説明

超合金部品の補修及び再分類

【課題】補修/再分類と同時に材料に入換可能なガスタービンエンジン部品の補修方法並びに材料を提供する。
【解決手段】超合金部品の補修/再分類用の新規な材料と方法を開示する。材料は慣習的な配合ではなく、従来の補修/再分類材料と比較してより多くのベース材料含量を有する。ニッケル基部品を補修/再分類するのに使用される態様では、材料は約5〜18.9重量%の低融点合金と約81.1〜95重量%のベース材料からなる。コバルト基部品を補修/再分類するのに使用される態様では、材料は約15〜30重量%の低融点合金と約70〜85重量%のベース材料からなる。これら材料は厳密な寸法並びに冶金学的要求を満たすよう部品の表面欠損を補修及び/又は摩耗又は腐食領域をビルドアップするのに使用可能である。これら材料により、緻密で最低限のホウ化物と高い再溶融温度を有する等温凝固構造の堅牢な補修部品が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、タービンエンジンに関し、より詳細には、摩耗あるいは損傷したタービンエンジン部品の補修及び再分類に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンエンジンは、航空機の推進、電力の発生、並びに流体の排出などのために、これまで長い間使用されている。そのようなエンジンのタービンセクションは、交互に配された固定静翼段と回転動翼段を含んでなる。これらの静翼が、ガス流を安定化させて回転動翼の1つの段から次の段へ送ることにより、タービンセクションから抽出される仕事量を最適化することができる。ノズル領域は、隣接する静翼間の空隙によって画定され、通常、通過するガス流の容積に対応した分類番号が割り当てられている。
【0003】
作動中、高温のガス流内の研磨剤及び腐食剤が、タービン静翼上に衝突するため、静翼は劣化、腐食、あるいは損傷する。さらには、高温のガス流によって静翼が歪み、それによりノズル領域が拡大してタービン効率が減少する。そのため、定期的なエンジンオーバーホール中、タービン静翼の物理的損傷を点検して、流れ面積又はノズル等級において生じた変化を測定するために評価する。概して、そのような静翼は、エンジン内に戻して取り付けられるようになる前に、交換するか、あるいは、損傷範囲を補修して、腐食した材料を置き換えなければならない。
【0004】
タービン静翼などの部品を補修及び/又は再分類(reclassify)する方法多くの方法が存在するが、いずれも欠点を有する。従って、そのような部品を補修及び/又は再分類するための改善された方法が望まれている。さらに、他の方法では修復不能な部品を補修及び/再分類する方法も又望まれている。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の、既存の補修及び/又は再分類(reclassify)する方法並びに材料における欠点は、本発明の実施によって解消される。本発明は、改善した補修及び/又は再分類する方法並びに材料に関する。本発明は、それらに限定されるものではないが、ガスタービンエンジンなどの様々な部品を補修及び/又は再分類するのに利用可能である。
【0006】
本発明の実施態様は、金属物品上に材料を堆積する方法を含む。金属物品がニッケルをベースとする材料からなる場合、その方法は、約5〜18.9重量%の低融点ニッケル基合金と、金属材料物品の所定領域上に所定の領域を堆積するための約81.1〜95重量%のニッケルをベースとする材料からなるニッケル基材料を、又、金属物品がコバルトをベースとする材料からなる場合、約15〜30重量%の低融点コバルト基合金と、金属材料物品の所定領域上に所定の領域を積層するための約70〜85重量%のコバルトをベースとする材料からなるコバルト基材料を適用することと、物品を所定時間(即ち、約4〜20時間)の間、所定の温度(即ち、約1093〜1260℃)で加熱することを含んでなる。これらの方法は、金属物品にニッケル基材料又はコバルト基材料を堆積させる前に、金属物品上のいずれかのコーティング材、酸化物、あるいは汚染物質を除去することをさらに含んでもよい。これらの方法は又、加熱処理後、ニッケル基材料又はコバルト基材料を少なくとも部分的に被覆する金属物品に保護コーティングを適用することをさらに含むこともできる。
【0007】
ニッケルをベースとするベース材料及び/又はコバルトをベースとするベース材料は、金属物品の組成と同様の組成を有するものであってよい。低融点ニッケル基合金及び/又は低融点コバルト基合金も又、金属物品と同様の組成からなる組成を有するものであってよいが、約0.7〜8.5重量%の融点降下剤を含むものである。
【0008】
金属物品は、いずれかの適切なニッケル基超合金及び/又は後バルト基超合金であってよく、それらは単結晶合金、指向性凝固合金及び/又は多結晶合金であってよい。金属物品は、それらに限定されるものではないが、高圧タービン静翼、低圧タービン静翼、低圧タービン動翼、動翼のアウターエアシール、トランジッションダクト、燃焼ライナー、シール支持体、バケット、キャストケース、燃料ノズル、燃焼器ケース及び/又は燃焼器シングルなどのガスタービンエンジン部品を含んでよい。
【0009】
本発明の実施態様は又、ニッケルをベースとする金属物品の表面の欠損を修復する方法、並びに材料を置き換える方法を含む。これらの方法は、第1の材料を、約30〜50重量%の低融点合金と約50〜70重量%のベース材料を混合してなる第1の材料を、ニッケルをベースとする金属物品の所定の領域上に堆積させることと、約5〜18.9重量%の低融点合金と約81.1〜95重量%のベース材料を混合してなる第2の材料を、第1の材料の上に堆積させることと、物品を、所定の温度で所定時間の間加熱処理することを含むことができる。
【0010】
本発明の実施態様は又、コバルトをベースとする金属物品上の表面の欠損を修復する方法、並びに材料を置き換える方法を含む。これらの方法は、第1の材料を、約40〜50重量%の低融点合金と約50〜60重量%のベース材料を混合してなる第1の材料を、コバルトをベースとする金属物品の所定の領域上に堆積させることと、約15〜30重量%の低融点合金と約70〜85重量%のベース材料を混合してなる第2の材料を、第1の材料の上に堆積させることと、物品を、所定の温度で所定時間の間加熱処理することを含むことができる。
【0011】
第1の材料と第2の材料は、単一の漸変層として堆積させることができ、最初に堆積が開始される時の漸変層の組成は第1の材料と同様であり、次いで、漸変層が連続して堆積されるに伴って第2の材料の組成と同じになるよう変わる。
【0012】
本発明を、以下の説明によって、当業者には明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下に、種々の図を参照して本発明の実施態様を説明するが、全部の図において同様の符号(名称)は同様の部分を意味する。
【0014】
本発明の理解を容易にするため、図1から図3に示したいくつかの本発明の実施態様とそれらを説明するのに使用する特定の用語を参照する。本明細書において使用する用語は、説明するためのものであって、限定する目的とするものではない。特定の構造及び機能的細部は、限定するものではなく、本発明を多様に利用するために、単に当業者に教示するための基本原理として解釈すべきである。当業者が普通に想到するような、表示する構造並びに方法における変更及び修正、さらには、ここで図示するような本発明の原理のさらなる用途などは、ここで説明かつ特許請求の範囲に記載の本発明の要旨並びに範囲に包含される。
【0015】
本発明は、ガスタービンエンジン部品などの部品に対して、表面の欠損(即ち、クラック)の修復及び/又は寸法形状の復元(即ち、部品の再分類)を施すための方法並びに材料に関する。本発明の実施態様により、高精度の寸法要求及び冶金学的要求を満たすために、部品の摩耗、あるいは腐食した領域の制御されたビルドアップが提供される。本発明により、部品の寸法形状を復元する前に、表面の欠陥も又修復することができる。本発明は、高密度で、最小限のホウ化物を有する、一定温度で凝固する構成と、高い再溶融温度を有する、堅牢な修復された部品を提供する。
【0016】
本発明の実施により、多くの適切な部品を改修、修理、あるいは修復することができる。例えば、タービン静翼は、過酷な作動条件にさらされるために、歪んだり、寸法形状に変化が生じたりする場合が多い。そのような表面の摩耗や歪みは、本発明の実施により改修、あるいは修復することができるため、そのような部品の限界ガス経路寸法を復元することができる。さらには、表面の欠陥も同時に修復することもできる。
【0017】
本発明の材料を、タービン静翼などの部品に適用する前に、まず、部品上のコーティング、酸化物、あるいは汚染物質などを取り除く必要がある。コーティングは、それらに限定されるものではないが、グリットブラスト、機械加工、研磨剤によるベルティング、化学的ストリッピング、ウォータージェットブラスティング及び/又はオートクレーブ処理加工など、いずれかの適切な方法を単独で、あるいは組み合わせて用いることによって除去することができる。その後、クラックした壁部を有する、修復する部品の表面から、残存する酸化物、破片、有機汚染物質などを取り除くことができる。このような洗浄は、それらに限定されるものではないが、真空及び/又は水素加熱処理、フッ化水素ガスを通じる処理、研磨、水性又は有機溶媒でのすすぎなどによって行うことができる。
【0018】
部品の表面を清浄化した後、それらに限定されるものではないが、高速ガス(酸素)フレーム溶射(HVOF)法、減圧プラズマ溶射(LPPS)法、大気プラズマ溶射(APS)法、コールドスプレーシステムなどの高エネルギーコーティングシステムのいずれかに供することができる。実施態様においては、約0.5%未満の多孔度を有する、密度100%に近い被膜を形成することができることから、HVOFが望ましい。図1に示すように、部品20の腐食領域51は、低融点合金とベース材料からなる材料40を適用することにより、所望の寸法にビルドアップすることができる。材料40は、部品がニッケルをベースとする材料からなる場合、約5〜18.9重量%の低融点合金と、部品20のニッケルベース材料と適合する約81.1〜95重量%のベース材料からなるものであってよい。部品20がコバルトをベースとする材料からなるものである場合、材料40は、約15〜30重量%の低融点合金と、部品20のコバルトをベースとする材料と適合する約70〜85重量%のベース材料からなるものであってよい。通常、既存の修復及び/又は再分類法で使用されるものは、ニッケルベース材料の部品を修復する場合で、ベース材料は約60重量%まででしかなく、又、コバルトベース材料の部品を修復する場合で、ベース材料は約50重量%まででしかなく、このような従来とは異なる配合の材料40は、そのような既存の方法で使用されるものよりもはるかに高いベース材料含量を有する。
【0019】
ある代表的なニッケルベース部品を修復/復元する際、この材料40は、約18.9重量%の低融点合金と約81.1重量%のベース材料からなるものであってよい。他の実施態様において、この材料40は、約10重量%の低融点合金と約90重量%のベース材料からなるものであってよい。また、さらに別の実施態様においては、この材料40は、約5重量%の低融点合金と約95重量%のベース材料からなるものであってよい。多くの異なる実施態様も可能である。
【0020】
ある代表的なコバルトベースの部品を修復/復元する際、この材料40は、約30重量%の低融点合金と約70重量%のベース材料からなるものであってよい。他の実施態様において、この材料40は、約25重量%の低融点合金と約75重量%のベース材料からなるものであってよい。また、さらに別の実施態様においては、この材料40は、約15重量%の低融点合金と約85重量%のベース材料からなるものであってよい。多くの異なる実施態様も可能である。
【0021】
材料40にそのような高い含量のベース材料を用いることにより、多くの利点が得られ、既存の修復/再分類法並びに材料では満足のゆく修復を行うことのできない場合でも、修復可能である。本発明の材料40は、十分に高密度で、再溶融温度が高く、かつ従来の修復/再分類材料と比較して、脆性を有するホウ化物の含量が少ないものである。
【0022】
部品の寸法を復元するのに加えて、本発明の実施態様により、クラック53などの表面の欠損部の修復も又可能である。図2で示すような実施態様では、部品20はニッケルをベースとする材料からなる場合、約30〜50重量%の低融点合金と、部品20のニッケルをベースとする材料と適合性を有する約50〜70重量%のベース材料の混合物からなる第1の材料30を、部品20の上に堆積させることができる。次に、約5〜18.9重量%の低融点合金と、部品20のニッケルをベースとする材料と適合性を有する約81.1〜95重量%のベース材料の混合物からなる第2の材料40を、第1の材料30の上に堆積させることができる。その他多くの実施態様が可能である。
【0023】
部品20がコバルトベース材料からなる場合には、図2に示すような実施態様において、約30〜50重量%の低融点合金と、部品20のニッケルベース材料と適合性を有する約50〜70重量%のベース材料の混合物からなる第1の材料30を部品20の上に堆積させることができる。次に、約15〜30重量%の低融点合金と、部品20のコバルトをベースとする材料と適合性を有する約70〜85重量%のベース材料の混合物からなる第2の材料40を、第1の材料30の上に堆積させることができる。その他多くの実施態様が可能である。
【0024】
図2をさらに参照すると、第1と第2の材料30,40は、修復方法として上述の方法(即ち、HVOF、LPPS、APS、コールドスプレーなど)と同様の方法で堆積してよい。実施態様では、第1と第2の材料30,40を、1回の連続溶射工程で、別個の層として堆積させることができる。しかしながら、必要に応じて第1と第2の材料30,40を、別々の溶射工程で堆積させてもよい。本発明の材料30,40は又、所望に応じて連続した漸変層として堆積させてもよい。本発明は、比較的多くの低融点合金を有する非常に高密度の材料30を、加熱処理の前にクラック53のキャビティに打ち込み、加熱処理の間に、それが溶融して毛管作用によってクラックの根元内へ流れるよう、適切に配置されるため、有利である。少量の低融点合金を含む本発明の第2の材料40を、通常、クラックのより広い入口付近(即ち、表面55近辺)に適用することにより、表面57において高密度で、ホウ化物量の低い堆積層が形成される。既存の技術は、クラックなどに流れ、加熱処理中に等温で固化する液状の溶融物に依存するものであり、これは、クラックの表面近くで過剰のホウ化物を有する微細構造物を形成することなく、クラックの根元を完全に修復するのに必要な液体量のバランスをとることが難しいため、本発明の技術と比較してあまり望ましい技術ではない。
【0025】
図2に示すような実施態様において、部品20がニッケルをベースとする材料からなるものである場合、第1の材料30は約50重量%の低融点合金と約50重量%のベース材料からなり、第2の材料40は約18.9重量%の低融点合金と約81.1重量%のベース材料からなるものであってよい。部品20がコバルトベース材料からなる他の実施態様では、第1の材料30は約40重量%の低融点合金と約60重量%のベース材料からなり、第2の材料40は約10重量%の低融点合金と、約90重量%のベース材料からなるものであってよい。さらに部品20がニッケルをベースとする材料からなる別の実施態様においては、第1の材料は約60重量%の低融点合金と、約40重量%のベース材料からなり、第2の材料40は、約5重量%の低融点合金と約95重量%のベース材料からなるものであってよい。その他多くの実施態様が可能である。
【0026】
部品20がコバルトベース材料からなる場合、図2に示すような実施態様では、第1の材料30は約50重量%の低融点合金と約50重量%のベース材料からなり、第2の材料は約30重量%の低融点合金と約70重量%のベース材料からなるものであってよい。部品20がコバルトベース材料からなる他の実施態様では、第1の材料30は約40重量%の低融点合金と約60重量%のベース材料からなり、第2の材料は約25重量%の低融点合金と約75重量%のベース材料からなるものであってよい。部品20がコバルトベース材料からなるさらに別の実施態様では、第1の材料30は約40重量%の低融点合金と約60重量%のベース材料からなり、第2の材料は約20重量%の低融点合金と約80重量%のベース材料からなるものであってよい。その他多くの実施態様が可能である。
【0027】
本発明における、漸変層を構成するニッケルをベースとする実施態様では、最初に表面55付近に堆積させる材料は、約30〜50重量%の低融点合金と、修復する部品のニッケルをベースとする材料と適合性を有する約50〜70重量%のベース材料からなるものであってよい。次いで、材料を連続して堆積するのに伴い、堆積した材料の外側面に近づくに連れて、表面57に至るまで、材料の組成を連続して変化させてもよく、その場合、約5〜18.1重量%の低融点合金と、修復する部品のニッケルベース材料と適合性を有する約81.1〜95重量%のベース材料からなる組成にまで変化するものであってよい。その他多くの実施態様が可能である。
【0028】
漸変層を構成する本発明のコバルトをベースとする実施態様では、最初に、表面55付近に堆積させる材料は、約40〜50重量%の低融点合金と、修復する部品のコバルトをベースとする材料と適合性を有する約50〜60重量%のベース材料からなるものであってよい。次いで、材料を連続して堆積するのに伴い、堆積した材料の外側面に近づくに連れて、表面57に至るまで、材料の組成を連続して変化させてもよく、その場合、約15〜30重量%の低融点合金と、修復する部品のニッケルベース材料と適合性を有する約70〜85重量%のベース材料からなる組成にまで変化するものであってよい。その他多くの実施態様が可能である。
【0029】
本発明で利用するベース材料は、修復する部品の組成とほぼ一致する組成のものであってよい。例えば、タービン静翼を修復する場合、実施態様ではこのベース材料は、Mar−M509などのコバルト基超合金、Mar−M247などの等軸ニッケル基超合金、Mar−M200+Hf又はPWA1426などの指向性凝固のニッケル基超合金、PWA1484又はPWA1480などの単結晶ニッケル基超合金からなるものであってよい。
【0030】
本発明で使用する低融点合金は、上記ベース材料と同様の組成からなるものであってよいが、約0.7〜8.5重量%のホウ素又はケイ素などの融点降下剤を含むものであってよい。
【0031】
表面の欠損を修復及び/又は所望の寸法まで腐食領域を復元した後、皮膜を緻密にし、堆積した材料とその下の部品の間に拡散接合を形成するよう、部品を加熱処理することができる。加熱処理中に、堆積した材料は部品と接合し、連続した、空隙のない、部品と等温凝固した微細構造が形成される。適切な(加熱処理の)時間と温度は、好適な拡散特性を得る一方で、下層の部品と冶金学的な整合性を維持するよう(即ち、同時に初期の溶融及び/又は下層の部品成分の再結晶化を避けるよう)選択すべきである。実施態様においては、加熱処理は、部品を約2000〜2300°F(1093〜1260℃)まで加熱することと、その温度を約4〜20時間保持することを含むものとすることができる。
【0032】
加熱処理後、部品が使用の許容レベルに達しているかどうかを確認するために補修/復元した部品をいずれか適した方法で検査するようことができる。そのような検査法には、それらに限定されるものではないが、外観検査、寸法検査、けい光探傷検査、金属組織学などが包含される。
【0033】
その後、必要に応じて保護皮膜(即ち、熱障壁皮膜、環境障壁皮膜、耐摩耗皮膜など)を部品に適用することができる。これらの皮膜並びにその適用方法は周知であり、拡散工程、APS、LPPS、HVOF、電子ビーム物理蒸着法(EBPVD)などによって適用される、ニッケル又はコバルトアルミニウム化合物、即ち、MCrAlYオーバーレイ皮膜などを含む。
【0034】
本発明の実施態様によって修復される部品は、適切なニッケル基超合金及び/又はコバルト基超合金を含んでよい。これらの超合金は、単結晶材料、指向性凝固材料、多結晶材料及び/又はそれらの組み合わせからなるものであってよい。
【0035】
これら修復された及び/又は再分類された部品の機械特性は、元の部品と同等かあるいはほぼ同等である。しかしながら、機械特性は、部品の、置き換えられた材料の容積分、部品の特定の合金、置換材料の組成、利用する加熱処理法、材料を適用するのに使用する方法などに依存して変化し得る。
【実施例】
【0036】
(実施例1)
代表的な実施例においては、本発明の材料をコバルトベースの基体上に堆積するのに、単一連続式溶射法を用いた。材料は、約20重量%の低融点合金と、コバルトベースの基体の材料と適合性を有する約80重量%のコバルトベースの材料からなるものであった。コバルトベースの材料は、約23.4重量%のCr、約10重量%のNi、約7重量%のW、約3.5重量%のTa、約0.22重量%のTi、約0.45重量%のZr、約0.60重量%のC、及び約54.8重量%のCoである公称組成を有するものであった。低融点合金は、約24重量%のCr、約40重量%のNi、約2.95重量%のB、及び約33重量%のCoである公称組成を有するものであった。約0.075インチ厚(約0.1905cm厚)の皮膜をコバルトベースの基体に形成するのにLPPS法を用いた。以下の溶射パラメータを用いた。
【0037】
【表1】

【0038】
このコバルトベースの基体上に材料を堆積した後、被覆した基体に約2100°F(1149℃)の温度で約6時間加熱処理を行い、皮膜を緻密化して堆積した材料と下層の部品成分の間に拡散接合を形成する。その後、標準的な検査法(即ち、外観検査、寸法検査、けい光探傷検査など)を用いて、欠損が残っていないか、部品が使用可能であるかを確認した。さらに、部品が許容可能な程度に修復されたか否かを確認するために金属組織学も用いた。
(実施例2)
別の実施例では、単一連続式溶射法を用いて、ニッケルをベースとする基体上に本発明の材料を堆積した。材料は、約10重量%の低融点合金と、90重量%の、ニッケルをベースとする基体の材料との適合性を有するニッケルをベースとする材料からなるものであった。ニッケルをベースとする材料は、約9重量%のCr、約10重量%のCo、約12重量%のW、約1重量%のCb(Nb)、約2重量%のTi、約5重量%のAl、約0.015重量%のB、約1.65重量%のHf、約0.014重量%のCと約59重量%のNiという公称組成を有するものであった。低融点合金は、約9重量%のCr、約8重量%のCo、約4重量%のW、約2重量%のAl、約3重量%のB、約1重量%のHfと約73重量%のNiという公称組成を有するものであった。約0.045インチ厚(約1.143mm厚)の皮膜をニッケルをベースとする基体上に形成するのにLPPS法を用いた。以下の溶射パラメータを使用した。
【0039】
【表2】

【0040】
このニッケルをベースとする基体上に材料を堆積した後、コーティングした基体を、約2200°F(約1204℃)で約4時間加熱処理して、堆積した材料と下層の部品の成分の間を拡散結合した。その後、標準的な検査法(即ち、外観検査、寸法検査、けい光探傷検査など)を用いて、欠損が残っていないか、部品が使用可能であるかを確認した。さらに、部品が許容可能な程度に修復されたか否かを確認するために金属組織学も用いた。
【0041】
本発明は、それらに限定されるものではないが、高圧タービン静翼、低圧タービン静翼、低圧タービン動翼、動翼アウターエアシール、トランジッションダクト、燃焼ライナー、シール支持体、バケット、キャストケース、燃料ノズル、燃焼器ケース、燃焼器シングル、及びその他の、必要な加熱処理の作用を受けさせることが可能な鋳造超合金部品など、多くの航空機及び/又は陸上機用ガスタービンエンジンの部品を、ベース材料の機械特性を許容できない程劣化させることなく、修復/再分類するのに使用することができる。
【0042】
上述したように、本発明は、様々な部品を修復及び/又は復元/再分類するための方法並びに材料を提供するものである。本発明は、腐食した領域を元の寸法形状に復元することができ、同時に、表面の欠損を修復することができるという利点を有する。さらに、以前に修復/再分類した部品に、さらなる修復/再分類が必要な場合、本発明の材料を、部品のベース材料ではなく、上述したように以前に適用した材料に適用することができる。当業者等には、多くのその他の実施態様、及び利点は明らかであろう。
【0043】
本発明の種々の実施態様を、本発明の要件を満たす、様々な必要条件を実現する形態で説明してきた。これらの実施態様が、本発明の種々の実例の原理を説明するためだけのものであることは理解すべきである。本発明の要旨並びに範囲から逸脱することなく、それら実施態様を多様に変更、あるいは修正できることは、当業者等には明らかであろう。例えば、タービン静翼の修復及び/又は再分類を説明したが、本発明は、その他多くのガスタービンエンジンの部品や別の部品に使用することもできる。従って、本発明は、特許請求の範囲に記載の範囲並びにそられの同等物内におおける全ての適切な修正並びに変更の全てに及ぶものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】単一層型の補修/再分類系を利用した、本発明の実施態様を示す概略図である。
【図2】多層の補修/再分類系を利用した、本発明の実施態様を示す概略図である。
【図3】図1における本発明の実施態様を詳細に示す写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属物品上に材料を堆積させる方法であって、
その金属物品がニッケルをベースとする材料からなるものである場合には、約5から18.9重量%の低融点ニッケル基合金と約81.1から95重量%のニッケルをベースとするベース材料からなるニッケルベースの材料を、
また、その金属物品がコバルトをベースとする材料からなるものである場合には、約15から30重量%の低融点コバルト基合金と約70から85重量%のコバルトをベースとするベース材料からなるコバルトベースの材料を、
それぞれ、金属物品上の所定領域に所定領域をビルドアップするために適用することと、
物品を所定温度で所定時間加熱処理すること、
を含んでなる、金属物品上に材料を堆積させる方法。
【請求項2】
前記ニッケルをベースとするベース材料が、前記金属物品の組成に類似の組成からなるものであり、かつ、前記低融点ニッケル基合金は、前記金属物品の組成に類似の組成からなるが、約0.7から8.5重量%の融点降下剤を含むものであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記コバルトをベースとするベース材料が、前記金属物品の組成に類似の組成からなるものであり、かつ、前記低融点コバルト基合金は、前記金属物品の組成に類似の組成からなるが、約0.7から8.5重量%の融点降下剤を含むものであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記金属物品が、少なくとも単結晶合金、指向性凝固合金、あるいは多結晶合金のいずれか1つからなるものであることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記金属物品上に前記ニッケルベースの材料又はコバルトベースの材料を堆積させる前に、前記金属物品上のコーティング、酸化物あるいは汚染物質のいずれかを除去することをさらに含むことを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記加熱処理後、前記金属物品に、保護コーティングを適用することをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記所定温度が1093から1260℃であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項8】
前記所定時間が4から20時間であることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記ニッケルベースの材料とコバルトベースの材料の少なくとも1つが、少なくとも減圧プラズマ溶射、HVOF法、大気プラズマ溶射又はコールドスプレーのうちの1つによって堆積されることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項10】
請求項1記載の方法によって補修された、金属物品。
【請求項11】
前記金属物品が、ガスタービンエンジンの部品を構成することを特徴とする、請求項10記載の金属物品。
【請求項12】
前記ガスタービンエンジンの部品が、少なくとも、高圧タービン静翼、低圧タービン静翼、低圧タービン動力、ブレードアウターエアシール、トランジッションダクト、燃焼ライナー、シール支持体、バケット、燃料ノズル、燃焼器ケース、及び燃焼器シングルのいずれか1つを構成することを特徴とする、請求項11記載の金属物品。
【請求項13】
約30から50重量%の低融点合金と約50から70重量%のベース材料の混合物からなる第1の材料を、金属物品の所定領域上に堆積することと、
約5から18.9重量%の低融点合金と約81.1から95重量%のベース材料からなる第2の材料を第1の材料の上に堆積することと、
物品を所定温度で所定時間加熱処理すること、
を含んでなることを特徴とする、ニッケルをベースとする金属物品の表面の欠損を補修し、物品上の材料を置き換えるための方法。
【請求項14】
前記所定温度が約1093から1260℃であり、かつ前記所定時間が4から20時間であることを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記第1の材料と第2の材料が、単一の漸変層として堆積され、その漸変層の組成は、堆積が開始するときは前記第1の材料の組成に類似しており、次いで、漸変層が連続して堆積されるに伴って、第2の材料に類似の組成となるよう変化することを特徴とする、請求項13記載の方法。
【請求項16】
請求項13に記載の方法によって補修された、ニッケルをベースとする金属物品。
【請求項17】
約40から50重量%の低融点合金と約60から50重量%のベース材料の混合物からなる第1の材料を、金属物品の所定領域上に堆積することと、
約15から30重量%の低融点合金と約70から85重量%のベース材料からなる第2の材料を第1の材料の上に堆積することと、
物品を所定温度で所定時間加熱処理すること、
を含んでなることを特徴とする、コバルトをベースとする金属物品の表面の欠損を補修し、物品上の材料を置き換えるための方法。
【請求項18】
前記所定温度が約1093から1260℃であり、かつ前記所定時間が4から20時間であることを特徴とする、請求項17記載の方法。
【請求項19】
前記第1の材料と第2の材料が、単一の漸変層として堆積され、その漸変層の組成は、堆積が開始するときは前記第1の材料の組成に類似しており、次いで、漸変層が連続して堆積されるに伴って、第2の材料に類似の組成となるよう変化することを特徴とする、請求項17記載の方法。
【請求項20】
請求項17記載の方法によって補修されたコバルトをベースとする金属物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−207030(P2006−207030A)
【公開日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−19238(P2006−19238)
【出願日】平成18年1月27日(2006.1.27)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】