が圧接されて、入力ベルト35の緊張力が設定値に維持され、エンジン9からの動力が、伝動中継ケース34及び入力ベルト35を介して、ミッションケース19に伝えられる。したがって、ミッションケース19の後輪駆動軸36から変速された走行駆動力が出力され、その走行駆動力によって後車輪6が駆動されて、走行機体1が前進または後進方向に移動する。
【0034】
図1、図6に示されるように、走行機体1の下面側に配置した草刈部としてのモア装置16と、走行機体1の後方に配置した集草部としての集草ボックス30との間に、刈取った芝草を搬送するための排出ダクト29を延設し、排出ダクト29の上方で前低後高形に傾斜させた走行機体1に、ミッションケース19を前低後高形に傾斜させて支持し、ミッションケース19の前側方の走行機体1に走行用伝動中継ケース34を配置し、走行用伝動中継ケース34の上面に上向きに突出した中継出力軸57に、エンジン9の動力を伝える中継プーリ58を取付け、ミッションケース19の上面に上向きに突出した変速入力軸59に、変速入力プーリ61を取付けた構造であって、中継出力軸57回りに回動可能なテンションアーム64にテンションローラ62を配置し、テンションアーム64にテンションバネ66を連結し、変速入力プーリ61と中継プーリ58との間に、テンションローラ62を介して変速入力ベルト35を張設したものであるから、排出ダクト29の上方にミッションケース19をコンパクトに配置でき、且つ走行機体1にミッション取付ボルト50aを介してテンションバネ66を高剛性に支持できる。
【0035】
しかも、上記の構成により、エンジン9の動力を1本の推進軸33にてミッションケース19に伝達するものでありながら、排出ダクト29の通風断面積(上下幅寸法及び左右幅寸法)を所定の大きさに確保できるように、ミッションケース19を走行機体1の高い部位に配置した状態で、伝動中継ケース34の上下伝達寸法だけ推進軸33を低く配置できるから、エンジン9とミッションケース19との間で、運転座席15に座乗姿勢のオペレータが足を載せる走行機体1の床面(ステップ)の下方に推進軸33を配置しても、走行機体1の床面(ステップ)を低く形成できる。したがって、ミッションケース19への動力伝達機構を簡単に構成することと、走行機体の左右幅の中央部に大きな排出ダクト29を配置して刈取り芝草の後方への排出を円滑にすることと、且つオペレータが運転座席15に簡単に乗降することを、同時に達成できる効果がある。
【0036】
また、ミッションケース19に内蔵した無段変速機69には、上述したオイルタンク21内の作動油がチャージ油管70を介して供給される。また、その無段変速機69の入力側(後述する油圧ポンプ102)の回転の有無に関らず、無段変速機69の出力側(後述する油圧モータ103)の回転を略零に維持するためのバイパス切換アーム71がミッションケース19の上面に配置されている(図6参照)。即ち、バイパス切換アーム71の切換操作によって無段変速機69の入力側(油圧ポンプ102)を短絡し、無段変速機69の出力側(油圧モータ103)を無負荷にできる。
【0037】
バイパス切換アーム71には、バイパス切換アーム71を切換操作するバイパス切換レバー72の一端側が連結されている。バイパス切換レバー72の他端側は、左右の機体フレーム3,4の間で、それらの後端部に延設されている(図6参照)。例えば燃料タンク20の燃料がなくなる等の故障により、エンジン9の動力によって後車輪6を駆動できない状態になった場合、走行機体1から集草ボックス30を取外し、オペレータがバイパス切換レバー72を引き操作し、バイパス切換アーム71を切換えて、ミッションケース19内の無段変速機69を無負荷状態に保ち、オペレータが走行機体1を押して移動できる。
【0038】
なお、オペレータがバイパス切換レバー72を押し操作し、バイパス切換アーム71を初期位置に戻すことにより、ミッションケース19内の無段変速機69を運転状態に復帰できる。
【0039】
図7は本実施形態の作業車両の油圧回路104を示し、エンジン9の回転力により作動するチャージ用油圧ポンプ105を備える。チャージ用油圧ポンプ105は、集草ボックス30昇降用の複動式の昇降油圧シリンダ106に作動油を供給するための昇降用油圧切換弁107に接続している。したがって、オペレータが集草ボックス昇降レバー108を操作して、昇降用油圧切換弁107を切換えて、昇降油圧シリンダ106を作動させることにより、集草ボックス30が上昇して内部の草を放出する一方、集草ボックス30が下降してモア装置16で刈取った草を投入する位置に支持されることになる。
【0040】
図7に示すように、上述した油圧無段変速機69の可変容量形の変速用油圧ポンプ102と、この油圧ポンプ102から吐出される高圧の作動油にて作動する定容量形の変速用油圧モータ103とは、閉ループ油路109を介してそれらの吸入側及び吐出側が接続されている。前記エンジン9の動力にとって駆動される変速用油圧ポンプ102の斜板110を、変速ペダル12にて角度調節することにより、変速用油圧モータ103を介して駆動される主変速出力軸111の回転数が変更される。したがって、主変速出力軸111を介して駆動される後車輪6の回転速度が変更されることになる。
【0041】
上述した油圧回路104には、図7に示すように、リリーフ弁やオイルフィルタ、チェック弁等を備えている。チャージ用油圧ポンプ105の吸入側には、低圧チャージ油路112を介して、作動油タンクとしてのオイルタンク21の内部のストレーナ113を接続している。チャージ用油圧ポンプ95の吐出側には、補給用リリーフ弁114、及び戻し用リリーフ弁115を配置した高圧チャージ油路116が接続されている。高圧チャージ油路116は、補給用リリーフ弁114、及び前進補充用のチェック弁117、及び後進補充用のチェック弁118等を介して、閉ループ油路109に接続されている。
【0042】
即ち、エンジン9を作動中、チャージ用油圧ポンプ102からの作動油が閉ループ油路109に常に補充されることになる。また、チャージ用油圧ポンプ105から閉ループ油路109に供給するためのチャージ油路116の作動油が余った場合、チャージ油路116の作動油が戻し用リリーフ弁115を介してオイルタンク21に戻されることになる。なお、昇降用油圧切換弁107のタンクポートが、戻し用リリーフ弁115に、並列状のラインフィルタ119、及びリリーフ弁120を介して接続され、昇降用油圧切換弁107からの作動油は、ラインフィルタ119を介してオイルタンク21に戻されることになる。
【0043】
一方、閉ループ油路109には、変速用油圧ポンプ102の吸入側及び吐出側、変速用油圧モータ103の吸入側及び吐出側を短絡するためのバイパスバルブ121を接続している。上述したバイパス切換レバー72を前方に押し操作した場合、変速用油圧ポンプ102の吸入側及び吐出側、変速用油圧モータ103の吸入側及び吐出側を遮断する状態(図7のバイパスバルブ121の状態)にバイパスバルブ121を切換え、変速用油圧ポンプ102と変速用油圧モータ103とを走行駆動状態に接続することになる。一方、バイパス切換レバー72を後方に引き操作した場合、変速用油圧ポンプ102の吸入側及び吐出側、変速用油圧モータ103の吸入側及び吐出側を短絡する状態にバイパスバルブ121を切換え、変速用油圧モータ103を自由回転状態(無負荷で回転する状態)に保つことになる。
【0044】
即ち、燃料不足等によってエンジン9の動力を利用して後車輪6を駆動することができない場合、集草ボックス30を取外して、機体フレーム3,4の後方に作業者が位置し、バイパス切換レバー72を後方に引き操作した状態で、作業者が機体フレーム3,4を押して移動させることになる。この場合、変速用油圧ポンプ102が停止した状態で、変速用油圧モータ103が殆ど無負荷で自由に回転するから、機体フレーム3,4を押すための作業者の労力を軽減できる。
【0045】
次に、図8乃至図11を参照して、変速ペダル12の構造について説明する。図8及び図9に示されるように、右機体フレーム4に、円筒状のペダル軸受体161を溶接にて一体的に固着する。ペダル軸受体161に円筒状の変速ペダル軸162を貫通する。変速ペダル軸162にブレーキペダル軸163を貫通する。即ち、ブレーキペダル軸163に変速ペダル軸162を被嵌し、変速ペダル軸162にペダル軸受体161を被嵌し、右機体フレーム4にペダル軸受体161を固着している。右機体フレーム4に略直交する方向に変速ペダル軸162及びペダル軸受体161を延長する。
【0046】
図9及び図10に示されるように、変速ペダル12は、ペダルアーム12aと、平面視L形状の足踏み板12bと、矩形平板状の合成樹脂製の前進側滑り止め体164と、矩形平板状の合成樹脂製の後進側滑り止め体165とを有する。ペダルアーム12aに足踏み板12bの裏面を熔接にて一体的に固着する。右機体フレーム4から機体外方に向けて突出させた変速ペダル軸162の一端側に、ペダルアーム12aを熔接にて一体的に固着する。足踏み板12bのL形状の一端側(左右方向の延長端部)の表面に、前進側滑り止め体164を接着剤にて接着する。足踏み板12bのL形状の他端側(前後方向の延長端部)の表面に、後進側滑り止め体165を接着剤にて接着する。なお、前進側滑り止め体164、及び後進側滑り止め体165は、略同一形状の成形金型を利用して製作し、略同一形状に形成する。
【0047】
図8及び図9に示されるように、右機体フレーム4から機体内方に向けて突出させた変速ペダル軸162の他端側に、変速リンク機構166を介して、右機体フレーム4に回動可能に軸支した変速中継軸167を連結する。上述した無段変速機69のトラニオン操作アーム168に、トラニオン操作リンク機構169を介して中継軸167を連結する。
【0048】
上記の構成により、オペレータが前進側滑り止め体164または後進側滑り止め体165を足踏み操作することにより、トラニオン操作アーム168が作動して、上述した油圧ポンプ102の斜板110の角度が正転側または逆転側に無段階に変更され、油圧モータ103が正転(前進回転)または逆転(後進回転)し、無段階に変速された前進出力または後進出力が油圧モータ103から後車輪6に伝えられる。したがって、無段変速機69の前進出力または後進出力によって後車輪6が駆動されることにより、走行機体1が前進移動または後進移動することになる。
【0049】
なお、図8及び図9に示されるように、右機体フレーム4から機体外方に向けて突出させたブレーキペダル軸163の一端側に、ブレーキ用足踏み板13aを配置する。右機体フレーム4から機体内方に向けて突出させたブレーキペダル軸163の他端側に、ブレーキリンク機構170を介して、ミッションケース19内の左右のブレーキ(図示省略)の操作部を連結する。オペレータがブレーキ用足踏み板13aを足踏み操作することにより、左右の後車輪6が制動されることになる。
【0050】
次に、図8乃至図11を参照して、本発明の実施形態について説明する。図9及び図10に示されるように、変速ペダル12の足踏み板12bの上面(表面)の前進側滑り止め体取付け部171及び後進側滑り止め体取付け部172から、前進側突起173及び後進側突起174をそれぞれ突出させる。前進側突起173及び後進側突起174は、足踏み板12bの板金加工(プレス加工)にて形成する。前進側突起173及び後進側突起174は、前進側滑り止め体取付け部171及び後進側滑り止め体取付け部172に略直立(取付け部の表面に対して直角)状に立設されている。前進側突起173及び後進側突起174は、前進側滑り止め体取付け部171及び後進側滑り止め体取付け部172の表面に五角形の柱状に形成されている。
【0051】
前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165に、前進側突起173及び後進側突起174と相似形の嵌合孔175をそれぞれ形成する。各嵌合孔175は、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の対向する両面(表面と裏面)に貫通させている。各嵌合孔175に、前進側突起173及び後進側突起174を嵌め込む。即ち、前進側突起173及び後進側突起174に、各嵌合孔175を介して、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165をそれぞれ被嵌している。
【0052】
したがって、前進側突起173の外周面173b及び後進側突起174の外周面174bに各嵌合孔175の内面が当接し、前進側突起173の外周面173b及び後進側突起174に直交する方向の前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の変形が阻止されることになる。換言すると、各滑り止め体取付け部171,172と前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165との接合面の延長方向への前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の変形が、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165と、前進側突起173の外周面173b及び後進側突起174の外周面174bとの当接によって阻止される。そのように、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の変形が低減されることにより、各滑り止め体取付け部171,172から前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165を剥がす剥離力が、前進側突起173及び後進側突起174によって低減(減衰)される。
【0053】
その結果、各滑り止め体取付け部171,172から前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165が剥がれるのを防止できるものでありながら、各滑り止め体取付け部171,172に、滑り止め用として有効な比較的軟らかい材質の合成樹脂製の前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165を、簡単な交換作業によって、低コストに修理可能に、比較的弱い接着力の接着加工にて、接着できることになる。なお、前進側突起173及び後進側突起174は、五角形の柱状以外に、他の多角形柱状または多角形台形状などに形成してもよい。
【0054】
例えば、オペレータの靴底(足裏)が、前進側滑り止め体164または後進側滑り止め体165を踏んだ状態で、前進側滑り止め体164または後進側滑り止め体165の前後又は左右方向(滑り止め体取付け部171,172への前進側滑り止め体164または後進側滑り止め体165の接着方向に対して交叉する方向)に移動することにより、オペレータの靴底によって踏まれた前進側滑り止め体164または後進側滑り止め体165が、各滑り止め体取付け部171,172の表面の延長方向に変形した場合であっても、その前進側滑り止め体164または後進側滑り止め体165の変形力は、前進側突起173及び後進側突起174によって減衰されるから、各滑り止め体取付け部171,172から前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165が剥がれる剥離力が殆ど発生しない。
【0055】
即ち、滑り止め体取付け部171,172上の前進側滑り止め体164または後進側滑り止め体165を前後方向又は左右方向にずらせるように、オペレータの靴底が移動しても、滑り止め体取付け部171,172から前進側滑り止め体164または後進側滑り止め体165が剥がれる剥離力を、前進側突起173及び後進側突起174によって低減でき、各滑り止め体取付け部171,172から前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165が剥がれるのを防止できる。
【0056】
また、嵌合孔175は、扁平な形状の前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の略中央に形成されている。前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の足踏み操作によって変速出力される走行方向を表した矢印形に前進側突起173及び後進側突起174と嵌合孔175とを形成している。即ち、前進側突起173及び後進側突起174の先端側に、平面視で略五角形状の前進矢印形扁平面173a及び後進矢印形扁平面174aを形成している。なお、前進矢印形扁平面173a及び後進矢印形扁平面174aは、凹面形または凸面形に形成してもよく、五角形状の矢印形以外の他の矢印形に形成してもよい。
【0057】
したがって、変速ペダル12または前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165等に、走行方向(変速操作方向)を表示する指示手段を特別に設ける必要がない。また、前進側突起173及び後進側突起174は、印刷等の指示手段のように足踏み操作にて簡単に損傷することもない。即ち、前進側突起173及び後進側突起174と嵌合孔175とを利用することにより、オペレータが最も視認しやすい前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の表面に、走行方向(変速操作方向)を明確に表示できる。
【0058】
図10及び図11に示されるように、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の厚み寸法LHより、前進側突起173及び後進側突起174の高さ寸法Lhを小さく形成する。したがって、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の表面に対して、前進矢印形扁平面173a及び後進矢印形扁平面174aが、各嵌合孔175内に、略一定寸法LDだけ後退している。
【0059】
即ち、前進矢印形扁平面173a及び後進矢印形扁平面174aが各嵌合孔175の内部に配置されるから、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165が足踏み操作によって圧縮される方向に変形したり、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の上面側が若干摩耗した場合であっても、前進矢印形扁平面173a及び後進矢印形扁平面174aが、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の上面側に突出しないから、接触オペレータの足裏側(靴底)が前進矢印形扁平面173a及び後進矢印形扁平面174aに接触するのを防止できることになる。
【0060】
なお、変速ペダル12に代えて、ブレーキペダル13等に、前進側突起173及び後進側突起174のように、操作方向の矢印形状に形成した突起を設けて、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165を配置することもできることは云うまでもない。
【0061】
上記の記載及び図9、図10、図11から明らかなように、走行機体1に搭載されたエンジン9と、走行機体1に設けた走行部としての前車輪5及び後車輪6に前記エンジン9の動力を変速して伝えるミッションケース19と、オペレータが足踏み操作する運転操作用の変速ペダル12とを備えてなる走行車両において、変速ペダル12は、走行機体1に回動可能に組付けるペダルアーム12aと、オペレータが足を載せる足踏み板12bと、前記足踏み板12bの表面に接着する前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165とを有し、足踏み板12bの前進側滑り止め体取付け部171及び後進側滑り止め体取付け部172から前進側突起173及び後進側突起174を突出し、前進側突起173及び後進側突起174に前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165を被嵌したものであるから、前進側滑り止め体取付け部171及び後進側滑り止め体取付け部172と前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165との接合面の延長方向に前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165を変形させる変形力が、前進側突起173及び後進側突起174によって減衰される。
【0062】
即ち、前進側滑り止め体取付け部171及び後進側滑り止め体取付け部172から前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165を剥がす剥離力が前進側突起173及び後進側突起174によって低減され、前進側滑り止め体取付け部171及び後進側滑り止め体取付け部172から前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165が剥がれるのを簡単に防止できる。したがって、前進側滑り止め体取付け部171及び後進側滑り止め体取付け部172に、滑り止め用として有効な比較的軟らかい前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165を、簡単な交換作業によって、低コストに修理可能に、比較的弱い接着力の接着加工にて、固着できる。
【0063】
上記の記載及び図10、図11から明らかなように、ペダルアーム12aの前進側滑り止め体取付け部171及び後進側滑り止め体取付け部172の表面に、柱状の前進側突起173及び後進側突起174を略直角状に立設し、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の対向する両面に貫通した嵌合孔175に、前進側突起173及び後進側突起174を嵌め込むように構成したものであるから、簡単に加工可能な前進側突起173及び後進側突起174及び嵌合孔175によって、前進側滑り止め体取付け部171及び後進側滑り止め体取付け部172から前進側突起173及び後進側突起174が剥れるのを防止でき、且つ摩耗した前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165だけを簡単に交換して低コストに修理できる。
【0064】
上記の記載及び図10、図11から明らかなように、嵌合孔175から露出させる前進側突起173及び後進側突起174の表面を、前進矢印形扁平面173a及び後進矢印形扁平面174aに形成し、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の厚み寸法Lhより前進側突起173及び後進側突起174の高さ寸法Lhを小さく形成し、オペレータの足を載せる前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の表面に対して、前進側突起173及び後進側突起174の先端側の前進矢印形扁平面173a及び後進矢印形扁平面174aを後退させて配置したものであるから、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165が足踏み操作によって変形したり、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165が若干摩耗した場合であっても、オペレータの足裏側(靴底)が前進側突起173及び後進側突起174に接触するのを防止でき、ペダルの足踏み操作性を良好な状態に維持できる。
【0065】
上記の記載及び図8、図9、図10、図11から明らかなように、ミッションケース19の変速手段としての無段変速機69に変速ペダル12を連結した構造であって、扁平な形状の前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の略中央に嵌合孔175を形成し、前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の足踏み操作によって変速出力される走行方向を表した矢印形に前進側突起173及び後進側突起174及び嵌合孔175を形成したものであるから、変速ペダル12または前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165等に、走行方向(変速操作方向)を表示する指示手段を特別に設ける必要がなく、また印刷等の指示手段のように足踏み操作にて簡単に損傷することもなく、オペレータが最も視認しやすい前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165の表面に、走行方向(変速操作方向)を明確に表示できる。例えば変速ペダル12に前進側滑り止め体164及び後進側滑り止め体165等の複数の滑り止め体を配置する構造であっても、オペレータが足踏み操作する足踏み板12bの誤操作を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】芝刈機の全体側面図である。
【図2】同平面図である。
【図3】芝刈機の走行機体の側面図である。
【図4】同走行機体の平面図である。
【図5】同走行機体の後半部の拡大側面図である。
【図6】同走行機体の後半部の拡大平面図である。
【図7】油圧回路図である。
【図8】変速ペダルの平面説明図である。
【図9】図8の部分拡大平面説明図である。
【図10】図9のI―I線視断面説明図である。
【図11】図10の分解説明図である。
【符号の説明】
【0067】
1 走行機体
5 前車輪(走行部)
6 後車輪(走行部)
9 エンジン
12 変速ペダル
12a ペダルアーム
12b 足踏み板
19 ミッションケース
69 無段変速機(変速手段)
164 前進側滑り止め体
165 後進側滑り止め体
171 前進側滑り止め体取付け部
172 後進側滑り止め体取付け部
173 前進側突起
173a 前進矢印形扁平面
174 後進側突起
174a 後進矢印形扁平面
175 嵌合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行機体に搭載されたエンジンと、前記走行機体に設けた走行部に前記エンジンの動力を変速して伝えるミッションケースと、オペレータが足踏み操作する運転操作用のペダルとを備えてなる走行車両において、
前記ペダルは、前記走行機体に回動可能に組付けるペダルアームと、オペレータが足を載せる踏み板と、前記踏み板の表面に接着する滑り止め体とを有し、
前記踏み板の滑り止め体取付け部から突起を突出し、前記突起に前記滑り止め体を被嵌したことを特徴とする走行車両。
【請求項2】
前記滑り止め体取付け部に柱状の突起を立設し、前記滑り止め体の対向する両面に貫通した嵌合孔に前記突起を嵌め込むように構成したことを特徴とする請求項1に記載の走行車両。
【請求項3】
前記嵌合孔から露出させる前記突起の表面を扁平面に形成し、前記滑り止め体の厚み寸法より前記突起の高さ寸法を小さく形成し、オペレータの足を載せる前記滑り止め体の表面に対して、前記突起の先端側の扁平面を後退させて配置したことを特徴とする請求項2に記載の走行車両。
【請求項4】
前記ミッションケースの変速手段に前記ペダルを連結した構造であって、扁平な形状の前記滑り止め体の略中央に前記嵌合孔を形成し、前記滑り止め体の足踏み操作によって変速出力される走行方向を表した矢印形に前記突起及び前記嵌合孔を形成したことを特徴とする請求項3に記載の走行車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−316766(P2007−316766A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−143187(P2006−143187)
【出願日】平成18年5月23日(2006.5.23)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【Fターム(参考)】