説明

超伝導マグネットアセンブリを冷却するための装置及び方法

【課題】超伝導マグネットアセンブリを冷却する。
【解決手段】コイル巻型30を熱シールド26で取り囲み、該熱シールド26を真空リザーバ24内に配置し、超伝導マグネット32、34を該コイル巻型30の周りに位置決めし、冷媒リザーバ74をその内部に有する第2の真空リザーバ62と、その各々が気化器領域84及び凝縮器領域86を有する配管系を備えた2つの2相式熱伝達デバイス80B、80Aを提供し、該熱伝達デバイスの気化器領域84をコイル巻型30に熱接続し、超伝導マグネット32、34の2相式熱伝達デバイス80Aの気化器領域84を熱シールド26に対して熱的に接続し、冷媒リザーバ74に対してかつ両方の熱伝達デバイス80A、80Bの凝縮領域86に対してクライオクーラ70を熱的に接続する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は幾つかの態様において、その内容全体を参照により本明細書に組み込むものとする同時に提出された整理番号226910−1で指定された本願の所有者が所有する「APPARATUS AND METHOD OF SUPERCONDUCTING MAGNET COOLING」と題する出願番号12/415313の米国特許出願に関連する。
【0002】
本発明は、全般的には超伝導マグネットの冷却に関し、またさらに詳細には磁気共鳴撮像(MRI)アセンブリなどの超伝導マグネットアセンブリを冷却するための装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
様々なシステムは、その内部に対象(または、MRIシステムの場合では患者)を配置させる強力で均一な磁場を発生させるために超伝導マグネットを利用している。この際に、磁場傾斜コイルと無線周波数の送信及び受信コイルが対象内の磁気回転材料に影響を及ぼし、有用な画像の形成に使用できる信号を誘起させる。こうしたコイルを用いる超伝導マグネットアセンブリまたはシステムとしては、MRIシステム、分光システム、磁気エネルギー蓄積システム及び超伝導発電機が含まれる。
【0004】
図1は、コイル巻型120内に埋め込まれた超伝導マグネット122、熱シールド114、傾斜コイル108、RFコイル106、バッキングコイル124及びRFシールドをハウジング102の内部に含み得るような関連技術の典型的なMRIシステム100を部分的に切り欠いて表している。ハウジング102は、対象(例えば、患者)をその内部に配置させるようにする中央のボア104を含む。
【0005】
超伝導マグネット122及びバッキングコイル124は典型的には、プール沸騰モードまたは状態を創出させる冷媒118を包含したクライオスタット浴(例えば、ヘリウム容器)116内に浸漬させている。MRIシステム100はさらに、熱シールド114と、動作時にさらに超伝導マグネット122を環境から隔絶させている真空容器110により創出される真空領域112と、を含む。超伝導マグネット122はさらに、冷却のためにヘリウム容器118内部に埋め込まれたコイル巻き線を支持するためのコイル支持構造(例えば、コイル巻型120)を有する。ヘリウム容器118は典型的には、熱隔絶のために真空容器112内部に配置させた圧力容器であると共に、典型的には超伝導動作のための概ね4.2ケルビンの温度を維持させるように超伝導マグネット122に冷却を提供するための液体ヘリウムを包含している。
【0006】
超伝導マグネットを利用するあらゆるシステムに関する主要なコストの1つは、冷媒浴の提供に関するものである。ヘリウムや同様の冷媒(例えば、ネオン)は、超伝導マグネットの初期始動及び動作のため並びに該マグネットのプール沸騰状態での維持のための両方のために必要となる。全ヘリウム浴は、熱力学的に効率がよいが超伝導マグネットアセンブリで利用したときに概ね1,500〜2,000リットルという比較的大量のヘリウムを必要とする。さらに、MRIシステムを輸送する間に、数百リットル(例えば、600〜800リットル)のヘリウムがシステムからボイルオフするのが典型的である。ボイルオフした冷媒はシステムを動作させる前に補充しなければならない。ヘリウムは単位体積あたり高価であり、常に容易に取得できるわけではなくかつそのコストが上昇しつつある。
【0007】
コールドヘッドまたはクライオクーラ130が極低温で冷却パワーを提供する。2段式コールドヘッドの場合では、冷却器の冷却段で冷却パワーが直接提供される。典型的には、MRI産業で現在使用されている大部分のクライオクーラは主にGM冷却原理に従って動作している。MRI用途のクライオクーラは、第1段において40度ケルビンで50Wを、また第2段において4度ケルビンで1〜1.5Wを提供するのが典型的である。
【0008】
目下のコールドヘッド構成及び設計は幾つかの欠点を有する。クライオクーラは、MRIシステムの超伝導マグネットに近いためにこれから加えられる磁場を受けている。画像収集中にアーチファクトとして出現することがあるゴースト効果(ghosting effect)を回避するためには、クライオクーラ低温段(具体的には、クライオクーラ内部で移動するピストン)を磁気シールドしなければならない。このことは費用が高くつくことが分かっている。さらにクライオクーラのモータ駆動部分(複数のこともある)も、クライオクーラが故障せずに適正に動作できるように保証するために厚手の金属製磁気シールドを必要とする。これもまた出費が大きい。クライオクーラは典型的には、垂直、ほぼ垂直あるいは水平の向きで動作させる。クライオクーラの耐久性問題からすると垂直方向が好ましいが、この向きでは設計において部屋の高さの問題が生じる。クライオクーラの長さはかなり長いため、メンテナンス(例えば、交換除去)のためにクライオクーラを据付箇所から取り外す際に、点検除去を可能にするためにMRIシステムの上側の天井高をクライオクーラの長さ分だけ追加しなければならない。このため垂直またはほぼ垂直方向のクライオクーラを有するMRIシステムでは天井高がかなり高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許出願第20070101742号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、メンテナンス及び/または冷却のエリアを含む超伝導マグネットアセンブリの全体設計の改良に対する目下の要請が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、超伝導マグネットを冷却するのに必要な冷媒量の低減を含む超伝導マグネットアセンブリ並びに超伝導マグネットアセンブリの製造方法を提供することによって上述の欠点のうちの少なくとも幾つかを克服している。より具体的に本発明の一実施形態は、クライオクーラの箇所を超伝導マグネットアセンブリの構成及び箇所から隔絶させることを可能にした冷却用の2相式熱伝達デバイス(例えば、パルス動作型(pulsating)ヒートチューブ)を利用し、これによりシステムの全体設計、据え付け、動作及びメンテナンスを簡略化した超伝導マグネットアセンブリを提供することを目的とする。
【0012】
したがって本発明の一態様の超伝導マグネットアセンブリを製造する方法は、第1の真空リザーバの周りに構成されたハウジングを提供する工程と、コイル巻型を形成する工程と、該コイル巻型を熱シールドで取り囲む工程と、該熱シールドを第1の真空リザーバ内に配置する工程と、対象を受け容れるための中心コアの周りに構成された超伝導マグネットをコイル巻型の周りに位置決めする工程と、冷媒リザーバをその内部に有する第2の真空リザーバを提供する工程と、その各々が気化器領域及び凝縮器領域を有する配管系を備えた第1の2相式熱伝達デバイス及び第2の2相式熱伝達デバイスを提供する工程と、第1の2相式熱伝達デバイスの気化器領域をコイル巻型と超伝導マグネットのうちの一方にかつ第2の2相式熱伝達デバイスの気化器領域を熱シールドに熱的に接続する工程と、第1及び第2の2相式熱伝達デバイスの冷媒リザーバに対してかつ凝縮領域に対してクライオクーラを熱的に接続する工程と、を含む。
【0013】
本発明の別の態様による超伝導マグネットアセンブリは、第1の真空リザーバをその内部に包含したハウジングであってその内部にさらにコイル巻型を包含したハウジングと、対象を受け容れるように構成された中心コアの周りのコイル巻型の内部またはこれに隣接して配置された複数のマグネットと、冷媒リザーバをその内部に有する第2の真空リザーバと、該第2の真空リザーバ内にありかつ冷媒リザーバと熱的に連絡させた2相式クライオクーラと、液体及び蒸気冷媒をその内部に包含した配管系を備えた2相式熱伝達デバイスであって、該配管系はコイル巻型と複数のマグネットのうちの一方と熱的に連絡させた該2相式熱伝達デバイスの気化器領域と冷媒リザーバと熱的に連絡させた該2相式熱伝達デバイスの凝縮器領域とを含む2相式熱伝達デバイスと、を含む。
【0014】
本発明の別の様々な特徴及び利点については以下の詳細な説明及び図面から明らかとなろう。
【0015】
図面では、本発明を実施するために目下のところ企図されている一実施形態を図示している。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】関連技術の磁気共鳴撮像(MRI)アセンブリの部分切り欠き立面図である。
【図2】本発明の一実施形態による超伝導マグネットアセンブリ及び冷却システムの部分切り欠き図である。
【図3】本発明の一実施形態によるパルス動作型ヒートパイプの切り欠き図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の態様は、超伝導マグネットの冷却に関して従来の方法と比べて利点を提供することが分かった。本装置及び方法は超伝導マグネットを冷却する際に機械的な可動部を必要としない(例えば、ポンプを必要とせず、外圧フィード式の供給システムを必要とせず、冷媒供給のために冷蔵「コールドボックス(coldbox)」を必要とせず、ヘリウムの缶フィード式フロー(can−fed flow)その他を必要としない)。本冷却方法は向きに依存せず、超伝導マグネットアセンブリの設計及び最終的な物理的体積やフットプリントにおいて支援となる。配管系を既存の超伝導マグネットの幾何学構造内に組み入れる設計が簡略化される。さらに、ホットスポットが生ずることがあっても、本発明の態様で利用するパルス動作型ヒートパイプ(複数のこともある)が提供する脈動性のスラグ流によってこれを修復することが可能である。本設計によれば、費用がかさむヘリウム浴冷却を必要とせず、またクエンチ中に冷媒が全く失われることがないという別の利点も提供される。提唱した細管配管系は数百バールという高い圧力に耐えることが可能である。そのためにヘリウムリザーバは必要でない。ヘリウムリザーバ及びその冷媒ハウジングがないことは、準拠を要する安全面のすべてについて大幅に軽減されるという点において大きな簡略化となる。さらに、標準的なヘリウム容器に典型的な従来の垂直ネックまたは貫通幾何学構造がないため、マグネットに対する熱負荷が大幅に低減され最小化される。アクセスポート及び/または貫通孔はマグネットに対して高熱をリークさせる元になることが知られている。改良型設計の望ましい成果は、マグネットの利用可能な常温ボア幅を増大できることである。さらに、ヘリウム容器を真空容器内に浮いた状態に保持するために必要な懸架システムもまた簡略化されかつ熱リークが減少する。本発明の態様は、クライオクーラに関して別の利点を提供する。クライオクーラが遠隔式に配置及び/または位置決めできるという点で、クライオクーラの設計及び構成を大幅に簡略化することができる。その結果、クライオクーラの新たな配置のために音響ノイズが大幅に低減または排除される。クライオクーラ上及びクライオクーラ駆動器の周りの磁気シールドはもはや必要がない。こうして垂直方向がより簡単に得られるためクライオクーラの寿命が向上する。クライオクーラを床面に配置できるため、クライオクーラに対するサービスがより容易である。さらにより天井高が低い室内にMRIシステムを据え付けることが可能である。最終的に超伝導マグネットシステムの冷却システム並びにそのメンテナンスが大幅に簡略化された上に改良される。
【0018】
図2を参照すると、本発明の一実施形態による超伝導マグネットシステム10を表している。システム10は、第1の真空リザーバ24及び第2の真空リザーバ62を有する超伝導マグネットアセンブリ20を含む。第1の真空リザーバ24をハウジング22または外側真空ケースが画定している。第1の真空リザーバ24の内部には熱シールド26がある。熱シールド26はさらに、その内部でコイル巻型30が熱シールド26により取り囲まれるように位置決めされる真空空間28を画定している。コイル巻型30は、その内部に埋め込まれたかつ/またはこれに取り付けられた複数のマグネット32、34を有する。マグネット32、34は最終的に、対象(例えば、MRIシステムの患者)を受け容れるように中心コアの周りに構成されている。この方式により本発明の一実施形態による超伝導マグネットアセンブリ20が構成される。
【0019】
コイル巻型30は、超伝導マグネット32、34を概ね4度ケルビンに到達できるような適当な任意の熱伝導性材料から製作されることがある。コイル巻型30は、ガラス繊維強化プラスチック、複合材料、金属(例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、マグネシウム、その他)、セラミック類、またはこれらの組み合わせなど適当な任意の材料から製作されることがある。本発明の実施形態は、コイル巻型30がその内部に導電性材料(例えば、銅編組、その他)を埋め込む必要がないように構成される。その結果、これら導電性材料の幾つかの追加に起因するコイル巻型30の劣化(例えば、熱クラック形成、その他)が軽減及び/または回避される。このためにさらに設計面でも、コイル巻型30を横断させる熱伝導傾斜を従来の設計ほど大きくする必要がない。
【0020】
第2の真空リザーバ62を画定する真空エンベロープ60はその内部に冷媒リザーバ74を含む。冷媒リザーバ74は冷媒76を保持している。エンベロープ60のスリーブ72内部にクライオクーラ70が配置されており、このクライオクーラ70の一部が冷媒リザーバ74と熱的に接続されるようにしている。クライオクーラ70は、メンテナンス(例えば、除去、コールドヘッド交換、その他)を支援するためにスリーブ72に対して着脱可能に接続させることがある。クライオクーラ70は、適当な任意のクライオクーラ70または冷却機構とすることができる。冷媒76は、例えばヘリウム4、ヘリウム3、水素、ネオン、窒素、酸素、アルゴン、クリプトン及びこれらの組み合わせを含む適当な任意の冷媒とすることができる。冷媒リザーバ74は、本明細書で検討するような冷媒76及び2相式熱伝達デバイス80の冷却を支援するフィンタイプの熱交換器210を包含することがある。
【0021】
さらに図3を参照すると、マグネット32、34の冷却はその一部が、2つ以上の2相式熱伝達デバイス80を用いて提供される。パルス動作型ヒートパイプとし得るような熱伝達デバイス80は、配管系82と、気化領域/部分84及び凝縮器領域/部分86と、を含む。図2に示すように第1の2相式ヒートパイプ80Aは、その気化領域84を熱シールド26に熱的に接続するように、かつその凝縮器領域84を第2の真空領域62に配置させたクライオクーラ70に熱的に接続するようにして位置決めされる。同様に、第2の2相式ヒートパイプ80Bは、その気化領域84をコイル巻型30とマグネット32、34のうちの一方に熱的に接続するように、かつその凝縮器領域86を冷媒リザーバ74に熱的に接続するようにして位置決めされる。
【0022】
冷媒リザーバ74に対しては、冷媒コンテナ202及び充填チューブ204からなる冷媒供給システム200が接続される。クライオクーラ70は冷媒コンテナ202から到来する冷媒ガスをリザーバ74内で液化させる。この方式では例えばクールダウン中において、冷媒76の適当な液レベルがリザーバ74内において適当に維持されることがある。第2の2相式ヒートパイプ80Bの凝縮器領域86は、リザーバ74内の熱交換器210内及び/またはこれに隣接して位置決めされることがある。別法として、第2の2相式ヒートパイプ80Bの凝縮器領域86は、リザーバ74の下側及び/またはリザーバ74の外側に隣接して位置決めされることがある。いずれの場合でも、2相式ヒートパイプ80内に包含される冷媒90、92が概ね4度ケルビンまで冷却される。さらに、第1の2相式熱伝達デバイス80Aの気化領域84は熱シールド26の内部表面を概ね40〜概ね70ケルビンの範囲まで冷却させることがあり、また第2の2相式熱伝達デバイス80Bの気化領域84はコイル巻型30を概ね4ケルビンまで冷却させることがある。
【0023】
液体冷媒90及び蒸気冷媒92は配管系82内に配置されている。マグネット32、34に対して適当な熱的冷却を提供するために、液体冷媒90と蒸気冷媒92を一定の百分率で配管系82内に配置させている。パルス動作型ヒートパイプ80を有効に動作させるためには、液体冷媒90により配管系82の総体積を約10%〜約90%の百分率で満たすことができる。これに対して蒸気冷媒92は、配管系82の総体積のうちその総体積の残余(すなわち、約90%〜約10%の範囲)の百分率を満たすことになる。配管系82内にはヘリウム4、ヘリウム3、水素、ネオン、窒素、酸素、アルゴン、クリプトン及びこれらの組み合わせを含む適当な任意の冷媒90、92を用いることができる。この方式では、液体冷媒90(すなわち、液体「スラグ」)と蒸気冷媒92(すなわち、「バブル」)がパルス動作型で移動することによってマグネット32、34及び熱シールドに対する優れた冷却が提供される。第1の2相式熱伝達デバイス80Aは熱シールド26の内部表面を約50ケルビンまで冷却させることが可能である。第2の2相式熱伝達デバイス80Bはコイル巻型30及び/またはマグネット32、34を約4ケルビンまで冷却させることが可能である。
【0024】
パルス動作型ヒートパイプ80(例えば、配管系82)は、マグネットを先ず熱シールド温度の近くまで冷却することによって液体冷媒で部分的に満たされる。次いで配管系82には室温から高圧気体が充填される。クライオクーラ70は配管系82内に入る気体を間接式に液化しており、これにより配管系82内の気体圧力が大幅に低下されると共に冷媒の液滴が生成される。配管系82やその他のシステム構成要素にパルス動作型ヒートパイプ80の役目をさせるために、冷媒で満たすのは配管系82の全体体積未満とすることがある。したがって、配管系82の体積の一部分が液体冷媒90で満たされる一方、残りの部分は依然としてその内部に蒸気冷媒(例えば、冷媒バブル92)を有している。この液体冷媒は、ヘリウム4、ヘリウム3、水素、ネオン、窒素、酸素、アルゴン、クリプトン及びこれらの組み合わせのうちの1つを含むことがある。別の実施形態ではそのマグネットに使用される超伝導体の種類に応じて適当な別の冷媒が使用されることがある。別法としてその配管系82は高圧力気体下で事前充填(pre−charged)されることがある。
【0025】
パルス動作型ヒートパイプ80の配管系82部分内にある液体90と蒸気92の冷媒からなる様々な混合体は、超伝導マグネットアセンブリ20から発生した熱を放散するように作用することが分かっている。例えばある種の実施形態では、配管系82の総体積に対する液体冷媒の比を約10%〜約90%の範囲とすることができる。同様に別の実施形態では、配管系82の総体積に対する液体冷媒の比を約30%〜約70%の範囲とすることができる。配管系82の総体積の残余(すなわち、液体冷媒で満たされない部分)は蒸気冷媒(例えば、冷媒バブル92)で満たされる。したがって、蒸気冷媒が配管系82の総体積を満たす百分率は約90%〜約10%の範囲となることがある。別の実施形態では、配管系82の総体積に対する蒸気冷媒の比を約70%〜約30%の範囲とすることができる。この方式では、液体冷媒と蒸気冷媒の混合体が超伝導マグネットアセンブリ20を冷却する作用をする。
【0026】
図2及び3では1つの単独の曲がりくねった閉鎖系パターンとして配管系82を図示しているが、本発明の実施形態による配管系82は多種多様な構成で配列させることが可能である。配管系82は、閉ループ系でも開ループ系でも配列させることができる。閉ループすなわち閉鎖系は、それ自身と(例えば、端同士を)接続させた配管系82であると定義する。開ループすなわち開放系は、それ自身と接続させない配管系82であると定義する。配管系82は、単一の管82からほぼ無限に多くの数の単独の管82までの範囲で任意の数の個別の管82(すなわち、細管)とすることがある。複数の管82を有する実施形態では、これら管82のすべてを閉鎖型とすること、すべてを開放型とすること、あるいはこれら両者の組み合わせとすることができる。さらに各管40の幾何学構成は、気化器領域84から凝縮器領域86まで延びる真っ直ぐな管82から、複数の周回88をその内部に有する配管系82まで、様々とすることができる。配管系82は、整然とした曲がりくねった水平な(あるいは、若干傾斜した)パターン(図3参照)で配列させることがある。これに対して、超伝導マグネットアセンブリ20に対して依然として適当な冷却手段を提供する一方で、反復がなく、非対称なかつ/または非平面性の配列で配管系82を配列させることがある。本発明の態様の利点の1つは、配管系82の幾何学構成及び配列を重力及び向きから全体として独立とし得ることである。換言すると、パルス動作型ヒートパイプ80及び配管系82の重力及び向きは、パルス動作型ヒートパイプ80内の液体及び蒸気冷媒のフロー及び冷却性能に実質的に影響を与えないことが分かっている。配管系82は例えば、実質的に水平、実質的に垂直、またはこれらの組み合わせとすることがある。いずれの場合にも配管系82の幾何学構成は、配管系82を熱的に接続させる相手の超伝導マグネットアセンブリ20のコイル巻型30やその他の要素に対してはめ込みかつ整合させるように適合させかつ配列させることがある。これによって、冷却機構が典型的には追加的な及び/または大きな設計空間を必要としないという点で超伝導マグネットアセンブリ20全体の製造サイズ及び配列の柔軟性が上昇する。
【0027】
パルス動作型ヒートパイプ80に関する全配管系82の総体積は、超伝導マグネットアセンブリ20のサイズ及び用途に応じて概ね10ml〜概ね2リットルの範囲となることがある。配管系82は、銅やその合金、アルミニウムやその合金、ステンレス鋼、その他など適当な任意の材料から製作されることがある。別法として配管系82は、内部被覆の細管または成形式の配管系82とすることがある。配管系82の内径は概ね1mm〜概ね8mmの範囲とすることがある。同様に配管系82の直径は、配管系82の全体長にわたって均一とする必要はなく、その長さ全体にわたって様々することがあり得る。例えば凝縮部分での配管系82の直径は、冷媒のフロー速度を減速させるためにパルス動作型ヒートパイプ80の別の部分より狭くさせることがある。同様に配管系82の断面は正方形、矩形、長円形その他など別の形状とすることもあり得る。さらに、配管系82の断面形状は配管系82の長さ全体にわたって様々とすることができる。気化器部分84についても様々な構成を利用することができる。気化器部分84は、図2に示すように、1つの単純なエポキシ製コイル巻型だけを必要とすることがある。このため、従来技術設計で使用されるような充填剤を用いてコイル巻型30の熱伝導率を上昇させることは必要でない。エポキシ材料、複合材その他を開発するために過去においてかなりの努力がなされてきたが、高熱伝導率充填剤を用いてもこれらの努力はコイル巻型の熱分散性能を上昇させるために限定された成果しか得られていない。こうした方式はすべてシステムのコストを増大させる一方、さらに重要なことにコイル巻型上に応力を引き込むリスクを上昇させる。コイル巻型はクラックを起こす可能性があり、またマグネットを急速に温度低下や温度上昇させるとこのクラック(複数のこともある)がさらに伝播する可能性がある。エポキシのクラックのために超伝導マグネットが不良となることもないわけではない。本発明の態様では、熱分散機構の必要性が全く排除される。
【0028】
一実施形態ではコイル巻型30に対して、例えば始動時に窒素予冷却を提供する支援とするために、予冷却ループ36やその他適当な予冷却配管システムが熱的に接続される。別の実施形態では、熱シールド26に追加の予冷却ループ36を熱的に接続させることがある。予冷却ループ(複数のこともある)36はデュワー(図示せず)やその他の適当な手段を介して冷媒を提供することがある。この予冷却ループは、窒素、ネオン、水素、あるいは適当な別の冷媒または冷媒混合体を介して冷却されることがある。
【0029】
別の実施形態では、熱シールド26を全く存在させないことがある。さらにこのアセンブリは、上で80Bと名付けた2相式熱伝達デバイスと同様の単一の2相式熱伝達デバイスだけを含むことがある。この実施形態では、熱シールド26の位置及び/またはその近くに構成させる2相式熱伝達デバイスが省略される。
【0030】
第1の真空リザーバ24及び第2の真空リザーバ62は単一の隣り合った共有真空領域とすることがある。別法としてその第1の真空リザーバ24及び第2の真空リザーバ62は図2に示すように実質的に分離させることがある。例えば第2の真空リザーバ62は第1の真空リザーバ24から数フィート離して配置させると有利であることがある。実施形態ではその第2の真空リザーバ62は第1の真空リザーバ24から全体的に遠くにあることがある。この構成によればマグネット32、34に対して、本明細書で検討したような有害な影響を生じるおそれがなくクライオクーラ70のシステム10からの取り外しが支援されることがある。さらに別法としてその第1の真空リザーバ24及び第2の真空リザーバ62は単独の真空リザーバとするが、互いに直ぐ隣接して配置させることがある。
【0031】
図2に示したように、2相式熱伝達デバイス80A、80Bの一部分はその内部が真空222となった真空チューブ220内に入れ、これによりその内部の冷媒90、92の冷却を支援することがある。真空チューブ220は2相式熱伝達デバイス80A、80Bのうちの第1の真空リザーバ24及び第2の真空リザーバ62の外部にある部分に沿って延びることがある。別法としてその真空チューブ220は、2相式熱伝達デバイス80A、80Bのいずれかまたは両方の任意の及び/またはすべての部分に沿って延びることがある。
【0032】
超伝導マグネットアセンブリ20を冷却する方法の一実施形態は、先ず配管系82を排気した後、本明細書で検討したように高圧力下で冷媒で部分的に満たす工程を含む。部分的に満たすことは、配管系82の総体積のうちの約10%〜約90%を液体冷媒90で満たすことを含む。配管系82の残りの体積は蒸気冷媒(すなわち、バブル92)を含むことがある。この方式では、作用流体(すなわち、冷媒)が配管系82の長さ全体にわたって遠くにある液体プラグ90及び蒸気バブル92内まで自然に分配される。この方式ではパルス動作型ヒートパイプ80内にある配管系82の様々な管セクションは異なるボリュメトリック流体/蒸気分布を有する。パルス動作型ヒートパイプ80を動作させるに連れて、気化器部分84にある各配管系82セクションは超伝導マグネットアセンブリ20にこれが接近しているために加熱される。同様に、凝縮器部分86にある各配管系82セクションは冷却される。その結果、気化器領域内では蒸気冷媒バブル92の発生及び/または成長が生じると共に、凝縮器部分86内では崩壊及び/または収縮が起こる。蒸気バブル92のサイズのこの変化は、バブルポンプ作用によって液体冷媒90の搬送を付随的に生じさせ、これにより最終的にパルス動作型ヒートパイプ80内部の顕熱伝達が得られる。熱誘導による自己励起性の振動が開始される。
【0033】
冷却装置10は本発明の態様に従って、蒸気バブル92が凝縮器部分86内でその潜熱全体を失いこれによりサイズが崩壊する機会が得られるように設計することができる。これには、凝縮器部分86内の蒸気バブル92の滞留時間が蒸気バブル92を完全に凝縮させるのに十分であることが必要である。各蒸気バブル92が担うエンタルピーは比較的わずかな量であり、より多くの蒸気バブル92が次々と凝縮器部分86内でその潜熱を失う機会を得ることによって、その効果が統合されて配管系82内にそれが存在することにより生じることがある摩擦の不利益を上回ることができる。パルス動作型ヒートパイプ80内には大きな顕熱伝達が得られるだけの十分な液体プラグ90を存在させるべきである。
【0034】
本発明の例示的な実施形態によれば超伝導マグネットアセンブリを超伝導動作させるために概ね4.2ケルビンまで冷却することが可能であるが、本発明の範囲を逸脱することなく4.2ケルビンではなく別の動作温度を利用することもできる。例えば、より高い遷移温度の超伝導体(例えば、HTSタイプやMgB2タイプ)を本発明の態様により冷却することが可能である。
【0035】
本明細書に図示し説明した実施形態について、磁気共鳴撮像(MRI)システムの一部となった超伝導マグネットアセンブリ10と共に使用するように表したが、本発明の範囲を逸脱することなく別の超伝導マグネットシステムによって本発明の態様を利用することもできる。例えば本冷却装置及び冷却方法は、核磁気共鳴分光システム、磁気エネルギー蓄積システム、超伝導発電機、超伝導限流器(fault current limiter)、超伝導粒子加速器、磁気分離システム、搬送システム、超伝導ケーブル、変圧器、超伝導スーパーコンピュータ、宇宙及び航空用途、その他など別の超伝導マグネットと共に使用することができる。
【0036】
したがって本発明の一実施形態の超伝導マグネットアセンブリを製造する方法は、第1の真空リザーバの周りに構成されたハウジングを提供する工程と、コイル巻型を形成する工程と、該コイル巻型を熱シールドで取り囲む工程と、該熱シールドを第1の真空リザーバ内に配置する工程と、対象を受け容れるための中心コアの周りに構成された超伝導マグネットをコイル巻型の周りに位置決めする工程と、冷媒リザーバをその内部に有する第2の真空リザーバを提供する工程と、その各々が気化器領域及び凝縮器領域を有する配管系を備えた第1の2相式熱伝達デバイス及び第2の2相式熱伝達デバイスを提供する工程と、第1の2相式熱伝達デバイスの気化器領域をコイル巻型と超伝導マグネットのうちの一方にかつ第2の2相式熱伝達デバイスの気化器領域を熱シールドに熱的に接続する工程と、第1及び第2の2相式熱伝達デバイスの冷媒リザーバに対してかつ凝縮領域に対してクライオクーラを熱的に接続する工程と、を含む。
【0037】
本発明の別の実施形態による超伝導マグネットアセンブリは、第1の真空リザーバをその内部に包含したハウジングであってその内部にさらにコイル巻型を包含したハウジングと、対象を受け容れるように構成された中心コアの周りのコイル巻型の内部またはこれに隣接して配置された複数のマグネットと、冷媒リザーバをその内部に有する第2の真空リザーバと、該第2の真空リザーバ内にありかつ冷媒リザーバと熱的に連絡させた2相式クライオクーラと、液体及び蒸気冷媒をその内部に包含した配管系を備えた2相式熱伝達デバイスであって、該配管系はコイル巻型と複数のマグネットのうちの一方と熱的に連絡させた該2相式熱伝達デバイスの気化器領域と冷媒リザーバと熱的に連絡させた該2相式熱伝達デバイスの凝縮器領域とを含む2相式熱伝達デバイスと、を含む。
【0038】
本発明を好ましい実施形態に関して記載してきたが、明示的に記述した以外に等価、代替及び修正が可能であり、これらも添付の特許請求の範囲の域内にあることを理解されたい。
【符号の説明】
【0039】
10 超伝導マグネットシステム
20 超伝導マグネットアセンブリ
22 ハウジング
24 第1の真空リザーバ
26 熱シールド
28 真空空間
30 コイル巻型
32 マグネット
34 マグネット
36 予冷却ループ
60 真空エンベロープ
62 第2の真空リザーバ
70 クライオクーラ
72 スリーブ
74 冷媒リザーバ
76 冷媒
80 2相式熱伝達デバイス
80A 第1の2相式ヒートパイプ
80B 第2の2相式ヒートパイプ
82 配管系
84 気化領域/部分
86 凝縮器領域/部分
90 液体冷媒
92 蒸気冷媒
100 MRIシステム
102 ハウジング
104 中央のボア
106 RFコイル
108 傾斜コイル
110 真空容器
112 真空領域
114 熱シールド
116 クライオスタット浴(例えば、ヘリウム容器)
118 ヘリウム容器
120 コイル巻型
122 超伝導マグネット
124 バッキングコイル
130 クライオクーラ
200 冷媒供給システム
202 冷媒コンテナ
204 充填チューブ
210 フィンタイプの熱交換器
220 真空チューブ
222 真空

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導マグネットアセンブリ(20)を製造する方法であって、
第1の真空リザーバ(24)の周りに構成されたハウジング(22)を提供する工程と、
コイル巻型(30)を形成する工程と、
前記コイル巻型(30)を熱シールド(26)で取り囲む工程と、
前記熱シールド(26)を第1の真空リザーバ(24)内に配置する工程と、
対象を受け容れるための中心コアの周りに構成された超伝導マグネット(32、34)を前記コイル巻型(30)の周りに位置決めする工程と、
冷媒リザーバ(74)をその内部に有する第2の真空リザーバ(62)を提供する工程と、
その各々が気化器領域(84)及び凝縮器領域(86)を有する配管系(82)を備えた第1の2相式熱伝達デバイス(80B)及び第2の2相式熱伝達デバイス(80A)を提供する工程と、
第1の2相式熱伝達デバイス(80B)の気化器領域(84)をコイル巻型(30)と超伝導マグネット(32、34)のうちの一方に対してかつ第2の2相式熱伝達デバイス(80A)の気化器領域(84)を熱シールド(26)に対して熱的に接続する工程と、
冷媒リザーバ(74)に対してかつ第1及び第2の2相式熱伝達デバイス(80A、80B)の凝縮領域(86)に対してクライオクーラ(70)を熱的に接続する工程と、
を含む方法。
【請求項2】
前記配管系(82)に液体冷媒(90)及び蒸気冷媒(92)を追加する工程をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1及び第2の2相式熱伝達デバイス(80A、80B)はパルス動作型ヒートパイプを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の真空リザーバ(24)及び第2の真空リザーバ(62)は実質的に分離されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記超伝導マグネットアセンブリ(20)は、核磁気共鳴分光システム、磁気エネルギー蓄積システム、超伝導発電機、超伝導限流器、超伝導粒子加速器、磁気分離システム、搬送システム、超伝導ケーブル、変圧器及び超伝導スーパーコンピュータのうちの1つとして使用するように構成されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
第1の真空リザーバ(24)をその内部に包含したハウジング(22)であって、該ハウジング(22)はさらに、
ある体積(28)を画定する第1の真空リザーバ(24)内にある、コイル巻型(30)をその内部に包含した熱シールド(26)と、
前記コイル巻型(30)の内部またはその近傍で、対象を受け容れるように構成された中心コアの周りに配置させた複数のマグネット(32、34)と、
を包含したハウジング(22)と、
冷媒リザーバ(74)をその内部に有する第2の真空リザーバ(62)と、
第2の真空リザーバ(62)内にありかつ冷媒リザーバ(74)と熱的に連絡させた2相式クライオクーラ(70)と、
その各々が液体冷媒(90)及び蒸気冷媒(92)をその内部に包含しており、気化器領域(84)及び凝縮器領域(86)を含む配管系(82)を備えている第1の2相式熱伝達デバイス(80B)及び第2の2相式熱伝達デバイス(80A)と、
を備える超伝導マグネットアセンブリ(20)であって、
前記第1の2相式熱伝達デバイス(80B)の気化器領域(84)はコイル巻型(30)と複数のマグネット(32、34)のうちの一方と熱的に連絡しており、かつ第1の2相式熱伝達デバイス(80B)の凝縮器領域(86)は冷媒リザーバ(74)と熱的に連絡していること、
前記第2の2相式熱伝達デバイス(80A)の気化器領域(84)は熱シールド(26)と熱的に連絡しており、かつ第2の2相式熱伝達デバイス(80A)の凝縮器領域(86)はクライオクーラ(70)と熱的に連絡していること、
を特徴とする超伝導マグネットアセンブリ(20)。
【請求項7】
前記第1及び第2の2相式熱伝達デバイス(80A、80B)はパルス動作型ヒートパイプを含む、請求項6に記載の超伝導マグネットアセンブリ(20)。
【請求項8】
前記第1の真空リザーバ(24)は前記第2の真空リザーバ(62)から実質的に分離されている、請求項6に記載の超伝導マグネットアセンブリ(20)。
【請求項9】
前記第1の真空リザーバ(24)及び第2の真空リザーバ(62)は連続した1つの真空リザーバである、請求項6に記載の超伝導マグネットアセンブリ(20)。
【請求項10】
磁気共鳴撮像(MRI)システムを含む請求項6に記載の超伝導マグネットアセンブリ(20)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−245524(P2010−245524A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71271(P2010−71271)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】