超音波測定方法及び装置
【課題】超音波を用いて、密度分布が均一でない被測定体の厚さ又は音速、さらには音速分布を精度良く求めることができる超音波測定方法及び装置を提供する。
【解決手段】超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体50の音速と厚さを測定する超音波測定方法において、被測定体50の表面に配置された針状の発振探触子11aにより垂直方向に低周波横波超音波を発振し、前記発振探触子11aと同一面上で且つ該発振探触子11aから離間した複数の受振位置にて針状の受振探触子11aにより反射波を受振し、前記受振位置のうち超音波の反射点Pが同一である受振位置を複数選択し、該選択された各受振位置における反射波波形に基づいて夫々の超音波伝播時間τを求め、該伝播時間τを用いて音速vと厚さhをパラメータとした連立方程式を解くことにより被測定体50の音速と厚さを求める。
【解決手段】超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体50の音速と厚さを測定する超音波測定方法において、被測定体50の表面に配置された針状の発振探触子11aにより垂直方向に低周波横波超音波を発振し、前記発振探触子11aと同一面上で且つ該発振探触子11aから離間した複数の受振位置にて針状の受振探触子11aにより反射波を受振し、前記受振位置のうち超音波の反射点Pが同一である受振位置を複数選択し、該選択された各受振位置における反射波波形に基づいて夫々の超音波伝播時間τを求め、該伝播時間τを用いて音速vと厚さhをパラメータとした連立方程式を解くことにより被測定体50の音速と厚さを求める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の音速又は厚さ、さらには音速分布を測定する超音波測定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を用いて被測定体の厚さ測定や探傷を行う超音波測定方法が広く知られており、様々な技術分野で用いられている。一般的に使用されている超音波測定方法は反射法であり、これは被測定体に超音波を発振し、その反射波に基づいて厚さ測定や探傷を行うものである。
【0003】
一例として、図16を参照して1探触子法を用いた超音波測定方法につき説明する。超音波探触子51内には発振探触子と受振探触子が収納されている。超音波探触子51の探触子面全体を被測定体50の表面に当接させて配置し、発振探触子にパルス電圧を印加することにより該探触子を励振させて超音波を発生させ、この超音波を被測定体内部に発振する。被測定体の端面で反射した反射波は受振探触子にて受振され、反射波の波形が得られる。この波形のピーク位置から超音波が被検査体50を往復する伝播時間が求められ、該伝播時間に基づいて被測定体50の厚さを推定したり、あるいは被測定体50の内部に存在する欠陥等を探傷する。被測定体50の厚さを測定する場合には、波形から求められた伝播時間τと、被測定体51に固有の平均音速vとから以下の式により被測定体51の厚さhを算出することができる。一方、2探触子法では、受振探触子と発振探触子が離間して配置された構成となっている。
【0004】
【数1】
【0005】
このような超音波測定方法においては、被測定体に固有の音速が既知であることを前提条件としていた。しかしながら、被測定体の密度分布が均一でない場合においては被測定体の音速が判明していることは少なく、音速が不明である場合には、上記したような超音波測定方法が適用できなかった。
【0006】
音速又は厚さを測定する方法としては、特許文献1(特開平9−61145号公報)に記載される方法が提案されている。これは、一対の超音波送受波器を用いて一方の超音波送受波器で被測定体に対して超音波を送信し、他方の超音波送受波器で反射波を受振して被測定体の厚さ又は音速を測定する方法において、超音波送受波器の間隔が小さく配置された場合と、大きく配置された場合とでそれぞれ伝播時間を測定し、仮想された音速データをもとに媒体の厚さを求める場合には間隔の小さい場合の伝播時間を用いて厚さを算出し、求めた厚さをもとに音速を求める場合には間隙が大きい場合の伝播時間を用いて音速を算出し、これらの演算を交互に繰り返すことにより厚さ及び音速を求める構成としている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−61145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、従来の反射法を用いた超音波測定法では、密度分布が均一でない被測定体のように音速が不明な被測定体において、超音波測定法を適用することは困難であった。そこで、特許文献1の方法を用いることにより音速が不明である被測定体の超音波測定が可能となるが、内部に空隙や気泡、異物が存在し、密度分布が均一でない被測定体の場合は、精度良く測定を行うことができなかった。この理由として、特許文献1を始めとして一般的な超音波測定方法では縦波超音波が用いられているが、図15に示すように、超音波波形が波の進行方向に対して平行である縦波を用いた場合、被測定体の密度分布が均一でないと被測定体の内部に入射した縦波超音波が横波などにモード変換してしまい減衰が大きくなるため測定精度が低下してしまうことが考えられる。また、一般的な超音波測定方法で用いられる数MHzの超音波は、被測定体内部の異物や気泡、隙間等を透過できず正確な超音波の伝播時間を測定できないことも原因として考えられる。
【0009】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、超音波を用いて、密度分布が均一でない被測定体の厚さ及び音速、さらには音速分布を精度良く求めることができる超音波測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の音速と厚さを測定する超音波測定方法において、
前記被測定体の表面に配置された針状の発振探触子により垂直方向に低周波横波超音波を発振し、前記発振探触子と同一面上で且つ該発振探触子から離間した複数の受振位置にて針状の受振探触子により反射波を受振し、
前記受振位置のうち超音波の反射点が同一である受振位置を複数選択し、該選択された各受振位置における反射波波形に基づいて夫々の超音波伝播時間を求め、該伝播時間を用いて音速と厚さをパラメータとした連立方程式を解くことにより前記被測定体の音速と厚さを求めることを特徴とする。尚、前記溶融固化物としては、溶融炉のスラグ層、鋼管、鋼板、鋼材、原子炉の圧力容器、配管、鋳物、及びカーボン繊維等の強化繊維に溶融樹脂を含浸させ成型したFRPなどの繊維成型物などが挙げられる。前記焼結固化物としては、炭素電極などが挙げられる。
【0011】
本発明によれば、低周波横波超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体を測定する構成としたため、溶融固化物又は焼結固化物内に存在する気泡、空隙、結晶等の異物を透過することができ、精度良く測定を行うことが可能となる。
また、針状探触子を用いているため、表面が凹凸状になりやすい溶融固化物又は焼結固化物であっても確実に超音波を入射させることができる。
【0012】
さらに、低周波横波超音波は被測定体内に発振されるとほぼ球面状に広がる性質を有するため、発振探触子と同一面で且つ離間した位置で反射波を受振することが可能となる。
低周波横波超音波が被測定体内部でほぼ球面状に広がる性質を有することは、本発明者らの実験により確認された。図6に低周波横波超音波を用いた実験の装置構成を示す。被測定体50の表面に発振探触子11aを配置し、裏面に受振探触子11bを配置した。受振探触子11bは、まず発振探触子11aに対面する位置(基準位置)に配置し、発振探触子11aにより発振された低周波横波超音波を受振し、徐々に受振探触子11bの位置をずらしていき(11b→11b’)、基準位置からの距離Lとピーク時間、信号強度を測定した。実験結果を図7に示す。図7(a)は距離とピーク時間の関係を示すグラフ、(b)距離と信号強度の関係を示すグラフ、(c)受振探触子が超音波を受振した際の波形図である。図7(c)に示すように、受振探触子11bで受振した超音波の生波形を微分することにより、微分波形上にピークが明瞭に現れる。ここで、上に凸のピークを上ピーク、下に凸のピークを下ピークと呼ぶ。
この実験結果から明らかなように、基準位置から受振位置が離れると信号強度は減衰により低下するが、基準位置から離れた位置でも超音波を受振していることがわかる。また、距離に応じてピーク時間が長くなっていることがわかる。従って、低周波横波超音波は、被測定体内部でほぼ球面状に広がって伝播する性質を有すると推定される。
【0013】
また、前記受振探触子を前記受振位置に対応させて複数設け、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を、前記複数の受振探触子により同時に受振することが好ましい。
さらに、一つの前記受振探触子を前記受振位置に対応させて移動しながら、該受振探触子にて前記発振探触子により発振された超音波の反射波を受振することが好ましい。
【0014】
さらにまた、前記被測定体が、溶融炉の炉底に堆積したメタル層であり、
前記低周波横波超音波を用いて前記メタル層の厚さを測定することにより前記溶融炉の炉底耐火物の侵食状態を監視することを特徴とする。
これにより、空隙や針状メタル等が存在して密度分布が均一でないメタル層の厚さを精度良く測定することにより、炉底耐火物の厚さを正確に推定し、監視することができる。
灰溶融炉のメタル層の場合には、上層部は気泡などが多いため音速が遅く、下層部は比重分離で銅など音速の速い物質が密に存在しているため音速が速くなる。
【0015】
また、前記被測定体の所定の断面解析領域を複数の区画に分割し、上記した方法により各区画の平均音速を算出し、該平均音速と各区画の超音波伝播時間とを用いて前記断面解析領域の音圧分布を導き出し、該音圧分布を画像化し、該画像化した音圧分布を用いて被測定体の厚さ、又は内部気泡を含む異物の位置を検出することを特徴とする。このように音圧分布を画像化することにより、被測定体の厚さや気泡等の異物を検出することが容易となる。
さらにまた、被測定体内に異物が検出された場合、該異物が検出されない部分の平均音速を用いて被測定体の厚さを計測することが好ましい。異物が存在すると該異物で反射された反射波を受振することもあり、正確な音速を計測することが困難であるため、異物の存在しない部分の平均音速を用いることで精度の高い計測が可能となる。
【0016】
また、前記被測定体の所定の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、前記低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間を用いて各メッシュ毎の音速をパラメータとした連立方程式を収束計算することにより、前記被測定体の音速分布を求めることを特徴とする。
本発明は、被測定体の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、各メッシュ毎に音速を仮定しておき、低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間を用いて連立方程式を収束計算することにより、各メッシュの音速分布を求める。これにより、密度分布が均一でない被測定体においてその音速分布を求めることができ、この音速分布により被測定体内部の気泡、空隙、異物等の位置を把握することが可能となる。
【0017】
また、装置の発明として、超音波を発振する発振探触子と、該発振した超音波の反射波を受振する受振探触子とを備え、前記受振探触子により得られた波形を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の音速と厚さを測定する超音波測定装置において、
前記発振探触子が、前記被測定体の表面に配置され、被測定体内部に垂直方向に向けて低周波横波超音波を発振する針状の探触子であり、
前記受振探触子が、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を該発振探触子から離間した複数の受振位置にて受振する針状の探触子であって、
前記受振位置のうち超音波の反射点が同一である受振位置を複数選択し、該選択された各受振位置における反射波波形に基づいて夫々の超音波伝播時間を求める伝播時間算出手段と、前記伝播時間を用いて音速と厚さをパラメータとした連立方程式を解くことにより前記被測定体の音速又は厚さを求める音速・厚さ算出手段とを有する処理装置を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、前記受振探触子が前記複数の受振位置に対応して複数設けられ、該複数の受振探触子が、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を同時に受振することを特徴とする。
さらに、前記受振探触子が前記受振位置に対応して一つ設けられ、該受振探触子を前記複数の受振位置に対応させて移動させながら前記発振探触子により発振された超音波の反射波を受振することを特徴とする。
【0019】
また、前記処理装置は、前記被測定体の所定の断面解析領域を複数の区画に分割し、前記音速・厚さ算出手段により各区画の平均音速を算出し、該平均音速と各区画の超音波伝播時間とを用いて前記断面解析領域の音圧分布を導き出す音圧分布導出手段と、該音圧分布を画像化する画像化手段と、該画像化した音圧分布を用いて被測定体の厚さ、又は内部気泡を含む異物の位置を検出する演算手段とを有することを特徴とする。
さらにまた、前記処理装置は、前記被測定体の所定の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、前記低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間により各メッシュ毎の音速をパラメータとした連立方程式を収束計算することにより、前記被測定体の音速分布を求める音速分布導出手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上記載のごとく本発明によれば、低周波横波超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体を測定する構成としたため、溶融固化物又は焼結固化物内に存在する気泡、空隙、結晶等の異物を透過することができ、精度良く測定を行うことが可能となる。
また、針状探触子を用いているため、表面が凹凸状になりやすい溶融固化物又は焼結固化物であっても確実に超音波を入射させることができる。
さらに、低周波横波超音波は被測定体内に発振するとほぼ球面状に広がって伝播するため、反射波を発射面と同一の面で受振することが可能である。
【0021】
また、被測定体の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、各メッシュ毎に音速を仮定しておき、低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間を用いて連立方程式を収束計算することにより、各メッシュの音速分布を求める。これにより、密度分布が均一でない被測定体においてその音速分布を求めることができ、この音速分布により被測定体内部の気泡、空隙、異物等の位置を把握することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本発明の実施形態に係る超音波測定方法は、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の厚さ及び音速、さらには音速分布を測定するものである。被測定体としては、例えば、溶融炉のスラグ層、鋼管、鋼板、鋼材、原子炉の圧力容器、配管、鋳物などの溶融固化物、又は炭素電極等の焼結固化物などが挙げられる。前記溶融固化物は、カーボン繊維等の強化繊維に溶融樹脂を含浸させ成型したFRPなどの繊維成型物を含む。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係る超音波測定装置の構成図である。同図に示すように、本実施形態の超音波測定装置100は、超音波探触子11と、該探触子11に信号ケーブル19a、19bを介して接続される波形計測器10と、該波形計測器10からの波形データが入力される処理装置20と、を備えている。
【0024】
前記探触子11は、被測定体50の表面に当接配置されており、該表面から被検査体内部に向けて、表面に対して垂直に低周波横波超音波を発振する。該探触子11は、内蔵された超音波振動子が励振されると超音波を発生して炉底電極8内に超音波を発振し、被検査体50の端面で反射された超音波を受振する。本実施形態で用いる低周波横波超音波は、好適には周波数が数十〜数百kHzの超音波とし、さらに好適には周波数が100kHz以下の超音波とする。
【0025】
前記探触子11の具体的構成を図2〜図4に示す。
図2は、低周波横波用の針状探触子の概要を示す図である。同図に示すように、探触子11は針状となっており、発振側11aと受振側11bに夫々複数の針状の超音波振動子を有する。該超音波振動子は、被検査体50の表面に対して点接触した状態で配置される。
【0026】
図3は、低周波横波用の針状探触子の一例を示す詳細図である。針状探触子11は、複数の発振探触子11aと受振探触子11bを左右に振り分けてそれぞれ複数個で構成されている。
発振探触子11aと受振探触子11bの単体113はそれぞれが独立で上下動作し、スプリング115で押さえつけられる構造で、被検査体50の表面の凹凸面に対しそれぞれが接触する仕組みとなっている。発振探触子11aはコネクタ110から発振回路117に電気信号が送られ、その信号により発振するための電力がケーブル116を介して振動子111に送られ、該振動子111が振動し、被検査体50に横波を発生させる構造となっている。受振探触子11bは逆に振動子111がセンサとなり、受けた振動を電気信号として受振回路118が受取り、コネクタ110に送る。発振探触子11aと受振探触子11bの夫々の探触子単体113は、中芯側の振動子111が発振回路117からの電気信号により振動するが、その外側が円筒ガイド114に接触しながら上下動作するため、円筒ガイド114には振動が伝わらないように振動子111の外側を防振ゴムで覆っている。
【0027】
図4は、センサアレイ(探触子)の一例を示す斜視図である。このセンサアレイ11は、ケーシング119内に複数の探触子の単体113が配列された構造を備えている。該センサアレイ11は、信号ケーブル19a、19bを介して波形計測器10に接続される。
図1を参照して、前記波形計測器10は、パルス電圧を発生するパルス発生器13と、該パルス電圧を探触子11に送信(印加)する送信部12と、探触子11にて受振した超音波が電気信号に変換され波形データとして入力される受信部14と、該受信部14に入力された波形データを増幅する増幅部15と、増幅された波形データを表示するための液晶画面やCRT等の波形表示部16と、を備えている。
【0028】
前記処理装置20は、波形計測器10にて得られた波形データが入力され、該波形データに基づいて所定の演算処理を実行することにより被測定体50の音速又は厚さ、あるいは音速分布等を算出する装置である。該処理装置20は、中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
該処理装置20の機能的構成としては、波形データのフィルタ処理、移動平均処理、微分処理等の所定の波形処理を行う波形処理部21と、該波形処理された波形データのピーク位置から求められた超音波の伝播時間に基づいて被測定体50の音速又は厚さ、あるいは音速分布等を算出する演算部22と、を備える。尚、波形データのフィルタ処理、移動平均処理、微分処理等の波形処理は、波形計測器10側で行うようにしてもよい。
【0029】
次に、上記構成を備える装置を用いて、超音波測定を行う方法につき以下に説明する。
超音波振動子11を被検査体50の表面に当接させて配置しておき、パルス発生器13にて発生させたパルス電圧を送信部12から信号ケーブル19aを介して探触子11に送信し、該探触子11を励振させて超音波を発生させ、該探触子11から垂直方向に低周波横波超音波を発振する。そして探触子11により反射波を被検査体50の表面で受振し、信号ケーブル19bを介して受信部14に入力する。該受信部14にて受信された超音波の波形データは、増幅器15で増幅された後、波形表示部16に表示される。このようにして波形データが得られる。
【0030】
本実施形態では、超音波の反射点が同一となる複数の発振点−受振点において、上記した手順により複数の波形データを取得するようにした。
即ち、図5に示すように、超音波の反射点が同一となる発振点−受振点の組み合わせが複数設定される。発振探触子11aと受振探触子11bは、夫々複数設置されていてもよいし、一組の発振探触子11aと受振探触子11bを用いて、これを反射位置が同一となるように位置をずらして複数点の計測を行なうようにしてもよい。図5には一例として、複数の発振探触子11aと受振探触子11bを設置した構成を示した。発振探触子(1)11aで発生させた超音波は受振探触子(1’)11bで受振され、発振探触子(2)11aで発生させた超音波は受振探触子(2’)11bで受振される。発振探触子(2)−受振探触子(2’)の距離L2は、発振探触子(1)−受振探触子(1’)の距離L1より長くとっているが、このように装置間の距離Lを異ならせた複数点において測定を行なう。また、受振探触子と発振探触子とを内蔵した探触子(0)11を備えており、該探触子11は前記反射位置の直上に配置される。
【0031】
このような装置構成により求められた複数の波形データは、それぞれ処理装置20に入力される。該処理装置20では、波形処理部21にて、ノイズ除去を含む所定の波形処理が行われる。ここで、該波形処理手順の一例を以下に説明する。尚、波形処理部21では、低周波横波超音波が対象物内部を伝播する伝播時間を精度良く求めるために、好適な処理を適宜選択して実施するものであり、以下の手順に限定されるものではない。
まず、波形計測器10で取得した波形データをフィルタ処理する。これは、最初にバンドパスフィルタにより波形データをフィルタ処理し、所定の周波数帯の成分を抽出する。バンドパスフィルタは、例えば20MHzバンドパスフィルタを用いる。このとき、アベレージング処理を行うことが好ましい。例えば、アベレージング回数は4回とする。次いで、ローパスフィルタにより波形データをフィルタ処理し、波形データから低域周波数のみを抽出する。ローパスフィルタは、例えば70kHzローパスフィルタを用いる。
【0032】
そして、フィルタ処理を行った波形データに対して時間軸方向に沿って移動平均処理を行い、波形の平滑化を行った後、該波形データを微分処理して微分波形を取得する。
この微分波形からピーク時間を求め、このピーク時間から所定のオフセット時間を差し引いて伝播時間を求める。これは、微分波形にて、最初に到達する下向き波形のピーク位置から、予め把握しておいた発振→受振で発生するオフセット時間を差し引いた時間を電極長さに相当する伝播時間とする。前記オフセット時間は、超音波送受信時に生じる遅延時間などから求められるもので、このオフセット時間をピーク時間から差し引くことで、正確な伝播時間を求めることができる。尚、波形データからピーク位置を検出する際には、対象物ごとに適したピークを選択して検出するものとする。波形データには、上に凸の上ピークと下に凸の下ピークとがあるが、例えば、対象物がカーボン電極の場合は、下ピークが大きく出現するため下ピークを用いてピーク時間を計測する。この場合にはオフセット時間を下ピーク用に設定しておく。また、対象物が溶融炉のメタルの場合は、上ピークが明瞭に出現するため上ピークを用いてピーク時間を計測する。この場合にはオフセット時間を上ピーク用に設定しておく。
【0033】
このようにして、複数の発振点−受振点において、夫々上記した方法により伝播時間が求められる。伝播時間は、被測定体11内を伝播される超音波の発振から受振までの時間である。
この伝播時間から各発振点−受振点における以下の連立方程式が得られる。伝播時間を3つ以上計測した場合にはフィッティングによって平均音速及び厚さを算出する。
本手法のことを以下2点法と呼ぶこととする。
【0034】
【数2】
ここで、τ1、τ2:伝播時間、L1、L2:探触子間距離、h:被測定体厚さ、v:平均音速である。
前記連立方程式を解くことにより、平均音速v、及び厚さhが求められる。
【0035】
本実施形態によれば、低周波横波超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体を測定する構成としたため、溶融固化物又は焼結固化物内に存在する気泡、空隙、結晶等の異物を透過することができ、精度良く測定を行うことが可能となる。
また、針状探触子を用いているため、表面が凹凸状になりやすい溶融固化物又は焼結固化物であっても確実に超音波を入射させることができる。
また、低周波横波超音波は被測定体内に発振するとほぼ球面状に広がるため、反射波を発射面と同一の面で受振することが可能である。
また、音速分布がある場合でも、2点法を用いることで平均音速と厚さを求めることができる。
【0036】
さらに本実施形態は、溶融炉の耐火物厚さ計測に好適に用いることができる。上記した超音波測定を炉底部の複数点で実施することで、メタル内部及び炉底耐火物面の分布、例えば目地の差込や耐火物の剥離、メタル内の空隙などを把握することが可能である。目地の差込が残存耐火物の半分以上となった場合には溶融炉の運転継続が困難となるため、メタル層の厚さを超音波測定して、該メタル層の厚さに基づいて耐火物の厚さを推定することにより、溶融炉の安定運転が可能となる。
【0037】
次に、音速分布が均一でない被測定体の厚さや内部気泡状況を求める方法につき以下に説明する。
まず、被測定体の断面解析領域を設定し、この領域を複数の区画に分割する。例えば、断面解析領域を格子状にメッシュ分割する。そして、各メッシュごとに2点法などで平均音速を求め、各メッシュの平均音速を平均して断面解析領域全体の平均音速を算出する。
【0038】
具体的には図8に示すように、1〜7の各位置が反射点となるように2点法を実施し、各位置での平均音速を求める。図8中では、2、4、6にて2点法を実施した場合を例示している。この2、4、6の各位置において、発振探触子の位置を(1)〜(3)とし、これに対応して受振探触子の位置(1’)〜(3’)として夫々のセンサ間距離および受信時間を計測する。このとき、図8のように一つの反射点において3つ以上計測した場合にはフィッティングによって平均音速及び厚さを算出する。これは、発振探触子−受振探触子間の距離によって受振時間が異なるが、これを図9に示すようにグラフ化して、ピーク位置を通過するフィッティング曲線を求め、このフィッティング曲線から厚さと平均音速を算出する。
【0039】
さらに、1〜7の各反射点の平均音速を算出して、断面解析領域全体の平均音速を求め、該平均音速を用いて各位置の音圧分布を表示する。一般に、ピークが大きい位置は音圧が大きくなる。炉底メタル層の場合には、上層部は気泡などが多いため音速が遅く、下層部は比重分離で銅など音速の速い物質が密に存在しているため音速が速くなる。また、複数の区画に分割してその平均音速を求めた場合は、図10に示すように、気泡が存在する区画は音速の影響が大きくなり位置Bでの音速は遅くなってしまう。そこで、気泡が存在しない位置A(図中1、4、5、7に対応)の音速の平均値を用いてメタル層の厚さを求めるようにする。
【0040】
この平均音速および各メッシュで計測した反射時間および振幅から各メッシュ内部の音圧分布を求め、コンター図などで画像化する。この画像を見ることで被測定体の厚さや内部気泡の状況を可視化できる。図11に被測定体の音圧分布を表すトモグラフィー画像を示す。図中C部分が音圧(振幅)の大きい位置で、炉底レンガとメタルの境界面が最も強い反射となっており、初期値である実線Dと比較して視覚的にレンガの侵食状況を確認することができる。
深さ方向に音速分布がある被測定体の厚さを正確に求めたい場合で、内部に気泡がある場合には気泡の上部の音速の影響が大きくなるのを排除するために内部気泡の無いメッシュを選択して平均音速を求めることが好ましい。
【0041】
次に、密度分布が均一でない被測定体の音速分布を求める方法につき、以下に説明する。
これは、被測定体の断面解析領域を設定し、この領域をメッシュ分割して、各メッシュ毎の音速や反射率などの物性を仮定しておき、複数の伝播時間を用いて連立方程式を収束計算して各メッシュの音速分布を求めるものである。
【0042】
本実施形態では、一例としてプラズマ式溶融炉の炉底部を被測定体として超音波測定を行い、該炉底部の音速分布を求める。
図12に示すように、プラズマ式溶融炉60は、炉本体64の炉蓋から主電極61が垂下され、これに対向して炉底から炉底電極62が挿設されている。主電極61は不図示の可動装置により昇降可能で、炉底電極62は炉本体64に固定される。プラズマ式灰溶融炉60では、これらの電極間に直流電源により直流電流を通流して炉内にプラズマアークを発生させ、炉内に投入された被処理物をプラズマアーク熱及び前記電極間を流れる電流のジュール熱により溶融処理する。被処理物が溶融した溶融スラグは炉底に溜まり、その下部には比重差により溶融メタル63が堆積する。溶融スラグは適宜出滓口64aより排出され、溶融メタル9は炉本体2を傾動させることにより出滓される。
炉本体64の側壁及び蓋部の内側は不定形耐火材65で形成され、炉底部67には、侵食に強いアーチ状の耐火レンガ68が内側に配設され、その下に耐火レンガ69が配設される。これらの耐火物の外表面は鋼板製のケーシング66で被覆されている。メタル9に接する耐火レンガ68は、目地の差込等によりその表面が侵食される。
【0043】
このようなプラズマ式溶融炉60において、休炉時にメタル層9を露出させた状態で超音波測定を行い、メタル層9の音速分布を測定する。
超音波振動子11はメタル層9の表面に当接して配置され、該超音波振動子11には波形計測器10と処理装置20が接続される。
【0044】
まず、メタル層9の断面解析領域を設定する。図13は、この断面解析領域を表した図である。そして、断面解析領域を格子状にメッシュ分割する。各メッシュ毎に音速を仮定しておく。
一方、図5に示したように、低周波横波超音波を用いて複数の伝播時間を測定し、この伝播時間を用いて連立方程式を収束計算し、各メッシュの音速分布を求める。このようにして音速分布を求めることにより、図14に示されるような断面音速分布が得られる。
また、音速の他に、反射率等の他の物性を仮定して連立方程式を生成し、低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間を用いてこの連立方程式を収束計算することにより、前記仮定した物性を求めることも可能である。
【0045】
本実施形態によれば、被測定体の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、各メッシュ毎に音速を仮定しておき、低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間を用いて連立方程式を収束計算することにより、各メッシュの音速分布を求める。これにより、密度分布が均一でない被測定体においてその音速分布を求めることができ、この音速分布により被測定体内部の気泡、空隙、異物等の位置を把握することが可能となる。
また、求められた音速分布から水平方向の音速分布が均一な断面を選択し、2点法を用いて被測定体の平均音速又は厚さを精度良く求めることが可能となる。
【0046】
また、図17に示すように、本実施形態に係る超音波測定装置は、原子炉格納容器に適用することも可能である。
原子炉容器や蒸気発生器など、原子力発電所の主な機器は、万一事故が起きても放射性物質を発電所の外に出さないようにするために格納容器70の中に格納されている。格納容器70の外殻71は、例えば、厚さ4.5cmの鋼板でできており、さらにその外側は厚さ80cmの鉄筋コンクリートの建屋で覆われている。地震などが発生した後に鉄筋コンクリート建屋の健全性を把握するために、格納容器70の外殻71に低周波横波超音波を送受信する超音波探触子11を当接させる。
コンクリートが経年劣化すると音速が変化する。よって、従来は一部のコンクリートをサンプル破壊して全体の健全性を確認していた。
本実施形態では、超音波探触子11にて得られた波形データに基づいて2点法で音速および厚さを計測することで、破壊することなく健全性を確認できる。トモグラフィーを用いると亀裂や脱落などの分布まで確認することができ、劣化診断・耐震評価・対策を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の超音波測定方法及び装置は、超音波を用いて、密度分布が均一でない被測定体の厚さ又は音速、さらには音速分布を精度良く求めることができるため、様々な技術分野で幅広く用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波測定装置の構成図である。
【図2】低周波横波用の針状探触子の概要を示す図である。
【図3】低周波横波用の針状探触子の一例を示す詳細図である。
【図4】センサアレイの一例を示す斜視図である。
【図5】センサアレイの模式図である。
【図6】低周波横波超音波を用いた実験の装置構成を示す図である。
【図7】低周波横波超音波を用いた実験の結果を示す図で、(a)距離とピーク時間の関係を示すグラフ、(b)距離と信号強度の関係を示すグラフ、(c)受振探触子が超音波を受振した際の波形図である。
【図8】発振探触子及び受振探触子の位置と各反射位置を示す対象物の断面図である。
【図9】波形のピークを用いたフィッティング処理を説明する図である。
【図10】対象物内部の状態と平均音速の関係を示すイメージ図である。
【図11】本発明の実施形態に係る超音波測定により得られたトモグラフィ画像を示す図である。
【図12】溶融炉における炉底耐火物の侵食例を示す断面図である。
【図13】メッシュ分割した断面解析領域を模式的に表す図である。
【図14】炉底に堆積したメタル層の断面音速分布を表す図である。
【図15】縦波と横波の反射状態を説明する図である。
【図16】1探触子法を用いた超音波測定方法を説明する図である。
【図17】本発明の実施形態に係る超音波測定装置を原子炉格納容器に適用した場合を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 波形計測器
11 超音波探触子
11a 発振探触子
11b 受振探触子
12 送信部
13 パルス発生部
14 受信部
15 増幅部
16 波形表示部
20 処理装置
21 波形処理部
22 演算部
100 超音波測定装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の音速又は厚さ、さらには音速分布を測定する超音波測定方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、超音波を用いて被測定体の厚さ測定や探傷を行う超音波測定方法が広く知られており、様々な技術分野で用いられている。一般的に使用されている超音波測定方法は反射法であり、これは被測定体に超音波を発振し、その反射波に基づいて厚さ測定や探傷を行うものである。
【0003】
一例として、図16を参照して1探触子法を用いた超音波測定方法につき説明する。超音波探触子51内には発振探触子と受振探触子が収納されている。超音波探触子51の探触子面全体を被測定体50の表面に当接させて配置し、発振探触子にパルス電圧を印加することにより該探触子を励振させて超音波を発生させ、この超音波を被測定体内部に発振する。被測定体の端面で反射した反射波は受振探触子にて受振され、反射波の波形が得られる。この波形のピーク位置から超音波が被検査体50を往復する伝播時間が求められ、該伝播時間に基づいて被測定体50の厚さを推定したり、あるいは被測定体50の内部に存在する欠陥等を探傷する。被測定体50の厚さを測定する場合には、波形から求められた伝播時間τと、被測定体51に固有の平均音速vとから以下の式により被測定体51の厚さhを算出することができる。一方、2探触子法では、受振探触子と発振探触子が離間して配置された構成となっている。
【0004】
【数1】
【0005】
このような超音波測定方法においては、被測定体に固有の音速が既知であることを前提条件としていた。しかしながら、被測定体の密度分布が均一でない場合においては被測定体の音速が判明していることは少なく、音速が不明である場合には、上記したような超音波測定方法が適用できなかった。
【0006】
音速又は厚さを測定する方法としては、特許文献1(特開平9−61145号公報)に記載される方法が提案されている。これは、一対の超音波送受波器を用いて一方の超音波送受波器で被測定体に対して超音波を送信し、他方の超音波送受波器で反射波を受振して被測定体の厚さ又は音速を測定する方法において、超音波送受波器の間隔が小さく配置された場合と、大きく配置された場合とでそれぞれ伝播時間を測定し、仮想された音速データをもとに媒体の厚さを求める場合には間隔の小さい場合の伝播時間を用いて厚さを算出し、求めた厚さをもとに音速を求める場合には間隙が大きい場合の伝播時間を用いて音速を算出し、これらの演算を交互に繰り返すことにより厚さ及び音速を求める構成としている。
【0007】
【特許文献1】特開平9−61145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記したように、従来の反射法を用いた超音波測定法では、密度分布が均一でない被測定体のように音速が不明な被測定体において、超音波測定法を適用することは困難であった。そこで、特許文献1の方法を用いることにより音速が不明である被測定体の超音波測定が可能となるが、内部に空隙や気泡、異物が存在し、密度分布が均一でない被測定体の場合は、精度良く測定を行うことができなかった。この理由として、特許文献1を始めとして一般的な超音波測定方法では縦波超音波が用いられているが、図15に示すように、超音波波形が波の進行方向に対して平行である縦波を用いた場合、被測定体の密度分布が均一でないと被測定体の内部に入射した縦波超音波が横波などにモード変換してしまい減衰が大きくなるため測定精度が低下してしまうことが考えられる。また、一般的な超音波測定方法で用いられる数MHzの超音波は、被測定体内部の異物や気泡、隙間等を透過できず正確な超音波の伝播時間を測定できないことも原因として考えられる。
【0009】
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、超音波を用いて、密度分布が均一でない被測定体の厚さ及び音速、さらには音速分布を精度良く求めることができる超音波測定方法及び装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
そこで、本発明はかかる課題を解決するために、超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の音速と厚さを測定する超音波測定方法において、
前記被測定体の表面に配置された針状の発振探触子により垂直方向に低周波横波超音波を発振し、前記発振探触子と同一面上で且つ該発振探触子から離間した複数の受振位置にて針状の受振探触子により反射波を受振し、
前記受振位置のうち超音波の反射点が同一である受振位置を複数選択し、該選択された各受振位置における反射波波形に基づいて夫々の超音波伝播時間を求め、該伝播時間を用いて音速と厚さをパラメータとした連立方程式を解くことにより前記被測定体の音速と厚さを求めることを特徴とする。尚、前記溶融固化物としては、溶融炉のスラグ層、鋼管、鋼板、鋼材、原子炉の圧力容器、配管、鋳物、及びカーボン繊維等の強化繊維に溶融樹脂を含浸させ成型したFRPなどの繊維成型物などが挙げられる。前記焼結固化物としては、炭素電極などが挙げられる。
【0011】
本発明によれば、低周波横波超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体を測定する構成としたため、溶融固化物又は焼結固化物内に存在する気泡、空隙、結晶等の異物を透過することができ、精度良く測定を行うことが可能となる。
また、針状探触子を用いているため、表面が凹凸状になりやすい溶融固化物又は焼結固化物であっても確実に超音波を入射させることができる。
【0012】
さらに、低周波横波超音波は被測定体内に発振されるとほぼ球面状に広がる性質を有するため、発振探触子と同一面で且つ離間した位置で反射波を受振することが可能となる。
低周波横波超音波が被測定体内部でほぼ球面状に広がる性質を有することは、本発明者らの実験により確認された。図6に低周波横波超音波を用いた実験の装置構成を示す。被測定体50の表面に発振探触子11aを配置し、裏面に受振探触子11bを配置した。受振探触子11bは、まず発振探触子11aに対面する位置(基準位置)に配置し、発振探触子11aにより発振された低周波横波超音波を受振し、徐々に受振探触子11bの位置をずらしていき(11b→11b’)、基準位置からの距離Lとピーク時間、信号強度を測定した。実験結果を図7に示す。図7(a)は距離とピーク時間の関係を示すグラフ、(b)距離と信号強度の関係を示すグラフ、(c)受振探触子が超音波を受振した際の波形図である。図7(c)に示すように、受振探触子11bで受振した超音波の生波形を微分することにより、微分波形上にピークが明瞭に現れる。ここで、上に凸のピークを上ピーク、下に凸のピークを下ピークと呼ぶ。
この実験結果から明らかなように、基準位置から受振位置が離れると信号強度は減衰により低下するが、基準位置から離れた位置でも超音波を受振していることがわかる。また、距離に応じてピーク時間が長くなっていることがわかる。従って、低周波横波超音波は、被測定体内部でほぼ球面状に広がって伝播する性質を有すると推定される。
【0013】
また、前記受振探触子を前記受振位置に対応させて複数設け、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を、前記複数の受振探触子により同時に受振することが好ましい。
さらに、一つの前記受振探触子を前記受振位置に対応させて移動しながら、該受振探触子にて前記発振探触子により発振された超音波の反射波を受振することが好ましい。
【0014】
さらにまた、前記被測定体が、溶融炉の炉底に堆積したメタル層であり、
前記低周波横波超音波を用いて前記メタル層の厚さを測定することにより前記溶融炉の炉底耐火物の侵食状態を監視することを特徴とする。
これにより、空隙や針状メタル等が存在して密度分布が均一でないメタル層の厚さを精度良く測定することにより、炉底耐火物の厚さを正確に推定し、監視することができる。
灰溶融炉のメタル層の場合には、上層部は気泡などが多いため音速が遅く、下層部は比重分離で銅など音速の速い物質が密に存在しているため音速が速くなる。
【0015】
また、前記被測定体の所定の断面解析領域を複数の区画に分割し、上記した方法により各区画の平均音速を算出し、該平均音速と各区画の超音波伝播時間とを用いて前記断面解析領域の音圧分布を導き出し、該音圧分布を画像化し、該画像化した音圧分布を用いて被測定体の厚さ、又は内部気泡を含む異物の位置を検出することを特徴とする。このように音圧分布を画像化することにより、被測定体の厚さや気泡等の異物を検出することが容易となる。
さらにまた、被測定体内に異物が検出された場合、該異物が検出されない部分の平均音速を用いて被測定体の厚さを計測することが好ましい。異物が存在すると該異物で反射された反射波を受振することもあり、正確な音速を計測することが困難であるため、異物の存在しない部分の平均音速を用いることで精度の高い計測が可能となる。
【0016】
また、前記被測定体の所定の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、前記低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間を用いて各メッシュ毎の音速をパラメータとした連立方程式を収束計算することにより、前記被測定体の音速分布を求めることを特徴とする。
本発明は、被測定体の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、各メッシュ毎に音速を仮定しておき、低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間を用いて連立方程式を収束計算することにより、各メッシュの音速分布を求める。これにより、密度分布が均一でない被測定体においてその音速分布を求めることができ、この音速分布により被測定体内部の気泡、空隙、異物等の位置を把握することが可能となる。
【0017】
また、装置の発明として、超音波を発振する発振探触子と、該発振した超音波の反射波を受振する受振探触子とを備え、前記受振探触子により得られた波形を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の音速と厚さを測定する超音波測定装置において、
前記発振探触子が、前記被測定体の表面に配置され、被測定体内部に垂直方向に向けて低周波横波超音波を発振する針状の探触子であり、
前記受振探触子が、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を該発振探触子から離間した複数の受振位置にて受振する針状の探触子であって、
前記受振位置のうち超音波の反射点が同一である受振位置を複数選択し、該選択された各受振位置における反射波波形に基づいて夫々の超音波伝播時間を求める伝播時間算出手段と、前記伝播時間を用いて音速と厚さをパラメータとした連立方程式を解くことにより前記被測定体の音速又は厚さを求める音速・厚さ算出手段とを有する処理装置を備えたことを特徴とする。
【0018】
また、前記受振探触子が前記複数の受振位置に対応して複数設けられ、該複数の受振探触子が、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を同時に受振することを特徴とする。
さらに、前記受振探触子が前記受振位置に対応して一つ設けられ、該受振探触子を前記複数の受振位置に対応させて移動させながら前記発振探触子により発振された超音波の反射波を受振することを特徴とする。
【0019】
また、前記処理装置は、前記被測定体の所定の断面解析領域を複数の区画に分割し、前記音速・厚さ算出手段により各区画の平均音速を算出し、該平均音速と各区画の超音波伝播時間とを用いて前記断面解析領域の音圧分布を導き出す音圧分布導出手段と、該音圧分布を画像化する画像化手段と、該画像化した音圧分布を用いて被測定体の厚さ、又は内部気泡を含む異物の位置を検出する演算手段とを有することを特徴とする。
さらにまた、前記処理装置は、前記被測定体の所定の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、前記低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間により各メッシュ毎の音速をパラメータとした連立方程式を収束計算することにより、前記被測定体の音速分布を求める音速分布導出手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
以上記載のごとく本発明によれば、低周波横波超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体を測定する構成としたため、溶融固化物又は焼結固化物内に存在する気泡、空隙、結晶等の異物を透過することができ、精度良く測定を行うことが可能となる。
また、針状探触子を用いているため、表面が凹凸状になりやすい溶融固化物又は焼結固化物であっても確実に超音波を入射させることができる。
さらに、低周波横波超音波は被測定体内に発振するとほぼ球面状に広がって伝播するため、反射波を発射面と同一の面で受振することが可能である。
【0021】
また、被測定体の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、各メッシュ毎に音速を仮定しておき、低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間を用いて連立方程式を収束計算することにより、各メッシュの音速分布を求める。これにより、密度分布が均一でない被測定体においてその音速分布を求めることができ、この音速分布により被測定体内部の気泡、空隙、異物等の位置を把握することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
本発明の実施形態に係る超音波測定方法は、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の厚さ及び音速、さらには音速分布を測定するものである。被測定体としては、例えば、溶融炉のスラグ層、鋼管、鋼板、鋼材、原子炉の圧力容器、配管、鋳物などの溶融固化物、又は炭素電極等の焼結固化物などが挙げられる。前記溶融固化物は、カーボン繊維等の強化繊維に溶融樹脂を含浸させ成型したFRPなどの繊維成型物を含む。
【0023】
図1は本発明の実施形態に係る超音波測定装置の構成図である。同図に示すように、本実施形態の超音波測定装置100は、超音波探触子11と、該探触子11に信号ケーブル19a、19bを介して接続される波形計測器10と、該波形計測器10からの波形データが入力される処理装置20と、を備えている。
【0024】
前記探触子11は、被測定体50の表面に当接配置されており、該表面から被検査体内部に向けて、表面に対して垂直に低周波横波超音波を発振する。該探触子11は、内蔵された超音波振動子が励振されると超音波を発生して炉底電極8内に超音波を発振し、被検査体50の端面で反射された超音波を受振する。本実施形態で用いる低周波横波超音波は、好適には周波数が数十〜数百kHzの超音波とし、さらに好適には周波数が100kHz以下の超音波とする。
【0025】
前記探触子11の具体的構成を図2〜図4に示す。
図2は、低周波横波用の針状探触子の概要を示す図である。同図に示すように、探触子11は針状となっており、発振側11aと受振側11bに夫々複数の針状の超音波振動子を有する。該超音波振動子は、被検査体50の表面に対して点接触した状態で配置される。
【0026】
図3は、低周波横波用の針状探触子の一例を示す詳細図である。針状探触子11は、複数の発振探触子11aと受振探触子11bを左右に振り分けてそれぞれ複数個で構成されている。
発振探触子11aと受振探触子11bの単体113はそれぞれが独立で上下動作し、スプリング115で押さえつけられる構造で、被検査体50の表面の凹凸面に対しそれぞれが接触する仕組みとなっている。発振探触子11aはコネクタ110から発振回路117に電気信号が送られ、その信号により発振するための電力がケーブル116を介して振動子111に送られ、該振動子111が振動し、被検査体50に横波を発生させる構造となっている。受振探触子11bは逆に振動子111がセンサとなり、受けた振動を電気信号として受振回路118が受取り、コネクタ110に送る。発振探触子11aと受振探触子11bの夫々の探触子単体113は、中芯側の振動子111が発振回路117からの電気信号により振動するが、その外側が円筒ガイド114に接触しながら上下動作するため、円筒ガイド114には振動が伝わらないように振動子111の外側を防振ゴムで覆っている。
【0027】
図4は、センサアレイ(探触子)の一例を示す斜視図である。このセンサアレイ11は、ケーシング119内に複数の探触子の単体113が配列された構造を備えている。該センサアレイ11は、信号ケーブル19a、19bを介して波形計測器10に接続される。
図1を参照して、前記波形計測器10は、パルス電圧を発生するパルス発生器13と、該パルス電圧を探触子11に送信(印加)する送信部12と、探触子11にて受振した超音波が電気信号に変換され波形データとして入力される受信部14と、該受信部14に入力された波形データを増幅する増幅部15と、増幅された波形データを表示するための液晶画面やCRT等の波形表示部16と、を備えている。
【0028】
前記処理装置20は、波形計測器10にて得られた波形データが入力され、該波形データに基づいて所定の演算処理を実行することにより被測定体50の音速又は厚さ、あるいは音速分布等を算出する装置である。該処理装置20は、中央処理装置(CPU)、読み出し専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)及び入出力インタフェース(I/Oインタフェース)を備えたマイクロコンピュータで構成される。
該処理装置20の機能的構成としては、波形データのフィルタ処理、移動平均処理、微分処理等の所定の波形処理を行う波形処理部21と、該波形処理された波形データのピーク位置から求められた超音波の伝播時間に基づいて被測定体50の音速又は厚さ、あるいは音速分布等を算出する演算部22と、を備える。尚、波形データのフィルタ処理、移動平均処理、微分処理等の波形処理は、波形計測器10側で行うようにしてもよい。
【0029】
次に、上記構成を備える装置を用いて、超音波測定を行う方法につき以下に説明する。
超音波振動子11を被検査体50の表面に当接させて配置しておき、パルス発生器13にて発生させたパルス電圧を送信部12から信号ケーブル19aを介して探触子11に送信し、該探触子11を励振させて超音波を発生させ、該探触子11から垂直方向に低周波横波超音波を発振する。そして探触子11により反射波を被検査体50の表面で受振し、信号ケーブル19bを介して受信部14に入力する。該受信部14にて受信された超音波の波形データは、増幅器15で増幅された後、波形表示部16に表示される。このようにして波形データが得られる。
【0030】
本実施形態では、超音波の反射点が同一となる複数の発振点−受振点において、上記した手順により複数の波形データを取得するようにした。
即ち、図5に示すように、超音波の反射点が同一となる発振点−受振点の組み合わせが複数設定される。発振探触子11aと受振探触子11bは、夫々複数設置されていてもよいし、一組の発振探触子11aと受振探触子11bを用いて、これを反射位置が同一となるように位置をずらして複数点の計測を行なうようにしてもよい。図5には一例として、複数の発振探触子11aと受振探触子11bを設置した構成を示した。発振探触子(1)11aで発生させた超音波は受振探触子(1’)11bで受振され、発振探触子(2)11aで発生させた超音波は受振探触子(2’)11bで受振される。発振探触子(2)−受振探触子(2’)の距離L2は、発振探触子(1)−受振探触子(1’)の距離L1より長くとっているが、このように装置間の距離Lを異ならせた複数点において測定を行なう。また、受振探触子と発振探触子とを内蔵した探触子(0)11を備えており、該探触子11は前記反射位置の直上に配置される。
【0031】
このような装置構成により求められた複数の波形データは、それぞれ処理装置20に入力される。該処理装置20では、波形処理部21にて、ノイズ除去を含む所定の波形処理が行われる。ここで、該波形処理手順の一例を以下に説明する。尚、波形処理部21では、低周波横波超音波が対象物内部を伝播する伝播時間を精度良く求めるために、好適な処理を適宜選択して実施するものであり、以下の手順に限定されるものではない。
まず、波形計測器10で取得した波形データをフィルタ処理する。これは、最初にバンドパスフィルタにより波形データをフィルタ処理し、所定の周波数帯の成分を抽出する。バンドパスフィルタは、例えば20MHzバンドパスフィルタを用いる。このとき、アベレージング処理を行うことが好ましい。例えば、アベレージング回数は4回とする。次いで、ローパスフィルタにより波形データをフィルタ処理し、波形データから低域周波数のみを抽出する。ローパスフィルタは、例えば70kHzローパスフィルタを用いる。
【0032】
そして、フィルタ処理を行った波形データに対して時間軸方向に沿って移動平均処理を行い、波形の平滑化を行った後、該波形データを微分処理して微分波形を取得する。
この微分波形からピーク時間を求め、このピーク時間から所定のオフセット時間を差し引いて伝播時間を求める。これは、微分波形にて、最初に到達する下向き波形のピーク位置から、予め把握しておいた発振→受振で発生するオフセット時間を差し引いた時間を電極長さに相当する伝播時間とする。前記オフセット時間は、超音波送受信時に生じる遅延時間などから求められるもので、このオフセット時間をピーク時間から差し引くことで、正確な伝播時間を求めることができる。尚、波形データからピーク位置を検出する際には、対象物ごとに適したピークを選択して検出するものとする。波形データには、上に凸の上ピークと下に凸の下ピークとがあるが、例えば、対象物がカーボン電極の場合は、下ピークが大きく出現するため下ピークを用いてピーク時間を計測する。この場合にはオフセット時間を下ピーク用に設定しておく。また、対象物が溶融炉のメタルの場合は、上ピークが明瞭に出現するため上ピークを用いてピーク時間を計測する。この場合にはオフセット時間を上ピーク用に設定しておく。
【0033】
このようにして、複数の発振点−受振点において、夫々上記した方法により伝播時間が求められる。伝播時間は、被測定体11内を伝播される超音波の発振から受振までの時間である。
この伝播時間から各発振点−受振点における以下の連立方程式が得られる。伝播時間を3つ以上計測した場合にはフィッティングによって平均音速及び厚さを算出する。
本手法のことを以下2点法と呼ぶこととする。
【0034】
【数2】
ここで、τ1、τ2:伝播時間、L1、L2:探触子間距離、h:被測定体厚さ、v:平均音速である。
前記連立方程式を解くことにより、平均音速v、及び厚さhが求められる。
【0035】
本実施形態によれば、低周波横波超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体を測定する構成としたため、溶融固化物又は焼結固化物内に存在する気泡、空隙、結晶等の異物を透過することができ、精度良く測定を行うことが可能となる。
また、針状探触子を用いているため、表面が凹凸状になりやすい溶融固化物又は焼結固化物であっても確実に超音波を入射させることができる。
また、低周波横波超音波は被測定体内に発振するとほぼ球面状に広がるため、反射波を発射面と同一の面で受振することが可能である。
また、音速分布がある場合でも、2点法を用いることで平均音速と厚さを求めることができる。
【0036】
さらに本実施形態は、溶融炉の耐火物厚さ計測に好適に用いることができる。上記した超音波測定を炉底部の複数点で実施することで、メタル内部及び炉底耐火物面の分布、例えば目地の差込や耐火物の剥離、メタル内の空隙などを把握することが可能である。目地の差込が残存耐火物の半分以上となった場合には溶融炉の運転継続が困難となるため、メタル層の厚さを超音波測定して、該メタル層の厚さに基づいて耐火物の厚さを推定することにより、溶融炉の安定運転が可能となる。
【0037】
次に、音速分布が均一でない被測定体の厚さや内部気泡状況を求める方法につき以下に説明する。
まず、被測定体の断面解析領域を設定し、この領域を複数の区画に分割する。例えば、断面解析領域を格子状にメッシュ分割する。そして、各メッシュごとに2点法などで平均音速を求め、各メッシュの平均音速を平均して断面解析領域全体の平均音速を算出する。
【0038】
具体的には図8に示すように、1〜7の各位置が反射点となるように2点法を実施し、各位置での平均音速を求める。図8中では、2、4、6にて2点法を実施した場合を例示している。この2、4、6の各位置において、発振探触子の位置を(1)〜(3)とし、これに対応して受振探触子の位置(1’)〜(3’)として夫々のセンサ間距離および受信時間を計測する。このとき、図8のように一つの反射点において3つ以上計測した場合にはフィッティングによって平均音速及び厚さを算出する。これは、発振探触子−受振探触子間の距離によって受振時間が異なるが、これを図9に示すようにグラフ化して、ピーク位置を通過するフィッティング曲線を求め、このフィッティング曲線から厚さと平均音速を算出する。
【0039】
さらに、1〜7の各反射点の平均音速を算出して、断面解析領域全体の平均音速を求め、該平均音速を用いて各位置の音圧分布を表示する。一般に、ピークが大きい位置は音圧が大きくなる。炉底メタル層の場合には、上層部は気泡などが多いため音速が遅く、下層部は比重分離で銅など音速の速い物質が密に存在しているため音速が速くなる。また、複数の区画に分割してその平均音速を求めた場合は、図10に示すように、気泡が存在する区画は音速の影響が大きくなり位置Bでの音速は遅くなってしまう。そこで、気泡が存在しない位置A(図中1、4、5、7に対応)の音速の平均値を用いてメタル層の厚さを求めるようにする。
【0040】
この平均音速および各メッシュで計測した反射時間および振幅から各メッシュ内部の音圧分布を求め、コンター図などで画像化する。この画像を見ることで被測定体の厚さや内部気泡の状況を可視化できる。図11に被測定体の音圧分布を表すトモグラフィー画像を示す。図中C部分が音圧(振幅)の大きい位置で、炉底レンガとメタルの境界面が最も強い反射となっており、初期値である実線Dと比較して視覚的にレンガの侵食状況を確認することができる。
深さ方向に音速分布がある被測定体の厚さを正確に求めたい場合で、内部に気泡がある場合には気泡の上部の音速の影響が大きくなるのを排除するために内部気泡の無いメッシュを選択して平均音速を求めることが好ましい。
【0041】
次に、密度分布が均一でない被測定体の音速分布を求める方法につき、以下に説明する。
これは、被測定体の断面解析領域を設定し、この領域をメッシュ分割して、各メッシュ毎の音速や反射率などの物性を仮定しておき、複数の伝播時間を用いて連立方程式を収束計算して各メッシュの音速分布を求めるものである。
【0042】
本実施形態では、一例としてプラズマ式溶融炉の炉底部を被測定体として超音波測定を行い、該炉底部の音速分布を求める。
図12に示すように、プラズマ式溶融炉60は、炉本体64の炉蓋から主電極61が垂下され、これに対向して炉底から炉底電極62が挿設されている。主電極61は不図示の可動装置により昇降可能で、炉底電極62は炉本体64に固定される。プラズマ式灰溶融炉60では、これらの電極間に直流電源により直流電流を通流して炉内にプラズマアークを発生させ、炉内に投入された被処理物をプラズマアーク熱及び前記電極間を流れる電流のジュール熱により溶融処理する。被処理物が溶融した溶融スラグは炉底に溜まり、その下部には比重差により溶融メタル63が堆積する。溶融スラグは適宜出滓口64aより排出され、溶融メタル9は炉本体2を傾動させることにより出滓される。
炉本体64の側壁及び蓋部の内側は不定形耐火材65で形成され、炉底部67には、侵食に強いアーチ状の耐火レンガ68が内側に配設され、その下に耐火レンガ69が配設される。これらの耐火物の外表面は鋼板製のケーシング66で被覆されている。メタル9に接する耐火レンガ68は、目地の差込等によりその表面が侵食される。
【0043】
このようなプラズマ式溶融炉60において、休炉時にメタル層9を露出させた状態で超音波測定を行い、メタル層9の音速分布を測定する。
超音波振動子11はメタル層9の表面に当接して配置され、該超音波振動子11には波形計測器10と処理装置20が接続される。
【0044】
まず、メタル層9の断面解析領域を設定する。図13は、この断面解析領域を表した図である。そして、断面解析領域を格子状にメッシュ分割する。各メッシュ毎に音速を仮定しておく。
一方、図5に示したように、低周波横波超音波を用いて複数の伝播時間を測定し、この伝播時間を用いて連立方程式を収束計算し、各メッシュの音速分布を求める。このようにして音速分布を求めることにより、図14に示されるような断面音速分布が得られる。
また、音速の他に、反射率等の他の物性を仮定して連立方程式を生成し、低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間を用いてこの連立方程式を収束計算することにより、前記仮定した物性を求めることも可能である。
【0045】
本実施形態によれば、被測定体の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、各メッシュ毎に音速を仮定しておき、低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間を用いて連立方程式を収束計算することにより、各メッシュの音速分布を求める。これにより、密度分布が均一でない被測定体においてその音速分布を求めることができ、この音速分布により被測定体内部の気泡、空隙、異物等の位置を把握することが可能となる。
また、求められた音速分布から水平方向の音速分布が均一な断面を選択し、2点法を用いて被測定体の平均音速又は厚さを精度良く求めることが可能となる。
【0046】
また、図17に示すように、本実施形態に係る超音波測定装置は、原子炉格納容器に適用することも可能である。
原子炉容器や蒸気発生器など、原子力発電所の主な機器は、万一事故が起きても放射性物質を発電所の外に出さないようにするために格納容器70の中に格納されている。格納容器70の外殻71は、例えば、厚さ4.5cmの鋼板でできており、さらにその外側は厚さ80cmの鉄筋コンクリートの建屋で覆われている。地震などが発生した後に鉄筋コンクリート建屋の健全性を把握するために、格納容器70の外殻71に低周波横波超音波を送受信する超音波探触子11を当接させる。
コンクリートが経年劣化すると音速が変化する。よって、従来は一部のコンクリートをサンプル破壊して全体の健全性を確認していた。
本実施形態では、超音波探触子11にて得られた波形データに基づいて2点法で音速および厚さを計測することで、破壊することなく健全性を確認できる。トモグラフィーを用いると亀裂や脱落などの分布まで確認することができ、劣化診断・耐震評価・対策を行うことが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明の超音波測定方法及び装置は、超音波を用いて、密度分布が均一でない被測定体の厚さ又は音速、さらには音速分布を精度良く求めることができるため、様々な技術分野で幅広く用いることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の実施形態に係る超音波測定装置の構成図である。
【図2】低周波横波用の針状探触子の概要を示す図である。
【図3】低周波横波用の針状探触子の一例を示す詳細図である。
【図4】センサアレイの一例を示す斜視図である。
【図5】センサアレイの模式図である。
【図6】低周波横波超音波を用いた実験の装置構成を示す図である。
【図7】低周波横波超音波を用いた実験の結果を示す図で、(a)距離とピーク時間の関係を示すグラフ、(b)距離と信号強度の関係を示すグラフ、(c)受振探触子が超音波を受振した際の波形図である。
【図8】発振探触子及び受振探触子の位置と各反射位置を示す対象物の断面図である。
【図9】波形のピークを用いたフィッティング処理を説明する図である。
【図10】対象物内部の状態と平均音速の関係を示すイメージ図である。
【図11】本発明の実施形態に係る超音波測定により得られたトモグラフィ画像を示す図である。
【図12】溶融炉における炉底耐火物の侵食例を示す断面図である。
【図13】メッシュ分割した断面解析領域を模式的に表す図である。
【図14】炉底に堆積したメタル層の断面音速分布を表す図である。
【図15】縦波と横波の反射状態を説明する図である。
【図16】1探触子法を用いた超音波測定方法を説明する図である。
【図17】本発明の実施形態に係る超音波測定装置を原子炉格納容器に適用した場合を示す図である。
【符号の説明】
【0049】
10 波形計測器
11 超音波探触子
11a 発振探触子
11b 受振探触子
12 送信部
13 パルス発生部
14 受信部
15 増幅部
16 波形表示部
20 処理装置
21 波形処理部
22 演算部
100 超音波測定装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の音速と厚さを測定する超音波測定方法において、
前記被測定体の表面に配置された針状の発振探触子により垂直方向に低周波横波超音波を発振し、前記発振探触子と同一面上で且つ該発振探触子から離間した複数の受振位置にて針状の受振探触子により反射波を受振し、
前記受振位置のうち超音波の反射点が同一である受振位置を複数選択し、該選択された各受振位置における反射波波形に基づいて夫々の超音波伝播時間を求め、該伝播時間を用いて音速と厚さをパラメータとした連立方程式を解くことにより前記被測定体の音速又は厚さを求めることを特徴とする超音波測定方法。
【請求項2】
前記受振探触子を前記受振位置に対応させて複数設け、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を、前記複数の受振探触子により同時に受振することを特徴とする請求項1記載の超音波測定方法。
【請求項3】
一つの前記受振探触子を前記受振位置に対応させて移動しながら、該受振探触子にて前記発振探触子により発振された超音波の反射波を受振することを特徴とする請求項1記載の超音波測定方法。
【請求項4】
前記被測定体が、溶融炉の炉底に堆積したメタル層であり、
前記低周波横波超音波を用いて前記メタル層の厚さを測定することにより前記溶融炉の炉底耐火物の侵食状態を監視することを特徴とする請求項1記載の超音波測定方法。
【請求項5】
前記被測定体の所定の断面解析領域を複数の区画に分割し、請求項1に記載される方法により各区画の平均音速を算出し、該平均音速と各区画の超音波伝播時間とを用いて前記断面解析領域の音圧分布を導き出し、該音圧分布を画像化し、該画像化した音圧分布を用いて被測定体の厚さ、又は内部気泡を含む異物の位置を検出することを特徴とする超音波測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載される方法により異物を検出し、該異物が検出されない部分の平均音速を用いて被測定体の厚さを計測することを特徴とする超音波測定方法。
【請求項7】
前記被測定体の所定の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、前記低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間により各メッシュ毎の音速をパラメータとした連立方程式を収束計算することにより、前記被測定体の音速分布を求めることを特徴とする請求項1記載の超音波測定方法。
【請求項8】
超音波を発振する発振探触子と、該発振した超音波の反射波を受振する受振探触子とを備え、前記受振探触子により得られた波形を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の音速と厚さを測定する超音波測定装置において、
前記発振探触子が、前記被測定体の表面に配置され、被測定体内部に垂直方向に向けて低周波横波超音波を発振する針状の探触子であり、
前記受振探触子が、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を該発振探触子から離間した複数の受振位置にて受振する針状の探触子であって、
前記受振位置のうち超音波の反射点が同一である受振位置を複数選択し、該選択された各受振位置における反射波波形に基づいて夫々の超音波伝播時間を求める伝播時間算出手段と、前記伝播時間を用いて音速と厚さをパラメータとした連立方程式を解くことにより前記被測定体の音速又は厚さを求める音速・厚さ算出手段とを有する処理装置を備えたことを特徴とする超音波測定装置。
【請求項9】
前記受振探触子が前記複数の受振位置に対応して複数設けられ、該複数の受振探触子が、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を同時に受振することを特徴とする請求項8記載の超音波測定装置。
【請求項10】
前記受振探触子が前記受振位置に対応して一つ設けられ、該受振探触子を前記複数の受振位置に対応させて移動させながら前記発振探触子により発振された超音波の反射波を受振することを特徴とする請求項8記載の超音波測定装置。
【請求項11】
前記処理装置は、前記被測定体の所定の断面解析領域を複数の区画に分割し、前記音速・厚さ算出手段により各区画の平均音速を算出し、該平均音速と各区画の超音波伝播時間とを用いて前記断面解析領域の音圧分布を導き出す音圧分布導出手段と、該音圧分布を画像化する画像化手段と、該画像化した音圧分布を用いて被測定体の厚さ、又は内部気泡を含む異物の位置を検出する演算手段とを有することを特徴とする請求項8記載の超音波測定装置。
【請求項12】
前記処理装置は、前記被測定体の所定の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、前記低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間により各メッシュ毎の音速をパラメータとした連立方程式を収束計算することにより、前記被測定体の音速分布を求める音速分布導出手段を有することを特徴とする請求項8記載の超音波測定装置。
【請求項1】
超音波を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の音速と厚さを測定する超音波測定方法において、
前記被測定体の表面に配置された針状の発振探触子により垂直方向に低周波横波超音波を発振し、前記発振探触子と同一面上で且つ該発振探触子から離間した複数の受振位置にて針状の受振探触子により反射波を受振し、
前記受振位置のうち超音波の反射点が同一である受振位置を複数選択し、該選択された各受振位置における反射波波形に基づいて夫々の超音波伝播時間を求め、該伝播時間を用いて音速と厚さをパラメータとした連立方程式を解くことにより前記被測定体の音速又は厚さを求めることを特徴とする超音波測定方法。
【請求項2】
前記受振探触子を前記受振位置に対応させて複数設け、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を、前記複数の受振探触子により同時に受振することを特徴とする請求項1記載の超音波測定方法。
【請求項3】
一つの前記受振探触子を前記受振位置に対応させて移動しながら、該受振探触子にて前記発振探触子により発振された超音波の反射波を受振することを特徴とする請求項1記載の超音波測定方法。
【請求項4】
前記被測定体が、溶融炉の炉底に堆積したメタル層であり、
前記低周波横波超音波を用いて前記メタル層の厚さを測定することにより前記溶融炉の炉底耐火物の侵食状態を監視することを特徴とする請求項1記載の超音波測定方法。
【請求項5】
前記被測定体の所定の断面解析領域を複数の区画に分割し、請求項1に記載される方法により各区画の平均音速を算出し、該平均音速と各区画の超音波伝播時間とを用いて前記断面解析領域の音圧分布を導き出し、該音圧分布を画像化し、該画像化した音圧分布を用いて被測定体の厚さ、又は内部気泡を含む異物の位置を検出することを特徴とする超音波測定方法。
【請求項6】
請求項5に記載される方法により異物を検出し、該異物が検出されない部分の平均音速を用いて被測定体の厚さを計測することを特徴とする超音波測定方法。
【請求項7】
前記被測定体の所定の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、前記低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間により各メッシュ毎の音速をパラメータとした連立方程式を収束計算することにより、前記被測定体の音速分布を求めることを特徴とする請求項1記載の超音波測定方法。
【請求項8】
超音波を発振する発振探触子と、該発振した超音波の反射波を受振する受振探触子とを備え、前記受振探触子により得られた波形を用いて、密度分布が均一でない溶融固化物又は焼結固化物からなる被測定体の音速と厚さを測定する超音波測定装置において、
前記発振探触子が、前記被測定体の表面に配置され、被測定体内部に垂直方向に向けて低周波横波超音波を発振する針状の探触子であり、
前記受振探触子が、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を該発振探触子から離間した複数の受振位置にて受振する針状の探触子であって、
前記受振位置のうち超音波の反射点が同一である受振位置を複数選択し、該選択された各受振位置における反射波波形に基づいて夫々の超音波伝播時間を求める伝播時間算出手段と、前記伝播時間を用いて音速と厚さをパラメータとした連立方程式を解くことにより前記被測定体の音速又は厚さを求める音速・厚さ算出手段とを有する処理装置を備えたことを特徴とする超音波測定装置。
【請求項9】
前記受振探触子が前記複数の受振位置に対応して複数設けられ、該複数の受振探触子が、前記発振探触子により発振された超音波の反射波を同時に受振することを特徴とする請求項8記載の超音波測定装置。
【請求項10】
前記受振探触子が前記受振位置に対応して一つ設けられ、該受振探触子を前記複数の受振位置に対応させて移動させながら前記発振探触子により発振された超音波の反射波を受振することを特徴とする請求項8記載の超音波測定装置。
【請求項11】
前記処理装置は、前記被測定体の所定の断面解析領域を複数の区画に分割し、前記音速・厚さ算出手段により各区画の平均音速を算出し、該平均音速と各区画の超音波伝播時間とを用いて前記断面解析領域の音圧分布を導き出す音圧分布導出手段と、該音圧分布を画像化する画像化手段と、該画像化した音圧分布を用いて被測定体の厚さ、又は内部気泡を含む異物の位置を検出する演算手段とを有することを特徴とする請求項8記載の超音波測定装置。
【請求項12】
前記処理装置は、前記被測定体の所定の断面解析領域を格子状にメッシュ分割し、前記低周波横波超音波を用いて測定された複数の伝播時間により各メッシュ毎の音速をパラメータとした連立方程式を収束計算することにより、前記被測定体の音速分布を求める音速分布導出手段を有することを特徴とする請求項8記載の超音波測定装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2010−117294(P2010−117294A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−291879(P2008−291879)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【出願人】(501370370)三菱重工環境・化学エンジニアリング株式会社 (175)
【Fターム(参考)】
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