説明

超臨界流体洗浄装置

【課題】装置構成の簡単な単一の洗浄処理チャンバーを用いて、単位時間当り可能な限り多くの枚数の被洗浄物の洗浄処理を可能とする。
【解決手段】洗浄処理チャンバーと、該洗浄処理チャンバー内に洗浄流体を供給する洗浄流体供給手段と、上記洗浄処理チャンバー内の不要物を排出する流体排出手段とを備え、上記洗浄処理チャンバー内を超臨界状態に維持することによって、当該洗浄処理チャンバー内の被洗浄物の洗浄処理を行うようにしてなる超臨界流体洗浄装置であって、洗浄前の被洗浄物を洗浄処理チャンバー内に搬送搬入する搬送搬入手段および洗浄処理終了後の被洗浄物を洗浄処理チャンバーから取り出す搬出搬送手段を設け、洗浄処理チャンバー内の複数の位置に同時に複数枚の被洗浄物を収納セットして順次洗浄処理することができるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、超臨界流体を使用した超臨界流体洗浄装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
最近のICチップ製造工程等の半導体製造分野では、回路パターンの極微細化が進み、極微量の金属、有機物等の不純物による汚染の影響が問題視されている。そして、その解決手段として、超臨界流体を用いた洗浄技術が実用化されようとしている。
【0003】
例えば洗浄処理チャンバーと、該洗浄処理チャンバー内に洗浄流体を供給する洗浄流体供給手段と、上記洗浄処理チャンバー内の不要物を排出する流体排出手段を備え、上記洗浄処理チャンバー内を超臨界状態に維持することによって、当該洗浄処理チャンバー内の被洗浄物の洗浄処理を行うようにし、洗浄処理チャンバー内に例えば複数枚の半導体ウェーハ等の被洗浄物を平置きに1枚毎に搬送装置で収納配置して洗浄処理し、同処理終了後は同様に1枚毎に搬送装置により取出して被洗浄物収納部に収納するようにしたものがそれである(特許文献1、特許文献2等を参照)。
【0004】
このような超臨界流体洗浄装置によれば、従来からのRCA洗浄、各種の高周波や超音波による洗浄、その他の洗浄方法、またスピンドライヤーやレーザー照射、加熱他による乾燥方法のような微細構造を破壊させる問題を解決することができる。
【0005】
しかし、このように1枚毎の洗浄処理しか行えないのでは、処理効率が悪く、多くの枚数の被洗浄物を洗浄処理するのには相当に長い時間が必要となる。
【0006】
従来、このような場合の洗浄処理枚数を増やすための方法としては、例えば同一の洗浄処理チャンバー内に複数枚の半導体ウエハーを入れる第1の方式と、洗浄処理チャンバーを複数台設ける第2の方式との2つの方法があるが、例えば被洗浄物が300mm、450mmという大口径ウェーハの場合、ワーク保持カセットに同ウェーハをそのまま多段に重ねて一括処理を行う従来からのバッチ式と呼ばれる洗浄処理方式では、ウェーハ自体の表面、裏面が交互に近接している。
【0007】
したがって、上述のように回路パターンの微細化が進み、ウェーハ裏面のパーティクルの付着までもが嫌われる状況となった現在、このバッチ式の方法ではウェーハの表面、裏面が交互に近接することにより、パーティクル付着、その他の不具合要因が発生しやすいことと、ワーク保持カセット自身からのパーティクル発生、ケミカル汚染等から、採用は難しいのが実情である。
【0008】
したがって、必然的にウェハー径を考慮した薄型の大口径洗浄チャンバー内に複数枚のウェハーを1枚ずつ平置きにするか、1枚のウェハーのみを収納する複数の洗浄処理チャンバー(マルチチャンバー)を1システムに内蔵するという2通りの方式の何れかにならざるを得ない。
【0009】
【特許文献1】特開2003−173997号公報
【特許文献2】特開2006−135106号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところが、後者のようなマルチチャンバー方式の場合、各チャンバーへの超臨界流体配管に開閉用バルブ類を多数要し、当該バルブ類の制御機構が複雑となる。また、バルブのみならず、コーナー継ぎ手等の配管継ぎ手類も同様に多数を要し、且つ配管長にも差が出ることから、配管流路を流体が流れる際の抵抗値にチャンバー毎の差が生じる。
【0011】
そして、これに起因する圧力変動、昇圧・減圧時間、流体流量、処理時間等に差(ばらつき)が出やすくなり、均一な処理条件とするためには各種センサー類の増設が必要となり、さらに制御が煩雑となる。
【0012】
さらにマルチチャンバーでは、ウェーハを平面的に配置し、各チャンバー間はロボットによるウェーハの搬送を行うため、設置面積が大きくなり、搬送距離も長く、装置自体も、それに応じて大型となる問題がある。
【0013】
本願発明は、このような事情に基いてなされたもので、洗浄前の被洗浄物を洗浄処理チャンバー内に搬送搬入する搬送搬入手段および洗浄処理終了後の被洗浄物を洗浄処理チャンバーから取り出す搬出搬送手段を設け、洗浄処理チャンバー内に複数枚の被洗浄物を収納セットして順次洗浄処理することができるようにすることによって、上記従来の問題を解決した超臨界流体洗浄処理装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本願発明は、上記の目的を達成するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0015】
(1) 請求項1の発明
この発明の超臨界流体洗浄処理装置は、洗浄処理チャンバーと、該洗浄処理チャンバー内に洗浄流体を供給する洗浄流体供給手段と、上記洗浄処理チャンバー内の不要物を排出する流体排出手段とを備え、上記洗浄処理チャンバー内を超臨界状態に維持することによって、当該洗浄処理チャンバー内の被洗浄物の洗浄処理を行うようにしてなる超臨界流体洗浄装置であって、洗浄前の被洗浄物を洗浄処理チャンバー内に搬送搬入する搬送搬入手段および洗浄処理終了後の被洗浄物を洗浄処理チャンバーから取り出す搬出搬送手段を設け、洗浄処理チャンバー内の複数の位置に同時に複数枚の被洗浄物を収納セットして順次洗浄処理することができるようにしたことを特徴としている。
【0016】
このような構成によると、同時に多くの被洗浄物の洗浄処理が可能となり、洗浄効率が大きく向上する。
【0017】
しかも、上述したマルチ式のような問題を生じない。
【0018】
(2) 請求項2の発明
この発明の超臨界流体洗浄処理装置は、上記請求項1の発明の構成において、搬送搬入手段と搬出搬送手段がそれぞれ独立の装置として構成されていることを特徴としている。
【0019】
このような構成によると、洗浄処理終了後、被洗浄物搬出搬送手段が、洗浄処理チャンバー内の洗浄が完了した1つの被洗浄物を取り出すのに対応して、被洗浄物搬送搬入手段が洗浄前の被洗浄物を搬入して収納セットすることができるようになり、被洗浄物の搬入、搬出効率が高くなり、ひいては装置自体の洗浄処理効率が向上する。
【0020】
(3) 請求項3の発明
この発明の超臨界流体洗浄処理装置は、上記請求項1又は2の発明の構成において、洗浄処理チャンバー内には、被洗浄物を載置するターンテーブルが設けられており、複数の被洗浄物各々のセット位置を順次搬送搬入手段又は搬出搬送手段のアプローチ位置に対応させるべく回転移動するようになっていることを特徴としている。
【0021】
このような構成によると、被洗浄物搬送搬入手段による被洗浄物の搬入およびターンテーブルのセット位置へのセットおよび被洗浄物搬出搬送手段による被洗浄物の搬出搬送が、それぞれ容易かつ正確になる。
【0022】
(4) 請求項4の発明
この発明の超臨界流体洗浄処理装置は、上記請求項1,2又は3の発明の構成において、洗浄処理チャンバー内の複数の位置に収納セットされる被洗浄物は、それぞれ所定の治具ケース内に洗浄可能な状態で複数枚積層保持され、同状態のまま洗浄処理されるようになっていることを特徴としている。
【0023】
このような構成によると、1回の洗浄処理工程で、より多くの枚数の被洗浄物を洗浄処理することができるようになる。
【発明の効果】
【0024】
以上の結果、本願発明によれば、一度に相当数の被洗浄物の洗浄が可能な、従来の装置に比べて洗浄効率が高い超臨界流体洗浄処理装置を提供することができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
(最良の実施の形態1)
先ず図1〜図4は、例えば洗浄流体として二酸化炭素(CO2)を採用し、アルコール等所定の液体溶媒と併用して洗浄を行うようにした本願発明の最良の実施の形態1に係る超臨界流体洗浄処理装置の全体的なシステムおよび要部の構成を示している。
【0026】
(装置の特徴)
この最良の実施の形態1の超臨界流体洗浄処理装置は、所定の洗浄処理チャンバー内で、洗浄流体である二酸化炭素(CO2)が全く液相状態を経ることなく、気体→超臨界流体→気体の相変化を伴ってシリコンウェーハ等所定の被洗浄物(マイクロマシン等)の洗浄および乾燥を行うことができるようになっている。そして、洗浄処理チャンバーの開閉から、加減圧、洗浄処理チャンバー内への置換用溶媒の充填までを、人手を介さず、自動運転が可能とし、超臨界二酸化炭素流体による洗浄処理システムの量産工程へ導入を可能とすることで、従来の乾燥方法ではスティッキングを起こすために不可能であった構造やパターン設計の自由度をも向上させ得るようにしたことを特徴としている。
【0027】
(全体的なシステム構成)
先ず同装置の全体的なシステム構成を示す図1中、符号10は本願発明の中心となる洗浄処理チャンバーであり、該洗浄処理チャンバー10は、例えば図2および図3に示すように上部が開口した有底筒状の耐圧性のある容器本体10aと、下部側が上記容器本体10aの開口部に対応して開口し、上記容器本体10aの上部をカバーするとともに加熱保温用の図示しない電気ヒータを備えた同形状の蓋体10bとからなり、これら容器本体10aと蓋体10bとを図3のように嵌合一体化することにより洗浄処理チャンバー10を形成するようになっている。そして、該洗浄処理チャンバー10を形成する容器本体10aおよび蓋体10bの外周部には、同一体化されて洗浄処理チャンバー10を形成した時に当該洗浄処理チャンバー10内の洗浄処理空間A内をシールするシール部が設けられており、該シール部を介して両者が上述のように一体に嵌合固定されるようになっている。
【0028】
すなわち、容器本体10aの周壁部中央には、容器本体10aの開口面よりも所定の高さ高い所定の幅の凸条部21aが全周に亘って設けられており、その外周面側には、例えば高強度の合成樹脂材よりなる所定の幅の位置合わせリング(ガイドリング)Gが、また同凸条部21aの内周面側には、例えば反発弾性の大きな合成ゴムよりなる断面C字形の内圧式Oリング(シールリング)Sが、それぞれ嵌合されている。
【0029】
位置合わせリングGの外周面側上端部(肩部)は、上面側から側面側にかけて好ましくは所定の曲率のアール面に形成され、蓋体10b側嵌合用の溝部21bの周壁部(外周壁部)21dの内周面部が、同アール面によりガイドされてスムーズに嵌合されるようになっている。また、OリングSの上部は、蓋体10bとの非嵌合状態では、図示のように上記蓋体10b側溝部21bとの衝合面となる凸条部21aの上端面よりも所定の高さ高く突出しているが、嵌合時には、図3のように同蓋体10b側溝部21bの内周面側段部21c内にシール性良く係合されるようになっている。
【0030】
この実施の形態の場合、上記容器本体10aの開口内には円筒体型のターンテーブル10cが底面aと側面cとの間に例えばボールベアリングB,B・・・、B,B・・・等の回転支持部材を介して水平方向に自由に回転できるように支持されているとともに、その上面上(ワークセット面上)には周方向に120°毎の間隔で正三角形の各頂点位置に配置された各々3本のワーク支持機能を有した位置規制ピンP,P,P、P,P,P、P,P,Pが立設されている。
【0031】
そして、洗浄時、各ワークW,W,Wは、これらターンテーブル10c上の各々3組の位置規制ピンP,P,P、P,P,P、P,P,Pにより規制された第1〜第3のセット位置に各々1枚づつ搬入されて、ターンテーブル10cの上面との間に所定の隙間を保った表裏両面が洗浄可能な状態にセットされて行く。
【0032】
上記ターンテーブル10cは、図4に示すように、上記蓋体10bが開放された状態では、その外周面に対して、図示のように外部側方からターンテーブル回転駆動手段19の回転駆動ローラ19dが当接して摩擦力で120°間隔で回転駆動されるようになっており、上記3本のセット位置規制ピンP,P,Pで位置規制された第1,第2,第3の各ワークセット位置が順次後述する搬送ロボット11の第1のマニュピレータのアプローチ位置(手前側)に対応するように位置せしめられて、一度に洗浄される3枚の各ワークW,W,Wが収納セットされるようになっている。
【0033】
そして、該洗浄処理チャンバー10内のターンテーブル10cの上面に、搬送ロボット11を介して収納カセット12内から取り出し、搬送した、例えばナノレベルの太さのセンサーワイヤーを設置したシリコンウェーハ等の被洗浄物(マイクロマシン等)よりなるワークW,W,Wが納入されると、図2から図3のように蓋体10bが閉められ、その後、蓋開閉機構13により挟着固定されて高精度にシールされるようになっている(詳細については、後述する)。
【0034】
一方、符号1は洗浄流体としての液化された二酸化炭素(CO2)を所望の量保存している二酸化炭素ボンベ、2は同二酸化炭素ボンベ1からの二酸化炭素(CO2)の供給状態を開閉する流体開閉バルブ、3は同流体開閉バルブ2の開状態において供給される二酸化炭素(CO2)流体を所定の圧力に加圧する加圧ポンプ、4は同加圧ポンプ3によって加圧された二酸化炭素(CO2)流体の温度を液相状態から気相状態となるに十分な所定の温度に加熱調節する電気ヒータを備えた流体温度調節手段であり、上記流体開閉バルブ2、加圧ポンプ3、流体温度調節手段4は、それぞれ上記二酸化炭素ボンベ1から、上記洗浄処理チャンバー10内洗浄処理空間への洗浄流体供給配管L1上に設けられている。そして、上記二酸化炭素ボンベ1、流体開閉バルブ2、加圧ポンプ3、流体温度調節手段4、洗浄流体供給配管L1により、洗浄流体供給手段が形成されている。
【0035】
また、符号5はチッ素N2等の不活性ガスを所望の量保存している不活性ガスタンク、6は同不活性ガスの供給状態を開閉制御する不活性ガス開閉バルブであり、不活性ガス開閉バルブ6は、上記不活性ガスタンク5から上記洗浄流体供給配管L1の流体温度調節手段4の入口側に到る不活性ガス供給配管L2上に設けられている。
【0036】
そして、それら不活性ガスタンク5、不活性ガス開閉バルブ6、不活性ガス供給配管L2により、不活性ガス供給手段が形成されている。
【0037】
また、符号7は、上記二酸化炭素(CO2)流体との親和性が高く、その液体密度が同二酸化炭素(CO2)流体の調節可能な密度範囲に対応した、例えばアルコール等の液体溶媒を所望の量保存している溶媒タンク、8は同液体溶媒の供給状態を開閉する溶媒開閉バルブであり、溶媒開閉バルブ8は、上記溶媒タンク7から上記洗浄流体供給配管L1の流体温度調節手段4の出口までの溶媒供給配管L3上に設けられている。そして、それら溶媒タンク7、溶媒開閉バルブ8、溶媒供給配管L3により、溶媒供給手段が形成されている。該溶媒供給手段により供給された溶媒は、上述した洗浄流体供給配管L1上の流体温度調節手段4の出口側で二酸化炭素(CO2)流体中に混入され、開閉バルブ9を介して上記洗浄処理チャンバー10内の洗浄処理空間の底部に所定量貯留され、上記被洗浄物を浸漬した状態に保持する。
【0038】
さらに、符号L4は上記洗浄処理チャンバー10内の洗浄処理空間での洗浄により取り出された溶媒その他の廃液等を排出するドレン配管、17は上記洗浄処理チャンバー10内洗浄処理空間の圧力を検出する圧力センサ、18は同排出流体の流量を可変することによって上記洗浄処理空間内の圧力を調整する圧力調節バルブ、19は安全弁であり、圧力調節バルブ18は上記ドレン配管L4上に、また圧力センサ17、安全弁19は、上記ドレン配管L4と並列なバイパス配管L5上に、それぞれ設けられている。そして、これらドレン配管L4、バイパス配管L5、圧力調節バルブ18、圧力センサ17、安全弁19により、流体排出手段が形成されている。
【0039】
圧力センサ17の圧力検出値は、制御器20に入力され、制御器20は、その入力値に基いて上記圧力調節バルブ18の開度を調節することにより、上記洗浄処理チャンバー10内の圧力を所望の圧力に調節する。
【0040】
(洗浄処理方法)
以上の構成において、被洗浄物は、例えば次のようにして洗浄処理される。
【0041】
(1) 先ず不活性ガス開閉バルブ6および溶媒開閉バルブ8を開いて、不活性ガスタンク5内の不活性ガスおよび溶媒タンク7内の溶媒を上記洗浄処理チャンバー10の洗浄処理空間A内底部に所定量貯留する。同不活性ガスおよび溶媒が所定量入ると、上記不活性ガス開閉バルブ6および溶媒開閉バルブ8を閉じる。
【0042】
(2) 次に、被洗浄物を、洗浄処理チャンバー10内の底部に入れて上記貯留された溶媒中に浸漬させて、蓋体10bを閉じる。
【0043】
(3) 次に、流体温度調節手段4およびチャンバー温度調整手段を調整操作して、洗浄処理チャンバー10内に供給される二酸化炭素流体(CO2流体)の温度および洗浄処理チャンバー10の洗浄処理空間A内の温度を超臨界状態を形成するのに適した所定の温度となるように調整設定する。
【0044】
また、それと同時に、上記圧力調節バルブ18の開度を電気的に調節制御する制御器20内に上記圧力センサ17の圧力検出値を入力し、その検出値が超臨界状態を形成するのに適した所望の圧力値になるように、上記圧力調節バルブ18の開度を適切に調節制御する。
【0045】
(4) 次に、その上で上記二酸化炭素ボンベ1側の洗浄流体開閉バルブ2を開き、洗浄流体である二酸化炭素流体を洗浄流体供給配管L1を介して洗浄処理チャンバー10の洗浄処理空間A内に供給する。
【0046】
この場合、該洗浄流体供給配管L1の下流領域の、上記加圧ポンプ3と洗浄処理チャンバー10の洗浄流体導入口との間には、上述のように流体温度調節手段4が設けられているために、予じめ洗浄処理チャンバー10に入る前の段階で、上記液相状態の二酸化炭素流体が気体ないし超臨界状態になるに適した温度に加熱、加圧され、気体ないし超臨界状態になり、その上で洗浄処理チャンバー10の洗浄処理空間内に導入される。
【0047】
(5) その結果、上記洗浄流体である二酸化炭素流体が全く液相状態を経ることなく、気体→超臨界流体→気体の相変化を伴って被洗浄物の洗浄を行う。
【0048】
すなわち、該構成の場合、上記洗浄処理チャンバー10の洗浄処理空間A内に供給される洗浄流体である二酸化炭素流体は、上記圧力調節バルブ18および流体温度調整手段4により、最初から気体又は超臨界状態にして導入されるので、速に洗浄処理チャンバー10の洗浄処理空間A内を超臨界状態にすることができ、かつ同気体ないし超臨界状態の高圧の洗浄流体によって洗浄初期に確実に空気が排出される。
【0049】
そして、その結果、液相状態の洗浄流体の作用による被洗浄物損傷の問題も解消される。従って、前述したようなマイクロマシンでも安心して洗浄・乾燥処理することができる。
【0050】
(6) 以上のようにして洗浄された後の、被洗浄物からの汚れ等不要物や溶媒を含む二酸化炭素流体は、上記圧力調節バルブ18および安全弁19の下流側で、図示しないCO2分離回収機能を備えた廃液回収装置に供給され、二酸化炭素流体と溶媒および不要物が相互に分離され、個別に回収される。
【0051】
なお、上記容器本体10aの底壁部には、図1〜図3に示されるように、上記洗浄流体(CO2)の流入口31と流出口32が設けられている。
【0052】
(蓋体開閉機構およびチャンバー支持部の構成)
上述のように容器本体10aに対して、蓋体10bを対応させて嵌合させ、また容器本体10aから蓋体10bを取り外して容器本体10a内の洗浄処理空間Aを開放する蓋体開閉機構は、例えば図4に示すように、その全行程が搬送ロボット11のワーク搬入・搬出動作と同期して自動化された開閉機構として構成されている。
【0053】
すなわち、該蓋体開閉機構13は、図4に示すように、床面にあって油圧シリンダ13cおよび上下伸縮ロッド13bを介して所定の高さ上方に起立し、水平方向の蓋体支持アーム13aを介して蓋体10bを支持している昇降手段と、床面上にあって、その上面に容器本体10aを上方側に向けて支持固定している容器本体支持台14とから構成されている。
【0054】
したがって、該構成では、上記昇降手段の油圧シリンダ13cを作動させることにより、作動ロッド13bおよび蓋体支持アーム13aを所定のストローク距離で上下に昇降させることができる。そして、それにより蓋体10bを上記容器本体10aの上方に取り外し、また逆に下降させて容器本体10aに嵌合することができる。
【0055】
これらの昇降動作は、もちろん所定の自動化制御ユニットを使用して、次に述べる搬送ロボット11によるワークWの搬入、搬出動作と適切に組み合わせてなされ、一旦所定枚数のワークW,W・・・、の洗浄・乾燥処理が終了すると、上記蓋開閉機構13による蓋体10bの挟圧固定状態を解除した後、蓋体10bを上昇させ、同ワークW,W・・・を取り出して新たなワークW,W・・・を収納する。
【0056】
(搬送ロボットの構成)
この搬送ロボット11は、上記洗浄処理チャンバー10とワーク供給用ホッパー12aとワーク収納用カセット12bを載置した設置台12cとの間に位置し、それらの間の空間を作動領域として設置されており、例えばシリンダ11aおよびシリンダロッド11b上に昇降可能に支持された第1,第2の2組のワーク搬送用マニュピレータ(ワーク搬送搬入手段、ワーク搬出搬送手段に該当する)を備えた所謂スカラーロボットにより構成されている。
【0057】
ワーク搬送搬入用第1のマニュピレータは、上記シリンダロッド11bの上端面に水平回動駆動可能に軸支された第1アーム11cと、該第1アーム11cの先端に対して基端側を回動駆動可能に軸支された第2アーム11dと、該第2アーム11dの先端に対して先端側が上方になるように鉤状に折り曲げて軸着した第3アーム11eと、該第3アーム11eの先端に対して基端側を回動駆動可能に軸着した先端側がY型のワーク保持部11gに形成された第4アーム11fとからなり、上述のワークホッパー12a部分に積層状態に置かれている多数枚のワークW,W・・・を1枚毎に取り出して、ワーク洗浄処理チャンバー10の容器本体10a内のターンテーブル10c上の各々3つの位置規制ピンP,P,Pにより規制された第1〜第3の3ケ所(3組)のセット位置に各々1枚づつ搬入されて、ターンテーブル10cの上面との間に所定の隙間を置いた状態でセットされて行く。
【0058】
この場合、上述のようにターンテーブル10cは、容器本体10a内で所望のボールベアリングB,B・・・、B,B・・・により水平回転可能に支持されている一方、蓋体10bが開放された状態では、その外周面に対して、図示のように外部側方からターンテーブル回転駆動手段19の回転駆動ローラ19dが当接して摩擦力で120°間隔で回転駆動されるようになっており、上記3本のセット位置規制ピンP,P,Pで位置規制された周方向に120°間隔の第1,第2,第3の各ワークセット位置が順次第1のマニュピレータのアプローチ位置(手前側)に対応するように位置せしめられて、3枚のワークW,W,Wが収納セットされ、また搬出される。
【0059】
上記ターンテーブル回転駆動手段19の回転駆動ローラ19dは、水平方向に延びる外部ケーシング19eそのものが押圧レバーとして矢印方向に回動せしめられ、上記回転駆動ローラ19dをターンテーブル10cの外周面に圧接されるようになっているとともに内部にチェーン又はベルト等の回転伝達機構を有し、モータ19aおよびモータ出力軸19bを介して回転駆動力が伝達されるようになっている。
【0060】
以上のように、容器本体10a内のターンテーブル10c上の第1〜第3の各ワーク収納セット位置に各々1枚のワークW、W、Wの収納セットが完了すると、搬送ロボット11の上記第1のマニュピレータをシリンダロッド11b側に収縮させる一方、上記蓋体開閉機構13を作動させて蓋体10bを下降させ、上述の図3のように容器本体10a上に嵌合して容器本体10a内に密閉された洗浄処理空間Aを形成して、上述のような洗浄処理を行う。
【0061】
ところで、上記ターンテーブル回転駆動手段19の回転駆動ローラ19dは、上記のようにして洗浄処理チャンバー10の蓋体10bが閉じられる洗浄処理中には、その外ケース19部分を外方に回動させてエスケープさせて置くようになっている。
【0062】
そして、所定の処理時間が経過して各ワークW、W、Wの洗浄・乾燥処理が終了すると、再び蓋体10bが上方に開かれて容器本体10aのターンテーブル10c上部が開放される。
【0063】
すると、それに対応して今度は上記搬送ロボット11のワーク搬出搬送用の第2のマニュピレータが作動して、ターンテーブル10c上の第1〜第3の各ワーク収納セット位置上ワークW、W、Wの取り出しとワーク収納ケース12b内への収納作業が始まる。
【0064】
この第2のマニュピレータは、上記シリンダロッド11bの上端面に水平回動駆動可能に軸支された第1アーム11hと、該第1アーム11hの先端に対して基端側を回動駆動可能に軸支された第2アーム11iと、該第2アーム11iの先端に対して先端側が上方になるように鉤状に折り曲げて軸着した第3アーム11jと、該第3アーム11jの先端に対して基端側を回動駆動可能に軸着した先端側がY型のワーク保持部11gに形成された第4アーム11kとからなり、上述の容器本体10a内のターンテーブル10c上の第1〜第3ののワーク収納セット位置に置かれている各1枚(合計3枚)のワークW、W、Wを1枚づつ取り出して、ワーク収納ケース12b内の収納位置に複数枚積層して行く。
【0065】
以後、以上の動作が繰り返されて、所要枚数のワークW、W、Wの洗浄・乾燥、収納作業が行われる。
【0066】
このような構成によると、容器本体10a内のワークW,W・・・は、あくまでもターンテーブル10c上に平置きされるので、従来の同一チャンバーに複数枚を入れる方式やバッチ方式による場合のようにワークの表裏面が近接することなく、適切なスペースを保ってセットすることができる。
【0067】
したがって、ワークの表面、裏面が交互に近接することによるパーティクルの付着、その他の不具合要因が発生しにくく、カセット自身からのパーティクル発生、ケミカルの汚染等も生じにくい。
【0068】
また薄型大口径チャンバー内にワークを1枚ずつ平置きとする場合のような洗浄処理効率の悪さも解決できるし、1枚のみを収納する複数チャンバー(マルチチャンバー)を1システム化した場合のような装置構成の複雑化や高コスト化、処理品質の差も生じないし、装置全体のコンパクト化、ワーク搬送距離の短縮にもつながる。
【0069】
なお、上述のターンテーブル10cの高さは、図2に示すように蓋体10bを開放したワークセット状態又はワーク搬出状態では、上記搬送ロボット11の第1,第2のマニュプレータによるワークの搬出、搬送が容易な容器本体10aの開口面より少し高い突出高さにあり、また容器本体10aと蓋体10bが嵌合した洗浄処理状態では、セットされたワークW,W,Wと蓋体10bの開口内上面bとの間に適度な隙間が形成されるような高さに設定されている。
【0070】
(最良の実施の形態2)
図5および図6は、同じく洗浄流体として二酸化炭素(CO2)を採用し、アルコール等所定の液体溶媒と併用して洗浄を行うようにした本願発明の最良の実施の形態2に係る超臨界流体洗浄装置の構成を示している。
【0071】
この実施の形態では、上記実施の形態1の搬送ロボット11の第1,第2のマニュピレータを、図5のように伸縮作動可能にロングアーム構造の1ハンド型のものとして低コスト化するとともに、それに合わせて洗浄処理チャンバー10の方も図6のようなターンテーブルが不要なシンプルな構造のものとしたことを特徴とするものであり、その他の部分の構成は上述の実施の形態1のものと基本的に同様であり、同様の作用を奏する。
【0072】
すなわち、該構成の場合、洗浄処理チャンバー10は蓋体10b側のみに洗浄処理室A形成用の開口があり、容器本体10a側中央部には上述のターンテーブル10cの上面と同様のワークセット面a′が高台状に形成されている。そして、該高台状のワークセット面a′の外周側段部面には上述のOリング(シールリング)Sが嵌合固定されており、同OリングSを介して上記蓋体10b側の周壁部21fが嵌合されて所定の高さのシール状態の洗浄処理室Aを形成するようになっている。
【0073】
一方、搬送ロボット11のシリンダロッド11bの上端面側には、所定の長さのスライド溝11mを有するアーム支持部材11lが水平回動自在に軸支されており、そのスライド溝11mに対して所定の長さのスライドアーム(伸縮アーム)11nがシリンダ又はラックアンドピニオン方式で伸縮作動可能に嵌合されていてる。
【0074】
そして、同スライドアーム11nの先端部11oの左右には矢印方向に挟着作動可能な左右一対のチャック片11p,11pが設けられている。
【0075】
したがって、このような構成の場合、上記蓋体10bが開放された図示の状態において、上記スライドアーム11nを縮み方向に伸縮作動させた状態で、先端部11oをワークホッパー12a内にアプローチさせて上段側のワークWをチャッキングして取り出し、次に180°回転させた後に容器本体10a側に必要な長さ伸長作動させて、上述したターンテーブル面と同様のワークセット面a′上の第1〜第3のワーク収納セット位置に収納セットして行く。これを3回繰り返して、上記ワークセット面a′上に少なくとも3枚のワークW,W,Wをセットし、蓋体10bを閉めて実施の形態1の場合と同様の洗浄処理を行う。
【0076】
その後、再び蓋体10bを開放して、今度は上記スライドアーム11nを上記と逆の動作で作動させてワークセット面a′上の各ワークW,W,Wを順次取り出し、ワーク収納ケース12b内に積層して行く。
【0077】
このような構成の場合、スライドアーム11nの伸長量が大きく、その昇降、回転移動と合わせて先端側チャック片11p,11pが容器本体10aのワークセット面a′上のワーク収納セット位置に自由に届くため、上述した最良の実施の形態1の場合のようなターンテーブル10cおよびその回転駆動手段19等はなくてもよくなる。したがって、構成が簡単かつコストが安価になる。
【0078】
(最良の実施の形態3)
図7および図8は、同じく洗浄流体として二酸化炭素(CO2)を採用し、アルコール等所定の液体溶媒と併用して洗浄を行うようにした本願発明の最良の実施の形態3に係る超臨界流体洗浄装置の構成を示している。
【0079】
この実施の形態は、上記最良の実施の形態1,2の場合に比べて、一層多くのワークW,W・・・、W,W・・・、W,W・・・の洗浄処理を行えるように、図3のタイプの洗浄処理チャンバー10の容器本体10a側開口部を深く形成するとともに蓋体10b側の開口をなくし、かつ複数枚のワークW,W・・・を所望の有効な洗浄間隔を保って積層保持し得る複数組(4組)のプロセスカセット16,16・・・内に各々収納し、これら複数組のプロセスカセット16,16・・・を同容器本体10aの深い開口内に所定の間隔を置いて設けた第1〜第4のワーク収納セット位置に収納セットして洗浄処理を行い、洗浄処理が終了した後にも、そのままプロセスカセット16,16・・・に収納したまま取り出して、一旦中継点であるプロセスカセット載置台17上に載置する。
【0080】
そして、同状態でプロセスカセット16,16・・・内から各ワークW,W・・・を1枚毎に取り出してワーク収納ケース12bに収納積層して行く。
【0081】
これらのワークホッパー12aからのワークW,W・・・の取り出し、それに続くプロセスカセット16,16・・・内へのワークW,W・・・の移し替え、プロセスカセット16,16・・・からのワークW,W・・・の取り出し、それに続くワーク収納ケース12b内への収納の各々は、それらの何れにあっても上述の第1,第2のマニュピレータを備えた搬送ロボット11によってなされるようになっている。
【0082】
このような構成によれば、ワークW,W・・・のプロセスカセット16,16・・・内への収納取り出し工程が付加されることになるが、これは専用のマニュピレータを使用して洗浄処理中の余剰時間を使って行うようにすれば作業効率、タクト時間に影響を与えることはない。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本願発明の最良の実施の形態1に係る超臨界流体洗浄処理装置の全体的なシステム構成を示す図である。
【図2】同洗浄処理装置のチャンバー部分の容器本体および蓋体の非嵌合時における構成を示す断面図である。
【図3】同洗浄処理装置のチャンバー部分の容器本体および蓋体の嵌合時における構成を示す断面図である。
【図4】同洗浄処理装置の搬送機構部分の構成を示す斜視図である。
【図5】本願発明の最良の実施の形態2に係る超臨界流体洗浄処理装置の構成を示す図である。
【図6】同洗浄処理装置のチャンバー部分の容器本体および蓋体の非嵌合時における構成を示す断面図である。
【図7】本願発明の最良の実施の形態3に係る超臨界流体洗浄処理装置の構成を示す図である。
【図8】同洗浄処理装置のチャンバー部分の容器本体および蓋体の非嵌合時における構成を示す断面図である。
【符号の説明】
【0084】
1は二酸化炭素ボンベ、2は流体開閉バルブ、3は加圧ポンプ、5は不活性ガスタンク、7は溶媒タンク、10は洗浄処理チャンバー、10aは容器本体、10bは蓋体、11は搬送ロボット、13は蓋体開閉機構である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗浄処理チャンバーと、該洗浄処理チャンバー内に洗浄流体を供給する洗浄流体供給手段と、上記洗浄処理チャンバー内の不要物を排出する流体排出手段とを備え、上記洗浄処理チャンバー内を超臨界状態に維持することによって、当該洗浄処理チャンバー内の被洗浄物の洗浄処理を行うようにしてなる超臨界流体洗浄装置であって、洗浄前の被洗浄物を洗浄処理チャンバー内に搬送搬入する搬送搬入手段および洗浄処理終了後の被洗浄物を洗浄処理チャンバーから取り出す搬出搬送手段を設け、洗浄処理チャンバー内の複数の位置に同時に複数枚の被洗浄物を収納セットして順次洗浄処理することができるようにしたことを特徴とする超臨界流体洗浄処理装置。
【請求項2】
搬送搬入手段と搬出搬送手段がそれぞれ独立の装置として構成されていることを特徴とする請求項1記載の超臨界流体洗浄処理装置。
【請求項3】
洗浄処理チャンバー内には、被洗浄物を載置するターンテーブルが設けられており、複数の被洗浄物各々のセット位置を順次搬送搬入手段又は搬出搬送手段のアプローチ位置に対応させるべく回転移動するようになっていることを特徴とする請求項2又は3記載の超臨界流体洗浄処理装置。
【請求項4】
洗浄処理チャンバー内の複数の位置に収納セットされる被洗浄物は、それぞれ所定の治具ケース内に洗浄可能な状態で複数枚積層保持され、同状態のまま洗浄処理されるようになっていることを特徴とする請求項1,2又は3記載の超臨界流体洗浄処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−38328(P2009−38328A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−203759(P2007−203759)
【出願日】平成19年8月6日(2007.8.6)
【出願人】(390000594)隆祥産業株式会社 (64)
【Fターム(参考)】